以下、本発明の実施の形態について説明する。
[車両の駆動系の全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係る自動変速機が搭載された車両の駆動系は、駆動源としてのエンジン1と、該エンジン1からトルクコンバータ3を介して動力が入力される変速機構8を有する自動変速機4と、変速機構8の出力により駆動されるディファレンシャル装置10とを備えている。
トルクコンバータ3は、エンジン出力軸2に連結されたポンプ3aと、該ポンプ3aに対向配置されて該ポンプ3aにより作動油を介して駆動されるタービン3bと、該ポンプ3aとタービン3bとの間に介設され、かつ、変速機ケース5にワンウェイクラッチ(図示せず)を介して支持されてトルク増大作用を行うステータ3cと、エンジン出力軸2とタービン3bとを直結するロックアップクラッチ3dとを備えている。タービン3bは、変速機構8の入力軸に連結されており、タービン3bの回転は、入力軸6を介して変速機構8に伝達されるようになっている。
変速機構8は、入力軸6に入力された回転を変速して、出力ギヤ9を介してディファレンシャル装置10へ出力し、ディファレンシャル装置10に伝達された回転は、車両の走行状況に応じた回転差となるように左右のドライブシャフト12に伝達され、これにより、各ドライブシャフト12に設けられた駆動輪14が駆動されるようになっている。
自動変速機4には、例えばロックアップクラッチ3dの制御(以下、「ロックアップ制御」ともいう)及び変速機構8の変速制御等、自動変速機4の各種動作を制御するTCM(Transmission Control Module)20が設けられている。また、自動変速機4には、変速機構8を構成する摩擦締結要素(図示せず)及びロックアップクラッチ3dを油圧制御する油圧制御装置50が設けられている。
油圧制御装置50は、変速制御用及びロックアップ制御用の油圧回路を構成するバルブボディ(図示せず)を備え、該バルブボディには、油路を切り換えるための切換弁、及び、油路を開閉したり油圧を調整したりする電磁式の油圧制御弁等が組み付けられている。油圧制御装置50に設けられる油圧制御弁には、変速機構8に設けられた各摩擦締結要素への油圧供給を制御する複数の変速用油圧制御弁と、ロックアップクラッチ3dへの油圧供給を制御するロックアップ用油圧制御弁53(図2参照)とが含まれる。油圧制御装置50は、TCM20と共にユニット化された状態で変速機ケース5に取り付けられている。
[自動変速機の制御システム]
図2に示すように、TCM20は、各種機器からの信号を入力するための入力処理部22と、入力処理部22に入力された信号に基づいて各種制御を実行する制御本体部24と、制御本体部24による各種指令信号を各種機器に出力するための出力処理部26と、車両に搭載されたバッテリから自動変速機4内の各種機器への電力供給を制御する電源制御部28とを備えている。
入力処理部22には、例えば車輪の回転数に基づいて車両の速度を検出する車速センサ41、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ42、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ43、例えば変速機構8の入力軸6の回転数に基づいてトルクコンバータ3のタービン3bの回転数を検出するタービン回転数センサ51、例えば出力ギヤ9の回転数に基づいて変速機構8の出力回転数を検出する出力回転数センサ52、及び、変速制御及びロックアップ制御に用いられる作動油の温度を検出する油温センサ54等からの信号が入力される。
出力回転数センサ52としては、例えば、出力ギヤ9と共に回転するパルスギヤの歯を指向するように配置された磁気センサが用いられる。この場合、出力回転数センサ52は、パルスギヤの回転に応じて変化する磁界の強さをアナログ信号として検出し、該アナログ信号の値を、設定されたスライスレベルとの比較によりパルスに変換して出力する。発生する磁界の強さは経年変化するが、これに応じてスライスレベルを適宜補正する補正制御によって、出力回転数センサ52の出力を正常に維持できる。
ただし、出力回転数センサ52の種類はこれに限定されるものでなく、何らかの補正制御を必要とする別の種類のセンサを用いてもよい。この場合、出力回転数センサ52の補正制御は、センサの種類に応じた適当な方法によって行われる。
制御本体部24は、油圧制御装置50の変速用油圧制御弁(図示せず)を制御することによって変速制御を行う変速制御部31と、油圧制御装置50のロックアップ用油圧制御弁53を制御することによってロックアップクラッチ3dの制御(ロックアップ制御)を行うロックアップ制御部32と、出力回転数センサ52の補正制御をリセットするリセット制御部33と、出力回転数センサ52の故障の有無を診断する故障診断部34とを備えている。
