JP2009088330A - 半導体モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】繰り返し冷熱サイクルを経てもなお回路側金属板と半導体素子とを接合する第一のはんだ層と放熱側金属板と放熱ベース板とを接合する第二のはんだ層に高い接合信頼性を有する半導体モジュールを提供することである。
【解決手段】セラミックス基板4の一方の面に回路側金属板3を接合し他方の面に放熱側金属板5を接合し、前記回路側金属板3に第一のはんだ層2を介して半導体素子1を接合し前記放熱側金属板5に第二のはんだ層6を介して放熱ベース板7を接合してなる半導体モジュール9において、その回路側金属板厚さt1とセラミックス基板厚さt3の比t3/t1が0.6以上、放熱側金属板厚さt2とセラミックス基板厚さt3の比t3/t2が2以下、回路基板の対角線長さLと放熱側金属板厚さt2の比が390以下である半導体モジュール。
【選択図】図1
【解決手段】セラミックス基板4の一方の面に回路側金属板3を接合し他方の面に放熱側金属板5を接合し、前記回路側金属板3に第一のはんだ層2を介して半導体素子1を接合し前記放熱側金属板5に第二のはんだ層6を介して放熱ベース板7を接合してなる半導体モジュール9において、その回路側金属板厚さt1とセラミックス基板厚さt3の比t3/t1が0.6以上、放熱側金属板厚さt2とセラミックス基板厚さt3の比t3/t2が2以下、回路基板の対角線長さLと放熱側金属板厚さt2の比が390以下である半導体モジュール。
【選択図】図1
Description
本発明は、主に大電力で動作する半導体素子を搭載する半導体モジュールに関する。
窒化珪素基板は、高温強度特性および耐摩耗性等の機械的特性に加え、耐熱性、低熱膨張性、耐熱衝撃性、および金属に対する耐食性に優れているので、従来からガスタービン用部材、エンジン用部材、製鋼用機械部材、あるいは溶融金属の耐溶部材等の各種構造用部材に用いられている。また、高い絶縁性を利用して電気絶縁材料として使用されている。
近年、高周波トランジスタ、パワーIC等の発熱量の大きい半導体素子の発展に伴い、電気絶縁性に加えて良好な放熱特性を得るために高い熱伝導率を有するセラミックス基板の需要が増加している。このようなセラミックス基板として、窒化アルミニウム基板が用いられている。この窒化アルミニウム基板は、熱伝導性に優れているが、機械的強度や破壊靭性等がやや低く、基板ユニットの組立て工程で、強い締め付けを行うと割れを生じる場合があった。また、Si半導体素子を窒化アルミニウム基板に実装した回路基板では、Siと窒化アルミニウム基板との熱膨張差が大きいため、熱サイクルにより窒化アルミニウム基板にクラックや割れが発生する恐れもあり、実装信頼性を向上させるために、窒化アルミニウム基板より熱伝導率は劣るものの、熱膨張率がSiに近く、かつ機械的強度、破壊靭性および耐熱疲労特性に優れる高熱伝導窒化珪素質焼結体からなる基板が注目され、種々の提案が行われている。
電動車両用インバータとして高電圧、大電流動作が可能なパワー半導体モジュール(例えばIGBTモジュール)が用いられている。こうした半導体モジュールにおいては、半導体素子が自己の発熱によって高温になるため、その放熱を効率よく行なうという機能が要求される。このため、この半導体モジュールにおいて、半導体素子を搭載する回路基板としては、機械的強度が高く、熱伝導率の高いセラミックス基板に金属板を接合したものが広く使用されている。ここで、金属板はセラミックス基板の両面に接合され、その一面は回路側金属板となり、他面は放熱側金属板となる。回路側金属板は、半導体素子に電気的に接続される配線としても機能する。
