JP4014388B2 - ダイヤモンド微粒子担体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体由来高分子化合物を固定化するための担体に関するものであり、具体的には、DNA、RNA、タンパク質、ペプチドを固定化するためのダイヤモンド微粒子からなる担体、及び該担体を用いたDNAチップ基板、ウイルス補足用担体、ワクチンに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生体由来高分子を固定化する手段として、遺伝子機能の解明において効率的に作業を進めるために、DNAチップ手段が注目されているほか、微少担体にウイルス特にエイズウイルスを固定化してワクチン等に利用しようという試みも盛んに研究されている。
【0003】
DNAチップは、スライドグラス等の固層担体に、多数のDNA分子を整列固定化させたマイクロアレイであり、検体遺伝子との結合状態、位置を標識により光電的に読みとり、解析を行うもので、多数遺伝子の同時一括解析が可能であり、ヒトゲノム計画にみられる遺伝子機能の解明の他、遺伝子発現解析、遺伝子多型の判別、変異遺伝子の特定あるいはガン遺伝子の判別等にも有効なものである。
また、DNAチップ手段は、これら遺伝子のみならず、DNA以外の生体分子、特に生理活性タンパクないしペプチドの機能の解明等においても有効であり、例えば、新規薬剤の開発、診断等にも適用可能な手段である。
しかし、従来のDNAチップに問題がないわけではなく、例えば、スライドガラスあるいはシリコン基板表面にポリリジン等のポリ陽イオン性高分子等を塗布し、DNAをスポッター装置により固定化させる手段が一般的に用いられているが、この手段は、DNAの荷電を利用して固層担体に静電結合させるものであるので、ハイブリダイゼーション時あるいは洗浄時にDNAが担体から剥離しやすいという問題点があった。
【0004】
一方、DNAチップの支持基板として、ダイヤモンドを使用するものもある(特開2001−139532号公報)。これは、ダイヤモンドを使用するため熱伝導性に優れ、加熱冷却を繰り返すPCR法を行うにあたり、ヒートサイクル時間を短縮できるメリットはあるものの、ダイヤモンドにはDNAを結合させるための官能基が存在しないため、ダイヤモンドにDNAを結合するための官能基を導入する必要があり、このため、ダイヤモンドに紫外線照射しつつ塩素化し、さらにこれを紫外線照射下でアンモニアと反応させアミノ化し、このアミノ基に、あらかじめ調整しておいた活性化ジエステルと反応させることにより、ダイヤモンド基体にDNAと結合し得る官能基を導入するものであり、その工程は複雑で、簡便なものではなかった。
【0005】
これらとは別に、高分子ナノスフェアからなる担体に、糖認識タンパク質としてマンノース結合性レクチンであるコンカナバリンAを結合せしめ、これによりウイルス、特にエイズウィルス(HIV)を捕捉せしめ、これをワクチンとして使用しようとする研究もなされている(「化学工業」2001年9月号、P.41−46)。これに使用する高分子ナノスフェア担体は、例えば、ポリメタクリル酸マクロマーとスチレンのラジカル共重合によりポリスチレン部分からなる疎水性コアとポリメタクリル酸部分からなる親水性コロナ部分からなる。ナノスフェア表面にはポリメタクリル酸のカルボキシル基が存在しており、このカルボキシル基とマンノース結合性レクチンであるコンカナバリンAのアミノ基と反応させ、ナノスフェア表面にコンカナバリンを固定化し、エイズウィルス補足用担体とする。固定化されたコンカナバリンAは、エイズウィルス表面に存在する糖タンパク質gp120の糖鎖(マンノース)を認識してエイズウィルスを捕捉する。この捕捉率はほぼ100%である。このエイズウィルスが捕捉された高分子ナノスフェアを、高いIgA誘導性を有するエイズウィルスワクチンとして用いようとするものである。しかし、この高分子ナノスフェアは、凝集性強く、血液中で凝集し、凝固する恐れがあり、安全性に問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し得る全く新しい物質あるいはウイルス固定用担体を提供することにあり、特に、該担体を用いて、DNAチップ基板、ウィルス補足用担体及びあるいはウィルスワクチンを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来技術の問題点を解消すべく鋭意研究の結果、 爆薬の爆射による爆射式でダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物(初期BD)を製造し、該ダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物を酸化処理し、生成した懸濁液からダイヤモンドを含有する相を分離する方法において、前記酸化処理の後に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて、硝酸との間で分解反応を生起させて中和することにより、全く新しいダイヤモンド微粒子を得ることに成功した。そして、このダイヤモンド微粒子が、ナノオーダの粒径を有し、極めて大きい被表面積を有するとともに、その表面に、極めて多種、多数の官能基、すなわちカルボキシル基、アミノ基、水酸基、スルフォニル基等を有すること、また、特にマイナス荷電性官能基が数多く存在することに起因して、分散性が非常に良好で、水性懸濁液中で極めて安定しており凝集しにくいこと、さらに、親水性が極めて高く、生体親和性にも優れ、生体毒性がなく、安全であることが確かめられ、このダイヤモンド微粒子を用いれば、極めて有用な物質あるいはウィルスを固定化するための担体となり、該担体を用いて、従来技術の問題点を解消しうる極めて優れたDNAチップ基板、ウィルス補足用担体及びあるいはウィルスワクチンを提供することができることを見いだし、本発明を完成させるに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成に係るものである。
(1)爆薬の爆射による爆射式でダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物(初期BD)を製造し、該ダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物を酸化処理し、生成した懸濁液からダイヤモンドを含有する相を分離する方法において、前記酸化処理の後に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて、硝酸との間で分解反応を生起させて中和することにより得られたものであるダイヤモンド微粒子からなり、その表面に少なくとも -COOH 基、 -CHO 基、 -NH 2 基、及び -OH 基を有することを特徴とする物質またはウィルス固定化用担体。
(2)以下(i)〜(iv)で規定される粉体特性を有するダイヤモンド微粒子からなることを特徴とする、前記第(1)に記載の固定化用担体。
(i) 炭素が73.86〜86.48%の範囲、水素が0.81〜1.46%の範囲、窒素が1.18〜2.22%の範囲、酸素が10.49〜23.14%の範囲で、かつ炭素、水素、窒素、酸素の合計で100%以下の元素組成比を有し、
(ii) 粒径1000nm以上の粒子が存在せず、粒径30nm以下の粒子が存在せず、数平均粒径(φMn)が150〜650nmの狭分散形であり、
(iii)Cu、Kα線を線源とするX線回析スペクトル(XD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)が43.9°に最も強いピークを有し、(220)結晶に帰属するピーク、(311)結晶に帰属するピーク、17°にグラフィンまたはベンゼン環構造に帰属するハローがあり、グラファイト(002)結晶に帰属する26.5°のピークがなく、
(iv)比表面積が1.50×105m2/kg以上で、表面炭素原子Cに対するH、N及びOからなるヘテロ原子の組成比がC 25 H 11.2 N 2.8 O 9.1 であって、全ての表面炭素原子が、H、N及びOからなるヘテロ原子と結合していると計算され、0.5m 3 /kg以上の全吸収空間を有する。
(3)前記固定化される物質が、DNAまたはRNAであることを特徴とする前記第(2)に記載の担体。
(4)前記固定化される物質が、タンパク質またはペプチドであることを特徴とする前記第(1)〜第(3)のいずれかに記載の担体。
(5)前記タンパク質が、レクチンであることを特徴とする前記第(4)に記載の担体。
(6)前記第(1)または第(2)に記載の担体を少なくとも支持体表面に有するDNAチップ基板。
(7)前記第(1)または第(2)に記載の担体からなることを特徴とするウイルス捕捉用担体。
(8)前記第(1)または第(2)に記載の担体にレクチンが結合してなることを特徴とするウィルス補足用担体。
(9)前記ウィルスがレトロウィルスであることを特徴とする前記第(8)に記載のウィルス補足用担体。
(10)「前記レトロウィルスがエイズウィルスであることを特徴とする前記第(9)に記載のウィルス補足用担体。
(11)「前記エイズウイルスまたはその部分構成蛋白を前記第(8)または第(9)に記載のウィルス補足用担体に結合せしめたワクチン。
【0009】
〔本発明において使用するダイヤモンド微粒子〕
まず、本発明において使用するダイヤモンド微粒子(以下、UDD微粒子という。)について、以下、具体的に説明する。
本発明において使用するUDD微粒子は、上述したように、爆薬の爆射による爆射式でダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物(初期BD)を製造し、該ダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物を酸化処理し、生成した懸濁液からダイヤモンドを含有する相を分離する方法において、前記酸化処理の後に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて、硝酸との間で分解反応を生起させて中和することにより得られたものであるが、本発明のUDD微粒子は以下の粉体特性を有するものである。
(a)(i) 炭素が73.86〜86.48%の範囲、水素が0.81〜1.46%の範囲、窒素が1.18〜2.22%の範囲、酸素が10.49〜23.14%の範囲で、かつ炭素、水素、窒素、酸素の合計で100%以下の元素組成比を有し、
(ii) 粒径1000nm以上の粒子が存在せず、粒径30nm以下の粒子が存在せず、数平均粒径(φMn)が150〜650nmの狭分散形であり、
(iii) Cu、Kα線を線源とするX線回析スペクトル(XD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)が43.9°に最も強いピークを有し、(220)結晶に帰属するピーク、(311)結晶に帰属するピーク、17°にグラフィンまたはベンゼン環構造に帰属するハローがあり、グラファイト(002)結晶に帰属する26.5°のピークがなく、
(iv) 比表面積が1.50×105m2/kg以上で、表面炭素原子Cに対するH、N及びOからなるヘテロ原子の組成比がC 25 H 11.2 N 2.8 O 9.1 であって、全ての表面炭素原子が、H、N及びOからなるヘテロ原子と結合していると計算され、0.5m 3 /kg以上の全吸収空間を有する。
【0010】
さらに、本発明のダイヤモンド微粒子は以下(b)〜(f)の粉体特性を有していてもよい。
(b)前記粒度分布状態として、粒径1000nm以上の粒子が存在せず、粒径30nm以下の粒子が存在せず、数平均粒径(φMn)が300〜500nmの狭分散形であること。
(c)比密度が3.20×10 3 kg/m 3 〜3.40×10 3 kg/m 3 であり、赤外線(IR)吸収スペクトルにおける吸収が、3500cm−1付近に最も強い幅広い帯域を示し、1730〜1790cm−1の吸収が、前後に幅広く拡がって偏奇し、1170cm−1付近に強い幅広い帯域を示し、610cm−1付近に中程度の強度の幅広い帯域を示すこと。
(d)赤外線(IR)吸収スペクトルにおける吸収が、1740cm−1付近に中程度の強度の帯域を示し、1640cm−1付近に中程度の強度の帯域を示し、1260cm−1付近に幅広い帯域を示すこと。
(e)Cu、K α線を線源とするX線回析スペクトル(XRD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)の前記最も強いピーク43.9°の強度に対する、その余のブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)のピークの合計強度が、11/89〜19/81であること。
(f)1273°Kに加熱後のBET法による比表面積が1.95×105m2/kg〜4.04×105m2/kgであること。
【0011】
本発明において使用するUDD微粒子を製造するための原料となる粗ダイヤモンド(以下、ブレンドダイヤモンド又はBDとも云う)は、上記[Science,Vol.133,No.3467(1961), pp1821-1822]、特開平1−234311号公報、特開平2−141414号公報、[Bull.Soc. Chim.Fr.Vol.134(1997).pp875-890]、[Diamond and Related materials Vol.9(2000),pp861-865]、[Chemical Physics Letters,222(1994) pp343-346]、[Carbon,Vol.33, No.12(1995), pp1663-167]1、[Physics of the Solid State,Vol.42,No.8(2000),PP1575-1578]、[Carbon Vol.33, No.12(1995), pp1663-1671]、[K.Xu.Z.Jin,F.Wei and T.Jiang,Energetic Materials, 1,19(1993)(in Chinese)]、特開昭63−303806号公報、特開昭56−26711号公報、英国特許第1154633号公報、特開平3−271109号公報、特表平6−505694号(WO93/13016号)公報、[炭素],第22巻,No.2,189〜191頁(1984)、Van Thiei. M. & Rec.,F. H.[J. Appl. Phys. 62, pp. 1761〜1767(1987)]、特表平7−505831号(WO94/18123号)又は米国特許第5861349号明細書に記載の、爆薬を用いた爆射法により製造することができる。好ましい製法の具体例については後程詳述する。
【0012】
このような爆射法で製造された粗ダイヤモンド(Blended Diamond:BD)は、数10−数100nm、場合によっては数百nm径までの、UDD及び非グラフアイトからなる形のものであり、さらに、1.7−7nm径の極く小さいナノクラスターサイズのダイヤモンド単位(ナノダイヤモンド)が強固に凝集し、機械的に破壊することが不能又は極く困難な凝集体である。換言すれば、最低4個から普通10数個、数百個の、場合によっては数千のナノダイヤモンドの強固な凝集体であり、BDはUDDの集合物であって、極く少量の微小(1.5ナノメーター以下)アモルファスダイヤモンド及びグラフアイト、非グラファイト炭素超微粒子が検出される。
【0013】
本発明において使用するUDD微粒子の製造においては、爆薬の爆射による転移によって生じた縮合炭素相を、液相中で段階的に酸化処理することにより非ダイヤモンド構造の部分を分解する。酸化には好ましくは硝酸が用いられる。所望により、金属酸化物の不純物を溶出するため、予じめ塩酸で処理することもできる。先ず初めに、粗ダイヤモンド(BD)を包接する縮合炭素相を酸化分解してダイヤモンド部分を炭素相から分離採取する。
【0014】
