JP5910242B2 - 六ホウ化ランタン微粒子の製造方法、六ホウ化ランタン微粒子、六ホウ化ランタン焼結体、六ホウ化ランタン膜及び有機半導体デバイス - Google Patents
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Description
ホウ化物としては、例えば、ホウ化ハフニウム、ホウ化チタン、ホウ化タングステン、ホウ化ランタン等を挙げることができる。
電子放出材料としてのLaB6は薄膜として用いられることが多く、その製膜手法には種々の手法が検討されている。それらの中でもLaB6ターゲットを用いたスパッタリング法は、緻密な膜を形成できるので好適に用いられている。
しかし、従来のLaB6微粒子の製造方法は、粒径を小さくするために粉砕工程が必要であったり、粒成長を防止するために過剰の炭素を加えたりしているため、高純度かつ微粒子の特徴を持つLaB6粒子を得ることは難しく、高純度化と緻密化を両立することは困難であった。
すなわち、原料であるLa化合物微粒子とB化合物微粒子との混合において、LaB6の化学量論比よりもLa化合物微粒子が過剰になるようにこれらを混合することで、熱処理時に未反応のB化合物が残存しにくくなることを見出した。これにより、焼結体の高純度化を阻害する要因であったホウ素の残留が抑制され、未反応物あるいは残留物としては、無機酸洗浄、特に塩酸洗浄で簡単に除去可能なLa化合物が中心となり、高純度なLaB6微粒子を得ることができる。
また、これらLa化合物微粒子とB化合物微粒子を溶媒及び所定量の樹脂に混合してなる混合液を、乾燥及び炭化処理し、次いで所定の熱処理を行うことにより、粒径が小さいLaB6微粒子が合成できることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1](a)平均粒径が20nm以上220nm以下のランタン化合物微粒子と、平均粒径が20nm以上10μm以下のホウ素化合物微粒子とを、B/La原子比で4以下になるように溶媒及び樹脂中に混合させる工程、(b)前記(a)工程で得られた混合液を乾燥させる工程、(c)前記(b)工程により得られる乾燥物を真空中又は不活性ガス雰囲気中で炭化させた後、真空、還元雰囲気及び不活性ガス雰囲気のいずれか1つから選択される雰囲気中にて1150℃以上1600℃以下で熱処理する工程、及び、(d)前記(c)工程により得られる熱処理物を、大気中にて500℃以上800℃以下で加熱酸化処理し、次いで無機酸中で酸処理する工程を有し、前記(a)工程において、樹脂の質量が、ランタン化合物微粒子及びホウ素化合物微粒子の合計質量に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする、六ホウ化ランタン微粒子の製造方法、
[2]前記(a)工程で用いるランタン化合物微粒子の平均粒径が20nm以上100nm以下である、上記[1]に記載の六ホウ化ランタン微粒子の製造方法、
[3]前記(a)工程で用いる樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチルセルロース、ポリカーボネート及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[1]又は[2]に記載の六ホウ化ランタン微粒子の製造方法、
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の六ホウ化ランタン微粒子の製造方法により得られる六ホウ化ランタン微粒子であって、炭素元素含有量が1質量%以下、酸素元素含有量が1質量%以下であり、かつ平均粒径が50nm以上160nm以下である、六ホウ化ランタン微粒子、
[5]前記炭素元素含有量が0.5質量%以下、前記酸素元素含有量が0.8質量%以下である、上記[4]に記載の六ホウ化ランタン微粒子、
[6]前記平均粒径が80nm以上130nm以下である、上記[4]又は[5]に記載の六ホウ化ランタン微粒子、
[7]上記[4]乃至[6]のいずれかに記載の六ホウ化ランタン微粒子と、炭素元素含有量が1質量%以下、酸素元素含有量が1質量%以下であり平均粒径が1μm以上5μm以下の高純度六ホウ化ランタン粉末とを含有しており、前記六ホウ化ランタン微粒子と前記高純度六ホウ化ランタン粉末との合計に対する、前記六ホウ化ランタン微粒子の含有量が、3質量%以上30質量%以下である六ホウ化ランタン焼結体、
