図1を参照して本発明によるイオンビーム装置の例を説明する。以下に、イオンビーム装置として、走査イオン顕微鏡装置の第1の例を説明する。本例の走査イオン顕微鏡は、ガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、試料室3、及び、冷却機構4を有する。イオンビーム照射系カラム2、及び、試料室3内は真空に保持される。イオンビーム照射系は、静電型のコンデンサレンズ5、ビーム制限アパーチャ6、ビーム走査電極7、及び、静電型の対物レンズ8を有する。試料室3内には、試料9を載置する試料ステージ10、及び、二次粒子検出器11が設けられている。ガス電界電離イオン源1からのイオンビーム14は、イオンビーム照射系を経由して、試料9に照射される。試料9からの二次粒子線は、二次粒子検出器11によって検出される。また、図示してないが、イオンビームを照射したときの試料のチャージアップを中和するための電子銃や、試料近傍にエッチングやデポジションガスを供給するガス銃を設ける。
冷却機構4は、ガス電界電離イオン源1を冷却するための冷凍機40を有する。本例のイオン顕微鏡では、冷凍機40の中心軸線40Aはイオンビーム照射系の光軸14Aと平行に配置されている。
本例のイオン顕微鏡は、更に、ガス電界電離イオン源1を真空排気するイオン源真空排気用ポンプ12、及び、試料室3を真空排気する試料室真空排気用ポンプ13を有する。
床20の上に配置された装置架台17の上には、防振機構19を介して、ベースプレート18が配置されている。ガス電界電離イオン源1、カラム2、及び、試料室3は、ベースプレート18によって支持されている。
装置架台17には支柱103が設けられている。支柱103によって、冷凍機40が支持されている。冷凍機40の振動は、支柱103を経由して、装置架台17に伝達される。しかしながら、防振機構19によって、冷凍機40の振動は、ベースプレート18には低減して伝達される。
床20には、例えばヘリウムガスを作業ガスとする圧縮機ユニット(コンプレッサ)16が設置され、例えばギフォード・マクマホン型(GM型)冷凍機4に高圧力のヘリウムガスを、配管111を通じて供給する。そして高圧力のヘリウムガスがGM型冷凍機内部で周期的に膨張することにより寒冷を発生させ、膨張して低圧力になった低圧ヘリウムガスは配管112を通じて圧縮機ユニットに回収される。圧縮機ユニット(コンプレッサ)16の振動は、床20を経由して、装置架台17に伝達される。装置架台17とベースプレート18との間には除振機構19が配置されており、床の高周波数の振動はガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、真空試料室3などには伝達しにくいという特徴を持つ。従って、圧縮機ユニット(コンプレッサ)16の振動が、床20を経由して、ガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、及び、試料室3に伝達しにくいという特徴を持つ。ここでは、床20の振動の原因として、冷凍機40及びコンプレッサ16を説明した。しかしながら、床20の振動の原因はこれに限定されるものではない。
防振機構19は、防振ゴム、バネ、ダンパ、又は、これらの組合せによって構成されてよい。ベースプレート18には支柱104が設けられている。支柱104によって冷却機構4の下部が支持されているが、これについては後に図3を参照して説明する。
本例では、装置架台17の上に防振機構19を設けたが、装置架台17の脚に防振機構19を設ける、あるいは両者を併用してもよい。
図2は、図1に示した本発明によるイオン顕微鏡の制御装置の例を示す。本例の制御装置は、ガス電界電離イオン源1を制御する電界電離イオン源制御装置91、冷凍機40を制御する冷凍機制御装置92、コンデンサレンズ5を制御するレンズ制御装置93、ビーム制限アパーチャ6を制御するビーム制限アパーチャ制御装置94、ビーム走査電極7を制御するイオンビーム走査制御装置95、二次粒子検出器11を制御する二次電子検出器制御装置96、試料ステージ10を制御する試料ステージ制御装置97、試料室真空排気用ポンプ13を制御する真空排気用ポンプ制御装置98、及び、各種の演算を行う計算処理装置99を有する。計算処理装置99は画像表示部を備える。画像表示部は、二次粒子検出器11の検出信号から生成された画像、及び、入力手段によって入力した情報を表示する。
試料ステージ10は、試料9を試料載置面内にて直交2方向へ直線移動させる機構、試料9を試料載置面に垂直な方向への直線移動させる機構、及び、試料9を試料載置面内にて回転させる機構を有する。試料ステージ10は、更に、試料9を傾斜軸周りに回転させることによりイオンビーム14の試料9への照射角度を可変できる傾斜機能を備える。これらの制御は計算処理装置99からの指令によって、試料ステージ制御装置97によって実行される。
本例のイオン顕微鏡のイオンビーム照射系の動作を説明する。イオンビーム照射系の動作は、計算処理装置99からの指令により制御される。ガス電界電離イオン源1によって生成されたイオンビーム14は、コンデンサレンズ5によって集束され、ビーム制限アパーチャ6によって、ビーム径が制限され、対物レンズ8によって、集束される。集束されたビームは、試料ステージ10上の試料9の上に走査されながら、照射される。
試料から放出された二次粒子は、二次粒子検出器11によって検出する。二次粒子検出器11からの信号は、輝度変調され、計算処理装置99に送られる。計算処理装置99は、走査イオン顕微鏡像を生成し、それを画像表示部に表示する。こうして、試料表面の高分解能観察を実現することができる。
図3は、図1に示した本発明によるイオン顕微鏡のガス電界電離イオン源1とその冷却機構4の構成の例を示す。ガス電界電離イオン源1およびエミッタティップの防振機構70については、図4にて詳細に説明する。ここでは、冷却機構4を説明する。本例ではガス電界電離イオン源1の冷却機構4として、GM型冷凍機40とヘリウムガスポット43を組み合わせた冷却機構を用いる。GM型冷凍機の中心軸線は、イオン顕微鏡のエミッタティップ21を通るイオンビーム照射系の光軸に平行に配置されている。これにより、イオンビームの集束性の向上と冷凍機能の向上を両立できる。
GM型冷凍機40は、本体41と第1冷却ステージ42Aと第2冷却ステージ42Bを有する。本体41は支柱103によって支持されている。第1冷却ステージ42A及び第2冷却ステージ42Bは、本体41より吊り下げられた構造を有する。
第1冷却ステージ42Aの外径は、第2冷却ステージ42Bの外径より大きい。第1冷却ステージ42Aの冷凍能力は約5Wであり、第2冷却ステージ42Bの冷凍能力は約0.2Wである。第1冷却ステージ42Aは、約50Kまで冷却される。第2冷却ステージ42Bは、4Kまで冷却可能である。
第1冷却ステージ42Aの上端部は、ベローズ69によって囲まれている。第1冷却ステージ42Aの下端部と第2冷却ステージ42Bは、ガス密封型のポット43によって覆われている。ポット43は、第1冷却ステージ42Aを囲むように構成された径が大きい部分43Aと、第2冷却ステージ42Bを囲むように構成された径が小さい部分43Bを有する。ポット43は支柱104によって支持されている。支柱104は図1に示したように、ベースプレート18に支持されている。
ベローズ69及びポット43は、密閉構造を有し、その内部に、熱伝導媒体としてヘリウムガス46が充填されている。2つの冷却ステージ42A、42Bはヘリウムガス46に囲まれているが、ポット43には接触していない。なお、ヘリウムガスの代わりにネオンガスや水素を用いてもよい。
本例のGM型冷凍機40では、第1冷却ステージ42Aは約50Kまで冷却される。そのため第1冷却ステージ42Aの周囲のヘリウムガス46は、約70Kに冷却される。第2冷却ステージ42Bは、4Kまで冷却される。第2冷却ステージ42Bの周囲のヘリウムガス46は約6Kまで冷却される。こうして、ポット43の下端は、約6Kまで冷却される。
GM型冷凍機40の本体41の振動は、支柱103と2つの冷却ステージ42A、42Bに伝達される。冷却ステージ42A、42Bに伝達された振動は、ヘリウムガス46にて減衰する。GM型冷凍機の冷却ステージ42A、42Bが振動しても、ヘリウムガスが中間に存在するため熱は伝導されるが、機械振動は減衰し、第1冷却ステージ41および第2冷却ステージ42で冷却される密封型のポット43に振動が伝播し難い。特に高い振動数の振動は伝達しにくい。すなわち、ポット43の機械振動はGM型冷凍機の冷却ステージ42A、42Bの機械振動に比べて極めて低減するという効果を奏する。図1を参照して説明したように、コンプレッサ16の振動は、床20を経由して、装置架台17に伝達されるが、防振機構19によって、ベースプレート18に伝達されることが防止される。従って、コンプレッサ16の振動は、支柱104、及び、ポット43に伝達されることはない。
なお、ポット43の下端は、熱伝導率の高い銅製の冷却伝導棒53に接続されている。冷却伝導棒53内にはガス供給配管25が設けられている。冷却伝導棒53は、銅製の冷却伝導管57によって覆われている。
本例では、ポット43の径が大きい部分43Aに、図示しない輻射シールドが接続されており、この輻射シールドは、銅製の冷却伝導管57に接続されている。従って、冷却伝導棒53及び冷却伝導管57は常にポット43と同一の温度に保持される。
本例では、GM型冷凍機40を用いたが、その代わりに、パルス管冷凍機、又はスターリング型冷凍機を用いてもよい。また、本例では、冷凍機は、2つの冷却ステージを有するが、単一の冷却ステージを有するものでもよく、冷却ステージの数は特に限定されるものではない。
図4を参照して本発明によるイオン顕微鏡のガス電界電離イオン源、エミッタティップ防振機構70、及びその周辺の構成の例を詳細に説明する。また、図5は図4のAB線での断面図である。本例のガス電界電離イオン源は、エミッタティップ21、エミッタベースマウント64、引き出し電極24、及び、静電レンズ59を有する。引き出し電極24は、イオンビームが通る孔を有する。静電レンズ59は、本例では、3つの電極を有し、それぞれ中心孔を有する。エミッタティップ21は、引き出し電極24に対して対向して配置されている。
静電レンズ59の下には、走査偏向電極301、アパーチャ板302、シャッタ303。及び、二次粒子検出器305が設けられている。なお、イオンビームはイオン照射系の中心線306に沿って通過する。
エミッタティップ21は、上部フランジ51に吊り下げられており、エミッタティップ21の支持部は可動構造となっている。一方、引き出し電極24は真空容器68に対して固定的に装着されている。真空容器68は、図1に示したカラムの上部構造である。
エミッタティップ21は、サファイアベース52によって支持されている。サファイアベース52は、銅網線54を介して、冷却伝導棒53に接続されている。引き出し電極24は、サファイアベース55によって支持されている。サファイアベース55は、銅網線56を介して、冷却伝導棒53に接続されている。従って、エミッタティップ21、サファイアベース52、銅網線54、冷却伝導棒53、及び、ポット43は伝熱経路を構成する。同様に、引き出し電極24、サファイアベース55、銅網線56、冷却伝導棒53、及び、ポット43は伝熱経路を構成する。すなわち、本冷却機構は、圧縮機ユニットで発生させた第1の高圧ガスを膨張させて寒冷を発生する寒冷発生手段と、この寒冷発生手段の寒冷で冷却したポット43内のヘリウムガスである第2のガスで被冷却体であるエミッタティップ21を冷却する冷却機構である。