次に、粗ダイヤモンドの表面部分を覆う非ダイヤモンド炭素を酸化分解及び酸化エッチングして除去し、更に、ダイヤモンド表面の1部を形成している非ダイヤモンド炭素を酸化エッチングして除去する。ダイヤモンド部分表面を覆う非ダイヤモンド炭素及びダイヤモンド表面の1部を形成している非ダイヤモンド炭素は、主に、ダイヤモンド合成反応としての爆薬の爆射による転移の過程で、一旦合成されたダイヤモンドが、速やかに減少した圧力及び未だ充分に高い温度の影響により、元のグラファイトに再度戻る転移反応によって生じたものと思われる。ダイヤモンドの表面部分を覆う非ダイヤモンド炭素及びナノダイヤモンドの表面層の1部を形成している非ダイヤモンド炭素の、酸化分解及び酸化エッチングによる除去は、同時に遂行することができ、又は好ましく順次遂行することができる。
【0015】
精製された生成物(UDD)を構成するナノダイヤモンドは、コヒーレント光電場散乱(CSF)による平均粒径が42±2×10−10mであり、ダイヤモンド格子構造を有するUDD核部の性質、及びUDD全体に分散し格子を形成せず1.5×10−10m未満の原子間隔を有する微少量の炭素原子の凝集体も、本発明における測定の結果、検知されたが、1方、本発明における別法の測定結果によれば、精製された生成物の粒子内部界面にも極微少量の炭素原子の凝集体の性質が検知され、その相互原子間隔はガウス分布をとることから、粒子内部界面の炭素原子の凝集体はアモルファスであることが分かった。
【0016】
従来のこの種のUDDは、一般に、(2.5〜3.5)×103m2/gの比表面積、及び、(0.3〜1.0)×10−3m3/kgの孔部容積を有する。また、1273 Kに加熱したときに比表面積の減少がない。また、従来のUDDは、サスペンジョンの場合、粒子サイズは最大1000×10−6mであるが、これを乾燥した場合、凝集して粒径分布が多分散の粉体となり、不活性雰囲気中で加熱した場合、873 Kからスフェルライト(spherulite)の形をとるUDD粒子が増えはじめるが、このスフェルライト形のUDD粒子は、(100〜150)×106Paの圧力印加で崩壊させることができる。その後は再凝集による再度の多分散粉体を生じる可能性が少なくなる。
【0017】
これに対して、本発明において使用するUDD微粒子は、合成過程における非均一な条件のため、高密度の欠陥、大きい比表面(従来のものとは桁違いの1.50×105m2/kg以上の大きさ)を有し、かつこの大きな表面全体が、発達した高活性度を有し、過剰なエンタルピーを有する。また、p/ps=0.995( N 2 ガス )に基く全吸収空間が0.5m3/kg以上であって、この値も従来のこの種のものにおける値とは大きく異なる。これら性質は、本発明のUDD微粒子の有用性を裏付けるものである。
【0018】
本発明のUDDには、不純物として揮発性物質及び固体不純物が表面に存在する。揮発性物質はCO、CO2、N2、H2O、H2SO4、HNO3のような酸からの残存物(化学的精製後)であり、固体不純物は非ダイヤモンド、金属の酸化物、カーバイドのような不溶性化合物、塩不純物である。結局、本発明のUDDは、72〜89.5%の全炭素、0.8〜1.5%の水素、1.5〜2.5%の窒素、10.5〜25.0%の酸素(従来の一般的なダイヤモンドは普通90〜99%の全炭素、0.5〜1.5%の水素、2〜3%の窒素、10%未満の酸素)の元素組成を有する。全炭素のうち90〜97%がダイヤモンド結晶であり、10〜3%が非ダイヤモンド炭素である。
【0019】
UDDの不純物は、理論上(i)水溶性電解質(ionized)、(ii)ダイヤモンド表面に化学結合した加水分解性及びイオン性のもの(官能性表面基の塩の形のもの)、(iii)水不溶性のもの(表面のメカニカルな不純物、不溶性塩、不溶性酸化物)、(iv)ダイヤモンド結晶格子中に包含されるか又はカプセル化されたもの、に分けることができるが、前記(i)及び(ii)は、UDDの精製過程で形成されたものであり、基本的な(i)の水溶性電解質は水洗により除去することができるが、より効果的に除去するにはイオン交換樹脂で処理することが好ましい。
【0020】
本発明において使用するUDD微粒子の表面官能性基は、イオン源としての−COOH、−OH、−SO3H、−NO3、−NO2のような陰性基が大部分を占めるが、アミノ基(中和工程で生じたものと思われる。)も存在する。而して、このダイヤモンドそれ自体、イオン交換材と考えることができるので、このUDDの水性懸濁液をイオン交換材により処理して表面基を非塩状態にすることは、後の使用を考えると効果的である。
【0021】
上記(iii)の水不溶性の不純物は、金属、金属酸化物、金属カーバイド、金属塩(硫酸塩、シリケート、カーボネート)のような分離したミクロ粒子と、分離できない表面塩、表面金属酸化物の双方からなる。これらを除去するため、即ち可溶性の形に変換するため、本発明においては酸が用いられる。
【0022】
本発明において使用するUDD微粒子においては、各種方法を用いて、前記(i)乃至(iii)の不純物を40〜95%除去することができるが、しかし、不純物を完全に除去することはできず、また、本発明において、不純物を完全に除去することは必要不可欠ではない。これらのUDD不純物は、DNAチップおける測定あるいはウイルスの捕捉、ワクチンに特に悪影響を与えない。前記(iii)の不純物の完全除去を別にしても、化学的方法による前記(iv)の不純物の除去は実質的でない。不純物を構成する基本的元素は、珪素、カルシウム、鉄、硫黄、チタン、銅、クロム、カリウムであり、これらは常に少量が実質的に存在する。発達した活性表面を有する本発明のUDDは、溶液中から不純物を吸収除去する能力を有するものであり、そのような用途に使用することができる。それ故逆に、幾つかの不純物、すなわち珪素、カリウム及び鉄の一部は、UDDの精製技術で用いられる水の硬度を低下させることができる。鉄は基本的な技術的不純物(つまり、爆射法に使用し易い材料)であり、1.0乃至0.5重量%以下の濃度に除去することは難かしい。鉄のそのような不純物量は主に表面に存在する。
【0023】
本発明のUDD微粒子は、かなりの数及び量の揮発性不純物(最高10重量%)を含むが、0.01paの真空中で熱処理によってこれらを精製することができ又は含有量を減少させることができる。この場合、適当な加熱温度は現時点では400℃まで、最適な加熱温度は250℃までである。
【0024】
一方、別の観点によれば、本発明において使用するUDD微粒子の製造過程で得られた最大の科学的知見は、爆薬の爆壊により得られた人工の粗ダイヤモンド(ブレンドされたダイヤモンド、BD)との幅広い各種精製操作と、生成UDDの組成及び諸特性との関係が明らかにされた点にある。
本発明に先立って、BDを、硝酸を基にした各種酸化系で処理し、また、有機溶剤(炭化水素、アルコール)を基にした各種非酸化系で処理して、生成UDDの組成及び特性を検討した結果を次表に纏めて示す。
【0025】
【表1】
【0026】
有機溶剤(炭化水素CnH2n+2、及びアルコールCnH2n+1OH)によるBDの非酸化性処理は、UDD粒子の炭素スケルトンに影響を及ぼさず、表面官能基の変化を生じて、BDの元素組成を変化させる。即ち炭化水素及びアルコールのUDDへの結合、消費に伴って水素含有分及び酸素含有分が相対的に増加し、合計ヘテロ元素(水素、窒素、酸素)の数量は2倍に増加する。
【0027】
[UDDの製造]
本発明において使用する、改良されたUDD微粒子の製造方法は、爆薬の爆射による爆射式でダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物(初期BD)を製造し、該ダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物を酸化処理し、生成した懸濁液からダイヤモンドを含有する相を分離する各段階を含むダイヤモンド粒子の懸濁水性液を製造する方法において、前記酸化処理の後に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて、硝酸との間で分解反応を生起させて中和することを特徴とする。
【0028】
前記酸化処理段階は、150℃〜250℃、14気圧〜25気圧で、少なくとも10〜30分間ずつ、複数回行なわれることが好ましい。また、前記酸化処理段階は、硝酸による酸化性分解処理と、該酸化性分解処理の後の硝酸による酸化性エッチング処理とからなり、前記硝酸との間で分解反応を生起させて中和する処理が、酸化性エッチング処理の後に行なわれることが好ましい。
【0029】
さらに、前記酸化性エッチング処理は、酸化性分解処理の際の圧力及び温度よりも高い圧力及び温度で行なわれることが好ましく、さらに、前記酸化性エッチング処理は、1次酸化性エッチング処理と、2次酸化性エッチング処理とからなり、該2次酸化性エッチング処理が、前記1次酸化性エッチング処理の際の圧力及び温度よりも高い圧力及び温度で行なわれることが好ましい。また、前記塩基性材料による中和段階でされた生成した懸濁液からダイヤモンドを含有する相を分離する段階は、水を加えて傾斜することによりダイヤモンドを含有する相を、ダイヤモンドを含有しない相と分離することが好ましい。
【0030】
さらに、前記水で傾斜することによりダイヤモンドを含有する相を、ダイヤモンドを含有しない相と分離する処理の後さらに、懸濁液に硝酸を加え洗浄処理し、生成ダイヤモンド微粒子を含む下層懸濁液と上層排液とに分層処理し、生成ダイヤモンド微粒子を含む下層懸濁液を上層排液から分離する処理を行なうことが好ましい。また、前記生成ダイヤモンド微粒子を含む下層懸濁液を上層排液から分離する処理は、前記硝酸洗浄処理後の懸濁液を静置する処理であることができる。
【0031】
さらに、前記生成ダイヤモンド微粒子を含む下層懸濁液に、さらにPH調節及び濃度調節処理を施して、懸濁液が1.0〜7.9のPH値、好ましくは1.5〜6.95のPH値、より好ましくは2〜6.0のPH値、0.05〜16%のダイヤモンド微粒子濃度、好ましくは0.1〜12%のダイヤモンド微粒子濃度、より好ましくは1%〜10%のダイヤモンド微粒子濃度に濃縮することができる。
【0032】
したがって、本発明において使用する改良されたUDD懸濁液を得るには、好ましい態様として、爆薬の爆射による爆射式でダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物(初期BD)を製造し、該ダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物を酸化性分解処理し、精製された該ダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物を酸化性エッチング処理し、生成物を含む硝酸水溶液に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて、硝酸との間で分解反応を生起させて中和し、生成した懸濁液を水により傾斜し、傾斜段階を経た懸濁液に硝酸を加え洗浄して静置し、生成ダイヤモンド微粒子を含む下層懸濁液を上層排液から抜き取り、硝酸により洗浄し、洗浄された懸濁液を遠心分離し、分離された懸濁液に、必要に応じてPH調節及び濃度調節をしてダイヤモンド懸濁水性液を調製する各段階を含む。
【0033】
さらに、本発明で使用するUDD微粒子の粉末を製造するには、前記ダイヤモンド微粒子懸濁液を、遠心分子してダイヤモンド微粒子を懸濁液から取り出し、400℃以下、好ましくは250℃以下の温度で乾燥する。
【0034】
そのようにすることにより、(i)72〜89.5%の全炭素、0.8〜1.5%の水素、1.5〜2.5%の窒素、10.5〜25.0%の酸素の元素組成比を有し、(ii)粒径1000nm以上の粒子が存在せず、粒径30nm以下の粒子が存在せず、数平均粒径(φMn)が150〜650nmの狭分散形であり、
(iii)Cu、K α線を線源とするX線回析スペクトル(XD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)が43.9°に最も強いピークを有し、73.5°、95°に特徴的な強いピークを有し、17°に強く偏在したハローがあり、26.5°にピークが実質的になく、
(iv)比表面積が1.50×105m2/kg以上で、全ての表面炭素原子がヘテロ原子と結合しており、0.5×10−3m3/kg以上の全吸収空間を有するという粉末特性を有する、本発明のUDD微粒子を比較的高収率(1〜5%の収率)で製造することができる。
【0035】
本発明で使用するUDD微粒子は、ダイヤモンド特有の高硬度、低導電性であるにも拘らず低誘電性、低感磁性等の優れた電気的磁気的特性、高潤滑性、高い熱伝導度及び優れた耐熱性、耐熱膨張性、耐剥離性、耐水耐薬品性を有し、粒度分布幅が小さい超微粉末特有の優れた分散特性を有し、また、優れた表面活性、イオン特にカチオン交換性、金属材料及びセラミックとの高い親和性、薬剤としての安全性等を示す他、ダイヤモンド結晶のうち双方形結晶を除く特有の粒形、つまり、粒子の形が長方形又は板状の偏平形でなく、例えば立方体のように纏まった体積の形をしていることが多く、かつ、BDからの酸化性分解処理や酸化性エッチング処理により多孔質の活性表面が丸みを有していることさえある。
【0036】
このUDD微粒子は、無色透明であって他材料に混合しても均一に充分分散されているので外観ではほとんどその存在を黙視できず、また、固層組成物中に分散されていてもほとんど触知することができない。
そのため、本発明の目的の他、自動車、オートバイ部品金型、宇宙産業用機器材及び航空機用機器材、化学プラント、コンピュータ用又は電子機器要素及び部品又はOA機器用又はカメラ等の光学機器用要素及び部品及び磁気テープ又はCD等記録媒体等の摺動性、潤滑性、耐摩耗性、耐熱性、耐熱膨張性、耐剥離性、耐水耐薬品及び耐ガス腐食性の改善、外観及び触感の改善、色調の改善、比重密度の改善を目的にして、潤滑油組成物、燃料組成物、グリースのようなペースト状組成物、成形用樹脂組成物、ゴム組成物、金属材料、セラミック組成物等に添加することができ、また、粉末の形態自体で機械の摺動部位等に存在させ、或いは吸着材、イオン交換材としても用いることができるが、このUDD微粒子は、基本的な利点として、懸濁液、特に水性懸濁液とした場合に優れた分散安定性を示す。
【0037】
すなわち、本発明のUDD微粒子は、乾燥微粉末としたときのUDD炭素含有率が98.22%、酸化精製処理における酸化可能な残存炭素が0.93%、不燃焼性残渣が0.85%のUDDを水性相中に15.5%濃度で含有する1100g(UDD含有量170g)の市販の水性UDD懸濁液は、商品としたときに24ケ月の寿命を保証することができ、
乾燥微粉末としたときのUDD炭素含有率が98.40%、酸化精製処理における酸化可能な残存炭素が0.85%、不燃焼性残渣が0.75%のUDDを水性相中に12.5%濃度で含有する2010g(UDD含有量251g)の他の水性UDD懸濁液も、商品としたときに24ケ月の寿命を保証することができ、
乾燥微粉末としたときのUDD炭素含有率が98.87%、酸化精製処理における酸化可能な残存炭素が0.73%、不燃焼性残渣が0.4%のUDDを水性相中に11.0%濃度で含有する552g(UDD含有量56g)の他の水性UDD懸濁液も、商品としたときに24ケ月の寿命を保証することができ、
乾燥微粉末としたときのUDD炭素含有率が98.8%、酸化精製処理における酸化可能な残存炭素が0.8%、不燃焼性残渣が0.4%のUDDを水性相中に11.5%濃度で含有する1044g(UDD含有量120g)の他の水性UDD懸濁液も、商品としたときに24ケ月の寿命を保証することができる。
しかしながら、これら保証される商品寿命は、零度℃より低い温度での保管であることが最も好ましい。予定されてない将来の使用に備えて予め懸濁液を購入し、極く長期間、零度℃より極く低い温度で保管し続けるには、当然、特別の配慮と、特別の設備が必要になるので、その旨説明することが好ましい。
【0038】
しかしながら、本発明において使用するUDD微粒子粉末は、水性懸濁液としたときに、最高16%の濃度で、室温(15℃〜25℃)で約6ケ月間保存しても、UDDの凝集、沈殿を生じない。一般的に、水性組成物の品質低下程度は、保管温度が約10℃上昇する毎に倍増する。例えば、現在のメッキ処理は殆ど、加熱された高温操作下で行われるので、本発明のUDD水性懸濁液のこのような高温耐久性は、非常に有利となる。しかしながら通常は−15℃〜10℃で保存するのが有利である。
