JP6490917B2 - 修正装置 - Google Patents
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Description
例えば、電子ビームとアシストガスを用いたマスク修正装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この装置は、ガリウムイオンの集束イオンビームに比べてイオン注入による透過率の低下が防止され、ビーム集束性が優れている。
イオン源にはイオン化すべきガスが供給され、ティップ500周辺にはイオン化すべきガス分子や原子(ここでは略してガス分子と記載)601が存在する。ティップ500は冷却装置(図示略)により冷却されている。
そして、電源602によりティップ500と引出し電極603との間に電圧が印加され、ティップ500の先端の周辺に高電界が発生すると、ティップ500周辺に漂うガス分子601は分極して、分極力によりティップ500の先端に引き寄せられるように移動する。そして、引き寄せられたガス分子601はティップ500の先端の高電界によりイオン化される。
発生したイオン604は引出し電極603の開口部603aから下流のイオン光学系(図示略)を通って試料(図示略)に向かって放出される。このガス電界電離イオン源は、イオン604のビーム(イオンビーム)が放出される領域の大きさ、つまりイオン源のソースサイズは極めて小さいので、高輝度なイオン源となり、試料上で極めて細い集束イオンビームを形成可能である。
例えば、ガス電界電離イオン源を用いたフォトマスクの欠陥修正方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。このガス電界電離イオン源から発生した希ガスイオンビームを用いた修正装置においては、マスク透過性の悪化(例えば、従来のガリウムイオンの集束イオンビームにより発生するマスク内へのガリウム注入によるマスク透過性の悪化)を軽減することができる。また、希ガスの一種であるアルゴンは、質量が電子に比べて大きいため、電子ビームによるマスクの修正に比べて加工効率が増大する。
例えば、ガス電界電離イオン源から発生する水素イオンビームによる極端紫外線露光用のマスクの修正について開示されている(例えば、特許文献5参照)。このマスク修正のティップは、タングステンもしくはモリブデンからなる針状の基材に白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、もしくは金等の貴金属が被覆されて形成されている。このティップの先端は原子レベルで尖鋭化されたピラミッド状である。
ティップは結晶表面の原子密度が低い結晶面が先鋭化されやすいため、タングステンティップは<111>方向が先鋭化されている。タングステンの{111}結晶面は3回回転対称であり、{110}結晶面または{112}結晶面が錐体構造の側面(錐面)となっている。
タングステンティップの先端面が数個の原子で構成されるように先端を先鋭化する方法として、窒素または酸素を用いた電界誘起ガスエッチング、熱ファセット、およびリモールディングなどの方法が知られており、これらの方法により再現性良く<111>方向を先鋭化させることができる。
リモールディングは、電解研磨後のティップに対して、超高真空中で加熱および高電圧の印加によりティップの先端に結晶面を形成する方法である(例えば、特許文献9参照)。
また、従来、原子レベルに尖ったタングステンティップを用いたガス電界電離イオン源を搭載したヘリウム集束イオンビームによる走査イオン顕微鏡、つまり集束イオンビーム装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この集束イオンビーム装置は、ティップの先端が3個のタングステン原子から構成(3量体、トリマーともいう)され、3個の原子のそれぞれからイオンが放出され、そのうちの1原子から放出されたイオンを選択してビーム集束する。
また、従来、タングステンティップを用いたガス電界電離イオン源を搭載したヘリウム集束イオンビームによる走査イオン顕微鏡において、イオンを放出するタングステンティップの先端が3個のタングステン原子から成る3量体で終端され、3個の原子のそれぞれからイオンが放出され、そのうちの1原子から放出されイオンを選択してビーム集束することが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
また、従来、先鋭化された<210>イリジウム単結晶ティップの先端に、熱ファセットで1つの{110}結晶面と2つの{311}結晶面からなる微小な三角錐が形成され、さらにその頂点が単一原子であることが知られている。このイリジウムティップを用いたガス電界電離イオン源は、約2250秒間の連続したビーム放出が可能であることが知られている(例えば、非特許文献4参照)。
従来、ガリウム集束イオンビームまたは電子ビームによるマスク修正装置が知られている。ガリウム集束イオンビームによる加工は、スパッタ効果により各種の材料をエッチング可能であるが、マスクの透過すべき領域にガリウムイオンが打ち込まれると、光透過率が低下するという問題が生じる。また、ガリウム集束イオンビームの集束性は、最先端の超微細寸法のマスクの修正に必要とされる最小加工寸法を得るには不十分であるという問題が生じる。
一方、電子ビームとアシストガスを用いたマスク修正装置は、ビーム照射箇所の光透過率を低下させず、超微細寸法のフォトマスクの修正に必要とされる最小加工ができる。しかしながら、マスク材に対するスパッタリング効率が低いため、加工効率が悪く、パターンを電子ビームで観察する際のコントラストが小さいため、明確にパターンを観察することができない、という問題が生じる。また、近年、モリブデンシリサイド(MoSi)などを遮光膜とする位相シフトフォトマスクに関して、露光や洗浄での損傷に対する耐性を高めた遮光膜が複数提案されている。しかしながら、これらの遮光膜の組成は下地ガラス基板の組成に近く、遮光膜と下地ガラス基板とのエッチング速度に差が生じるアシストガスが存在しない。よって、エッチング材料選択性が低く、遮光膜と下地ガラス基板との界面などの所望の位置でエッチングを停止させることが困難であるという問題が生じる。さらに、最小加工寸法は20から30nmが限界なので、次世代EUVマスクなどの極微細寸法のパターンには対応できない。
ガス電界電離イオン源を用いたマスク修正装置では、試料観察の際にアルゴンイオンビームのスパッタリング効果により試料にダメージを与えてしまうという問題が生じる。一方、質量が小さいヘリウムでは、透過部分へのダメージを軽減することができ、集束性もガリウム集束イオンビームより高くなるが、試料のエッチング効率が低いため、マスク修正に膨大な時間がかかるという問題が生じる。また、ガス電界電離イオン源のティップについて、以下のような問題が生じる。
