JP6218381B2 - アゾ化合物、インク組成物、記録方法及び着色体 - Google Patents
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Description
従来、万年筆、フェルトペン等及びインクジェット記録用のインクとしては、水溶性色素を水性媒体中に溶解した水性インクが使用されている。これらの水性インクには、ペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく、一般に水溶性有機溶剤が添加されている。そして、これらのインクにおいては、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性がよいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等が要求される。また、使用される水溶性色素には、特に水への溶解度が高いこと、インクに添加される水溶性有機溶剤への溶解度が高いことが要求される。さらに、形成される画像には、耐水性、耐光性、耐ガス性、耐湿性等の画像堅牢性が求められている。
1)下記式(1)で表されるアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、
R1は、(C1〜C4)アルキル基;カルボキシ基で置換された(C1〜C4)アルキル基;フェニル基;スルホ基で置換されたフェニル基;又は、カルボキシ基;を表し、
R2は、シアノ基;カルバモイル基;又は、カルボキシ基;を表し、
R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子;(C1〜C4)アルキル基;ハロゲン原子;(C1〜C4)アルコキシ基;又は、スルホ基;を表し、
R5は、(C1〜C4)アルキルチオ基;又は、ヒドロキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1〜C4)アルキルチオ基;を表し、
R6は、(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ基;を表し、
R7は、(C1〜C4)アルキルチオ基;又は、ヒドロキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1〜C4)アルキルチオ基;を表し、
R8は、(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ基;を表し、
R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子;カルボキシ基;スルホ基;アセチルアミノ基;塩素原子;(C1〜C4)アルキル基;(C1〜C4)アルコキシ基;又は、ヒドロキシ基、(C1〜C4)アルコキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1〜C4)アルコキシ基;を表し、
R11からR13は、それぞれ独立して、水素原子;カルボキシ基;スルホ基;ヒドロキシ基;アセチルアミノ基;塩素原子;シアノ基;ニトロ基;スルファモイル基;(C1〜C4)アルキル基;(C1〜C4)アルコキシ基;ヒドロキシ基、(C1〜C4)アルコキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1〜C4)アルコキシ基;(C1〜C4)アルキルスルホニル基;又は、ヒドロキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1〜C4)アルキルスルホニル基;を表す。]
4)上記式(1)又は(2)において、R5及びR7がスルホ基又はカルボキシ基で置換された(C1〜C4)アルキルチオ基;であり、R9がスルホ(C1〜C4)アルコキシ基;である、上記1)乃至3)のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、
5)上記式(1)又は(2)において、R1がメチル基;又はフェニル基;であり、R2がシアノ基;又はカルバモイル基;であり、R3が水素原子;メチル基;又はメトキシ基;であり、R4がスルホ基;である、上記1)乃至4)のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、
R1がメチル基;又はフェニル基;
R2がシアノ基;又はカルバモイル基;
R3が水素原子;メチル基;又はメトキシ基;
R4がスルホ基;
R5がスルホ基又はカルボキシ基で置換された(C1〜C4)アルキルチオ基;
R6が(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ基;
R7がスルホ基又はカルボキシ基で置換された(C1〜C4)アルキルチオ基;
R8が(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ基;
R9がスルホ(C1〜C4)アルコキシ基;
R10が(C1〜C4)アルキル基;又はアセチルアミノ基;
R11からR13が、それぞれ独立して、水素原子;カルボキシ基;スルホ基;塩素原子;ニトロ基;メチル基;メトキシ基;スルファモイル基;又は、スルホ基若しくはカルボキシ基で置換された(C1〜C4)アルキルスルホニル基;である、上記1)又は2)に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、
R1がメチル基;
R2がシアノ基又はカルバモイル基;
R3が水素原子;メチル基;又はメトキシ基;
R4がスルホ基;
R5がスルホ(C1〜C4)アルキルチオ基;
R6が(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ基;
R7がスルホ(C1〜C4)アルキルチオ基;
R8が(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ基;
R9がスルホ(C1〜C4)アルコキシ基;
R10が(C1〜C4)アルキル基;又はアセチルアミノ基;
R11からR13が、それぞれ独立して、水素原子;カルボキシ基;スルホ基;塩素原子;ニトロ基;メチル基;メトキシ基;又はスルファモイル基;である、上記1)又は2)に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、
R1がメチル基;
R2がシアノ基;
R3が水素原子;又はメトキシ基;