【0039】
本発明のUDD微粒子は、その表面の各種カルボニル基の存在のため、上記のような優れた分散安定性及び高い活性度を有し、N型半導体と類似の挙動を示し、水性懸濁液としたときに、弱酸性を示し、若干の導電性を有し、通常60℃或いは70℃の条件下での使用に耐えるが、そのような温度を超える条件下での使用は、避けることが好ましい。本発明のUDD水性懸濁液は、pH8以下、通常pH1.0〜7.9、好ましくはpH1.5〜6.95、より好ましくはpH2〜6に調製する。懸濁液のpHが8を超えると不安定になり易い。
【0040】
分散性を良好にするためには通常界面活性剤を使用するが、本発明のUDD水性懸濁液の場合には、界面活性剤の添加は、必要不可欠でない。界面活性剤を添加しても分散安定が保持されることもあるが、多くの場合、界面活性剤を添加すると、UDD水性懸濁液の分散安定性を損なう。
【0041】
本発明のUDD微粒子は、表面に多量に存在するマイナス荷電性官能基のため、表面活性、親和性に優れ、また、粒径分布に大径粒子を含まず、狭い粒度分布を有するため、従来のダイヤモンド超微粒子と異なり沈殿を生じ難く、水性懸濁液中で、安定に懸濁している。先に記述したように、本発明のUDD懸濁液が水性のものである場合には界面活性剤の添加は必要不可欠ではなく、逆に、懸濁安定性を損なうことがある。これは、次のような機構に基くものと推測される。
【0042】
即ち、従来のダイヤモンド超微粒子の場合はカチオン性界面活性剤が添加されていたが、本発明の懸濁液にカチオン性界面活性剤を添加すると、界面活性剤は、カチオン部位がUDD表面のマイナス荷電性の官能基に吸引され、界面活性剤の疎水性長鎖炭化水素基末端が外側を向いて配向されるため、親水和性がなくなる。
【0043】
[樹脂組成物]
本発明のUDD微粒子の添加により樹脂の性質を改善することができる。参考として以下の例を示す。
例えば、UDDによる弗素系エラストマーの冷硬化及び含浸法は、つぎのような特徴を有する被覆を得ることができる。即ち、(i)炭化水素及び極性溶剤の浸透性を1.389×10−7kg/m2.secから0.0278×10−7kg/m2 ・secに50倍減少させる。
【0044】
また、塩分を含む酸及びアルカリ環境下で、本発明のUDD微粒子を添加したエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(保護皮膜)は極めて高い化学的耐久性を示す。(ii)金属のドライ摩擦係数を0.01以下に減少する。(iii)前記共重合体エラストマーの耐久性を改善し、100%延伸したエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体エラストマーの場合、引張りストレス係数は8.5 M・paから92 M・paへ、耐破裂強度は15.7 M・paから173 M・paへと、それぞれ10倍以上増加する。同時に、相対引張り伸び率は、280%から480%に1.6倍増加し、相対引張り伸び残存率は108%から81%に、即ち、約1/1.2に減少する。(iv)接着剤の貼付強度を次のように増加する。即ち、(a)活性表面に関しては、鋼(CTグレード)への貼付強度を1.7 k・Nから5.1 k・Nに、アルミニウムへの貼付強度を0.5 k・Nから3.3 k・Nに増加させ、つまり約3 〜 6倍増加させ、また亜鉛への貼付強度も同程度倍増加させ、(b)不活性表面に関しては、鉛及び銅への貼付強度を2.8 k・N〜3.3 k・Nに向上させ、(c)各種皮膜サンプルは、4000 M Hzで膜厚に応じて2.58〜2.71の誘電正接損失(tan)、5000 M Hzで膜厚に応じて最高15の透磁係数(penetration factor)及び最高12.4の可逆透磁係数(reflection factor)を有し、11000 M Hzで膜厚に応じて最高14.3の透磁係数(penetration factor)及び最高12.4の可逆透磁係数(reflection factor)を示すような改善がなされる。
【0045】
このように、本発明のUDD含有皮膜は、その物理的、機械的特性を改良して、2×106kg/m2の圧力印加下での操作を可能にする。(d)ポリシロキサンを本発明のUDD微粒子で変性した皮膜は、ポリシロキサンエラストマーの耐久性を改善し、100%延伸した当該エラストマーの場合、引張りストレス係数は19 M・paから53 M・paへ、3倍に増加し、耐引張破裂強度も、52 M・paから154 M・paへ、3倍増加する。(e)本発明のUDDを含有する弗素ゴムは、次のような耐弾性特性及び熱老化耐久性を有する。即ち、100%延伸した当該弗素ゴムのストレスは、7.9 M・paから12.5 M・paへ、1.6倍増加し、耐引張破裂強度も、210 M・paから285 M・paへ、1.35倍増加する。また、本発明のUDD微粒子を含有する弗素エラストマーは、耐摩擦老化性を、1.5〜2倍増加させる。ポリイソプレンの場合もこの増加率に非常に近い。さらに、本発明のUDD微粒子を含有する弗素ゴムは、加熱老化の過程を経ても、物理的、機械的特性が、加熱なしの通常の組成の弗素ゴムの特性と同じレベル、又はそれ以上のレベルにある。加熱老化の過程でUDD微粒子は、弗素ゴムの構造破壊を生ぜず、むしろ反対の作用をする。このように、本発明のUDD微粒子を含有する弗素ゴムは、改良された弾性体特性を示す。
【0046】
この弗素ゴムを300%延伸した際のストレスは、7.7 M・paから12.3 M・paへ、1.4倍増加し、耐引張破裂強度は、139 M・paから148 M・paへ増加する。この弗素ゴムのトルエン中での最大膨潤度は45%に低下する。このように、この弗素ゴムは高い硬化度、高い耐久性(従来よりも約30%高い)、高い耐機械疲労性を有する。このような諸耐久特性の増加による延伸率増大は、従来の常識に当て嵌まらなず、当該弗素ゴムの分子構造上の変化を示しており、この事実は、粘着性が1.7 M・paから2.7 M・paへ、1.6倍増加したことにより立証される。
【0047】
本発明のUDD微粒子によるこのゴムの変性は、弾性を変化させずに、検討された全ての特性(300%延伸時のストレス、破裂強度、及び引裂強度)を1.6〜1.8倍向上させる。本発明のUDDを含むこのゴムは、油中で、本発明のUDD微粒子を含まない弗素ゴムに比し、より高い硬度(300%延伸時に5.8 M・paから7.4 M・paへ増加し、延伸率は700%から610%に低下)を有する。本発明のUDD微粒子及び人工カーボン粉末を同時にこのゴムに添加すると、引裂強度は標準サンプルよりも25〜35%高くなる。
【0048】
ブタジエン(70モル)−スチレン(30モル)共重合体ベースの普通のゴム混合物に本発明のUDD微粒子を添加した場合、標準サンプルに比較して、粘着強度が1.6 M・paから3.1 M・paへ、1.5倍〜2.0倍増加した。本発明のUDDを含むこの共重合体ゴムは、標準サンプルと同様の普通の耐久性を有し、かつ、硬度が高く、引裂強度が71kNから135kNへ、約2倍程向上し、300%延伸した際のストレスは、7.9 M・paから11.4 M・paへ、約1.44倍程向上した。
【0049】
本発明のUDD微粒子により変性されたブタジエン−ニトリルゴム B14は、つぎの諸特性即ち1.5倍減少した摩擦係数、1.4倍増加した疲労耐久性、1.7倍増加した弾力性、耐白濁化(frost resistance)性(8〜10%のガラス化温度低下)を示す。
【0050】
本発明のUDD微粒子により変性された天然ゴム(マレーシアのRSS)は、摩擦係数、疲労耐久性の増加を伴って、300%延伸した際のストレスが1.8 M・paから5.4 M・paへ、約3倍程向上した。また、本発明のUDD微粒子を含むエポキシ系接着剤の場合には、粘度及び高い貼付強度を示した。
【0051】
本発明のUDD微粒子は溶液重合、懸濁重合、共重合、化学的硬化、電子線硬化、ガス炎加熱硬化、静電塗装硬化のような重合反応で好適に用いられる。本発明のUDD微粒子を含む重合体組成物の利点としては、(i)改善された強度、耐候性、耐摩擦性、(ii)ポリフルオロ弾性体及びパーフルオロポリマーの低摩擦係数、及びポリイソプレンの高摩擦係数、(iii)微細技術、微細製品に用いられる材料及び被覆物への応用のような、品質向上及び商品価値の向上が挙げられる。本発明のUDDの使用量は、通常、重合体及びゴム1000kg当り1〜5kg、フイルム及び被覆膜の場合1000m2当り1〜5kg、である。
【0052】
[UDDの製造法の具体的説明]
以下、本発明において使用するUDD微粒子の製造法について図面に基いて具体的に説明する。
図1は、本発明による改良されたUDD微粒子の製造方法の1例を説明する模式図である。この例のUDD微粒子の製造方法においては、(A)爆薬の爆射による爆射式で初期BDを製造する段階、(B)生成した初期BDを回収して酸化性分解により炭素等の夾雑物を分解するBDの酸化性分解処理段階、(C)酸化性分解処理により精製されたBDを酸化性エッチング処理して主にBD表面を被覆する硬質炭素を除去する1次酸化性エッチング処理段階、(D)1次酸化性エッチング処理されたBDをさらに酸化性エッチング処理して主にBD凝集体を構成する個々のUDD間のイオン透過性ギャップ及びUDD表面の結晶欠陥部に存在する硬質炭素を除去する2次酸化性エッチング処理段階、(E)2次酸化性エッチング処理されたBDを含む硝酸水溶液に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて、硝酸との間で2次凝集体であるBD凝集体を1次凝集体である個々のUDDに解体する小爆発を伴なう分解反応を生起させる激しい中和反応段階、(F)中和反応段階を経て生成されたUDDの反応懸濁液を水により充分にデカンテーションする傾斜段階、(G)傾斜段階を経たUDD懸濁液に硝酸を加え洗浄して静置し、得られたUDDを含む下層懸濁液を上層排液から抜き取る、UDD反応懸濁液の硝酸による洗浄段階、(H)洗浄されたUDD懸濁液を遠心分離する遠心分離段階、(J)遠心分離されたUDDから所望PH、所望濃度の精製済みUDD懸濁水性液を調製するUDD懸濁水性液調製段階、及び(K)遠心分離されたUDDから、250℃以下、好ましくは130℃以下の温度で乾燥して、UDD微粒子粉末を作成するUDD微粒子粉末作成段階、を包含する。(J)の調整段階を経た本発明のUDD懸濁水性液は、通常、1.0〜7.9のPH、好ましくは1.5〜6.95のPH、より好ましくは2〜6.0のPHを有する。
【0053】
この例による(A)の爆射式初期BD製造段階においては、水と多量の氷(1)を満たした純チタン製の耐圧容器(2)に、電気雷管(6)を装着した爆薬(5)(この例ではTNT(トリニトロトルエン)/HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)=50/50を使用)を胴内に収納させる片面プラグ付き鋼鉄製パイプ(4)を水平に沈め、この鋼鉄製パイプ(4)に鋼鉄製のヘルメット(3)を被覆して、爆薬(5)を爆裂させ、反応生成物としての初期BDを容器(2)中の水及び氷中から回収する。
【0054】
しかしながら、BDの合成過程における温度条件は重要であり、冷却された条件下で合成されたBDは、活性因又は吸着中心としての酸素含有官能基が結合すべき構造欠陥の密度が少なくなる傾向があるので、氷の使用量は避けるか又は制限されたものであることができる。
【0055】
回収された生成BD(初期BD)は、(B)のBDの酸化性分解処理段階において、オートクレーブ(7)中で55〜56重量%の濃HNO3に分散され、14気圧150〜180℃の温度で10〜30分間、酸化性分解処理に付されることにより、炭素系夾雑物、無機夾雑物等を分解する。(B)の酸化性分解処理段階を経たBDは、次に、(C)の1次酸化性エッチング処理を施す。この(C)の1次酸化性エッチング処理段階では、主にBD表面を被覆する硬質炭素を除去するため、処理条件は、18気圧、200〜240℃と厳しくなる。
【0056】
つぎに、(D)の2次酸化性エッチング処理を施す。2次酸化性エッチング処理段階は、主にBD凝集体を構成する個々のUDD間のイオン透過性界面ギャップ及びUDD表面の結晶欠陥部に除去し難い状態で存在する極く少量の硬質炭素を除去するためのものであるので、処理条件は、25気圧、230〜250℃とさらに厳しくなる。本発明において、このような14気圧150〜180℃、18気圧200〜240℃、25気圧230〜250℃は必ずしも順守すべき基準条件ではないが、少なくとも処理条件に傾斜を設けることが好ましい。(D)の2次酸化性エッチング処理を経た被処理液は、PHが通常2〜6.95の酸性液である。
【0057】
上記(E)の中和反応段階は、従来法にない操作の1つである。この中和反応の際、揮発性の分解生成物を生じる塩基性物質の添加により、被処理液は、PHが2〜6.95から7.05〜12に上昇する。(E)の中和反応段階では、2次酸化性エッチング処理されたBDを含む硝酸水溶液に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて中和反応させる。この中和反応は、BDを含む硝酸水性懸濁液中のBD内に残存する硝酸まで、アニオンより一般的にイオン半径が小さいカチオンが浸透して攻撃することにより、各反応部位で反応相手との間で小爆発を伴なう激しい中和反応、分解反応、不純物脱離溶解反応、ガス生成反応、表面官能基生成反応を生起し、ガスが発生し系の昇圧昇温も生じ得るものと考えられ、その結果、BD凝集体を個々のUDD微粒子に解体する。また、主に(E)の小爆発を伴う中和反応段階で、本発明のUDD微粒子における大きな比表面積及び孔部吸着空間が形成されるものと思われる。
【0058】
このような塩基性材料としては、ヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、アリルアミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジイソプロピルアミン、ジエチレントリアミンやテトラエチレンペンタミンのようなポリアルキレンポリアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、ホルムアミド、N,N−メチルホルムアミド、尿素等を挙げることができる。例えば、塩基性材料がアンモニアである場合、酸と
のような各種ガス発生反応が生じ、発生したN2、O2、N2O、H2O、H2、SO2ガスを系外に放出できるので、残存物による系に対する影響はほとんどなくなる。
【0059】
(F)の傾斜段階では、中和反応段階を経て生成されたUDDの反応懸濁液に水を加えて充分にデカンテーションすることが必要回数(例えば3回以上)繰り返される。(G)の洗浄段階では、傾斜段階を経たUDD懸濁液に硝酸を加え撹拌(この例の場合はメカニカルマグネチックスターラーを使用)、洗浄して静置して上層排液と下層懸濁液に分け、得られたUDD微粒子を含む下層懸濁液を上層排液から抜き取る。この場合(UDD含有液1kgに対して水50kg加えた場合)、上層排液と下層懸濁液とは明瞭に層分離してないが、UDD微粒子を含む下層懸濁液の容量は、上層排液の容量のほぼ1/4程度である。上層排液中にはダイヤモンド形の1.2〜2.0nm径程度の超々微粒子が存在し得るが、この超々微粒子は液層中の不純部を巻き込んで凝集して機械的圧力では分解不能な不良UDDを生成し勝ちな可能性があるので、本発明においては回収操作が不可欠ではない。
【0060】
槽の底部から回収されたUDD懸濁液は、つぎに、(H)の遠心分離段階で20000RPMの超高速遠心分離機により遠心脱水分離され、所望により(J)のUDD微粒子の懸濁水性液調製段階でUDD微粒子懸濁水性液を調製し、さらに(K)のUDD微粒子粉末作成段階で乾燥によりUDD微粒子粉末を作成する。なお、UDD微粒子を製造する場合、上記(J)の工程を省略して(H)の遠心分離操作から直接乾燥してもよい。このようにして得られた本発明のUDD微粒子は、微粉体の形態であっても、粒径分布範囲が極めて狭く、測定の結果、1000nm以上の粒子が存在せず(従来の粉末は、通常、1000nm以上の粒子が15%以上混在)、かつ、30nm以下の超微粒子が存在せず、体積平均粒径が150〜650nm、典型的には300〜500nmの狭分散形であって、機械的力により、比較的簡単に分割可能なUDD粉末である。
