JP2013219095A - 熱電材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱電材料の無次元性能指数ZTをより高めることにある。
【解決手段】表面に酸化膜が形成された平均粒子径が20nm〜1000nmの熱電材料を有するとともに、酸化膜に含まれる酸素の合計量は熱電材料の重量に対して0.1wt%より多く3wt%以下の酸素を含有する焼結体からなる。
【選択図】図4

Description

本発明は、熱電変換素子として使用可能な熱電材料及びその製造方法に関する。
熱電変換とは、ゼーベック効果やペルチェ効果を利用して、熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換することをいう。この熱電変換は直接変換であるため、各種の利点(エネルギー変換時に余分な廃棄物を排出しない、排熱の有効利用が可能、可動部がないためメンテナンスフリー)を有する。
そして熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換できる材料(熱電材料)として各種の半導体や金属が公知である。熱電材料は、通常、p型の熱電材料とn型の熱電材料を接合した状態で使用され、この接合対を熱電変換素子と呼ぶ。
そして熱電変換素子は、上述の熱電変換の利点を有するため、センサー素子や光素子、LSI基板等の半導体回路、レーザダイオード等の精密温度制御が要求される分野や、冷蔵庫、ワインセラー、自動車などに広く使用されている。
ここで熱電材料の性能は、次式1にて定義された無次元性能指数ZT(Dimension-less Figure of Merit)にて表わすことができる。
式1:ZT=ασT/κ
式中、αは、ゼーベック係数(起電力の大きさを表す物理量)であり、σは電気伝導率であり、Tは絶対温度であり、κは熱伝導率である。熱伝導率κは、フォノン熱伝導率(物質を構成する原子核自体の振動によるもの)と、キャリア熱伝導率(電子又はホールの移動によるもの)の和で与えられる。
そして従来、熱電材料を微細化して熱伝導率を低下させることにより、無次元性能指数ZTを向上させる試みがなされている。
例えば特許文献1の技術では、ビスマス・テルル系の熱電材料を、単ロール法を経て薄膜化又は粉末状(粒子状)とする。つぎにホットプレス(圧力:39.2MPa、温度−300〜500℃)により焼結することで、熱電変換素子として使用可能な焼結体を得る。
そして特許文献1の技術では、熱電材料の平均粒子径を焼結前に8〜32μmとして熱伝導率を低下させる(特許文献1の実施例を参照)。このとき熱電材料のアスペクト比を1〜3に揃えて、電気伝導率の減少(比抵抗の増加)を抑えることにより、無次元性能指数ZTをさらに向上させることができる。
ところでこの種の技術では、熱電材料表面に酸化膜が形成されることで電気伝導率が低下すると考えられている。
このため一般的に、酸素非存在下(真空又はアルゴン雰囲気中)で各工程を行うことにより、熱電材料表面の酸化膜形成を極力抑えて電気伝導率の低下を回避する。
特開2001−196648号公報
ところで公知技術の構成では、酸素非存在下において、熱電材料を焼結前に微細化する。しかし熱電材料(粒子)同士を隔てる酸化膜がないことから、焼結時において熱電材料同士が一体化して粒成長することがあった。特に熱電材料を微細化するほど焼結時に粒成長が促進する傾向にあり、結果として無次元性能指数ZTの悪化が顕著となりやすかった。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、熱電材料の無次元性能指数ZTをより高めることにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、熱電材料表面に酸化膜を形成することで、焼結時における熱電材料の粒成長を好適に抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち上記課題を解決するための手段として、第1発明の熱電材料は、表面に酸化膜が形成された平均粒子径が20nm〜1000nmの熱電材料を有するとともに、酸化膜に含まれる酸素の合計量は熱電材料の重量に対して0.1wt%より多く3wt%以下の酸素を含有する焼結体からなる。
