JP6108049B2 - めっき鋼板のスポット溶接方法 - Google Patents
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Description
スポット溶接の前に、めっきを除去する工程を含み、
上記めっきを除去する工程において、めっきが除去される範囲を、少なくとも、外周が重ね合わされた複数の鋼板の溶接電極側に形成される溶接熱影響部外縁となる円内とすることを特徴とするスポット溶接方法。
ここで、溶接熱影響部外縁とは、スポット溶接時に、鋼板が700℃まで昇温される位置のことをいう。
スポット溶接の前に、めっきを除去する工程を含み、
めっきを除去する工程において、めっきが除去される範囲を、
外周が重ね合わされた複数の鋼板の重ね合わせ面に形成される溶接熱影響部外縁の広いほうとなる円内とすることを特徴とするスポット溶接方法。
スポット溶接の前に、めっきを除去する工程を含み、
めっきを除去する工程において、めっきが除去される範囲を、
外周が重ね合わされた複数の鋼板の重ね合わせ面に形成される溶接熱影響部外縁の広いほうであり、
内周が上記鋼板の重ね合わせ面に形成されるナゲットの中心となる予定の位置と中心を共有し、ナゲット直径の0.8倍である直径を有する円である円環内とすることを特徴とするスポット溶接方法。
のいずれか1以上を含む条件下で行われる場合にテストスポット溶接を行うことを特徴とする前記(3)又は(7)のスポット溶接方法。
図4は、軸心が鋼板の表面に対して3°以上となる角度を付けて溶接している状態を示す板厚方向の断面図である。図4に示す被溶接部材は、鋼板1aと鋼板1bからなる。鋼板1aは、立上がり部Wを有する、断面ハット形状の鋼板である。このような立上がり部Wの近傍において、鋼板1aと鋼板1bとをスポット溶接する場合、溶接箇所の周囲の空間が狭小となり、スポット溶接ガンの一部が立上がり部Wに干渉することがある。
図5は、角度付き電極を使用して溶接している状態を示す板厚方向の断面図である。図5に示す被溶接部材は、鋼板1aと鋼板1bからなる。鋼板1aは、立上がり部Wを有する、断面ハット形状の鋼板である。このような立上がり部Wの近傍において、鋼板1aと鋼板1bとをスポット溶接する場合、溶接箇所の周囲の空間が狭小となり、スポット溶接ガンのアーム等が立上がり部Wに干渉することがある。
図6は、撓み易い溶接ガン(溶接ガンの先端に電極がついている)を使用して溶接している状態を示す板厚方向の断面図である。図6に示す溶接電極10a、10bは、その軸芯11a、11bが鋼板1a、1bの表面に対して、垂直となっておらず、先端面が鋼板1a、1bの表面に対して平行になっていない。溶接による加圧により溶接ガン(図示せず)が撓むと、溶接電極10a、10bの先端側が溶接電極を保持するホルダ(図示せず)から離れる方向に変位させられる。
図7は、対向する溶接電極の軸芯の相対的なズレを生じたまま溶接している状態を示す板厚方向の断面図である。図7に示すように、溶接電極10a、10bは、電極チップの取り付け不良により、それぞれの軸芯11a、11bに相対的なズレ12(以下「電極芯ズレ」という)を生じることがある。また、図6に示した撓みやすい溶接ガンで、上下の撓みが均一ではない場合、電極に角度が生じるとともに軸芯のズレが発生する。
図8は、重ね合わせ面に隙間を有する溶接箇所を溶接している状態を示す板厚方向の断面図である。図8に示すように、鋼板1a、1bの間に、他の部材13が挿入されている場合など、溶接箇所の重ね合わせ面の鋼板1a、1bの間に隙間14(以下「板隙」という)を生じることがある。
図9は、複数の鋼板に対する溶接電極の加圧方向の位置が不適切なまま溶接している状態を示す板厚方向の断面である。スポット溶接では、複数の鋼板に対する溶接電極の加圧方向の位置を適切にするために、固定側の溶接電極を鋼板に当接させてその位置をロボットに教示して溶接することや、加圧方向に自由に移動できるようにロボットとスポット溶接ガンの間にイコライズ機構を設けて溶接することが行われている。
図10は、真ん中に軟鋼板を、上下に高強度鋼板を設けて溶接している状態を示す板厚方向の断面である。スポット溶接では3枚重ねの溶接がしばしば行われる。しかし、溶接される鋼板の引張強度の差が大きいと、たとえば、図10の場合、スポット溶接工程において、強度の低い真ん中の軟鋼板が電極直下から押し出されて周囲で増肉される。この時、上下の高強度鋼板を上下に押しのけるようにして、高強度鋼板表面に、鋼板表面に平行な引き張り応力が発生する。
