本発明の一実施例を以下に述べる。以下の実施例において、説明のために電圧や温度の数値を用いて説明しているが、それぞれの値の高低などを説明するための便宜的な値でもあるので、当然、本願はこの値に限定されるものではないことを前述しておく。また、本発明は電界電離イオン源にて高い効果を発揮するが、特に言及しなければ、他のイオン源でも良い。
(1)正のイオンを発生させるイオン源と、試料が設置される試料ステージと、前記イオン源から発生したイオンビームを前記試料へ集束させる対物レンズと、前記対物レンズと前記試料との間に設けられた第1の電極と、前記第1の電極へ第1の正電位を印加する第1の電源と、前記試料ステージへ第2の正電位を印加する第2の電源とを有するイオンビーム装置とすることである。
このようにすると、試料に正電圧を印加したときでも、二次電子が試料に戻ることを防止し、二次電子の検出効率を上げることが出来る。これにより試料を照射するイオンエネルギーを低くでき、試料のダメージが少なくなる。したがって、試料表面の構造を変質させずに観察することや、表面の構造寸法を精度よく計測することが可能となる。さらに、イオンレンズを通過するイオンのエネルギーが高いため、イオンレンズの収差が小さくなり、試料上でのイオンビーム径が小さくなり、高分解能の観察や寸法計測が実現する。
また、第1の電極を設けることで、試料に印加する正の電圧とは異なる電圧を印加して二次電子の軌道を制御することにより二次電子の捕集効率が高くなる。よって、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となる。これは、観察時間の短縮やスループットの向上をも可能とする。
(2)さらに、第1の正電位は、前記第2の正電位よりも大きいことを特徴とする。
このようにすると、試料から放出された二次電子が前記第1の電極には衝突することを低減できるので、より多くの二次電子を捕集できる。
(3)さらに、第1の電極は、前記イオンビームが前記試料へ集束された位置を囲う形状であることを特徴とする。
このようにすると、試料から放出された二次電子の捕集効率が高くなるため、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となる。すなわち、観察時間が短縮したり、スループットが向上したりするという効果を奏する。また、第1の電極に当たって発生した三次電子を検出することも可能である。
(4)さらに、イオンビーム装置は、前記試料から放出された荷電粒子を検出する荷電粒子検出器と、前記荷電粒子を前記荷電粒子検出器方向に加速する磁場を、前記試料と前記荷電粒子検出器との間に発生させるコイルまたは磁石とを有する。
図示はしていないが、このようにすると、横方向に放射した2次電子の捕集効率が高まるため、形状輪郭が明確化する効果がある。これは、他の構成でも当てはまるが、本構成はより顕著な効果となる。
(5)さらに、試料から放出された荷電粒子を検出する荷電粒子検出器と、前記荷電粒子検出器と前記第1の電極との間に配置された第2の電極と、前記第2の電極へ前記第1の正電位より大きい第3の正電位を印加する第3の電源と、を有する。
このようにすると、試料から放出された二次電子が前記第2の電極が作る電場により荷電粒子検出器の方向に加速されるため、二次電子の捕集効率が特に高くなり、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となるという効果を奏する。
(6)さらに、上記(5)記載のイオンビーム装置において、前記第1の正電位に比べて小さい第5の正電位が印加される電子エミッタを有する電子銃と、前記第5の正電位よりも大きく、かつ前記第1の正電位以下の第6の正電位が印加される電子照射電極と、を有する電子ビーム照射系とを有する。
このようにすると、特に、前記試料に印加する第1の電圧を変化させて、イオンエネルギーを変える場合にも、二次電子の捕集効率を最適に保つ、もしくは二次電子の検出感度を一定にするという効果を奏する。
(7)さらに、前記第1の正電位に比べて小さい第5の正電位が印加される電子エミッタを有する電子銃と、前記第5の正電位よりも大きく、かつ前記第1の正電位以下の第6の正電位が印加される電子照射電極を有する電子ビーム照射系とを有する。
このようにすると、試料が絶縁物の場合にも試料の帯電状態を電子ビーム照射によって制御できるため、絶縁物の観察や寸法計測が可能になるという効果を奏する。
(8)さらに対物レンズは、第1の負電位が与えられる第3の電極と、第1の負電位よりも低い第2の負電位が与えられる第4の電極と、第2の正電位よりも低い第7の正電位が与えられる第5の電極とを有する。
このようにすると、通過するイオンのエネルギーが低くても、イオンレンズの収差を最小にするように、イオンレンズの各々の電極に印加する電圧を決めることができるため、試料上でのイオンビーム径が小さくなり、高分解能の観察や寸法計測が実現するという効果を奏する。
(9)さらに、第1の電極の一部は、前記対物レンズの電極と一体的に構成されることを特徴とする。
このようにすると、特に、前記イオンレンズと試料の距離を小さくするのに好適となり、イオンレンズの収差を小さくできる。すなわち、試料上でのイオンビーム径がさらに小さくすることができ、高分解能の観察や寸法計測が実現するという効果を奏する。
また、第1の電極の少なくとも一部が、前記試料に最も近いイオンレンズの電極から構成されるようにしても良い。
(10)さらに、第1の電極は、透磁率が100以上の材料により構成されることを特徴とする。
このようにすると、イオンレンズを通過するイオンのエネルギーを高くすることができ、イオンレンズの収差が小さくなる。また、試料上でのイオンビーム径が小さくなり、高分解能の観察や寸法計測が実現する。特に、試料近傍が、磁気シールドできるため、交流磁場ノイズが低減して、イオンビーム径が小さくなり、分解能がさらに向上する。
(11)さらに、試料から放出される前記荷電粒子を検出する荷電粒子検出器と、前記試料にて反射されたイオンを電子に変換する導電性の板を有し、前記試料から放出される二次電子を検出して得られた第1の観察像と、前記導電性の板にて変換された電子を検出して得られた第2の観察像との2種類の画像を出力する制御装置を備える。
このようにすると、試料から放出される二次電子を主に検出して得られた第1の観察像と、試料で反射される正のイオンを電子に変換してこれを検出して得られた第2の観察像との2種の観察像を表示することができるため、試料の表面元素情報や状態に関する情報を得るのに好適となる。
(12)さらに、対物レンズよりも前記イオン源側に配置され、前記試料から放出される前記荷電粒子を検出する荷電粒子検出器を有し、前記第1の正電位は、前記第2の正電位よりも大きいことを特徴とする。
このようにすると、前記第1の電極には試料に印加する正の電圧より大なる電圧を印加することにより、試料からほぼ垂直方向に放出される二次電子はイオンレンズ方向に加速されることになり、これを効率よく検出するのに好適となるという効果を奏する。
(13)さらに、上記(12)記載のイオンビーム装置において、対物レンズは、第3の負電位が与えられる第6の電極と、第3の負電位よりも低い第4の負電位が与えられる第7の電極と、第2の正電位よりも低い第8の正電位が与えられる第8の電極とを有する。
このようにすると、前記イオンレンズが少なくとも3個の電極から構成されて、すべての電極に試料に印加する電圧より大なる正の電圧を印加することにより、試料からほぼ垂直方向に放出される二次電子を効率よく捕集することができ、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となるという効果を奏する。
