JP5819683B2 - 磁性ダイヤモンド微粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)構成
本発明の磁性ダイヤモンド微粒子は、爆射法で得られたダイヤモンド微粒子と、前記ダイヤモンド微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する磁性体とからなり、前記ダイヤモンド微粒子が、酸化処理されたものであることを特徴とする。
ダイヤモンド微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する磁性体は、Fe、Fe3O4(マグネタイト)、γ-Fe2O3(マグヘマイト)、Co、CoO、Niからなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。これらの磁性体は、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)、テトラカルボニルニッケル(Ni(CO)4)、オクタカルボニルコバルト(Co2(CO)8)等のカルボニル錯体、又はシュウ酸コバルト(Co(COO)2)等を加熱することによって得られる。例えば、ペンタカルボニル鉄を用いる場合、ダイヤモンド微粒子の分散液中でペンタカルボニル鉄を加熱することによって、ダイヤモンド微粒子の表面に鉄単体及びさらに酸化されてなるFe3O4(マグネタイト)、γ-Fe2O3(マグヘマイト)等の被覆膜を形成することができる。
ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)及びテトラカルボニルニッケル(Ni(CO)4)が疎水性の液体であり、オクタカルボニルコバルト(Co2(CO)8)及びシュウ酸コバルト(Co(COO)2)がトルエン等の有機溶剤に溶解する化合物であるため、これらの化合物を用いてダイヤモンド微粒子の表面に磁性体の被覆を行う場合は、ダイヤモンド微粒子が前記疎水性の液体及び/又は前記有機溶剤への良好な分散性を有するのが好ましい。ダイヤモンド微粒子は、その表面にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基を有しているので、これらの親水性官能基を疎水性基で置換することにより、粒子表面を疎水性基で修飾し有機溶剤に対する分散性を高めて使用するのが好ましい。
A.ダイヤモンド微粒子
(1)爆射法
爆射法によるダイヤモンド微粒子の合成は、水及び/又は氷の存在下で爆薬を爆発させて行うウエット法、水及び/又は氷を使用しないで空冷するドライ法等があるが、本発明では爆射法であればどの方法を採用しても良い。
未精製のダイヤモンドの酸化処理方法としては、(i) 過塩素酸、重クロム酸、硝酸等の酸化剤共存下で高温高圧処理する方法(酸化処理A)、(ii)水及び/又はアルコールからなる超臨界流体中で処理する方法(酸化処理B)、(iii)水及び/又はアルコールからなる溶媒に酸素を共存させて、前記溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力で処理する方法(酸化処理C)、又は(iv)375〜630℃で酸素を含む気体により処理する方法(酸化処理D)が挙げられる。これらの酸化処理は、単独で行ってもよいし、組合せて行っても良い。酸化処理を組合せる場合は、爆射法で得られた未精製のダイヤモンドにまず酸化処理Aを施し、さらに酸化処理B〜Cのいずれかを施すのが好ましい。
爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド(BD)は、まず酸化処理Aを施すのが好ましい。酸化処理Aは、(a) 爆射法で得られたBDを、酸中で酸化性分解処理する工程、(b)酸化性分解処理したBDを、さらに厳しい条件で処理する酸化性エッチング処理工程、(c)酸化性エッチング処理後の液を中和する工程、(d)脱溶媒工程、及び(e)洗浄工程からなり、必要に応じてグラファイト-ダイヤモンド粒子分散液の(f)pH及び濃度を調製する工程、又は(g) 乾燥して微粉末とする工程からなる。
回収したBDを過塩素酸、重クロム酸、濃硝酸、又は濃硝酸と濃硫酸との混合物とともに、1.4 MPa程度の圧力及び150〜180℃程度の温度で10〜30分間処理し、電気雷管等の混入金属、炭素等の夾雑物等の不純物を分解する。
酸化性分解処理したBDは、過塩素酸、重クロム酸又は濃硝酸中で酸化性分解処理よりもさらに厳しい条件(例えば、1.4 MPa、200〜240℃)で行う。このような条件で10〜30分処理すると、BD表面を被覆する硬質炭素、すなわちグラファイトを大部分除去することができる。