変速制御部31は、車両の前進走行中において、車速センサ41によって検出された車速、アクセル開度センサ42によって検出されたアクセル開度、及び、車速とアクセル開度に基づいて予め設定された変速マップに基づいて、変速制御を行う。変速が行われるときは、変速用油圧制御弁の制御によって、所定の摩擦締結要素を解放して別の摩擦締結要素を締結するように油圧制御される。変速制御部31による変速制御においては、出力回転数センサ52の出力値が適宜用いられる。
ロックアップ制御部32は、車両運転状態に応じてロックアップクラッチ3dを解放、スリップ又は締結するように、ロックアップ用油圧制御弁53の制御によってロックアップ制御を行う。ロックアップ制御の具体例については後に説明する。
リセット制御部33は、出力回転数センサ52の補正制御が何らかの原因によって正常に行えなくなることで、出力回転数センサ52の出力値がゼロに固定されるなどの出力異常が生じた場合に、電源制御部28から出力回転数センサ52への電力供給を一時的に停止することで、該センサ52を再起動させて、当該補正制御をリセットさせる。出力回転数センサ52が故障していなければ、リセットの実行後に新たに補正制御が開始されることで、出力回転数センサ52の出力値は正常な値に戻る。リセット制御部33によるリセット制御の具体的な制御動作については後に説明する。
ところで、出力回転数センサ52が故障している場合、リセット制御部33によるリセットを実行しても出力回転数センサ52の出力異常が続くことになるため、出力回転数センサ52を交換するなどのメンテナンスが必要になる。このような出力回転数センサ52の故障を検出するために、故障診断部34による故障診断制御が行われる。故障診断制御の具体的な制御動作については後に説明する。
出力処理部26は、ロックアップ制御部32による指令信号を、電源制御部28を経由してロックアップ用油圧制御弁53に出力する。また、出力処理部26は、リセット制御部33によるリセット指令信号を電源制御部28に出力する。さらに、故障診断部34によって出力回転数センサ52が故障していると判定された場合、出力処理部26は、表示又は音の一方又は両方によって出力回転数センサ52の故障を報知する故障警告部60に、故障を報知するための指令信号を出力する。
電源制御部28から自動変速機4に搭載された各種機器への電力供給経路は、電源制御部28から延びるメイン経路70と、該メイン経路70の先端から枝分かれした第1、第2、第3、第4サブ経路71,72,73,74を含む複数のサブ経路とで構成されている。
具体的に、電源制御部28は、メイン経路70及び第1サブ経路71からなる電力供給経路(特許請求の範囲における「第1経路」に相当)を介して出力回転数センサ52に、メイン経路70及び第2サブ経路72からなる電力供給経路(特許請求の範囲における「第2経路」に相当)を介してロックアップ用油圧制御弁53に、メイン経路70及び第3サブ経路73からなる電力供給経路を介してタービン回転数センサ51に、メイン経路70及び第4サブ経路74からなる電力供給経路を介して油温センサ54に、それぞれ電気的に接続されている。
つまり、電源制御部28は、バッテリからの電力を共通のメイン経路70を経由してタービン回転数センサ51、出力回転数センサ52、ロックアップ用油圧制御弁53及び油温センサ54へ供給する共通の電力供給元である。なお、電源制御部28は、変速制御に用いられる変速用油圧制御弁(図示せず)にも、メイン経路70を介して電気的に接続されており、該変速用油圧制御弁の電力供給元でもある。
このように、自動変速機4に搭載された複数の機器において、電源制御部28及びメイン経路70が共通化されているため、自動変速機4内の部品点数が削減されて、自動変速機4の小型化を図ることができる。
[ロックアップ制御]
ロックアップ制御部32は、ロックアップ用油圧制御弁53を制御することで、ロックアップクラッチ3dに供給される油圧を制御する。ロックアップ用油圧制御弁53の種類は限定されるものでないが、例えば、ノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブが油圧制御弁53として用いられる。ロックアップクラッチ3dの状態は、車両の走行状態および変速制御の状況等に応じて、油圧制御弁53による油圧制御によって解放状態、締結状態およびスリップ状態の間で適宜切り換えられる。
ロックアップクラッチ3dのスリップ制御では、油圧制御弁53による緻密な油圧制御によって、ロックアップクラッチ3dの締結力が緻密に制御される。具体的に、スリップ制御においては、例えば、ロックアップクラッチ3dの入力回転数としてのエンジン回転数とロックアップクラッチ3dの出力回転数としてのタービン回転数との差(以下、「差回転」ともいう)、又は、ロックアップクラッチ3dへの供給油圧の大きさ等の所定のパラメータが目標値になるように、油圧制御弁53の制御が緻密に行われる。
