JP5884738B2 - キシリレンジアミンの製造方法 - Google Patents
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Description
ジシアノベンゼンを触媒の存在下、液相で水素化してキシリレンジアミンを製造する方法は種々開示されている。例えば特許文献9には、ジシアノベンゼンをアルコール系溶媒中で微量の苛性アルカリ剤と共にラネーニッケルやラネーコバルトを用い、オートクレーブによる回分水素化反応を行い対応するキシリレンジアミンを得ることが記載されている。特許文献10にはニッケル−銅−モリブデン系触媒によりジシアノベンゼンを液相下水素で接触還元することが記載されており、固定床方式による連続水素化が例示されている。
特許文献13にはジシアノベンゼンの水素化に際し、ジシアノベンゼンよりも高沸点の不純物であるベンズアミド類又は安息香酸類を蒸留で分離し、水素化反応液中のベンズアミド類又は安息香酸類の濃度を特定値以下に抑えることにより高収率でキシリレンジアミンが得られ且つ長い触媒寿命が得られることが記載されている。特許文献14にはキシレンのアンモ酸化反応ガスを有機溶媒と接触させて得られる有機溶媒溶液からジシアノベンゼンよりも低沸点の成分を蒸留分離後、液体アンモニアを含む溶媒に溶融状のジシアノベンゼンを溶解させ、ジシアノベンゼン多量体群を含む析出物を固液分離し、水素化するキシリレンジアミンの製造方法が記載されている。
従って、キシリレンジアミンを経済的に製造する為には、水素化触媒を失活させる高沸点化合物群を高選択的に除去する方法の開発が求められていた。
本発明では、更に、液-液分離後の有機相から低沸点化合物を減圧下で蒸留分離して得られた原料ジシアノベンゼンを水素化に供することにより、キシリレンジアミンが高収率で得られながら且つ水素化触媒の失活を抑えられることを発見した。
(1)ジシアノベンゼンを含有するキシレンのアンモ酸化反応ガスを有機溶媒と直接接触させ、ジシアノベンゼンを有機溶媒中に吸収する吸収工程。
(2)吸収工程からのジシアノベンゼン吸収液と塩基性水溶液を140℃以下の温度条件下において接触させ、ジシアノベンゼン吸収液中のカルボン酸類と塩基との中和反応により生成する水可溶性の塩を水相に抽出する抽出工程。
(3)抽出工程からのジシアノベンゼン吸収液と塩基性水溶液の混合液を有機相と水相に分離させる液-液分離工程。
(4)液-液分離工程からの有機相を蒸留し、有機溶媒を含むジシアノベンゼンよりも低い沸点を有する成分の一部または全部を分離し、溶融状のジシアノベンゼンを得る低沸分離工程。
(5)低沸分離工程からの溶融状ジシアノベンゼンを溶媒に溶解させた後、触媒の存在下、液相で水素化する水素化工程。
からなることを特徴とするキシリレンジアミンの製造方法である。
(1)吸収工程
ジシアノベンゼンを含有するキシレンのアンモ酸化反応ガスを有機溶媒と直接接触させてジシアノベンゼンを有機溶媒に吸収する。
アンモ酸化反応は公知の方法で行うことが可能であり、アンモ酸化の触媒に、キシレン、酸素、アンモニアを混合した反応原料を供給し、後述する条件で反応させることにより行うことができる。アンモ酸化反応の形式は流動床または固定床のいずれも可能である。アンモ酸化の触媒は公知の触媒、例えば特許文献1、4、5、7または8に記載の触媒を使用することが出来るが、バナジウム及び/またはクロムを含有する触媒が特に好ましい。アンモニア使用量はキシレン1モルに対して好ましくは2〜20モル、より好ましくは6〜15モルの範囲である。使用量が上記範囲内であるとジシアノベンゼンの収率が良好であり、空時収率も高い。アンモ酸化反応ガスに含まれる未反応アンモニアは回収し、反応に再使用しても良い。酸素の使用量は、キシレン1モルに対して好ましくは3モル以上、より好ましくは3〜100モル、さらに好ましくは4〜100モルの範囲である。