JP7153245B2 - 使用済みリチウムイオン電池からの有価物回収方法 - Google Patents
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Description
正極及び負極と、前記正極と前記負極との間に配され、かつ有機高分子化合物を含むセパレータとを備え、該セパレータに、有機溶媒を含む電解液を保持させている使用済みリチウムイオン電池を加熱する加熱工程を備え、
前記加熱工程を、前記電解液に含まれる有機溶媒の沸点以上かつ前記有機高分子化合物の熱分解温度未満の温度で行う。
また、加熱工程後に生成されたガスに、有機高分子化合物の熱分解物が含まれることを抑制できることから、該ガスを回収し、液体燃料として使用する場合に、有機溶媒の純度が比較的高い液体燃料を得ることができる。
前記有機高分子化合物は、ポリプロピレンであり、前記加熱工程を前記ポリプロピレンの熱分解温度未満の温度で行ってもよい。
消石灰又は生石灰の少なくとも一方を添加して前記加熱工程を行ってもよい。
まず、図1を参照しながら、使用済みリチウムイオン電池から有価物を回収する有価物回収装置について説明する。以下では、使用済みリチウムイオン電池として、車載された使用済みリチウムイオン二次電池を例に説明する。なお、本明細書において、有価物とは、廃棄物として廃棄せずに、回収して再利用されるものを意味する。
本発明における使用済みリチウムイオン電池は、ケースを備え、該ケースには、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配され、かつ有機高分子化合物を含むセパレータとが収容されていて、前記セパレータには、有機溶媒を含む電解液を保持させている。
なお、本発明における使用済みリチウムイオン電池には、リチウムイオン電池を製造する工程で発生する不具合品も含まれる。
本実施形態では、不具合品を含まない使用済みリチウムイオン電池が用いられている。
前記正極は、集電箔としてのアルミニウム(Al)などの箔、該集電箔上に配された正極活物質層とを備え、該正極活物質層には、正極活物質としてのリン酸リチウム(Li3PO4)、リチウム金属酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2など) 、又はリン酸鉄リチウム(LiFePO4)などが含まれている。前記正極からは、集電箔を構成するAl、正極活物質に必須成分として含まれるLi、及び任意成分として含まれるFe、Co、Ni、Mn、及びPなどが有価物として回収される。
本実施形態では、正極の集電箔にアルミニウム箔が用いられ、正極活物質に、Li3PO4、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、及びLiFePO4が用いられている。
前記負極は、集電箔としての銅(Cu)などの箔、該集電箔上に配された負極活物質層とを備え、該負極活物質層には、負極活物質としての炭素材料(グラファイトなど)などが含まれている。前記負極からは、集電箔を構成するC u などが有価物として回収される。
本実施形態では、負極の集電箔に銅箔が用いられ、負極活物質に炭素材料が用いられている。
前記セパレータに含まれる有機高分子化合物としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びポリイミド(PI)などが挙げられる。前記セパレータからは、これらの有機高分子化合物が有価物として回収される。
本実施形態では、有機高分子化合物としてポリエチレンを含むセパレータ、有機高分子化合物としてポリプロピレンを含むセパレータ、及び有機高分子化合物としてポリイミドを含むセパレータが用いられている。
前記電解液に含まれる有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)及びエチレンカーボネート(EC)などの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類などが挙げられる。前記電解液からは、これらの有機溶媒のうち、少なくとも鎖状カーボネート類が有価物として回収される。
本実施形態では、有機溶媒として、プロピレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5で混合したものが用いられている。
