JP5819683B2 - 磁性ダイヤモンド微粒子及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、磁性ダイヤモンド微粒子及びその製造方法に関し、詳しくは、セラミックス部品、ガラス部品、金属部品等の磁気研磨に用いる磁性ダイヤモンド微粒子及びその製造方法に関する。
磁気研磨法として知られる研磨技術は、磁性砥粒に磁場を印加することによって砥粒に加工圧力及び保持力を与えセラミックス等の円筒内外面や球面等複雑形状の精密仕上げ加工に応用できる技術である。この磁気研磨に用いられる砥粒には砥粒として要求される硬度と共に磁性を併せ持つことが要求される。
一方、高い硬度を有するダイヤモンド,立方晶窒化ホウ素、アルミナ等の砥粒は、高い砥粒性能を有するものの非磁性であるため直接磁気研磨用砥粒として使用できない欠点があった。
この問題を解決するために磁性金属等を芯材として表面にダイヤモンド等の非磁性砥粒群を付着させる複合磁性砥粒が提案されている。
特開2005-171214号(特許文献1)は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、アルミナ等の砥粒を核として、Fe、Mn、Zn、Ni、Coの硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩の複数混合溶液から、金属酸化物及びその複合体のスピネルフェライトを液相析出させてなる磁性粒子を開示している。しかしながら、引用文献1に記載の方法は、核となるダイヤモンド等の粒子の液相における分散性によっては、ダイヤモンド粒子に付着しないでスピネルフェライトが単独で析出する場合があり、十分な磁気特性を有する磁性粒子が得られない。
特開2005-50501号(特許文献2)は、Fe系材料などの高透磁率材料の球体を核として、この球体の外面部に酸化セリウムなどの砥粒材料が層状に付着された、磁性粒子と研磨砥粒とが一体化された研磨剤を用いて、非磁性ディスク基板の中心部に設けられた円孔の内周側端面を研磨する方法を開示しており、前記一体化された研磨剤は、高透磁率材料の球体をフェノール樹脂などの樹脂層で包み、酸化セリウムの10wt%〜20wt%水溶液を塗布し、焼成することによって作製することができると記載している。しかしながら、前記一体化された研磨剤は磁性体粒子の周りに酸化セリウム等を焼成により形成しているため、磁性体粒子同士が凝集した状態で焼成されることによって研磨剤粒子の粒径が大きくなり、さらに分級等の操作が必要となる場合がある。
S. P. Gubin et al., “Magnetic nanoparticles fixed on the surface of detonation nanodiamond microgranules”, Diamond & Related Materials 16 (2007) 1924-1928(非特許文献1)は、爆射法で得られたナノダイヤモンドの表面にカルボニル鉄又はシュウ酸コバルトを析出させてなる、磁性Fe又はCoナノ粒子含有ナノダイヤモンド凝集体を作製する方法を開示している。しかしながら、非特許文献1に記載の方法によって得られる磁性ナノダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンド粒子自体の凝集安定性が低いため、磁性体を含有しない粗大な凝集体が含まれており、磁性研磨剤としては十分な性能が得られない。
特開2005-171214号 特開2005-50501号
S. P. Gubin et al., "Magnetic nanoparticles fixed on the surface of detonation nanodiamond microgranules", Diamond & Related Materials 16 (2007) 1924-1928
従って、本発明の目的は、凝集安定性に優れ、粗大粒子を含まない、磁性を有するダイヤモンド粒子及びその製造方法を提供することにある。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、爆射法で得られたダイヤモンド微粒子の表面を酸化処理等によって改質することにより、磁性体を高い被覆率で被覆することができるとともに、得られた磁性粒子の凝集安定性が著しく改良されることを見いだし、本発明に想到した。
すなわち、本発明の磁性ダイヤモンド微粒子は、爆射法で得られたダイヤモンド微粒子と、前記ダイヤモンド微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する磁性体とからなり、前記ダイヤモンド微粒子が、酸化処理されたものであることを特徴とする。
前記ダイヤモンド微粒子は、疎水化処理されたダイヤモンド微粒子であるのが好ましい。
前記磁性体は、Fe、Fe3O4(マグネタイト)、γ-Fe2O3(マグヘマイト)、Co、CoO、Niからなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
前記ダイヤモンド微粒子は、2.55〜3.48 g/cm3の比重を有するのが好ましい。
前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子は、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を有するものであるのが好ましい。
前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子は、ケイ素原子を有するものであるのが好ましい。
前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子は、フッ素原子を有するものでのが好ましい。
前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子は、界面活性剤処理されたものであるのが好ましい。
前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤であるのが好ましい。
前記カチオン性界面活性剤は、第1〜3級アミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
ダイヤモンド微粒子と、前記ダイヤモンド微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する磁性体とからなる磁性ダイヤモンド微粒子を製造する本発明の方法は、(a)爆射法で得られた未精製のダイヤモンド微粒子を酸化処理する工程、(b)前記酸化処理してなるダイヤモンド微粒子を疎水化処理する工程、及び(c)前記疎水化ダイヤモンド微粒子と、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)、テトラカルボニルニッケル(Ni(CO)4)、シュウ酸コバルト(Co(COO)2)、オクタカルボニルコバルト(Co2(CO)8)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを混合し、180〜350℃に加熱する工程を有することを特徴とする。
前記疎水化処理は、チオニルクロライド及びアルキルアミンによる処理であるのが好ましい。
前記疎水化処理は、チオニルクロライド及び有機リチウムによる処理であるのが好ましい。
前記疎水化処理は、シリル化剤、アルコキシシラン又はシランカップリング剤による処理であるのが好ましい。
前記疎水化処理は、フルオロアルキル基含有オリゴマーによる処理であるのが好ましい。
本発明の磁性ダイヤモンド微粒子は、高い磁気特性を有するとともに、高い分散性を有し、粗大粒子を実質的に含まないので、ハードディスク等のガラス基板の磁気研磨に好適である。
本発明の製造方法により、高い磁気特性及び高い分散性を有する磁性ダイヤモンド微粒子を、簡便で安価に製造することができる。
爆射法によりダイヤモンド微粒子を合成する際に使用する氷の容器の一例を示す模式図である。
[1] 磁性ダイヤモンド微粒子
(1)構成
