JP6319643B2 - セラミックス−銅接合体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET等の電力制御素子として知られているパワー半導体スイッチング素子は、これらの複数個を絶縁容器内に密封して構成され、パワーモジュールとして使用される。このようなパワーモジュールに使用される回路基板又は放熱基板などの基板は、アルミナ、窒化アルミなどのセラミックス基板の表面に、銅板などの金属板を接合した構成のものが多用されている。
また、特許文献2には、Siチップ搭載時の熱処理や実稼働時の熱履歴が課せられた際の接合剥離やセラミックス自身のクラック発生を防止した窒化珪素回路基板が開示されている。この窒化珪素回路基板は、窒化珪素基板の一方の面に金属回路板、もう一方の面に金属放熱板を接合してなり、金属回路板がCuを主成分とする金属からなる場合には、接合されている金属回路板及び金属放熱板を除去したときの窒化珪素基板の強度が550MPa以上である回路基板であり、実施例ではろう材としてAgCu共晶組成+8wt%Tiの活性ペーストが採用されている。
また、特許文献2の窒化珪素回路基板によれば、接合条件によっては、接合後強度が異なり、窒化珪素基板と金属回路板または金属放熱板との接合によってできる反応層はろう材に含まれる活性金属であるTiと窒化珪素との反応による窒化物・珪化物混合相より形成される。特に珪化物は脆く、当然接合温度が高い場合あるいは接合時間が長い場合にはその生成量が多くなることが開示されている。
このような活性金属を含むろう材接合層により接合した窒化珪素回路基板は、ろう材接合層を脆化させるため、接合後の冷却過程やパワー半導体素子による加熱・冷却サイクルの付加により繰り返し熱応力が発生すると、ろう材接合層においてクラックが生じることもあるという課題を有していた。
[窒化物セラミックスの作製]
まず、本発明に好適に用いることのできる窒化物セラミックス4の製造方法について説明する。窒化物セラミックスの構成原料である窒化物原料粉末および焼結助剤に溶媒および分散剤を添加しボールミルで混合、粉砕する。ここで、混合、粉砕した原料に、バインダー、可塑剤を添加、混練し、粘度が所定の値になるように調整しスラリーとする。スラリーをドクターブレード法、押出し法等のシート成形手段により所定板厚でシート成形する。このシート成形体を所定形状に切断後、脱脂し、焼結炉内で1800〜2000℃の窒素雰囲気で焼結して窒化物セラミックス(以下、セラミックス基板とも記す)4を得る。本発明のセラミックスー銅接合体に用いられるセラミックスは、回路基板または放熱基板として使用されることから、強度、放熱性を考慮して、その厚さは、0.1〜1mmの板状形状であることが好ましい。セラミックスの厚さが0.1mm未満の場合は、回路基板または放熱基板とした場合に破損することもあるからであり、1mmを超えると放熱性が低下することもあるからである。同様の理由から、より好ましい厚さは0.2〜0.7mmであり、更に好ましくは、0.3〜0.5mmである。
セラミックス基板4とほぼ同じ長方形状の二枚の無酸素銅板を用意する。一方は回路側金属板3となる無酸素銅板であり、他方は放熱側金属板5となる無酸素銅板である。無酸素銅板の回路基板または放熱基板として使用されることから、厚さは、0.1mm〜3mmが好ましい。無酸素銅板の厚さが0.1mm未満の場合は、セラミックスー銅接合体が変形することもあるからであり、3mmを超えると、セラミックスとの接合界面の応力が高くなって、セラミックスが破損することもあるからである。より好ましい無酸素銅板の厚さは0.2〜2mmであり、更に好ましくは0.2〜0.6mmである。
これらの無酸素銅板の表面を高温の空気中で酸化処理する。酸化処理する際の空気の温度は100〜300℃であり、好ましくは100〜200℃である。100℃未満では酸化の効果が不十分であり、300℃を超えると酸化処理後に、表面の酸化膜が不均一に剥離し易くなり好ましくない。
セラミックス基板4の両面に活性金属であるTiが添加された合金からなる活性金属ろう材層10,11を印刷形成する。ろう材層を印刷する厚さは、接合後のろう材層の厚さが2〜50μmとなる厚さとすることが好ましい。接合後のろう材層の厚さが2μm未満であると、セラミックス基板または無酸素銅板の表面にうねりや反りにより接合できないこともあるからであり、接合後のろう材層の厚さが50μmを超えると、接合体として十分な強度が得られないこともあるからである。より好ましい接合後のろう材層の厚さは、5〜40μmであり、更に好ましくは10〜20μmである。
