JP6124001B2 - フッ素含有電解液の処理方法 - Google Patents
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1.リチウムイオン電池などを電解液の融点以下に冷凍して電池を解体破砕し、破砕体を有機溶媒中で電解液を分離し、抽出した電解液を蒸留して電解質と有機溶媒に分離する処理方法(特許文献1)。
2.使用済みリチウム電池を焙焼し、その焙焼物を破砕して磁性物と非磁性物に分別し、アルミニウムや銅などの有用金属量の多いものを回収する処理方法(特許文献2)。
3.リチウム電池を超高圧水で開口し、有機溶媒を用いて電解液を回収する処理方法(特許文献3)。
〔1〕フッ素化合物を含む電解液の揮発成分を減圧下で加熱して気化させる工程、気化したガスに含まれるフッ素成分をカルシウムと反応させてフッ化カルシウムとして固定するフッ素固定工程、気化ガスに含まれる有機溶媒成分を回収する工程を有する電解液の処理方法において、電解液に水または希薄な鉱酸を添加して減圧加熱することによって、電解液に含まれる有機溶媒を気化させると共に、電解液に含まれるヘキサフルオロリン酸リチウムを水と反応させてリン酸とフッ化水素に分解して気化を促進することを特徴とするフッ素含有電解液の処理方法。
〔2〕電解液に対して重量で5%〜20%の水を添加し、または電解液に対して重量で0.1M〜5Mの鉱酸を5%〜20%添加する上記[1]に記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔3〕電解液に含まれる有機溶媒を気化させると共に、電解液に含まれるヘキサフルオロリン酸リチウムを水と反応させてリン酸とフッ化水素に分解し、リン酸を残留させてフッ化水素を気化させる上記[1]または上記[2]に記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔4〕電解液の気化ガスを湿式処理工程に導き、該湿式処理工程において、ガスに含まれるフッ素成分と有機溶媒成分を水冷捕集し、捕集した液を油水分離し、有機溶媒成分を回収する一方、分離した水相にカルシウム化合物を添加して水相中のフッ素とカルシウムを反応させてフッ化カルシウムを生成させる上記[1]〜上記[3]の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔5〕電解液の揮発成分が気化したガスを湿式処理工程に導き、該湿式処理工程において、ガスに含まれるフッ素成分と有機溶媒成分を凝縮して捕集し、捕集した液にカルシウム化合物を添加してフッ素とカルシウムを反応させてフッ化カルシウムを生成させる上記[1]〜上記[3]の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔6〕電解液の揮発成分が気化したガスを湿式処理工程に導き、該湿式処理工程において、カルシウム化合物混合液と接触させてガス中のフッ素を該混合液に吸収させると共にフッ素とカルシウムを反応させてフッ化カルシウムを生成させ、さらに該混合液を通過したガスを凝縮して有機溶媒成分を回収する上記[1]〜上記[3]の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔7〕電解液の揮発成分が気化したガスを乾式処理工程に導き、該乾式処理工程において、気化ガスをカルシウム化合物の充填層に通じてガス中のフッ素とカルシウムを反応させてフッ化カルシウムを生成させ、さらに該充填層を通過したガスを凝縮して有機溶媒成分を回収する上記[1]〜上記[3]の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔8〕5kPa〜常圧の減圧下、80〜150℃に加熱して電解液の揮発成分を気化させ、気化したガスを上記湿式処理工程または上記乾式処理工程に導く上記[4]〜上記[7]の何れかにの何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔9〕1kPa以下の減圧下、80〜150℃に加熱して電解液の揮発成分を気化させ、気化したガスを上記乾式処理工程に導く上記[7]に記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔10〕フッ化カルシウムを回収して再資源化し、また回収した有機溶媒成分を燃料または代替燃料として利用する上記[1]〜上記[9]の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔11〕フッ素化合物を含む電解液を含有する使用済み電池の開口部に管路を接続し、使用済み電池を減圧下で加熱して電解液の揮発成分を気化し、気化したガスを、上記管路を通じてフッ素固定工程および有機溶媒回収工程に導いて処理する上記[1]〜上記[10]の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
