JP6156110B2 - ナノコンポジット及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ナノコンポジット及びその製造方法に関する。更に詳しくは、MgXで表されるマグネシウム化合物を用いたナノコンポジット及びその製造方法に関する。
マグネシウムシリサイド(MgSi)をはじめとするマグネシウム化合物は、熱電変換材料として機能することが知られている。また、一般に、複数種の相が含まれる材料において、これらの相がμmサイズで含まれる場合に比べて、より小さなnmサイズで含まれる方が、各種の特性が向上する場合がある。このため、上記マグネシウム化合物が、nmサイズの相として含まれたナノコンポジットの製造が期待されている。しかしながら、マグネシウム化合物をnmサイズの相として材料内に含有させることは容易ではなく、従来、限られた条件下でしか達成されていない。この技術に関して下記特許文献1が知られている。
特開2012−253229号公報
上記特許文献1には、ナノ微粒子のMgOと、μmサイズのMg(Si,Ge)とをメカニカルミリングを用いて混合することで、ナノコンポジットを製造する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1の方法では、出発原料としてナノ微粒子を用いる必要がある。ナノ微粒子は、原料としては高価であるとともに、取り扱いが難しいという側面があり、その改良が求められる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、従来に比べてより大きな粒径の原料を用いて製造することができるナノコンポジット及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
請求項1に記載のナノコンポジットは、
A相とB相とD相とのみを有するナノコンポジットであり、
前記A相がMg Si 1−α1 Sn α1であり、
前記B相がMg Sn 1−β1 Si β1であり、
前記D相がSiであり、
前記α1は、0≦α1≦0.1であり、
前記β1は、0≦β1≦0.1であることを要旨とする。
請求項2に記載のナノコンポジットは、請求項1に記載のナノコンポジットが、熱電変換材料であることを要旨とする。
請求項に記載のナノコンポジットの製造方法は、
請求項1又は2に記載のナノコンポジットの製造方法であって、
Mg Si粉末とSn粉末とを含む混合粉末をミリングして原料粉末を得るミリング工程と、前記原料粉末を焼成する焼成工程と、を備えることを要旨とする。
本発明のナノコンポジットは、A相とB相とD相とのみを有するナノコンポジットであり、A相がMg Si 1−α1 Sn α1であり、B相がMg Sn 1−β1 Si β1であり、D相がSiであり、α1は、0≦α1≦0.1であり、β1は、0≦β1≦0.1である。
この構成のナノコンポジットは、従来に比べてより大きな粒径の原料を用いて製造することができる。
請求項2に記載のナノコンポジットは、熱電変換材料である。このナノコンポジットは、各相がμmサイズで含まれた材料や、各相が各々単独で含まれた材料に比べて、より優れた熱電特性を発揮できる。
本発明のナノコンポジットの製造方法は、Mg Si粉末とSn粉末とを含む混合粉末をミリングして原料粉末を得るミリング工程と、原料粉末を焼成する焼成工程と、を備える。
この構成によれば、上記A相と上記B相と上記D相とを有するナノコンポジットを、従来に比べてより大きな粒径の原料を用いて製造することができる。
実施例5に係る混合粉末と原料粉末とのX線回折チャートである。 実施例1−4に係る原料粉末のX線回折チャートである。 実施例5に係るナノコンポジットのX線回折チャートである。 実施例1−4に係るナノコンポジットのX線回折チャートである。 実施例5に係るナノコンポジットを電子顕微鏡により拡大した画像である。 実施例1−5に係るナノコンポジットの熱電特性を示すグラフである。
以下、本発明を、図も参照しながら詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
[1]ナノコンポジット
ナノコンポジットは、A相とB相とD相とを有するナノコンポジットであり、
A相がMg1−α1(Y1−α2−α3 α2 α3α1であり、
B相がMg1−β1(X1−β2−β3 β2 β3β1であり、
D相がXであり、
X、Y、Z及びZは、各々、Si、Ge、Sn又はPbであり、
XとYとZとZとが異なり、
α1は、0≦α1≦0.1であり、
α2は、0≦α2≦0.5であり、
α3は、0≦α3≦0.5であり、
β1は、0≦β1≦0.1であり、
β2は、0≦β2≦0.5であり、
β3は、0≦β3≦0.5であることができ、
本発明では、A相とB相とD相とのみを有するナノコンポジットであり、
A相がMg Si 1−α1 Sn α1 であり、
B相がMg Sn 1−β1 Si β1 であり、
D相がSiであり、
α1は、0≦α1≦0.1であり、
β1は、0≦β1≦0.1である
