JP7054657B2 - アゾ化合物、インク組成物、記録方法及び着色体 - Google Patents

アゾ化合物、インク組成物、記録方法及び着色体 Download PDF

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Description

本発明は、新規なアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、これらを含むインク組成物、及びそれらにより着色された着色体に関する。
インクジェットプリンタによる記録方法、すなわちインクジェット記録方法は、各種のカラー記録方法の中でも代表的方法の1つである。インクジェット記録方法は、インクの小滴を発生させこれを種々の被記録材(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うものである。この方法は、記録ヘッドと被記録材とが直接接触しないため音の発生が少なく静かである。また、小型化、高速化が容易であるという特長を有するため、近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。従来、万年筆、フェルトペン等及びインクジェット記録用のインクとしては、水溶性色素を水性媒体中に溶解した水性インクが使用されている。これらの水性インクには、ペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく、一般に水溶性有機溶剤が添加されている。そして、これらのインクにおいては、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性がよいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等が要求される。また、使用される水溶性色素には、特に水への溶解度が高いこと、インクに添加される水溶性有機溶剤への溶解度が高いことが要求される。さらに、形成される画像には、耐水性、耐光性、耐ガス性、耐湿性等の画像堅牢性が求められている。
今後、インクジェット記録の使用分野を拡大すべく、インクジェット記録画像には、耐光性、耐ガス性、耐湿性、耐水性、耐ブロンジング性等のさらなる向上が強く求められている。特に、黒色画像として演色性に優れることが必要とされている。光源の種類により色相が変化して見える現象を演色性というが、一般に黒色の染色物や記録物においてこの現象が起こりやすい。染色加工の分野では、演色性を改良する方法として長波長に吸収のある化合物を使用することが一般的であり、例えば特許文献6にそれら方法が開示されている。
従来より、種々の色相のインクが、種々の色素を用いて調製されているが、それらのうち黒色インクは、モノカラー及びフルカラー画像の両方に使用される重要なインクである。これら黒色インク用の色素として、今日まで多くのものが提案されているが、市場の要求を充分に満足するものを提供するには至っていない。提案されている色素の多くはアゾ色素であり、そのうちC.I.Food Black2等のジスアゾ色素には、耐水性や耐湿性が不良である、耐光性及び耐ガス性が十分でない、演色性が大きい等の問題がある。共役系を延ばしたポリアゾ色素については、一般に水溶性が低く、記録画像が部分的に金属光沢を有するブロンジング現象が発生しやすい、耐光性及び耐ガス性が十分でない等の問題がある。また、同様に数多く提案されているアゾ含金色素の場合、耐光性が良好なものもあるが、金属イオンを含むため生物への安全性や環境問題に対し好ましくない、耐ガス性が極めて弱い、演色性が低い等の問題がある。
インクジェット記録用の黒色化合物(黒色色素)としては、上記の通り多くの要求がなされており、特により高品質な黒色の印字物への要望が高まってきている。近年では、特許文献1及び2に記載のように耐ガス性について改良された、インクジェット記録用の黒色化合物(黒色色素)は出ているものの、市場要求を十分に満たすものではない。また、特許文献3~5に開示されているベンソイミダゾロピリドン骨格を有するアゾ化合物かつ水溶性の黒色化合物を、インクジェット記録用として使用することが開示されているが、演色性に優れた黒色化合物の要望が、昨今、特に高まってきている。
特許4502274号公報 特許4517174号公報 特許5144278号公報 特許5334864号公報 国際公開WO2017/051923号 特開平01-284562号公報 特許6218381号公報
本発明は、インクジェット専用紙に記録した場合、特に演色性に優れ、且つ光源依存性が小さい。また、耐オゾンガス性、耐光性、耐湿性に優れ、印字濃度が非常に高く、耐ブロンジング性に優れ、且つ彩度が低く、高品位な黒色の色相を有するインク組成物、特にインクジェット記録用のインク組成物の提供を目的とする。
本発明者らは上述したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアゾ化合物が前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記1)~12)に関する。
1)
下記式(1)で表されるアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩。
Figure 0007054657000001
[式(1)中、mは1又は2の整数を表し、nは1~4の整数を表し、Rは水素原子、ヒドロキシル基、スルホ基、又はカルボキシル基を表し、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシル基、スルホ(C1~C4)アルキルカルボニルアミノ基、ハロゲン原子、(C1~C4)アルキル基、(C1~C4)アルキルチオ基、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルキルチオ基;(C1~C4)アルコキシ基、ヒドロキシ基、(C1~C4)アルコキシル基、スルホ基およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルコキシル基;を表し、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、アセチルアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルファモイル基、(C1~C4)アルキル基、(C1~C4)アルコキシル基、ヒドロキシル基、(C1~C4)アルコキシ基、スルホ基およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルコキシ基;(C1~C4)アルキルスルホニル基、又はヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルキルスルホニル基;を表す。また、破線で表される環が存在しない場合はベンゼン環、破線で表される環が存在する場合はナフタレン環であり、ナフタレン環である場合、置換基R~Rはそれぞれ、ナフタレン環の任意の位置に置換できる。]
2)
