JP6040021B2 - 抗菌抗ウイルス性組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2〜4には、抗菌抗ウイルス性能において、銅(II)の化合物より銅(I)の化合物の方が優れていることが開示されている。
特許文献5には、抗菌抗ウイルス性能において、銅、酸化銅(II)、及び/又は亜酸化銅の混合組成物からなるナノ粒子が良好であると開示されている。
また、特許文献10には、亜酸化銅(I)担持酸化チタンが抗ウイルス性能を示すことが開示されている。特許文献11には、抗菌抗ウイルス性能において、亜酸化銅(I)が高い性能を示すことが記載されている。
特許文献5においては、亜酸化銅のナノ粒子単体での評価はなく、また、亜酸化銅のナノ粒子が大気中で酸化されやすく、それによって、抗菌抗ウイルス性が低下するという問題についても開示されていない。
特許文献10に記載の亜酸化銅(I)担持酸化チタンも大気中で酸化されやすい点については記載が無く、他の文献の場合と変わらず、抗菌抗ウイルス性が低下する可能性がある。
特許文献11においては、亜酸化銅(I)が大気中で酸化されやすく、それによって、抗菌抗ウイルス性能が低下する可能性がある。この点に関し、特許文献11は、亜酸化銅(I)の酸化を抑制する方法に関しては開示していない。
すなわち、本発明は下記の通りである。
[2] 上記[1]に記載の抗菌抗ウイルス性材料を含有してなる抗菌抗ウイルス性組成物。
[3] さらに光触媒物質を含有してなる[2]に記載の抗菌抗ウイルス性組成物。
[4] 前記抗菌抗ウイルス性材料及び前記光触媒物質の合計量に対する前記光触媒物質の含有割合が70〜99.9質量%である[3]に記載の抗菌抗ウイルス性組成物。
[5] 前記光触媒物質が、酸化チタン及び酸化タングステンから選ばれる少なくとも1種を含む[3]又は[4]に記載の抗菌抗ウイルス性組成物。
[6] 前記光触媒物質は、酸化チタン及び酸化タングステンから選ばれる少なくとも1種を含む基材が、銅(II)イオン及び鉄(III)イオンから選ばれる少なくとも1種により修飾された可視光応答型光触媒である[3]又は[4]に記載の抗菌抗ウイルス性組成物。
[7] 前記基材が、遷移金属及び非金属の少なくとも何れかをドープした酸化チタン、遷移金属及び非金属の少なくとも何れかをドープした酸化タングステンから選ばれる少なくとも1種を含む[6]に記載の抗菌抗ウイルス性組成物。
[8] 前記抗菌抗ウイルス性材料のJIS Z8701におけるL*a*b*表色系のL*が50以上、a*が8以下、b*が20以上である[2]〜[7]のいずれかに記載の抗菌抗ウイルス性組成物。
[10] さらに、前記非水系有機溶媒に可溶な界面活性剤を0.01〜20質量%含有してなる[9]に記載の抗菌抗ウイルス性組成物分散液。
[12] 上記[11]に記載の抗菌抗ウイルス性組成物含有コート剤を塗布し硬化させてなる抗菌抗ウイルス性膜。
[13] 上記[12]に記載の抗菌抗ウイルス性膜を最表面の少なくとも一部に有する抗菌抗ウイルス性物品。
(1)銅(II)化合物の水溶液に、塩基性物質と、粒子成長抑制剤、還元剤とを添加して亜酸化銅粒子を合成する亜酸化銅粒子合成工程
(2)亜酸化銅粒子と、加水分解可能なシリカ源とを溶媒中で混合し、該シリカ源を加水分解して、亜酸化銅100質量部に対してシリカの含有量が5〜20質量部となるように亜酸化銅粒子をシリカで被覆する工程
(3)固形分を分取して粉砕処理を施す工程
例えば、不特定多数の人が触れる物品あるいは部位に、本発明の抗菌抗ウイルス性組成物を含むコート剤を塗布することによって、物品表面を介して人から人へ菌やウイルスが感染するリスクの低減を期待することができる。
本発明の抗菌抗ウイルス性材料は、亜酸化銅粒子の表面の少なくとも一部にシリカ被覆層を有し、前記シリカ被覆層の含有量が、前記亜酸化銅粒子100質量部に対して5〜20質量部であり、シリカで被覆された亜酸化銅粒子のBET比表面積が5〜100m2/gである抗菌抗ウイルス性材料である。
亜酸化銅粒子は、抗菌抗ウイルス性が高い半面、易酸化性が高いため長期に渡って良好な抗菌抗ウイルス性を維持することが困難である。そこで、本発明では、亜酸化銅粒子の表面にシリカ被覆層を形成して、亜酸化銅粒子の良好な抗菌抗ウイルス性を維持させている。しかし、シリカ被覆層の含有量が少なすぎると亜酸化銅粒子の易酸化性を抑えることができず、シリカ被覆層の含有量が多すぎると亜酸化銅粒子の抗菌抗ウイルス性を阻害してしまう。そこで、本発明では、シリカ被覆層の含有量を、亜酸化銅粒子100質量部に対して5〜20質量部とし、亜酸化銅粒子の易酸化性を抑制し、かつ良好な抗菌抗ウイルス性を実現した。
亜酸化銅粒子の表面は、少なくとも一部がシリカ被覆層で覆われていれば良いが、全部がシリカ被覆層で覆われていることが好ましい。
