以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
なお、本明細書において、「〜」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いることとする。
本発明のポリカーボネートの製造方法は、構造の一部にフルオレン構造を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルと、重合触媒とを反応器に連続的に供給し、重縮合してポリカーボネートを製造する方法であって、下記条件(A)から(D)のすべてを満たすことを特徴とするポリカーボネートの製造方法である。
(A)少なくとも2器の反応器を用いる。
(B)1器目の第1反応器で反応した反応物を2器目の第2反応器に入れる。
(C)第1反応器が還流冷却器を具備する。
(D)第1反応器における還流比が留出量に対して0.01以上5以下である。
<ポリカーボネートの製造工程>
本発明の方法においては、少なくとも2器の反応器を用いる2段階以上の多段工程で、上記ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、通常、重合触媒の存在下で反応させる(溶融重縮合)ことによりポリカーボネートが製造される。
本明細書において「反応器」とは、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを混合した後の工程で、後述する反応温度まで加熱する加熱装置を有し、意図的なエステル交換反応を起こすための装置をいい、原料を事前に混合したり溶解させたりすることを主な目的とする溶解槽、または反応液を移送するための配管は、たとえそこでわずかながら反応が進行していたとしても、前記の反応器に含まれない。
本発明において、炭酸ジエステルより生成するモノヒドロキシ化合物が、理論量の10%以上留出し、一番上流側に設置されている反応器を第1反応器と定義する。なお、複数器の反応器を用いる場合において、第1反応器以降、2器目の反応器を第2反応器、3器目の反応器を第3反応器、……と称する。また、第2反応器は、第1反応器の下流側に設置された反応器であり、第1反応器の反応物が次に入る反応器である。同様に第3反応器は、第2反応器の反応物がその次に入る反応器である。なお、複数の反応器の反応物が同一の反応器に入る場合においては、該複数の反応器のそれぞれに対して上流側に反応器が存在しない場合、該複数の反応器をいずれも第1反応器とみなし、第1反応器の反応物がその次に入る反応器が第2反応器である。
重合工程は前段反応と後段反応の2段階に分けられる。前段反応は好ましくは130〜230℃、より好ましくは150〜220℃の温度で、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.5〜3時間実施され、副生するモノヒドロキシ化合物を留出させ、オリゴマーを生成させる。
後段反応は、反応系の圧力を前段反応から徐々に下げ、反応温度も徐々に上げていき、同時に発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力を好ましくは2kPa以下とし、好ましくは200〜260℃、より好ましくは210〜250℃の温度範囲のもとで重縮合反応を行い、ポリカーボネートを生成させる。
なお、本明細書における圧力とは、真空を基準に表した、いわゆる絶対圧力を指す。
前記重合工程で用いる反応器は、上記のとおり、少なくとも2器が連結されたものであり、前記第1反応器の出口から出た反応物は前記第2反応器に入るものが用いられる。連結する反応器の数は特に限定されないが、2〜7器が好ましく、3〜5器がより好ましく、3〜4器が更に好ましい。
反応器の種類も特に限定されないが、前段反応の反応器は竪型攪拌反応器が1器以上であることが好ましく、後段反応の反応器は横型攪拌反応器が1器以上であることが好ましい。それぞれの反応器の条件は、反応器毎に段階的に温度を上昇させ、段階的に圧力を減少させた設定とすることが好ましい。
本発明で使用する反応器は公知のいかなるものでもよい。例えば、熱油またはスチームを加熱媒体とした、ジャケット形式の反応器または内部にコイル状の伝熱管を有する反応器等が挙げられる。
前記の反応器と次の反応器との連結は直接行ってもよいし、必要に応じて、予熱器等を介して行ってもよい。直接に接続する配管、又は予熱器等を介して接続する配管は、二重管式等で反応液を冷却固化させることなく移送ができ、反応液側に気相がなく、かつデッドスペースを生じないものが好ましい。
前記のそれぞれの反応器及び前記配管を加熱する加熱媒体の上限温度は、300℃であることが好ましく、270℃であることがより好ましく、260℃であることが更に好ましい。熱媒温度が高すぎると、反応器壁面での熱劣化が促進され、異種構造若しくは分解生成物の増加、または色調の悪化等の不具合を招くことがある。下限温度は、上記反応温度が維持可能な温度であれば特に制限されない。
反応器では副生するモノヒドロキシ化合物の蒸発により潜熱が奪われるため、内温を所定値に合わせるために熱媒温度を内温よりも高くせざるを得ないが、配管では潜熱による内温低下は発生しないため、極力熱劣化を抑制するために、配管の熱媒温度は反応器の熱媒温度よりも低くすることが好ましい。
本発明にかかる製造方法の反応方式は、連続式である。一般的にバッチ式の反応では、反応の進行に対応させて、一つの反応器の中で温度を徐々に上昇させ、また圧力も徐々に低下させていくことで反応率を向上させるため、還流比を制御することは不可能である。連続式の重合プロセスを用いて、各反応器の液量、温度、圧力を一定の状態に保つことで、還流比を所望の範囲で制御することが可能となる。
反応器は、複数器の竪型攪拌反応器、及びこれに続く少なくとも1器の横型攪拌反応器が用いられる。これらの反応器は直列に設置され、連続的に処理が行われる。重縮合工程後、ポリカーボネート中の未反応原料若しくは反応副生物であるモノヒドロキシ化合物を脱揮除去する工程、熱安定剤または離型剤等を添加する工程、または得られたポリカーボネートを所定の粒径のペレットに形成する工程等を適宜追加してもよい。
前記の反応器で発生するフェノール等のモノヒドロキシ化合物は、タンクに収集しておき、資源有効活用の観点から、必要に応じ、精製を行って回収した後、DPCまたはビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
本発明の製造方法において、副生モノヒドロキシ化合物の精製方法に特に制限はないが、蒸留法を用いることが好ましい。この場合の蒸留は、単蒸留であっても、連続蒸留であってもよく、特に限定されないが、精製効率と生産性の観点から理論段を設けた複数の蒸留塔を用いた連続蒸留が好ましい。
2基の蒸留塔を用いる場合は、第1蒸留塔では、減圧下にて還流をかけながら蒸留を行い、軽沸成分を一部モノヒドロキシ化合物とともに塔頂より留去し、缶出液を第2蒸留塔へ供給する。第2蒸留塔では、第1蒸留塔よりも圧力を低下させた条件にて蒸留を行い、塔頂より精製したフェノール等のモノヒドロキシ化合物を回収する。
本発明の製造方法によれば、留出液中の未反応モノマーの量が低減されるため、回収されるモノヒドロキシ化合物に含まれる不純物成分が少なくなる。精製前のモノヒドロキシ化合物の純度が高いほど精製も容易となるため、蒸留塔の理論段を減らせることにより蒸留塔の建設コストが削減でき、また、蒸留で生成する廃棄物の量も低減するため、廃棄物の処理コストも削減できる。
次に、本発明にかかる製造方法の各工程について説明する。本発明の方法は、原料モノマーとして、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどのフルオレン部位を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、ジフェニルカーボネート(DPC)等の炭酸ジエステルとをそれぞれ溶融状態にて、原料混合溶融液を調製し(原料調製工程)、これらの化合物を、重合触媒の存在下、溶融状態で複数の反応器を用いて多段階で重縮合反応をさせる(重縮合工程)ことによって行われる。
前記反応ではモノヒドロキシ化合物が副生するため、該モノヒドロキシ化合物を反応系から除去することにより、反応を進行させ、ポリカーボネートを生成させる。炭酸ジエステルとしてDPCを用いた場合、該モノヒドロキシ化合物はフェノールとなり、減圧下で該フェノールを除去して反応を進行させる。
<原料調製工程>
ポリカーボネートの原料として使用するフルオレン部位を有するジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物、及び炭酸ジエステルは、窒素またはアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の攪拌槽型の装置を用いて、原料混合溶融液として調製するか、又は、反応槽にこれらを独立に投下する。
溶融混合の温度は、例えば、フルオレン部位を有するジヒドロキシ化合物として9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンを用いると共に、後記するような脂肪族のジヒドロキシ化合物を用い、炭酸ジエステルとしてDPCを用いる場合は、好ましくは80℃〜180℃、より好ましくは90℃〜130℃の範囲から選択される。
また、前記原料混合溶融液に酸化防止剤を添加してもよい。通常知られるヒンダードフェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤を添加することで、原料調製工程での原料の保存安定性が向上するとともに、重合中での着色を抑制することにより、得られるポリカーボネートの色調を改善することができる。
使用する重合触媒は、予め水溶液として準備することが好ましい。触媒水溶液の濃度は特に限定されず、触媒の水に対する溶解度に応じて任意の濃度に調製する。また、触媒の溶解性が得られれば、水に代えて、アセトン、アルコール、トルエンまたはフェノール等の他の溶媒を選択することもできる。
なお、重合触媒の具体例については、後記する。該重合触媒の溶解に使用する水の性状は、含有される不純物の種類ならびに濃度が一定であれば特に限定されないが、蒸留水または脱イオン水等が好ましく用いられる。
<前段反応工程>
先ず、前段反応工程において、上記ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合物を、溶融下に、好ましくは竪型反応器に供給して、好ましくは温度130℃〜250℃で重縮合反応を行い、オリゴマーを得る。
前記前段反応は、好ましくは1器以上、より好ましくは2器〜6器の反応器で連続的に行われ、副生するモノヒドロキシ化合物の40%から95%を留出させることが好ましい。反応器の内温は、130℃〜250℃であることが好ましく、反応器の内圧は好ましくは80kPa〜1kPaである。
複数の反応器による連続反応の場合、各反応器の内温を、上記範囲内で順次上げ、各反応器の内圧を、上記範囲内で順次下げることが好ましい。平均滞留時間は、0.1時間〜10時間であることが好ましく、より好ましくは0.5時間〜5時間、更に好ましくは0.5時間〜3時間である。