上記式(1)において、mが1又は2の整数を表し、nが1~4の整数を表し、Rが水素原子、ヒドロキシル基、スルホ基、又はカルボキシル基を表し、Rが(C1~C4)アルキルチオ基、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルキルチオ基;(C1~C4)アルコキシル基、ヒドロキシル基、(C1~C4)アルコキシル基、スルホ基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルコキシル基;を表し、R及びRがそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシル基、スルホ基、(C1~C4)アルキルカルボニルアミノ基、ハロゲン原子、(C1~C4)アルキル基、(C1~C4)アルキルチオ基、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルキルチオ基;(C1~C4)アルコキシル基、ヒドロキシル基、(C1~C4)アルコキシル基、スルホ基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルコキシル基;を表し、R~Rがそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、アセチルアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルファモイル基、(C1~C4)アルキル基、(C1~C4)アルコキシル基、ヒドロキシル基、(C1~C4)アルコキシ基、スルホ基およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルコキシル基;(C1~C4)アルキルスルホニル基、又はヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルキルスルホニル基;を表す、1)に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩。また、破線で表される環が存在しない場合はベンゼン環、破線で表される環が存在する場合はナフタレン環であり、ナフタレン環である場合、置換基R~Rはそれぞれ、ナフタレン環の任意の位置に置換できる。
3)
上記式(1)において、mが1又は2の整数を表し、nが1~4の整数を表し、Rがヒドロキシル基、スルホ基、又はカルボキシル基を表し、Rがヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルキルチオ基;を表し、R及びRがそれぞれ独立して、(C1~C4)アルキルカルボニルアミノ基、(C1~C4)アルキル基、(C1~C4)アルコキシル基、ヒドロキシル基、(C1~C4)アルコキシル基、スルホ基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルコキシル基;を表し、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、カルボキシル基、スルホ基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルファモイル基、(C1~C4)アルコキシル基、(C1~C4)アルキルスルホニル基、を表す、請求項1又は2に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩。また、破線で表される環が存在しない場合はベンゼン環、破線で表される環が存在する場合はナフタレン環であり、ナフタレン環である場合、置換基R~Rはそれぞれ、ナフタレン環の任意の位置に置換できる。
4)
上記式(1)において、mが1又は2の整数を表し、nが1~4の整数を表し、Rがスルホ基を表し、Rがスルホ(C1~C4)アルキルチオ基、を表し、R及びRがそれぞれ独立して、(C1~C4)アルキルカルボニルアミノ基、(C1~C4)アルキル基、(C1~C4)アルコキシ基、を表し、R~Rがそれぞれ独立して、水素原子、スルホ基、塩素原子、ニトロ基、(C1~C4)アルコキシル基を表す、1)~3)のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩。また、破線で表される環が存在しない場合はベンゼン環、破線で表される環が存在する場合はナフタレン環であり、ナフタレン環である場合、置換基R~Rはそれぞれ、ナフタレン環の任意の位置に置換できる。
5)
上記式(1)において、mが2の整数を表し、nが1~4の整数を表し、Rがスルホ基を表し、Rがスルホ(C1~C4)アルキルチオ基、を表し、R及びRが(C1~C4)アルキルカルボニルアミノ基を表し、R~Rがそれぞれ独立して、水素原子、スルホ基、ニトロ基を表す、1)~4)のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩。また、破線で表される環は存在しない。
6)
1)~5)のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩を、色素として少なくとも1種類含むインク組成物。
7)
水溶性有機溶剤をさらに含む6)に記載のインク組成物。
8)
6)又は7)に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて記録メディアに記録を行うインクジェット記録方法。
9)
記録メディアがシート状記録メディアである8)に記載のインクジェット記録方法。
10)
シート状記録メディアが多孔性白色無機物を含むインク受容層を有する9)に記載のインクジェット記録方法。
11)
6)又は7)に記載のインク組成物を含む容器を装填したインクジェットプリンタ。
12)
a)1)~5)のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、
b)6)又は7)に記載のインク組成物、
のいずれかによって着色された着色体。
本発明のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、及びこれを含むインク組成物は、貯蔵安定性が高く、インクジェット記録用のインクとして好適に用いられ、さらにインクジェット専用紙に記録した場合、印字濃度が非常に高く、且つ彩度が低く、高品位な黒色の色相を有し、特に演色性に優れる。したがって、本発明のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩を含むインク組成物は、インクジェット記録用黒色インクとして極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
便宜上、本明細書においては、「アゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩」の全てを含めて「アゾ化合物」と以下、簡略して記載する場合がある。互変異性体としては、例えば下記式(2)で表される構造等が挙げられる。なお、式(2)中、m、n、R1~Rは、上記式(1)におけるものと同じで良い。
Figure 0007054657000002
上記式(1)中、mは1又は2の整数を表し、2が好ましい。スルホ基の置換位置としては、ナフタレン環に置換しているヒドロキシ基の隣の炭素に置換している場合が好ましい。
上記式(1)中、nは1~4の整数を表し、3又は4が好ましく、3が更に好ましい。
上記式(1)中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、スルホ基、又はカルボキシ基を表し、スルホ基、又はカルボキシ基が好ましく、スルホ基が最も好ましい。
上記式(1)中、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、カルボキシ基、スルホ(C1~C4)アルキルカルボニルアミノ基、ハロゲン原子、(C1~C4)アルキル基、(C1~C4)アルキルチオ基、ヒドロキシ基、スルホ基およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルキルチオ基;(C1~C4)アルコキシ基、ヒドロキシ基、(C1~C4)アルコキシ基、スルホ基およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルコキシ基;を表わす。