ティップがタングステンから形成されたものであると、イオン化すべきガスである化学的に活性なガス種、例えば窒素ガスなどに対する耐性が低く、イオン源の寿命が短いという問題が生じる。例えば、酸素または窒素がタングステンティップ表面に付着した場合に反応が生じ、電界蒸発強度が低いタングステン酸化物または窒化物が生成されると、これらの酸化物または窒化物が、低い電界強度でタングステンティップ表面から電界蒸発することによる損傷が進行する虞がある。微量の酸素または窒素は、タングステンティップの先鋭化処理に用いられることから、タングステンティップ表面での酸化物または窒化物の生成は不可避であり、タングステンティップの先端に損傷が発生すれば、発生イオン電流の変動、さらにはイオン放出の停止する虞がある。また、タングステンティップの先端に損傷が生じると、再度、先鋭化処理を行なう必要があり、このタングステンティップを搭載した装置のダウンタイムが増加するという問題が生じる。このような問題が生じることに対して、タングステンティップを搭載したガス電界電離イオン源によりヘリウムイオンを放出させようとして、イオン源室にヘリウムガスを導入する場合には、高価な純度のガスが必要となり、費用が嵩むという問題が生じる。
タングステンもしくはモリブデンから成る針材に、プラチナ、パラジウム、イリジウム、ロジウム、もしくは金等の貴金属を被覆したティップでは、被覆する作業が時間を要し、被覆作業中に先端を損傷させてしまう虞がある。また、被覆が不十分な場合、被覆が不十分な箇所から化学的活性なガスによってエッチングされるという問題が生じる。
タングステンティップが先端で3個の原子を頂点とするという問題に対して、1個の原子を頂点とすることができるとともに化学的耐性がタングステンより強い素材として、イリジウムをティップに用いることが知られている。
しかしながら、イリジウムティップの先端を先鋭化する仕上げ加工において、従来の手法を単純に流用するだけでは、所望の形状(つまり、1個の原子を頂点とする角錐構造)を所望の位置に、1個だけ形成することは困難であることが、本発明者によって見出された。
また、イリジウムは{210}結晶面の表面原子密度が低く、先鋭化されやすいため、イリジウムティップは<210>方向が先鋭化される。図15に示すようにイリジウムの{210}結晶面を正面から見た場合の結晶は<110>の軸と<210>の軸が含まれる平面に対して鏡像対称なので、電界誘起ガスエッチングを行なうと{210}結晶面と{310}結晶面の境界付近が残ることになるが、{310}面は長方形を成しているので奇数個の原子が残らない。つまりイリジウムでは、トリマーなども含めて終端の原子の個数を少ない状態で所望の位置に形成することが困難である。また、電界蒸発のみで最終の先鋭化仕上げ加工を行なうと、先端部の数層の原子層が塊状態で一度に電界蒸発する場合が多く、先端に所望の頂点を形成することが困難であることが、本発明者による実験によって見出された。
また、イリジウムティップの先鋭化方法として、電界誘起ガスエッチングにおける従来方法の酸素ガス導入では、イリジウムがタングステンに比べて化学的耐性が強いことに起因して、タングステンを処理する場合に比べて、処理に要する時間が長くなるという問題が生じる。また、酸素ガスの導入に代えて窒素ガスを導入した場合には、タングステンと同様の角錐構造をティップの先端に作製可能である。しかしながら、導入する窒素の圧力を高くする必要が生じる。導入ガス圧を高くすることは、ティップと引出し電極間の放電を誘発し、ティップ先端を損なう危険性が高くなる。また、エッチング速度がタングステンよりも遅くなるので、処理に要する時間が長くなるという問題が生じる。
また、電界誘起ガスエッチングによりイリジウムティップを先鋭化する際に、所望の位置以外の他の位置に頂点が形成される場合があり、毎回の処理ごとに同一の原子位置に再現性良く角錐構造を形成することは困難であることが、本発明者による実験によって見出された。ティップ先端の位置の再現性が不安定であることは、イオンや電子の放出位置が先端形成の処理毎に変わることを意味し、電子顕微鏡または集束イオンビーム装置のビームを光学軸に高い精度で合わせるように、イオン源または電子源の位置調整を、その都度、高精度に行なう必要があり、実用上、好ましくないという問題が生じる。
また、酸素雰囲気中でイリジウムティップを熱ファセット(低指数結晶面の形成)することで、再現性良く<210>方向を先鋭化させることができる。しかしながら、熱ファセットのみで最終の先鋭化仕上げ加工を行なうと、所望の頂点が所望の位置のみならず、複数箇所に形成される場合がある。また、イリジウムを加熱処理したとしても所望の結晶面が成長しないため、所定の位置に所定の結晶面で囲まれ先端が単一原子の角錐構造を形成するような制御が難しい。さらに、ガス電界電離イオン源内で熱ファセットを実施した場合、ガス電界電離イオン源内に残留した酸素原子がイリジウムティップに対する不純物として作用し、安定なイオン放出を妨げる虞がある。これにより、安定動作の観点から、酸素を用いずに所望の位置を先鋭化させる方法が望まれている。
(1)本発明の一態様に係る修正装置は、先鋭化されたティップを有するイオン発生部を備えるガス電界電離イオン源と、前記ティップを冷却する冷却手段と、前記ガス電界電離イオン源において発生したガスのイオンを集束させて集束イオンビームを形成するイオンビーム鏡筒と、前記イオンビーム鏡筒により形成された前記集束イオンビームが照射される試料を設置して移動可能な試料ステージと、少なくとも前記試料ステージを内蔵する試料室と、前記イオンビーム鏡筒により形成された前記集束イオンビームによって前記試料としてのマスクまたはナノインプリントリソグラフィのモールドを修正する制御手段と、を少なくとも備え、前記ガス電界電離イオン源は、前記イオンを窒素とし、前記イオンを発生可能なイリジウム単結晶により構成された前記ティップを備える。
(3)上記(1)または(2)に記載の修正装置では、前記ティップは、<210>方位のイリジウム単結晶により構成され、前記ティップの頂点は1つの{100}結晶面および2つの{111}結晶面により囲まれた先端を備えてもよい。
(5)上記(4)に記載の修正装置では、前記ガス供給部は、前記複数のガス種として少なくとも窒素と水素を含んでもよい。
(6)上記(5)に記載の修正装置では、前記制御手段は、前記マスクとして極端紫外線露光用のマスクを修正する場合に前記集束イオンビームとして水素イオンビームを用い、前記マスクとしてフォトマスクを修正する場合に前記集束イオンビームとして窒素イオンビームを用いてもよい。