本発明で使用する亜酸化銅粒子は、Cu2Oの化学式で示される粒子である。電子顕微鏡で観察した際の形状に特に制限はないが、球状の結晶となっているものや不定形で球に近い形状を示したものあり、本発明では、これら単独でも、又は混在していてもよい。
従って、亜酸化銅粒子の粒径は、電子顕微鏡で確認した最大粒子直径から求めた平均一次粒子径が1〜400nmの範囲内であることが好ましく、5〜150nmであることがより好ましく、10〜50nmであることがさらに好ましい。
本発明で亜酸化銅粒子表面に被覆されているシリカ被覆層は、当該亜酸化銅粒子表面にシリカ源を付着させ、シリカ源を加水分解して形成することができる。シリカ源は加水分解によりシリカを生成できれば、特に制限がない。シリカ源の例として、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、四塩化ケイ素、が挙げられる。これらのうち、使いしやすさ、価格などを考慮して、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランがより好ましく、テトラエトキシシラン(以下、「TEOS」という場合もある。)が最も好ましい。
本発明でシリカ被覆層は、アモルファス状シリカ膜から構成されていることが好ましい。シリカ膜の厚さは、1〜20nmの範囲内であることが好ましく、3〜15nmであることがより好ましく、5〜10nmであることがさらに好ましい。
シリカ被覆層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリカ以外の物質を含んでいても良い。ただし、シリカ被覆層中のシリカ成分の割合は90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましく、99.9質量%以上であることが特に好ましい。
BET比表面積を上述した範囲とするためには、亜酸化銅粒子をシリカで被覆した後の粒子の粉砕工程において粉砕エネルギーを弱くすること、シリカの被覆量を上述した範囲とすること、ベースとなる亜酸化銅粒子自体のBET比表面積を上述した範囲と同等以上にすること(通常、被覆によりBET比表面積は下がる)等が挙げられる。
なお、L*a*b*表色系は物体色を表すのに用いられる方法で、L*は明度を表し、a*とb*とで色相と彩度を表すものである。L*が大きいほど明るいことを示す。a*とb*は色の方向を示しており、a*は赤方向、−a*は緑方向、b*は黄方向、−b*は青方向を示す。彩度(c*)=((a*)2+(b*)2)1/2で示される。
本発明の抗菌抗ウイルス性材料は、下記(1)〜(3)の工程により製造することができる。
(1)銅(II)化合物の水溶液に、塩基性物質と、粒子成長抑制剤、還元剤とを添加して亜酸化銅粒子を合成する亜酸化銅粒子合成工程
(2)亜酸化銅粒子と、加水分解可能なシリカ源とを溶媒中で混合し、該シリカ源を加水分解して、亜酸化銅100質量部に対してシリカ被覆層の含有量が5〜20質量部となるように亜酸化銅粒子をシリカで被覆する工程
(3)固形分を分取して粉砕処理を施す工程
以下、各工程ついて説明する。
水溶性の銅(II)化合物としては、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、硝酸銅(II)、酢酸銅(II)、水酸化銅(II)が挙げられる。好ましくは硫酸銅(II)である。合成に用いる銅水溶液中の銅(II)化合物の濃度は、銅(II)イオンで換算すると、0.05〜1mol/Lであることが好ましく、0.1〜0.5mol/Lであることがより好ましい。
銅(II)化合物の濃度が0.05mol/L以下になると、大量生産を考慮すると、経済的ではない。1mol/L以上になると、溶液中に銅イオン濃度が高すぎて、微細な亜酸化銅粒子の合成に不利である。
塩基性物質の添加量が銅(II)イオンのモル数に対し、0.5倍モル数以下になると、銅(II)を銅(I)に十分に還元するための塩基性環境を作れないので好ましくない。5倍モル数以上になると、余分な水酸基があるので、銅(II)イオンと配位して、亜酸化銅(I)の析出に不利である。
粒子成長抑制剤の添加量は、銅(II)イオンのモル数に対して、0.1倍モル数以下になると、粒子成長の抑制効果がない。5倍モル数以上になると、コスト面から考慮すると経済的ではない。
還元剤の添加量は、銅(II)イオンのモル数に対し、0.1倍モル数以下になると、十分に銅(II)イオンを亜酸化銅(I)に還元できない。1倍モル数以上になると、還元剤が多すぎて、銅(II)イオンを金属銅まで還元してしまう。