【0061】
このような本発明のUDDの微粒子粉末は、3.20×10 3 kg/m 3 〜3.40×10 3 kg/m 3 の比密度を有する。アモルフアス炭素の比密度は(1.8〜2.1)×10 3 kg/m 3 、グラファイト炭素の比密度は2.26×10 3 kg/m 3 、天然ダイヤモンドの比密度は3.51×10 3 kg/m 3 であり、静的な圧力印加法(非爆射法)による人工ダイヤモンドの比密度は3.47〜3.50であるから、本発明におけるUDDは、天然ダイヤモンドや静的圧力法によるダイヤモンドよりも比密度が小さいということができる。
【0062】
一方、本発明のUDD微粒子の懸濁液は、前記のように、1.0〜7.9のPH、好ましくは1.5〜6.95のPH、より好ましくは2〜6のPHに調節したものである。液中に懸濁しているUDD粒子の体積平均粒径は、50nm±25nmの範囲にあり、粒径は10nm〜100nmのものがほとんど(数平均で80%以上、重量平均で70%以上)であって、狭分散形である。懸濁液中のUDD微粒子の濃度は0.05〜16%、好ましくは0.1〜12%、より好ましくは1〜10%である。また、16%を超える濃度であると、この懸濁液の保存安定性に支障をきたすことが多い。
【0063】
図1では便宜上、例えば(B)段階、(C)段階、(D)段階を別の場所で別の容器で実行するかのように示されているが、これら各段階は、同一場所、同一容器で実行しても、無論さしつかえない。(F)段階、(G)段階の場合も同様である。容器は耐圧容器である。
【0064】
図2に概念的に示されるように、上記第1図に示される操作により、粒径(10〜1000)×10 −8 mオーダーの初期BDから、平均粒径(4.2±2)nmオーダーのナノダイヤモンド個体が最低限4個、通常数10個〜数100個、強固に凝集し、粒径10〜100nmのものがほとんどで粒度分布の巾が小さく、重量平均粒径が約50nmの精製済みUDD微粒子を得ることができ、このUDD微粒子は、ヘテロ原子のうち、窒素以外のヘテロ原子(水素、酸素)の含有率が高く、比表面積が高く、孔面積が大きく孔部分が多いためもあって、表面活性が極めて高く、分散安定性に非常に優れている。精製済みUDD微粒子の収率(対爆薬使用量)は1%以上5%程度までである。
【0065】
〔UDD微粒子試料の物性 〕
以下に、上記UDD微粒子およびその懸濁液の製造法により得られた各種試料を分析した結果を示す
試験1;元素分析
上記図1に示される製造方法により得られた、本発明のUDDについて、酸化性分解処理及び酸化性エッチング処理の程度に依存する、使用サンプルの元素分析の結果は炭素100原子当り慣用の元素組成としてつぎの表に示される。
【0066】
【表2】
【0067】
表中、酸化の程度αは、前記意味と同じ意味を有する。
【0068】
この結果は重要かつ興味ある技術的知見を開示している。つまり、BDの酸化性分解生成物は、炭素元素含有量とヘテロ原子含有量との組成比を大きく変化させる。この表2の結果から、BD又はUDD中のヘテロ元素の含有率は、処理条件(酸化の程度α)と単純な比例関係にないことが分かる。またこの表2及び前記表1の結果から、BD又はUDD中のヘテロ元素としての水素原子の含有率は、100個の炭素原子当り5個〜35個の広い範囲に亘って変化し、酸素原子の含有率も、100個の炭素原子当り4個〜32個の広い範囲に亘って変化するが、しかし、窒素原子の含有率については、100個の炭素原子当り2個〜4個の狭い範囲であり、処理条件(酸化の程度α)によって殆ど変化しないことが分かる。
【0069】
またこの表2への記載は省略しているが、二酸化炭素ガスの発生は、BDの表面状態に密接な関係があると思われるので、本発明において確認試験を行ない、温度上昇、酸濃度上昇等の処理条件の違いによって、BD中の炭素原子の二酸化炭素ガスへの変換割合は徐々に増大することを確認した。
【0070】
酸化性エッチング処理においては、最初、炭素の乱れのあるアモルファス部分が酸化され、次にミクログラファイト構造が酸化され、順々に、UDD自身の炭素の非ダイヤモンドの形から、更なる酸化をすることが難かしい化学的に不活性な材料である実質的に完全なBDの精製生成物が得られる。
しかしながら、本発明のUDD微粒子の製造においては、特定の厳しい酸化条件下で長時間エッチング処理することによって、ダイヤモンド材質の一部を分解することができる。本発明におけるエッチングの程度は、UDDの約45%または初期BDの76.5%が限度である。
【0071】
試験2;UDD微粒子の炭素原子の官能基化
本発明により、初期BDを試験1と同様に酸化処理し、図3に示されるような酸化程度がそれぞれ異なる12のサンプルを得た。
図3のグラフに示されるように、酸化分解及びエッチングの程度と、BD組成のとの関係は複雑であり、BD組成は、酸化程度に一律に依存性していない。酸化が進むにつれて、水素原子及び酸素原子の含量が変化するので、表面官能基の化学的組成が一定に近づく。
【0072】
部分酸化されたBD生成物又は部分エッチングされたUDD生成物のような準安定(metastable)構造物については、反応媒体により硬い表面状態を弛緩させ、最大限のヘテロ結合を形成することにより、活性度を高めることができる。本発明のBD及びUDDのような、より安定な形のものは最少量のヘテロ原子を有するが、しかし、これらの活性度は、純度が高い周知の静的合成ダイヤモンド(C100H1.1O2.2)又はすす(C100H5.1O4.1)の同様な特性(活性度)をはるかに超えている。
【0073】
上記得られた結果から、各相の連続的な変化である酸化性分解過程は、1)炭素マトリックスの構造欠陥及び粒子間結合のエッチングが最初に起こり、次に反応表面が拡大した後、セミ酸化生成物で表面が飽和し、2)さらに、弛緩した表面のエッチング、表面酸化反応の生成物のガス化及び除去が生じるものであることが、化学的見地から理解される。また、各相変化が循環性を有するのは、構造的に不均一な物質が分解され、而して、酸化剤の効果は、異なる構造形に対して選択的であることを示している。
【0074】
BD及びUDD中のヘテロ原子のような高存在度は、炭素の結合特性が偏在している可能性を示している。計算の結果、約4×10−9m径のサイズのダイヤモンド粒子は、最高12×103個の炭素原子からなり、そのうちの3×103個の炭素原子が表面露出原子である。したがって、例えば本発明におけるUDDの全体組成式はつぎのとおりである。
【0075】
【表3】
【0076】
さらに、ここに記載を省略している他の実験結果の場合も同様であった。
したがって、このような見地から、本発明におけるUDD微粒子は、実質的に全ての表面炭素原子がヘテロ結合していることになる。本発明における「実質的に全ての表面炭素原子がヘテロ原子と結合している」とはこのような意味である。
【0077】
本発明のUDD微粒子表面の活性水素(Hact)の濃度についての検討の結果、水素原子は、炭素原子以外のいずれかの元素の原子に結合しているときには、活性であると考えることができる。炭素表面の活性水素(Hact)について、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基、スルホン基のような官能基上のHactの状態を特定することができる。
【0078】
BD及びUDD微粒子表面の官能基と、アニゾール存在下でのメチルマグネシウムアイオダイドとの相互作用について、3段階のプロセス、すなわち、1)不純物分子と外面(よりアクセスし易い官能基)との相互作用、2)開孔表面との相互作用、3)UDD凝集体の機械的崩壊によるフリーになった表面との相互作用、を象徴的に摘出した。
【0079】
BD及びUDDの処理条件により、これらUDD中の官能基因子源(protogenic group)の濃度は0.34〜2.52マイクロkg当量/m2であり、活性水素元素の量は0.49〜7.52マイクロkg当量/m2であった。したがって、これらUDD表面及びBD表面上の遊離可能な水素原子の量は、粉体UDD微粒子表面及びBD中の全水素含量のうちの4〜22%であった。
【0080】
本発明におけるUDD微粒子表面には、水性液への分散濃度、親和性、電解質因子濃度を左右し、pH値を決定する電荷を、水性溶液中でUDDに与える各種酸素含有基を有する。全ての検体粉末の懸濁液のpHに基いて、表面に存在する酸性基の分離程度の増加に依存した比吸収値を判定することができる。炭素材料の分解、エッチングによる比吸収値の変化は、連続的な単調子でなく、極端かつ急激である。
【0081】
当初BDの低い比吸収値は、非酸化性媒体中でBDが合成され、したがってその表面には僅かの酸素含有基のみが存在していることを示している。本発明において、BDを同時に酸化剤に露らす2段階反応の進行結果によれば、表面が酸素含有基により飽和し、炭素がエッチングされる。一方、酸化性作用が増加すると、酸素含有基による炭素表面の飽和が起こり、比吸収値が最大になって後、変化が生じないようになる。しかし酸化可能な残存炭素の含量が18〜20%を超えると、比吸収値の低下が生じる。
【0082】
これは、ロシア特許第2046094号,[Bjuljuten Izobretenij,(29),189(1995)],「合成ダイヤモンド含有材料」に示される結果とも一致している。参考のため、図4に、該ロシア文献記載の技術の1部を示す。
図4のカーブの著しい特性は、酸化剤処理下におけるBD表面の構造的な特性変化、即ち、グラファイト状の構造からダイヤモンド状炭素への構造変化を示している。材料は、変遷途中の状態では高い吸収性を有する。BDの強力な酸化条件下での酸化によれば、安定ダイヤモンド形のみが残る。温和な酸化性エッチング条件ではダイヤモンド状炭素と非ダイヤモンド状炭素との境界が置き変わる。実際、ダイヤモンド状の相(即ち真正のダイヤモンドに似た相)としての最後の酸化可能な残存炭素含量18〜20%は、ダイヤモンドクラスターの周辺部を構成する炭素である。
【0083】
試験3;表面特性
後記試験5に使用したNo15のサンプル(α=49%のサンプル、図5中ではNUDD−A)、No16のサンプル(α=56%のサンプル、図5中ではNUDD−B)、および上記試験1に使用したNo4のサンプル(α=55%のサンプル、図5中ではNUDD−C)、同No5のサンプル(α=64.9%のサンプル、図5中ではNUDD−D)、同No6のサンプル(α=74.4%のサンプル、図5中ではNUDD−E)、同No1〔(後記試験5のNo10のサンプルと同じ(α=0%のサンプル、図8中ではNUDD−F)〕、従来法による典型的なUDDサンプル(乾燥粉末、図5中ではOUDD)、の7サンプルを用いて、Cu、Kα線を線源とするX線回析スペクトル(XD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)を測定した結果を纏めて図5に、これらサンプルのうち、サンプルNUDD−Aを用いて測定した結果を図6に、サンプルNUDD−Bを用いて測定した結果を図7に、それぞれ示す。図5、6、7のチャートから、本発明のUDD微粒子粉末のサンプルは、ブラッグ角(2θ±2°)が最も強い44°の(111)結晶に帰属する反射強度のピークは85.0%であり、73.5°の(220)結晶に帰属する反射強度のピークは14.0%であり、91°の(311)結晶に帰属する反射強度のピークは0.2%であり、(400)結晶に帰属する反射強度のピークは0.2%であり、26.5°±2°のグラファイト(002)結晶に帰属するピークは実質的にないことが分かる。
【0084】
測定の結果、Sp3結合した炭素濃度の特定パターンが多数現われたことで、UDD微粒子中の極小アモルファスグラファィト相の周囲にダイヤモンド相が存在することが示された。
【0085】
本明細書の前記定義の酸化度(α)=64.9%のUDD中心とするサンプルをX線回析グラフにおいて、ローレンツ(Lorenz)の回析スペクトルピークにおける幅広い対象形の回析スペクトル形としての(111)結晶に帰属する2θ=43.9°のスペクトル、(220)結晶に帰属する2θ=73.5°のスペクトル、(311)結晶に帰属するブラッグ角2θ=95.5°のスペクトルが記録された。
【0086】
これらスペクトルは、結晶格子パラメーター(α)=(3.565±0.005)×10−10mを有するダイヤモンド型を反映したものである。これら3つのスペクトル曲線の半幅値から、シェラー(Scherrer)の式によりこのUDDの平均粒径を定めたところ、平均粒径(L)=(42±2)×10−10mであった。
【0087】
また、ブラッグ角2θ=17°付近に強く偏在したハローがあり、さらに1次ビームをドローイングした場合は散乱放射の強度が強く安定していた。1次ビーム近くの強い散乱は、不規則なアモルファス構造に基く回析特性である。観測できるハローが、マクロ構造に基く回析光を明確に示さないことは明らかであり、分子レベルのサイズ(例えば、グラフィンのサイズまたはベンゼン環のサイズ)と同様なサイズを有する構造単位による散乱と関係があることはもちろんである。このような構造物は、4×10−9m以下の周囲粒子(ダイヤモンド構造)のみならず、規則的な炭素鎖又は規則的に積層された平面体であり得る。(333)結晶構造のピークの強度に比較して、このような高いハロー強度があることから、上記分子サイズの構造も存在する可能性がある。ハローの半値幅に基き(シェラー(Scherrer)の式によって)、このような構造物のサイズは約1.5×10−9mであると推定される。このような小さい粒径オーダーの粒子(4×10−9m以下)の存在は、ラーマン散乱スペクトルで現れるアモルファスのダイヤモンド及びグラファイトの存在を暗示している。
【0088】
また、これらX線回析スペクトルチャートの解析から、Cu、K α線を線源とするX線回析スペクトル(XRD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)の前記最も強いピーク43.9°の強度に対する、その余のブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)のピークの合計強度が、11/89〜19/81であること、即ち、(111)線が81〜89と高いことが分かる。
【0089】
試験4;IR分析
同様に、表2に示される元素分析結果を有する試験1のα=64.9%のBD試料、α=74.4%のBD試料、α=75.5%のBD試料を用い、KBr結晶を標準としてFTIRスペクトルを測定した結果を(Dolmatov report p30,l23,Ref.[27])、図8、図9、図10に、それぞれ示す。図8、9、10のチャートから、充分に精製されてないUDDサンプルは、炭素表面に含れる多種類の基により、カルボニル基に帰属する1730〜1790cm−1の吸収が、前後に幅広く拡がって偏奇しており、炭素表面に含れる多種類の基の影響を受け、ヒドロキシ基に帰属する1640cm−1の吸収、及び3400cm−1の吸収が共に、前後にシフトしている。1640cm−1以上の吸収はまた、結合水及び遊離水により影響を受ける。1750cm−1の吸収中はOH基の振動に関係している。1100〜1140cm−1の吸収の幅広い吸収は、不純物ニトロ基に帰属する吸収除去する能力を有するものあり、そのような用途に使用することができる。それ故逆に、幾つかの不純物、すなわち珪素、カリウム及び鉄の一部は、UDDの精製技術で用いられる水の硬度を低下させることができる。鉄は基本的な技術的不純物(つまり、爆射法に使用し易い材料)であり、1.0乃至0.5重量%以下の濃度に除去することは難かしい。鉄のそのような不純物量は主に表面に存在する。
上記結果から明らかなように、本発明のUDD微粒子において、各種カルボニル基の吸収強度及び吸収帯域の位置は、UDDの変性処理条件により著しく影響を受ける。窒素ガス中で700℃に加熱すると、カルボニル基、カルボキシル基が分解して、相当する吸収帯の強度が減少する。また、673Kに加熱した後には1730cm−1の吸収は、1780〜1790cm−1の位置に移動するので、これから、O=C−O−C=O構造が生成したことが分かる。