本明細書では、ロックアップクラッチ3dの解放状態を「非ロックアップ状態」といい、ロックアップクラッチ3dの締結状態およびスリップ状態を総称して「ロックアップ状態」という。ロックアップ制御部32は、車両走行状態等に基づいて、非ロックアップ状態とロックアップ状態との間で切り換えられるようにロックアップ制御を行う。
また、本明細書において、ロックアップクラッチ3dが非ロックアップ状態に制御される車両走行領域を「非ロックアップ領域」といい、ロックアップクラッチ3dがロックアップ状態に制御される車両走行領域を「ロックアップ領域」という。ロックアップ領域及び非ロックアップ領域は、車両走行状態を示す所定のパラメータに基づいて予め設定されている。
例えば、図3は、車速に基づいてロックアップ領域及び非ロックアップ領域を設定した制御マップの一例を示している。図3に示す例では、所定車速V1以上の走行領域がロックアップ領域に設定され、所定車速V1未満の走行領域が非ロックアップ領域に設定されている。つまり、この場合、車速が所定車速V1以上であることが、非ロックアップ状態からロックアップ状態へ移行するための条件となっている。
なお、図3に示す例では、車速のみに基づいてロックアップ領域及び非ロックアップ領域が設定されているが、これらの領域を設定するためのパラメータは、車速に限られるものでなく、例えば、車速とアクセル開度とに基づいて設定してもよいし、その他の1又は複数のパラメータに基づいて設定してもよい。また、非ロックアップ状態からロックアップ状態への移行条件は、必ずしも一定でなくてもよく、例えば作動油の温度等、何らかの条件に応じて適宜変更されてもよい。
[故障診断制御]
故障診断部34は、出力回転数センサ52の故障の有無を検出するための故障診断制御を行う。
図4に示すフローチャートを参照しながら、故障診断部34による故障診断制御の制御動作の一例について説明する。図4に示す制御動作は、エンジンが駆動されている間、故障判定されることによって制御動作が終了しない限り、常に繰り返し実行される。
先ず、ステップS1では、出力回転数センサ52及び車速センサ41からの各出力信号が読み込まれる。
次のステップS2では、所定の診断条件が成立したか否かが判定される。診断条件は、例えば、車速が所定車速(例えば16km/h)以上であることであり、ステップS2の判定は、ステップS1で読み込まれた車速の情報に基づいて行われる。このような車速条件を診断条件として設定することで、出力回転数センサ52が故障していなければ、出力値がある程度高い状態で診断が行われることになるため、故障の誤検出が抑制される。
ステップS2の判定の結果、診断条件が成立していなければリターンされ、診断条件が成立している場合のみ、続くステップS3の判定が行われる。
ステップS3では、ステップS1で読み込まれた出力回転数センサ52からの出力信号に基づいて、該出力回転数センサ52の出力が停止しているか否かが判定される。具体的に、パルス信号を出力するタイプの出力回転数センサ52を用いる場合に、ステップS3では、センサ52の出力が正常であれば数パルスが出力される程度の微小時間において、出力がゼロの状態が続くときに、出力回転数センサ52の出力が停止していると判定される。
ステップS3の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止していなければ、該センサ52が正常であると判定されて(ステップS10)、リターンされる。
一方、ステップS3の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止している場合、続くステップS4で、出力回転数センサ52の故障診断が開始される。この故障診断では、所定の診断時間に亘って出力回転数センサ52の出力が監視され、前記診断時間が経過するまでに出力が復帰すればセンサ52が正常であると判定され(ステップS10)、診断時間が経過しても出力が停止したままであればセンサ52が故障している判定される(ステップS11)。
また、ステップS3の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止している場合、診断の開始(ステップS4)と共に、ステップS5で、変速制御部31による変速制御において、出力回転数センサ52の出力値の代わりに、車速センサ41の出力値が用いられる。車速センサ41の出力値が代用されるときは、車速センサ41の出力値を演算することによって変速機構8の出力回転数が求められ、この値が変速制御に用いられる。
