JP5334779B2 - 樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアリレート樹脂またはポリアリレート樹脂とポリカーボネート樹脂とからなる樹脂組成物において、耐熱性と耐衝撃性を維持しつつ、流動性を向上させた樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形体に関する。
ビスフェノール類と芳香族カルボン酸とからなるポリアリレート樹脂は、エンジニアリングプラスチックとして広く知られている。かかるポリアリレート樹脂は耐熱性、機械的強度、透明性に優れるため、その成形品は電気・電子、自動車、機械等の分野に幅広く応用されている。しかし、溶融粘度が高いため成形時の流動性が悪く、成形性が必ずしも良いとは言えないという問題点を有していた。
ポリアリレート樹脂の機械物性、耐熱性を維持したまま成形性を向上させる試みとして、特許文献1および特許文献2ではポリアリレート樹脂とポリカーボネート樹脂からなる樹脂組成物が開示されている。該樹脂組成物は、機械物性、外観に優れ、耐熱性の低下も少ないうえ、さらにポリアリレート樹脂の成形性が改善されている。しかしながら、近年では自動車、電気製品において軽量化、小型化が図られており、自動車や電気製品を構成する部品においても、小型化が図られている。このように小型化が図られたケース、特に薄肉成形品においては、非常に良好な成形性が強く求められており、特許文献1および特許文献2に記載されたポリアリレート樹脂とポリカーボネート樹脂とからなる樹脂組成物では、要求される成形性を満たし切れない場合がある。
上記のような現状から、ポリアリレート樹脂の良好な機械物性、耐熱性を維持し、成形性が十分に改善された樹脂組成物が強く望まれていた。
特公昭50−027061号公報 特開昭58−083050号公報
従って、本発明の目的は、従来のポリアリレート樹脂の耐熱性、耐衝撃性などの機械物性を損なうことなく、流動性を向上させることにより成形性を改善させ、さらに吸水、ゲル化の問題のない樹脂組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリアリレート樹脂(A)にシクロオレフィン系樹脂(C)を配合することにより、あるいはポリアリレート樹脂(A)およびポリカーボネート樹脂(B)に対してシクロオレフィン系樹脂(C)を配合することで流動性を向上させることにより、機械物性や耐熱性を維持しながら成形性を改善させ、さらに、吸水、ゲル化の発生を防止し得る樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は次の通りである。
(1)ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、シクロオレフィン系樹脂(C)からなり、各成分の質量比率が下記式(I)、(II)を満足し、
(A)/(B)=40/60〜100/0 (I)
(C)/[(A)+(B)+(C)]=3/100〜25/100 (II
クロオレフィン系樹脂(C)が、ノルボルネンエチレンとの付加共重合体であり、シクロオレフィン系樹脂(C)中におけるノルボルネンエチレンとの質量比が、60/40〜90/10であることを特徴とする樹脂組成物。
上記(1)の樹脂組成物からなる成形体。
本発明によれば、ポリアリレート樹脂が有している耐熱性、機械的強度を損なうことなく、流動性を向上させることが可能である。さらに吸水、ゲル化など、付随する問題の見られないものであるため、非常に有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリアリレート樹脂(A)にシクロオレフィン系樹脂(C)を配合することにより、あるいはポリアリレート樹脂(A)およびポリカーボネート樹脂(B)に対してシクロオレフィン系樹脂(C)を配合することにより得られる。
本発明において、ポリアリレート樹脂(A)とは、芳香族ジカルボン酸残基と、ビスフェノール類残基とから構成されているポリエステルである。ポリアリレート樹脂(A)は、溶融重合、界面重合など公知慣用の方法により製造することができる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。
上記のなかでも、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸およびイソフタル酸が好ましく、溶融加工性および機械的特性の点から、両者を混合して用いることが特に好ましい。その場合、テレフタル酸とイソフタル酸の混合モル比率(テレフタル酸/イソフタル酸)は、100/0〜0/100の範囲の任意であるが、重合性及び得られるポリアリレート樹脂の耐変色性の観点から、好ましくは70/30〜0/100、より好ましくは60/40〜0/100である。
ビスフェノール類の具体例として、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよいし、あるいは2種類以上混合して使用してもよい。上記の中でも、コストパフォーマンスおよび重合性の観点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを使用することが好ましく、これを単独で使用することがより好ましい。
