JP6311877B2 - フッ素含有電解液の処理方法 - Google Patents
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Description
〔1〕フッ素化合物および有機溶媒を含む電解液の処理方法であって、該電解液を含む使用済み電池を洗浄溶媒で洗浄して該電解液を抽出する洗浄工程、該洗浄工程で得た洗浄後液を回収する洗浄後液回収工程、回収した上記洗浄後液に含まれる揮発成分を減圧下で気化する気化工程、該気化工程で得たガスに含まれるフッ素成分をカルシウム化合物と反応させてフッ化カルシウムにして回収するフッ化カルシウム回収工程、および上記気化工程で得たガスに含まれる有機溶媒成分を回収する有機溶媒成分回収工程を有することを特徴とするフッ素含有電解液の処理方法。
〔2〕上記洗浄溶媒が炭酸エステル類であり、上記洗浄後液回収工程で回収した電解液中の炭酸エステル類を精製後に洗浄溶媒として再利用する、上記[1]に記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔3〕上記気化工程において、上記洗浄後液に少量の水または希薄な鉱酸を添加した後に減圧下で加熱して、上記洗浄後液に含まれているLiPF6の加水分解によってフッ素成分の気化を促進する、上記[1]または上記[2]に記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔4〕上記気化工程で得たガスを冷却して凝縮液にし、該凝縮液から有機溶媒成分を回収し、該凝縮液に含まれるフッ素成分をカルシウム化合物と反応させてフッ化カルシウムとして回収する、上記[1]〜上記[3]の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔5〕上記気化工程で得たガスをカルシウム化合物に接触させ、該ガス中のフッ素成分をカルシウム化合物と反応させてフッ化カルシウムとして回収し、該ガスを冷却して凝縮液として有機溶媒成分を回収する上記[1]〜上記[3]の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
本発明は、フッ素化合物および有機溶媒を含む電解液の処理方法であって、該電解液を含む使用済み電池を洗浄溶媒で洗浄して該電解液を抽出する洗浄工程、該洗浄工程で得た洗浄後液を回収する洗浄後液回収工程、回収した上記洗浄後液に含まれる揮発成分を減圧下で気化する気化工程、該気化工程で得たガスに含まれるフッ素成分をカルシウム化合物と反応させてフッ化カルシウムとして回収するフッ化カルシウム回収工程、および上記気化工程で得たガスに含まれる有機溶媒成分を回収する有機溶媒成分回収工程を有することを特徴とするフッ素含有電解液の処理方法である。
本発明の実施形態の具体的な処理例を図1に示す。
本発明の処理方法では、リチウムイオン電池などから安全に電解液を取り出すために、使用済みのリチウムイオン電池などを放電した後に、この使用済み電池を洗浄溶媒で洗浄して電池内部の電解液を抽出する。
洗浄溶媒は沸点150℃以下の有機溶媒が好ましい。洗浄溶媒として例えば、エタノール、メタノール、メチルエチルケトン、アセトン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル等を挙げることができ、より好ましくは、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルを挙げることができる。
さらに、電解液に含まれる炭酸エステル類を、本発明本実施形態の処理方法あるいは他の方法によって使用済み電池のから回収して洗浄溶媒に再利用することができる。電解液中の炭酸エステル類を洗浄溶剤に再利用すれば、コストを低減することができるので好ましい。
洗浄後、洗浄後液を回収する。洗浄後液には電解液が抽出されており、従って電解質のフッ素化合物(LiPF6)と、有機溶媒(DMC、EMC、DEC、PC、EC等)が含まれている。
洗浄後は上記開孔を下向きにして電池から洗浄後液を抜き出し、あるいは上記開孔から洗浄後液を吸引して抜き出す。電池を洗浄溶媒に浸漬して洗浄する方法では、電池を引き上げて洗浄後液を回収する。洗浄を繰り返すことによって電池内部に残留する電解液量を低減することができる。
電池から抜き出した洗浄後液を密閉容器に入れて加熱し、洗浄後液に含まれているフッ素化合物(LiPF6)および有機溶媒成分を減圧下で気化させる。有機溶媒のうち炭酸エステル類については、常圧(101.3kPa)において、DMCの沸点は90℃、EMCの沸点は109℃、DECの沸点は127℃、PCの沸点は240℃であり、ECの沸点は244℃であるが、減圧下ではこれらの沸点以下で気化する。具体的には、例えば、5kPaの減圧下で80℃〜150℃に加熱すると、洗浄後液は170℃〜251℃の状態になるので、洗浄後液に含まれるDMC、EMC、DEC、PC、EC、およびフッ化水素を気化させることができる。なお、5kPaより低く、例えば1kPa〜0.1kPaに減圧して80℃〜120℃に加熱しても良い。
LiPF6+H2O → LiF+2HF(↑)+POF3
POF3+H2O → HPO2F2+HF(↑)
HPO2F2+H2O → H2PO3F+HF(↑)
H2PO3F+H2O → H3PO4+HF(↑)
本発明の処理方法は、気化したガスに含まれるフッ素成分(主にフッ化水素)をカルシウム化合物と反応させてフッ化カルシウムにして回収するフッ化カルシウム回収工程、および気化したガスに含まれる有機溶媒成分を回収する有機溶媒成分回収工程を有する。気化したガスは冷却して凝縮液にし、該凝縮液から有機溶媒成分を分離して回収し、さらに該凝縮液に含まれるフッ素成分をカルシウム化合物と反応させてフッ化カルシウムにして回収することができる。または、気化ガスの状態でガス中のフッ素成分をカルシウムと反応させてフッ化カルシウムを生成させ、これを回収することができる。また、回収した有機溶媒成分は精製して本発明の洗浄溶媒として利用することができる。回収工程の態様を図2に示す。