R4がスルホ基;
R5がスルホ(C1〜C4)アルキルチオ基;
R6がアセチルアミノ基;
R7がスルホ(C1〜C4)アルキルチオ基;
R8がアセチルアミノ基;
R9がスルホプロポキシ基;又はスルホブトキシ基;
R10が(C1〜C4)アルキル基;
R11が水素原子;又はスルホ基;
R12がスルホ基;又は塩素原子;
R13が水素原子;又はスルホ基である、上記1)又は2)に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、
10)水溶性有機溶剤をさらに含有する、上記9)に記載の水性インク組成物、
11)上記9)又は10)に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法、
12)上記被記録材が情報伝達用シートである、上記11)に記載のインクジェット記録方法、
13)上記情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシ−トである、上記12)に記載のインクジェット記録方法、
14)上記9)又は10)に記載のインク組成物を含む容器を装填したインクジェットプリンタ、
15)a)上記1)乃至8)のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、
b)上記9)又は10)に記載の水性インク組成物、及び、
c)上記11)に記載のインクジェット記録方法、の3者のいずれかによって着色された着色体、
に関する。
便宜上、本明細書においては、「本発明のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩」の全てを含めて「本発明のアゾ化合物」と以下、簡略して記載する。
より好ましくは、(C1〜C4)アルキル基、フェニル基、又は、スルホ基で置換されたフェニル基である。
さらに好ましくは、(C1〜C4)アルキル基、又はフェニル基である。
特に好ましくは、(C1〜C4)アルキル基であり、中でもメチルが最も好ましい。
より好ましくは、いずれか一方が水素原子、他方がスルホ基の組み合わせである。
R3及びR4の置換位置は特に制限されないが、いずれか一方が水素原子、他方がスルホ基のとき、該スルホ基は、ベンズイミダゾロピリドン環を構成する、いずれの窒素原子にも隣接しない方の、2つの炭素原子のいずれかに置換するのが好ましい。
具体例としては、2−ヒドロキシエチルチオ、2−ヒドロキシプロピルチオ、3−ヒドロキシプロピルチオ等のヒドロキシ(C1〜C4)アルキルチオ基;2−スルホエチルチオ、3−スルホプロピルチオ等のスルホ(C1〜C4)アルキルチオ基;2−カルボキシエチルチオ、3−カルボキシプロピルチオ、4−カルボキシブチルチオ等のカルボキシ(C1〜C4)アルキルチオ基;等が挙げられる。
具体例としては、2−ヒドロキシエチルチオ、2−ヒドロキシプロピルチオ、3−ヒドロキシプロピルチオ等のヒドロキシ(C1〜C4)アルキルチオ基;2−スルホエチルチオ、3−スルホプロピルチオ等のスルホ(C1〜C4)アルキルチオ基;2−カルボキシエチルチオ、3−カルボキシプロピルチオ、4−カルボキシブチルチオ等のカルボキシ(C1〜C4)アルキルチオ基;等が挙げられる。
具体例としては、2−ヒドロキシエトキシ、2−ヒドロキシプロポキシ、3−ヒドロキシプロポキシ等のヒドロキシ(C1〜C4)アルコキシ基;2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ等のスルホ(C1〜C4)アルコキシ基;2−カルボキシエトキシ、3−カルボキシプロポキシ、4−カルボキシブトキシ等のカルボキシ(C1〜C4)アルコキシ基;等が挙げられる。
上記のうち、メチルスルホニル、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニルが好ましく、メチルスルホニルが特に好ましい。
具体例としては、ヒドロキシエチルスルホニル、2−ヒドロキシプロピルスルホニル等のヒドロキシ置換のもの;2−スルホエチルスルホニル、3−スルホプロピルスルホニル等のスルホ置換のもの;2−カルボキシエチルスルホニル、3−カルボキシプロピルスルホニル等のカルボキシ置換のもの;等が挙げられる。
式(2)において、より好ましいR11〜R13はその置換位置等を特定することができる。
すなわち、R11〜R13が置換するベンゼン環において、アゾ基の置換位置を1位とした場合に、R11が2位又は3位に、R12が4位に、R13が5位又は6位に置換したものが好ましい。
式(2)において特に好ましいものは、R5〜R13の置換位置が上記のように特定されたものであり、置換基の種類については上記式(1)におけるのと同じでよい。
(i)
R1がメチル基;又はフェニル基;
R2がシアノ基;又はカルバモイル基;
R3が水素原子;メチル基;又はメトキシ基;
R4がスルホ基;
R5がスルホ基又はカルボキシ基で置換された(C1〜C4)アルキルチオ基;
R6が(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ基;
R7がスルホ基又はカルボキシ基で置換された(C1〜C4)アルキルチオ基;
R8が(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ基;
R9がスルホ(C1〜C4)アルコキシ基;
R10が(C1〜C4)アルキル基;又はアセチルアミノ基;
R11からR13が、それぞれ独立して、水素原子;カルボキシ基;スルホ基;塩素原子;ニトロ基;メチル基;メトキシ基;スルファモイル基;又は、スルホ基若しくはカルボキシ基で置換された(C1〜C4)アルキルスルホニル基;である組み合わせ。
(ii)
R1がメチル基;
R2がシアノ基;又はカルバモイル基;
R3が水素原子;メチル基;又はメトキシ基;
R4がスルホ基;
R5がスルホ(C1〜C4)アルキルチオ基;
R6が(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ基;
R7がスルホ(C1〜C4)アルキルチオ基;
R8が(C1〜C4)アルキルカルボニルアミノ基;
R9がスルホ(C1〜C4)アルコキシ基;
R10が(C1〜C4)アルキル基;又はアセチルアミノ基;
R11からR13が、それぞれ独立して、水素原子;カルボキシ基;スルホ基;塩素原子;ニトロ基;メチル基;メトキシ基;又は、スルファモイル基;である組み合わせ。
(iii)
R1がメチル基;