本発明の方法において、前段反応工程における第1反応器の反応条件は得られるポリカーボネートの品質だけでなく、原料原単位、回収した留出液からのフェノールの精製コスト、またはプラント全体の熱収支など、幅広い観点から慎重に決定することが好ましい。
未反応原料の留出の抑制と、減圧による反応の促進を両立させるために、本発明の製造方法においては、第1反応器に還流冷却器を設ける。しかし、還流量を増やしすぎる、すなわち還流比を大きくしすぎると、第1反応器から蒸発するモノヒドロキシ化合物の量が増加する。モノヒドロキシ化合物は蒸発する際に多くの潜熱を奪うため、反応槽に供給する熱量を増加させなければならなくなり、そうすると反応器壁面において反応液が高温にさらされることになって熱劣化を招くことがある。さらに、還流比が大きくなると熱分解物が滞留するために、ポリカーボネートの品質の悪化を招く場合がある。
また、還流量が少なすぎる、すなわち還流比を小さくしすぎると、モノヒドロキシ化合物と共に未反応の前記原料モノマー等も系外へ留出する場合があるために、所望の構造単位比を有するポリカーボネートとならない可能性がある。また、原料の原単位も悪化する。
また、第1反応器は通常、副生するモノヒドロキシ化合物の発生量が最も多いために、第1反応器に供給する熱量が増えすぎると、しばしばプラント全体の熱収支バランスにも影響を及ぼし、他の工程に供給する熱量が不足する事態を招くことがある。
上記の様々な観点から、第1反応器における還流比は留出量に対して0.01以上5以下とする。好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上であり、一方、好ましくは4以下であり、更に色相を良好なものとするため、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下、特に好ましくは0.5以下、最も好ましいのは0.3以下である。第1反応器における還流比は反応器の圧力と還流冷却器でのモノヒドロキシ化合物の蒸気の凝縮温度をそれぞれ調整することにより、制御可能である。
なお、本発明において、還流比は留出量を1[L/hr]とした場合の還流量[L/hr]と定義される。
第1反応器の内温は、特定の温度範囲内で、かつ変動が少ないことが好ましい。具体的には、第1反応器の内温は、130℃以上250℃以下の範囲内であることが好ましく、160℃以上230℃以下の範囲内であることがより好ましい。更に、該内温の変動は±10℃以内であることが好ましく、±5℃以内であることがより好ましく、±3℃以内であることが更に好ましい。
第1反応器の内温が高すぎると熱劣化が促進され、異種構造または着色成分の生成が増加し、ポリカーボネートの品質の悪化を招く可能性があり、又、該第1反応器からフェノール等のモノヒドロキシ化合物と共にジヒドロキシ化合物の揮散が促進され、留出液中の不純物が多くなったり、仕込み原料組成と相違する組成を有するポリカーボネートが製造される場合がある。
一方、第1反応器の内温が低すぎると反応速度が低下するために、色調が悪化したり、生産性が低下する場合がある。更に、該内温の変動が大きいと、色相および熱安定性が良好で所望の組成のポリカーボネートを安定して製造することが困難となる可能性がある。
さらに、溶融重縮合反応は平衡反応であるため、副生するモノヒドロキシ化合物を反応系外に除去することで反応が促進されるため、減圧状態にすることが好ましい。第1反応器の内圧は5kPa以上、80kPa以下の範囲内であることが好ましく、7kPa以上、40kPa以下の範囲内であることがより好ましく、10kPa以上、30kPa以下の範囲内であることが更に好ましい。
第1反応器の内圧が高すぎるとモノヒドロキシ化合物が留出しないために反応性が低下し、生産性が低下する場合がある。第1反応器の内圧が低すぎるとモノヒドロキシ化合物と共に未反応のジヒドロキシ化合物または炭酸ジエステルなどの原料が留出するため、原料モル比がずれて所望の組成のポリカーボネートが得られなかったり、末端基のバランスが崩れて所望の分子量まで到達しないなど、反応の制御が難しくなり、また、原料原単位が悪化してしまう場合がある。
更に、第1反応器の内圧の変動は5kPa以内であることが好ましく、4kPa以内であることがより好ましい。圧力の変動が大きいと還流比の制御は困難となるため、圧力は極力一定の状態に保つことが好ましい。また、該内圧の変動が大きいと、色相が良好で所望の組成のポリカーボネートを安定して製造することが困難となる可能性がある。
第1反応器を加熱する熱媒温度(加熱媒体の温度)は270℃以下であることが好ましく、第1反応器の内温との温度差が5℃以上80℃以下であることが好ましい。該熱媒温度は250℃以下がより好ましく、230℃以下が更に好ましい。熱媒温度が高すぎると、第1反応器壁面、とりわけて気相部壁面に反応液が付着した場合、熱劣化し、着色の原因となる可能性がある。
更に、第1反応器を加熱する熱媒温度と第1反応器の内温との温度差は5℃以上70℃以下がより好ましく、10℃以上60℃以下が更に好ましい。該温度差が小さすぎると、次の二つの状況が考えられ、いずれも色調悪化を招く可能性がある。
一つ目は第1反応器において反応が十分に進行していない可能性があり、モノヒドロキシ化合物の生成量が少ないために、蒸発潜熱による熱ロスが小さくなっているという場合が考えられる。二つ目は第1反応器に投入されるまでに原料の温度を高く上げすぎている可能性がある。いずれの場合も余計な熱負荷を反応液に与えていることになり、色調の悪化を招く可能性がある。該温度差が大きすぎると、過度の加熱により着色する可能性がある。
反応器の大きさは特に制限されないが、前記第1反応器の内容積は、20L以上であることが好ましく、30L以上であることがより好ましい。2器目以降の反応器の大きさは反応スケールまたは選択する反応条件により最適な大きさは異なるが、内容積が10L以上であることが好ましい。
反応器が小さすぎると、反応器全体の容積に対して、反応器同士を連結する配管内の容積の割合が大きくなり、配管内で余計な滞留時間がかかるようになるため、ポリカーボネートの品質悪化の要因となりうる。一方、個々の反応器の大きさの上限は特に限定はないが、反応効率または現実性の観点から20m3である。
前記第1反応器については、エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が理論量に対して30%以上、90%以下であることが好ましい。留出量が少なすぎると生産性の観点から好ましくなく、留出量が多すぎると過度の熱履歴を与えすぎており、ポリカーボネートの品質が悪化する。
前記第1反応器でのモノヒドロキシ化合物の留出量は40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。一方、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることが更に好ましい。前記第1反応器でのモノヒドロキシ化合物の留出量は、後記する反応温度若しくは圧力、滞留時間または触媒量によって制御される。
なお、副生するモノヒドロキシ化合物の理論量とは、モノヒドロキシ化合物の分子量に、反応に用いた炭酸ジエステルのモル数の2倍を乗じた値(重量)である。
また、前記第1反応器出口の反応液中のモノヒドロキシ化合物の含有量が20wt%以下であることがポリカーボネートの品質の観点から好ましく、より好ましくは15wt%である。モノヒドロキシ化合物が長時間反応系に滞留すると着色など好まざる反応が生じる可能性がある。第1反応器出口の反応液中のモノヒドロキシ化合物の含有量は、後記する圧力または還流比の調整で可能となる。具体的には、圧力を低下させたり、還流比を小さくすることにより低減可能である。
更に本発明における第2反応器には第1反応器と同様に還流冷却器が具備されていることが好ましい。第2反応器に還流冷却器があることにより、得られるポリカーボネートの組成を安定化させることができ、また、回収されたフェノール等のモノヒドロキシ化合物中の不純物量を低減できる可能性がある。
前記フルオレン構造を有するジヒドロキシ化合物は分子量が大きく、反応系外に留出することはほとんどないが、より沸点の低いジヒドロキシ化合物を共重合成分に用いる場合、そのジヒドロキシ化合物が未反応のまま留出してしまい、得られるポリカーボネートの共重合組成が仕込みからずれる原因となり得る。特にISBのようなジヒドロキシ化合物は沸点が低いために、反応に用いる場合には共重合組成の制御が難しくなる。
本発明の方法は、反応に用いるジヒドロキシ化合物のうち、特定ジヒドロキシ化合物以外に含まれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物の5kPaにおける沸点が250℃以下である場合に、仕込みどおりの組成のポリカーボネートが得られるため、特に効果的である。炭素数が13以下のジヒドロキシ化合物が多くの場合、5kPaにおける沸点が250℃以下となる。
<後段反応工程>
次に、前段の重縮合工程で得られたオリゴマーを横型攪拌反応器に供給して、好ましくは温度200℃〜260℃で重縮合反応を行い、ポリカーボネートを得る。該反応は好ましくは1器以上、より好ましくは1〜3器の横型攪拌反応器で連続的に行われる。
反応温度は、より好ましくは210〜260℃、さらに好ましくは220〜250℃である。圧力は、5kPa〜10Paが好ましく、より好ましくは2kPa〜20Paである。平均滞留時間は、0.1〜10時間が好ましく、より好ましくは0.5〜5時間、さらに好ましくは0.5〜2時間である。
多槽方式とする場合、各反応器においては、重縮合反応の進行とともに副生するフェノールをより効果的に系外に除去するために、上記の反応条件内で、段階的により高温、より高真空に設定する。尚、得られるポリカーボネートの色調等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温、短滞留時間の設定が好ましい。
<反応器>
少なくとも2器の反応器により重縮合工程を多槽方式で行う本発明の製造方法では、竪型攪拌反応器を含む複数器の反応器を設けて、ポリカーボネートの平均分子量(還元粘度)を増大させる。
反応器としては、例えば、竪型攪拌反応器および横型撹拌反応器が挙げられる。具体例としては、攪拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、およびワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等が挙げられる。上記の通り、前段反応工程では竪型攪拌反応器を用いることが好ましく、後段反応工程では横型攪拌反応器を用いることが好ましい。
前記の竪型攪拌反応器とは、垂直回転軸と、該垂直回転軸に取り付けられた攪拌翼とを具備した反応器である。攪拌翼の形式としては、例えば、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼[神鋼パンテック(株)製]、サンメラー翼[三菱重工業(株)製]、マックスブレンド翼[住友重機械工業(株)製]、ヘリカルリボン翼およびねじり格子翼[(株)日立製作所製]等が挙げられる。
