JP5850040B2 - マスターバッチ、およびマスターバッチを利用したポリアミド樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
ポリアミド由来の異物としては、ファインと呼ばれる粉体、フロスと呼ばれる薄膜、熱劣化を受けた黄変物・炭化物、そしてゲル状物等が挙げられる。これら異物は生成を防ぐことが一番の対策であるが、やむを得ず生成した場合、ペレット製品から分離除去する必要がある。粉体及び薄膜は一般には風選で除かれ、黄変物・炭化物は光学センサーを用いた選別機で除くことができ、様々な分離機器が市販されており、確実な除去効果が期待できる。
しかし、更にゲルの少ないポリアミドを製造するには、溶融重合時並びに固相重合時においても、製造時の熱履歴の抑制、効果的な末端基濃度と安定剤量のバランス設定、生成したゲルの除去が必要であるが、その効果には限界があった。また成形加工装置の設計は、例えば樹脂の接触する金属部位にメッキ処理を施すことによりゲル生成を減らすことが可能であるが、滞留部位を完全に撤廃することは装置の構成上難しく、また各々の成形装置に設備を施す必要があり、汎用性やコスト面で見て実現性に欠ける。特に、キシリレンジアミンを主体とするジアミン成分からなるポリアミドでは、キシリレンジアミンのベンジルメチレン部位がラジカル生成しやすく、他のポリアミドよりゲルの発生は深刻な問題となっている。
[1]メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド(X)と、アルカリ化合物(A)とを含むマスターバッチであって、マスターバッチ中に含まれるアルカリ化合物(A)の平均粒子径が50μm以下であり、かつ、マスターバッチの断面5ミリ平方メートル中に粒子径80μmを超える粒子の含有数が1.5個以下であり、かつ、マスターバッチ1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和(m)が60μmol/g以上1710μmol/g以下であることを特徴とするマスターバッチ。
[2]前記[1]に記載のマスターバッチを利用したポリアミド樹脂組成物の製造方法であって、
(a)アルカリ金属化合物(C)及びリン原子含有化合物(B)の存在下で、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンとジカルボン酸とを重縮合してポリアミド(X)を得る工程、
(b)前記工程(a)で得られたポリアミド(X)100質量部に対して、原料アルカリ化合物(A)14〜0.5質量部を押出機により溶融混練して、前記ポリアミド(X)と前記アルカリ化合物(A)とを含むマスターバッチを得る工程、及び
(c)前記工程(b)で得られたマスターバッチ0.5〜20質量部と前記工程(a)で得られたポリアミド(X)99.5〜80質量部とを押出機により溶融混練する工程
を含む、ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
本発明のマスターバッチは、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド(X)とアルカリ化合物(A)とを含み、マスターバッチ中に含まれるアルカリ化合物(A)の平均粒子径が50μm以下であり、かつ、マスターバッチの断面5ミリ平方メートル中の粒子径80μmを超える粒子の含有数が1.5個以下であり、かつ、マスターバッチ1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和(m)が60μmol/g以上1710μmol/g以下であることを特徴とする。
ポリアミド(X)を構成するジアミン単位は、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含み、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む。ジアミン単位中のメタキシリレンジアミン単位が70モル%以上であることで、ポリアミド(X)は優れたガスバリア性を発現することができる。
メタキシリレンジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
数平均分子量=2×1000000/([COOH]+[NH2])・・・・(4)
(式中、[COOH]はポリアミド(X)中の末端カルボキシル基濃度(μmol/g)を表し、[NH2]はポリアミド(X)中の末端アミノ基濃度(μmol/g)を表す。)
本発明では、末端アミノ基濃度は、ポリアミドをフェノール/エタノール混合溶液に溶解したものを希塩酸水溶液で中和滴定して算出した値を用い、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミドをベンジルアルコールに溶解したものを水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して算出した値を用いる。
本発明のマスターバッチは、成形加工時に生じるゲル化を防止する観点からアルカリ化合物(A)を含有する。
