JP2008041752A - 半導体モジュールおよび半導体モジュール用放熱板 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い放熱効率および耐久性を兼ね備え、搭載する半導体チップを大電力で動作させることのできる半導体モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】半導体チップとこの半導体チップの両面から放熱するための一対の放熱基板とを備えた半導体モジュールであって、前記放熱基板はセラミックス基板の両面に銅板もしくは銅合金板をろう材により接合してなり、前記放熱基板および前記半導体チップのほぼ全体がモールド樹脂で覆われている半導体モジュール。
【選択図】図1
【解決手段】半導体チップとこの半導体チップの両面から放熱するための一対の放熱基板とを備えた半導体モジュールであって、前記放熱基板はセラミックス基板の両面に銅板もしくは銅合金板をろう材により接合してなり、前記放熱基板および前記半導体チップのほぼ全体がモールド樹脂で覆われている半導体モジュール。
【選択図】図1
Description
本発明は、主に大電力で動作する半導体チップを搭載する回路基板、およびこれを用いた半導体モジュールの構造に関する。
近年、電動車両用インバータとして高電圧、大電流動作が可能なパワー半導体モジュール(例えばIGBTモジュール)が用いられている。こうした半導体モジュールにおいては、半導体チップが自己の発熱によって高温になるため、その放熱を効率よく行なうという機能が要求される。このため、この半導体モジュールにおいて、半導体チップを搭載する放熱基板としては、機械的強度が高く、熱伝導率の高いセラミックス基板で絶縁し、これに金属板を接合したものが広く使用されている。ここで、金属板はセラミックス基板の両面に接合され、その一面は金属回路板となり、他面は金属放熱板となる。金属回路板は、半導体チップに電気的に接続される配線としても機能する。
金属回路板は配線として機能するため、セラミックス基板には高い絶縁性も要求され、金属回路板には、低い電気抵抗率も要求される。このため、セラミックス基板としては、窒化アルミニウム(熱伝導率が170W/m/K程度)、金属板としてはアルミニウム(熱伝導率が240W/m/K程度、電気抵抗率が3.5×10−8Ω・m)が用いられた。しかしながら、窒化アルミニウムはその機械的強度が不充分であるため、近年はより機械的強度の高い窒化珪素(熱伝導率が90W/m/K程度)が代わりに用いられている。また、金属板としては、より高い熱伝導率と低い電気抵抗率をもつ銅または銅合金(熱伝導率が300W/m/K程度、電気抵抗率が1.7×10−8Ω・m程度)が好ましく用いられている。
この回路基板上の金属回路板に半導体チップが接合され、半導体モジュールが形成される。金属回路板は、セラミックス基板の一面においてその全面を覆うことはなく、所定の配線パターンに加工される。一方、金属放熱板は、放熱を目的としてセラミックス基板に接合されている。そのため、セラミックス基板の他面においてほぼその全面を覆って形成される。また、実際にこの半導体モジュールが機器に搭載されるに際しては、この放熱板が、同様に熱伝導率の高い材料からなる放熱ベースに接合される。同一の金属板を金属放熱板と放熱ベースを兼ねてセラミックス基板に接合することもできる。この場合、セラミックス基板の一面には金属回路板が形成され、他面にはセラミックス基板よりも大きな面積を持った金属板が接合された形態となる。
この半導体モジュールを含む機器がONの場合には半導体チップが高温となり、OFFの場合には常温となる。さらに、寒冷地においては−20℃程度の厳寒な条件に至ることもある。従って、通常の使用において、この半導体モジュールは、多数回の冷熱サイクルにさらされる。この半導体モジュールを構成する半導体チップ、セラミックス基板、金属放熱板(銅板)等の熱膨張率は異なる(例えば、半導体チップを構成するシリコンの熱膨張係数は3.0×10−6/K、銅は17×10−6/K、窒化珪素は2.5×10−6/K程度)ため、これらを接合した場合、この冷熱サイクルに際しては、この熱膨張差に起因した歪みが発生する。この歪みの大きさや方向は、このサイクル中で変化する。このため、この半導体モジュールにおいては、冷熱サイクルによって、セラミックス基板や半導体チップが割れたり、半導体チップと金属回路板との接続部が破断することがあった。従って、この歪みによってこの半導体モジュールの冷熱サイクルに対する耐久性が劣化する。また、破壊を生じない場合でも、高温において放熱ベースとの接合部分で大きな反りが生ずると、熱伝導が悪くなり、放熱効率が低下する。
また、一般に、セラミックス基板と、金属回路板や金属放熱板となる金属板との接合はろう付けを用いて行われる。この接合に要する温度は、例えば、Ag−Cu系ろう材を用いた場合には、700℃以上であるため、この接合後に常温に戻った状態においては、この方法で製造された回路基板は、反りを生じている。従って、この回路基板を放熱ベースに接合して使用する場合、特に高温の場合でなくとも、これによって放熱効率が低下することがある。
こうした反りや冷熱サイクルに対する耐久性の劣化を改善するために、その構成を工夫した各種の回路基板または半導体モジュールが提案されている。
