JP4492223B2 - リチウム電池処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム電池から有価物を回収する技術に関する。特に、正極活物質として用いられているリチウム含有複合酸化物から有用な回収物を得る技術に関する。
廃リチウム電池から有価物を回収することに関する種々の方法が提案されている。例えば特許文献1には、リチウムと遷移金属元素との複合酸化物(コバルト酸リチウム等)を含有する電池正極廃材からリチウム成分および遷移金属成分を回収および再生する技術が記載されている。この文献では、コバルト酸リチウム等を含む電池正極廃材を硝酸で溶解し、これを濾過して硝酸リチウムおよび遷移金属元素の硝酸塩を含有する濾液を残渣から分離し、この濾液に種々の処理を施して遷移金属成分およびリチウム成分をそれぞれ回収し、再生している。また、この文献には、アルミニウム箔付きコバルト酸リチウム等の廃材を処理する場合、該廃材を硝酸溶液またはアルカリ溶液(水酸化ナトリウム等)で処理してアルミニウムを溶解除去し、そのアルミニウム除去後のコバルト酸リチウム廃材等を硝酸で溶解する技術が記載されている。
特開平11−54159号公報
しかし、従来の方法は、回収される有価物の有用性(純度、性状等)や回収費用等の点でなお改善の余地のあるものであった。特に、リチウム電池の正極活物質等として用いられているリチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物から、リチウム成分および/または遷移金属成分を、より再利用しやすい形態で、かつ/または、より効率よく回収することができれば有益である。
そこで本発明は、リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物を備えるリチウム電池の処理方法であって、そのリチウム電池から有価物を、より再利用しやすい形態で回収し得る処理方法(有価物の回収方法)を提供することを一つの目的とする。本発明の他の一つの目的は、かかる有価物をより効率よく回収し得る処理方法を提供することである。関連する一つの目的は、そのようにして回収された有価物を利用して得られたリチウム電池用材料およびその製造方法を提供することである。また、かかるリチウム電池用材料を用いてなるリチウム電池およびその製造方法を提供することである。
本発明者は、従来技術の多くのものが、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物に酸(例えば特許文献1では硝酸)を作用させて、該複合酸化物を構成するリチウム成分および遷移金属成分を共に酸に溶出させた後、それらリチウム成分および遷移金属成分が溶解した溶液から各成分を分離回収している点に着目した。そして本発明者は、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物を特定の条件で処理することにより、該複合酸化物を構成するリチウム成分を、遷移金属成分と適切に分離しつつ取り出し得ることを見出し、これにより上述した課題の解決が可能となることを見出して本発明を完成した。
この出願により提供される一つの発明は、リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物から構成される正極活物質を備えるリチウム電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)を処理する方法に関する。その方法は、該正極活物質とアルミニウム製の正極集電体とを含む被処理材に、アルカリ土類金属水酸化物を含む処理液を供給する工程(Ae処理工程)を含む。このAe処理工程によって該正極活物質からリチウム成分を溶出する。さらに、その溶出したリチウム成分を含むリチウム溶液を前記被処理材の不溶分から分離する工程(分離工程)を含むことができる。
ここで「アルミニウム製」とは、アルミニウム(Al)またはアルミニウムを主体とする合金を主構成材料とすることをいう。また、本明細書および特許請求の範囲において「アルカリ土類金属」とは、特記しない限り、マグネシウムをも含む意味である。すなわち、本発明におけるアルカリ土類金属元素の概念には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)が含まれる。
上記Ae処理工程により、正極活物質を構成する上記複合酸化物に含まれるリチウム成分から、可溶性の(例えば、上記処理液および/または水に可溶な)リチウム化合物が生じ得る。典型的には、該複合酸化物に含まれるリチウム成分から主として水酸化リチウムが生じる。このような可溶性リチウム成分は、上記処理液等によって上記正極活物質から(さらには上記被処理材から)容易に溶出することができる。一方、上記複合酸化物に含まれる遷移金属成分は、該Ae処理工程において実質的に溶出しない。典型的には、かかる遷移金属成分は上記処理液および/または水に対する溶解性の低い遷移金属化合物を構成する。したがって、被処理材にAe処理を施した後に上記分離工程を行うことにより、Ae処理工程により溶出したリチウム成分と、上記遷移金属化合物を含む不溶分とを容易に分離することができる。なお、上記分離工程は必要に応じて加熱(加温)条件下で行うことができる。
上記複合酸化物の好適例としては、リチウムとニッケルとを含む複合酸化物が挙げられる。ここで、「リチウムとニッケルとを含む複合酸化物」とは、リチウムとニッケルとを構成金属元素とする酸化物の他、リチウムおよびニッケル以外に他の少なくとも一種の金属元素(すなわち、リチウムおよびニッケル以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む複合酸化物をも包含する意味である。そのような複合酸化物は、例えば一般式LiNi1−xで表すことができる。この一般式中のAは、上記「他の少なくとも一種の金属元素」に対応する。Aの好適例としてはコバルトが挙げられる。また、式中のxは、0≦x<0.5、好ましくは0.1<x<0.3を満たす値である。上記複合酸化物の他の好適例としては、リチウムとコバルトとを含む複合酸化物(リチウムおよびコバルト以外の少なくとも一種の金属元素を含有するものを包含する。)、リチウムとマンガンとを含む複合酸化物(リチウムおよびマンガン以外の少なくとも一種の金属元素を含有するものを包含する。)が挙げられる。
ここで開示される方法は、正極集電体上に正極活物質を有する正極を含む被処理材に対して好ましく適用することができる。上記Ae処理工程の典型的な態様では、被処理材に含まれる正極集電体が上記処理液の作用によって腐食(侵蝕)される。これにより正極集電体の形状(金属部分)が次第に消失する。正極集電体がほぼ完全に腐食すると(例えば、正極集電体の定形性が実質的に失われると)、正極集電体に付着していた正極活物質が支持体を失って脱落する。かかる正極活物質の脱落は正極集電体の腐食途中においても起こり得る。したがって、上記態様によると、正極集電体上から正極活物質を取り除く操作(例えば、上記正極に物理的応力を加えて正極集電体から正極活物質を剥離する操作)を省略することができる。このことによってリチウム電池の処理方法を簡略化し得る。
好ましい態様では、上記Ae処理工程が、正極集電体に処理液を作用させて該集電体の定形性を実質的に失わせる処理を含む。例えば、処理液に被処理材を浸漬し、その被処理材に含まれる正極集電体の定形性が実質的に失われるまでその浸漬状態を維持する。これによりリチウム電池の処理方法を簡略化することができる。正極集電体上に正極活物質を有する正極を備えるリチウム電池に対して本発明の処理方法を適用する場合には、かかる態様を採用することによる効果が特によく発揮される。
上記Ae処理工程に使用するアルカリ土類金属水酸化物は、Mg,Ca,SrおよびBaの各アルカリ土類金属元素の水酸化物からなる群から選択される一種または二種以上であり得る。水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムおよび水酸化バリウムのうち一種または二種以上を使用することが好ましい。Ae処理工程に用いる処理液は、典型的には、このようなアルカリ土類金属水酸化物の一種または二種以上と、適当な溶媒とを含有する。かかる溶媒としては水系溶媒(水または水を主体とする混合溶媒をいう。)を好ましく用いることができる。特に好ましい溶媒は水である。このような溶媒にアルカリ土類金属水酸化物の実質的に全部が溶解している処理液であってもよく、アルカリ土類金属水酸化物の一部を固体状として含有する処理液であってもよい。例えば、アルカリ土類金属水酸化物の飽和溶液と過剰のアルカリ土類金属水酸化物とがほぼ平衡状態にある処理液を用いることができる。
ここで開示される方法の好ましい態様では、上記Ae処理工程において、被処理材に含まれるアルミニウム成分(典型的には、アルミニウム材料として含有されるアルミニウム成分)の量に対して、モル比で1.5倍以上(より好ましくは1.8倍以上)の分量に相当するアルカリ土類金属水酸化物を使用する。Ae処理工程において正極集電体の定形性を実質的に失わせる場合には、上記分量(モル比)のアルカリ土類金属水酸化物を使用することが特に好ましい。これにより正極集電体の腐食を効率よく進行させることができる。例えば、実用上好ましい期間内(典型的には一ヶ月以内)に上記正極集電体の定形性を実質的に失わせることができる。アルカリ土類金属水酸化物の使用量の上限は特に限定されない。通常は、被処理材に含まれるアルミニウム成分の量に対してモル比で1.5〜4倍(より好ましくは2〜3倍)程度のアルカリ土類金属水酸化物を使用することが適当である。
上記Ae処理工程は、例えば、処理液を構成するアルカリ土類金属水酸化物の全量を含む処理液を被処理材に一度に供給する態様で実施することができる。例えば、処理液を構成するアルカリ土類金属水酸化物の全量および溶媒の全量を含む液中に被処理材を浸漬して放置する。また、上記Ae処理工程は、処理液を構成するアルカリ土類金属水酸化物の一部または全部を被処理材に連続的または間歇的に供給する態様で実施してもよい。例えば、処理液を構成するアルカリ土類金属水酸化物の一部分量と溶媒の全量とを含む液中に被処理材を浸漬し、その液中に残りのアルカリ土類金属水酸化物を連続的あるいは間歇的に補給(追加)することができる。
