以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係るアプリケータ10は、生体内に任意の活性成分(例えば薬剤)を投与するために、マイクロニードル・シート20上のマイクロニードルを皮膚に穿刺するための補助器具である。使用者はこのアプリケータ10を用いることで、手で直接マイクロニードル・シート20を曲げる場合よりも適切な力でマイクロニードルを皮膚に穿刺することができる。
まず、アプリケータ10に取り付けられるマイクロニードル・シート20について説明する。図1に示すように、マイクロニードル・シート20は帯状であり、シートの主面21に略沿って該シートに形成された複数のマイクロニードル22を有する。これらのマイクロニードル22はシートの長手方向及び幅方向のそれぞれにおいて整列するように並んでおり、すべてのマイクロニードル22の先端は例外なくシートの一端(図1では左方向)を向いている。
マイクロニードル・シート20及びマイクロニードル22の材質は限定されない。例えば、ステンレス鋼、ポリエチレンテレフタラート(PET)、他の金属、他の樹脂、生分解性素材、セラミック、又は生体吸収性素材のいずれかによりマイクロニードル・シート20及びマイクロニードル22を作製してもよい。あるいは、これらの材質を組み合わせてマイクロニードル・シート20及びマイクロニードル22を作製してもよい。
マイクロニードル22はエッチングにより形成することができる。シートが金属であれば薬液でそのシートを打ち抜くことでマイクロニードル22を形成することができるし、シートが非金属であればレーザーでそのシートを打ち抜くことでマイクロニードル22を形成することができる。これらの場合には、マイクロニードル22の周囲に空隙が生ずる。もちろん、エッチング以外の手法によりマイクロニードル22を形成してもよい。図1に示すように本実施形態ではマイクロニードル22は三角形状であるが、マイクロニードルの形状は何ら限定されない。いずれにしても、マイクロニードル22を予めシートの主面21から立ち上げておく必要がないので、マイクロニードル・シート20を容易かつ安価に製造することができる。
マイクロニードル・シート20の寸法も限定されない。具体的には、厚みの下限は5μmでも20μmでもよく、厚みの上限は1000μmでも300μmでもよい。長さの下限は0.1cmでも1cmでもよく、長さの上限は50cmでも20cmでもよい。幅の下限は0.1cmでも1cmでもよく、幅の上限は60cmでも30cmでもよい。マイクロニードル・シート20の長さ及び幅の下限は活性成分の投与量を考慮して定められ、長さ及び幅の上限は生体の大きさを考慮して定められる。
マイクロニードル22に関するパラメータも限定されない。具体的には、針の高さの下限は10μmでも100μmでもよく、その高さの上限は10000μmでも1000μmでもよい。針の密度の下限は0.05本/cm2でも1本/cm2でもよく、その密度の上限は10000本/cm2でも5000本/cm2でもよい。密度の下限は、1mgの活性成分を投与し得る針の本数及び面積から換算した値であり、密度の上限は、針の形状を考慮した上での限界値である。
皮膚に適用する活性成分の準備方法として、マイクロニードル・シート20自体に予め活性成分をコーティングしておく手法と、マイクロニードル22を皮膚に穿刺する前にその皮膚上に活性成分を塗布しておく手法と、マイクロニードル22を皮膚に穿刺した後にその皮膚上に活性成分を塗布する手法とが考えられる。マイクロニードル・シート20に予め活性成分をコーティングするのであれば、所定の粘度のコーティング液をなるべく均一な厚みでシート全体に塗布するのが好ましいが、マイクロニードル22が主面21に沿っているのでそのような塗布を容易に為し得る。コーティングはスクリーン印刷の原理を用いて実施してもよいし、他の方法により実施してもよい。生分解性のシートを用いる場合には、そのシート自体に活性成分を内包させることも可能である。
次に、図2〜8を用いてアプリケータ10の構造を説明する。アプリケータ10は全体として細長い形状を呈しており、長手方向に延びるガイド板11と、そのガイド板11に設けられたスライダ12とを備えている。本実施形態では、図3(正面図)で示される側をアプリケータ10の前側と定義し、図4(背面図)で示される側をアプリケータ10の後側と定義する。また、図5(平面図)で示される側をアプリケータ10の上側と定義し、図6(底面図)で示される側をアプリケータ10の下側と定義する。