また、エミッタティップ21及び引き出し電極24を囲むように輻射シールド58が設けられている。輻射シールド58は、引き出し電極24及びイオン化室への熱輻射による熱流入を低減する。輻射シールド58は、冷却伝導管57に接続されている。静電レンズ59の3つの電極のうち、引き出し電極24に最も近い電極60は、輻射シールド58に接続されている。電極60、輻射シールド58、冷却伝導管57、輻射シールド、及び、ポット43は伝熱経路を構成する。
本例では、サファイアベース52、55と冷却伝導棒53は、変形可能な銅網線54、56によって接続されている。銅網線54は、エミッタティップ21の位置が変位しても、エミッタティップ21、サファイアベース52、及び、冷却伝導棒53からなる伝熱経路を保持する機能を有する。更に、可撓性が高い銅網線54は、冷却伝導棒53を経由して、サファイアベース52及びエミッタティップ21に高周波振動が伝達されるのを防止する。銅網線56は、冷却伝導棒53を経由して、サファイアベース55及び引き出し電極24に高周波振動が伝達されるのを防止する。なお、伝熱部材である銅網線54は熱伝導率が高く、振動を伝えにくい柔軟な部材であれば銅に限定されるものでなく、銀網線でも良い。本装置では既に述べたように、床からの振動や冷凍機の振動がエミッタティップに減衰して伝達する工夫を施している。しかしながら、本イオン源の特性を最大限に活かすために、さらに、次のような振動防止機構を備える。すなわち、サファイアベース52に接続されるエミッタベースマウント64の一部に反磁性体ブロック71を挿入し、この反磁性体ブロック71周囲にリング状電磁石72を配置した。反磁性体ブロック71は極低温で反磁性を示す物質、例えばEr3Niが好ましい。なお、リング状電磁石は支持材73で真空容器68に固定してある。この電磁石72を動作させると、反磁性体ブロック71との間に磁気的相互作用として反発力が働き、反磁性体ブロック71を電磁石に対して固定する力が働く。なお、リング状電磁石72はその位置を真空容器外部からノブ74を操作することにより調整でき、エミッタティップ位置を調整することが可能である。また、反磁性体ブロック71とリング状電磁石72とは非接触であり、エミッタティップに伝導では熱を伝えない。このため、エミッタティップ21が極低温に保たれ、エミッタティップからのイオン電流を大きくできるという効果も奏する。なお、本実施例の電磁石の代わりに、反磁性体ブロック周囲に永久磁石を配置しても良い。
また、本実施例の電磁石を超電導(超伝導)コイルによって構成すると、より強い磁場によってエミッタティップは強固に固定される。この場合には、超電導ブロックを冷却された輻射シールド58と接続して、超電導体ブロックを冷却して超電導状態にする。さらに、支持材73を熱伝導率の低い材料、例えばガラス繊維強化プラスチックやピーク材料などを用いる。これにより、超電導体ブロックへの熱の伝達を少なくして超電導状態を保つ。
以上の例では、エミッタティップの固定力はイオンビーム引き出し方向とは垂直方向に働いている。この場合には、特にイオン像の分解能が向上するイオンビーム装置が実現する。これとは別に、図5に示すように反磁性体ブロック71と電磁石72を配置して、イオンビーム引き出し方向と平行方向にエミッタティップ21の固定力が働くようにしても良い。この場合には、エミッタティップと引き出し電極との距離が一定に保たれ、安定なイオンビーム電流が得られるという効果を奏する。また、両者を組み合わせれば、より強固なエミッタティップの固定が実現し、両者の効果を同時に実現することもできる。こうして本実施例では、エミッタティップの極低温化を実現し、より大電流のイオンビームが得られるガス電界電離イオン源が提供され、ひいては高分解能観察が可能なイオン顕微鏡が提供されるという効果を奏する。
なお、本例のガス電界電離イオン源では、引き出し電極は真空容器に対して固定されているが、エミッタティップは引き出し電極に対して可動である。そのため、引き出し電極の孔に対するエミッタティップの位置調整、及び、光学系に対するエミッタティップの軸調整が可能であり、微細なイオンビームを形成することが可能である。
なお、本明細書でいうエミッタベースマウントとは、エミッタティップを真空容器から支える部材またはその一部を意味する。また、エミッタベースマウントを非接触で固定する場合の、「非接触」とは、固定力を発生させるのに必ずしも接触する部材が必要ないという意味で、固定力以外の目的で、例えば電圧供給や配線を接続する目的などで、接触する部材があっても、「非接触」であると定義する。
エミッタティップの軸調整を説明する。シャッタ302を移動させて、シャッタ302に設けられた孔をイオンビーム照射系の中心軸線306から偏芯させる。エミッタティップ21によって生成されたイオンビーム14は、静電レンズ59を通過し、走査偏向電極301を通過し、更に、アパーチャ板302の穴を通過し、シャッタ302に衝突する。シャッタ302から、二次電子などの二次粒子304が発生する。二次粒子304を二次粒子検出器305によって検出し、二次粒子像を得ることができる。シャッタ302の上部に微小な突起を設けておけば、二次粒子像で、エミッタティップのイオン放射パターンを観察することができる。あるいは、微細な穴を設け、アパーチャ板302をイオンビームに垂直な2方向に機械的に移動走査させて、アパーチャ板302を通過したイオンビームが別のシャッタ板に照射されたときの二次粒子を検出してもイオン放出パターンを観察することができる。
このようにイオン放射パターンを観察しながら、エミッタティップの位置、及び、角度を調整する。エミッタティップの軸調整の後に、シャッタ302を移動させる。それによって、イオンビームはシャッタ302の孔を通過する。また、可動放射パターン観察機構303を用いることができる。すなわち、可動放射パターン観察機構303を移動させて、可動放射パターン観察機構303に設けられた孔をイオンビーム照射系の中心軸線306から偏芯させる。可動放射パターン観察機構303にはマイクロチャンネルプレートと蛍光版からイオン像検出器307が配置されており、蛍光板の像をイオン像検出器307の下に配置した鏡によって観察することが可能である。すなわち、イオンビームの放射方向や放射パターンを観察することができる。観察が終了したら、可動放射パターン観察機構303に設けられた孔をイオンビーム照射系の中心軸線306に戻し、イオンビームを通過させる。
図7を参照して、本発明によるイオン顕微鏡のガス電界電離イオン源の構成を更に詳細に説明する。なお、エミッタティップ21の非接触固定方法は前に述べた方法とは別の例を説明する。本例のガス電界電離イオン源は、エミッタティップ21、1対のフィラメント22、フィラメントマウント23、支持棒26、及び、エミッタベースマウント64を有する。エミッタティップ21は、フィラメント22に固定されている。フィラメント22は支持棒26に固定されている。支持棒26はフィラメントマウント23に支持されている。フィラメントマウント23は、エミッタベースマウント64に固定されている。エミッタベースマウント64は、図4に示したように、上部フランジ51に装着されている。エミッタベースマウント64と輻射シールド58又は真空容器68は、ベローズ61によって接続されている。
本装置では既に述べたように、床からの振動や冷凍機の振動をエミッタティップに伝達しない工夫を施している。しかしながら、本イオン源の特性を最大限に活かすために、さらに、次のような振動防止機構を備える。すなわち、サファイアベース52に接続されるエミッタベースマウント64の一部に超電導体ブロック75を挿入し、この超電導体ブロック75周囲にリング状電磁石72を配置した。なお、リング状電磁石は支持材73で真空容器68に固定してある。なお、リング状電磁石72はその位置を真空容器外部からノブ74を操作することにより調整できる。
本例のガス電界電離イオン源は、更に、引き出し電極24、円筒状の抵抗加熱器30、円筒状の側壁28、及び、天板29を有する。引き出し電極24はエミッタティップ21に対向して配置され、イオンビーム14が通るための孔27を有する。天板29には、絶縁材63が接続されている。絶縁材63とフィラメントマウント23の間には、ベローズ62が装着されている。
側壁28及び天板29は、エミッタティップ21を囲んでいる。引き出し電極24、側壁28、天板29、ベローズ62、絶縁材63、及び、フィラメントマウント23によって囲まれる空間を、イオン化室15と呼ぶ。
また、イオン化室15にはガス供給配管25が接続されている。このガス供給配管25によって、エミッタティップ21に、イオン材料ガス(イオン化ガス)が供給される。イオン材料ガス(イオン化ガス)は、ヘリウム又は水素である。
イオン化室15は、引き出し電極24の孔27とガス供給配管25を除いて、密閉されている。ガス供給配管25を経由してイオン化室内には供給されたガスは、引き出し電極の孔27とガス供給配管25以外の領域から漏洩することは無い。引き出し電極24の孔27の径を十分小さくすることによって、イオン化室内を高い気密性及び密閉性を保持することができる。引き出し電極24の孔27の径は、例えば、0.2mm以下である。それによって、ガス供給管25からイオン化室15にイオン化ガスを供給すると、イオン化室15のガス圧力は真空容器のガス圧力よりも少なくとも1桁以上大きくなる。それによってイオンビームが真空中のガスと衝突して中性化する割合が減少し、大電流のイオンビームを生成することができる。
抵抗加熱器30は、引き出し電極24、側壁28等を脱ガス処理するために用いる。引き出し電極24、側壁28等を加熱することによって、それより脱ガス化する。抵抗加熱器30は、イオン化室15の外側に配置する。従って、抵抗加熱器自身が脱ガス化しても、それはイオン化室外で行われるから、イオン化室内は高真空化することができる。
本例では脱ガス処理に、抵抗加熱器を用いたが、代わりに、加熱用ランプを用いてもよい。加熱用ランプは、引き出し電極24を非接触で加熱できるため、引き出し電極の周囲構造を簡単にできる。更に、加熱用ランプでは、高電圧を印加する必要が無いため、加熱用ランプ電源の構造が簡単である。更に、抵抗加熱器を用いる代わりに、ガス供給配管25を介して高温の不活性ガスを供給して、引き出し電極、側壁等を加熱し、脱ガス処理してもよい。この場合、ガス加熱機構を接地電位にすることができる。更に、引き出し電極の周囲構造が簡単になり、且つ、配線及び電源が不要である。
試料室3、及び、試料室真空排気用ポンプ13に装着された抵抗加熱器によって、試料室3、及び、試料室真空排気用ポンプ13を約200℃まで加熱し、試料室3の真空度を大きくとも10−7Pa以下にするとよい。それによって、イオンビームを試料に照射したときに、試料の表面にコンタミネーションが付着することが回避され、試料の表面を良好に観察できる。従来の技術では、試料の表面にヘリウムイオン又は水素イオンのビームを照射すると、コンタミネーションによるデポジションの成長が早いため、試料表面の観察が困難になる場合があった。そこで、試料室3、及び、試料室真空排気用ポンプ13を真空の状態で加熱処理し、試料室3の真空内のハイドロカーボン系の残留ガスを微量化する。それによって、試料の最表面を高分解能で観察できる。