本発明の磁性ダイヤモンド微粒子は、爆射法で得られたダイヤモンド微粒子と、前記ダイヤモンド微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する磁性体とからなり、前記ダイヤモンド微粒子が、酸化処理されたものであることを特徴とする。
磁性体は、ダイヤモンド微粒子の表面の少なくとも一部を被覆すればよいが、高い磁気特性を得るためには、ダイヤモンド微粒子の表面全体を被覆し、いわゆるコア/シェル構造を有しているのが好ましい。ダイヤモンド微粒子に対する磁性体の被覆量は、ダイヤモンド微粒子1g当たり0.01 〜1 gであるのが好ましく、0.03〜0.6 gであるのがより好ましく、0.1〜0.4 gであるのが最も好ましい。0.01 g未満では十分な磁気特性が得られず、1 gを越えるとダイヤモンドの有する研磨性能が発揮できなくなる。
(2) 磁性体
ダイヤモンド微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する磁性体は、Fe、Fe3O4(マグネタイト)、γ-Fe2O3(マグヘマイト)、Co、CoO、Niからなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。これらの磁性体は、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)、テトラカルボニルニッケル(Ni(CO)4)、オクタカルボニルコバルト(Co2(CO)8)等のカルボニル錯体、又はシュウ酸コバルト(Co(COO)2)等を加熱することによって得られる。例えば、ペンタカルボニル鉄を用いる場合、ダイヤモンド微粒子の分散液中でペンタカルボニル鉄を加熱することによって、ダイヤモンド微粒子の表面に鉄単体及びさらに酸化されてなるFe3O4(マグネタイト)、γ-Fe2O3(マグヘマイト)等の被覆膜を形成することができる。
前記ダイヤモンド微粒子の表面に形成される磁性体の大きさは、単磁区粒子のサイズ(3〜50 nm)程度以上であるのが好ましい。前記磁性体が単磁区粒子サイズよりも小さくなると、前記磁性体は超常磁性状態となり磁気特性が著しく低下してしまう。また良好な磁気特性を得るためには、前述の様にダイヤモンド微粒子の表面全体を被覆しているのが好ましい。
(3)ダイヤモンド微粒子
ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)及びテトラカルボニルニッケル(Ni(CO)4)が疎水性の液体であり、オクタカルボニルコバルト(Co2(CO)8)及びシュウ酸コバルト(Co(COO)2)がトルエン等の有機溶剤に溶解する化合物であるため、これらの化合物を用いてダイヤモンド微粒子の表面に磁性体の被覆を行う場合は、ダイヤモンド微粒子が前記疎水性の液体及び/又は前記有機溶剤への良好な分散性を有するのが好ましい。ダイヤモンド微粒子は、その表面にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基を有しているので、これらの親水性官能基を疎水性基で置換することにより、粒子表面を疎水性基で修飾し有機溶剤に対する分散性を高めて使用するのが好ましい。
ダイヤモンド微粒子としては、表面積が大きいこと、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が粒子表面に比較的多く存在し化学修飾が容易であることから、爆射法で得られたナノダイヤモンドを用いる。爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンドは、ナノサイズのダイヤモンド粒子の表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しているので、まず酸化処理を行うことによりグラファイト相の一部又はほぼ全部を除去し、粒子表面にダイヤモンドを露出させるのが好ましい。
未精製のナノダイヤモンドは、約2.55 g/cm3の比重を有し、200〜250 nm程度のメジアン径(動的光散乱法)を有する。この未精製のナノダイヤモンドを酸化処理することにより、粒子表面のグラファイト系炭素が除去され、ダイヤモンド含率の高いダイヤモンド微粒子が得られる。酸化処理することにより精製したダイヤモンド微粒子は2〜10 nm程度のダイヤモンドの一次粒子からなるメジアン径150〜250 nm程度の二次粒子である。本発明で使用するダイヤモンド微粒子は、その表面積を大きくするため、さらにメディア分散等の方法によりできるだけ凝集を解いて使用するのが好ましく、そのメジアン径は10〜200 nmであるのが好ましく、20〜150 nmであるのがより好ましい。
酸化処理を施したダイヤモンド微粒子は、その表面にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が増加するので、疎水性の溶剤への分散性を高めるためには、これらの官能基を疎水性基に置換して疎水性を高める必要がある。ダイヤモンド微粒子の表面を修飾する疎水性基としては、特に限定されるものではないが、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を有する基であるのが好ましい。これらの基は、ダイヤモンド微粒子表面のカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等に結合させるのが好ましい。その結果、前記アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基がカルボニル基、アミド基、カルバモイル基、シリル基、シリルエーテル基等を介してダイヤモンド微粒子に結合してなる疎水化ダイヤモンド微粒子が得られる。またダイヤモンド微粒子表面をフッ素等で修飾しても良く、カチオン性界面活性剤で処理しても良い。これらの処理は複数のものを組み合わせて行っても良い。
ダイヤモンド微粒子は、2.55〜3.48 g/cm3の比重を有するのが好ましい。ダイヤモンド微粒子の比重は、ナノダイヤモンドの精製度(グラファイト系炭素の除去率)に伴って増加するので、比重から粒子中のダイヤモンド含率(粒子表面に存在するグラファイト系炭素の量)を求めることができる。すなわち、比重が2.55 g/cm3の場合のダイヤモンド含率は24体積%、比重が3.48 g/cm3の場合のダイヤモンド含率は98体積%である。
ダイヤモンド微粒子の比重が2.55 g/cm3未満、すなわち酸化処理を行わない場合であっても、その表面にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基を有しているが、さらに酸化処理を施すことによって、それらの数を増加させることができる。また過剰に酸化処理を施した場合、ナノダイヤモンドのシェル部分のグラファイト系炭素がほとんど除去されるため、逆にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が少なくなってしまう。その結果、修飾できる疎水性基の数が少なくなり、ダイヤモンド微粒子の疎水化が不十分となる。従って比重は3.48 g/cm3を越えない程度であるのが好ましい。前記比重は、3.0 g/cm3(ダイヤモンド84体積%)以上3.46 g/cm3(ダイヤモンド97体積%)以下であるのがより好ましく、3.38 g/cm3(ダイヤモンド90体積%)以上3.45 g/cm3(ダイヤモンド96体積%)以下であるのが最も好ましい。なおナノダイヤモンド中のダイヤモンドの体積%は、ダイヤモンドの比重3.50 g/cm3及びグラファイトの比重2.25 g/cm3を用いて、ナノダイヤモンドの比重から算出した値である。
[2]製造方法
A.ダイヤモンド微粒子
(1)爆射法
爆射法によるダイヤモンド微粒子の合成は、水及び/又は氷の存在下で爆薬を爆発させて行うウエット法、水及び/又は氷を使用しないで空冷するドライ法等があるが、本発明では爆射法であればどの方法を採用しても良い。
