以下、本発明の実施の形態について説明する。
[車両の駆動系の全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係る自動変速機が搭載された車両の駆動系は、駆動源としてのエンジン1と、該エンジン1からトルクコンバータ3を介して動力が入力される変速機構8を有する自動変速機4と、変速機構8の出力により駆動されるディファレンシャル装置10とを備えている。
トルクコンバータ3は、エンジン出力軸2に連結されたポンプ3aと、該ポンプ3aに対向配置されて該ポンプ3aにより作動油を介して駆動されるタービン3bと、該ポンプ3aとタービン3bとの間に介設され、かつ、変速機ケース5にワンウェイクラッチ(図示せず)を介して支持されてトルク増大作用を行うステータ3cと、エンジン出力軸2とタービン3bとを直結するロックアップクラッチ3dとを備えている。タービン3bは、変速機構8の入力軸に連結されており、タービン3bの回転は、入力軸6を介して変速機構8に伝達されるようになっている。
変速機構8は、入力軸6に入力された回転を変速して、出力ギヤ9を介してディファレンシャル装置10へ出力し、ディファレンシャル装置10に伝達された回転は、車両の走行状況に応じた回転差となるように左右のドライブシャフト12に伝達され、これにより、各ドライブシャフト12に設けられた駆動輪14が駆動されるようになっている。
自動変速機4には、例えばロックアップクラッチ3dの制御(以下、「ロックアップ制御」ともいう)及び変速機構8の変速制御等、自動変速機4の各種動作を制御するTCM(Transmission Control Module)20が設けられている。また、自動変速機4には、変速機構8を構成する摩擦締結要素(図示せず)及びロックアップクラッチ3dを油圧制御する油圧制御装置50が設けられている。
油圧制御装置50は、変速制御用及びロックアップ制御用の油圧回路を構成するバルブボディ(図示せず)を備え、該バルブボディには、油路を切り換えるための切換弁、及び、油路を開閉したり油圧を調整したりする電磁式の油圧制御弁等が組み付けられている。油圧制御装置50に設けられる油圧制御弁には、変速機構8に設けられた各摩擦締結要素への油圧供給を制御する複数の変速用油圧制御弁と、ロックアップクラッチ3dへの油圧供給を制御するロックアップ用油圧制御弁53(図2参照)とが含まれる。油圧制御装置50は、TCM20と共にユニット化された状態で変速機ケース5に取り付けられている。
[自動変速機の制御システム]
図2に示すように、TCM20は、各種機器からの信号を入力するための入力処理部22と、入力処理部22に入力された信号に基づいて各種制御を実行する制御本体部24と、制御本体部24による各種指令信号を各種機器に出力するための出力処理部26と、車両に搭載されたバッテリから自動変速機4内の各種機器への電力供給を制御する電源制御部28とを備えている。
入力処理部22には、例えば車輪の回転数に基づいて車両の速度を検出する車速センサ41、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ42、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ43、例えば変速機構8の入力軸6の回転数に基づいてトルクコンバータ3のタービン3bの回転数を検出するタービン回転数センサ51、例えば出力ギヤ9の回転数に基づいて変速機構8の出力回転数を検出する出力回転数センサ52、及び、ロックアップクラッチ3dへの油圧供給状態を検出するロックアップ用油圧スイッチ54等からの信号が入力される。
出力回転数センサ52としては、例えば、出力ギヤ9と共に回転するパルスギヤの歯を指向するように配置された磁気センサが用いられる。この場合、出力回転数センサ52は、パルスギヤの回転に応じて変化する磁界の強さをアナログ信号として検出し、該アナログ信号の値を、設定されたスライスレベルとの比較によりパルスに変換して出力する。発生する磁界の強さは経年変化するが、これに応じてスライスレベルを適宜補正する補正制御によって、出力回転数センサ52の出力を正常に維持できる。
ただし、出力回転数センサ52の種類はこれに限定されるものでなく、何らかの補正制御を必要とする別の種類のセンサを用いてもよい。この場合、出力回転数センサ52の補正制御は、センサの種類に応じた適当な方法によって行われる。
制御本体部24は、油圧制御装置50の変速用油圧制御弁(図示せず)を制御することによって変速制御を行う変速制御部31と、油圧制御装置50のロックアップ用油圧制御弁53を制御することによってロックアップクラッチ3dの制御(ロックアップ制御)を行うロックアップ制御部32と、出力回転数センサ52の補正制御をリセットするリセット制御部33と、出力回転数センサ52の故障の有無を診断する故障診断部34とを備えている。
変速制御部31は、車両の前進走行中において、車速センサ41によって検出された車速、アクセル開度センサ42によって検出されたアクセル開度、及び、車速とアクセル開度に基づいて予め設定された変速マップに基づいて、変速制御を行う。変速が行われるときは、変速用油圧制御弁の制御によって、所定の摩擦締結要素を解放して別の摩擦締結要素を締結するように油圧制御される。変速制御部31による変速制御においては、出力回転数センサ52の出力値が適宜用いられる。