温度が10℃以下になると、反応速度が遅くなり、合成効率の面から考慮すると好ましくない。90℃以上になると、熱供給が多くなるので、コストの面から考慮すると好ましくない。亜酸化銅粒子を合成する際の反応時間は、0.5分〜5分程度とすることが好ましい。0.5分より短いと銅(II)イオンを完全に還元できない可能性があり、5分以上は必要でない上、コスト的にも好ましくない。合成したシリカで被覆した亜酸化銅粒子は、メンブレンフィルターで濾過することができる。
本工程では、亜酸化銅粒子と、加水分解可能なシリカ源とを溶媒中で混合し、該シリカ源を加水分解して、亜酸化銅100質量部に対してシリカ被覆層の含有量が5〜20質量部となるように亜酸化銅粒子をシリカで被覆する。
この方法ではシリカ被覆層はシリカ源の加水分解により生成したアモルファス形状のシリカ膜となる。シリカ源としては、既述のシリカ源(テトラエトキシシラン等)が挙げられる。溶媒は特に制限されないが、アルコール系が好適であり、その中でもエタノールがさらに好適である。
亜酸化銅粒子とシリカ源とを混合する前に、亜酸化銅の分散液を調製することが好ましい。亜酸化銅の分散液は、工程(1)で得た亜酸化銅粒子を、エタノール等の溶媒に添加し、必要に応じて分散剤を添加し、ボールミルで分散することにより得ることができる。
加水分解過程においては、亜酸化銅の分散液に、シリカ源を添加してから、2時間攪拌してから、アンモニア水を添加して、加水分解させることが好ましい。加水分解時には塩酸等の触媒を用いることもできる。
加水分解後に、最終的に得られた抗菌抗ウイルス性材料において、シリカ被覆層の含有量が亜酸化銅粒子100質量部に対して5〜20質量部となるように、シリカ源の仕込み量を設定する。このようなシリカ源の仕込み量は、用いるシリカ源、触媒等により異なるため一概にはいえないが、亜酸化銅粒子100質量部に対して、シリカ源(シリカ換算)が通常は5〜35質量部程度である。また、加水分解の時間は通常9〜15時間程度である。
上記工程(2)の後に、固形分を分離乾燥して分取した後、これに粉砕処理を施すことで、本発明の抗菌抗ウイルス性材料が得られる。
本発明の抗菌抗ウイルス性組成物は、上述した本発明の抗菌抗ウイルス性材料を含有してなるものである。このような抗菌抗ウイルス性組成物は、抗菌抗ウイルス性材料の他に、光触媒物質を含有することが好ましい。光触媒物質を含有させることで、酸化銅(I)から酸化銅(II)となり抗菌抗ウイルス性能が失われた状態を、光照射によって亜酸化銅(酸化銅(I))に還元することができる。その結果、抗菌抗ウイルス性能を半永久的に持続させることができる。
光触媒物質は、光照射により酸化銅(II)を亜酸化銅(I)に還元できるものであればよく、光触媒を主成分として含むことが好ましい。ここで、「主成分」とは、光触媒物質中の光触媒の割合が60質量%以上であることをいう。
光触媒としては、金属酸化物や金属酸窒化物等の化合物半導体が挙げられ、汎用性の観点から、酸化チタン又は酸化タングステンが好適であり、特に酸化チタンが好適である。
屋内等で使用することを想定した場合、光触媒物質は可視光応答型光触媒であることが好ましい。
可視光応答型光触媒の銅(II)イオン及び鉄(III)イオンとしては、光触媒に修飾され、可視光照射下では光触媒活性が向上できるものであれば特に制限がない。例えば、光触媒に修飾された銅(II)イオン及び鉄(III)イオンとして、酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、又は銅(II)イオン及び鉄(III)の有機錯体等が挙げられる。これらのなかで、酸化物、水酸化物が好ましい。
可視光応答型光触媒の遷移金属及び非金属としては、酸化チタンにドープさせて、不純物準位をつくり、可視光の吸収が増加できれば、特に制限がない。例えば、遷移金属として、バナジウム、クロム、鉄、銅、ルテニウム、ロジウム、タングステン、ガリウム、インジウム等が挙げられる。非金属としては、炭素、窒素、硫黄が挙げられる。また、酸化チタン若しくは酸化タングステン結晶内部に、電荷バランスを取るために、複数の遷移金属を共ドープさせる、又は、遷移金属と非金属を共ドープさせることもできる。
また、光触媒物質は、平均粒子径が小さいことが好ましく、具体的には平均粒子径が500nm以下であることが好ましい。光触媒物質の平均粒子径は300nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径を小さくすると、光励起により生じた電子が光触媒物質表面に到達する時間が短くすることができ、銅(II)が電子を受ける確率が向上し、還元適性を良好にすることができる。
本発明の抗菌抗ウイルス性組成物分散液(以下、「本発明の分散液」という場合もある。)は、上述した本発明の抗菌抗ウイルス性組成物を1〜30質量%、非水系有機溶媒を40〜98.98質量%、非水系有機溶媒に可溶な塩基性物質を0.01〜10質量%含有してなるものである。