次に、本例のガス電界電離イオン源の動作を説明する。イオン源真空排気用ポンプ12によって真空容器内を真空排気する。抵抗加熱器30によって、引き出し電極24、側壁28、及び、天板29の脱ガス処理を行う。即ち、引き出し電極24、側壁28、及び、天板29を加熱することにより脱ガス化する。尚、同時に、真空容器の外側に別の抵抗加熱器を配置し、真空容器を加熱してよい。それによって、真空容器内の真空度が向上し、残留ガス濃度が低下する。この操作によりイオン放出電流の時間安定性を向上させることができる。
脱ガス処理が終了すると、抵抗加熱器30による加熱を停止し、十分な時間が経過した後、冷凍機を運転する。それによってエミッタティップ21、引き出し電極24、及び、輻射シールド58等が冷却される。次に、ガス供給配管25によりイオン化ガスをイオン化室15に導入する。イオン化ガスはヘリウム又は水素であるが、ここでは、ヘリウムであるとして説明する。上述のように、イオン化室内は高い真空度を有する。従って、エミッタティップ21によって生成されたイオンビームがイオン化室内の残留ガスと衝突して中性化する割合が少なくなる。そのため、大電流のイオンビームを生成することができる。また、高温のヘリウムガス分子が引き出し電極と衝突する個数は減少する。そのため、エミッタティップ、及び、引き出し電極の冷却温度を下げることができる。したがって、大電流のイオンビームを試料に照射できる。
次に、エミッタティップ21と引き出し電極24の間に電圧を印加する。エミッタティップの先端に強電界が形成される。ガス供給配管25から供給されたヘリウムの多くが、強電界によってエミッタティップ面に引っ張られる。ヘリウムは、最も電界の強いエミッタティップの先端近傍に到達する。そこでヘリウムが電界電離し、ヘリウムイオンビームが生成される。ヘリウムイオンビームは、引き出し電極24の孔27を経由して、イオンビーム照射系に導かれる。
なお、エミッタティップの固定方法、すなわち、サファイアベース52に接続されるエミッタティップマウントの一部に超電導体ブロックを用いた振動防止機構については後述する。
次に、エミッタティップ21の構造及び作製方法を説明する。先ず、直径約100〜400μm、軸方位<111>のタングステン線を用意し、その先端を鋭利に成形する。それによって、曲率半径が数10nmの先端を有するエミッタティップが得られる。このエミッタティップの先端に、別の真空容器注で白金を真空蒸着させる。次に、高温加熱下にて、白金原子をエミッタティップの先端に移動させる。それによって、白金原子によるナノメートルオーダのピラミッド型構造が形成される。これをナノピラミッドと呼ぶことにする。ナノピラミッドは、典型的には、先端に1個の原子を有し、その下に3個又は6個の原子の層を有し、さらにその下に10個以上の原子の層を有する。
なお、本例では、タングステンの細線を用いたがモリブデンの細線を用いることもできる。また、本例では、白金の被覆を用いたが、イリジウム、レニウム、オスミウム、パラジュウム、ロジュウム等の被覆を用いることもできる。
イオン化ガスとしてヘリウムを用いる場合には、ヘリウムが電離する電界強度よりも金属の蒸発強度が大きいことが重要である。従って、白金、レニウム、オスミウム、イリジウムの被覆が好適となる。イオン化ガスとして水素を用いる場合には、白金、レニウム、オスミウム、パラジュウム、ロジュウム、イリジウムの被覆が好適である。なお、これらの金属の被覆の形成は、真空蒸着法によっても可能であるが、溶液中でのメッキによっても可能である。
また、エミッタティップの先端にナノピラミッドを形成する方法として、他に、真空中での電界蒸発、イオンビーム照射等を用いてもよい。このような方法によって、タングステン線又はモリブデン線の先端にタングステン原子又はモリブデン原子ナノピラミッドを形成することができる。例えば<111>のタングステン線を用いた場合には、先端が3個のタングステン原子で構成されるのが特徴となる。
上述のように、本発明によるガス電界電離イオン源のエミッタティップ21の特徴は、ナノピラミッドにある。エミッタティップ21の先端に形成される電界強度を調整することによって、エミッタティップの先端の1個の原子の近傍でヘリウムイオンを生成させることができる。従って、イオンが放出される領域、即ち、イオン光源は極めて狭い領域であり、ナノメータ以下である。このように、非常に限定された領域からイオンを発生させることによって、ビーム径を1nm以下とすることができる。そのため、イオン源の単位面積及び単位立体角当たりの電流値は大きくなる。これは試料上で微細径・大電流のイオンビームを得るためには重要な特性である。
特に、タングステンに白金を蒸着した場合には、先端に1個の原子が存在するナノピラミッド構造が安定して形成される。この場合、ヘリウムイオン発生箇所は、先端の1個の原子近傍に集中される。タングステン<111>の先端の3個の原子の場合には、ヘリウムイオン発生箇所は、3個の原子近傍に分散される。したがって、ヘリウムガスが1個の原子に集中して供給される白金のナノピラミッド構造を持つイオン源の方が単位面積・単位立体角から放出される電流は大きくできる。すなわち、タングステンに白金を蒸着したエミッタティップとすれば、イオン顕微鏡の試料上のビーム径を小さくしたり、電流を増大したりするのに好適となる効果を奏する。なお、レニウム、オスミウム、イリジウム、パラジュウム、ロジュウム、などを用いても、先端原子1個のナノピラミッドが形成された場合には、同様に単位面積・単位立体角から放出される電流を大きくすることができ、イオン顕微鏡の試料上のビーム径を小さくしたり、電流を増大したりするのに好適となる。
図8に、ビーム制限アパーチャから脱離ガスのエミッタティップへの付着低減に関するイオンビーム装置を示す。既に述べたように、ガス電界電離イオン源1によって生成されたイオンビーム14は、コンデンサレンズ5によって集束され、ビーム制限アパーチャ6によって、ビーム径が制限され、対物レンズ8によって、集束される。集束されたビームは、試料ステージ10上の試料9の上に走査されながら、照射される。ここで、従来のイオン顕微鏡では、イオンビームがビーム制限アパーチャなどに照射されたときに発生するガスに対するエミッタティップへの付着およびイオンビーム電流安定度低下という観点では十分な対策が採られていなかった。すなわち、本願発明者は、イオンビームがビーム制限アパーチャなどに照射されたときに発生する脱離分子がエミッタティップ先端に付着してイオンビーム電流を不安定にするという問題を見出した。すなわち、エミッタティップ先端に付着した分子に近づいたヘリウムがイオン化されると、ナノピラミッド先端へのヘリウムの供給が少なくなり、イオンビーム電流が少なくなってしまう。すなわち、不純物ガスの存在は、イオンビーム電流を不安定にする。
そこで、ビーム制限アパーチャが板500に開けられた穴であるとき、本発明では図8に示すようにイオンビームの照射方向501と板の垂線502とが傾斜関係にあるように構成した。これによると、イオンビーム14がビーム制限アパーチャ500に照射されたときに発生する脱離分子503の多くはエミッタティップ21の方向には飛行せず、エミッタティップ21に付着する分子も飛躍的に減少する。したがって、イオンビーム電流を不安定にするということが少なくなる、すなわちイオンビーム電流が安定して、観察像に明るさのムラが無い試料観察を可能にするイオンビーム装置が提供される。特に、イオンビームの照射方向と板の垂線との角度を45度以上に大きくすると、エミッタティップには、ほとんど不純物ガス分子が付着することなくイオンビーム電流が特に安定することがわかった。
また、ビーム制限アパーチャに吸着した不純物ガスが脱離するという観点で、ビーム制限アパーチャを含む真空容器の真空度を10−7Pa以下にすると特に効果的であることを見出した。また、このビーム制限アパーチャを含む真空容器は約200℃に加熱可能なベーキングヒータ504を備えており真空排気しながらベーキングすることにより真空度を10−7Pa以下にすることが可能である。また、ビーム制限アパーチャの板500はプラズマを使ったクリーニングにより付着分子が少ない状態にしておくとさらに効果的である。なお、ビーム制限アパーチャを内包する真空容器を排気する真空ポンプ505はノーブルポンプ、イオンポンプ及び非蒸発ゲッタポンプなどが好適であり、特にターボ分子ポンプやロータリポンプを動作させない真空排気システムとすると、エミッタティップの振動が低下して高分解能の像が得られるという効果を奏する。
また、ヘリウムや水素などの質量の軽い元素をイオンビームとして引き出す前に、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの質量の重い元素をイオンビームとして引き出して、ビーム制限アパーチャに照射する。こうすると、ビーム制限アパーチャに付着していた不純物の多くが脱離して、ヘリウムや水素などの質量の軽い元素をイオンビームとして照射する場合に、ビーム制限アパーチャから脱離する不純物ガスが減少することを見出した。すなわちイオンビーム電流が安定して、観察像に明るさのムラが無い試料観察を可能にするイオンビーム装置が提供される。
次に、エミッタティップ周辺に供給するイオン化ガス中の不純物がイオン電流を不安定化する現象に着目した例について、図9を用いて説明する。本イオン源のイオン化ガスを供給するガスの純度は高く、不純物の濃度は1/105レベルである。しかし、本願発明者は、わずかに含まれる不純物ガスがエミッタティップ先端に付着してイオンビーム電流を不安定にするという問題を見出した。このため、本実施例では、図9に示すように非蒸発ゲッタ材料を含んだイオン源純化用バッファタンク511を設けた。本バッファタンク周囲にはバッファタンク全体を約200℃に加熱可能なベーキングヒータ512および、非蒸発ゲッタ材料513を500℃に加熱可能な活性化ヒータ514を備える。また、イオン材料ガスボンベ515との間に開閉バルブ516および、真空ポンプ517との間に開閉バルブ518を備える。
次に、イオン源純化用バッファタンクの使い方について述べる。まず、真空ポンプ517との間のバルブ518を開けて、バッファタンク511を真空状態にする。その後、バッファタンク全体を約200℃で加熱して、タンク内壁に吸着した不純物ガスを排気する。加熱終了直後に、非蒸発ゲッタ材料513を500℃に加熱する。これにより非蒸発ゲッタ材料513は活性化され、ガス分子を吸着する。ただし、イオン材料ガスをヘリウムや、アルゴンなどの不活性ガスにした場合にはこれらを吸着しない。次に、真空ポンプとの間のバルブを閉めて、ボンベガス515との間のバルブ516を開けて一定量バッファタンク中にイオン材料ガスが溜まった後、バルブ516を閉める。すると、イオン源材料中に含まれる不純物ガスは非蒸発ゲッタ材料に吸着して、イオン源材料ガスが純化される。このガスを流量調整バルブで流量を制御して、イオン源中に導く。すなわち、イオン化室のエミッタティップ21周辺に導入する。すると、エミッタティップ21に付着する不純物ガス分子も飛躍的に減少し、イオンビーム電流が安定して、観察像に明るさのムラが無い試料観察を可能にするイオンビーム装置が提供される
また、図7では、イオン化室に非蒸発ゲッタ材料を用いている。本実施例では、イオン材料ガス供給配管25から放出されるガスが衝突する壁にゲッタ材料520を配置した。また、イオン化室外壁には加熱ヒータ30が備えられておりイオン化ガス導入前に、非蒸発ゲッタ材料520を加熱して活性化する。また、非蒸発ゲッタ材料から放出される不純物ガスがエミッタティップ21に直接向かわないように、エミッタティップには汚れ防止カバー521を設けた。そして、イオン源を極低温に冷却した後、イオン化ガスをイオン材料ガス供給配管25から供給する。このようにすると、エミッタティップに付着する不純物ガス分子が飛躍的に減少し、イオンビーム電流が安定して、観察像に明るさのムラが無い試料観察を可能にするイオンビーム装置が提供される
