JP6377656B2 - シリコン基板の研磨方法および研磨用組成物セット - Google Patents
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Description
上記シリコン基板には、ここに開示される予備研磨工程の前に、ラッピングやエッチング、上述したHLMの付与等の、予備研磨工程より上流の工程においてシリコン基板に適用され得る一般的な処理が施されていてもよい。
ここに開示される研磨方法における予備研磨工程は、同一の定盤(研磨定盤)上で行われる複数の予備研磨段階を含む。すなわち、上記複数の予備研磨段階は、途中で研磨対象物を別の研磨装置または別の定盤に移動させることなく行われる。したがって、予備研磨工程に要する時間の長期化や作業の煩雑化を抑えつつ、複数の予備研磨段階を効率よく行うことができる。上記複数の予備研磨段階は、同一の研磨対象物に対して、段階を追って(逐次的に)行われる。ただし、各予備研磨段階において複数の研磨対象物を同時に(並行して)研磨すること、すなわちバッチ式の研磨を行うことは妨げられない。
ここに開示される技術において使用される予備研磨スラリーに含まれる砥粒の材質や性状は特に制限されず、使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子等のシリコン化合物粒子や、ダイヤモンド粒子等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。なかでも無機粒子が好ましい。
なお、本明細書においてBET径とは、BET法により測定される比表面積(BET値)から、BET径(nm)=6000/(真密度(g/cm3)×BET値(m2/g))の式により算出される粒子径をいう。例えばシリカ粒子の場合、BET径(nm)=2727/BET値(m2/g)によりBET径を算出することができる。比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
予備研磨スラリーは、典型的には水を含む。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。使用する水は、予備研磨スラリーに含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。
予備研磨スラリーは、好ましくは塩基性化合物を含有する。本明細書において塩基性化合物とは、水に溶解して水溶液のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物としては、窒素を含む有機または無機の塩基性化合物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、各種の炭酸塩や炭酸水素塩等を用いることができる。窒素を含む塩基性化合物の例としては、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物、アンモニア、アミン(好ましくは水溶性アミン)等が挙げられる。このような塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
予備研磨スラリーには、任意成分として、キレート剤を含有させることができる。キレート剤は、予備研磨スラリー中に含まれ得る金属不純物と錯イオンを形成してこれを捕捉することにより、金属不純物による研磨対象物の汚染を抑制する働きをする。キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸およびα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましい。なかでも好ましいものとして、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミン五酢酸が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。キレート剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
予備研磨スラリーは、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、水溶性高分子、界面活性剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨スラリー(典型的には、シリコン基板のポリシング工程に用いられる研磨スラリー)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
