JP5637075B2 - ナノ複合材料の製造方法 - Google Patents
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特許文献1には、Bi、Te、Se及びSb元素からなる群より選択される少なくとも2種類以上の元素を含有した、平均粒径が1〜80μmである合金粉末に、平均粒径が前記合金粉末の平均粒径より小さく、かつ、0.01〜10μmである非酸化物セラミックス粉末を、熱電変換材料全量に対して、1〜20体積%添加した原料粉末を混合及び/又は粉砕して混合粉末とし、この混合粉末を焼結して熱電変換材料を製造する方法に関する技術が記載されている。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、従来よりも少ない工程数で、nmレベルの平均粒径の材料同士が高分散したナノ複合材料が得られる製造方法を提供することを目的とする。
従来技術においては、2種類以上の材料を通常の混合処理のみで複合化する場合には、μmレベル以上の複合化を目的とすることがほとんどであった。また、上述した特許文献1に記載されているように、nmレベルの複合化を目的とする従来技術であっても、予め径の大きな粉砕媒体を使用して粗粉砕を行った後、所定の粒径以下となった粉末を、径のより小さな粉砕媒体を使用して最終粉砕を行う方法が採用されている。
μmレベル以上の平均粒径の試料を粉砕するためには、nmレベルの平均粒径の試料を粉砕する場合と比較してより大きな粉砕エネルギーが必要である。したがって、μmレベル以上の平均粒径の試料を粉砕する粉砕媒体の径は、nmレベルの平均粒径の試料を粉砕する粉砕媒体の径と比較してより大きい必要がある。しかし、そのようなより大きい径を有する粉砕媒体により、nmレベルの平均粒径にまで微細化することは難しい。以上を踏まえると、粉砕法によりnmレベルの平均粒径にまで微細化する場合、製造工程の途中において、径のより大きな混合媒体から、径のより小さな混合媒体に交換して、2段階以上に分けて粉砕を行う必要がある。したがって、製造工程が複雑化する問題、製造コストが増大する問題、及び製造量の増加が困難となる問題が生じる。
本発明者は、ナノ微粒子をさらに混合することにより、μmレベル以上の粗大な原料粉末をnmレベルまで、従来よりも少ない工程数、好ましくは1段階で粉砕でき、且つ、2種類以上の原料粉末をnmレベルで複合化できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明に使用される母材は、μmレベル以上の粒径を有する材料であり、且つ、得られるナノ複合材料中において主要材料となるものであれば、特に限定されない。本発明に使用される母材は、無機材料であることが好ましい。
本発明においては、1種類の材料のみを母材として用いてもよく、2種類以上の材料を母材として用いてもよい。
母材の平均粒径は、10μm〜1mmであるのが好ましく、10〜100μmであるのがより好ましい。
なお、本発明における粒子の平均粒径は、常法により算出される。粒子の平均粒径の算出方法の例は以下の通りである。まず、400,000倍又は1,000,000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)画像において、ある1つの粒子について、当該粒子を球状と見なした際の粒径を算出する。このようなTEM観察による平均粒径の算出を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子の平均を平均粒径とする。
本発明に使用される母材は、熱電変換材料に通常使用される材料であってもよい。ここでいう熱電変換材料とは、例えば、テルライド系、シリコン・ゲルマニウム系、シリサイド系、スクッテルダイト系、ハーフホイスラー金属系、亜鉛・アンチモン系、ホウ素化合物、クラスター固体等の非酸化物系材料;層状酸化コバルト系、酸化亜鉛系、酸化チタン系、自然超格子系等の酸化物系材料;等が挙げられる。