アプリケータ10の材質の例としてアクリル等のプラスチックが挙げられるが、その材質は何ら限定されるものでなく、例えば金属や他の種類の樹脂などを用いてアプリケータ10を作製してもよい。
アプリケータ10の寸法は、マイクロニードル・シート20の寸法に合わせて決めてもよい。例えば、アプリケータ10の幅(長手方向と直交する方向における長さ)はマイクロニードル・シート20の幅に応じて決めてもよい。また、アプリケータ10の全長(長手方向に沿った長さ)はマイクロニードル・シート20の長さ、または皮膚へのマイクロニードル・シート20の適用範囲を考慮して決めてもよい。
ガイド板11は、直線状に延びる細長い板状の部材であり、その後端には脚が設けられている。マイクロニードル・シート20をガイド板11の下面へと案内するために、ガイド板11の後側には孔13が形成されている(図4参照)。
スライダ12は、ガイド板11の長手方向に沿って移動できるように当該ガイド板11に取り付けられている。スライダ12の上面には、スライド操作の容易性を考慮して凹凸が形成されている。このスライダ12は、幅方向に沿って延びる二つの細長い円柱部材を備えている。第1の円柱部材14はガイド板11の下面に近い位置に設けられている。第2の円柱部材15は、スライダ12の下部に(アプリケータ10の使用時に皮膚面に当たるほどの位置に)、かつ第1の円柱部材14よりも後方に設けられている。第1の円柱部材14は回転しないようにスライダ12に固定されてもよいし、回転可能なようにスライダ12に取り付けられてもよい。同様に、第2の円柱部材15も、回転しないようにスライダ12に固定されてもよいし、回転可能なようにスライダ12に取り付けられてもよい。第1の円柱部材14および第2の円柱部材15の双方が、回転しないようにスライダ12に固定されてもよいし、その双方が回転可能なようにスライダ12に取り付けられてもよい。あるいは、第1の円柱部材14および第2の円柱部材15のどちらか一方が、回転しないようにスライダ12に固定され、他方が回転可能なようにスライダ12に取り付けられてもよい。これら二つの円柱部材14,15の直径はマイクロニードル・シート20の厚みおよびマイクロニードル22の長さ(高さ)に応じて設定され、例えば1〜4mmである。あるいは、二つの円柱部材14,15の直径は0.8〜4mmであってもよいし、0.1〜4mmであってもよい。二つの円柱部材14,15の間で直径が同じでもよいし互いに異なってもよい。
スライダ12の内部には、マイクロニードル・シート20をガイド板11の下面付近から皮膚面へと通すための案内路が形成されている。具体的には、この案内路は、まず、スライダ12の後端から第1の円柱部材14にかけてほぼ水平方向に延び、第1の円柱部材14で下方に折り返した後に第2の円柱部材15へと延び、第2の円柱部材15で再び下方に折り返すことで皮膚面に至る。本実施形態では、高さ方向において、第1の円柱部材14の下端の位置と第2の円柱部材15の上端の位置とがほぼ同じであるため、マイクロニードル・シート20の進行方向が第1の円柱部材14で反転する(約180度変わる)。しかし、これらの高さは互いに異なっていてもよい。例えば、高さ方向における第1の円柱部材14と第2の円柱部材15との間隔をより広げれば、マイクロニードル・シート20の進行方向の変化は180度未満になる。
次に、図9〜12を用いて、アプリケータ10及びマイクロニードル・シート20の使用方法を説明する。なお、図9,10では、マイクロニードル・シート20がアプリケータ10にどのようにセットされるかをわかり易く示すために、マイクロニードル・シート20を実線で表し、アプリケータ10を破線で表している。
まず、ユーザはマイクロニードル・シート20をアプリケータ10にセットする。具体的には、ユーザはマイクロニードル・シート20を孔13に通し、さらにスライダ12内の案内路に通した上で、マイクロニードル・シート20の一端を第2の円柱部材15の下側に出す。続いて、ユーザはスライダ12をガイド板11の前端付近に位置させ、案内路から出したマイクロニードル・シート20の一端をアプリケータ10の前方に向けつつ、アプリケータ10を皮膚Sの上に置く。
このような一連の操作によりマイクロニードル・シート20は図9に示すようにセットされる。すなわち、孔13を通ったマイクロニードル・シート20はガイド板11の下面に沿ってスライダ12へと案内され、このスライダ12内で二つの円柱部材14,15によりS字状に曲げられた上で皮膚Sに至る。