即ち、A相、B相及びD相の各相がnmサイズで含まれたナノコンポジットとなる。本発明のナノコンポジットでは、A相、B相及びD相のうち、少なくとも2種の相がnmサイズの大きさである。例えば、A相とB相と2種の相がnmサイズの大きさであるナノコンポジットが挙げられる。また、A相とB相とD相との3相がnmサイズの大きさであるナノコンポジットが挙げられる。尚、nmサイズとは、500nm以下(通常、1nm以上)の大きさであることを意味する。
更に、各相は、互いに混在されていることが好ましい。即ち、互いに分散して含まれていることが好ましい。即ち、nmサイズのA相が寄り集まって形成された領域と、nmサイズのB相が寄り集まって形成された領域と、が存在するよりも、nmサイズのA相とnmサイズのB相とが、混在されていることが好ましい。
各相の大きさは、各々500nm以下の大きさであればよいが、例えば、1〜500nmとすることができる。更には、10〜300nmとすることができ、特に20〜100nmとすることができる。
尚、本発明のナノコンポジットには、500nmを超える相が含まれてもよいが、通常、その面積割合は10%以下である(後述する実施例と同様の方法で観察した画面上での面積割合)。
ナノコンポジットは、α2、α3、β2且つβ3の各々が、0であるか否かによって区別することができる。具体的には、下記(1)〜下記(3)に分けることができる。
(1)α2=0、α3=0、β2=0且つβ3=0であるナノコンポジット
(2)α2≠0、α3=0、β2≠0且つβ3=0であるナノコンポジット
(3)α2≠0、α3≠0、β2≠0且つβ3≠0であるナノコンポジット
上記(1)α2=0、α3=0、β2=0且つβ3=0である場合、ナノコンポジットは、
A相:Mg1−α1α1(0≦α1≦0.1)、
B相:Mg1−β1β1(0≦β1≦0.1)、
D相:Xであり、
X及びYは、各々、Si、Ge、Sn又はPbであり、XとYとが異なる。
即ち、(1)A相、B相、D相を有するナノコンポジットとしては下記(1−1)〜(1−12)の形態が挙げられる。
(1−1)
A相:MgSi1−α1Geα1、B相:MgGe1−β1Siβ1、D相:Si
(1−2)
A相:MgSi1−α1Geα1、B相:MgGe1−β1Siβ1、D相:Ge
(1−3)
A相:MgSi1−α1Snα1、B相:MgSn1−β1Siβ1、D相:Si
(1−4)
A相:MgSi1−α1Snα1、B相:MgSn1−β1Siβ1、D相:Sn
(1−5)
A相:MgSi1−α1Pbα1、B相:MgPb1−β1Siβ1、D相:Si
(1−6)
A相:MgSi1−α1Pbα1、B相:MgPb1−β1Siβ1、D相:Pb
(1−7)
A相:MgGe1−α1Snα1、B相:MgSn1−β1Geβ1、D相:Ge
(1−8)
A相:MgGe1−α1Snα1、B相:MgSn1−β1Geβ1、D相:Sn
(1−9)
A相:MgGe1−α1Pbα1、B相:MgPb1−β1Geβ1、D相:Ge
(1−10)
A相:MgGe1−α1Pbα1、B相:MgPb1−β1Geβ1、D相:Pb
(1−11)
A相:MgSn1−α1Pbα1、B相:MgPb1−β1Snβ1、D相:Sn
(1−12)
A相:MgSn1−α1Pbα1、B相:MgPn1−β1Snβ1、D相:Pb
これらの(1−1)〜(1−12)の形態のなかでは、(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−5)、(1−7)、(1−9)が好ましい。これらの形態は、熱電変換材料としての応用の観点から好ましい。
これらのナノコンポジットは、後述するように、MgX粉末とY粉末とを含む混合粉末をミリングして得られた原料粉末を焼成して得ることができる。
また、上記(2)α2≠0、α3=0、β2≠0且つβ3=0である場合、ナノコンポジットは、
A相:Mg1−α1(Y1−α2 α2α1
B相:Mg1−β1(X1−β2 β2β1
D相:Xであり、
X、Y及びZは、各々、Si、Ge、Sn又はPbであり、XとYとZとが異なり、0≦α1≦0.1、0<α2≦0.5、0≦β1≦0.1、0<β2≦0.5である。具体的には、下記(2−1)及び下記(2−2)が例示される。
(2−1)α2≠0、α3=0、β2≠0且つβ3=0であるナノコンポジットは、例えば、MgX粉末とY粉末とZ粉末とを用いた場合に得られる。このナノコンポジットは、下記A相、下記B相及び下記D相の少なくとも3相を有し、通常、下記C相を更に有する。即ち、下記A相〜下記D相の4相がnmサイズで含まれたナノコンポジットである。
A相:Mg1−α1(Y1−α2 α2α1
B相:Mg1−β1(X1−β2 β2β1
C相:Mg 1−γ1(X1−γ2γ2γ1
D相:X
但し、X、Y及びZは、各々、Si、Ge、Sn又はPbであり、XとYとZとが異なる。また、0≦α1≦0.1、0<α2≦0.5、0≦β1≦0.1、0<β2≦0.5、0≦γ1≦0.1、0<γ2≦0.5である。
より具体的には、MgSi粉末とMg2Ge粉末とSn粉末とを用いた場合の、下記A相〜下記D相の4相を有するナノコンポジットが挙げられる。
A相:MgSi1−α1(Ge1−α2Snα2α1
B相:MgGe1−β1(Si1−β2Snβ2β1
C相:MgSn1−γ1(Si1−γ2Geγ2γ1
D相:Si