上記範囲内であるとジシアノベンゼンの収率が良好であり、空時収率も高い。酸素の供給源として空気を使用してもよい。アンモ酸化の反応温度は好ましくは300〜500℃、より好ましくは330〜470℃の範囲である。上記範囲内であるとキシレンの転化率が良好であり、炭酸ガス、シアン化水素等の生成が抑制され、ジシアノベンゼンを良好な収率で製造することができる。アンモ酸化の反応圧力は常圧、加圧或いは減圧のいずれでも良いが、常圧(大気圧)〜300kPaの範囲が好ましく、反応原料の空間速度(Gas Hourly Space Velocity=GHSV)は500〜5000h-1であるのが好ましい。
吸収工程からのジシアノベンゼン吸収液と塩基性水溶液を接触させ、ジシアノベンゼン吸収液中のカルボン酸類と、塩基との中和反応により生成する水可溶性の塩を水相に抽出する。ここでいうカルボン酸類とは、シアノ安息香酸(オルト−体、メタ−体、パラ−体)、メチル安息香酸(オルト−体、メタ−体、パラ−体)、フタル酸(オルト−体、メタ−体、パラ−体)を指す。ジシアノベンゼン吸収液と塩基性水溶液を効率良く接触させるには、撹拌機を有する混合槽を用いても良いし、スタティックミキサー等の管型混合機を用いても良い。抽出工程の形式は回分式、半回分式、連続式の何れでも良い。塩基性水溶液に含まれる塩基は、ジシアノベンゼン吸収液中のカルボン酸類との中和反応により生成する塩が水に可溶であれば特に制限は無く、好ましい具体例としてアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等が挙げられる。これらの塩基の中でも、特にアンモニアは安価に入手可能で有り、且つ効率良くジシアノベンゼン吸収液中のカルボン酸類を中和することが出来ることから好ましい塩基である。塩基の使用量(モル数)はジシアノベンゼン吸収液に含まれるカルボン酸類のモル数の合計と同等以上であれば良いが、例えばアンモニアを用いる場合のモル数はカルボン酸類のモル数の合計の1〜50倍が好ましく、2〜30倍がさらに好ましく、3〜15倍が特に好適である。塩基性水溶液における塩基の濃度は用いる塩基の種類により適宜調整すれば良く、例えばアンモニア水溶液を用いる場合は0.1〜20wt%が好ましく、0.1〜10wt%が特に好適である。
抽出工程からのジシアノベンゼン吸収液と塩基性水溶液の混合液を有機相と水相に分離させる。混合液を静置して相分離させる方法以外に、遠心分離機、コアレッサーとセパレーターの併用等の公知の方法で実施することが出来る。液-液分離の温度及び圧力条件は抽出時の条件と同程度が望ましい。温度や圧力が大幅に低下するとジシアノベンゼンが有機相において析出するだけでなく、水相においても微量溶解していたジシアノベンゼンが析出し配管閉塞等の原因となる。
液-液分離工程からの有機相を蒸留して、有機溶媒を含む低沸点化合物の一部または全部を除去し、溶融状ジシアノベンゼンを得る。有機溶媒を含む低沸点化合物の一部または全部を除去でき、溶融状ジシアノベンゼンを得ることが出来る限り蒸留方法は特に限定されず、回分式または連続式のいずれかの方法を用いることが出来る。例えば、該工程を蒸留塔を用いて行う場合、有機溶媒を含む低沸点化合物は塔頂または塔頂とサイドカット部(濃縮部)の双方から除去される。回収した溶液を、吸収工程において、アンモ酸化反応ガスに含まれるジシアノベンゼンを吸収する為の有機溶媒として使用しても良い。蒸留塔を用いた蒸留は減圧下(例えば、塔頂圧力1〜30kPa)、濃縮部(原料供給部より上部)においてジシアノベンゼンが析出しない温度で行うのが好ましく、蒸留塔の塔底からジシアノベンゼンを溶融状で得る。塔底温度はジシアノベンゼン多量体群の熱による生成を抑える為にジシアノベンゼンの融点以上の温度で且つ出来るだけ低温にするのが好ましい。