ここで開示される方法は、Ae処理工程に供される被処理材が、正極集電体上に正極活物質を有する正極と、負極集電体上に負極活物質を有する負極とを含む態様で実施することができる。そのAe処理工程は、被処理材を処理液に浸漬する処理と、該処理液中から固体状の負極集電体を取り出す処理とを包含することができる。一般に、リチウム電池の負極集電体は上記処理液によって実質的に腐食されない(溶出しない)金属材料を主体として構成されている。典型的には銅製の負極集電体が用いられる。したがって、このような負極集電体を有する負極と正極とを含む被処理材を上記処理液に浸漬することにより、正極集電体の一部または全部を腐食させる一方、この処理液中から固体状の(典型的には金属状態の)負極集電体を取り出すことができる。かかる態様によると、正極と負極とが混在している被処理材から負極集電体を効率よく回収することができる。負極集電体を取り出すタイミングは特に限定されない。通常は、正極集電体がほぼ完全に腐食した後に負極集電体を取り出すことが簡便であり好ましい。
ここで開示される方法の典型的な態様では、前記Ae処理工程において、前記正極活物質からリチウム成分(典型的には水酸化リチウム)を溶出するとともに、該正極活物質に含まれる遷移金属元素のうち少なくとも一種の遷移金属元素を含む化合物であって上記処理液や水に対する溶解性の低い遷移金属化合物を生じさせることができる。かかる遷移金属化合物は、例えば、該遷移金属元素とアルミニウムとを含む複合化合物(例えばNiAl(CO)(OH))、該遷移金属元素の酸化物(例えばNiO)等であり得る。このような遷移金属化合物は、少なくとも水酸化リチウムに比べて処理液および/または水に対する溶解性が明らかに低い。したがって、Ae処理後にリチウム溶液を分離する工程において、上記遷移金属化合物は不溶分として該リチウム溶液(リチウム成分)と分別される。かかる溶解性の違いを利用して、リチウム成分と遷移金属成分とを容易に分別することができる。なお、このようにAe処理工程において正極活物質を構成する複合酸化物からリチウム成分(水酸化リチウム等の可溶性リチウム成分)と遷移金属成分(アルミニウムとの複合化合物、酸化物等の不溶性遷移金属化合物)とを生じる処理は、該複合酸化物をリチウム成分と遷移金属成分とに分解する処理としてとらえることができる。
本発明の適用対象として好適なリチウム電池として、複合酸化物を構成する主たる(第一の)遷移金属元素がニッケルである複合酸化物(リチウム・ニッケル含有複合酸化物)から構成される正極活物質を用いたリチウム電池を例示することができる。そのようなリチウム・ニッケル含有複合酸化物の一例としては、一般式LiNiOで表されるものが挙げられる。また、他の例として、第一遷移金属元素がニッケルであり、他の金属元素(副成分)としてコバルトを含むリチウム・ニッケル含有複合酸化物が挙げられる。かかるリチウム・ニッケル含有複合酸化物は、例えば一般式LiNi1−xCoで表すことができる。ここで、0<x<0.5であり、好ましくは0.1<x<0.3である。Coに代えてAl,Mn,Cr,FeまたはVを有する複合酸化物であってもよい。さらに他の例としては、一般式LiNi1−y−zCoAlで表されるものが挙げられる。ここで、0≦y<0.5(好ましくは0<y<0.2)であり、0<z<0.5(好ましくは0<z<0.1)であり、かつ0<(y+z)<0.5(好ましくは0.1<(y+z)<0.3)である。Alに代えて、あるいはAlとともに、Mn,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W,Cu,Zn,Ga,In,Sn,LaおよびCeからなる群から選択される一種または二種以上の金属元素を有する複合酸化物であってもよい。すなわち、複合酸化物は、一般式LiNi 1−x (Mは1種以上の遷移金属元素であり、0≦x<0.5)で表すことができる。
ここで開示される方法の好ましい態様では、上記被処理材がシート状の正極集電体を含む。このような形状の正極集電体(例えばアルミニウム箔)は、表面積が広いことから、上記Ae処理工程において効率よく腐食され得る。シート状の正極(典型的には、シート状の正極集電体の表面に正極集電体が付着したもの)と、シート状の負極(典型的には、シート状の負極集電体の表面に負極集電体が付着したもの)とが重ね合わされた構成の電極体を備えるリチウム電池は、ここで開示される方法の適用対象として好適なリチウム電池の一例である。かかる構成の電極体としては、いわゆる積層型電極体、捲回型電極体等が挙げられる。本発明の方法は、シート状の正極およびシート状の負極を有する捲回型電極体を備えたリチウム電池に対して特に好ましく適用される。その捲回型電極体を含む被処理材を上記Ae処理工程に供するとよい。
正極活物質および正極集電体を含む被処理材は、他の電池構成材料をなるべく取り除いた(分別した)状態でAe処理工程に供することが好ましい。このことによって、より再利用性のよい有価物(回収物)を得ることができる。例えば、遷移金属元素や他のアルカリ金属元素等(異種金属元素)の混入がより少ない(品質のよい)炭酸リチウムが得られる。あるいは、より有用な遷移金属化合物(例えば遷移金属水酸化物)が得られる。もっとも、Ae処理工程に供する被処理材の分別は、かかる分別を行うためのコストや手間等と、それにより奏される効果の大きさ(回収される有価物の再利用性(品質)等)とを勘案して、それらが適切なバランスとなるように行えばよい。
例えば、一般的なリチウム電池の多くは、正極活物質を含む正電極材が正極集電体としてのアルミニウム箔(シート状のアルミニウム部材)に付着した構成の正極を備える。この正電極材は、典型的には正極活物質に加えてポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の結着剤(バインダ)を含有する。さらにカーボンブラック等の導電材を含有することもある。これらを含む正電極材が正極集電体に付着している正極を、そのまま被処理材として用いる(Ae処理工程に供する)ことができる。また、後述する加熱処理等によって正電極材に含まれる結着剤の少なくとも一部(好ましくは実質的に全部)を除去した正極を被処理材として用いてもよい。負極活物質を含む負電極材がシート状の負極集電体(例えば銅箔)の表面に付着した構成の負極と上記正極とを積層した構成の電極体(捲回型電極体、積層型電極体等)を備えるリチウム電池にあっては、そのような正極および負極の双方を含む状態の電極体を被処理材として用いることができる。捲回型電極体を備えるリチウム電池の処理に本発明の方法を適用する場合には、その電極体を捲回状態のままAe処理工程に供することができる。
一方、あらかじめ被処理材と分別しておくことが好ましい電池構成材料の一例としては電解液が挙げられる。一般に電解液は、有機溶媒に電解質(支持塩)が溶解した構成を有する。被処理材は、電解液を構成する有機溶媒および電解質の少なくとも一方と分別しておくことが好ましく、有機溶媒および電解質の双方と分別しておくことがより好ましい。このことによって、電解質の構成材料(有機溶媒等)を有効に再利用することができる、被処理材の取扱性が向上する、のうち少なくとも一つの効果が得られる。この電解液と被処理材との分別は、リチウム電池を加熱して電解液(有機溶媒および電解質)を除去することにより好適に行うことができる。その加熱後に残った電池構成部材の一部または全部を被処理材としてAe処理工程に供するとよい。また、電解液と被処理材とを分別する他の方法としては、リチウム電池を非水系有機溶媒等により抽出して電解液を抜き取る方法を例示することができる。
本発明の一つの好ましい態様では、処理対象たるリチウム電池を加熱して揮発性材料を除去する処理を行う。ここで「揮発性材料」とは、加熱により気体状(蒸発、昇華、熱分解等の種類を問わない)となって除去し得る材料をいう。そのような揮発性材料としては、電解液を構成する有機溶媒、電解質(リチウム塩等)、セパレータ、結着剤、絶縁材、外装塗料等の一種または二種以上が挙げられる。各構成材料は、実質的に全部を除去することが好ましいが、少なくとも一部を除去することによっても該処理を行うことによる効果(例えば、より有用性の高い回収物を得る効果)が発揮され得る。リチウム電池に含まれる電解質および有機物(有機溶媒、セパレータ、結着剤等)の大部分を除去することが好ましく、実質的に全部を除去することがより好ましい。リチウム電池の加熱は、加熱温度が段階的に高くなる順序で実施することが好ましい。
その加熱後(例えば、リチウム電池を加熱して電解質および有機物を除去した後)に残った電池構成部材の一部または全部を被処理材としてAe処理工程に供することができる。本発明を捲回型電極体または積層型電極体を備えたリチウム電池に適用する場合には、該電極体を他の電池構成材料(例えば電池容器)から分別したものを被処理材として好ましく用いることができる。この分別は、例えば、電池容器を切断して電極体を取り出す等の操作によって容易に実施することができる。
リチウム電池を加熱して揮発性材料(電解質および有機物)を除去する工程は、減圧下で行うことが好ましい。この場合には、減圧による沸点降下を利用して、常圧の場合よりも低温で揮発性材料(有機溶媒等)を揮発させることができる。これにより、例えば電解液に含まれる有機溶媒の変質(熱分解等)を抑制して、再利用性のよい回収物を得ることができる。また、減圧により揮発速度を高めることができるので、加熱下におかれる時間が短くなり、より変質の少ない(再利用性のよい)回収物を得るという効果が得られる。このように減圧下で加熱することにより、リチウム電池を構成する金属部材の酸化が抑制され得る。このことは金属部材を回収・再利用する上で有利である。
上記揮発性材料を除去する工程は、ほぼ一定の条件で行ってもよく、途中で処理条件(加熱温度、減圧度等の処理条件のうち少なくとも一つ)を徐々におよび/または段階的に変更して行ってもよい。通常は、加熱温度が段階的に高くなる順序で該工程を実施することが好ましい。このことによって、より再利用性のよい有価物を回収し得る。
なお、処理対象たるリチウム電池は、事前にほぼ完全に放電させておくことが好ましい。このことによって、処理時の取扱性や作業性の向上、作業環境の改善、処理装置の小型化・簡略化等のうち少なくとも一つの効果が得られる。