〔12〕使用済みリチウムイオン電池の安全弁を開口して該開口に管路を接続し、あるいは複数個の使用済みリチウムイオン電池の安全弁を開口して密閉容器に収納して該密閉容器に管路を接続し、減圧下で加熱して電解液の揮発成分を気化する上記[1]〜上記[11]の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
以下、本発明を具体的に説明する。なお、%は質量%である。
本発明の処理方法は、フッ素化合物を含む電解液の揮発成分を減圧下で加熱して気化させる工程、気化したガスに含まれるフッ素成分をカルシウムと反応させてフッ化カルシウムとして固定するフッ素固定工程、気化ガスに含まれる有機溶媒成分を回収する工程を有する電解液の処理方法において、電解液に水または希薄な鉱酸を添加して減圧加熱することによって、電解液に含まれる有機溶媒を気化させると共に、電解液に含まれるヘキサフルオロリン酸リチウムを水と反応させてリン酸とフッ化水素に分解して気化を促進することを特徴とするフッ素含有電解液の処理方法である。
電解液に含まれる有機溶媒のうち、DMCの沸点は90℃、EMCの沸点は109℃、DECの沸点は127℃、PCの沸点は240℃であり、ECの沸点は244℃であり、電解液をこれらの沸点より高い温度状態にして上記揮発成分(DMC、EMC、DEC、PC、EC等)を気化させる。LiPF6は加熱あるいは加水分解することによってヘキサフルオロリン酸リチウムを分解し、フッ素成分を気化する。
POF3+H2O → HPO2F2+HF(↑)
HPO2F2+H2O → H2PO3F+HF(↑)
H2PO3F+H2O → H3PO4+HF(↑)
湿式処理工程の一例(水冷捕集)を図1に示す。図示するように、電池10は、加温設備15に収納されており、電池10の開口11から延びる管路12は冷却器16および水冷トラップ14を経て真空ポンプ13に接続されている。図示する例では、二段の水冷トラップが設けられている。水冷トラップには水が入れられており、0℃〜10℃に保たれている。加温設備15によって電池10が加温され、さらに真空ポンプ13によって減圧された状態で電解液が気化し、この気化ガスは真空ポンプ13に吸引されて管路12を通じて冷却器16に導かれ、ここで冷却されて凝縮液になり、さらに水冷トラップ14に導かれる。このとき、管内の減圧条件は一定圧力で維持してもよく、または定速度で圧力を下げ、あるいは一定時間ごとに大気圧と減圧を交互に繰り返すなどの変化をさせてもよい。減圧度の調整は真空ポンプの稼動を制御することによって容易に行うことができる。水冷トラップ14でフッ素化合物(HF等)と有機溶媒成分(有機成分:DMC、EMC、DEC、PC、EC等)が水冷捕集される。
湿式処理工程の他の例(凝縮捕集)を図2に示す。図示するように、電池10は、加温設備15に収納されており、電池10の開口11から延びる管路12は冷却器16およびトラップ14を経て真空ポンプ13に接続されている。加温設備15によって電池10が加温され、さらに真空ポンプ13によって減圧された状態で電解液が気化し、この気化ガスは真空ポンプ13に吸引されて管路12を通じて冷却器16に導かれ、ここで冷却されて凝縮液になり、この凝縮液はトラップ14に導かれる。このトラップ14でフッ素化合物(HF等)と有機溶媒成分(有機成分:DMC、EMC、DEC、PC、EC等)が捕集される。
乾式処理工程を図4に示す。図示するように、気化ガスをカルシウム化合物の充填層に通じてガス中のフッ素をカルシウムと反応させてフッ化カルシウムを生成させる。このフッ化カルシウムは充填層から抜き出し,新しいカルシウム化合物を充填層に補充して使用する。一方、該充填層を通過したガスを凝縮トラップに導いて有機溶媒成分を回収する。カルシウム化合物の充填層は複数段を直列あるいは並列またはその両方を組み合わせて設置してよい。