このとき、後述するスライド操作によりマイクロニードル・シート20が皮膚上でずれないように、ユーザは指や粘着テープなどによりマイクロニードル・シート20の前端を皮膚Sに固定する。あるいは、その固定のために、マイクロニードル・シート20の前端部に粘着剤が設けられてもよい。
活性成分を適用とする場所にアプリケータ10およびマイクロニードル・シート20を置いた後、ユーザはスライダ12をガイド板11の後端に向かって(図10の矢印Aで示される方向に)動かす。このスライド操作により、マイクロニードル・シート20が、曲げ部に相当する第2の円柱部材15へと案内され、第2の円柱部材15に到達したマイクロニードル・シート20の部分がその箇所で曲げられる(反転する)。すると、図10に示すように、曲がった部分に位置するマイクロニードル22がシートの主面21から立ち上がり、立ち上がったマイクロニードル22が皮膚Sに刺さる。
マイクロニードル・シート20は、第2の円柱部材15に至る前に第1の円柱部材14を経由する。第1の円柱部材14はマイクロニードル・シート20の進行方向を反転させることで当該シート20を第2の円柱部材15へと案内するので、第1の円柱部材14はマイクロニードル・シート20の進行に対していくらかの抵抗を付加しているといえる。すなわち、第1の円柱部材14は抵抗部に相当する。本明細書における「抵抗部」とは、当該抵抗部から曲げ部(本実施形態では第2の円柱部材15)までの間のマイクロニードル・シートの弛みを無くして曲げ部に張力を掛けることを目的として設けられる部分である。上述したように、抵抗部が円柱部材である場合には、抵抗部は回転しなくてもよいし回転可能であってもよい。図11に示すように、マイクロニードル・シート20には、皮膚S上の固定端(前端)に掛かる力F1と、スライダ12を後方に引く力F2と、マイクロニードル・シート20の自由端(後端)の方向に掛かる力F3とが生ずる。力F3は、第1の円柱部材14での抵抗により生ずる力であるともいえる。
第2の円柱部材15において一度に立ち上がるマイクロニードル22は、マイクロニードル・シート20の幅方向に沿った一列分である。立ち上がったマイクロニードル22と主面21とが成す角度は当然ながら0度より大きく且つ180度未満である。なお、マイクロニードル22は第1の円柱部材14を通過する際にも一度立ち上がるが、このことは、そのマイクロニードル22が第2の円柱部材15を通過する際の障害とはならない。
図12に示すように、主面21から立ち上がったマイクロニードル22が皮膚に刺さる際の穿刺角度θ(マイクロニードル22と皮膚Sとが成す角度)も0度より大きく且つ180度未満である。穿刺角度の下限は20度、34度、または40度でもよく、その角度の上限は160度、140度、または100度でもよい。
ユーザがスライダ12を所望の距離だけ動かすことで、その距離の範囲にある複数のマイクロニードル22が皮膚に刺さる。したがって、ユーザはマイクロニードル・シート20の適用面積を調整して所望の量の活性成分を投与することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、マイクロニードル・シート20の進行に対して第1の円柱部材14で抵抗が掛かるのでマイクロニードル・シート20の進行を一定にすることができる。そのため、その後に第2の円柱部材15により立ち上げられるマイクロニードル22を一定の力で皮膚に刺すことができる。すなわち、穿刺の再現性を高めることができる。
また、本実施形態では、二つの円柱部材14,15を抵抗部および曲げ部として採用することで、アプリケータ10の構造を単純化することができる。また、これらの円柱部材14,15を採用することで、マイクロニードル・シート20を変形させる際に当該シート20の特定の箇所に円柱部材からの圧力が集中することがないので、マイクロニードル・シート20の損傷をより確実に防ぐことができる。
また、本実施形態では、第1の円柱部材14でマイクロニードル・シート20の進行方向を反転させる(約180度変える)ことで、必要な抵抗をそのマイクロニードル・シート20に付加することができる。
アプリケータ10は、マイクロニードル・シート20に衝撃を加えるのではなく、マイクロニードル22を立ち上げて皮膚に押し込むことで各マイクロニードル22を皮膚に穿刺するので、被投与者に恐怖感を与えずに活性成分を投与することができる。