ここで開示される方法の好ましい態様は、上述のように被処理材の不溶分から分離する工程を経て得られたリチウム溶液から炭酸リチウムを析出させる工程を含む。例えば、該リチウム溶液に炭酸ガス(CO)および/または炭酸水(HCO)を供給することにより炭酸リチウムを析出させることができる。析出した炭酸リチウムを溶液から分離する工程をさらに含むことが好ましい。かかる態様によると、リチウム溶液に含まれるリチウム成分(リチウムイオン)を、固体状のリチウム化合物(炭酸リチウム)として回収することができる。このように固体状として回収されたリチウム成分は再利用するのに都合がよい。リチウム溶液から炭酸リチウムを析出させるには、炭酸ガスまたは炭酸水(より好ましくは炭酸ガス)を用いるとよい。このようにアルカリ金属成分を含まない材料を用いて炭酸リチウムを析出させることにより、リチウム以外のアルカリ金属元素の混入が少ない炭酸リチウムを得ることができる。例えば、炭酸ガスまたは炭酸水に代えて炭酸ナトリウムを用いた場合と比較すると、得られた炭酸リチウムに混入したナトリウム成分の量を顕著に少なくすることができる。また、上記リチウム溶液は、アルカリ土類金属水酸化物(Ca(OH)等)を用いたAe処理工程を経て得られたものである。したがって、正極活物質を含む被処理材に例えばリチウム以外のアルカリ金属の水酸化物(NaOH等)の水溶液を供給して得られたリチウム溶液とは異なり、リチウム以外のアルカリ金属元素の混入が少ない。このようなリチウム溶液から、上述のようにアルカリ金属成分を含まない材料を用いて炭酸リチウムを析出させることにより、リチウム以外のアルカリ金属元素の混入が少ない炭酸リチウムを得ることができる。いったん混入したナトリウム成分をリチウム成分から分離することは一般に困難であるところ、上記態様によると、簡単な操作によって純度の高い(特に、リチウム以外のアルカリ金属元素や遷移金属成分等の混入が少ない)炭酸リチウムを得ることができる。このように高純度の炭酸リチウムは各種用途への再利用性に優れている。例えば、リチウム電池用の材料(正極活物質製造用の原料等)として好適である。
ここで開示される処理方法は、前記被処理材の不溶分に含まれるアルミニウム成分をアルカリ溶液で溶出して該不溶分から分離するAl除去工程をさらに包含することができる。アルカリ溶液としては、NaOH,KOH等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化バリウムの水溶液等を使用することができる。被処理材の不溶分からアルミニウム成分を溶出し、かつ、他の遷移金属成分を実質的に溶出しない組成のアルカリ溶液を用いることが好ましい。これにより、該工程を経た不溶分から、より有用な(例えば高純度の)遷移金属成分を回収することができる。
また、ここで開示される処理方法は、前記被処理材の不溶分に含まれる前記一種または二種以上の遷移金属元素のうち少なくとも一種の遷移金属元素を酸に溶出させる工程(酸溶出工程)をさらに包含することができる。また、その溶液に中和剤を添加して、該溶液に含まれる遷移金属元素の水酸化物を析出させる工程(析出工程)を包含することができる。上記酸溶出工程で得られた溶液を不溶分から分離し(例えば濾別し)、その分離した溶液に中和剤を添加することが好ましい。かかる工程は、上記Al除去工程を経て得られた不溶分(すなわち、Ae処理工程における不溶分からアルミニウムを除去したもの)に対して実施することが好ましい。これにより、より有用な(例えば高純度の)遷移金属成分を回収することができる。また、上記Al除去工程を省略して酸溶出工程等を実施することも可能である。
この方法で処理する正極活物質は、リチウムと、第一の遷移金属元素と、他の少なくとも一種の金属元素(以下、「他の金属元素」ということもある。)とを含むものであり得る。上記第一遷移金属元素の好適例としては、Ni,CoおよびMnが挙げられる。また、上記他の金属元素は、第一遷移金属元素とは異なる金属元素であって、Co,Al,Mn,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W,Cu,Zn,Ga,In,Sn,LaおよびCeからなる群から選択される一種または二種以上の金属元素であり得る。このような場合には、前記被処理材の不溶分に含まれる前記第一遷移金属元素および前記他の少なくとも一種の金属元素を酸に溶出させる工程を行い、その酸溶出工程で得られた溶液(好ましくは被処理材の不溶分から分離したもの)に中和剤を添加して、前記第一遷移金属元素の水酸化物とともに前記他の少なくとも一種の金属元素の水酸化物を該溶液から析出させるとよい。
このとき、前記酸溶出工程で得られた溶液につき、前記第一遷移金属元素および前記他の金属元素の含有量の比(モル比、質量比等)を把握し、その比が所定範囲から外れている場合には該所定範囲内の量比に調整するとよい。例えば、前記第一遷移金属元素がニッケルである場合、前記他の元素はCo,Al,Mg,Mn,Cr等から選択される一種または二種以上であり得る。これらの金属元素の含有量の比を把握し(例えば組成分析等により)、規定量よりも不足している成分を補う等の手法によって所定範囲内の量比となるように調整することができる。その後、当該溶液から前記第一遷移金属元素の水酸化物とともに前記他の金属元素の水酸化物を析出(好ましくは共沈)させるとよい。特に、前記第一遷移金属元素がニッケルであり、前記他の金属元素がコバルトである場合には、水酸化ニッケルと水酸化コバルトとを共沈させることにより、正極活物質用原料として適した状態でニッケルとコバルトとが融合した回収物が得られる。また、一般に溶液から析出された水酸化コバルトはコロイド状となりやすいところ、水酸化ニッケルと共沈させることにより液相と容易に分離することができる。
前記中和剤としてはアンモニア水を用いることが好ましい。このアンモニア水は単独で使用してもよく、他の中和剤(アルカリ金属水酸化物等)と併用してもよい。中和剤としてアンモニア水を用いる場合、前記析出工程は、遷移金属イオンの濃度(第一遷移金属元素および他の金属元素を含有する溶液にあっては、第一遷移金属元素のイオン(第一遷移金属イオン)の濃度)、溶液のpH、アンモニウムイオン(NH )の濃度、のうち少なくとも一つの項目が所定範囲となるように管理しつつ行うことが好ましい。上記析出工程では、これらの項目のうち二以上の項目が所定範囲となるように管理することが好ましく、三つの項目の全てが所定範囲内となるように管理することが特に好ましい。これにより、平均粒径、比表面積、X線回折ピークの半価幅、のうち少なくとも一つの特性値が所望の範囲にある析出物(主として遷移金属水酸化物)が得られる。これらの特性値のうち二つ以上が所望の範囲にあることが好ましく、三つの特性値の全てが所望の範囲にあることが特に好ましい。このような析出物は、リチウム電池の正極活物質として用いられるリチウム・遷移金属含有複合酸化物を製造するための原料として好適である。かかる析出物を用いて製造したリチウム・遷移金属含有複合酸化物を正極活物質として備えるリチウム電池は、充電特性、放電特性等に優れたものとなり得る。また、該析出物を用いて製造したリチウム・遷移金属含有複合酸化物は、保存性の良好なものとなり得る。なお、上記平均粒径は、例えばレーザ回折・散乱法を利用した粒径測定装置等により測定することができる。上記比表面積は、例えばBET法を利用した比表面積測定装置等により測定することができる。上記半価幅は、例えば一般的な粉末X線回折装置を用いて得られたX線回折強度曲線から得ることができる。
あるいは、上記酸溶出工程で得られた酸溶液に中和剤(例えばNaOH等のアルカリ金属水酸化物)を添加して前記第一遷移金属元素の水酸化物および前記他の金属元素の水酸化物を析出させ、その析出物をさらに処理してもよい。これにより、正極活物質等の製造原料としてより好適な遷移金属水酸化物材料を調製し得る。上記処理は、例えば以下のようにして行うことができる。すなわち、上記析出物(第一遷移金属元素の水酸化物と他の金属元素の水酸化物との混合物)に含まれる前記第一遷移金属元素および前記他の金属元素の含有量の比(モル比、質量比等)を把握する。その比が所定範囲から外れている場合には、不足している金属元素を(典型的には該金属元素の水酸化物として)上記混合物に必要量だけ加える。このようにして組成を調整した混合物を酸(例えば硫酸)に溶解させて酸溶液を調製する。このとき、該酸溶液に含まれる遷移金属成分の合計濃度が例えば0.5〜2.5mol/リットルとなるように濃度を調整するとよい。その酸溶液をアンモニア等の中和剤で中和して前記第一遷移金属元素の水酸化物とともに前記他の金属元素の水酸化物を該溶液から析出させる。このときの析出条件は、第一遷移金属元素のイオン(第一遷移金属イオン)の濃度、溶液のpH、アンモニウムイオン(NH )の濃度、のうち少なくとも一つの項目が上述した所定範囲となるように管理しつつ行うことが好ましい。このようにして、リチウム電池の正極活物質として用いられるリチウム・遷移金属含有複合酸化物を製造するための原料として好適な組成および/または性状の析出物(遷移金属水酸化物原料)を得ることができる。
また、この明細書により開示される内容には以下のものが含まれる。
(1)リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物(リチウム・遷移金属含有複合酸化物)から有価物を回収する方法であって、前記複合酸化物とアルミニウム材料とを含む被処理材にアルカリ土類金属水酸化物を含む処理液を供給して該複合酸化物からリチウム成分を溶出するAe処理工程と、その溶出したリチウム成分を含むリチウム溶液を前記被処理材の不溶分から分離する工程と、を包含する有価物の回収方法。
かかる方法は、リチウム電池(リチウムイオン二次電池)の正極活物質等として用いられているリチウム・遷移金属含有複合酸化物に適用することができる。特に好ましい適用対象として、リチウム・ニッケル含有複合酸化物(例えば、一般式LiNi1−xCoで表される酸化物)を例示することができる。この方法により回収する有価物は、上記複合酸化物に由来するリチウム成分(例えば炭酸リチウム)、上記複合酸化物に由来する遷移金属成分(例えば遷移金属水酸化物)、上記アルミニウム材料に由来するアルミニウム成分等のうち一種または二種以上であり得る。上記アルミニウム材料としては、リチウム電池を構成するアルミニウム製の部材を好ましく利用することができる。そのようなアルミニウム製の電池構成部材は、正極および/または負極の集電体、電極リード板、電極端子、容器、安全弁等であり得る。好ましい態様では、被処理材がアルミニウム製の正極集電体を含む。また、リチウム電池に由来しないアルミニウム材料を用いて上記方法を実施することも可能である。
(2)リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物がアルミニウム製の正極集電体に付着している正極を含む被処理材を、アルカリ土類金属水酸化物を含む処理液に浸漬して前記正極集電体の少なくとも一部(好ましくは実質的に全部)を腐食させるAe処理工程と、該工程後の不溶分から有価物を回収する工程とを備えるリチウム電池処理方法。そのAe処理工程に使用する処理液は、上記正極集電体を構成するアルミニウムに対して、モル比で1.5倍以上(好ましくは2倍以上)のアルカリ土類金属水酸化物を含有することが好ましい。