予備研磨スラリーのpHは、典型的には8.0以上であり、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.0以上、さらに好ましくは9.5以上、例えば10.0以上である。予備研磨スラリーのpHが高くなると、研磨レートや隆起解消性が向上する傾向にある。一方、砥粒(例えばシリカ粒子)の溶解を防ぎ、該砥粒による機械的な研磨作用の低下を抑制する観点から、予備研磨スラリーのpHは、12.0以下であることが適当であり、11.8以下であることが好ましく、11.5以下であることがより好ましく、11.0以下であることがさらに好ましい。後述する仕上げ研磨スラリーにおいても同様のpHを好ましく採用し得る。
上記複数の予備研磨段階のうち最後に行われる予備研磨段階、すなわち最終予備研磨段階は、研磨対象物に最終予備研磨スラリーPFを供給して行われる。ここに開示される研磨方法の一態様では、上記最終予備研磨段階を、当該最終予備研磨段階において研磨対象物に供給される全最終予備研磨スラリーPF中の総Cu(銅)重量および総Ni(ニッケル)重量の少なくとも一方が1μg以下となるように実施する。これにより、その後の仕上げ研磨工程を経て得られるシリコン基板において、PIDを効果的に低減することができる。以下、全最終予備研磨スラリーPF中の総Cu重量を「WFCu」、全最終予備研磨スラリーPF中のNi総重量を「WFNi」と表記することがある。
すなわち、シリコン基板に供給される研磨スラリーにCuやNiが含まれていると、これらが接触した箇所でシリコン基板の表面が局所的に酸化されてSiO2が生じ得る。ここで、一般に予備研磨工程では、仕上げ研磨スラリーに比べて機械的な研磨作用(シリコン基板の表面を機械的に除去する作用)が強く、研磨レートの高い予備研磨スラリーが用いられる。このため、予備研磨スラリーによる研磨中は、該予備研磨スラリー中のCuやNiに起因してシリコン基板の表面で局所的にSiO2が生成する事象と、上記予備研磨スラリーの研磨力によって上記局所的なSiO2を含めてシリコン基板の表面が除去される事象とが平行して進行すると考えられる。一方、仕上げ研磨工程では、ヘイズの低減やスクラッチの発生防止の観点から、機械的な研磨作用の弱い仕上げ研磨スラリーが用いられる。しかも、通常、シリコン基板を研磨するための研磨スラリーは、シリコン(典型的にはSi単結晶)の研磨に適するように調製されており、SiO2に対する研磨レートはSiに対する研磨レートに比べて著しく低い。このため、予備研磨スラリーによる研磨の終了時(すなわち、最終予備研磨段階の終了時)においてシリコン基板の表面に局所的なSiO2が存在すると、その箇所は仕上げ研磨工程において周囲のSiとの関係で相対的に表面除去量が少なくなる結果、最終的にPID(研磨プロセスに起因する凸欠陥)として検出されるものと考えられる。
なお、研磨スラリー中の金属不純物によるシリコンウェーハの汚染を防止するために、該研磨スラリーにキレート剤を含有させることが知られている。しかし、金属汚染防止のために単にキレート剤を添加する従来技術によっては、上記局所的なSiO2の生成およびこれに由来するPIDを効果的に抑制することはできない。
ここに開示される技術によると、最終予備研磨段階において研磨対象物に供給されるCuおよび/またはNiの量を制限することにより、最終予備研磨段階の終了時においてシリコン基板の表面に存在する局所的なSiO2が低減され、これにより上記局所的SiO2に由来する凸欠陥の発生が防止されて、仕上げ研磨後におけるPIDが効果的に抑制されるものと考えられる。最終予備研磨スラリーPFのCuおよび/またはNiの濃度、あるいは砥粒に対する重量比を規制することによりPIDが低減される理由も、同様の機構によるものと考えられる。また、上記予備研磨工程は複数の予備研磨段階を含むので、最終予備研磨段階より前に行われる予備研磨段階、すなわち非最終研磨段階の設計自由度(例えば、使用する研磨スラリーの組成や研磨時間の設定等の自由度)が高い。したがって、生産性や経済性への影響を抑えつつPIDの低減を図ることができる。
ここに開示される研磨方法は、上記最終予備研磨段階よりも前に、CuおよびNiの少なくとも一方の濃度が上記最終予備研磨スラリーPFにおける同元素の濃度よりも高い非最終予備研磨スラリーPNをシリコン基板に供給して行われる非最終予備研磨段階を含み得る。このように、非最終予備研磨スラリーPNで研磨した後に、CuおよびNiの少なくとも一方の濃度が上記非最終予備研磨スラリーPNにおける同元素の濃度よりも低い最終予備研磨スラリーPFで研磨することにより、最終予備研磨段階の終了時においてシリコン基板の表面に存在し得る局所的なSiO2の数を効果的に低減することができる。かかるシリコン基板に対してさらに仕上げ研磨工程を実施することにより、PIDが低減されたシリコン基板を効率よく得ることができる。