本発明に用いられるアルカリ化合物(A)の好ましい具体例としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、水素化物、アルコキシド、炭酸塩、炭酸水素塩又はカルボン酸塩が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の好ましい具体例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物としては、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属アルコキシド又はアルカリ土類金属アルコキシドとしては、炭素数1〜4のアルコキシドが好ましく、例えばナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カルシウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシド、マグネシウムエトキシド、カルシウムエトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、リチウム−t−ブトキシド、マグネシウム−t−ブトキシド、カルシウム−t−ブトキシド等が挙げられる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩及び炭酸水素塩としては、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム等が挙げられ、さらにこれらの無水塩が望ましい。
このような観点から、本発明のマスターバッチ中に添加する前の、原料となるアルカリ化合物(A)(以下、原料アルカリ化合物(A)と呼ぶ)の平均粒子径は、150μm以下が好ましく、より好ましくは120μm以下である。なお、原料アルカリ化合物の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により、体積分布を測定し、それを算術計算により求めた平均粒子径で表す値である。
さらには、原料アルカリ化合物(A)中に、粒子径300μm以上となる粒子の含まれる割合が5%以下であることが望ましい。粒子径300μm以上となる粒子の含まれる割合が5%以下である場合、成形品中のアルカリ化合物(A)の析出を抑えることが出来る。
本発明における原料アルカリ化合物(A)としては、市販のものを用いることができる。例えば、市販の酢酸ナトリウムは、平均粒子径が100μm〜1mm程度であり、粒子径300μm以上となる粒子の含まれる割合は1%以下〜100%である。市販のアルカリ化合物は、必要に応じて粉砕処理して、平均粒子径及び粒度分布を上記の好ましい範囲となるように調整したものを、原料アルカリ化合物(A)として用いることができる。または、市販のアルカリ化合物の平均粒子径及び粒度分布が上記の好ましい範囲にあるものは、そのまま利用することもできる。
前記で例示した市販の酢酸ナトリウム等のアルカリ化合物を粉砕処理する場合の粉砕方法としては、例えば、ピンミル、ハンマーミル、ブレードミル、ボールミル、高圧粉砕ミル、ジェットミル等を使用する方法が可能であるが、目的の平均粒子径及び粒度分布を達成することができれば、公知の方法をいずれも適応することができる。
マスターバッチ中に存在するアルカリ化合物(A)を観察するために、マスターバッチ断面を露出させる方法としては、マスターバッチをエポキシ樹脂等の樹脂に包埋したのち、乾式研磨、湿式研磨により断面を露出させる方法がある。またミクロトーム及びダイヤモンドナイフを用いて、マスターバッチの断面を露出させることもできる。
上記算出方法により算出されるマスターバッチ内に含まれるアルカリ化合物(A)の平均粒子径が50μm以下であることが好ましく、45μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。マスターバッチ中の中に含まれるアルカリ化合物(A)の平均粒子径を上記範囲とした場合、ポリアミド樹脂組成物の成形加工時の樹脂圧上昇を抑えて生産性を大きく上げることが可能となり、また成形加工品中のブツの発生が無く外観良好となることや、延伸などの二次加工性も向上する。アルカリ化合物(A)の平均粒子径の下限は、特に制限はないが、実用的に調製が出来る0.1μm以上である。
なお、ここで言う粒子径とは、アルカリ化合物(A)の長径(最も長い部分)を測定し、これを粒子径とした。さらにマスターバッチの断面5ミリ平方メートル中に粒子径80μmを超える粒子の含有数とは、マスターバッチの断面5ミリ平方メートル中に粒子径が80μmを超える粒子数を別ペレット毎にカウントして、その平均含有数を指す。なお、測定に供するペレットの個数に制限は無いが、例えば5個以上のペレットを用いて測定する方法が好ましい。
本発明のマスターバッチを使用して得られるポリアミド樹脂組成物は、以下の工程(a)〜(c)を含む方法により製造することができる。
工程(a):アルカリ金属化合物(C)及びリン原子含有化合物(B)の存在下で、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンとジカルボン酸とを重縮合してポリアミド(X)を得る工程。
工程(b):前記工程(a)で得られたポリアミド(X)に原料アルカリ化合物(A)を添加してマスターバッチを得る工程。
工程(c):前記工程(a)で得られたポリアミド(X)に、前記工程(b)で得られたマスターバッチを添加してポリアミド樹脂組成物を得る工程。