本発明では、熱電材料表面の酸化膜により、焼結時の熱電材料の粒成長を抑えることができる(熱伝導率の上昇を好適に抑えることができる)。
第2発明の熱電材料は、第1発明の熱電材料であって、ロットゲーリング(Lotgering)法によるc軸配向度が0.59以上である。本発明では、焼結後の熱電材料が所望の配向性を有することで、酸化膜の存在による電気伝導率の低下を防止又は低減できる。
第3発明の熱電材料は、第1発明又は第2発明の熱電材料であって、酸化膜に含まれる酸素の合計量は熱電材料の重量に対して1.0wt%より多く3wt%以下である。
第4発明の熱電材料は、第1発明〜第3発明のいずれかの熱電材料であって、熱電材料はBiTe系材料である。
第5発明の製造方法は、第1発明の熱電材料を製造する方法であって、下記の第一工程〜第三工程を有する。
第一工程:溶融状態の熱電材料を回転ロール上で10〜10K/secの冷却速度で冷却して短冊状としたのち、平均粒子径(結晶粒径)20nm〜1000nmの範囲に微細化する。
第二工程:微細化された熱電材料を酸素存在下で乾燥する。
第三工程:乾燥後の熱電材料を、熱電材料の融点の−400℃〜−200℃の範囲の温度で焼結する。
第6発明の製造方法は、第5発明の熱電材料の製造方法であって、第三工程は、100〜600MPa圧力を付与しながら行う。
第7発明の製造方法は、第5発明又は第6発明の熱電材料の製造方法であって、第二工程は、微細化された熱電材料を、18vol%以上の酸素存在下で乾燥する。
第8発明の製造方法は、第5発明〜第7発明のいずれかの熱電材料の製造方法であって、第三工程は、熱電材料の融点の−400℃〜−300℃の範囲の温度で焼結する。
本発明に係る第1発明によれば、熱電材料の無次元性能指数ZTをより高めることができる。また第2発明によれば、優れた無次元性能指数ZTを有する熱電材料を製造できる。
第一工程時の熱電材料の状態を示す装置の概略図である。 第二工程時の熱電材料の状態を示す概略図である。 第三工程時の熱電材料の状態を示す装置の概略図である。 実施例1の熱電材料のEBSD像である。 比較例1の熱電材料のEBSD像である。 比較例2の熱電材料のEBSD像である。
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図6を参照して説明する。
本実施例の熱電材料は、表面に酸化膜が形成された平均粒子径が20nm〜1000nmの熱電材料を有するとともに、酸化膜に含まれる酸素の合計量は熱電材料の重量に対して0.1wt%より多く3wt%以下の酸素を含有する焼結体からなる。
そして本実施例では、熱電材料表面の酸化膜により、焼結時の熱電材料の粒成長を抑えることができる(熱伝導率の上昇を好適に抑えることができる)。以下、各構成について詳述する。
[熱電材料]
熱電材料(種類)は特に限定しないが、ビスマス・テルル系(Bi-Te系)、マグネシウム・シリカ系(Mg-Si系)、鉄・シリカ系(Fe-Si系)、鉛・テルル系(Pb-Te系)、シリコン・ゲルマニウム系(Si-Ge系)、鉄・バナジウム・アルミニウム系(Fe-V-Al系)、カルコゲナイド系、スクッテルダイト系、フィルドスクッテルダイト系、炭化ホウ素系等の半導体や金属を例示できる。
なかでもBiを含む熱電材料は、20℃〜200℃の低温域において優れた熱電変換性能を有するため好ましい。この種の熱電材料として、Bi-Te系の材料(BiTe等)が好ましく、Bi-Te系の材料そのものやこれらに他の金属(Sb,Se,Al,Mn,Fe,Cr,Mo,Ga,Sn,Zn,P,Si等)が添加又は一部置換された材料を例示できる。なかでもBiとTeのほかにSb又はSeを適宜含む材料が好ましく、例えばP型に、BiTeとSbTeの固溶体であるBiSb2−xTe(x〜3.4)(x=0.14〜0.6)、N型に、BiTeとBiSeの固溶体であるBiTe3−ySe(y=0.5〜0.3)を例示できる。なおN型では、インジウムを0.01追加できる。