(14)さらに、上記(12)記載のイオンビーム装置において、イオン源と前記対物レンズとの間に、前記試料にて反射されたイオンを電子に変換する導電性の板を有し、前記荷電粒子検出器は前記変換された電子を検出する荷電粒子検出器を有する。
このようにすると、試料で反射されたイオンを、前記導電性の板で電子に変換して、好適に検出可能になる。そして、主に反射イオンによる観察像を得ることで、試料元素種に係わる情報を得ることができるという効果を奏する。
(15)さらに、上記(14)記載のイオンビーム装置において、試料から放出された二次電子を検出する二次電子検出器を有し、前記二次電子検出器から得られた第1の観察像と、前記荷電粒子検出器から得られた第2の観察像との2種類の画像を出力する制御装置を備える。
このようにすると、上記(14)の効果に加えてさらに、試料から放出される二次電子を主に検出して得られた第1の観察像と、試料で反射される正のイオンを電子に変換してこれを検出して得られた第2の観察像との2種の観察像を表示することができるため、試料の表面元素情報や状態に関する情報を得るのに好適となる。
(16)さらに上記(1乃至15)記載のイオンビーム装置が、第1の電極に正の電圧を印加する第1の電源と、前記第2の電極に第3の正の電圧を印加する第3の電源と、前記第4の電源のいずれかが、前記第1の電源に連動して制御できることを特徴とするイオンビーム装置である。
このようにすると、試料に印加する第1の電源の電圧を変化させて、イオンエネルギーを変える場合にも、二次電子の捕集効率を最適に保つ、もしくは二次電子の検出感度を一定にできるという効果を奏する。
以下に、イオンビーム装置として、走査イオン顕微鏡装置の第1の例を説明する。
図1を参照して本発明によるイオンビーム装置の例を説明する。本例の走査イオン顕微鏡は、ガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、試料室3、及び、冷却機構4を有する。ここでガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、及び、試料室3内は真空もしくは真空に近い状態に保たれている。
ガス電界電離イオン源1は、針状のエミッタティップ21、エミッタティップに対向して設けられ、イオンが通過する開口部27を有する引き出し電極24、細線状のフィラメント22、円柱状のフィラメントマウント23、及び、円柱状のエミッタベースマウント64を有する。さらに、真空容器15にはガス供給機構26先端のガス供給配管25が接続されエミッタティップ周辺にイオン化ガスを供給する。本実施例では、イオンとなるべきガス(イオン化ガス)として例示されるのは、ヘリウムである。
また、ガス電界電離イオン源1の真空容器15を真空排気するイオン源真空排気用ポンプ12が設けられている。真空容器15とイオン源真空排気用ポンプ12の間には真空遮断可能なバルブ29が配置されている。さらにガス電界電離イオン源1の真空容器15には非蒸発ゲッター材料70を内包する真空ポンプ71が接続されている。また、非蒸発ゲッター材料には真空容器の外に加熱機構72が備えられている。加熱機構は抵抗加熱、ランプ加熱などを原理としたものなどである。また、イオン源真空排気用ポンプ12と真空容器15および、非蒸発ゲッター材料70を内包する真空ポンプ71と真空容器15との間には真空遮断可能なバルブ74が配置されている。また、非蒸発ゲッター材料を内包する真空ポンプには真空遮断可能なバルブ77を介して真空ポンプ78が接続されている。
さらにガス電界電離イオン源1は、エミッタティップ21の傾斜を変える傾斜機構61を含み、これはエミッタベースマウント64に固定されている。これは、エミッタティップ先端の方向をイオンビーム照射軸62に精度良く合わせるために用いる。この角度軸調整により、イオンビームの歪みを少なくするという効果を奏する。
また、イオンビーム照射系は、上記ガス電界電離イオン源1から放出されたイオンを集束する集束レンズ5、該集束レンズを通過したイオンビーム14を制限する可動な第1アパーチャ6、該第1アパーチャを通過したイオンビームを走査あるいはアラインメントする第1偏向器35、該第1アパーチャを通過したイオンビームを偏向する第2偏向器7、該第1アパーチャを通過したイオンビーム14を制限する第2アパーチャ36、該第1アパーチャを通過したイオンビームを試料上に集束する静電型イオンレンズである対物レンズ8から構成される。
また、試料室3内部については後で詳しく述べるが、試料9を載置する試料ステージ10、荷電粒子検出器11、およびイオンビームを照射したときの試料のチャージアップを中和するための電子銃16が設けられている。また、対物レンズ8と試料の間に電極211が設けられている。本例のイオン顕微鏡は、更に、試料室3を真空排気する試料室真空排気用ポンプ13を有する。また、試料室3には図示してないが試料近傍にエッチングやデポジションガスを供給するガス銃が設けられている。
また、床20の上に配置された装置架台17の上には、防振機構19を介して、ベースプレート18が配置されている。電界電離イオン源1、カラム2、及び、試料室3は、ベースプレート18によって支持されている。
冷却機構4は、電界電離イオン源1の内部、エミッタティップ21を冷却する。なお、冷却機構4は例えばギフォード・マクマホン型(GM型)冷凍機を用いる場合には、床20には、図示してないがヘリウムガスを作業ガスとする圧縮機ユニット(コンプレッサ)が設置される。圧縮機ユニット(コンプレッサ)の振動は、床20を経由して、装置架台17に伝達される。装置架台17とベースプレート18との間には除振機構19が配置されており、床の高周波数の振動は電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、真空試料室3などには伝達しにくいという特徴を持つ。従って、圧縮機ユニット(コンプレッサ)の振動が、床20を経由して、電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、及び、試料室3に伝達しにくいという特徴を持つ。ここでは、床20の振動の原因として、冷凍機40及びコンプレッサを説明した。しかしながら、床20の振動の原因はこれに限定されるものではない。また、防振機構19は、防振ゴム、バネ、ダンパ、又は、これらの組合せによって構成されてよい。
ここで、本実施例のガス電界電離イオン源のエミッタティップ21の構造及び作製方法を説明する。先ず、直径約100〜400μm、軸方位<111>のタングステン線を用意し、その先端を鋭利に成形する。それによって、曲率半径が数10nmの先端を有するエミッタティップが得られる。このエミッタティップの先端に、別の真空容器でイリジウムを真空蒸着させる。次に、フィラメントに通電してエミッタティップを高温加熱して、イリジウム原子をエミッタティップの先端に移動させる。それによって、イリジウム原子によるナノメートルオーダのピラミッド型構造が形成される。これをナノピラミッドと呼ぶことにする。ナノピラミッドは、典型的には、先端に1個の原子を有し、その下に3個又は6個の原子の層を有し、さらにその下に10個以上の原子の層を有する。
なお、本例では、タングステンの細線を用いたがモリブデンの細線を用いることもできる。また、本例では、イリジウムの被覆を用いたが、白金、レニウム、オスミウム、パラジュウム、ロジュウム等の被覆を用いることもできる。