ウエット法としては、例えば、氷でできた容器中に充填した爆薬[例えば、TNT(トリニトロトルエン)/HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)=50/50]を、耐圧容器のほぼ中央部に配置し、前記耐圧容器の壁面に水を流しながら爆裂させる方法を挙げることができる。この方法において、反応生成物としての未精製のダイヤモンドは容器中の水中から回収する。ウエット法においては、水及び/又は氷中にあらかじめ水溶性の還元剤(酸化防止剤)を含有させて爆発を行うのが好ましい。前記水溶性の還元剤としては、ヒドラジン類、ヘキサメチレンテトラアミン、尿素、アンモニア、アセトニトリル、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、ハイドロキノン、エリソルビン酸ナトリウム、カテキン、ヒドラジン、シュウ酸、ギ酸等が挙げられる。
爆薬としては公知の有機系爆薬を用いることができる。有機系爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)、トリニトロベンゼン(TNB)、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、テトラニトロメチルアニリン(テトリル)、トリアミノトリニトロベンゼン(TATB)、ジアミノトリニトロベンゼン(DATB)、ヘキサニトロスチルベン(HNS)、ヘキサニトロアゾベンゼン(HNAB)、ヘキサニトロジフェニルアミン(HNDP)、ピクリン酸、ピクリン酸アンモニウム、ベンゾトリアゾール(TACOT)、エチレンジニトラミン(EDNA)、ニトログアニジン(NQ)、ペンタエリスリトールテトラナイトレート(ペンスリット)、ベンゾトリフルオキサン(BTF)等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用する。特に、RDX(60%)とTNT(40%)との混合爆薬として知られているコンポジションB等を使用するのが好ましい。
これらの有機系爆薬は、炭素原子含有率が15質量%以上、好ましくは20〜35質量%、密度が1.5 g/cc以上、好ましくは1.6 g/cc以上、爆速は7000 m/s以上、好ましくは7500 m/s以上であり、酸素バランスが負、好ましくは-0.2〜-0.6であり、爆射圧が18 GPa以上、好ましくは20〜30 GPa、爆射温度が3000 K以上、好ましくは3000〜4000 Kである。そのため、爆薬中の炭素原子を効率よくダイヤモンドに転換することができ、また酸素バランスが負であることから爆発時にダイヤモンドが酸化されて収率を低下させることがない。
前記爆射法は、Science, Vol. 133, No.3467(1961), pp1821-1822、特開平1-234311号、特開平2-141414号、Bull. Soc. Chem. Fr. Vol. 134(1997), pp. 875-890、Diamond and Related materials Vol. 9(2000), pp861-865、Chemical Physics Letters, 222(1994), pp. 343-346、Carbon, Vol. 33, No. 12(1995), pp. 1663-1671、Physics of the Solid State, Vol. 42, No. 8 (2000), pp. 1575-1578、K. Xu. Z. Jin, F. Wei and T. Jiang, Energetic Materials, 1, 19(1993)、特開昭63-303806号、特開昭56-26711報、英国特許第1154633号、特開平3-271109号、特表平6-505694号(WO93/13016号)、炭素, 第22巻, No. 2, 189〜191頁(1984)、Van Thiei. M. & Rec., F. H., J. Appl. Phys. 62, pp. 1761〜1767 (1987)、特表平7-505831号 (WO94/18123号)、米国特許第5861349号、特開2006-239511号及び特開2003-146637号等に記載の方法を用いることができる。
(2)酸化処理
未精製のダイヤモンドの酸化処理方法としては、(i) 過塩素酸、重クロム酸、硝酸等の酸化剤共存下で高温高圧処理する方法(酸化処理A)、(ii)水及び/又はアルコールからなる超臨界流体中で処理する方法(酸化処理B)、(iii)水及び/又はアルコールからなる溶媒に酸素を共存させて、前記溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力で処理する方法(酸化処理C)、又は(iv)375〜630℃で酸素を含む気体により処理する方法(酸化処理D)が挙げられる。これらの酸化処理は、単独で行ってもよいし、組合せて行っても良い。酸化処理を組合せる場合は、爆射法で得られた未精製のダイヤモンドにまず酸化処理Aを施し、さらに酸化処理B〜Cのいずれかを施すのが好ましい。
爆射法で得られた未精製のダイヤモンドに酸化処理Aを施すことによりグラファイト相の一部が除去されたナノダイヤモンド(グラファイト-ダイヤモンド粒子)が得られ、このグラファイト-ダイヤモンド粒子に酸化処理B〜Cのいずれかの処理を施すことにより前記グラファイト相をさらに除去することができる。粒子表面をカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基で修飾するために、酸化処理Aで使用する酸化剤としては高い酸化力を有するものが好ましい。具体的には、過塩素酸、重クロム酸又は硝酸が好ましい。
(i)酸化処理A
爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド(BD)は、まず酸化処理Aを施すのが好ましい。酸化処理Aは、(a) 爆射法で得られたBDを、酸中で酸化性分解処理する工程、(b)酸化性分解処理したBDを、さらに厳しい条件で処理する酸化性エッチング処理工程、(c)酸化性エッチング処理後の液を中和する工程、(d)脱溶媒工程、及び(e)洗浄工程からなり、必要に応じてグラファイト-ダイヤモンド粒子分散液の(f)pH及び濃度を調製する工程、又は(g) 乾燥して微粉末とする工程からなる。
(a) 酸化性分解処理工程
回収したBDを過塩素酸、重クロム酸、濃硝酸、又は濃硝酸と濃硫酸との混合物とともに、1.4 MPa程度の圧力及び150〜180℃程度の温度で10〜30分間処理し、電気雷管等の混入金属、炭素等の夾雑物等の不純物を分解する。
(b) 酸化性エッチング処理工程
酸化性分解処理したBDは、過塩素酸、重クロム酸又は濃硝酸中で酸化性分解処理よりもさらに厳しい条件(例えば、1.4 MPa、200〜240℃)で行う。このような条件で10〜30分処理すると、BD表面を被覆する硬質炭素、すなわちグラファイトを大部分除去することができる。
(c) 中和工程
酸化性エッチング処理後のグラファイト-ダイヤモンド粒子を含む硝酸水溶液(pHが2〜6.95)に、それ自身又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性物質を加えて中和反応させる。塩基性物質の添加によりpH7.05〜12に上昇する。前記塩基性物質を使用することにより、凝集したグラファイト-ダイヤモンド粒子内に浸透した塩基が、粒子内の硝酸と反応し、ガス化することにより凝集体を個々のグラファイト-ダイヤモンド粒子に解体するといった効果が得られる。この工程により、グラファイト-ダイヤモンド粒子の大きな比表面積及び孔部吸着空間が形成されるものと思われる。
塩基性材料としては、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、アリルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、ジイソプロピルアミン、ジエチレントリアミンやテトラエチレンペンタミンのようなポリアルキレンポリアミン、2-エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、ホルムアミド、N,N-メチルホルムアミド、尿素等を挙げることができる。
(d) 脱溶媒工程
得られたグラファイト-ダイヤモンド粒子を含む液は、遠心分離、デカンテーション等により脱溶媒するのが好ましい。
(e) 水洗工程