【0090】
本発明におけるUDD微粒子は、硝酸処理後に、処理前の位置からシフトして、つぎの位置及びパターンの吸収を示す。
【0091】
【表4】
【0092】
このうち、3500cm−1付近のバンドが、最も強く、1740cm−1付近のバンドは、1640cm−1付近のバンドよりも強度が小さいが、複雑かつ凹凸がほぼ平らで、多くのバンドが密集したものからなり、1640cm−1付近のバンドは、2番目に強いものであり、1170cm−1付近のバンドは3番目に強く、かつ長波長側に少なくとも2つの小さいピーク又は少なくとも2つのショルダー部を有してなだらかに勾配しており、610cm−1付近のバンドは複雑な中程度の強度の幅広いバンドである。
さらに、本発明のUDDは、2940cm−1付近(C−H、飽和に帰属)、1505cm−1、1390付近cm−1及び650付近cm−1付近に、小さいピーク又は少なくともショルダー部を有している。
これらの結果から、本発明のUDDは、図11に示されるように、表面炭素が、−COOH基、−C−O−C−基、−CHO基、−OH基等の活性な官能基により覆われていると確信される。
【0093】
試験5;酸化度と表面特性
上記試験1に用いた試料と同様にして作成され、ただし、試験1とは異なる次表に示されるような酸化度、すなわちサンプルNo.10(α=0.0%)、サンプルNo.11(α=17%)、サンプルNo.12(α=28%)、サンプルNo.13(α=32%)、サンプルNo.14(α=48%)、サンプルNo.15(α=49%)、サンプルNo.16(α=56%)、サンプルNo.17(α=63%)、サンプルNo.18(α=81%;比較サンプルNo1)、サンプルNo.19(α=85%;比較サンプルNo2)、サンプルNo.20(α=94%;比較サンプルNo3)、No.21(α=98%;比較サンプルNo4)の酸化性分解及びエッチング度の各サンプルの表面特性について、測定した結果を表5に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
この表から、UDDの吸収能は、必ずしも孔部サイズ、限界孔部サイズに依存しないこと、UDD表面の活性化率、及び全表面積中の高活性化された面積に、より依存することが分かる。
【0096】
従来、UDDの表面活性についての研究としては、GP.Bogatiryonva, M.N.Voloshin, M.A.Mirinich, V.G.Malogolovets, V.L.Gvyazdovskaya, V.S.Gavrilova[Sverhtvjordii materiali,No.6,pp42(1999)]Surface and electrophysical properties of dynamic synthesis nanodiamondに記載されたものがある。比較、参考のため、次表に、該従来UDDの表面活性を示す。
【0097】
【表6】
【0098】
これら表5及び表6の結果から、PET法による窒素ガス脱吸着量を測定の結果、α=81%未満の本発明の各サンプルは、従来サンプル(比較サンプル)に比し、活性度が充分に発達し、最高4.09×105m2/kg程度の大きな比表面積を有し、また大きな表面炭素割合(Csurface/Ctotal)を有し、かつ、Csurfaceが有する官能基の濃度がほとんど100%と極めて高いことが分かった。従来のこの種のダイヤモンドにおいては、全表面炭素原子中、ヘテロ原子と結合する炭素原子の比率は15%程度である。
【0099】
試験6;示差熱分析
UDDサンプルについて、空気及び不活性ガス雰囲気中で示差熱分析をも行なった。結果は、次のとおりである。
即ち、空気中で毎分10Kの割合で加熱した場合、703Kで酸化が始まる。一方、文献によれば、従来の静的合成方法により合成されたあるダイヤモンド、静的合成方法により合成された他のダイヤモンド及び従来爆射法によるUDDの1サンプルの場合は、それぞれ、酸化開始温度は863K、843K、823Kであった。本発明におけるUDD微粒子の酸化性は高いということができる。
【0100】
中性雰囲気中で、1273Kまで加熱した場合の重量損失は3乃至4%であった。このサンプルを温度範囲443〜753Kの間で炭酸ガス雰囲気中で加熱した場合には、重量増加が5%まで達し、その後、更に高温に加熱すると重量が減少する。水素ガス雰囲気中で加熱した場合には、HCNガスの分離が生ずる。次に、このUDDを複合示差熱分析した。次の結果が得られた。
すなわち、次の(a)〜(c)の3つの特徴を有するサーモグラフ曲線が得られた。
(a)373〜383Kで若干の発熱を伴う重量損失5〜7%((α)=63%のUDD、(α)=27%のUDDの2サンプル)を生じる。このプロセスは可逆的である。脱吸着されたガス生成物を分析した結果、これら温度で脱吸着されたガスの97〜98%は窒素ガスであった。これは空気中から吸収されたガスの脱着であると考えられる。
(b)523KにおけるサンプルUDDの重量の減少。これは吸熱を伴ったものである。
(c)753〜1023K間での発熱を伴なう重量損失。753〜773Kにおける大きな発熱を伴った強い重量損失(95%まで)を生じる。これは1023〜1053Kまで続き、それ以降の温度では、もはや変化は見られず、通常の方法によって測定し、最高10%までの初期材料中の灰分に相当する不燃性残渣が検出された。773〜1023Kまでの間の温度においては、炭素の強力な酸化が行なわれ、最後に不燃焼残渣が生じるものと考えられる。また、この酸化過程においては、強いグローが観察される。
【0101】
試験7;加熱によるUDD微粒子表面の親水性基に対する影響
次に、上記試験5のNo.13のサンプル、No.15のサンプル、No.16のサンプルを二酸化炭素気流中で毎分10Kの温度上昇率で1273Kまで加熱した後、各サンプルの重量の増減割合を測定し、また各サンプルの比表面積を試験5の場合と同様に測定した。各サンプルの重量の増減は殆どなかった(No.13のサンプルは0.25%の重量減少を、No.14のサンプルは0.22%の重量増加を、No.15のサンプルは0.15%の重量減少を、No.16のサンプルは0.22%の重量増加を示した)。また、各サンプルの比表面積にもほとんど変化はなかった。これは、本発明におけるUDD微粒子は、孔部中の非グラファイト状態の炭素原子縮合体が安定しており、また、エレクトロンドナーとしてのヒドロキシ、カルボキシ、カルボニル、アルデヒド、等の親水性基がほとんど加熱消滅しないことを示している。
【0102】
試験8;粒度分布
前記試験5のNo15のサンプル(α=49%のサンプル、サンプルNUDD−A)、同No16のサンプル(α=56%のサンプル、サンプルNUDD−B)、上記(1)の試験のNo4のサンプル(α=55%のサンプル、サンプルNUDD−C)、同No5のサンプル(α=64.9%のサンプル、サンプルNUDD−D)、同No6のサンプル(α=74.4%のサンプル、サンプルNUDD−E)、同No1のサンプル〔試験5のNo10のサンプルと同じ(α=0%のサンプル、サンプルNUDD−F)〕、従来法による典型的なUDDサンプル(乾燥粉末、サンプルOUDD)、の7サンプルについて、粒度分布を測定した。
これら、サンプルAS〜GSの結果は、順に、図12(サンプルAS)、図13(サンプルBS)、図14(サンプルCS)、図15(サンプルDS)、図16(サンプルES)、図17(サンプルFS)、図18(サンプルGS)に示される。
【0103】
この結果から、従来UDD粉末(サンプルGS)及び未酸化処理UDD粉末(サンプルFS)は、1000nm以上の大径粒子を含みかつ、粒度分布の範囲が広いのに対して、本発明によるUDD微粒子粉体サンプル(サンプルAS、BS、CS、DS、ES)は、粒度分布の範囲が狭く、かつ1000nm以上の大径粒子を全く含まないことが分かる。
【0104】
試験9;吸着水分及び窒素の離脱
他方、本発明のウエットなUDD微粒子粉体は、403〜433°Kで基本的な水分量を消失する。それ以降の温度においては、パラメーターの変化は予備乾燥されたサンプルの場合と同様である。不活性ガス(He)雰囲気中で383〜393°Kに加熱した場合には、空気中から吸収した窒素の脱着が生じる。673〜1173°Kの間の温度においては、発熱を伴い10%の重量損失があった。その後、二酸化炭素及び窒素が発生する(モル比は4:1)。この過程は、UDD材料の形態変化を伴う。1153〜1163°Kにおいては、質量の変化が観測されず、若干の吸熱効果が見られる。この過程はUDD材料の形態及び色調の変化なしに行なわれる。これに反して、従来の文献に記載されたデータによれば、このような不活性雰囲気中でのアニーリングの際に、これらと同じ温度域で表面の各種基の実質的に完全な除去が生じる。
【0105】
試験10;構造欠陥部の容積率
上記試験4の広範な赤外分析を通じて、広義の意味でダイヤモンドと考えられる全ての結晶状態について、UDDにおける構造欠陥部の容積率を陽性部位−電子消滅法(positron-electron annihilation method)により検討した。
高分散RDXの5〜70重量%を含むTNT/RDTアロイの水中での爆射変換によってUDDを製造した。
このUDDのシンタリングプロセスにおけるUDDの構造欠陥部の濃度、容積及び分散状態を見るため、爆薬中の炭素−水素比のみならず、衝撃波の印加直径(高い圧力及び温度の存在状態)、硬化状態を変化させた。化学精製の後、UDDの結晶構造を、陽性部位−電子消滅法により構造欠陥部の容積率を測定し、また、窒素の低温吸収によって比表面積を測定した。
構造欠陥部の最大密度の容積((3.05-3.10×103kg)/m3)をもつUDDのシンタリング過程を検討するため、コヒレント散乱法による平均粒径((,1.5-2.0)×10−9m)及び最大分散性(4.2×105m2/kgの比表面積)を選択した。UDD粉末を4〜12Gpaの圧力下でシンタリングし、得られた多結晶粉末凝結物のマクロ硬度及び圧縮破壊強度を測定した。
【0106】
炭素含有爆薬の爆射において、爆薬中の炭素含有率及び爆射温度が高くなっていくにつれ、クラスターの欠落密度及び孔部の密度の分布曲線には最大点が存在し、その点を過ぎるとクラスターの欠落密度及び孔部の密度が減少し始める。最大点は3900°Kの温度領域に相当する。UDD中のクラスターの欠落密度が最大値に増加するにつれて、(1〜2)×10−9mのサイズの孔径を有するサブマイクロ孔部の濃度も最大値に増加する。電子を捕獲して消滅する電子捕獲中心は、欠陥部の総計であり、各欠陥部は結局、各サブマイクロ孔部の核である。このUDDに出現した電子捕獲性陽性部位(positronium)は、ダイヤモンド中に形成されたものでなく、サブマイクロ孔部の内面に形成されたものであり、これらは結局、欠陥部から形成されたものである。
TNTから結晶化されたUDDにおけるサブマイクロ孔部が欠乏し、また構造欠陥の容積が欠乏(3.3×103kg/m3の比重密度)すると、静的合成法によるダイヤモンドに近づく。従来報告されている各種UDD粉末のIRスペクトル分析結果もこれを物語っている。
【0107】
本発明におけるUDD微粒子の構造欠陥の容積部分が形成される機構は、つぎのように推測(ただし、この仮説は、説明のための推測であって、本発明を限定するためのものではない)される。すなわち、炭素含有爆薬を爆射したときのUDDの形成プロセスは、不均一な各相変化、つまり、1)炭素含有爆薬の最初のプラズマ状濃厚状態(各イオン、自由電子、励起された粒子、最も単純なラジカル等の高濃度状態を特徴とする)の相の形成、2)該プラズマ状濃厚状態相から、水素を含有する炭素の最初の小クラスター状態相への変化、3)該最初の小クラスター状態相から、超分散ダイヤモンド(UDD)への相変化、の結果と表わすことができる。全ての相変化は10−8〜10−9秒の短時間内に進行する。そして、諸粒子の電子的サブスシテムが励起されたときに新たなメカニズムによりダイヤモンドの超高速形成のため付随的な条件が整い、順次、爆薬の化学的変換領域及びその外側領域の双方が高温高圧領域に変化し、より緩慢な合体の拡散プロセスが起こり、再結晶及びダイヤモンド相と孔部の成長が進行し、水素の分離及び拡散が生じ、欠落部が形成され、つぎに、欠落部のあるクラスター及びサブミクロン孔部の集積化が進行する。この過程はUDDの結晶構造の形成を終了する低速度過程であり、粉末の硬化により妨げられて10−6秒以下の長時間で進行する。
【0108】
試験11;電磁気学的性質
本発明のUDD微粒子粉体サンプルについて、磁気的性質を静的合成法によるダイヤモンドのそれと比較検討した。
ダイヤモンドは、磁化率(χ)=-0.62×10−8m3/kgの定数値を有する反磁性材料である。しかし、本発明のUDD微粒子粉体は、これとは違う値の磁化率(χ)を有する。粉体状材料の比磁化率は、粉体の全容積の磁気的性質の量的特性であり、粉体を構成する全ての成分の比磁化率(χi)の加成強度である。次表は、本発明における前記UDD微粒子粉体サンプル中の不純物の磁化率を示す。
【0109】
【表7】
【0110】
本発明のUDD微粒子粉体の導電率は573°Kに加温されたサンプルの場合、最小で、約1012Ω・mの値であり、加熱を続けると導電率が6.0×1010Ω・m〜2.0×1011Ω・mに低下し、二酸化炭素中で、グラファイト化開始温度の境界と思われる1173°Kに加熱すると導電率が2.3×104Ω・mまで低下する。
【0111】
前記UDD微粒子粉体サンプルの誘電定数又は透磁率はE01で2.4〜2.7、E10で1.7〜2.0、E1.5で21.7〜2.0であり、高周波損失(tan δ)は約0.5×10−3〜1.0×10−2であった。
【0112】
このように、本発明のUDD微粒子は、従来の静的合成法によるダイヤモンドと多くの性質が全く異なり、また、従来の爆射法によるUDDに比較して炭素のダイヤモンド状の相は、その高い反応性にも拘らず、中性雰囲気及び還元性雰囲気中で安定な物理的化学的諸性質を示す。
【0113】
本発明の微粒子粉体を、室温で密実なタブレットに成形したUDDの比抵抗は106〜107Ω・mの値であり、湿めらせたときには比抵抗の値は急激に減少し、水分含量5%ときの比抵抗は103Ω・m未満となるが、さらに水分を増加させても比抵抗の値はもはや変化しないので、水分含量5%は、水分吸収の限界であると考えることができる。また水分含量5%は、UDDの残存水分含量の測定法の開発の基本点になると思われる。
【0114】
ダイヤモンド表面の重要な性質の1つに、電気熱力学的ポテンシャル、換言すれば界面電位(ζ電位又はゼータ電位)がある。このζ電位はナノダイヤモンドの表面状態に著しく依存することを考慮すると、同じ品位のUDD間のζ電位の差異は、両UDDが異なる精製法及び変性法によるものであることを予想させる。
S.I.Chuhaeva等(S.I.Chuhaeva,P.Ya.Detkov,A.P.Tkachenko,A.D.Toropov.Physico-chemical properties of fracitons isolated from ultradispersed diamonds(nanodiamonds).[Sverhtvjordii materiali,vol.42,pp29(1998)]は、電流の影響下、液相に関連した分散媒体中の粒子の志向運動に基く電気泳動法によりζ電位を測定している。彼らはRussian Federal Nuclear Center製のUDDから得られた3層に分離した小区分の各部分、すなわち沈殿部分、中間層部分、懸濁層部分、のζ電位を測定し、沈殿部分について+16×10−3V、中間層部分について+32×10−3V、懸濁層部分について+39×10−3Vのζ電位を記録している。Chuhaeva等は、サンクトペテルブルグのJSCダイヤモンドセンター製造のUDD−TAH(品種−TU 05121441−275−95)の濃厚UDD水性懸濁液のUDDサンプルについてもζ電位を測定し報告している。
【0115】
前記3層に分離した小区分の各部分について、次表
【0116】
【表8】
【0117】