~Rにおける(C1~C4)アルキルカルボニルアミノ基としては、アルキルが直鎖又は分岐鎖の非置換のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。その具体例としては例えば、アセチルアミノ(メチルカルボニルアミノ)基、プロピオニルアミノ(エチルカルボニルアミノ)基、n-プロピルカルボニルアミノ基、n-ブチルカルボニルアミノ基等の直鎖のもの;イソプロピルカルボニルアミノ基、イソブチルカルボニルアミノ基、sec-ブチルカルボニルアミノ基、ピバロイルアミノ(tert-ブチルカルボニルアミノ)基等の分岐鎖のもの;が挙げられる。これらのうち直鎖のものが好ましく、アセチルアミノ基が特に好ましい。
~Rにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
~Rにおける(C1~C4)アルキル基としては、直鎖又は分岐鎖の非置換のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。その具体例としては例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等の直鎖のもの;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。好ましい具体例としては、メチル基、n-プロピル基が挙げられ、メチル基がより好ましい。
~Rにおける(C1~C4)アルキルチオ基としては、直鎖又は分岐鎖の非置換のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基等の直鎖のもの;イソプロピルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中では、メチルチオ基がより好ましい。
~Rとして、ヒドロキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルキルチオ基;としては、(C1~C4)アルキルチオ基における任意の炭素原子に、これらの置換基を有するものが挙げられる。該置換基の数は、通常1又は2個、好ましくは1個である。置換基の位置は特に制限されないが、アルキルチオ基における硫黄原子が結合する炭素原子以外の炭素原子に置換するのが好ましい。その具体例としては例えば、2-ヒドロキシエチルチオ基、2-ヒドロキシプロピルチオ基、3-ヒドロキシプロピルチオ基、2-スルホエチルチオ基、3-スルホプロピルチオ基、2-カルボキシエチルチオ基、3-カルボキシプロピルチオ基、4-カルボキシブチルチオ基等が挙げられる。これらの中では、3-スルホプロピルチオ基が特に好ましい。
~Rにおける、(C1~C4)アルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖の非置換のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基等の直鎖のもの;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中では、メトキシ基がより好ましい。
~Rとして、ヒドロキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルコキシ基;としては、(C1~C4)アルコキシ基における任意の炭素原子に、これらの置換基を有するものが挙げられる。該置換基の数は、通常1又は2個、好ましくは1個である。置換基の位置は特に制限されないが、アルコキシ基における酸素原子が結合する炭素原子以外の炭素原子に置換するのが好ましい。その具体例としては例えば、2-ヒドロキシエトキシ基、2-ヒドロキシプロポキシ基、3-ヒドロキシプロポキシ基、2-スルホエトキシ基、3-スルホプロポキシ基、2-カルボキシエトキシ基、3-カルボキシプロポキシ基、4-カルボキシブトキシ基等が挙げられる。これらの中では、3-スルホプロポキシ基が特に好ましい。
前記のうち、好ましいRとしては、スルホ(C1~C4)アルキルチオ基、カルボキシ(C1~C4)アルキルチオ基、スルホ(C1~C4)アルコキシ基、又はカルボキシ(C1~C4)アルコキシ基が挙げられ、スルホ(C1~C4)アルキルチオ基がより好ましく、3-スルホプロピルチオ基が特に好ましい。
前記のうち、好ましいR及びRとしては、(C1~C4)アルキルカルボニルアミノ基、(C1~C4)アルコキシ基、(C1~C4)アルキル基、又は(C1~C4)アルコキシ基が挙げられる。その具体例としては例えば、アセチルアミノ(メチルカルボニルアミノ)基、プロピオニルアミノ(エチルカルボニルアミノ)基、メトキシ基、エトキシ基、メチル基、エチル基等が挙げられる。これらの中では、アセチルアミノ(メチルカルボニルアミノ)基が特に好ましい。
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基、アセチルアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルファモイル基、(C1~C4)アルキル基、(C1~C4)アルコキシ基、ヒドロキシ基、(C1~C4)アルコキシ基、スルホ基およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルコキシ基;(C1~C4)アルキルスルホニル基、又は、ヒドロキシ基、スルホ基およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルキルスルホニル基;を表す。
~Rにおける上記置換基が有してもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
~Rにおける(C1~C4)アルコキシ基は、R~Rにおける(C1~C4)アルコキシ基と好ましいものを含めて同じものを意味する。
~Rにおける、ヒドロキシ基、(C1~C4)アルコキシ基、スルホ基およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルコキシ基;は、R~Rにおける、ヒドロキシ基、(C1~C4)アルコキシ基、スルホ基およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルコキシ基;と好ましいものを含めて同じで良い。
~Rにおける(C1~C4)アルキルスルホニル基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、n-ブチルスルホニルといった直鎖のもの;イソプロピルスルホニル、イソブチルスルホニル等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。上記のうち、メチルスルホニル、エチルスルホニル、及びイソプロピルスルホニルが好ましく、メチルスルホニルが特に好ましい。R~Rにおける、置換基として、ヒドロキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換された(C1~C4)アルキルスルホニル基としては、上記(C1~C4)アルキルスルホニル基における任意の炭素原子に、上記の基が置換したものが挙げられ、該置換基の数は通常1又は2、好ましくは1である。置換基の位置は特に制限されない。具体例としては、ヒドロキシエチルスルホニル、2-ヒドロキシプロピルスルホニル等のヒドロキシ置換のもの;2-スルホエチルスルホニル、3-スルホプロピルスルホニル等のスルホ置換のもの;2-カルボキシエチルスルホニル、3-カルボキシプロピルスルホニル等のカルボキシ置換のもの;等が挙げられる。
上記式(1)において、破線で表される環が存在しない場合はベンゼン環、破線で表される環が存在する場合はナフタレン環であり、ナフタレン環である場合、置換基R~Rはそれぞれ、ナフタレン環の任意の位置に置換できる。