また、同様に試料室真空容器からイオン源真空容器に流入する不純物ガスがエミッタティップ先端に付着してイオンビーム電流を不安定にするという問題を見出した。このため、試料室の真空度をノーブルポンプ、イオンポンプ及び非蒸発ゲッタポンプで10−7Paまで排気して、イオン源真空容器に流入する不純物ガスをできるだけ減少するようにした。これにより、エミッタティップに付着する不純物ガス分子も飛躍的に減少し、イオンビーム電流が安定して、観察像に明るさのムラが無い試料観察を可能にするイオンビーム装置が提供される。
本イオン源の特徴はナノピラミッドの先端の原子1個近傍から放出されたイオンを用いることである。すなわち、イオンが放出される領域が狭くイオン光源がナノメータ以下に小さい。このためイオン光源を同じ倍率で試料に集束するか、縮小率を2分の1程度に大きくすると、イオン源の特性を最大限に活かすことができる。従来のガリウム液体金属イオン源では、イオン光源の寸法は、約50nmと推定されている。従って、試料上で5nmのビーム径を実現するためには、縮小率を1/10以下にする必要がある。この場合、イオン源のエミッタティップの振動は、試料上では10分の1以下に縮小される。例えば、エミッタティップが10nm振動していても、試料上におけるビームスポットの振動は1nm以下となる。従って、5nmのビーム径に対する、エミッタティップの振動の影響は軽微である。ところが、本例では、縮小率が小さく、1〜1/2程度である。従って、エミッタティップにおける10nmの振動は、縮小率が1/2の場合には試料上では5nmの振動となり、ビーム径に対する試料の振動が大きい。すなわち、例えば0.2nmの分解能を実現するためには、大きくともエミッタティップの振動を0.1nm以下にする必要がある。従来のイオン源はエミッタティップ先端の振動防止という観点では必ずしも十分でなかった。
そこで、本発明によると、図1に示したように、防振機構を設ける。即ち、防振機構19によって、冷凍機40及びコンプレッサ16の振動が、ガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、及び、試料室3に伝達されにくくなる。コンプレッサ16の振動が、ポット43及び試料ステージ10に伝達されにくくなる。
さらに、図7に示すように、本発明では、サファイアベース52に接続されるエミッタベースマウント64の一部に超電導体ブロック75を用いた振動防止機構を設けた。超電導体ブロック周囲にはリング状電磁石72が配置してあり、リング状電磁石は支持材73で真空容器に固定してある。まず、超電導状態に無い温度で電磁石を動作させておく。そして、エミッタティップ冷却に伴い超電導体ブロックを超電導状態にする。すると、超電導体ブロックは電磁石からの磁場を固定する、いわゆるピニング効果が表れる。すると、超電導体ブロック75とリング状電磁石72は非接触で固定されることになり、超電導体ブロック75の先端に取り付けられたエミッタティップの振動が防止されることになる。なお、リング状電磁石はその位置を真空容器外部から調整でき、エミッタティップ位置を調整することが可能である。また、超電導体ブロックとリング状電磁石とは非接触であり、エミッタティップに伝導では熱を伝えない。このため、エミッタティップが極低温に保たれ、エミッタティップからの電流を大きくできるという効果も奏する。
なお、本発明の電磁石を超電導コイルによって構成すると、より強い磁場によってエミッタティップは強固に固定される。また、リング状電磁石の代わりに、超電導ブロック周囲に永久磁石を配置しても良い。
また、超電導体ブロック75周囲に複数の電磁石を配置しても良い。そして、複数の電磁石の磁場強度を制御することにより、エミッタティップベースマウントの位置を制御することができるようになる。以上述べたように、本発明によると、微小な径のイオンビームを生成し、かつエミッタティップの振動を防止することによって、試料表面の高分解能観察を実現することができる。また、本イオン源ではイオン化室の気密が高く、イオン化室の外側では真空度が高いためイオンビームが真空中のガスと衝突して中性化する割合が少ないため、大電流のイオンビームを試料に照射できるという効果を奏する。また、高温のヘリウムガス分子が引き出し電極と衝突する個数が少なくなり、エミッタティップおよび引き出し電極の冷却温度を下げることができ、大電流のイオンビームを試料に照射できるという効果を奏する。
なお、不測の放電現象などによりナノピラミッドが損傷した場合は、エミッタティップを約30分間加熱(1000℃程度)する。それにより、ナノピラミッドを再生することが可能である。すなわち、容易にエミッタティップを修復することができる。そのため、実用的なイオン顕微鏡を実現することができる。なお、対物レンズ8の先端と試料9の表面までの距離は仕事距離と称される。本イオンビーム装置では仕事距離が2mm未満にすると、分解能は0.5nm未満となり、超分解能が実現する。従来は、ガリウムなどのイオンが用いられていたため試料からのスパッタ粒子が対物レンズを汚染して、正常動作を妨げる懸念があった。本発明によるイオン顕微鏡ではこの懸念が少なく超高分解能を実現できた。
以上、本発明のガス電界電離イオン源およびイオンビーム装置によれば、冷却機構からの振動は、エミッタティップに伝達されにくく、エミッタベースマウントの固定機構が備えられているためエミッタティップの振動が防止され高分解能観察が可能となる。
更に、本発明のガス電界電離イオン源によれば、引き出し電極24の孔27を十分小さくすることによって、イオン化室の密閉度が高まり、イオン化室の高ガス圧力を実現できる。そのため、大電流のイオン放出が可能となる。
また、本発明のガス電界電離イオン源によれば、冷却機構4からエミッタティップ21までの伝熱経路が設けられるため、エミッタの極低温化が実現できる。そのため、大電流のイオンビームが得られる。また、本発明のガス電界電離イオン源によれば、引き出し電極を固定構造とし、エミッタティップを可動構造とし、変形可能な素材を挟んでエミッタティップと引き出し電極を接続したことにより、エミッタティップの軸調整が容易化およびイオンの大電流化が実現できる。
図10を参照して、本発明によるイオン顕微鏡の第2の例を説明する。本例のイオン顕微鏡を、図1に示した第1の例と比較すると、ガス電界電離イオン源1のための冷却機構4の構成が異なる。ここでは、冷却機構4について説明する。本例の冷却機構4は、真空チャンバ81と冷却タンク82を有する。真空チャンバ81は、真空容器によって構成されており、その中に、冷却タンク82が収納されている。真空チャンバ81と冷却タンク82は接触していない。従って、振動及び熱が、真空チャンバ81と冷却タンク82の間ではほとんど伝達されない。
冷却タンク82は、真空排気口83を有する。真空排気口83は図示しない真空ポンプに接続されている。冷却タンク82には図3に示した例1と同様に銅製の冷却伝導棒53が接続されている。図3及び図4に示した冷却機構と同様に、本例でも、エミッタティップ21、サファイアベース52、銅網線54、冷却伝導棒53、及び、冷却タンク82は伝熱経路を構成する。同様に、引き出し電極24、サファイアベース55、銅網線56、冷却伝導棒53、及び、冷却タンク82は伝熱経路を構成する。なお、伝熱部材である銅網線54は熱伝導率が高く、振動を伝えにくい柔軟な部材であれば銅に限定されるものでなく、銀網線でも良い。
先ず、冷却タンク82に、液体窒素を導入し、真空排気口83を介して、冷却タンク内を真空排気する。それによって、液体窒素の温度は低下する。液体窒素は凝固し、固体窒素84となる。
本例では、液体窒素が完全に固化したら、真空排気口83に接続された真空ポンプを停止し、エミッタティップ21よりイオンビームを生成する。真空ポンプを停止すると、真空ポンプの機械振動は生じない。
イオンビームの生成中、エミッタティップ21及び引き出し電極24と冷却タンク82の間の伝熱経路を介して、熱が伝達される。それによって、冷却タンク82内の固体窒素は、昇華又は融解する。本例ではエミッタティップ21及び引き出し電極24の冷却に、固体窒素の昇華熱、融解熱等の潜熱を利用することができる。
固体窒素がすべて液化して沸騰が始まる前に、真空排気口83に接続された真空ポンプを作動し、冷却タンク82内を真空排気する。それによって、液体窒素の温度が低下し、固化する。液体窒素が全て固化したら、再度、真空排気口83に接続された真空ポンプを停止する。これを繰返し、冷却タンク82内の窒素の温度を常に窒素の融点付近に維持することができる。冷却タンク82内の窒素の温度は、常に、沸騰点より低温である。従って、液体窒素の沸騰に起因する振動は生じない。こうして本例の冷却機構は機械的振動を発生させない。そのため、高分解能観察が可能となる。
本例では、真空排気口83に接続された真空ポンプの運転を制御するために、冷却タンク82内の窒素の温度を計測する。例えば、窒素の温度が融点より高い所定の温度になったら、真空排気口83に接続された真空ポンプの運転を開始する。窒素の温度が融点より低い所定の温度になったら、真空排気口83に接続された真空ポンプの運転を停止する。尚、冷却タンク82内の窒素の温度の代わりに、真空度を計測し、それによって、真空排気口83に接続された真空ポンプの運転を制御してもよい。
本例では、冷却タンク82内を真空排気することによって、冷却タンク82内の液体窒素を冷却した。しかしながら、それでは、気相の窒素が排気され、窒素は時間と共に減少する。そこで、冷凍機を用いて、冷却タンク82内の固体窒素を冷却してもよい。それによって、窒素の減少を防止することができる。尚、好ましくは、冷凍機の運転中は、ガス電界電離イオン源1によるイオンビームの生成を停止する。すなわち、本実施例のイオン源によれば、機械振動の低減が実現し高分解能観察が可能なイオン顕微鏡が提供される。
床20の上に配置された装置架台17の上には、防振機構19を介して、ベースプレート18が配置されている。ガス電界電離イオン源1、カラム2、及び、試料室3は、ベースプレート18によって支持されている。
装置架台17には支柱85が設けられている。支柱85によって、冷却タンク82の真空排気口83が支持されている。支柱85と真空チャンバ81の間は、ベローズ86によって接続されている。ベースプレート18には支柱87が設けられている。真空チャンバ81は、支柱87によって支持されていると同時に、ベローズ86を介して、支柱85によって吊り下げられている。
ベローズ86は、高周波の振動の伝達を低減する。従って、床20からの振動が、装置架台17を経由して支柱85に伝達されても、ベローズ86によって低減される。従って、床20からの振動は、支柱85を経由して真空チャンバ81にほとんど伝達されない。床20からの振動は、装置架台17に伝達される。しかしながら、防振機構19によって、床20からの振動は、ベースプレート18にはほとんど伝達されない。従って、床20からの振動は、支柱87を経由して、真空チャンバ81にほとんど伝達されない。
以上より、本例によると、床20からの振動が、真空チャンバ81及び冷却タンク82に伝達されることはない。従って、床20からの振動が、冷却機構4を介してガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、及び、試料室3に伝達されることがない。