他の一態様において、上記複数の予備研磨段階は、次第に砥粒濃度の低い予備研磨スラリーが研磨対象物に供給されるように行うことができる。このことによって、予備研磨工程における表面粗さRaの低減や隆起の解消が効率よく行われ得る。
さらに他の一態様において、上記複数の予備研磨段階は、次第に研磨時間が短くなるように行うことができる。このことによって、予備研磨工程における表面粗さRaの低減や隆起の解消が効率よく行われ得る。
ここに開示される研磨方法は、上述した最終予備研磨段階の後、砥粒を含まないリンス液で研磨対象物をリンスする段階を含み得る。上記リンス液としては、水性溶媒(例えば水)を用いることができる。また、予備研磨スラリーまたは後述する仕上げ研磨スラリーに使用し得る成分のうち砥粒以外の任意の成分を水性溶媒中に含むリンス液を用いてもよい。そのようなリンス液の一好適例として、水性溶媒(例えば水)中に塩基性化合物(例えばアンモニア)および水溶性高分子(例えば、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体)を含むリンス液が挙げられる。上記リンスは、上記最終予備研磨段階と同一定盤上において行うことができる。
予備研磨工程を終えた研磨対象物は、さらに仕上げ研磨工程に供される。仕上げ研磨工程は、通常、予備研磨工程とは別の研磨装置を用いて、研磨対象物に仕上げ研磨スラリーを供給して行われる。仕上げ研磨工程は、同一の定盤上または異なる定盤上で行われる複数の仕上げ研磨段階を含んでいてもよい。
仕上げ研磨スラリー用の砥粒としては、予備研磨スラリーと同様、シリカ粒子を好ましく使用し得る。シリカ粒子としてはコロイダルシリカが特に好ましく、例えば、イオン交換法により、水ガラス(珪酸Na)を原料として作製されたコロイダルシリカを好ましく採用することができる。コロイダルシリカは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。シリカ粒子の好ましい真比重、砥粒の外形および平均アスペクト比については、予備研磨スラリーの砥粒と同様であるので、重複する記載は省略する。
仕上げ研磨スラリーは、好ましくは塩基性化合物を含有する。塩基性化合物としては、予備研磨スラリーに使用し得る塩基性化合物として例示したものの1種または2種以上を使用し得る。なかでもアンモニアが好ましい。
好ましい一態様において、仕上げ研磨スラリーは水溶性高分子を含み得る。水溶性高分子の種類は特に制限されず、研磨スラリーの分野において公知の水溶性高分子のなかから適宜選択することができる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上(例えば5以上)であることがさらに好ましい。
好ましい一態様において、仕上げ研磨スラリーは、界面活性剤(典型的には、Mwが分子量1×104未満の水溶性有機化合物)を含み得る。界面活性剤は、研磨スラリーまたはその濃縮液の分散安定性向上に寄与し得る。界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性のものを好ましく採用し得る。低起泡性やpH調整の容易性の観点から、ノニオン性の界面活性剤がより好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン重合体;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン付加物;複数種のオキシアルキレンの共重合体(例えば、ジブロック型共重合体、トリブロック型共重合体、ランダム型共重合体、交互共重合体);等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
仕上げ研磨スラリーは、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨スラリー(典型的には、シリコン基板のポリシング工程に用いられる研磨スラリー)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。キレート剤としては、予備研磨スラリーに用いられ得るキレート剤と同様のものを使用し得る。ここに開示される技術は、キレート剤を実質的に含まない仕上げ研磨スラリーを用いる態様で実施することができる。
予備研磨工程および仕上げ研磨工程における研磨は、例えば以下の操作を含む態様で行うことができる。
すなわち、各研磨工程または各研磨段階で用いられる研磨スラリーを用意する。次いで、その研磨スラリー(ワーキングスラリー)を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、研磨対象物を研磨装置にセットし、該研磨装置の定盤(研磨定盤)に固定された研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨スラリーを供給する。典型的には、上記研磨スラリーを連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。