上記式(1)中において破線のベンゼン環が存在する場合、上記のうち好ましいR~Rとしては、水素原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、ヒドロキシ基が挙げられる。水素原子、カルボキシ基、スルホ基が更に好ましく、水素原子、スルホ基が最も好ましい。
上記式(1)中において破線のベンゼン環が存在しない場合、上記のうち好ましいR~Rとしては、水素原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、塩素原子、メチル基、メトキシ基、スルファモイル基、メチルスルホニル基が挙げられる。水素原子、スルホ基、ニトロ基、塩素原子、メトキシ基、メチルスルホニル基が更に好ましく、水素原子、スルホ基、ニトロ基が最も好ましい。
上記式(1)中において破線のベンゼン環が存在しない場合、上記のうち最も好ましいR~Rの組み合わせは、Rがスルホ基、R及びRが水素原子、Rがニトロ基である。
上記式(1)において破線のベンゼン環が存在しない場合、より好ましいR~Rはその置換位置などを特定することができる。すなわち、R~Rが置換するベンゼン環において、アゾ基の置換位置を1位とした場合に、Rが2位に、Rが6位に、Rが4位に、Rが5位に置換したものが好ましい。
上記式(1)における各種の置換基、その組み合わせ、及びその置換位置等について記載した好ましいもの同士を組み合わせた化合物はより好ましく、より好ましいもの同士を組み合わせたものは更に好ましい。更に好ましいもの同士や、好ましいものと、より好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
上記式(1)で示される本発明のトリスアゾ化合物は、例えば次のような方法で合成することができる。また、各工程における化合物の構造式は遊離酸の形で表すものとする。なお、下記式(3)~(8)において、m、n、R1~Rは上記式(1)におけるのと同じ意味を表す。下記式(3)で表される化合物を常法によりジアゾ化し、得られたジアゾ化合物と下記式(4)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記式(5)で表される化合物を得る。
Figure 0007054657000003
得られた上記式(5)で表される化合物を常法によりジアゾ化した後、得られたジアゾ化合物と下記式(6)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記式(7)で表される化合物を得る。
Figure 0007054657000004
一方、市販品として入手可能な1,5-ジヒドロキシナフタレンを硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸等によりスルホン化する事により、下記式(8)で表される化合物を得る。
Figure 0007054657000005
得られた上記式(7)で表される化合物を常法によりジアゾ化した後、得られたジアゾ化合物と上記式(8)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させる事により、上記式(1)で表される本発明のアゾ化合物を得ることができる。
上記式(1)で表される本発明のアゾ化合物の好適な具体例として、特に限定されるものではないが、下記表1~4に挙げた構造式で示される化合物等が挙げられる。
各表においてスルホ基、カルボキシ基等の官能基は、便宜上、遊離酸の形で記載する。尚、下記式中のAcはアセチル基を表す。
Figure 0007054657000006
Figure 0007054657000007
Figure 0007054657000008
Figure 0007054657000009
上記式(3)で表される化合物のジアゾ化はそれ自体公知の方法で実施され、例えば、無機酸媒質中、例えば-5~30℃、好ましくは0~15℃の温度で亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩を使用して実施される。上記式(3)で表される化合物のジアゾ化物と上記式(4)で表される化合物とのカップリングもそれ自体公知の条件で実施される。水又は水性有機媒体中、例えば-5~30℃、好ましくは0~25℃の温度、且つ、酸性から中性のpH値、例えばpH1~6で行うことが有利である。ジアゾ化反応液が酸性であり、また、カップリング反応の進行により反応系内はさらに酸性化してしまうため、反応液の好ましいpH条件へのpH値の調整を塩基の添加によって行う。塩基としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、アンモニア又は有機アミン等が使用できる。上記式(3)で表される化合物と上記式(4)で表される化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
上記式(5)で表される化合物のジアゾ化はそれ自体公知の方法で実施され、例えば、無機酸媒質中、例えば-5~40℃、好ましくは5~30℃の温度で亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩を使用して実施される。上記式(5)で表される化合物のジアゾ化物と上記式(6)で表される化合物とのカップリングもそれ自体公知の条件で実施される。水又は水性有機媒体中、例えば-5~40℃、好ましくは10~30℃の温度、且つ、酸性から中性のpH値、例えばpH2~7で行うことが有利である。ジアゾ化反応液が酸性であり、また、カップリング反応の進行により反応系内はさらに酸性化してしまうため、反応液の好ましいpH条件へのpH値の調整を塩基の添加によって行う。塩基としては上記と同じものが使用できる。式(5)で表される化合物と上記式(6)で表される化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
上記式(7)で表される化合物のジアゾ化もそれ自体公知の方法で実施され、例えば無機酸媒質中例えば-5~50℃、好ましくは10~40℃の温度で亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩を使用して実施される。上記式(7)で表される化合物のジアゾ化物と上記式(8)で表される化合物とのカップリングもそれ自体公知の条件で実施される。水又は水性有機媒体中、例えば-5~50℃、好ましくは10~40℃の温度、且つ、弱酸性からアルカリ性のpH値で行うことが有利である。好ましくは弱酸性から弱アルカリ性のpH値、例えばpH5~10で実施され、pH値の調整は塩基の添加によって実施される。塩基としては上記と同じものが使用できる。上記式(7)で表される化合物と上記式(8)で表される化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
上記式(1)で表されるアゾ化合物の塩は、無機又は有機陽イオンとの塩である。そのうち、無機の陽イオンとの塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられ、好ましい無機塩は、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩、及びアンモニウム塩である。また、有機の陽イオンとの塩としては、例えば下記式(9)で表される4級アンモニウムイオンとの塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明のアゾ化合物の遊離酸、その互変異性体、及びそれらの各種の塩が混合物であってもよい。例えばナトリウム塩とアンモニウム塩との混合物、遊離酸とナトリウム塩との混合物、リチウム塩、ナトリウム塩、及びアンモニウム塩の混合物等、いずれの組み合わせを用いても良い。塩の種類によって溶解性等の物性値が異なる場合も有り、必要に応じて適宜塩の種類を選択すること、又は複数の塩等を含む場合にはその比率を変化させることにより、目的に適う物性を有する混合物を得ることもできる。