ケースは、開口を有するケース本体と、該ケース本体の開口を閉塞する蓋板とを備えている。ケース本体には、前記正極などの各構成部材が収容されている。蓋板には、前記正極及び前記負極と導通する一対の外部端子が備えられている。前記ケース本体及び前記蓋板は、例えば、アルミニウム(Al)などの金属によって形成されていて、前記外部端子は導電性を有する部材、例えば、鉄(Fe)などの金属によって形成されている。そのため、前記ケースからは、前記ケース本体及び前記蓋板を形成しているアルミニウム(Al)などの金属、前記外部端子を形成している鉄(Fe)などの金属が有価物として回収される。
本実施形態では、ケース及び蓋体としてアルミニウムで形成されたものが用いられ、外部端子として鉄で形成されたものが用いられている。
また、電解液に電解質としてLiPF6が含まれている場合、塩としては、水酸化アルカリ土類塩(Ca(OH)2又はM g(OH)2)を用いることが好ましい。塩として水酸化アルカリ土類塩を用いることにより、電池セルの放電中に電池セルから浸漬液中に電解液が漏出した場合に、浸漬液中において、有害物であるP及びFとCa又はMgとの難水溶性の塩を形成させることができるため、これらの有害物を固形物として除去することができる。具体的には、LiPF6が水と接触すると、易水溶性のHF及びL H2PO4 を生成し、それらがさらにCa(OH)2又はMg(OH)2と反応して、難水溶性の塩(Fの場合には、CaF2又はMgF2。Pの場合には、Ca3(PO4)2又はMg3(PO4)2。)を形成するため、これらの有害物を固形分として除去することができる。
また、電解質塩として塩化物塩を用いる場合であって、電解液中に塩素イオンの酸化反応を促進させる金属イオン(鉄イオンなど)が含まれている場合には、浸漬液にキレート剤を添加しておくことが好ましい。このようにすれば、キレート剤により浸漬液中の酸化反応を促進させる金属イオンを捕捉できるので、該金属イオンにより塩素イオンが酸化されて塩素が生成されることを抑制することができる。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、若しくはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)などの有機系のアミノカルボン酸塩、又はクエン酸などを用いることができる。
破砕部13の外部には、燃焼炉40が配されていて、破砕部13と燃焼炉40とは、接続管を介して接続されている。燃焼炉40には、破砕部13における電池セルの各構成部材の破砕時に発生するオフガス(例えば、プロピレンカーボネートなどの有機溶媒)が、前記接続管を介して導入される。なお、燃焼炉40は、上記接続管とは別の接続管を介して、後述する第1加熱部21にも接続されている。
前記渦電流選別機は、塊状物を構成する各材料が前記第2ドラムから落下するときに、塊状物を構成する各材料に生じた渦電流によって発生した磁界と、前記第2ドラムの外周部に配された磁石によって生じる磁界との反発作用によって、塊状物を構成する各材料の選別を行う。そのため、磁石によって生じる磁界との反発作用の小さい磁性を有する金属
材料(Fe)は、第2ドラムから近い位置にて分離され、磁石によって生じる磁界との反発作用の大きい非磁性の金属材料(Al及びCu)は、第2ドラムから離れた位置にて分離され、磁石によって生じる磁界との反発作用が中程度のプラスチック材料(セパレータなど)は、磁性を有する金属材料が分離される位置と非磁性の金属材料が分離される位置との中間の位置で分離されることとなる。
前記渦電流選別機は、前記第1ドラムが分別部31の一方の下流側に位置するように配されている。すなわち、前記渦電流選別機は、塊状物を構成する各材料を分別部31から離れる方向に移送できるように配されている。
また、第1回収部32は、塊状物を構成する各材料が有する特性に応じて選別された塊状物を構成する各材料を、特性ごとにそれぞれ収容する複数の容器を備えている。本実施形態の第1回収部32は、磁性を有する金属材料(Fe)を収容する第1容器と、非磁性の金属材料(Al及びCu)を収容する第2容器と、プラスチック材料(セパレータなど)を収容する第3容器とを備えている。