かかる方法によると、Ae処理工程において正極集電体を腐食させることによって、該正極集電体から正極活物質を効率よく分離する(正極集電体から脱落させる)ことができる。上記方法は、上記被処理材が負極集電体(典型的には銅製)および上記正極を含む態様で実施することができる。上記Ae処理工程は、そのような被処理材を上記処理液に浸漬した後、該処理液から上記負極集電体を取り出す処理を含むことができる。上記方法は、上記処理液から負極集電体を取り出した後に、該処理液の液相と被処理材の不溶分とを分離する工程をさらに包含することができる。また、その不溶分から有価物を回収する工程をさらに包含することができる。例えば、上記複合酸化物に由来する遷移金属成分(例えば遷移金属水酸化物)、上記アルミニウム部材に由来するアルミニウム成分等のうち一種または二種以上を回収することができる。
(3)水酸化リチウムと遷移金属水酸化物とを所定の割合で混合し、その混合物を焼成して生成させたリチウム・遷移金属含有複合酸化物を主体とするリチウム電池用(典型的にはリチウムイオン二次電池用)正極活物質。
上記水酸化リチウムとしては、上述したいずれかの処理方法によってリチウム電池から回収された炭酸リチウムを焼成し、その焼成物を水と反応させて得られた水酸化リチウム(例えば、水酸化リチウム一水塩(LiOH・HO))を用いることができる。上記処理方法により得られた炭酸リチウムは純度の高いものとなり得る。特に、リチウム以外のアルカリ金属元素(ナトリウム等)の混入量の少ないものとすることができる。したがって、そのような炭酸リチウムから得られた(調製された)水酸化リチウムは、リチウム電池の正極活物質製造用の原料として好適に用いることができる。また、上記遷移金属水酸化物としては、上述したいずれかの方法によってリチウム電池から回収された遷移金属水酸化物を好ましく用いることができる。
(4)リチウム・遷移金属含有複合酸化物を主体とする正極活物質を用いたリチウム電池を出発原料としてリチウム電池用の正極活物質を製造する方法であって、正極活物質製造用の遷移金属水酸化物原料および水酸化リチウム原料を製造する工程と、それらの原料を所定の割合で混合して焼成する工程(焼成工程)と、を包含するリチウム電池用正極活物質の製造方法。
上記水酸化リチウム原料は、例えば以下の工程:出発原料としてのリチウム電池に由来する被処理材に含まれる正極活物質にアルカリ土類金属水酸化物を含む処理液を供給するAe処理によって該正極活物質から水酸化リチウムを生じさせる工程;その水酸化リチウムを水に溶出させて被処理材の不溶分から分離する工程;得られたリチウム溶液に炭酸(CO)ガスおよび/または炭酸水(HCO)を供給して該溶液から炭酸リチウムを析出させる工程;析出した炭酸リチウムを溶液と分離する工程;その炭酸リチウムを焼成し、さらに水と反応させる工程;を包含する製造工程によって得ることができる。また、上記遷移金属水酸化物原料としては、例えば以下の工程:上記不溶分中の遷移金属成分を酸に溶出させる工程;その酸溶液に中和剤を添加して前記遷移金属を析出させる工程;を包含する製造工程によって得ることができる。かかる正極活物質製造方法によると、出発原料としてのリチウム電池に用いられている(主としてその正極活物質に含まれている)リチウム成分および遷移金属成分をそれぞれ回収し、それらを混合して焼成することによって、リチウム電池用の正極活物質(出発原料としてのリチウム電池の正極活物質と実質的に同一組成でもよく、異なる組成でもよい。)を再生することができる。
なお、上記焼成工程では、遷移金属水酸化物原料および水酸化リチウム原料の混合物を段階的に加熱することが好ましい。得られたリチウム電池用正極活物質(リチウム・遷移金属含有複合酸化物)は、必要に応じて粒度を揃える処理、吸着水分を除去する処理等を施した後に、リチウム電池の構成材料として好適に再利用することができる。
(5)上述したリチウム電池用の正極活物質を用いて構築されているリチウム電池。
そのようなリチウム電池の典型例としては、正極活物質を含む正電極材が正極集電体上に設けられている正極と、負極活物質を含む負電極材が負極集電体上に設けられている負極と、その正電極材と負電極材の間に配置されている電解液とを備え、ここで、正電極材に含まれる正極活物質として上記正極活物質を利用(再利用)して構築されているものが挙げられる。
このようなリチウム電池は、例えば以下の方法により好適に製造することができる。すなわち、遷移金属原料(典型的には遷移金属水酸化物)と水酸化リチウムとを所定の組成比で混合する。その混合物を焼成してリチウム・遷移金属含有複合酸化物を生じさせる。その複合酸化物を集電体に付着させて正極を作製する。その正極を、電解液およびその電解液を介して配置された負極とともに電池容器に収容してリチウム電池を構築する。上記複合酸化物の原料に用いる水酸化リチウムとしては、上述したいずれかの処理方法によってリチウム電池から回収された炭酸リチウムを焼成した後に水と反応させて生成させた水酸化リチウムを好ましく用いることができる。また、遷移金属原料としては、上述したいずれかの処理方法によってリチウム電池から回収された遷移金属水酸化物を好ましく用いることができる。
以下、本発明に関する具体的実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。また、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
<実施例1:リチウムイオン二次電池の処理方法>
まず、この実施例で処理するリチウム電池(ここでは、使用済みの車両用リチウムイオン二次電池)の構成を説明する。
図3は、本実施例に係るリチウムイオン二次電池を示す模式的断面図であり、図4はその一部を拡大した説明図である。これらの図に示されるように、二次電池1は、一対の電極シート(正極シート12および負極シート14)が二枚のセパレータシート16を介して偏平状に捲回された捲回型電極体10と、電極体10を収容する偏平な直方体状(角型または平型ともいう。)の電池容器20と、電極体10の軸方向両端部にそれぞれ接続された正極端子30および負極端子40とを備える。
図4に示すように、電極体10を構成する正極シート12は、長尺状の正極集電体122と、その両面に正電極材を層状に付着させて設けられた正電極材層124とを備える。また、負極シート14は、長尺状の負極集電体142と、その両面に負電極材を層状に付着させて設けられた負電極材層144とを備える。電極体10は、これらのシートを正極シート12、セパレータシート16、負極シート14、セパレータシート16の順に積層し、その積層体を長尺方向(長手方向)に捲回した構成を有する。積層された正極シート12と負極シート14との間はセパレータシート16によって絶縁されている。図3および図4に示すように、この捲回型電極体10の軸方向の一端では、正極集電体122が束ねられて正極集電板126に接続(例えば溶接)され、さらに正極端子30に接続されている。また、捲回型電極体10の軸方向の他端では、負極集電体142が束ねられて負極集電板146に接続(例えば溶接)され、さらに負極端子40に接続されている。
このリチウムイオン二次電池1の正電極材層124は、第一遷移金属元素がニッケルであって、他の金属元素としてコバルトを含有するリチウム・ニッケル含有複合酸化物から実質的に構成される正極活物質を主成分とする。かかる正極活物質は、一般式LiNi1−xCo(0<x<0.5、好ましくは0.1<x<0.3)で表すことができる。本実施例に係る二次電池1では、上記一般式におけるxが約0.2であるリチウム・ニッケル含有複合酸化物(すなわち、LiNi0.8Co0.2で表される複合酸化物)を正極活物質に用いている。正電極材層124は、カーボンブラック(CB)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含有する。それらの含有割合は、例えば正極活物質:CB:PTFEの質量比が凡そ85:10:5となる割合である。一方、負電極材層(グラファイト層)144は、負極活物質としてのカーボンブラック(CB)を主成分とし、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有する。それらの含有割合は、例えばCB:PTFEの質量比が凡そ90:10となる割合である。
二次電池1を構成する正極集電体122はアルミニウム製の部材(アルミニウム部材)である。また、正極集電板126および正極端子30もアルミニウム製である。正極集電体122を構成するアルミニウム部材(アルミニウム箔)の厚さは凡そ50μm以下(例えば2〜50μm)程度であることが好ましく、凡そ20μm以下(例えば5〜20μm)程度であることがより好ましい。このような形状の正極集電体122によると、後述するAe処理工程を効率よく実施することができる。例えば、実用上好ましい期間内に(典型的には約一ヶ月以内)正極集電体122の定形性が実質的に失われる程度に、正極集電体122の腐食を進行させることができる。本実施例に係る二次電池1では、正極集電体122として、1N30(JIS規格)アルミニウム材料からなる厚さ約15μmのアルミニウム箔を用いている。この正極集電体122は、電極体一個当たり約35g(約1.3mol)のアルミニウムを含有する。一方、負極集電体142および負極端子40は銅製である。特に限定するものではないが、負極集電体142を構成する銅部材(銅箔)の厚さは例えば凡そ2〜50μm程度であることが好ましく、凡そ5〜20μm程度であることがより好ましい。また、セパレータシート16はポリオレフィン製(ここではポリプロピレン製)の多孔質シートである。
電池容器20はアルミニウム製であって、有底筒状の本体(電池ケース)22と、本体22の上端開口部を封止する蓋体(電池蓋)24とを備える。この容器20に捲回型電極体10が収容されている。正極端子30および負極端子40は、蓋体24を貫通して容器20の外方に延びている。これらの端子30,40はネジ32,42によって蓋体24に固定されている。負極端子40と蓋体24は絶縁体26により隔てられている。蓋体24は、電解液の注入等に用いられる注液口27を有する。この注液口27は、二次電池1の通常の使用時には封止された状態にある。また、蓋体24には安全弁28が設けられている。この安全弁28は、容器20の内部圧力が所定の設定値を超えて高くなると容器20の内外を自動的に連通させて圧力を解放するように構成されている。
