JP5979727B2 - インクジェット捺染用グレーインク組成物及びそれを用いた繊維の捺染方法 - Google Patents
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Description
インクジェット捺染用の染料インクとしては、シルク、ナイロン等のポリアミド系繊維用の酸性染料インク;ポリエステル系繊維用の分散染料インク;綿、レーヨン等のセルロース系繊維用の反応性染料(反応染料)インク;等が販売されている。
1)
色素中に、下記式(1)で表される化合物又はその塩を含有するインクジェット捺染用グレーインク組成物、
色素中に、更にC.I.Reactive Black 8を含有する上記1)に記載のインクジェット捺染用グレーインク組成物、
3)
更に、水溶性有機溶剤を含有する上記1)又は2)に記載のインクジェット捺染用グレーインク組成物、
4)
更に、pH調整剤としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含有する上記1)乃至3)のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用グレーインク組成物、
5)
25℃における粘度が3〜20mPa・sである上記1)及至4)のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用グレーインク組成物、
6)
上記1)乃至5)のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用グレーインク組成物、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエローインク組成物、及びブラックインク組成物を有するインクジェット捺染用インクセット、
7)
上記1)乃至5)のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用グレーインク組成物をインクとして用い、インクジェットプリンタによりセルロース系繊維に該インクを付与する工程Aと、
上記工程Aにより付与したインク中の色素を熱により上記セルロース系繊維に反応固着させる工程Bと、
上記セルロース系繊維中に残存する未固着の色素を洗浄する工程Cと、を含むセルロース系繊維の捺染方法、
8)
1種以上の糊材、アルカリ性物質、還元防止剤、及びヒドロトロピー剤を少なくとも含む水溶液を、インクを付与する前の上記セルロース系繊維に付与する、繊維の前処理工程Dを更に含む上記7)に記載のセルロース系繊維の捺染方法、
に関する。
本発明は、上記の通り、式(1)で表される化合物又は該化合物の塩を含むものであるが、両者を常に「化合物又はその塩」等と併記するのは煩雑である。このため、特に断りがない限り、便宜上、「化合物又はその塩」の両者を含めて単に「化合物」と簡略して、以下記載する。また、「グレーインク組成物」についても同様に、単に「インク組成物」と以下記載する。
上記式(2)におけるZ1、Z2、Z3、Z4のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が挙げられ、ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基が挙げられ、ヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシエトキシC1−C4アルキルが好ましい。特に好ましいものとしては、水素原子;メチル;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基;ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシエトキシC1−C4アルキル基;等が挙げられる。
無機塩の例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム塩が挙げられる。有機の陽イオンの塩の例としては、有機アミンのハロゲン塩等が挙げられる。無機の塩基の例としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。有機の塩基の例としては、有機アミン、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の上記式(2)で表される4級アンモニウム類の塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
有機ハロゲン系化合物としては、例えば、ペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。
ピリジンオキシド系化合物としては、例えば、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤としては、酢酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等;更にはアーチケミカル社製の商品名プロクセルRTMGXL(S)、プロクセルRTMXL−2(S);等が、それぞれ挙げられる。なお、本明細書中において、上付きの「RTM」は登録商標を意味する。
また、ライトイエローインク、ライトマゼンタインク、ライトシアンインクのインク組成物に含有される色素は上記の3色のインクセット、すなわちイエロー、マゼンタ、シアンの各インク組成物と同じものがよい。
インクジェットプリンタには、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式;加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式;等を利用したものがある。本発明のインクジェット捺染方法では、いかなる方式であっても使用が可能である。