(2−2)α2≠0、α3=0、β2≠0且つβ3=0であるナノコンポジットは、更に、例えば、MgX粉末とMgY粉末とZ粉末とを含む混合粉末を用いた場合に得られる。このナノコンポジットは、下記A相、下記B相及び下記D相の少なくとも3相を有し、通常、下記C相及び下記E相を更に有する。即ち、下記A相〜下記E相の5相がnmサイズで含まれたナノコンポジットである。
A相:Mg1−α1(Y1−α2 α2α1
B相:Mg1−β1(X1−β2 β2β1
C相:Mg 1−γ1(X1−γ2γ2γ1
D相:X
E相:Y
但し、X、Y及びZは、各々、Si、Ge、Sn又はPbであり、XとYとZとが異なる。また、0≦α1≦0.1、0<α2≦0.5、0≦β1≦0.1、0<β2≦0.5、0≦γ1≦0.1、0<γ2≦0.5である。
より具体的には、MgSi粉末とMg2Ge粉末とSn粉末とを用いた場合の、下記A相〜下記E相の5相を有するナノコンポジットが挙げられる。
A相:MgSi1−α1(Ge1−α2Snα2α1
B相:MgGe1−β1(Si1−β2Snβ2β1
C相:MgSn1−γ1(Si1−γ2Geγ2γ1
D相:Si
E相:Ge
更に、上記(3)α2≠0、α3≠0、β2≠0且つβ3≠0である場合、ナノコンポジットは、
A相:Mg1−α1(Y1−α2−α3 α2 α3α1
B相:Mg1−β1(X1−β2−β3 β2 β3β1
D相:Xであり、
X、Y、Z及びZは、各々、Si、Ge、Sn又はPbであり、XとYとZとZとが異なり、0≦α1≦0.1、0≦α2≦0.5、0≦α3≦0.5、0≦β1≦0.1、0≦β2≦0.5、0≦β3≦0.5である。具体的には、下記(3−1)及び下記(3−2)が例示される。
(3−1)α2≠0、α3≠0、β2≠0且つβ3≠0であるナノコンポジットは、例えば、MgX粉末とY粉末とZ粉末とZ粉末とを含む混合粉末を用いた場合に得られる。このナノコンポジットは、下記A相、下記B相及び下記D相の少なくとも3相を有し、通常、下記C1相及び下記C2相を更に有する。即ち、下記A相〜下記D相の5相がnmサイズで含まれたナノコンポジットである。
A相:Mg1−α1(Y1−α2−α3 α2 α3α1
B相:Mg1−β1(X1−β2−β3 β2 β3β1
C1相:Mg 1−γ1(X1−γ2−γ3γ2 β3γ1
C2相:Mg 1−δ1(X1−δ2−δ3δ2 δ3δ1
D相:X
但し、X、Y、Z及びZは、各々、Si、Ge、Sn又はPbであり、XとYとZとZとが異なる。また、0≦α1≦0.1、0<α2≦0.5、0<α3≦0.5、0≦β1≦0.1、0<β2≦0.5、0<β3≦0.5、0≦γ1≦0.1、0<γ2≦0.5、0<γ3≦0.5、0≦δ1≦0.1、0<δ2≦0.5、0<δ3≦0.5である。
より具体的には、MgSi粉末とGe粉末とSn粉末とPb粉末とを用いた場合の、下記A相〜下記D相の5相有するナノコンポジットが挙げられる。
A相:MgSi1−α1(Ge1−α2Snα2Pbα3α1
B相:MgGe1−β1(Si1−β2Snβ2Pbβ3β1
C1相:MgSn1−γ1(Si1−γ2Geγ2Pbγ3γ1
C2相:MgPb1−δ1(Si1−δ2Geδ2Snδ3δ1
D相:Si
(3−2)α2≠0、α3≠0、β2≠0且つβ3≠0であるナノコンポジットは、更に、例えば、MgX粉末とMgY粉末とZ粉末とZ粉末とを含む混合粉末を用いた場合に得られる。このナノコンポジットは、下記A相、下記B相及び下記D相の少なくとも3相を有し、通常、下記C1相、下記C2相、下記E相を更に有する。即ち、下記A相〜下記E相の6相がnmサイズで含まれたナノコンポジットである。
A相:Mg1−α1(Y1−α2−α3 α2 α3α1
B相:Mg1−β1(X1−β2−β3 β2 β3β1
C1相:Mg 1−γ1(X1−γ2−γ3γ2 β3γ1
C2相:Mg 1−δ1(X1−δ2−δ3δ2 δ3δ1
D相:X
E相:Y
但し、X、Y、Z及びZは、各々、Si、Ge、Sn又はPbであり、XとYとZとZとが異なる。また、0≦α1≦0.1、0<α2≦0.5、0<α3≦0.5、0≦β1≦0.1、0<β2≦0.5、0<β3≦0.5、0≦γ1≦0.1、0<γ2≦0.5、0<γ3≦0.5、0≦δ1≦0.1、0<δ2≦0.5、0<δ3≦0.5である。
より具体的には、MgSi粉末とMgGe粉末とSn粉末とPb粉末とを用いた場合の、下記A相〜下記E相の6相有するナノコンポジットが挙げられる。
A相:MgSi1−α1(Ge1−α2Snα2Pbα3α1
B相:MgGe1−β1(Si1−β2Snβ2Pbβ3β1
C1相:MgSn1−γ1(Si1−γ2Geγ2Pbγ3γ1
C2相:MgPb1−δ1(Si1−δ2Geδ2Snδ3δ1
D相:Si
E相:Ge
本発明のナノコンポジットにおいて、MgとMg以外の元素との割合は特に限定されないが、Mg:Mg以外の元素の比において、50:50〜67:33が好ましい。この範囲では、MgX及びMgY等の複合化による熱電特性向上の効果を得ることができる。この熱電特性向上の効果がより顕著に得られるという観点では、Mg:Mg以外の元素の比は、55:45〜66:34がより好ましい。尚、上記「Mg:Mg以外の元素の比」は、α2=0、α3=0、β2=0且つβ3=0の場合は「Mg:(X+Y)の比」となる。