また、エミッタティップの先端にナノピラミッドを形成する方法として、他に、真空中での電界蒸発、ガスエッチィング、イオンビーム照射、リモデリング法等を用いてもよい。このような方法によって、タングステン線、又はモリブデン線先端にタングステン原子又はモリブデン原子ナノピラミッドを形成することができる。例えば<111>のタングステン線を用いた場合には、先端が1個または3個のタングステン原子で構成されるのが特徴となる。また、これとは別に、白金、イリジウム、レニウム、オスミウム、パラジュウム、ロジュウムなどの、細線の先端に真空中でのエッチング作用により同様なナノピラミッドを形成してもよい。これらの原子オーダの鋭利な先端構造をもつエミッタティップをナノティップと呼ぶことにする。
上述のように、本実施例によるガス電界電離イオン源のエミッタティップ21の特徴は、ナノピラミッドにある。エミッタティップ21の先端に形成される電界強度を調整することによって、エミッタティップの先端の1個の原子の近傍でヘリウムイオンを生成させることができる。従って、イオンが放出される領域、即ち、イオン光源は極めて狭い領域であり、ナノメータ以下である。このように、非常に限定された領域からイオンを発生させることによって、ビーム径を1nm以下とすることができる。そのため、イオン源の単位面積及び単位立体角当たりの電流値は大きくなる。これは試料上で微細径・大電流のイオンビームを得るためには重要な特性である。
なお、白金、レニウム、オスミウム、イリジウム、パラジュウム、ロジュウム、などを用いて、先端原子1個のナノピラミッドが形成された場合には、同様に単位面積・単位立体角から放出される電流すなわちイオン源輝度を大きくすることができ、イオン顕微鏡の試料上のビーム径を小さくしたり、電流を増大したりするのに好適となる。ただし、エミッタティップが十分冷却され、かつガス供給が十分な場合には、必ずしも先端を1個に形成する必要はなく、3個、6個、7個、10個などの原子数であっても十分な性能を発揮できる。特に、4個以上の10個未満の原子で先端を構成する場合には、イオン源輝度を高くでき、かつ先端原子が蒸発しにくく安定した動作が可能であることを本願発明者は見出した。したがって、本願で述べるナノピラミッド構造は、特に、先端原子1個の構造であることに言及しなければ、上述したように複数の原子数の先端を持つ構造でもよい。
図2は、図1に示した本発明によるイオン顕微鏡の制御装置の例を示す。本例の制御装置は、ガス電界電離イオン源1を制御する電界電離イオン源制御装置91、冷凍機4を制御する冷凍機制御装置92、非蒸発ゲッター材料の加熱機構および冷却機構などの温度制御装置191、集束レンズ5および対物レンズを制御するレンズ制御装置93、可動な第1アパーチャ6を制御する第1アパーチャ制御装置94、第1偏向器35を制御する第1偏向器制御装置195、第2偏向器7を制御する第2偏向器制御装置95、荷電粒子検出器11を制御する荷電粒子検出器制御装置96、試料ステージ10を制御する試料ステージ制御装置97、試料室真空排気用ポンプ13を制御する真空排気用ポンプ制御装置98、電子銃16の制御装置192、対物レンズと試料との間の電極211、試料台10、荷電粒子検出器11の電極等に電圧を印加する複数の電源194およびその制御装置193、および計算処理装置99を有する。計算処理装置99は演算処理部、記憶部、画像表示部等を備える。画像表示部は、荷電粒子検出器11の検出信号から生成された画像、及び、入力手段によって入力した情報を表示する。
試料ステージ10は、試料9を試料載置面内にて直交2方向へ直線移動させる機構、試料9を試料載置面に垂直な方向への直線移動させる機構、及び、試料9を試料載置面内にて回転させる機構を有する。試料ステージ10は、更に、試料9を傾斜軸周りに回転させることによりイオンビーム14の試料9への照射角度を可変できる傾斜機能を備える。これらの制御は計算処理装置99からの指令によって、試料ステージ制御装置97によって実行される。
図3に、図1に示した本発明によるイオン顕微鏡の試料室内部の様子を示す。対物レンズ8は、3個の電極201、202、203から構成されている。各々の電極は電気絶縁されており、それぞれ3個の高圧電源301、302、303から電圧を印加できる。
荷電粒子検出器11は、その先端に電極206を備え、蛍光体207、および大気側に光電子増倍管208を備える。荷電粒子検出器先端の電極206および蛍光体207も、各々電気絶縁されていて、2個の高圧電源307、308から電圧を印加できる。
電子銃16は電子エミッタ209および電子照射電極210などから構成されている。電子エミッタ209および電子照射電極210も、各々電気絶縁されていて、2個の高圧電源309、310から電圧を印加できる。試料台10も電気絶縁されていて高圧電源305から電圧を印加できる。また、対物レンズと試料の間に配置された電極211も電気絶縁されていて高圧電源306から電圧を印加できる。
次に、本例のガス電界電離イオン源の動作を説明する。ここでは、イオン化ガスの一例としてはヘリウムを用いて説明する。ちなみに、各構成にかける電圧はあくまで一例である。例えば、加速電圧や引出電圧は、装置や測定条件において、また他の電極との相対的な電圧の高低差やその機能を果たす範囲で変化することは言うまでもない。
まず、真空排気後、十分な時間が経過した後、冷凍機4を運転する。それによってエミッタティップ21が冷却される。まず、エミッタテフィップにイオンの加速電圧として、正の7kVを印加する。次に、引き出し電極24に負の10kVを印加する。すると、エミッタティップの先端に強電界が形成される。ガス供給配管25から供給されたヘリウムが、強電界によってエミッタティップ面に引っ張られる。ヘリウムは、最も電界の強いエミッタティップ21の先端近傍に到達する。そこでヘリウムが電界電離し、ヘリウムイオンビームが生成される。ヘリウムイオンビームは、引き出し電極24の孔27を経由して、イオンビーム照射系に導かれる。
次に、イオンビーム照射系の動作を説明する。イオンビーム照射系の動作は、計算処理装置99からの指令により制御される。ガス電界電離イオン源1によって生成されたイオンビーム14は、集束レンズ5、ビーム制限アパーチャ6、対物レンズ8、対物レンズと試料間の電極201を通過して、試料ステージ10上の試料9の上に照射される。まず、イオン光学条件は、イオン光源を試料上に結像する倍率を少なくとも0.5以上として、大電流を得られる条件とした。なお、荷電粒子検出器11からの信号は、輝度変調され、計算処理装置99に送られる。計算処理装置99は、走査イオン顕微鏡像を生成し、それを画像表示部に表示する。こうして、試料表面の観察が実現される。
ここで、試料に照射されるイオンエネルギーを低減するため、試料には、正の5kVを印加しておく。しかし、対物レンズと試料の間の電極201が接地電位の場合には、試料から放出された二次電子のほとんどは、試料に戻ってしまい、信号/ノイズ比の高い画像を得ることは困難であることを見出した。
ここで、対物レンズと試料の間の電極211に試料と同じ電圧である正の5kVを印加する。このようにすると、試料から放出された二次電子の多くを荷電粒子検出器11によって検出できるようになる。さらに、本発明では、対物レンズと試料の間の電極211に、試料電圧に比べて小なる電圧を印加して、荷電粒子検出器と反対方向に飛び出した二次電子を追い返して、そのほとんどを荷電粒子検出器で検出できるようにした。このようにして信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることに成功した。
また、このときに荷電粒子検出器の先端の電極206には、試料に印加した正の電圧よりも大なる電圧を印加して、二次電子の捕集効率を最大化すると、信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることができた。すなわち、試料から放出された二次電子が、荷電粒子検出器の先端の電極206が作る電場により荷電粒子検出器の方向に加速されるため、二次電子の捕集効率が特に高くなる。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となるという効果を奏する。
