JP6010114B2 - 光分析を用いた単一粒子検出装置、単一粒子検出方法及び単一粒子検出用コンピュータプログラム - Google Patents
光分析を用いた単一粒子検出装置、単一粒子検出方法及び単一粒子検出用コンピュータプログラム Download PDFInfo
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Description
2…光源
3…シングルモードオプティカルファイバー
4…コリメータレンズ
5…ダイクロイックミラー
6、7、11…反射ミラー
8…対物レンズ
9…マイクロプレート
10…ウェル(試料溶液容器)
12…コンデンサーレンズ
13…ピンホール
14…バリアフィルター
14a…ダイクロイックミラー又は偏光ビームスプリッタ
15…マルチモードオプティカルファイバー
16…光検出器
17…ミラー偏向器
17a…ステージ位置変更装置
18…コンピュータ
本発明による単一粒子検出技術を実現する単一粒子検出装置は、基本的な構成に於いて、図1(A)に模式的に例示されている如き、FCS、FIDA等が実行可能な共焦点顕微鏡の光学系と光検出器とを組み合わせてなる装置であってよい。同図を参照して、単一粒子検出装置1は、光学系2〜17と、光学系の各部の作動を制御すると共にデータを取得し解析するためのコンピュータ18とから構成される。単一粒子検出装置1の光学系は、通常の共焦点顕微鏡の光学系と同様であってよく、そこに於いて、光源2から放射されシングルモードファイバー3内を伝播したレーザー光(Ex)が、ファイバーの出射端に於いて固有のNAにて決まった角度にて発散する光となって放射され、コリメーター4によって平行光となり、ダイクロイックミラー5、反射ミラー6、7にて反射され、対物レンズ8へ入射される。
「発明の概要」の欄に記載されている如く、本発明の単一粒子検出技術に於いては、端的に述べれば、試料溶液中に発光粒子と非発光粒子とが含まれている場合に、光検出領域の光を背景光の存在下にて走査分子計数法に従って計測して時系列光強度データを得て、かかる時系列光強度データに於いて、光強度の有意な増大を発光粒子の信号として検出し、光強度の有意な低下を非発光粒子の信号として検出する。かかる構成によれば、一つの検出光波長帯域に於ける一度の光計測に於いて、観測対象粒子として、2種類の互いに異なる粒子の検出、それらの粒子の計数、或いは、試料溶液中の濃度に関する情報の取得等が可能となる。以下、本発明による走査分子計数法の原理について説明する。
α=4π∫r2f(r)dr [積分区間は、0〜a]
にて与えられる。一方、光検出領域内に、半径bの非発光粒子が進入し、光検出領域の中心に位置するとき、その領域の背景光を与える空間(以下、「発光空間」と称する。)が排除されることとなるので、排除された発光空間に相当する光量が低減することとなる。その排除された発光空間に相当する光量、つまり低下量βは、
β=4π∫r2f(r)dr [積分区間は、0〜b]
にて与えられる。かくして、光強度の低下の割合は、β/αにより概算することが可能となる。ここで、f(r)がガウス関数であり、α=1、a=1となるとき、
f(r)=0.684exp(−2r2)
となる。典型的には、背景光の変動率が1%程度であり、非発光粒子による光強度の低下の割合が1%以下であると、信号の検出が不可能となるので、上記の式にて演算すると、光検出領域の半径に対する非発光粒子半径の比b/aは、0.15以上とすべきである。また、非発光粒子による光強度の低下の割合を10%以上とする場合には、光検出領域の半径に対する検出可能な非発光粒子半径の比b/aは、0.35となる。なお、観測されるべき非発光粒子が消光剤や蛍光エネルギー移動のアクセプタである場合、非発光粒子が周囲(例えば、10nm)の光を吸収するので、検出可能な非発光粒子半径は、上記に例示の半径よりも低減し得る。また、非発光粒子が発光する場合には、検出可能な非発光粒子半径は、上記に例示の半径よりも増大し得る。