抗菌抗ウイルス性組成物が1質量%以上であることで、抗菌抗ウイルス性能を発揮できる。30質量%以下であることで、本発明の分散液が安定に保存でき、利便性を向上させることができる。抗菌抗ウイルス性組成物の分散液中の抗菌抗ウイルス性組成物の濃度は、2〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。
非水系有機溶媒を用いる理由としては、水中だと亜酸化銅が2価の銅に酸化されやすく、非水系溶媒中では、それが起こりにくいためである。よって、非水系有機溶媒は、非水系溶媒の全体に対して、水分は0.5質量%以下であることが好ましい。
塩基性物質の溶解度は、非水系有機溶剤100gに対して0.05g以下になると、分散液を十分に塩基性環境に維持できなく、亜酸化銅(I)と混合する際に酸性により溶解してしまう。
当該界面活性剤は、抗菌抗ウイルス性組成物分散液中に、0.01〜20質量%含有することが好ましい。界面活性剤の含有量を0.01質量%以上とすることにより、分散液の分散性が良好となり、抗菌抗ウイルス組成物の沈降が防止され、20質量%以下とすることにより、分散液から形成した膜中に当該界面活性剤が残存する量を少なくし、膜の抗菌抗ウイルス性能が低下することを防止できる。当該界面活性剤の含有量は、0.05〜15質量%であることが好ましく、0.08〜10質量%であることがより好ましい。
本発明の抗菌抗ウイルス性組成物含有コート剤は、本発明の抗菌抗ウイルス性組成物分散液に、10〜120℃の環境下で硬化するバインダー成分が含有されてなる。当該バインダー成分としては、無機系バインダー又は有機系バインダーのいずれを用いてもよい。光触媒物質によるバインダーの分解を考慮すると、無機系バインダーが好ましい。バインダーの種類は特に限定されず、例えば、シリカバインダー、ジルコニアバインダー、アルミナバインダー、チタニアバインダー、等が挙げられ、それらを併用しても良い。なかでも、シリカバインダー又はジルコニアバインダーが好ましい。
膜厚は、0.05μm以下になると、抗菌抗ウイルス組成物の量が少なく、材料の抗菌抗ウイルス性能を十分に発揮できない。膜厚は、1μm以上になると、抗菌抗ウイルス組成物の量が多く、材料の抗菌抗ウイルス性能を十分に発揮できるが、膜の硬度、耐久性が低下する。
なお、実施例及び比較例の評価、測定は以下のように行った。
各例で得られた抗菌抗ウイルス性組成物の亜酸化銅粒子について、XRD測定により結晶ピーク帰属の測定を行った。当該XRD測定は、銅ターゲットを使用し、Cu−Kα1線を用いて、管電圧が45kV、管電流が40mA、測定範囲が2θ=20〜80deg、サンプリング幅が0.0167deg、走査速度が1.1deg/minで行った。測定には、Panalytical社製のX'PertPROを使用した。
[BET比表面積]
各例で得られた抗菌抗ウイルス性材料についてのBET比表面積の測定は、(株)マウンテック製の全自動BET比表面積測定装置「Macsorb,HM model−1208」を使用して行った。
[シリカ被覆層の質量]
各例で得られた抗菌抗ウイルス性材料のシリカ被覆層の質量の測定は、シリカ被覆した 亜酸化銅粒子(0.1g)とNa2CO3 (2g)とH3BO3(1g)を白金坩堝に入れて、アルカリ溶融して、放冷後に、硝酸溶液と混合して、溶液を得る。得られた溶液をICP発光分光分析装置(島津製作所製、製品名:ICPS−7500)で測定した。なお、検量線はケイ素標準液10ppmを用いて作成した。検量線からシリカ被覆した亜酸化銅粒子のケイ素の量を算出した。ケイ素の量からシリカの質量を算出した。このシリカの質量をシリカ被覆層の質量とした。
[色彩値]
色彩値の測定(L*a*b*値)は、コニカミノルタオプティクス株式会社製の分光測色計「CM−3700d」を使用して行った。
[環境試験]
環境試験は、エスペック株式会社製の小型環境試験機「SH−241」を使用して、温度を50℃にし、湿度を98%に設定して、抗菌抗ウイルス性組成物の状態で1週間保管した。
ウイルス不活化能は、バクテリオファージを用いたモデル実験により以下の方法で確認した。なお、バクテリオファージに対する不活化能をウイルス不活化能のモデルとして利用する方法は、例えばAppl.Microbiol Biotechnol.,79,pp.127-133,2008に記載されており、信頼性のある結果が得られることが知られている。