このように、故障診断の結果を待つことなく、診断の開始(ステップS4)と同時に車速センサ41の代用(ステップS5)が開始されることで、診断時間を長く設定しやすくなる。したがって、診断中に、リセット制御部33によるリセットが実行される可能性が高められるため、リセット後の出力状態に基づいて、出力回転数センサ52の故障の有無を精度よく判定することができる。
続くステップS6では、出力回転数センサ52の出力が停止しているか否かが再び判定される。なお、ステップS6の判定方法は、ステップS3の判定と同様である。
ステップS6の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が復帰していなければ、ステップS7で、診断の開始(ステップS4)から所定の診断時間が経過したか否かが判定される。
ステップS7の判定の結果、診断時間が経過していなければ、ステップS8で出力回転数センサ52の出力信号が再び読み込まれた後、この出力信号に基づいて、ステップS6の判定が再び行われる。以後、出力回転数センサ52の出力が復帰するか又は診断時間が経過するまでは、ステップS8で読み込まれた出力信号に基づいて、出力回転数センサ52の出力の有無が繰り返し判定される(ステップS6)。
ステップS6の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が復帰すれば、ステップS9で、車速センサ41の代用が解除されて、出力回転数センサ52の出力値を用いた変速制御が再開されると共に、ステップS10で、出力回転数センサ52が正常であると判定されて、リターンされる。
ステップS7の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が復帰することなく、診断時間が経過した場合、ステップS11で、出力回転数センサ52が故障していると判定されて、故障診断制御が終了する。
ステップS11で故障判定された場合は、故障警告部60によって故障が報知される。ただし、故障判定されたときに必ず報知しなくてもよく、例えば、連続する複数のドライビングサイクル(エンジンが始動してから停止するまでの期間)のいずれにおいても故障判定されたときに、故障の報知を行うようにしてもよい。
以上の故障診断制御によれば、所定の診断条件が成立し且つ出力回転数センサ52の出力が停止したときから所定の診断時間が経過するまで、故障診断が継続して行われるため、この診断中に、これと並行して行われる後述のリセット制御によって出力回転数センサ52の補正制御がリセットされることで、リセット後の出力状態に基づいて、出力回転数センサ52の故障の有無を精度よく判定することができる。
ところが、リセット制御部33によるリセットが実行されると、電源制御部28からの電力供給が一時的に停止されることから、出力回転数センサ52への通電だけでなくロックアップ用油圧制御弁53への通電も停止されるため、リセットの実行によってロックアップ制御に支障を来す可能性がある。この問題を解消するために、リセット制御部33は、以下のようにリセット制御を行う。
[リセット制御]
リセット制御部33によるリセット制御では、ロックアップクラッチ3dの状態が、仮にロックアップ用油圧制御弁53への電力供給が中断された場合にロックアップクラッチ3dの制御に支障を来すような所定の制御状態であるとき、リセットの実行が抑制される。
ここで、「所定の制御状態」として、具体的には様々な制御状態が考えられる。「所定の制御状態」の具体例としては、後述の第1実施例及び第2実施例のように、スリップ制御中においてロックアップクラッチ3dの状態を表す所定のパラメータの実値と目標値との差が所定値以上である制御状態、後述の第3実施例のようなロックアップ状態(スリップ状態及び締結状態)、又は、後述の第4実施例のように、非ロックアップ状態(解放状態)からロックアップ状態へ移行する状態等が挙げられる。
このようなロックアップクラッチ3dの制御状態において、リセットの実行が抑制されることで、このリセットによるロックアップ用油圧制御弁53への電力供給の一時停止を回避できるため、ロックアップクラッチ3dへの供給油圧の変動が抑制されて、ロックアップ制御の精度が低下することを抑制できる。
[リセット制御の制御動作]
以下、リセット制御の制御動作の具体例として、第1〜第4実施例について説明する。
[第1実施例]
図5に示すフローチャート及び図6に示すタイムチャートを参照しながら、第1実施例に係るリセット制御の制御動作について説明する。
図5に示す制御動作は、エンジンが駆動されている間、常に繰り返し実行される。
先ず、ステップS11では、出力回転数センサ52、車速センサ41、エンジン回転数センサ43及びタービン回転数センサ51からの各出力信号と、変速制御部31及びロックアップ制御部32による各制御信号とが読み込まれる。