本発明のナノコンポジットにおいて、XとX以外の元素(Mgを除く)との割合は特に限定されないが、X:X以外の元素の比において、50:50〜99:1が好ましい。この範囲では、MgX及びMgY等の複合によってより効果的に熱電特性を向上させることができる。更に、この熱電特性をより効果的に向上させる観点から、X:X以外の元素の比は、60:40〜95:5がより好ましい。尚、上記「X:X以外の元素の比」は、α2=0、α3=0、β2=0且つβ3=0の場合には、X:Yの比である。
A相、B相、及び、D相の各相は、各々、結晶相であってもよく、非晶相であってもよい。通常、少なくとも、A相及びB相は、結晶相である。更に、前述のC相や、C1相及びC2相を有する場合には、これらの相も結晶相である。これらの相が結晶相であることで優れた熱電特性を得ることができる。これらの相が結晶相であるか否かは、後述する実施例に記載するX回折測定により知ることができる。一方、D相は、結晶相であってもよく非晶相であってもよい。また、前述のE相を有する場合には、この相も、結晶相であってもよく非晶相であってもよい。
また、ナノコンポジットは、Sb、Bi、Ga、Al、Li、Na及びAgの群から選ばれる1種又は2種以上の元素をドーパントとして含むことができる。これらの元素のドーピングにより、本発明のナノコンポジットの電気導電性を向上させることができる。ドーパントのうちSb、Bi、GaはA相のX及びB相のYに置換して含まれる。また、ドーパントのうちAl、Li、Na、Agは、A相のMgに置換して含まれる。従って、本発明のナノコンポジットは、厳密には以下のように表すことができる。
A相:(Mg1−α5 α51−α1(Y1−α2−α3−α4 α2 α3 α4α1
B相:(Mg2−β5 β51−β1(X1−β2−β3−β4 β2 β3 β4β1
D相:X、
X、Y、Z及びZは、各々、Si、Ge、Sn又はPbであり、
XとYとZとZとが異なり、
Z3は、Sb、Bi又はGaであり、
Z4は、Al、Li、Na又はAgであり、
α1は、0≦α1≦0.1であり、
α2は、0≦α2≦0.5であり、
α3は、0≦α3≦0.5であり、
β1は、0≦β1≦0.1であり、
β2は、0≦β2≦0.5であり、
β3は、0≦β3≦0.5である。
ここで、上記A相におけるα4は0<α4≦0.05が好ましく、0<α4≦0.03がより好ましい。また、α5は0<α5≦0.05が好ましく、0<α5≦0.03がより好ましい。更に、上記B相におけるβ4は0<β4≦0.05が好ましく、0<β4≦0.03がより好ましい。また、β5は0<β5≦0.05が好ましく、0<β5≦0.03がより好ましい。尚、これらのα4、α5、β4及びβ5は、他のα1〜α3及びβ1〜β3に比べて極めて小さい値であるため、前述のようにα1〜α3及びβ1〜β3のみを用いて実質的には表すことができる。
ナノコンポジットは、MgX粉末とY粉末とを含む混合粉末をミリングして得られた原料粉末を焼成して得ることができる。この点については、本発明のナノコンポジットの製造方法において詳述する。
本発明のナノコンポジットによれば、熱電変換特性を得ることができる。具体的には、ナノコンポジットCm1は、同組成(Mg:X:Y:Z:Zが同じ)であるμmサイズの複合材料Cm2に比べて、より大きなゼーベック係数の絶対値を得ることができる。例えば、複合材料Cm2のゼーベック係数をS(μV/K)とした場合に、ナノコンポジットCm1のゼーベック係数S(μV/K)は、Sより20%以上大きな絶対値を得ることができ、特に20〜100%大きな絶対値を得ることができる。
また、ナノコンポジットCm1は、μmサイズの複合材料Cm2に比べて、より小さな熱伝導率を得ることができる。具体的には、複合材料Cm2の熱伝導率をκ(W/mK)とした場合に、本ナノコンポジットCm1の熱伝導率κ(W/mK)は、κより15%以上小さな値を得ることができ、特に15〜60%小さな値を得ることができる。
ナノコンポジットは、どのようにして得てもよい。前述のように、(1)α2=0、α3=0、β2=0且つβ3=0であるナノコンポジットは、MgX粉末とY粉末とを含む混合粉末をミリングして得られた原料粉末を焼成して得ることができる。
(2)α2≠0、α3=0、β2≠0且つβ3=0であるナノコンポジットは、(2−1)MgX粉末とY粉末とZ粉末とを含む混合粉末をミリングして得られた原料粉末を焼成して得ることができる。更に、(2−2)MgX粉末とMgY粉末とZ粉末とを含む混合粉末をミリングして得られた原料粉末を焼成して得ることができる。
(3)α2≠0、α3≠0、β2≠0且つβ3≠0であるナノコンポジットは、(3−1)MgX粉末とY粉末とZ粉末とZ粉末とを含む混合粉末をミリングして得られた原料粉末を焼成して得ることができる。更に、(3−2)MgX粉末とMgY粉末とZ粉末とZ粉末とを含む混合粉末をミリングして得られた原料粉末を焼成して得ることができる。
以下では、上述(1)の方法を、下記本発明の製造方法として説明する。
[2]ナノコンポジットの製造方法
ナノコンポジットの製造方法は、α2=0、α3=0、β2=0且つβ3=0であるナノコンポジットの製造方法であって、ミリング工程と、焼成工程と、を備える。
上記「ミリング工程」は、MgX粉末とY粉末とを含む混合粉末をミリングして原料粉末を得る工程である。