本発明に使用される母材は、具体的には、Mg2Si、SiGe、FeSi2、BiSb、Bi2Te3、PbTe、ZrNiSn、CoSb3、及びFeVAl等の無機材料が例示できる。これらの材料の内、1種類のみを母材として用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて母材として用いてもよい。
これら無機材料のうち、本発明に使用される母材は、Mg2Si、及び/又はSiGeであることが好ましい。
上記ナノ微粒子は、適切な平均粒径を有するため、粉砕媒体と共に母材を粉砕する機能を果たすと考えられる。したがって、母材とナノ微粒子を粉砕媒体と共に混合することにより、母材粒子をnmレベルまで微細化でき、緻密なナノ構造を有するナノ複合材料が得られると考えられる。
平均粒径1nm未満のナノ微粒子は、現在の技術水準では入手・作製が困難である。一方、ナノ微粒子の平均粒径が500nmを超える場合には、平均粒径が大きすぎるため、従来よりも少ない工程数で母材の平均粒径をnmレベルとすることが難しい場合がある。
ナノ微粒子の平均粒径は、5〜50nmであるのが好ましく、10〜30nmであるのがより好ましい。
これら無機材料のうち、本発明に使用されるナノ微粒子は、MgOを含有することが好ましい。
本発明に使用されるナノ微粒子の配合割合は、母材とナノ微粒子の合計の体積を100体積%としたとき、10〜30体積%であることがより好ましく、15〜25体積%であることが更に好ましい。
メカニカルミリングは、少なくとも母材及びナノ微粒子を、機械的エネルギーを付与しながら混合する方法であれば特に限定されるものではない。メカニカルミリングとしては、例えばボールミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等を挙げることができ、中でもボールミルがより好ましく、遊星型ボールミルが更に好ましい。
最後に、ふるいを用いる等の方法により、生成物から粉砕用ボールを分離する。湿式混合の場合には、さらに必要に応じて溶媒を除去することにより、本発明のナノ複合材料が得られる。
図1に示すように、本発明により得られるナノ複合材料100は、母材微粒子1及びナノ微粒子2を含む。例えば、ナノ微粒子2の平均粒径a(nm)、ナノ微粒子2同士の間隔をb(nm)とすると、緻密なナノ複合構造の構築のためには、aとbが互いに略等しくなることが好ましい。したがって、母材の平均粒径が、ナノ微粒子2の平均粒径以下となるように粉砕することが好ましい。このように、微細なナノ複合構造の構築のためには、母材の平均粒径とナノ微粒子の平均粒径との間にはある一定の相関関係が認められる。
本発明により得られるナノ複合材料中の母材の平均粒径は、nmレベルの複合構造の構築という観点から、5〜50nmであることが好ましく、8〜40nmであることがより好ましく、10〜30nmであることが更に好ましい。
本発明により得られるナノ複合材料中のナノ微粒子の平均粒径も、母材同様に、nmレベルの複合組織の構築という観点から、5〜50nmであることが好ましく、8〜40nmであることがより好ましく、10〜30nmであることが更に好ましい。
上記焼結体中の母材の平均粒径は、nmレベルの複合組織の構築という観点から、10〜80nmであることが好ましく、20〜60nmであることがより好ましく、30〜50nmであることが更に好ましい。
上記焼結体中のナノ微粒子の平均粒径も、母材同様に、nmレベルの複合組織の構築という観点から、10〜50nmであることが好ましく、15〜45nmであることがより好ましく、20〜40nmであることが更に好ましい。
また、母材の平均粒径をnmレベルまで微細化した熱電変換ナノ複合材料を焼結することにより、電気伝導率を高く保持し、熱伝導率のより低い焼結体が得られる。その結果、当該焼結体の熱電性能指数(ZT)は従来よりも大幅に向上する。本発明においては、微小粉砕媒体を用いる必要がなく、不純物の混入が従来よりも少ないため、得られる熱電変換ナノ複合材料のゼーベック係数や、電気伝導率の低下を抑制することができる。なお、熱電変換性能を向上させるためには、焼結体中のナノ微粒子、及び/又はナノ微粒子に相当する微粒子の平均粒径が30nm以下であることが好ましい。