さらに、このとき再度、対物レンズと試料の間の電極211の電圧を調整すると、二次電子捕集効率を増大できる場合もある。なお、以上のように二次電子捕集効率が最大の条件で、イオンビームが試料上で集束するように、すなわち、像分解能が最も高くなるように対物レンズに印加する電圧を調整する。
以上、本実施例によると、前記試料に正の電圧を印加することにより試料を照射するイオンエネルギーを低くでき、試料のダメージが少なくなり、試料表面の構造を変質させずに観察することや、表面の構造寸法を精度よく計測することが可能となる。さらに、イオンレンズを通過するイオンのエネルギーが高いため、イオンレンズの収差が小さくなり、試料上でのイオンビーム径が小さくなり、高分解能の観察や寸法計測が実現する。
さらに、第1の電極を設け、試料に印加する正の電圧とは異なる電圧を印加して二次電子の軌道を制御することにより二次電子の捕集効率が高くなるため、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となる。これは、観察時間の短縮やスループットの向上をも可能とする。特に、イオンの照射エネルギーを5kV以下にしても、寸法計測の精度を0.5nm以下にできることがわかった。
また、対物レンズと試料の間の電極211の形状が、平な板状であるよりも、本実施例のように試料のイオンビーム照射位置を略囲う形状(側面から囲うような立体的な形状)であることにより二次電子捕集効率を高められることを、本願発明者は見出した。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となる。すなわち、単純に平板を対物レンズと試料の間に配置して試料と同じ電圧を印加した場合と比較した場合、平板の脇から入り込む接地電位の影響を低減し二次電子捕集効率を向上させることが出来る。
ここで、この電極の形状は、対物レンズと試料の距離が長くならない形状であることが好適な形状である。対物レンズと試料の距離が長くなり、対物レンズの収差が増大するためである。従って、図3に記載のように、対物レンズと試料の間における高さ方向での間隔は短く、荷電粒子検出器などを配置する側面の近くでは、それらの機器を配置するための高さを有するような形状が一例である。従って、対物レンズの下側の形状に沿うような形状でも、検出器の検出側の形状に沿うような形状でもよい。
また、試料の種類に応じて、電極の中に直接試料を入れるような構造としてもよい。このように、接地電位の影響を低減できる形状にする構成を有することで、二次電子捕集効率を向上させることが出来る。
また、対物レンズと試料の間の電極211の形状が、試料のイオンビーム照射位置を略囲う形状であり、少なくとも透磁率100以上の材料により構成されることにより、試料近傍の磁場交流ノイズを低減することにより、イオンビームを微細化できることがわかった。
また、試料ステージ10近傍に、磁場を発生するコイルまたは磁石を配置して、試料から放出される二次電子を前記荷電粒子検出器方向に加速するようにすると、二次電子捕集効率をさらに高められることがわかった。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となるという効果を奏する。
また、荷電粒子検出器11の蛍光体207に印加する電圧、対物レンズと試料の間の電極211に印加する電圧と、荷電粒子検出器の前段に配置した電極206に印加する電圧とのいずれかが、試料9に印加する電圧に連動させて制御できるようにすると、試料電圧を変化させても最適な二次電子捕集条件を容易に再現できることとがわかった。特に、前記試料に印加する電圧を変化させて、イオンエネルギーを変える場合にも、二次電子の捕集効率を最適に保ったり、二次電子の検出感度を一定にできたりするという効果を奏する。
また、電子銃16の電子エミッタ209に印加する電圧を試料9に印加する電圧に比べて小なる正の電圧を印加して、電子照射電極210には、電子エミッタ209に印加する電圧よりも大とすることで、試料に電子ビームを照射することができ、試料が絶縁物で帯電した場合にはこれを中和することにより良好に試料観察が可能になることがわかった。さらに、対物レンズと試料の間の電極211に印加する電圧と比べておおよそ同じか、もしくは小なる正の電圧を電子照射電極210印加することによって、二次電子の捕集効率を高められることがわかった。すなわち、試料が絶縁物の場合でも試料の帯電状態を電子ビーム照射によって制御できるため、絶縁物の観察や寸法計測が可能になるという効果を奏する。
また、ガス電界電離イオン源、イオンビーム照射系および試料室などの真空チャンバ材質を磁性材料で構成させ外部磁気をシールドするとイオンビームの径が小さくなり、より高分解能観察が実現するという効果を奏する。
また、本実施例に示したいずれかの構成に加えて、ガス電界電離イオン源のエミッタティップをナノピラミッドで構成すると、極微小なビーム径で、電流が大きいというイオンビームが得られるため、高信号/ノイズ比で超高分解能の試料観察像が得られ、かつ試料観察像にゆれなどをなくすことができるという効果を奏する。
さらに、前記ガス電界電離イオン源を搭載した荷電粒子線装置において、イオン光源を試料に投影する倍率が少なくとも0.5以上であることを特徴とする荷電粒子線装置とすると、イオンビーム電流が大きくなる。このとき、前記ガス電界電離イオン源から放出されたイオンビームを走査して試料に照射して、試料から放出される二次粒子を検出して試料観察像を得るイオンビーム装置とすると、高信号/ノイズ比で超高分解能の試料観察像が得られ、かつ試料観察像にゆれなどをなくすことができるという効果を奏する。
また、エミッタティップの傾斜を変える傾斜機構を省略した装置構成とした場合、エミッタティップ先端から放出されるイオンビームの方向に合わせて集束レンズの傾斜を調整すれば、集束レンズでのイオンビームの歪みを小さくでき、イオンビームの径が小さくなり、より高分解能観察が実現するという効果を奏する。また、エミッタティップ21の傾斜機構を省略できるので、イオン源構造を単純化できる、ひいては低コストの装置を実現できるという効果を奏する。
さらに、別の真空装置でエミッタティップからのイオン放出パターンを観察して、エミッタティップの傾斜方向を精密に調整しておき、次に本実施例装置に導入すれば、エミッタティップの傾斜を変える傾斜機構を省略するか、あるいは、傾斜範囲を小さくすることができる。このことによりイオン源構造を単純化できる、ひいては低コストの装置を実現できるという効果を奏する。
さらに、上記したガス電界電離イオン源において、エミッタティップの先端を原子で構成されるナノピラミッドとすることにより、イオン化領域が制限されるため、より高輝度のイオン源が形成され、より高分解能の試料観察ができ、かつ試料観察像にゆれなどをなくすことができるという効果を奏する。また、このときには全イオン電流はより少なくなるため、イオン化ガスを循環利用することで、イオン化ガスの利用効率がより高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
なお、本実施例では、ヘリウムガスについて述べたが、水素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど、その他のガスでも本発明は適用可能である。水素、ヘリウムを用いるとイオンビームで試料極表面の観察ができ、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンを用いるとイオンビームで試料を加工することができる。
