以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係るアプリケータ10は、生体内に任意の活性成分(例えば薬剤)を投与するためのシート部材を皮膚に適用する際に用いる補助器具である。アプリケータ10と共に用いる、皮膚に適用するシート部材は限定されず、例えば貼付剤やマイクロニードル・シートなどが挙げられる。本実施形態では、マイクロニードル・シートを皮膚に適用するためにアプリケータ10を用いる例を説明する。以下に説明する例において、使用者はアプリケータ10を用いることで、手で直接マイクロニードル・シートを曲げる場合よりも適切な力でマイクロニードルを皮膚に穿刺することができる。
まず、アプリケータ10と共に用いるマイクロニードル・シート20について説明する。図1に示すように、マイクロニードル・シート20は帯状であり、シートの主面21に略沿って該シートに形成された複数のマイクロニードル22を有する。これらのマイクロニードル22はシートの長手方向及び幅方向のそれぞれにおいて整列するように並んでおり、すべてのマイクロニードル22の先端は例外なくシートの一端(図1では左方向)を向いている。
マイクロニードル・シート20及びマイクロニードル22の材質は限定されない。例えば、ステンレス鋼、ポリエチレンテレフタラート(PET)、他の金属、他の樹脂、生分解性素材、セラミック、又は生体吸収性素材のいずれかによりマイクロニードル・シート20及びマイクロニードル22を作製してもよい。あるいは、これらの材質を組み合わせてマイクロニードル・シート20及びマイクロニードル22を作製してもよい。
マイクロニードル22はエッチングにより形成することができる。シートが金属であれば薬液でそのシートを打ち抜くことでマイクロニードル22を形成することができるし、シートが非金属であればレーザーでそのシートを打ち抜くことでマイクロニードル22を形成することができる。これらの場合には、マイクロニードル22の周囲に空隙が生ずる。もちろん、エッチング以外の手法によりマイクロニードル22を形成してもよい。図1に示すように本実施形態ではマイクロニードル22は三角形状であるが、マイクロニードルの形状は何ら限定されない。いずれにしても、マイクロニードル22を予めシートの主面21から立ち上げておく必要がないので、マイクロニードル・シート20を容易かつ安価に製造することができる。
マイクロニードル・シート20の寸法も限定されない。具体的には、厚みの下限は5μmでも20μmでもよく、厚みの上限は1000μmでも300μmでもよい。長さの下限は0.1cmでも1cmでもよく、長さの上限は50cmでも20cmでもよい。幅の下限は0.1cmでも1cmでもよく、幅の上限は60cmでも30cmでもよい。マイクロニードル・シート20の長さ及び幅の下限は活性成分の投与量を考慮して定められ、長さ及び幅の上限は生体の大きさを考慮して定められる。
マイクロニードル22に関するパラメータも限定されない。具体的には、針の高さの下限は10μmでも100μmでもよく、その高さの上限は10000μmでも1000μmでもよい。針の密度の下限は0.05本/cm2でも1本/cm2でもよく、その密度の上限は10000本/cm2でも5000本/cm2でもよい。密度の下限は、1mgの活性成分を投与し得る針の本数及び面積から換算した値であり、密度の上限は、針の形状を考慮した上での限界値である。
皮膚に適用する活性成分の準備方法として、マイクロニードル・シート20自体に予め活性成分をコーティングしておく手法と、マイクロニードル22を皮膚に穿刺する前にその皮膚上に活性成分を塗布しておく手法と、マイクロニードル22を皮膚に穿刺した後にその皮膚上に活性成分を塗布する手法とが考えられる。マイクロニードル・シート20に予め活性成分をコーティングするのであれば、所定の粘度のコーティング液をなるべく均一な厚みでシート全体に塗布するのが好ましいが、マイクロニードル22が主面21に沿っているのでそのような塗布を容易に為し得る。コーティングはスクリーン印刷の原理を用いて実施してもよいし、他の方法により実施してもよい。生分解性のシートを用いる場合には、そのシート自体に活性成分を内包させることも可能である。