特許文献1には、さらにモールド樹脂までも含めた半導体モジュールの構造において、各構成要素の材料、構造を最適化して歪みを減少させ、高い耐久性を得ることができることが記載されている。この半導体モジュールの構造断面図を図19に示す。この半導体モジュール31においては、厚い金属ブロック32がこの半導体モジュールの基体として形成されており、半導体チップ33がフレーム34を介して金属ブロック32に接合されている。半導体チップ33からの配線は、リード35とボンディングワイヤ36を介して、外部のケース37に形成された外部端子38と接続される。これらの構造はモールド樹脂39で覆われている。ここで、金属ブロック33とモールド樹脂39の熱膨張係数は近いものとなっている。これらの構造の下部には、放熱ベース(図示せず)との間の絶縁を保つために絶縁基板(セラミックス基板)40が接合される。ここでは、半導体モジュール31の基体を熱伝導率の高い金属ブロック32とし、配線は主にこの半導体パッケージ31の外部に形成される。また、この半導体装置において複数の半導体チップがある場合、以上の構造の半導体パッケージ31を半導体チップ毎に形成することによって、これらの熱膨張差に起因した歪みが低減される。絶縁基板39はモールド樹脂38を形成した後で例えば銀ペースト等によって低温で接合されるため、絶縁基板39と金属ブロック32等との熱膨張係数差に起因する歪みは常温ではほとんど生じない。以上により、この半導体装置においては、高い放熱特性と冷熱サイクルに対する高い耐久性を得ていた。
特許文献2には、モールド樹脂した半導体モジュールにおいて、半導体チップの上下面に放熱板を配置し、半導体チップの両面から半導体チップからの発熱を放熱することにより、さらに放熱性を高める構造が開示されている。
特許文献3に記載の回路基板においては、金属回路板と金属放熱板に熱膨張係数の異なる材料とした。
さらに、特許文献4においては、これらをセラミックス基板に接合する方法や、その接合に用いるろう材の種類や厚さを金属回路板と金属放熱板で異なるものとした。これによって、熱膨張差に起因する歪みを減少させ、高い耐久性を得ることができた。
特開2003−100987号公報
特開2005−123233号公報
特開平7−45915号公報
特開2004−207587号公報
しかしながら、近年のパワー半導体モジュールにおいては、その大電力化はさらに顕著になり、これらが使用される装置も、例えば電動自動車等、多岐にわたっている。この際、耐久性と放熱特性に加えて、この回路基板上の配線が大電力動作に適応することが求められる。すなわち、この配線が数百A以上の大電流かつ数百V以上の大電圧に耐えるものである必要がある。このためには、配線(金属回路板)が低抵抗であることと、この配線と放熱ベース(機器)との間の絶縁性が高いことを確保し、かつ放熱性に優れた高信頼性モジュールが必要とされている。
特許文献1に記載の半導体モジュールにおいては、モールド樹脂が劣化しない程度の低温で絶縁基板を接合する必要がある。この際には、高温を要するろう付け等の手法を用いることは不可能であり、銀ペーストや接着剤が代わりに用いられる。これらを用いた場合には、接合の機械的強度が不充分であったり、この部分の熱抵抗が増大する。従って、半導体チップから金属ブロックまでの熱伝導は良好であるが、金属ブロックから外部の放熱効率は高くない。また、絶縁基板自身の絶縁耐圧が充分であっても、接合後の絶縁基板上ではこの銀ペースト等の存在のため、あるいは機械的強度が弱いために絶縁耐圧が劣化する。従って、この半導体モジュールを大電圧で動作させることは困難である。
特許文献2におていは、半導体チップの両面に放熱板を配置することにより、半導体チップおよび放熱板より構成される半導体モジュール単体としての放熱性には優れているが、放熱板に絶縁性がないために、熱を放散する冷却機に半導体モジュールを取り付ける際にセラミックス等の絶縁基板を介して冷却機にボルト締め等で取り付けられる。熱伝達を確保するためボルト締めに際してはグリース等を接続面に塗布してから取り付けられるが、グリースの熱伝導率は高々数W/mKしかないため、この締結部分で放熱性は大幅に低下してしまう。
特許文献3、4に記載の回路基板においては、金属回路板と金属放熱板に熱膨張係数の異なる材料を用いるという制限がある。金属回路板の低抵抗化の観点からは、金属回路板の材料としては、電気抵抗率の小さな銅または銅合金が好ましい。また、回路基板の製造工程を単純化するためには、金属放熱板も同様に銅または銅合金であることが好ましい。しかしながら、特許文献3,4に記載の回路基板においては、両方に銅または銅合金を用いることは困難である。すなわち、配線(金属回路板)の低抵抗化は困難である。
本発明は、斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、高い放熱効率および耐久性を兼ね備え、搭載する半導体チップを大電力で動作させることのできる半導体モジュールを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
請求項1記載の発明の要旨は、半導体チップとこの半導体チップの両面から放熱するための一対の放熱基板とを備えた半導体モジュールであって、前記放熱基板はセラミックス基板の両面に銅板もしくは銅合金板をろう材により接合してなり、前記放熱基板および前記半導体チップのほぼ全体がモールド樹脂で覆われていることを特徴とする半導体モジュールに存する。
請求項1記載の発明の要旨は、半導体チップとこの半導体チップの両面から放熱するための一対の放熱基板とを備えた半導体モジュールであって、前記放熱基板はセラミックス基板の両面に銅板もしくは銅合金板をろう材により接合してなり、前記放熱基板および前記半導体チップのほぼ全体がモールド樹脂で覆われていることを特徴とする半導体モジュールに存する。
請求項2記載の発明の要旨は、前記放熱基板の熱膨張係数が 6〜14×10−6/K、の範囲であることを特徴とする放熱基板に存する。