上記混合粉末を構成するMgX粉末及びY粉末は、いずれも平均粒径が1μm以上の粉末を用いることができる。即ち、平均粒径がμmサイズの粉末を用いることができる。
具体的には、MgX粉末の平均粒径は、100μm以下であることが好ましい。この平均粒径は1〜100μmがより好ましく、5〜50μmが特に好ましい。
一方、Y粉末の平均粒径は、100μm以下であることが好ましい。この平均粒径は1〜100μmがより好ましく、5〜50μmが特に好ましい。
尚、各粉末の平均粒径は、走査型電子顕微鏡による粒子観察により測定されたものとする。
混合粉末に配合するMgX粉末及びY粉末の割合は、特に限定されず、前述の本発明のナノコンポジットにおいて示したMgとXとYとの含有比が得られるように配合すればよい。即ち、例えば、MgX粉末及びY粉末は、MgXとYとのモル比(MgX:Y)において、50:50〜99:1の範囲の配合することができる。この範囲では、得られるナノコンポジットにおいて、MgXとMgYとの複合化による熱電特性向上の効果を得ることができる。この熱電特性向上の効果をより顕著に得るという観点で、MgX:Yは、60:40〜95:5がより好ましい。
更に、混合粉末に含まれるMgX粉末の割合は、混合粉末全体を100質量%とした場合に、通常、40質量%以上である。この割合は、40〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましい。
また、用いるMgX粉末としては、Sb、Bi、Ga、Al、Li、Na及びAgの群から選ばれる1種又は2種以上の元素がドーピングされたMgX粉末を用いることができる。これらの元素がドーピングされたMgX粉末を用いることで、得られるナノコンポジットの電気導電性を向上させることができる。ドーパントのうちSb、Bi、GaはXに置換して含まれる。また、ドーパントのうちAl、Li、Na、AgはMgに置換して含まれる。即ち、用いるMgX粉末の組成は、(Mg1−α7 α7(X1−α6 α6)で表すことができる。但し、Zは、Sb、Bi、Gaの群から選ばれる1種又は2種以上である。また、Zは、Al、Li、Na、Agの群から選ばれる1種又は2種以上である。更に、α6は0<α6≦0.05が好ましく、0<α6≦0.03がより好ましい。また、α7は0<≦α7≦0.05が好ましく、0<α7≦0.03がより好ましい。
このミリング工程では、用いるミリング方法は特に限定されず、公知のものを用いることができる。なかでも、ボールミルが好ましい。即ち、回転可能な収容器と、収容器内に収容された混合粉末とともに回転されるボールと、を用いるミリング方法である。このボールミルでは、収容器の回転に伴い、収容器内で、混合粉末とボールとがともに回転される。その際に、ボールが混合粉末を摩砕することとなる。そして、本方法では、この摩砕においてMgXとYとの交換反応を生じ、Mg(X,Y)等のMgとXとYとを含む化合物が生成される。
このミリング工程は、乾式で行ってもよく、湿式で行ってもよいが、湿式であることが好ましい。湿式である場合、湿式ミリングに用いる液媒の種類は特に限定されない。例えば、極性媒体及び非極性媒体が挙げられる。これらのなかでは、非極性媒体が好ましい。非極性媒体としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、ヘキサンが好ましい。
また、ボールミルに用いるボールの材質は、特に限定されず、金属、セラミックス、樹脂等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。なかでも金属及びセラミックスが好ましく、特にセラミックスが好ましい。セラミックスの種類は特に限定されないが、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、ボール粒径は特に限定されないが、その平均粒径は5mm以下が好ましい。この平均粒径が5mm以下であることで、混合粉末に対して十分な摩砕が施されるとともに、前述の交換反応を効果的に生じさせることができる。ボールの平均粒径の下限値は特に限定されないが、通常、MgX粉末及びY粉末の各々の平均粒径よりも大きい。このボールの平均粒径は、0.5〜5mmがより好ましく、1〜4mmが更に好ましく、2〜3mmが特に好ましい。
ミリングにおける回転速度は特に限定されないが、100〜2000rpmとすることができ、200〜1500rpmが好ましく、300〜1000rpmがより好ましく、400〜800rpmが更に好ましい。
また、ミリングにおける処理時間は特に限定されないが、1〜100時間とすることができ、1〜50時間が好ましく、1〜25時間がより好ましく、2〜10時間が更に好ましく、3〜5時間が特に好ましい。
更に、ミリング工程として湿式ミリングを行った場合には、ミリング工程後であって、焼成工程前に、液媒を除去する工程(液媒除去工程)を備えることができる。
上記「焼成工程」は、原料粉末を焼成する工程である。即ち、ミリング工程において、MgXとYとの交換反応を生じることによって、MgとXとYとを含む化合物が生成された原料粉末を焼成する工程である。この工程では、ミリング工程で生成されたMgとXとYとを含む化合物が、Mg1−α1α1(0≦α1≦0.1)とMg1−β1β1(0≦β1≦0.1)とに相分離される。