のような報告(V.L.Kuznetsov, A.L.Chuvilin, Yu.V.Butenkov, I.Yu.Malkov, A.K.Gutakovskii, S.V.Stankus, R.Kharulin[Mat.Res.Soc.Symp.Proc.396,pp105(1995)]もあり、従来、層分離された3つの小区分UDD懸濁液は、特性が互いに異なることが知られているが、主に、液中のUDD粒子の組成、UDD粒子の粒径に基く沈降速度差によると考えられており、UDD粒子表面の官能基がUDD特性に与える影響は正確には知られていなかった。
【0118】
試験12;表面荷電電位
本発明のUDD懸濁液サンプルをイオン交換樹脂で精製した後、297°K〜〜298°Kの温度でζ電位を3度測定した。(32〜34)×10−3Vの測定結果が得られた。比較のため、従来の製法により製造した爆射法BD(3層の小区分に未分離)のUDD液のζ電位を測定したところ、(25〜26)×10−3Vの測定結果が得られた。
【0119】
従来の層分離操作は、懸濁液の組成及び粒径に基く単純な撹拌による所定の液体及び沈殿物の各小区分への分離であったが、本発明においては、高度に分散されたコロイド系の各小区分への分離、特にUDD懸濁液の重力による各小区分への分離は、適切な分離操作であるとは云えない。本発明におけるUDD懸濁液からの凝集物の粒径は最低3×10−7m以上であった。最適の場合、デカンテーションにより極微細な分離物を生じた。極微細な分離物は乾燥時に凝集し、乾燥した凝集物の再分解はしばしば容易でない。
【0120】
また、ナノダイヤモンドは高い有機溶剤吸収能を有するので有機溶剤の使用も適当ではない。他方、本発明において、上記UDDのサンプルから得られた乾燥粉末を超音波処理により水性懸濁とした場合、1ケ月以上の保存後にも分散性は変化しなかった。
【0121】
本発明の各種純度のUDD組成物において、諸官能基の典型的な1セットがあり、このセットはダイヤモンド構造が破壊されるまでコンスタントに残存する。これらは−OH基、−NH基、−C=O基、−C−H基、−C=N基のような極性の官能基である。これら基のうち特に−C=O基、−OH基は懸濁液中のUDD粒子の凝集傾向を決定する重要なパラメータのように思われる。分離された各UDD小区分サンプルのIR分析の結果、これら各サンプルは、同様な多くの官能基を含有していたが、但し各サンプルは、これら各官能基の含有率に違いがあった。
【0122】
本発明におけるUDD微粒子懸濁液は、例えば、ω,ω’型の両末端ジカチオン性基を有する短鎖界面活性物質等の1部の界面活性物質を除いて、各種界面活性物質による懸濁安定化は概して適当でない。懸濁液中のUDD微粒子は、添加された界面活性物質の分子に囲まれた形になる。これにより、界面活性物質分子の疎水性部分である尾部分(長鎖脂肪族部分)が水性媒体に面するようになるため、UDD微粒子が撥水性に変化し、水中分散安定性が減少するものと思われる。
【0123】
試験13;分散媒と分散安定性
本発明において、UDD微粒子とその分散媒の種類との関係に関し検討したところ、アセトン<ベンゼン<イソプロパノール<水の順に、UDD微粒子の親和性が増加して分散安定性が増すことが確認された。UDD微粒子の分散のためには、分散媒の極性が重要であるだけでなく、分散媒のUDD粒子との間のπ−複合体の形成能は、UDDクラスターの活性表面の親和化及び分散安定化を促進することが分かる。非極性有機溶媒を用いたUDD懸濁液は、実用上の観点から非常に重要である。このようなナノダイヤモンド懸濁液作成が可能であれば、エラストマーに基くクラスターの現実的な開発促進が可能になる。この問題を実際に解決する1つの方法は、UDD微粒子の表面を親水性から疎水性に変換することである。本発明においては、この目的のため1例として、ナノダイヤモンドの乾燥粉末をポリジメチルシラン及びポリイソプレンからなるエラストマーのベンゼン溶液中に添加する。すなわち本発明のUDD微粒子は、ポリマーの疎水性鎖をダイヤモンドクラスターの表面に吸着させて、懸濁液を安定化させる。実際に、有機溶媒中へのUDDの分散性が増大することが観察された。本発明によりUDD表面の最適な変性剤は現状ではポリイソプレン等のジエン材料の重合体であることが見いだされ、UDD表面の変性法及び懸濁液の最適化法が開発された。ポリイソプレン等によるUDDクラスター表面の変性により、約300nm径の基本的な最大径を有するUDD懸濁液の作成が可能になる。この懸濁液の耐沈殿安定性は10日以上であった。
【0124】
試験14;ダイヤモンド相−グラファイト相の相変換
本発明のUDD微粒子中のダイヤモンド相−グラファイト相の変換を検討した。この相変換は720〜1400°Kの温度間で不活性媒体中で加熱したときに生じたものである。相変換を識別するため、ラーマン散乱法(Raman Scattering(RS))及びX線スペクトル法を用いた。RSスペクトル及びX線回析の結果から、UDDは約4.3×10−9mのサイズのナノクリスタル特性のダイヤモンドの結晶構造を有するクラスター物質であると結論された。
【0125】
多くの場合、(4〜5)×10−9mサイズの狭い範囲のUDDナノクラスターが観測された。これから、小さいナノクリスタルサイズにおいてはグラファイトでなく、ダイヤモンドが熱的に安定な形であるということができる。このような推測は、M.Gamarnik, Phys.Rev.Vol.54,PP2150(1996)により支持される。
【0126】
ダイヤモンド及びグラファイトの格子振動子密度の最大機能と一致しているRSスペクトル中の特定の形部分は、サンプル材料中の少量のアモルファスダイヤモンド及びグラファイトの存在を示している。
公知(G.V.Sakovich, V.D.Gubarevich, F.Z.Badaev, P.M.Brilyakov, O.A.Besedina.[Proceedings of Science of USSR,Vol.310,No.402(1990].Aggregation of diamonds obtained from explosives)のように、UDDクラスター、及び同様な他の超分散した物質は単凝集体であるので、アモルファス相はダイヤモンド核の表面上の凝集体であると思われる。
【0127】
本発明の前記X線回析データにより、粒径特性が約1.5×10−9mサイズのアモルファス相の存在が確認された。RSスペクトルにおけるアニーリング温度(Tann)=1000°Kまで示された1322cm−1のピークの位置が不変であることにより、この温度までのアニーリング温度ではダイヤンドの構造変化は生じないことが判明した。これは、X線回析の分析結果によっても確認され、X線回析の分析結果はグラファイト相の概念はTann>1200°Kでのみ確認された。ダイヤモンド相−グラファイト相間の相変化は不活性雰囲気中でのアニーリング時にクラスター表面から始まる。本発明のX線回析データによれば、このグラファイト相は、4×10−9m以下の特定サイズを有する等間隔のグラファイトのナノプレートのセットであり、このグラファイト相はTann>1200°Kの温度で基本的にダイヤモンド核の消費により生じることが確信された。
【0128】
前記V.L.Kuznetsov, A.L.Chuvilin, Yu.V.Butenkov, I.Yu.Malkov, A.K.Gutakovskii, S.V.Stankus, R.Kharulin[Mat.Res.Soc.Symp.Proc.396,pp105(1995)]によれば、測定された初期相変換温度(Tpt)は、電子顕微鏡の観測データと一致している。本発明において、T>1300°Kでの測定データにより、ナノクリスタリンダイヤモンドの核は、T>1300°Kで、炭素の球根様形状を経てサイズ減少する。RSスペクトル分析において1575cm−1に、このような特定の形が出現し、これは、T=1400°Kで明確に示されるので、当該温度が炭素の球根様形状の出現温度である旨の前記V.L.Kuznetsov他の報告内容は正確であった。
【0129】
本発明のUDD微粒子において、ダイヤモンド−グラファイト間の相転換の開始は、Tann>1900°Kで、ダイヤモンドの容積的なモノクリスタル化温度よりも低い温度温度であることが分かった。このような相転換の開始温度の低下は、例えば融点低下は、金属クラスターの場合にも見られたことが報告(E.L.Nagaev,[Uspehi fizicheskoi nauki. No.162.pp.49(1992)])されている。
【0130】
Tann>720°Kで、ダイヤモンドクラスターのコア上におけるグラファイト相の形成と共に、UDD中のsp2部分の規則化が最初に起こる。このsp2調整された結晶化は、ダイヤモンドの結晶各の外側で生じ、sp2結合したアモルファス炭素ヘの変換である。これは、約1350〜1600cm−1の領域のRSスペクトル帯の強度増加、Tann>1300°KでのX線回析の小さい角度及び中程度の角度域における散乱パターンに基く微小構造の出現で示される。
【0131】
クラスターを形成しているUDD微粒子は、比較的高密度かつ規則化した結晶様コア、及び、ゆるく化学的に破壊され易い殻(シェル)からなる。ダイヤモンドコアはUDDの基本的なダイヤモンド特性、すなわち熱安定性及び化学的安定性、高伝熱性、高熱拡散性、低導電性、低X線回析性、擬似耐摩耗性、擬似硬度を担保する。クラスターのシェル構造は、UDD粒子の表面電荷のマイナス記号及び電荷量、吸収性、吸着性、化学的収着性、表面官能基の化学的組成、液中及びたの媒体中でのUDD微粒子コロイドの安定性に寄与する。コア及びリーガンドシェルが化学的に異質元素からなる、すなわち、金属原子及びコンプレックス形成イオンからなる旧来の金属クラスターとは対象的に、UDDクラスターの場合にはコア及び安定化されたシェルの双方が基本的に炭素原子からなる。そのため、ダイヤモンド格子構造から、ポリヘドロンフレーム系、多環構造系、ネット構造系を経て、非ダイヤモンド構造の周囲殻に変換することが可能である。クラスターの境界は周囲殻の炭素原子と爆薬による爆射のガス状生成物、空気、酸化性混合物、変性剤のような物質の雰囲気との相互生成物により安定化することができる。周囲殻は、ダイヤモンドクラスターの凝集過程で、主な役割を演じ、爆薬材料のマトリックス物質及び被覆材料と相互反応する。このようなUDD粒子中の2種類の炭素成分の存在は、本発明における上記実験結果以外にも、T.M.Gubarevich, Yu.V.Kulagina, L.I.Poleva[Sverhtvjordii materali,No.2,pp34(1993)]Oxidation of ultradispersed diamonds in liquid mediaに示されており、本発明における上記実験結果は、該文献が開示する内容と同様なものであった。
【0132】
A.I.Lyamkin, E.A.Petrov, A.P.Ershov, G.V.Sakovich, A.M.STaver, V.M.Titov[In Proceedings of Academy of Science of USSR,No.302,pp611(1988)]、A.M.Staver, N.V.Gubareva, A.I.Lyamkin, E.A.Petrov[Phisika Gorenniya Ivzriva,Vol.20,No.5,pp100(1984)]Ultradispersed diamond powders obtained with the use of explosives、及び、N.V.Kozirev, P.M.Brilyakov, Sen Chel Su, M.A.Stein[In Proceedings of Academy of Science DAH USSR,Vol.314,No.4,pp889(1990)]Investigation of synthesis of ultradispersed diamonds by mean of tracer method にも示されるように、爆薬による爆射の凝縮生成物の構造は、基本的過程すなわち爆射の衝撃波による化学反応の帯域中での基本的爆射過程、及び、反応相の放散過程すなわち爆発生成物の放散期間と衝撃波の反射波がこの爆発生成物を通過する期間、の双方の期間で形成される。上記N.V.Kozirev等の場合には、ダイヤモンドのグラファイト化及び結晶相のアモルフアス化のような2次過程の大きな可能性が示唆されている。粒子中の炭素フレームに影響を与える構造的変換及び相変換を別にして、爆破室内では凝縮物とガス状物質との間で反応が起こる。広範な温度値、及び合成反応器中での炭素凝縮物の種々の寿命に伴う広範な衝撃印加時間のため、化学的な相互作用は大きく異なる。
【0133】
爆射生成物からのダイヤモンド物質の凝集時間がマイクロ秒単位であることを考慮すると、本発明のUDD微粒子の製造においては、1)化学反応帯域では高度爆薬の第1爆発分解生成物の均一化が完了せず、2)爆射生成物の凝集物と分子状成分との分離を完了するための充分な時間がないことが想定された。この推定によれば、爆射生成物からの凝集物中に、ダイヤモンド形成プロセスの化学的マーク、すなわち、爆薬の遊離炭素の凝集メカニズムと炭素原子それ自体の再構築メカニズムについて判断できる分子化合物及び凝集構造の破片物質、が保存されている可能性があることになる。
【0134】
化学的マークは次の4つのカテゴリー、すなわち、(i)sp3状態炭素であることを特徴とするダイヤモンド構造物及びダイヤモンド様構造物の破片としてのフレーム、ブリッジ、脂環式炭素化合物、(ii)グラファイト様構造物(sp2混成軌道のもの)の破片としての単環及び多環芳香族化合物の誘導体、(iii)炭素クラスターの周囲部境までのアモルファス化物の破片、及びカルビン構造(R-CH2-構造)の存在の兆候物の破片としての脂肪族直鎖状及び分枝状化合物、(iv)炭素粒子の表面層のの破片としての-C-N結合又は-C-O結合含有化合物、に分けて考えることができる。
【0135】
試験15;化学的マークの解析
かような化学的マークを明らかにし解析するため、本発明においては、UDD、DBの温和な熱分解生成物及びUDDとDBの非ダイヤモンド相の超臨界状態有機溶媒中での分解生成物(所謂オルガノリシス性分解の生成物)について検討した。
すなわち、ソックスレー(Soxhlet)装置中で、固体:液体=1:10の割合で、(3.60〜4.32)×105秒の抽出時間、冷抽出を行なった。液体の抽出力が最大のとき、超臨界状態で所謂オルガノリシス性分解を行なった。4×10−4m3容積のオートクレーブ中で5MPa以上の圧力、573〜673゜Kで処理した。得られた抽出物を低温蛍光スペクトル分析法、ガス−液相クロマトグラフィ、クロマトマススペクトル分析、IRスペクトル分析、及び、常磁性共鳴スペクトル分析法で解析した。各冷抽出物を得るため、ダイヤモンドを含有しない標準サンプルを含む異なるタイプの爆射混合物を用いた。合成条件の違いにより、各爆射混合物は異なる数の抽出された物質を含んでいた。これらは、環構造上に1個又はそれ以上の置換基をもつ二環性芳香族炭化水素、及び多環性芳香族炭化水素であった。さらに、混合物からの低温抽出による分子状生成物中から、sp2混成軌道のもの及びsp3混成軌道のものを含む各種化合物が得られた。しかしながら、超分散されたグラファイト及びターボストレート(turbostrate:スメクタイトや石炭のように集合原子により構成される各層が平行であり、かつ、各層が互いに不規則な方向を向いて及び/又は不規則な間隔で重なったメソ状態の相)炭素が、ダイヤモンドよりも、このような化合物を含む天然物に類似していることは明らかである。冷抽出の条件下では、固体炭素マトリックスは破壊せず、有機溶媒に溶解しうる化合物分子の脱吸着及び洗い出し(所謂抽出)のみが生じる。そのため、同定された化合物は、最初の爆射生成物から炭素凝集物に移る過程の中間状態の炭素化合物であると結論することができる。前記混合物中の抽出材中に排出される多芳香族性化合物と、ダイヤモンド相の完成された構造物及びその含有量との関係が測定された。即ちダイヤモンドを含有しない爆射生成物からは、可溶性物質の最大5%の排出が測定された。
【0136】
試験16;不純物の抽出
固体物質の部分分解を伴う、より強力な抽出を、200〜400℃及び昇圧条件下、即ち使用した有機溶剤の超臨界状態下で行なった。最も活性な溶剤の1つとして知られるピリジン中で、炭素の最大の超臨界液化を行なった。比較的穏やかな溶剤(炭化水素)を用いて熱抽出された組成物に関する単純で詳細な結果は、次表のとおりであった。