従来技術では、液体窒素を収納するタンクの振動を考慮する例があった。しかしながら、タンクの振動が真空チャンバに伝達し、更に、イオンビームに影響を及ぼすことは、充分検討されていなかった。本発明によると、冷却タンク82の振動は真空チャンバ81に伝達されにくい。また、真空チャンバ81及び冷却タンク82を介した床20からの振動が低減されるため、高分解能のイオンビーム顕微鏡が提供される。
なお、本例では冷却タンク82に窒素を装填したが、窒素以外に、ネオン、酸素、アルゴン、メタン、水素などを用いてもよい。特に固体ネオンを用いた場合には、ヘリウム又は水素イオンビームを大電流化するのに好適な低温を実現できる。次に、図11に本実施例でのエミッタティップ防振機構を示す。本実施例では、エミッタベースマウント64の一部に複数の永久磁石530を埋め込んだ振動防止機構を設けた。永久磁石530周囲には超電導体ブロック531が配置してあり、イオン化室側壁28に固定してある。エミッタティップすなわちイオン化室の冷却に伴い超電導体ブロック531を超電導状態にする。すると、超電導体ブロックは永久磁石530からの磁場を固定する、いわゆるピニング効果が表れる。すると、超電導体ブロック531と永久磁石530は非接触で固定されることになり、エミッタベースマウント64の先端に取り付けられたエミッタティップの振動が防止されることになる。また、超電導体ブロックは極低温のイオン化室側壁28に接続されているため、本防振機構は、エミッタティップに多量の熱を加えない。このため、エミッタティップが極低温に保たれ、エミッタティップからのイオンビーム電流を大きくできるという効果も奏する。
なお、本実施例で、エミッタベースマウント64に超電導体ブロックを埋め込み、イオン化室側壁28に永久磁石を配置しても同様な効果が得られる。
また、図示してないが、永久磁石からの磁場がイオンビーム軌道に影響しないように磁気シールドをエミッタティップマウント23上部に配置した。これによりエミッタティップ振動防止とイオンビームの軌道を曲げないことが両立する。以上、本発明のガス電界電離イオン源およびイオンビーム装置によれば、冷却機構からの振動は、エミッタティップに伝達されにくく、エミッタベースマウントの固定機構が備えられているためエミッタティップの振動が防止され高分解能観察が可能となる。
図12を参照して、本発明によるイオン顕微鏡の第3の例を説明する。本例のイオン顕微鏡を、図1に示した第1の例と比較すると、ガス電界電離イオン源1のための冷却機構4の構成が異なる。ここでは、冷却機構4について説明する。本例の冷却機構4は、ヘリウム循環方式である。本例の冷却機構4は、冷媒となるヘリウムガスをGM型冷凍機401および熱交換器402、405、410、414を用いて冷却して、これを圧縮機ユニット400により循環させる。コンプレッサ403で加圧された例えば0.9MPaの常温の温度300Kのヘリウムガスは配管409を通じて熱交換器402に流入し、後述する戻りの低温のヘリウムガスと熱交換して温度約60Kに冷却される。冷却されたヘリウムガスは断熱されたトランスファーチューブ404内の配管403を通じて輸送され、ガス電界電離イオン源1近くに配置された熱交換器405に流入する。ここで、熱交換器405に熱的に一体化された熱伝導体406を温度約65Kに冷却し、前記した輻射シールド等を冷却する。加温されたヘリウムガスは熱交換器405を流出し配管407を通じて、GM型冷凍機401の第1冷却ステージ408に熱的に一体化された熱交換器409に流入し、温度約50Kに冷却され、熱交換器410に流入する。後述する戻りの低温のヘリウムガスと熱交換して温度約15Kに冷却され、そののち、GM型冷凍機401の第2冷却ステージ411に熱的に一体化された熱交換器412に流入し、温度約9Kに冷却され、トランスファーチューブ404内の配管413を通じて輸送され、ガス電界電離イオン源1近くに配置された熱交換器414に流入し、熱交換器414で熱的に接続された良熱伝導体の冷却伝導棒53を温度約10Kに冷却する。熱交換器414で加温されたヘリウムガスは配管415を通じて熱交換器410、402に順次流入し、前述のヘリウムガスと熱交換してほぼ常温お温度約275Kになって、配管415を通じて圧縮機ユニット400に回収される。なお、前述した低音部は真空断熱容器416ないに収納され、トランスファーチューブ404とは、図示していないが断熱的に接続されている。また、真空断熱容器416内において、図示していないが低温部は輻射シールド板や、積層断熱材等により室温部からの輻射熱による熱侵入を防止している。
また、トランスファーチューブ404は床20または床20に設置された支持体417に強固に固定支持されている。ここで、図示していないが熱伝導率が低い断熱材であるガラス繊維入りのプラスチック製に断熱体でトランスファーチューブ404の内部で固定支持された配管403、407、413、415も床20で固定支持されている。また、ガス電界電離イオン源1近くにおいて、トランスファーチューブ404は、ベースプレート18に支持固定されており、同様にここで、図示していないが熱伝導率が低い断熱材であるガラス繊維入りのプラスチック製に断熱体でトランスファーチューブ404の内部で固定支持された配管403、407、413、415もベースプレート18で固定支持されている。
すなわち、本冷却機構は、圧縮機ユニット16で発生させた第1の高圧ガスを膨張させて寒冷を発生する寒冷発生手段と、この寒冷発生手段の寒冷で冷却し、圧縮機ユニット400で循環する第2の移動する冷媒であるヘリウムガスで被冷却体を冷却する冷却機構である。
冷却伝導棒53は変形可能な銅網線54およびサファイアベースを経てエミッタティップ21に接続される。これによりエミッタティップ21の冷却が実現する。この実施例では、GM型冷凍機は床を振動させる原因になるが、ガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、真空試料室3などはGM冷凍機とは隔離されて設置されており、さらにガス電界電離イオン源1近傍に設置した熱交換器405、414に連結された配管403、407、413、415は殆ど振動しない床20やベース18に強固に固定支持されて振動せず、さらに床から振動絶縁されているため機械振動の伝達の極めて少ないシステムとなることが特徴である。
しかしながら、本イオン源の特性を最大限に活かすために、図11に示したような振動防止機構を備える。すなわち、エミッタベースマウントの周囲に複数箇所に永久磁石を配置し、その周囲に超電導体ブロックを配置する。この超電導体ブロックはイオン化室側壁に固定される。この場合には超電導体ブロックはイオン化室冷却に伴い超電導状態になる。まず、超電導状態に無い温度でエミッタティップ位置を調整しておく。そして、エミッタティップ冷却に伴い超電導体ブロックを超電導状態にする。すると、超電導体ブロックは永久磁石からの磁場を固定する、いわゆるピニング効果が表れる。すると、永久磁石が配置されたエミッタティップマウントは、超電導体ブロックが配置されたイオン化室に非接触で固定されることになり、エミッタティップマウントの先端に取り付けられたエミッタティップの振動が防止されることになる。また、超電導体ブロックは極低温のイオン化室側壁28に接続されているため、本防振機構は、エミッタティップに多量の熱を加えない。このため、エミッタティップが極低温に保たれ、エミッタティップからのイオンビーム電流を大きくできるという効果も奏する。なお、エミッタベースマウントに超電導体ブロックを配置し、その周囲に永久磁石を配置して、これをイオン化室側壁に固定しても同様な効果が得られる。
以上、本発明のガス電界電離イオン源およびイオンビーム装置によれば、冷却機構からの振動は、エミッタティップに伝達されにくく、エミッタベースマウントの固定機構が備えられているためエミッタティップの振動が防止され高分解能観察が可能となる。
更に、本願の発明者は、コンプレッサ16又は400の音がガス電界電離イオン源1を振動させてその分解能を劣化させることを突き止めた。そのため、本例では、コンプレッサとガス電界電離イオン源を空間的に分離するカバー417を設けた。これにより、コンプレッサの音に起因した振動の影響を低減することができる。それによって、高分解能観察が可能となる。尚、図1、図7、及び図8に示した例においても、コンプレッサの音に起因した振動の影響を低減するために、カバーを設けてもよい。
また、本実施例の場合、ヘリウム圧縮機400を用いて第2のヘリウムガスを循環させたが、図示しないが流量調整弁を介して、ヘリウム圧縮機16の 配管111、112と、それぞれ流量調整弁を介して、配管409、416を連通し、配管409内にヘリウム圧縮機16の一部のヘリウムガスを第2のヘリウムガスとして循環ヘリウムガスを供給し、配管416でガスをヘリウム圧縮機16に回収しても、同様な効果を生じる。また、本例では、GM型冷凍機40を用いたが、その代わりに、パルス管冷凍機、又はスターリング型冷凍機を用いてもよい。また、本例では、冷凍機は、2つの冷却ステージを有するが、単一の冷却ステージを有するものでもよく、冷却ステージの数は特に限定されるものではない。例えば、1段の冷却ステージを持つ小型のスターリング型冷凍を用いて、最低冷却温度を50Kとしたヘリウム循環冷凍機とすれば、コンパクトで低コストのイオンビーム装置を実現できる。また、この場合には、ヘリウムガスの代わりにネオンガスや水素を用いてもよい。
図13A及び図13Bを参照して、本発明によるイオン顕微鏡の第4の例を説明する。ここでは、ガス電界電離イオン源のイオン化室の構造を説明する。本例では、イオン化室の配線構造に特徴がある。ガス電界電離イオン源は、エミッタティップ21を加熱するための加熱電源134、イオンを加速するための加速電圧をエミッタティップ21に供給する高電圧電源135、イオンを引き出すための引き出し電圧を引き出し電極24に供給する引き出し電源141、及び、抵抗加熱器30を加熱するための加熱電源142を有する。
加熱電源134、142は10V、高電圧電源135は30kV、引き出し電源141は3kVであってよい。
図13Bに示すように、フィラメント22と高電圧電源135は、銅製の太線133と高温超電導物質製の細線136によって接続されている。フィラメント22と加熱電源134は、銅製の太線133によって接続されている。抵抗加熱器30と加熱電源142は、銅線の太線138と、高温超電導物質製の細線139によって接続されている。引き出し電極24と抵抗加熱器30は同一電位を有する。
銅線の太線133には切断機構137が設けられている。切断機構137は、可動機構を有し、銅製の太線133をフィラメント22から切断する切断位置と、銅製の太線133をフィラメント22に接続する接続位置の、2つの位置の間を移動するように構成されている。銅線の太線138には切断機構140が設けられている。切断機構140は、可動機構を有し、銅製の太線138を抵抗加熱器30から切断する切断位置と、銅製の太線138を抵抗加熱器30に接続する接続位置の、2つの位置の間を移動するように構成されている。図13Aは、切断機構137、140が共に接続位置にある状態を示し、図13Bは、切断機構137、140が共に切断位置にある状態を示す。切断機構137、140が共に切断位置にあるとき、銅製の太線133、138を経由して、それぞれ、熱が、フィラメント22及び引き出し電源141に、流入することが防止される。切断機構137、140は真空容器の外部から操作可能である。