また、前記の横型攪拌反応器とは、1本又は複数本設けられた攪拌翼の回転軸が横型(水平方向)で、該回転軸にほぼ直角に取り付けられた相互に不連続な攪拌翼を有するものである。攪拌翼の形式としては、例えば、円板型、パドル型等の一軸タイプの攪拌翼、並びにHVR、SCR、N−SCR[三菱重工業(株)製]、バイボラック[住友重機械工業(株)製]、メガネ翼および格子翼[(株)日立製作所製]等の二軸タイプの攪拌翼が挙げられる。その他、例えば、車輪型、櫂型、棒型および窓枠型などの攪拌翼が挙げられる。
このような攪拌翼が、回転軸当たり少なくとも2段以上設置されており、該攪拌翼により反応液をかき上げ、又は押し広げて反応液の表面更新を行う。また、横型反応器の水平回転軸の長さをLとし、攪拌翼の回転直径をDとしたときにL/Dが1〜15であることが好ましく、より好ましくは2〜14である。
<製造装置の一例>
次に、図1を用いて、本実施の形態が適用される本発明の方法の一例を具体的に説明する。以下に説明する製造装置、原料または触媒は本発明の実施態様の一例であり、本発明は以下に説明する例に限定されるものではない。
図1は、本発明の方法で用いる製造装置の一例を示す図である。図1に示す製造装置において、本発明のポリカーボネートは、原料の前記ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルの溶融液を調製する原料調製工程と、これらの原料を溶融状態で複数の反応器を用いて重縮合反応させる重縮合工程を経て製造される。重縮合工程で生成した留出液は凝縮器12a、12b、12c、12dにて液化して留出液回収タンク14aに回収される。重縮合工程後、重合反応液中の未反応原料若しくは反応副生物を脱揮除去する工程、熱安定剤、離型剤若しくは色剤等を添加する工程、またはポリカーボネートを所定の粒径のペレットに形成する工程を経て、ポリカーボネートのペレットが製造される。
尚、以下は、原料のジヒドロキシ化合物として、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、「BHEPF」と略記する。)、イソソルビド(以下、「ISB」と略記する場合がある。)またはポリエチレングリコール(以下、「PEG」と略記する。)等をそれぞれ用い、原料の炭酸ジエステルとしてDPCを用い、また、触媒として酢酸マグネシウムを用いた場合を例示して説明する。
まず、原料調製工程において、窒素ガス雰囲気下、所定の温度で調製されたDPCの溶融液が、定量供給ポンプを用いて原料供給口1aから原料混合槽2aに所定量供給される。次に窒素ガス雰囲気下で計量されたBHEPFを原料供給口1bから固体状態で投入し、DPCに混合して溶解させる。
続いて、窒素ガス雰囲気下、所定の温度でそれぞれ調製されたISBの溶融液とPEGの溶融液が、定量供給ポンプを用いて、それぞれ原料供給口1c、1dから原料混合槽2aに所定量供給される。そして、原料混合槽2a内でこれらは混合され、原料混合溶融液が得られる。
次に、得られた原料混合溶融液は、原料供給ポンプ4a、原料フィルター5aを経由して第1竪型攪拌反応器6aに連続的に供給される。また、重合触媒として、酢酸マグネシウム水溶液が、原料混合溶融液の移送配管途中の触媒供給口1eから連続的に供給される。
図1の製造装置の重縮合工程においては、第1竪型攪拌反応器6a、第2竪型攪拌反応器6b、第3竪型攪拌反応器6c、第4横型攪拌反応器6dが直列に設けられる。各反応器では液面レベルを一定に保ち、重縮合反応が行われ、第1竪型攪拌反応器6aの槽底より排出された重合反応液は第2竪型攪拌反応器6bへ、続いて、第3竪型攪拌反応器6cへ、第4横型攪拌反応器6dへと順次連続供給され、重縮合反応が進行する。
各反応器における反応条件は、重縮合反応の進行とともに高温、高真空、低攪拌速度となるようにそれぞれ設定することが好ましい。図1の装置を用いた場合、第1竪型攪拌反応器6aが本発明における第1反応器に相当する。また、第1から第3までが前記の前段反応工程に相当し、第4が前記の後段反応工程に相当する。
第1竪型攪拌反応器6a、第2竪型攪拌反応器6b及び第3竪型攪拌反応器6cには、マックスブレンド翼7a、7b、7cがそれぞれ設けられる。また、第4横型攪拌反応器6dには、2軸メガネ型攪拌翼7dが設けられる。第3竪型攪拌反応槽6cと第4横型攪拌反応器6dの後には移送する反応液が高粘度になるため、ギアポンプ4b、4cが設けられる。
第1竪型攪拌反応器6aと第2竪型攪拌反応器6bは、供給熱量が特に大きくなることがあるため、熱媒温度が過剰に高温にならないように、それぞれ内部熱交換器8a、8bが設けられる。
なお、これらの4器の反応器には、それぞれ、重縮合反応により生成する副生物等を排出するための留出管11a、11b、11c、11dが取り付けられる。第1竪型攪拌反応器6aと第2竪型攪拌反応器6bについては留出液の一部を反応系に戻すために、還流冷却器9a、9bと還流管10a、10bがそれぞれ設けられる。
反応器の還流比は反応器の圧力と、還流冷却器の熱媒温度とをそれぞれ適宜調整することにより制御可能であり、第1竪型攪拌反応器6aに設けた還流冷却機9aの還流比は、0.01以上5以下とする。
留出管11a、11b、11c、11dは、それぞれ凝縮器12a、12b、12c、12dに接続し、また、各反応器は、減圧装置13a、13b、13c、13dにより、所定の減圧状態に保たれる。
尚、本実施の形態においては、各反応器にそれぞれ取り付けられた凝縮器12a、12b、12c、12dから、モノヒドロキシ化合物(ここではフェノールとなる)等の副生物が連続的に液化回収される。
また、第3竪型攪拌反応器6cと第4横型竪型攪拌反応器6dにそれぞれ取り付けられた凝縮器12c、12dの下流側にはコールドトラップ(図示せず)が設けられ、副生物が連続的に固化回収される。
<連続製造装置における溶融重縮合の開始>
本実施の形態では、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応に基づく重縮合は、以下の手順に従い開始される。先ず、図1に示す前記のような連続製造装置において、直列に接続された4器の反応器(第1竪型攪拌反応器6a、第2竪型攪拌反応器6b、第3竪型攪拌反応器6c、第4横型攪拌反応器6d)を、予め、所定の内温と圧力とにそれぞれ設定する。ここで、各反応器の内温、熱媒温度と圧力とは、特に限定されないが、以下のように設定することが好ましい。
(第1竪型攪拌反応器6a)
内温:130℃〜230℃、圧力:40kPa〜10kPa、熱媒温度130℃〜260℃、還流比0.01〜5
(第2竪型攪拌反応器6b)
内温:150℃〜240℃、圧力:40kPa〜8kPa、熱媒温度150℃〜260℃、還流比0.01〜5
(第3竪型攪拌反応器6c)
内温:180℃〜250℃、圧力:30kPa〜1kPa、熱媒温度180℃〜260℃
(第4横型攪拌反応器6d)
内温:210℃〜260℃、圧力:5kPa〜10Pa、熱媒温度210〜260℃
次に、別途、原料混合槽2aにて窒素ガス雰囲気下、前記ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、所定のモル比で混合し、原料混合溶融液を得る。
続いて、前述した4器の反応器の内温と圧力が、それぞれ前記した設定値の±5%の範囲内に達した後に、別途、原料混合槽2aで調製した原料混合溶融液を、第1竪型攪拌反応器6a内に連続供給する。
また、原料混合溶融液の供給開始と同時に、第1竪型攪拌反応器6a内に触媒供給口1dから重合触媒を連続供給し、エステル交換反応を開始する。なお、図1の形態では原料混合溶融液と重合触媒とを混合した上で第1竪型攪拌反応器6aに投下しているが、それに限らず別個に投下してもよい。
エステル交換反応が行われる第1竪型攪拌反応器6aでは、重合反応液の液面レベルは、所定の平均滞留時間になるように一定に保たれる。第1竪型攪拌反応器6a内の液面レベルを一定に保つ方法としては、通常、液面計等で液レベルを検知しながら槽底部のポリマー排出ラインに設けたバルブ(図示せず)の開度を制御する方法が挙げられる。
ここで、第1竪型攪拌反応器6aにおける平均滞留時間は、特に限定されないが、30分〜180分であることが好ましい。
続いて、重合反応液は、第1竪型攪拌反応器6aの槽底から排出され、第2竪型攪拌反応器6bへ、続いて第2竪型攪拌反応器6bの槽底から排出され、第3竪型攪拌反応器6cへ逐次連続供給される。この前段反応工程において、副生するフェノールの理論量に対して50%から95%が留出され、オリゴマーが生成する。
次に、上記前段反応工程で得られたオリゴマーをギアポンプ4bにより移送し、横型攪拌反応器6dに供給して、後述するような後段反応を行なうのに適した温度・圧力条件下で、副生するフェノールおよび一部未反応モノマーを、留出管11dを介して系外に除去してポリカーボネートを生成させる。
なお、本明細書中、上記「反応液の表面更新」という語は、液表面の反応液が液表面下部の反応液と入れ替わることを意味する。
なお、後段反応工程を行う前記横型攪拌反応器6dは、水平軸と、該水平軸にほぼ直角に取り付けられた相互に不連続な攪拌翼とを有する装置であり、押出機と異なりスクリュー部分を有していない。本発明の方法においては、このような横型攪拌反応器を少なくとも1器用いることが好ましい。
上記後段反応工程における反応温度は、210〜260℃であることが好ましく、より好ましくは220〜250℃の範囲であり、反応圧力は、5kPa〜10Paであることが好ましく、より好ましくは2kPa〜20Pa、さらに好ましくは1kPa〜30Paである。
本発明の方法において、横型攪拌反応器6dを、装置構造上、2軸ベント式押出機と比較してホールドアップが大きいものを用いることにより、反応液の滞留時間を適切に設定でき、かつ剪断発熱を抑制されることによって温度を下げることができ、より色調の改良された、機械的性質の優れたポリカーボネートを得ることが可能となる。
本発明における反応装置においては、ポリカーボネートの色調の観点から、反応装置を構成する機器または配管などの構成部品の原料モノマーまたは重合液に接する部分(以下「接液部」と称する)の表面材料は、接液部の全表面積の少なくとも90%以上を占める割合で、ニッケル含有量10重量%以上のステンレス、ガラス、ニッケル、タンタル、クロムおよびテフロン(登録商標)のうち1種または2種以上から構成されていることが好ましい。
本発明においては、接液部の表面材料が上記物質から構成されていればよく、上記物質と他の物質とからなる張り合わせ材料、または前記物質を他の物質にメッキした材料などを表面材料として用いることができる。
各反応器(6a〜6d)において溶融重縮合反応と同時に副生するフェノールは、各反応器に取り付けられた留出管(11a、11b、11c、11d)により系外に留去される。
このように、本実施の形態では、図1に示す連続製造装置において、4器の反応器の内温と圧力が所定の数値に達した後に、原料混合溶融液と触媒とが予熱器を介して連続供給され、エステル交換反応に基づく溶融重縮合が開始される。
このため、各反応器(6a〜6d)における重合反応液の平均滞留時間は、溶融重縮合の開始直後から定常運転時と同等となる。その結果、重合反応液は必要以上の熱履歴を受けることがなく、得られるポリカーボネート中に生じるゲルまたはヤケ等の異物が低減する。また色調も良好となる。