回路側金属板は配線として機能するため、回路側金属板には、低い電気抵抗率も要求される。このため金属板としては、アルミニウムより高い熱伝導率と低い電気抵抗率をもつ銅または銅合金(熱伝導率が300/m/K程度、電気抵抗率が1.7×10−8Ω・m程度)が好ましく用いられている。
この回路基板上の回路側金属板に半導体素子が接合され、半導体モジュールが形成される。回路側金属板は、セラミックス基板の一面においてその全面を覆うことはなく、所定の配線パターンに加工される。一方、放熱側金属板は、放熱を目的としてセラミックス基板に接合されている。そのため、セラミックス基板の他面においてほぼその全面を覆って形成される。また、実際にこの半導体モジュールが機器に搭載されるに際しては、この放熱板が、同様に熱伝導率の高い材料からなる放熱ベース板に接合される。
この半導体モジュールを含む機器がONの場合には半導体素子が高温となり、OFFの場合には常温となる。さらに、寒冷地においては−20℃程度の厳寒な条件に至ることもある。従って、通常の使用において、この半導体モジュールは、多数回の冷熱サイクルにさらされる。この半導体モジュールを構成する半導体素子、セラミックス基板、放熱側金属板(銅板)等の熱膨張率は異なる(例えば、半導体素子を構成するシリコンの熱膨張係数は3.0×10−6/K、銅は17×10−6/K、窒化珪素は2.5×10−6/K程度)ため、これらを接合した場合、この冷熱サイクルに際しては、この熱膨張差に起因した歪みが発生する。この歪みの大きさや方向は、このサイクル中で変化する。このため、この半導体モジュールにおいては、冷熱サイクルによって、セラミックス基板や半導体素子が割れたり、半導体素子と回路側金属板とのはんだ接続部や放熱側金属板と放熱ベース板とのはんだ接合部にその歪による応力が発生し、それらのはんだにクラック(またはボイド)が発生して接合強度や、熱の放熱効率を低下させ、半導体モジュールの冷熱サイクルに対する耐久性を劣化させる。また、破壊を生じない場合でも、高温において放熱ベース板との接合部分で大きな反りが生ずると熱伝導が悪くなり放熱効率が低下する。
また、一般に、セラミックス基板と、回路側金属板や放熱側金属板となる金属板との接合はろう付けを用いて行われる。この接合に要する温度は、例えば、Ag−Cu系ろう材を用いた場合には700℃以上であるため、この接合後に常温に戻った状態においては、この方法で製造された回路基板には反りが生じている。
特許文献1に記載の半導体装置においては、回路側金属板と放熱側金属板に銅を使用し、回路側金属板の厚さを0.3〜0.5mm、放熱側金属板の厚さも0.3〜0.5mm、窒化珪素基板の厚さを0.25〜0.35mmとし、さらに回路側金属板の厚さを放熱側金属板の厚さより薄くすることで、鉛フリーはんだで回路側金属板に半導体チップを接合し、さらにこの半導体装置を鉛フリーはんだでヒートシンクに接合したこの半導体装置が熱サイクルを受けた時に、はんだに負荷されるはんだ歪を低減させている。さらに、薄肉化すすることで熱抵抗の低減をしている。
特許文献1に記載の回路基板において、放熱側金属板の薄肉化は、ヒートシンクとの接合箇所のはんだ歪の低減には不利であり、はんだ接合信頼性の低下と熱サイクルを受けた後の熱抵抗の増加を生じさせる。
しかしながら、近年のパワー半導体モジュールにおいては、その大電力化はさらに顕著になり、これらが使用される装置も、例えば電動自動車、産業用機械、鉄道車両等、多岐にわたっている。電動自動車用のパワー半導体モジュールでは、配線に数百A以上の大電流かつ数百V以上の大電圧が印加されるために、配線と放熱ベース(機器)との間の高い絶縁性に加え、高い放熱特性を必要とするため、半導体素子と回路側金属板間のはんだ接合および放熱側金属板と放熱ベース板間のはんだ接合に、高い信頼性が要求される。