工程(a)は、アルカリ金属化合物(C)及びリン原子含有化合物(B)の存在下で、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンとジカルボン酸とを重縮合してポリアミド(X)を得る工程である。リン原子含有化合物(B)の存在下でポリアミド(X)を重縮合することで、溶融成形時の加工安定性を高め、ポリアミド(X)の着色を防止することができる。また、アルカリ金属化合物(C)を共存させることで、リン原子含有化合物(B)による過度の重合を抑制することができる。
亜リン酸化合物の具体例としては、亜リン酸、ピロ亜リン酸;亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸金属塩;亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジエチル等の亜リン酸化合物;エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム等のフェニルホスホン酸金属塩等が挙げられる。
また、ジアミン成分(例えばメタキシリレンジアミン)を溶融状態のジカルボン酸成分(例えばアジピン酸)に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によってもポリアミド(X)を製造することができる。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
ポリアミド(X)の重縮合時に、分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。
工程(b)は、前記工程(a)で得られたポリアミド(X)に原料アルカリ化合物(A)を添加し、ポリアミド(X)とアルカリ化合物(A)とを含むマスターバッチを得る工程である。
工程(c)は、前記工程(a)で得られたポリアミド(X)に、前記工程(b)で得られたマスターバッチを添加し、ポリアミド樹脂組成物を得る工程である。
ポリアミド(X)をそのまま成形加工して得られる成形品は、成形開始直後は性状及び外観に優れるが、長時間の成形加工作業とともにゲル状物質の混入が増加し、製品の品質が不安定となる場合がある。特に、フィルム等の場合には、ゲルにより破断が生じ、装置を停止せざるを得なくなるため生産効率が悪化する。これは、溶融混練部からダイス間において、ポリアミドが局所的に滞留し続けることによって過剰加熱されてゲル化し、生成したゲルが流れ出すために起こると推測される。これに対し、本発明では、成形加工時に生じるゲル化を防止するために、ポリアミド(X)に対して、アルカリ化合物(A)を含むマスターバッチを添加する。
なお、上述のとおり、リン原子含有化合物(B)としてアルカリ金属塩が用いられる場合があり、また、後述するように、本発明のポリアミド樹脂組成物の製造時においては、ポリアミドの重縮合の際に必要に応じてアルカリ金属化合物(C)が添加され、ポリアミドの重縮合後にマスターバッチが添加される。したがって、Mは、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるすべてのアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和である。
具体的には、Tダイを備えた押出法や、インフレーションフィルム法等によりフィルムやシートに加工でき、さらに得られた原反フィルムを延伸加工することにより、延伸フィルム、熱収縮フィルムを得ることができる。また、射出成形法により射出成形カップ、ブロー成形法によりブローボトルとすることができ、また射出成形によりプリフォームを製造した後、さらにブロー成形によりボトルとすることができる。
また、押出ラミネートや共押出等の方法により、他の樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6、PETや金属箔、紙等との多層構造のフィルム、シートに加工することもできる。加工したフィルムやシートは、ラップ、あるいは各種形状のパウチ、容器の蓋材、ボトル、カップ、トレイ、チューブ等の包装容器に利用できる。また、多層射出成形法等によりPET等との多層構造のプリフォームやボトルに加工することもできる。
原料アルカリ化合物(A)は、市販の酢酸ナトリウムをそのまま使用、あるいは市販の酢酸ナトリウムを以下の方法により粉砕処理して得た。
(粉砕方法例1)
酢酸ナトリウム(無水)(大東化学(株)製、平均粒子径277μm、300μm以上含有率45%)を、奈良機械製作所(株)製自由粉砕機M−4にて、粉砕回転数5400rpm、スクリーンメッシュ径0.5mmの条件で粉砕し、平均粒子径117μm、粒子径300μm以上となる粒子の 含有率1%未満の粉砕酢酸ナトリウムを得た。
(粉砕方法例2)
酢酸ナトリウム(無水)(大東化学(株)製、平均粒子径316μm、300μm以上含有率70%)を、奈良機械製作所(株)製サンプルミルSAM−Tにて、粉砕回転数11000rpm、スクリーンメッシュ径0.7mmの条件で粉砕し、平均粒子径144μm、粒子径300μm以上となる粒子の含有率4%の粉砕酢酸ナトリウムを得た。
(粉砕方法例3)
粉砕方法例2において、スクリーンメッシュ径1.5mmとした以外は同様の条件で粉砕し、平均粒子径175μm、粒子径300μm以上となる粒子の含有率3%の粉砕酢酸ナトリウムを得た。