[実施例1]
まず、母材として、平均粒径が10μmのMg2(Si,Ge)((株)高純度化学製)、及び、ナノ微粒子として、平均粒径が20nmのMgO(シーアイ化成(株)製)を、それぞれ用意した。次に、Mg2(Si,Ge)とMgOの混合比が、Mg2(Si,Ge):MgO=90体積%:10体積%となるように混合し、乾燥雰囲気下、当該混合物2g、破砕用ジルコニアボール(φ=5mm)15gを、50ccジルコニアポットに入れ、密閉した。その後、容器を遊星型ボールミル装置に取り付け、台盤回転数300rpm、50℃以下の温度条件下、処理時間6時間の条件でメカニカルミリングを行い、実施例1のナノ複合材料を合成した。
実施例1において、メカニカルミリング時の台盤回転数を300rpmから600rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様に混合を行い、実施例2のナノ複合材料を合成した。
まず、母材として、平均粒径が10μmのSi、及び、ナノ微粒子として、平均粒径が20nmのMgOを、それぞれ用意した。次に、SiとMgOの混合比が、Si:MgO=90体積%:10体積%となるように混合し、乾燥雰囲気下、当該混合物2g、破砕用ジルコニアボール(φ=3mm)15gを、50ccジルコニアポットに入れ、密閉した。その後、容器を遊星型ボールミル装置に取り付け、台盤回転数700rpm、50℃以下の温度条件下、処理時間8時間の条件でメカニカルミリングを行い、実施例3のナノ複合材料を合成した。
実施例1において、破砕用ジルコニアボールの径をφ=5mmからφ=1mmに変更したこと、及び、メカニカルミリング時の台盤回転数を300rpmから1000rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様に粉砕を行い、実施例4のナノ複合材料を合成した。
実施例1において、平均粒径が20nmのMgOを添加せず、平均粒径が10μmのMg2(Si,Ge)のみを粉砕に供した以外は、実施例1と同様に粉砕を行い、比較例1のナノ複合材料を合成した。
実施例1において、平均粒径が20nmのMgOを添加せず、平均粒径が10μmのMg2(Si,Ge)のみを粉砕に供したこと、破砕用ジルコニアボールの径をφ=5mmからφ=3mmに変更したこと、及び、メカニカルミリング時の台盤回転数を300rpmから700rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様に粉砕を行い、比較例2のナノ複合材料を合成した。
実施例3において、平均粒径が20nmのMgOに替えて、平均粒径が1μmのMgO(シグマアルドリッチ(株)製)を使用したこと以外は、実施例3と同様に混合を行い、比較例3のナノ複合材料を合成した。
[実施例5]
上記実施例1のナノ複合材料を焼結した。詳細な焼結方法は以下の通りである。
まず、実施例1のナノ複合材料を十分に乾燥させた後、乳鉢により解砕した。次に、当該ナノ複合材料をカーボンダイスに詰めた後、放電プラズマ焼結機(住友石炭鉱業(株)製)により、アルゴン雰囲気下、800℃、50MPaの条件で、10分間焼結を行い、実施例5の焼結体を得た。
実施例5において、原料として、上記実施例1のナノ複合材料に替えて実施例4のナノ複合材料を用いたこと以外は、実施例5と同様に焼結操作を行い、実施例6の焼結体を得た。
実施例5において、原料として、上記実施例1のナノ複合材料に替えて比較例1のナノ複合材料を用いたこと以外は、実施例5と同様に焼結操作を行い、比較例4の焼結体を得た。
実施例5において、原料として、上記実施例1のナノ複合材料に替えて比較例2のナノ複合材料を用いたこと以外は、実施例5と同様に焼結操作を行い、比較例5の焼結体を得た。
実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例3のナノ複合材料中の母材(Mg2(Si,Ge)又はSi)の平均粒径を算出した。平均粒径の算出方法としては、まず、各ナノ複合材料についてXRD測定を行い、得られたXRDパターン中の所定の回折ピークより、シュラーの式を用いて平均粒径を算出した。なお、各ナノ複合材料についてTEM観察を行い、算出した上記平均粒径とTEM観察した粒径との間に大きな相違がないことも確認した。