ロックアップ制御部32は、車両運転状態に応じてロックアップクラッチ3dを解放、スリップ又は締結するように、ロックアップ用油圧制御弁53の制御によってロックアップ制御を行う。ロックアップ制御の具体例については後に説明する。
リセット制御部33は、出力回転数センサ52の補正制御が何らかの原因によって正常に行えなくなることで、出力回転数センサ52の出力値がゼロに固定されるなどの出力異常が生じた場合に、当該補正制御のリセットを実行する。出力回転数センサ52が故障していなければ、リセットの実行後に新たに補正制御が開始されることで、出力回転数センサ52の出力値は正常な値に戻る。リセット制御部33によるリセット制御の具体的な制御動作については後に説明する。
ところで、出力回転数センサ52が故障している場合、リセット制御部33によるリセットを実行しても出力回転数センサ52の出力異常が続くことになるため、出力回転数センサ52を交換するなどのメンテナンスが必要になる。このような出力回転数センサ52の故障を検出するために、故障診断部34による故障診断制御が行われる。故障診断制御の具体的な制御動作については後に説明する。
出力処理部26は、ロックアップ制御部32による指令信号を、電源制御部28を経由してロックアップ用油圧制御弁53に出力する。また、出力処理部26は、リセット制御部33によるリセット指令信号を電源制御部28に出力する。さらに、故障診断部34によって出力回転数センサ52が故障していると判定された場合、出力処理部26は、表示又は音の一方又は両方によって出力回転数センサ52の故障を報知する故障警告部60に、故障を報知するための指令信号を出力する。
電源制御部28から自動変速機4に搭載された各種機器への電力供給経路は、電源制御部28から延びるメイン経路70と、該メイン経路70の先端から枝分かれした第1、第2、第3、第4サブ経路71,72,73,74を含む複数のサブ経路とで構成されている。
具体的に、電源制御部28は、メイン経路70及び第1サブ経路71からなる電力供給経路(特許請求の範囲における「第1経路」に相当)を介して出力回転数センサ52に、メイン経路70及び第2サブ経路72からなる電力供給経路(特許請求の範囲における「第2経路」に相当)を介してロックアップ用油圧制御弁53に、メイン経路70及び第3サブ経路73からなる電力供給経路を介してタービン回転数センサ51に、メイン経路70及び第4サブ経路74からなる電力供給経路を介してロックアップ用油圧スイッチ54に、それぞれ電気的に接続されている。
つまり、電源制御部28は、バッテリからの電力を共通のメイン経路70を経由してタービン回転数センサ51、出力回転数センサ52、ロックアップ用油圧制御弁53及びロックアップ用油圧スイッチ54へ供給する共通の電力供給元である。なお、電源制御部28は、変速制御に用いられる変速用油圧制御弁(図示せず)にも、メイン経路70を介して電気的に接続されており、該変速用油圧制御弁の電力供給元でもある。
このように、自動変速機4に搭載された複数の機器において、電源制御部28及びメイン経路70が共通化されているため、自動変速機4内の部品点数が削減されて、自動変速機4の小型化を図ることができる。
[ロックアップ制御]
ロックアップ制御部32は、ロックアップ用油圧制御弁53を制御することで、ロックアップクラッチ3dに供給される油圧を制御する。ロックアップ用油圧制御弁53の種類は限定されるものでないが、例えば、ノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブが油圧制御弁53として用いられる。ロックアップクラッチ3dの状態は、車両の走行状態および変速制御の状況等に応じて、油圧制御弁53による油圧制御によって解放状態、締結状態およびスリップ状態の間で適宜切り換えられる。
ロックアップクラッチ3dのスリップ制御では、油圧制御弁53による緻密な油圧制御によって、ロックアップクラッチ3dの締結力が緻密に制御される。具体的に、スリップ制御においては、例えば、ロックアップクラッチ3dの入力回転数としてのエンジン回転数とロックアップクラッチ3dの出力回転数としてのタービン回転数との差(入出力差回転)、又は、ロックアップクラッチ3dへの供給油圧の大きさ等の所定のパラメータが目標値になるように、油圧制御弁53の制御が緻密に行われる。
本明細書では、ロックアップクラッチ3dの解放状態を「非ロックアップ状態」(特許請求の範囲における「所定の非制御状態」に相当)といい、ロックアップクラッチ3dの締結状態およびスリップ状態を総称して「ロックアップ状態」(特許請求の範囲における「所定の制御状態」に相当)という。ロックアップ制御部32は、車両走行状態等に基づいて、非ロックアップ状態とロックアップ状態との間で切り換えられるようにロックアップ制御を行う。