特許文献1に記載の回路基板においては、回路側金属板、セラミックス基板、放熱側金属板の薄肉化をすることで熱抵抗の低減を図り、熱サイクルによるはんだ歪を低減させ、はんだ接合部の高信頼性を実現している。さらに回路側金属板の厚さを放熱側金属板厚より薄くし、接合後の回路基板が放熱金属板側に凸になるようにすることで放熱側金属板と放熱ベース板を接合するはんだ中の気泡が抜けやすくし、はんだ中の気泡による熱抵抗増加を防ぐことではんだ接合信頼性を向上させている。熱抵抗低減のためには、特許文献1のように、回路基板の構成を薄くすることが効果的である。回路側金属板を薄くすることは、半導体素子と回路金属板とを接合するはんだの受けるはんだ歪の低減になる。一方、放熱側金属板を薄くし過ぎると放熱側金属板と放熱ベース板を接合するはんだが受けるはんだ歪が大きくなり接合信頼性が低下する。特許文献1では、回路側金属板厚≦放熱側金属板厚の関係になるように厚さを制限しつつ、回路側金属板厚と放熱側板厚を薄くしている。そのため回路基板を構成する回路側金属板厚および放熱側金属板厚が制限され、回路側金属板と半導体素子を接合するはんだ信頼性と放熱側金属板と放熱ベース板を接合するはんだの信頼性が同時に得られないという課題がある。
本発明の目的は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、繰り返し冷熱サイクルを経てもなお回路側金属板と半導体素子とを接合する第一のはんだ層と放熱側金属板と放熱ベース板とを接合する第二のはんだ層に高い接合信頼性を有する半導体モジュールを提供することである。
本発明者らは上記課題を達成するため、銅または銅合金からなる回路側金属板および放熱側金属板とセラミックス基板からなる回路基板と半導体素子モジュールを検討し本発明に至った。
本願第一の発明は、セラミックス基板の一方の面に回路側金属板を接合し他方の面に放熱側金属板を接合した前記回路側金属板に第一のはんだ層を介して半導体素子を接合し前記放熱側金属板に第二のはんだ層を介して放熱ベース板を接合してなる半導体モジュールにおいて、前記回路側金属板の厚さt1、放熱側金属板の厚さt2、セラミックス基板の厚さt3の比t3/t1、t3/t2が0.6≦t3/t1、t3/t2≦2の範囲であり、かつセラミックス基板の対角線長さLとt2の比がL/t2≦390であることを特徴とする半導体モジュールである。
本願第二の発明は、セラミックス基板の一方の面に回路側金属板を接合し他方の面に放熱側金属板を接合した前記回路側金属板に第一のはんだ層を介して半導体素子を接合し前記放熱側金属板に第二のはんだ層を介して放熱ベース板を接合してなる半導体モジュールにおいて、前記第一のはんだ層と前記第二のはんだ層がPbフリーはんだで形成され、前記回路側金属板の厚さt1、放熱側金属板の厚さt2、セラミックス基板の厚さt3としたときt1≦0.6mm、0.8mm≦t2でかつ0.5≦t3/t1、t3/t2≦1、L/t2≦100であることを特徴とする半導体モジュールである。
第一,二の本発明において回路側金属板および放熱側金属板は、銅または銅合金からなることが好ましい。
本発明は、半導体素子と回路側金属板とのはんだ接合部および放熱側金属板と放熱ベース板とのはんだ接合部の歪を低減させ、冷熱サイクルに対し高い耐久性を持った半導体モジュールを得ることができる。また同時に低い電気抵抗を持つ回路側金属板、高い絶縁抵抗と高熱伝導率を持つセラミックス基板からなる回路基板が得られる。これにより大電力化に対応した半導体モジュールが得られる。
以下、実施例により本発明を説明するが、それら実施例により本発明が限定されるものではない。本発明に係る一実施例の断面模式図と平面模式図を図1に示す。まず、本発明の一実施例に用いた窒化珪素基板の製造方法について説明する。窒化珪素基板の構成原料、溶媒、分散剤をボールミル混合、粉砕する。ここで、混合、粉砕した原料に、バインダー、可塑剤を添加、混練し、スラリー粘度が所定の値になるように調整した後、ドクターブレード法により所定板厚でシート成形する。そして成形後さらに脱脂したシートを焼結炉内で1800〜2000℃の窒素雰囲気で焼結成形し窒化珪素基板を得る。