[8]上記[7]に記載の六ホウ化ランタンをターゲットとして用い、成膜してなることを特徴とする六ホウ化ランタン膜、
[9]上記[8]に記載の六ホウ化ランタン膜を備えたことを特徴とする有機半導体デバイス。
まず本実施形態の六ホウ化ランタン微粒子の製造方法について説明する。
[六ホウ化ランタン微粒子の製造方法]
本実施形態の六ホウ化ランタン(LaB6)微粒子の製造方法は、(a)平均粒径が20nm以上220nm以下のランタン化合物微粒子と、平均粒径が20nm以上10μm以下のホウ素化合物微粒子とを、B/La原子比で4以下になるように溶媒及び樹脂中に混合させる工程、(b)前記(a)工程で得られた混合液を乾燥させる工程、(c)前記(b)工程により得られる乾燥物を不活性ガス雰囲気中で炭化させた後、真空、還元雰囲気及び不活性ガス雰囲気のいずれか1つから選択される雰囲気中にて1150℃以上1600℃以下で熱処理する工程、及び、(d)前記(c)工程により得られる熱処理物を、大気中にて500℃以上800℃以下で加熱酸化処理し、次いで無機酸中で酸処理する工程を有し、前記(a)工程において、樹脂の質量が、ランタン化合物微粒子及びホウ素化合物微粒子の合計質量に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする。
本実施形態の(a)工程は、平均粒径が20nm以上220nm以下のランタン化合物微粒子と、平均粒径が20nm以上10μm以下のホウ素化合物微粒子とを、B/La原子比で4以下になるように溶媒及び樹脂中に混合させる工程、すなわち、ランタン化合物微粒子とホウ素化合物微粒子の混合比を、LaB6の化学量論比よりもLaが過剰であるように溶媒及び所定量の樹脂中に混合させる工程である。
(a)工程において、出発原料となるランタン(La)化合物微粒子としては、ランタンの水酸化物、酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩よりなる微粒子などが挙げられるが、水酸化物[La(OH)3]、酸化物[La2O3]よりなる微粒子が好ましい。他の化合物微粒子は塩素、硫黄、窒素、炭素などの残留が懸念されるためである。
(a)工程において、出発原料となるホウ素化合物微粒子としては、酸化ホウ素、炭化ホウ素よりなる微粒子などが挙げられるが、ランタン化合物微粒子の水酸基や酸素を還元反応によって除去するために炭化ホウ素[B4C]よりなる微粒子であることが好ましい。
なお、この炭化ホウ素微粒子中の炭素は、後述するように過剰に添加されているランタン化合物微粒子とすべて反応してしまうために最終的なLaB6微粒子には残らない。
ホウ素化合物微粒子の平均粒径は、微細なランタン化合物微粒子と十分に混合するために、20nm以上10μm以下とする。この平均粒径は、好ましくは20nm以上8μm以下であり、より好ましくは20nm以上5μm以下である。
(a)工程において、樹脂としては、後述する(c)工程で炭化処理後に残渣として炭素を含み、後述する(d)工程の無機酸により除去できるものであれば特に限定されないが、コスト及び取扱性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチルセルロース、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルピロリドン(PVP)等が好ましい。
溶媒は上記樹脂を溶解させやすいものを適宜選択すればよく、コスト及び取扱性の観点からは純水やアルコール等が好ましい。
(a)工程では、ランタン化合物微粒子とホウ素化合物微粒子とが、B/La原子比で4以下となるように溶媒及び樹脂に混合させる。このB/La原子比が4より大きい場合、Laが少なすぎるため、未反応のホウ素や炭素が残留するおそれがある。これら残留したホウ素や炭素は酸洗浄で完全に除去できないために最終的なLaB6粒子中に不純物として残ってしまい、高純度化を達成できない。B/La原子比は好ましくは2以上4以下である。原子比が2以上4以下であれば、未反応のホウ素や炭素の残留がなく、また未反応のLa化合物量を低減でき、後述の(d)工程における酸洗浄による除去物量も低減できるため、生産性を向上させることができる。この観点から、B/La原子比は、より好ましくは2.8以上3.2以下である。