酸化性エッチング処理後のグラファイト-ダイヤモンド粒子を含む硝酸水溶液(pHが2〜6.95)に、それ自身又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性物質を加えて中和反応させる。塩基性物質の添加によりpH7.05〜12に上昇する。前記塩基性物質を使用することにより、凝集したグラファイト-ダイヤモンド粒子内に浸透した塩基が、粒子内の硝酸と反応し、ガス化することにより凝集体を個々のグラファイト-ダイヤモンド粒子に解体するといった効果が得られる。この工程により、グラファイト-ダイヤモンド粒子の大きな比表面積及び孔部吸着空間が形成されるものと思われる。
得られたグラファイト-ダイヤモンド粒子を含む液は、遠心分離、デカンテーション等により脱溶媒するのが好ましい。
脱溶媒したグラファイト-ダイヤモンド粒子は水洗するのが好ましい。洗浄操作は3回以上行うのが好ましい。水洗したグラファイト-ダイヤモンド粒子は、再度遠心分離し、脱水するのが好ましい。
グラファイト-ダイヤモンド粒子分散液は、pH 4〜10、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH6〜7.5に調節する。グラファイト-ダイヤモンド粒子濃度は0.05〜16%、好ましくは0.1〜12%、より好ましくは1〜5%に調製するのが好ましい。液中に分散しているグラファイト-ダイヤモンド粒子は、ほとんどが2〜250 nmのメジアン径(数基準で80%以上、重量基準で70%以上が2〜250 nmの範囲にある)である。
酸化処理Bは、(a) グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、酸化性化合物と、水及び/又はアルコールからなる溶媒とからなる混合物A(単に「混合物A」とよぶことがある)を調製し、(b) この混合物Aを、溶媒の臨界点以上の温度及び圧力にした状態でグラファイト相を有するナノダイヤモンドを処理し、(c) 得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液を遠心分離して溶媒を除去する工程を有する。さらに、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(d)水洗及び遠心分離により脱水する工程を設けるのが好ましい。工程(c)と(d)の間に、必要に応じて、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(e)塩基性溶液で中和する工程、及び(f)弱酸で処理する工程を設けてもよい。工程(c)又は(d)で得られた精製ダイヤモンド粒子は乾燥して微粉末にする。
混合物Aは、グラファイト相を有するナノダイヤモンドの粉末に、酸化性化合物、及び水及び/又はアルコールからなる溶媒を混合することにより調製する。又は、前記溶媒にあらかじめグラファイト相を有するナノダイヤモンドを分散した液に、前記酸化性化合物又はその溶液を添加して調製しても良い。混合物Aには、酸化性化合物による酸化反応を促進させるため、塩基性化合物又は酸化性化合物を添加しても良い。
混合物Aを溶媒の臨界点以上の温度及び圧力で処理する。水の臨界温度は374℃であり、臨界圧力は22.1 MPaである。メタノールの臨界温度は240℃であり、臨界圧力は8.0 MPaである。エタノールの臨界温度は243℃であり、臨界圧力は7.0 MPaである。イソプロパノールの臨界温度は244℃であり、臨界圧力は5.4 MPaである。n-プロパノールの臨界温度は264℃であり、臨界圧力は5.1 MPaである。処理温度は溶媒の臨界温度以上、600℃以下であるのが好ましく、550℃以下であるのがより好ましい。処理圧力は溶媒の臨界圧力以上、100 MPa以下であるのが好ましく、70 MPa以下であるのがより好ましく、50 MPa以下であるのが最も好ましい。処理時間は温度及び圧力により適宜設定すればよいが、1〜24時間が好ましい。
得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液は、遠心分離等により脱溶媒するのが好ましい。
デカンテーション法により、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を水洗するのが好ましい。洗浄操作は3回以上行うのが好ましい。水洗した精製ダイヤモンド粒子は、再度遠心分離し、脱水するのが好ましい。
工程(c)で脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を、塩基性溶液で中和してもよい。塩基性溶液としては水酸化ナトリウム水溶液及び水酸化カリウム水溶液が好ましい。塩基性溶液の濃度は0.01〜0.5 mol/Lが好ましい。脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子に塩基性溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。中和後、遠心分離し、塩基性溶液を除去する。