本例では、イオン化室15を開閉する開閉バルブが取り付けられている。開閉バルブは、蓋部材34を有する。図13Aは、蓋部材34が開けられた状態を示し、図13Bは、蓋部材34が閉じられた状態を示す。
本例のガス電界電離イオン源の動作を説明する。先ず、図13Aに示すように、イオン化室15の蓋部材34を開けた状態で、粗排気を行う。イオン化室15の蓋部材34が開いているため、短時間で、イオン化室15内の粗排気が完了する。
次に、イオン化室15の側壁の外側の抵抗加熱器30によって、引き出し電極24、側壁28、及び、天板29を加熱することにより脱ガス処理する。脱ガス処理が完了すると、図13Bに示すように、切断機構140を切断位置に移動させる。それによって、銅製の太線138を経由して熱がイオン化室15内に流入することが防止される。
イオン化室15の蓋部材34を閉じ、ガス供給配管25からヘリウムを供給する。エミッタティップ21に高電圧を供給し、引き出し電極24に引き出し電圧を印加する。エミッタティップ21の先端からイオンビームが生成されると、切断機構137を切断位置に移動させる。それによって、銅製の太線133を経由して熱がイオン化室15内に流入することが防止される。切断機構137が切断位置にあるとき、高電圧電源135からの加速電圧は、銅製の太線133を経由してフィラメント22に印加されることはないが、高温超電導物質製の細線136を経由してフィラメント22に印加される。切断機構140が切断位置にあるとき、引き出し電源141からの引き出し電圧は、銅製の太線138を経由して引き出し電源141に印加されることはないが、高温超電導物質製の細線139を経由してフィラメント22に印加される。フィラメント22及び引き出し電源141は高温超電導物質製の細線136、139に、それぞれ常時接続されている。従って、ステンレス製の細線136、139を経由して、熱がイオン化室15内に流入する可能性がある。しかしながら、ステンレス製の細線136、139は断面が十分小さいため、高温超電導物質製の細線136、139を経由した伝熱量は十分小さい。
本例の配線構造によると、銅配線からイオン化室15への熱流入を回避することができる。そのため、エミッタティップ及び引き出し電極を所望の温度に保持することができる。すなわち、イオン源の輝度の向上、イオンビームの大電流化を達成することができる。更に、高分解能観察が可能となる。
なお、本実施例では、銅製の太線を用いたが高温超電導物質製の極細線を用いても良い、この場合には、極低温では電気抵抗が極めて低くなるため、極細線を用いてもフィラメント電流を流すのに充分であり、必ずしも切断機構により配線を切断しない場合にでも、イオン化室15への熱流入を回避することができるという効果を奏する。
本例によれば、イオン化室15に蓋部材34を設けることにより、引き出し電極の孔の寸法を小さくしても、真空粗引き時のコンダクタンスを増大化することが可能である。また、引き出し電極の孔の寸法を小さくすることにより、イオン化室15の密閉化が可能となる。そのため、イオン化室15内の高真空化が可能となり、大電流のイオンビームが得られる。
ここで説明した配線構造は、図1、図10、及び図12に示した例においても適用可能である。
また、上述の走査イオン顕微鏡では、イオンビームをイオンビーム走査電極により走査させることにより走査イオン像を得る。しかしながら、この場合、イオンビームがイオンレンズを通過するときにイオンビームが傾斜するためイオンビームが歪む。そのため、ビーム径が小さくならないという問題があった。そこで、イオンビームを走査させる代わりに、試料ステージを機械的に直交2方向に走査移動させてもよい。この場合、試料から放出される二次粒子を検出し、これを輝度変調することにより、計算処理装置の画像表示手段上に走査イオン像を得ることができる。すなわち、試料表面の0.5nm未満の高分解能観察を実現する。この場合、イオンビームを対物レンズに対して常に同じ方向に保持することができるため、イオンビームの歪を比較的に小さくすることができる。
これは、例えば、第1及び第2のステージを組み合わせた試料ステージを用いて実現可能である。第1のステージは、数センチメートルの移動が可能な4軸可動ステージであり、例えば、平面の垂直2方向(X、Y方向)の移動、高さ方向(Z方向)の移動、及び傾斜(T方向)が可能である。第2のステージは、数マイクロメートルの移動が可能な2軸可動ステージであり、例えば、平面の垂直2方向(X、Y方向)に移動が可能である。
例えば電気モータ駆動の第1のステージの上に、ピエゾ素子駆動による第2のステージを配置することによって構成される。試料の観察位置の探索などの場合には、第1のステージを用いて試料を移動させ、高分解能観察の場合には、第2のステージを用いて微動を行う。これにより、超高分解能観察が可能なイオン顕微鏡が提供される。
以上、本発明のイオンビーム装置の例として走査イオン顕微鏡を説明した。しかしながら、本発明のイオンビーム装置は、走査イオン顕微鏡ばかりでなく、透過イオン顕微鏡、イオンビーム加工機にも適用可能である。
次に、ガス電界電離イオン源を真空排気する真空ポンプ12について説明する。真空ポンプ12としては、非蒸発ゲッタポンプとイオンポンプの組合せ、非蒸発ゲッタポンプとノーブルポンプの組合せ、又は、非蒸発ゲッタポンプとエクセルポンプの組合せによって構成するのが好適である。また、サブリメーションポンプでもよい。このようなポンプを用いることによって、真空ポンプ12の振動による影響を低減することができ、高分解能観察が可能となることが判った。なお、真空ポンプ12としてはターボ分子ポンプを用いる時は、イオンビームによる試料観察時にターボ分子ポンプの振動が観察の妨げになることがあることがわかった。ただし、イオンビーム装置のいずれかの真空容器に、ターボ分子ポンプが装着されていたとしても、イオンビームによる試料観察時にターボ分子ポンプを停止させておけば高分解能観察が可能であることがわかった。すなわち、本発明では、イオンビームによる試料観察時の主たる真空排気ポンプを、非蒸発ゲッタポンプとイオンポンプの組合せ、非蒸発ゲッタポンプとノーブルポンプの組合せ、又は、非蒸発ゲッタポンプとエクセルポンプの組合せによって構成するが、ターボ分子ポンプを装着した構成としても本発明の目的を妨げるものではない。
非蒸発ゲッタポンプは、加熱による活性化でガス吸着する合金を用いて構成された真空ポンプである。ガス電界電離イオン源のイオン化ガスとしてヘリウム用いる場合には、ヘリウムが真空容器内に比較的大量に存在する。しかしながら、非蒸発ゲッタポンプはヘリウムをほとんど排気しない。即ち、ゲッタ表面が吸着ガス分子で飽和することがない。そのため、非蒸発ゲッタポンプの動作時間は十分長い。これはヘリウムイオン顕微鏡と非蒸発ゲッタポンプを組み合わせた場合の利点である。また、真空容器中の不純物ガスが減少することによりイオン放出電流が安定するという効果も奏する。
非蒸発ゲッタポンプは大きな排気速度でヘリウム以外の残留ガスを排気するが、これだけではヘリウムがイオン源に停留する。そのため、真空度が不十分となり、ガス電界電離イオン源が正常に動作しない。そこで不活性ガスの排気速度が大きいイオンポンプまたはノーブルポンプを非蒸発ゲッタポンプと組み合わせて用いる。イオンポンプまたはノーブルポンプのみでは、排気速度が不十分である。こうして本発明によると、非蒸発ゲッタポンプとイオンポンプ又はノーブルポンプを組合せることにより、コンパクトで低コストの真空ポンプ12を得ることができる。なお、真空ポンプ12として、チタンなどの金属を加熱蒸発させて金属膜でガス分子を吸着して真空排気するゲッタポンプあるいはチタンサブリメーションポンプを組み合わせたものを用いてもよい。
従来の技術では、機械振動への配慮が足らずイオン顕微鏡の性能が十分には得られなかったが、本発明により、機械振動の低減が実現し高分解能観察が可能なガス電界電離イオン源およびイオン顕微鏡が提供される。
次に、試料室3を真空排気するための試料室真空排気用ポンプ13について説明する。試料室真空排気用ポンプ13として、ゲッタポンプ、チタンサブリメーションポンプ、非蒸発ゲッタポンプ、イオンポンプ、ノーブルポンプ、エクセルポンプ等を用いてよい。このようなポンプを用いることによって、試料室真空排気用ポンプ13の振動による影響を低減することができ、高分解能観察が可能となることが判った。なお、試料室真空排気用ポンプ13として、ターボ分子ポンプを用いてもよい。しかしながら、装置の振動軽減構造を実現するのにはコストが要する。また、試料室に、ターボ分子ポンプが装着されていたとしても、イオンビームによる試料観察時にターボ分子ポンプを停止させておけば高分解能観察が可能であることがわかった。すなわち、本発明では、イオンビームによる試料観察時の試料室の主たる真空排気ポンプを、非蒸発ゲッタポンプとイオンポンプの組合せ、非蒸発ゲッタポンプとノーブルポンプの組合せ、又は、非蒸発ゲッタポンプとエクセルポンプの組合せによって構成する。ただし、装置構成として、ターボ分子ポンプを装着して、大気からの真空粗引きに用いたとしても、本発明の目的を妨げるものではない。
走査電子顕微鏡では、ターボ分子ポンプを用いて0.5nm以下の分解能を比較的容易に実現できる。しかし、ガス電界電離イオン源を用いるイオン顕微鏡では、イオン光源から試料までのイオンビームの縮小率が比較的大きく、1から0.5程度である。それによって、イオン源の特性を最大限に活かすことができる。しかしながら、イオンエミッタの振動はほとんど縮小されずに試料上に再現されるため、従来の走査電子顕微鏡などの振動対策に比べても慎重な対策が必要になるのである。
従来技術では、試料室真空排気ポンプの振動が試料ステージに影響を与えることは考慮されていたが、試料室真空排気ポンプの振動がイオンエミッタにまで影響を与えることは考慮されていなかった。そこで、本願発明者は、試料室真空排気ポンプの振動がイオンエミッタに深刻な影響を与えることに見出した。本願発明者は、試料室真空排気用ポンプとして、ゲッタポンプ、チタンサブリメーションポンプ、非蒸発ゲッタポンプ、イオンポンプ、ノーブルポンプ、エクセルポンプ等の非振動型の真空ポンプを主ポンプとして用いることがよいと考えた。それによって、イオンエミッタの振動が低減し、高分解能観察が可能となるのである。
また、本例で用いた冷凍機のガスの圧縮機ユニット(コンプレッサ)、あるいはヘリウムを循環させる圧縮機ユニット(コンプレッサ)は騒音の音源となる可能性がある。騒音は、イオン顕微鏡を振動させることもある。そこで、本発明によると、図9に示した例のように、ガスの圧縮機ユニット(コンプレッサ)にカバーを設けて、ガスの圧縮機ユニットが発生する騒音が外部に伝わるのを防止する。尚、カバーの代わりに、音の遮蔽板を設けてもよい。また、圧縮機ユニット(コンプレッサ)を別室に設置してもよい。それによって、音に起因する振動を低減し、高分解能観察が可能となる。
また、イオン化室内に、非蒸発ゲッタ材料を配置してもよい。それによって、イオン化室内が高真空化し、高安定なイオン放出が可能となる。また、非蒸発ゲッタ材料あるいは水素吸蔵合金に水素を吸着させ、それを加熱する。それによって放出された水素をイオン化ガスとして用いれば、ガス供給配管25からガスを供給する必要がなく、コンパクトで安全なガス供給機構を実現できる。
また、非蒸発ゲッタ材料をガス供給配管25内に配置してもよい。ガス供給配管25を経由して供給するガスの中に不純物ガスは、非蒸発ゲッタ材料によって減少する。そのため、イオン放出電流が安定する。