マイクロニードル・シート20に関していうと、第1の円柱部材14によりマイクロニードル・シート20が曲げられるまではマイクロニードル22がシートの主面21に略沿って延びた状態にある。したがって、アプリケータ10を用いない限り、マイクロニードル22が他の物(例えばユーザの皮膚や衣服など)に当たったり引っ掛かったりする心配がない。その結果、マイクロニードル22の取扱時の安全性を確保することができる。例えば、ユーザはマイクロニードル・シート20の保管や搬送、使用直前の準備などを安全に行うことができる。
(第2実施形態)
図13〜19を用いて、第2実施形態に係るアプリケータ30の構造を説明する。本実施形態では、図14で示される側(正面図)をアプリケータ30の前側と定義し、図15で示される側(背面図)をアプリケータ30の後側と定義する。また、図16(平面図)で示される側をアプリケータ30の上側と定義し、図17(底面図)で示される側をアプリケータ30の下側と定義する。
アプリケータ30も全体として細長い形状を呈しており、長手方向に延びるガイド板31と、そのガイド板31に設けられたスライダ32とを備えている。アプリケータ30とアプリケータ10との大きな違いは、第1の円柱部材がスライダにではなくガイド板に設けられているという点である。以下では第1実施形態と異なる点について特に説明し、第1実施形態と同様の点については説明を省略する。
ガイド板31は、直線状に延びる細長い板状の部材である。ガイド板31の前方上部には後述するスライダ32の抜けを防ぐための凸部が設けられ、ガイド板31の後端には脚が設けられている。第1の円柱部材34はその凸部付近に取り付けられている。マイクロニードル・シート20を第1の円柱部材34へ案内するために、ガイド板31には、その後端に形成された孔33と、その孔33から第1の円柱部材34にかけて延びる案内路とが形成されている。
スライダ32は、ガイド板31の長手方向に沿って移動できるように当該ガイド板31に取り付けられている。スライダ32の上面には、スライド操作の容易性を考慮して凹凸が形成されている。第2の円柱部材35はスライダ32の下部に(アプリケータ30の使用時に皮膚面に当たるほどの位置に)設けられている。スライダ32の内部には、第1の円柱部材34により折り曲げられたマイクロニードル・シート20を第2の円柱部材35経由で皮膚面へと導く案内路が形成されている。
第1の円柱部材34および第2の円柱部材35の取付態様(回転しないように固定されるか、あるいは回転可能なように取り付けられるか)は、第1実施形態における第1の円柱部材14および第2の円柱部材15の場合と同様に任意に定めてよい。また、二つの円柱部材34,35の直径も、第1実施形態と同様に決めてよい。
次に、図20,21を用いて、アプリケータ30及びマイクロニードル・シート20の使用方法を説明する。なお、図20,21では、マイクロニードル・シート20がアプリケータ30にどのようにセットされるかをわかり易く示すために、マイクロニードル・シート20を実線で表し、アプリケータ30を破線で表している。
まず、ユーザはマイクロニードル・シート20をアプリケータ30にセットする。具体的には、ユーザはマイクロニードル・シート20を孔33からガイド板31内の案内路に通し、続いて、そのマイクロニードル・シート20を第1の円柱部材34で折り返してスライダ32内の案内路に通し、最終的に第2の円柱部材35の下側に出す。続いて、ユーザは図20に示すようにスライダ32をガイド板31の前端付近に位置させ、案内路から出したマイクロニードル・シート20の一端をアプリケータ30の前方に向けつつ、アプリケータ30を皮膚Sの上に置く。
このような一連の操作によりマイクロニードル・シート20は図20に示すようにセットされる。すなわち、ガイド板31内を通ったマイクロニードル・シート20は第1の円柱部材34へと案内され、続いて二つの円柱部材34,35によりS字状に曲げられた上で皮膚Sに至る。なお、第1実施形態と同様に、マイクロニードル・シート20の前端は皮膚に固定される。