工程(e)で中和した精製ダイヤモンド粒子を弱酸溶液で洗浄するのが好ましい。弱酸溶液によって、中和処理後に残留しているナトリウム等の金属イオンを除去することができる。弱酸溶液の例として、0.01〜0.5 mol/Lの塩酸が挙げられる。中和した精製ダイヤモンド粒子に弱酸溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。洗浄後、遠心分離し、弱酸溶液を除去する。
酸化処理Cは、(a) グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、水及び/又はアルコールからなる溶媒とからなる混合物Bを調製し、(b) この混合物Bに酸素を共存させた状態で、処理溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力でグラファイト相を有するナノダイヤモンドを処理し、(c) 得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液を遠心分離して溶媒を除去する工程を有する。さらに、脱処理溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(d)水洗及び遠心分離により脱水する工程を設けるのが好ましい。工程(c)又は(d)で得られた精製ダイヤモンド粒子は乾燥して微粉末にする。
混合物Bは、グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、水及び/又はアルコールからなる溶媒とを混合することにより調製する。混合物B中のグラファイト相を有するナノダイヤモンドの濃度は、0.05〜16質量%が好ましく、0.1〜12質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。この濃度が16質量%を超えると、精製が不十分となる恐れがある。一方0.05質量%未満であると、回収時のロスの割合が多くなり生産性が悪化する。
混合物Bをオートクレーブに入れ、酸素を導入する。オートクレーブ内に空気がある場合、酸素で置換するのが好ましい。酸素の導入量は、グラファイト相を有するナノダイヤモンド中のグラファイト1 gに対して、0.1モル以上が好ましく、0.15モル以上がより好ましく、0.2モル以上が最も好ましい。この導入量の上限は特に制限されない。ナノダイヤモンド中のグラファイトの割合は、例えば、JIS K2249に準拠してナノダイヤモンドの比重を測定し、この比重から、ダイヤモンドの比重を3.50 g/cm3とし、グラファイトの比重を2.25 g/cm3として算出することができる。
酸化処理Cと同様にして行う。
酸化処理Cと同様にして行う。
酸化処理Dは、前記グラファイト相を有するナノダイヤモンドを反応管に入れ、常圧下で酸素を含む気体を流しながら380〜450℃に加熱する工程を有する。加熱温度は400〜430℃であるのが好ましい。酸素を含む気体は、酸素ガス、空気等を使用できるが、簡便さから空気が好ましい。
爆射法により得られた未精製のダイヤモンド、及び前記酸化処理を施したナノダイヤモンドの動的光散乱法で求めたメジアン径は150〜250 nmである。これらの粒子は、前述したように、メジアン径2〜10 nm程度のダイヤモンド一次粒子が強固に凝集した凝集体である。ダイヤモンド微粒子の凝集がより少ないダイヤモンド含有複合樹脂組成物及びダイヤモンド含有複合材料を得るために、未精製又は前記酸化処理を施したダイヤモンド微粒子をビーズミル等の公知のメディア分散法により粉砕するのが好ましい。ビーズミルによる分散は、ジルコニアビーズを使用するのが好ましい。未精製又は前記酸化処理を施したダイヤモンド微粒子をメディア分散することにより、メジアン径を100 nm以下にするのが好ましく、50 nm以下にするのがより好ましく、30 nm以下にするのが最も好ましい。
酸化処理を施したダイヤモンド微粒子は、その表面にカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基が多く存在するので、これらの官能基を疎水性基に置換することにより、疎水性の液体や有機溶剤への分散性を高めることができる。ダイヤモンド微粒子の表面を疎水性基で修飾する方法としては、前記ダイヤモンド微粒子の表面に存在するカルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の官能基を疎水性基で置換する方法、前記官能基に疎水性基を有する化合物を結合させる方法等が挙げられる。具体的には(a) チオニルクロライドと有機リチウム又はアルキルアミンとによる処理、(b) 疎水性基を有するシリル化剤、アルコキシシラン、シランカップリング剤等によるケイ素化処理、(c)フッ素化処理、及び(d)界面活性剤による処理が挙げられる。