一態様において、研磨対象面の総面積約0.71m2当たりの研磨スラリーの供給レートとして、上記供給レートを好ましく適用することができる。上記研磨対象面の総面積約0.71m2当たりの研磨スラリーの供給レートは、実際に研磨する研磨対象面の総面積に応じて、該総面積当たりの供給レートが概ね同程度に維持されるように適宜増減することができる。
また、上述したWFCu、WFNiおよびWFCu+WFNiの値は、例えば、最終予備研磨段階における研磨対象面の総面積が凡そ0.71m2程度(例えば0.2m2以上3.0m2以下、好ましくは0.3m2以上1.0m2以下、より好ましくは0.5m2以上0.9m2以下)である場合に好ましく適用することができる。上記WFCu、WFNiおよびWFCu+WFNiの値は、実際に研磨する研磨対象面の総面積に応じて、該総面積当たりの値が概ね同程度に維持されるように適宜増減することができる。
この明細書によると、ここに開示される予備研磨工程に好ましく使用され得る研磨用組成物セットが提供される。その研磨用組成物セットは、互いに分けて保管される非最終予備研磨用組成物QNと最終予備研磨用組成物QFとを少なくとも含む。非最終予備研磨用組成物QNは、非最終予備研磨段階で使用される非最終予備研磨スラリーPNまたはその濃縮液であり得る。最終予備研磨用組成物QFは、最終予備研磨段階で使用される最終予備研磨スラリーPFまたはその濃縮液であり得る。ここに開示される予備研磨工程および該予備研磨工程を含む研磨方法は、かかる研磨用組成物セットを用いて好適に実施することができる。したがって、上記研磨用組成物セットは、ここに開示される予備研磨工程、該予備研磨工程を含む研磨方法、上記予備研磨工程を含む研磨物製造方法、上記研磨方法を含む研磨物製造方法、等に好ましく利用され得る。上記研磨用組成物セットは、仕上げ研磨用組成物をさらに含んでいてもよい。この仕上げ研磨用組成物は、上記研磨用組成物セットにおいて、非最終予備研磨用組成物QNと最終予備研磨用組成物QFとは分けて保管される。上記仕上げ研磨用組成物は、仕上げ研磨工程で使用される仕上げ研磨スラリーまたはその濃縮液であり得る。研磨用組成物セットを構成する各研磨用組成物は、それぞれ、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。多剤型の研磨用組成物は、例えば、各研磨用組成物の構成成分のうち少なくとも砥粒を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとに分けて保管され、上記パートAと上記パートBとを混合して必要に応じて適切なタイミングで希釈することにより研磨用組成物または研磨スラリーが調製されるように構成され得る。
(スラリーA)
コロイダルシリカ分散液A、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、炭酸カリウム(K2CO3)およびイオン交換水を混合することにより、コロイダルシリカA(BET径50nm)を1.2重量%、TMAHを0.05重量%、K2CO3を0.03重量%の濃度で含むスラリーAを調製した。上記スラリーAのCu濃度は0.17ppbであり、Ni濃度は0.027ppbであり、したがってCuおよびNiの合計濃度は0.19ppbであった。スラリーAに含まれるNiおよびCuの合計重量は、砥粒(コロイダルシリカA)10g当たり0.16μgであった。
なお、コロイダルシリカAのBET径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて測定した(コロイダルシリカB〜Dにおいて同じ。)。また、スラリーAのCu濃度およびNi濃度は、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)による分析結果から算出した(スラリーB〜Dおよびリンス液において同じ。)。
コロイダルシリカ分散液Aに代えてコロイダルシリカ分散液Bを用いた他はスラリーAの調製と同様にして、コロイダルシリカB(BET径40nm)、TMAHおよびK2CO3を含むスラリーBを調製した。このスラリーBのCu濃度は0.02ppb、Ni濃度は0.02ppb、CuおよびNiの合計濃度は0.04ppbであった。NiおよびCuの合計重量は、砥粒(コロイダルシリカB)10g当たり0.033μgであった。