具体的に塔底温度は、ジシアノベンゼンがフタロニトリルの場合150〜200℃が好ましく、150〜180℃がさらに好ましく、150〜170℃が特に好ましい。イソフタロニトリルの場合170〜220℃が好ましく、170〜200℃がさらに好ましく、170〜190℃が特に好ましい。テレフタロニトリルの場合240〜290℃が好ましく、240〜270℃がさらに好ましく、240〜260℃が特に好ましい。また、塔底においてジシアノベンゼン多量体群の生成を抑える為、溶融状ジシアノベンゼンの滞留時間は短い方が好ましく、例えば、180分以内、例えば5〜180分、好ましくは10〜120分、より好ましくは15〜60分、特に好ましくは20〜30分とすることができる。また、蒸留塔の設計に際しては塔底容積を蒸留塔の運転に支障が出ない範囲で出来るだけ小さくすることが好ましい。
低沸分離工程からの溶融状ジシアノベンゼンを溶媒に溶解させた後、触媒の存在下、液相でジシアノベンゼンの水素化を行う。溶媒として、液体アンモニア溶媒、キシリレンジアミンと液体アンモニアの混合溶媒、芳香族炭化水素と液体アンモニアの混合溶媒、キシリレンジアミン及び芳香族炭化水素と液体アンモニアの混合溶媒等が挙げられる。
溶媒中の液体アンモニア濃度が高いほど水素化反応の収率を高めることが出来る為、溶媒中の液体アンモニア濃度は高い方が好ましい(例えば、60wt%以上(100wt%を含む))。水素化反応時の溶媒量はジシアノベンゼン1重量部に対して1〜99重量部の範囲が好ましく、3〜99重量部がさらに好ましく、5〜99重量部の範囲が特に好ましい。溶媒使用量が上記範囲内であると溶媒回収に要するエネルギーが少なくて経済的に有利であり、水素化反応におけるキシリレンジアミンの選択率も良好である。溶融状ジシアノベンゼンの溶解操作はスタティックミキサー等の管型混合機を用いて行うことも出来るが、析出した不溶成分付着によりミキサー内が閉塞する可能性がある為、溶解槽内にて前記溶媒と混合して溶解させることが好ましい。溶解槽内に溶融状ジシアノベンゼンと溶媒を供給することで特に攪拌しなくても溶解させることが可能だが、必要であれば攪拌を行っても良い。溶解槽内の圧力及び温度は溶媒が液相を保つように選択される。溶解槽内の圧力は0.5〜15MPaが好ましく、0.7〜10MPaがさらに好ましく、1〜8MPaが特に好ましい。溶解槽内の溶液温度は3〜140℃が好ましく、5〜120℃がさらに好ましく、10〜100℃が特に好ましい。溶液中に不溶成分が生じた場合、その一部または全部を水素化反応器に供給する前に固液分離により除去しても良い。固液分離としては濾過、遠心分離、沈降分離等の公知の方法を用いることが出来るが、濾過が好ましく、焼結金属フィルター及び/又はストレーナーによるろ過が特に簡便で好適である。
水素化に供する水素は反応に関与しない不純物、例えばメタン、窒素等を含んでいても良いが、不純物濃度が高いと必要な水素分圧を確保するために反応全圧を高める必要が有り工業的に不利となる為、水素濃度は50モル%以上が好ましい。
水素化反応の触媒としては、公知の担持金属触媒、非担持金属触媒、ラネー触媒、貴金属触媒等を使用できる。特にニッケル及び/又はコバルトを含有する触媒が好適に用いられる。触媒の使用量は公知のジシアノベンゼンの液相水素化に使用されている量であればよく、本発明では特に制限されない。
水素化反応の形式は固定床、懸濁床のいずれも可能である。また、回分式、連続式の何れの方法も可能である。固定床の反応形式で連続流通反応を行う場合、水素化反応器出口から得られる水素化反応液の一部を水素化反応器に連続的に戻す循環方式を採用しても良く、循環方式単独で或いは特開2008−31155号公報に記載されている様に循環方式とワンパス方式を組み合わせて用いても良い。回分式で行う場合、水素化反応時間は0.5〜8時間が好ましく、連続式で行う場合、反応原料の空間速度(Liquid Hourly Space Velocity=LHSV)は0.1〜10h-1であるのが好ましい。