酸化処理したダイヤモンド微粒子にチオニルクロライドを反応させることにより、ダイヤモンド微粒子の表面に存在するカルボキシル基の-OH及び水酸基を塩素で置換することができる。このようにして形成された塩素化ダイヤモンド微粒子は、例えば、アルキルリチウムを反応させることにより、ダイヤモンド微粒子表面の塩素原子がアルキル基に置換され、ダイヤモンド微粒子表面にアルキル基が修飾した疎水化ダイヤモンド微粒子が生成する。また、ダイヤモンド微粒子表面に存在するカルボキシル基の-OHが置換した塩素原子にアルキルアミン及びジクロロカルベンを反応させることにより、アミド基を介してアルキル基がダイヤモンドに結合してなる疎水化ダイヤモンド微粒子が生成する。前記アルキルアミンとしては、オクタデシルアミン[CH3(CH2)17NH2]等が使用できる、
前記爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド、又は前記酸化処理して得られたナノダイヤモンドに、疎水性基を有するシリル化剤、アルコキシシラン、シランカップリング剤等を反応させることによりナノダイヤモンドの表面にある水酸基等の親水性基を、ケイ素を含む有機基に置換することができる。ケイ素化処理は、シリル化剤を用いるのが好ましい。
前記爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド、又は前記酸化処理により得られたナノダイヤモンドは、(i)フルオロアルキル基含有オリゴマーを使用した方法、(ii)フルオロアルキルアゾ化合物を用いた方法、(iii)フッ素ガスと直接反応させる方法、(iv)ClF、ClF3、ClF5等のハロゲンフッ化物を反応させる方法、(v)フッ素プラズマによる方法等により、その表面をフッ素又はフッ素を有する基で修飾することができる。本発明の目的には、前記フルオロアルキル基含有オリゴマーを使用した方法を用いるのが好ましい。
高分子主鎖の両末端にフルオロアルキル基が直接炭素−炭素結合により導入された高分子界面活性剤(含フッ素オリゴマー)は、水溶液中又は有機溶媒中において自己組織化したナノレベルの分子集合体を形成することが知られている。このフルオロアルキル基が末端に導入された含フッ素オリゴマーを用いることにより、フルオロアルキル基で修飾したナノダイヤモンドを形成することができる。
下記反応式に記載したように、ナノダイヤモンドの存在下で、パーフルオロヘキサンに溶解したアゾビスパーフルオロオクチル1に、Xeエキシマランプにより波長172 nmの光を室温で照射することによりナノダイヤモンドにパーフルオロオクチルを付加させることができる。この反応はアルゴン気流下で行い、前記照射時間は10分〜2時間程度である。なお、この方法に用いるナノダイヤモンドは、パーフルオロヘキサンに分散しやすいようにあらかじめ他の方法で疎水化処理を行うのが好ましい。
(iii-a)フッ素ガスを用いる第一の方法
フッ素ガスと直接反応させる方法は、ナノダイヤモンドをフッ素ガスと接触させ加熱することにより行う。フッ素ガスは、アルゴン等の不活性ガスと混合して用いるのが好ましい。このときフッ素ガスの濃度は0.01〜100 vol%、好ましくは0.1〜80 vol%、より好ましくは1〜50 vol%である。前記不活性ガスとしてはアルゴンの他に、窒素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等を用いることができる。反応させるガスには、ナノダイヤモンドの酸化が進まないように酸素を含まないのが好ましい。
フッ素ガスと反応させる他の方法として、ナノダイヤを入れた反応炉に、150℃、で3〜4時間不活性ガス中で加熱し、その後反応炉にフッ素ガス及びフッ化水素(3:1)を入れ、150℃のまま48時間加熱することによりフッ素化を行う方法がある。不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴンが使用でき、又は真空で処理しても良い。
界面活性剤を用いることにより、ダイヤモンド微粒子の有機溶剤等への分散性を高めることができる。界面活性剤には特に制限はなく、所定の分散性を確保できるならば公知の任意の界面活性剤が使用できるが、特にカチオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。カチオン性界面活性剤としては造塩し得る第1〜3級アミンを含有する単純なアミン塩、これらの変性塩類、第4級アンモニウム塩、フォスフォニウム塩やスルフォニウム塩などの所謂オニウム化合物、ピリジニウム塩、キノリニウム塩、イミダゾリニウム塩などの環状窒素化合物、異環状化合物等が使用できる。これらのカチオン性界面活性剤は例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、臭化セチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化アルキルジメチルクロロベンジルアンモニウム、塩化アルキルナフタレンピリジニウム等がある。