深型シャーレ内にろ紙を敷き、少量の滅菌水を加えた。ろ紙の上に厚さ5mm程度のガラス製の台を置き、その上に実施例1〜4の抗菌抗ウイルス性材料、実施例5〜10の抗菌抗ウイルス性組成物分散液、及び比較例1〜4、5〜11の試料のそれぞれを、実施例1〜4及び比較例1〜4の場合は固形分が0.06mg/25cm2、実施例5〜10及び比較例5〜11の場合は固形分が1.5mg/25cm2となるように塗布したガラス板(50mm×50mm×1mm)を置いた。この上にあらかじめ馴化しておき濃度も明らかとなっているQBファージ(NBRC20012)懸濁液を100μL滴下し、試料表面とファージを接触させるためにPET(ポリエチレンテレフタレート)製のOHPフィルムを被せた。この深型シャーレにガラス板で蓋をしたものを測定用セットとした。同様の測定用セットを複数個用意した。
また、光源として15W白色蛍光灯(パナソニック社製、フルホワイト蛍光灯、FL15N)に紫外線カットフィルター(日東樹脂工業社製、N−113)を取り付けたものを使用し、照度が800ルクスになる位置に複数個の測定用セットを静置した(照度計はTOPCON社製のIM−5を使用)。所定時間経過後にガラス板上のサンプルのファージ濃度測定を行った。
初期ファージ濃度N0と、所定時間後のファージ濃度Nとから、ファージ相対濃度(LOG(N/N0))を求めた。
ウイルス不活化能の評価を種々の条件で行った結果を表1〜3に示す。
蒸留水3000mLを50℃に加熱し、攪拌しながら、硫酸銅(II)五水和物149.8gを投入し、完全に溶解した。その後、1.5mol/Lのグルコース水溶液200gを投入してから、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液720gと2mol/Lのヒドラジン水和物の水溶液120mLとを同時に投入した。1分間強く攪拌した後、0.3μmのメンブレンフィルターでろ過して、3000mLの蒸留水で水洗を行い、固形分を回収し、60℃で3h乾燥した後、メノウ乳鉢にて粉砕し、亜酸化銅粒子を得た。得られた亜酸化銅粒子のBET比表面積を窒素吸着法によって測定したところ、29.20m2/gであった。得られた亜酸化銅粒子5gをエタノール溶媒60mLに分散し、懸濁液1とする。エタノール20mLに純度95%のTEOS1.827gを投入し、溶液2とする(亜酸化銅粒子100質量部に対して、仕込み量でシリカ10質量部に相当)。溶液2を懸濁液1に混合し、純水10mLを投入した。攪拌2時間後、5%アンモニア水溶液10mLを投入し、12時間攪拌した。0.3μmのメンブレンフィルターでろ過して、100mLの蒸留水で水洗を行った後に、100mLのエタノールで洗浄した。60℃で3h乾燥した後、メノウ乳鉢にて粉砕し、抗菌抗ウイルス性材料(シリカ被覆亜酸化銅粒子)Aを得た。得られたシリカ被覆亜酸化銅粒子のシリカ被覆層の質量、及びBET比表面積を表1に示す。
なお、図1に、抗菌抗ウイルス性材料A(シリカ被覆亜酸化銅粒子)のTEM写真を示す。図1より、約5.6nmの厚みのシリカ層が形成されていることがわかる。また、図2に、抗菌抗ウイルス性材料A(シリカ被覆亜酸化銅粒子)のX線回折パターンを示す。図2より、亜酸化銅のピークしか観測できないことから、シリカ被覆層がアモルファス形状であることがわかる。
実施例1と同様にして、亜酸化銅粒子を作製した。得られた亜酸化銅粒子5gをエタノール溶媒60mLに分散し、懸濁液1とする。エタノール20mLに純度95%のTEOS2.742gを投入し、溶液2とする(亜酸化銅粒子100質量部に対して、仕込み量でシリカ15質量部に相当)。溶液2を懸濁液1に混合し、純水10mLを投入した。その後実施例1と同様にして、抗菌抗ウイルス性材料(シリカ被覆亜酸化銅粒子)Bを得た。得られたシリカ被覆亜酸化銅粒子のシリカ被覆層の質量、及びBET比表面積を表1に示す。
実施例1と同様にして、亜酸化銅粒子を作製した。得られた亜酸化銅粒子5gをエタノール溶媒60mLに分散し、懸濁液1とする。エタノール20mLに純度95%のTEOS3.654gを投入し、溶液2とする(亜酸化銅粒子100質量部に対して、仕込み量でシリカ20質量部に相当)。溶液2を懸濁液1に混合し、純水10mLを投入した。その後実施例1と同様にして、抗菌抗ウイルス性材料(シリカ被覆亜酸化銅粒子)Cを得た。得られたシリカ被覆亜酸化銅粒子のシリカ被覆層の質量、及びBET比表面積を表1に示す。
実施例1と同様にして、亜酸化銅粒子を作製した。得られた亜酸化銅粒子5gをエタノール溶媒60mLに分散し、懸濁液1とする。エタノール20mLに純度95%のTEOS4.59gを投入し、溶液2とする(亜酸化銅粒子100質量部に対して、仕込み量でシリカ25質量部に相当)。溶液2を懸濁液1に混合し、純水10mLを投入した。その後実施例1と同様にして、抗菌抗ウイルス性材料(シリカ被覆亜酸化銅粒子)Dを得た。得られたシリカ被覆亜酸化銅粒子のシリカ被覆層の質量、及びBET比表面積を表1に示す。
実施例1と同様にして、亜酸化銅粒子を作製した。得られた亜酸化銅粒子のBET比表面積を表1に示す。