次のステップS12では、ステップS11で読み込まれた出力回転数センサ52からの出力信号に基づいて、該出力回転数センサ52の出力が停止しているか否かが判定される。具体的に、パルス信号を出力するタイプの出力回転数センサ52を用いる場合に、ステップS12では、センサ52の出力が正常であれば数パルスが出力される程度の微小時間において、出力がゼロの状態が続くときに、出力回転数センサ52の出力が停止していると判定される。
ステップS12の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止していなければリターンされ、出力が停止している場合のみ、続くステップS13の判定が行われる。
ステップS13では、ステップS11で読み込まれた車速及び変速制御の状態に関する各情報に基づいて、所定のリセット条件が成立しているか否かが判定される。リセット条件は、例えば、非変速状態であり、且つ、車速が所定車速(例えば7km/h)以上であることである。
前者の条件は、リセットを実行したときに(ステップS16)、出力回転数センサ52への通電停止と共に変速用油圧制御弁への通電も停止されることによる不具合を回避するために設定されている。つまり、リセット時に変速用油圧制御弁への通電が停止されると、変速のために締結および解放される各摩擦締結要素に供給される油圧が変動し、正常な油圧制御を行えなくなるが、当該条件が設定されていることによって変速中のリセットが回避されるため、リセットの実行によって変速制御に支障を来すことを回避できる。
また、後者の車速条件が設定されることによって、出力回転数センサ52が故障していなくても出力が停止され得る停車状態又は極低車速状態において、不必要なリセットの実行を回避できる。さらに、この車速条件は、上述の診断条件(例えば16km/h)よりも低速に設定されることで、故障診断が行われるときにリセットが実行される可能性が高められ、リセット後の出力状態に基づいて出力回転数センサ52の故障の有無を精度よく判定できる。
ただし、リセット条件は、上記の条件に限定されるものでなく、故障診断中にリセットが実行され得るようなものであれば、任意のリセット条件を設定できる。
ステップS13の判定の結果、リセット条件が成立していなければリターンされ、リセット条件が成立している場合のみ、続くステップS14の判定が行われる。
ステップS14では、ステップS11で読み込まれたロックアップ制御の状態に関する情報に基づいて、ロックアップクラッチ3dのスリップ制御が実行されているか否かが判定される。
ステップS14の判定の結果、スリップ制御が実行されていなければ、ステップS16に進んで、出力回転数センサ52のリセットが実行される。具体的に、ステップS16では、電源制御部28からの電力供給が一時的に停止されることで、出力回転数センサ52への通電が一時的に停止される。これにより、出力回転数センサ52が再起動されることで、出力回転数センサ52の出力に対する上記補正制御がリセットされる。
ステップS16のリセットの実行後には、出力回転数センサ52の補正制御が新たに開始されるため、該センサ52が故障していなければ正常な出力状態に戻る。したがって、故障診断部34による上述の故障診断において、リセット後の正常な出力状態に基づいて、正確な判定を行うことができる。
一方、ステップS14の判定の結果、スリップ制御が実行されている場合、次のステップS15の判定がさらに実行される。
ステップS15の判定は、ステップS11で読み込まれたエンジン回転数及びタービン回転数の情報に基づいて行われる。ステップS15では、ロックアップクラッチ3dの入力回転数(エンジン回転数)と出力回転数(タービン回転数)との差(差回転)に関して、実際の差回転R1とスリップ制御における目標差回転Roとの差|Ro−R1|が所定値X未満であるか否かが判定される。
ステップS15の判定の結果、実際の差回転R1と目標差回転Roとの差|Ro−R1|が所定値X未満であれば、上述のリセットが実行される(ステップS16)。このとき、ロックアップクラッチ3dの制御状態は、所望の締結力での安定したスリップ状態となっているため、リセットによってロックアップ用油圧制御弁53への通電が一時的に停止されても、ロックアップクラッチ3dのスリップ制御に大きな影響は及ばない。
一方、ステップS15の判定の結果、実際の差回転R1と目標差回転Roとの差|Ro−R1|が所定値X以上であれば、エンジン回転数センサ43及びタービン回転数センサ51の出力信号が再び読み込まれ(ステップS17)、これらの出力信号に基づいて、ステップS15の判定が再び実行される。
ステップS15の判定は、実際の差回転R1と目標差回転Roとの差|Ro−R1|が所定値X未満となるまで、ステップS17で読み込まれた情報に基づいて繰り返し実行され、この間、リセット(ステップS16)は実行されることがない。