図1(A)に例示の単一粒子検出装置1を用いた本発明に従った走査分子計数法の実施形態に於いては、具体的には、(1)単一粒子と背景光を生成する発光物質とを含む試料溶液の調製、(2)試料溶液の光強度の測定処理、及び(3)測定された光強度の分析処理が実行される。図3は、実施形態の一つに於ける処理をフローチャートの形式にて示している。
本発明の光分析技術の観測対象物となる粒子は、溶解された分子等の、試料溶液中にて分散し溶液中にてランダムに運動する粒子であれば、任意のものであってよく、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、糖鎖、アミノ酸若しくはこれらの凝集体などの生体分子、ウイルス、細胞、或いは、金属コロイド、その他の非生物学的分子などであってよい。発光粒子については、観測対象粒子が、元来、光を発する粒子でない場合には、発光標識(蛍光分子、りん光分子、化学・生物発光分子)が観測対象物となる粒子に任意の態様にて付加されたものが用いられる。非発光粒子については、発光粒子の場合と同様に任意のものであってよい。また、背景光は、蛍光、自家蛍光、散乱(ラマン散乱(溶媒(水)二硫化炭素、イソプレン、遷移金属錯体)、発光物質による光であってよく、或いは、均一光源による照明光であってもよい。背景光を発光物質の分散によって与える場合、発光物質は、任意の発光分子、例えば、蛍光分子、りん光分子、化学・生物発光分子であってよく、光検出領域内に常に数分子以上存在する濃度にて試料溶液中に溶解又は分散される。なお、背景光の光量は、上記の如く、単位体積当たりに於いて、観測対象である発光粒子の光量よりも少なく、観測対象である非発光粒子の光量よりも多くなるよう適宜調整される。試料溶液は、典型的には水溶液であるが、これに限定されず、有機溶媒その他の任意の液体であってよい。
本実施形態の走査分子計数法による光分析に於ける光強度の測定は、測定中にミラー偏向器17又はステージ位置変更装置17aを駆動して、試料溶液内での光検出領域の位置の移動(試料溶液内の走査)を行う他は、FCS又はFIDAに於ける光強度の測定過程と同様の態様にて実行されてよい。操作処理に於いて、典型的には、マイクロプレート9のウェル10に試料溶液を注入して顕微鏡のステージ上に載置した後、使用者がコンピュータ18に対して、測定の開始の指示を入力すると、コンピュータ18は、記憶装置(図示せず)に記憶されたプログラム(試料溶液内に於いて光検出領域の位置を移動する手順と、光検出領域の位置の移動中に光検出領域からの光を検出して時系列の光強度データを生成する手順)に従って、試料溶液内の光検出領域に於ける励起光の照射及び光強度の計測が開始される。かかる計測中、コンピュータ18のプログラムに従った処理動作の制御下、ミラー偏向器17又はステージ位置変更装置17aは、ミラー7(ガルバノミラー)又は顕微鏡のステージ上のマイクロプレート9を駆動して、ウェル10内に於いて光検出領域の位置の移動を実行し、これと同時に光検出器16は、逐次的に検出された光を電気信号に変換してコンピュータ18へ送信し、コンピュータ18では、任意の態様にて、送信された信号から時系列の光強度データを生成して保存する。光検出器16は、典型的には、一光子の到来の有無を検出できる超高感度光検出器であるので、光の検出が、フォトンカウンティングによる場合、時系列光強度データは、時系列のフォトンカウントデータであってよい。
(2Wo)2=6D・Δt
から、
Δt=(2Wo)2/6D
となるので、粒子がブラウン運動により移動する速度(拡散移動速度)Vdifは、概ね、
Vdif=2Wo/Δt=3D/Wo
となる。そこで、光検出領域の位置の移動速度は、かかるVdifを参照して、それよりも十分に早い値に設定されてよい。例えば、観測対象粒子の拡散係数が、D=2.0×10−10m2/s程度であると予想される場合には、Woが、0.62μm程度だとすると、Vdifは、1.0×10−3m/sとなるので、光検出領域の位置の移動速度は、その10倍以上の15mm/sなどと設定されてよい。なお、観測対象粒子の拡散係数が未知の場合には、光検出領域の位置の移動速度を種々設定して光強度の変化のプロファイルが、予想されるプロファイル(典型的には、励起光強度分布と略同様)となる条件を見つけるための予備実験を繰り返し実行して、好適な光検出領域の位置の移動速度が決定されてよい。