窒化物セラミックスと無酸素銅とを接合する活性金属ろう材の組成はAgおよびCuを主成分とすることが好ましく、特にAg−Cu−In−Ti系合金粉末からなるろう材が好ましく、活性金属であるチタンの含有量は従来と同等の0.5〜9重量%とすることができ、好ましくは0.5〜5重量%、更に好ましくは1〜3重量%とすることができる。少なすぎると十分な接合強度が得られず、多量に添加すると、ろう材そのものが脆化する。特に好ましいチタンの量は1〜3重量%である。ろう材の酸素含有量は金属回路/ろう材相/窒化珪素基板間の安定した接合強度が得やすいことから5〜1000ppmとすることが好ましい。活性金属ろう材層に接して、表面を酸化処理した無酸素銅板を載置し加圧・加熱してセラミックス基板と接合する。接合条件は、加熱温度700〜850℃、無酸素銅板とセラミックス基板の押付け圧力1400〜15200Paとすることが好ましい。冷却後、両方の面の無酸素銅板上にレジストパターンを形成後に、塩化第二鉄溶液によってエッチング処理して回路側金属板3と放熱側金属板5を形成する。ろう材層のうち露出した部分は過酸化水素とフッ化アンモニウムとの混合溶液によりエッチング除去する。さらに回路側金属板及び放熱側金属板にNi−Pメッキを施し回路基板8を作製する。
作製した回路基板について、低温側−40℃、高温側+110℃、各温度での保持時間を15分間としたヒートサイクル試験を2000サイクルまで行い、2000サイクル後の回路側ろう材層10に発生したボイドを超音波探査映像装置(日立建機ファインテック(株)製、mi−scope.exla)で観察し、ボイド率(ボイド率(%)=100×(ボイドおよびクラックの面積/回路側ろう材層10の面積))を算出する。さらに、冷熱サイクル試験前後のボイド率の差(ボイド率の差(%)=冷熱サイクル試験後のボイド率(%)−冷熱サイクル試験前のボイド率(%))を求め、前記ろう材層におけるクラックの有無を判定した。ここではボイド率の差が2%以上でクラックが生じたと判定した。ろう材層は冷熱サイクル試験によりセラミックス基板4と回路側金属板3および放熱側金属板5との熱膨張率の差から発生する歪を繰り返し受ける。そのため回路側ろう材層10と放熱側ろう材層11にはクラックが発生、成長してボイドとなる。ボイドがろう材層に発生するとセラミックス基板4と回路側金属板3および放熱側金属板5との接合強度を低下させる。
窒化物セラミックスとろう材層との界面のTi濃度、ろう材層と無酸素銅との界面のTi濃度およびろう材層の中心部のTi濃度は次のようにして測定することができる。即ち、冷熱サイクル試験の後、回路基板8を切断し、切断面において回路側金属板3と回路側ろう材層10との界面および回路側ろう材層10とセラミックス基板4との界面を含む長さを評価長さとし、加速電圧:15kV、ビーム径:0.1μmの条件でAg,Cu,Ti,Si,O,N成分についてEPMA(Electron Probe MicroAnalyser)によるライン分析を行い各成分の相対強度を求める。この分析を前記切断面の任意の10箇所において行い、回路側ろう材層10とセラミックス基板4との界面にTi濃度の第1ピークを有し、且つ回路側金属板3と回路側ろう材層10との界面にTi濃度の第2ピークを有する箇所が1箇所でも確認されれば、それは本発明のセラミックス−銅接合体とする。ここで、Ti濃度のピークとは、接合体の切断面のEPMAによるライン分析で得られたTiの相対強度(%)−相対距離(μm)の関係を表す曲線において、ろう材層の中心部のTi相対強度に対して5倍以上のTi相対強度を有し且つ半価幅が5μm以下のピークを意味するものとする。ろう材層の中心部とは、無酸素銅とろう材層との界面から前記ろう材層と窒化物セラミックスとの界面までの距離をろう材層の厚さとしたとき、ろう材層の厚さを二等分する位置である。
原料粉末はSi3N4:94重量%、焼結助剤としてMgO:3重量%およびY2O3:3重量%、焼成温度1800℃の条件で前述の製造手順にしたがって寸法50×40×0.32mmのセラミックス基板を作製した。セラミックス基板に接合する寸法50×40×0.5mmの回路側金属板および寸法50×40×0.4mm放熱側金属板は何れも酸素濃度2ppmの無酸素銅板を用い、この無酸素銅板を予め100℃×5hr,200℃×4hr,300℃×4hrの大気中で表面を酸化処理したものを用いた。表1に酸化処理後の無酸素銅板の表面をEPMA分析した結果を示す。使用機器に島津製EPMA1610を使用して定量分析を行った。分析条件は加速電圧15KV、ビーム電流100nA、ビーム径100μm、時間0.0854sec/pointとした。