図1に示す回路基板8は、例えば、以下の通りにして製造できる。窒化珪素セラミックスからなるセラミックス基板4の両面に活性金属ろう材として例えば、Tiが添加されたAg−Cu系合金に代表される活性金属を印刷形成する。次に、セラミックス基板4とほぼ同じ長方形状の金属板である無酸素銅または銅合金を両面に600℃〜900℃の温度で加熱接合する。このうち一方は回路側金属板3となり、他方は放熱側金属板5となる。冷却後、一方の面の金属板上にレジストパターンを形成後に、例えば塩化第二鉄あるいは塩化第二銅溶液によってエッチング処理して回路パターンをなす回路側金属板3を形成する。他方の面に接合された金属板をそのままエッチング処理無しで放熱側金属板5としてもよいし、同様に所望の形状に加工し放熱側金属板5としてもよい。この場合、回路側金属板3と放熱側金属板5はその主成分が同一(銅)であるため、これらのエッチングは同時に行われる。また、これによって露出した部分のろう材のエッチングも、例えば過酸化水素とフッ化アンモニウムとの混合溶液によって引き続き行われる。さらに回路パターン形成後の回路側金属板3及び放熱側金属板5にNi−Pメッキを施し、回路基板8が作製される。なお、このメッキ処理を施さないことも可能であり、この場合には、回路パターン形成後に化学研磨を行い、ベンゾトリアゾール等などの防錆剤を添付する。また、選択するはんだ材種に応じて、ロジンなどの濡れ性向上成分を含有した防錆剤を用いてもよい。
半導体モジュール9は、前記の回路基板8を用いて形成され、特に大電力で動作する半導体素子1をこれに搭載する。この半導体モジュールの断面図が図1である。この半導体モジュール9は、前記の回路基板8における回路側金属板3上に半導体素子1が第一のはんだ層2を介して接合して搭載されている。また、放熱ベース板7が第二のはんだ層6を介して放熱側金属板5に接合されている。
半導体素子1は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のような半導体デバイスが形成されたシリコンチップである。特にこの半導体デバイスは、大電力で動作するものとすることができる。これによる発熱がこの回路基板8によって放熱される。また、半導体素子1と配線となる回路側金属板3との電気的接続は、ボンディングワイヤ(図示せず)を用いてもよいし、フリップチップ接続を用いることにより、はんだ等のバンプにより行ってもよい。
第一のはんだ層2は、例えば、Sn−5%Pbはんだであり、その融点は270℃程度である。従って、これを用いて半導体素子1と回路側金属板3を290℃程度の温度で接合することができる。また、環境対応下Sn−3%Ag、Sn−3%Ag−0.5%Cu、Sn−5%BiなどのPbフリーはんだを用いることが望ましい。この接合温度はろう材の融点よりも大幅に低いため、この接合に際しては回路側金属板3および放熱側金属板5とセラミックス基板4との接合に影響を与えることはない。この第一のはんだ層2は、冷熱サイクルに際しては、上記の半導体素子1と回路側金属板板3との熱膨張差によって内部応力が加わった状態となる。フリップチップ接続を用いた場合には、この第一のはんだ層2によって半導体素子1と回路側金属板3との電気的接続もなされる。