ロックアップクラッチ3dのスリップ制御中において、実際の差回転R1と目標差回転Roとの差|Ro−R1|が所定値X以上である場合は、実際の差回転R1を素早く目標差回転Roに近づけるように緻密な油圧制御が求められるが、この制御状態では、上記のように出力回転数センサ52のリセットが抑制されることで、スリップ制御の精度を良好に維持しながら、実際の差回転R1を素早く目標差回転Roに近づけることができる。
また、実際の差回転R1が目標差回転Roに近づくと、直ちにステップS16のリセットが実行されることで、上述の故障診断制御において、リセット後の出力回転数センサ52の出力状態に基づいて、該センサ52の故障の有無を精度よく判定できる。
図6は、図4に示す故障診断制御及び図5に示すリセット制御を行いながらロックアップ制御を行う場合における各要素の経時的変化の一例を示すタイムチャートである。
図6に示す時刻t0の時点において、ロックアップクラッチ3dは非ロックアップ状態(解放状態)であり、その後、時刻t1に、ロックアップ状態に移行されている。
その後、時刻t2の時点で、符号aに示すように何らかの原因によって出力回転数センサ52の出力が停止すると、符号bに示すように出力回転数センサ52の故障診断が開始されるとともに、符号cに示すように、出力回転数センサ52の出力値に代わって車速センサ41の出力値が変速制御に用いられる。これにより、出力回転数センサ52の故障診断の終了を待つことなく、車速センサ41を代用した変速制御が開始される。
このとき、符号dに示すように、ロックアップクラッチ3dの制御状態は、実際の差回転R1と目標差回転Roとの差|Ro−R1|が所定値X未満であるという差回転条件(図5のステップS15)を満たさないスリップ状態となっている。そのため、符号e及びfに示すように仮に当該差回転条件を満たす制御状態となっていれば出力回転数センサ52のリセットが実行されるべきタイミングt3になっても、リセットは実行されない。
したがって、ロックアップ用油圧制御弁53への通電が中断されることなく、ロックアップ制御が精度よく行われることで、実際の差回転R1を目標差回転Roに素早く近づけることができる。
符号gに示すように、時刻t4に上記差回転条件(図5のステップS15)が成立すると、符号hに示すように出力回転数センサ52のリセットが速やかに実行されて、リセット後の出力状態に基づいて、該センサ52の故障の有無が精度よく判定される。
出力回転数センサ52が故障していなければ、リセット完了後の時刻t5に、符号iに示すように出力が復帰し、符号jに示すように、車速センサ41の代用が解除されて、出力回転数センサ52の出力値を用いた変速制御が再開される。
一方、出力回転数センサ52が故障している場合は、符号kに示すように、リセット後も出力が復帰せず、符号lに示すように、所定の診断時間が経過する時刻t6に故障判定される。
[第2実施例]
図7に示すフローチャートを参照しながら、第2実施例に係るリセット制御の制御動作について説明する。
図7に示す制御動作は、エンジンが駆動されている間、常に繰り返し実行される。
先ず、ステップS21では、出力回転数センサ52、車速センサ41及び油温センサ54からの各出力信号と、変速制御部31及びロックアップ制御部32による各制御信号とが読み込まれる。
次のステップS22では、ステップS21で読み込まれた出力回転数センサ52からの出力信号に基づいて、該出力回転数センサ52の出力が停止しているか否かが判定される。ステップS22の判定は、第1実施例のステップS12(図5参照)の判定と同様に行われる。
ステップS22の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止していなければリターンされ、出力が停止している場合のみ、続くステップS23の判定が行われる。
ステップS23では、ステップS21で読み込まれた車速及び変速制御の状態に関する各情報に基づいて、所定のリセット条件が成立しているか否かが判定される。リセット条件は第1実施例と同様に設定される。
ステップS23の判定の結果、リセット条件が成立していなければリターンされ、リセット条件が成立している場合のみ、続くステップS24の判定が行われる。
ステップS24では、ステップS21で読み込まれたロックアップ制御の状態に関する情報に基づいて、ロックアップクラッチ3dのスリップ制御が実行されているか否かが判定される。
ステップS24の判定の結果、スリップ制御が実行されていなければ、ステップS26に進んで、出力回転数センサ52のリセットが実行される。ステップS26のリセットは、第1実施例のステップS16(図5参照)と同様に実行される。これにより、リセット後の正常な出力状態に基づいて、出力回転数センサ52の故障の有無を精度よく判定できる。
一方、ステップS24の判定の結果、スリップ制御が実行されている場合、次のステップS25の判定がさらに実行される。