請求項3記載の発明の要旨は、前記放熱基板に接合された金属板の厚さがT1、T2としたとき1.0≦T1+T2≦5.0mmであることを特徴とした請求項1記載の放熱基板に存する。
請求項4記載の発明の要旨は、前記放熱基板に一方の面に接合された銅板もしくは銅合金板の軟化点温度が、前記放熱基板の他方の面に接合された銅もしくは銅合金板の軟化点温度が異なり、かつ厚みが異なることを特徴とする請求項1〜3記載の放熱基板に存する。
請求項5記載の発明の要旨は、前記セラミックス板が窒化珪素セラミックスであることを特徴とする請求項1乃至4
のいずれか1項に記載の回路基板に存する。
のいずれか1項に記載の回路基板に存する。
請求項6記載の発明の要旨は、前記モ−ルド樹脂の熱膨張係数が25(×10−6/K)以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体モジュールに存する。
本発明は以上のように構成されているので、高い放熱特性と冷熱サイクルに対する高い耐久性を兼ね備え、搭載する半導体チップを大電力で動作させることのできる半導体モジュールを得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る半導体モジュールは、高い放熱特性と冷熱サイクルに対する高い耐久性を有する。特に、半導体モジュールが実際に機器に搭載された状態において、その放熱特性と耐久性を高くしている。また、金属回路板の低抵抗化および放熱ベースとの間の高い絶縁耐圧を得ることによって、搭載する半導体チップの大電力での動作を可能としている。この半導体モジュールの断面図が図1である。この半導体モジュール8においては、半導体チップ2の両面に放熱基板1がはんだ9を介して接合されている。放熱基板1を構成するセラミックス板4の一面に厚さT1の金属板3が、他面に厚さT2の金属板5が、それぞれろう材(図示せず)を介して接合されている。
従来技術では放熱経路が半導体チップの一面のみ、もしくは両面からの場合でもグリース等の熱伝導率は小さい部材を介して放熱していたため、その放熱性は不充分であったが、本発明では放熱経路は半導体チップの上下2面から可能であり、かつ、グリース等の低熱伝導部材を介さないため、高放熱性を確保することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る半導体モジュールは、高い放熱特性と冷熱サイクルに対する高い耐久性を有する。特に、半導体モジュールが実際に機器に搭載された状態において、その放熱特性と耐久性を高くしている。また、金属回路板の低抵抗化および放熱ベースとの間の高い絶縁耐圧を得ることによって、搭載する半導体チップの大電力での動作を可能としている。この半導体モジュールの断面図が図1である。この半導体モジュール8においては、半導体チップ2の両面に放熱基板1がはんだ9を介して接合されている。放熱基板1を構成するセラミックス板4の一面に厚さT1の金属板3が、他面に厚さT2の金属板5が、それぞれろう材(図示せず)を介して接合されている。
従来技術では放熱経路が半導体チップの一面のみ、もしくは両面からの場合でもグリース等の熱伝導率は小さい部材を介して放熱していたため、その放熱性は不充分であったが、本発明では放熱経路は半導体チップの上下2面から可能であり、かつ、グリース等の低熱伝導部材を介さないため、高放熱性を確保することができる。
半導体チップ2は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のような半導体デバイスが形成されたシリコンチップである。特にこの半導体デバイスは、大電力で動作するものとすることができる。これによる発熱がこの放熱基板1によって放熱される。また、半導体チップ2と配線となる金属板3との電気的接続は、ボンディングワイヤ(図示せず)を用いてもよいし、フリップチップ接続を用いることにより、はんだ等のバンプにより行ってもよい。さらには、半導体素子との接合信頼性(パワーサイクル特性)を向上させるため、銅および銅合金あるいは、銅とインバーとのクラッド材からなるリード板による接合を行ってもよい。
はんだ層9は、例えば、Sn−5%Pbはんだであり、その融点は270℃程度である。従って、これを用いて半導体チップ6と金属回路板3と290℃程度の温度で接合することができる。また、環境対応下Sn−3%Ag、Sn−3%Ag−0.5%Cu、Sn−5%BiなどのPbフリーはんだを用いることが望ましい。この接合温度はろう材の融点よりも大幅に低いため、この接合に際しては金属板3および金属板5とセラミックス板4との接合に影響を与えることはない。このはんだ層9は、冷熱サイクルに際しては、上記の半導体チップ2と金属板3との熱膨張差によって内部応力が加わった状態となる。フリップチップ接続を用いた場合には、このはんだ層9によって半導体チップ2と金属板3との電気的接続もなされる。
モールド樹脂6は、例えばエポキシ樹脂であり、以上の構造のほぼ全体を覆うように形成され、少なくとも、半導体チップ2、はんだ層9、金属板3を覆う絶縁物である。この熱膨張係数の値は前記の銅の熱膨張係数に近い。この形成方法は、例えば、液体状のモールド樹脂材料中に半導体チップ2が接合された放熱基板1を浸たした後にこれを硬化させることによってなされる。モールド樹脂6の耐熱温度は例えば250℃程度と低いため、モールド樹脂6が形成された後にはこれよりも高い温度の工程が不要となるような製造方法を用いる。