なお、本発明ではガス供給配管25を経由してイオン化室15に供給するイオン化ガスとしてヘリウム、水素を用いる。しかしながら、イオン化ガスとして、ネオン、酸素、アルゴン、クリプトン、キセノン等を用いてもよい。特に、ネオン、酸素、アルゴン、クリプトン、キセノン等を用いた場合には、試料を加工する装置、あるいは試料を分析する装置が提供されるという効果を奏する。
また、試料室3内に質量分析計を設けてもよい。質量分析計によって、試料から放出される二次イオンの質量分析を行う。あるいは、試料から放出されるオージェ電子をエネルギ分析してもよい。それによって、試料の元素分析が容易になり、イオン顕微鏡による試料観察および元素分析が1台の装置で可能となる。
また、本発明のイオン顕微鏡では、エミッタティップに負の高電圧を印加して、エミッタティップから電子を引き出すこともできる。この電子ビームを試料に照射し、試料から放出されるX線またはオージェ電子を検出する。それによって、試料の元素分析が容易となり、イオン顕微鏡による超高分解能の試料観察および元素分析が1台の装置で可能となる。
さらに、このとき1nm以下の分解能のイオン像と元素分析像を並べ、又は、重ねて表示してよい。それにより、試料表面を好適にキャラクタリゼーションできる。
また、このときには、電子ビームを集束するための対物レンズに磁場型レンズと静電レンズを組み合せた複合型レンズを用いると電子ビームを大電流でかつ微細なビーム径に集束できて、高空間分解能で高感度な元素分析が可能になる。
また、従来のイオンビーム装置では外部磁場の擾乱については考慮されていなかったが、イオンビーム0.5nm未満に集束する場合には、磁気をシールドすると効果があることを突き止めた。このためガス電界電離イオン源およびイオンビーム照射系、および試料室の真空チャンバを純鉄もしくはパーマロイで作製することにより超高分解能を達成できる。また、真空容器中に、磁気シールドとなる板を挿入しても良い。また、本願の発明者は、イオンビームの加速電圧を50kV以上にして半導体試料上の構造寸法を計測すると精度よく計測できることを見出した。これはイオンビームによる試料のスパッタイールドが低下するため、試料の構造を破壊する程度が低くなり、寸法計測精度が向上することによる。特に、イオン化ガスとして、水素を用いるとスパッタイールドが低下し、寸法計測の精度が向上する。以上、本発明によれば、イオンビームにより試料上の構造寸法を計測するのに好適な解析装置、イオンビームを用いた測長装置または検査装置が提供される。
また、本発明によれば、従来の電子ビームを用いた計測に比べると、得られる画像の焦点深度が深いため精度の良い計測ができる。また、特にイオン化ガスとして、水素を用いると、試料表面を削る量が少なく精度の良い計測ができる。
本発明によれば、試料上の構造寸法を計測するのに好適なイオンビームを用いた測長装置または検査装置が提供される。
本発明によると、試料をイオンビームにより加工して断面を形成して、断面を電子顕微鏡で観察する装置に代わりに、イオンビームにより加工して断面を形成して、断面をイオン顕微鏡で観察する装置、及び、断面観察方法を提供することができる。
本発明によると、イオン顕微鏡による試料観察、電子顕微鏡による試料観察、及び、元素分析が1台の装置で可能な装置、欠陥や異物などを観察及び解析する解析装置、及び、検査装置を提供することができる。
イオン顕微鏡は超高分解能の観察を実現する。しかしながら、従来、イオンビーム装置を半導体試料の製造プロセスにおける構造寸法の計測装置あるいは検査装置として用いた時に、イオンビーム照射を、電子ビーム照射として比較して、半導体試料の表面の破壊の製造への影響を考察した例はない。例えば、イオンビームのエネルギを1keV未満にすると、試料が変質する割合が少なく、イオンビームのエネルギを20keVとする場合と比較すると、寸法計測の精度が向上する。この場合に装置のコストも小さくなるという効果を奏する。なお、逆に加速電圧が50kV以上の場合には、加速電圧が低い場合と比較すると観察分解能を小さくできる。
また、本願の発明者は、イオンビームの加速電圧を200kV以上にして、さらにビーム径を0.2nm以下に細束化して試料に照射して、試料からラザフォード後方散乱されるイオンをエネルギ分析すると、試料元素の平面および深さを含めた3次元構造が原子単位で計測できることを見出した。従来のラザフォード後方散乱装置ではイオンビーム径が大きく原子オーダでの3次元計測は困難であったが、本発明を適用することによって実現できる。また、イオンビームの加速電圧を500kV以上にして、さらにビーム径を0.2nm以下に細束化して試料に照射して、試料から放出されるX線のエネルギ分析をすると試料元素の2次元分析が可能になる。
本発明によると、以下のガス電界電離イオン源、イオン顕微鏡、イオンビーム装置が開示される。
(1)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源において、前記エミッタティップのマウントと、前記引き出し電極が、形状可変な機構部品を含んで接続され、少なくとも前記エミッタティップのマウントと前記引き出し電極と、前記形状可変な機構部品などによって前記エミッタティップが概ね囲まれるイオン化室が前記真空容器にほとんど接することなく、前記真空容器内で変形可能であることを特徴とするガス電界電離イオン源。
(2)上記(1)記載のガス電界電離イオン源であって、イオン化室にガス分子が供給されたときにイオン化室のガス圧力を前記真空容器のガス圧力よりも少なくとも1桁以上大とすることが可能であることを特徴とするガス電界電離イオン源。
(3)上記(1)記載のガス電界電離イオン源であって、前記エミッタティップのマウントが、前記形状可変な機構部品とは別の形状可変な機構部品を含んで真空容器に接続されることを特徴とするガス電界電離イオン源。
(4)上記(1)から(3)記載のガス電界電離イオン源であって、形状可変な機構部品がベローズであることを特徴とするガス電界電離イオン源。
(5)上記(4)記載のガス電界電離イオン源であって、前記エミッタティップのマウントと、前記引き出し電極の間のベローズの最小直径が、前記エミッタティップのマウントと真空容器の間のベローズの最大直径よりも小なることを特徴とするガス電界電離イオン源。
(6)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズ系と、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器とを含むイオンビーム装置本体と、イオンビーム装置本体を搭載するベースプレートと前記ベースプレートを支持する架台とからなるイオンビーム装置において、前記イオンビーム装置本体とベースプレートの間に防振機構を備え、前記冷却機構が、イオンビーム装置が設置される床もしくはイオンビーム装置架台に対して固定された支持機構に支持され、さらに前記冷凍機と前記真空容器との間に防振機構を備えることを特徴とするイオンビーム装置。
(7)上記(6)記載のイオンビーム装置であって、前記冷却機構が、圧縮機ユニットで発生させた高圧ガスを膨張させて寒冷を発生する寒冷発生手段と、前記寒冷発生手段の寒冷でステージを冷却する冷凍機であることを特徴とするイオンビーム装置。
(8)上記(6)6記載のイオンビーム装置であって、前記冷却機構が、圧縮機ユニットで発生させた第1の高圧ガスを膨張させて寒冷を発生する寒冷発生手段と、前記寒冷発生手段の寒冷で冷却したガスで被冷却体を冷却する冷却手段であることを特徴とするイオンビーム装置。
(9)上記(6)記載のイオンビーム装置であって、前記冷却機構が、圧縮機ユニットで発生させた第1の高圧ガスを膨張させて寒冷を発生する寒冷発生手段と、前記寒冷発生手段の寒冷で冷却した第2の高圧ガスで被冷却体を冷却する冷却手段であることを特徴とするイオンビーム装置。
(10)上記(6)記載のイオンビーム装置であって、前記冷凍機と前記真空容器との間の防振機構が、ヘリウムあるいはネオンガスで振動の伝達を妨げる機構を少なくとも含むことを特徴とするイオンビーム装置。
(11)上記(6)記載のイオンビーム装置であって、前記冷却機構の冷却ステージとエミッタティップとの間に少なくとも形状可変な機構部品が存在することを特徴とするイオンビーム装置。
(12)上記(6)記載のイオンビーム装置であって、前記冷却機構が、常温、大気圧下ではガス状態である冷媒ガスを液体または固体状態とした冷却剤を真空容器によって保持する機構であり、該真空容器は前記イオンビーム装置の真空容器と少なくとも一つの除振動機構部品を挟んで接続され、冷却剤によって冷却された箇所とエミッタティップとの間が形状可変な機構部品の少なくとも一つを挟んで接続されることを特徴とするイオンビーム装置。
(13)上記(12)記載のガス電界電離イオン源であって、前記イオン化室を真空排気するコンダクタンスを可変とする機構が、真空容器外部で操作可能なバルブであり、イオン化室の壁構造体と機械的に切り離し可能であることを特徴とするガス電界電離イオン源。
(14)上記(1)記載のガス電界電離イオン源であって、前記イオン化室を加熱可能な抵抗加熱器を備え、前記抵抗加熱器に接続される複数の電気配線と、前記複数の電気配線の少なくとも1本を真空外部から操作して機械的に切断が可能であることを特徴とするガス電界電離イオン源。
(15)上記(1)記載のガス電界電離イオン源であって、前記冷却機構の冷却剤が、常温、大気圧下ではガス状態である冷媒ガスを固体状態とした冷却剤であることを特徴とするガス電界電離イオン源。
(16)上記(1)から(5)、あるいは(13)から(15)のいずれかに記載のガス電界電離イオン源と、前記ガス電界電離イオン源から引き出したイオンを集束するレンズ系と、二次粒子を検出する二次粒子検出器と、イオン顕微鏡像を表す画像表示部と、を含むイオン顕微鏡。
本発明によると、以下のイオン顕微鏡、イオンビーム装置、イオンビーム検査装置が開示される。
(17)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズと対物レンズと、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器とを含むイオンビーム装置において、対物レンズ先端と試料の表面までの距離を2mm未満に短くして、イオンビーム径を0.5nmに集束することを特徴とするイオンビーム装置。
(18)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズ系と、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器とを含むイオン顕微鏡において、試料室を約200℃まで加熱できるようにして試料室の真空度を大きくとも10−7Pa以下にできるようにしたことを特徴とするイオン顕微鏡。
(19)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズ系と、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器と、試料室を真空排気する真空ポンプ、を含むイオン顕微鏡において、イオン顕微鏡での顕微鏡像観察中に試料室を真空排気する主たる真空ポンプが、サブリメーションポンプ、非蒸発ゲッタポンプ、イオンポンプ、ノーブルポンプあるいはエクセルポンプのいずれかを含むことを特徴とするイオン顕微鏡。