電極体10には図示しない電解液が含浸されている。この電解液を構成する有機溶媒としては、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等からなる群から選択された一種または二種以上を用いることができる。本実施例に係る二次電池1ではジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との7:3(質量比)混合溶媒を用いている。また、この電解液を構成する電解質(支持塩)としては、フッ素を構成元素とする各種リチウム塩から選択される一種または二種以上を用いることができる。例えば、LiPF,LiBF,LiAsF,LiCFSO,LiCSO,LiN(CFSO,LiC(CFSO等からなる群から選択される一種または二種以上を用いることができる。本実施例に係る二次電池1では、電解質としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を用いている。その濃度は約1mol/リットルである。
次に、上記構成のリチウムイオン二次電池1を処理する手順につき説明する。図1は、その手順の概略を示すフローチャートである。
まず、使用済みのリチウムイオン二次電池1を用意し(ステップ210)、これを減圧下で加熱して電解質および有機物等の揮発性成分を回収する真空加熱処理を行う(ステップ220)。図1および図2に示すように、このステップ220は、有機溶媒を除去(回収)するステップ222と、電解質を除去(回収)するステップ224と、セパレータを除去(回収)するステップ226と、結着剤を除去(回収)するステップ228とを含む。図1では、ステップ220に含まれる上記ステップのうち一部の図示を省略している。
かかる揮発性成分の回収に用いる装置(真空加熱処理装置)の概略構成例を図5に模式的に示す。図5において、減圧加熱炉60は、処理室64を区画する本体61を備える。本体61の壁面には誘導加熱コイル62が設けられている。処理室64内の温度は、コイル62に接続された温度制御器63によって任意のパターンに制御することができる。本体61には真空ポンプ65が接続されており、処理室64の内部圧力を任意に制御できるようになっている。
処理室64の下方には一次冷却装置67が設けられている。処理室64内の気体(例えばリチウムイオン二次電池から揮発した有機溶媒)は炉内ガス導管66を介して一次冷却装置67に導入される。一次冷却装置67の壁面には誘導加熱コイル68が設けられており、この一次冷却装置67における冷却の程度を調節することができるようになっている。一次冷却装置67の下流には、炉外ガス導管70を介して二次冷却装置71が連結されている。この二次冷却装置71で冷却されて凝縮(液体化または固体化)した回収物はコレクタ74に集められる。残りの気体は排ガス浄化器72を介して外部に排出される。
このような構成の装置を用いて、例えば以下のようにして二次電池1から有機溶媒を揮発除去し、その揮発物を回収する(ステップ222)。すなわち、あらかじめ開口した使用済みリチウムイオン二次電池1を処理室64に収容する。二次電池1を開口する方法は、容器20に貫通孔をあける方法、注液口27の封止を解く方法、安全弁28を作動させる方法等から適宜選択すればよい。真空ポンプ65を稼動させて処理室64内を減圧する。この減圧の程度は特に限定されない。通常は少なくとも100kPa以下(典型的には0.1〜100kPa、好ましくは1〜80kPa)に減圧することが好ましい。本実施例では処理室64内を約50kPaに減圧している。
かかる減圧状態を維持しつつ、誘導加熱コイル62に通電して処理室64内の温度(炉内温度)を上昇させる。これにより二次電池1を加熱する。このときの加熱温度は、処理室64内の圧力に応じて、二次電池1に用いられている電解液の有機溶媒の沸点(二種以上の有機溶媒を含む場合には各成分の沸点またはそれらの共沸点)付近とすることができる。あるいは、上記有機溶媒以外の電池構成材料が実質的に揮発しない範囲で、該有機溶媒の沸点を上回る温度に加熱することも好適である。これにより二次電池1から有機溶媒を効率よく揮発させることができる。なお、常圧におけるDMCの沸点は約90℃であり、EMCの沸点は約107℃である。
本実施例では、図6に示す温度チャートのように、炉内温度を常温から徐々に上昇させ、約85℃に30分間維持する(図中に矢印aで示す段階)。これにより上記有機溶媒のうちDMCが優先的に揮発(ガス化)する。発生したガスは、炉内ガス導管66、一次冷却装置67および炉外ガス導管70を経て二次冷却装置71に導入される。この二次冷却装置71でガスを冷却して有機溶媒を凝結(液化)させ、コレクタ74に回収する。次いで、炉内温度をさらに上昇させ、102℃に30分間維持する(図中に矢印bで示す段階)。これにより、残存する有機溶媒(主としてEMC)を揮発(ガス化)させて二次冷却装置71で液化・回収する。
このように本実施例では、沸点の異なる二成分を含む有機溶媒(混合溶媒)を、二段階の加熱によって揮発させる。すなわち、上記aの段階で相対的に低沸点のDMCの大部分を揮発させた後に、加熱温度をさらに上昇させて残りの有機溶媒(主としてEMC)を揮発させる。このように加熱温度を段階的に変化させて低沸点溶媒から高沸点溶媒へと順に抜き取ることにより、加熱による変質(分解等)を抑制しつつ有機溶媒を効率よく揮発・回収することができる。
なお、24℃におけるDMCの蒸気圧は約2.4kPaであり、25℃におけるEMCの蒸気圧は約3.3kPaである。このため、上記a〜b段階で揮発したDMCおよびEMCは、典型的には混合溶媒として回収される。後述するように、この回収された混合溶媒は、不純物(DMCおよび/またはEMCの熱分解物等)の含有割合が少なく、再利用性のよいものである。例えば、リチウムイオン二次電池用の電解液として使用(再利用)することができる。
次いで、上記加熱後に残った電池構成材料をさらに加熱して電解質(ここではLiPF)を熱分解させ、その熱分解物を含むガス(分解ガス)を除去する(ステップ224)。すなわち、例えば図6に示す温度チャートのように、炉内温度をLiPFの熱分解温度(約160℃)以上の温度域に維持する(図中に矢印cで示す段階)。このときの加熱温度は、例えば約160〜200℃の範囲とすることができ、約180〜200℃の範囲とすることが好ましい(本実施例では約200℃)。これによりLiPFが熱分解して、主にフッ化リチウム(LiF)とフッ化リン(PF)が生じる。このフッ化リンを含む分解ガス(排ガス)は、後述する工程(ステップ290)によってさらに浄化処理される。なお、このcの段階を行う際の加熱温度は上記温度に限定されるものではなく、実用的な速度で電解質を揮発させて二次電池1から除去し得る温度域であればよい。例えば、電解質の揮発(熱分解)温度と同等以上の温度域で行うことができる。揮発(熱分解)温度〜該温度+50℃の範囲とすることが好ましい。減圧度が同程度であれば、c工程における加熱温度は上記aおよびbの段階の温度よりも80℃以上高く設定することが好ましい。
図2に示すステップ224の後に残った電池構成材料からセパレータを揮発(主として熱分解)させて除去し、その揮発物を回収する(ステップ226)。すなわち、図6に示す温度チャートのように、炉内温度を約300℃に維持する(図中に矢印dで示す段階)。これにより、図3に示す電極体10を構成するセパレータ16(多孔質ポリプロピレンシート)が熱分解して低級炭化水素等のガスを生じる。そのガスは、一次冷却装置67および/または二次冷却装置71にて液状(例えば、複数種類の炭化水素の混合物を主体とする粘稠な液体状)または固体状として回収することができる。得られた回収物は、燃料等として有効に再利用することができる。
さらに、上記加熱後に残った電池構成材料から、電極材を構成する結着剤を揮発(主として熱分解)させて除去し、その揮発物を回収する(ステップ228)。すなわち、図6に示す温度チャートのように、炉内温度を約400℃に維持する(図中に矢印eで示す段階)。これにより、電極材を構成する結着剤(ポリテトラフルオロエチレン)が熱分解して、低級炭化水素やフッ化物等のガスを生じる。生じたガスは、一次冷却装置67、二次冷却装置71および排ガス浄化器72のうち一または二以上の箇所で液体状または固体状として回収(捕集)することができる。
なお、上記dおよびeの段階を行う際の加熱温度は上記温度に限定されるものではなく、それぞれセパレータおよび結着剤を実用的な速度で揮発(熱分解等)させて二次電池1から除去し得る温度域であればよい。セパレータおよび結着剤(有機物)の除去に要する時間の短縮および/または結着剤の除去率の向上という観点からは、このd段階および/またはe段階を行う際の加熱温度を高めに設定することが好ましい。ただし、この電池を構成する金属部材が溶融しない程度の温度(例えば、アルミニウムの場合には凡そ570℃以下、より好ましくは凡そ550℃以下)とすることが好ましい。通常、この真空加熱工程(ステップ220)における最高加熱温度(ここではe段階)は、凡そ350〜570℃(より好ましくは、凡そ370〜550℃)の範囲とすることが適当である。
以上の工程(ステップ220)では、加熱温度を段階的に上昇させて各段階毎に揮発物を回収する。このように二次電池からその構成材料を揮発温度の低い材料から高い材料へと順次抜き取ることにより、再利用性のよい回収物(有価物)を得ることができる。なお、このように電池からまず有機溶媒を抜き取る(除去する)ことは、電池の内部抵抗が高まること等から、以後の工程における電池の取扱性が向上するので好ましい。また、この有機溶媒の抜き取り(ステップ222)を減圧下で行うことにより、(1).過度の加熱による有機溶媒の変質を防ぐ、(2).有機溶媒の除去に要する時間を短縮する、(3).加熱のためのエネルギーを節約する、のうち少なくとも一つの効果を得ることができる。
なお、上述したステップ224で除去された電解質(その分解ガス)は、以下の工程(フッ化リン安定化工程)により、安定的な化合物として回収することができる。
すなわち、電解質の分解により生じたフッ化リンを含む分解ガス(排ガス)は、図5に示す一次冷却装置67および二次冷却装置71を経て、真空ポンプ65の下流に接続された排ガス浄化器72に導入される。この排ガス浄化器72の器内には、処理液(ここでは水酸化カルシウム水溶液)722が貯留されている。排ガス浄化器72の底部付近に設けられた排ガス供給口724から処理液722中に排ガスをバブリングすると、水酸化カルシウムがフッ化リンと反応してフッ化カルシウム(CaF)およびリン酸カルシウム(Ca(PO)を生じる。これによりフッ素成分およびリン成分を固体として安定的に回収(捕集)することができる(ステップ290)。なお、図5には電解質(その分解ガス)の処理効率を高める等の目的から二つの排ガス浄化器72を直列に設けた構成を示しているが、排ガス浄化器72の数は一つでもよい。あるいは、二以上の排ガス浄化器72を直列または並列に設けた構成としてもよい。また、処理液722中に排ガスを導入する際には、該排ガスを細泡状でバブリングすることにより、排ガスと処理液との接触面積を多くして反応効率を高めることが好ましい。