脱溶媒したグラファイト-ダイヤモンド粒子は水洗するのが好ましい。洗浄操作は3回以上行うのが好ましい。水洗したグラファイト-ダイヤモンド粒子は、再度遠心分離し、脱水するのが好ましい。
(f) pH及び濃度を調製する工程
グラファイト-ダイヤモンド粒子分散液は、pH 4〜10、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH6〜7.5に調節する。グラファイト-ダイヤモンド粒子濃度は0.05〜16%、好ましくは0.1〜12%、より好ましくは1〜5%に調製するのが好ましい。液中に分散しているグラファイト-ダイヤモンド粒子は、ほとんどが2〜250 nmのメジアン径(数基準で80%以上、重量基準で70%以上が2〜250 nmの範囲にある)である。
BD及びBDに酸化処理Aを施して得られたグラファイト-ダイヤモンド粒子は、主として粒界及び表面にグラファイト相を有する。BD及びグラファイト-ダイヤモンド粒子は、グラファイト以外の不純物として、(i) 非晶質炭素、(ii) 炭化水素、ヘテロ原子含有炭化水素等の炭化水素不純物、及び(iii) 金属(鉄、珪素、硫黄等)、金属酸化物、金属塩(金属硫酸塩、金属カーボネート等)、金属カーバイド等の金属系不純物を有する。これらの不純物によりBD及びグラファイト-ダイヤモンド粒子の表面は、メチル基、メチレン基、メチン基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、硝酸エステル基、スルホン酸基、炭素原子に結合した水酸基(結合性水酸基)等の官能基が存在する。
グラファイト相を有するナノダイヤモンド(グラファイト-ダイヤモンド粒子)はさらに酸化処理B〜Dを施すことによりグラファイト層をさらに除去するのが好ましい。もちろんBDに直接酸化処理B〜Dを施しても良い。
(ii)酸化処理B
酸化処理Bは、(a) グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、酸化性化合物と、水及び/又はアルコールからなる溶媒とからなる混合物A(単に「混合物A」とよぶことがある)を調製し、(b) この混合物Aを、溶媒の臨界点以上の温度及び圧力にした状態でグラファイト相を有するナノダイヤモンドを処理し、(c) 得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液を遠心分離して溶媒を除去する工程を有する。さらに、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(d)水洗及び遠心分離により脱水する工程を設けるのが好ましい。工程(c)と(d)の間に、必要に応じて、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(e)塩基性溶液で中和する工程、及び(f)弱酸で処理する工程を設けてもよい。工程(c)又は(d)で得られた精製ダイヤモンド粒子は乾燥して微粉末にする。
(a) 混合物Aの調製工程
混合物Aは、グラファイト相を有するナノダイヤモンドの粉末に、酸化性化合物、及び水及び/又はアルコールからなる溶媒を混合することにより調製する。又は、前記溶媒にあらかじめグラファイト相を有するナノダイヤモンドを分散した液に、前記酸化性化合物又はその溶液を添加して調製しても良い。混合物Aには、酸化性化合物による酸化反応を促進させるため、塩基性化合物又は酸化性化合物を添加しても良い。
酸化性化合物としては、硝酸、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸リチウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、マンガン酸ナトリウム、マンガン酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、重クロム酸カリウム、クロム酸カリウム等が挙げられ、硝酸及び過酸化水素が好ましい。特に酸化性化合物を単独で使用する場合は、過酸化水素を使用するのが最も好ましい。
酸性化合物としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、フッ酸、臭化水素酸等の無機酸、及び蟻酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられ、無機酸が好ましく、硝酸がより好ましい。
塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、アンモニア等が挙げられる。
酸化性化合物と酸性化合物とを組合せて使用する場合は、過酸化水素と硝酸との組合せが好ましく、酸化性化合物と塩基性化合物とを組合せて使用する場合は、過酸化水素とアンモニアとの組合せが好ましい。
溶媒としては、水、アルコール又はこれらの混合液を用いる。アルコールとしては炭素数1〜3の低級アルコールが好ましい。低級アルコールの具体例として、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール及びこれらの混合液が挙げられる。
前記酸化性化合物の混合物A中の濃度は、0.01〜10 mol/Lが好ましく、0.1〜5 mol/Lがより好ましい。酸化性化合物の濃度により酸化処理の強さを調節することができ、得られるナノダイヤモンドに残存するグラファイト系炭素の量を調節することができる。
混合物A中のグラファイト相を有するナノダイヤモンドの濃度は、0.05〜16質量%が好ましく、0.1〜12質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。この濃度が16質量%を超えると、精製が不十分となる恐れがある。一方0.05質量%未満であると、回収時のロスの割合が多くなり、効率が悪い。
(b) 超臨界処理工程
混合物Aを溶媒の臨界点以上の温度及び圧力で処理する。水の臨界温度は374℃であり、臨界圧力は22.1 MPaである。メタノールの臨界温度は240℃であり、臨界圧力は8.0 MPaである。エタノールの臨界温度は243℃であり、臨界圧力は7.0 MPaである。イソプロパノールの臨界温度は244℃であり、臨界圧力は5.4 MPaである。n-プロパノールの臨界温度は264℃であり、臨界圧力は5.1 MPaである。処理温度は溶媒の臨界温度以上、600℃以下であるのが好ましく、550℃以下であるのがより好ましい。処理圧力は溶媒の臨界圧力以上、100 MPa以下であるのが好ましく、70 MPa以下であるのがより好ましく、50 MPa以下であるのが最も好ましい。処理時間は温度及び圧力により適宜設定すればよいが、1〜24時間が好ましい。
酸化性化合物を含む超臨界流体に、グラファイト相を有するナノダイヤモンドを接触させると、超臨界流体の有する高い拡散性と高い溶解性とにより、粒界のグラファイト相に前記化合物が深く浸透し、前記化合物によるグラファイト相の酸化が促進されるものと考えられる。このような激しい反応性を有する超臨界流体により、グラファイト相を効率的に分解することができる。
(c) 脱溶媒工程
得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液は、遠心分離等により脱溶媒するのが好ましい。
(d) 水洗工程
デカンテーション法により、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を水洗するのが好ましい。洗浄操作は3回以上行うのが好ましい。水洗した精製ダイヤモンド粒子は、再度遠心分離し、脱水するのが好ましい。
(e) 中和工程
工程(c)で脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を、塩基性溶液で中和してもよい。塩基性溶液としては水酸化ナトリウム水溶液及び水酸化カリウム水溶液が好ましい。塩基性溶液の濃度は0.01〜0.5 mol/Lが好ましい。脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子に塩基性溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。中和後、遠心分離し、塩基性溶液を除去する。