ステップS25では、ロックアップクラッチ3dに供給される実際の油圧H1とスリップ制御における目標油圧Hoとの差|Ho−H1|が所定値Y未満であるか否かが判定される。このとき、実際の油圧H1は、ステップS21で読み込まれた油温、及び、ロックアップ制御部32により制御されるロックアップ用油圧制御弁53の出力圧等に基づいて算出される。ただし、実際の油圧H1は、油圧センサによって検出されるようにしてもよい。
ステップS25の判定の結果、実際の油圧H1と目標油圧Hoとの差|Ho−H1|が所定値Y未満であれば、上述のリセットが実行される(ステップS26)。このとき、ロックアップクラッチ3dの制御状態は、所望の締結力での安定したスリップ状態となっているため、リセットによってロックアップ用油圧制御弁53への通電が一時的に停止されても、ロックアップクラッチ3dのスリップ制御に大きな影響は及ばない。
一方、ステップS25の判定の結果、実際の油圧H1と目標油圧Hoとの差|Ho−H1|が所定値Y以上であれば、油温センサ54の検出値及びロックアップ制御部32により制御されるロックアップ用油圧制御弁53の出力圧の情報が再び読み込まれ(ステップS27)、これらの値を用いて算出された油圧H1に基づいて、ステップS25の判定が再び実行される。
ステップS25の判定は、実際の油圧H1と目標油圧Hoとの差|Ho−H1|が所定値Y未満となるまで、ステップS27で読み込まれた情報に基づいて繰り返し実行され、この間、リセット(ステップS26)は実行されることがない。
ロックアップクラッチ3dのスリップ制御中において、実際の油圧H1と目標油圧Hoとの差|Ho−H1|が所定値Y以上である場合は、実際の油圧H1を素早く目標油圧Hoに近づけるように緻密な油圧制御が求められるが、この制御状態では、出力回転数センサ52のリセットが抑制されることで、スリップ制御の精度の低下を抑制しつつ、実際の油圧H1を素早く目標油圧Hoに近づけることができる。
また、実際の油圧H1が目標油圧Hoに近づくと、直ちにステップS26のリセットが実行されることで、上述の故障診断制御において、リセット後の出力回転数センサ52の出力状態に基づいて、該センサ52の故障の有無を精度よく判定できる。
[第3実施例]
図8に示すフローチャートを参照しながら、第3実施例に係るリセット制御の制御動作について説明する。
図8に示す制御動作は、エンジンが駆動されている間、常に繰り返し実行される。
先ず、ステップS31では、出力回転数センサ52及び車速センサ41からの各出力信号と、変速制御部31及びロックアップ制御部32による各制御信号とが読み込まれる。
次のステップS32では、ステップS31で読み込まれた出力回転数センサ52からの出力信号に基づいて、該出力回転数センサ52の出力が停止しているか否かが判定される。ステップS32の判定は、第1実施例のステップS12(図5参照)の判定と同様に行われる。
ステップS32の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止していなければリターンされ、出力が停止している場合のみ、続くステップS33の判定が行われる。
ステップS33では、ステップS31で読み込まれた車速及び変速制御の状態に関する各情報に基づいて、所定のリセット条件が成立しているか否かが判定される。リセット条件は第1実施例と同様に設定される。
ステップS33の判定の結果、リセット条件が成立していなければリターンされ、リセット条件が成立している場合のみ、続くステップS34の判定が行われる。
ステップS34では、ステップS31で読み込まれたロックアップ制御の状態に関する情報に基づいて、ロックアップクラッチ3dが非ロックアップ状態であるか否かが判定される。
ステップS34の判定の結果、非ロックアップ状態であれば、ステップS36に進んで、出力回転数センサ52のリセットが実行される。このとき、ロックアップクラッチ3dは解放状態であるため、リセットによってロックアップ用油圧制御弁53への通電が一時的に停止されても、解放状態に確実に維持される。
ステップS36のリセットは、第1実施例のステップS16(図5参照)と同様に実行される。これにより、リセット後の正常な出力状態に基づいて、出力回転数センサ52の故障の有無を精度よく判定できる。
一方、ステップS34の判定の結果、ロックアップ状態であれば、ステップS35で、出力回転数センサ52のリセットが禁止されると共に、ロックアップ制御部32による制御信号が再び読み込まれて、ステップS34の判定が再び実行される。
ステップS34の判定は、ロックアップクラッチ3dが非ロックアップ状態となるまで繰り返し実行され、この間、リセットは常に禁止される(ステップS35)。