たとえば、ランタン化合物微粒子とホウ素化合物微粒子を、B/La原子比で4以下とランタンが過剰になるように溶媒に均一に分散させた後、この分散液に樹脂を溶解させてもよい。ただし、溶媒中にランタン化合物微粒子とホウ素化合物微粒子をより均一に分散させるためには、ランタン化合物微粒子とホウ素化合物微粒子をそれぞれ溶媒に均一に分散させて2種類の分散液を製造した後、それぞれの分散液に樹脂を溶解させて2種類の混合液A及び混合液Bを得、B/La原子比で4以下とランタンが過剰になるようにこれら混合液A及びBを混合させる方法が好ましい。また、樹脂を溶媒に溶解させるタイミングは、上記のように、ランタン化合物微粒子及びホウ素化合物微粒子を溶媒に分散させるタイミングよりも後としてもよいが、前としてもよく、同時としてもよい。但し、ランタン化合物微粒子及びホウ素化合物微粒子の表面に樹脂をより均一に被覆させる観点からは、溶媒に対して、先ずランタン化合物微粒子及びホウ素化合物微粒子をそれぞれ溶媒に均一に分散させ、次いで樹脂を溶解させることがより好ましい。
実施形態の(b)工程は、前記(a)工程で得られた混合液を乾燥させる工程である。乾燥方法は溶媒を除去できれば特に限定されず、スプレードライ法、凍結乾燥法、大気乾燥法、真空乾燥法が挙げられる。La化合物とホウ素化合物がより均一な混合状態を保って乾燥できる点で、スプレードライ法が好ましい。
本実施形態の(c)工程は、前記(b)工程で得られた乾燥物を真空中又は不活性ガス雰囲気中で炭化した後、真空、還元雰囲気及び不活性ガス雰囲気のいずれか1つから選択される雰囲気中にて熱処理する工程である。本工程により、LaB6微粒子が合成される。
炭化温度は、樹脂を分解し、かつLaB6微粒子の粒成長を抑制するための炭素を残留させる必要があるため、500℃以上700℃以下、特に520℃以上650℃以下、とりわけ550℃以上600℃以下が好ましい。炭化処理時間は適宜調整して実施すればよいが、炭化温度の場合と同様の必要性と生産性のバランスの観点から、1時間以上4時間以下、特に2時間以上3時間以下が好ましい。
本実施の形態において、炭化処理とは、前記(a)工程の分散液製造時に加えられた樹脂を分解する処理をいう。
一方、焼成時間は、合成反応性及び生産性のバランスの観点から、1〜4時間程度、特に1〜3時間、とりわけ2〜3時間が好ましい。
本実施形態の(d)工程は、前記(c)工程で得られた熱処理物(LaB6合成微粒子)を大気中にて加熱酸化処理させ、次いで無機酸中で酸処理させる工程である。
前記(c)工程で得られるLaB6合成微粒子には、未反応物や副生成物であるランタン酸化物、ランタン炭化物、ホウ素酸化物、ランタン−ホウ素複合酸化物、ホウ素炭化物等が存在していると考えられる。そこで、大気中で加熱酸化処理して、ランタン炭化物やホウ素炭化物を、それぞれ酸化物に変換する。これらのランタン酸化物、ホウ素酸化物、及びランタン−ホウ素複合酸化物は、後述する酸処理工程によって容易に除去することができる。
好ましい酸化処理温度は550℃以上700℃以下であり、より好ましくは600℃以上650℃以下である。また、大気中で熱処理する時間は、0.5時間以上4時間以下が好ましい。熱処理時間を上記範囲とすることにより、LaB6合成微粒子の酸化を抑制しつつ不純物炭化物を酸化できる。この熱処理時間は1時間以上4時間以下、特に2時間以上4時間以下であることが好ましい。
酸処理に用いる無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられるが、無機酸が強い酸化力を持つと、LaB6自体を酸化させて収率を低下させてしまう場合があることから、塩酸を用いることが好ましい。
また、この処理は常温で行ってもよいが、加熱して行うのが好ましく、加熱処理する場合の処理温度は、40℃以上80℃以下が好ましい。処理温度がこの範囲にあれば、LaB6自体が酸化されることなく、短時間で不純物の溶出を行うことができるため生産性が良好となる。この処理時間は、30分以上2時間以下、特に1時間以上1.5時間以下であることが好ましい。