放熱基板を構成する金属板3と金属板5はどちらも銅または銅合金の1種であり、一方の金属板の軟化点温度が他方の金属板の軟化点温度よりも高い材質を用いた場合には厚みの異なる金属板で構成することができる。半導体チップとの接合面での放熱性が要求される場合には、半導体チップに接する金属板3の厚みを厚くして放熱性を高めたり、或いは接合面で細かい回路パターンをエッチング等で金属板3上に形成する必要がある時には金属板3の厚みを薄くして回路パターンを形成し、金属板5を厚くして放熱性を高めるため、金属板3,5の厚みを可変することが可能となる。
同じ材質の銅もしくは銅合金材質を用いて、厚みの異なる銅もしくは銅合金板を金属板3,5とした場合、放熱基板1はろう付後に大きな反りが生じて半導体チップ等の他の部材に接合する際に、その接合部分に空隙が生じて熱伝達が不充分となる。
厚みの異なる金属板3,5として薄い金属板には軟化点温度の高い銅、もしくは銅合金を、厚い金属板には軟化点温度の低い銅、もしくは銅合金を用いると反りの少ない放熱板1をえることができる。
軟化点温度は以下の通りに定義される。銅または銅合金に保持時間1時間の熱処理を加えてビッカース硬度を測定する。この硬度と熱処理温度との関係を測定すると、温度の上昇に伴って、急激に硬度が減少し、硬度は常温時よりも低い値で飽和値をとる。このほぼ飽和値をとる温度が軟化点温度であり、具体的には、常温からの硬度の変化量が、常温での硬度とこの飽和値との差分の95%となった温度を軟化点温度とした。
セラミックス板4としては、高い熱伝導率、絶縁性、および機械的強度を有し、厚い金属回路板3を接合できる材料として、各種のものを用いることができる。中でも、窒化珪素セラミックスが特に好ましい。具体的には、熱伝導率が90W/m/K程度以上、3点曲げ強度が700MPa程度以上、破壊靱性値が6MPa・m1/2程度以上である窒化珪素セラミックスが好ましい。熱伝導率がこれよりも小さい場合には回路基板の熱抵抗が大きくなることがある。3点曲げ強度や破壊靱性値がこれよりも小さな場合には、回路基板の製造時や冷熱サイクルによって発生する歪みによってクラックが発生する可能性がある。例えば、その厚さは0.3mmであり、大きさは30mm×50mmである。特にその大きさについてはその用途によって適宜決定される。さらに放熱性を向上させるためには、その厚さは、0.2mmあるいは0.1mmとすることが望ましい。
金属板3、5は銅または銅合金であり、セラミックス板4の両面に形成されている。金属板3は搭載される半導体チップもしくは半導体チップに接合された放熱ブロックと接続されている。また、金属板3は半導体チップとこの回路基板1との接点となるため、半導体チップからの熱を伝導させ、その放熱も行なう。また、半導体チップと電気的な接続を行うこともあり、必要によってはエッチング等により、パターニングされることもある。また、はんだ濡れ性の確保やワイヤボンディングを容易にするために、金属板3、5の最表面にはNi−Pメッキが施してあることが好ましい。
金属板3および5として用いられる銅または銅合金の例について、その種類および軟化点温度、熱伝導率、熱膨張係数、ヤング率を示したのが表1である。ここでは無酸素銅としてA、Bの2種類と、銅合金としてC〜Gの5種類を例として示した。ここでは参考としてセラミックス板4となる窒化珪素セラミックスについての値も示してある。ここに示したものは一例であるが、図2にその熱伝導率と軟化点温度の関係を示すように、無酸素銅を含めた一般的な傾向として、軟化点温度が高い材料ほど熱伝導率が低い。銅合金の軟化点温度を制御することは、銅にニッケル(Ni)、スズ(Sn)および鉄(Fe)などを微量添加し、熱処理にともなう再結晶粒子の成長を抑制することで達成される。この場合、銅の結晶粒子中に添加元素が固溶し、結晶自身の熱伝導率を低下させる。また、結晶粒子間の粒界相にも添加元素が析出するため、結果として銅合金の熱伝導率を低下させる。ただし、この場合においても、熱膨張係数とヤング率においては大差がない。また、電気伝導率においても大差がなく、いずれも高い値を示す。特にこれらの軟化点温度と熱伝導率によって、金属板3,5にこれらの材料を使い分けることができる。
これらの銅または銅合金は、圧延後の常温においては、いずれも硬度、引っ張り強度、降伏応力等の機械的性質において高い値を示す。これらに軟化点温度以上での熱処理を行った場合、前記の通り、これらの物性値は低下する。その後、この温度から常温になった状態においても、これらの物性値は熱処理前の値には戻らず、より低い値になるという性質がある。従って、熱処理前は、これらの材料は弾性変形をするが、軟化点温度以上の熱処理を施した場合には、塑性変形能が増す。この際、熱処理の温度が同じであっても、軟化点温度が高い場合は、この塑性変形能は小さくなる。また、熱処理温度が軟化点温度よりも低い場合には、硬度等は熱処理前の高い値を保つ。
ろう材としては、例えばAg−Cu系活性ろう材が用いられ、これによって700℃〜900℃程度の温度範囲で金属板3、5とセラミックス板4に強固に接合され、放熱基板1を構成する。ろう材の厚さは20μm程度と金属板等と比べて薄く、熱伝導率も高いため、ろう材による接合が強固であれば、この部分の熱抵抗は他の部分と比べて無視できる。一方、この接合部に破断が生ずると熱抵抗の増大の原因となる。また、ろう材によって金属板3等(銅または銅合金)を接合する際の接合温度(ろう付け温度)は高いため、特にこの温度が前記の軟化点温度を超える場合には、放熱基板1における金属板3、5等の特性に影響を及ぼす。
この放熱基板1における各材料の熱膨張係数は、例えば、セラミックス板4となる窒化珪素セラミックスが2.5×10−6/K、金属板3、5となる銅が18×10−6/Kである。従って、金属板3および5が前記の温度でろう材によって接合され、常温に戻った時点で、この放熱基板1には歪みや反りが生じる。また、冷熱サイクルに際しては、この歪み量およびその方向も変化することがある。