また、本明細書において、ロックアップクラッチ3dが非ロックアップ状態に制御される車両走行領域を「非ロックアップ領域」といい、ロックアップクラッチ3dがロックアップ状態に制御される車両走行領域を「ロックアップ領域」という。ロックアップ領域及び非ロックアップ領域は、車両走行状態を示す所定のパラメータに基づいて予め設定されている。
例えば、図3は、車速に基づいてロックアップ領域及び非ロックアップ領域を設定した制御マップの一例を示している。図3に示す例では、所定車速V1以上の走行領域がロックアップ領域に設定され、所定車速V1未満の走行領域が非ロックアップ領域に設定されている。つまり、この場合、車速が所定車速V1以上であることが、非ロックアップ状態からロックアップ状態へ移行するための条件となっている。
ただし、非ロックアップ状態からロックアップ状態への移行条件は、必ずしも一定でなくてもよく、例えば、後述の第1実施例のように非ロックアップ領域の通常モードと拡大モードが設定される場合には、通常モードでの移行条件を第1車速V1以上とし、拡大モードでの移行条件を第1車速よりも高速の第2車速V2以上としてもよい。
なお、図3に示す例では、車速のみに基づいてロックアップ領域及び非ロックアップ領域が設定されているが、これらの領域を設定するためのパラメータは、車速に限られるものでなく、例えば、車速とアクセル開度とに基づいて設定してもよいし、車速以外の1又は複数のパラメータに基づいて設定してもよい。
[リセット制御]
リセット制御部33は、出力回転数センサ52の補正制御をリセットするためのリセット制御を行う。
図4に示すフローチャートを参照しながら、リセット制御部33によるリセット制御の制御動作の一例について説明する。図4に示す制御動作は、エンジンが駆動されている間、常に繰り返し実行される。
先ず、ステップS1では、出力回転数センサ52及び車速センサ41からの各出力信号と、変速制御部31による制御信号とが読み込まれる。
次のステップS2では、ステップS1で読み込まれた出力回転数センサ52からの出力信号に基づいて、該出力回転数センサ52の出力が停止しているか否かが判定される。具体的に、パルス信号を出力するタイプの出力回転数センサ52を用いる場合に、ステップS2では、センサ52の出力が正常であれば数パルスが出力される程度の微小時間において、出力がゼロの状態が続くときに、出力回転数センサ52の出力が停止していると判定される。
ステップS2の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止していなければリターンされ、出力が停止している場合のみ、続くステップS3の判定が行われる。
ステップS3では、ステップS1で読み込まれた車速及び変速制御の状態に関する各情報に基づいて、後述のリセット条件が成立しているか否かが判定される。ステップS3の判定の結果、リセット条件が成立していなければリターンされ、リセット条件が成立している場合のみ、ステップS4でリセットが実行される。
ステップS4では、電源制御部28からの電力供給が一時的に停止されることで、出力回転数センサ52への通電が一時的に停止される。これにより、出力回転数センサ52が再起動されることで、出力回転数センサ52の出力に対する上記補正制御がリセットされる。
リセット条件は、例えば、車速が所定車速(例えば7km/h)以上であり、且つ、非変速状態であることである。前者の車速条件が設定されることによって、出力回転数センサ52が故障していなくても出力が停止され得る停車状態又は極低車速状態において、不必要なリセットの実行を回避できる。
一方、後者の条件は、ステップS4のリセットを実行したときに、出力回転数センサ52への通電停止と共に変速用油圧制御弁への通電も停止されることによる不具合を回避するために設定されている。つまり、リセット時に変速用油圧制御弁への通電が停止されると、変速のために締結および解放される各摩擦締結要素に供給される油圧が変動し、正常な油圧制御を行えなくなるが、当該リセット条件が設定されていることによって変速中のリセットが回避されるため、リセットの実行によって変速制御に支障を来すことを回避できる。
ただし、リセット条件は、上記の条件に限定されるものでなく、後述の故障診断中にリセットが実行され得るようなものであれば、任意のリセット条件を設定できる。
以上のリセット制御によれば、ステップS4のリセットの実行後に、出力回転数センサ52の補正制御が新たに開始されるため、該センサ52が故障していなければ正常な出力状態に戻る。したがって、故障診断部34による後述の故障診断において、リセット後の正常な出力値に基づいて、正確な判定を行うことができる。
ところが、故障診断部34による故障診断中にステップS4のリセットが実行されると、出力回転数センサ52への通電停止と共に、ロックアップ用油圧制御弁53への通電も停止されるため、リセットの実行によってロックアップ制御に支障を来す可能性がある。この問題を解消するために、故障診断部34は、以下のように故障診断制御を行う。
[故障診断制御]
故障診断制御では、所定の診断条件が成立したときに出力回転数センサ52の診断が実行され、該診断中は、ロックアップ制御部32による非ロックアップ状態からロックアップ状態への移行、すなわち、ロックアップクラッチ3dの解放状態からスリップ状態又は締結状態への移行が抑制される。