また熱電材料に、ドーパント(例えばIやClやBr等のハロゲン元素)を添加して、効率良く半導体化することができる。例えば下記の製造工程において、熱電材料に、ハロゲン元素を含む化合物(AgI,CuBr,SbI,SbCl,SbBr,HgBr等)を単体又は複数加えることでN型の熱電材料を製造できる。
熱電材料に対するドーパントの含有量は、0.01〜5重量%であればよく、0.05〜4重量%であることが好ましい。ドーパントの含有量を調節することで、熱電材料中のキャリア濃度を調整することができ、結果として熱電材料の無次元性能指数ZTを高めることができる。
(平均粒子径)
焼結後の熱電材料の平均粒子径(結晶粒径)は20nm〜1000nmの範囲であり、好ましくは100nm以下である。このように熱電材料を微細化することにより、熱伝導率の上昇を抑えることができる。
ここで熱電材料の平均粒子径が20nm未満であると電気伝導率が悪化する可能性がある。また熱電材料の平均粒子径が1000nmを超えると熱伝導率が極端に高くなる。そして熱電材料の平均粒子径を20nm〜1000nmの範囲とすることで、電気伝導率を阻害することなく熱伝導率を好適に減少させることができる。
ここで熱電材料の平均粒子径は、BSE像(反射電子像)やEBSD像(後方電子線回折像)を観察して特定できる。例えば焼結体の断面(焼結圧粉方向と平行断面)をクロスセクションポリシャ加工したのち、得られた平滑断面のBSE像又はEBSD像を観察する。そして任意の熱電材料500個から粒度分布をとることでその平均粒子径を算出できる。
そして本実施例では、熱電材料表面に酸化膜(詳細後述)が形成されて焼結時の粒成長が抑えられるため、焼結体中に、結晶粒径100nm以下の熱電材料を含有させることができる。このように結晶粒径100nm以下の熱電材料を含むことで、フォノン錯乱を好適に生じさせることができる。また焼結時の粒成長を抑えることで、熱電材料に200nm以下の空孔が形成されるため、電気伝導を阻害することなく熱伝導率を抑制することができる。
(配向度)
焼結後の熱電材料は、ロットゲーリング(Lotgering)法によるc軸配向度(後述のロットゲーリングファクタF)が0.59以上(典型的に0.59〜0.75)である。
ロットゲーリングファクタFが0.59未満であると、電気伝導率の低下が顕著となり、結果として無次元性能指数ZTが悪化する。またロットゲーリングファクタFは0.75程度まで大きくすることが可能である。
そしてロットゲーリングファクタFを0.59〜0.75に設定する(焼結後の熱電材料が所望の配向性を有する)ことで、粒微細化による電気伝導率の低下を防止又は低減できる。
ここでロットゲーリングファクタFは、0を超えるときに対象とする結晶面が配向していることを意味し、対象とする結晶面から回折されるX線の積分ピーク強度を用いて算出できる。すなわちロットゲーリングファクタFは、2θ‐θ法X線回折パターン(10°≦2θ≦70°)のピーク強度から次式2で定量化できる。
式2:F=(Ρ−P0)/(1−P0)
そしてΡ0は、無配向サンプルのX線の回折強度(I)を用いて計算される。すなわちc軸配向の場合、全回折強度の和に対する(00I)面の回折強度の合計の割合として次式3により求める。
式3:Ρ0=ΣI(00I)/ΣI(hkI)
またPは、配向サンプルのX線の回折強度(I)を用いて計算される。すなわちc軸配向の場合は、全回折強度の和に対する(00I)面の回折強度の合計の割合として式4により求める。
式4:Ρ=ΣI(00I)/ΣI(hkI)
(熱電材料と酸素の割合(酸化膜の形成))
焼結後の熱電材料(焼結体)は、95wt%〜99wt%の熱電材料と、0.1〜3wt%(更に好ましくは1.0wt%より多く3wt%以下)の酸素を含有することが好ましい。換言すると酸化膜に含まれる酸素(酸化膜を構成する酸素であって、熱電材料由来の酸素とは異なる酸素)の合計量が熱電材料の重量に対して0.1〜3wt%であることが好ましい。なお焼結体には、Fe、Si等の不可避的不純物が含有されることがある。