該カルシウム含有液としては炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウムなどの溶液を用いることができる。
カルシウム含有液の溶媒としては、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルなどを用いることができる。該カルシウム含有液の濃度は0.5%〜40%が好ましく、5%〜25%がより好ましい。
生成したフッ化カルシウムは液分を揮発させ、あるいは固液分離して回収することができる。分離した液分は、新しいカルシウム化合物を補充して、再びカルシウム含有液として使用することができる。
洗浄液の有機溶媒として炭酸ジエチル(DEC)を用い、これを重量1.67kgの使用済みリチウムイオン電池に注入し、内部を20kPaに減圧して脱泡処理し、続いて超音波照射を3分間行った。電池内部から洗浄後液を吸引して抜き出した。この有機溶媒注入から洗浄後液抜き出しの操作を繰り返し5回行った。洗浄回数、有機溶媒の注入液量、回収した洗浄後液の量、洗浄後液に含まれるリン濃度(リン重量)を表1に示す。電解液中のフッ素およびリンはPF6 -錯体を形成しており、この形態ではフッ化物イオン電極によるフッ素の濃度測定ができないので、フッ素に代えてリンを指標にして洗浄効果を示す。
表1に示すように、5回の洗浄で、合計2.323gのリン(このリン量に相当する電解質)を電池から抜き出した。廃電池の重量は12.9g(=376.5g−363.6g)減少した。
実施例1で抜き出した洗浄後液373gを密閉容器に入れ、水20gを添加し、オイルバス温度120℃、圧力20kPaで2時間減圧し、洗浄後液に含まれる有機溶媒およびフッ化水素を気化させた。
この気化ガスを、図2(ロ)に示す回収工程に従い、冷却器に導入して2℃に冷却凝縮し、凝縮液325mLを回収した。凝縮液のフッ素濃度は14400mg/L、pH1.0であった。これに炭酸カルシウム13.0gを加えて沈澱を生成させた。固液分離した沈澱は粉末X線回折によってフッ化カルシウムであることを確認した。フッ化カルシウムの回収量10.3g(フッ素の回収量4.59g)、純度91.2%であり、フッ酸製造原料として利用できるものであった。固液分離後の液相のフッ素濃度は30mg/Lであった。また、この液相は濃度93%の炭酸ジエチル(DEC)、電解液由来の炭酸ジメチル(DMC)を3%、炭酸エチルメチル(EMC)を1.5%、残留した水分を2%、その他0.5%を含む液体であった。この混合溶媒315gを回収した。
実施例2で回収した炭酸ジエチル(DEC)を主成分とする混合溶媒を精製して洗浄液の有機溶媒として用いた以外は実施例1と同様にして使用済みリチウムイオン電池の内部を回収した有機溶媒で洗浄し、洗浄後液を電池から抜き出した。洗浄回収5回、各注入液量50g〜80g、合計注入液量355.2g、合計回収液量(洗浄後液の液量)367.3g、洗浄後液に含まれるリン合計量2.3gであった。
抜き出した洗浄後液に水20gを添加し、実施例2と同様にしてフッ化カルシウムと有機溶媒を回収した。フッ化カルシウムの回収量10.2g(フッ素の回収量4.54g)、純度90.8%であった。
使用済みリチウムイオン電池にそのまま水20gを注入し、減圧乾燥して電解液を除去した。オイルバス温度120℃、圧力20kPaで2時間減圧し、洗浄後液に含まれる有機溶媒およびフッ化水素を気化させた。その結果、凝縮液161.6gを回収した。この凝縮液のフッ素濃度は15500mg/Lであった。実施例1と同様にして、フッ化カルシウムと有機溶媒を回収した。フッ化カルシウムの回収量5.5g(フッ素の回収量2.45g)、純度90.6%であった。
Claims (5)
- フッ素化合物および有機溶媒を含む電解液の処理方法であって、該電解液を含む使用済み電池を洗浄溶媒で洗浄して該電解液を抽出する洗浄工程、該洗浄工程で得た洗浄後液を回収する洗浄後液回収工程、回収した上記洗浄後液に含まれる揮発成分を減圧下で気化する気化工程、該気化工程で得たガスに含まれるフッ素成分をカルシウム化合物と反応させてフッ化カルシウムにして回収するフッ化カルシウム回収工程、および上記気化工程で得たガスに含まれる有機溶媒成分を回収する有機溶媒成分回収工程を有することを特徴とするフッ素含有電解液の処理方法。
- 上記洗浄溶媒が炭酸エステル類であり、上記洗浄後液回収工程で回収した電解液中の炭酸エステル類を精製後に洗浄溶媒として再利用する、請求項1に記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- 上記気化工程において、上記洗浄後液に少量の水または希薄な鉱酸を添加した後に減圧下で加熱して、上記洗浄後液に含まれているLiPF6の加水分解によってフッ素成分の気化を促進する、請求項1または請求項2に記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- 上記気化工程で得たガスを冷却して凝縮液にし、該凝縮液から有機溶媒成分を回収し、該凝縮液に含まれるフッ素成分をカルシウム化合物と反応させてフッ化カルシウムとして回収する、請求項1〜請求項3の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- 上記気化工程で得たガスをカルシウム化合物に接触させ、該ガス中のフッ素成分をカルシウム化合物と反応させてフッ化カルシウムとして回収し、該ガスを冷却して凝縮液として有機溶媒成分を回収する請求項1〜請求項3の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
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