実施例1と同様にして、亜酸化銅粒子を作製した。得られた亜酸化銅粒子5gをエタノール溶媒60mLに分散し、懸濁液1とする。エタノール20mLに純度95%のTEOS0.918gを投入し、溶液2とする(亜酸化銅粒子100質量部に対して、仕込み量でシリカ5質量部に相当)。溶液2を懸濁液1に混合し、純水10mLを投入した。その後実施例1と同様にして、抗菌抗ウイルス性材料(シリカ被覆亜酸化銅粒子)Eを得た。得られたシリカ被覆亜酸化銅粒子のシリカ被覆層の質量、及びBET比表面積を表1に示す。
実施例1と同様にして、亜酸化銅粒子を作製した。得られた亜酸化銅粒子5gをエタノール溶媒60mLに分散し、懸濁液1とする。エタノール20mLに純度95%のTEOS6.40gを投入し、溶液2とする(亜酸化銅粒子100質量部に対して、仕込み量でシリカ35質量部に相当)。溶液2を懸濁液1に混合し、純水10mLを投入した。その後実施例1と同様にして、抗菌抗ウイルス性材料(シリカ被覆亜酸化銅粒子)Fを得た。得られたシリカ被覆亜酸化銅粒子のシリカ被覆層の質量、及びBET比表面積を表1に示す。
次に、環境試験前後の結果を比較すると、実施例1〜4においては、環境試験機に保管する前後において、ウイルス不活性化能及び色彩値の変化が見られなかった。これは、シリカ被覆層が含有しているため、酸化防止が効いていることによると考えられる。特に、実施例1〜3のものは、環境試験の前後の何れにおいても、高いレベルのウイルス不活性能を有している。
一方、比較例1、2においては、環境試験機後にウイルス不活化能が大幅に低下するとともに、色相の明度(L*)が低下し、黒色に呈色した。これは、シリカ被覆層の含有量が少なく、酸化防止が効いていないことによると考えられる。
また、比較例3においては、シリカ被覆層の量が多すぎるため、環境試験前の段階からウイルス不活性能に劣るものであった。
アナターゼ型酸化チタン(平均粒子径:15nm、昭和タイタニウム社製)を2−プロピルアルコール(以下、「IPA」という)に懸濁させ、固形分濃度5質量%の分散体を調製した。酸化チタン100質量部に対して2質量部に相当するトリトンX−100(オクチルフェノキシポリエトキシエタノール 関東化学社製)を添加した後、酸化チタンに対して2質量部に相当するテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(40質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(関東化学社製)を使用した)を添加した。
その後、0.1mmサイズのメディアを用いて懸濁液をビーズミル処理で分散処理を行い、分散液を得た(以下「分散体G」という)。分散体Gと実施例1で得られた抗菌抗ウイルス性材料Aとを、抗菌抗ウイルス性材料と酸化チタンとの合計量100質量部に対して、抗菌抗ウイルス性材料Aが4.8質量部(光触媒物質が95.2質量部)となるように混合して、抗菌抗ウイルス性組成物分散液を得た。
図3中の「ブランク」とは、ガラス板のみのウイルス不活化能の評価結果である。「暗所」とは、分散液を塗布したガラス板の暗条件での評価結果である。「可視光照射」とは、分散液を塗布したガラス板の可視光照射下での評価結果である。
なお、可視光照射は、白色蛍光灯から、光学フィルター(日東樹脂社製、N−113)を通し、400nm以下の光をカットした光を照射する条件で行った。光強度は800Luxである。
蒸留水1000mLに50gのブルッカイト型酸化チタン(平均粒子径:10nm、昭和タイタニウム社製)を懸濁させて、酸化チタン100質量部に対して、0.1質量部の銅(II)イオンを担持するように、0.133gCuCl2・2H2O(関東化学社製)を添加して、90℃に加熱し、攪拌しながら1h熱処理を行った。洗浄、乾燥して、銅(II)イオン修飾酸化チタンHが得られた。実施例5で用いたアナターゼ型酸化チタンの代わりに前記の銅(II)イオン修飾酸化チタンHを使用した以外は、実施例5と同様にして、抗菌抗ウイルス性組成物分散液を得た。
蒸留水1000mLに50gの酸化タングステン(和光純薬工業社製)を懸濁させて、酸化タングステン100質量部に対して、0.1質量部の銅(II)イオンを担持するように、0.133gCuCl2・2H2O(関東化学社製)を添加して、90℃に加熱し、攪拌しながら1h熱処理を行った。洗浄、乾燥して、銅(II)イオン修飾酸化タングステンIを調製した。実施例5で用いたアナターゼ型酸化チタンの代わりに前記の銅(II)イオン修飾酸化タングステンIを使用した以外は、実施例5と同様にして、抗菌抗ウイルス性組成物分散液を得た。