このように焼結体において、熱電材料の充填率を95%以上とする(好ましくは98%以上とする)ことで焼結体の強度を高めることができる。熱電材料の充填率は例えばアルキメデス法にて測定できる。
また本実施例では、熱電材料の表面に酸化膜が形成される(製造工程の詳細は後述)。そして酸化膜により焼結時の粒成長を抑えることで、熱電材料の結晶粒径が焼結後においても好適に維持される。
ここで熱電材料表面の酸化膜の有無は、焼結体中の酸素含量により表わすことができる。例えば本実施例では、焼結体中の酸素含量(酸化膜を構成する酸素量)を0.1wt%〜3.0wt%に設定することで、熱電材料の表面に酸化膜が形成された状態とされる。酸素含量が0.1wt%未満であると、熱電材料表面に所望の酸化膜が形成されず、焼結時に粒成長が促進される傾向にある。また酸素含量が3.0wt%より多いと、熱電材料の電気伝導率が極端に悪化する傾向にある。そして酸化膜に含まれる酸素の合計量を熱電材料の重量に対して1.0wt%より多く3wt%以下とすることで、電気伝導率の悪化を極力抑えつつ、焼結時の粒成長を阻止することができる。
以上説明したとおり本実施例では、焼結後の熱電材料が、平均粒子径20nm〜1000nmで表面に酸化膜を有する粒子である。また焼結後の熱電材料は、ロットゲーリング(Lotgering)法によるc軸配向度が0.59以上である。
本実施例では、熱電材料表面の酸化膜により、焼結時の熱電材料の粒成長を抑えることができる(熱伝導率の上昇を好適に抑えることができる)。そして焼結後の熱電材料が所定の結晶粒径を維持することで、熱伝導率の上昇を好適に抑えることができる。さらに焼結後の熱電材料が所望の配向性を有することで、酸化膜による電気伝導率の低下を防止又は低減できる。このため本実施例によれば、焼結体の無次元性能指数ZTをより高めることができる。
[焼結体の製造]
本実施例では、上述の熱電材料(焼結体)を、下記の第一工程〜第三工程により製造することができる(図1〜図3を参照)。
第一工程:溶融状態の熱電材料2を回転ロール10上で10〜10K/secの冷却速度で冷却して短冊状としたのち、平均粒子径20nm〜1000nmの範囲に微細化する。
第二工程:微細化された熱電材料2を18vol%以上の酸素存在下で乾燥する。
第三工程:乾燥後の熱電材料2を、熱電材料2の融点の−400℃〜−300℃の範囲の温度で焼結する。
(第一工程)
第一工程では、固体の熱電材料2(典型的にインゴット状)を、高周波やアーク放電等により溶融しつつ、回転状態の回転ロール10周面に射出する(図1を参照)。そして溶融状態の熱電材料2を回転ロール10上で10〜10K/secの冷却速度で冷却して短冊状としたのち(単ロール法を経たのち)、平均粒子径20nm〜1000nmの範囲に微細化する。
本実施例では、冷却された回転ロール10を、チャンバ12内に配置する。チャンバ12内は、典型的に減圧状態(−5kPa〜−90kPa)であるとともに、不活性ガスにより置換できる。なお不活性ガスの種類は特に限定しないが、アルゴンガスやヘリウムガスなど希ガスや窒素ガスを例示できる。
そして回転ロール10(円筒体)は、熱伝導性に優れる材質(銅等)にて形成されており、不凍液など冷却剤や、ペルチェ素子などの冷却部材にて冷却される。本実施例では、回転ロール10内に、−50℃程度のエチレングリコール(不凍液)が内蔵されており、溶融状態の熱電材料2を、10K/sec以上の冷却速度でより確実に冷却することができる。
そして冷却された熱電材料2は、ロール接触面において液相中に多数の核が生成され、ロール接触面から垂直且つ非接触面方向に結晶成長が促進される(短冊状に成長する)。このとき熱電材料2(結晶)は、核発生直後から(015)方向に配向して(a>b>c)軸の順番に優先的に成長し、途中から次第に(110)方向に向きを変えて成長する(配向性が次第に悪化する)。