ろう付け温度と軟化点温度との関係によって、この歪みの状況は異なる。すなわち、ろう付け温度が軟化点温度よりも高い場合には、前記の通り、接合後に常温に戻った状態においては、金属板3または金属板5の塑性変形能は高くなる。この塑性変形能は、ろう付け温度と軟化点温度の差が大きいほど高い。すなわち、軟化点温度の小さい銅合金は塑性変形能が高く、軟化点温度の高いものは塑性変形能が小さい。
この放熱基板1において、金属板3および5の表面で、冷熱サイクルの際の実際の歪み量を測定した結果、これらの値は前記の銅または銅合金の熱膨張係数(18×10−6/K)から算出した値とは異なっていた。また、放熱基板1を形成した状態においては、これらの歪み量は金属板3、5等の材質や厚さによって異なる値となった。この原因は、これらがセラミックス板4に接合された状態においては、セラミックス板4の影響と、ろう付け温度の影響とを受けるためである。
セラミックス板4は表1に示すように、銅または銅合金よりも高い弾性率を有するため、これらが接合された放熱基板1の歪みに影響を及ぼす。このため、金属板3または金属板5の厚さが小さな場合、熱膨張に際しては、窒化珪素セラミックスの影響が強く現れ、熱膨張(歪み量)は小さくなる。逆に、金属板3または金属板5の厚さが大きいほど、その熱膨張は、本来の銅に近い、大きなものとなり、歪み量が大きくなる。
また、ろう付け温度の影響としては、前記の通り、ろう付け温度が銅または銅合金の軟化点温度よりも高い場合には、銅または銅合金の塑性変形能が高くなり、この塑性変形能は、ろう付け温度と軟化点温度の差が大きいほど高くなる。このため、軟化点温度が低いほど、歪み量が大きく、放熱基板1上における熱膨張は大きくなる。すなわち、軟化点温度の低い銅または銅合金は、放熱基板1における熱膨張は大きくなり、軟化点温度の高いものは、放熱基板1における熱膨張は小さくなる。
また、銅または銅合金の塑性変形能が高く、かつその厚さが大きな場合、セラミックス板4と接する側の面と、その反対側の面(金属板3または金属板5の表面)で異なった歪み量を示すこともある。従って、金属板3または金属板5の軟化点温度が低く、その厚さが大きいほど、その表面の歪み量は大きくなり、逆の場合は歪み量は小さくなる。
実際の放熱基板1上の金属板3および金属板5における歪み量から測定した熱膨張係数を、以下では見かけの熱膨張係数と呼称する。この熱膨張係数は金属板3および金属板5の表面に歪みゲージを取り付け、冷熱サイクル時の歪み量を測定し、例えば、金属板3の熱膨張係数≡ =(金属板3歪み量)/(温度変化量)として算出した。放熱基板の膨張係数αは前記のようにして測定した金属板3および5の見かけの熱膨張係数α1およびα2を用いて(1)式により算出した。
α=(α1+α2)/2 (1)式
冷熱サイクルとしては、回路基板を冷熱サイクル試験機に装入し、−40℃〜+125℃の温度変化を与えた。これらの見かけの熱膨張係数は、上記の通り、金属板3、金属板5の材質や厚さ(T1、T2)を調節することによって、これらの見かけの熱膨張係数を調整することができる。なお、歪み量の校正には、石英をリファレンスとして用いた。
α=(α1+α2)/2 (1)式
冷熱サイクルとしては、回路基板を冷熱サイクル試験機に装入し、−40℃〜+125℃の温度変化を与えた。これらの見かけの熱膨張係数は、上記の通り、金属板3、金属板5の材質や厚さ(T1、T2)を調節することによって、これらの見かけの熱膨張係数を調整することができる。なお、歪み量の校正には、石英をリファレンスとして用いた。
セラミックス板4として0.3mm厚の窒化珪素セラミックス、金属板3として無酸素銅A(表1)、金属板5として無酸素銅Aおよび銅合金C(表1)を用い、T1とT2を変えた放熱基板1を多数作成した。これらの放熱基板における前記の見かけの熱膨張係数を測定した。その後、これらの放熱基板に半導体チップを搭載し、モールド樹脂で被覆して、半導体モジュールを作成した。この半導体モジュールにおいて−40℃〜+125℃の温度範囲の冷熱サイクルを3000回加え、その放熱効率および耐久性を判定した。ここで、放熱効率を示す指標として、冷熱サイクル印加前後の半導体チップからの熱抵抗を測定した。ここで、熱抵抗は、JISA1412で規定される量である。印加前の熱抵抗が0.20℃/Wよりも大きな場合を不合格とした。また、3000回印加後に、半導体チップと金属板3との接合部が破断したものと、モールド樹脂が剥離したもの、および熱抵抗が印加前よりも25%以上上昇していたものを不合格とした。
放熱基板1の熱膨張係数と前記ヒートサイクル試験での不良発生との関係を調べたところ、放熱基板1の熱膨張係数を5.5〜16×10−6/Kとした場合に良好な耐久性が得られることがわかった。ここで、放熱基板の熱膨張係数の値は半導体チップのその値(3.0×10−6/K)、およびモールド樹脂の熱膨張係数の間にある。上記の範囲より放熱基板1の熱膨張係数が小さい場合にはモールド樹脂との熱膨張係数に差が生じ過ぎて、放熱基板1とモールド樹脂間の密着性不良に起因したモールド樹脂剥離等の不良が生じる。一方、上記の範囲より熱膨張係数が大きい場合には半導体チップと放熱基板との熱膨張係数の差により、接合部材であるはんだにクラック等の不良が生じる。すなわち、この放熱基板1においては、その熱膨張係数を上記の範囲とすることによって、冷熱サイクルに対する高い耐久性と低い熱抵抗を得ることができる。
熱膨張係数をこの範囲にすることは、金属板3および5の材質と厚さを調整することによって可能である。