Figure 0007054657000010
上記式(9)において、Z1、Z2、Z3、及びZ4は、それぞれ独立して、水素原子、非置換アルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びヒドロキシアルコキシアルキル基よりなる群から選択される基を表し、少なくとも1つは水素原子以外の基である。上記式(9)におけるZ1乃至Z4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられ、ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ(C1~C4)アルキル基が挙げられ、ヒドロキシアルコキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシエトキシメチル基、2-ヒドロキシエトキシエチル基、3-ヒドロキシエトキシプロピル基、2-ヒドロキシエトキシプロピル基、4-ヒドロキシエトキシブチル基、3-ヒドロキシエトキシブチル基、2-ヒドロキシエトキシブチル基等ヒドロキシ(C1~C4)アルコキシ(C1~C4)アルキル基が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシエトキシ(C1~C4)アルキル基が好ましい。特に好ましいものとしては、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ(C1~C4)アルキル基;、ヒドロキシエトキシメチル基、2-ヒドロキシエトキシエチル基、3-ヒドロキシエトキシプロピル基、2-ヒドロキシエトキシプロピル基、4-ヒドロキシエトキシブチル基、3-ヒドロキシエトキシブチル基、2-ヒドロキシエトキシブチル基等のヒドロキシエトキシ(C1~C4)アルキル基;等が挙げられる。上記式(9)で表される好ましい化合物におけるZ1、Z2、Z3、及びZ4の組み合わせの具体例を下記表5に示す。
Figure 0007054657000011
上記式(1)で表されるアゾ化合物の所望の塩を合成する方法としては、上記式(1)で表される化合物の合成反応における、最終工程の終了後、所望の無機塩又は有機の4級アンモニウム塩を反応液に加えて塩析する方法、該反応液に塩酸等の鉱酸を加えて反応液から該アゾ化合物を遊離酸の形で単離した後、得られた遊離酸を、必要に応じて水、酸性の水、水性有機媒体等で洗浄して、付着した無機塩等の不純物を除去し、再度、水性の媒体中(好ましくは水中)で、該遊離酸に所望の無機塩基又は上記の4級アンモニウム塩に対応する有機塩基を加えて塩形成する方法、等が挙げられる。このような方法により、目的とするアゾ化合物の塩を、溶液又は析出固体の状態として得ることができる。ここで酸性の水とは、例えば硫酸、塩酸等の鉱酸や酢酸等の有機酸を水に溶解し、酸性にしたものをいう。また、水性有機媒体とは、いずれも水と混和可能な、有機物質及び/又は有機溶剤等と、水との混和物をいう。この水と混和可能な有機物質や有機溶剤としては、後述する水溶性有機溶剤等が挙げられる。上記式(1)で表されるアゾ化合物を所望の塩とする際に用いる無機塩の例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属のハロゲン塩;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウムイオンのハロゲン塩;水酸化アンモニウム(アンモニア水)等のアンモニウムイオンの水酸化物;等が挙げられる。また、有機陽イオンの塩の例としては、例えばジエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩等の、上記式(9)で表される4級アンモニウムイオンのハロゲン塩等が挙げられる。
上記インク組成物について説明する。上記式(1)で表されるアゾ化合物は、該化合物を含む水性組成物とすることにより、セルロースからなる材料を染色することが可能である。また、カルボンアミド結合を有する材料の染色も可能であり、皮革、織物、紙の染色等に幅広く用いることができる。一方、本発明の化合物の代表的な使用法としては、液体の媒体に溶解してなるインク組成物が挙げられ、インクジェット記録用のインク組成物として用いるのが好ましい。
上記式(1)で表される化合物を含む反応液、例えば上記式(1)で表される化合物の合成反応における、最終工程終了後の反応液等は、インク組成物の製造に直接使用する事ができる。しかし、該反応液を乾燥、例えばスプレー乾燥させる方法、該反応液に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類を添加することによって塩析する方法、該反応液に塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸を添加することによって酸析する方法、或いは上記の塩析と酸析とを組み合わせた酸塩析する方法、等の方法によって該化合物を単離し、この化合物を用いてインク組成物を調製することもできる。本発明のアゾ化合物は、単離してから用いるのが好ましい。
上記インク組成物は、上記式(1)で表されるアゾ化合物を色素として、通常0.1~20質量%、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~8質量%含有する水性のインク組成物である。上記インク組成物は水を媒体として調製され、必要に応じて、水溶性有機溶剤やインク調製剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しても良い。水溶性有機溶剤は、色素溶解剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、粘度調整剤、浸透促進剤、表面張力調整剤、消泡剤等としての機能を有する場合があり、上記インク組成物中には含有する方が好ましい。インク調製剤としては、例えば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、色素溶解剤、酸化防止剤、界面活性剤等の公知の添加剤が挙げられる。本発明のインク組成物は、その総質量に対して、水溶性有機溶剤を0~30質量%、好ましくは5~30質量%、インク調製剤を0~15質量%、好ましくは0~7質量%それぞれ含有しても良い。上記以外の残部は水である。なお、インク組成物のpHは、保存安定性を向上させる点で、pH5~11が好ましく、pH7~10がより好ましい。また、インク組成物の表面張力としては、25~70mN/mが好ましく、25~60mN/mがより好ましい。さらに、インク組成物の粘度としては、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。