(f) 弱酸処理工程
工程(e)で中和した精製ダイヤモンド粒子を弱酸溶液で洗浄するのが好ましい。弱酸溶液によって、中和処理後に残留しているナトリウム等の金属イオンを除去することができる。弱酸溶液の例として、0.01〜0.5 mol/Lの塩酸が挙げられる。中和した精製ダイヤモンド粒子に弱酸溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。洗浄後、遠心分離し、弱酸溶液を除去する。
(iii)酸化処理C
酸化処理Cは、(a) グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、水及び/又はアルコールからなる溶媒とからなる混合物Bを調製し、(b) この混合物Bに酸素を共存させた状態で、処理溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力でグラファイト相を有するナノダイヤモンドを処理し、(c) 得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液を遠心分離して溶媒を除去する工程を有する。さらに、脱処理溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(d)水洗及び遠心分離により脱水する工程を設けるのが好ましい。工程(c)又は(d)で得られた精製ダイヤモンド粒子は乾燥して微粉末にする。
(a)混合物Bの調製工程
混合物Bは、グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、水及び/又はアルコールからなる溶媒とを混合することにより調製する。混合物B中のグラファイト相を有するナノダイヤモンドの濃度は、0.05〜16質量%が好ましく、0.1〜12質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。この濃度が16質量%を超えると、精製が不十分となる恐れがある。一方0.05質量%未満であると、回収時のロスの割合が多くなり生産性が悪化する。
溶媒としては、前記混合物Aの調製で用いることのできるものと同じものが使用できる。
(b) 精製処理工程
混合物Bをオートクレーブに入れ、酸素を導入する。オートクレーブ内に空気がある場合、酸素で置換するのが好ましい。酸素の導入量は、グラファイト相を有するナノダイヤモンド中のグラファイト1 gに対して、0.1モル以上が好ましく、0.15モル以上がより好ましく、0.2モル以上が最も好ましい。この導入量の上限は特に制限されない。ナノダイヤモンド中のグラファイトの割合は、例えば、JIS K2249に準拠してナノダイヤモンドの比重を測定し、この比重から、ダイヤモンドの比重を3.50 g/cm3とし、グラファイトの比重を2.25 g/cm3として算出することができる。
処理溶媒の標準沸点Tb以上及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上となるように、オートクレーブ内の温度及び圧力を調整する。処理溶媒のTb以上及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上にする限り、処理溶媒を亜臨界状態[Tb以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力で、かつ臨界温度Tc未満及び/又は臨界圧力Pc未満の状態]にしてもよいし、超臨界状態にしてもよい。亜臨界又は超臨界状態の酸素及び処理溶媒により、グラファイト相を効率的に選択酸化することができる。
処理温度の下限は(処理溶媒の臨界温度Tc-150℃)が好ましく、(Tc−100℃)がより好ましい。処理温度の上限は800℃が好ましく、600℃がより好ましい。処理圧力の下限は、処理溶媒の臨界圧力Pcの30%が好ましく、Pcの50%がより好ましく、Pcの70%が最も好ましい。処理圧力の上限は70 MPaが好ましく、50 MPaがより好ましい。処理時間は温度及び圧力により適宜設定すればよいが、0.1〜24時間が好ましい。
表1に、酸素、水及び低級アルコールのTb、Tc及びPcを示す。水及び低級アルコールのTcは、酸素のTc(-118℃)より遥かに高く、水及び低級アルコールのPcは、酸素のPc(5.1 MPa)以上である。従って、水及び/又は低級アルコールからなる処理溶媒をTb以上及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上にしたとき、酸素は亜臨界状態のままか超臨界状態となり、処理溶媒を超臨界状態にしたとき、酸素も超臨界状態となる。
Figure 0005819683
(c) 脱溶媒工程
酸化処理Cと同様にして行う。
(d) 水洗工程
酸化処理Cと同様にして行う。
(iv)酸化処理D
酸化処理Dは、前記グラファイト相を有するナノダイヤモンドを反応管に入れ、常圧下で酸素を含む気体を流しながら380〜450℃に加熱する工程を有する。加熱温度は400〜430℃であるのが好ましい。酸素を含む気体は、酸素ガス、空気等を使用できるが、簡便さから空気が好ましい。
(3)メディア分散処理
爆射法により得られた未精製のダイヤモンド、及び前記酸化処理を施したナノダイヤモンドの動的光散乱法で求めたメジアン径は150〜250 nmである。これらの粒子は、前述したように、メジアン径2〜10 nm程度のダイヤモンド一次粒子が強固に凝集した凝集体である。ダイヤモンド微粒子の凝集がより少ないダイヤモンド含有複合樹脂組成物及びダイヤモンド含有複合材料を得るために、未精製又は前記酸化処理を施したダイヤモンド微粒子をビーズミル等の公知のメディア分散法により粉砕するのが好ましい。ビーズミルによる分散は、ジルコニアビーズを使用するのが好ましい。未精製又は前記酸化処理を施したダイヤモンド微粒子をメディア分散することにより、メジアン径を100 nm以下にするのが好ましく、50 nm以下にするのがより好ましく、30 nm以下にするのが最も好ましい。
ビーズミルによる分散は市販の装置を用いて行うことができる。連続的に分散液を供給しながら、ビーズによる粉砕を行うことができる装置を使用するのが好ましく、例えば0.1 mm径のジルコニアビーズを0.15 Lのベッセルに充填し、10 m/s程度の周速で回転子を回転させながら、5%程度の前記ダイヤモンド微粒子の水分散物を0.12 L/minで供給し粉砕する。さらに細かく分散させたいときは、0.05 mm径のジルコニアビーズを用いてもよい。
(4)疎水化処理
酸化処理を施したダイヤモンド微粒子は、その表面にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が多く存在するので、これらの官能基を疎水性基に置換することにより、疎水性の液体や有機溶剤への分散性を高めることができる。ダイヤモンド微粒子の表面を疎水性基で修飾する方法としては、前記ダイヤモンド微粒子の表面に存在するカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基を疎水性基で置換する方法、前記官能基に疎水性基を有する化合物を結合させる方法等が挙げられる。具体的には(a) チオニルクロライドと有機リチウム又はアルキルアミンとによる処理、(b) 疎水性基を有するシリル化剤、アルコキシシラン、シランカップリング剤等によるケイ素化処理、(c)フッ素化処理、及び(d)界面活性剤による処理が挙げられる。
(a)チオニルクロライドと有機リチウム又はアルキルアミンとによる処理
酸化処理したダイヤモンド微粒子にチオニルクロライドを反応させることにより、ダイヤモンド微粒子の表面に存在するカルボキシル基の-OH及び水酸基を塩素で置換することができる。このようにして形成された塩素化ダイヤモンド微粒子は、例えば、アルキルリチウムを反応させることにより、ダイヤモンド微粒子表面の塩素原子がアルキル基に置換され、ダイヤモンド微粒子表面にアルキル基が修飾した疎水化ダイヤモンド微粒子が生成する。また、ダイヤモンド微粒子表面に存在するカルボキシル基の-OHが置換した塩素原子にアルキルアミン及びジクロロカルベンを反応させることにより、アミド基を介してアルキル基がダイヤモンドに結合してなる疎水化ダイヤモンド微粒子が生成する。前記アルキルアミンとしては、オクタデシルアミン[CH3(CH2)17NH2]等が使用できる、