R2がシアノ基;
R3が水素原子;又はメトキシ基;
R4がスルホ基;
R5がスルホ(C1〜C4)アルキルチオ基;
R6がアセチルアミノ基;
R7がスルホ(C1〜C4)アルキルチオ基;
R8がアセチルアミノ基;
R9がスルホプロポキシ基;又はスルホブトキシ基;
R10が(C1〜C4)アルキル基;
R11が水素原子;又はスルホ基;
R12がスルホ基;又は塩素原子;
R13が水素原子;又はスルホ基;である組み合わせ。
なお、下記式(5)〜(12)において、R1〜R13は上記式(1)におけるのと同じ意味を表す。
下記式(5)で表される化合物を常法によりジアゾ化し、得られたジアゾ化合物と下記式(6)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記式(7)で表される化合物を得る。
各表においてスルホ基、カルボキシ基等の官能基は、便宜上、遊離酸の形で記載する。
上記式(5)で表される化合物のジアゾ化物と上記式(6)で表される化合物とのカップリングもそれ自体公知の条件で実施される。水又は水性有機媒体中、例えば−5〜30℃、好ましくは0〜25℃の温度、且つ、酸性から中性のpH値、例えばpH1〜6で行うことが有利である。ジアゾ化反応液が酸性であり、また、カップリング反応の進行により反応系内はさらに酸性化してしまうため、反応液の好ましいpH条件へのpH値の調整を塩基の添加によって行う。塩基としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、アンモニア又は有機アミン等が使用できる。
上記式(5)で表される化合物と上記式(6)で表される化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
上記式(7)で表される化合物のジアゾ化物と上記式(8)で表される化合物とのカップリングもそれ自体公知の条件で実施される。水又は水性有機媒体中、例えば−5〜40℃、好ましくは10〜30℃の温度、且つ、酸性から中性のpH値、例えばpH2〜7で行うことが有利である。ジアゾ化反応液が酸性であり、また、カップリング反応の進行により反応系内はさらに酸性化してしまうため、反応液の好ましいpH条件へのpH値の調整を塩基の添加によって行う。塩基としては上記と同じものが使用できる。
上記式(7)で表される化合物と上記式(8)で表される化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
上記式(9)で表される化合物のジアゾ化物と上記式(10)で表される化合物とのカップリングもそれ自体公知の条件で実施される。水又は水性有機媒体中、例えば−5〜50℃、好ましくは10〜40℃の温度、且つ、酸性から中性のpH値、例えばpH2〜7で行うことが有利である。ジアゾ化反応液が酸性であり、また、カップリング反応の進行により反応系内はさらに酸性化してしまうため、反応液の好ましいpH条件へのpH値の調整を塩基の添加によって行う。塩基としては上記と同じものが使用できる。
上記式(9)で表される化合物と上記式(10)で表される化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
上記式(11)で表される化合物のジアゾ化物と上記式(12)で表される化合物とのカップリングもそれ自体公知の条件で実施される。水又は水性有機媒体中、例えば−5〜50℃、好ましくは10〜40℃の温度、且つ、弱酸性からアルカリ性のpH値で行うことが有利である。好ましくは弱酸性から弱アルカリ性のpH値、例えばpH5〜10で実施され、pH値の調整は塩基の添加によって実施される。塩基としては上記と同じものが使用できる。
上記式(11)で表される化合物と上記式(12)で表される化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
また、本発明のアゾ化合物の遊離酸、その互変異性体、及びそれらの各種の塩が混合物であってもよい。例えばナトリウム塩とアンモニウム塩との混合物、遊離酸とナトリウム塩との混合物、リチウム塩、ナトリウム塩、及びアンモニウム塩の混合物等、いずれの組み合わせを用いてもよい。塩の種類によって溶解性等の物性値が異なる場合もあり、必要に応じて適宜塩の種類を選択すること、又は複数の塩等を含む場合にはその比率を変化させることにより、目的に適う物性を有する混合物を得ることもできる。
上記式(13)におけるZ1乃至Z4のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が挙げられ、ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシ(C1〜C4)アルキル基が挙げられ、ヒドロキシアルコキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシ(C1〜C4)アルコキシ(C1〜C4)アルキル基が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシエトキシ(C1〜C4)アルキルが好ましい。特に好ましいものとしては、水素原子;メチル;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシ(C1〜C4)アルキル基;ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシエトキシ(C1〜C4)アルキル基;等が挙げられる。
この水と混和可能な有機物質や有機溶剤としては、後述する水溶性有機溶剤等が挙げられる。
上記式(1)で表されるアゾ化合物を所望の塩とする際に用いる無機塩の例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属のハロゲン塩;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウムイオンのハロゲン塩;水酸化アンモニウム(アンモニア水)等のアンモニウムイオンの水酸化物;等が挙げられる。
また、有機陽イオンの塩の例としては、例えばジエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩等の、上記式(13)で表される4級アンモニウムイオンのハロゲン塩等が挙げられる。