Ti含有量が異なるろう材を用いたことを除いて実施例1と同様にして回路基板を作製した。作製した回路基板のボイド率を測定し、次いで2000サイクルの冷熱サイクル試験を実施し、再び回路基板のボイド率を測定した。その後、ろう材接合後のろう材層におけるEPMAによるライン分析を行った。第1界面ではTiの相対強度の第1ピークはろう材層の中心部のTi相対強度に対して17倍のTi相対強度を有し且つ半価幅が4μm、第2界面ではTiの相対強度の第2ピークはろう材層の中心部のTi相対強度に対して32倍のTi相対強度を有し且つ半価幅が2μmであることが認められた。冷熱サイクル試験前後のボイド率の差は小さく、ろう材層にクラックは生じていなかった。実施例7,8の結果を表3に示す。何れも初期のボイド率は3%以下、冷熱サイクル試験前後のボイド率の差は2%以下の好ましい結果が得られた。
無酸素銅板の表面の酸化処理をしなかったことを除いて実施例1と同様にして回路基板を作製した。作製した回路基板のボイド率を測定し、次いで2000サイクルの冷熱サイクル試験を実施し、再び回路基板のボイド率を測定した。その後、ろう材接合後のろう材層におけるEPMAによるライン分析を行った。結果を図4に示す。第2界面ではTiの相対強度の第2ピークはろう材層の中心部のTi相対強度に対して40倍のTi相対強度を有し且つ半価幅が3μmであったが、第1界面ではTiの相対強度の第1ピークは形成されないことが認められた。比較例1の結果を表3に示す。初期のボイド率は3%以下であったが、冷熱サイクル試験前後のボイド率の差は大きく、ろう材層にクラックが生じた。
2:第一のはんだ層
3:回路側金属板(銅)
4:窒化物セラミックス(セラミックス基板)
5:放熱側金属板(銅)
6:第二のはんだ層
7:放熱ベース板
8:回路基板(窒化珪素−銅接合体)
9:半導体モジュール
10:回路側ろう材層(活性金属ろう材層)
11:放熱側ろう材層(活性金属ろう材層)
Claims (8)
- 窒化珪素セラミックス基板と無酸素銅板とを、Ag、Cu、Ti及びInを含み、酸素含有量が0.0005〜0.1重量%であるろう材層を介して接合したセラミックス−銅接合体であり、
該接合体の接合界面を含む断面において前記無酸素銅板と前記ろう材層との第1界面にTi濃度の第1ピークを有し、前記ろう材層と前記窒化珪素セラミックス基板との第2界面にTi濃度の第2ピークを有することを特徴とするセラミックス−銅接合体。 - 前記ろう材層のTi含有量が0.5〜5重量%である請求項1に記載のセラミックス−銅接合体。
- 前記第2界面におけるTiの相対強度の第2ピーク(SPTi2)は、前記第1界面におけるTiの相対強度の第1ピーク(SPTi1)の5倍〜20倍である請求項1又は2に記載のセラミックス−銅接合体。
- 前記第1界面におけるTiの相対強度の第1ピーク(SPTi1)はろう材層の中心部のTi相対強度(STiC)に対して7.2倍〜18倍のTi相対強度を有し、
前記第2界面におけるTiの相対強度の第2ピーク(SPTi2)はろう材層の中心部のTi相対強度(STiC)に対して16倍〜33倍のTi相対強度を有する請求項1又は2に記載のセラミックス−銅接合体。 - 前記ろう材層は、厚さが2〜50μmであり、冷熱サイクル試験前後のボイド率の差が2%以下である請求項1乃至4のいずれかに記載のセラミックス−銅接合体。
- 無酸素銅板の表面を100〜300℃の温度で酸化する酸化工程と、
窒化珪素セラミックス基板と表面を酸化した無酸素銅板とを、加熱温度700〜850℃、無酸素銅板を窒化珪素セラミックス基板に押し付ける圧力が1400〜15200Paの条件で、Ag、Cu、Ti及びInを含むろう材を介して接合する接合工程を備えることを特徴とするセラミックス−銅接合体の製造方法。 - 前記ろう材のTi含有量が0.5〜5重量%であり、
原料粉末として、Si 3 N 4 と、焼結助剤としてMgO及びY 2 O 3 とを用いて、窒化珪素セラミックス基板を製造する焼成工程を備える請求項6に記載のセラミックス−銅接合体の製造方法。 - 前記接合工程で前記ろう材よりろう材層を形成して、前記ろう材層は冷熱サイクル試験前後のボイド率の差が2%以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載のセラミックス−銅接合体の製造方法。
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