(8)上記(4)から(6)の何れか1つに記載の修正装置は、前記イオン発生部におけるガスのイオン化に要する電圧を切り替えることによってイオン種を切り替えるイオン切替部を備えてもよい。
先ず、図1を参照して、修正装置10について説明する。
修正装置10は、半導体素子などを製造する際にパターン露光装置(図示略)に用いられフォトマスクに存在する欠陥の修正を行なう。
修正装置10は、後述するガス電界電離イオン源を搭載し、ガス電界電離イオン源から放出するイオンとして、ヘリウムのような軽い元素ではなく、スパッタリング効率の高い窒素を用いている。また、修正装置10は、窒素を主成分とするイオン化ガスを用いるため、後述するように化学的耐性が強いイリジウムをティップとして用いている。このティップの先鋭化した先端は、特定の結晶面から成り、頂点が1個のイリジウム原子である微小な三角錐形状を有している。
なお、イオンビーム鏡筒11および電子ビーム鏡筒12は、集束イオンビームと電子ビームがマスク14上のほぼ同じ箇所に照射されるようにして、配置されている。なお、後述するガス電界電離イオン源に用いるティップアセンブリを電子源として用いることで、集束性の良い電子ビームを得ることができ、鮮明なSEM(走査電子顕微鏡)画像を得ることができる。また、電子ビーム鏡筒12は、イオンビーム鏡筒11のイオンビーム照射による帯電を中和するために電子ビームを照射可能である。
また、制御部20は、マスク14上の遮光パターン部から余分に形成された欠陥パターンを修正する場合は、エッチングガス供給部17からヨウ素などのハロゲン系のエッチングガスをマスク14の欠陥部に照射しつつ窒素などのイオンビームを照射する。これにより制御部20は、エッチングガスを導入しない場合に比べて、マスクパターンの高速加工または所望の材料のみを選択的に除去可能である。
像形成部は、後述する集束イオンビームを試料に照射し、発生した二次イオン又は/および二次電子を検出器18により検出することで、試料の観察像をモニタ19に表示して観察することができる。つまり、像形成部は、マスク14に対し窒素などのイオンビームを照射して、二次電子を検出することでマスク14の表面の形態を検知できる。また、二次イオンを検出することでマスク14の表面を構成する元素の分布を検知することができる。これらのマスク14の表面の画像と、元素分布結果と、各種制御値とは、モニタ19に表示することができる。
なお、制御部20は、イオンビーム鏡筒11内と、電子ビーム鏡筒12内と、試料室13内とを、各部に備えられた真空排気系の制御によって真空に保持可能である。
イオン源ガス制御部は、ガス電界電離イオン源に供給されるガスの流量を調整するマスフローコントローラなどのガス流量調整部(図示略)、ガス種の切替え部(図示略)を備えるイオン源ガス供給部(図示略)を制御する。
図2はガス電界電離イオン源(GFIS)の基本構成を示す。ガス電界電離イオン源30は、ティップアセンブリ31と、引出し電極32と、イオン源ガス供給部33と、冷却装置34と、を主に備えている。
ティップアセンブリ31は、図3に抜き出して示すように、主に、絶縁性のベース部材35と、ベース部材35に固定された1対の通電ピン36と、1対の通電ピン36の先端部間に接続されたタングステンなどの細線から成るフィラメント37と、フィラメント37に電気的および機械的に固定されたティップ1と、を備えている。
このティップ1の先端の詳細構造とその効果、および、その製造方法については、実施例3にて詳述する。
イオン源ガス供給部33は、ティップ1の周囲にイオン化すべきガス(イオン源ガス、例えば、ガス分子など)38を供給する。イオン源ガス供給部33は、流量はバルブ33aによって調整可能にガス導入管33bを介してイオン源室39に連通している。イオン源ガス供給部33に備えられるガス種は1種類に限ることはなく、複数のガス種のガスボンベ(ガス容器ともいう、図示略)が設置されて、必要に応じてガス種が切替えられて、または複数のガス種が混合されて、イオン源室39に供給されてもよい。また、複数種のガス種を供給する場合、各ガス種の最適引出し電圧を予め引出し電圧制御部132に記憶させておき、イオン切替え時にイオン切替部(図示略)から引出し電圧制御部132に指示して、供給される複数種のガスのうち所望のガスのイオンに切替えて発生させるようにしてもよい。
このように、修正する対象物の物性に合わせて、照射するイオン種を変えることが最適であり、そのためにはイオン源ガス供給部33は、多数のガスボンベ(図示略)を設置可能に構成され、ガスの切替え部(図示略)を有していればよい。このガスの切替え部はイオン源ガス制御部133によって制御される。
なお、冷却装置34は、この構成に限定されるものではなく、少なくともティップ1を冷却可能であればよく、例えば冷却ブロックや冷凍機等などを備える構成であってもよい。また、イオン源室39とティップアセンブリ31の間には、ティップ1の熱を放熱するためのコールドヘッド41が配設されている。コールドヘッド41は、アルミナやサファイヤ、または窒化アルミニウム等のセラミックス材料により形成されたブロック状に形成され、ベース部材35が固定されている。
ティップ1の冷却温度は、制御部20の温度制御部により制御され、イオン源ガス供給部33から供給されるガス種によって異なるが、本実施例では、約40Kから200Kの範囲で温度設定可能である。これにより、微細加工に必要な電流量のイオンビームを安定して照射することができる。
なお、本実施例では、マスク14としてフォトマスクを例にして修正装置10の構成を記載した。しかしながら、本発明による修正装置10はフォトマスクに限られることなく、EUVマスクの欠陥修正にも適用可能である。
イオンビーム鏡筒の構成を図4を用いて説明する。
イオンビーム鏡筒110(11)は、上述したティップアセンブリ31を有するイオン源室39と、このイオン源室39から放出されたイオン2を集束イオンビーム101に集束させるコンデンサレンズ電極111と、集束イオンビーム101を試料(図示略)にフォーカスさせる対物レンズ電極112と、を少なくとも備えている。
真空ポンプ117はイオン源室39の真空度を保持する。例えば、ガス電界電離イオン源30ではイオン源ガスを供給する前の真空度を、1×10−5〜1×10−8Pa程度の高真空に維持する。イオン源室39と試料が収容される試料室(図示略)との間には、中間室113を備え、イオン源室39と中間室113との間と、試料室と中間室113との間にオリフィス114,115を備えている。