【0137】
【表9】
【0138】
実際に、得られた抽出物は、色調が淡黄色(n−炭化水素)から暗褐色(ヒドロナフタレン)まで異なっていた。抽出処理後のダイヤモンド相−グラファイト相の炭素物質の比率は変化し、表面の性質も著しく変っていた。30分間のこの超臨界液化により、炭素含有ダイヤモンドの10%以上の質量が可溶性の状態に変化し得る。この場合、炭素の活性化学結合への分解は比較的ゆるやかに進行し、クラスターの表面層付近の表面に影響を与え不均一化する。安定構造のユニット、例えば溶液中に排出された固体炭素のような顕微鏡的なユニット、個々の分子のようなマクロユニットは、影響を受けずに残る。この個々のユニットのうち、環中に1個乃至2個の窒素原子を環中に有する4環までの窒素含有多環式複素環分子が同定された。
【0139】
有機化学の原則に従うこのような化合物の形成は、多分、窒素が、炭素−窒素結合を有する窒素含有モノマーの多縮合過程で消費され、UDD合成の第1反応のダイヤモンドを含む凝集炭素中に包含されることによるものと考えられる。この点で、本発明におけるこの点は、ダイヤモンド格子中の炭素と置換した不純物窒素原子によるUDDのEPRスペクトル中に、特徴的なトリプレットの信号がない旨のA.L.Vereshagin, V.F.Komarov, V.M.Mastihin, V.V.Novosyolov, L.A.Petrova, I.I.Zolotuhina, N.V.Vichin, K.S.Baraboshikin, A.E.Petrov[Published Documents for the Conference Entitled name of In Proceeding of 5th All-Union meeting on detonation,Held in Krasnoyarsk,Jan.1991.pp99]Investigation of properties of detonation synthesis diamond phase 記載のデータとは相違するが、しかし、これは、本発明における「爆射期間中のUDD形成のための多縮合」と通常の「ダイヤモンド結晶の拡散成長」との差異によるものである。ダイヤモンド結晶の拡散成長の場合には、形成されたダイヤモンド結晶への不純物窒素の捕獲と結晶中への拡散が観測されるが、本発明におけるUDD合成の場合には、不純物窒素(正確には窒素−炭素結合)が最初に(芳香族構造の環状体の高い結合エネルギーを有する)芳香族環中に入り、次にこれが予備縮合したパッキング中に包含される。この場合、窒素の常磁性特性が、単原子状の不純物窒素のそれとは異なる。
【0140】
ダイヤモンドクラスターの外周シェルの外側表面の構造は、熱吸収データから、両者共同様であると思われる。本発明においては、クロマトマススペクトルメータLKB−209(スエーデン)を用いて熱吸収測定が行なわれた。ヘリウム気流中573°Kで熱脱吸着が行なわれ、生成物は、液体窒素で冷却された毛細管中に連続的に捕獲された。次に、ヘリウムガスキャリアー(VHe=2.5×10−6m・m3)の気流中で弱極性の相(SPB-5,lk=60m,dc=3.2×10−4m)の毛細管カラムで、毎分4°の加熱割合で293°Kから543°Kまでプログラム加熱し、熱脱吸着生成物を蒸発させた。
【0141】
試験17;マススペクトルによる脱吸着物の分析
マススペクトルライブラリーを用いた電算機によりマススペクトル処理し、生成物を同定した。ダイヤモンド含有混合物及びUDDの表面から脱吸着された物質の組成は次表に示される。
【0142】
【表10】
【0143】
BD表面からは炭化水素のみ、即ち、飽和C8〜C11炭化水素、不飽和C8〜C9炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素が脱収着された。C10のアルカンの含有量は顕著であり、脱収着生成物中でn−デカンC10H22自身が主である。これは、爆射生成物におけるキュムレン結合(C3H7・C6H4・CH=の結合)形の消費でC10〜C12の炭化水素鎖がパッキングされるときに熱力学的に効率的な構造としてのカルビン構造(R・CH2−構造)がある旨のデータと一致する。本発明により、BD自身中の多環芳香族ネットの存在が確認されたが、しかし、C10のアルキルベンゼンを含む芳香族炭化水素は、BD物質から脱吸着された全質量のうちの充分に小さい区分にすぎない。それ故、sp2型炭素の縮合程度は充分に高い。しかし、多環芳香族ネットは強く不整合化され、主に脂肪族性の周囲基、いわゆる炭化水素フリンジを有する。BD表面から脱吸着された生成物中の水素は、C−H型結合の非活性水素である。これは、ロシア特許第2046094号(合成炭素ダイヤモンド材料)、Bjuljuten izobretnji,(29),pp189(1995)記載の超分散された炭素表面の活性水素の分析結果とも齟齬がない。
【0144】
UDD表面からの脱吸着生成物の組成は大変複雑で多岐に亘る。炭化水素を別にして、炭素表面の酸化の結果として窒素含有化合物及び酸素含有化合物挙げられる。ベンゼン及びC7〜C10の同族体が広く作られ、それらからC10のアルカンが得られる。そのうち、n−デカンが優勢である。ブリッジ脂環類はカンフェン及びテルパジエンC10H16として存在する。脱吸着生成物のこのような組成は、ダイヤモンド構造の相境界面が露出する可能性は少ないことを示している。
【0145】
種々の過度性炭素構造により、UDDクラスター構造を安定化することができる。水素気流中で400℃でUDDを処理(前記表中の水素処理したUDD)すると、C8〜C11の大量の炭化水素を非可逆的に脱吸着する。しかし、表面炭素構造を分解すると、C2〜C7の炭化水素の形成を伴って、連続的な表面、すなわち準安定(metastable)な表面を再生する。
【0146】
爆射法によるダイヤモンド粒子は、フラクタルルール(集合体を構成する個々の画像要素の形とその集合体画像の形とが相似形であることが大、中、小と繰り返されている無限等比級数系のルール)が適用され、小粒子が非連続に凝集したクラスターからなり、該小粒子1個はまた種々の大きさの小片が結合したものからなることは従来から知られ(G.V.Sakovich, V.D.Gubarevich, F.Z.Badaev, P.M.Brilyakov, O.A.Besedina[In Proceedings of Science of USSR,Vol.310g,No.2,pp402(1990)]Aggregation of diamonds obtained form explosives、及びLuciano Pietronero, Erio Tosatti[Fractals in Physics:Proc.of the Sixth Trieste International Symposium of fractals in physics(1985), ICTP,Trieste,Italy]Invetigation of synthesis of Ultradispersed diamonnds、及びA.V.Igonatchenko, A.B.Solohina[Published Documents for the Conference Entitled name of In Proceeding of 5th All-Union meeting on detonation,Held in Krasnoyarsk,Jan.1991.pp164]Fractal structure of ultradispersed diamonds参照)ている。
【0147】
本発明におけるUDD懸濁物のイオン強度はpH2.1乃至2.3の範囲で変化するが、温度上昇、pH上昇はこの懸濁粒子のフロキュレーションを生じ易くする。本発明においては、UDDの凝集メカニズムは2段階であると考えることができる。最初の段階は化学的精製期間にBDの非ダイヤモンド成分の酸化条件下で粒子のクラスター化により、比較的コンパクトな第1の凝集体が形成される。第2の段階は、クラスター−クラスター間の凝集であり、これは、より破壊され易い第2の構造を形成する。この第2段階は、第1の凝集体のフロキュレーションを生じるまでが限度である。ある場合にはクラスター粒子間の凝集、第2構造のクラスター相互間の凝集等好ましくない凝集を生じ得る。
【0148】
試験18;製法によるUDDの性質の変化
つぎに、静的製造法(製法I:非爆射法)によるUDD、従来の爆射法(G.A.Adadurov, A.V.Baluev, O.N.Breusov, V.N.Drobishev, A.I.Rogechyov, A.M.Sapegin, B.F.Tatsji[Proceedigs of Academy of Science of USSR,Inorganic materials,Vol.13,No.4,pp649(1977)]Some properties of diamonnds obtained by explosion method、製法II)によるUDD、及び本発明の方法(製法III)によるUDDの諸性質を比較した。結果は次表に示される。
【0149】
【表11−1】
【0150】
【表11−2】
【0151】
上の表から、製法IIIによるUDDは、炭素含有率が90%未満であって低く、水素含有率が0.8%以上であって高く、酸素含有率が6.8%以上であって高いことが分かる。他のダイヤモンドと異なる顕著な点として、比表面積がほぼ10倍程度に大きいこと、収着能が384×103J/kg以上であってほぼ10倍程度に大きいこと、表面電位がマイナス77.44×103V以上であってほぼ10倍程度に大きいことが挙げられる。若干の表面導電性を有すること、吸水率は他のものに比し倍程度高いことが次に挙げられるが、他方、空中酸化開始温度、真空中でのグラファイト化開始温度は相対的に低い。電気的、磁気的物理特性は他のダイヤモンドとさほどの違いがない。従来の製法IIによるUDDは、2つの相、すなわち、結晶定数a=3.57×10−10mの立方晶形の相と、結晶定数a=2.52×10−10mの六方晶形の相を含むが、本発明の製法IIIによるUDD微粒子は、結晶定数a=3.57×10−10mの立方晶形の相のみからなる。
【0152】
〔UDD微粒子の担体としての使用〕
前述したように、本発明のUDD微粒子は、その表面が−COOH基、−CHO基、−C−O−C−基、OH基、SO3H、−NO3基、−NO2基、NH2等の活性な官能基に覆われている。また、本発明のUDD微粒子は、最高4.5×105m2/Kg程度の比表面を有し、また、大きな表面炭素割合(Csurface/Ctotal)を有し、かつCsurfaceが有する官能基の濃度はほとんど100%である。
したがって、本発明のUDD微粒子における、官能基の総量は極めて多量であり、その種類も多岐にわたるので、本発明のUDD微粒子は、様々な有機物質と共有結合する能力を有し、これらを固定化する担体として極めて好適な材料である。
例えば、タンパク質とは、タンパク質中の遊離アミノ基とUDD微粒子表面の−COOH基、−CHO基を介して結合でき、タンパク質中のカルボキシル基とはUDD粒子表面のNH2、OH基を介して結合でき、これらによりタンパク質をUDD微粒子に固定化する。
また、多糖類、糖蛋白中の糖鎖とは、糖中のOH基とUDD微粒子の−COOH基とCHO基との反応により、糖中のCHO基とUDD微粒子のOH基、NH2基等との反応により、これらをUDD微粒子に固定化しうる。
さらに、DNAあるいはRNAとは、例えばその塩基中のNH2基、OH基あるいは燐酸基と、上記UDD微粒子の表面官能基と反応させることにより固定化できる。
もちろん、これらの固定化においては、適当なリンカーを介して目的の有機物質と反応させ固定化しても良い。
【0153】
一方、前述したとおり、本発明のUDD微粒子はマイナス荷電を有し、その表面電位は高い、エイズウィルス(HIV)等の粒子表面はプラスに帯電しているので、これを利用して、本発明のUDD微粒子をウイルスを補足するための担体とすることもできる。また、これらウイルスを認識結合できるタンパク質を、アミド結合あるいはエステル結合を介して本発明のUDD微粒子と結合させ、これを用いてウイルスを捕捉してもよい。
【0154】
〔DNAチップ〕
本発明のUDD微粒子からなる固定化担体は、DNAチップの担体として好適なものであり、以下、本発明のUDD微粒子を使用したDNAチップについて説明する。
本発明においてDNAチップを作成する手段としては、まず、支持体上に本発明のUDD微粒子層を設けて、DNAチップ基体を作成し、本発明のUDD微粒子の上記官能基の反応性を利用して、また必要に応じリンカー分子を介して、例えばDNAプローブと共有結合させる。
支持基板としては、スライドガラス、シリコン基板、セラミックス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、スチレン系重合体、アクリル(メタクリル)系重合体等の樹脂成型品、あるいは紙等のいずれであってもよい。
【0155】
本発明のUDD微粒子を支持体上に本発明のUDD微粒子層を設ける手段としては、たとえば以下の方法を挙げることができる。
(1)本発明のUDD微粒子を接着剤溶液中に懸濁して、上記支持体上に塗布接着させ、さらに、必要に応じ塗布体の表面を溶剤処理してUDD表面を露出させて、DNAチップ基板を作成する方法。これによれば、特に支持体の種類は限定されない。
(2)スライドガラス、シリコン支持体、あるいはセラミックス支持体に、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシランあるいはN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤を共有結合させて、これら支持体表面のアミノ基と、本発明のUDD微粒子表面のカルボキシル基等の陰性基と反応させて、これら支持体表面に本発明の微粒子層が強固に結合したDNAチップ基板を得る方法。
(3)アミノ基あるいはカルボキシル基等の遊離の官能基を有する樹脂材料支持体を用い、該樹脂材料支持体の官能基と本発明のUDD微粒子の官能基とを反応させて支持体表面に本発明のUDD微粒子層が強固に結合したDNAチップ基板を得る方法。
この方法においては、ポリマー中に官能基が存在する樹脂材料からなる支持体に、直接本発明のUDD微粒子を結合させるか、あるいは樹脂支持体を成型した後、新たに官能基を導入し、本発明のUDD微粒子を結合させるか、いずれの方法であってもよい。前者の方法においては、例えば、アクリル(メタクリル)酸エステル/アクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール等を使用し、これら樹脂成型品のカルボキシル基あるいは水酸基と、本発明のUDD微粒子のアミノ基あるいは水酸基等とアミド結合あるいはエステル結合させて、表面に本発明のUDD微粒子層を有するDNAチップ基板を得る。また、後者の方法においては、例えばポリスチレンからなる支持体を亜硝酸アミンでニトロソ化し、還元してポリスチレンのパラ位にアミノ基を導入した後、該アミノ基と本発明のUDD粒子のカルボキシル基と反応させて、表面に本発明のUDD微粒子層を有するDNAチップ基板を得る。
(4)支持体に、ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリアルキルアミン等のポリ陽イオンを塗布して静電的に結合させて支持体表面にアミノ基を導入し、このアミノ基と本発明のUDD粒子のカルボキシル基と反応させて、表面に本発明のUDD微粒子層を有するDNAチップ基板を得る方法。
(5)樹脂液中に本発明のUDD微粒子を分散させた後、樹脂を成形体に硬化させ、切り出しあるいは表面を研削して、成形体表面にUDD微粒子を露出させ、DNAチップとする方法。
本発明におけるDNAチップを得るためには、上記いずれの方法によってもよいが、支持体に本発明のUDD微粒子を安定に保持させるためには、共有結合を伴う上記(2)及び(3)の方法が望ましい。
【0156】