そこで本実施例では、回転ロール10を冷却して、熱電材料2の結晶成長を抑えることにより、(110)方向への変位を極力回避できる。このように結晶成長を(015)方向にのみ成長させることで、熱電材料2の配向を好適に揃えることができる。そして熱電材料2(急冷後の組織)は、劈開し易い微細な組織がロール接触面に対して垂直方向に短冊状に配列することから非常に脆い組織となる。
(変形例)
また上述の構成では、チャンバ12内を加圧する又は減圧の程度を弱めることでも結晶成長を抑制できる。例えばチャンバ12内の圧力を−5kPaより高く設定することで、熱電材料2の結晶成長を好適に抑えることができる。
ここでチャンバ12の圧力上限は特に限定しないが、チャンバ12の圧力限界を考慮して、大気圧の倍+200kPa以下(典型的に400kPa以下)に設定できる。
つぎに熱電材料2を、粉砕装置(図示省略)を用いて、20nm〜1000nmの範囲に微細化する。
ここで粉砕装置の種類は特に限定しないが、ボールミル(回転ボールミル,振動ボールミル,遊星ボールミル)、ビーズミル、ジェットミル、ウォータージェット、乳鉢を例示できる。例えばグローブボックス内で、溶媒4をエタノールとしたボールミルにて、熱電材料を湿式粉砕することができる。グローブボックス内は、アルゴンガスなど不活性ガスで置換されており、酸素濃度は、0.5〜0.9vol%に設定される。
また分級装置にて、所望の結晶粒径を有する熱電材料2を分級することができ、分級装置として、サイクロン、遠心分離装置、濾過装置を例示できる。
(第二工程)
第二工程では、微細化された熱電材料2を酸素存在下で乾燥する(図2を参照、なお図2では、便宜上、熱電材料2の寸法を誇張して図示するとともに、その一つにのみ符号を付す)。
ここで乾燥方法は特に限定しないが、減圧乾燥、加熱乾燥、自然乾燥(常温常圧)、超臨界乾燥法及び凍結乾燥法を例示できる。本実施例では、酸素存在下で、熱電材料2(粒子状)を乾燥して溶媒4を除去することにより熱電材料2表面に酸化膜を形成できる。このとき酸素濃度は、18〜100vol%に設定することができ、典型的に一般大気雰囲気下における酸素濃度(18〜21vol%)に設定できる。
(第三工程)
乾燥後の熱電材料2を、焼結装置20を用いて、熱電材料2の融点の−400℃〜−300℃の範囲の温度で焼結することで焼結体を得る(図3を参照)。
ここで焼結装置20(断面視で略矩形の部材)は、第一型20aと、第二型20bと、空間部20cを有する。空間部20cは、装置中央において上下に開口する空間部である。また第一型20aと第二型20bは、空間部20cに挿設されて互いに近接する向きに移動可能である。そして乾燥後の熱電材料2を、空間部20cに充填したのち、第一型20aと第二型20bにより圧をかけて所望の形状に焼結する。
(焼結条件)
本実施例では、焼結装置20の温度を、比較的低温(熱電材料2の融点の−400°〜−200°の範囲、好ましくは熱電材料2の融点の−400°〜−300°の範囲)に設定して熱電材料2を焼結する。このように焼結時の温度を比較的低温に設定することで、熱電材料2の粒成長を更に好適に抑制できる。
また焼結時の圧力は100MPa〜600MPaであることが好ましい。ここで圧力が100MPa未満であると、加圧の効果が乏しく常圧焼結と熱電特性にほとんど差異がなくなる。また600MPaより大きいと、焼結体に割れが入るなどして、収率が極端に低下する。そして焼結により、熱電材料2の充填率を95%より多くする(好ましくは98%以上とする)ことで熱電材料2の強度を高めることができる。
つぎに焼結体を任意の形に切出すことで(加工することで)、熱電変換素子として利用することができる。
加工手段は特に限定しないが、切削加工や塑性加工を例示できる。切削加工とは、鋸、旋盤、フライス盤、ボール盤、砥石、ダイヤモンドカッタ等による機械加工である。また塑性加工とは、プレスによる型抜きや成形、圧延、鍛造、爆発成形等である。
そして本実施例の焼結体は、熱電材料2が比較的密に焼結されるため、切削加工又は塑性加工により、任意の形状に容易に加工できる。特に、角柱状、円筒状、リング状、円板状又は平板状(工業的利用価値の高い形状)に容易に加工できる。