ダイヤモンド微粒子への磁性体の被覆方法は、特に限定されるものではないが、例えばダイヤモンド微粒子の分散物に、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)、テトラカルボニルニッケル(Ni(CO)4)、シュウ酸コバルト(Co(COO)2)、オクタカルボニルコバルト(Co2(CO)8)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を添加して混合し、加熱することにより、Fe、Ni、Co等の金属及び/又はそれらの酸化物からなる磁性体を、前記ダイヤモンド微粒子表面に析出させる方法が挙げられる。この方法で使用するダイヤモンド微粒子は、その表面を疎水化基で修飾した疎水化ダイヤモンド微粒子であるのが好ましい。
(1)ナノダイヤモンドの作製
TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトラミン)を40/60の比で含む0.65 kgの爆薬1を、脱気した水を凍らせて形成した氷の容器2aに充填し(図1(a))、同じく脱気した水を凍らせて形成した氷の容器2bで蓋をした(図1(b))。前記爆薬1には、起爆用爆薬及び電気雷管を取り付けた。氷の重さは容器2a,2b合わせて15 kgであった。
得られた酸化処理ダイヤモンド微粒子をジメチルスルホキシド(DMSO)に5質量%の濃度で分散し、アルゴン気流下で、酸化処理ダイヤモンド微粒子に対して2倍量(質量比)のペンタカルボニル鉄[Fe(CO)5]を添加し250℃に加熱し4時間反応させた。磁場選鉱により、生成された磁性粒子を分離し、フラスコ内に残っている磁性粒子をヘキサンで洗浄した後、乾燥して磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
(1) アルキル修飾ダイヤモンド微粒子の作製
実施例1で作製した酸化処理したナノダイヤモンドの粉末を四塩化炭素中に分散させ、チオニルクロライドと混合しカルボキシル基のヒドロキシル基を塩素置換した。さらにこの塩素化したナノダイヤモンドに、オクタデシルアミン[CH3(CH2)17NH2]とジクロロカルベンとを反応させ、ナノダイヤモンドをオクタデシルアミンで修飾した。得られた分散物をヘキサンで洗浄後、乾燥し、メジアン径が85 nmのアルキル修飾ダイヤモンド微粒子を得た。
得られたアルキル修飾ダイヤモンド微粒子をヘキサンに5質量%の濃度で分散し、アルゴン気流下で、アルキル修飾ダイヤモンド微粒子に対して2倍量(質量比)のペンタカルボニル鉄[Fe(CO)5]を添加し230℃に加熱し4時間反応させた。磁場選鉱により、生成された磁性粒子を分離し、フラスコ内に残っている磁性粒子をヘキサンで洗浄した後、乾燥して磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
(1) ケイ素化ダイヤモンド微粒子の作製
実施例1で作製したナノダイヤモンドの粉末をメチルイソブチルケトンに4質量%の濃度で分散させ、トリメチルクロロシランのメチルイソブチルケトン溶液(濃度7.5質量%)を1:1の容量で加え、48時間撹拌してナノダイヤモンドをトリメチルシランで修飾した。得られた分散物をメチルイソブチルケトンで洗浄後、乾燥し、メジアン径が110 nmのトリメチルシラン修飾ダイヤモンド微粒子を得た。
アルキル修飾ダイヤモンド微粒子の代わりに、得られたトリメチルシラン修飾ダイヤモンド微粒子を使用した以外は実施例2と同様にして、磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
(1)フッ素化ダイヤモンド微粒子の作製
実施例1で得られたナノダイヤモンドの粉末を3質量%の濃度でメタノールに分散させ、下記式:
アルキル修飾ダイヤモンド微粒子の代わりに、得られたフルオロアルキル基修飾ダイヤモンド微粒子を使用した以外は実施例2と同様にして、磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
(1) 磁性ダイヤモンド微粒子の作製
実施例2で得られたアルキル修飾ダイヤモンド微粒子をヘキサンに5質量%の濃度で分散し、アルゴン気流下で、アルキル修飾ダイヤモンド微粒子に対して2倍量(質量比)のテトラカルボニルニッケル[Ni(CO)4]を添加し260℃に加熱し3時間反応させた。磁場選鉱により、生成された磁性粒子を分離し、フラスコ内に残っている磁性粒子をヘキサンで洗浄した後、乾燥して磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