DNAチップを作成するには、まず、DNAあるいはRNAプローブをDNA基板上の特定の位置に配置する必要があるが、これには、周知の方法を用いればよい、例えばスポッター装置により、上記作成したDNA基板上の特定位置にプローブとなるDNA、あるいはRNAを順次スポットするか、あるいは半導体装置の作成に用いられる光リソグラフ法を利用して、DNA基板上の特定の位置に特定のDNAプローブが合成されるように、それ以外はフォトマスクをかけて、紫外線照射により保護基を有するDNA単量体の保護基を外しながらDNAあるいはRNAを順次合成していく方法が採られる。
このようにして、DNAチップ基板上の特定位置に配置された特定のDNAあるいはRNAは、次にDNA基板に固定化されるが、本発明においては上記のように作成したDNAチップ基板上のUDD微粒子の官能基を利用して共有結合により、基板上にDNAあるいはRNAプローブを配列させる。
本発明のUDD微粒子表面の各官能基は極めて活性に富み、特に−COOH(無水を含む)基の量は極めて多いので、この官能基を利用してプローブとなるDNAあるいはmRNA断片を固定化することが好ましい。これには、例えば、DNAプローブの5’末端のリン酸基にアミノ基を有する脂肪属炭化水素鎖を導入する、それ自体周知の方法(「Nucleic acids Res.」11(18)P.6513(1983)により、アミノ基導入DNAプローブを得、これを上記DNAチップ基板上のUDD微粒子のカルボキシル基とアミド結合により固定化する。
また、本発明のUDD微粒子は表面にアミノ基を有し(官能基の5%程度)これを利用してプローブとなるDNAあるいはmRNA断片を固定化することもできる。また、これには、例えば、PDC(p−フェニレンジアミンジイソシアネート)の存在下、上記アミノ基導入DNAプローブを反応させることにより、上記DNAチップ基板上にDNAプローブ等を固定化できる。さらに、担体表面のアミノ基をDNAプローブの固定化に利用する方法として、2,4−ジハロゲン化トリアジン化合物を使用して、アミノ基導入DNAと反応させる方法があり(特開昭2001−128697号公報)、この方法も本発明のDNAプローブ固定化に利用できる。
これらに加え、UDD微粒子表面の−CHO基も、プローブとなるDNAあるいはmRNA断片の固定化に利用できる。アルデヒド基は上記アミノ基導入プローブDNAとシッフ塩基を形成することで、上記DNAチップ基板上にDNAプローブを固定化できる。さらに、UDD微粒子表面のOH基も極めて活性に富み、例えばプローブDNAの5’末端のリン酸基とリン酸エステルを形成することより、DNAチップ基板上にDNAプローブを固定化できる。
これらのDNAあるいはmRNAのDNAチップ基板への固定化に際しては、UDD微粒子の特定の官能基のみが反応するように、アシル基等の適当な保護基により保護していてもよい。
【0157】
このようにして得られたDNAチップは、蛍光色素等で標識された検体cDNAとのハイブリダイズに供される。ハイブリダイズされなかった検体cDNAは洗浄により除去され、ハイブリダイズされたものの位置及び強度をスキャナーで読みとり、画像処理することにより、DNAプローブに対応した機能等を読みとる。
以上、DNAあるいはRNAを固定化せしめたDNAチップ基板を例にとり説明したが、本発明のDNAチップ基板は特にこれらを固定化するものに限らず、例えば、生理活性物質と受容体の関係を明らかにするために、あるいは遺伝子におけるタンパク質あるいはペプチドの結合部位を明らかにするため生理活性物質、あるいは受容体、タンパク質の固定化等にも用いることができる。
【0158】
〔ウイルス捕捉用担体及びウイルスワクチン〕
本発明のUDD微粒子は、上記したようにその表面に多数の官能基、特にカルボキシル基が多量に存在することに加え、ナノオーダーの極めて粒径の小さな粒子であり、また高い親水性を有するとともに、中性〜酸性領域において分散性が非常に良好で、かつ生体にとって無害であるため、ウイルス、例えばエイズウィルス(HIV)捕捉用担体及びワクチンの担体として極めて好ましい性質を有する。
【0159】
以下、本発明のUDD微粒子を用いたウイルス捕捉用担体及びウイルスワクチンについてエイズウイルスをターゲットにする場合を例にとり具体的に説明する。
本発明のUDD微粒子を用いてエイズウィルス捕捉用担体を得るには、まず、本発明の表面に多量に存在するカルボキシル基とマンノース結合性レクチンであるコンカナバリンAのアミノ基とを反応させ、コンカナバリンAが本発明のUDD微粒子に固定されたウィルス捕捉用担体を得る。
一方、エイズウィルスの表面に存在する糖タンパク質gp120の糖鎖はマンノースを構成糖としており、上記コンカナバリンAが本発明のUDD微粒子に固定された担体は、エイズウイルスを非常に効率よく捕捉する。
【0160】
また、本発明のUDD微粒子を用いてエイズウィルスワクチンを製造するには、継代培養、加熱、薬剤処理等により弱毒化ないし不活性化されたエイズウィルス粒子、あるいは上記糖蛋白の少なくとも一部を含むエイズウィルスの一部構成タンパクを含む懸濁液を調整し、これに上記コンカナバリンAを本発明のUDD微粒子に固定化したウイルス捕捉用担体添加し混合させる。これにより、エイズウィルス粒子あるいはその一部構成タンパクは上記ウイルス捕捉用担体に捕捉される。一方、本発明のUDD微粒子は中性〜酸性領域において分散性が非常に良好であるが、pHが8を越えると、凝集し沈殿しやすいので、上記エイズウイルスウイルスを補足した担体を含む懸濁液のpHを8を越えるように調整し、遠心分離等の手段により沈殿物を回収することにより、簡単にエイズワクチンを得ることができる。また、このpH調整による沈殿手段を用いて、血液濾過によるエイズ治療も行うことができる。本発明のUDD微粒子は極めて微細で、かつ血液等の弱酸性化ではほとんど凝集しないので、例えばコンカナバリンA等のエイズウイルスを認識し結合可能なタンパク質を固定化したウイルス捕捉用担体を作成し、これをエイズウィルスの保菌者に静注等により直接血液中に投与することが可能である。血液は体外に取り出しpHが8を越えるように調整し、エイズウイルスを捕捉した担体を沈殿させ濾過等により分離する。分離した残りの血液はpHを弱酸性に戻した後、生体に還流する。これにより生体に感染したエイズウィルスを低減することが可能になる。
【0161】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが本発明は特にこれに限定されるものではない。
[実施例1]
(DNAチップ用基板の作成)
40mm×40mmのスライドガラスを、2重量%アミノプロピルエトキシシランのエタノール溶液に15分間浸漬した後取り出して乾燥し、シランカップリング剤を表面に結合したスライドガラス支持体を得た。一方、上記試験1のサンプルNo.5のUDD微粒子の10%水性懸濁液を調整し、カルボジイミドを添加後、上記スライドガラスを該懸濁液中に1時間浸漬して、シランカップリング剤のアミノ基とUDD微粒子のカルボキシル基とを反応せしめた。反応後取り出して表面にUDD微粒子層を有するDNAチップ基板を得た。
【0162】
以下の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをDNA合成機を用いて合成した。
GCATCTCATTGACCATCATATTAT
【0163】
このオリゴヌクレオチドの合成の最終工程において、アミノリンクII(アプライドバイオシステム社製を用いて、上記オリゴヌクレオチドの5’末端にNH2(CH2)6を導入してアミノ化した。このアミノ化オリゴヌクレオチドを、PDC(p−フェニレンジイソチオシアネート)を用いて常法により、上記DNAチップのUDD微粒子層に固定化した。
【0164】
[実施例2]
(ウイルス捕捉用担体の作成)
上記試験1のサンプルNo.5のUDD微粒子とコンカナバリンAを、カルボジイミドを含有する50mMのKH2PO4、10mMのHEPES溶液中で反応せしめ、コンカナバリンのアミノ基とUDD微粒子のカルボキシル基を結合させることにより、コンカナバリンがUDD微粒子に固定化されたウイルス捕捉用担体を得た。
一方、HIV−1粒子の浮遊液を調整し、この浮遊液に、上記ウイル捕捉用担体の懸濁液を加え混合した後、水酸化ナトリウムを加えpHを8.5に調整した。生じた沈殿を遠心分離し、上澄み中のエイズウィルスのgp120の量とウイルス感染価を測定した。pg120の量はコントロールが約2500(pg/ml)であるのに対して、本発明のウィルス捕捉用担体を使用した場合は100(pg/ml)以下であり、ウイルス感染価はコントロールが約10×104(CCID50/ml)であるのに対して、本発明のウイルス捕捉用担体を使用した場合は約2(CCID50/ml)であった。本発明のウィルス捕捉用担体は、極めて高いエイズウイルス捕捉能を示した。
【0165】
(エイズウィルスを捕捉した担体によるIgA誘導)
上記サンプルNo.5のUDD微粒子とコンカナバリンAを用いて上記と同様に作成した、ウィルス捕捉用担体を使用して、加熱により不活化したHIV−1を捕捉した。これを免疫源として、マウス(BALB/c♀8週齢)に免役し、その後30日後に追加免役した。一回当たりの投与抗原量は約10ng(gp120換算量)で、これは、約2×108個このウイルス粒子に相当する量である。また投与経路は経膣であり、初回投与後10日目毎に膣洗浄液を採取し、IgA抗体の量をELISAを測定した。本発明のウイルス捕捉用担体にエイズウィルス捕捉したものを免疫源として用いた場合のみIgA抗体の高い誘導がみられた。エイズウィルス単独あるいはウィルス捕捉用担体のみの投与ではIgA抗体の誘導はほとんど認められなかった。この結果は、IgAが粘膜組織で機能する抗体であることから、ウィルスの進入経路においてバリアを設けられることを示唆する。
【0166】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明において使用するUDD微粒子は、ナノオーダの粒径を有し、極めて大きい被表面積を有するとともに、その表面に、極めて多種、多数の官能基、すなわちカルボキシル基、アミノ基、水酸基、スルフォニル基等を有すること、また、特にマイナス荷電性官能基が数多く存在することに起因して、分散性が非常に良好で、水性懸濁液中で極めて安定しており凝集しにくいこと、さらに、親水性が極めて良好で、生体親和性にも優れ、生体毒性がなく、安全である。したがって、このダイヤモンド微粒子を用いれば、極めて有用な物質あるいはウィルスを固定化するための担体であり、特にこれを使用したDNAチップ用基板は極めて簡便な手段DNAプローブ等を固定化することが可能であり、また、これを用いたウィルス補足用担体は極めて効率的にウィルスを捕捉することが可能であり、さらに、このウィルス補足用担体にウィルスを捕捉せしめることにより、極めて有用なワクチンを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のUDD粉末の製造方法及びUDD水性懸濁液の製造方法の1例を説明する概念図である。
【図2】 本発明のUDD粉末の生成過程を説明する図である。
【図3】 本発明のUDDの酸化程度と元素組成との関係を示す図である。
【図4】 本発明のUDDのPHと活性度との関係を示す図である。
【図5】 本発明のUDD粉末サンプルのX線回析チャートである。
【図6】 本発明のUDD粉末1サンプルの詳細なX線回析チャートである。
【図7】 本発明のUDD粉末の他の1サンプルの詳細なX線回析チャートである。
【図8】 本発明のUDD粉末サンプルのIR測定チャートである。
【図9】 本発明のUDD粉末サンプルのIR測定チャートである。
【図10】 本発明の更に別のUDD粉末サンプルのIR測定チャートである。
【図11】 本発明のUDD粒子の拡大模型図である。
【図12】 本発明のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図13】 本発明の別のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図14】 本発明の更に別のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図15】 本発明の更に別のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図16】 本発明の更に別のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図17】 爆射法による粗ダイヤモンドの不完全酸化処理粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図18】 従来のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
Claims (11)
- 爆薬の爆射による爆射式でダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物(初期BD)を製造し、該ダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物を酸化処理し、生成した懸濁液からダイヤモンドを含有する相を分離する方法において、前記酸化処理の後に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて、硝酸との間で分解反応を生起させて中和することにより得られたものであるダイヤモンド微粒子からなり、その表面に少なくとも -COOH 基、 -CHO 基、 -NH 2 基、及び -OH 基を有することを特徴とする物質またはウィルス固定化用担体。
- 以下(i)〜(iv)で規定される粉体特性を有するダイヤモンド微粒子からなることを特徴とする、請求項1に記載の固定化用担体。
(i) 炭素が73.86〜86.48%の範囲、水素が0.81〜1.46%の範囲、窒素が1.18〜2.22%の範囲、酸素が10.49〜23.14%の範囲で、かつ炭素、水素、窒素、酸素の合計で100%以下の元素組成比を有し、
(ii) 粒径1000nm以上の粒子が存在せず、粒径30nm以下の粒子が存在せず、数平均粒径(φMn)が150〜650nmの狭分散形であり、
(iii) Cu、Kα線を線源とするX線回析スペクトル(XD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)が43.9°に最も強いピークを有し、(220)結晶に帰属するピーク、(311)結晶に帰属するピーク、17°にグラフィンまたはベンゼン環構造に帰属するハローがあり、グラファイト(002)結晶に帰属する26.5°のピークがなく、
(iv) 比表面積が1.50×105m2/kg以上で、表面炭素原子Cに対するH、N及びOからなるヘテロ原子の組成比がC 25 H 11.2 N 2.8 O 9.1 であって、全ての表面炭素原子が、H、N及びOからなるヘテロ原子と結合していると計算され、0.5m 3 /kg以上の全吸収空間を有する。 - 前記固定化される物質が、DNAまたはRNAであることを特徴とする請求項2に記載の担体。
- 前記固定化される物質が、タンパク質またはペプチドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の担体。
- 前記タンパク質が、レクチンであることを特徴とする請求項4に記載の担体。
- 請求項1または2に記載の担体を少なくとも支持体表面に有するDNAチップ基板。
- 請求項1または2に記載の担体からなることを特徴とするウイルス捕捉用担体。
- 請求項1または2に記載の担体にレクチンが結合してなることを特徴とするウィルス補足用担体。
- 前記ウィルスがレトロウィルスであることを特徴とする請求項8に記載のウィルス補足用担体。
- 前記レトロウィルスがエイズウィルスであることを特徴とする請求項9に記載のウィルス補足用担体。
- 前記エイズウイルスまたはその部分構成蛋白を請求項8または9に記載のウィルス補足用担体に結合せしめたワクチン。
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