また、第2回収部34は、前記槽の下流側に、懸濁用液に溶解している成分と、懸濁用液に溶解していない成分(固形分)とを分別する濾過部を備えている。
更に、第2回収部34は、前記濾過部の一方の下流側に、濾過部で得られた固形分から、該固形分に含まれる磁性物を回収するように構成された磁力選別部を備えている。磁力選別部は、磁性物を磁着させるための磁石を備えた磁選機を備えている。
また、第2回収部34は、前記濾過部の他方の下流側に、濾過部で得られた懸濁用液から、該懸濁溶液に溶解している成分を析出させる析出槽を備えている。
本工程では、まず、解体領域11にて、使用済みの電池モジュールから電池セルへの解体を行う。詳しくは、解体領域11にて、複数の電池セル同士を接続している各接続部材を取り外すことにより、使用済みの電池モジュールを電池セルに解体する。
次に、使用済み電池モジュールを解体することにより得られた電池セルを放電部12に移送し、前記電池セルの放電を行う。詳しくは、前記電池セルを浸漬槽中に収容し、浸漬槽の浸漬液中にて電池セルに残留している電気を放電させる。
次に、放電された電池セルを破砕部13に移送し、破砕部13にて該電池セルの構成部材を破砕する。破砕部13では、破砕後の電池セルの各構成部材が適度な大きさを有する塊状物となるように(例えば、破砕後の塊状物の最も長い長さが2mmよりも大きく、50mm以下となるように)、電池セルの各構成部材を破砕する。なお、破砕部13での電池セルの各構成部材の破砕中にはオフガス(例えば、プロピレンカーボネートなどの有機溶媒)が生成されるが、該オフガスは接続管を介して燃焼炉40に導入されて、燃焼炉40で燃焼されることによりエネルギーとして利用される。
本工程では、前処理工程S1で前処理された電池セルの各構成部材を、加熱部20にて加熱する。
詳しくは、第1加熱部21の収容部内に電池セルの各構成部材を収容した後、ガス導入管を介して収容部内に不活性ガスを導入し、ガス排出管を介して収容部内の空気を外部に排出して収容部内を不活性ガス状態下にし、ジャケットに形成された流路に熱媒体を流して収容部内の温度を所定温度まで上昇させ、収容部内の使用済み電池セルの各構成部材を撹拌部で撹拌しながら加熱を行う。
収容部内の電池セルの各構成部材の加熱は、電解液に含まれる有機溶媒の沸点以上かつセパレータに含まれる有機高分子化合物の熱分解温度未満の温度で行う。
本明細書において、電解液に含まれる有機溶媒の沸点とは、電解液に複数の有機溶媒が含まれている場合、これらの有機溶媒の内のいずれかの有機溶媒の沸点を意味する。
本実施形態では、電解液に含まれる有機溶媒として、プロピレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5で混合したものを用いている。そのため、上記加熱は、ジメチルカーボネートの沸点(90℃)、エチルメチルカーボネートの沸点(107℃)、又はプロピレンカーボネートの沸点(240℃)以上の温度で行う。
また、セパレータに含まれる有機高分子化合物の熱分解温度とは、セパレータに含まれる有機高分子化合物が複数種の場合、これらの有機高分子化合物の内の最も熱分解温度が低い有機高分子化合物の熱分解温度を意味する。
本実施形態では、有機高分子化合物を含むセパレータとして、ポリエチレンを含むセパレータ、ポリプロピレンを含むセパレータ、及びポリイミドを含むセパレータを用いている。
ここで、セパレータに含まれるポリエチレンの熱分解温度は380℃であり、セパレータに含まれるポリプロピレンの熱分解温度は330℃であり、セパレータに含まれるポリイミドの熱分解温度は500℃である。
したがって、本実施形態では、ポリプロピレンの熱分解温度である330℃未満の温度で上記加熱を行う。上記加熱は、250℃未満の温度で行うことが好ましく、230℃ 未満の温度で行うことがより好ましく、210℃未満の温度で行うことが特に好ましい。
また、本実施形態において、上記加熱を環状カーボネート類であるプロピレンカーボネートの沸点以上で行う場合には、電解液に含まれる有機溶媒の全てが揮発されるので、接続管を介してこれらの有機溶媒を燃焼炉40に導入させ、燃焼炉40で燃焼させることによりエネルギーとして利用することができる。
一方で、本実施形態において、上記加熱をプロピレンカーボネートの沸点未満の温度で