また、イオンビーム鏡筒110は、ガス電界電離イオン源30のティップ1の先端の原子配列を確認するためのFIM(電界イオン顕微鏡)像を得るための検出器(図1に示す検出器18など)を備えている。検出器は、イオンビーム軸へ移動可能に構成され、FIM像の確認が不要な場合はイオンビーム軸から遠ざけて待機させることが可能である。この検出器は、イオン電流が不安定になった場合および観察像が乱れてきた場合など、必要に応じてティップ1の先端の原子配列を確認することができる。本実施例におけるイリジウムのティップ1は、<210>方位のイリジウム単結晶から成り、このティップ1の先端には少なくとも{100}結晶面を有し、原子1個を頂点とする角錐構造を有することを特徴としている。この先端形状については、実施例3にて詳述する。
集束窒素イオンビームの安定性は1%/時間以下の高安定度であり、30日間の連続動作にもティップ1の先端の原子が脱落することなく、イオン放出が中断すること無く、イオン発生位置が変動すること無く、連続して集束窒素イオンビームを形成可能であることを、本発明者は実験により確認した。
これは上記非特許文献1に記載の約2250秒(高々38分)の連続動作に比べて格段に長寿命である。実際のマスク等の修正では、加工の過不足が修正後のマスクの露光性能に強く影響するため、修正中のビーム電流は一定であることが要求され、高々38分程度の連続照射の性能ではマスクを修正することは困難であった。これに対し、本実施例の修正装置10の30日間の連続照射の性能によれば、正確な修正を数多く実施することができる。
また、本実施例の修正装置10は、高分解能で表面形態や元素分布を可視化でき、長寿命で高安定な集束イオンビームを提供することができる。
従来のガス電界電離イオン源を用いた商用の集束イオンビーム装置ではヘリウムイオンが用いられ、質量が非常に軽いため、スパッタリング効果が期待できない。よって、遮光膜と下地ガラス基板の組成が近く、遮光膜と下地ガラス基板とのエッチング速度に差が生じるアシストガスが存在しない場合、エッチング材料選択性が低く、遮光膜と下地ガラス基板との界面などの所望の位置でエッチングを停止させることが困難であった。しかし、本実施例の修正装置10による集束窒素イオンビームにより試料の加工が可能となり、また、その集束性により、従来の商用のガリウム集束イオンビーム加工装置に比べても、更に微細な局所的加工が可能になった。
次に、この修正装置10を用いたマスク修正方法を、図5を用いて説明する。図5はマスク14のイオンビームによる二次電子観察像の模式図である。
マスク14は遮光パターン部151と透過部152を有している。遮光パターン部151の一部にパターンの欠け部153と不要パターン(余剰欠陥)154の欠陥が存在している。このような欠陥は、事前のマスク設計情報と作成し終えたマスク表面の二次電子観察像との比較、または、欠陥の存在が疑われる領域の二次電子観察像と正常領域の二次電子観察像と比較により検出可能である。欠陥位置の座標情報、欠陥の種類、および欠陥の画像情報などは、修正装置10の制御部20に格納可能、または外部の情報機器から情報を得るために用いられる。
また、修正装置10は、欠け部153に対してはデポジションガス供給部16から、ピレン、ナフタレン、フェナントレンなどのカーボンガス、またはテトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)などのシラン系ガスを吹きつけながら、窒素イオンビームを照射し、欠け部153を埋めることができる。これにより欠陥が修正されたマスク14は露光されても欠陥を転写することなく正常にパターンを転写することができる。他方、マスク14上の余剰欠陥154がある場合は、修正装置10は、余剰欠陥154にエッチングガスを吹きつけながら窒素イオンビームを照射する。これにより余剰欠陥がエッチング除去されるとともに、マスク14の透過部分の光透過性を低下させるようなイオンが打ち込まれることは無い。このようにして、修正装置10は、マスク14を正常に修正することができる。
また、修正装置10は、二次電子画像または二次イオン像の変化を観察する事により、遮光帯が除去されて下地ガラス基板が露出するタイミングを検知できる。
また、従来技術である電子ビームによるマスク修正よりも、修正可能なマスク材の選択肢が拡がり、最先端のフォトマスク材にも対応できる。さらに、本実施例の修正装置10によれば、窒素イオンビームを用いることで、従来のヘリウム電界電離イオン源を用いたフォトマスク修正装置に比べて、同等の加工精度を保持しつつ、加工速度を大幅に向上することができる。しかも、イオン源自体が、本実施例によるイリジウムのティップ1を用いたガス電界電離イオン源30であるため、長期間、安定したビーム形成が可能で、同時に、マスク修正も長期間、安定して、高精度に実行可能である。
本願発明に関わるイリジウムのティップ1の先端形状について詳述する。
イリジウム結晶は面心立方構造であり、イリジウムの原子は立方体の8個の角と6面の中央とに位置している。
図6(A),(B)は、本実施例によるイリジウムのティップ1の先端のFIM像を観察した結果を基に作成した図であり、本実施例によるイリジウムのティップ1の先端を<210>方位から見た角錐構造を示すモデル図である。図6(A)は、丸印を1個のイリジウム原子161に対応させた原子配列である。図6(B)は、結晶面を模式的に示す図である。
イリジウムのティップ1の先端の角錐構造は、3つの側面(錐面)と、1個のイリジウム原子161(162)のみで構成された頂点と、を備える三角錐形状を有している。この角錐構造の構成原子は全てイリジウム原子である。図6(A)に示すように、各結晶面の最上層(最表面)にあるイリジウム原子161は白丸で表示され、最上層以下の内部のイリジウム原子161は表示が省略されている。また、三角錐形状の稜線に位置するイリジウム原子161(163)には黒三角印が付されている。図6(B)に示すように、角錐構造は、3つの錐面164a,164b,164cの各々が形成する稜線45a,45b,45cと、1個のイリジウム原子161(162)による頂点166と、を備えている。
図6(B)の錐面164aは、{100}結晶面であり、図6(A)の錐面164b,164cは、同一の{111}結晶面である。
なお、第2層および第3層の原子配置は、FIM像の観察において強電界によって強制的に先端のイリジウム原子161(162)を脱離させることによって検出され、図6(A),(B)に示すモデル図と一致することが、本発明者によって見出された。
なお、先端のイリジウム原子161(162)が脱離した状態のイリジウムのティップ1を、電子源またはイオン源の針状電極、もしくは走査プローブ顕微鏡の探針として用いると、試料への到達ビーム電流の低下または走査プローブ顕微鏡の位置分解能の低下が生じるので好ましくない。この場合には、後述するティップ先端の再生処理を実行することによって、先端原子を1個の原子に保持する。