以上説明したとおり本実施例では、第一工程において回転ロール10を冷却することで、熱電材料2を配向性良く微細化できる。つぎに第二工程において酸素存在下で熱電材料2を乾燥することにより、熱電材料2表面に酸化膜を形成できる。
更に本実施例では、第三工程において、乾燥後の熱電材料2を、比較的低温で焼結することで、熱電材料2の粒成長を抑制しつつ所望の配向性を付与できる。
このため本実施例によれば、優れた無次元性能指数ZTを備える熱電材料(焼結体)を製造することができる。
[試験例]
以下、本実施例を試験例に基づいて説明するが、本発明は試験例に限定されない。
(実施例1)
実施例1では、熱電材料(原料)として、BiTeとSbTeのインゴット(高純度科学社製)を所定比(BiTe:SbTe=2:9)で使用した。
そして第一工程において、熱電材料を電気溶解炉で溶融したのち、チャンバ内の回転ロール上に射出して、10〜10K/secの冷却速度で冷却した(図1を参照)。このとき回転ロールは、エチレングリコール(−50℃)にて冷却状態とした。またチャンバ内を不活性ガスにて置換しつつ負圧(−90kPa)とした。そしてグローブボックス内で、熱電材料を、ボールミル(フリッチ社製)を用いてエタノール(溶媒)中で粉砕した。
つぎに第二工程において、微細化された熱電材料を、大気雰囲気中(酸素濃度:18vol%〜21vol%)で乾燥した(図2を参照)。
そして第三工程において、乾燥後の熱電材料を焼結して焼結体を得た(図3を参照)。焼結条件は、温度:230℃、焼結圧力:100MPa、焼結時間:5時間以上とした。そして焼結体中の酸素濃度を酸素窒素同時分析装置(堀場製作所、型式:EMGA620)により測定したところ、17wt%であったことから、熱電材料の表面に酸化膜が形成されたことがわかった。また焼結体中の熱電材料の充填率は98%以上であった。
(各種パラメータの測定方法)
本試験では、実施例1の熱電材料(焼結体)の断面をクロスセクションポリシャ加工したのち、得られた平滑な断面のEBSD像を撮影した(図6を参照)。そして実施例1のEBSD像から熱電材料の平均粒子径を測定した。
またX線回折測定装置(株式会社リガク社製、商品名:SmartLab)にて、実施例1の熱電材料の配向度を測定したのち、ロットゲーリングファクタFを式2〜式4に基づいて算出した。
そして熱電評価装置(アルバック理工社製、商品名:ZEM)にて、実施例1の焼結体の特性(ゼーベック係数、熱伝導率、移動度、電気伝導率)を測定した。つぎに上述の式1に基づいて実施例1の熱電材料の無次元性能指数ZTを算出した。
(比較例1)
比較例1では、熱電材料(原料)として実施例1の原料を使用し、ボールミルで湿式粉砕し、酸素非存在下(酸素濃度が0.5〜0.9vol%)で乾燥を行った。そして焼結条件を、温度400℃、焼結圧力:40MPa、焼結時間:10分に設定し(高温低圧条件に設定し)、その他の条件は実施例1と同一とした。そして比較例1の各種パラメータを実施例1と同様の手法で算出した。
(比較例2)
比較例2では、熱電材料(原料)として実施例1の原料を使用し、ボールミルにて湿式粉砕を行い、平均粒子径20nm〜1000nmに微細化した。つぎに微細化された熱電材料を酸素非存在下(酸素濃度が0.5〜0.9vol%)で乾燥した。そして焼結条件を、温度:350℃、焼結圧力:100MPa、焼結時間:10分に設定し、その他の条件は実施例1と同一とした。そして比較例2の各種パラメータを実施例1と同様の手法で算出した。
以下の[表1]に、実施例1の試験結果を示し、[表2]に、比較例1の試験結果を示し、[表3]に、比較例2の試験結果を示す。なお[表1]〜[表3]に記載の値は、全て50℃(絶対温度323K)における値である。
(結果及び考察)
[表2]及び[表3]を参照して、比較例1及び比較例2の熱電材料は、熱伝導率が高く、無次元性能指数ZTに劣ることがわかった。
また比較例1の熱電材料は、ロットゲーリングファクタFが0.48となった(配向性に劣る結果となった)。これは比較例1の焼結条件が過酷であったことから、熱電材料の配向性が不ぞろいとなるとともに、結晶構造が破壊されたためと考えられる(図5を参照)。