水素化反応の圧力及び温度は溶媒が液相を保つように選択される。水素化反応の温度は20〜200℃が好ましく、30〜150℃がさらに好ましく、40〜120℃が特に好ましい。水素圧力は1〜30MPaが好ましく、2〜25MPaがさらに好ましく、3〜20MPaが特に好ましい。
資生堂(株)製CAPCELL PAK C18のLCカラムを備え付けた島津製作所製UV−VIS検出器付き高圧グラジエントLCシステムを用い、和光純薬製特級のアセトニトリルと0.5重量%リン酸水溶液の混合液を溶媒及び移動相として使用し、カラムオーブン35℃、移動相の流速1.0mL/分の条件下で分析を実施した。
J&W社製DB−1のGCカラムを備え付けた、Agilent社製6890型GC分析装置により分析を行った。温度設定は注入口230℃、検出器295℃、カラムオーブン100℃→280℃(100℃で10分間保持した後、昇温速度5℃/分で昇温実施)とした。尚、GC測定サンプルは、水素化原料液または水素化反応生成液のサンプリング液2mlから加熱によりアンモニア(三菱ガス化学製品)を除いた後、内部標準としてジフェニルメタン(和光純薬製、特級)0.1gを添加し、メタノール溶媒またはジオキサン溶媒10g(共に和光純薬製、特級)に溶解させることにより調合した。
(1)吸収工程
(1−1)アンモ酸化
五酸化バナジウム(和光純薬製、特級)229gに水(蒸留水)500mLを加え、80〜90℃に加熱し攪拌しながらシュウ酸(和光純薬製、特級)477gを加え溶解した。またシュウ酸963gに水400mLを加え50〜60℃に加熱し、無水クロム酸(和光純薬製、特級)252gを水200mLに加えた溶液を良く攪拌しながら加え溶解した。得られたシュウ酸バナジウムの溶液にシュウ酸クロムの溶液を50〜60℃にて混合しバナジウム−クロム溶液を得た。この溶液にリンモリブデン酸(日本無機化学工業製)H3(PMo12O40)・20H2O 41.1gを水100mLに溶解して加え、更に、酢酸カリウム(和光純薬製、特級)4.0gを水100mLに溶解して加えた。次いで20wt%水性シリカゾル(Na2Oを0.02wt%含有)2500gを加えた。このスラリー溶液にホウ酸78gを加え良く混合し液量が約3800gになるまで加熱、濃縮した。この触媒溶液を入口温度250℃、出口温度130℃に保ちながら噴霧乾燥した。130℃の乾燥機で12時間乾燥後、400℃で0.5時間焼成し、550℃で8時間空気流通下焼成した。この触媒の原子比は、V:Cr:B:Mo:P:Na:Kが1:1:0.5:0.086:0.007:0.009:0.020の割合で含有され、その触媒濃度は50wt%であった。
アンモ酸化反応器A頂部からの反応生成ガスをイソフタロニトリル吸収塔Bに導入し、反応生成ガス中のイソフタロニトリルをメタ−トルニトリル(三菱ガス化学製品)溶媒中に吸収した。イソフタロニトリル吸収塔BはSUS304製で、上部に排気用の配管を備え、胴体部が内径100mmΦ、高さ800mmで、胴体部の下部450mmは2重管として蒸気加熱できる構造とし、底部にガス吹込み口を設けた。該吸収塔にメタ−トルニトリル2kgを入れ140℃とし、上記アンモ酸化反応生成ガスの吸収を2時間行った。吸収終了時のイソフタロニトリル吸収液には、メタ−トルニトリル 74.0wt%、イソフタロニトリル 25.0wt%、3−シアノ安息香酸 0.131wt%、3−シアノベンズアミド0.504wt%、イソフタルアミド0.021wt%が含まれていた。