(b)ケイ素化処理
前記爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド、又は前記酸化処理して得られたナノダイヤモンドに、疎水性基を有するシリル化剤、アルコキシシラン、シランカップリング剤等を反応させることによりナノダイヤモンドの表面にある水酸基等の親水性基を、ケイ素を含む有機基に置換することができる。ケイ素化処理は、シリル化剤を用いるのが好ましい。
好ましいシリル化剤としては、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、アセトキシトリメチルシラン、アセトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、2-トリメチルシロキシペント-2-エン-4-オン、n-(トリメチルシリル)アセトアミド、2-(トリメチルシリル)酢酸、n-(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルシリルプロピオレート、ノナメチルトリシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール、t-ブチルジメチルシラノール、ジフェニルシランジオール等が挙げられる。本発明に用いられるシリル化剤は、これらの化合物に限定されない。
シリル化剤溶液の溶媒はヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の炭化水素類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物が好ましい。
シリル化剤の種類や濃度にもよるが、シリル化反応は10〜40℃で十分攪拌しながら進行させるのが好ましい。10℃未満では反応が進行しにくく、40℃超ではナノダイヤモンド表面に均一にシリル化されなくなる。例えば、トリエチルクロロシランのヘキサン溶液をシリル化剤として使用した場合、10〜40℃で10〜40時間程度攪拌しながら反応させると、ナノダイヤモンド表面の水酸基が十分にシリル修飾される。
(c)フッ素化処理
前記爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド、又は前記酸化処理により得られたナノダイヤモンドは、(i)フルオロアルキル基含有オリゴマーを使用した方法、(ii)フルオロアルキルアゾ化合物を用いた方法、(iii)フッ素ガスと直接反応させる方法、(iv)ClF、ClF3、ClF5等のハロゲンフッ化物を反応させる方法、(v)フッ素プラズマによる方法等により、その表面をフッ素又はフッ素を有する基で修飾することができる。本発明の目的には、前記フルオロアルキル基含有オリゴマーを使用した方法を用いるのが好ましい。
フッ素を有するダイヤモンド微粒子は、酸素とフッ素との元素比(O/F)を0.06〜0.2とすることにより、エタノール、アルキレングリコール等のアルコール類への高い分散性を付与することができるとともに、粒子同士の凝集を防止することができる。前記酸素とフッ素との元素比は、X線光電子分光(XPS)測定によって得られる酸素及びフッ素に帰属されるピークの、積分強度比によって算出される値である。O/Fが0.06未満では、フッ素を有するダイヤモンド微粒子とアルコールとの親和性が低下し、アルコールとの溶媒和が形成されず分散性が低下する。一方、O/Fが0.2を超える場合、フッ素の含有量が少なすぎるためフッ素を修飾することによって得られる効果(ダイヤモンド微粒子同士の凝集を防止する効果等)が小さくなる。
(i)フルオロアルキル基含有オリゴマーを使用した方法
高分子主鎖の両末端にフルオロアルキル基が直接炭素−炭素結合により導入された高分子界面活性剤(含フッ素オリゴマー)は、水溶液中又は有機溶媒中において自己組織化したナノレベルの分子集合体を形成することが知られている。このフルオロアルキル基が末端に導入された含フッ素オリゴマーを用いることにより、フルオロアルキル基で修飾したナノダイヤモンドを形成することができる。
フルオロアルキル基で修飾したナノダイヤモンドは、爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド、又は前記酸化処理により得られたナノダイヤモンドを、一般式(A)で表される含フッ素オリゴマーで処理することによって得ることができる。
Figure 0005819683
ここで、RFはフルオロアルキル基であり、具体的には、-CF(CF3)OC3F7、-CF(C3F)OCF2CF(CF3)OC3F7等の基が好ましい。Rは置換基であり、-N(CH3)2、-OH、-NHC(CH3)2CH2C(=O)CH3、-Si(OCH3)3、-COOH等の基が好ましい。nは5〜2000であるのが好ましい。
ナノダイヤモンドと一般式(A)で表される含フッ素オリゴマーとをメタノール、エタノール等のアルコール溶媒中で混合し、室温〜80℃で2〜48時間撹拌することによりナノダイヤモンド表面にフルオロアルキル基(RF)が修飾された複合粒子を高い収率で得ることができる。反応を促進させるために、アンモニア等の塩基を使用してもよい。
(ii) フルオロアルキルアゾ化合物を用いた方法
下記反応式に記載したように、ナノダイヤモンドの存在下で、パーフルオロヘキサンに溶解したアゾビスパーフルオロオクチル1に、Xeエキシマランプにより波長172 nmの光を室温で照射することによりナノダイヤモンドにパーフルオロオクチルを付加させることができる。この反応はアルゴン気流下で行い、前記照射時間は10分〜2時間程度である。なお、この方法に用いるナノダイヤモンドは、パーフルオロヘキサンに分散しやすいようにあらかじめ他の方法で疎水化処理を行うのが好ましい。
Figure 0005819683
(iii)フッ素ガスと直接反応させる方法
(iii-a)フッ素ガスを用いる第一の方法
フッ素ガスと直接反応させる方法は、ナノダイヤモンドをフッ素ガスと接触させ加熱することにより行う。フッ素ガスは、アルゴン等の不活性ガスと混合して用いるのが好ましい。このときフッ素ガスの濃度は0.01〜100 vol%、好ましくは0.1〜80 vol%、より好ましくは1〜50 vol%である。前記不活性ガスとしてはアルゴンの他に、窒素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等を用いることができる。反応させるガスには、ナノダイヤモンドの酸化が進まないように酸素を含まないのが好ましい。
フッ素化処理の温度は、150〜600℃の範囲内であるのが好ましく、150〜400℃の範囲内であるのがより好ましく、150〜350℃の範囲内であるのが特に好ましい。フッ素化処理の時間(反応時間)は特に限定されず、通常は1分〜500時間の範囲内で行われるが、1〜200時間の範囲内が好ましく、5〜24時間の範囲内がより好ましい。フッ素化処理を行う際の圧力条件としては特に限定されず、加圧下、又は減圧下で行ってもよい。経済上、安全上の観点からは、常圧で行う方が好ましい。フッ素化処理を行うための反応容器としては特に限定されず、固定床、流動床等の従来公知のものを採用することができる。ニッケル製等の反応管を用いるのが好ましい。
(iii-b)フッ素ガスを用いる第二の方法
フッ素ガスと反応させる他の方法として、ナノダイヤを入れた反応炉に、150℃、で3〜4時間不活性ガス中で加熱し、その後反応炉にフッ素ガス及びフッ化水素(3:1)を入れ、150℃のまま48時間加熱することによりフッ素化を行う方法がある。不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴンが使用でき、又は真空で処理しても良い。
(d)カチオン性界面活性剤による処理