これにより、出力回転数センサ52の診断中、ロックアップクラッチ3dは解放状態に維持されるため、上記のリセットの実行(図4のステップS4)によって出力回転数センサ52への通電停止と共にロックアップ用油圧制御弁53への通電が一時的に停止されても、ロックアップクラッチ3dが解放状態に維持されていることにより、ロックアップ制御の精度低下を抑制できる。
[故障診断制御の制御動作]
以下、故障診断制御の制御動作の具体例として、第1〜第3実施例について説明する。
[第1実施例]
図5に示すフローチャート及び図6に示すタイムチャートを参照しながら、第1実施例に係る故障診断制御の制御動作について説明する。
図5に示す制御動作は、エンジンが駆動されている間、故障判定されることによって制御動作が終了しない限り、常に繰り返し実行される。
図5に示す制御動作では、先ず、ステップS11で、出力回転数センサ52、車速センサ41及びロックアップ用油圧スイッチ54からの各出力信号と、ロックアップ制御部32及びリセット制御部33による各制御信号とが読み込まれる。
次のステップS12では、所定の診断条件が成立したか否かが判定される。診断条件は、例えば、車速が所定車速(例えば16km/h)以上であることであり、ステップS12の判定は、ステップS11で読み込まれた車速の情報に基づいて行われる。
診断条件の車速条件(例えば16km/h以上)は、上記のリセット条件の車速条件(例えば7km/h以上)よりも高速に設定することが好ましい。これにより、非変速状態であればリセットが確実に診断中に実行されるため、リセット後の出力状態に基づいて、出力回転数センサ52の故障の有無を正確に判定できる。
ステップS12の判定の結果、診断条件が成立していなければリターンされ、診断条件が成立している場合のみ、続くステップS13の判定が行われる。
ステップS13では、ステップS11で読み込まれた出力回転数センサ52からの出力信号に基づいて、該出力回転数センサ52の出力が停止しているか否かが判定される。ステップS13の具体的な判定方法は、図4に示すリセット制御におけるステップS2の判定と同様である。
ステップS13の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止していなければ、該センサ52が正常であると判定されて(ステップS24)、リターンされる。
一方、ステップS13の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止している場合、続くステップS14で、出力回転数センサ52の故障診断が開始される。この故障診断では、所定の診断時間に亘って出力回転数センサ52の出力が監視され、前記診断時間が経過するまでに出力が復帰すればセンサ52が正常であると判定され(ステップS24)、診断時間が経過しても出力が停止したままであればセンサ52が故障している判定される(ステップS25)。
また、ステップS13の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止している場合、診断の開始(ステップS14)と共に、ステップS15で、変速制御部31による変速制御において、出力回転数センサ52の出力値の代わりに、車速センサ41の出力値が用いられる。車速センサ41の出力値が代用されるときは、車速センサ41の出力値を演算することによって変速機構8の出力回転数が求められ、この値が変速制御に用いられる。
このように、故障診断の結果を待つことなく、診断の開始(ステップS14)と同時に車速センサ41の代用(ステップS15)が開始されることで、診断時間を長く設定しやすくなる。したがって、診断中にリセットが実行される可能性が高められ、故障診断の精度を高めることができる。
続くステップS16では、ステップS11で読み込まれたロックアップ用油圧スイッチ54の出力信号に基づいて、ロックアップクラッチ3dが非ロックアップ状態(解放状態)であるか否かが判定される。
ステップS16の判定の結果、ロックアップ用油圧スイッチ54がオンであり、ロックアップクラッチ3dがロックアップ状態(スリップ状態又は締結状態)であるとき、ステップS20に進んで、出力回転数センサ52の出力が停止しているか否かが再び判定される。なお、ステップS20の判定方法は、ステップS13の判定と同様である。
一方、ステップS16の判定の結果、ロックアップ用油圧スイッチ54がオフであり、ロックアップクラッチ3dが非ロックアップ状態(解放状態)であるとき、ステップS17で、非ロックアップ領域の設定が通常モードから拡大モードに変更される。これにより、例えば図3に示すように、非ロックアップ状態からロックアップ状態への移行条件が、通常モードの条件(例えば、第1車速V1以上)から拡大モードの条件(例えば、第1車速よりも高速の第2車速V2以上)に変更される。