スポット溶接される複数の鋼板は、少なくとも一方の表面の溶接箇所にめっきが被覆された鋼板を1枚以上含む複数の鋼板であれば、特に限定されるものでない。たとえば、鋼板と電極が接触する側の面にめっきが被覆された鋼板同士の組合せや、鋼板と電極が接触する側の面にめっきが被覆された鋼板とめっきが被覆されていない鋼板の組合せ、鋼板と電極が接触する側の面及び鋼板の重ね合わせ面にめっきが被覆された鋼板同士の組合せなどが例示される。また、溶接継手の耐食性を考慮すれば、鋼板と電極が接触する側の面及び鋼板の重ね合わせ面にめっきが被覆されていることが好ましい。
次に、テストスポット溶接について説明する。テストスポット溶接は、実際の生産で発生する上記(a)〜(g)の1以上を満たす場合に行うことが好ましい。
テストスポット溶接によって得られたスポット溶接継手において、溶接箇所の割れの発生の有無を確認する。この割れの発生の有無の確認方法は、特に限定されるものでなく、目視での観察や浸透探傷検査、溶融凝固部を含む板厚方向の断面の観察や、スポット溶接継手の引張試験を実施して所定の引張強度が得られるか否かで判定などして行うことができる。または、スポット溶接部を含む板厚方向の断面の観察に加えて、X線透過試験を行って確認してもよい。
本発明の溶接方法は、スポット溶接の前に、溶接される鋼板のめっきを除去することを特徴とする。めっきの除去範囲は、テストスポット溶接で確認された割れの位置によって、以下の範囲とするのがよい。
テストスポット溶接によって外割れを確認したときには、除去するめっきの範囲は、少なくとも、重ね合わされた複数の鋼板の外割れが確認された鋼板で、溶接電極側に被覆されためっきであって、外周が溶接電極側の溶接熱影響部外縁となる円内の範囲とする。これにより、割れの発生因子がいくつか重なって、鋼板の電極と接触する側の表面に強い応力が発生しても、溶融しためっき金属が存在しないので外割れの発生は無くなる。
テストスポット溶接によってナゲット内あるいはコロナボンドのナゲット際の割れあるいはコロナボンド直外の割れを確認したときには、除去するめっきの範囲は、溶接される鋼板の重ね合わせ面であって、外周が重ね合わせ面の溶接熱影響部外縁の広いほうとなる直径がDHAZ2である円内の範囲とする。この範囲のめっきを除去することにより、割れの発生因子がいくつか重なって、鋼板の重ね合わせ面に強い応力が発生しても、溶融しためっき金属が存在しないので内割れは発生しない。
特定の位置のめっきが除去された鋼板を含む複数の鋼板のスポット溶接では、鋼板と電極との接触箇所の割れや鋼板の重ね合わせ面の割れを確認したときは、テストスポット溶接の際と、ナゲット径が同じになるように電流値を調整する。それにより、本来目標としたスポット溶接継手の強度を確保することができる。
めっきを除去したことにより、鋼板と電極との溶接箇所や鋼板の重ね合わせ面の耐食性が十分でなくなることがある。そこで、鋼板と溶接電極との接触予定箇所のめっきを除去したときは、スポット溶接後に、めっきが除去された部分の一部又は全部に、シーラを塗布し、鋼板の重ね合わせ面のめっきを除去したときは、スポット溶接前に、めっきが除去された部分の一部又は全部に、シーラ又は接着剤を塗布することが好ましい。
めっきの除去方法としては、機械的除去、及び蒸発除去の少なくとも一方を採用することができる。機械的除去としては、回転するバイトによって研削することができる。この際、接触予定箇所などの円相当中心に突起のあるバイトによって研削すれば回転中心が定まり、精度よくめっきを除去することができる。突起を十分小さくすることにより、溶接によって、突起の形成した穴を埋めることができる。
2 ナゲット
3 電極直下部割れ
4 熱影響部
5 肩部割れ
6 電極外側割れ
7 コロナボンド直外の割れ
8 コロナボンドのナゲット際の割れ
9 ナゲット内の割れ
10a、10b 電極
11a、11b 軸芯
12 電極芯ズレ
13 部材
14 板隙
15 クリアランス
101 鋼板
102 ナゲット形成予定箇所
103 コロナボンド形成予定位置
104 熱影響部外縁形成予定位置
105 電極直下部割れ発生予定箇所
106 電極肩部割れ発生予定箇所
107 電極外側割れ発生予定箇所
108 コロナボンド直外割れ発生予定箇所
109 コロナボンドのナゲット際割れ発生予定箇所
110 ナゲット内割れ発生予定箇所
Cn ナゲット形成予定箇所の中心
Dc コロナボンド形成予定箇所の円相当直径
Dn ナゲット形成予定箇所の円相当直径
DHAZ1 外割れを回避するためにめっきを除去する範囲の直径