10gの酸化チタン(ルチル型、平均粒子径:15nm、テイカ社製)を20mLのエタノール(和光純薬工業社製)に懸濁させて、酸化チタン懸濁液を調製した。1gの六塩化タングステン(Aldrich製)を10mLのエタノールに溶解させて、タングステン溶液を調製した。1gの硝酸ガリウム(III)水和物(Aldrich社製)を10mLのエタノールに溶解させて、ガリウム溶液を調製した。タングステン:ガリウム:チタンのモル比が0.03:0.06:0.91になるように、タングステン溶液、ガリウム溶液を酸化チタン懸濁液に混合し、攪拌しながら、エタノール溶媒を蒸発させた。得られた粉末を950℃、3時間で熱処理した。これにより、タングステンとガリウムを共ドープした酸化チタンが得られた。次に、タングステンとガリウムを共ドープした酸化チタン5gを100gの蒸留水に懸濁させて、タングステンとガリウムを共ドープした酸化チタン100質量部に対して、0.1質量部の銅(II)イオンを担持するように、0.013gCuCl2・2H2O(関東化学社製)を添加して、90℃に加熱し、攪拌しながら1h熱処理を行った。洗浄、乾燥して、銅(II)イオン修飾したタングステンとガリウムを共ドープした酸化チタンJを調製した。実施例5で用いたアナターゼ型酸化チタンの代わりにこの銅(II)イオン修飾したタングステンとガリウムを共ドープした酸化チタンJを使用した以外は、実施例5と同様にして、抗菌抗ウイルス性組成物分散液を得た。
実施例5において、分散体Gと実施例1で得られた抗菌抗ウイルス性材料Aとを、抗菌抗ウイルス性材料と酸化チタンとの合計量100質量部に対して、抗菌抗ウイルス性材料Aが15.0質量部(光触媒物質が85.0質量部)となるように混合して、抗菌抗ウイルス性組成物分散液を得た。
実施例5において、分散体Gと実施例1で得られた抗菌抗ウイルス性材料Aとを、抗菌抗ウイルス性材料と酸化チタンとの合計量100質量部に対して、抗菌抗ウイルス性材料Aが25.0質量部(光触媒物質が75.0質量部)となるように混合して、抗菌抗ウイルス性組成物分散液を得た。
市販の工業品亜酸化銅(商品名:レギュラー、古河ケミカルズ社製 BET比表面積1m2/g)を使用した以外は実施例1と同様にして、シリカ被覆亜酸化銅粒子を得た。得られたシリカ被覆亜酸化銅粒子のシリカ被覆層の質量、及びBET比表面積を表2に示す。次いで、得られたシリカ被覆亜酸化銅粒子1gを、エタノール100mlに分散させて分散液を得た。当該分散液を、塗布量が24mg/m2になるように、ガラス板に塗布して亜酸化銅の塗膜を形成した。
比較例1で得られた亜酸化銅粒子を環境試験機(50℃、98%RH)中に7日間放置することによって酸化銅(II)に酸化させた。次いで、当該酸化銅(II)と分散体Gとを、酸化銅(II):酸化チタンが4.8:95.2となるように混合し、酸化銅(II)/酸化チタン分散液を得た。
比較例1で得られた亜酸化銅粒子と分散体Gとを、亜酸化銅(I):酸化チタンが4.8:95.2となるように混合し、亜酸化銅(I)/酸化チタン分散液を得た。
実施例5の分散体Gの製造過程において、アナターゼ型酸化チタンの代わりに、実施例6で使用した銅(II)イオン修飾酸化チタンHを用いた以外は、当該工程と同様にして、銅(II)イオン修飾酸化チタンHの分散体Kを得た。分散体Kに、比較例1で得られた亜酸化銅粒子を、比較例1で得られた亜酸化銅粒子:銅(II)イオン修飾酸化チタンHの質量比が4.8:95.2となるように混合し、亜酸化銅(I)/銅(II)イオン修飾酸化チタン分散液を得た。
実施例5の分散体Gの製造過程において、アナターゼ型酸化チタンの代わりに、実施例7で使用した銅(II)イオン修飾酸化タングステンIを用いた以外は、当該工程と同様にして、銅(II)イオン修飾酸化タングステンIの分散体Lを得た。分散体Lに、比較例1で得られた亜酸化銅粒子を、比較例1で得られた亜酸化銅粒子:銅(II)イオン修飾酸化タングステンIの質量比が4.8:95.2となるように混合し、亜酸化銅(I)/銅(II)イオン修飾酸化タングステン分散液を得た。
実施例5の分散体Gの製造過程において、アナターゼ型酸化チタンの代わりに、実施例8で使用した銅(II)イオン修飾したタングステンとガリウムを共ドープした酸化チタンJを用いた以外は、当該工程と同様にして、銅(II)イオン修飾したタングステンとガリウムを共ドープした酸化チタンJの分散体Mを得た。分散体Mに、比較例1で得られた亜酸化銅粒子を、比較例1で得られた亜酸化銅粒子:銅(II)イオン修飾したタングステンとガリウムを共ドープした酸化チタンJの質量比が4.8:95.2となるように混合し、亜酸化銅(I)/銅(II)イオン修飾したタングステンとガリウムを共ドープした酸化チタン分散液を得た。