自動車用の大型電池セル(リチウムイオン電池、1.66kg)を放電して包装シートを剥離し、安全弁を開いて水を18g添加し、安全弁の開口に管路を接続し、真空ポンプによって5kPaに減圧して150℃に2時間オイルヒーターに浸漬して加熱した。発生したガスを冷却管(4℃)、水冷トラップ(液量300mL)の順に導いて捕集した。これを室温に静置して水相と有機相に分離した。分離した水相340mLを、有機相120mLを回収した。この水相のフッ素濃度は10g/L、pH2であった。これに消石灰6.0gを加えて沈澱を生成させた。回収した沈澱を粉末X線回折によって分析し、フッ化カルシウムであることを確認した。フッ化カルシウムの回収量は6.3gであり、純度80%であった。一方、分離した有機相を回収し、成分を分析したところ、溶液の成分はDMC、MEC、DEC、ECであった。
100mLの電解液に1.5mol/Lの硫酸水溶液を21.5g添加し、管路を接続し、真空ポンプにより5kPaに減圧して120℃に2時間オイルヒーターに浸漬して加熱した。発生したガスを冷却管(4℃)、水冷トラップ(液量200mL)の順に導いて捕集した。これを室温に静置して水相と有機相に分離し、水相230mLを、有機相35mLを回収した。この水相のフッ素濃度は43g/L、pH2であった。水相を回収し、消石灰18gを加えて沈澱を生成させた。回収した沈澱を粉末X線回折によって分析し、フッ化カルシウムであることを確認した。フッ化カルシウムの回収量は20g、純度92%であり,フッ酸製造原料として活用できることがわかった。一方、分離した有機相を回収し、成分を分析したところ、溶液の成分はDMC、MEC、DEC、ECであった。
100mLの電解液に水を21.5g添加し、管路を接続し、真空ポンプにより5kPaに減圧して120℃に2時間オイルヒーターに浸漬して加熱した。発生したガスを冷却管(4℃)で凝縮させ、捕集瓶に捕集した。回収液は95mLであり、有機相のみ回収された。回収液のフッ素濃度は87g/L、pH2であった。これに消石灰15gを加えて沈澱を生成させた。回収した沈澱を粉末X線回折によって分析し、フッ化カルシウムであることを確認した。フッ化カルシウムの回収量は14gであり、純度93%であり、フッ酸製造原料として利用できるものであった。有機相を分析したところ、溶液の成分はDMC、MEC、DEC、ECであった。
100mLの電解液に水を21.5g添加し、管路を接続し、120℃のオイルヒーターに浸漬した。真空ポンプにより20kPaに減圧して10分保持し、その後、真空ポンプを停止して管内を大気圧に戻した後に、再度、真空ポンプを作動して20kPaに減圧し、10分経過後に真空ポンプを停止して大気圧に戻す操作を2時間繰り返した。発生したガスを冷却管(4℃)で凝縮させ、捕集瓶に捕集した。回収液は101mLであり,有機相のみ回収された。この回収液のフッ素濃度は93g/L、pH1.9であった。これに消石灰17gを加えて沈澱を生成させた。回収した沈澱を粉末X線回折によって分析し、フッ化カルシウムであることを確認した。フッ化カルシウムの回収量は19g、純度88%であり、フッ酸製造原料として利用できるものであった。有機相を分析したところ、溶液の成分はDMC、MEC、DEC、ECであった。
100mLの電解液に水を21.5g添加し、管路を接続し、真空ポンプにより15kPaに減圧して120℃に2時間オイルヒーターに浸漬して加熱した。発生したガスはカルシウム懸濁液(炭酸カルシウム30g、水100mL、30℃〜60℃で調整)に通し、気化したフッ素を吸収し、フッ化カルシウムとして固定化した。有機溶媒等は、その後の冷却器(4℃)で凝縮させ、捕集瓶に捕集した。カルシウム懸濁液で回収した沈殿は、粉末X線回折によって分析し、フッ化カルシウムと炭酸カルシウムの混合物であることを確認した。冷却器により凝縮された回収液は80mLであり,有機相のみであった。回収液のフッ素濃度は5mg/L、pH6.2であり、ほとんどフッ素を含まないものであった。有機相を分析したところ、溶液の成分はDMC、MEC、DEC、ECであった。
自動車用の大型電池セル(リチウムイオン電池、1.66kg)を放電して包装シートを剥離し、安全弁を開いて水を18g添加し、管路を接続し、真空ポンプにより5kPaに減圧して150℃に2時間オイルヒーターに浸漬して加熱した。発生したガスを炭酸カルシウムの充填層に導入した。
ガス通過後、炭酸カルシウムの充填層を取り出して成分を粉末X線回折によって分析したところ、未反応の炭酸カルシウムとフッ化カルシウムであった。一方、充填層を通過したガスを凝縮トラップ(0℃)に導いて貯留した。凝縮液の成分を分析したところ、回収液の成分はDMC、MEC、DEC、ECであり,フッ素濃度は30mg/Lであった。
Claims (12)