また比較例2では、熱電材料のロットゲーリングファクタFが0.61であったが、熱伝導率に大きく劣る結果となった。そして比較例2では、熱電材料の平均粒子径が比較的大きく(平均粒子径:2000nm)、焼結時に粒成長が生じたことがわかった(図6を参照)。
これとは異なり[表1]を参照して、実施例1の熱電材料は、比較例1及び2と比較して優れた無次元性能指数ZTを備えることがわかった。
特に実施例1では、比較例1及び2と比較して熱伝導率が極端に低かった。また実施例1では、移動度(キャリア熱伝導率)が向上して、比較例1と同等の電気伝導率を有することがわかった。
また実施例1では、ロットゲーリングファクタFが0.59となり、微細な熱電材料(平均粒子径:200nm)が配向性良く配置することがわかった(図4を参照)。これは熱電材料表面の酸化膜により、焼結時における粒成長が好適に抑えられたためと考えられる。また実施例1の焼結条件により、熱電材料が好適に配向されたためと考えられる。
このことから本実施例のように酸化膜にて焼結時の粒成長を抑えることで、熱伝導率の上昇を好適に抑えられることがわかった。また熱電材料の配向性を揃えることで、酸化膜による電気伝導率の低下を防止又は低減できることがわかった。このため本実施例によれば、熱電材料の無次元性能指数ZTをより高められることが実証された。
本実施形態の熱電材料は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施例では、酸素存在下において第二工程を行う例を説明した。本実施例では、第一工程〜第三工程(熱電材料を微細した後の工程)の少なくとも一工程又はこれらとは異なる他工程を酸素存在下で行うことで、熱電材料表面に酸化膜を形成することができる。
(2)本実施例では、第三工程において、熱電材料を、熱電材料の融点の−400℃〜−200℃の範囲の温度で焼結する例を説明した。焼結条件(温度や圧力等)は、熱電材料の粒成長を極端に助長しない限り適宜変更可能である。
2 熱電材料
4 溶媒
10 回転ロール
12 チャンバ
20 焼結装置
20a 第一型
20b 第二型
20c 空間部

Claims (8)

  1. 表面に酸化膜が形成された平均粒子径が20nm〜1000nmの熱電材料を有するとともに、前記酸化膜に含まれる酸素の合計量は前記熱電材料の重量に対して0.1wt%より多く3wt%以下の酸素を含有する焼結体からなる熱電材料。
  2. ロットゲーリング(Lotgering)法によるc軸配向度が0.59以上である請求項1に記載の熱電材料。
  3. 前記酸化膜に含まれる酸素の合計量は前記熱電材料の重量に対して1.0wt%より多く3wt%以下である請求項1または請求項2に記載の熱電材料。
  4. 前記熱電材料はBiTe系材料である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の熱電材料。
  5. 溶融状態の熱電材料を回転ロール上で10〜10K/secの冷却速度で冷却して短冊状としたのち、平均粒子径20nm〜1000nmの範囲に微細化する第一工程と、
    微細化された前記熱電材料を酸素存在下で乾燥する第二工程と、
    乾燥後の前記熱電材料を、前記熱電材料の融点の−400℃〜−200℃の範囲の温度で焼結する第三工程とを有する請求項1に記載の熱電材料の製造方法。
  6. 前記第三工程は、100〜600MPa圧力を付与しながら行う請求項5に記載の熱電材料の製造方法。
  7. 前記第二工程は、微細化された前記熱電材料を、18vol%以上の酸素存在下で乾燥する請求項5または請求項6に記載の熱電材料の製造方法。
  8. 前記第三工程は、前記熱電材料の融点の−400℃〜−300℃の範囲の温度で焼結する請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の熱電材料の製造方法。
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