上記ポリアリレート樹脂(A)のインヘレント粘度は、0.3〜1.0の範囲で任意であるが、0.4〜0.7が好ましく、0.4〜0.6がより好ましく、0.45〜0.55であることがさらに好ましい。本発明において、インヘレント粘度とは、1,1,2,2−テトラクロロエタン100mlに、試料1.0gを溶解し温度25℃の溶液を調製し、該溶液を用いて測定された値である。ポリアリレート樹脂(A)のインヘレント粘度が0.3未満となると得られる樹脂組成物の分子量が低くなるため、機械的特性、耐熱性が劣る場合があり、逆に1.0を超えると溶融粘度が高くなるため溶融加工時の変色や、流動性の低下が起こる場合がある。
本発明におけるポリカーボネート樹脂(B)とは、ビスフェノール類残基とカーボネート残基で構成されたものである。ポリカーボネート樹脂(B)は、上記のポリアリレート樹脂(A)と類似のビスフェノール類残基を有するため、ポリアリレート樹脂(A)と良好な相溶性を示し、さらに、ポリアリレート樹脂(A)の耐熱性と耐衝撃性を向上させるという利点がある。なお、本発明においては、ポリカーボネート樹脂(B)が配合されていなくても、所望の効果を達成することができる場合がある。
ビスフェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジチオジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
ビスフェノール類としては、その他にも、米国特許第2,999,835号明細書、米国特許第3,028,365号明細書、米国特許第3,334,154号明細書、米国特許第4,131,575号明細に記載されているジフェノールなどが使用できる。これらは単独で使用してもよいし、あるいは2種類以上混合して使用してもよい。これらの化合物の中でも、コストパフォーマンスの観点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを使用することが好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを単独で使用することが最も好ましい。
カーボネート残基を導入するための成分としては、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
本発明において、ポリカーボネート樹脂(B)についての前述のインヘレント粘度は、0.3〜0.7であることが好ましく、さらに好ましくは0.35〜0.65である。ポリカーボネート樹脂(B)のインヘレント粘度が0.3未満となると得られる樹脂組成物の機械的特性、耐熱性が劣る場合があり、逆に0.7を超えると溶融粘度が高くなるため溶融加工時の変色や、流動性の低下が起こる場合がある。
本発明において、ポリアリレート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)の配合比率は、樹脂組成物の耐熱性の観点から、質量比で、(A)/(B)=40/60〜100/0であることが必要であり、50/50〜90/10であることが好ましい。前記質量比においてポリアリレート樹脂(A)の比率が40質量%未満であると、十分な耐熱性が得られない場合がある。
本発明に用いられるシクロオレフィン系樹脂(C)は、主鎖が炭素-炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に脂環族系の環状炭化水素構造を有する高分子化合物であり、上記の脂環族系の環状炭化水素化合物とα-オレフィンの付加共重合体であり、脂環族系の環状炭化水素化合物ノルボルネンであり、α-オレフィンがエチレンであることが必要である
シクロオレフィン系樹脂(C)を用いることにより、成形性、外観、耐熱性や耐衝撃性などの機械物性を向上させる効果が発現し、さらに、吸水を防止または抑制する効果が発現する。
上記シクロオレフィン系樹脂(C)の構造中におけるノルボルネンエチレンの共重合比率としては、耐熱性の観点から、質量比で、ノルボルネン/エチレン=60/40〜90/10の範囲内であることが必要であるノルボルネンの質量比が50質量%未満の場合、得られる樹脂組成物において十分な機械物性、耐熱性が得られなくなるため好ましくない。
本発明において、シクロオレフィン系樹脂(C)は、コストパフォーマンスおよび耐熱性の観点から、脂環族系の環状炭化水素化合物がノルボルネンであり、α-オレフィンがエチレンの付加共重合体であることが必要である。また、その構造は特に制限されず、直鎖状、分岐状、架橋状の何れの構造を有していても構わない。また、シクロオレフィン系樹脂(C)を得る方法としては特に制限されず、重合方法、水素添加方法など、公知の方法に従って得ることができる。
本発明においては、シクロオレフィン系樹脂(C)と、ポリアリレート樹脂(A)、及びポリカーボネート樹脂(B)との質量比率は、下記式の関係にあることが必要である。
(C)/[(A)+(B)+(C)]=3/100〜25/100 (II)
上記式はポリアリレート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とシクロオレフィン系樹脂(C)の配合量全体を100質量部とした時のシクロオレフィン系樹脂(C)の配合割合を表している。ただし、本発明においては、ポリカーボネート樹脂(B)を含まない場合もある。本発明においては、[(A)+(B)+(C)]を100質量部として、シクロオレフィン系樹脂(C)が3〜25質量部であることが必要であり、5〜20質量部であることが好ましい。シクロオレフィン系樹脂(C)の配合割合が3質量部未満では、本願樹脂組成物の流動性改善効果にもとづく成形性の向上がほとんど見られず、逆に25質量部を超えると、外観や機械物性が悪化するため好ましくない。