本発明のポリカーボネートは、上述の通り重縮合反応後、通常、冷却固化させ、回転式カッター(16b)等でペレット化される。ペレット化の方法は限定されるものではないが、例えば、最終重合反応器(ここでは横型攪拌反応器6dにあたる。)から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押し出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押し出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
図1に示す例では、横型攪拌反応器6dから溶融状態で抜き出したポリカーボネートを、ポンプ4cを介して押出機15aに供給し、ポンプ4dを介してポリマーフィルター15bへ送り、ダイスヘッド15cからストランドの形態で押し出して、水槽16aで冷却した後、回転式カッター16bで切断してペレット化する。ペレットは気力輸送により、製品ホッパー16dに移送され、計量器16eにより計量され、紙袋またはフレキシブルコンテナーバッグに包装される。
その際、押出機15a中で、残存モノマーの減圧脱揮、または通常知られている、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤若しくは相溶化剤等を添加、混練することも出来る。
前記押出機15a中の溶融混練温度は、ポリカーボネートのガラス転移温度または分子量に依存するが、150℃〜300℃が好ましく、より好ましくは200℃〜270℃、更に好ましくは230℃〜260℃である。
溶融混練温度を150℃以上とすることにより、ポリカーボネートに流動性を持たせ、押出機への負荷を低減し、生産性を向上させることができるために好ましい。また、溶融混練温度を300℃以下とすることにより、ポリカーボネートの熱劣化を抑え、分子量の低下による機械的強度の低下および着色、並びにガスの発生を防ぐことができるために好ましい。
さらに、炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネートまたはジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートを用い、本発明のポリカーボネートを製造する場合は、フェノールまたは置換フェノールが副生し、最終的に得られるポリカーボネート中に残存することは避けられず、それらフェノールまたは置換フェノールは成型時の臭気の原因となる場合がある。
ポリカーボネート中には、連続式ではない通常のバッチ反応後は1000重量ppm以上の副生フェノール等の芳香環を有するモノヒドロキシ化合物が含まれている。臭気低減の観点からは、脱揮性能に優れた横型反応器または真空ベント付の押出機を用いて、最終的に得られるポリカーボネートペレットに含まれるモノヒドロキシ化合物の含有量を好ましくは700重量ppm以下、更に好ましくは500重量ppm以下、特には300重量ppm以下にすることが好ましい。ただし、工業的に完全に除去することは困難であり、下限は通常1重量ppmである。
なお、これらモノヒドロキシ化合物は、用いる原料により、置換基を有していてもよく、例えば、炭素数が5以下であるアルキル基などを有していてもよい。
本発明のポリカーボネートを製造する際には、異物の混入を防止するため、反応器の後、最終製品を得るまでの間にフィルターを設置することが好ましい。フィルターの設置位置は押出機15aの下流側が好ましく、図1では押出機15aの後、ポンプを介して送り込まれるポリマーフィルター15bに対応する。前記フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、99%除去の濾過精度として100μm以下が好ましい。特に、フィルム用途等で微少な異物の混入を嫌う場合は、40μm以下がより好ましく、さらには20μm以下が好ましい。
本発明にかかるポリカーボネートでも、通常のポリカーボネートと同様に、前記のフィルターを通した後、ダイスヘッド15cから押し出してストランドとするのが一般的である。ストランドの取り出しは、押出後の異物混入を防止するために、好ましくはJIS B9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが好ましい。
押し出されたポリカーボネートを冷却し、チップ化する際は、空冷または水冷等の冷却方法を使用することが好ましい。図1では水槽16a中の水を通している。
空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが好ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが好ましい。
用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10μm〜0.45μmであることが好ましい。
<原料と触媒>
以下、本発明のポリカーボネートに使用可能な原料、触媒について説明する。
(ジヒドロキシ化合物)
本発明のポリカーボネートの製造に用いられるジヒドロキシ化合物は、少なくともフルオレン部位を有するジヒドロキシ化合物である特定ジヒドロキシ化合物を含むものである。この特定ジヒドロキシ化合物の好ましいものとしては、下記式(1)で表される化合物[以下、ジヒドロキシ化合物(1)ともいう]が挙げられる。
前記一般式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜炭素数20のシクロアルキル基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜炭素数20のアリール基を表し、それぞれのベンゼン環に4つある置換基のそれぞれとして、同一の又は異なる基が配されている。Xは置換若しくは無置換の炭素数2〜炭素数10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6〜炭素数20のシクロアルキレン基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜炭素数20のアリーレン基を表す。m及びnはそれぞれ独立に0〜5の整数である。
R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子又は無置換若しくはエステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンが置換した炭素数1〜6のアルキル基であるのが好ましく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であるのがより好ましい。
Xは無置換若しくはエステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンが置換した炭素数2〜炭素数10のアルキレン基、無置換若しくはエステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンが置換した炭素数6〜炭素数20のシクロアルキレン基、または、無置換若しくはエステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンが置換した炭素数6〜炭素数20のアリーレン基が好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基であるのがより好ましい。又、m及びnはそれぞれ独立に0〜2の整数であるのが好ましく、中でも0又は1が好ましい。
このような化合物としては、具体的には、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(すなわち、「BHEPF」である。)、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
また、前記式(1)以外の特定ジヒドロキシ化合物としては、例えば、9,9−ビス(2−ヒドロキシエチル)フルオレンおよび9,9−ビス(3−ヒドロキシプロピル)フルオレンなどが挙げられる。
これらの特定ジヒドロキシ化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて複数種を混合して用いてもよい。これらの中でも、製造コスト、重合反応性、およびポリカーボネートの成形加工性または色相などの観点から、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが特に好ましい。
上記式(1)に記載の特定ジヒドロキシ化合物には、製造時に触媒として用いられる硫黄化合物が混入する可能性があり、ポリカーボネート製造時に重合触媒を失活させるなど、悪影響を及ぼす場合がある。よって硫黄元素量が前記特定ジヒドロキシ化合物1molに対して100μmol以下であることが好ましく、70μmol以下がより好ましく、50μmol以下が更に好ましい。
前記ジヒドロキシ化合物(1)は沸点が非常に高いため、蒸留による精製は困難であり、一般的には水による洗浄、再結晶、イオン交換樹脂または活性炭などを使用して精製を行う。含有する全硫黄量はイオンクロマトグラフィーで測定することができる。
本発明の方法においては、前記のフルオレン部位を有する特定のジヒドロキシ化合物とともに、下記式(2)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物を併用することができる。
但し、前記式(2)で表される部位が−CH2−OHの一部を構成する部位である場合と、前記(1)式で表される化合物である場合を除く。
構造の一部に前記式(2)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物としては、具体的には、例えば、オキシアルキレングリコール類、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物および環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
前記オキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等が挙げられる。
前記主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニルおよびビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。
前記環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物、および下記式(5)または下記式(6)で表されるスピログリコール等が挙げられる。