本実施形態では、マイクロニードル・シート20をアプリケータ10にセットするためにライナー30を用いる。図2に示すように、このライナー30はマイクロニードル・シート20よりも長さおよび幅が大きい帯状のシートである。ライナー30の材質の例としてアクリル等のプラスチックが挙げられるが、その材質は何ら限定されるものでなく、例えば金属や他の種類の樹脂などを用いてライナー30を作製してもよい。マイクロニードル・シート20は、テープや粘着剤などによりこのライナー30の一端側に固定される。
ライナー30の材質の例としてアクリル等のプラスチックが挙げられるが、その材質は何ら限定されるものでなく、例えば金属や他の種類の樹脂などを用いてライナー30を作製してもよい。関連する図ではライナー30を透明または半透明な物として示しているが、ライナー30は不透明であってもよい。
次に、図3〜7を用いてアプリケータ10の構造を説明する。アプリケータ10は矩形のシート状の器具である。本実施形態では、図4(平面図)で示される側をアプリケータ10の上側と定義し、図5(底面図)で示される側をアプリケータ10の下側と定義する。アプリケータ10の正面および背面からの外観は同じであり、両側面からの外観も同じである。したがって、図6はアプリケータ10の正面図でもあり背面図でもある。また、図7はアプリケータ10の右側面図でもあり左側面図でもある。
アプリケータ10の本体11には、長手方向と直交する方向(以下では「幅方向」という)に沿って二つのスリット状の貫通孔が形成されている。一方の貫通孔は、ライナー30およびマイクロニードル・シート20を本体11の上側から下側に案内するための孔であり、以下ではこれを第1の貫通孔12という。他方の貫通孔は、マイクロニードル・シート20から剥離されたライナー30を本体11の下側から上側に案内するための孔であり、以下ではこれを第2の貫通孔13という。二つの貫通孔12,13間の距離は、皮膚へのマイクロニードル・シート20の適用範囲を考慮して決めてもよいし、他の基準を考慮して決めてもよい。
本体11の底面には、粘着剤(粘着層)14が二つの貫通孔12,13を囲むように矩形状に設けられている。この粘着剤14はアプリケータ10を皮膚上に固定する役割を持つ。なお、粘着剤14の範囲は限定されない。例えば、粘着剤14は本体11の長手方向に沿った両縁部に沿ってのみ設けられてもよいし、本体11の幅方向に沿った両縁部に沿ってのみ設けられてもよい。
本体11の材質の例としてアクリル等のプラスチックが挙げられるが、その材質は何ら限定されるものでなく、例えば金属や他の種類の樹脂などを用いて本体11を作製してもよい。関連する図では本体11を透明または半透明な物として示しているが、本体11は不透明であってもよい。
アプリケータ10の寸法は、マイクロニードル・シート20またはライナー30の寸法に合わせて決めてもよい。例えば、アプリケータ10の幅はライナー30の幅に応じて決めてもよい。また、アプリケータ10の全長(長手方向に沿った長さ)はマイクロニードル・シート20の長さ、または皮膚へのマイクロニードル・シート20の適用範囲を考慮して決めてもよい。
次に、図8〜11を用いて、アプリケータ10及びマイクロニードル・シート20の使用方法を説明する。まず、ユーザはマイクロニードル・シート20が取り付けられているライナー30をアプリケータ10にセットする。具体的には、ユーザは、マイクロニードル・シート20が固定されていない方のライナー30の一端を第1の貫通孔12に上から下に通し、さらにその一端を第2の貫通孔13に下から上に通す。この準備により、ライナー30は図8に示すように、二つの貫通孔12,13間においてアプリケータ10の底面側に位置することとなる。
続いて、ユーザはマイクロニードル・シート20の一端を第1の貫通孔12からアプリケータ10の底面側に引き込んで折り曲げることでその一端を粘着剤14の下方に位置させ、この状態を維持したままアプリケータ10を活性成分の適用部位に貼る。この一連の動作により、アプリケータ10は図9に示すように皮膚S上に固定される。
続いて、ユーザは図10の矢印で示される方向にライナー30の一端を引く。この操作により、マイクロニードル・シート20がそのライナー30に案内されて第1の貫通孔12を通り、皮膚Sとアプリケータ10の底面との間の空間に入る。
マイクロニードル・シート20はこの空間内で180度曲げられる。すると、図10に示すように、曲がった部分に位置するマイクロニードル22が主面21から立ち上がり、立ち上がったマイクロニードル22が皮膚Sに刺さる。ユーザがライナー30の全体をアプリケータ10から引き出すまで当該ライナー30を引くと、図11に示すようにマイクロニードル・シート20の全体が皮膚に適用される。