この放熱基板の熱膨張の測定例を図3,4に示す。セラミックス板4として0.32mmの窒化珪素セラミックスを使用し、一方の金属板3を1.5mm厚の無酸素銅A、他方の金属板5を0.5mm厚の銅合金Dとした放熱基板1を作成した。この場合の、冷熱サイクルに際しての金属板3と金属板5の表面の歪み量を測定した結果が図3である。一方、同一のセラミックス板と、金属板3,5として1.0mm厚の無酸素銅と0.8mm厚である同一の無酸素銅Aを使用して作成した。この場合の同様の測定結果が図4である。前者の放熱基板の熱膨張係数は前出の(1)式により、(16.0+5.8)/2=10.9ppm/Kと算出される。後者は同様に(7.9+8.0)/2=8.0ppm/Kと算出される。すなわち、接合する銅または銅合金の材質およびその厚みを選定することで放熱基板の熱膨張係数を所定の範囲に制御することができる。
図5は、放熱基板に接合する金属板3、5の材質を無酸素銅Aとした時の金属板3および5の厚みの和と放熱基板の熱膨張の関係を纏めたものである。また図6は、放熱基板の接合する金属板3の材質を片面を無酸素銅A、もう一方の金属板5を銅合金Dとした時の金属板3および5の厚みの和と放熱基板の熱膨張の関係を纏めたものである。いずれの場合もその厚みの和を1.0~5.0mmとすることにより、放熱基板の熱膨張係数を5.5〜16×10−6/Kとすることができる。
この放熱基板1は、例えば、以下の通りにして製造できる。セラミックス板2(窒化珪素セラミックス)の両面に活性金属ろう材として例えば、Tiが添加されたAg−Cu系合金に代表される活性金属を印刷形成する。次に、セラミックス板2とほぼ同じ長方形状の金属板である無酸素銅または銅合金を両面に600℃〜900℃の温度で加熱接合する。接合した無酸素銅または銅合金は金属板3、5となる。冷却後、金属板上にレジストパターンを形成後に、例えば塩化第二鉄あるいは塩化第二銅溶液によってエッチング処理してパターンを形成する。或いは金属板をそのままエッチング処理無しで金属板3,5としてもよいし、同様に所望の形状に加工して金属板3,5としてもよい。金属板3、5はその主成分が同一(銅)であるため、これらのエッチングは同時に行われる。また、これによって露出した部分のろう材のエッチングも、例えば過酸化水素とフッ化アンモニウムとの混合溶液によって引き続き行われる。さらに金属板3,5にNi−Pメッキを施し、放熱基板1が作製される。なお、このメッキ処理を施さないことも可能であり、この場合には、回路パターン形成後に化学研磨を行い、ベンゾトリアゾール等などの防錆剤を添付する。また、選択するはんだ材種に応じて、ロジンなどの濡れ性向上成分を含有した防錆剤を用いる。
以上の通り、この放熱基板1においては、熱膨張係数を樹脂モールドするのに適した範囲に設定することができる。従って、これに半導体チップを搭載して半導体モジュールを形成した場合には、冷熱サイクルに対して高い耐久性を有する。特に、この放熱基板1は、これを用いた半導体モジュールが実際に機器に搭載されて使用される状況において、高い耐久性を有する設計となっている。
この放熱基板1に半導体チップを搭載した場合に、半導体チップからの放熱は金属板3、5等を介して高い効率で行われる。
金属板3、5は電気抵抗率の小さな銅または銅合金であり、その厚さが大きいため、その配線抵抗を小さくすることができる。従って、この放熱基板1に搭載する半導体チップに大電流を流して使用することができる。
金属板3とセラミックス板2はろう材によって強固に接合される。従って、この部分の機械的強度は高く、熱抵抗も低い。その接合に銀ペーストや接着剤を使用しないため、絶縁耐圧も、本来のセラミックス板2のもつ絶縁耐圧に近く、高い値となる。従って、この放熱基板1に搭載する半導体チップを大電圧で動作させることができる。
従って、この放熱基板1を用いた半導体モジュールは、高い放熱特性、冷熱サイクルに対する高い耐久性を兼ね備え、半導体チップを大電力で動作させることができる。
また、上記の製造方法においては、金属板3と金属板5のエッチング処理を同時に行うことが可能である。従って、低コストでこの回路基板を製造することができる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る半導体モジュールは、実施例1と同様の半導体モジュールを作製し、その際のモールド用樹脂の材質を比較した。
本発明の第2の実施の形態に係る半導体モジュールは、実施例1と同様の半導体モジュールを作製し、その際のモールド用樹脂の材質を比較した。
半導体モジュールにおいては、半導体チップ2となるシリコンの熱膨張係数は3.0×10−6/Kであるため、これが接合される放熱基板1との熱膨張係数(5.5〜16)×10−6/K)とは大きく異なる。このため、冷熱サイクルに際しては、この熱膨張差に起因する歪みがはんだ層9に発生する。これらを低減してはんだ層9の接合信頼性を確保するには、主に、(1)はんだ層の上下面に位置する構成部材の熱膨張係数差を低減する、(2)はんだ層の上下面に位置する構成部材の剛性を持たせる方法が効果的である。本発明では、この(2)の効果を意図したもので、モールド樹脂6を形成することによって、これを低減している。すなわち、金属板3、はんだ層9、半導体チップ2をモールド樹脂6で覆うことによって、これらの強度を確保している。さらに、モールド樹脂6の熱膨張係数を25ppm/K以下とすることによって、冷熱サイクルに際してのモールド樹脂6と金属板3との接合信頼性が飛躍的に向上する。