第二のはんだ層6は、例えば共晶Pb−Snはんだであり、その融点は190℃程度である。これを用いて放熱側金属板5と放熱ベース板7とを210℃程度の温度で接合することができる。また、Sn−3%Ag、Sn−3%Ag−0.5%Cu、Sn−5%BiなどのPbフリーはんだを用いることがさらに望ましい。なお、半導体素子1と回路基板8および放熱ベース板7を第一のはんだ層2および第二のはんだ層6を介して接合する場合の工程には、以下の2方法がある。一つは、回路基板8に半導体素子6を第一のはんだ層2で接合した後に、第二のはんだ層6を介して放熱ベース板7を接合する方法である。この場合、第一のはんだ層2には、第二のはんだ層6よりも高融点のはんだ材を選定する。もう一つの方法は、半導体素子1と回路基板8および放熱ベース板7を一度のリフローで接合する方法である。この際には、第一のはんだ層と第二のはんだ層の融点が近似したはんだ材を選定する。
放熱ベース板7は、機器側でこの回路基板8を搭載する部分である。放熱ベース板7は半導体素子1から放熱側金属板5に伝わった熱を放熱するため、熱伝導率が高く、熱容量が大きい。これは例えば銅、アルミニウムからなる。放熱ベース板7の熱膨張係数は、例えば、銅が17×10−6/K、アルミニウムが22×10−6/K程度と大きい。
この半導体モジュール9においては、半導体素子1となるシリコンの熱膨張係数は3.0×10−6/Kであるため、これとはんだ層を介して接合される回路側金属板3の表面の見かけの熱膨張係数((9〜17)×10−6/K)とは大きく異なる。このため、冷熱サイクルに際しては、この熱膨張差に起因して熱応力が第一のはんだ層2に発生したり、半導体素子1に反りを生ずる。また同様に、放熱側金属板5と放熱ベース板7とを第二のはんだ層6を介して接合する場合にも、放熱側金属板5と放熱ベース板7の熱膨張差に起因する熱応力が第二のはんだ層6にも発生し、接合信頼性を低下させる。これらを低減して第一のはんだ層2および第二のはんだ層6の接合信頼性を確保するには、主に、(1)はんだ層の上下面に位置する構成部材の熱膨張係数差を低減する、(2)はんだ層の上下面に位置する構成部材の反りの変位量を低減する(剛性を持たせる)方法が効果的である。
本発明では、この(1)の効果を狙ったもので、回路側金属板3の厚さt1とセラミックス基板4の厚さt3の比t3/t1を0.6以上とすることで第一のはんだ層2の接合信頼性を向上させることができ、また放熱側金属板5の厚さt2とセラミックス基板4の厚さt3の比t3/t2を2以下にし、かつ回路基板8の対角線長さLと放熱側金属板5の厚さt2の比L/t2を390以下にすることで、第二のはんだ層6の接合信頼性を向上させている。
接合信頼性が向上する理由は次のとおりである。第1のはんだ層2に働く熱応力は、半導体素子1と回路側金属板3およびセラミックス基板4の熱膨張係数の違いにより発生する。またその大きさは半導体素子1の大きさに比例し大きくなるが、半導体素子の大きさが一定の場合には、半導体素子の熱膨張係数と、回路側金属板とセラミックス基板からなる回路基板8の熱膨張係数の差に比例し大きくなる。半導体素子1の熱膨張係数は3.0×10-6/K、セラミックス基板4では2.5×10-6/Kと同程度であるのに対し、回路側金属板3では17〜22×10-6/Kと大きい。ここで、回路側金属板3の厚さt1を小さくする(薄くする)と、回路側金属板3の熱膨張係数の影響が小さくなり、セラミックス基板4の影響が相対的に大きくなるため、はんだ層2はあたかも同程度の熱膨張係数を有する半導体素子1とセラミックス基板4とに挟まれるのに似た状態となり、はんだ層2に働く熱応力が小さくなる。また、セラミックス基板4の厚さを大きくしても(厚くする)金属板3の熱膨張係数の影響が小さくなる。以上から回路側金属板3の厚さt1とセラミックス基板4の厚さt3の比t3/t1の関数となり、t3/t1が増加するに従い、はんだ層2に働く熱応力は小さくなる。