ユーザはこの後にアプリケータ10を皮膚から剥がすことができる。ユーザはマイクロニードル・シート20を直ぐに剥がしてもよいし、所定の時間にわたってそのマイクロニードル・シート20を皮膚Sに適用し続けてもよい。本実施形態ではマイクロニードル・シート20をテープまたは粘着剤によりライナー30に固定したが、そのテープまたは粘着剤は、そのマイクロニードル・シート20を皮膚上に固定しておくためにも用いることができる。
アプリケータ10と皮膚Sとの間において一度に立ち上がるマイクロニードル22は、マイクロニードル・シート20の幅方向に沿った一列分である。立ち上がったマイクロニードル22と主面21とが成す角度は当然ながら0度より大きく且つ180度未満である。
図12に示すように、主面21から立ち上がったマイクロニードル22が皮膚に刺さる際の穿刺角度θ(マイクロニードル22と皮膚Sとが成す角度)も0度より大きく且つ180度未満である。穿刺角度の下限は20度、34度、または40度でもよく、その角度の上限は160度、140度、または100度でもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、マイクロニードル・シート20が皮膚とアプリケータ10の底面との間に案内され、当該シート20の作用面(マイクロニードル22が立ち上がった方の面)が弧の外側を向くように折り曲げられた上で皮膚に適用される。
上述したように、このアプリケータ10は貼付剤の適用にも用いることができる。まず、ユーザは粘着剤層を露出させた貼付剤をライナー30に貼り付ける。あるいは、貼付剤は予めライナー30に貼り付けられていてもよい。このとき、ライナー30は貼付剤の剥離シートの役割を果たす。続いて、ユーザはそのライナー30を上記と同様に二つの貫通孔12,13に通した上でアプリケータ10を皮膚上に固定し、ライナー30を引く。この操作により、貼付剤が皮膚と本体11の底面との間の空間に案内され、粘着剤層(貼付剤の作用面)が弧の外側を向くように折り曲って皮膚に貼り付く。
このように、アプリケータ10は複数種類のシート部材を適切に皮膚に適用することができる。
本実施形態ではアプリケータ10がシート部材付のライナーを皮膚面へと案内する第1の貫通孔12と、シート部材から剥離されたライナーをアプリケータ10の外へと案内する第2の貫通孔13とを備える。このような二つの貫通孔を設けることで、ライナーをシート部材から剥がすことや、皺を発生させることなくシート部材を皮膚に適用することなどが簡単に行える。
本実施形態ではアプリケータ10の本体11がシート状なので、高さ方向の寸法が非常に小さい。したがって、アプリケータ10は携帯性に優れる。また、シート部材と共にある程度長い時間皮膚上に固定した場合でも、アプリケータ10が被適用者の動きを妨げたり被適用者に違和感を与えたりすることがほとんどないと言える。
本実施形態ではアプリケータ10の底面に粘着剤14が設けられているので、ユーザはテープなどの別の部材を用いることなくアプリケータ10を皮膚上に固定することができる。
本実施形態において、アプリケータ10は、マイクロニードル・シート20に衝撃を加えるのではなく、マイクロニードル22を立ち上げて皮膚に押し込むことで各ニードル22を皮膚に穿刺するので、被投与者に恐怖感を与えずに活性成分を投与することができる。
マイクロニードル・シート20に関していうと、マイクロニードル・シート20が曲げられるまではマイクロニードル22がシートの主面21に略沿って延びた状態にある。したがって、アプリケータ10を用いない限り、マイクロニードル22が他の物(例えばユーザの皮膚や衣服など)に当たったり引っ掛かったりする心配がない。その結果、マイクロニードル22の取扱時の安全性を確保することができる。例えば、ユーザはマイクロニードル・シート20の保管や搬送、使用直前の準備などを安全に行うことができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るアプリケータ40の構造を説明する。以下では第1実施形態と異なる点について特に説明し、第1実施形態と同様の点については説明を省略する。