(1) 磁性ダイヤモンド微粒子の作製
実施例2で得られたアルキル修飾ダイヤモンド微粒子をヘキサンに5質量%の濃度で分散し、アルゴン気流下で、アルキル修飾ダイヤモンド微粒子に対して2倍量(質量比)のオクタカルボニルコバルト[Co2(CO)8]を添加し270℃に加熱し3時間反応させた。磁場選鉱により、生成された磁性粒子を分離し、フラスコ内に残っている磁性粒子をヘキサンで洗浄した後、乾燥して磁性ダイヤモンド微粒子を得た。
2a,2b・・・容器
Claims (14)
- 表面が疎水性基で修飾されたダイヤモンド微粒子と、前記ダイヤモンド微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する磁性体とからなる磁性ダイヤモンド微粒子であって、前記ダイヤモンド微粒子が、酸化処理及び疎水化処理されたものであることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
- 請求項1に記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記磁性体が、Fe、Fe3O4(マグネタイト)、γ-Fe2O3(マグヘマイト)、Co、CoO、Niからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
- 請求項1又は2に記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記ダイヤモンド微粒子が、2.55〜3.48 g/cm3の比重を有することを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子が、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を有するものであることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子が、ケイ素原子を有するものであることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子が、フッ素原子を有するものであることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記疎水化処理されたダイヤモンド微粒子が、界面活性剤処理されたものであることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
- 請求項7に記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記界面活性剤が、カチオン性界面活性剤であることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
- 請求項8に記載の磁性ダイヤモンド微粒子において、前記カチオン性界面活性剤が、第1〜3級アミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする磁性ダイヤモンド微粒子。
- ダイヤモンド微粒子と、前記ダイヤモンド微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する磁性体とからなる磁性ダイヤモンド微粒子を製造する方法であって、(a)爆射法で得られた未精製のダイヤモンド微粒子を酸化処理する工程、(b)前記酸化処理してなるダイヤモンド微粒子を疎水化処理する工程、及び(c)前記疎水化ダイヤモンド微粒子と、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)、テトラカルボニルニッケル(Ni(CO)4)、シュウ酸コバルト(Co(COO)2)、オクタカルボニルコバルト(Co2(CO)8)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを混合し、180〜350℃に加熱する工程を有することを特徴とする方法。
- 請求項10に記載の磁性ダイヤモンド微粒子の製造方法において、前記疎水化処理が、チオニルクロライド及びアルキルアミンによる処理であることを特徴とする方法。
- 請求項10に記載の磁性ダイヤモンド微粒子の製造方法において、前記疎水化処理が、チオニルクロライド及び有機リチウムによる処理であることを特徴とする方法。
- 請求項10に記載の磁性ダイヤモンド微粒子の製造方法において、前記疎水化処理が、シリル化剤、アルコキシシラン又はシランカップリング剤による処理であることを特徴とする方法。
- 請求項10に記載の磁性ダイヤモンド微粒子の製造方法において、前記疎水化処理が、フルオロアルキル基含有オリゴマーによる処理であることを特徴とする方法。
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