(粉砕方法例4)
酢酸ナトリウム(無水)(米山化学工業(株)製、平均粒子径325μm、300μm以上含有率50%)を、ホソカワミクロン(株)製パルベライザーACM−10にて、分級回転数3880rpm、粉砕回転数6800rpm、風量10m3/minの条件で粉砕し、平均粒子径7μm、粒子径300μm以上となる粒子の含有率1%未満の粉砕酢酸ナトリウムを得た。
得られた原料アルカリ化合物(A)の平均粒子径は、原料アルカリ化合物(A)をクロロホルム中に分散させた後、レーザー回折散乱法粒度測定装置(LA−910;堀場製作所製)により、体積分布を測定し、それを算術平均径として算出した。また、粒子径300μm以上となる粒子の体積比率を百分率として測定した。あるいは、原料アルカリ化合物(A)の平均粒子径が100μm以下の場合には、原料アルカリ化合物(A)を溶媒に分散せず、レーザー回折散乱法粒度測定装置(MASTERSIZER2000;Malvern Instruments Ltd製)により、体積分布を測定し、それを算術平均径として算出した。また、粒子径300μm以上となる粒子の体積比率を百分率として測定した。結果を表2に示す。
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したアジピン酸15000g(102.6mol)、さらに次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)432.5mg(4.083mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として5ppm)および酢酸ナトリウム207.7mg(2.53mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.62)になるよう入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。これにメタキシリレンジアミン13895g(102.0mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約24kgのポリアミド(X1a)を得た。
製造例2で得られたポリアミド(X1a)について、真空乾燥機にて0.1Torr(13.33Pa)以下、140℃の状態で2時間乾燥してポリアミド(X1b)を得た。結果を表1に示す。
製造例2で得られたポリアミド(X1a)を40℃、90%RHの状態で24時間保持してポリアミド(X1c)を得た。結果を表1に示す。
窒素ガス導入管、真空ライン、真空ポンプ、内温測定用の熱電対を設けたジャケット付きのタンブルドライヤーに、製造例2で得られたポリアミド(X1a)を仕込み、一定速度で回転させつつ、タンブルドライヤー内部を純度が99容量%以上の窒素ガスで十分に置換した後、同窒素ガス気流下でタンブルドライヤーを加熱し、約150分かけてペレット温度を150℃に昇温した。ペレット温度が150℃に達した時点で系内の圧力を1torr(133.3Pa)以下に減圧した。さらに昇温を続け、約70分かけてペレット温度を200℃まで昇温した後、200℃で30〜45分保持した。次いで、系内に純度が99容量%以上の窒素ガスを導入して、タンブルドライヤーを回転させたまま冷却してポリアミド(X1d)を得た。得られたポリアミド(X1d)の性状を表1に示す。
(ポリアミドの溶融重合)
次亜リン酸ナトリウム一水和物の添加量を173.1mg(1.633mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として2ppm)に、酢酸ナトリウムの添加量を82.6mg(1.007mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.62)に代えた以外は、製造例2と同様の方法で、約24kgのポリアミドを得た。
(ポリアミドの固相重合)
続けて、前記溶融重合で得られたポリアミドを用いた以外は製造例5と同様の方法でポリアミドの固相重合を行い、ポリアミド(X2d)を得た。得られたポリアミド(X2d)の性状を表1に示す。
(ポリアミドの溶融重合)
次亜リン酸ナトリウム一水和物の添加量を86.5mg(0.816mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として1ppm)に、酢酸ナトリウムの添加量を41.3mg(0.503mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.62)に代えた以外は、製造例2と同様の方法で、約24kgのポリアミドを得た。
(ポリアミド固相重合)
続けて、前記溶融重合で得られたポリアミドを用いた以外は製造例5と同様の方法でポリアミドの固相重合を行い、ポリアミド(X3d)を得た。得られたポリアミド(X3d)の性状を表1に示す。
(ポリアミドの溶融重合)
次亜リン酸ナトリウム一水和物の添加量を778.7mg(7.343mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として9.5ppm)に、酢酸ナトリウムの添加量を371.6mg(4.53mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.62)に代えた以外は、製造例2と同様の方法で、約24kgのポリアミドを得た。