図13に示すように、アプリケータ40は、矩形の本体部41と、本体部41の長手方向における一端において当該本体部41と接続しているライナー部42とを備えている。したがって、アプリケータ40は、第1実施形態におけるアプリケータ10およびライナー30を一体化させたものであるとも言える。
本体部41の構造は第1実施形態におけるアプリケータ10と同様である。本体部41にはその幅方向に沿って形成された二つのスリット状の貫通孔が形成されている。ライナー部42に近い方の貫通孔は、ライナー部42およびマイクロニードル・シート20を本体部41の上側から下側に案内するための第1の貫通孔43である。他方の貫通孔は、マイクロニードル・シート20から剥離されたライナー部42を本体部41の下側から上側に案内するための第2の貫通孔44である。本体部41の底面には、粘着剤(粘着層)45が二つの貫通孔43,44を囲むように矩形状に設けられている。
ライナー部42の構造は第1実施形態におけるライナー30と同様である。ライナー部42は、後述する一連の操作によってマイクロニードル・シート20を皮膚に適用するための十分な長さを有する。ライナー部42の幅は貫通孔43,44の幅よりも小さい。ライナー部42の上面の中央付近にはマイクロニードル・シート20が第1実施形態と同様にテープまたは粘着剤により固定される。
次に、図14を用いて、アプリケータ40及びマイクロニードル・シート20の使用方法を説明する。まず、ユーザはマイクロニードル・シート20が取り付けられたライナー部42の一端を第1の貫通孔43に上から下に通し、さらにその一端を第2の貫通孔44に下から上に通す。この準備により、図14に示すように、ライナー部42の一部が二つの貫通孔43,44間においてアプリケータ40の底面側に位置することとなる。
以降のアプリケータ40の操作方法は第1実施形態と同様である。すなわち、ユーザはマイクロニードル・シート20の一端を第1の貫通孔43からアプリケータ40の底面側に引き込んで折り曲げることでその一端を粘着剤45の下方に位置させ、この状態を維持したままアプリケータ40を活性成分の適用部位に貼る(図9と同様)。続いて、ユーザはライナー部42の一端を引く。この操作により、皮膚とアプリケータ40の底面との間の空間内に案内されたマイクロニードル・シート20が180度曲げられて、曲がった部分に位置するマイクロニードル22がシートの主面21から立ち上がり、立ち上がったマイクロニードル22が皮膚Sに刺さる(図10と同様)。ユーザはマイクロニードル・シート20の全体が皮膚に適用されるまでライナー部42を引く(図11と同様)。
このような第2実施形態においても第1実施形態と同様の仕組みにより、マイクロニードル・シート20や貼付剤などのシート部材を適切に皮膚に適用することができる。貼付剤を適用するための操作は次の通りである。まず、ユーザは粘着剤層を露出させた貼付剤をライナー部42に貼り付ける。あるいは、貼付剤は予めライナー部42に貼り付けられていてもよい。このとき、ライナー部42は貼付剤の剥離シートの役割を果たす。続いて、ユーザはそのライナー部42を上記と同様に二つの貫通孔43,44に通した上でアプリケータ40を皮膚上に固定し、ライナー部42の一端を引く。この操作により、貼付剤が皮膚と本体部41の底面との間の空間に案内され、粘着剤層(貼付剤の作用面)がその空間内で弧の外側を向くように折り曲って皮膚に貼り付く。
また、二つの貫通孔43,44を設けることで得られる効果、アプリケータ40をシート状にすることで得られる効果、および粘着剤45を設けることで得られる効果も、第1実施形態と同様である。被投与者に恐怖感を与えずに活性成分を投与することができることも第1実施形態と同様である。
本実施形態では本体部41とライナー部42とが一体化している。したがって、ユーザがライナー部42を引いてマイクロニードル・シート20を皮膚に適用した後も更にライナー部42を引き続ければ、ライナー部42と接続している端部の方から本体部41が皮膚から剥がれ始める。したがって、ユーザはライナー部42を引くという一つの操作だけで、マイクロニードル・シート20の皮膚への適用と、アプリケータ40の皮膚からの剥離とを済ませることができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