前処理剤のセルロース系繊維への付与は、例えばパディング法が挙げられる。パディングの絞り率は40〜90%程度が好ましく、より好ましくは60〜80%程度である。
本発明のインク組成物をインクジェットインクとして使用しても、ノズル付近におけるインク組成物の乾燥による固体析出は非常に起こりにくく、噴射器(記録ヘッド)を閉塞することもない。また、本発明のインク組成物は連続式インクジェットプリンタを用い、比較的長い時間間隔においてインクを再循環させて使用する場合においても、又はオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な使用においても、物理的性質の変化を起こさない。
更に、本発明のインク組成物により捺染された布帛は、特に耐水性、耐光性が良好であり、この理由から、染布の長期保存安定性にも優れている。また、従来のインクと比較して発色の再現性が良く、特にグレーの色相範囲での色再現性が非常に優れている。
このように、本発明のインク組成物は、各種の記録インク用途、特にセルロース系繊維のインクジェット捺染に極めて有用である。
2−ナフチルアミン−3,6,8−トリスルホン酸38.3部を水300部中に中性で溶解し、氷を加えて15〜20℃とし、亜硝酸ナトリウム7.0部及び塩酸23部によりジアゾ化した。これにより得られたジアゾニウム塩の溶液に(3−アミノフェニル)尿素15.1部を加え、10%炭酸ナトリウム水溶液を添加してpH5.0〜6.0に保ちながら15〜20℃でカップリングさせた。カップリング終了後、氷を加えて0〜5℃とし、分散剤0.2部を加え、次いで塩化シアヌル18.5部を加え、10%炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH6.0〜7.0を保ちながら0〜5℃で縮合させた。反応終了を確認した後、タウリン12.5部を加え、10%炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH6.0〜7.0に保ちながら55〜60℃で反応を終了させた。反応終了を確認した後、塩化ナトリウムを加えて塩析、濾過し、80℃以下で乾燥することにより、上記式(1)で表されるゴールデンイエロー染料の赤味黄色粉末を得た。この赤味黄色粉末を10質量倍の水中で逆浸透法により精製を行い、80℃以下で乾燥して、無機塩の極めて少ない上記式(1)で表されるゴールデンイエロー染料の赤味黄色結晶(λmax=420nm:水中)を得た。
下記表2に示した組成比で染料を混合し、固形分が溶解するまでおおよそ1時間撹拌することによりインク組成物を得た後、0.45μmのメンブランフィルター(商品名、セルロースアセテート系濾紙、アドバンテック社製)で濾過することにより試験用のインク組成物を調製した。
上記式(1)で表される化合物(イエロー系):X=10部
[参考例2]
C.I.Reactive Black 8(ブラック系):X=10部
参考例1で用いたイエロー系の染料の代わりにC.I.Reactive Yellow 95、C.I.Reactive Orange 12を、レッド系の染料としてC.I.Reactive Red 31を、ブルー系の染料としてC.I.Reactive Blue 15:1をそれぞれ使用する以外は参考例1と同様にして、比較例1〜4のインク組成物を調製した。
C.I.Reactive Yellow 95(イエロー系):X=10部
[比較例2]
C.I.Reactive Orange 12(イエロー系):X=10部
[比較例3]
C.I.Reactive Red 31(レッド系):X=10部
[比較例4]
C.I.Reactive Blue 15:1(ブルー系):X=10部
アルギン酸ナトリウム、尿素、炭酸水素ナトリウム、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む水溶液を用いてパディング法にて前処理を行った木綿布に、参考例1、2のインクを使用してインクジェットプリンタPX−101(セイコーエプソン社製)にてベタ柄を捺染した。この捺染物を60〜80℃で中間乾燥後、100〜103℃で2、5、8、15、20分間スチーミング処理を行った。水洗後、95〜100℃の沸騰水で10分間洗浄し、水洗、乾燥することにより試験染布を得た。この試験染布を「参考染布1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、2−1、2−2、2−3、2−4、2−5」とする。
参考例1、2のインク組成物の代わりに、比較例1〜4のインク組成物を用いる以外はそれぞれ上記と同様にして各試験染布をそれぞれ得た。これらをそれぞれ「比較染布1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、3−1、3−2、3−3、3−4、3−5、4−1、4−2、4−3、4−4、4−5」とする。
上記のようにして得た各試験染布の色相について評価を行った。色相は、GRETAG−MACBETH社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて、染布を測色することによりa*、b*及び各色の反射濃度D値を測定した。また、スチーミング時間への依存性を分かり易く表現する目的として、それぞれのD値についてスチーミング時間が8分のD値を100%としてその割合を%表記した。結果を下記表3に示す。
[実施例1]
上記式(1)で表される化合物(イエロー系):X=0.1部
C.I.Reactive Black 8(ブラック系):X=3部
(合計 3.1部)
比較例5〜6として、参考例2及び比較例1〜4で使用した染料を配合することによりグレーインク組成物を調製した。なお、グレーインク組成物の比較例としては、上記式(1)で表される化合物と同種のイエロー系染料を配合したインク組成物(比較例5)と、イエロー系、レッド系、ブルー系の3種配合のグレーインク組成物(比較例6)とを調製した。