上記加熱酸化処理及び酸処理といった高純度化処理により、LaB6微粒子が高純度化されたLaB6微粒子を好適に得ることができる。
本実施形態のLaB6微粒子は、炭素元素含有量が1質量%以下、酸素元素含有量が1質量%以下であり、かつ平均粒径が50nm以上160nm以下であることを特徴とする。このLaB6微粒子は、前記の製造方法によって好適に製造することができる。
上記特性を有するLaB6微粒子であれば、高純度で緻密なLaB6焼結体を得ることができる。
前記平均粒径は70nm以上かつ150nm以下であることが好ましく、80nm以上130nm以下であることがより好ましい。
本実施形態のLaB6焼結体は、本実施形態の六ホウ化ランタン微粒子と、炭素元素含有量が1質量%以下、酸素元素含有量が1質量%以下であり平均粒径が1μm以上5μm以下の高純度六ホウ化ランタン粉末とを含有しており、前記六ホウ化ランタン微粒子と前記高純度六ホウ化ランタン粉末との合計に対する、前記六ホウ化ランタン微粒子の含有量が、3質量%以上30質量%以下であるものである。
本実施の形態に係る六ホウ化ランタン焼結体は、前記実施の形態に係る六ホウ化ランタン微粒子を含有してなるので、高純度で緻密であって、結晶性に優れ、仕事関数が低いという優れた効果を奏する。
本実施形態のLaB6焼結体は、窒素元素が0.1質量%以上かつ3質量%以下含有されてなることが好ましい。
本実施形態の高純度六ホウ化ランタン粉末(以下、「高純度LaB6粉末」と略記する場合がある)は、炭素元素含有量が1質量%以下、酸素元素含有量が1質量%以下であり、平均粒径が1μm以上5μm以下であれば特に限定されない。平均粒径を上記範囲とすることで、酸素、炭素の除去が容易であり、焼結の駆動力となる表面エネルギーが大きくなり高密度の焼結体を得ることが容易である。
なお、原料のLaB6粉末を前記高純度化処理により高純度LaB6粉末とした際の粒径減少率は、数%程度と小さいことから、原料のLaB6粉末の平均粒径は、所望の高純度LaB6粉末の平均粒径と同等であるものを用いればよい。
上記LaB6焼結体に窒素元素を0.1質量%以上3質量%以下含有させることが好ましい理由は、得られるLaB6膜の仕事関数を低くし、電気特性を向上させるためである。窒素元素を含有させることによりこれらの特性が向上する理由は、次のように考えられる。
これに対し、本実施形態におけるLaB6焼結体では、該焼結体中に所定量の窒素元素が含有されることにより、該焼結体のLaB6結晶格子内に窒素の一部が固溶され、LaB6膜内の内部応力が緩和され、上記結晶性低下が改善されると考えられる。
このような観点から、窒素元素の含有量は、0.1質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
したがって、窒素を固溶させることで仕事関数に悪影響を与えることなく、LaB6膜の内部応力を緩和することができるので、LaB6膜の結晶性が改善され、仕事関数を小さく維持しつつ、かつLaB6膜の剥離の発生を抑制することができる。
LaB6膜の導電性は、ホウ素の2s、2p軌道とランタンの5d軌道が混在状態となって伝導帯の幅が拡大していることに由来する。
窒素が所定量含有されたLaB6焼結体をターゲットとして用い、そのターゲットにより成膜されてなるLaB6膜の導電性が向上するのは、LaB6膜のLaB6結晶格子内に窒素が固溶されているので、ホウ素の2p軌道よりもエネルギー準位が高い窒素の2p軌道も、ランタンの5d軌道と混在状態となり、窒素が固溶していないLaB6と比較して、伝導帯の幅がより拡大しているためと考えられる。
本実施形態におけるLaB6焼結体は、例えば、(e)本実施形態の六ホウ化ランタン微粒子と、炭素元素含有量が1質量%以下、酸素元素含有量が1質量%以下であり平均粒径が1μm以上5μm以下の高純度六ホウ化ランタン粉末を混合する工程と、(f)真空雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、または窒素ガス雰囲気下において、温度1700℃以上1950℃以下、圧力10MPa以上40MPa以下で焼結する工程を有する製造方法により得ることができる。