(ポリアミドの固相重合)
続けて、前記溶融重合で得られたポリアミドを用いた以外は製造例5と同様の方法でポリアミドの固相重合を行い、ポリアミド(X4d)を得た。得られたポリアミド(X4d)の性状を表1に示す。
マスターバッチの原料となるポリアミド1gあたりに含まれるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度m0及びリン原子のモル濃度p0は、ポリアミド樹脂を硝酸中、マイクロウェーブにて分解処理した後、原子吸光分析装置(商品名:AA−6650、(株)島津製作所製)及びICP発光分析装置(商品名:ICPE−9000、(株)島津製作所製)を用いて定量した。なお、測定値は重量分率(ppm)として得られるため、原子量及び価数を用いてp0及びm0を算出した。結果を表1に示す。
ポリアミドの水分率は、カールフィッシャー型水分測定装置(型式;AQ−2000、平沼産業(株)製)を用いて、窒素気流下にて235℃・30分加熱時のポリアミド(X1a)〜(X1c)の水分率を測定した。結果を表1に示す。
(マスターバッチの製造)
二軸押出機(型式:TEM37BS、東芝機械(株)製、口径:37mmφ)に100メッシュのフィルターを設けたストランドダイを取り付けた押出機を使用して、酢酸ナトリウム並びに上記のポリアミド(X1a)〜(X1b)のいずれかを、それぞれ表2に示した配合量で、別フィーダーにて供給してストランド状とした。次いで、水冷槽で冷却した後、ペレタイザーを使用してペレット状とした。その後、ペレットを真空乾燥機にて0.1Torr以下、140℃の状態で8時間乾燥してマスターバッチ1〜11を得た。
得られたマスターバッチ中のアルカリ化合物(A)の平均粒子径、マスターバッチの断面5ミリ平方メートル中の粒子径80μmを超える粒子の含有数を表2に示した。
マスターバッチ1gあたりに含まれるリン原子のモル濃度p、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度mは、マスターバッチを硝酸中、マイクロウェーブにて分解処理した後、原子吸光分析装置(商品名:AA−6650、(株)島津製作所製)及びICP発光分析装置(商品名:ICPE−9000、(株)島津製作所製)を用いて定量した。なお、測定値は重量分率(ppm)として得られるため、原子量及び価数を用いてp及びmを算出した。結果を表2に示した。
<ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度M及びリン原子のモル濃度P>
前記で算出したマスターバッチ1gあたりに含まれるp及びmと同様の方法にて、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の総モル濃度M及びリン原子のモル濃度Pを算出した。結果を表3に示した。
マスターバッチを樹脂包埋し、ダイアモンドカッターにより断面を露出させたのち、試料台に貼り付けたカーボンテープ上に固定して、減圧雰囲気下で白金/パラジウムを蒸着した。続いて、白金/パラジウム蒸着したマスターバッチを、反射電子像観察を用いて空間図とし、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて150倍で写真撮影した。同一平面内にアルカリ化合物(A)1000個以上を含む範囲を選択して二値化処理後、さらに同範囲内で5ミリ平方メートルとなる領域を選択し、該領域中に存在する各々の粒子像の面積比率での平均粒子径を算出し、この値をマスターバッチ中に含まれるアルカリ化合物(A)の平均粒子径として算出した。
また、前記の平均粒子径を算出した5ミリ平方メートル領域内で長径80μmを超える粒子像数をカウントし、これをペレット別に5回同様の測定を行って、測定1回当たりの平均値を、「マスターバッチの断面5ミリ平方メートル中に粒子径80μmを超える粒子の含有数」とした。測定結果を表2に示す。
(ポリアミド樹脂組成物のフィルムの製造)
得られたマスターバッチ1〜9および11を用いて、ポリアミド(X1d)〜(X4d)100質量部に対して表3に記載の配合量で混合した後、25mmφ単軸押出機(型式:PTM25、(株)プラスチック工学研究所製)、600メッシュのフィルターを設けたヘッド、Tダイからなるフィルム押出機、冷却ロール、フィッシュアイ検査機(型式:GX70W、マミヤオーピー(株)製)、巻き取り機等を備えた引き取り装置を使用して、フィルムの製造を行った。押出機からポリアミド樹脂組成物を3kg/hの吐出速度に保持しつつフィルム状に押し出し、引き取り速度を調節して幅15cm、厚み50μmのフィルムとした。
以下の方法でフィルムの評価を行った。結果を表4に示す。
<フィッシュアイ数>
前記フィルムをフィッシュアイ検査機のカメラと光源の間を通過させ、巻き取り機にて巻き取りつつ、押し出しを開始してから1時間経過した時点で、幅10cm、長さ50mのフィルムのフィッシュアイ数(円相当径が20μm以上)をカウントし、1m2当たりのフィッシュアイ数を算出した。フィッシュアイ数は少ないほど好ましい。