図15に示す、貫通孔を設けないアプリケータ50も本発明の範囲内である。アプリケータ50では、本体51に貫通孔を設けない代わりに、長手方向に沿った両縁部の全体に沿って粘着剤52を設ける。2箇所に設けられた粘着剤52の間隔はライナー30の幅よりも広い。このアプリケータ50では、長手方向における本体51の両縁部が第1および第2の案内部として機能する。
ユーザは、ライナー30に固定されたマイクロニードル・シート20(第1実施形態と同様)とこのアプリケータ50とを用いてマイクロニードルを皮膚に穿刺することができる。
図16に示すように、ユーザはマイクロニードル・シート20が固定されていないライナー30の部分が2箇所の粘着剤52の間に位置するように、ライナー30をアプリケータ50の底面側に配置する。続いて、ユーザはマイクロニードル・シート20の一端を折り曲げ、その状態を維持したままアプリケータ50を活性成分の適用部位に貼る(図9と同様)。
以降の手順は第1実施形態と同様である。すなわち、ユーザはライナー30の一端を引くことで、マイクロニードル・シート20を皮膚と本体51の底面との間の空間に案内する。この操作により、マイクロニードル・シート20がその空間内に引き込まれ、その空間内でマイクロニードル・シート20が180度曲げられて、曲がった部分に位置するマイクロニードル22がシートの主面21から立ち上がり、立ち上がったマイクロニードル22が皮膚Sに刺さる(図10と同様)。ユーザはマイクロニードル・シート20の全体が皮膚に適用されるまでライナー30を引く(図11と同様)。
当然ながら、任意のシート部材を適用するためにアプリケータ50を用いることもできる。貼付剤を適用するための操作は次の通りである。まず、ユーザは粘着剤層を露出させた貼付剤をライナー30に貼り付ける。あるいは、貼付剤は予めライナー30に貼り付けられていてもよい。このとき、ライナー30は貼付剤の剥離シートの役割を果たす。続いて、ユーザはそのライナー30を上記と同様に2箇所の粘着剤52の間に位置するようにライナー30をアプリケータ50の底面側に配置する。続いて、ユーザは貼付剤の一端を折り曲げ、その状態を維持したままアプリケータ50を活性成分の適用部位に貼る(図9と同様)。そして、ユーザはライナー30の一端を引く。この操作により、貼付剤が皮膚と本体51の底面との間の空間に案内され、粘着剤層(貼付剤の作用面)が弧の外側を向くように折り曲って皮膚に貼り付く。
アプリケータの本体はシート状でなくてもよく、アプリケータは任意の高さを有してもよい。
本体の底面に粘着層を設けることも必須ではない。粘着剤を設けなくても、ユーザはアプリケータを手などで押さえたり、アプリケータをテープで皮膚に貼ったりした上で、上記実施形態と同様の手順でマイクロニードル・シートを皮膚に適用することができる。
アプリケータの本体の底面に少なくとも一つの突起が設けられてもよい。この突起は皮膚に向かって延び、したがって、突起の部分における空間の高さ(皮膚から突起の頂部までの距離)は、突起が設けられていない部分における空間の高さ(皮膚から底面までの距離)より小さくなる。一または複数の突起は、第1の案内部と第2の案内部との間に設けられる。各突起は、第1の案内部から第2の案内部へと延びる(すなわち、シート部材の進行方向に沿って延びる)レールのような形状を呈してもよい。あるいは、各突起は第1および第2の案内部と平行に延びる(すなわち、シート部材の進行方向と直交する方向に延びる)レールのような形状を呈してもよい。あるいは、山型または柱状の突起が底面に2次元状に形成されてもよい。なお、「2次元状」とは、第1の案内部から第2の案内部へと延びる方向に沿って複数の突起が形成されると共に、第1および第2の案内部と平行な方向に沿って複数の突起が形成される態様を意味する。
個々の突起の高さが異なってもよい。例えば、第1の案内部から第2の案内部へと延びるレール状の突起を複数設ける場合には、外側に位置する突起よりも内側に位置する突起の方が高くてもよい。第1および第2の案内部と平行に延びるレール状の突起を複数設ける場合には、各突起において、該突起の両端よりも中央部の方が高くてもよい。山型または柱状の複数の突起を2次元状に設ける場合には、外側に位置する突起よりも内側に位置する突起の方が高くてもよい。このように、複数の突起を設ける場合には、シート部材の進行方向と直交する方向に沿って見た場合に、本体の外側に位置する部分よりも本体の内側に位置する部分の方が高くなるように個々の突起を配置または形成してもよい。