次に図4を参照して、本発明によるイオンビーム装置の一例を説明する。本図では、図1に示したイオンビーム装置の冷却機構4の一例について詳細に説明する。本例の冷却機構4は、ヘリウム循環方式を採用している。
本例の冷却機構4は、冷媒となるヘリウムガスをGM型冷凍機401および熱交換器402、406、407、408を用いて冷却して、これを圧縮機ユニット400により循環させる。コンプレッサ403で加圧された(例えば0.9MPaの)常温の温度のヘリウムガスは配管409を通じて熱交換器402に流入し、後述する戻りの低温のヘリウムガスと熱交換して温度約60Kに冷却される。冷却されたヘリウムガスは断熱されたトランスファーチューブ404内の配管403を通じて輸送され、ガス電界電離イオン源1近くに配置された熱交換器405に流入する。
ここで、熱交換器405に熱的に一体化された熱伝導体406を温度約65Kに冷却し、前記した輻射シールド等を冷却する。加温されたヘリウムガスは熱交換器405を流出し配管407を通じて、GM型冷凍機401の第1冷却ステージ408に熱的に一体化された熱交換器409に流入し、温度約50Kに冷却され、熱交換器410に流入する。後述する戻りの低温のヘリウムガスと熱交換して温度約15Kに冷却され、そののち、GM型冷凍機401の第2冷却ステージ411に熱的に一体化された熱交換器412に流入し、温度約9Kに冷却され、トランスファーチューブ404内の配管413を通じて輸送され、ガス電界電離イオン源1近くに配置された熱交換器414に流入し、熱交換器414で熱的に接続された良熱伝導体の冷却伝導棒53を温度約10Kに冷却する。
熱交換器414で加温されたヘリウムガスは配管415を通じて熱交換器410、402に順次流入し、前述のヘリウムガスと熱交換してほぼ常温である温度約275Kになって、配管415を通じて圧縮機ユニット400に回収される。なお、前述した低音部は真空断熱容器416内に収納され、トランスファーチューブ404とは、図示していないが断熱状態で接続されている。また、真空断熱容器416内において、図示していないが低温部は輻射シールド板や、積層断熱材等により室温部からの輻射熱による熱侵入を防止している。
また、トランスファーチューブ404は床20または床20に設置された支持体417に固定支持されている。ここで、図示していないが熱伝導率が低い断熱材であるガラス繊維入りのプラスチック製に断熱体でトランスファーチューブ404の内部で固定支持された配管403、407、413、415も床20で固定支持されている。また、ガス電界電離イオン源1近くにおいて、トランスファーチューブ404は、ベースプレート18に支持固定されており、同様にここで、図示していないが熱伝導率が低い断熱材であるガラス繊維入りのプラスチック製に断熱体でトランスファーチューブ404の内部で固定支持された配管403、407、413、415もベースプレート18で固定支持されている。
すなわち、本冷却機構は、圧縮機ユニット16で発生させた第1の高圧ガスを膨張させて寒冷を発生する寒冷発生手段と、この寒冷発生手段の寒冷で冷却し、圧縮機ユニット400で循環する第2の移動する冷媒であるヘリウムガスで被冷却体を冷却する冷却機構である。
冷却伝導棒53は変形可能な銅網線54およびサファイアベースを経てエミッタティップ21に接続される。これによりエミッタティップ21の冷却が実現する。この実施例では、GM型冷凍機は床を振動させる原因になるが、ガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、真空試料室3などはGM冷凍機とは隔離されて設置されており、さらにガス電界電離イオン源1近傍に設置した熱交換器405、414に連結された配管403、407、413、415は殆ど振動しない床20やベース18に強固に固定支持されて振動せず、さらに床から振動絶縁されているため機械振動の伝達の極めて少ないシステムとなることが特徴である。
図5に、図4に示した本発明によるイオン顕微鏡の試料室内部の様子を示す。対物レンズ8は、3個の電極201、202、203から構成されている。各々の電極は電気絶縁されており、各々、3個の高圧電源301、302、303から電圧を印加できる。荷電粒子検出器11は、その先端に電極206を備え、蛍光体207、および大気側に光電子増倍管208を備える。電子銃16は電子エミッタ209および電子照射電極210などから構成されている。電子エミッタ209および電子照射電極210も、各々電気絶縁されていて、2個の高圧電源309、310から電圧を印加できる。試料台10も電気絶縁されていて高圧電源305から電圧を印加できる。また、対物レンズと試料の間に配置された電極211は、対物レンズの電極で最も試料に電極203の下部を包むような形状で、これも他の電極および接地電位とは電気絶縁されていて高圧電源306から電圧を印加できる。
まず、ガス電界電離イオン源1およびイオンビーム照射系の動作は、実施例1で記述したイオンビーム装置と同じである。また、ガス電界電離イオン源、イオンビーム照射系、および試料から放出された信号検出・画像表示等も実施例1の装置と同じく計算処理装置99からの指令により制御される。次に、試料室内部の対物レンズ、電極、荷電粒子検出器などの動作について説明する。
まず、試料に照射されるイオンエネルギーを低減するため、試料には、正の5kVを印加しておく。そして、対物レンズと試料の間に配置された電極211に試料と同じ電圧である正の5kVを印加する。また、レンズ電極203にも試料と同じ電圧である正の5kVを印加する。ここで、電極211とレンズ電極203は試料上部の空間を真空チャンバなどの接地電位からの電場をほぼ遮断する働きをしており、対物レンズと試料の間に配置された電極211の電位とレンズ電極203の電位でほぼ決定される。このようにすると、試料から放出された二次電子の多くを荷電粒子検出器11によって検出できるようになる。
さらに、本発明では、対物レンズと試料の間の電極211および対物レンズ電極203に、試料電圧に比べて小なる電圧を印加して、荷電粒子検出器と反対方向に飛び出した二次電子を追い返して、そのほとんどを荷電粒子検出器で検出できるようにした。すると、信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることに成功した。また、このときに荷電粒子検出器の先端の電極206には、試料に印加した正の電圧よりも大なる電圧を印加して、二次電子の捕集効率を最大化すると、信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることができた。すなわち、試料から放出された二次電子が、荷電粒子検出器の先端の電極206が作る電場により荷電粒子検出器の方向に加速されるため、二次電子の捕集効率が特に高くなる。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となるという効果を奏する。このとき、再度、対物レンズと試料の間の電極211および対物レンズ電極203の電圧を調整すると、二次電子捕集効率を増大できる場合もある。なお、以上のように二次電子捕集効率が最大の条件で、イオンビームが試料上で集束するように、すなわち、像分解能が最も高くなるように対物レンズに印加する電圧を調整する。