上記インク組成物は、黒色の微妙な色合いを調整する目的等により、本発明のアゾ化合物以外に、他の調色用の色素等を適宜含有してもよい。このような場合であっても、本発明のインク組成物に含有する色素の総質量は、インク組成物の総質量に対して上記の範囲でよい。調色用色素としては、イエロー(例えばC.I.ダイレクトイエロー34、C.I.ダイレクトイエロー58、C.I.ダイレクトイエロー86、C.I.ダイレクトイエロー132、C.I.ダイレクトイエロー161等)、オレンジ(例えばC.I.ダイレクトオレンジ17、C.I.ダイレクトオレンジ26、C.I.ダイレクトオレンジ29、C.I.ダイレクトオレンジ39、C.I.ダイレクトオレンジ49等)、ブラウン、スカーレット(例えばC.I.ダイレクトレッド89等)、レッド(例えばC.I.ダイレクトレッド62、C.I.ダイレクトレッド75、C.I.ダイレクトレッド79、C.I.ダイレクトレッド80、C.I.ダイレクトレッド84、C.I.ダイレクトレッド225、C.I.ダイレクトレッド226等)、マゼンタ(例えばC.I.ダイレクトレッド227等)、バイオレット、ブルー、ネイビー、シアン(例えばC.I.ダイレクトブルー199、C.I.アシッドブルー249等)、グリーン(例えばアシッドグリーン1)、ブラック(例えばC.I.アシッドブラック2)等の種々の色相を有する他の色素が挙げられる。上記インク組成物は、上記アゾ化合物により得られる効果を阻害しない範囲で、これらの調色用色素を1種類以上配合して用いることができる。この場合であっても、インク組成物中に含有する色素の総量は上記の範囲でよい。また、本発明のアゾ化合物と上記の調色用色素との配合比率は、調色用色素の色相等にもよるが、おおよそ20:1から1:2、好ましくは10:1から1:1である。上記インク組成物をインクジェット記録用のインクとして使用する場合、本発明のアゾ化合物中の金属陽イオンの塩化物、硫酸塩等の無機不純物の含有量が少ないものを用いるのが好ましい。該無機不純物の含有量の目安は、おおよそ色素の総質量に対して1質量%以下程度である。下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0%で良い。無機不純物の少ない本発明のアゾ化合物を製造するには、例えば逆浸透膜を用いる方法、上記アゾ化合物の乾燥品あるいはウェットケーキをメタノール等のアルコール、好ましくは(C1~C4)アルコール及び水の混合溶媒中で撹拌して懸濁精製し、析出物を濾過分離して乾燥する方法、等の公知の方法で脱塩処理すればよい。
上記インク組成物の調製に使用できる水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等の(C1~C4)アルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2-ピロリドン、ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素類;アセトン、メチルエチルケトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール等のポリオール(好ましくはトリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの(C1~C4)アルキルエーテル;γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、等があげられる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。なお、上記の水溶性有機溶剤にはトリメチロールプロパン等のように、常温で固体の物質も含まれているが、これらは固体であっても水溶性を示し、水に溶解させた場合には水溶性有機溶剤と同じ目的で使用することができるため、便宜上、本明細書においては水溶性有機溶剤の範疇に記載する。
以下、インク調製剤として使用できる、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、色素溶解剤、酸化防止剤、及び界面活性剤について記載する。
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその塩等が挙げられる。これらはインク組成物中に0.02~1.00質量%使用するのが好ましい。
防腐剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N-ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物の具体例としては、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例として、無水酢酸ソーダ、ソルビン酸ソーダ又は安息香酸ナトリウム等があげられる。
pH調整剤としては、調製されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHをおおよそ5~11の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水)、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;ケイ酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
キレート試薬の具体例としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等があげられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグルコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール又はジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等があげられる。
水溶性紫外線吸収剤としては、例えばスルホン化したベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。
水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン又はポリイミン等があげられる。
色素溶解剤としては、例えば、ε-カプロラクタム、エチレンカーボネート、尿素等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等が挙げられる。
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸及びその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;日信化学社製、商品名サーフィノール104、105、82、465、オルフィンSTG等;ポリグリコールエーテル系(例えばSIGMA-ALDRICH社製のTergitol 15-S-7等);等が挙げられる。上記のインク調製剤は、それぞれ単独又は混合して用いられる。
上記インク組成物は、上記各成分を任意の順序で混合、撹拌することによって得られる。得られたインク組成物は、所望により、狭雑物を除く為にメンブランフィルター等で精密濾過を行ってもよく、インクジェット記録に用いる場合には、該濾過を行うのが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1μm~0.1μm、好ましくは、0.8μm~0.1μmである。
上記インク組成物は、各種分野において使用することができるが、筆記用水性インク、水性印刷インク、情報記録インク等に好適であり、インクジェット記録用のインクとして用いることが特に好ましく、後述する本発明のインクジェット記録方法において好適に使用される。
上記インクジェット記録方法は、上記インク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて記録メディアに付着させることにより記録を行う方法である。上記インクジェット記録方法は、記録の際に使用するインクヘッド、インクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。この記録方法は、公知の方法、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えてインクに照射し、その放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット、いわゆるバブルジェット(登録商標)方式、等を使用することができる。