あるいは、第1の案内部と第2の案内部との間における底面の領域の全体を隆起させることで、突起を設ける場合と同様に、空間の高さを小さくしてもよい。
このように、突起を形成するか、または、第1の案内部と第2の案内部との間における底面の領域の全体を隆起させることは、底面の少なくとも一部を皮膚に向かって隆起させる例である。このように底面の少なくとも一部を皮膚に向かって隆起させることで、空間内でシート部材が皮膚に向かって押さえつけられるので、シート部材をより確実に皮膚に適用することができる。例えば、個々のマイクロニードルをより確実に皮膚に穿刺することができる。
上記アプリケータ10,50と共に用いるシート部材の提供方法は上記実施形態に限定されない。シート部材の変形例を図17,18を用いて説明する。この変形例では、マイクロニードル・シート20をアプリケータ10または50にセットするために、第1実施形態と同様のライナー30に加えて補助ライナー60を用いる。補助ライナー60は、マイクロニードル・シート20よりも幅が大きい帯状のシートであり、円柱部材61を備える。なお、補助ライナー60の少なくとも一部において、幅がマイクロニードル・シート20の幅と同じか、またはその幅より小さくてもよい。円柱部材61は、補助ライナー60の長手方向における一端に、補助ライナー60の幅方向(長手方向と直交する方向)に沿って延びるように取り付けられる。このとき、円柱部材61は回転可能に取り付けられてもよい。円柱部材61と補助ライナー60の一端との間には、マイクロニードル・シート20を通すためのスリット状の孔62が形成される。補助ライナー60の材質の例としてアクリル等のプラスチックが挙げられるが、その材質は何ら限定されるものでなく、例えば金属や他の種類の樹脂などを用いて補助ライナー60を作製してもよい。また、円柱部材61の材質は金属でもよいし、アクリル等のプラスチックでもよいし、他の種類の樹脂でもよい。
マイクロニードル・シート20は、第1実施形態と同様に、テープや粘着剤などによりライナー30の一端側に固定される。一方、補助ライナー60は、円柱部材61がマイクロニードル・シート20と接続するようにライナー30の他端側に取り付けられる。この際に、補助ライナー60の面とライナー30の面とがテープや粘着剤などにより互いに固定されてもよいし、それらの面どうしが固定されなくてもよい。ライナー30の中央付近に位置するマイクロニードル・シート20の一端を孔62に通して、さらに円柱部材61を包囲するように180度折り曲げることで、マイクロニードル・シート20は補助ライナー60に対して設定される。
ライナー30および補助ライナー60に取り付けられたマイクロニードル・シート20(すなわち、図17に示すマイクロニードル・シート20)をアプリケータ10と共に使用する方法を説明する。まず、ユーザは、補助ライナー60を第1の貫通孔12に上から下に通し、さらにその補助ライナー60を第2の貫通孔13に下から上に通す。この準備により、補助ライナー60は図18に示すように、二つの貫通孔12,13間においてアプリケータ10の底面側に位置し、ライナー30の一部も底面側に位置する。このとき、ユーザは、円柱部材61付近で折り曲げられたマイクロニードル・シート20の一端を例えば粘着剤14の下方に位置させ、この状態を維持したままアプリケータ10を活性成分の適用部位に貼る。この一連の動作により、アプリケータ10は皮膚S上に固定される。
続いて、ユーザは図18の矢印で示される方向に補助ライナー60を引く。この操作により円柱部材61が第2の貫通孔13に向かって動き、この円柱部材61の動きにより、ライナー30およびマイクロニードル・シート20が第1の貫通孔12を通って皮膚Sと本体11の底面との間の空間に入る。マイクロニードル・シート20はこの空間内において円柱部材61により180度曲げられる。すると、曲がった部分に位置するマイクロニードル22が主面21から立ち上がり、立ち上がったマイクロニードル22が皮膚Sに刺さる。マイクロニードル・シート20と引き離されたライナー30は第2の貫通孔13から空間の外へと案内される。ユーザが補助ライナー60を引き続けると、マイクロニードル・シート20の全体が皮膚に適用される。ユーザはこの後にアプリケータ10を皮膚から剥がすことができる。ユーザはマイクロニードル・シート20を直ぐに剥がしてもよいし、所定の時間にわたってそのマイクロニードル・シート20を皮膚Sに適用し続けてもよい。