- フッ素化合物を含む電解液の揮発成分を減圧下で加熱して気化させる工程、気化したガスに含まれるフッ素成分をカルシウムと反応させてフッ化カルシウムとして固定するフッ素固定工程、気化ガスに含まれる有機溶媒成分を回収する工程を有する電解液の処理方法において、電解液に水または希薄な鉱酸を添加して減圧加熱することによって、電解液に含まれる有機溶媒を気化させると共に、電解液に含まれるヘキサフルオロリン酸リチウムを水と反応させてリン酸とフッ化水素に分解して気化を促進することを特徴とするフッ素含有電解液の処理方法。
- 電解液に対して重量で5%〜20%の水を添加し、または電解液に対して重量で0.1M〜5Mの鉱酸を5%〜20%添加する請求項1に記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- 電解液に含まれる有機溶媒を気化させると共に、電解液に含まれるヘキサフルオロリン酸リチウムを水と反応させてリン酸とフッ化水素に分解し、リン酸を残留させてフッ化水素を気化させる請求項1または請求項2に記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- 電解液の気化ガスを湿式処理工程に導き、該湿式処理工程において、ガスに含まれるフッ素成分と有機溶媒成分を水冷捕集し、捕集した液を油水分離し、有機溶媒成分を回収する一方、分離した水相にカルシウム化合物を添加して水相中のフッ素とカルシウムを反応させてフッ化カルシウムを生成させる請求項1〜請求項3の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- 電解液の揮発成分が気化したガスを湿式処理工程に導き、該湿式処理工程において、ガスに含まれるフッ素成分と有機溶媒成分を凝縮して捕集し、捕集した液にカルシウム化合物を添加してフッ素とカルシウムを反応させてフッ化カルシウムを生成させる請求項1〜請求項3の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- 電解液の揮発成分が気化したガスを湿式処理工程に導き、該湿式処理工程において、カルシウム化合物混合液と接触させてガス中のフッ素を該混合液に吸収させると共にフッ素とカルシウムを反応させてフッ化カルシウムを生成させ、さらに該混合液を通過したガスを凝縮して有機溶媒成分を回収する請求項1〜請求項3の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- 電解液の揮発成分が気化したガスを乾式処理工程に導き、該乾式処理工程において、気化ガスをカルシウム化合物の充填層に通じてガス中のフッ素とカルシウムを反応させてフッ化カルシウムを生成させ、さらに該充填層を通過したガスを凝縮して有機溶媒成分を回収する請求項1〜請求項3の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- 5kPa〜常圧の減圧下、80〜150℃に加熱して電解液の揮発成分を気化させ、気化したガスを上記湿式処理工程または上記乾式処理工程に導く請求項4〜請求項7の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- 1kPa以下の減圧下、80〜150℃に加熱して電解液の揮発成分を気化させ、気化したガスを上記乾式処理工程に導く請求項7に記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- フッ化カルシウムを回収して再資源化し、また回収した有機溶媒成分を燃料または代替燃料として利用する請求項1〜請求項9の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- フッ素化合物を含む電解液を含有する使用済み電池の開口部に管路を接続し、使用済み電池を減圧下で加熱して電解液の揮発成分を気化し、気化したガスを、上記管路を通じてフッ素固定工程および有機溶媒回収工程に導いて処理する請求項1〜請求項10の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
- 使用済みリチウムイオン電池の安全弁を開口して該開口に管路を接続し、あるいは複数個の使用済みリチウムイオン電池の安全弁を開口して密閉容器に収納して該密閉容器に管路を接続し、減圧下で加熱して電解液の揮発成分を気化する請求項1〜請求項11の何れかに記載するフッ素含有電解液の処理方法。
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