上記の処理により時系列光強度データが得られると、コンピュータ18に於いて、記憶装置に記憶されたプログラムに従った処理により、単一粒子の信号の検出、単一粒子のカウンティング、濃度算出等の各種分析が実行される。
時系列の光強度データに於いて、一つの粒子の光検出領域を通過する際の軌跡が、図4(B)に示されている如く略直線状である場合、その粒子に対応する信号に於ける光強度の変化は、(光学系により決定される)光検出領域内の光強度分布を反映した略釣鐘状のプロファイルを有する。図4(C)最上段を参照して、特に、非発光粒子(α)が光検出領域を通過した場合には、光強度の変化は、下に凸となり、発光粒子(β)が光検出領域を通過した場合には、光強度の変化は、上に凸となる。かくして、単一粒子信号の個別検出の一つの態様に於いては、基本的には、背景光から計った適宜設定される閾値を下回る光強度の低下が継続する時間幅が所定の範囲にあるとき、そして、背景光から計った適宜設定される閾値を上回る光強度の増大が継続する時間幅が所定の範囲にあるとき、それぞれの光強度の低下又は増大のプロファイルを有する信号が一つの粒子が光検出領域を通過したことに対応すると判定され、一つの粒子の検出が為されるようになっていてよい。また、光検出領域の光強度分布が、背景光Ibgから下に凸の又は上に凸ガウス分布:
I=Ibg−A−・exp(−2t2/a2) …(α)
I=Ibg+A+・exp(−2t2/a2) …(β)
であると仮定できるときには、有意な光強度の低下又は増大のプロファイル(背景光のゆらぎではないと明らかに判断できるプロファイル)に対して式α又は式βをフィッティングして算出された強度A−、A+及び幅aが所定の範囲内にあるとき、その光強度のプロファイルが一つの粒子が光検出領域を通過したことに対応すると判定され、一つの粒子の検出が為されてよい。(強度A−、A+及び幅aが所定の範囲外にある信号は、ノイズ又は異物の信号として判定され、その後の分析等に於いて無視されてよい。)
下記の条件:
20μ秒<パルス幅<400μ秒
ピーク強度>4.0[pc/10μs] …(A)
相関係数>0.95
を満たすか否か等が判定される(ステップ150)。かくして、算出された釣鐘型関数のパラメータが一つの粒子に対応する信号に於いて想定される範囲内にあると判定された信号は、一つの粒子に対応する信号であると判定される。一方、算出された釣鐘型関数のパラメータが想定される範囲内になかったパルス信号は、ノイズとして無視される。
単一粒子信号の個別検出の別の態様として、時系列光強度データに出現した光強度変化(光子数変化)のパターンの発生確率を算出し、かかる発生確率に基づいて単一粒子の信号の存在の検出が為されてもよい(特願2012−32421参照)。図5(A)を参照して、一般に、時系列光強度データがフォトンカウントデータである場合に於いて、光強度値は、ビンタイム当たりの検出光子数となる。従って、図示の如く、光強度値は、時間軸方向に離散的に分布する。その場合、輝度が大きい粒子信号は、ノイズ信号の影響が少なく、略釣鐘状のプロファイル(左図)を有するが、輝度の小さい粒子信号は、強度値がノイズ信号と略同様となり、更に、ノイズ信号が重畳するので(中図)、略釣鐘状のプロファイルを抽出することが困難となり、粒子のないノイズ信号のみが存在する時間領域(右図)との識別が困難となる。しかしながら、輝度の小さい粒子信号の存在する時間領域とノイズ信号のみが存在する時間領域とでは、光子が検出される事象(光子数が1以上となる事象)の発生頻度とパターンに違いを有する。同様の現象は、非発光粒子の信号と背景光のゆらぎとの間にも観察される。そこで、時系列光強度データ上の所定の時間幅毎の光強度値の時間変化(光子数列)について、光検出領域内に粒子が存在していたと仮定した場合に前記の光強度値の時間変化が発生する確率(発生確率(粒子存在時))と、光検出領域内に粒子が存在していなかったと仮定した場合に前記の光強度値の時間変化が発生する確率(発生確率(粒子不在時))とが算出され、高い発生確率を与える状態が実際の状態であると推定される。