これにより、出力回転数センサ52の診断中において、非ロックアップ領域が拡大されることで、非ロックアップ状態からロックアップ状態へ移行され難くなる。したがって、診断中において、ロックアップクラッチ3dを解放状態に維持しやすくなるため、リセットの実行(図4のステップS4)によってロックアップ用油圧制御弁53への通電が一時的に停止されても、これによってロックアップ制御に支障を来すことを抑制できる。
続くステップS18では、リセット制御部33による制御信号に基づいて、リセット(図4のステップS4)が実行されたか否かが判定される。
ステップS18の判定の結果、リセットが実行されていない場合は、出力回転数センサ52の出力信号が再び読み込まれ(ステップS19)、その出力が停止しているか否かが判定される(ステップS20)。
ステップS20の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が復帰していなければ、ステップS21で、診断の開始(ステップS14)から所定の診断時間が経過したか否かが判定される。
ステップS21の判定の結果、診断時間が経過していなければ、ステップS18に戻り、リセットの実行又は診断時間の経過のいずれか一方の条件が成立するまでは、ステップS19で読み込まれた出力信号に基づいて、出力回転数センサ52の出力の有無が繰り返し判定される(ステップS20)。
ステップS18の判定の結果、診断中にリセットが実行されると、ステップS22で、非ロックアップ領域の設定が拡大モードから通常モードに戻されて、通常の領域設定に基づくロックアップ制御が再開される。このように、ロックアップ状態への移行抑制がリセット後に速やかに解除されることで、必要に応じて、ロックアップクラッチ3dの締結状態又はスリップ状態を速やかに実現することができ、これにより、燃費の向上を図ることができる。
ただし、非ロックアップ領域の拡大モード解除は、必ずしもリセットの実行(図4のステップS4)後に直ちに行わなくてもよく、例えば、リセットが実行されてから所定時間経過したとき、診断中においてリセットが所定の複数回実行されたとき、又は、診断が終了したとき等に、非ロックアップ領域の拡大モードを解除してもよい。
ステップS20の判定の結果、診断中に出力回転数センサ52の出力が復帰すれば、ステップS23で、車速センサ41の代用が解除されて、出力回転数センサ52の出力値を用いた変速制御が再開されると共に、ステップS24で、出力回転数センサ52が正常であると判定されて、リターンされる。
なお、診断中にリセットが実行される前に出力回転数センサ52の出力が復帰した場合は、ステップS22の処理が実行されないため、ステップS23において、車速センサ41の代用解除と共に、ステップS22と同様に非ロックアップ領域の拡大モードを解除する処理が実行される。
ステップS21の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が復帰することなく、診断時間が経過した場合、ステップS25で、出力回転数センサ52が故障していると判定されて、故障診断制御が終了する。
ステップS25で故障判定された場合は、故障警告部60によって故障が報知される。ただし、故障判定されたときに必ず報知しなくてもよく、例えば、連続する複数のドライビングサイクル(エンジンが始動してから停止するまでの期間)のいずれにおいても故障判定されたときに、故障の報知を行うようにしてもよい。
図6は、図4に示すリセット制御及び図5に示す故障診断制御を行いながらロックアップ制御を行う場合における各要素の経時的変化の一例を示すタイムチャートである。
図6に示す時刻t0の時点において、ロックアップクラッチ3dは非ロックアップ状態(解放状態)であり、非ロックアップ領域は通常モードに設定されている。
時刻t1において、符号aに示すように何らかの原因によって出力回転数センサ52の出力が停止すると、符号bに示すように出力回転数センサ52の故障診断が開始されるとともに、符号cに示すように、出力回転数センサ52の出力値に代わって車速センサ41の出力値が変速制御に用いられる。これにより、出力回転数センサ52の故障診断の終了を待つことなく、車速センサ41を代用した変速制御が開始される。
また、出力回転数センサ52の出力が停止すると、符号dに示すように非ロックアップ領域の設定が通常モードから拡大モードに変更され、これにより、非ロックアップ状態からロックアップ状態への移行が抑制される。したがって、符号eに示すように、仮に通常モードの設定が継続されている場合にロックアップ状態への移行が行われるべきタイミングt2になっても、ロックアップクラッチ3dは解放状態に維持される。
その後、故障診断中の時刻t3にリセット(図4のステップS4)が実行されると、出力回転数センサ52が故障していない場合、リセット完了後の時刻t4に、符号fに示すように出力が復帰し、符号gに示すように、車速センサ41の代用が解除されて、出力回転数センサ52の出力値を用いた変速制御が再開される。
また、リセットが完了すると、符号hに示すように、非ロックアップ領域の設定が拡大モードから通常モードに戻されて、ロックアップ状態への移行抑制が解除される。このとき、車両がロックアップ領域に属する走行状態であれば、符号iに示すように、通常のロックアップ制御に基づいて、ロックアップクラッチ3dが解放状態から締結状態又はスリップ状態へ移行される。