上記インクジェット記録方法に用いる被記録材としては、特に制限はないが、例えば紙、フィルム等のシート状記録メディア、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられ、中でも情報伝達用シートが好ましい。このシート状記録メディアとしては、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工すること、多孔質シリカ、アルミナゾル、特殊セラミックス等の、インク中の色素を吸収し得る多孔性白色無機物を、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に、上記基材表面に塗工すること、等の方法により設けられる。このようなインク受容層を設けたシート状記録メディアは、通常インクジェット専用紙(フィルム)、光沢紙(フィルム)等と呼ばれる。その具体例としては、キヤノン株式会社製、商品名 プロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー又はマットフォトペーパー、セイコーエプソン株式会社製、商品名 写真用紙(光沢)、PMマット紙、クリスピア、日本ヒューレット・パッカード株式会社製、商品名 アドバンスフォトペーパー、プレミアムプラスフォト用紙、プレミアム光沢フィルム又はフォト用紙、等が挙げられ、市販品として入手が可能である。なお、普通紙も当然に使用できる。
上記のシート状記録メディアのうち、多孔性白色無機物を表面に塗工したシートに記録した画像は、オゾンガスによって、特に変退色が大きくなることが知られている。しかし本発明のインク組成物は耐オゾンガス性が優れているため、このような被記録材へインクジェット記録した際にも大きな効果を発揮する。
上記インクジェット記録方法で記録メディアに記録するには、例えば上記のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、上記の方法で記録メディアに記録すればよい。上記インクジェット記録方法は、上記黒色インク組成物と、例えば上記したような公知のマゼンタ、シアン、イエロー、及び必要に応じて、グリーン、ブルー(又はバイオレット)、レッド(又はオレンジ)等の各色のインク組成物とを併用することもできる。各色のインク組成物は、それぞれの容器に注入され、その各容器を本発明の黒色インク組成物を含む容器と同様に、インクジェットプリンタの所定の位置に装填してインクジェット記録に使用される。
本願発明には、
a)上記1)~5)のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、
b)上記6)又は7)に記載の水性インク組成物を含む、
のいずれかによって着色された着色体も含まれる。
上記アゾ化合物は黒色色素である。この黒色色素は彩度が低いという特徴を有するため、黒色としてより好ましい色相を呈する。また、水溶解性に優れるので、インク組成物を製造する過程でのメンブランフィルターによるろ過性が良好である。また、該アゾ化合物を含有する本発明のインク組成物は水性の黒色インク組成物であり、長期間保存後の固体析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。本発明のインク組成物で記録した画像は、特に耐オゾンガス性に非常に優れ、また印字濃度が高く、ブロンジング性に優れ、演色性が小さく、且つ彩度が低く、高品位な黒色の色相を有する。耐光性、耐湿性、耐水性等の各種堅牢性にも優れる。さらにマゼンタ、シアン、及びイエロー色素をそれぞれ含有するインク組成物と併用することにより、各種堅牢性に優れ、保存性の優れたフルカラーのインクジェット記録が可能である。このように、本発明のアゾ化合物を含有するインク組成物は、インクジェット記録用、筆記具用等のインクとして用いることが可能であり、吐出安定性にも優れることから、特にインクジェット記録用のインクとして好適である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。各合成反応、晶析等の操作は、特に断りのない限り、いずれも攪拌下に行った。下記の各式において、スルホ、カルボキシ等の酸性官能基は、遊離酸の形で表記した。合成反応におけるpH値及び反応温度は、いずれも反応系内における測定値を示した。また、合成した化合物の最大吸収波長(λmax)は、pH9の緩衝作用を持つ水溶液中で測定し、測定した化合物については実施例中に、その測定値を記載した。なお、以下の実施例で合成した本発明のアゾ化合物は、水に対していずれも100g/リットル以上の溶解性を示した。
[(A)染料の合成]
[実施例1]
(工程1)
水50部に下記式(10)で表される2-アミノ-5-ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム12.2部を添加後、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH4.0~5.0として水溶液を得た。35%塩酸18.2部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.6部を添加し、約30分間反応させた。ここにスルファミン酸1.5部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。一方、水170部に特許-6218381に記載の方法で得られる下記式(11)の化合物17.0部を添加し、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH4.0~5.0として水溶液を得た。この水溶液を上記にて得られたジアゾ反応液に約5分間かけて滴下した。滴下後、15%炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpHを4.0~6.0に保持しながら3時間反応させた後、塩化ナトリウムを添加した。析出した固体をろ過分取し、下記式(12)で表される化合物を含むウェットケーキを123.8部得た。
Figure 0007054657000012
(工程2)
水90部に上記実施例1(工程1)にて得られた式(12)で表される化合物のウェットケーキ全量を添加後、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH6.0~7.0として水溶液を得た。35%塩酸17.1部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液11.1部を添加し、約30分間反応させた。ここにスルファミン酸7.7部を添加して5分間撹拌し、ジアゾ反応液を得た。一方、水165部に特許-6218381に記載の方法で得られる下記式(11)の化合物16.5部を添加し、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH4.0~5.0として水溶液を得た。この水溶液を上記にて得られたジアゾ反応液に約5分間かけて滴下した。滴下後、15%炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpHを3.0~3.5に保持しながら3時間反応させた。この液に塩化ナトリウムを添加し、析出した固体をろ過分取し、下記式(13)で表される化合物を含むウェットケーキを130.5部得た。
Figure 0007054657000013
(工程3)