調色用色素としては、イエロー(例えばC.I.ダイレクトイエロー34、C.I.ダイレクトイエロー58、C.I.ダイレクトイエロー86、C.I.ダイレクトイエロー132、C.I.ダイレクトイエロー161等)、オレンジ(例えばC.I.ダイレクトオレンジ17、C.I.ダイレクトオレンジ26、C.I.ダイレクトオレンジ29、C.I.ダイレクトオレンジ39、C.I.ダイレクトオレンジ49等)、ブラウン、スカーレット(例えばC.I.ダイレクトレッド89等)、レッド(例えばC.I.ダイレクトレッド62、C.I.ダイレクトレッド75、C.I.ダイレクトレッド79、C.I.ダイレクトレッド80、C.I.ダイレクトレッド84、C.I.ダイレクトレッド225、C.I.ダイレクトレッド226等)、マゼンタ(例えばC.I.ダイレクトレッド227等)、バイオレット、ブルー、ネイビー、シアン(例えばC.I.ダイレクトブルー199、C.I.アシッドブルー249等)、グリーン、ブラック等の種々の色相を有する他の色素が挙げられる。
本発明のインク組成物は、本発明のアゾ化合物により得られる効果を阻害しない範囲で、これらの調色用色素を1種類以上配合して用いることができる。この場合であっても、インク組成物中に含有する色素の総量は上記の範囲でよい。また、本発明のアゾ化合物と上記の調色用色素との配合比率は、調色用色素の色相等にもよるが、おおよそ20:1から1:2、好ましくは10:1から1:1である。
本発明のインク組成物をインクジェット記録用のインクとして使用する場合、本発明のアゾ化合物中の金属陽イオンの塩化物、硫酸塩等の無機不純物の含有量が少ないものを用いるのが好ましい。該無機不純物の含有量の目安は、おおよそ色素の総質量に対して1質量%以下程度である。下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0%でよい。無機不純物の少ない本発明のアゾ化合物を製造するには、例えば逆浸透膜を用いる方法;本発明のアゾ化合物の乾燥品或いはウェットケーキをメタノール等のアルコール、好ましくは(C1〜C4)アルコール及び水の混合溶媒中で撹拌して懸濁精製し、析出物を濾過分離して乾燥する方法;等の公知の方法で脱塩処理すればよい。
なお、上記の水溶性有機溶剤にはトリメチロールプロパン等のように、常温で固体の物質も含まれているが、これらは固体であっても水溶性を示し、水に溶解させた場合には水溶性有機溶剤と同じ目的で使用することができるため、便宜上、本明細書においては水溶性有機溶剤の範疇に記載する。
有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物の具体例としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例として、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製、商品名プロクセルRTMGXL(S)やプロクセルRTMXL−2(S)等が挙げられる。なお、本明細書において、上付きの「RTM」は登録商標を意味する。
アニオン界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
上記のインク調製剤は、それぞれ単独又は混合して用いられる。
この記録方法は、公知の方法、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式;ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式);電気信号を音響ビームに変えてインクに照射し、その放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式;インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット、いわゆるバブルジェット(登録商標)方式;等を使用することができる。
この情報伝達用シートとしては、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸或いは塗工すること;多孔質シリカ、アルミナゾル、特殊セラミックス等の、インク中の色素を吸収し得る多孔性白色無機物を、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に、上記基材表面に塗工すること;等の方法により設けられる。
このようなインク受容層を設けた情報伝達用シートは、通常インクジェット専用紙(フィルム)、光沢紙(フィルム)等と呼ばれる。その具体例としては、キヤノン株式会社製、商品名 プロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー又はマットフォトペーパー;セイコーエプソン株式会社製、商品名 写真用紙(光沢)、PMマット紙、クリスピア;日本ヒューレット・パッカード株式会社製、商品名 アドバンスフォトペーパー、プレミアムプラスフォト用紙、プレミアム光沢フィルム又はフォト用紙;等が挙げられ、市販品として入手が可能である。なお、普通紙も当然に使用できる。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明の黒色インク組成物と、例えば上記したような公知のマゼンタ、シアン、イエロー、及び必要に応じて、グリーン、ブルー(又はバイオレット)、レッド(又はオレンジ)等の各色のインク組成物とを併用することもできる。
各色のインク組成物は、それぞれの容器に注入され、その各容器を本発明の黒色インク組成物を含有する容器と同様に、インクジェットプリンタの所定の位置に装填してインクジェット記録に使用される。
a)上記1)乃至8)のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、
b)上記9)又は10)に記載の水性インク組成物、及び、
c)上記11)に記載のインクジェット記録方法、の3者[これらa)乃至c)の3者]のいずれかによって着色された物質を意味する。
着色される物質について特に制限は無いが、上記のインクジェット記録方法に用いる被記録材等が好ましく挙げられる。
また、該アゾ化合物を含有する本発明のインク組成物は水性の黒色インク組成物であり、長期間保存後の固体析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。