活性成分を適用とする場所にアプリケータ30およびマイクロニードル・シート20を置いた後、ユーザはスライダ32をガイド板31の後端に向かって(図21の矢印Aで示される方向に)動かす。このスライド操作により、マイクロニードル・シート20が、曲げ部に相当する第2の円柱部材35へと案内され、第2の円柱部材35に到達したマイクロニードル・シート20の部分がその箇所で曲げられる(反転する)。すると、図21に示すように、曲がった部分に位置するマイクロニードル22がシートの主面21から立ち上がり、立ち上がったマイクロニードル22が皮膚Sに刺さる。
マイクロニードル・シート20は、第2の円柱部材35に至る前に第1の円柱部材34を経由する。第1の円柱部材34はマイクロニードル・シート20の進行方向を反転させることで当該シート20を第2の円柱部材35へと案内するので、第1の円柱部材34はマイクロニードル・シート20の進行に対していくらかの抵抗を付加しているといえる。すなわち、第1の円柱部材34は抵抗部に相当する。マイクロニードル・シート20に掛かる力は第1実施形態と同様である(図11参照)。
本実施形態では、スライド操作により第2の円柱部材35が第1の円柱部材34から離れていく点が第1実施形態と異なるものの、マイクロニードル22の穿刺の態様は第1実施形態と同じである。本実施形態においても、ユーザはマイクロニードル・シート20の適用面積を調整して所望の量の活性成分を投与することができる。
このような第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、マイクロニードル・シート20の進行に対して第1の円柱部材34で抵抗が掛かるのでマイクロニードル・シート20の進行を一定にすることができる。そのため、その後に第2の円柱部材35により立ち上げられるマイクロニードル22を一定の力で皮膚に刺すことができ、穿刺の再現性が高まる。また、二つの円柱部材34,35を採用することでアプリケータ30の構造を単純化したり、マイクロニードル・シート20の変形時の損傷を抑えたりすることができる。さらに、第1の円柱部材34でマイクロニードル・シート20の進行方向を反転させることで、必要な抵抗をそのマイクロニードル・シート20に付加することができる。
本実施形態では第1の円柱部材34がガイド板31に設けられているので、第2の円柱部材35はスライド操作により第1の円柱部材34から遠ざかり、スライドに必要な力が二つの円柱部材34,35間の距離に応じて変化する。また、二つの円柱部材34,35間のマイクロニードル・シート20が無駄になってしまう。一方、第1実施形態では二つの円柱部材14,15間の距離が変化しないので、ユーザはスライダ12を一定の力で動かすことができ、また、マイクロニードル・シート20の無駄を抑えることができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
上記各実施形態では抵抗部として円柱部材を用いたが、抵抗部の態様はこれに限定されない。例えば、マイクロニードル・シートが通過可能な程度に当該シートを挟む構造を抵抗部として採用してもよい。このような構造の一例として、マイクロニードル・シートの通過時に当該シートの上下の面が接触するスリット状の貫通孔が考えられる。あるいは、マイクロニードル・シートが予め巻き付けられ、そのマイクロニードル・シートを曲げ部に向かって送り出す筒状の構造物(例えばリール(reel))を抵抗部として採用してもよい。
上記各実施形態では曲げ部として円柱部材を用いたが、マイクロニードル・シートを曲げてマイクロニードルを立ち上げることができるのであれば、曲げ部の構成は何でもよい。
1台のアプリケータが複数の抵抗部を備えてもよい。個々の抵抗部の構造は同一または類似であってもよいし、互いに異なってもよい。例えば、すべての抵抗部が円柱部材、スリット状の貫通部、および筒状の構造物のいずれか一種類であってもよい。あるいは、アプリケータは、円柱部材と、スリット状の貫通孔と、筒状の構造物とのうちの少なくとも2種類を抵抗部として備えてもよい。
抵抗部がマイクロニードル・シートの進行に対して付加する抵抗が強すぎるとアプリケータを作動させることができない(例えば、上記実施形態におけるスライダ12,32を動かすことができない)。一方、その付加抵抗が弱すぎると、マイクロニードル・シートを弛ませることなく抵抗部と曲げ部との間で該マイクロニードル・シートを張ることができず、マイクロニードルが十分に立ち上がらない。したがって、アプリケータの抵抗部は、マイクロニードル・シートを弛み無く張るとともに、ユーザがアプリケータを簡単に作動させることができるように、設計または製造される。