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、前記ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、シクロオレフィン系樹脂(C)の他に、熱や光に対する安定性の観点から、例えばホスファイト系化合物、フェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ビンダードアミン系化合物、イオウ化合物あるいはこの混合物などを含んでもよい。また上記以外であっても、本発明の効果を損なわない範囲内で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、顔料、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤、有機系充填剤、無機系充填剤などを含んでもよい。
本発明において、ポリアリレート樹脂(A)にシクロオレフィン系樹脂(C)を配合する方法、あるいはポリアリレート樹脂(A)およびポリカーボネート樹脂(B)に対してシクロオレフィン系樹脂(C)を配合する方法は特に限定されるものではなく、各成分が均一に分散されている状態になればよい。具体的には、例えば、タンブラーやヘンシェルミキサーを用いて均一にドライブレンドした後、溶融混練押出して、冷却・カッティング・乾燥工程に付して、ペレット化すればよい。溶融混練に際しては、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等の一般的な混練機を使用することが出来るが、分散性向上の観点から二軸押出機を使用することが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、任意の方法で各種成形品に成形されることができる。成形方法は特に制限されず、射出成型法、押出成形法、圧縮成形法、ブロー成型法などが適用できる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下に、実施例、比較例で実施した評価方法、および実施例、比較例で使用した原材料について記載する。
なお、本願明細書において、「ベース樹脂組成物」とは、[(A)+(B)+(C)]からなる樹脂組成物に対して、(A)/(B)の配合比率が同一でかつ(C)を含まない樹脂組成物を示す((B)が0の場合も含む)。例えば、実施例1、2に対しては、比較例1、2が、それぞれベース樹脂組成物に該当する。
1.評価方法
(1) インヘレント粘度(dl/g):ISO1628−1に基づき、ウベローデ型粘度管を使用し、1,1,2,2−テトラクロロエタンを溶媒とし、溶媒100mlに対し試料1gを添加し(すなわち、濃度1g/dl)、温度25℃において測定した。
(2)荷重たわみ温度(℃):ISO 75−1に基づき、厚み4mmの試験片を用いて、荷重1.8MPaで測定した。また荷重たわみ温度測定前には、アニール処理を施した。アニール処理は成形体の内部歪を除く目的で実施し、(荷重たわみ温度−10℃)以上かつ荷重たわみ温度未満の温度にて、3時間熱風乾燥機内にて静置した。
本発明においては、荷重たわみ温度が160℃以上であって、かつ、ベース樹脂組成物との荷重たわみ温度の差が5℃以内であるものを実用に耐えうるものであるとした。
(3)シャルピー衝撃値(J/m):ISO−179−1eAに基づき、厚み4mmのノッチ付きの試験片を用いて測定した。
本発明においては、シャルピー衝撃値が10kJ/m以上であるものを実用に耐えうるものであるとした。
(4)シャルピー破断面観察:前記(3)のシャルピー衝撃値測定試験後において、破断した試験片の破断面を目視にて確認した。以下の基準で評価した。
○:ささくれ状となっておらず、破断面が滑らかであった。
×:破断面にささくれが見られた。
(5)外観:前記(2)の荷重たわみ温度測定用に成形した試験片の外観を目視で確認した。以下の基準で評価した。
○:班模様が生じておらず、均一であった。
×:班模様が生じていた。
(6)バーフロー流動長(mm):実施例および比較例で得られたペレット状の樹脂組成物を、120℃にて8時間以上熱風乾燥した後、射出成型機(FANUC社製、商品名「S2000i−100B」)に厚み2mm、幅20mm、長さ980mmのバーフロー試験金型を取り付け、シリンダ温度340℃、金型温度110℃に設定し、射出圧力120MPa、射出時間3秒における試験片の流動長を測定した。
(7)バーフロー流動長向上度(%):上記(6)の測定方法に基づき、下記式によりバーフロー流動長向上度を算出した。これはポリアミド樹脂(C)を添加することによるバーフロー流動長の変化度合いを示す値である。
バーフロー流動長向上度(%)={[(A)+(B)+(C)]からなる樹脂組成物のバーフロー流動長}/{ベース樹脂組成物のバーフロー流動長}×100
本発明においては、バーフロー流動長向上度が150%以上であるものを実用に耐えうるものとした。
(8)曲げ試験:ISO 178に基づき、厚み4mmの試験片を用いて、曲げ弾性率(GPa)、曲げ破断歪(%)を測定した。
(9)吸水率(%):ISO 62に基づき、23℃の水中にて、24時間経過後での吸水率を測定した。
2.原料
・ポリアリレート樹脂(A)
(A−1):ユニチカ社製 商品名「Lパウダー」
ビスフェノールA、テレフタル酸、イソフタル酸からなり、インヘレント粘度が0.54である。