行う場合、鎖状カーボネート類であるジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの内、最も沸点の高いエチルメチルカーボネートの沸点以上の温度とすることが好ましい。これにより、セパレータに含まれる有機高分子化合物の熱分解を抑制しつつ、少なくとも鎖状カーボネート類を揮発させ、接続管を介して該鎖状カーボネート類を燃焼炉40に導入させ、燃焼炉40で燃焼させることによりエネルギーとして利用することができる。一般に、鎖状カーボネート類は、電解液に含まれる有機溶媒の大部分(本実施形態では70%)を示すことから、このような場合であっても、電解液に含まれる有機溶媒の大部分をエネルギーとして利用することができる。
なお、上記加熱をプロピレンカーボネートの沸点未満の温度で行う場合、プロピレンカーボネートは揮発され難いことから、揮発され得なかったプロピレンカーボネートは、後段の第2加熱部33において燃焼させることができる。
ここで、本明細書において、有機高分子化合物の熱分解温度は、熱重量分析装置(例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製、EXTRA6000、TG/DTA6300など)を用いて、大気雰囲気下かつ大気圧下において、有機高分子化合物を30℃から600℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、その質量減少率を測定したときに、質量減少率が1%となったときの温度を意味する。
また、電解液に電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)が含まれている場合には、LiPF6に由来して生成されるフッ酸を中和するために、消石灰(Ca(OH)2)又は生石灰(CaO)の少なくとも一方を添加して本工程を行う。
また、本工程においては、撹拌しながら加熱を行うことにより、正極活物質及び負極活物質を、正極及び負極の集電箔から粒状物として脱離させる。
本工程では、まず、加熱工程S2において、第1加熱部21で加熱された電池セルの各構成部材を大きさに応じて分別部31で分別する。詳しくは、分別部31の篩分け機により、電池セルの各構成部材を大きさに応じて、篩上品または篩下品として分別する。前述のように、篩上品には塊状物が含まれ、篩下品には粒状物が含まれている。
次に、篩上品を第1回収部32に移送し、篩下品を第2加熱部33に移送する。
第1回収部32では、篩上品に含まれる塊状物を構成する各材料が有する特性に応じて、特性ごとに塊状物を構成する各材料を選別して回収する。詳しくは、渦電流選別機を用いて、塊状物を構成する各材料を、磁性を有する金属材料(Fe)と、非磁性の金属材料(Al及びCu)と、プラスチック材料(セパレータなど)とに分別し、磁性を有する材料を第1 容器内に収容し、非磁性の金属材料を第2容器に収容し、プラスチック材料を第3容器に収容する。第1容器及び第2容器に収容された金属材料については、回収後、各種公知の方法で分別して再利用する。第3容器に収容されたプラスチック材料については、燃焼させることにより、燃料として利用する。
第2加熱部33では、篩下品に含まれる粒状物を加熱する。詳しくは、篩下品に含まれる粒状物を400℃ 以上の温度かつ空気が存在する条件(酸化条件)下にて加熱(酸化焙焼) した後、400℃~750℃の温度かつ還元ガス(水素、一酸化炭素、炭化水素及びアンモニアのうちの1種又は2種以上の混合ガス)が存在する条件(還元条件)下にて加熱(還元焙焼) する。
400℃以上の温度で酸化焙焼を行うことにより、負極活物質である炭素材料を酸化させて一酸化炭素(CO)を生成させることができる。また、加熱工程S2における加熱温度を230℃未満とした場合に加熱され難く、前記粒状物に付着している環状炭酸エステル類を燃焼させることができる。なお、酸化焙焼により生成された一酸化炭素(CO) は、還元焙焼における還元ガスとして利用することができる。