本発明のインク組成物で記録した画像は、耐オゾンガス性に優れ、印字濃度が非常に高く、演色性が小さく、且つ彩度が低く、高品位な黒色の色相を有する。耐光性、耐湿性、耐水性等の各種堅牢性にも優れる。さらにマゼンタ、シアン、及びイエロー色素をそれぞれ含有するインク組成物と併用することにより、各種堅牢性に優れ、保存性の優れたフルカラーのインクジェット記録が可能である。
このように、本発明のアゾ化合物を含有するインク組成物は、インクジェット記録用、筆記具用等のインクとして用いることが可能であり、吐出安定性にも優れることから、特にインクジェット記録用のインクとして好適である。
本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。
各合成反応、晶析等の操作は、特に断りのない限り、いずれも撹拌下に行った。
下記の各式において、スルホ、カルボキシ等の酸性官能基は、遊離酸の形で表記した。
合成反応におけるpH値及び反応温度は、いずれも反応系内における測定値を示した。
また、合成した化合物の最大吸収波長(λmax)は、pH7〜8の水溶液中で測定し、測定した化合物については実施例中に、その測定値を記載した。
なお、以下の実施例で合成した本発明のアゾ化合物は、水に対していずれも100g/リットル以上の溶解性を示した。
[実施例1]
(工程1)
4−クロロ−3−ニトロアニリン51.8部をN−メチル−2−ピロリドン60.0部に溶解し、ここに無水酢酸35.2部を約15分間かけて滴下した。滴下後40〜50℃で2時間反応後、反応液を水400部に添加した。室温で30分間撹拌した後、析出した固体を濾過し、得られた固体を漏斗上で水100部により洗浄し、分取、乾燥して下記式(14)で表される化合物63.0部を得た。
上記実施例1(工程1)で得られた式(14)で表される化合物42.9部をN−メチル−2−ピロリドン115.0部に溶解し、ここに3−メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム40.9部及び炭酸カリウム29.0部を添加した。添加後、130〜140℃に加熱し、同温度で2時間反応させた。3−メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム3.6部をさらに添加した後、130〜140℃で1時間反応させた。60℃まで冷却後、反応液を2−プロパノール700部に添加し、室温まで冷却後、得られた固体を濾過分取した。得られたウェットケーキを水300部に溶解後、35%塩酸の添加によりpH3.0〜4.0とした後、塩化ナトリウムにて塩析し、析出した固体を濾過分取して、下記式(15)で表される化合物をウェットケーキとして205.3部得た。
水150部に、上記実施例1(工程2)で得られた式(15)で表される化合物のウェットケーキ102.6部、活性炭1.6部、及び無水塩化鉄(III)0.4部を添加し、60℃に加熱後、80%ヒドラジンヒドラート15.9部を約30分間かけて滴下した。90℃に加熱後、同温度で1.5時間反応させた。40℃まで冷却後、不溶物を濾過により除去し、濾液を室温まで冷却した。50%硫酸の添加によりpH1.0〜1.5とし、析出した固体を濾過分取して、下記式(16)で表される化合物をウェットケーキとして62.3部得た。
水40部に下記式(17)で表される5−アミノ−2−クロロベンゼンスルホン酸12.6部を添加後、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH4.0〜5.0として水溶液を得た。35%塩酸25部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液12.6部を添加し、約30分間反応させた。ここにスルファミン酸1.5部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。
一方、水200部に上記実施例1(工程3)にて得られた式(16)で表される化合物のウェットケーキ32.4部を添加後、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH4.0〜5.0として水溶液を得た。この水溶液を上記にて得られたジアゾ反応液に約5分間かけて滴下した。滴下後、15%炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpHを2.0〜2.5に保持しながら3時間反応させた後、塩化ナトリウムの添加により塩析した。析出した固体を濾過分取し、下記式(18)で表される化合物31.5部をウェットケーキとして得た。
水40部に上記実施例1(工程4)にて得られた式(18)で表される化合物のウェットケーキ全量を添加後、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH6.0〜7.0として水溶液を得た。35%塩酸24.8部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液9.8部を添加し、約30分間反応させた。ここにスルファミン酸2.0部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。
一方、水250部に上記実施例1(工程3)にて得られた式(16)で表される化合物のウェットケーキ30.8部を添加後、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH4.0〜5.0として水溶液を得た。この水溶液を上記にて得られたジアゾ反応液に約5分間かけて滴下した。滴下後、15%炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpHを2.0〜2.5に保持しながら3時間反応させた後、塩化ナトリウムの添加により塩析した。析出した固体を濾過分取し、下記式(19)で表される化合物90部をウェットケーキとして得た。
水250部に上記実施例1(工程4)にて得られた式(18)で表される化合物のウェットケーキ45部を添加し、撹拌して溶解した。35%塩酸16.5部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液4.7部を添加し、約30分撹拌した。ここにスルファミン酸2.0部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。