(A−2):ユニチカ社製 商品名「Dパウダー」
ビスフェノールA、テレフタル酸、イソフタル酸からなり、インヘレント粘度が0.72である。
・ポリカーボネート樹脂(B)
住友ダウ社製 商品名「カリバー200−3」
インヘレント粘度が0.64であるポリカーボネート樹脂である。
・シクロオレフィン系樹脂(C)
(C−1):ポリプラスチックス社製、商品名「TOPAS 6017」
ガラス転移点が180℃であり、エチレンとノルボルネンからなり、構造中にノルボルネンが質量比で83%含まれるシクロオレフィン系樹脂である。
(C−2):ポリプラスチックス社製、商品名「TOPAS 6015」
ガラス転移点が160℃であり、エチレンとノルボルネンからなり、構造中にノルボルネンが質量比で79%含まれるシクロオレフィン系樹脂である。
(C−3):ポリプラスチックス社製、商品名「TOPAS 5013」
ガラス転移点が136℃であり、エチレンとノルボルネンからなり、構造中にノルボルネンが質量比で76%含まれるシクロオレフィン系樹脂である。
(C−4):ポリプラスチックス社製、商品名「TOPAS 8007」
ガラス転移点が80℃であり、エチレンとノルボルネンからなり、構造中にノルボルネンが質量比で65%含まれるシクロオレフィン系樹脂である。
(C−5):プライムポリマー社製、商品名「ハイゼックス2008J」
融点が135℃、密度0.964g/cmの高密度ポリエチレンである。
(C−6): 三井化学社製、商品名「TPX R31」
融点が233℃のポリメチルペンテンである。
実施例1
ポリアリレート樹脂(A)90質量部、シクロオレフィン系樹脂(C)10質量部を、総仕込み量3kgをドライブレンド混合した後、ロスインウェイト式連続定量供給装置(クボタ社製、商品名「CE−W−1」)を用いて、ベント部を一か所有するスクリュー径26mmの二軸押し出し機(東芝機械社製、商品名「TEM26SS」)の主供給口に供給した。そして、押出機のバレル温度を320℃、ベント減圧度を−0.099MPa(ゲージ圧)、吐出量20kg/h、スクリュー回転数300rpmで溶融混練し、ダイスからストランド状に引き取った樹脂組成物を温浴槽にて冷却固化し、ペレタイザでカッティングした後、120℃で熱風乾燥することにより樹脂組成物のペレットを得た。
得られた樹脂組成物ペレットを用い、上記した評価方法に基づいて、評価を実施した。結果を表1に記載する。
Figure 0005334779
実施例2〜10、比較例1〜11
ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)及びシクロオレフィン系樹脂(C)の種類と配合割合を表1、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物のペレットを得、評価を実施した。評価結果を表1、表2に示す。
Figure 0005334779
実施例1〜10にて得られた樹脂組成物は、表1に示すように、耐熱性、成形性(流動性)、耐衝撃性、吸水特性に優れるものであり、外観も良好であった。
比較例1〜5、9ではシクロオレフィン系樹脂(C)を配合しなかったため、成形性(流動性)が劣るものとなった。
比較例5および比較例6は、ポリアリレート樹脂(A)/ポリカーボネート樹脂(B)の比率が30/70であり、ポリアリレート樹脂(A)の配合量が少ないため、荷重たわみ温度が160℃を下回り、耐熱性に劣るものとなった。
比較例7は、シクロオレフィン系樹脂(C)の配合量が少ないため、バーフロー流動長向上度も低く、十分な成形性(流動性)が発現しないものとなった。
比較例8は、シクロオレフィン系樹脂(C)の配合量が多すぎるため、成形性(流動性)、耐熱性、曲げ特性、外観には問題がないが、シャルピー衝撃値が低く、耐衝撃性に劣るものとなった。
比較例10、11は、シクロオレフィン系樹脂(C)の構造中に脂環族系の環状炭化水素化合物を有していないため、曲げ破断歪、外観、シャルピー破断面形状に劣り、実用性に欠くものであった。また、実施例2、7〜9に比べ曲げ弾性率も低下した。
実施例10は、ポリアリレート樹脂(A)のインヘレント粘度が0.72と高すぎたため、実施例2に比べ成形性(流動性)が劣るものとなったが、各種特性は実用可能な範囲内であった。
また、実施例1〜10、比較例1〜11の樹脂組成物は、全てポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)からなる樹脂組成物と同等もしくはそれ以下の吸水率となっており、吸水が防止または抑制されていることが分かる。

Claims (2)

  1. ポリアリレート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、シクロオレフィン系樹脂(C)からなり、各成分の質量比率が下記式(I)、(II)を満足し、
    (A)/(B)=40/60〜100/0 (I)
    (C)/[(A)+(B)+(C)]=3/100〜25/100 (II)
    シクロオレフィン系樹脂(C)が、ノルボルネンとエチレンとの付加共重合体であり、シクロオレフィン系樹脂(C)中におけるノルボルネンとエチレンとの質量比が、60/40〜90/10であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の樹脂組成物からなる成形体。
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