これらの中でも、入手のし易さ、ハンドリング、重合時の反応性および得られるポリカーボネートの色相の観点から、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましく、上記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物、上記式(5)で表されるスピログリコールまたは上記式(6)で表されるジオキサングリコール等の環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物がより好ましく、上記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物等の、糖由来の環状エーテル構造を有する環を2つ有するジヒドロキシ化合物が更に好ましく、上記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物が特に好ましい。
なお、前記の「環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物」の「環状エーテル構造」とは、環状構造中にエーテル基を有し、環状鎖を構成する炭素が脂肪族炭素である構造からなるものを意味する。
このうち、前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にある、イソソルビド(ISB)、イソマンニドおよびイソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のポリカーボネートは、上記の特定ジヒドロキシ化合物、または前記式(2)の構造を有するジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよい。
その他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、直鎖分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物および芳香族ビスフェノール類等が挙げられる。
前記の直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールおよび1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、炭素数3〜6で両末端にヒドロキシ基を有する直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物が好ましい。
前記の直鎖分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールおよびヘキシレングリコール等が挙げられる。
前記の脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノールおよびリモネンなどのテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
特に1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはトリシクロデカンジメタノールが好ましく、より好ましいのは、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサン構造を有するジヒドロキシ化合物であり、最も好ましいのは1,4−シクロヘキサンジメタノールとトリシクロデカンジメタノールである。
前記の芳香族ビスフェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル等が挙げられる。
これら、その他のジヒドロキシ化合物は得られるポリカーボネートの要求性能に応じて、単独で前記特定ジヒドロキシ化合物と混合して用いてもよく、2種以上を組み合わせて前記特定ジヒドロキシ化合物と混合して用いてもよい。中でも、ポリカーボネートの光学特性の観点からは、分子構造内に芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物、即ち脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物または脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物が好ましく、これらを併用してもよい。
耐熱性、溶融加工性または光学物性のバランスの観点から、フルオレン構造を有するジヒドロキシ化合物は重合に用いられる全ジヒドロキシ化合物の中で、20〜70mol%であることが好ましく、さらには25〜65mol%であることがさらに好ましい。
前記式(2)で表される構造部位を有するジヒドロキシ化合物は0〜70mol%であることが好ましく、10〜60mol%であることがさらに好ましい。その他のジヒドロキシ化合物は0〜70mol%が好ましく、0〜50mol%であることがさらに好ましい。
本発明で用いられる特定ジヒドロキシ化合物、前記式(2)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物、及び前記その他のジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤または熱安定剤等の安定剤を含んでいてもよい。特に前記式(2)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物は特に酸性下で変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。
塩基性安定剤としては、例えば、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、3−アミノ−1−プロパノール、エチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾールおよびアミノキノリン等のアミン系化合物、並びにジ−(tert−ブチル)アミンおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物が挙げられる。塩基性安定剤の中でも安定化の効果からはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、イミダゾールまたはヒンダードアミン系安定剤が好ましい。
これら塩基性安定剤の本発明にかかるジヒドロキシ化合物中の含有量に特に制限はないが、上記の安定剤を含むジヒドロキシ化合物の水溶液のpHが7以上となるように安定剤を添加することが好ましい。その中でも上記式(2)に記載の部位を有するジヒドロキシ化合物は分解しやすいため、安定剤を含むことが特に好ましい。
安定剤が少なすぎるとジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎるとジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、本発明のジヒドロキシ化合物に対して、1重量ppm〜10000重量ppmであることが好ましく、より好ましくは10重量ppm〜1000重量ppmである。
これら塩基性安定剤を含有したジヒドロキシ化合物をポリカーボネートの製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度または品質の制御が困難になるだけでなく、樹脂色相の悪化を招くため、ポリカーボネートの製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂または蒸留等で除去することが好ましい。
前記式(2)または(3)で表されるジヒドロキシ化合物は、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管または製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが好ましい。
また、潮解による酸素の吸収の促進を防ぐために、水分の混入も避けることが好ましい。また、前記式(3)で表されるイソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生する。例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネートを製造すると、得られるポリカーボネートの着色を招いたり、物性を著しく劣化させたりするだけでなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないこともあり、好ましくない。
(炭酸ジエステル)
本発明のポリカーボネートは、上述した特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。該炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(7)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記式(7)において、A1およびA2は、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、A1とA2とは同一であっても異なっていてもよい。A1およびA2の好ましいものは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、より好ましいのは無置換の芳香族炭化水素基である。
前記式(7)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(DPC)、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が挙げられる。好ましくはジフェニルカーボネートまたは置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネートの色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
(エステル交換反応触媒)
本発明のポリカーボネートは、上述のように特定ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記式(7)で表される炭酸ジエステルをエステル交換反応させてポリカーボネートを製造する。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、エステル交換反応触媒存在下でエステル交換反応により重縮合を行うとよい。
本発明のポリカーボネートの製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に触媒、重合触媒と言うことがある)は、反応速度およびポリカーボネートの色調に非常に大きな影響を与え得る。
用いられる触媒としては、製造されたポリカーボネートの透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度を満足させ得るものであれば限定されないが、例えば、長周期型周期表における1族または2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、並びに塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物およびアミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が使用される。