以上、本実施例によると、前記試料に正の電圧を印加することにより試料を照射するイオンエネルギーを低くでき、試料へのダメージが少なくなり、試料表面の構造を変質させずに観察することや、表面の構造寸法を精度よく計測することが可能となる。さらに、イオンレンズを通過するイオンのエネルギーが高いため、イオンレンズの収差が小さくなり、試料上でのイオンビーム径が小さくなり、高分解能の観察や寸法計測が実現する。さらに、対物レンズと試料との間に電極211を設け、同電極211と対物レンズ電極203と、試料に印加する正の電圧とは異なる電圧を印加して二次電子の軌道を制御することにより二次電子の捕集効率が高くなるため、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となる。これは、観察時間の短縮やスループットの向上をも可能とする。
特に、イオンの照射エネルギーを5kV以下にしても、寸法計測の精度を0.5nm以下にできることがわかった。なお、電極211と対物レンズ電極203には、必ずしも同じ電圧を印加する必要がなく、異なる電圧を印加して、二次電子の捕集効率を最大化しても良い。また、電極211と対物レンズ電極203を一体化した構造としても良い。すなわち、一体化した電極に、試料電圧に比べて小なる電圧を印加して二次電子の捕集効率を最大化しても良い。
また、対物レンズと試料の間の電極211の形状が、平らな板状であるよりも、本実施例のように試料のイオンビーム照射位置を略囲う形状であることにより二次電子捕集効率を高められることを、本願発明者は見出したのである。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となる。すなわち、単純に平板を対物レンズと試料の間に配置して、試料と同じ電圧を印加しても、平板の脇から入り込む接地電位の影響により二次電子捕集効率は低下してしまうのである。
また、対物レンズと試料の間の電極211と対物レンズ電極203の形状が、試料のイオンビーム照射位置を略囲う形状であり、少なくともどちらかの電極が透磁率100以上の材料により構成されることにより、試料近傍の磁場交流ノイズが低減される。よって本構成により、イオンビームを微細化できることがわかった。
また、試料ステージ10近傍に、磁場を発生するコイルまたは磁石を配置して、試料から放出される二次電子を前記荷電粒子検出器方向に加速するようにすると、二次電子捕集効率をさらに高められることがわかった。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となるという効果を奏する。
また、荷電粒子検出器11の蛍光体207に印加する電圧、対物レンズ電極203、対物レンズと試料の間の電極211に印加する電圧と、荷電粒子検出器の前段に配置した電極206に印加する電圧とのいずれかが、試料9に印加する電圧に連動させて制御できるようにする。これにより、試料電圧を変化させても最適な二次電子捕集条件を容易に再現できることとがわかった。特に、前記試料に印加する電圧を変化させて、イオンエネルギーを変える場合にも、二次電子の捕集効率を最適に保つ、もしくは二次電子の検出感度を一定にするという効果を奏する。
また、電子銃16の電子エミッタ209に印加する電圧を試料9に印加する電圧に比べて小なる正の電圧を印加して、電子照射電極210には、電子エミッタ209に印加する電圧よりも大とすることで、試料に電子ビームを照射することができ、試料が絶縁物で帯電した場合にはこれを中和することにより良好に試料観察が可能になることがわかった。
さらに、対物レンズと試料の間の電極211に印加する電圧と比べておおよそ同じか、もしくは小なる正の電圧を電子照射電極210印加することによって、二次電子の捕集効率を高められることがわかった。すなわち、特に、試料が絶縁物の場合にも試料の帯電状態を電子ビーム照射によって制御できるため、絶縁物の観察や寸法計測が可能になるという効果を奏する。
また、ガス電界電離イオン源、イオンビーム照射系および試料室などの真空チャンバ材質を磁性材料で構成させ外部磁気をシールドするとイオンビームの径が小さくなり、より高分解能観察が実現するという効果を奏する。
また、本実施例に示したように、ガス電界電離イオン源のエミッタティップをナノピラミッドで構成すると、より極微小なビーム径で、電流が大きいというイオンビームが得られるため、高信号/ノイズ比で超高分解能の試料観察像が得られ、かつ試料観察像にゆれなどをなくすことができるという効果を奏する。
さらに、前記ガス電界電離イオン源を搭載した荷電粒子線装置において、イオン光源を試料に投影する倍率が少なくとも0.5以上であることを特徴とする荷電粒子線装置とすると、特に、イオンビーム電流が大きくなり、前記ガス電界電離イオン源から放出されたイオンビームを走査して試料に照射して、試料から放出される二次粒子を検出して試料観察像を得るイオンビーム装置とすると、高信号/ノイズ比で超高分解能の試料観察像が得られ、かつ試料観察像にゆれなどをなくすことができるという効果を奏する。
また、エミッタティップの傾斜を変える傾斜機構を省略した装置構成とした場合、エミッタティップ先端から放出されるイオンビームの方向に合わせて集束レンズの傾斜を調整すれば、集束レンズでのイオンビームの歪みを小さくでき、イオンビームの径が小さくなり、より高分解能観察が実現するという効果を奏する。また、エミッタティップ21の傾斜機構を省略できるので、イオン源構造を単純化できる、ひいては低コストの装置を実現できるという効果を奏する。
さらに、別の真空装置でエミッタティップからのイオン放出パターンを観察して、エミッタティップの傾斜方向を精密に調整しておき、次に本実施例装置に導入すれば、エミッタティップの傾斜を変える傾斜機構を省略するか、あるいは、傾斜範囲を小さくすることができる。このことによりイオン源構造を単純化できる、ひいては低コストの装置を実現できるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、上記したガス電界電離イオン源において、エミッタティップの先端を原子で構成されるナノピラミッドとすることにより、イオン化領域が制限される。そのため、より高輝度のイオン源が形成され、より高分解能の試料観察ができるという効果を奏する。また、このときには全イオン電流はより少なくなるので、イオン化ガスを循環利用することで、イオン化ガスの利用効率がより高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
なお、本実施例では、ヘリウムガスについて述べたが、水素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど、その他のガスでも本発明は適用可能である。水素、ヘリウムを用いるとイオンビームで試料極表面の観察ができ、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンを用いるとイオンビームで試料を加工することができる。
さらに、本発明のガス電界電離イオン源および荷電粒子線装置によれば、冷却機構からの振動は、エミッタティップに伝達されにくく、エミッタベースマウントの固定機構が備えられているためエミッタティップの振動が防止され高分解能観察が可能となる。
更に、本願の発明者は、コンプレッサ16又は400の音が電界電離イオン源1を振動させてその分解能を劣化させることを突き止めた。そのため、本例では、コンプレッサと電界電離イオン源を空間的に分離するカバー417を設けた。これにより、コンプレッサの音に起因した振動の影響を低減することができる。それによって、高分解能観察が可能となる。
また、本実施例の場合、ヘリウム圧縮機400を用いて第2のヘリウムガスを循環させたが、図示しないが流量調整弁を介して、ヘリウム圧縮機16の配管111、112と、それぞれ流量調整弁を介して、配管409、416を連通し、配管409内にヘリウム圧縮機16の一部のヘリウムガスを第2のヘリウムガスとして循環ヘリウムガスを供給し、配管416でガスをヘリウム圧縮機16に回収しても、同様な効果を生じる。