また、400~750℃の温度で還元焙焼を行うことにより、粒状物に含まれる正極活物質由来のCo及びNiを金属にまで還元し、又、Mn及びFeを2価ないし3価の酸化物(MnO、Mn3O4、FeO)にまで還元し、それによって、正極活物質であるリン酸リチウム、リチウム金属酸化物、又はリン酸鉄リチウムなどのリチウム化合物の結晶構造を崩壊させることにより、リチウムをLi2O、LiOH又はLi2CO3の形態で得ることができる。詳しくは、還元ガスとして水素を用いた場合には、リチウムをLi2O及びLiOの形態で得ることができ、還元ガスとして一酸化炭素(CO)を用いた場合には、リチウムをLiCO3の形態で得ることができる。
次に、第2加熱部33で還元焙焼した後の篩下品に含まれる粒状物を第2回収部34に移送し、該粒状物中に含まれる正極活物質由来のLi、Co、Ni、Mn及びFeを分別して回収する。
詳しくは、まず、篩下品に含まれる粒状物を懸濁用液に懸濁させて懸濁液を調製し、該懸濁液を第2回収部34の懸濁槽内に導入し、水に対する溶解度が比較的低いLi2CO3をCa(OH)2 又はMg(OH)2と反応させることにより、水に対する溶解度が比較的高いLiOHの形態にするとともに、MnO、Mn3O4及びFeOをCa(OH)2又はMg(OH)2と反応させることにより、水に対する溶解度が比較的低いMn(OH)2及びFe(OH)2の形態にする。
次に、濾過部にて、懸濁用液中に溶解しているLi化合物と、固形分である、Co、Ni 、Mn(OH)2及びFe(OH)2とを分離する。次に、濾過部にて分離した懸濁用液を析出槽に移送する。上記固形分は水を加えて懸濁液とした後に磁力選別部に移送する。
次に、析出槽内に炭酸ガスを吹き込んだり、該槽内に炭酸アンモニウム又は炭酸ナトリウムなどの炭酸塩を添加することにより、懸濁用液中に溶解しているリチウム化合物を水に対する溶解度の低い炭酸リチウムの形態に代えて、該懸濁用液中に析出させることにより、炭酸リチウムの形態でリチウムを回収する。
磁力選別部においては、磁性物たるNi及びCoを磁選機の磁石に磁着させて回収し、非磁性物たるMn(OH)2及びFe(OH)2を非磁着物として回収する。
磁力選別部にて磁性物として回収されたNi及びCoは、既知の酸溶解法や溶媒抽出法などの方法により分離することができる。
また、Mn(OH)2及びFe(OH)2も、既知の酸溶解法や溶媒抽出法などの方法により分離することができる。
更に、Pについては、既知の晶析法(HAP法、MAP法など)により回収することができる。
細に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
円筒型リチウムイオン二次電池(以下、円筒型LIBという)を用いて、加熱温度の違いにより生成されるタール量の違いを、以下の実験手順に従って調べた。実験装置としては、撹拌機、ガス導入管、ガス排出管及び温度計を配したセパラブルフラスコ(容量2 L)をマントルヒーターに設置したものを用いた。以下に実験手順を示す。なお、上記実験装置を構成する前に、予めセパラブルフラスコの重量(以下、加熱前フラスコ重量という)を測定しておいた。
(実験手順)
(1)破砕機を用いて、円筒型LIB(外径12mm、長さ60mm)2 本を破砕して、20mm程度の大きさの破砕物を得る。
(2)(1)で得た破砕物(80g)をセパラブルフラスコ内に収容し、セパラブルフラスコを密閉する。
(3)ガス導入管を介してセパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入し、ガス排出管を介してセパラブルフラスコ内の空気を外部に排出させることにより、セパラブルフラスコ内を窒素ガスで置換する。セパラブルフラスコへの窒素ガスの導入は、流量100mL/分で行う。なお、以後の(4)での加熱が終了するまで、セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入し続ける。
(4)マントルヒーターを用いて、セパラブルフラスコ内の温度を所定温度(最高温度)まで上昇させ、該所定温度に維持した状態で、撹拌機を用いて破砕物を30分間撹拌する。その後、室温(30℃)まで自然冷却する。
(5)セパラブルフラスコ内の内容物を取り出し、撹拌機、ガス導入管、ガス排出管及び温度計を取り外した後、セパラブルフラスコの重量(以下、加熱後フラスコ重量という)を測定する。
(6)加熱後フラスコ重量から加熱前フラスコ重量を除算することにより、加熱後にセパラブルフラスコに付着しているタールの重量を算出する。