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物またはアミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩または酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩および2セシウム塩等が挙げられる。中でもリチウム化合物が好ましい。
2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物またはバリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネートの色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩およびストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンおよび四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリンおよびグアニジン等が挙げられる。
前記重合触媒の量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため、所望の分子量のポリカーボネートを得ようとすると、重合温度を高くせざるを得なくなり、得られたポリカーボネートの色相が悪化したり、また、未反応の原料が重合途中で揮発してジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率が崩れ、所望の分子量に到達しない可能性がある。
一方、重合触媒の使用量が多すぎると、好ましくない副反応を併発し、得られるポリカーボネートの色相の悪化または成形加工時の樹脂の着色を招く可能性がある。重合触媒が多すぎると得られるポリカーボネートの色相の悪化または成形加工時の樹脂の着色を招く可能性がある。さらに、高真空下での反応が短時間で完結し、フェノールまたは炭酸ジエステルを含む、樹脂中の残存低分子成分を除去できなくなるため、触媒量は適切に調節する必要がある。
上記重合触媒の使用量は、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmolであることが好ましく、より好ましくは0.5μmol〜100μmolである。中でも長周期型周期表における2族からなる群及びリチウムより選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/またはカルシウム化合物を用いる場合は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.1μmol以上であることが好ましく、より好ましくは0.3μmol以上、特に好ましくは0.5μmol以上とする。また上限としては、30μmolであることが好ましく、より好ましくは20μmol、さらに好ましくは10μmolである。
なお、本発明で用いるフルオレン部位を有する特定ジヒドロキシ化合物は、硫黄不純物が含有されており、上記重合触媒を失活させる作用があるため、実際に添加する重合触媒は、失活される分だけ前記の範囲よりも余分に使用することが好ましい。
反応に用いる全ジヒドロキシ化合物1mol当たりの全硫黄元素含有量をAμmol、重合触媒の金属元素量をBμmolとした時に、下記式(8)の範囲になることが好ましい。B/Aはより好ましくは0.2以上、1.5以下である。B/Aを上記下限値以上とすることにより反応が安定化し、また、上記上限値以下とすることにより反応速度が速くなりすぎるのを抑制し、分子量を制御し易くなる。
0.1 ≦ B/A ≦ 2 (8)
また、1族金属、中でもナトリウム、カリウムまたはセシウムは、ポリカーボネート中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性があり、しかも該金属は使用する触媒からのみではなく、原料または反応装置から混入する場合がある。このため、ポリカーボネート中のこれらの合計量は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、2μmol以下であることが好ましく、より好ましくは1μmol以下、さらに好ましくは0.5μmol以下である。
このようにして得られた本発明のポリカーボネートの分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、0.20dL/g以上であることが好ましく、0.30dL/g以上であることがより好ましく、一方、1.00dL/g以下であることが好ましく、0.80dL/g以下であることがより好ましく、0.70dL/g以下であることがさらに好ましい。
ポリカーボネートの還元粘度が低すぎると成形品の機械強度が小さくなる可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性または成形性が低下する傾向がある。尚、還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度計を用いて測定する。
本発明におけるポリカーボネートのガラス転移温度は100℃以上160℃以下であることが好ましく、より好ましくは110℃以上150℃以下である。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性がある。また、ポリカーボネートを位相差フィルムとし、偏光板と張り合わせた場合には画像品質を下げる場合がある。一方、ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時にフィルム厚みのムラが生じたり、フィルムが脆くなるなど、成形安定性が悪化する場合があり、また、フィルムの透明性を損なう場合がある。
本発明のポリカーボネートは、種々の成形を行う前に、必要に応じて、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤または相溶化剤等の添加剤を、タンブラー、スーパーミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサーまたは押出機などで混合することもできる。
本発明のポリカーボネートは、前記ジヒドロキシ化合物として、前記特定ジヒドロキシ化合物を含む複数種のジヒドロキシ化合物を用いた場合、前記第1反応器に原料として仕込んだ仕込み時における各々のジヒドロキシ化合物のモル百分率に対する、得られるポリカーボネート中の各々のジヒドロキシ化合物構造単位のモル百分率との差を抑えたものとなる。
これは前記の還流比の調整により主に実現されるが、その他に前記した範囲での反応器の内温、圧力、留出量、触媒種または触媒量等の調整により、さらに仕込みとのずれを小さくすることが可能となる。
このように仕込みからのずれとなるモル百分率の差を小さくすると、前記特定ジヒドロキシ化合物の構造単位を有することでポリカーボネートが発揮できる光学特性の値を、原料の仕込みの段階で調整することができる。すなわち、狙い通りの値に極めて近い光学特性を発揮するポリカーボネートを安定的に得ることができる。
このモル百分率の差は、具体的には、反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率と、得られたポリカーボネート中のジヒドロキシ化合物構造単位のモル百分率との差を、反応器へ原料として仕込んだ仕込み時のジヒドロキシ化合物のモル百分率で除した値の絶対値で判断される。
いずれのジヒドロキシ化合物についても、前記絶対値の値が0.05を超えないことが好ましく、前述の圧力条件または還流比などの調整によって、前段反応における未反応のジヒドロキシ化合物の留出を抑制することで、前記の範囲を達成できる。
さらに理想的には、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物については、前記絶対値の値を0.03以下とするのが好ましい。特に、光学特性に大きく関与する前記特定ジヒドロキシ化合物の構造単位については、ここまで前記絶対値を低下させることが好ましい。
本発明のポリカーボネートを用いたフィルムの製造法としては、溶融押出法が生産性の点から好ましい。溶融押出法においては、Tダイを用いて樹脂を押し出し、冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。
溶融押出法における溶融温度はポリカーボネートの分子量、Tg、溶融流動特性などから決められるが、好ましくは150℃〜300℃の範囲であり、170℃〜280℃の範囲がより好ましい。該温度が高すぎると熱劣化による着色、異物若しくはシルバーの発生による外観不良、またはTダイからのダイラインなどの問題が起きやすくなる。該温度が低すぎると粘度が高くなり、ポリマーの配向または応力歪みが残りやすい。
製膜されたフィルムの位相差値は、20nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以下である。フィルムの位相差値を20nm以下とすることにより、延伸して位相差フィルムとした際に位相差値のフィルム面内のばらつきが小さくなるため好ましい。なお、本発明においては延伸して得られたフィルムであれば、位相差フィルムを含むあらゆるフィルムを「延伸フィルム」とよぶこととする。
前記のフィルムの製造法としては溶液キャスト法を用いることもできる。溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエンまたはメチルエチルケトンなどが好ましい。
溶液キャスト法で得られるフィルム中の残留溶媒量は2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。2重量%以下とすることにより、フィルムのガラス転移温度の低下を抑制することができ、耐熱性の点で好ましい。
前記のフィルムの厚みとしては、20μm〜400μmの範囲が好ましく、より好ましくは30μm〜300μmの範囲である。かかるフィルムをさらに延伸して位相差フィルムとする場合には、該位相差フィルムの所望の位相差値、厚みを勘案して上記範囲内で適宜決めればよい。
かくして得られた未延伸フィルムを延伸配向させることにより、位相差フィルムを得ることができる。延伸方法としては、縦一軸延伸およびテンター等を用いる横一軸延伸、並びにそれらを組み合わせた同時二軸延伸および逐次二軸延伸など公知の方法が挙げられる。
延伸はバッチ式で行ってもよいが、連続で行うことが生産性において好ましい。さらにバッチ式に比べて、連続の方がフィルム面内の位相差のばらつきの少ない位相差フィルムが得られる。
延伸温度はポリカーボネートのガラス転移温度に対して、(Tg−20℃)〜(Tg+30℃)の範囲内であることが好ましく、より好ましくは(Tg−10℃)〜(Tg+20℃)の範囲内である。
延伸倍率は目的とする位相差値により決められるが、縦、横それぞれ、1.05倍〜4倍であることが好ましく、より好ましくは1.1倍〜3倍である。