次に、比較例3について検討する。比較例3は、平均粒径1μm(=1000nm)の微粒子を添加した実験例である。上記表1より、比較例3においては、粉砕後の母材の平均粒径が、50nmを超える結果となった。したがって、平均粒径がマイクロオーダーの微粒子を用いた場合には、母材の平均粒径は50nm以下とはならず、複合組織の微細化が十分に達成できないことが分かる。
一方、実施例1〜実施例3は、いずれも、母材、及び、平均粒径20nmのナノ微粒子を混合した実験例である。上記表1より、実施例1〜実施例3においては、粉砕後の母材の平均粒径がいずれも30nm未満となった。したがって、平均粒径がナノオーダーの微粒子を用いた場合には、母材の平均粒径は30nm未満、最小で約10nmとなることが分かる。
4−1.平均粒径の算出
実施例5及び実施例6、並びに比較例4及び比較例5の焼結体中の母材(Mg2(Si,Ge)又はSi)、及びナノ微粒子(MgO)の平均粒径を算出した。平均粒径の算出方法は、上述したナノ複合材料中の母材の平均粒径の算出方法と同様である。なお、上述したナノ複合材料中の母材と同様に、TEM観察による確認も行った。
実施例5及び実施例6、並びに比較例4及び比較例5の焼結体の熱伝導率を算出した。まず、焼結体をサンプラーにカーボンスプレー塗布後、Xeフラッシュアナライザー(NETZSCH製、商品名:LFA447 Nanoflash)により、25℃の温度条件下で、各焼結体の熱拡散率を測定した。次に、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製、型番:EXSTAR DSC6200)を用いて、DSC法により、25℃の温度条件下で、各焼結体の比熱を測定した。続いて、アルキメデス法により各焼結体の密度を測定した。得られた熱拡散率、比熱、及び密度の値から、各焼結体の熱伝導率を算出した。
また、比較例4及び比較例5においては、熱伝導率が2.0W/mKを超える結果となった。したがって、例えば比較例4及び比較例5の焼結体を熱電変換材料に用いたとしても、十分な熱電変換能を享受できないおそれがある。
さらに、実施例5及び実施例6においては、熱伝導率が2.0W/mK未満であり、上記比較例4及び比較例5の熱伝導率の約半分程度となった。これらの低い熱伝導率は、母材及びナノ微粒子が、互いにnmレベルで微細に混在することを示す。これらの熱伝導率の結果は、例えば実施例5及び実施例6の焼結体を熱電変換材料に用いた場合には、熱電変換能を十分に享受できることを示す。
2 ナノ微粒子
100 本発明により得られるナノ複合材料
a ナノ微粒子の平均粒径
b ナノ微粒子同士の間隔
Claims (3)
- 少なくとも、平均粒径10μm〜5mmの無機微粒子である母材、及び平均粒径1〜30nmのナノ微粒子を、台盤回転数250〜1200rpmの範囲内で、粉砕用ボールを用いた遊星型ボールミルによって処理時間1〜50時間の範囲内で混合することにより、少なくとも前記母材を平均粒径が5〜50nmとなるように微細化し、且つ、当該微細化した母材及び前記ナノ微粒子が互いに高分散したナノ複合材料を製造することを特徴とする、ナノ複合材料の製造方法。
- 前記母材は、Mg2Si、SiGe、FeSi2、BiSb、Bi2Te3、PbTe、ZrNiSn、CoSb3、及びFeVAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機材料である、請求項1に記載のナノ複合材料の製造方法。
- 前記ナノ微粒子は、MgO、ZrO2、Al2O3、TiO2、SiO2、BN、SiC、及びCeO2からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機材料を含有する、請求項1又は2に記載のナノ複合材料の製造方法。
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