(20)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記ガス電界電離イオン源を真空排気する真空ポンプと、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズ系と、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器、を含むイオン顕微鏡において、イオン顕微鏡での顕微鏡像観察中にガス電界電離イオン源を真空排気する主たる真空ポンプがサブリメーションポンプ、非蒸発ゲッタポンプとイオンポンプ、ノーブルポンプまたはエクセルポンプのいずれかを含むことを特徴とするイオン顕微鏡。
(21)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構するための液体寒剤の容器、および上記液体寒剤の容器を真空排気する真空ポンプなどから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズ系と、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器、を含むイオン顕微鏡において、前記液体寒剤の容器の真空度計測、あるいは温度計測により上記真空ポンプの動作を制御して、前記液体寒剤の容器の温度を制御する制御装置を備えることを特徴とするイオンビーム装置。
(22)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構するための液体寒剤の容器、および上記液体寒剤の容器を真空排気する真空ポンプなどから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズ系と、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器、を含むイオンビーム装置において、前記冷却機構が、圧縮機ユニットで発生させた高圧ガスを膨張させて寒冷を発生する寒冷発生手段の寒冷で冷凍機のステージを冷却する冷凍機であって、前記高圧ガスを発生するための圧縮機ユニットにカバーを設けて、ガスの圧縮機ユニットからの音を低減したことを特徴とするイオンビーム装置。
(23)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構するための液体寒剤の容器、および上記液体寒剤の容器を真空排気する真空ポンプなどから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズ系と、イオンビーム照射平面内の少なくとも2方向に対して少なくとも2種類の移動機構を持つ試料ステージと、該試料ステージに置かれた試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器、を含むイオンビーム装置において試料ステージを機械的に直交2方向に走査移動させて、試料から放出される二次粒子を検出してイオン顕微鏡像を得ることを特徴とするイオン顕微鏡。
(24)上記(23)記載のイオンビーム装置において、前記イオンビーム照射平面内の少なくとも2方向に対して少なくとも2種類の移動機構を持つ試料ステージにおいて、少なくともピエゾ素子駆動機構を用いるステージを含み、イオン顕微鏡像の像分解能が0.5nm未満であることを特徴とするイオン顕微鏡。
(25)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構、ガス供給配管などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズ系と、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器と、試料室を真空排気する真空ポンプ、を含むイオンビーム装置において、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの不活性ガスを用いて、供給配管に非蒸発ゲッタ材料を配置したことを特徴とするイオンビーム装置。
(26)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズと対物レンズと、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器とを含むイオンビーム装置において、エミッタティップに負の高電圧を印加して、エミッタティップから電子を引き出して試料に照射して試料から放出されるX線またはオージェ電子を検出して元素分析が可能であり、1nm以下の分解能の走査イオン像と元素分析像を並べるあるいは重ねて表示すれることができるイオンビーム装置。
(27)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズと対物レンズと、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出して試料表面の構造寸法を計測するイオンビーム検査装置において、イオンビームの加速電圧を50kV以上にして半導体試料上の構造寸法を計測することを特徴とするイオンビーム検査装置。
(28)上記(27)記載のイオンビーム検査装置において、水素ガスを用いることを特徴とするイオンビーム検査装置。
(29)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズと対物レンズと、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出して試料表面の構造寸法を計測するイオンビーム検査装置において、イオンビームのエネルギを1keV未満にすることを特徴とするイオンビーム検査装置。
(30)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズと対物レンズと、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器とを含むイオンビーム装置において、エミッタティップに負の高電圧を印加して、エミッタティップから電子を引き出して、磁場型レンズと静電レンズを組み合せた複合型の対物レンズを通過させて試料に照射して、試料から放出されるX線またはオージェ電子を検出して元素分析が可能であることを特徴とするイオンビーム装置。
(31)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズと対物レンズと、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器とを含むイオンビーム装置を用いた試料元素分析方法において、イオンビームの加速電圧を200kV以上にして、さらにビーム径を0.2nm以下に細束化して試料に照射して、試料からラザフォード後方散乱されるイオンをエネルギ分析して、試料元素の平面および深さを含めた3次元構造を原子単位で計測する元素分析方法。
(32)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズと対物レンズと、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器とを含むイオンビーム装置を用いた試料元素分析方法において、500kV以上にして、さらにビーム径を0.2nm以下に細束化して試料に照射して、試料から放出されるX線のエネルギ分析をして2次元元素分析する元素分析方法。
(33)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズと対物レンズと、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器とを含むイオンビーム装置において、エミッタティップを50K以下に冷却して、エミッタティップから放出されるイオンを試料上に投影する倍率を0.2よりも小さくして、さらに、エミッタティップと試料の相対位置の振動を0.1nm以下することにより、走査イオン像分解能を0.2nm以下としたたことを特徴とするイオンビーム装置。
(34)真空容器と、真空排気機構と、前記真空容器内に、針状の陽極となるエミッタティップと、陰極となる引き出し電極、前記エミッタティップの冷却機構などから構成され、前記エミッタティップ先端近傍にガス分子を供給し、前記エミッタティップ先端部にてガス分子を電界にてイオン化するガス電界電離イオン源と、前記エミッタティップから引き出したイオンビームを集束するレンズと対物レンズと、試料を内蔵する試料室と、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器とを含むイオンビーム装置において、試料ステージがサイドエントリ型の試料ステージであり、先端が試料室壁面に接触した構造であることを特徴とするイオンビーム装置。
(35)イオンビームを生成するためのガス電界電離イオン源と、該ガス電界電離イオン源からのイオンビームを試料上に導くためのイオン照射光系と、前記ガス電界電離イオン源及び前記イオン照射光系を収納する真空容器と、試料を保持する試料ステージを収納する試料室と、前記ガス電界電離イオン源を冷却するためのガス循環方式の冷却機構と、を有し、前記冷却機構は、冷凍機と、前記冷凍機と前記ガス電界電離イオン源の間を接続する配管と、前記配管に設けられた熱交換器と、前記配管内にて液体ヘリウムを循環させる循環コンプレッサと、を有し、前記配管は床または支持体に固定支持されていることを特徴とするイオンビーム装置。
(36)イオンビームを生成するためのガス電界電離イオン源と、該ガス電界電離イオン源からのイオンビームを試料上に導くためのイオン照射光系と、前記ガス電界電離イオン源及び前記イオン照射光系を収納する真空容器と、試料を保持する試料ステージを収納する試料室と、前記ガス電界電離イオン源を冷却するための冷却機構と、を有し、前記冷却機構は、圧縮機ユニットで発生させた第1の高圧ガスを膨張させて寒冷を発生する寒冷発生手段と、この寒冷発生手段の寒冷で冷却し、圧縮機ユニットで循環する第2の移動する冷媒であるヘリウムガスで被冷却体を冷却する冷却機構であることを特徴とするイオンビーム装置。
(37)イオンビームを生成するためのガス電界電離イオン源と、該ガス電界電離イオン源からのイオンビームを試料上に導くためのイオン照射光系と、前記ガス電界電離イオン源及び前記イオン照射光系を収納する真空容器と、試料を保持する試料ステージを収納する試料室と、前記ガス電界電離イオン源を冷却するための冷却機構と、
前記電界電離イオン源、前記真空容器、及び、前記試料室を支持するベースプレートと、を有しているイオンビーム装置において、イオンビーム照射経路に磁気シールドする機構を備えることを特徴とするイオンビーム装置。
(38)イオンビームを生成するためのガス電界電離イオン源と、該ガス電界電離イオン源からのイオンビームを試料上に導くためのイオン照射光系と、前記ガス電界電離イオン源及び前記イオン照射光系を収納する真空容器と、試料を保持する試料ステージを収納する試料室と、前記ガス電界電離イオン源を冷却するための冷却機構と、前記ガス電界電離イオン源、前記真空容器、及び、前記試料室を支持するベースプレートと、を有しているイオンビーム装置において、ガス電界電離イオン源およびイオンビーム照射系、および試料室のいずれかの真空チャンバの主な材料が鉄もしくはパーマロイであり、走査イオン像の分解能が0.5nm以下であることを特徴とするイオンビーム装置。