Eni=Bg …(3)
と設定されてよい。ここで、Bgは、背景光の時間平均値である。従って、式(3)の値を式(1)に代入して、各計測単位時間tiに於ける単位時間発生確率Pniが時系列に算定され、更に、式(2)により、光検出領域内に粒子が存在していない状態を仮定した場合に実際の検出光子数列が発生する確率Pnが算出される。
OR=Pp(1−Pn)/(1−Pp)Pn …(8)
を算出し、その大きさが所定値を越えたときに、解析窓内に於ける粒子の信号の存在が判定されてよい。
2r/v …(9)
よりも長く設定される。また、解析窓は、好適には、時系列光強度データ上にて単位時間毎に順に設定されてよい。かかる設定によれば、発生確率Pp、発生確率Pn及び/又はオッズ比ORが時系列光強度データに沿って算出されることとなる。しかしながら、その場合、演算量が多くなるので、数個の単位時間毎に解析窓が設定されるようになっていてもよい。更に、時系列光強度データ上を解析窓の時間幅にて分割して解析窓を設定してもよい。この場合、解析窓は、互いに重複せずに設定されることとなる。
更に、検出された単一粒子の信号の数を計数して、粒子の数の決定が為されてもよい(粒子のカウンティング)。また、任意の手法にて、光検出領域の通過した領域の総体積が算定されれば、その体積値と粒子の数とから試料溶液中の粒子の数密度又は濃度が決定される(ステップ170)。
Vt=N/C …(10)
により与えられる。また、対照溶液として、単一粒子の複数の異なる濃度の溶液が準備され、それぞれについて測定が実行されて、算出されたVtの平均値が光検出領域の通過した領域の総体積Vtとして採用されるようになっていてよい。そして、Vtが与えられると、単一粒子のカウンティング結果がnの試料溶液の粒子濃度cは、
c=n/Vt …(11)
により与えられる。なお、光検出領域の体積、光検出領域の通過した領域の総体積は、上記の方法によらず、任意の方法にて、例えば、FCS、FIDAを利用するなどして与えられるようになっていてよい。また、本実施形態の装置に於いては、想定される光検出領域の移動パターンについて、種々の標準的な粒子についての濃度Cと粒子の数Nとの関係(式(10))の情報をコンピュータ18の記憶装置に予め記憶しておき、装置の使用者が単一粒子検出を実施する際に適宜記憶された関係の情報を利用できるようになっていてよい。
上記の単一粒子検出処理に於いては、或る設定した時間に亘って光測定を実行した後、得られた光強度データ上にて単一粒子の信号が検出される。その場合、試料溶液中の粒子濃度が未知であるとき、或る固定された測定時間に亘って光強度の測定を行う場合には、粒子の濃度が低い場合に備えて、測定時間は、十分に長く設定されることとなる。一方、試料溶液中の粒子の濃度が高い場合には、濃度等の特性を許容可能な又は満足する精度にて決定するのに必要な時間以上に光強度の測定が継続されることとなる。また、試料溶液中の粒子濃度が実験者の想定した濃度よりも低く、設定された測定時間が足りない場合には、結果の誤差が大きくなってしまう。そこで、単一粒子検出処理の更に別の態様として、光検出領域を移動しながらの光強度の測定と単一粒子の信号の検出とを信号の数が予め定められた数に達するまで繰り返し、信号の数が予め定められた数に達するのに要した時間が計測され、かかる単一粒子の信号の数が予め定められた数に達するのに要した時間に基づいて、粒子濃度が決定されてよい。かかる構成によれば、試料溶液中の粒子濃度が高い場合には、光強度の測定に要する時間は短縮され、試料溶液中の粒子濃度が低い場合には、結果(即ち、粒子濃度)に要求される精度を達成する粒子数が得られるまで光強度の測定を継続させることが可能となる。そして、単一粒子の信号の数が達するべき予め定められた数を結果に要求される精度を達成する粒子数に設定しておくことにより、単一粒子の信号の数が予め定められた数に達するのに要した時間には、結果に要求される精度を達成する粒子数が反映されることとなるので、その時間に基づいて決定される粒子の濃度値は、許容可能な又は満足する精度を有していることが期待される。なお、かかる構成に於いても、本発明の場合には、光計測から粒子濃度の算定までが、複数の検出波長毎に実行される。