次にイソフタロニトリル吸収液100gを混合槽Cに仕込み、気密後、液温が110℃になる様に1000rpmの速度で撹拌しながら温度調整を行った。混合槽Cにはヒーター及び撹拌機付きのオートクレーブ(容積250mL、底部抜出しノズル付き、SUS304製)を用いた。イソフタロニトリル吸収液を所定の温度に昇温後、窒素にて0.1MPaG迄昇圧した。続いて25%アンモニア水(和光純薬製、特級)0.80g及び炭酸アンモニウム(和光純薬製、特級)2.00gを純水17.20gに溶解させて調製した塩基性水溶液20.0gを混合槽Cの底部ノズルより供給後、再び液温を110℃に調整し、1000rpmの撹拌状態を保ったまま10分間保持した。
混合槽Cでの撹拌を停止し、イソフタロニトリル吸収液と塩基性水溶液の混合液を液温110℃の状態を保ちながら10分間静置し、有機相(上層)と水相(下層)に分離させた(混合槽Cを液-液分離槽Dとしても使用)。液-液分離された有機相100gには、メタ−トルニトリル 74.0wt%、イソフタロニトリル 24.9wt%、3−シアノ安息香酸 0.020wt%、3−シアノベンズアミド 0.545wt%、イソフタルアミド0.022wt%が含まれており、水相20.0gには、メタ−トルニトリル 0.166wt%、イソフタロニトリル 0.154wt%、3−シアノ安息香酸 0.732wt%、3−シアノベンズアミド 0.207wt%、イソフタルアミド0.051wt%が含まれていた。有機相の組成及び抽出工程から液-液分離工程にかけてのイソフタロニトリルの損失率を表1に示す。
液-液分離された有機相を低沸分離用の連続式の蒸留塔Eの中段に供給した。蒸留塔の蒸留条件は塔頂圧力5kPa、塔頂温度120℃、塔底温度175℃、塔底での滞留時間20分とし、メタ−トルニトリルおよび他の低沸分を蒸留塔の塔頂から留去すると共に溶融状イソフタロニトリルを塔底より抜き出した。塔底より得られた溶融状イソフタロニトリルには、メタ−トルニトリル 0.20wt%、イソフタロニトリル 96.9wt%、3−シアノ安息香酸 0.08wt%、3−シアノベンズアミド 2.59wt%が含まれていた。
得られた溶融状イソフタロニトリル1重量部を、溶解槽F(SUS304製)において、9重量部の液体アンモニアに2MPa、25℃の条件下で溶解させた。次いで溶解槽Fの底部より不溶成分を含んだ溶液を抜出し、濾過器Gとして焼結金属フィルター(ポア・サイズ40μm、ステンレス製)を用いて圧力差を利用した液移送による濾過を行い、水素化原料液を得た。
管状縦型水素化反応器H(SUS304製、内径13mmφ、容量50mL)にニッケル含量50wt%である市販の担持ニッケル/珪藻土触媒(円柱状、直径3mmΦ、高さ3mm)を破砕して大きさを揃えたもの(12−22mesh/JIS規格)を15.0g充填し、水素気流下200℃で還元して活性化させた。冷却後、反応器内に水素ガスを圧入して一定圧力8MPaに保ち、外部からの加熱により触媒層温度を80℃に維持した。反応器上部より水素ガスを18NL/hの流速で流通させながら、前記の水素化原料液を、反応器上部より33.0g/hの速度で連続的に供給した。反応中間体である3−シアノベンジルアミンの生成量は経時的に増加した。水素化反応液に含まれる3−シアノベンジルアミンのメタ−キシリレンジアミンに対する量が2.3wt%に達した時点での反応成績と反応器へのイソフタロニトリル合計通液量を表2に示す。
水素化反応液から液体アンモニアを単蒸留で分離し、さらに窒素ガスでバブリングして残存アンモニアを除去した後、脱アンモニアした反応液を市販のニッケル含量50wt%の担持ニッケル/珪藻土触媒を用いて固定床の反応形式で再度接触水素化させ(WHSV(weight hourly space velocity)=0.5h-1、反応温度80℃、反応圧力2MPa)、粗メタ−キシリレンジアミンを得た。次いで粗メタ−キシリレンジアミンを、理論段数10段の蒸留塔を用い、6kPaの減圧下で蒸留を行い、純度99.99%に精製したメタ−キシリレンジアミンを得た。尚、得られたメタ−キシリレンジアミン中の3−シアノベンジルアミン含量は0.001wt%以下であった。