実施例5の分散体Gの製造過程において、アナターゼ型酸化チタンの代わりに、酸化アルミニウム(平均粒子径:40μm、関東化学社製)を用いた以外は、当該工程と同様にして、酸化アルミニウムの分散体Nを得た。分散体Nに、比較例1で得られた亜酸化銅粒子を、比較例1で得られた亜酸化銅粒子:酸化アルミニウムの質量比が4.8:95.2となるように混合し、亜酸化銅(I)/酸化アルミニウム分散液を得た。
比較例2で得られた抗菌性ウイルス材料Eと分散体Gとを、抗菌抗ウイルス性材料と酸化チタンとの合計量100質量部に対して、抗菌抗ウイルス性材料Eが4.8質量部(光触媒物質が95.2質量部)となるように混合して、抗菌抗ウイルス性組成物分散液を得た。
実施例5〜10は、抗菌抗ウイルス性材料と光触媒との組合せに係る抗菌抗ウイルス性組成物である。比較例5は、シリカ被覆層を含まず酸化銅と光触媒との組合せに係る抗菌抗ウイルス性組成物である。比較例6〜9は、シリカ被覆層を含まず亜酸化銅と光触媒との組合せに係る抗菌抗ウイルス性組成物である。比較例10は、シリカ被覆層を含まず亜酸化銅と光触媒性能のない酸化アルミニウムとの組合せに係る抗菌抗ウイルス性組成物である。比較例11は、シリカ被覆層を含むが被覆割合の少ない亜酸化銅と光触媒との組み合わせに係る抗菌抗ウイルス性組成物である。
実施例5〜10(抗菌抗ウイルス性材料と光触媒との組合せに係る抗菌抗ウイルス性組成物)と比較例6〜9、11(シリカ被覆層を含まないか、シリカ被覆層を含むがシリカの割合が少ない亜酸化銅と光触媒との組合せに係る抗菌抗ウイルス性組成物)を比較すると、合成直後の評価結果では、何れも暗所においてウイルス不活化能を示し、光照射によりウイルス不活化能が向上し、大きな差が確認できなかった。一方、環境試験機保管後の評価結果からは、シリカ被覆層を含まないか、シリカ被覆層を含むがシリカの割合が少ない比較例6〜9、11のものは、光触媒と組み合わせても、実施例5〜10のように、高いウイルス不活化能を示すことができないことがわかる。
また、亜酸化銅と光触媒能を有していない酸化アルミニウムとの組合せに係る、比較例10の抗菌抗ウイルス性組成物は、合成直後の暗所では、ウイルス不活化能を示しているが、光照射によるウイルス不活化能の向上が確認できず、さらに環境試験機中保管後において、ウイルス不活化能が低下した。
以上のことから、実施例5〜10のように、抗菌抗ウイルス性材料と光触媒との組合せに係る抗菌抗ウイルス性組成物によれば、耐温、耐湿、耐久性の面から、高いウイルス不活化能を維持できることが確認できた。
Claims (10)
- 亜酸化銅粒子の表面の少なくとも一部にシリカ被覆層を有し、前記シリカ被覆層の含有量が、前記亜酸化銅粒子100質量部に対して5〜20質量部であり、シリカで被覆された亜酸化銅粒子のBET比表面積が5〜100m2/gである抗菌抗ウイルス性材料と光触媒物質とを含有してなり、
前記抗菌抗ウイルス性材料及び前記光触媒物質の合計量に対する前記光触媒物質の含有割合が70〜99.9質量%である抗菌抗ウイルス性組成物。 - 前記光触媒物質が、酸化チタン及び酸化タングステンから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の抗菌抗ウイルス性組成物。
- 前記光触媒物質は、酸化チタン及び酸化タングステンから選ばれる少なくとも1種を含む基材が、銅(II)イオン及び鉄(III)イオンから選ばれる少なくとも1種により修飾された可視光応答型光触媒である請求項1に記載の抗菌抗ウイルス性組成物。
- 前記基材が、遷移金属及び非金属の少なくとも何れかをドープした酸化チタン、遷移金属及び非金属の少なくとも何れかをドープした酸化タングステンから選ばれる少なくとも1種を含む請求項3に記載の抗菌抗ウイルス性組成物。
- 前記抗菌抗ウイルス性材料のJIS Z8701におけるL*a*b*表色系のL*が50以上、a*が8以下、b*が20以上である請求項1〜4のいずれかに記載の抗菌抗ウイルス性組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の抗菌抗ウイルス性組成物を1〜30質量%、非水系有機溶媒を40〜98.98質量%、前記非水系有機溶媒に可溶な塩基性物質を0.01〜10質量%含有してなる抗菌抗ウイルス性組成物分散液。
- さらに、前記非水系有機溶媒に可溶な界面活性剤を0.01〜20質量%含有してなる請求項6に記載の抗菌抗ウイルス性組成物分散液。
- 請求項6又は7に記載の抗菌抗ウイルス性組成物分散液に、10〜120℃の環境下で硬化するバインダー成分が含有されてなる抗菌抗ウイルス性組成物含有コート剤。
- 請求項8に記載の抗菌抗ウイルス性組成物含有コート剤を塗布し硬化させてなる抗菌抗ウイルス性膜。
- 請求項9に記載の抗菌抗ウイルス性膜を最表面の少なくとも一部に有する抗菌抗ウイルス性物品。
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