本実施形態の六ホウ化ランタン微粒子と、高純度LaB6粉末を混合する方法については各種方法をとることができ、その方法は限定されないが、例えば、有機溶媒中でスラリー化しボールミル混合等を行う方法が挙げられる。また、任意のバインダーを添加し、有機溶媒中でスラリー化しボールミル混合を行ってもよい。
混合した粉末は、減圧下あるいは不活性雰囲気中乾燥するのが望ましい。またスプレードライ等で乾燥、造粒させ顆粒にしても良い。
この(f)工程では、前述した(e)工程により得られた混合粉末を、真空雰囲気下、不活性ガス雰囲気下及び窒素ガス雰囲気下において、温度1700℃以上1950℃以下、圧力10MPa以上40MPa以下の条件で焼結することにより、LaB6焼結体を好適に得ることができる。
この焼結工程においては、混合工程で得られた混合粉末はそのまま成型して焼結してもよいし、任意のバインダーとともに溶媒中に添加してスラリー化し、造粒した後に成型、脱脂しても良い。
なお、条件が整えば、熱間等方圧プレス(HIP)焼結法など、他の焼結法を用いてもよい。
また圧力を10MPa以上とすることにより十分な緻密化が行われ、相対密度が高いLaB6焼結体を得ることができる。加圧力は高い方が良いが、通常ホットプレス焼結に使用する焼結冶具の耐圧力は40MPaであり、それ以上の高耐圧冶具はほとんど存在しないことから、上限は40MPaが目安となる。
焼結雰囲気を窒素ガス雰囲気にした場合には、高純度で緻密であって、結晶性に優れ、仕事関数が低く、電気特性に優れたLaB6膜の製造用のターゲットとして好適なLaB6焼結体を、効果的に製造することができる。
本実施形態のLaB6膜は、上記LaB6焼結体をターゲットとして用い、成膜されてなる。
本実施形態のLaB6膜は、本実施の形態に係る六ホウ化ランタン焼結体をターゲットとして用い、成膜されてなるので、高純度かつ緻密であり、結晶性に優れ、仕事関数が低いという優れた効果を奏する。
成膜方法は、焼結体をターゲットとして用いる方法であれば特に限定されず、例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法などが挙げられる。これらの方法の中でも、スパッタリング法が好ましい。
スパッタリング時の雰囲気は、Arガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
以上の方法により、仕事関数が低く、結晶性が高く、緻密なLaB6膜を得ることができる。
また、所定量の窒素が含有されたLaB6焼結体をターゲットして用いて成膜されたLaB6膜の場合には、仕事関数が低く、結晶性が高く、緻密で電気特性が良好なLaB6膜を得ることができる。
本実施形態の有機半導体デバイスは、本実施形態のLaB6膜を備えたことを特徴とする。有機半導体デバイスとしては、電子を運搬する役割を担う膜等を要する有機半導体デバイスであれば特に限定されず、例えば、有機EL素子や有機薄膜太陽電池等が挙げられる。
また、電子輸送層または電子注入層と接する少なくとも一方の電極は、仕事関数の低い金属(リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、インジウム、銀、錫、鉛、クロムなど、及びそれらの合金等)から構成されていることが好ましい。
本実施形態のLaB6膜を有機半導体デバイス用途に用いる場合には、所定量の窒素が含有されたLaB6焼結体ターゲットして用いて成膜されたLaB6膜を用いるのが、電気特性にも優れる点で好ましい。
また本実施形態のLaB6微粒子は、高純度かつ微粒子であるので、スパッタリングターゲットとして用いられるLaB6焼結体作製用の原料粉末として好適に用いることができる。LaB6ターゲットを用い、スパッタリング法により成膜された薄膜は電子放出素子材料などとして有用である。
さらに、所定量の窒素が含有された六ホウ化ランタン焼結体によれば、上記特性に加えて、さらに仕事関数が低く、電気特性に優れたLaB6膜の製造用のターゲットとして好適なLaB6焼結体を得ることができる。
さらに、所定量の窒素が含有された六ホウ化ランタン焼結体をターゲットとして用い、成膜されてなる六ホウ化ランタン膜の場合には、上記特性に加えて、さらに仕事関数が低く、電気特性に優れたLaB6膜を得ることができる。