図8(A)および図9(A)に示すように、各結晶面の最上層(最表面)にあるイリジウム原子171は白丸印で表示され、最上層以下の内部のイリジウム原子は灰丸印で表示されている。三角錐形状の頂点には1個のイリジウム原子171(172)が位置し、三角錐形状の稜線に位置するイリジウム原子171(173)には黒三角印が付されている。図8(B)および図9(B)に示すように、角錐構造は、3つの錐面174a,174b,174cの各々が形成する稜線175a,175b,175cと、1個のイリジウム原子171(172)による頂点176と、を備えている。
図8(B)および図9(B)の錐面174aは、{110}結晶面であり、図8(B)および図9(B)の錐面174b,174cは、同一の{311}結晶面である。
また、各結晶面における最上層の表面原子の密度をnとすると、イリジウムの格子定数dが0.3839nmであることを考慮すると、{100}結晶面では密度nが13.6×1018/m2であり、{111}結晶面では密度nが15.7×1018/m2であるのに対して、{110}結晶面では密度nが9.6×1018/m2であり、{311}結晶面の密度nが8.2×1018/m2である。すなわち、本実施例のイリジウムのティップ1の角錐構造の最表面原子密度に比べて、従来例のイリジウムティップの角錐構造の最表面原子密度がより低くなっており、本実施例に比べて従来例では、表面に存在する互いの原子間の隙間がより広い。
さらに、本実施例のイリジウムのティップ1の角錐構造が互いの原子間距離が小さい配置で構成されていることで、温度などの外乱に強いことが認められる。
なお、上述した本実施例のイリジウムのティップ1は、イリジウムの単結晶のティップ部材の先端を原子レベルに先鋭化させた構造を有するとしたが、これに限定されず、先鋭化されたイリジウムのティップ1の表面上に、めっきなどによって、イリジウムの薄膜が被覆されてもよい。
次に、図11を参照して、後述する電解研磨を施した後のイリジウムのティップ1を、さらに先鋭化し、先端が1個のイリジウム原子から成るイリジウムのティップ1に加工するためのティップ製造装置201について説明する。
図11は、ティップ製造装置201の概略構成図である。ティップ製造装置201は、ティップアセンブリ31を設置するための設置部203と、イリジウムのティップ1との間に高電界を発生させることにより、イリジウムのティップ1の先端(ティップ先端)からイオン204を放出させる引出し電極205と、イリジウムのティップ1にイオン204の加速電圧を印加するとともに、イリジウムのティップ1を加熱する電源206と、イリジウムのティップ1から放出されたイオン204を検出する検出器(例えば、MCP:Multi Channel Plateなど)207と、これらを内部に収容する真空容器208と、を備えている。
さらに、ティップ製造装置201は、真空容器208内を真空状態に保持する排気装置209と、検出器207により生成されるFIM像を、ビューポート210を介して撮像(または観察)するカメラ(例えば、CCDカメラなど)211と、カメラ211によって撮像されたFIM像の画像を記録するとともに電源206を制御する計算処理機212と、カメラ211によって撮像されたFIM像の画像などを表示するモニタ213と、を備えている。
さらに、ティップ製造装置201は、イオン化すべきガスをイリジウムのティップ1の周囲に供給するガス供給装置214と、イリジウムのティップ1および必要に応じてガス供給装置214から供給されたガスを冷却する冷却装置215と、イリジウムのティップ1から放出されたイオン204の電流を検出する移動可能なファラデーカップ216と、ファラデーカップ216を移動させる移動機構217と、などを備えている。
ガス供給装置214は、真空容器208内にイオン204の原料となるガスを供給可能である。このガスは、容易に入手可能な高純度ガス(例えば、純度が99.999%以上など)である。このガスは、さらに、ガス精製器(図示略)によって、数ppb程度まで不純物濃度が低減されてもよい。イリジウムのティップ1のナノ構造である角錐構造を維持可能な時間を長くするためには、不純物濃度を低減させる必要があり、真空容器208のベース圧力は低くされるとともに、ガスの不純物濃度は低減されることが好ましい。
本実施例では、水素、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンなどのガスが充填された1個または複数のガス容器(図示略)がガス供給装置214内に設置され、必要に応じて所望のガスが適量、供給可能とされている。ガス供給装置214は、イリジウムのティップ1の先端に所定のガス種を適量供給するようにバルブ214aを調整し、ガスをイリジウムのティップ1近傍のノズル214bから徐々にイリジウムのティップ1の周囲に供給する。
電源206は、高電圧の電流電源であって、真空容器208のフィードスルー(図示略)を通してイリジウムのティップ1に接続され、イリジウムのティップ1にフィラメント37を通じて高電圧を印加可能である。電源206は、例えば電流電源が高圧電源の出力の電位になるように接続されて構成されている。電源206から出力される電圧および電源206からフィラメント37に通電される電流などは、電源206に接続された計算処理機212によって制御される。計算処理機212は電源206から出力される電流および電圧を自動制御可能であり、例えば一定の割合で電流を変化させたりすることができる。これにより計算処理機212は、リモールディング条件を再現性良く繰り返すことができる。
なお、本実施例では、引出し電極205が任意の電位となるように構成することで、イリジウムのティップ1の電位を可変にしてもよい。つまり、外側から真空容器208、引出し電極205、およびイリジウムのティップ1の3重構造とすることも可能である。この場合、計算処理機212は、イリジウムのティップ1の電位を任意に設定し、引出し電極205の電位を、イリジウムのティップ1の電位に対して負の電位かつイオン204の原料となるガスがイオン化する電位に設定する。これにより、イオンビームの加速エネルギーを適宜に設定することができる。
ティップ製造装置201の真空容器208内は、常時、高真空状態に保持されるため、イリジウムのティップ1を、一旦、予備排気室(図示略)に保持し、イリジウムのティップ1に付着したコンタミネーション(不純物など)を高温加熱洗浄などで処理した後に、真空容器208内に導入するような適宜の機構が備えられてもよい。
なお、ティップ製造装置201はタングステンティップの尖鋭化にも使用できる。