焼成工程では、どのような焼成方法を用いてもよいが、様々な焼成方法のなかでも、加圧焼成法を用いることが好ましい。加圧焼成法としては、放電プラズマ焼成法、ホットプレス焼成法等が挙げられる。これらのなかでは、粒成長を抑制できるという観点から放電プラズマ焼成法が好ましい。
更に、焼成の際の保持温度は、用いる材料に合わせて適宜の温度とすることができるが、例えば、500〜2000℃とすることができ、500〜1000℃が好ましい。また、保持時間も、用いる材料に合わせて適宜の時間とすることができるが、例えば、10分以下とすることができる。10分以下の焼成によって、得られるナノコンポジットを構成する成分の焼成による粒成長を抑制できる。この保持時間は、5秒〜10分が好ましく、10秒〜5分がより好ましい。
焼成の際の加圧圧力も、用いる材料に合わせて適宜の圧力とすることができるが、例えば、20MPa以上とすることができ、20〜200MPaが好ましく、30〜100Mpaがより好ましい。
更に、焼成工程では、被焼成物の酸化を防止するために、非酸化性雰囲気下で焼成を行うことが好ましい。具体的に、希ガスや窒素ガス等の非酸化性気体内で焼成するか、又は、低圧焼成雰囲気で焼成することが好ましい。低圧焼成雰囲気で焼成する場合には、例えば、100Pa以下であることが好ましく、1×10−7〜100Paがより好ましく、1×10−6〜50Paが更に好ましく、1×10−2〜30Paが特に好ましい。
本発明のナノコンポジットの用途は特に限定されない。このナノコンポジットは、例えば、熱電変換材料等として用いられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]ナノコンポジットの製造
(1)実施例1
(1−1)ミリング工程
平均粒径が10μmでありSbをドーピングしたMgSi粒子(MgSi0.995Sb0.005)を1.95gと、平均粒径が30μmであるSn粒子を0.05gと、を含む混合粉末をヘキサン中でミリングして、原料粉末を得た。ミリングに際して使用したボールは、直径3mmのジルコニア製である。また、ミリング時の回転数は650rpmであり、処理時間は300分とした。
(1−2)焼成工程
上記(1)で原料粉末を、カーボンダイスに充填し、放電プラズマ焼結法によって700℃で1分間焼成して、実施例1のナノコンポジットを得た。
(2)実施例2−5
実施例1と同様にして、表1に示す配合で、実施例1と同じMgSi粒子(Sbがドーピングされている)と、実施例1と同じSn粒子とを含む混合粉末をヘキサン中でミリングして、原料粉末を得た。その後、得られた原料粉末を放電プラズマ焼結法によって750〜800℃で1分間焼成して、実施例2−5のナノコンポジットを得た。
(3)比較例1
実施例1と同じMgSi粒子1gと、実施例1と同じSn粒子1gとを、アルミナ乳鉢中でアルミナ乳棒を用いて混合した。即ち、ミリング処理を経ずに混合を行った。その後、得られた混合粉末を、実施例1と同様に、カーボンダイスに充填し、放電プラズマ焼結法によって700℃で1分間焼成して、比較例1の複合材料を得た。
(4)比較例2
実施例1と同じMgSi粒子2gをカーボンダイスに充填し、放電プラズマ焼結法によって800℃で1分間焼成して、比較例2の材料を得た。
[2]ミリングによる交換反応の確認
(1)実施例5に係る交換反応の確認
実施例1と同じMgSi粒子1gと、実施例1と同じSn粒子1gとを混合した混合粉末5B(ミリング処理していない粉末)をX線回折測定に供してX線回折チャートを得た。
更に、実施例5で用いたミリング処理された原料粉末5A(混合粉末をミリング処理した粉末)をX線回折測定に供してX線回折チャートを得た。
尚、上記いずれのX線回折測定も、X線回折装置(株式会社リガク製、型式「Ultima IV」)を用いて行った。以下同様である。
こうして得られた、混合粉末5B(ミリング処理していない粉末)のX線回折チャートを上段(Before−millimgのチャート)に、原料粉末5A(混合粉末をミリング処理した粉末)のX線回折チャートを下段(After−millimgのチャート)に、各々組み込んだ多重チャートを図1に示した。
図1の多重チャートでは、Snの回折ピークは、混合粉末5B(上段)に認められるが、原料粉末5A(下段)に認められない。一方、Mg(Si,Sn)、MgSn、Siの3つの回折ピークは、混合粉末5B(上段)に認められないが、原料粉末5A(下段)には認められる。即ち、Snの回折ピークが消失し、Mg(Si,Sn)、MgSn、Siの回折ピークが出現したことになる。これは、ミリング処理によって、MgSi中のSiとSnとの交換反応したことを示している。
尚、ドーパントであるSbは、その量が極めて微量であるため、チャート中ではSbを除いた組成で示している。以下同様である。
(2)実施例1−4に係る交換反応の確認
実施例1で用いたミリング処理された原料粉末1A(MgSi粒子1.95gとSn粒子0.05gとを含む混合粉末をミリング処理した粉末)、
実施例2で用いたミリング処理された原料粉末2A(MgSi粒子1.91gとSn粒子0.09gとを含む混合粉末をミリング処理した粉末)、
実施例3で用いたミリング処理された原料粉末3A(MgSi粒子1.76gとSn粒子0.24gとを含む混合粉末をミリング処理した粉末)、