当然ながら、円柱部材61を有する補助ライナー60を用いる態様は、任意のシート部材を適用する際にも通用する。貼付剤を適用するための操作は次の通りである。まず、ユーザは粘着剤層を露出させた貼付剤をライナー30に貼り付ける。あるいは、貼付剤は予めライナー30に貼り付けられていてもよい。このとき、ライナー30は貼付剤の剥離シートの役割を果たす。続いて、ユーザは補助ライナー60を上記と同様に二つの貫通孔12,13に通す。続いて、ユーザは円柱部材61付近で折り曲げられた貼付剤の一端を例えば粘着剤14の下方に位置させ、この状態を維持したままアプリケータ10を活性成分の適用部位に貼る。そして、ユーザは補助ライナー60を引く。この操作により、貼付剤が皮膚と本体11の底面との間の空間に案内され、円柱部材61により、粘着剤層(貼付剤の作用面)が弧の外側を向くように折り曲って、皮膚に貼り付く。
図17に示すマイクロニードル・シート20をアプリケータ50と共に用いることもできる。この場合も、ユーザは補助ライナー60を引っ張ることでマイクロニードル・シート20を皮膚に適用することができる。
また、図17に示す補助ライナー60を第2実施形態におけるアプリケータ40に適用することもできる。この変形例であるアプリケータ40Aを図19に示す。アプリケータ40Aでは、補助ライナー60はライナー部42の一端側(本体部41と接続していない方の側)に取り付けられる。この際に、補助ライナー60の面とライナー部42の面とがテープや粘着剤などにより互いに固定されてもよいし、それらの面どうしが固定されなくてもよい。補助ライナー60に対してマイクロニードル・シート20を取り付ける方法は、図17に示す変形例と同様である。
アプリケータ40Aを用いる場合には、ユーザは補助ライナー60を第1の貫通孔43に上から下に通し、さらにその一端を第2の貫通孔44に下から上に通す。この準備により、補助ライナー60は二つの貫通孔43,44間においてアプリケータ40Aの底面側に位置し、ライナー部42の一部も底面側に位置する。このとき、ユーザは、円柱部材61付近で折り曲げられたマイクロニードル・シート20の一端を例えば粘着剤45の下方に位置させ、この状態を維持したままアプリケータ40Aを活性成分の適用部位に貼る。この一連の動作により、アプリケータ40Aは皮膚S上に固定される。
続いて、ユーザは補助ライナー60を引く。この操作により円柱部材61が第2の貫通孔44に向かって動き、その円柱部材61の動きにより、ライナー部42およびマイクロニードル・シート20が第1の貫通孔43を通って皮膚Sと本体部41の底面との間の空間に入る。マイクロニードル・シート20はこの空間内において円柱部材61により180度曲げられる。すると、曲がった部分に位置するマイクロニードル22が主面21から立ち上がり、立ち上がったマイクロニードル22が皮膚Sに刺さる。マイクロニードル・シート20と引き離されたライナー部42は第2の貫通孔44から空間の外へと案内される。ユーザが補助ライナー60を引き続けると、マイクロニードル・シート20の全体が皮膚に適用される。
当然ながら、アプリケータ40Aを用いて任意のシート部材を適用することもできる。貼付剤を適用するための操作は次の通りである。まず、ユーザは粘着剤層を露出させた貼付剤をライナー部42に貼り付ける。あるいは、貼付剤は予めライナー部42に貼り付けられていてもよい。このとき、ライナー部42は貼付剤の剥離シートの役割を果たす。続いて、ユーザは補助ライナー60を上記と同様に二つの貫通孔43,44に通す。続いて、ユーザは円柱部材61付近で折り曲げられた貼付剤の一端を例えば粘着剤45の下方に位置させ、この状態を維持したままアプリケータ40Aを活性成分の適用部位に貼る。そして、ユーザは補助ライナー60を引く。この操作により、貼付剤が皮膚と本体部41の底面との間の空間に案内され、円柱部材61により、粘着剤層(貼付剤の作用面)が弧の外側を向くように折り曲って、皮膚に貼り付く。
このように円柱部材を備える補助ライナーをシート部材に適用することで、皮膚とアプリケータの本体との間の空間においてシート部材をより容易にかつより確実に折り曲げることができる。
本発明に係るアプリケータは硬くても柔らかくてもよい。上記のアプリケータ40,40Aのように使用時に一部が曲がるアプリケータでは、アプリケータの少なくとも一部(例えばライナー部)は、曲げることができる程度の柔軟性を有する。