一方、第2のはんだ層6に働く熱応力は、セラミックス基板4、放熱側金属板5および放熱ベース板7の熱膨張係数の違いにより発生する。また、その大きさは回路基板8の大きさLに比例する。セラミックス基板4の熱膨張係数は、放熱側金属板5および放熱ベース板7に比べて小さい。放熱側金属板5の厚さt32が小さくなると放熱側金属板5の熱膨張の影響が小さくなり、セラミックス基板4の熱膨張の影響が相対的に強くなるため、はんだ層6はあたかも熱膨張係数の大きく異なるセラミックス基板4と放熱ベース板7とに挟まれるのに似た状態となり、はんだ層6に働く熱応力が大きくなる。またセラミックス基板4の厚さt3が大きくなる(厚くなる)と、同様にセラミックス基板4の熱膨張の影響が強くなり、はんだ層6に働く熱応力が大きくなる。以上から放熱側金属板5の厚さt2とセラミックス基板4の厚さt3の比t3/t2の関数となり、t3/t2が減少するに従い、はんだ層6に働く熱応力は小さくなる。
以上から、t3/t1、t3/t2およびL/t2を前述のように制御することで第一のはんだ層2、第二のはんだ層6に働く熱応力の大きさを制御できる。
はんだの接合信頼性を向上させるには、はんだ層を厚くすることも効果的である。しかし、はんだの熱伝導率は約40W/mKと比較的小さいため、はんだ層が厚過ぎると半導体モジュール9の熱抵抗率を増加させ放熱効率を低下させる。薄過ぎるはんだ層では接合信頼性が不十分である。そこで第一のはんだ層2でははんだ厚さfを0.05〜0.2mmとし、第二のはんだ層6でははんだ厚さgを0.1〜0.4mmとし且つ第一のはんだ層2に比べ第二のはんだ層6の方を厚くすることではんだの接合信頼性を向上させ、かつ半導体モジュールの放熱効率の低下を抑制した。第一のはんだ層2に比べ第二のはんだ層6の方を厚くする理由は、第二のはんだ層6は半導体素子1に比べて大きな放熱ベース板7と接合させるためより大きな強度を必要とするからである。
放熱ベース板7の厚さが厚過ぎると熱膨張による歪が大きくなり、第二のはんだ層6の受ける歪が大きくなる。また放熱ベース板7の厚さが薄過ぎると、回路基板8との接合により反りが大きくなり、放熱ベース板を機器に接合できなくなったり、接合箇所に空隙が発生し放熱効率を低下させる。そこで、放熱ベース板の厚さTを2〜5mmにすることで、はんだの接合性を向上させ、かつ半導体モジュールの放熱効率の低下を抑制できる。
以下に示す実施例、比較例にについて、−40℃15分〜+125℃15分の冷熱サイクル試験を2000サイクルまで行い、2000サイクル後の第一のはんだ層2および第二のはんだ層6に発生したボイドを超音波探査映像装置(日立建機ファインテック(株)製、mi−scope.exla)で観察し、ボイド率(第一のはんだ層では、100×(ボイドの面積/第一のはんだ層面積)(%)、第二のはんだ層では、100×(ボイドの面積/第二のはんだ層面積)(%)を算出した。さらに、ボイド率変化量(%)=(2000サイクル後のボイド率)−(試験前のボイド率)を計算し、第一のはんだ層および第二のはんだ層の界面の破損や剥離の判定をした。ここで、第一のはんだ層のボイド率変化量が2%以上で破損と認定し、第二のはんだ層のボイド率変化量が20%以上で破損と判定した。第一のはんだ層2、第2のはんだ層6は、冷熱サイクル試験により熱膨張率の差から発生する歪を繰り返し受ける。そのためはんだ層にはクラックが発生、成長してボイドとなる。ボイドがはんだ層に発生すると半導体素子と回路側金属板との接合強度、放熱側金属板と放熱ベース板との接合強度を低下させる。また、ボイドが発生するとボイドでの熱伝導率が低下するので熱抵抗が増加し半導体モジュールの性能を低下させる。そこで、冷熱サイクル試験による、第一および第二のはんだ層の劣化度合いの指標としてボイド率変化量を求めた。
また、冷熱サイクルの印加の前後で、半導体素子側から見た熱抵抗(℃/W)を測定した。この測定は半導体素子に通電することによってこれを発熱させ、通電中の半導体素子の温度上昇を熱抵抗評価装置(キャッツ電子製、MODEL DVF240)によって電圧換算により測定した。ここでは、単位断面積当たりの量ではなく、単位を(℃/W)として測定した。初期(冷熱サイクル印加前)の熱抵抗の値が0.3℃/W以上であったものは放熱特性が悪いために不良と判定した。また、初期の熱抵抗がこの値より小さくとも、冷熱サイクル印加後の熱抵抗の値が30%以上増加していたものは、はんだ層に破損が発生したものと考えられるため不良とした。