また、フィッシュアイ数のカウント終了後、巻き取り速度を調節して、幅15cm、厚み250μmのフィルムとした後、押し出しを継続し、押出し開始直後、3時間後及び6時間後における押出機ヘッドの樹脂圧力をそれぞれ測定し、その変化の有無を測定した。押出機ヘッドの樹脂圧力の変化量が少ないことが好ましい。
得られたフィルムの外観を目視で観察した。フィルムの着色やゲル等の異物が観測されないことが好ましい。
ポリアミド樹脂組成物のフィルム1gを精秤し、96質量%硫酸100mlに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96質量%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。t及びt0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0
[滞留サンプルの作製]
上記の250μm厚みフィルムを直径30mmの円形に切り取り、これを4枚作製した。該円形フィルムを同心円状に重ね、孔径30mmにくり抜いた孔を持つ1mm厚の100×100mmポリテトラフルオロエチレンシートの孔部に、前記の同心円状に重ねた円形フィルムをはめ込み、さらに該シートを、1mm厚の100×100mmポリテトラフルオロエチレンシート2枚の間に挟み込んだ。
次いで、中央部に深さ3mmの120mm×120mmの溝を持つ15mm厚×150mm×150mm金属板に、上述のフィルムを挟み込んだポリテトラフルオロエチレンシートを溝の中央に配置し、さらに15mm厚×150mm×150mm金属板にて上から蓋をした後、金属板同士をボルトで固定した。
続けて、予め加温した熱プレス機により50kg/cm2以上にて該金属板を挟んだ状態で、270℃にて72時間、290℃にて24時間、又は290℃にて36時間のそれぞれの条件で加熱を行った。各時間経過後に該金属板を取り出して急冷し、室温まで十分に冷却されてから滞留サンプルを取り出した。
次いで、上記の滞留サンプルを60℃にて30分恒温乾燥機にて乾燥させた後、乾燥したサンプルを直ちに100mg秤量した。秤量した滞留サンプルを10mlの純度99%以上のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に24時間浸漬後、予め秤量した300μm孔径のポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルターを通し減圧濾過した。メンブレンフィルターに残った残渣を2mlのHFIPにて3回洗浄した後、残渣の付着したフィルターを60℃にて30分恒温乾燥機にて乾燥した。
乾燥させた残渣及びフィルターの総重量を秤量し、予め秤量したメンブレンフィルター重量との差から、滞留サンプルのHFIP不溶成分量(ゲル量)を算出した。ゲル分率はHFIP浸漬前の滞留サンプルに対するHFIP不溶成分の質量%として求めた。
同様の操作を滞留サンプルの作製から同一条件にて3回行い、得られたゲル分率のそれぞれの条件における平均値を求めた。
(ポリアミド樹脂組成物のフィルムの製造)
実施例1のマスターバッチに代えて、原料アルカリ化合物として平均粒子径が80μmの酢酸ナトリウムを直接ポリアミドに、ポリアミド100質量部に対し0.1%となるようドライブレンドした後、実施例1と同様の装置を使用して、実施例1と同様の条件でフィルムの製造を行った。
フィルムの評価、押出機ヘッドの樹脂圧力、フィルムの外観、ゲル分率の測定結果を表4に示した。
(ポリアミド樹脂組成物のフィルムの製造)
実施例1のマスターバッチを添加せず、ポリアミド(X1d)のみを用い、実施例1と同様の装置を使用して、実施例1と同様の条件でフィルムの製造を行った。
フィルムの評価、押出機ヘッドの樹脂圧力、フィルムの外観、ゲル分率の測定結果を表4に示した。
(ポリアミド樹脂組成物のフィルムの製造)
実施例1のマスターバッチに代えて、原料アルカリ化合物としてステアリン酸カルシウムを直接ポリアミドと、ポリアミド100質量部に対して表3に記載の配合量でドライブレンドした後、実施例1と同様の装置を使用して、実施例1と同様の条件でフィルムの製造を行った。
フィルムの評価、押出機ヘッドの樹脂圧力、フィルムの外観、ゲル分率の測定結果を表4に示した。
これに対し、マスターバッチを添加した実施例1〜11では、フィルム中のフィッシュアイ数が少なく、ゲル分率も低く、成形加工時においてもゲルの生成が少なかった。
一方、マスターバッチ中のアルカリ金属原子およびアルカリ土類金属原子の総モル濃度が低い比較例1では、フィルムが黄色くなったほか、白化が生じて外観が著しく悪化した。またマスターバッチ中のアルカリ化合物(A)の粒子径80μm以上を超える粒子の含有数が多い比較例2、およびアルカリ化合物(A)の平均粒子径が大きい比較例3では、各マスターバッチを使用して成形加工を実施した際、時間経過に伴って樹脂圧の上昇が確認されたほか、フィルム上にもブツの発生が確認された。また、比較例4においてマスターバッチを利用せず、原料アルカリ化合物として平均粒子径が80μmの酢酸ナトリウムを直接ポリアミドにドライブレンドした場合にも、ブツの発生が見られた。比較例6においてマスターバッチを利用せず、原料アルカリ化合物として少量のステアリン酸カルシウムを直接ポリアミドにドライブレンドした場合には、当初はフィルムのフィッシュアイ数も少なかったが、ゲル分率が高く、滞留によって過剰の熱履歴がかかるとゲルが生成していた。比較例7において、比較例6よりステアリン酸カルシウムの添加量を多くした場合には、フィルムに白化が生じて外観が著しく悪化したため、フィルムのフィッシュアイ数が測定できなかった。