粒子の濃度値と、信号数が予め定められた数に達するのに要した時間とは、以下の如く、関係づけられる。即ち、或る粒子濃度Cの試料溶液中に於いて、時間τに亘って、光検出領域を走査速度uにて移動させた場合、光検出領域の断面積をSとすると、検出される粒子信号の数Xは、
X=CSuτNA …(12)
となる。ここで、NAは、アボガドロ数である。従って、信号数が予め定められた数XEに達するのに時間Tを要したとすると、粒子濃度Cは、
C=XE/(STuNA) …(13)
により、時間Tの関数として与えられる。なお、単位時間当たりの粒子の検出速度Vは、信号数が予め定められた数XEに達するのに要した時間Tと粒子検出数XEとに基づいて
V=XE/T …(14)
により与えられるので、粒子濃度Cは、
C=V/(SuNA)…(15)
と表される。この式(15)に於いては、粒子濃度Cが、検出速度Vに一次に比例し、粒子濃度Cと検出速度Vとの対応関係がわかり易いので、実際の実験に於いては、粒子濃度Cは、検出速度Vを用いて決定されてもよい。
一定の信号数を検出する単一粒子検出処理は、例えば、図7のフローチャートに示した処理手順により実行されてよい。同図の例に於いては、端的に述べれば、光検出領域の位置の移動、光検出領域からの光の検出、単一粒子の信号の検出及び検出された粒子信号の計数の一連の処理が、解析時間間隔t(所定の時間間隔)毎に、検出された粒子数Xが終了粒子数XE(単一粒子数が到達すべき予め定められた数)に到達するまで反復して実行される。なお、以下に述べる一連の処理及び構成は、コンピュータ18の処理作動により実現されることは理解されるべきである。
図7を参照して、操作処理に於いて、具体的には、まず、マイクロプレート9のウェル10に試料溶液を注入して顕微鏡のステージ上に載置した後、使用者がコンピュータ18に対して、光強度の測定と粒子の検出・計数の処理の開始の指示を入力すると、コンピュータ18は、初期設定として、終了粒子数XEの設定(ステップ10)及び解析時間間隔tの設定(ステップ20)を行う。終了粒子数XEと解析時間間隔tとは、使用者により任意に設定されてよい。終了粒子数XEは、粒子濃度の結果値に要求される精度を達成できるように粒子濃度が既知の溶液を用いた予備実験による結果を参考にして適宜決定可能である。解析時間間隔tとしては、処理の開始後から粒子数(X)が終了粒子数(XE)に到達するまでの時間よりも十分に短い任意の時間間隔が、装置1に於ける処理速度等を考慮して適宜設定されてよい。また、終了粒子数XEと解析時間間隔tとは、それぞれ、粒子濃度が既知の溶液を用いた予備実験による結果を参考にして予め決定された値が、装置1に於いて記憶され、かかる記憶された値が自動的に又は使用者の選択により使用されるようになっていてもよい。
上記の如く終了粒子数XEと解析時間間隔tの設定が為されると、以下の如く、解析時間間隔t毎に、解析時間間隔tに亘る走査分子計数法による光強度の測定処理及び測定された光強度データからの粒子信号の検出並びに粒子数xの検出(ステップ30)と、ステップ30にて検出された粒子数xを累積して粒子の総数X(tn)を算定する処理(ステップ40)とが粒子の総数X(tn)が終了粒子数XEに到達するまで(ステップ50)、反復して実行される。なお、ステップ30〜50の処理の反復実行に先だって、一連の処理の開始時間Tsが記憶されてよい(ステップ25)。
X(tn)=X(tn−1)+x …(16)
により算出される(図7−ステップ40)。なお、X(tn−1)は、前回の解析時間間隔tまでに検出された粒子の検出総数であり、その初期値は0である。そして、ステップ30〜40は、単一粒子の検出総数X(tn)が終了粒子数XEに到達するまで、即ち、
X(tn)≧XE …(17)
が成立するまで(ステップ50)、解析時間間隔t毎に繰り返される。そして、ステップ30〜50を反復しているうちに、式(17)が成立すると、試料溶液の光強度の測定と粒子の検出・計数との処理が終了する。ステップ30〜50の反復処理が終了すると、終了時間TEが記憶されてよい(ステップ60)。