本発明におけるポリカーボネートを成形してなる透明フィルムは複屈折が0.001以上であることが好ましく、0.0014以上であることがより好ましい。複屈折が過度に小さいと位相差フィルムとした場合、同じ位相差を発現させるためには、フィルム厚みを厚くしなければならず、薄型の機器には適合できない可能性がある。尚、上記複屈折は本発明のポリカーボネートのガラス転移温度+15℃の延伸温度で固定一軸延伸した透明フィルムを測定した値である。
なお、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄く平らな製品をいい、通常はロールの形で供給されるものであり、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかしながら、「シート」と「フィルム」との間の境界は定かではなく、本発明において文言上両者を区別する必要はないので、本明細書において「フィルム」と称する場合であっても、「シート」をも含む概念として用いることとする。
本発明にかかる前記位相差フィルムは、公知のヨウ素系または染料系の偏光板と粘着剤を介して積層貼合することにより、各種液晶表示装置、または有機EL表示装置用などの位相差板として用いることができる。
本発明にかかる前記透明フィルムは、波長450nmで測定した位相差(Re450)の、波長550nmで測定した位相差(Re550)に対する比は、0.50以上が好ましく、0.70以上がより好ましく、0.80以上がより好ましく、一方、1.0以下が好ましく、0.95以下がより好ましい。
前記比率が前記範囲であれば、可視領域の各波長において理想的な位相差特性を得ることができる。例えば、1/4波長板としてこのような波長依存性を有する位相差フィルムを作製し、偏光板と貼り合わせることにより、円偏光板等を作製することができ、色相の波長依存性が少ない偏光板および表示装置の実現が可能である。
一方、前記比率が前記範囲外の場合には、色相の波長依存性が大きくなり、可視領域のすべての波長において光学補償がなされなくなり、偏光板または表示装置に光が通り抜けることによる着色またはコントラストの低下などの問題が生じる。
本発明にかかる前記透明フィルムは、光弾性係数が50×10−12Pa−1以下であることが好ましく、40×10−12Pa−1以下であることが更に好ましい。光弾性係数が過度に大きいと、位相差フィルムとした場合、偏光板と張り合わせると、画面の周囲が白くぼやけるような画像品質の低下が起きる可能性がある。特に大型の表示装置に用いられる場合にはこの問題が顕著に現れる。
本発明の位相差フィルムは、各種ディスプレイ(例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマ表示装置、FED電界放出表示装置およびSED表面電界表示装置)の視野角補償用、外光の反射防止用、色補償用または直線偏光の円偏光への変換用などに用いることができる。
前記の液晶表示装置としては、反射型表示方式の液晶パネルを備える反射型液晶表示装置が好ましい。偏光フィルム、1/4波長板、及び透明電極を有する2枚の基板間に液晶層を含む液晶セルをこの順で具備する反射型液晶表示装置であって、かかる1/4波長板として、液晶表示装置、特に偏光フィルム1枚型反射型液晶表示装置に用いることにより、画質に優れた表示装置を得ることが出来る。
前記反射型液晶表示装置としては、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、透明電極付基板、液晶層および散乱反射電極付基板の順に構成されているもの、偏光フィルム、散乱板、位相差フィルム、透明電極付基板、液晶層および鏡面反射電極付基板の順に構成されているもの、並びに偏光フィルム、位相差フィルム、透明電極付基板、液晶層、透明電極付基板および反射層の順に構成されているもの等が挙げられる。
さらに、前記1/4波長板は透過型と反射型の両方を兼ね備えた液晶表示装置においても使用し得る。該液晶表示装置の構成としては、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、透明電極付基板、液晶層、反射透過兼用電極付基板、位相差フィルム、偏光フィルムおよびバックライトシステム等が挙げられる。
さらに、例えばコレステリック液晶よりなる左右どちらかの円偏光のみ反射する反射型偏光フィルムにおいて、円偏光を直線偏光に変換する素子として使用すれば、広帯域で良好な直線偏光が得られる。
本発明にかかるポリカーボネートは複屈折が小さく、耐熱性および成形性にも優れ、さらに色相および透明性を兼ね備えているため、その他の光学フィルム、光ディスク、光学プリズムまたはピックアップレンズ等にも用いることもできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
以下において、反応液と留出液、およびポリカーボネートの組成分析と物性の評価は次の方法により行った。
1)反応液中のフェノール含有量
試料約0.5gを精秤し、塩化メチレン5mLに溶解した後、総量が25mLになるようにアセトンを添加した。溶液を0.2μmディスクフィルターでろ過して、液体クロマトグラフィーにてフェノールの定量を行った後、含有量を算出した。
用いた装置または条件は、次のとおりである。
・装置:島津製作所製
システムコントローラ:CBM−20A
ポンプ:LC−10AD
カラムオーブン:CTO−10ASvp
検出器:SPD−M20A
分析カラム:Cadenza CD−18 4.6mmΦ×250mm
オーブン温度:40℃
・検出波長:260nm
・溶離液:A液:0.1%リン酸水溶液、B液:アセトニトリル
A/B=40/60(vol%)からA/B=0/100(vol%)まで10分間でグラジエント
・流量:1mL/min
・試料注入量:10μL
2)反応液と留出液中のジヒドロキシ化合物の含有量
所定量のウンデカンをアセトニトリル250mLに溶解し、これを内部標準溶液とした。試料約1gを精秤し、内部標準溶液10mLをホールピペットで加えて溶解した。溶液を0.2μmディスクフィルターでろ過し、ガスクロマトグラフィーにてジヒドロキシ化合物の定量を行った後、ジヒドロキシ化合物の含有量を算出した。
用いた装置または条件は、次のとおりである。
・装置:アジレント・テクノロジー社製 6850
・カラム:アジレント・テクノロジー社製 DB−1
(内径250μm、長さ30m、膜圧0.25μm)
・オーブン温度:50℃ 3分保持 → 昇温10℃/min → 250℃
→ 昇温50℃/min → 300℃ 6分保持
・検出器:水素炎イオン化検出器
・注入口温度:250℃
・検出器温度:320℃
・キャリアガス:ヘリウム
・試料注入量:1μL
3)ポリカーボネート中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比の測定
ポリカーボネート中の各ジヒドロキシ化合物構造単位比は、ポリカーボネート30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、1H NMRスペクトルを測定した。各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナル強度比より各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比を求めた。
用いた装置または条件は、次のとおりである。
・装置:日本電子(株)製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)
・測定温度:常温
・緩和時間:6秒
・積算回数:512回
4)還元粘度
溶媒として塩化メチレンを用い、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t0
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
5)ポリカーボネートのペレットYI値
ポリカーボネートの色相は、ASTM D1925に準拠して、ペレットの反射光におけるYI値(イエローインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。
シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。白色校正板CM−A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認した。
ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。YI値が小さいほど樹脂の黄色味が少なく、色調に優れることを意味する。
6)ポリカーボネート中の硫黄元素量の測定
試料を白金製ボートに採取し、石英管管状炉[三菱化学(株)製AQF−100型]で加熱し、燃焼ガス中の硫黄分を0.03%の過酸化水素水溶液で吸収した。吸収液中のSO4 2−をイオンクロマトグラフ(Dionex社製ICS−1000型)で測定した。
7)位相差及び位相差の波長分散性
80℃で5時間真空乾燥したサンプル4gを、幅8cm、長さ8cm、厚さ0.5mmのスペーサーを用いて、熱プレスにて熱プレス温度250℃で、予熱1分、圧力20MPaの条件で1分間加圧後、スペーサーごと取り出し、水管冷却式プレスで、圧力20MPaで3分間加圧冷却しフィルムを作製し、幅6cm、長さ6cmの試料を切り出した。
前記試料を、バッチ式二軸延伸装置[東洋精機産業(株)製]で、延伸温度をポリカーボネートのガラス転移温度+15℃、延伸速度を720mm/分(ひずみ速度1200%/min)で、延伸倍率2.0倍の一軸延伸を行った。このとき延伸方向に対して垂直方向は、保持した状態(延伸倍率1.0)で延伸を行った。
延伸された試料より幅4cm、長さ4cmに切り出し、位相差測定装置[王子計測機器(株)製KOBRA−WPR]を用いて測定波長450、500、550、590、630nmで位相差を測定し、波長分散性を測定した。
波長分散性は、450nmと550nmで測定した位相差Re450とRe550の比(Re450/Re550)を計算した。位相差比が1より大きいと波長分散は正であり、1未満では負となる。それぞれの位相差の比が、1未満で小さい程、負の波長分散性が強いことを示している。
以下の実施例の記載の中で用いた化合物の略号は次の通りである。
BHEPF:9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン [大阪ガスケミカル(株)製]……硫黄元素含有量は5ppmから7ppmのものを用いた。
BCF:9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン [大阪ガスケミカル(株)製]
ISB:イソソルビド [ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB]
SPG:スピログリコール [三菱ガス化学(株)製]
PEG#1000:ポリエチレングリコール 数平均分子量1000 [三洋化成工業(株)製]
DEG:ジエチレングリコール [三菱化学(株)製]
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール [新日本理化(株)製、商品名:SKY CHDM]
HD:1,6−ヘキサンジオール [BASF社製]
DPC:ジフェニルカーボネート [三菱化学(株)製]