一方、水60部に特開2004−083492号公報に記載の方法で得られる下記式(20)の化合物5.5部を添加し、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH4.5〜5.5として水溶液を得た。この水溶液を上記にて得られたジアゾ反応液に約5分間かけて滴下した。滴下後、15%炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpHを2.0〜3.0に保持しながら3時間反応させた。15%炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpHを4.5とした後、メタノール350部を添加した。析出した固体を濾過分取し、下記式(21)で表される化合物96.6部をウェットケーキとして得た。
水170部に上記実施例1(工程6)にて得られた式(21)で表される化合物のウェットケーキ32.2部を添加し、撹拌して溶解した。35%塩酸5.2部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液1.5部を添加し、約30分間撹拌した。ここにスルファミン酸1.0部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。
一方、水60部に、特許文献4に記載の方法で得た下記式(22)で表される化合物2.2部を加え、25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH7.5〜8.5に調整し、水溶液を得た。この水溶液に、上記で得たジアゾ反応液を15〜30℃で約30分間かけて滴下した。この際、炭酸ナトリウム水溶液を加えて反応液のpHを7.5〜8.5に保持し、同温度及びpHの調整を維持しながら、さらに2時間反応させた。反応液に塩化ナトリウムを加えて塩析し、析出した固体を濾過分離し、ウェットケーキ29.5部を得た。得られたウェットケーキを水100部に溶解し、35%塩酸でpHを7.0〜7.5とした後、メタノール80部を添加し、析出した固体を濾過分取した。得られたウェットケーキを再度水60部に溶解後、メタノール90部を添加した。析出した固体を濾過分離し、乾燥することにより、本発明の下記式(23)で表される化合物6.3部をナトリウム塩として得た。λmax:589nm。
実施例1で得られた式(23)で表される化合物6.3部のナトリウム塩、及び塩化リチウム14部を水140部に添加し、撹拌して水溶液を得た。2−プロパノール400部を添加し析出した固体を濾過分取し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキと塩化リチウム12.5部とを再度、水150部に添加し、撹拌して水溶液を得た。2−プロパノール350部を添加し、析出した固体を濾過分取し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを水80部に溶解し、2−プロパノール150部を加えて析出した固体を濾過分離し、ウェットケーキを得た。再度得られたウェットケーキを水40部に溶解し、2−プロパノール100部を加えて析出した固体を濾過分離し、乾燥することにより、本発明の上記式(23)で表される化合物4.5部をナトリウムとリチウムとの混合塩として得た。λmax:586nm。
(工程1)
メタノール300部に2−メチル−6−ニトロアニリン15.2部を溶解した。得られた溶液をオートクレーブ中に移し、5%Pd/炭素2.0部を加え、20〜30℃で0.2〜0.5MPaの水素加圧下、水素の吸収が無くなるまで反応させた後、30分間同温度でさらに反応を続けた。触媒(5%Pd/炭素)を濾過分離することにより、下記式(24)で表される化合物を含む溶液(濾液)を得た。
実施例3(工程1)で得られた式(24)で表される化合物を含む溶液200部に、シアノ酢酸メチル13.0部を加え、30分間還流した後、メタノールを減圧濃縮し、水100部、次いで炭酸ナトリウムを加えてpH7.0〜7.5とし、析出した固体を濾過分離、乾燥することにより、下記式(25)で表される化合物8.3部を得た。
エタノール100部に上記式(25)で表される化合物8.3部、28%ナトリウムメトキシド12.0部、及びアセト酢酸メチル7.2部を加え、30分間還流した後、エタノールを減圧濃縮し、水100部、次いで35%塩酸を加えてpH7.0〜7.5とし、析出した固体を濾過分離、乾燥することにより、下記式(26)で表される化合物11.1部を得た。得られた下記式(26)で表される化合物は、メトキシ基がb又はcに置換した化合物の混合物であった。
上記式(26)で表される化合物5.6部を8%発煙硫酸77部中に5〜10℃でゆっくり添加した後、同温度で1.5時間反応させた。反応液を150部の氷水中に約10分間かけて滴下し、65〜70℃で30分間撹拌した後、析出した固体を濾過分離することにより、下記式(27)で表される化合物のウェットケーキ24.4部を得た。下記式(27)で表される化合物は、メトキシ基がbの位置であり、スルホ基の置換位置がa、c、又はdであるか、又は、メトキシ基がcの位置であり、スルホ基の置換位置がa、b、又はdである化合物の混合物であった。
上記実施例1(工程7)において、式(22)で表される化合物2.2部を使用する代わりに実施例3(工程4)で得られた式(27)で表される化合物のウェットケーキ7.2部を使用する以外は実施例1(工程7)と同様にして、本発明の下記式(28)で表される化合物6.3部をナトリウム塩として得た。得られた色素は、下記式(28)におけるメトキシ基がbの位置であり、スルホ基の置換位置がa、c、又はdであるか、又は、メトキシ基がcの位置であり、スルホ基の置換位置がa、b、又はdである2乃至6種の化合物からなる混合色素であった。
上記実施例2において、式(23)で表される化合物のナトリウム塩6.3部を使用する代わりに上記実施例3(工程5)で得られた式(28)で表される化合物のナトリウム塩8.8部を使用する以外は同様にして、本発明の上記式(28)で表される化合物4.5部をナトリウムとリチウムとの混合塩として得た。λmax:592nm。
(工程1)
メタノール300部に2−メチル−6−ニトロアニリン15.2部を溶解した。得られた溶解液をオートクレーブ中に移し、5%Pd/炭素2.0部を加え、撹拌下、20〜30℃で0.2〜0.5MPaの水素加圧下、水素の吸収が無くなるまで反応させた後、30分間同温度でさらに反応を続けた。触媒(5%Pd/炭素)を濾過分離することにより、下記式(29)で表される化合物を含む溶液(濾液)を得た。