界面活性剤を用いることにより、ダイヤモンド微粒子の有機溶剤等への分散性を高めることができる。界面活性剤には特に制限はなく、所定の分散性を確保できるならば公知の任意の界面活性剤が使用できるが、特にカチオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。カチオン性界面活性剤としては造塩し得る第1〜3級アミンを含有する単純なアミン塩、これらの変性塩類、第4級アンモニウム塩、フォスフォニウム塩やスルフォニウム塩などの所謂オニウム化合物、ピリジニウム塩、キノリニウム塩、イミダゾリニウム塩などの環状窒素化合物、異環状化合物等が使用できる。これらのカチオン性界面活性剤は例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、臭化セチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化アルキルジメチルクロロベンジルアンモニウム、塩化アルキルナフタレンピリジニウム等がある。
B.磁性体の被覆処理
ダイヤモンド微粒子への磁性体の被覆方法は、特に限定されるものではないが、例えばダイヤモンド微粒子の分散物に、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)、テトラカルボニルニッケル(Ni(CO)4)、シュウ酸コバルト(Co(COO)2)、オクタカルボニルコバルト(Co2(CO)8)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を添加して混合し、加熱することにより、Fe、Ni、Co等の金属及び/又はそれらの酸化物からなる磁性体を、前記ダイヤモンド微粒子表面に析出させる方法が挙げられる。この方法で使用するダイヤモンド微粒子は、その表面を疎水化基で修飾した疎水化ダイヤモンド微粒子であるのが好ましい。
前記金属カルボニル等を使用する方法は、ヘキサン等の有機溶剤に分散させたダイヤモンド微粒子に、アルゴン気流下で、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)、テトラカルボニルニッケル(Ni(CO)4)、シュウ酸コバルト(Co(COO)2)、オクタカルボニルコバルト(Co2(CO)8)等を添加し、180〜350℃程度、より好ましくは200〜300℃程度で、3〜10時間程度、より好ましくは4〜5時間程度、加熱処理する。この加熱処理により、ダイヤモンド微粒子の表面でFe、Ni、Co等の金属が析出し、さらにその一部が酸化して磁性体が生成する。このようにして磁性体が被覆したダイヤモンド微粒子が得られる。
得られた微粒子は、磁場選鉱等の方法により磁性粒子成分を分離し、ヘキサン等の溶剤で洗浄し、分散液のままで使用してもよいが、通常は、濾過し必要に応じて水洗した後、粉体の形態で各種用途に供するのが好ましい。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
(1)ナノダイヤモンドの作製
TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトラミン)を40/60の比で含む0.65 kgの爆薬1を、脱気した水を凍らせて形成した氷の容器2aに充填し(図1(a))、同じく脱気した水を凍らせて形成した氷の容器2bで蓋をした(図1(b))。前記爆薬1には、起爆用爆薬及び電気雷管を取り付けた。氷の重さは容器2a,2b合わせて15 kgであった。
この爆薬1を充填した氷の容器2a,2bを、3 m3の耐圧性容器内に銅線で吊り下げ、耐圧性容器内の空気を窒素と置換した。爆薬を起爆するための電気雷管への電流は前記銅線を通して供給した。耐圧性容器内は1気圧であり、酸素濃度は4容量%であった。耐圧性容器の上部から内壁全体に水をかけながら氷の容器2a,2bに充填した爆薬1を爆発させた。
5分間静置した後、前記氷の容器2a,2bに充填した爆薬1を再度同様にして設置し、耐圧性容器内の窒素置換の操作は行わないで二度目の爆発を行った。ただし、氷の容器2a,2bに充填した爆薬1を設置する際には、窒素を耐圧性容器に供給しながら素早く作業を行った。
二度目の爆発後、耐圧性容器の上蓋を開け、水で耐圧性容器の内壁面を洗浄しながら黒色液状の爆発生成物(未精製のナノダイヤモンド)を回収し、加熱乾燥し、未精製のナノダイヤモンド粉末を得た。この未精製のナノダイヤモンドの収率は使用した爆薬量に対して11質量%であり、比重は2.55 g/cm3、メジアン径(動的光散乱法)は220 nmであった。この未精製のナノダイヤモンドは、比重から計算して、76体積%のグラファイト系炭素と24体積%のダイヤモンドからなっていると推定された。この未精製のナノダイヤモンドは、ラマンスペクトルにおける1,330±10 cm-1のピーク強度Iaと、1,610±100 cm-1のピーク強度Ibとの比が0.86であった。
得られた未精製のナノダイヤモンドを60質量%硝酸水溶液と混合し、160℃、14気圧、20分の条件で酸化性分解処理を行った後、130℃、13気圧、1時間で酸化性エッチング処理を行った。酸化性エッチング処理により、未精製のナノダイヤモンドからグラファイトが一部除去された粒子が得られた。この粒子を、アンモニアを用いて、210℃、20気圧、20分還流し中和処理した後、自然沈降させデカンテーションにより35質量%硝酸での洗浄を行い、さらにデカンテーションにより3回水洗し、遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、酸化処理したナノダイヤモンドの粉末を得た。この酸化処理したナノダイヤモンドの粉末の比重は3.38 g/cm3であり、メジアン径は130 nm(動的光散乱法)であった。比重から計算して、90体積%のダイヤモンドと10体積%のグラファイト系炭素からなっていると推定された。
(2) 磁性ダイヤモンド微粒子の作製
得られた酸化処理ダイヤモンド微粒子をジメチルスルホキシド(DMSO)に5質量%の濃度で分散し、アルゴン気流下で、酸化処理ダイヤモンド微粒子に対して2倍量(質量比)のペンタカルボニル鉄[Fe(CO)5]を添加し250℃に加熱し4時間反応させた。磁場選鉱により、生成された磁性粒子を分離し、フラスコ内に残っている磁性粒子をヘキサンで洗浄した後、乾燥して磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
得られた磁性ダイヤモンド微粒子は、メジアン径が160 nmであり、X線回折の測定から、Fe、Fe3O4(マグネタイト)及びγ-Fe2O3(マグヘマイト)を有していることがわかった。また、光顕観察の結果、この磁性ダイヤモンド微粒子は、1μm以上の粗大粒子を実質的に含有していなかった。
実施例2
(1) アルキル修飾ダイヤモンド微粒子の作製
実施例1で作製した酸化処理したナノダイヤモンドの粉末を四塩化炭素中に分散させ、チオニルクロライドと混合しカルボキシル基のヒドロキシル基を塩素置換した。さらにこの塩素化したナノダイヤモンドに、オクタデシルアミン[CH3(CH2)17NH2]とジクロロカルベンとを反応させ、ナノダイヤモンドをオクタデシルアミンで修飾した。得られた分散物をヘキサンで洗浄後、乾燥し、メジアン径が85 nmのアルキル修飾ダイヤモンド微粒子を得た。
(2) 磁性ダイヤモンド微粒子の作製
得られたアルキル修飾ダイヤモンド微粒子をヘキサンに5質量%の濃度で分散し、アルゴン気流下で、アルキル修飾ダイヤモンド微粒子に対して2倍量(質量比)のペンタカルボニル鉄[Fe(CO)5]を添加し230℃に加熱し4時間反応させた。磁場選鉱により、生成された磁性粒子を分離し、フラスコ内に残っている磁性粒子をヘキサンで洗浄した後、乾燥して磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
得られた磁性ダイヤモンド微粒子は、メジアン径が90 nmであり、X線回折の測定から、Fe、Fe3O4(マグネタイト)及びγ-Fe2O3(マグヘマイト)を有していることがわかった。また、光顕観察の結果、この磁性ダイヤモンド微粒子は、1μm以上の粗大粒子を実質的に含有していなかった。
実施例3
(1) ケイ素化ダイヤモンド微粒子の作製
実施例1で作製したナノダイヤモンドの粉末をメチルイソブチルケトンに4質量%の濃度で分散させ、トリメチルクロロシランのメチルイソブチルケトン溶液(濃度7.5質量%)を1:1の容量で加え、48時間撹拌してナノダイヤモンドをトリメチルシランで修飾した。得られた分散物をメチルイソブチルケトンで洗浄後、乾燥し、メジアン径が110 nmのトリメチルシラン修飾ダイヤモンド微粒子を得た。