[実施例1]
前述した図1に示すように、竪型攪拌反応器3器及び横型攪拌反応器1器を有する連続製造装置により、以下の条件でポリカーボネートを製造した。
先ず、原料調製工程にて窒素ガス雰囲気下、BHEPFとISBとPEG#1000とDPCとを一定のモル比(BHEPF/ISB/PEG#1000/DPC=0.432/0.556/0.0120/1.010)で混合し、120℃に加熱して、原料混合溶融液を得た。
続いて、この原料混合溶融液を、140℃に加熱した原料導入管を介して、所定温度・圧力の±5%の範囲内に制御した第1竪型攪拌反応器6a内に連続供給し、平均滞留時間が90分になるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けたバルブ(図示せず)の開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。本実施例で用いた第1竪型攪拌反応器6aの内容積は230Lである。
上記原料混合溶融液の供給開始と同時に、第1竪型攪拌反応器6a内に触媒供給口1dから触媒として酢酸マグネシウム水溶液を、全ジヒドロキシ成分1molに対し、19μmolの割合で連続供給した。
第1竪型攪拌反応器6aの槽底から排出された重合反応液は、引き続き、第2竪型攪拌反応器6b、第3竪型攪拌反応器6c、第4横型攪拌反応器6d(2軸メガネ翼、L/D=4)に、逐次、連続供給された。これらの反応器での実際の運転条件を表−1に記載する。
重合反応の間、表−1に示した平均滞留時間となるように各反応器の液面レベルを制御し、また、重合反応と同時に副生するフェノールの留去を行った。第1竪型攪拌反応器の還流冷却器の温度を調節し、還流比を0.7にした。
上記の反応条件にて24時間以上運転を行った後、留出配管11aに取り付けた流量計により測定したところ、第1竪型攪拌反応器からの留出率は79%であった。還流冷却器出口と第1竪型攪拌反応器出口に取り付けられたバルブから留出液と反応液のサンプリングを行い、組成分析を行ったところ、留出液中のジヒドロキシ化合物は0.1wt%未満、反応液中のフェノール含有率は6.8wt%であった。なお、表中の留出率とは副生したモノヒドロキシ化合物の留出量の理論生成量に対する割合である。
第4横型攪拌反応器からこうして得られたポリカーボネートの還元粘度は0.392、ペレットYI値は38、ポリカーボネートのジヒドロキシ化合物構造単位の仕込みとのずれはいずれのジヒドロキシ化合物成分も0.05以下であり、仕込みどおりの組成のポリカーボネートが得られた。
全反応器から留出した留出液の組成分析を行ったところ、ジヒドロキシ化合物の含有量は0.1wt%未満であった。これらの結果をまとめて表−1に示す。なお、第1攪拌反応器〜第3攪拌反応器の各反応器においては、それぞれの内温を表−1に示した値の±1℃の範囲内に制御し、また、それぞれの圧力を表−1に示した圧力の±1kPaの範囲内に制御した。
[実施例2]
第1竪型攪拌反応器の還流冷却器の温度を調節し、還流比を3.9とした以外、実施例1と同様に行ったところ、第1竪型攪拌反応器の内温が所定よりも低下したため、熱媒温度を上昇させたが、内温は190℃までしか上がらなかったため、この反応条件にて運転を行った。得られたポリカーボネートのペレットYI値は66であり、実施例1よりも色調が悪くなったが、ポリカーボネートの構造単位比のずれは小さくなった。
[実施例3]
第1竪型攪拌反応器の還流冷却器の温度を調節し、還流比を0.1とした以外、実施例1と同様に行ったところ、得られたポリカーボネートのペレットYI値は33であり、実施例1よりも色調が向上した。さらに、ポリカーボネートの構造単位比のずれも小さく、実施例1と同等であった。
[実施例4]
原料にBHEPF/ISB/DEG/DPC/酢酸マグネシウム(モル比:BHEPF/ISB/DEG/DPC/酢酸マグネシウム=0.349/0.495/0.156/1.00/1.50×10−5)を使用し、第1反応器の還流比を0.1に調節した。また、各反応槽の反応の進行具合に応じて、圧力条件を変更した以外は実施例1と同様に行った。得られたポリカーボネートの色調は良好であり、構造単位比のずれも小さかった。
[実施例5]
原料にBHEPF/ISB/CHDM/DPC/酢酸マグネシウム(モル比:BHEPF/ISB/CHDM/DPC/酢酸マグネシウム=0.330/0.338/0.332/1.00/1.50×10−5)を使用し、第1反応器の還流比を0.1に調節した。また、各反応槽の反応の進行具合に応じて、圧力条件を変更した以外は実施例1と同様に行った。得られたポリカーボネートの色調は良好であり、構造単位比のずれも小さかった。
[実施例6]
原料にBHEPF/ISB/HD/DPC/酢酸マグネシウム(モル比:BHEPF/ISB/HD/DPC/酢酸マグネシウム=0.323/0.517/0.160/1.00/1.50×10−5)を使用し、第1反応器の還流比を0.1に調節した。また、各反応槽の反応の進行具合に応じて、圧力条件を変更した以外は実施例1と同様に行った。得られたポリカーボネートの色調は良好であり、構造単位比のずれも小さかった。
[参考例1]
原料にBHEPF/CHDM/DPC/酢酸マグネシウム(モル比:BHEPF/CH
DM/DPC/酢酸マグネシウム=0.355/0.645/1.00/1.50×10
−5)を使用し、第1反応器の還流比を0.1に調節した。また、各反応槽の反応の進行
具合に応じて、圧力条件を変更した以外は実施例1と同様に行った。得られたポリカーボ
ネートの色調は良好であり、構造単位比のずれも小さかった。
[参考例2]
原料にBHEPF/HD/DPC/酢酸マグネシウム(モル比:BHEPF/HD/D
PC/酢酸マグネシウム=0.602/0.398/1.00/1.50×10−5)を
使用し、第1反応器の還流比を0.1に調節した。また、各反応槽の反応の進行具合に応
じて、圧力条件を変更した以外は実施例1と同様に行った。得られたポリカーボネートの
色調は良好であり、構造単位比のずれも小さかった。
[実施例7]
原料にBCF/SPG/HD/DPC/酢酸カルシウム(モル比:BCF/SPG/H
D/DPC/酢酸カルシウム=0.309/0.474/0.217/1.03/1.0
0×10−4)を使用し、第1反応器の還流比を0.1に調節した。また、各反応槽の反
応の進行具合に応じて、圧力条件を変更した以外は実施例1と同様に行った。得られたポ
リカーボネートの色調は良好であり、構造単位比のずれも小さかった。
[比較例1]
第1竪型攪拌反応器の圧力を常圧にし、還流を行わなかった(全留出)以外は実施例1と同様に行った。第1竪型攪拌反応器からの留出率が23%、反応液中のフェノール含有量が18.2wt%であり、実施例1よりもフェノールの生成量が少なく、反応の進行が遅かった。得られたポリカーボネートのペレットYI値は72であり、実施例1よりも著しく色調が悪化した。
[比較例2]
第1竪型攪拌反応器の還流を行わなかった(全留出)以外は実施例1と同様に行ったが、ポリカーボネートの分子量が所定まで到達しなかったために、原料のモル比をBHEPF/ISB/PEG#1000/DPC=0.432/0.556/0.0120/0.980に変更したところ、分子量が所定に到達した。
得られたポリカーボネートのペレットYI値は35であり、色調は良好であったが、ポリカーボネートのジヒドロキシ化合物構造単位の仕込みとのずれは0.05以上となり、仕込み組成から大幅に外れてしまった。また、全反応器から留出した留出液中のジヒドロキシ化合物の含有量は1.75wt%であり、実施例1よりも未反応モノマーの留出が増加し、回収フェノールの純度が低下した。
[比較例3]
第1竪型攪拌反応器の還流冷却器の温度を調節し、還流比を6.0とした以外、実施例1と同様に行ったところ、第1竪型攪拌反応器の内温が所定よりも低下したため、熱媒温度を上昇させたが、内温は188℃までしか上がらなかったため、この反応条件にて運転を行った。得られたポリカーボネートの構造単位比のずれは小さくなったが、ペレットYI値は70であり、実施例1よりも色調が悪化した。
[比較例4]
第1竪型攪拌反応器の還流冷却器の温度を調節し、還流比を6.0とした以外、実施例4と同様に行ったところ、第1竪型攪拌反応器の内温が所定よりも低下したため、熱媒温度を上昇させたが、内温は190℃までしか上がらなかったため、この反応条件にて運転を行った。得られたポリカーボネートの構造単位比のずれは小さくなったが、ペレットYI値は61であり、実施例4よりも色調が悪化した。
[比較例5]
第1竪型攪拌反応器の還流冷却器の温度を調節し、還流比を6.0とした以外、実施例5と同様に行ったところ、第1竪型攪拌反応器の内温が所定よりも低下したため、熱媒温度を上昇させたが、内温は189℃までしか上がらなかったため、この反応条件にて運転を行った。得られたポリカーボネートの構造単位比のずれは小さくなったが、ペレットYI値は54であり、実施例4よりも色調が悪化した。
[比較例6]
第1竪型攪拌反応器の還流冷却器の温度を調節し、還流比を6.0とした以外、実施例5と同様に行ったところ、第1竪型攪拌反応器の内温が所定よりも低下したため、熱媒温度を上昇させたが、内温は190℃までしか上がらなかったため、この反応条件にて運転を行った。得られたポリカーボネートの構造単位比のずれは小さくなったが、ペレットYI値は56であり、実施例4よりも色調が悪化した。
[比較例7]
第1竪型攪拌反応器の還流冷却器の温度を調節し、還流比を6.0とした以外、参考例
1と同様に行ったところ、第1竪型攪拌反応器の内温が所定よりも低下したため、熱媒温
度を上昇させたが、内温は190℃までしか上がらなかったため、この反応条件にて運転
を行った。得られたポリカーボネートの構造単位比のずれは小さくなったが、ペレットY
I値は13であり、参考例1よりも色調が悪化した。
[比較例8]
第1竪型攪拌反応器の還流冷却器の温度を調節し、還流比を6.0とした以外、参考例
2と同様に行ったところ、第1竪型攪拌反応器の内温が所定よりも低下したため、熱媒温
度を上昇させたが、内温は191℃までしか上がらなかったため、この反応条件にて運転
を行った。得られたポリカーボネートの構造単位比のずれは小さくなったが、ペレットY
I値は15であり、参考例2よりも色調が悪化した。
[比較例9]
第1竪型攪拌反応器の還流冷却器の温度を調節し、還流比を6.0とした以外、実施例
7と同様に行ったところ、第1竪型攪拌反応器の内温が所定よりも低下したため、熱媒温
度を上昇させたが、内温は195℃までしか上がらなかったため、この反応条件にて運転
を行った。得られたポリカーボネートの構造単位比のずれは小さくなったが、ペレットY
I値は50であり、参考例2よりも色調が悪化した。
以上の実施例1〜7、参考例1〜2及び比較例1〜9の結果をそれぞれ表−1および表−2に示す。
[まとめ]
表−1および表−2に示すように、本発明の製造方法において規定するように、第一段目の反応器の反応条件を適切に設定することで、ポリカーボネートの品質を向上できるとともに、未反応モノマーの留出が抑制されるために、重合反応と樹脂物性の制御が可能となることがわかった。さらに、原料原単位またはフェノール回収などのコスト面へのメリットが得られることがわかった。