上記式(29)で表される化合物を含む溶液200部に下記式(30)で表される化合物13.0部を加え、撹拌下30分間還流した後、反応液を減圧濃縮し、水150部、次いで炭酸ナトリウムを加えてpH7.0〜7.5とした。析出した固体を濾過分離、乾燥することにより、下記式(31)で表される化合物8.4部を得た。
なお、下記式(30)で表される化合物は、特許文献9に記載の方法で得た。
エタノール100部に上記式(31)で表される化合物8.4部、28%ナトリウムメトキシド12.3部、次いでアセト酢酸メチル7.4部を加え、30分間還流した後、エタノールを減圧濃縮し、水150部、次いで35%塩酸を加えてpH7.0〜7.5とし、析出した固体を濾過分離、乾燥することにより、下記式(32)で表される化合物10.0部を得た。下記式(32)で表される化合物は、メチル基がa又はdの位置に置換した化合物であった。
上記式(32)で表される化合物5.0部を3%発煙硫酸102部中に5〜10℃でゆっくり添加した後、同温度で1時間撹拌した。反応液を240部の氷水中に約10分間かけて滴下し、析出した固体を濾過分離することにより、下記式(33)で表される化合物を含むウェットケーキ14.7部を得た。下記式(33)で表される化合物は、メチル基がaの位置であり、スルホ基の置換位置がcであるか、又は、メチル基がdの位置であり、スルホ基の置換位置がbのいずれかである化合物であった。
上記実施例1(工程7)において、式(22)で表される化合物2.2部を使用する代わりに実施例5(工程4)で得られた式(33)で表される化合物のウェットケーキ6.0部を使用する以外は同様にして、本発明の下記式(34)で表される化合物6.0部をナトリウム塩として得た。得られた色素は、下記式(34)におけるメトキシ基がbの位置であり、スルホ基の置換位置がa、c、又はdであるか、又は、メトキシ基がcの位置であり、スルホ基の置換位置がa、b、又はdである2乃至6種の化合物からなる混合色素であった。
上記実施例2において、式(23)で表される化合物のナトリウム塩6.3部を使用する代わりに上記実施例5(工程5)で得られた式(34)で表される化合物のナトリウム塩8.8部を使用する以外は同様にして、本発明の上記式(34)で表される化合物4.0部をナトリウムとリチウムとの混合塩として得た。λmax:590nm。
(工程1)
水250部に上記実施例1(工程4)にて得られた式(18)で表される化合物のウェットケーキ45部を添加し、撹拌して溶解した。35%塩酸16.5部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液4.7部を添加し、約30分間撹拌した。ここにスルファミン酸2.0部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。
一方、水60部に特開2004−083492号公報に記載の方法で得られる下記式(35)の化合物5.8部を添加し、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH4.5〜5.5として水溶液を得た。この水溶液を上記にて得られたジアゾ反応液に約5分間かけて滴下した。滴下後、15%炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpHを2.0〜3.0に保持しながら3時間反応させた。15%炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpHを4.5とした後、メタノール350部を添加した。析出した固体を濾過分取し、下記式(36)で表される化合物94.0部をウェットケーキとして得た。
水170部に上記実施例7(工程1)にて得られた式(36)で表される化合物のウェットケーキ31.3部を添加し、撹拌して溶解した。35%塩酸5.2部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液1.5部を添加し、約30分間撹拌した。ここにスルファミン酸1.0部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。
一方、水60部に、特許文献4に記載の方法で得た上記式(22)で表される化合物2.2部を加え、25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH7.5〜8.5に調整し、水溶液を得た。この水溶液に、上記で得たジアゾ反応液を15〜30℃で約30分間かけて滴下した。この際、炭酸ナトリウム水溶液を加えて反応液のpHを7.5〜8.5に保持し、同温度及びpHの調整を維持しながら、さらに2時間反応させた。反応液に塩化ナトリウムを加えて塩析し、析出した固体を濾過分離し、ウェットケーキ30.0部を得た。得られたウェットケーキを水100部に溶解し、35%塩酸でpHを7.0〜7.5とした後、メタノール80部を添加し、析出した固体を濾過分取した。得られたウェットケーキを再度水60部に溶解後、メタノール90部を添加した。析出した固体を濾過分離し、乾燥することにより、本発明の下記式(37)で表される化合物6.0部をナトリウム塩として得た。
実施例7で得られた式(37)で表される化合物6.0部のナトリウム塩、及び塩化リチウム14部を水140部に添加し、撹拌して水溶液を得た。2−プロパノール400部を添加し、析出した固体を濾過分取し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキと塩化リチウム12.5部とを再度、水150部に添加し、撹拌して水溶液を得た。2−プロパノール350部を添加し、析出した固体を濾過分取し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを水80部に溶解し、2−プロパノール150部を加えて析出した固体を濾過分離し、ウェットケーキを得た。再度得られたウェットケーキを水40部に溶解し、2−プロパノール100部を加えて析出した固体を濾過分離し、乾燥することにより、本発明の上記式(37)で表される化合物4.3部をナトリウムとリチウムとの混合塩として得た。λmax:590nm。
上記実施例1(工程7)において、式(22)で表される化合物2.2部を使用する代わりに実施例3(工程4)で得られた式(27)で表される化合物のウェットケーキ7.2部を使用する以外は同様にして、本発明の下記式(38)で表される化合物5.6部をナトリウム塩として得た。得られた色素は、下記式(38)におけるメトキシ基がbの位置であり、スルホ基の置換位置がa、c、又はdであるか、又は、メトキシ基がcの位置であり、スルホ基の置換位置がa、b、又はdである2乃至6種の化合物からなる混合色素であった。