上記真空加熱処理工程(ステップ220)を経て、電解質および有機物が除去された有機物除去済み電池を得る(ステップ230)。この有機物除去済み電池(電池構成材料の加熱残分)は、容器本体(電池ケース)および蓋体を含む容器20と、正極集電体および正極活物質を含む正極シート12と、負極集電体および負極活物質とを含む負極シート14とを包含する。正極シート12と負極シート14とは捲回型電極体10を構成している。図1に示すステップ232では、この有機溶媒除去済み電池230を、例えば容器20の蓋部24を切り落とす(切断する)等の方法によって分割し(ステップ232)、捲回型電極体10を取り出す(ステップ234)。電極体10から分別した容器20(電池ケース22および蓋体24)は、回収し(ステップ233)、アルミニウム材料として各種用途に再利用することができる。
このようにして他の電池構成材料から分離された捲回型電極体10は、すでにセパレータシート16が失われている(揮発している)ことにより、正極シート12と負極シート14との間に空隙の多い状態となっている。図1に示すステップ240は、この電極体10を被処理材として、この被処理材にアルカリ土類金属水酸化物を含む処理液(水酸化カルシウム水溶液等)を供給するAe処理工程である。この工程に用いる装置の概略構成例を図7に模式的に示す。
Ae処理装置80は、アルカリ土類金属水酸化物に対する耐薬品性のよい材料(ステンレス等)を用いて構成された処理槽82を備える。この処理槽82は攪拌機84を備える。また、処理槽82の底部にはコック85を有する取出口86が設けられている。処理槽82の上部は外気に開放されている。処理装置80は、このような処理槽82を一つまたは二つ以上備える構成とすることができる。図7には三つの処理槽82を備える構成を例示している。それらの処理槽82の上方には、換気用のファン92を有するフード91が設けられている。また、処理槽82の下方にはトレー87および回収タンク88が設けられている。回収タンク88は、該タンクの内容物を次工程へと送るポンプ90を備える。
このような構成の処理装置80を用いて、例えば以下のようにしてAe処理工程を実施することができる。すなわち、各処理槽82内に水酸化カルシウムおよび水を含む処理液83を貯留する。この処理液83に、上記ステップ234で得られた電極体10(被処理材81)を浸漬して放置する(ステップ240)。その間、攪拌機84を用いて処理液83を連続的あるいは間歇的に攪拌するとよい。このように処理液83に電極体10を浸漬して放置すると、この電極体10を構成する正極集電体(アルミニウム箔)の腐食が進行する。この腐食(侵蝕)により、正極集電体の定形性が次第に失われる(正極集電体が消失する)。このときの腐食反応は、例えば以下の反応式(1)により表すことができる。なお、ファン92を稼動させることにより、下記式(1)に示す反応において発生する水素ガスをフード91から装置外に排出することができる。
2Al+3Ca(OH)+6HO→CaAl(OH)12+3H
・・・(1)
上記反応式(1)によると、アルミニウム1モルに対して水酸化カルシウム1.5モルが反応して、CaとAlとを含む複合化合物(Ca−Al複合化合物)を生じる。このようにして正極集電体を構成する金属アルミニウムがアルミニウム化合物(例えば、CaAl(OH)12等のCa−Al複合化合物)に変化すると、正極集電体の表面に付着していた正電極材(正極活物質を含む加熱残分)が脱落する。好ましい態様では、正極集電体(アルミニウム箔)の形状がほぼ完全に失われるまで上記処理を継続する。
本発明者の検討によれば、上述のようにアルカリ土類金属水酸化物(ここでは水酸化カルシウム)を含む処理液83に電極体(被処理材)10を浸漬することにより(ステップ240)、正極活物質に含まれるリチウム成分が水酸化リチウムを生じて処理液83に溶出する。また、正極活物質に含まれる遷移金属成分(ここではNiおよびCo)は、このステップ240において、アルカリ土類金属水酸化物(ここでは水酸化カルシウム)の水溶液に対して実質的に不溶性の遷移金属化合物を構成する。例えば、ニッケルおよびアルミニウムを含む複合化合物(Ni−Al複合化合物)、コバルトおよびアルミニウムを含む複合化合物(Co−Al複合化合物)、ニッケル酸化物、コバルト酸化物等の遷移金属化合物を構成し得る。このような不溶性遷移金属化合物は、他の不溶性成分(正極集電体から生じたアルミニウム化合物、負極集電体、カーボン材料等)とともに、処理槽82の底部に沈殿し、あるいは液中に分散する。
その後、コック85を開放して、処理槽82内の処理済液89(処理槽内の沈殿物等を含む。)を取出口86から取り出す。各処理槽82から取り出された処理済液89をトレー87で受けて回収タンク88に集める。集められた処理済液89は、ポンプ90により回収タンク88から汲み上げて図示しない濾過装置に移送し、そこで濾液と固形物(残渣)とに分離することができる(ステップ244)。
上記Ae処理工程(ステップ240)を実施する際の温度、圧力等の条件は特に限定されない。エネルギー効率の向上等の観点からは常温で処理することが好ましい。また、装置の小型化および簡略化等の観点からは常圧で処理することは好ましい。また、常温よりも高い温度および/または常圧よりも高い圧力でAe処理工程を行ってもよい。これにより処理時間(処理液に電極体を浸漬しておく時間)の短縮等の効果が実現され得る。処理槽内の雰囲気は大気雰囲気としてもよく、炭酸ガス雰囲気(例えば、CO分圧2〜20%程度)等としてもよい。
処理液83に浸漬された正極集電体の腐蝕は、通常は捲回型電極体10の外部(外表面、端面等)から始まり、次第に電極体10の中央部へと進行する。ここで、上述のように電極体10が空隙の多い状態になっていることは、電極体10の中央部への腐蝕の進行を促進するという観点から有利である。かかる腐蝕の進行を促進するために、あらかじめ電極体10をいくつかに分割(例えば、捲回軸に直交する平面で二つまたはそれ以上の部分に分割)しておくことも有効である。電池容器20を切断する工程(ステップ232)において、該容器20とともに電極体10を切断してもよい。
Ae処理工程(ステップ240)を終了する時期は、正極集電体の腐食(形状の消失)の程度、リチウム成分の溶出(正極活物質の分解)の程度等に応じて決めることができる。通常は、正極集電体の腐蝕がほぼ完了するまで電極体(被処理材)を処理液に浸漬しておく(Ae処理工程を継続する)ことが好ましい。これにより、正極集電体に付着していた正電極材は支持体を失って脱落するので、正極集電体122から正電極材を分離(例えば剥離)する操作が不要となる。好ましい処理条件では、約1ヶ月以内の期間で正極集電体の腐蝕を完了する(正極集電体を実質的に消失させる)ことができる。処理時間をより短縮するためには、例えば反応温度を高めることが有効である。また、通常は正極活物質からリチウム成分が実質的に完全に溶出するまで(換言すれば、正極活物質が可溶性のリチウム成分と不溶性の遷移金属化合物とに分解されるまで)Ae処理工程を継続することが好ましい。これにより、リチウム成分の回収率を高める、高純度の遷移金属成分を容易に回収することができる等の少なくとも一つの効果が得られる。典型的な態様では、正極集電体の腐食がほぼ完了するまでAe処理工程を継続することにより、その間に正極活物質をほぼ完全に分解することができる。
本実施例では、上記Ae処理工程(ステップ240)および上記分離工程(ステップ244)を以下の態様で行った。
すなわち、容量約100リットルの処理槽82内に、約8kg(凡そ108mol)の水酸化カルシウム(Ca(OH))および約60リットルの水を収容した。これにより処理槽82内に、水酸化カルシウムの飽和水溶液および過剰量の水酸化カルシウムを含む処理液83を用意した。そして、各処理槽82の処理液83中に、上記ステップ234で得られた電極体(被処理材)10を30個づつ浸漬した。これら30個の電極体10に含まれる正極集電体(アルミニウム箔)の合計質量は約1050g(アルミニウム換算で約39mol)である。各処理槽82の攪拌機84をモータで駆動して処理液83を攪拌しつつ、この処理液83中に電極体10を常温で約14日間放置した。
かかる期間の経過後、電極体10を構成していた正極集電体(アルミニウム箔)および負極集電体(銅箔)のうち、正極集電体の形状は完全に失われていた。一方、負極集電体は上記Ae処理において実質的に溶解せず、そのシート形状を維持したまま(金属状態で)残留していた。この負極集電体を処理液83中から取り出し、銅材料として回収した(ステップ237)。
負極集電体を回収した後、処理槽82の内容物(処理済液89)を取出口86から取り出した。この処理済液89には、正極活物質から溶出したリチウム成分、遷移金属成分(正極活物質に由来するNi,Coおよび正極集電体に由来するAl)を含む不溶分、カーボン材料、未反応のCa(OH)等が含まれている。ここで、Ca(OH)の溶解度は温度の上昇とともに低下する傾向にある。したがって、この処理済液89の温度を高めて(例えば約40〜90℃程度に加温して)濾過することにより、リチウム成分を含む濾液とCa(OH)を含む不溶分とをよりよく分離することができる。これにより、より高純度のリチウム成分を回収することが可能となる。本実施例では、処理済液89を約80℃に加温して、濾液と不溶分(残渣)とを分離した(ステップ244)。
ステップ244で得られた濾液および不溶分(残渣)につきICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析を行ったところ、不溶分中に含まれるリチウム成分は僅か(不溶分全体の質量に対して0.01質量%以下)であった。一方、この濾液にはNiおよびCoがほとんど含まれていなかった(濾液全体に対する含有割合がいずれも1ppm以下)。このように、上記Ae処理工程(ステップ240)および分離工程(ステップ244)によって、正極活物質を構成するリチウム成分と遷移金属成分(NiおよびCo)とを効率よく分別することができた。