(2) 磁性ダイヤモンド微粒子の作製
アルキル修飾ダイヤモンド微粒子の代わりに、得られたトリメチルシラン修飾ダイヤモンド微粒子を使用した以外は実施例2と同様にして、磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
得られた磁性ダイヤモンド微粒子は、メジアン径が115 nmであり、X線回折の測定から、Fe、Fe3O4(マグネタイト)及びγ-Fe2O3(マグヘマイト)を有していることがわかった。また、光顕観察の結果、この磁性ダイヤモンド微粒子は、1μm以上の粗大粒子を実質的に含有していなかった。
実施例4
(1)フッ素化ダイヤモンド微粒子の作製
実施例1で得られたナノダイヤモンドの粉末を3質量%の濃度でメタノールに分散させ、下記式:
Figure 0005819683
(RFは-CF(CF3)OC3F7基、Rは-OH基、nは約800である。)表される含フッ素オリゴマー、及び28質量%アンモニア水を、ナノダイヤモンド分散物100質量部に対してそれぞれ50質量部及び10質量部加え、80℃で20時間撹拌して反応させた。得られた分散物を中和、洗浄及び乾燥し、メジアン径が60 nmのフルオロアルキル基修飾ダイヤモンド微粒子を得た。
(2) 磁性ダイヤモンド微粒子の作製
アルキル修飾ダイヤモンド微粒子の代わりに、得られたフルオロアルキル基修飾ダイヤモンド微粒子を使用した以外は実施例2と同様にして、磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
得られた磁性ダイヤモンド微粒子は、メジアン径が70 nmであり、X線回折の測定から、Fe、Fe3O4(マグネタイト)及びγ-Fe2O3(マグヘマイト)を有していることがわかった。また、光顕観察の結果、この磁性ダイヤモンド微粒子は、1μm以上の粗大粒子を実質的に含有していなかった。
実施例5
(1) 磁性ダイヤモンド微粒子の作製
実施例2で得られたアルキル修飾ダイヤモンド微粒子をヘキサンに5質量%の濃度で分散し、アルゴン気流下で、アルキル修飾ダイヤモンド微粒子に対して2倍量(質量比)のテトラカルボニルニッケル[Ni(CO)4]を添加し260℃に加熱し3時間反応させた。磁場選鉱により、生成された磁性粒子を分離し、フラスコ内に残っている磁性粒子をヘキサンで洗浄した後、乾燥して磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
得られた磁性ダイヤモンド微粒子は、メジアン径が90 nmであり、X線回折の測定からNiを有していることがわかった。また、光顕観察の結果、この磁性ダイヤモンド微粒子は、1μm以上の粗大粒子を実質的に含有していなかった。
実施例6
(1) 磁性ダイヤモンド微粒子の作製
実施例2で得られたアルキル修飾ダイヤモンド微粒子をヘキサンに5質量%の濃度で分散し、アルゴン気流下で、アルキル修飾ダイヤモンド微粒子に対して2倍量(質量比)のオクタカルボニルコバルト[Co2(CO)8]を添加し270℃に加熱し3時間反応させた。磁場選鉱により、生成された磁性粒子を分離し、フラスコ内に残っている磁性粒子をヘキサンで洗浄した後、乾燥して磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
得られた磁性ダイヤモンド微粒子は、メジアン径が90 nmであり、X線回折の測定からCo及びCoOを有していることがわかった。また、光顕観察の結果、この磁性ダイヤモンド微粒子は、1μm以上の粗大粒子を実質的に含有していなかった。
1・・・爆薬
2a,2b・・・容器

Claims (14)

  1. 表面が疎水性基で修飾されたダイヤモンド微粒子と、前記ダイヤモンド微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する磁性体とからなる磁性ダイヤモンド微粒子であって、前記ダイヤモンド微粒子が、酸化処理及び疎水化処理されたものであることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
  2. 請求項1に記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記磁性体が、Fe、Fe3O4(マグネタイト)、γ-Fe2O3(マグヘマイト)、Co、CoO、Niからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
  3. 請求項1又は2に記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記ダイヤモンド微粒子が、2.55〜3.48 g/cm3の比重を有することを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子が、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を有するものであることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子が、ケイ素原子を有するものであることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子が、フッ素原子を有するものであることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子が、界面活性剤処理されたものであることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
  8. 請求項7に記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記界面活性剤が、カチオン性界面活性剤であることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
  9. 請求項8に記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記カチオン性界面活性剤が、第1〜3級アミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
  10. ダイヤモンド微粒子と、前記ダイヤモンド微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する磁性体とからなる磁性ダイヤモンド微粒子を製造する方法であって、(a)爆射法で得られた未精製のダイヤモンド微粒子を酸化処理する工程、(b)前記酸化処理してなるダイヤモンド微粒子を疎水化処理する工程、及び(c)前記疎水化ダイヤモンド微粒子と、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)、テトラカルボニルニッケル(Ni(CO)4)、シュウ酸コバルト(Co(COO)2)、オクタカルボニルコバルト(Co2(CO)8)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを混合し、180〜350℃に加熱する工程を有することを特徴とする方法。
  11. 請求項10に記載の磁性ダイヤモンド微粒子の製造方法において、前記疎水化処理が、チオニルクロライド及びアルキルアミンによる処理であることを特徴とする方法。
  12. 請求項10に記載の磁性ダイヤモンド微粒子の製造方法において、前記疎水化処理が、チオニルクロライド及び有機リチウムによる処理であることを特徴とする方法。
  13. 請求項10に記載の磁性ダイヤモンド微粒子の製造方法において、前記疎水化処理が、シリル化剤、アルコキシシラン又はシランカップリング剤による処理であることを特徴とする方法。
  14. 請求項10に記載の磁性ダイヤモンド微粒子の製造方法において、前記疎水化処理が、フルオロアルキル基含有オリゴマーによる処理であることを特徴とする方法。
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