JP6584548B2 - インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
本発明のインクジェット用のインクは、2種の色材を含有する。以下、本発明のインクを構成する成分やインクの物性について詳細に説明する。
本発明のインクは、第1の色材として下記一般式(I)で表される化合物、及び第2の色材として下記一般式(II)で表される化合物を含有する。
本発明で用いる色材がインク中に含まれているか否かの検証には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた下記(1)及び(2)の検証方法を適用することができる。
(1)ピークの保持時間
(2)(1)のピークについてのマススペクトルのM/Z(posi)、M/Z(nega)
・カラム:SunFire C18(日本ウォーターズ製)2.1mm×150mm
・カラム温度:40℃
・流速:0.2mL/min
・PDA:200nm〜700nm
・移動相及びグラジエント条件:表1
・イオン化法:ESI
・キャピラリー電圧:3.5kV
・脱溶媒ガス:300℃
・イオン源温度:120℃
・検出器:
posi;40V 200〜1500amu/0.9sec
nega;40V 200〜1500amu/0.9sec
インク全質量を基準とした、第2の色材の含有量Y(質量%)は、第1の色材の含有量X(質量%)に対する質量比率(Y/X)で、0.01倍以上であることが好ましく、0.08倍以上であることがさらに好ましい。上記の質量比率(Y/X)が0.01倍未満であると、色調変化を十分に抑制できない場合がある。一方、上記の質量比率(Y/X)が0.08倍未満であると耐ブロンズ性が十分に向上しない場合がある。第2の色材の含有量Y(質量%)は、第1の色材の含有量X(質量%)に対する質量比率(Y/X)で、0.35倍以下であることが好ましい。上記の質量比率(Y/X)が0.35倍超であると、耐オゾン性が十分に向上しない場合がある。
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。本発明においては、水性媒体として少なくとも水を含有する、水性のインクとすることが好ましい。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.000質量%以上90.000質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクには、上述の各成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有させてもよい。
本発明においては、インクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上3.5mPa・s以下であることがより好ましい。また、インクの25℃における静的表面張力は、28mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。さらに、インクの25℃におけるpHは、5以上9以下であることが好ましい。
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
(化合物A)
〔工程1〕
水50.0部に下記式(1.1)で表される2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸12.2部を添加後、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH4.0〜5.0として水溶液を得た。35%塩酸18.3部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.5部を添加し、約30分間反応させた。ここにスルファミン酸1.5部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。
水80.0部に工程1にて得られた式(3.1)で表される化合物のウェットケーキ全量を添加後、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH6.0〜7.0として水溶液を得た。35%塩酸16.5部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.6部を添加し、約30分間反応させた。ここにスルファミン酸7.5部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。
水100.0部に工程2にて得られた式(5.1)で表される化合物のウェットケーキ52.0部を添加し、撹拌して溶解した。35%塩酸7.8部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液2.8部を添加し、約30分間撹拌した。ここにスルファミン酸0.8部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。
水80.0部に工程3にて得られた式(7.1)で表される化合物のウェットケーキ29.5部を添加し撹拌して溶解した。35%塩酸6.3部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液2.3部を添加し、約30分間撹拌した。ここにスルファミン酸0.5部を添加し5分間撹拌しジアゾ反応液を得た。
化合物Aの合成における「工程2」で使用した式(4.1)で表される化合物を、下記式(4.2)で表される化合物に変更した以外は、化合物Aの合成方法に準じて、遊離酸型として下記式(B)で表される化合物のナトリウム塩である化合物Bを得た。
(化合物C)
化合物Aの合成における「工程2」まで行い、上記式(5.1)で表される化合物を合成した。水100.0部に工程2にて得られた式(5.1)で表される化合物のウェットケーキ52.0部を添加し、撹拌して溶解した。35%塩酸7.8部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液2.8部を添加し、約30分間撹拌した。ここにスルファミン酸0.8部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。
化合物Cの合成で使用した上記式(4.1)で表される化合物を、上記式(4.2)で表される化合物に変更した以外は、化合物Cの合成方法に準じて、遊離酸型として下記式(D)で表される化合物のナトリウム塩である化合物Dを得た。
特許文献1の記載を参考にして、遊離酸型として下記式(E)で表される化合物のナトリウム塩である比較化合物Eを得た。
特許文献1に記載の「[実施例1]」の合成例において、その「(工程5)」までの合成を行い、遊離酸型として下記式(F1)で表される化合物(特許文献1に記載の式(19)で表される化合物)をウェットケーキとして得た。水250.0部にウェットケーキ45.0部を添加し、撹拌して溶解した。35%塩酸16.5部を塩化後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液4.7部を添加し、約30分間撹拌した。ここにスルファミン酸2.0部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。