なお、ステップ244で分離した不溶分(残渣)につきXRD(X線回折)分析を行って得られたXRDチャートを図8に示す。かかる分析の結果、残渣に含まれるニッケル成分は主としてNiAl(CO)(OH)を構成していることが分かった。ここで、NiAl(CO)(OH)の同定は、図8中で丸印を付したピークの位置をJCPDSカード(標準データシート)と比較することにより行った。また、残渣に含まれるニッケル成分の一部はNiOを構成していた。この残渣中においてコバルト成分は、ニッケルと同様に、CoとAlとを含む複合化合物(例えばCoAl(CO)(OH))、コバルト酸化物(CoO)等を構成しているものと考えられる。その他、この残渣には、正極活物質の腐食により生じたアルミニウム化合物(主としてCaAl(OH)12)、正極の導電材等に由来するカーボン材料(カーボンブラック等)、未反応の(余剰の)アルカリ土類金属水酸化物(ここではCa(OH))等が含有され得る。
ステップ244の濾過により得られた濾液(溶液)は、被処理材から溶出したリチウム成分(主としてLiOH)を含むリチウム溶液である。この溶液に含まれるリチウム成分(リチウムイオン)を固体状のリチウム化合物として回収する工程につき説明する。すなわち、このリチウム溶液に炭酸ガス(CO)を供給する(ステップ252)。このとき、ステップ244で得られたリチウム溶液を、水酸化リチウムが析出しない程度に濃縮して用いてもよい。かかる炭酸ガスの供給により、例えば下記反応式(2)に示すように、液中のリチウムイオンがCOと反応して炭酸リチウム(LiCO)を生じる。
2LiOH+CO→LiCO+HO (2)
水酸化リチウムに比べて炭酸リチウムは水に対する溶解度が低いので(20℃の水に対して約1.31g/100g(HO))、溶液から析出して沈殿を生じる。その沈殿(析出物)を濾過等の方法により液相と分離して(ステップ253)乾燥させることにより、炭酸リチウムの結晶を回収することができる(ステップ257)。一方、ステップ253で得られた濾液には、その溶解度分のLiCOが残留している。このLiCOを含む濾液をステップ247で得られた濾液に混合して(ステップ254)循環させることにより、リチウム成分(炭酸リチウム)の回収率を向上させることができる。
ここで、リチウム溶液に炭酸ガスを供給する方法としては、該溶液にCOガスをバブリングする方法等を採用することができる。リチウム溶液(リチウムイオン)とCOとをより効率よく反応させるために、COを含む加圧(例えば、常圧〜凡そ1MPaの)雰囲気下で反応させる、COを含む雰囲気中にリチウム溶液を噴霧する、等の手段を適宜採用することができる。雰囲気中の炭酸ガス濃度は高いほうが好ましい。例えばCO濃度が凡そ50〜100vol%(より好ましくは凡そ80〜100vol%)の雰囲気中で反応させることが好ましい。実質的にCOガスからなる雰囲気下で反応させることが特に好ましい。
なお、反応液に溶存するCOの濃度が高くなると炭酸リチウムの溶解度が上昇する傾向にある。そこで、例えばCO濃度がほぼ100%の常圧または加圧(例えば、常圧〜凡そ1MPa以下の)雰囲気下でリチウムイオンとCOとを反応させた後、反応液に溶存するCOの量を低下させる(液中からCOを追い出す)処理を行うことが好ましい。この脱炭酸処理によって溶液のCO濃度が低下すると、炭酸リチウムの溶解度が低下する。その結果、該脱炭酸処理前には反応液に溶解していた炭酸リチウムの一部が析出(再結晶)するので、これを液相から容易に分離回収することができる。上記脱炭酸処理は、例えば、反応液を常圧または減圧の大気雰囲気中で攪拌する、その雰囲気中で反応液に空気または不活性ガス(窒素ガス等)をバブリングする、等の手段により実施することができる。また、炭酸リチウムの溶解度は温度の上昇とともにやや低下する傾向にある(100℃では約0.72g/100g(HO))。したがって、反応液の温度を高める(例えば約40〜80℃に加温する)ことにより、炭酸リチウムの溶解度を低下させて析出量を増すことができる。このような手法によって、リチウム溶液からのリチウム成分(炭酸リチウム)の回収率をさらに向上させることができる。
一方、ステップ244により分離された不溶分(残渣)は、上述のように、正極活物質に由来するニッケル成分およびコバルト成分と、正極集電体に由来するアルミニウム成分とを含有する。本実施例では、この残渣にカーボン材料(カーボンブラック等)および水酸化カルシウムがさらに含まれている。
以下のステップ245〜247では、ステップ244の濾過により得られた残渣(被処理材の不溶分)からアルミニウム成分を除去する。すなわち、この残渣に苛性ソーダ(NaOH)の水溶液を供給する(ステップ245)。本実施例では、濃度約20質量%のNaOH水溶液を使用した。これにより、残渣に含まれるAl成分(典型的には、Niおよび/またはCoとの複合化合物、カルシウムとの複合化合物等を構成している。)を二酸化ナトリウムアルミニウム(AlNaO)として溶出することができる。このAlNaOは水に容易に溶解する。また、このNaOH水溶液により、残渣に含まれる炭酸イオン(CO 2−)を炭酸ナトリウム(NaCO)として溶出することができる。なお、炭酸ナトリウムの溶解度は、25℃の水に対して約22.7g/100g(HO)である。このようにAl成分およびCO成分が溶出することにより、残渣中に含まれていたNi−Al複合化合物(NiAl(CO)(OH))は水酸化ニッケル(Ni(OH))となり、Co−Al複合化合物(CoAl(CO)(OH))は水酸化コバルト(Co(OH))となる。また、Ca−Al複合化合物(CaAl(OH)12)はCa(OH)となる。水酸化ニッケルおよび水酸化コバルトの溶解度は、25℃の水に対してそれぞれ約7.5×10−4g/100g(HO)および約8〜22×10−4g/100g(HO)である。また、NiO,CoOおよびカーボン材料はNaOH水溶液に対して実質的に溶解しない。したがって、ステップ244により得られた残渣にNaOH水溶液を供給し、これを濾過することにより(ステップ246)、アルミニウム成分(AlNaO)および炭酸ナトリウムを含む濾液を、遷移金属成分(Ni成分,Co成分)、カルシウム成分(Ca(OH)等)およびカーボン材料等を含む不溶分から適切に分離することができる。
上記ステップ246の濾過により分別された不溶分の処理につき説明する。この不溶分(残渣)には、Ni成分およびCo成分が、それぞれ水酸化物および/または酸化物として含有されている。その他にカーボン材料およびCa(OH)が含まれている。
まず、この不溶分に酸を加える(ステップ262)。本実施例では濃度約30質量%の硫酸(HSO)を加えた。これにより、上記不溶分に含まれるNiおよびCoがそれぞれ硫酸塩を生じて溶出する。なお、硫酸ニッケルの溶解度は、25℃の水に対して約29g/100g(HO)である。また、硫酸コバルトの溶解度は、25℃の水に対して約27.2g/100g(HO)である。一方、上記不溶分に含まれるCa成分は硫酸カルシウムを生じる。この硫酸カルシウムの溶解度(25℃の水に対して約0.208g/100g(HO))は、硫酸ニッケルおよび硫酸コバルトの溶解度に比べて明らかに低い。また、カーボン材料は硫酸に実質的に溶解しない。これを濾過して(ステップ264)、Ni成分およびCo成分を含む酸溶液を不溶分から分離する。ステップ264の濾過で分別された不溶分(残渣)には、Ca成分(CaSO)およびカーボン材料が含まれる。この残渣から回収したカーボン材料は(ステップ282)、例えば融雪材、土壌改良材等として有効に利用することができる。
一方、ステップ264の濾過により得られた濾液は、ニッケルイオンおよびコバルトイオンを含有する酸溶液(ここでは硫酸溶液)である。この溶液を、中和剤としての苛性ソーダ(NaOH)の水溶液により中和する(ステップ266)。これにより、溶液から遷移金属の水酸化物(ここでは水酸化ニッケルおよび水酸化コバルト)が析出する。これらの遷移金属水酸化物の結晶生成が十分に進行した後、反応液を濾過する(ステップ268)。これにより、濾液に含まれるNaSOを回収する(ステップ274)。また、水酸化ニッケルおよび水酸化コバルトを液相から分離して回収する(ステップ278)。このようにして回収された遷移金属水酸化物は高純度のものとなり得る。したがって再利用性が高い。例えば、リチウムイオン二次電池の正極活物質としてのリチウム・遷移金属含有複合酸化物を製造するための原料として好適である。
以上説明したように、本実施例では、アルミニウム製の正極集電体上に正極活物質を有する正極を含む捲回型電極体(被処理材)を、アルカリ土類金属水酸化物を含む処理液に浸漬して放置する。これにより、該正極集電体を腐食させて(好ましくは、該集電体が実質的に定形性を失うまで腐食させて)正極活物質を自然に脱落させることができる。また、被処理材(捲回型電極体)に含まれる正極活物質からリチウム成分を溶出することができる。このとき、該正極活物質を構成する遷移金属成分は上記処理液に対する溶解性の低い遷移金属化合物を形成する。したがって、本実施例によると、被処理材としての電極体を所定条件下に放置するという極めて簡便な方法によって、正極活物質に含まれるリチウム成分を、該活物質に含まれる遷移金属成分とは分離して取り出すことができる。これにより、例えば正極活物質を含む被処理材に硝酸を加えて該活物質に含まれるリチウム成分および遷移金属成分の双方を一度に溶出する方法に比べて、より簡単な方法により、および/または、より純度の高いリチウム成分を回収することができる。また、正極集電体を腐食させることにより正電極材(正極活物質を含む。)を自然に脱落させることができるので、正極集電体から正電極材を分離(剥離)する工程が不要となる。したがって、本実施例によるとリチウム電池の処理工程を簡略化することができる。また、負極集電体の回収が容易である。上記Ae処理工程では、アルカリ土類金属水酸化物(Ca(OH)等)を含む処理液を用いて正極集電体を腐食させる。したがって、例えばアルカリ金属水酸化物(NaOH等)を用いて正極集電体を腐食させる場合とは異なり、このAe処理工程を経て得られるリチウム溶液にリチウム以外のアルカリ金属成分(例えばNa)が混入することが防止される。したがって、より簡単な工程によって、および/または、より純度の高いリチウム成分を、該リチウム溶液から回収することができる。
上記Ae処理工程は、簡単な構成の装置によって実施することができる。また、大量の被処理材を一度に処理する能力にも優れている。また、上記実施例に含まれる他の工程も比較的簡単な構成の装置(図5に示す真空加熱処理装置等)を用いて実施し得る。したがって、リチウム電池の処理量に応じた適切な規模の処理システムを構築することが可能である。このため、これらの処理装置を効率よく(例えば、適切な稼働率で)使用し得る。
<実施例2:Ae処理工程の変形例>
上記実施例1では、被処理材に含まれるアルミニウム成分の凡そ2.7倍に相当する量(モル比)のCa(OH)を用いてAe処理工程を行った。その結果、常温で約14日放置することにより正極集電体を完全に腐食させることができた。