さらに、所定量の窒素が含有された焼結体をターゲットとして用いて成膜された仕事関数が低く電気特性に優れたLaB6膜が備えられた場合には、さらに電子輸送効率が高い有機半導体デバイスを得ることができる。
なお、各例における諸特性は下記の方法に従って測定した。
(1)酸素元素含有量及び炭素元素含有量
酸素元素含有量は、試料粉末40mgを取り、LECO社製TC−436型を使用して、不活性ガス溶融法にて測定した。
また、炭素元素含有量は、試料粉末120mgを取り、LECO社製WC−200型を使用して,赤外線吸収を用いる方法にて測定した。
(2)La(OH)3粉末、B4C粉末及びLaB6微粒子の平均粒径
La(OH)3粉末、B4C粉末及びLaB6微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM、日立製作所製、S−4000)にて粒子を観察し、視野内の粒子100個の最大径(長径)の平均値として求めた。特に指定のない限り、La(OH)3粉末、B4C粉末及びLaB6微粒子の粒径とは、粒子の最大径を意味する。
174.8質量部の純水(溶媒)に対して、平均粒径50nmのLa(OH)3粉末9.2質量部と、樹脂0.46質量部(La(OH)3粉末の質量に対して5質量%)とを投入し、超音波ホモジナイザーを用いて分散させた(混合液A)。また、38.0質量部の純水(溶媒)に対して、平均粒径600nmのB4C粉末2.0質量部と、樹脂0.1質量部(B4C粉末の質量に対して5質量%)とを投入し、超音波ホモジナイザーで分散させた(混合液B)。これらの混合液A及び混合液BをLaとBの原子比がB/La=3となるように混合した(混合液C)。
上記樹脂としては、ポリビニルピロリドン((株)日本触媒社製 K−30)を用いた。
次いで、この混合粉末を窒素中550℃で2時間加熱して炭化処理を行った。次いで、真空中1300℃で2時間熱処理してLaB6微粒子を含む焼成物を得た。
実施例1において、樹脂をLa(OH)3粉末の質量に対して1質量%とし、かつ樹脂をB4C粉末の質量に対して1質量%にした以外は同様にして、LaB6微粒子を得た。
得られたLaB6微粒子の粒径は100nm〜150nmであり、平均粒径は130nmであった。このLaB6微粒子の炭素元素含有量は0.12質量%、酸素元素含有量は0.40質量%であった。
実施例1において、樹脂をLa(OH)3粉末の質量に対して10質量%とし、かつ樹脂をB4C粉末の質量に対して10質量%にした以外は同様にして、LaB6微粒子を得た。
得られたLaB6微粒子の粒径は80nm〜120nmであり、平均粒径は100nmであった。このLaB6微粒子の炭素元素含有量は0.50質量%、酸素元素含有量は0.60質量%であった。
実施例1の真空中における熱処理温度を1200℃にした以外は同様にしてLaB6微粒子を得た。
得られたLaB6微粒子の粒径は70nm〜110nmであり、平均粒径は80nmであった。このLaB6微粒子の炭素元素含有量は0.10質量%、酸素元素含有量は0.40質量%であった。
実施例1の熱処理時の雰囲気を水素50体積%、アルゴン50体積%の還元雰囲気にした以外は同様にしてLaB6微粒子を得た。
得られたLaB6微粒子の粒径は90nm〜130nmであり、平均粒径は120nmであった。このLaB6微粒子の炭素元素含有量は1.0質量%、酸素元素含有量は0.80質量%であった。
実施例1において、分散液Bの純水量を47.5質量部、B4C粉末量を2.5質量部とし、LaとBの原子比をB/La=3.8となるように混合した以外は同様にして、LaB6微粒子を得た。
得られたLaB6微粒子の粒径は80nm〜120nmであり、平均粒径は100nmであった。このLaB6微粒子の炭素元素含有量は0.16質量%、酸素元素含有量は0.44質量%であった。
実施例1において、分散液Bの純水量を24.7質量部、B4C粉末量を1.3質量部とし、LaとBの原子比をB/La=2となるように混合した以外は同様にして、LaB6微粒子を得た。
得られたLaB6微粒子の粒径は80nm〜120nmであり、平均粒径は100nmであった。このLaB6微粒子の炭素元素含有量は0.14質量%、酸素元素含有量は0.42質量%であった。