イリジウムティップの作製方法は、図12に示すように、順次実行される、ウエットエッチング工程(ステップS10)と、FIB加工工程(ステップS20)と、電界誘起ガスエッチング工程(ステップS30)と、リモールディング工程(ステップS40)と、を含む。以下に各工程について説明する。
先ず、ステップS10のウエットエッチング工程では、先鋭化すべきイリジウムのティップ1の原材料として、所定形状(例えば、直径0.3mm、長さ8mmなど)の棒状のイリジウムの単結晶であって、長手方向が<210>方位に揃ったティップ部材を用いる。そして、例えばウエットエッチングにより棒状のティップ部材を、円錐形状の先端半径が所定値(例えば、数百nmから数μmなど)になるまで先鋭化してイリジウムのティップ1とする。
より詳細には、例えば水酸化カリウム(例えば、1mol/L)の電解溶液中にイリジウムのティップ部材と白金の対向電極とを浸し、この2極間(つまりティップ部材と対向電極との間)に交流電圧を印加して電解研磨を実施する。印加する交流電圧は、例えば周波数60Hzでおよそ30V(rms)に設定される。このステップS10のウエットエッチング工程により、ティップ部材の先端は数百nmから数μmの先端径を有する円錐形状に形成される。そして、ウエットエッチングの終了後、イリジウムのティップ1を水とアセトンなどで洗浄し、電解溶液などの不純物をイリジウムのティップ1から除去する。
次に、ステップS20のFIBエッチング工程では、イリジウムのティップ1の先端径をさらに小さい数十nmから数百nm程度にする場合は、ステップS10のウエットエッチング工程の実行後に、イリジウムのティップ1を従来公知のガリウム集束イオンビーム(Ga−FIB)装置(図示略)に導入し、FIBエッチングを行なうことにより、先端径を数十nmから数百nm程度にする。
次に、ステップS30の電界誘起ガスエッチング工程では、ガス電界電離イオン源30またはティップ製造装置201内にイリジウムのティップ1を配置して、イリジウムのティップ1の周辺を真空状態にする。図11におけるティップ製造装置201を例に説明する。真空容器208内の圧力をベース圧力(例えば、2×10−8Paなど)かつイリジウムのティップ1の冷却温度を所定温度(例えば、60K程度)になるように調整する。そして、ガス供給装置214から真空容器208内にヘリウムを、圧力が例えば1×10−4Paなどになるまで供給する。計算処理機212は、イリジウムのティップ1に電圧を印加するように電源206を制御する。イリジウムのティップ1に印加される電圧(ティップ電圧)が、例えば4kV程度に達すると、ヘリウムのFIMパターン(FIM像)がカメラ211によって撮像される。
ステップS20を経たイリジウムのティップ1、または先端構造が傷んだイリジウムのティップ1では、イリジウムのティップ1の先端表面に不純物が吸着しているため、結晶性が無いパターンが得られる。ティップ電圧を徐々に高くし、ティップ先端の電界強度がイリジウムの電界蒸発強度より高くなると、イリジウム原子が電界蒸発し始める。イリジウムのティップ1の先端表面の数層の原子層が電界蒸発すると、イリジウムの結晶性の清浄表面が露出する。この時、ティップ1の先端曲率半径が若干大きくなるため、ティップ電圧は、例えば5kVから6kV程度に上昇する。そして、ティップ電圧を例えば約1kVほど下げるとヘリウムによる画像が得られる最適電圧(ベストイメージング電圧)になり、規則正しい原子配列のFIMパターンが現れる。このような清浄表面が確認されたら、ガス供給装置214から真空容器208内へのヘリウムの供給を停止する。清浄表面になると、イリジウム結晶の欠陥が観察されることがある。清浄表面に結晶欠陥がある場合は、次のステップS40のリモールディング工程で所望の角錐構造を作ることができない。このような場合には、電界誘起ガスエッチングと電界蒸発を組み合せて、結晶欠陥がない領域までティップ1の先端表面層を除去する。清浄表面を観察することにより、ステップS40へ進めるかどうかを判断する。
この場合、引出し電圧とイリジウムのティップ1の電界誘起ガスエッチングされる領域とは所定の対応関係を有している。すなわち、引出し電圧が低いと電界の強いイリジウムのティップ1の先端領域が電界誘起ガスエッチングされ、引出し電圧が高いとイリジウムのティップ1の先端領域を除く周辺領域(例えば、付け根部分など)が電界誘起ガスエッチングされる。このため、本工程においては、ヘリウムが電界電離する程度に引出し電圧を高く設定し、イリジウムのティップ1の先端領域を残し、その周辺領域をエッチングする。これにより、後述するステップS40のリモールディング工程で移動するイリジウム原子の数を少なくすることができ、リモールディング工程の実行に要する時間を短縮することができる。また、イリジウムのティップ1の先端が細く尖った形状になるので、リモールディング工程で所望していない位置に角錐構造が成長することを防止することができる。ここで、電界誘起ガスエッチングが進行すると、先端が細く尖るので、先端原子が電界蒸発しないように引出し電圧を下げる。
また、イリジウムのティップ1の先端付近に結晶欠陥が存在する場合は、結晶欠陥が除去されるまで、イリジウムのティップ1の先端領域を電界誘起ガスエッチングするように引出し電圧を調整する。これにより結晶欠陥がイリジウムのティップ1の先端付近に存在する場合であっても、エッチングによって結晶欠陥が除去される。
次に、ステップS40のリモールディング工程では、ティップ製造装置201を用いて、イリジウムのティップ1の先端にナノ構造である角錐構造を形成する。
引出し電圧を例えばヘリウムによる最適イメージング電圧の約1/3、つまり1.2kV程度まで下げる。この電圧がほぼ窒素イメージング電圧と一致する。そして、真空容器208内に窒素ガスを導入し、圧力を例えば1×10−3Paなどに調整する。引出し電圧を窒素のFIMパターンが観察できるように微調整する。ここから本実施例のリモールディング工程を開始する。本実施例におけるステップS40のリモールディング工程は、真空容器208にガスを導入しない高真空中で行う従来のリモールディングとは異なり、窒素雰囲気中でリモールディングを実施する。また、従来のリモールディングはフィラメント37の電流を一定にして加熱し、ティップ電圧を上げ、その後フィラメント37の電流を下げながらティップ先端を先鋭化しているが、本実施例では、以下の手順で先鋭化を実施する。
ここで、撮像および観察される窒素のFIMパターンがほとんど変化していない場合は、例えば0.1Aずつ電流を増やして加熱する。