本実施例では、アルミニウム成分に対する使用量を上記実施例1と同様(同じモル比)として、Ca以外のアルカリ土類金属水酸化物を用いてAe処理を行った。すなわち、Ca(OH)に代えて、Mg(OH)、Sr(OH)、またはBa(OH)の各アルカリ土類金属水酸化物を含む処理液を用いて、実施例1と同様の条件によりAe処理工程を実施した。その結果、被処理材(真空加熱処理後の捲回型電極体)に含まれる正極集電体が完全に腐食するまでの期間は、Mg(OH)を用いた場合には28日、Sr(OH)では10日、Ba(OH)では6日であった。使用するアルカリ土類金属水酸化物と、正極集電体がほぼ完全に腐食するまでに要する期間との関係を表1にまとめて示す。
Figure 0004492223
以上の結果は、Ca(OH)以外のアルカリ土類金属の水酸化物を用いた場合にも、実施例1と同様の処理方法を好適に実施し得ることを示している。なお、ステップ264の濾過においてアルカリ土類金属の硫酸塩を不溶分として適切に分離しやすい等の観点からは、Ae処理工程(ステップ240)においてMg以外のアルカリ土類金属の水酸化物を使用することがより好ましい。
<実施例3:リチウムイオン二次電池の処理方法>
この実施例は、正極活物質の組成をLiNi0.95Co0.05とした点以外は実施例1と同様の構成を有するリチウムイオン二次電池を処理し、主にその正極シートについて処理効率(回収率)および回収物の純度等を評価した例である。
図3に示す構成のリチウムイオン二次電池1を100個用意した(図1に示すステップ210)。各々の二次電池1は約12Ahの放電容量を有する。それらの二次電池1の安全弁28をそれぞれ開口し、50kPaの減圧度で、200℃に2時間、次いで500℃に3時間加熱する真空加熱処理を行った(ステップ220)。このようにして得られた有機物除去済み電池から電極体を取り出した(ステップ230,232)。その電極体を被処理材とし、図7に示す構成の装置80を用いてAe処理工程を実施した。なお、上記リチウムイオン二次電池100個分の電極体に含まれる理論正極活物質量は、LiNiO換算として約6.5kgである。また、上記リチウムイオン二次電池100個分の電極体に含まれる理論正極集電体量(アルミニウム成分の量)の量は約3.5kg(約130mol)である。
被処理材に含まれるアルミニウム成分の量(モル数)に対して凡そ1.5倍のモル数のCa(OH)(約195mol)と約180リットルの水とを含む処理液83を処理槽82内に用意した。その処理液83中に電極体10を浸漬し、攪拌機84で処理液83を攪拌しつつ、常温で約二週間放置した。これにより、電極体10を構成する正極集電体が水素ガスを発生しつつゆっくりと溶解(腐食)した。また、正極活物質を含む正電極材が脱落した。二週間後、処理槽82から処理済液を89を回収して回収タンク88に集めた。
さらに図1に示すフローチャートに沿って処理を行い、ステップ244で得られた濾液から2.1kgの炭酸リチウム結晶を回収した(ステップ252〜257)。これは、リチウム元素換算として約85質量%の高回収率に相当する。未回収分のリチウム成分は、ステップ253で得られる濾液中に溶解度分として残留しているものと考えられる。一方、ステップ244で得られた不溶分(残渣)を処理して、5.6kgの水酸化ニッケルおよび0.29kgの水酸化コバルトを回収した(ステップ245〜247およびステップ262〜278)。これは、それぞれニッケル元素換算およびコバルト元素換算として、いずれも約95質量%以上の高回収率に相当する。なお、ステップ278における回収物は、上記遷移金属水酸化物の他に、Ca:約0.055質量%、Cu:約0.021質量%、Al:約0.018質量%およびNa:約0.005質量%を含有していたが、実用上(例えば正極活物質製造用の原料として)問題にはならないレベルの量であった。
<参考例1:正極活物質の製造方法>
上記実施例により得られた遷移金属水酸化物(ステップ278)と水酸化リチウム材料(LiOH・HO等)とを所定の割合で混合し、適切な条件で焼成することにより、リチウム・ニッケル含有複合酸化物であってコバルトを含む複合酸化物から実質的に構成される正極活物質(例えばLiNi0.8Co0.2で表される正極活物質)を得ることができる。ここで、遷移金属水酸化物材料とともに用いる水酸化リチウム材料は、図1に示すステップ257で回収した炭酸リチウム(LiCO)を用いて好ましく製造することができる。例えば、この炭酸リチウムを加熱することによりLiOとCOに分解させる。通常、このときの加熱温度は凡そ1500℃以上とすることが適当である。このLiOに水蒸気(HO)を供給することによりLiOH・HOが得られる。上記実施例により回収した炭酸リチウム(LiCO)は、その回収工程においてリチウム以外のアルカリ金属成分を含む処理剤を用いていない。したがって、このような炭酸リチウムから製造した水酸化リチウム(一水塩)は高純度であり、特にナトリウム等の異種アルカリ金属元素の含有量が少ないことから、別途精製工程(例えば、薄膜分離装置を用いてナトリウムイオンからリチウムイオンを分離する工程等)を行うことなく、そのまま正極活物質の製造等に利用することが可能である。
<参考例2:リチウムイオン二次電池の製造方法>
参考例1により得られた正極活物質を利用(再利用)してリチウムイオン二次電池を製造する例につき簡単に説明する。例えば、図3に示す構成のリチウムイオン二次電池1を製造するには、この正極活物質をカーボンブラック(CB)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末とともに適当な溶媒に分散させて正電極材ペーストを調製する。溶媒としては、水、N−メチルピロリドン等を用いることができる。このペーストを正極集電体(アルミニウム箔等)に塗布して溶媒を揮発させる。このようにして、正極集電体の両面に正電極材層が設けられた正極シートを作製する。正電極材ペーストの塗布は、コンマコーター、ダイコーター等を用いて行うことができる。一方、カーボンブラック(CB)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を適当な溶媒に分散させて負電極材ペーストを調製する。これを負極集電体(銅箔等)に塗布して溶媒を揮発させることにより、負極集電体の両面に負電極材層が設けられた負極シートを作製する。セパレータシート(多孔質ポリプロピレンシート等)を介してこれらの電極シートを積層する。その積層体を捲回して電極体を作製する。電極体の軸方向両端に正極端子および負極端子を溶接等により接続する。これを電解液とともにアルミニウム製等の電池容器に収容する。電解液としては、ジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との7:3(質量比)混合溶媒に約1mol/リットルのLiPFを溶解させたもの等を用いることができる。このDMC−EMC混合溶媒としては、上記実施例のステップ222(図2参照)により回収したもの等を使用可能である。このようにしてリチウムイオン二次電池を構築(再生)することができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
リチウムイオン二次電池から有価物を回収する手順の概略を示すフローチャートである。 リチウム電池から揮発性成分を回収する手順の概略を示すフローチャートである。 リチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す断面図である。 リチウムイオン二次電池の電極体を拡大して示す説明図である。 揮発性成分の回収に用いる装置の概略構成例を示す模式図である。 炉内温度の推移を示す説明図である。 Ae処理工程に使用する装置の概略構成例を示す模式図である。 Ae処理後の不溶分のXRD分析結果を示すチャートである。
符号の説明
1:リチウムイオン二次電池(リチウム電池)
10:捲回型電極体(被処理材)
122:正極集電体
124:正電極材層
142:負極集電体
144:負電極材層
16:セパレータシート
20:電池容器
60:減圧加熱炉
72:排ガス浄化器
722:処理液
80:Ae処理装置
82:処理槽
83:処理液
84:攪拌機
89:処理済液

Claims (9)

  1. リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物から構成される正極活物質を備えるリチウム電池を処理する方法であって、
    該正極活物質とアルミニウム製の正極集電体とを含む被処理材にアルカリ土類金属水酸化物を含む処理液を供給して該正極活物質からリチウム成分を溶出するAe処理工程と、
    その溶出したリチウム成分を含むリチウム溶液を前記被処理材の不溶分から分離する工程と、を包含するリチウム電池処理方法。
  2. 前記Ae処理工程は、前記処理液を前記正極集電体に作用させて該集電体の定形性を実質的に失わせる処理を含む請求項1に記載の方法。
  3. 前記処理液は、前記被処理材に含まれるアルミニウムの量に対して、モル比で1.5倍以上の分量に相当するアルカリ土類金属水酸化物を含有する請求項2に記載の方法。
  4. 前記被処理材は、前記正極集電体上に前記正極活物質を有する正極と、負極集電体上に負極活物質を有する負極とを含み、
    前記Ae処理工程は、その被処理材を前記処理液に浸漬する処理と、該処理液中から固体状の前記負極集電体を取り出す処理とを包含する請求項1に記載の方法。
  5. 前記リチウム電池を加熱して電解質および有機物を除去し、その加熱後に残った電池構成部材の一部または全部を前記Ae処理工程に供する請求項1に記載の方法。
  6. 前記分離工程を経て得られたリチウム溶液に炭酸ガスおよび/または炭酸水を供給して炭酸リチウムを析出させる工程と、
    該析出した炭酸リチウムを該溶液から分離する工程とをさらに包含する請求項1に記載の方法。
  7. 前記被処理材の不溶分に含まれるアルミニウム成分をアルカリ溶液で溶出して該不溶分から分離するAl除去工程を備える請求項1に記載の方法。
  8. 前記Al除去工程を経た前記不溶分に含まれる前記一種または二種以上の遷移金属元素のうち少なくとも一種の遷移金属元素を酸に溶出させる工程と、
    その溶液に中和剤を添加して前記酸に溶出させた遷移金属元素の水酸化物を析出させる工程とをさらに備える請求項7に記載の方法。
  9. 前記複合酸化物は、一般式LiNi 1−x (Mは1種以上の遷移金属元素であり、0≦x<0.5)で表される請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
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