実施例4で用いたミリング処理された原料粉末4A(MgSi粒子1.57gとSn粒子0.43gとを含む混合粉末をミリング処理した粉末)、
これらの実施例1−4の各原料粉末をX線回折測定に供してX線回折チャートを得た。その結果を多重チャートにして図2に示した。各チャートは以下の通りである。
Sn=0.5at%のチャート:実施例1のチャート
Sn=1.0at%のチャート:実施例2のチャート
Sn=2.8at%のチャート:実施例3のチャート
Sn=5.5at%のチャート:実施例4のチャート
図2のチャートでは、2θ=72.5度付近の回折ピークが、実施例1(最上段)から実施例4(最下段)へとSnの添加量の増加に伴って低角側へシフトしている。この低角側へのシフトは、MgSi中のSiとSnとの交換反応を生じていることを示している。即ち、MgSi中へSnが固溶し、Mg(Si,Sn)が生成されていることを示している。更に、Snの添加量の増加に従い、シフト量が増えていることから、添加したSnは全量が交換反応していると考えられる。
尚、実施例5に生成されていることが確認されたMgSnは、実施例1−実施例4では確認されなかった。また、交換反応で析出されるSiは少量であるとともに結晶性が低いため、XRDで検出されなかったと考えられる。
[3]熱電特性の測定
(1)ゼーベック係数の測定
実施例1−5及び比較例1−2の各試料のゼーベック係数を、熱電評価装置(アルバック理工株式会社製、型式「ZEM−3」)を用いて測定した。測定は、室温下(25℃)で行った。その結果を、表1及び図6に示した。
(2)熱伝導率の測定
以下の方法で、熱拡散率、比熱及び密度の各々を測定し、これらの各値を用いて熱伝導率を算出した。
即ち、実施例1−5及び比較例1−2の各々の試料の熱拡散率を、レーザーフラッシュアナライザ(NETZSCH株式会社製、型式「LFA 457」)を用いて測定した。測定は、室温下(25℃)で行った。
また、実施例1−5及び比較例1−2の各々の試料の比熱を、文献値(O.Kubaschewski他著、Metallurgical Thermochemistry)に基づき、ノイマン・コップの法則を利用して算出した。
更に、実施例1−5及び比較例1−2の各々の試料の密度を、アルキメデス法により、室温下(25℃)で測定した。その結果を、表1及び図6に示した。
尚、表1中の各元素のモル比は、MgとSiとSnとの合計量を100とした場合のモル比であり、ドーパントであるSbを含まない値である。
[3]焼成による相分離反応の確認
(1)実施例5に係る相分離反応の確認
上記[1]で得られた実施例5のナノコンポジット(焼成後の複合材料)をX線回折測定に供してX線回折チャートを得た。その結果を図3に示した。
図1に示した原料粉末5A(図1の下段チャート)には、Mg(Si,Sn)、MgSn、Siの3種の回折ピークが認められる。これに対して、図3に示す、実施例5のナノコンポジットのチャートには、これらの3種の回折ピークのうちの、Mg(Si,Sn)及びMgSnの2種の回折ピークが認められず、その代わりに、MgSi及びMgSnの2種の回折ピークが認められる。
これは、焼成によって、原料粉末5A(図1の下段チャート)に含まれていたMgSnがMgSnに変化し、更に、Mg(Si,Sn)がMgSiとMgSnとに相分離したことを示している。
尚、各チャート中に示す組成式「MgSi」は、Mg(Si1−α1Snα1)で表され、0<α1≦0.1である可能性があるが、α1が極めて小さい値であるため、MgSiとして示す。同様に、各チャート中に示す組成式「MgSn」は、Mg(Sn1−β1Siβ1)で表され、0<β1≦0.1である可能性があるが、β1が極めて小さい値であるため、MgSnとして示す。以下同様である。
(2)実施例1−4に係る相分離反応の確認
実施例1−4として得られた各ナノコンポジットをX線回折測定に供してX線回折チャートを得た。その結果を多重チャートにして図4に示した。各チャートは以下の通りである。
Sn=0.5at%のチャート:実施例1のチャート
Sn=1.0at%のチャート:実施例2のチャート
Sn=2.8at%のチャート:実施例3のチャート
Sn=5.5at%のチャート:実施例4のチャート
図4によれば、実施例3及び実施例4のチャートに、MgSi、MgSn、Siの3種のピークが確認される。これは、焼成によって、Mg(Si,Sn)が、MgSiとMgSnとに相分離したことを示している。
尚、実施例1及び実施例2には、MgSnによる回折ピークが認められない。これはMgSnの生成量が少ないために回折ピークとして現れていないものと考えられる。
また、実施例1−実施例4の各試料には、MgOの生成が認められる。これは、焼成時の温度が上がったことが起因して、材料作製時に混入した酸素とMgとが結合して生成されたものと考えられる。
[4]ナノコンポジットであることの確認
実施例1−実施例5及び比較例1の各試料を、電子顕微鏡(日本電子株式会社製、型式「JSM−65102V」)により拡大した上で、観察面を構成する相を反射電子検出機によって分離して観察した。このうち、実施例5の試料による画像を図5に示した。