そして、おおよそフィラメント37が、例えば3.9AになるとFIMパターンに変化が現れる。つまり、図4に示すような各結晶面のうち、{111}結晶面が広がり、{110}結晶面が小さくなる。また{100}結晶面が広がり、{311}結晶面が小さくなる。このようにファセット面が大きく変化すると、イリジウムのティップ1の先端が尖ってくるため、窒素のFIMパターンがカメラ211によって撮像および観察されるティップ電圧(つまり、窒素のFIMパターンが見えるティップ電圧)が、例えば数百V下がる。なお、窒素のFIMパターンが見えるティップ電圧は、おおよそ0.9kV程度である。
そして、窒素のFIMパターンが見える電圧が下がったら、フィラメント37の電流を、例えば3.9Aで固定し、加熱時のティップ電圧を、例えばこの時点で窒素のFIMパターンが見える引出し電圧の20%から180%の値に設定する。多くの場合は低下側に変化させる。なお、加熱時のティップ電圧は、この時点で窒素のFIMパターンが見えるティップ電圧以下の低下側に変化させることに限定されず、例えば窒素のFIMパターンなどから得られるイリジウムのティップ1の先端の結晶の変化状態に応じて、この時点で窒素のFIMパターンが見える引出し電圧以上の増大側に変化させてもよい。
そして、例えば0.5kVのティップ電圧でフィラメント37の電流を3.9Aで繰り返し加熱すると、数個から成る輝点パターンがカメラ211によって撮像および観察されるようになる。
そして、最終的には1点だけの輝点が残り、イリジウムのティップ1の先端が1個の原子のみで構成された状態になる。
引出し電圧を窒素のFIMパターンが見える値より増大側に変化させる例として、引出し電圧が80%のリモールディングにおいて、2つの{111}結晶面ではさまれて作られる稜線が2重となり、2重線のまま{111}結晶面が成長しない場合があり、引出し電圧を徐々に高くして120%まで引出し電圧を高くしたときに{111}結晶面が大きくなって1本線の稜線ができることもある。
なお、上述のステップS40のリモールディング工程を、ステップS30の電界誘起ガスエッチングを行なわずに実施すると、所望の角錐構造が、所望の位置のみならず複数個形成されてしまう問題を生じる場合がある。複数個の角錐構造が形成されることは、ティップ先端の電界を乱し、複数個所からのイオン放出や、求める集束イオンビームの電流低下など不都合な事情を多々生じるため、ステップS40に先立ちステップS30を実施することで上記の問題を解決することができる。
そして、酸素ガスの供給を止め、窒素ガスを供給し、窒素のFIMパターンが見えるティップ電圧を確認する。この電圧で窒素ガスの供給を止め、酸素ガスを供給し、イリジウムのティップ1を加熱する。これらの処理を繰り返し実行する。ただし、この際、加熱温度を徐々に高くする。
そして、例えば窒素のFIMパターンなどからイリジウムのティップ1の先端原子が動き始めたことが検知されたら、引出し電圧を、例えばこの時点で窒素のFIMパターン見える引出し電圧より20%から180%の値に設定して、酸素ガスを供給して、イリジウムのティップ1を加熱する。多くの場合では、引出し電圧は低下側に変化させる。なお、加熱時のティップ電圧は、この時点で窒素のFIMパターンが見えるティップ電圧以下の低下側に変化させることに限定されず、例えば窒素のFIMパターンなどから得られるイリジウムのティップ1の先端の結晶の変化状態に応じて、この時点で窒素のFIMパターンが見えるティップ電圧以上の増大側に変化させてもよい。
そして、最終的には1点だけの輝点が残り、イリジウムのティップ1の先端が1個の原子のみで構成された状態になる。
また、窒素の代わりにヘリウムまたは水素を用いてもよい。例えば、イオン源ガスとして窒素ガスを用いる場合は窒素ガスによりリモールディングを実施し、イオン源ガスとして水素ガスを用いる場合は水素ガスによりリモールディングを実施することで、導入ガスを切り替えることなくイオンビームを照射することができる。
ティップアセンブリ31を図11のティップ製造装置201ではなく、修正装置10など集束イオンビームの形成が可能な装置内にガス電界電離イオン源30を搭載している場合、上記の電界誘起ガスエッチング工程S30およびリモールディング工程S40をビームエミッションするガス電界電離イオン源30内で実施することができる。この場合、イリジウムのティップ1をガス電界電離イオン源30の外部から移設する工程を不要とし、ティップアセンブリ31の移設による不純物の付着を防止することができ、また、イリジウムのティップ1をガス電界電離イオン源30の外部から移設する工程を不要とし、移設時の不純物の付着を防止することができ、作業効率を向上させることができる。つまり、修正装置10など集束イオンビーム形成ができる装置において、イリジウムのティップ1の尖端が損傷を受けた場合、その場で再生作業ができる。特に、窒素による電界誘起ガスエッチング工程S30およびリモールディング工程S40と、窒素集束イオンビーム形成の間にガス電界電離イオン源30内への導入ガス種を切り替えることなく、窒素だけでも可能である。
ナノインプリントリソグラフィは、高精度な微細凹凸パターンを持つ原版を作製し、この原版を軟化させたレジストが塗布された転写先基板に圧力をかけて押しつけ、レジストを硬化させてから原版を引き離して原版の凹凸をレジストに転写する。そして、酸素プラズマで全体的に膜厚を薄くして転写先の基板を露出させてからドライエッチングを行ってパターンを転写する。
従来のフォトリソグラフィでは透明基板に遮光膜がパターニングされたフォトマスクが用いられてきたが、ナノインプリントリソグラフィでは露光を用いないため、難易度が極めて高い短波長光源の露光装置を開発する必要無しに、装置が簡略化できる利点を有している。また、引き剥がした原版は何度も使用することが可能である。
最近では原版として石英を使用し、レジストの代わりに光硬化樹脂を転写したい基板上に塗布し、原版を押しつけて原版上面からUV(紫外)光を照射して光硬化樹脂を硬化させて原版の凹凸パターンを転写してから原版を引き剥がす光硬化型ナノインプリントリソグラフィも適用されるようになってきている。光硬化型の場合、室温で行えるため、熱硬化型のような原版や転写先基板の熱膨張による位置精度の低下も起こらない利点を有する。従来、公知技術のガリウム集束イオンビームによるナノインプリントの原版の修正方法が知られている。
なお、正常パターンを三次元プリントする場合、上記の様に、パターン形状の三次元形状情報を電子ビーム等でその場で得ることに限定されることはなく、外部記憶手段から正常パターンの三次元形状情報を修正装置に取り込んでもよい。
なお、このナノインプリントリソグラフィ原版の修正装置をナノ三次元プリンターとして、ナノインプリントリソグラフィ原版の修正以外の微小構造の再生に用いてもよい。
上記実施例1においては、イオンビーム鏡筒11と電子ビーム鏡筒12が搭載された修正装置10について説明したが、本実施例は修正装置10の別構成として、試料室13に走査プローブ顕微鏡を備えた例である。