このように、出力回転数センサ52のリセット時にロックアップ用油圧制御弁53への通電停止によってロックアップクラッチ3dの締結力が低下する可能性があるスリップ状態又は締結状態では、出力回転数センサ52のリセットが抑制されることで、締結力の低下によるロックアップ制御の精度低下を抑制することができる。
また、ロックアップ状態から非ロックアップ状態へ移行されると、直ちにステップS36のリセットが実行されることで、上述の故障診断制御において、リセット後の出力回転数センサ52の出力状態に基づいて、該センサ52の故障の有無を精度よく判定できる。
[第4実施例]
図9に示すフローチャートを参照しながら、第4実施例に係るリセット制御の制御動作について説明する。
図9に示す制御動作は、エンジンが駆動されている間、常に繰り返し実行される。
先ず、ステップS41では、出力回転数センサ52及び車速センサ41からの各出力信号と、変速制御部31及びロックアップ制御部32による各制御信号とが読み込まれる。
次のステップS42では、ステップS41で読み込まれた出力回転数センサ52からの出力信号に基づいて、該出力回転数センサ52の出力が停止しているか否かが判定される。ステップS42の判定は、第1実施例のステップS12(図5参照)の判定と同様に行われる。
ステップS42の判定の結果、出力回転数センサ52の出力が停止していなければリターンされ、出力が停止している場合のみ、続くステップS43の判定が行われる。
ステップS43では、ステップS41で読み込まれた車速及び変速制御の状態に関する各情報に基づいて、所定のリセット条件が成立しているか否かが判定される。リセット条件は第1実施例と同様に設定される。
ステップS43の判定の結果、リセット条件が成立していなければリターンされ、リセット条件が成立している場合のみ、続くステップS44の判定が行われる。
ステップS44では、ステップS41で読み込まれたロックアップ制御部32の制御信号に基づいて、非ロックアップ状態からロックアップ状態へ移行させる指令がロックアップ制御部32からロックアップ用油圧制御弁53へ出されているか否かが判定される。
ステップS44の判定の結果、ロックアップ状態への移行指令が無ければ、ステップS46に進んで、出力回転数センサ52のリセットが実行される。このとき、ロックアップクラッチ3dは解放状態に維持されるため、リセットによってロックアップ用油圧制御弁53への通電が一時的に停止されても、ロックアップ制御に悪影響が及ぶことはない。
ステップS46のリセットは、第1実施例のステップS16(図5参照)と同様に実行される。これにより、リセット後の正常な出力状態に基づいて、出力回転数センサ52の故障の有無を精度よく判定できる。
一方、ステップS44の判定の結果、ロックアップ状態への移行指令が出されていれば、続くステップS45で、ロックアップ状態への移行指令が出されてから所定時間経過したか否かが判定される。ステップS45の判定は、所定時間が経過するまで繰り返し実行され、所定時間が経過すると、リセットが実行される(ステップS46)。
ステップS45の所定時間は、例えば、非ロックアップ状態からロックアップ状態への移行が開始されたときから、該移行が完了して、安定したスリップ状態又は締結状態が実現されるときまでに要する時間に設定される。
これにより、ロックアップ状態への移行によってロックアップクラッチ3dの締結力を増大させる制御状態では、出力回転数センサ52のリセットが抑制されることで、ロックアップ用油圧制御弁53への通電停止によるロックアップ制御の精度低下を抑制することができる。
また、ロックアップ状態への移行が完了し、安定した制御状態に達すると、直ちにステップS46のリセットが実行されることで、上述の故障診断制御において、リセット後の出力回転数センサ52の出力状態に基づいて、該センサ52の故障の有無を精度よく判定できる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、出力回転数センサ52の出力が停止したときに、リセットを行う場合について説明したが、本発明は、出力停止以外の出力異常が生じたときにリセットを行う場合にも、同様に適用することができる。
また、上述の実施形態では、故障診断制御(図4参照)とリセット制御(図5等参照)とが個別の制御動作として実行される場合について説明したが、本発明は、一連の制御動作の中で故障診断とリセットが実行される場合にも、同様に適用することができる。
さらに、上述の実施形態では、状態検出手段の一例として、変速機構8の出力回転数を検出する出力回転数センサ52を取り上げたが、本発明が適用される状態検出手段は、電力供給元がロックアップ用油圧制御手段と共通化されたものであり且つ一時的な通電停止によってリセットされるものであれば、出力回転数センサに限定されるものでなく、例えば、タービン回転数センサ、又は、自動変速機の作動油の温度を検出する油温センサ等であってもよい。