さらにマスターバッチ10を成形する際は、ポリアミド(X)に対して原料アルカリ化合物(A)を過剰に含むために、樹脂の溶融粘度が低くなり、ペレタイザーによるペレット化が困難であり、以後の成形加工に適さないものであった。
Claims (11)
- メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位とジカルボン酸単位とからなるポリアミド(X)と、アルカリ化合物(A)とを含むマスターバッチであって、マスターバッチ中に含まれるアルカリ化合物(A)の平均粒子径が50μm以下であり、かつ、マスターバッチの断面5ミリ平方メートル中に粒子径80μmを超える粒子の含有数が1.5個以下であり、かつ、マスターバッチ1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和(m)が60μmol/g以上1710μmol/g以下であることを特徴とするマスターバッチ。
- 前記アルカリ化合物(A)が、炭素数10以下のカルボン酸のアルカリ金属塩である、請求項1に記載のマスターバッチ。
- 前記アルカリ化合物(A)が、酢酸ナトリウムである、請求項1に記載のマスターバッチ。
- 前記ポリアミド(X)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、アジピン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドである、請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
- 前記ポリアミド(X)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、アジピン酸単位70〜99モル%及びイソフタル酸単位1〜30モル%とを含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドである、請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
- 前記ポリアミド(X)が、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と、セバシン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドである、請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
- 前記ポリアミド(X)に含まれる水分量が0.1〜0.8質量%である、請求項1〜6のいずれかに記載のマスターバッチ。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のマスターバッチの製造方法であって、ポリアミド(X)と原料アルカリ化合物(A)とを溶融混練する工程を含む、マスターバッチの製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のマスターバッチを利用したポリアミド樹脂組成物の製造方法であって、
(a)アルカリ金属化合物(C)及びリン原子含有化合物(B)の存在下で、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンとジカルボン酸とを重縮合してポリアミド(X)を得る工程、
(b)前記工程(a)で得られたポリアミド(X)100質量部に対して、原料アルカリ化合物(A)14〜0.5質量部を押出機により溶融混練して、前記ポリアミド(X)と前記アルカリ化合物(A)とを含むマスターバッチを得る工程、及び
(c)前記工程(b)で得られたマスターバッチ0.5〜20質量部と前記工程(a)で得られたポリアミド(X)99.5〜80質量部とを押出機により溶融混練する工程
を含む、ポリアミド樹脂組成物の製造方法。 - 前記工程(c)で得られたポリアミド樹脂組成物が、以下の式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする、請求項9に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
0.03≦P<0.32・・・・・・・(1)
2.2≦M≦26.1・・・・・・・・(2)
5<M/P≦200・・・・・・・・・(3)
(式中、Pはポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるリン原子のモル濃度(μmol/g)を表し、Mは、ポリアミド樹脂組成物1gあたりに含まれるアルカリ金属原子のモル濃度及びアルカリ土類金属原子のモル濃度にそれぞれ価数を乗じた値の和(μmol/g)を表す。) - 原料アルカリ化合物(A)の平均粒子径が150μm以下であり、かつ原料アルカリ化合物(A)中に粒子径300μm以上となる粒子の含まれる割合が5%以下である、請求項9又は10に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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