一方、出力回転数センサ52が故障している場合は、符号jに示すように、リセット後も出力が復帰せず、符号kに示すように、所定の診断時間が経過する時刻t5に故障判定される。
[第2実施例]
図7及び図8に示すフローチャートを参照しながら、第2実施例に係る故障診断制御の制御動作について説明する。
図7に示す制御動作は、エンジンが駆動されている間、故障判定されることによって制御動作が終了しない限り、常に繰り返し実行される。
図7に示す制御動作において、ステップS31〜ステップS37の各処理は、それぞれ第1実施例における図5のステップS11〜ステップS17の各処理と同様に行われる。
ステップS32の判定の結果、所定の診断条件が成立していなければリターンされ、ステップS33の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止していなければ、該センサ52が正常であると判定されて(ステップS46)、リターンされる。
ステップS32及びステップS33の判定の結果、診断条件が成立し、且つ、出力回転数センサ52の出力が停止している場合、出力回転数センサ52の故障診断が開始されると共に(ステップS34)、変速制御部31による変速制御において、出力回転数センサ52の出力値の代わりに、車速センサ41の出力値が用いられる(ステップS35)。
続くステップS36の判定の結果、ロックアップクラッチ3dがロックアップ状態(スリップ状態又は締結状態)であるとき、ステップS41に進んで、出力回転数センサ52の出力が停止しているか否かが再び判定される。
一方、ステップS36の判定の結果、ロックアップクラッチ3dが非ロックアップ状態(解放状態)であるとき、ステップS37で、非ロックアップ領域の設定が通常モードから拡大モードに変更される。これにより、例えば図3に示すように、非ロックアップ状態からロックアップ状態への移行条件が、通常モードの条件(第1車速V1以上)から拡大モードの条件(第1車速よりも高速の第2車速V2以上)に変更される。
以上の制御動作は第1実施例と同様であるが、第2実施例では、非ロックアップ領域の拡大(ステップS37)に加えて、続くステップS38において、ロックアップ領域への移行を遅延させる移行保留モードが実行される。移行保留モードが実行されると、ロックアップ制御部32によってロックアップ状態への移行指令が出されても、移行保留モードが解除されるまでは移行の実行が保留される。これにより、より確実にロックアップ状態への移行が抑制される。移行保留モードの具体的な制御動作については後に説明する。
ただし、第2実施例では、非ロックアップ領域の拡大(ステップS37)を省略して、移行保留モードの実行(ステップS38)のみによってロックアップ状態への移行を抑制してもよい。
続くステップS39では、リセット制御部33による制御信号に基づいて、リセット(図4のステップS4)が実行されたか否かが判定される。
ステップS39の判定の結果、リセットが実行されていない場合は、出力回転数センサ52の出力信号が再び読み込まれ(ステップS40)、その出力が停止しているか否かが判定される(ステップS41)。
ステップS41の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が復帰していなければ、ステップS42で、診断の開始(ステップS34)から所定の診断時間が経過したか否かが判定される。
ステップS42の判定の結果、診断時間が経過していなければ、ステップS39に戻り、リセットの実行又は診断時間の経過のいずれか一方の条件が成立するまでは、ステップS40で読み込まれた出力信号に基づいて、出力回転数センサ52の出力の有無が繰り返し判定される(ステップS41)。
ステップS39の判定の結果、診断中にリセットが実行されると、ステップS43で、非ロックアップ領域の設定が拡大モードから通常モードに戻されると共に、ステップS44で、ステップS38で開始された移行保留モードが解除される。これにより、ロックアップ状態への移行抑制が解除されて、通常のロックアップ制御が再開される。このように、ロックアップ状態への移行抑制がリセット後に速やかに解除されることで、必要に応じて、ロックアップクラッチ3dの締結状態又はスリップ状態を速やかに実現することができ、これにより、燃費の向上を図ることができる。
ただし、非ロックアップ領域の拡大モード解除(ステップS43)、及び、移行保留モードの解除(ステップS44)は、必ずしもリセットの実行(図4のステップS4)後に直ちに行わなくてもよく、例えば、リセットが実行されてから所定時間経過したとき、診断中においてリセットが所定の複数回実行されたとき、又は、診断が終了したとき等に行ってもよい。
ステップS41の判定の結果、診断中に出力回転数センサ52の出力が復帰すれば、ステップS45で、車速センサ41の代用が解除されて、出力回転数センサ52の出力値を用いた変速制御が再開されると共に、ステップS46で、出力回転数センサ52が正常であると判定されて、リターンされる。