上記実施例7において、式(37)で表される化合物のナトリウム塩6.0部を使用する代わりに上記実施例9で得られた式(38)で表される化合物のナトリウム塩5.6部を使用する以外は同様にして、本発明の上記式(38)で表される化合物4.0部をナトリウムとリチウムとの混合塩として得た。λmax:597nm。
実施例2、4、6、8、及び10で得られた各染料を、下記表18に記載の各成分を混合することにより、黒色の本発明のインク組成物を得た後、0.45μmのメンブランフィルタで夾雑物を濾別し、得られたインクをそれぞれ実施例11乃至15とした。得られたインク組成物を、以下「インク」という。
また、水はイオン交換水を使用した。インク調製時において、インクのpHは水酸化リチウムにてpH7〜9に調整し、その後イオン交換水を加えることにより総量100部とした。なお、下記表18中における界面活性剤としては、日信化学株式会社製、商品名サーフィノール104PG50を用いた。
比較対象の黒色色素として、下記式(39)の色素を用い、[(B)インクの調製」記載の方法により、比較用のインクを調製した。このインクを用いて行った下記各種の試験を比較例1とする。なお、下記式(39)の化合物は、特開2008−169374号公報中の実施例1に記載の化合物(22)であり、文献記載の方法を追試することで得た。
比較対象の黒色色素として、下記式(40)の色素を用い、「(B)インクの調製」記載の方法により、比較用のインクを調製した。このインクを用いて行った下記各種の試験を比較例2とする。なお、下記式(40)の化合物は、特開2008−169374中の実施例4に記載の化合物(25)であり、文献記載の方法を追試することで得た。
比較対象の黒色色素として、下記式(41)の色素を用い、「(B)インクの調製」記載の方法により、比較用のインクを調製した。このインクを用いて行った下記各種の試験を比較例3とする。なお、下記式(41)の化合物は、特開2008−169374号公報中の実施例5に記載の化合物(28)であり、文献記載の方法を追試することで得た。
上記で得られたインクを使用し、Canon社製インクジェットプリンタ、商品名PIXUS iP4500により、下記光沢紙1乃至3にインクジェット記録を行った。
光沢紙1:Canon社製光沢紙、商品名 写真用紙 光沢プロ[PT−101A420]
光沢紙2:ブラザー工業社製光沢紙、商品名 写真光沢紙[BP71GA4]
光沢紙3:富士フィルム社製光沢紙、商品名 写真仕上げPRO[WPA430PRO]
印刷の際は、100%、80%、60%、40%、20%、10%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、濃黒色〜淡黒色のグラデーションの記録物を得て、これを試験片として以下の評価試験を実施した。
実施例11乃至15、及び比較例1乃至3のインクを用いて得られた各記録画像は、試験前後の画像の濃度変化を測定することで評価を行った。
記録画像の濃度変化は、GRETAG−MACBETH社製の測色機、商品名SpectroEyeを用い、試験前の記録画像の反射濃度Dk値が1.0に最も近い階調部分を測色することにより測定した。測色する際は、いずれも濃度基準にDIN、視野角2°、光源D65の条件で行った。本試験では、いずれの試験片も60%濃度階調部における反射濃度Dk値が1.0に近い部分であった。具体的な試験方法は下記の通りである。
実施例11乃至15、及び比較例1乃至3のインクを用いて得られた各記録画像は、印刷後24時間自然乾燥し、スガ試験機(株)社製、商品名オゾンウェザオメーターを用いてオゾン濃度を40ppm、湿度60%RH、温度24℃の条件下で各試験片を8時間放置した。
試験終了後、上記の測色機を用いて測色し、色素残存率を(試験後の反射濃度Dk/試験前の反射濃度Dk)×100(%)で求め、以下の基準で評価を行った。得られる評価としては、残存率が高いものがオゾンガスによる褪色が少ないことを示し、優れている。結果を下記表19に示す。
◎:残存率:98%以上
○:残存率:95%以上98%未満
△:残存率:90%以上95%未満
×:残存率:90%未満
また、メディアによって、堅牢性が著しく低下することなく、高品位の記録画像を与えることが明らかである。
Claims (9)
- 下記式(2)で表されるアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩。
R 1 は、メチル基を表し、
R 2 は、シアノ基を表し、
R 3 は、水素原子、メチル基、又はメトキシ基を表し、
R 4 は、スルホ基を表し、
R 5 は、スルホ(C1〜C4)アルキルチオ基を表し、
R 6 は、アセチルアミノ基を表し、
R 7 は、スルホ(C1〜C4)アルキルチオ基を表し、
R 8 は、アセチルアミノ基を表し、
R 9 は、スルホプロポキシ基又はスルホブトキシ基を表し、
R 10 は、(C1〜C4)アルキル基を表し、
R 11 は、水素原子又はスルホ基を表し、
R 12 は、塩素原子を表し、
R 13 は、水素原子又はスルホ基を表す。] - 請求項1に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩を、色素として少なくとも1種類含有する水性インク組成物。
- 水溶性有機溶剤をさらに含有する請求項2に記載の水性インク組成物。
- 請求項2又は3に記載の水性インク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法。
- 前記被記録材が情報伝達用シートである請求項4に記載のインクジェット記録方法。
- 前記情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである請求項5に記載のインクジェット記録方法。
- 請求項2又は3に記載の水性インク組成物を含む容器を装填したインクジェットプリンタ。
- 請求項1に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩によって着色された着色体。
- 請求項2又は3に記載の水性インク組成物によって着色された着色体。
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