抽出工程での液温を130℃にした以外は実施例1と同様の条件で液-液分離工程まで行った。液-液分離された有機相100gには、メタ−トルニトリル 73.9wt%、イソフタロニトリル 24.7wt%、3−シアノ安息香酸 0.018wt%、3−シアノベンズアミド 0.639wt%、イソフタルアミド0.024wt%が含まれており、水相20.0gにはメタ−トルニトリル 0.401wt%、イソフタロニトリル 0.478wt%、3−シアノ安息香酸 0.750wt%、3−シアノベンズアミド 0.386wt%、イソフタルアミド0.151wt%が含まれていた。有機相の組成及び抽出工程から液-液分離工程にかけてのイソフタロニトリルの損失率を表1に示す。
抽出工程での液温を140℃にした以外は実施例1と同様の条件で液-液分離工程まで行った。液-液分離された有機相100gには、メタ−トルニトリル 73.8wt%、イソフタロニトリル 24.4wt%、3−シアノ安息香酸 0.016wt%、3−シアノベンズアミド 0.736wt%、イソフタルアミド0.030wt%が含まれており、水相20.0gにはメタ−トルニトリル 0.944wt%、イソフタロニトリル 1.20wt%、3−シアノ安息香酸 0.874wt%、3−シアノベンズアミド 0.476wt%、イソフタルアミド0.156wt%が含まれていた。有機相の組成及び抽出工程から液-液分離工程にかけてのイソフタロニトリルの損失率を表1に示す。
抽出工程において、水酸化ナトリウム(和光純薬製、特級)0.10g及び炭酸アンモニウム(和光純薬製、特級)2.00gを純水17.90gに溶解させて調製した塩基性水溶液20.0gを使用した以外は実施例1と同様の条件で液-液分離工程まで行った。液-液分離された有機相100gには、メタ−トルニトリル 73.9wt%、イソフタロニトリル 24.9wt%、3−シアノ安息香酸 0.007wt%、3−シアノベンズアミド 0.475wt%、イソフタルアミド0.029wt%が含まれており、水相20.0gにはメタ−トルニトリル 0.167wt%、イソフタロニトリル 0.154wt%、3−シアノ安息香酸 0.877wt%、3−シアノベンズアミド 0.213wt%、イソフタルアミド0.096wt%が含まれていた。有機相の組成及び抽出工程から液-液分離工程にかけてのイソフタロニトリルの損失率は0.51wt%であった。有機相の組成及び抽出工程から液-液分離工程にかけてのイソフタロニトリルの損失率を表1に示す。
抽出工程において、吸収工程で得られたイソフタロニトリル吸収液12.8gをメタ−トルニトリル(和光純薬製、特級)87.2gで希釈して100gとし、且つ水酸化ナトリウム(和光純薬製、特級)1.00gを純水19.00gに溶解させて調製した塩基性水溶液20.0gを使用し、且つ液温20℃の大気圧条件下で実施した以外は実施例1と同様の条件で液-液分離工程まで行った。液-液分離された有機相100gには、メタ−トルニトリル 96.6wt%、イソフタロニトリル 3.15wt%、3−シアノベンズアミド 0.063wt%、イソフタルアミド0.002wt%が含まれており、水相20.0gにはメタ−トルニトリル 0.310wt%、イソフタロニトリル 0.004wt%、3−シアノ安息香酸 0.079wt%、3−シアノベンズアミド 0.016wt%、イソフタルアミド0.019wt%が含まれていた。有機相の組成及び抽出工程から液-液分離工程にかけてのイソフタロニトリルの損失率は1.62wt%であった。有機相の組成及び抽出工程から液-液分離工程にかけてのイソフタロニトリルの損失率を表1に示す。
吸収工程で得られたイソフタロニトリル吸収液を低沸分離工程に供給した以外は実施例1と同様にして水素化工程まで行った。ここで、低沸分離工程で蒸留塔塔底より得られた溶融状イソフタロニトリルには、メタ−トルニトリル 0.20wt%、イソフタロニトリル 96.6wt%、3−シアノ安息香酸 0.53wt%、3−シアノベンズアミド 2.48wt%が含まれていた。