表1に本発明の実施例1を示す。実施例1では、第一のはんだ層2及び第二のはんだ層6ともにPb含有はんだであるSn−5%Pbを使用した。第一のはんだ層2の厚さは0.1mm、第二のはんだ層6の厚さは0.2mmで第二のはんだ層6の方を厚くした。半導体素子1の寸法は、d=12mm、e=10mmとした。実施例No1〜15では、t3/t1を0.64〜2.10,t3/t2を0.42〜1.6,L/t2を48〜390の範囲で変えた半導体モジュールを作製し、これらのヒートサイクル試験後のNo1はんだのボイド率変化量は全て2%以下、No2はんだのボイド率変化量は20%以下となり耐はんだ信頼性が良好であり、初期熱抵抗は0.3℃/W以下、熱抵抗増加率も30%以下となり良好であるであった。特に、t3/t1、t3/t2が、0.8≦t3/t1≦1.2、0.1≦t3/t2≦1の範囲であるNo4、5、6、8、10〜15では熱抵抗増加率が19%以下であり特に良好である。
表2に比較例1を示す。比較例1では、第一のはんだ層2及び第二のはんだ層6ともに実施例1と同様のPb含有はんだを使用した。半導体素子1の寸法は実施例1と同様とした。No16では、t3/t1=0.53、t3/t=0.64とすることで、No1はんだボイド率変化量が17.6%となり、その結果熱抵抗増加率が43.2%となり不良である。No17から22では、t3/t1=0.16〜0.40であるためNo1はんだのボイド率変化量が21.2〜27.8%と大きく、その結果、熱抵抗増加率が42.6〜50.7%と大きく不良であった。またNo23、24では、t3/t2=2.54、3.18であり、セラミックス基板の熱膨張の影響が大きく、No2はんだのボイド率変化量は23、30.8%となり、熱抵抗増加率は31.9、43.7%で不良である。No25では、L/t2=400であるため、はんだ層6のはんだ歪が大きくなり、No2はんだのボイド率変化量が25%となり、その結果熱抵抗増加率も34.8%で不良である。
表3に実施例2を示す。本実施例では、はんだ層2,6にPbフリーはんだであるSn−3%Ag−0.5%Cuを使用した。表3に示す実施例No26〜38では、回路側金属板厚t1を0.2〜0.6mm、放熱側金属板厚t2を0.8〜1.2とし、t3/t1=0.50〜3.15、t3/t2=0.27〜0.79、L/t2=46〜98の範囲で変えることで、No1はんだ(はんだ層2)のボイド率変化量は0.2〜0.8%、No2はんだ(はんだ層6)のボイド率変化量は8〜19.5%となり、はんだ接合の信頼性が良好で、その結果、熱抵抗増加率も8.8〜26.5%と良好である。
表4に、比較例2を示す。本比較例では、はんだ層2,6に実施例2と同様のPbフリーはんだを使用した。No39では、回路側金属板厚t1を、0.8mmとした。この比較例では、t3/t1=0.40となり、No.1はんだのボイド率変化量が9.6%となり、その結果、熱抵抗増加率が41.1%となり不良となる。No.40では、放熱側金属板厚t2を0.6mmとしt3/t2=1.05としたことでNo.2はんだのボイド率変化量が24.8%となり、その結果、熱抵抗増加率は35.3%と不良となる。No.41では放熱側金属板厚t2=0.60mm、セラミックス基板対角線長さL=78mmとし、L/t2=130とし、またNo.42では放熱側金属板厚t2=0.20mm、セラミックス基板対角線長さL=37mmとすることで、それぞれL/t2=130とL/t2=185とすることで、No.2はんだのはんだ歪が増加し、No.2はんだのボイド率変化量が46.3%と30.7%となり不良となる。No.43では、セラミックス基板対角線長さL=95mmとすることで、L/t2=119となりNo.2はんだのボイド率変化量が30.3%となりそのため、熱抵抗増加率は43.4%と大きくなり不良となる。