アセトニトリル70部に下記式(14)で表される1,5-ジヒドロキシナフタレン8.3部を加え、そこにクロロスルホン酸12.6部を添加し約20時間反応させた。反応後に析出した固体をろ過分取し、ウェットケーキを得た。
水100部中に上記にて得られたウェットケーキを添加し、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH8.0~9.0として下記式(15)で表される化合物を含む水溶液120部を得た。
Figure 0007054657000014
(工程4)
水100部に上記実施例1(工程2)にて得られた式(13)で表される化合物のウェットケーキ16.5部を添加し撹拌して溶解した。35%塩酸3.3部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液1.3部を添加し、約30分撹拌した。ここにスルファミン酸0.6部を添加し5分間撹拌しジアゾ反応液を得た。一方、上記実施例1(工程3)にて得られた式(15)で表される化合物を含む水溶液20.5部に、上記で得たジアゾ反応液を15~30℃、約30分間かけて滴下した。この際、15%炭酸ナトリウム水溶液を加えて反応液のpHを8.0~9.0に保持し、同温度及びpHの調整を維持しながら、さらに2時間反応した。反応液に塩化ナトリウムを加えて塩析し、析出した固体をろ過分離し、ウェットケーキ18.5部を得た。得られたウェットケーキを水50部に溶解し、メタノール140部を添加し、析出した固体をろ過分取した。得られたウェットケーキを再度水50部に溶解後、2-プロパノール550部を添加した。析出した固体をろ過分離し、乾燥することにより本発明の下記式(16)で表される化合物を黒色粉末として5.9部ナトリウム塩として得た。
λmax:741nm。
Figure 0007054657000015
[(B)インクの調整]
前記実施例1で得られた本発明のアゾ化合物[式(16)]を色素として用い、下記表6に示した組成を混合して溶液とすることにより、本発明のインク組成物を得た。得られたインク組成物を0.45μmのメンブランフィルターで濾過して夾雑物を除き、試験用のインクを調製した。なお、この試験用インクのpHは8.0~9.5の範囲であった。また、下記表6中、「界面活性剤」は、日信化学株式会社製の商品名サーフィノールRTM104PG50を使用した。実施例1で得た化合物を使用したインクの調製を実施例2とする。
Figure 0007054657000016
[比較例1]
実施例1で得た本発明の化合物のかわりに、国際公開-2017/051923号(実施例1)に記載の色素を用いる以外は、実施例2と同様にして比較用のインクを調製した。このインクの調製を比較例1とする。比較例1に用いた化合物の構造式を下記式(17)に示す。
Figure 0007054657000017
[比較例2]
実施例1で得た本発明の化合物のかわりに、特許-4517174(実施例15)に記載の色素を用いる以外は、実施例2と同様にして比較用のインクを調製した。このインクの調製を比較例2とする。比較例2に用いた化合物の構造式を下記式(18)に示す。
Figure 0007054657000018
[(C)インクジェット記録]
実施例2、比較例1及び2で調製した各インクを、インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUSRTM ip7230)を用いて、下記の2種類の光沢紙にインクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記する試験を行った。
光沢紙1:キヤノン写真用紙・プラチナグレード(PT-201)
光沢紙2:キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド(GL-101)
光沢紙3:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙クリスピア
光沢紙4:セイコーエプソン株式会社製、商品名:PM写真用紙
光沢紙5:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G
光沢紙6:富士フィルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro
[(D)記録画像の測色]
各種の試験及びその評価は、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて試験片を測色することにより行った。測色は、濃度基準にDIN NB、視野角2度、光源D50および光源Cの条件で行った。記録画像の試験方法及び試験結果の評価方法を以下に記載する。
各記録片を、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて、光源D50及び光源Cの条件にて色相(L* a* b*)を測色し色差を求めた。色差は、より小さい数値のものが、より演色性に優れる。結果を下記表7に示す。色差は以下の式により算出した。なお、下記計算式中、ΔL*、Δa*及びΔb*は、それぞれの光源でのL*、a*及びb*の差をそれぞれ意味する。光源にかかわらず同じ色相、すなわち、色差が小さい物が演色性に優れている。記録物の測色については85%の階調部での色差を求めた。評価基準は以下の通りである。

色差が3.5未満 ・・・・・・・・・○
色差が3.5以上 ・・・・・・・・・×

色差(ΔE)=(ΔL+Δa+Δb1/2
Figure 0007054657000019
表7の結果のとおり、印字物の演色性試験において、全ての光沢紙において実施例2は、比較例1および2より優れる結果を示した。
以上より、本発明の水溶性アゾ化合物、及び該化合物を含む本発明のインク組成物は、従来の色素と比較して、印字物の演色性が高いことがわかる。
本発明のアゾ化合物及びこれを含むインク組成物は、筆記用具等の各種記録用、特にインクジェット記録用の黒色インクに好適に用いられる。

Claims (8)

  1. 下記式(1)で表されるアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩。
    Figure 0007054657000020
    [式(1)中、mは2の整数を表し、nは1~4の整数を表し、R はスルホ基を表し、 はスルホ(C1~C4)アルキルチオ基を表し、 及びR は(C1~C4)アルキルカルボニルアミノ基を表し、~Rはそれぞれ独立して、水素原子、スルホ基、ニトロ基を表す。また、破線で表される環存在しない。
  2. 請求項1に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩を、色素として少なくとも1種類含むインク組成物。
  3. 水溶性有機溶剤をさらに含む請求項に記載のインク組成物。
  4. 請求項又はに記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて記録メディアに記録を行うインクジェット記録方法。
  5. 記録メディアがシート状記録メディアである請求項に記載のインクジェット記録方法。
  6. シート状記録メディアが多孔性白色無機物を含むインク受容層を有する請求項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 請求項又はに記載のインク組成物を含む容器を装填したインクジェットプリンタ。
  8. a)請求項1に記載のアゾ化合物若しくはその互変異性体、又はそれらの塩、
    b)請求項又はに記載のインク組成物、
    のいずれかによって着色された着色体。


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