DHAZ2 2枚重ね板組で内割れを回避するためにめっきを除去する範囲の直径
DHAZ3 3枚重ね板組で内割れを回避するためにめっきを除去する範囲の直径
W 立上がり部
Claims (11)
- 少なくとも一方の表面の溶接箇所にめっきが被覆された鋼板を1枚以上含む重ね合わされた複数の鋼板を対向する溶接電極で挟み込みスポット溶接する方法であって、
スポット溶接の前に、めっきを除去する工程を含み、
上記めっきを除去する工程において、めっきが除去される範囲を、少なくとも、外周が重ね合わされた複数の鋼板の溶接電極側に形成される溶接熱影響部外縁となる円内とすることを特徴とするスポット溶接方法。
ここで、溶接熱影響部外縁とは、スポット溶接時に、鋼板が700℃まで昇温される位置のことをいう。 - スポット溶接後に、めっきが除去された部分の一部又は全部に、シーラを塗布することを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接方法。
- めっきを除去する前にテストスポット溶接を行い、溶接箇所の割れの発生の有無を確認し、重ね合わされた複数の鋼板の溶接電極側の割れを確認したときに、割れの確認された鋼板表面のめっきを除去することを特徴とする請求項1又は2に記載のスポット溶接方法。
- 少なくとも一方の表面の溶接箇所にめっきが被覆された鋼板を1枚以上含む重ね合わされた複数の鋼板を対向する溶接電極で挟み込みスポット溶接する方法であって、
スポット溶接の前に、めっきを除去する工程を含み、
めっきを除去する工程において、めっきが除去される範囲を、
外周が重ね合わされた複数の鋼板の重ね合わせ面に形成される溶接熱影響部外縁の広いほうとなる円内とすることを特徴とするスポット溶接方法。 - 少なくとも一方の表面の溶接箇所にめっきが被覆された鋼板を1枚以上含む重ね合わされた複数の鋼板を対向する溶接電極で挟み込みスポット溶接する方法であって、
スポット溶接の前に、めっきを除去する工程を含み、
めっきを除去する工程において、めっきが除去される範囲を、
外周が重ね合わされた複数の鋼板の重ね合わせ面に形成される溶接熱影響部外縁の広いほうであり、内周が上記鋼板の重ね合わせ面に形成されるナゲットの中心となる予定の位置と中心を共有し、ナゲットの直径の0.8倍である直径を有する円である円環内とすることを特徴とするスポット溶接方法。 - スポット溶接前に、めっきが除去された部分の一部又は全部に、シーラ又は接着剤を塗布することを特徴とする請求項4又は5に記載のスポット溶接方法。
- めっきを除去する前にテストスポット溶接を行い、溶接箇所の割れの発生の有無を確認し、重ね合わされた複数の鋼板の割れを確認したときに、割れの確認された鋼板の割れの発生した表面と重ね合わされた鋼板の重ね合わされた面にあるめっきを除去することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のスポット溶接方法。
- 前記スポット溶接が、
(a)溶接電極の軸心が鋼板の表面に対して垂直から3°以上となる角度を付けて溶接する場合、
(b)溶接電極の軸芯が鋼板の表面に対して垂直から5°以上となっている角度付き電極を使用して溶接する場合、
(c)溶接中に電極の軸芯が鋼板の表面に対して垂直から3°以上に撓む溶接ガンを使用して溶接する場合、
(d)対向する溶接電極の軸芯の相対的なズレが0.5mm以上生じた状態で溶接する場合、
(e)重ね合わせ面の隙間が0.5mm以上有する溶接箇所を溶接する場合、
(f)鋼板に対する固定側の溶接電極の加圧方向の位置が0.2mm以上のクリアランスを有するまま溶接する場合、及び
(g)強度比が2.5倍を超える鋼板を含む板組を溶接する場合
のいずれか1以上を含む条件下で行われる場合にテストスポット溶接を行うことを特徴とする請求項3又は7に記載のスポット溶接方法。 - 前記テストスポット溶接において、割れの発生が確認されなかった鋼板のめっきも除去することを特徴とする請求項3、7、又は8に記載のスポット溶接方法。
- めっきの除去を、機械的除去、及び蒸発除去の少なくとも一方で行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のスポット溶接方法。
- 前記めっきが亜鉛系めっきであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のスポット溶接方法。
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