[比較例5]
C.I.Reactive Orange 12(イエロー系):X=0.1部
C.I.Reactive Black 8(ブラック系):X=3部
(合計 3.1部)
[比較例6]
C.I.Reactive Yellow 95(イエロー系):X=1.5部
C.I.Reactive Red 31(レッド系):X=1.5部
C.I.Reactive Blue 15:1(ブルー系):X=1.5部
(合計 4.5部)
アルギン酸ナトリウム、尿素、炭酸水素ナトリウム、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む水溶液を用いてパディング法にて前処理を行った木綿布に、実施例1のインクを使用してインクジェットプリンタPX−101(セイコーエプソン社製)にてベタ柄を捺染した。この捺染物を60〜80℃で中間乾燥後、100〜103℃で8、15、20分間スチーミング処理を行った。水洗後、95〜100℃の沸騰水で10分間洗浄し、水洗、乾燥することにより試験染布を得た。この試験染布を「染布1−1、1−2、1−3」とする。
実施例1のインク組成物の代わりに、比較例5〜6のインク組成物を用いる以外はそれぞれ上記と同様にして各試験染布をそれぞれ得た。これらを「比較染布5−1、5−2、5−3、6−1、6−2、6−3」とする。
上記のようにして得た各試験染布の色相について評価を行った。色相は、GRETAG−MACBETH社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて、染布を測色することによりa*、b*及びブラックの反射濃度DB値を測定した。また、スチーミング時間への依存性を分かり易く表現する目的として、それぞれのDB値についてスチーミング時間が8分のDB値を100%としてその割合を%表記した。結果を下記表4に示す。
表3の結果から、単一染料インク組成物で染色を行った染布では、合成例1のイエロー系染料及びC.I.Reactive Black 8により調製した染布は、各比較例に比べてスチーミング時間に対する染着濃度の変化が少なかった。特に好ましいスチーミング時間である8〜20分の間では、参考例1で作成した参考染布の濃度変化率は99〜100%の範囲にあり、参考例2で作成した参考染布の濃度変化率は100〜101%の範囲にあり、8分以上では染着濃度がスチーミング時間に依存しないことがわかった。
これに対し、各比較例で作成した比較染布では同じスチーミング時間の範囲で、比較例1の染布は91〜100%、比較例2の染布は96〜100%、比較例3の染布で88〜100%、比較例4の染布で100〜102%であり、参考例と比べ染着濃度がスチーミング時間によって変化することが分かった。
表4の結果から、配合グレーインク組成物で染色を行った染布では、合成例1のイエロー系染料とC.I.Reactive Black 8との配合である実施例1により調製した染布と各比較例により調製した染布とは、ともにスチーミング時間に対する染着濃度の変化が少なかった。特に好ましいスチーミング時間である8〜20分の間では、実施例1及び比較例5〜6で作成した染布の濃度変化率は99〜100%の範囲にあり、8分以上では染着濃度がスチーミング時間に依存しないことが分かった。
しかし、各染布のa*、b*の値より、色相については実施例1及び比較例5〜6で作成した染布はともにa*、b*の値が0に近く、グレーの色相にあるが、本発明の実施例1のグレーインクで作成した染布のみがスチーミング時間の変化によらずa*、b*が一定なのに対して、比較例5〜6で作成した比較染布はa*、b*の値がスチーミング時間によって変化しており、グレーとしての色調がぶれることが分かった。特に比較例6で作成した染布はa*のぶれが大きく、グレーの色調は赤味から青味、黄味と徐々に変化しており、3色の染料でグレーを配合する方が、2色で配合するよりも各色のスチーミング依存性に影響され易く、グレーとしての色が変化してしまうことが分かった。
以上の結果から、実施例1の染布は比較例5〜6に比べて、グレーの色相範囲でスチーミング時間に対する発色の再現性が高く、高画質の染布であった。
Claims (7)
- 更に、水溶性有機溶剤を含有する請求項1に記載のインクジェット捺染用グレーインク組成物。
- 更に、pH調整剤としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含有する請求項1又は2に記載のインクジェット捺染用グレーインク組成物。
- 25℃における粘度が3〜20mPa・sである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用グレーインク組成物。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用グレーインク組成物、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエローインク組成物、及びブラックインク組成物を有するインクジェット捺染用インクセット。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用グレーインク組成物をインクとして用い、インクジェットプリンタによりセルロース系繊維に該インクを付与する工程Aと、
前記工程Aにより付与したインク中の色素を熱により前記セルロース系繊維に反応固着させる工程Bと、
前記セルロース系繊維中に残存する未固着の色素を洗浄する工程Cと、を含むセルロース系繊維の捺染方法。 - 1種以上の糊材、アルカリ性物質、還元防止剤、及びヒドロトロピー剤を少なくとも含む水溶液を、インクを付与する前の前記セルロース系繊維に付与する、繊維の前処理工程Dを更に含む請求項6に記載のセルロース系繊維の捺染方法。
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