実施例1におけるLa(OH)3粉末として、平均粒径100nmのLa(OH)3粉末を用いた以外は同様にして、LaB6微粒子を得た。
得られたLaB6微粒子の粒径は100nm〜150nmであり、平均粒径は130nmであった。このLaB6微粒子の炭素元素含有量は0.18質量%、酸素元素含有量は0.42質量%であった。
実施例1におけるLa(OH)3粉末として、平均粒径200nmのLa(OH)3粉末を用いた以外は同様にして、LaB6微粒子を得た。
得られたLaB6微粒子の粒径は130nm〜180nmであり、平均粒径は150nmであった。このLaB6微粒子の炭素元素含有量は0.18質量%、酸素元素含有量は0.42質量%であった。
実施例1のLa(OH)3粉末とB4C粉末に対して、樹脂を混合しなかった以外は同様にして、LaB6微粒子を得た。
得られたLaB6微粒子の粒径は120nm〜250nmであり、平均粒径は180nmと大きかった。このLaB6微粒子の炭素元素含有量は0.15質量%、酸素元素含有量は0.43質量%であった。
実施例1において、樹脂をLa(OH)3粉末の質量に対して20質量%とし、かつ樹脂をB4C粉末の質量に対して20質量%にした以外は同様にして、LaB6微粒子を得た。
得られたLaB6微粒子は、樹脂が完全には除去できておらず、樹脂どうしが凝集しているものも観察された。得られたLaB6微粒子の粒径は180nm〜250nmであり、平均粒径も200nmと大きかった。また、このLaB6微粒子の炭素元素含有量は1.8質量%、酸素元素含有量は2.0質量%と不純物量も多かった。
実施例1のLa(OH)3粉末として、平均粒径が250nmのものを用いた以外は同様にして、LaB6微粒子を得た。
得られたLaB6微粒子の粒径は380nm〜500nmであり、平均粒径は400nmと大きかった。このLaB6微粒子の炭素元素含有量は0.32質量%、酸素元素含有量は0.55質量%であった。
Claims (7)
- (a)平均粒径が20nm以上220nm以下のランタン化合物微粒子と、平均粒径が20nm以上10μm以下のホウ素化合物微粒子とを、B/La原子比で4以下になるように溶媒及び樹脂中に混合させる工程、
(b)前記(a)工程で得られた混合液を乾燥させる工程、
(c)前記(b)工程により得られる乾燥物を真空中又は不活性ガス雰囲気中で炭化させた後、真空、還元雰囲気及び不活性ガス雰囲気のいずれか1つから選択される雰囲気中にて1150℃以上1600℃以下で熱処理する工程、及び、
(d)前記(c)工程により得られる熱処理物を、大気中にて500℃以上800℃以下で加熱酸化処理し、次いで無機酸中で酸処理する工程
を有し、
前記(a)工程において、樹脂の質量が、ランタン化合物微粒子及びホウ素化合物微粒子の合計質量に対して、0.5質量%以上10質量%以下である六ホウ化ランタン微粒子の製造方法。 - 前記(a)工程で用いるランタン化合物微粒子の平均粒径が20nm以上100nm以下である、請求項1に記載の六ホウ化ランタン微粒子の製造方法。
- 前記(a)工程で用いる樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチルセルロース、ポリカーボネート及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の六ホウ化ランタン微粒子の製造方法。
- 炭素元素含有量が0.1質量%以上1質量%以下、酸素元素含有量が1質量%以下であり、かつ走査型電子顕微鏡にて観察した視野内の粒子100個の最大径の平均値である平均粒径が50nm以上160nm以下である、六ホウ化ランタン微粒子。
- 走査型電子顕微鏡にて観察した粒子の最大径である粒径が、前記平均粒径に対して上下限値30nm以下の範囲にある、請求項4に記載の六ホウ化ランタン微粒子。
- 前記炭素元素含有量が0.1質量%以上0.5質量%以下、前記酸素元素含有量が0.8質量%以下である、請求項4又は5に記載の六ホウ化ランタン微粒子。
- 前記平均粒径が80nm以上130nm以下である、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の六ホウ化ランタン微粒子。
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