なお、診断中にリセットが実行される前に出力回転数センサ52の出力が復帰した場合は、ステップS43及びステップS44の処理が実行されないため、ステップS45において、車速センサ41の代用解除と共に、ステップS43と同様に非ロックアップ領域の拡大モードを解除する処理と、ステップS44と同様に移行保留モードを解除する処理とが実行される。
ステップS42の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が復帰することなく、診断時間が経過した場合、ステップS47で、出力回転数センサ52が故障していると判定されて、故障診断制御が終了する。
ステップS47で故障判定された場合は、故障警告部60によって故障が報知される。ただし、故障判定されたときに必ず報知しなくてもよく、例えば、連続する複数のドライビングサイクル(エンジンが始動してから停止するまでの期間)のいずれにおいても故障判定されたときに、故障の報知を行うようにしてもよい。
図8のフローチャートを参照しながら、移行保留モード(図7のステップS38)の具体的な制御動作の一例について説明する。
図8に示す制御動作では、先ず、ステップS51で、ロックアップ制御部32によるロックアップ制御におけるロックアップ状態への移行指令の有無が判定される。ステップS51の判定は、ロックアップ制御部32による移行指令が出されるまで繰り返し実行される。
ステップS51の判定の結果、ロックアップ状態への移行指令が出されても、続くステップS52で、ロックアップ状態への移行の実行は保留され、ロックアップクラッチ3dは非ロックアップ状態に維持される。
続くステップS53では、図7に示す故障診断制御において移行保留モードの解除(ステップS44又はステップS45)が実行されたか否かが判定される。ステップS53の判定は、移行保留モードが解除されるまで繰り返し実行される。
ステップS53の判定の結果、移行保留モードが解除されると、続くステップS54で、ステップS52において保留されていたロックアップ状態への移行が実行される。
以上のように、第2実施例によれば、故障診断中において、ロックアップ状態への移行は移行保留モードの実行によって抑制され、ロックアップクラッチ3dが解放状態に維持されるため、リセットの実行(図4のステップS4)によってロックアップ用油圧制御弁53への通電が一時的に停止されても、これによってロックアップ制御に支障を来すことを抑制できる。
[第3実施例]
図9及び図10に示すフローチャートを参照しながら、第3実施例に係る故障診断制御の制御動作について説明する。
図9に示す制御動作は、エンジンが駆動されている間、故障判定されることによって制御動作が終了しない限り、常に繰り返し実行される。
図9に示す制御動作において、ステップS61〜ステップS66の各処理は、それぞれ第1実施例における図5のステップS11〜ステップS16の各処理と同様に行われる。
ステップS62の判定の結果、所定の診断条件が成立していなければリターンされ、ステップS63の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止していなければ、該センサ52が正常であると判定されて(ステップS74)、リターンされる。
ステップS62及びステップS63の判定の結果、診断条件が成立し、且つ、出力回転数センサ52の出力が停止している場合、出力回転数センサ52の故障診断が開始されると共に(ステップS64)、変速制御部31による変速制御において、出力回転数センサ52の出力値の代わりに、車速センサ41の出力値が用いられる(ステップS65)。
続くステップS66の判定の結果、ロックアップクラッチ3dがロックアップ状態(スリップ状態又は締結状態)であるとき、ステップS70に進んで、出力回転数センサ52の出力が停止しているか否かが再び判定される。
以上の制御動作は第1実施例と同様であるが、第3実施例では、ステップS66においてロックアップクラッチ3dが非ロックアップ状態(解放状態)であると判定されたとき、非ロックアップ領域の拡大(図5のステップS17)に代えて、ロックアップ領域への移行を禁止する移行禁止モードが実行される(ステップS67)。
ステップS67において移行禁止モードが実行されると、ロックアップ制御部32によってロックアップ状態への移行指令が出されても、この移行指令がキャンセルされる。これにより、移行禁止モードが解除されるまではロックアップ状態への移行が禁止される。移行禁止モードの具体的な制御動作については後に説明する。
続くステップS68では、リセット制御部33による制御信号に基づいて、リセット(図4のステップS4)が実行されたか否かが判定される。
ステップS68の判定の結果、リセットが実行されていない場合は、出力回転数センサ52の出力信号が再び読み込まれ(ステップS69)、その出力が停止しているか否かが判定される(ステップS70)。
ステップS70の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が復帰していなければ、ステップS71で、診断の開始(ステップS64)から所定の診断時間が経過したか否かが判定される。