走査プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)は、先鋭化した探針を、試料表面をなぞるように走査させて、試料表面形態や状態を拡大観察する顕微鏡であり、探針と試料間に流れるトンネル電流を用いるのが走査トンネル顕微鏡(STM)、探針と試料間の原子間力を用いるのが原子間力顕微鏡(AFM)と呼ばれている。
これら走査プローブ顕微鏡では、探針の先端が1個の原子であることが、観察分解能の観点から好ましい。作製直後の探針が1個の原子で終端されていても、使用を繰り返すことで先端原子が脱落して観察分解能が低下したり、先端原子が複数個となり、検出する原子が頻繁に変わると、所望の分析結果を得ることができなくなる虞がある。したがって、先端が1個の原子で構成される状態を長期間保持できる探針を搭載し、高分解能で長寿命の走査プローブ顕微鏡が望まれている。
そこで、本実施例では、上記実施例3に記載した1個の原子で終端されたイリジウムのティップ1を走査プローブ顕微鏡の探針として用いた。イリジウムがもともと有する耐化学性が強いことに加え、本発明による効果である1個の原子で終端される状態が長期間維持される優位性により、長寿命で高分解能の観察結果を得ることができる。
本実施例の修正装置10の基本構成において、イオンビーム鏡筒11および電子ビーム鏡筒12は基本的に実施例1と同じであり、試料室13の真空容器壁面もしくは試料ステージ15に走査プローブ顕微鏡を搭載する点において実施例1とは構成が異なる。
12…電子ビーム鏡筒、13…試料室、14…マスク、15…試料ステージ、
16…デポジションガス供給部、17…エッチングガス供給部、18…検出器、
19…モニタ、20…制御部、31…ティップアセンブリ、32…引出し電極、
32a…開口部、33…イオン源ガス供給部、34…冷却装置、35…ベース部材、
36…通電ピン、37…フィラメント、38…供給ガス、39…イオン源室、
40…壁面、41…コールドヘッド、101…集束イオンビーム、
110…イオンビーム鏡筒、111…コンデンサレンズ電極、
112…対物レンズ電極、113…中間室、114,115…オリフィス、
116,117…真空ポンプ、130…制御部、131…像形成部、
132…引出し電圧制御部、133…イオン源ガス制御部、134…温度制御部、
151…遮光パターン部、152…透過部、153…欠け部、154…余剰欠陥、
161,162,163…イリジウム原子、164a,164b,164c…錐面、
165a,165b,165c…稜線、 166…頂点、
167…最上層(表面層)のイリジウム原子、168…第2層のイリジウム原子、
171,172,173…イリジウム原子、174a,174b,174c…錐面、
175a,175b,175c…稜線、176…頂点、
177…最上層(表面層)のイリジウム原子、178…第2層のイリジウム原子、
201…ティップ製造装置、203…設置部、204…イオン、205…オリフィス、
206…電源、207…検出器、207a…スクリーン、208…真空容器、
209…排気装置、210…ビューポート、211…カメラ、212…計算処理機、
213…モニタ、214…ガス供給装置、215…冷却装置、
216…ファラデーカップ、217…移動機構
500…ティップ、501…突起、
S10…ウエットエッチング工程、
S20…FIB加工工程、
S30…電界誘起ガスエッチング工程、
S40…リモールディング工程
Claims (6)
- 先鋭化されたティップを有するイオン発生部を備えるガス電界電離イオン源と、
前記ティップを冷却する冷却手段と、
前記ガス電界電離イオン源において発生したガスのイオンを集束させて集束イオンビームを形成するイオンビーム鏡筒と、
前記イオンビーム鏡筒により形成された前記集束イオンビームが照射される試料を設置して移動可能な試料ステージと、
少なくとも前記試料ステージを内蔵する試料室と、
前記イオンビーム鏡筒により形成された前記集束イオンビームによって前記試料としてのマスクまたはナノインプリントリソグラフィのモールドを修正する制御手段と、を少なくとも備え、
前記ガス電界電離イオン源は、前記イオンを窒素イオンとし、前記イオンを発生可能なイリジウム単結晶により構成された前記ティップを備え、
前記ティップは、<210>方位のイリジウム単結晶により構成され、前記ティップの頂点は1つの{100}結晶面および2つの{111}結晶面により取り囲まれた先端を備える、
ことを特徴とする修正装置。 - 先鋭化されたティップを有するイオン発生部を備えるガス電界電離イオン源と、
前記ティップを冷却する冷却手段と、
前記ガス電界電離イオン源において発生したガスのイオンを集束させて集束イオンビームを形成するイオンビーム鏡筒と、
前記イオンビーム鏡筒により形成された前記集束イオンビームが照射される試料を設置して移動可能な試料ステージと、
少なくとも前記試料ステージを内蔵する試料室と、
前記イオンビーム鏡筒により形成された前記集束イオンビームによって前記試料としてのマスクまたはナノインプリントリソグラフィのモールドを修正する制御手段と、を少なくとも備え、
前記ガス電界電離イオン源は、前記イオンを発生可能なイリジウム単結晶により構成された前記ティップを備え、
前記イオン発生部にイオン化すべきガスを供給するガス供給部を備え、
前記ガス供給部は、少なくとも窒素を含む複数のガス種の各々を貯蔵かつ供給可能な容器を備え、
前記ティップの先鋭化に用いるガスと前記集束イオンビームを形成するガスとが同じガス種である、
ことを特徴とする修正装置。 - 前記ガス供給部は、前記複数のガス種として少なくとも窒素と水素を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の修正装置。
- 前記制御手段は、前記マスクとして極端紫外線露光用のマスクを修正する場合に前記集束イオンビームとして水素イオンビームを用い、前記マスクとしてフォトマスクを修正する場合に前記集束イオンビームとして窒素イオンビームを用いる、ことを特徴とする請求項3に記載の修正装置。
- 前記ガス供給部から供給されるガスのガス種を切り替え可能なガス切替部を備える、ことを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1つに記載の修正装置。
- 前記イオン発生部におけるガスのイオン化に要する電圧を切り替えることによってイオン種を切り替えるイオン切替部を備える、
ことを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1つに記載の修正装置。
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