金属板3、5に1.5mm厚の無酸素銅A、および0.6mm厚の銅合金Dを用いた放熱基板1を用いた半導体モジュール8において、熱膨張係数の異なるモールド樹脂6を用いたものを複数作成し、その特性を調べた。なお、樹脂の熱膨張係数は放熱基板よりも大きい材質のものが多く、最も熱膨張係数が低いものでも10ppm/K前後である。図7は、前記の冷熱サイクル試験結果における冷熱サイクル寿命とモールド樹脂6の熱膨張係数との関係を調べた結果である。ここで、冷熱サイクル寿命とは、前記の冷熱サイクル試験において、この半導体モジュール8が不合格となったときのサイクル数である。最大印加サイクル数が3000回であったため、図7において○印の点(合格)は冷熱サイクル寿命が3000回だった点ではなく、少なくとも3000回以上となった点を表している。一方、×印の点(不合格)は、冷熱サイクル寿命が3000回未満だった点であり、実際に測定された冷熱サイクル寿命を表している。この結果より、この熱膨張係数を25×10−6/K以下とすることにより、3000回以上の高い冷熱サイクル寿命が得られた。この熱膨張係数が25×10−6/Kより大きな場合には冷熱サイクルが3000回未満となった。この場合には、はんだ層の破損は生じないものの、この冷熱サイクル寿命において熱抵抗が25%以上増加した。これは、はんだ層9に破損が生じない範囲で、冷熱サイクルによって歪みが発生し、接合状態の劣化が生じていることを示している。すなわち、モールド樹脂6の熱膨張係数を、放熱基板1の熱膨張係数に近くすることによって、歪みを低減することができた。
従って、この半導体モジュール8は、冷熱サイクルに対する高い耐久性を有する。特に、この半導体モジュール1においては、これが機器に搭載された状態で高い耐久性が得られる。
この半導体モジュール8の最も優れる点は、放熱基板1を構成する金属板3および金属板5の個々の熱膨張挙動を制御することで、半導体モジュール1の高放熱性を確保した上で耐久性を飛躍的に向上させたことにある。
なお、上記の例ではセラミックス板2として窒化珪素セラミックスを用いていたが、これに限られるものではなく、同等以上の熱伝導率、3点曲げ強度、破壊靱性値、絶縁性をもつものであれば、同様に用いることができる。
また、上記の例では金属板3および金属板5として銅または銅合金を用いていたが、これに限られるものではなく、放熱基板としての熱膨張係数が所定の範囲となる構成であれば、同一材質の銅を用いることも可能である。
モールド樹脂6についても同様に、上記の例に限られるものではなく、半導体チップ2や金属板3等を被覆することができ、絶縁抵抗の高い材料であれば、同様に用いることが可能である。
(実施例1〜25、比較例1〜9)
実施例1〜25として、上記の構成の回路基板を作成し、これに半導体チップを搭載して上記の構造の半導体モジュールを作成して冷熱サイクルを印加し、その耐久性能を調べた。同時に、比較例となる回路基板も作成して、これを半導体モジュールとし、同様の特性を調べた。
実施例1〜25として、上記の構成の回路基板を作成し、これに半導体チップを搭載して上記の構造の半導体モジュールを作成して冷熱サイクルを印加し、その耐久性能を調べた。同時に、比較例となる回路基板も作成して、これを半導体モジュールとし、同様の特性を調べた。
実施例1〜25および比較例1〜9においては、使用したセラミックス基板はすべて30mm×40mmの窒化珪素セラミックス板(熱伝導率が90W/m/K程度、3点曲げ強度が700MPa程度、破壊靱性値が6MPa・m1/2程度)である。金属回路板および金属放熱板としては、表1に示した銅または銅合金の中から選択した。使用したろう材はTiを活性金属として含有し、組成はAg−Cu−In系のものである。また、接合温度760℃である。
実施例1〜5は、金属板3,5に無酸素銅Aを用い、T1+T2が1.0mmから5.0mmの範囲で変化させた。実施例10〜13では、セラミックス板厚みを0.1から0.63mmまで変化させて用い、実施例14〜18では、モールド樹脂6の熱膨張率を10〜24ppm/Kまで変化させた。
実施例20〜25 銅合金材質を変化させている。なお、セラミックス基板の厚さはいずれも0.32mmとした。
比較例1、2では本半導体モジュール構造との特性比較のために、比較例1では半導体チップ下面のみに放熱基板を設けた図8に示した構造で作成した半導体モジュール構造を、比較例2では本発明の放熱基板1の代わりにセラミックス板4、および金属板3,5をグリース11を介してボルト(図示せず)締めして一体化した放熱基板を半導体チップ両面に設けた図9に示した構造の半導体モジュールを作製、評価した。なお、いずれも金属板3,5に無酸素銅Aを用いている。
比較例3,4では、金属板3,5に無酸素銅Aを用いて、その厚みの和T1+T2を1mm以下の0.8mmおよび5mm以上の6.0mmとした。
比較例5,6では、金属板を3,5として異なる材質の銅合金を用い、その厚みの和T1+T2を1mm以下の0.7mmおよび5mm以上の6.0mmとした。
比較例7では、金属板3,5を無酸素銅Aとし、モールド樹脂の熱膨張係数を25ppm/Kを超える27ppm/Kとした。
比較例8,9ではセラミックス板4の材質をそれAlN、アルミナジルコニアとして、基板を試作した。なお、金属板3、5はいずれも0.8mmの無酸素銅Aを用いた。また、セラミックス板として用いたAlNの曲げ強度は400MPa、破壊靱性値は3.0MPa.m0.5、アルミナジルコニアの曲げ強度は800MPa、破壊靱性値は3.5MPa.m0.5である。
以上の実施例および比較例について、−40℃〜+125℃の冷熱サイクルにおける特性を調べた。また、この温度範囲での金属板3および金属板5の表面の見かけの熱膨張係数を測定し、放熱基板1単体の熱膨張係数を算出した。この測定は、金属板3および金属板5表面に歪みゲージを取り付け、この温度範囲での歪み量を測定することにより算出した。