国際公開第2006/001274号の記載を参考にして、遊離酸型として下記式(G)で表される化合物のナトリウム塩である比較化合物Gを合成した。
表3−1〜3−5の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ0.20μmのフィルターで加圧ろ過して各インクを調製した。表3−1〜3−5中の「アセチレノールE100」(川研ファインケミカル製)は、ノニオン性界面活性剤の商品名である。表3−1〜3−5の下段には、インク中の第1の色材の含有量X(%)、第2の色材の含有量Y(%)、及びY/Xの値を示した。表3−1〜3−5に示した実施例及び比較例は、極性を異ならせた2種類のインク組成で構成される。インクの極性は、高誘電率の水溶性有機溶剤であるグリセリンと、低誘電率の水溶性有機溶剤である1,2−ヘキサンジオールとを使い分けることにより異ならせた。具体的には、グリセリンを使用する組成(H)とすることでインクの極性を相対的に高くし、1,2−ヘキサンジオールを使用する組成(L)とすることでインクの極性を相対的に低くした。
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS iP8600」、キヤノン製)に搭載した。本実施例においては、1/2400インチ×1/1200インチの単位領域に2.5pLのインクを付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。このインクジェット記録装置を用いて、温度23℃、相対湿度55%の環境で、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]PT201」、キヤノン製)に各画像を記録した。色相及び光学濃度の測定には、分光光度計(商品名「Spectrolino」、Gretag Macbeth製)を用いて、光源:D50、視野:2°の条件で測定した。以下の色調変化の評価方法の説明におけるa及びbは、CIE(国際照明委員会)により規定されたL*a*b*表色系におけるa*及びb*である。評価結果を表4に示す。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。
表3−1〜3−5に示す組成H及びLのインクを用いて、記録デューティが50%であるベタ画像をそれぞれ記録した。記録物を25℃の室内に24時間載置し、乾燥させた。その後、ベタ画像の色相(a及びb)を測定した。組成Hでの各値をa1及びb1、組成Lでの各値をa2及びb2とした。得られた各値から、ΔC*=[(a1−a2)2+(b1−b2)2]1/2を算出し、以下に示す評価基準にしたがって色調変化を評価した。本評価では、他のインクと重ね合わせた画像を記録することを想定して、組成H及び組成Lの各インクで記録したそれぞれの画像からΔC*を求めている。ΔC*が小さい場合には、インクの極性が異なる場合であっても、画像の色調の差が小さく、色調変化が抑制されていることを意味する。
A:ΔC*が5未満であった。
B:ΔC*が5以上8未満であった。
C:ΔC*が8以上であった。
組成Lのインクを用いて、記録デューティが40%であるベタ画像を記録した。記録物を25℃の室内に24時間載置して乾燥させた後、ベタ画像の光学濃度を測定した(耐オゾン性試験前の光学濃度)。この記録物をオゾン試験装置(商品名「OMS−H」、スガ試験機製)中に載置し、槽内温度23℃、相対湿度50%、オゾンガス濃度10ppmの条件で24時間、オゾン曝露を行った。記録物を25℃の室内にさらに24時間載置した。その後、記録物におけるベタ画像の光学濃度を測定した(耐オゾン性試験後の光学濃度)。得られた耐オゾン性試験前の光学濃度及び耐オゾン性試験後の光学濃度の値から、光学濃度の残存率(%)=(耐オゾン性試験後の光学濃度/耐オゾン性試験前の光学濃度)×100を算出し、以下に示す評価基準にしたがって耐オゾン性を評価した。
AA:光学濃度の残存率が82%以上であった。
A:光学濃度の残存率が80%以上82%未満であった。
B:光学濃度の残存率が75%以上80%未満であった。
C:光学濃度の残存率が75%未満であった。
組成Lのインクを用いて、記録デューティが100%であるベタ画像を記録した。記録物を25℃の室内に24時間載置して乾燥させた後、ベタ画像を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって耐ブロンズ性を評価した。
A:ブロンズ現象が生じていなかった。
B:画像を目視する角度を変えると、ブロンズ現象が確認された。
C:画像を目視する角度を変えなくても、ブロンズ現象が確認された。
Claims (10)
- 第1の色材及び第2の色材を含有するインクジェット用のインクであって、
前記第1の色材が、下記一般式(I)で表される化合物であり、前記第2の色材が、下記一般式(II)で表される化合物であり、
前記第2の色材の含有量(質量%)が、前記第1の色材の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.08倍以上であることを特徴とするインク。
(前記一般式(I)中、R1は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。pはそれぞれ独立に1以上4以下の整数を表し、qは1又は2を表す。)
(前記一般式(II)中、R2は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表す。rはそれぞれ独立に1以上4以下の整数を表し、sは1又は2を表す。) - 前記R1及び前記R2が、それぞれ独立に、炭素数1乃至4の直鎖のアルキル基である請求項1又は2に記載のインク。
- 前記R1及び前記R2が、いずれもメチル基である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
- 前記一般式(I)及び前記一般式(II)中のMが、アルカリ金属である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインク。
- 前記第1の色材の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.100質量%以上5.000質量%以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインク。
- 前記第2の色材の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.100質量%以上5.000質量%以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインク。
- 前記第2の色材の含有量(質量%)が、前記第1の色材の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.35倍以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインク。
- インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。 - インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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