ところで、解析時間間隔t毎にステップ30〜50の反復実行期間に於いて(式(17)が成立するまで)、コンピュータ18のモニター上などの表示器に、粒子の検出総数X(tn)及び/又は測定終了時間TE若しくは測定残り時間Trが表示されるようになっていてよい。かかる構成によれば、使用者は、それらの表示を見ることによって、実行中の測定がいつ頃終了するのかを予測することができる点で有利である。
v=X(tn)/(Tp−Ts) …(18)
により与えられてよい。ここで、Tpは、現在の時刻である。かくして、粒子の検出速度vを用いて、測定残り時間Tr(ステップ30〜50の処理終了までの時間)が、
Tr=(XE−X(tn))/v …(19)
により推定され、また、測定終了時間TE(ステップ30〜50の処理が終了する時間)が、
TE=Tp+Tr …(20)
により推定される(ステップ56)。そして、推定された測定終了時間TE若しくは測定残り時間Trが表示器上に表示される(ステップ58)。なお、既にステップ30〜50の反復実行が為されている場合には、既に表示されている値が更新される。また、X(tn)=0のときは、式(18)又は(19)は、演算されずに、Tr及びTEは、不明であると表示されてよい。
かくして、粒子数が終了粒子数に到達すると、粒子数が終了粒子数に到達するまでの時間T(=TE−Ts)或いは検出された粒子の信号から得られるその他の情報を用いて、濃度算出等の分析が実行されてよい(ステップ70)。粒子濃度は、既に述べた如く、式(12)を用いて、終了粒子数に到達するまでの時間Tと終了粒子数XEとから、粒子の検出速度Vを算出し、粒子の検出速度Vから、式(13)の関係を用いて決定される。
S=N/(C・NA・uo・τo) …(21)
により与えられる。また、対照溶液として、粒子の複数の異なる濃度の溶液が準備され、それぞれについて測定が実行されて、算出されたSの平均値が光検出領域の断面積Sとして採用されるようになっていてよい。
Claims (12)
- 共焦点顕微鏡又は多光子顕微鏡の光学系を用いて試料溶液中にて分散しランダムに運動する単一粒子を検出する単一粒子検出装置であって、
前記試料溶液内に於ける前記光学系の光検出領域の位置を移動する光検出領域移動部と、
前記光検出領域からの光を検出する光検出部と、
前記試料溶液内に於いて前記光検出領域の位置を移動させながら前記光検出部にて検出された前記光検出領域からの光の時系列の光強度データを生成し、前記時系列の光強度データに於いて前記単一粒子の各々の存在を表す信号を個別に検出する信号処理部とを含み、
前記光検出部により検出される前記光検出領域からの光が実質的に一定の背景光を含み、前記単一粒子が前記背景光よりも高い発光強度を有する第一の単一粒子と前記背景光よりも低い発光強度を有する第二の単一粒子とを含み、前記第一の単一粒子の前記信号が前記第一の単一粒子が前記光検出領域内へ進入した際に生ずる前記光検出部にて検出される光強度の増大であり、前記第二の単一粒子の前記信号が前記第二の単一粒子が前記光検出領域内へ進入した際に生ずる前記光検出部にて検出される光強度の低下であることを特徴とする装置。 - 請求項1の装置であって、前記信号処理部が、個別に検出された前記第一及び第二の単一粒子の存在を表す信号の数をそれぞれ計数して前記光検出領域の位置の移動中に検出された前記第一及び第二の単一粒子の数を計数することを特徴とする装置。
- 請求項1又は2の装置であって、単位体積当たりの前記第一の単一粒子から放出される発光強度が前記単位体積当たりの前記光検出領域内から発せられる背景光強度を上回っており、単位体積当たりの前記第二の単一粒子から放出される発光強度が前記単位体積当たりの前記光検出領域内から発せられる背景光強度を下回っていることを特徴とする装置。
- 請求項1乃至3のいずれかの装置であって、前記背景光が、前記試料溶液内に分散された物質による蛍光、りん光、化学発光、生物発光若しくは散乱光、又は照明光であることを特徴とする装置。