従来のPb含有はんだに比べ、Pbフリーはんだは降伏応力が小さいために、Pb含有はんだより小さな応力でボイドが発生してしまう。さらに、Pbフリーはんだの剛性率は、Pb含有はんだより大きいため、同じ大きさの歪を受けた場合にはPb含有はんだより大きな応力が発生する。そのためPbフリーはんだでは、半導体素子と回路側金属板とを接合する第一のはんだ層の歪を低減するためには回路側金属板の厚さを0.6mm以下にする必要がある。一方、放熱側金属板と放熱ベース板を接合する第二のはんだ層の歪を小さくするためには、放熱側金属板の厚さを0.8mm以上の厚さにする必要がある。
1:半導体素子
2:第一のはんだ層
3:回路側金属板
4:セラミックス基板
5:放熱側金属板
6:第二のはんだ層
7:放熱ベース板
8:回路基板
9:半導体モジュール
d:半導体素子長辺長さ
e:半導体素子短辺長さ
f:第一のはんだ層厚さ
g:第二のはんだ層厚さ
t1:回路側金属板厚さ
t2:放熱側金属板厚さ
t3:セラミックス基板厚さ
T:放熱ベース板厚さ
L:回路基板対角線長さ
2:第一のはんだ層
3:回路側金属板
4:セラミックス基板
5:放熱側金属板
6:第二のはんだ層
7:放熱ベース板
8:回路基板
9:半導体モジュール
d:半導体素子長辺長さ
e:半導体素子短辺長さ
f:第一のはんだ層厚さ
g:第二のはんだ層厚さ
t1:回路側金属板厚さ
t2:放熱側金属板厚さ
t3:セラミックス基板厚さ
T:放熱ベース板厚さ
L:回路基板対角線長さ
Claims (3)
- セラミックス基板の一方の面に回路側金属板を接合し他方の面に放熱側金属板を接合した前記回路側金属板に第一のはんだ層を介して半導体素子を接合し前記放熱側金属板に第二のはんだ層を介して放熱ベース板を接合してなる半導体モジュールにおいて、前記回路側金属板の厚さt1、放熱側金属板の厚さt2、セラミックス基板の厚さt3の比t3/t1、t3/t2が0.6≦t3/t1、t3/t2≦2の範囲であり、かつセラミックス基板の対角線長さLとt2の比がL/t2≦390であることを特徴とする半導体モジュール。
- セラミックス基板の一方の面に回路側金属板を接合し他方の面に放熱側金属板を接合した前記回路側金属板に第一のはんだ層を介して半導体素子を接合し前記放熱側金属板に第二のはんだ層を介して放熱ベース板を接合してなる半導体モジュールにおいて、
前記第一のはんだ層と前記第二のはんだ層がPbフリーはんだで形成され、
前記回路側金属板の厚さt1、放熱側金属板の厚さt2、セラミックス基板の厚さt3としたときt1≦0.6mm、0.8mm≦t2でかつ0.5≦t3/t1、t3/t2≦1、L/t2≦100であることを特徴とする半導体モジュール。 - 回路側金属板および放熱側金属板は、銅または銅合金からなる請求項1または2に記載の半導体モジュール。
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JP2007257435A JP2009088330A (ja) | 2007-10-01 | 2007-10-01 | 半導体モジュール |
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-
2007
- 2007-10-01 JP JP2007257435A patent/JP2009088330A/ja active Pending
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