また、本例では、GM型冷凍機40を用いたが、その代わりに、パルス管冷凍機、又はスターリング型冷凍機を用いてもよい。また、本例では、冷凍機は、2つの冷却ステージを有するが、単一の冷却ステージを有するものでもよく、冷却ステージの数は特に限定されるものではない。例えば、1段の冷却ステージを持つ小型のスターリング型冷凍を用いて、最低冷却温度を50Kとしたヘリウム循環冷凍機とすれば、コンパクトで低コストのイオンビーム装置を実現できる。また、この場合には、ヘリウムガスの代わりにネオンガスや水素を用いてもよい。
また、本実施例の場合に、走査イオン像取得時に、ヘリウム圧縮機400を停止させると、走査イオン像のノイズが減少して、鮮明で分解能の高い画像がえられることを見出した。この場合に、イオンエミッタの温度が大きな電流変化をもたらさない間に、ヘリウム圧縮機400を駆動させてヘリウムを循環させて、温度を低下させる。この方法によれば、走査イオン像取得時に冷凍機の動作を停止させるよりも簡便にノイズ低減効果が生じることを見出した。さらに、ヘリウム圧縮機と、冷凍機の動作の両者を停止させる、さらにノイズが減少して、鮮明で分解能の高い画像が得られることを見出した。
次に、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからイオンビームまたは電子を引き出すハイブリッド粒子源を用いて、試料表面、試料加工、および試料内部の観察を駆使した複合的な試料解析が可能なイオンビーム装置について、図6を用いて説明する。なお、実施例1、2と重複する内容についての説明は省略する。
本実施例のイオンビーム装置は、エミッタティップ21の先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからイオンビームまたは電子を引き出すハイブリッド粒子源501、ハイブリッド粒子源の冷却機構4、真空ポンプ12、電子ビームおよびイオンビームを試料に照射するハイブリッド照射系502、試料台503、試料9から放出される二次電子を検出する二次電子検出器304、および試料を透過した荷電粒子を結像する光学系505、検出器506、真空ポンプ13などからなる。なお、本装置で冷却機構4は液体窒素および固体窒素を冷媒とする冷却機構とした。
ここでは、エミッタティップには、正の高電圧、および負の高電圧電源のいずれかを選択して接続可能である。すなわち、正の高電圧を印加した場合には正のイオンビーム、負の高電圧を印加した場合には、電子ビームをエミッタティップから引き出すことができる。また、ハイブリッド粒子源には、少なくとも2種類以上のガスが導入可能である。すなわち、水素、ヘリウムのいずれか一つと、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つを加えた少なくとも2種類のガス種を導入可能である。
本イオンビーム装置では、エミッタティップからネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つのイオンビームを引き出し、これを試料に照射して試料を加工できる。また、該針状のエミッタティップから水素、ヘリウムのいずれか一つのイオンビームを引き出し、試料表面を観察することができる。また、該針状のエミッタティップから電子を引き出し、これを試料に照射して試料を透過した電子を結像することにより試料内部情報を得ることができる。これにより、試料を大気に暴露することなく、試料の複合的な解析が可能になる。
本実施例では、対物レンズと試料との間の電極211は試料9を内部に含む構造である。
まず、試料に照射されるイオンエネルギーを低減するため、試料には、正の5kVを印加しておく。そして、対物レンズと試料の間に配置された電極211に試料と同じ電圧である正の5kVを印加する。ここで、電極211は試料周囲の空間を真空チャンバなどの接地電位からの電場をほぼ遮断する働きをしており、対物レンズと試料の間に配置された電極211の電位でほぼ決定される。このようにすると、試料から放出された二次電子の多くを荷電粒子検出器11によって検出できるようになる。
さらに、本発明では、電極211に試料電圧に比べて小なる電圧を印加して、荷電粒子検出器と反対方向に飛び出した二次電子を追い返して、そのほとんどを荷電粒子検出器で検出できるようにした。すると、信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることに成功した。
また、このときに荷電粒子検出器の先端の電極206には、試料に印加した正の電圧よりも大なる電圧を印加して、二次電子の捕集効率を最大化すると、信号/ノイズ比がさらに高い鮮明な画像を得ることができた。すなわち、試料から放出された二次電子が、荷電粒子検出器の先端の電極206が作る電場により荷電粒子検出器の方向に加速されるため、二次電子の捕集効率が特に高くなる。すなわち、観察像の信号/ノイズ強度比を高くして観察や寸法計測が可能となるという効果を奏する。
このとき、再度、対物レンズと試料の間の電極211および対物レンズ電極203の電圧を調整すると、二次電子捕集効率を増大できる場合もある。なお、以上のように二次電子捕集効率が最大の条件で、イオンビームが試料上で集束するように、すなわち、像分解能が最も高くなるように対物レンズに印加する電圧を調整する。本実施例では、試料9が電極211に包まれるように配置されるため、特に二次電子捕集効率が大きくなるという効果を奏する。
また、本実施例では、集束レンズと対物レンズの間に、荷電粒子変換板311を配置した。本荷電粒子変換板311は、試料から放出された荷電粒子が衝突したときに二次電子を放出する。このため、二次電子放出効率を高くするように、その表面は小さくとも原子番号50以上の元素で構成される。例えば、タンタルや、タングステンで構成されたり、金、白金などの薄膜を板材に貼り付けたりしたものである。
ここで、イオンビームの加速電圧は10kVとして、試料には、正の5kVを印加する。また、対物レンズには、7kVを印加して試料に集束させる。そして、電極211に試料よりも低い電圧である正の3kVを印加する。こうすると、試料にから放出された二次電子のほとんどは試料に戻る。しかし、照射したイオンが、試料表面に衝突して、対物レンズ方向に反射されたイオンは、電極211および対物レンズ8を通過して、一部は荷電粒子変換板311に衝突する。ここで、発生した二次電子を上部荷電粒子検出器312で検出する。すると、反射イオン強度によって輝度変調された試料表面像を得ることができる。この像には、試料表面の元素種に係わる情報が含まれる。
次に、そして、電極211に試料よりも高い電圧である正の5.1kVを印加する。こうすると、試料にから放出された二次電子の一部は、電極211および対物レンズ8を通過する。通過した二次電子を上部荷電粒子検出器312で検出する。すると、今度は二次電子強度によって輝度変調された試料表面像を得ることができる。この像には、主に試料表面の立体構造に係わる情報が含まれる。これら2種類の像、すなわち反射イオン像と二次電子像を計算処理装置99に記憶させて、2種類の像を演算した像を表示させることもできる。例えば、反射イオン像を二次電子像で除した像は、試料表面元素種の違いに敏感な像となる。これら2種類の像は、主に電極211に印加する電圧で選択することができる。また、交互に取得することもできる。なお、二次電子像は、荷電粒子検出器11で取得した像であっても良いことは言うまでも無い。