所定温度を100℃、150℃、200℃、300℃、及び400℃とした各場合について、上記試験を行った。なお、本実験に用いた円筒型LIBのセパレータをFTIR 分析した結果、該セパレータは有機高分子化合物としてポリプロピレン(PP)を含むものであることが分かった。本実験により得られた結果を図3 に示した。
また、セパラブルフラスコ内の温度を200℃以下として加熱を行うと、セパラブルフラスコに付着するタールの量は0.2g以下と極少量となることが分かった。このことから、セパラブルフラスコ内の温度を200℃以下として加熱を行うと、タールの生成を特に抑制できることが分かった。
10 前処理部、
11 解体領域、12 放電部、13 破砕部、
20 加熱部、
21 第1加熱部、
30 回収部、
31 分別部、32 第1回収部、33 第2加熱部、34 第2回収部、
40 燃焼炉、
S1 前処理工程、
S2 加熱工程、
S3 回収工程。
Claims (4)
- 使用済みリチウムイオン電池を前処理する前処理部と、前記前処理部の下流側に配され、前記前処理部で前処理された前記使用済みリチウムイオン電池を加熱処理する加熱部と、前記加熱部で加熱処理された後の前記使用済みリチウムイオン電池から有価物を回収する回収部とを備える有価物回収装置を用いて、使用済みリチウムイオン電池から有価物を回収する有価物回収方法であって、
前記前処理部は、使用済みリチウムイオン電池を解体する解体領域と、前記解体領域の下流側に配されて、解体後の前記使用済みリチウムイオン電池を放電処理する放電部と、前記放電部の下流側に配されて、放電後の前記使用済みリチウムイオン電池を破砕する破砕部と、を備え、
前記加熱部は、前記破砕部において破砕された前記使用済みリチウムイオン電池を加熱する第1加熱部を備え、
前記有価物回収装置は、前記破砕部及び前記第1加熱部に接続される燃焼炉をさらに備え、
正極及び負極と、前記正極と前記負極との間に配され、かつ有機高分子化合物を含むセパレータとを備え、該セパレータに、有機溶媒を含む電解液を保持させている使用済みリチウムイオン電池を、前記電解液に含まれる前記有機溶媒の沸点以上かつ前記有機高分子化合物の熱分解温度未満の温度で加熱する加熱工程と、
前記加熱工程により前記電解液から揮発された前記有機溶媒を気体状態で燃焼させることと、前記破砕部での前記使用済みリチウムイオン電池の破砕中に生じるオフガスを気体状態で燃焼させることとを備える燃焼工程と、 を有し、
前記加熱工程を前記第1加熱部にて実施し、前記燃焼工程を前記燃焼炉にて実施する、
使用済みリチウムイオン電池からの有価物回収方法。 - 前記有機高分子化合物はポリプロピレンであり、前記加熱工程を前記ポリプロピレンの熱分解温度未満の温度で行う、
請求項1に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価物回収方法。 - 前記電解液は、電解質として六フッ化リン酸リチウムを含み、
消石灰又は生石灰の少なくとも一方を添加して前記加熱工程を行う、
請求項1又は2に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価物回収方法。 - 前記回収部は、前記第1加熱部における加熱後の前記使用済みリチウムイオン電池の複数の構成部材を該複数の構成部材の大きさに応じて一方の分別物と他方の分別物とに分別する分別部と、前記分別部の下流側に配されて、前記分別部で分別された前記一方の分別物から有価物を回収する第1回収部とを備え、
前記第1回収部は、第1ドラムと、該第1ドラムと間隔を空けて配された第2ドラムであって、ドラムの外周部に互いに異なる磁極を有する磁石が隣接して配された第2ドラムと、前記第1ドラム及び前記第2ドラムにそれぞれ巻き付けられて、選別対象物を前記第1ドラムから前記第2ドラムに向けて移送するベルトと、を備える渦電流選別機を備え、
前記一方の分別物は、前記有価物として、有機高分子化合物の熱分解温度未満の温度で加熱された前記セパレータを含んでおり、
前記渦電流選別機を用いて、前記一方の分別物から、有機高分子化合物の熱分解温度未満の温度で加熱された前記セパレータを分離する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価物回収方法。
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