その結果、図5では、500nμm以下の大きさの白く表示される相と、500nμm以下の大きさの黒く表示される相と、が入り交じるように混在されていることが分かる。即ち、ナノコンポジットであることが確認できる。実施例1−4の試料についても、同様の構成であることが分かった。一方、比較例1の試料では、すべての相が2μm以上の大きさであった。
[5]実施例の効果
表1及び図1−6の結果から、比較例2の材料(MgSi)のゼーベック係数が−86.3μV/Kであるのに対して、比較例1の材料(MgSi+Sn、ナノ分散されていない)のゼーベック係数は−99.3μV/Kである。このことから、MgSiとSnとの複合により、MgSi単独の場合よりも優れたゼーベック係数(より大きいゼーベック係数の絶対値)が得られることが分かる。
更に、比較例2の材料(MgSi)のゼーベック係数が−86.3μV/Kであるのに対して、比較例1の材料(MgSi+Sn、ナノ分散されていない)のゼーベック係数は−99.3μV/Kである。そして、比較例2の材料(MgSi)のゼーベック係数が−86.3μV/Kであるのに対して、実施例1の材料(MgSi+Sn、ナノ分散されている)のゼーベック係数は−92.6μV/Kである。
このことから、μmサイズの分散下において、MgSiに対して17.5%となる量のSnを添加しても、ゼーベック係数は、−86.3μV/Kから−99.3μV/Kまでしか向上されない。これに対して、nmサイズに分散させた上で、MgSiに対して0.5%となる量のSnを添加すれば、ゼーベック係数は、−86.3μV/Kから−92.6μV/Kまで向上される。即ち、nmサイズで分散されていない場合に比べて、nmサイズで分散されることで飛躍的に高いSnの添加効果を得ることができることが分かる。
このことは、比較例1の材料(MgSi+Sn、ナノ分散されていない)のゼーベック係数が−99.3μV/Kであるのに対して、実施例5の材料(MgSi+Sn、ナノ分散されている)のゼーベック係数が−197.5μV/Kであることからも分かる。即ち、比較例1の材料はnmサイズで分散されていないのに対して、実施例5の材料は同量のSn添加量でありながらnmサイズで分散されている材料である。従って、nmサイズに分散されることで、ゼーベック係数の絶対値は1.99倍にも向上されていることが分かる。このことから、MgSiとSnとの複合に加えて、各相がナノ分散されたナノコンポジットとなることによって、飛躍的に優れたゼーベック係数が得られることが分かる。
同様に、比較例2の材料(MgSi)のゼーベック係数が−86.3μV/Kであるのに対して、実施例1−4の材料のゼーベック係数は−103.9〜−92.6μV/Kであり、比較例2の材料に比べて、実施例1−4のゼーベック係数はいずれも優れた特性を示している。
表1及び図1−5の結果から、比較例2の材料(MgSi)の熱伝導率が6.6W/mKであるのに対して、比較例1の材料(MgSi+Sn、ナノ分散されていない)の熱伝導率は3.3W/mKである。このことから、MgSiとSnとの複合により、MgSi単独の場合よりも優れた熱伝導率(より小さい熱伝導率)が得られることが分かる。
そして、比較例1の材料(MgSi+Sn、ナノ分散されていない)の熱伝導率は3.3W/mKであるのに対して、実施例5の材料(MgSi+Sn、ナノ分散されている)の熱伝導率は2.8W/mKである。このことから、MgSiとSnとの複合に加えて、各相がナノ分散されたナノコンポジットとなることによって、更に優れた熱伝導率が得られることが分かる。また、上述のように、MgSiとSnとの複合に加えて、各相がナノ分散されたナノコンポジットとなることによって、より優れた熱伝導率とゼーベック係数とを両立させることができる。
更に、比較例2の材料(MgSi)の熱伝導率が6.6W/mKであるのに対して、実施例1−4の材料の熱伝導率は4.3〜2.5W/mKである。即ち、比較例2の材料に比べて、実施例1−4の熱伝導率はいずれも優れた特性を示している。
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的及び例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施例を参照したが、本発明をここに掲げる開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。

Claims (3)

  1. A相とB相とD相とのみを有するナノコンポジットであり、
    前記A相がMg Si 1−α1 Sn α1であり、
    前記B相がMg Sn 1−β1 Si β1であり、
    前記D相がSiであり、
    前記α1は、0≦α1≦0.1であり、
    前記β1は、0≦β1≦0.1であることを特徴とするナノコンポジット。
  2. 熱電変換材料である請求項1に記載のナノコンポジット。
  3. 請求項1又は2に記載のナノコンポジットの製造方法であって、
    Mg Si粉末とSn粉末とを含む混合粉末をミリングして原料粉末を得るミリング工程と、
    前記原料粉末を焼成する焼成工程と、を備えることを特徴とするナノコンポジットの製造方法。
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