水素化反応液に含まれる3−シアノベンジルアミンのメタ−キシリレンジアミンに対する量が実施例1と同じ2.3wt%に達した時点での反応成績と反応器へのイソフタロニトリル合計通液量を表2に示す。
抽出工程での液温を150℃にした以外は実施例1と同様の条件で液-液分離工程まで行った。液-液分離された有機相100gには、メタ−トルニトリル 73.6wt%、イソフタロニトリル 24.1wt%、3−シアノ安息香酸 0.015wt%、3−シアノベンズアミド 0.938wt%、イソフタルアミド0.030wt%が含まれており、水相20.0gにはメタ−トルニトリル 1.79wt%、イソフタロニトリル 1.84wt%、3−シアノ安息香酸 0.955wt%、3−シアノベンズアミド 0.700wt%、イソフタルアミド0.183wt%が含まれていた。有機相の組成及び抽出工程から液-液分離工程にかけてのイソフタロニトリルの損失率を表1に示す。
B イソフタロニトリル吸収塔
C 混合槽
D 液-液分離槽
E 蒸留塔
F 溶解槽
G 濾過器
H 水素化反応器
Claims (9)
- 下記の順次工程:
(1)ジシアノベンゼンを含有するキシレンのアンモ酸化反応ガスを有機溶媒と直接接触させ、ジシアノベンゼンを有機溶媒中に吸収する吸収工程
(2)吸収工程からのジシアノベンゼン吸収液と塩基性水溶液を20℃〜140℃の温度条件下において接触させ、ジシアノベンゼン吸収液中のカルボン酸類と塩基との中和反応により生成する水可溶性の塩を水相に抽出する抽出工程
(3)抽出工程からのジシアノベンゼン吸収液と塩基性水溶液の混合液を有機相と水相に分離させる液-液分離工程
(4)液-液分離工程からの有機相を蒸留し、有機溶媒を含むジシアノベンゼンよりも低い沸点を有する成分の一部または全部を分離し、溶融状のジシアノベンゼンを得る低沸分離工程
(5)低沸分離工程からの溶融状ジシアノベンゼンを溶媒に溶解させた後、ニッケル含有触媒の存在下、液相で水素化する水素化工程
からなることを特徴とするキシリレンジアミン製造方法。 - キシレンがメタ−キシレンであり、ジシアノベンゼンがイソフタロニトリルである請求項1に記載のキシリレンジアミン製造方法。
- 前記抽出工程(3)において、塩基としてアンモニアを使用する請求項1〜2のいずれかに記載のキシリレンジアミン製造方法。
- 前記抽出工程(3)において、塩基性水溶液に無機酸のアンモニウム塩及び/又はカルバミン酸のアンモニウム塩を共存させる請求項1〜3のいずれかに記載のキシリレンジアミン製造方法。
- 前記抽出工程(3)において、ジシアノベンゼン吸収液に含まれるカルボン酸類のモル数の合計の1〜50倍のモル数のアンモニアを塩基として使用する請求項1〜4のいずれかに記載のキシリレンジアミン製造方法。
- アンモ酸化反応で用いる触媒がバナジウム及び/またはクロムを含有する触媒である請求項1〜5のいずれかに記載のキシリレンジアミン製造方法。
- 前記吸収工程(1)のジシアノベンゼンを吸収する有機溶媒が、アルキルベンゼン、複素環化合物、芳香族ニトリル化合物及び複素環ニトリル化合物から選ばれる1種以上の有機溶媒である請求項1〜6のいずれかに記載のキシリレンジアミン製造方法。
- 前記水素化工程(5)の溶媒が、液体アンモニア溶媒、キシリレンジアミンと液体アンモニアの混合溶媒、芳香族炭化水素と液体アンモニアの混合溶媒、又はキシリレンジアミン及び芳香族炭化水素と液体アンモニアの混合溶媒である請求項1〜7のいずれかに記載のキシリレンジアミン製造方法。
- 前記水素化工程(5)のジシアノベンゼンの水素化を固定床反応器で行う請求項1〜8のいずれかに記載のキシリレンジアミン製造方法。
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