- 共焦点顕微鏡又は多光子顕微鏡の光学系を用いて試料溶液中にて分散しランダムに運動する単一粒子を検出する単一粒子検出方法であって、
前記試料溶液内に於ける前記光学系の光検出領域の位置を移動する過程と、
前記試料溶液内に於ける前記光検出領域の位置を移動させながら前記光検出領域からの光を検出して時系列の光強度データを生成する過程と、
前記時系列光強度データに於いて前記単一粒子の各々の存在を表す信号として個別に検出する過程と
を含み、
前記検出される前記光検出領域からの光が実質的に一定の背景光を含み、前記単一粒子が前記背景光よりも高い発光強度を有する第一の単一粒子と前記背景光よりも低い発光強度を有する第二の単一粒子とを含み、前記第一の単一粒子の前記信号が前記第一の単一粒子が前記光検出領域内へ進入した際に生ずる前記検出される光強度の増大であり、前記第二の単一粒子の前記信号が前記第二の単一粒子が前記光検出領域内へ進入した際に生ずる前記検出される光強度の低下であることを特徴とする方法。 - 請求項5の方法であって、更に、個別に検出された前記第一及び第二の単一粒子の存在を表す信号の数をそれぞれ計数して前記光検出領域の位置の移動中に検出された前記第一及び第二の単一粒子の数を計数する過程を含むことを特徴とする方法。
- 請求項5又は6の方法であって、単位体積当たりの前記第一の単一粒子から放出される発光強度が前記単位体積当たりの前記光検出領域内から発せられる背景光強度を上回っており、単位体積当たりの前記第二の単一粒子から放出される発光強度が前記単位体積当たりの前記光検出領域内から発せられる背景光強度を下回っていることを特徴とする方法。
- 請求項5乃至7のいずれかの方法であって、前記背景光が、前記試料溶液内に分散された物質による蛍光、りん光、化学発光、生物発光若しくは散乱光、又は照明光であることを特徴とする方法。
- 共焦点顕微鏡又は多光子顕微鏡の光学系を用いて試料溶液中にて分散しランダムに運動する単一粒子を検出する単一粒子検出用コンピュータプログラムであって、
前記試料溶液内に於ける前記光学系の光検出領域の位置を移動する手順と、
前記試料溶液内に於ける前記光検出領域の位置を移動させながら前記光検出領域からの光を検出して時系列の光強度データを生成する手順と、
前記時系列光強度データに於いて前記単一粒子の各々の存在を表す信号として個別に検出する手順と
をコンピュータに実行させ、
前記検出される前記光検出領域からの光が実質的に一定の背景光を含み、前記単一粒子が前記背景光よりも高い発光強度を有する第一の単一粒子と前記背景光よりも低い発光強度を有する第二の単一粒子とを含み、前記第一の単一粒子の前記信号が前記第一の単一粒子が前記光検出領域内へ進入した際に生ずる前記検出される光強度の増大であり、前記第二の単一粒子の前記信号が前記第二の単一粒子が前記光検出領域内へ進入した際に生ずる前記検出される光強度の低下であることを特徴とするコンピュータプログラム。 - 請求項9のコンピュータプログラムであって、更に、個別に検出された前記第一及び第二の単一粒子の存在を表す信号の数をそれぞれ計数して前記光検出領域の位置の移動中に検出された前記第一及び第二の単一粒子の数を計数する手順を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
- 請求項10のコンピュータプログラムであって、単位体積当たりの前記第一の単一粒子から放出される発光強度が前記単位体積当たりの前記光検出領域内から発せられる背景光強度を上回っており、単位体積当たりの前記第二の単一粒子から放出される発光強度が前記単位体積当たりの前記光検出領域内から発せられる背景光強度を下回っていることを特徴とするコンピュータプログラム。
- 請求項9乃至11のいずれかのコンピュータプログラムであって、前記背景光が、前記試料溶液内に分散された物質による蛍光、りん光、化学発光、生物発光若しくは散乱光、又は照明光であることを特徴とするコンピュータプログラム。
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