以上の実施例では、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからイオンビームまたは電子を引き出すハイブリッド粒子源と、該ハイブリッド粒子源からの荷電粒子を試料上に導くための荷電粒子照射光学系と、前記試料から放出される荷電粒子を検出する荷電粒子検出器と、前記試料を透過した荷電粒子を結像する荷電粒子結像光学系と、前記エミッタティップの近傍にガスを供給するガス供給管と、を有する。
また、前記ガスは水素、ヘリウムのいずれか一つと、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つを加えた少なくとも2種類のガス種を選択可能であり、前記針状のエミッタティップには正の高電圧、および負の高電圧電源のいずれかを選択して接続可能であるハイブリッド荷電粒子顕微鏡とすることで、水素、ヘリウムのいずれか一つのビームで試料極表面の観察ができ、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つのイオンビームで試料を加工し、電子ビームを試料に照射して、試料を透過した電子を検出することにより試料内部の観察が可能であるイオンビーム装置が提供されるという効果を奏する。
特に、ナノピラミッドエミッタティップを用いることにより、極微小径イオンビームおよび極微小径電子ビームが得られるため、サブナノメータオーダの試料情報解析が可能な荷電粒子顕微鏡が提供されるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例では、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つのイオンビームを引き出し、これを試料に照射して試料を加工し、該針状のエミッタティップから水素、ヘリウムのいずれか一つのイオンビームを引き出し、試料表面を観察し、該針状のエミッタティップから電子を引き出し、これを試料に照射して試料を透過した電子を結像することにより試料内部情報を得るハイブリッド荷電粒子線顕微鏡法とする。これにより、試料表面、試料加工、および試料内部の観察を駆使した複合的な試料解析が可能になるという効果を奏する。
特に、ナノピラミッドエミッタティップを用いることにより、極微小径イオンビームおよび極微小径電子ビームを駆使した試料情報解析が可能な荷電粒子顕微鏡法が提供されるという効果を奏する。
図7は、本発明によるイオンビーム装置の試料室内部構造の一例を示す。本図に示す試料室内部構造は、実施例1の図1、実施例2の図4、実施例3の図6にも適用可能である。
本実施例の試料室内部には、荷電粒子変換板311、上部荷電粒子検出器312、対物レンズ8、対物レンズと試料との間の電極211、試料9、試料台10、荷電粒子検出器11、電子銃16などが配置されている。ここで、上部荷電粒子検出器312には、二次電子捕集効率を向上させる電極226および、電子を光に変換する蛍光板227、および蛍光板の光を検出する光電子増倍管228などから構成され、電極226には電源317、蛍光板227には電源318が接続され電圧を印加できる。対物レンズ8、対物レンズと試料との間の電極211、試料9、試料台10、荷電粒子検出器11、および電子銃16などは、実施例1の図1と同じである。
また、イオンビームを試料に照射して、試料から放出される二次電子を検出する動作については、実施例1と同じである。また、上部荷電粒子検出器312を用いて、反射イオン強度による観察像および二次電子像を得る動作については、実施例3と同じである。本実施例では、試料で反射されたイオン強度を荷電粒子検出器11で計測する手法について説明する。
ここで、イオンビームの加速電圧は10kVとして、試料には、正の5kVを印加する。そして、電極211に試料よりも低い電圧である正の3kVを印加する。こうすると、試料にから放出された二次電子のほとんどは試料に戻る。しかし、照射したイオンが、試料表面に衝突して、対物レンズ方向に反射されたイオンの一部は電極211を通過するが、別の一部は電極211に衝突して電子を発生させる。
ここで、発生した電子を荷電粒子検出器11で検出する。すると、試料から放出された二次電子強度情報がほとんど含まれない反射イオン強度によって輝度変調された試料表面像を得ることができる。この像には、特に試料表面の元素種に係わる情報が含まれる。また、電極211の内面は、電子放出効率を高くするように、その表面は小さくとも原子番号50以上の元素で構成される。例えば、タンタルや、タングステンで構成されたり、金、白金などの薄膜を板材に貼り付けたり、蒸着したものである。
本実施例の構成では、対物レンズ穴を通過するような、試料表面法線からの角度の小さい反射イオンの強度と、法線からの角度が大きい反射イオンの強度が得られる。この2種の反射イオン強度の観察像を、計算処理装置99に記憶させて、2種類の像を演算した像を表示させることもできる。この演算結果を用いれば試料表面元素の種類に関する情報が得ることがわかった。
また、本構成で、電極211の電圧を変化させると、反射イオンの軌道が変わり電子に変換される反射イオンのエネルギーが変わることが分かった。また、電極211の電圧によっては、観察像のコントラストが反転することが分かった。これは、試料表面に元素の種類による分布があり、質量の大きい元素が明るく観察される場合と、質量の小さい元素が明るく観察される場合とがあることがわかった。すなわち、電極211の電圧を変化させることによって、試料元素分析が可能であることが分かった。
なお、電極211の電圧を変化させると、イオンビームの試料上での集束するための対物レンズ電極に印加する電圧が変化する。これをあらかじめ求めておき、元素分析する場合には、電極211の電圧変化に連動させて、対物レンズ電極に印加する電圧が変化するようにすると、高分解能で元素分析が可能であることがわかった。
また、実施例1で述べたように、本構成で、電極211の電圧を試料と同じ電圧にするか、わずかに低い電圧を印加すると試料から放出される二次電子を効率よく捕集することができる。すなわち、二次電子強度によって輝度変調された試料表面像を得ることができる。この像には、主に試料表面の立体構造に係わる情報が含まれるが、2種の反射イオン強度の像と、この二次電子像を計算処理装置99に記憶させて、演算した像を表示させることもできる。
以上、本実施例によると、前記試料に正の電圧を印加することにより試料を照射するイオンエネルギーを低くでき、試料のダメージが少なくなり、試料表面の構造を変質させずに観察することや、表面の構造寸法を精度よく計測することが可能となる。さらに、イオンレンズを通過するイオンのエネルギーが高いため、イオンレンズの収差が小さくなり、試料上でのイオンビーム径が小さくなり、高分解能の観察や寸法計測が実現する。
さらに、対物レンズと試料との間に電極211を設け、同電極211に印加する電圧を選択することによって、試料で反射されたイオンの強度による観察像を得ること、試料から放出された二次電子像を得ることを選択することが可能となる。また、集束レンズと対物レンズの間の上部荷電粒子検出器で反射イオン強度によって輝度変調された試料表面像を得ることも可能になり、対物レンズ横の荷電粒子検出器で得た反射イオン強度像と演算することにより試料元素解析が可能となる。例えば、元素質量に関する情報を得られる。
なお、本実施例では、ヘリウムガスについて述べたが、水素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど、その他のガスでも本発明は適用可能である。水素、ヘリウムを用いるとイオンビームで試料極表面の観察ができ、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンを用いるとイオンビームで試料を加工することができる。