ステップS71の判定の結果、診断時間が経過していなければ、ステップS68に戻り、リセットの実行又は診断時間の経過のいずれか一方の条件が成立するまでは、ステップS69で読み込まれた出力信号に基づいて、出力回転数センサ52の出力の有無が繰り返し判定される(ステップS70)。
ステップS68の判定の結果、診断中にリセットが実行されると、ステップS72で、ステップS67で開始された移行禁止モードが解除される。これにより、ロックアップ状態への移行禁止が解除されて、通常のロックアップ制御が再開される。このように、ロックアップ状態への移行禁止がリセット後に速やかに解除されることで、必要に応じて、ロックアップクラッチ3dの締結状態又はスリップ状態を速やかに実現することができ、これにより、燃費の向上を図ることができる。
ただし、移行禁止モードの解除(ステップS72)は、必ずしもリセットの実行(図4のステップS4)後に直ちに行わなくてもよく、例えば、リセットが実行されてから所定時間経過したとき、診断中においてリセットが所定の複数回実行されたとき、又は、診断が終了したとき等に行ってもよい。
ステップS70の判定の結果、診断中に出力回転数センサ52の出力が復帰すれば、ステップS73で、車速センサ41の代用が解除されて、出力回転数センサ52の出力値を用いた変速制御が再開されると共に、ステップS74で、出力回転数センサ52が正常であると判定されて、リターンされる。
なお、診断中にリセットが実行される前に出力回転数センサ52の出力が復帰した場合は、ステップS72の処理が実行されないため、ステップS73において、車速センサ41の代用解除と共に、ステップS72と同様に移行禁止モードを解除する処理が実行される。
ステップS71の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が復帰することなく、診断時間が経過した場合、ステップS75で、出力回転数センサ52が故障していると判定されて、故障診断制御が終了する。
ステップS75で故障判定された場合は、故障警告部60によって故障が報知される。ただし、故障判定されたときに必ず報知しなくてもよく、例えば、連続する複数のドライビングサイクル(エンジンが始動してから停止するまでの期間)のいずれにおいても故障判定されたときに、故障の報知を行うようにしてもよい。
図10のフローチャートを参照しながら、移行禁止モード(図9のステップS67)の具体的な制御動作の一例について説明する。
図10に示す制御動作では、先ず、ステップS81で、ロックアップ制御部32によるロックアップ制御におけるロックアップ状態への移行指令の有無が判定される。ステップS81の判定は、ロックアップ制御部32による移行指令が出されるまで繰り返し実行される。
ステップS81の判定の結果、ロックアップ状態への移行指令が出されても、続くステップS82で、ロックアップ状態への移行指令はキャンセルされ、ロックアップクラッチ3dは非ロックアップ状態に維持される。
続くステップS83では、図9に示す故障診断制御において移行禁止モードの解除(ステップS72又はステップS73)が実行されたか否かが判定される。
ステップS83の判定の結果、移行禁止モードが継続されている場合は、ステップS81に戻り、移行保留モードが解除された場合は、ステップS84において、ロックアップ状態への移行指令の有無が再び判定される。
ステップS84の判定の結果、移行指令が無ければ、図10に示す制御動作は終了し、移行指令が出された場合は、ステップS85において、移行指令に従って、ロックアップ状態への移行が実行される。
以上のように、第3実施例によれば、故障診断中において、ロックアップ状態への移行は移行禁止モードの実行によって抑制され、ロックアップクラッチ3dが解放状態に維持されるため、リセットの実行(図4のステップS4)によってロックアップ用油圧制御弁53への通電が一時的に停止されても、これによってロックアップ制御に支障を来すことを抑制できる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、出力回転数センサ52の出力が停止したときに、故障診断を行う場合について説明したが、本発明は、出力停止以外の出力異常が生じたときに故障診断を行う場合にも、同様に適用することができる。
また、上述の実施形態では、故障診断制御(図5等参照)とリセット制御(図4参照)とが個別の制御動作として実行される場合について説明したが、本発明は、故障診断中にリセットが実行され得るものであれば、一連の制御動作の中で故障診断とリセットが実行される場合にも、同様に適用することができる。
さらに、上述の実施形態では、状態検出手段の一例として、変速機構8の出力回転数を検出する出力回転数センサ52を取り上げたが、本発明が適用される状態検出手段は、電力供給元がロックアップ用油圧制御手段と共通化されたものであり且つ一時的な通電停止によってリセットされるものであれば、出力回転数センサに限定されるものでなく、例えば、タービン回転数センサ、又は、自動変速機の作動油の温度を検出する油温センサ等であってもよい。