コロイダルシリカ分散液Aに代えてコロイダルシリカ分散液Cを用いた他はスラリーAの調製と同様にして、コロイダルシリカC(BET径35nm)、TMAHおよびK2CO3を含むスラリーCを調製した。このスラリーCのCu濃度は0.005ppb、Ni濃度は0.005ppb、CuおよびNiの合計濃度は0.01ppbであった。NiおよびCuの合計重量は、砥粒(コロイダルシリカC)10g当たり0.008μgであった。
コロイダルシリカ分散液Aに代えてコロイダルシリカ分散液Dを用いた他はスラリーAの調製と同様にして、コロイダルシリカD(BET径10nm)、TMAHおよびK2CO3を含むスラリーDを調製した。このスラリーDのCu濃度は0.5ppb、Ni濃度は0.5ppb、CuおよびNiの合計濃度は1.0ppbであった。NiおよびCuの合計重量は、砥粒(コロイダルシリカD)10g当たり0.83μgであった。
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、アンモニア水およびイオン交換水を混合することにより、HEC濃度0.012重量%、アンモニア濃度0.03重量%のリンス液を調製した。HECとしては、GPC(水系、ポリエチレンオキサイド換算)に基づくMwが50×104であるものを使用した。このリンス液のCu濃度は0.005ppb、Ni濃度は0.005ppb、CuおよびNiの合計濃度は0.01ppbであった。
なお、上記スラリーA〜Dには、それぞれ、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)約0.003重量%を含有させた。また、スラリーA〜Dは、いずれもpHが10以上11以下の範囲内となるように調製した。
<例1>
(予備研磨工程)
スラリーA、スラリーBおよびスラリーCをそのまま研磨液(ワーキングスラリー)として使用し、表1に示す予備研磨段階からなる予備研磨工程を実施した。本例および以下の例2〜7において、研磨対象物(試験片)としては、ラッピングおよびエッチングを終えた直径300mmの市販シリコン単結晶ウェーハ(厚み:785μm、伝導型:P型、結晶方位:<100>、抵抗率:1Ω・cm以上100Ω・cm未満)を使用した。上記ウェーハには、SEMI M1(T7)規格に基づく裏面ハードレーザーマークが刻印されている。上記ウェーハについて、Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))は約50nmであった。
研磨装置:スピードファム社製の両面研磨装置、型番「DSM20B−5P−4D」
研磨荷重:150g/cm2
上定盤相対回転数:20rpm
下定盤相対回転数:−20rpm
研磨パッド:ニッタハース社製、商品名「MH S−15A」
供給レート:4リットル/分(かけ流し使用)
研磨環境の保持温度:23℃
研磨時間:表1に示すとおり。
予備研磨後の試験片を研磨装置から取り外し、NH4OH(29%):H2O2(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、予備研磨後の試験片を第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て、第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
洗浄後の試験片を以下の片面研磨装置にセットし、仕上げ研磨スラリーを用いて以下の条件で仕上げ研磨工程を行った。仕上げ研磨スラリーとしては、株式会社フジミインコーポレーテッド製の製品名「GLANZOX 3108」をイオン交換水で20倍に希釈したものを使用した。この仕上げ研磨スラリーは、シリカ粒子の濃度が0.45重量%であり、Cu濃度およびNi濃度はいずれも0.005ppb以下であった。
研磨装置:岡本工作機械製作所製の片面枚葉研磨機、型番「PNX−332B」
研磨荷重:150g/cm2
定盤回転数:30rpm
ヘッド回転数:30rpm
研磨パッド:フジボウ愛媛社製の研磨パッド、商品名「POLYPAS27NX」
供給レート:1リットル/分(かけ流し使用)
研磨環境の保持温度:20℃
研磨時間:5分
予備研磨工程の内容(予備研磨段階の構成)を表1に示すように変更した他は例1と同様にして、例2〜7に係る仕上げ研磨後シリコンウェーハを得た。
<PID数評価>
例1〜7により得られた仕上げ研磨後シリコンウェーハのPID数を以下のようにして評価した。すなわち、レーザーテック社製のウェーハ欠陥検査装置、商品名「MAGICS M5350」を用いて上記ウェーハの全面(ただし外周5mmの範囲は除く。)を検査し、線状突起として検出された欠陥の数をPID数としてカウントした。得られたPID数を、例6のPID数を100%とする相対値に換算し、以下の4段階で評価した。結果を表1の「PID」の欄に示した。
A+:35%未満
A:35%以上70%未満
B:70%以上100%未満
C:100%以上