図1に示すように、この放熱基板1に半導体チップ(パワーMOSFET)をSn−3%Ag−0.5%Cuはんだで接合して搭載し、冷熱サイクルを印加した。−40℃〜+125℃の冷熱サイクル1サイクルは70分を3000回印加し、その後での半導体チップ下のはんだ層の破損の状況を超音波画像診断装置(日立建機製Hi−Focus)を用い、ボイド率(ボイドの面積/半導体チップ面積×100)を算定した。また、放熱基板とモールド樹脂との間に剥離が発生しているかどうかも調べた。はんだ層の破損およびモールド樹脂の剥離は、これらにおける界面のボイド率が3000サイクル後に30%以上となっていた場合を、破損や剥離が発生したと認定した。いずれかの箇所で破損や剥離が発生したものを不合格とした。
また、冷熱サイクルの印加の前後で、半導体チップ側から見た熱抵抗(℃/W)を測定した。この測定は、半導体チップに通電することによってこれを発熱させ、そのとき温度上昇を熱抵抗評価装置(キャッツ電子製、MODEL DVF240)によって電圧換算により測定した。ここでは、単位断面積当たりの量ではなく、単位を(℃/W)として測定した。初期(冷熱サイクル印加前)の熱抵抗の値が0.21℃/W以上であったものは放熱特性が悪いために不合格と判定した。また、初期の熱抵抗がこの値より小さくとも、冷熱サイクル印加後の熱抵抗の値が25%以上増加していたものは、はんだ層において上記の観察では判別できない程度の破損やセラミックス基板のクラック等が発生したものと考えられるため、不合格とした。以上の結果を表2にまとめて示す。
実施例1〜25の半導体モジュールにおいては、3000回の冷熱サイクルによってもはんだ層の破損やモールド樹脂の剥離を生じることがなく、冷熱サイクルの前後で低い熱抵抗値を保つことが確認できた。また、これらの放熱基板の熱膨張係数は、いずれも5.5〜16×10−6/Kの範囲内であった。また、常温における最大反り量の絶対値は200μm/inch以下であった。
これに対し、本導体モジュールの構造が本発明と異なる比較例1〜2は、いずれもモジュール作製直後で測定した熱抵抗が既にそれぞれ0.21および0.23℃/Wと高く、放熱性が劣るモジュールであることがわかる。
金属板が厚い比較例4、6は初期の熱抵抗値は低いものの、冷熱サイクル3000サイクル後の熱抵抗の増加率も大きくなった。また、半導体チップと放熱基板間のはんだ層でクラックが観察され、このクラックにより熱抵抗が増大したものと推察された。
金属板の薄い比較例3,5では初期熱抵抗が高く、また冷熱サイクルによって樹脂と放熱基板の間で剥離が生じた。
モールド樹脂の熱膨張率が大きい比較例7では樹脂モールド直後に既に樹脂と放熱基板の間で剥離が生じてた。
比較例8,9では、金属回路板と金属放熱板の組み合わせを同一とし、セラミックス基板の材質を窒化珪素の代わりにAlNおよびアルミナジルコニアを用いて、前記と同様の特性を調べた。
アルミナ・ジルコニアセラミックスは窒化珪素セラミックスと比べて3点曲げ強度は高いが、熱伝導率および破壊靱性が低く、窒化アルミニウムセラミックスは、熱伝導率は高いが、3点曲げ強度および破壊靱性が低い。
上記の構成で、回路基板を作成したところ、金属板3,5の形成後に、セラミックス基板にこれらによって応力が発生し、クラックが発生し、その後の評価不能であった。従って、本発明の回路基板および半導体モジュールにおけるセラミックス基板としては、3点曲げ強度が700MPa程度以上、破壊靱性値が6MPa・m1/2程度以上である窒化珪素セラミックスが好ましい。
1 放熱基板
2,33 半導体チップ
3,5 金属板
4,40 セラミックス板
6,39 モールド樹脂
7 放熱ブロック
8,31 半導体モジュール
9 はんだ層
11 グリース
32 金属ブロック
34 フレーム
35 リード
36 ボンディングワイヤ
37 ケース
38 外部端子
2,33 半導体チップ
3,5 金属板
4,40 セラミックス板
6,39 モールド樹脂
7 放熱ブロック
8,31 半導体モジュール
9 はんだ層
11 グリース
32 金属ブロック
34 フレーム
35 リード
36 ボンディングワイヤ
37 ケース
38 外部端子
Claims (6)
- 半導体チップとこの半導体チップの両面から放熱するための一対の放熱基板とを備えた半導体モジュールであって、
前記放熱基板はセラミックス基板の両面に銅板もしくは銅合金板をろう材により接合してなり、前記放熱基板および前記半導体チップのほぼ全体がモールド樹脂で覆われていることを特徴とする半導体モジュール。 - 前記放熱基板の熱膨張係数が5.5〜16×10−6/K、の範囲であることを特徴とする放熱基板。
- 前記放熱基板に接合された金属板の厚さがT1、T2としたとき1.0≦T1+T2≦5.0mmであることを特徴とした請求項1記載の放熱基板。
- 前記放熱基板に一方の面に接合された銅板もしくは銅合金板の軟化点温度が、前記放熱基板の他方の面に接合された銅もしくは銅合金板の軟化点温度が異なり、かつ厚みが異なることを特徴とする請求項1〜3記載の放熱基板。
- 前記セラミックス板が窒化珪素セラミックスであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回路基板。
- 前記モールド樹脂の熱膨張係数が25(×10−6/K)以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体モジュール。
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