例1〜7における予備研磨後シリコンウェーハ(予備研磨工程およびその後の洗浄を終えた試験片)につき、Schmitt Measurement Systems Inc.製の型番「TMS−3000−WRC」を用いて表面粗さRa(算術平均表面粗さ)を測定した。得られた測定値を、例6の表面粗さRaを100%とする相対値に換算して以下の3段階で評価し、その結果を表1の「Ra」の欄に示した。
A:90%未満
B:90%以上100%以下
C:100%超
例1〜7における予備研磨後シリコンウェーハについて、ケーエルエー・テンコール社製の「HRP340」を使用してハードレーザーマーク(HLM)を含む1mm×5mmの視野の表面粗さRtを測定することにより、HLM解消性を評価した。ここで、上記表面粗さRtは、粗さ曲線の最大断面高さを示すパラメータであって、一定視野内(ここでは、HLMを含む1mm×5mmの視野内)でのウェーハ表面の高さの最も高い部分と最も低い部分の高さの差分を示す。得られた測定値を以下の3段階で評価し、その結果を表1の「HLM]の欄に示した。
A:50nm以下
B:50nmを超えて70nm以下
C:70nm超
Claims (12)
- シリコン基板を研磨する方法であって、
予備研磨工程と、仕上げ研磨工程とを含み、
前記予備研磨工程は、同一定盤上で行われる複数の予備研磨段階を含み、
前記複数の予備研磨段階は、前記シリコン基板に最終予備研磨スラリーPFを供給して行われる最終予備研磨段階を含み、
前記最終予備研磨段階において前記シリコン基板に供給される全最終予備研磨スラリーPF中の総Cu重量および総Ni重量の少なくとも一方が1μg以下である、研磨方法。 - 前記最終予備研磨段階において前記シリコン基板に供給される全最終予備研磨スラリーPF中の総Cu重量および総Ni重量の合計が2μg以下である、請求項1に記載の研磨方法。
- シリコン基板を研磨する方法であって、
予備研磨工程と、仕上げ研磨工程とを含み、
前記予備研磨工程は、同一定盤上で行われる複数の予備研磨段階を含み、
前記複数の予備研磨段階は:
前記シリコン基板に最終予備研磨スラリーPFを供給して行われる最終予備研磨段階と、
前記最終予備研磨段階よりも前に、CuおよびNiの少なくとも一方の濃度が前記最終予備研磨スラリーPFにおける同元素の濃度よりも高い非最終予備研磨スラリーPNを前記シリコン基板に供給して行われる非最終予備研磨段階と
を含む、研磨方法。 - 前記非最終予備研磨スラリーPNは、該非最終予備研磨スラリーPNに含まれる砥粒10g当たりのCu重量およびNi重量の少なくとも一方が、前記最終予備研磨スラリーPFに含まれる砥粒10g当たりの同元素の重量よりも多い、請求項3に記載の研磨方法。
- 前記最終予備研磨スラリーPFは、該最終予備研磨スラリーPFに含まれる砥粒10g当たりのCu重量およびNi重量の少なくとも一方が0.02μg以下である、請求項3または4に記載の研磨方法。
- 前記最終予備研磨スラリーPFは、該最終予備研磨スラリーPFに含まれる砥粒10g当たりのCuおよびNiの合計重量が0.1μg以下である、請求項3から5のいずれか一項に記載の研磨方法。
- 前記非最終予備研磨スラリーPNに含まれる砥粒10g当たりのCuおよびNiの合計重量が、前記最終予備研磨スラリーPFに含まれる砥粒10g当たりのCuおよびNiの合計重量よりも大きい、請求項3から6のいずれか一項に記載の研磨方法。
- 前記予備研磨工程では前記シリコン基板の両面を同時に研磨し、前記仕上げ研磨工程では前記シリコン基板の片面を研磨する、請求項3から7のいずれか一項に記載の研磨方法。
- ハードレーザーマークの付されたシリコン基板に対して前記予備研磨工程を行う、請求項3から8のいずれか一項に記載の研磨方法。
- 請求項3から9のいずれか一項に記載の研磨方法に用いられる研磨用組成物セットであって、
前記非最終予備研磨スラリーPNまたはその濃縮液である非最終予備研磨用組成物QNと、
前記最終予備研磨スラリーPFまたはその濃縮液である最終予備研磨用組成物QFと
を含み、
前記非最終予備研磨用組成物QNと前記最終予備研磨用組成物QFとは互いに分けて保管される、研磨用組成物セット。 - 請求項3から9のいずれか一項に記載の研磨方法において最終予備研磨スラリーP F として用いられる研磨用組成物であって、該研磨用組成物に含まれる砥粒10g当たりのCu重量およびNi重量の少なくとも一方が0.02μg以下である、研磨用組成物。
- 請求項3から9のいずれか一項に記載の研磨方法において最終予備研磨スラリーP F として用いられる研磨用組成物であって、該研磨用組成物に含まれる砥粒10g当たりのCuおよびNiの合計重量が0.1μg以下である、研磨用組成物。
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