JP4675053B2 - 高純度ダイヤモンド粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子回路基板、電子部品及びその他製品の絶縁材料、その他材料などに使用されるダイヤモンド粒子に関し、更に詳細には、ダイヤモンド粒子の表面に付着した炭素不純物を除去して、高純度のダイヤモンド粒子を製造する方法及び高純度ダイヤモンド粒子に関する。
ダイヤモンドは昔から人類にとって貴重な物質であるが、近年、産業界においてダイヤモンド固有の物性が注目され、特に、微細なダイヤモンド粒子が有する種々の特性に関心が集中している。ダイヤモンドが有する高度の輝きは、ダイヤモンドの表面が極めて平滑であることを示している。このダイヤモンドが有する平滑性を利用して、物体表面に微細なダイヤモンド粒子の薄膜を形成して、物体表面の潤滑性を向上させることが行われている。
また、ダイヤモンドは既存物質の中で最高の硬度を有しており、このダイヤモンドが有する超硬度性を利用して、研磨剤等に応用し物体表面を平滑に研磨する工程等に利用されている。
上述のように、ダイヤモンドが有する特性として機械的性質が挙げられるが、電気的性質や熱的性質、光学的性質においても優れた物性を有している。特に、近年では、ダイヤモンド粒子が有する電気的性質、中でもダイヤモンド粒子の高電気絶縁性と低誘電性に着目して、ダイヤモンド粒子を半導体や回路基板の絶縁材料として利用する研究が盛んに行われている。
ダイヤモンド粒子が有する高電気絶縁性と低誘電性を達成するには、生成されたダイヤモンド粒子から不純物を除去することが必要である。本発明者等の一部は、既にダイヤモンド粒子から構成された低誘電性ダイヤモンド薄膜を回路基板上に形成し、回路基板の低誘電化に成功している。このダイヤモンド薄膜の特徴は、ダイヤモンド粒子間に微細空隙を形成し、ダイヤモンド粒子自体が有する低誘電性に加え、この微細空隙の形成により低誘電性をより増加させていることにある。
このダイヤモンド薄膜の低誘電性は、空隙率の向上とダイヤモンド粒子自体が有する低誘電性に依存しているが、特にダイヤモンド粒子自体が有する低誘電性が主要因である。ダイヤモンド粒子が有する低誘電性は、ダイヤモンド粒子の高純度化により達成されるので、不純物の少ないダイヤモンド粒子の製法が強く求められている。
ダイヤモンド粒子の合成方法には各種の方法があるが、大別して高温高圧合成法と衝撃圧力合成法に分けられる。高温高圧合成法によるダイヤモンド粒子は、比較的大きな形状を有しているので破砕装置により細かく粉砕される。この破砕装置によりCr等の不純物金属がダイヤモンド粒子に混入し、また、ダイヤモンド粒子の破砕面から未反応の原料グラファイトが侵入し、ダイヤモンド粒子に濃縮付着することが問題となっている。
衝撃圧力合成法は、火薬等の衝撃圧力を用いてダイヤモンド粒子を合成する方法である。この方法は、高温高圧条件を瞬時に形成して、一気にダイヤモンド粒子を形成するので微細なダイヤモンド粒子を大量に生成できる。しかし、生成されたダイヤモンド粒子表面には、グラファイトや非晶質炭素や直鎖炭素などの炭素不純物が付着していることが多い。
従って、高温高圧合成法においても衝撃圧力合成法においても高純度のダイヤモンド粒子を製造することが困難であり、ダイヤモンド粒子に付着した炭素不純物を除去する技術の確立が急務である。ダイヤモンド粒子から不純物を除去する公知技術として特許第2691884号公報(特許文献1)が公表されている。この公知技術はダイヤモンド粒子に付着した不純物や混入した不純物を除去し、ダイヤモンド粒子の表面を改質する技術である。
特許第2691884号公報
図11は爆発衝撃法により製造されたダイヤモンド粒子の概略断面図である。火薬等の爆発により瞬時に炭素物質からダイヤモンド粒子が合成されるが、合成されたダイヤモンド粒子2の粒子核4の表面には炭素不純物層6が取り巻いて構成されている。
ダイヤモンド粒子核4は純粋のダイヤモンドから構成されているが、炭素不純物層6にはグラファイト(graphite)、非晶質炭素(Amorphous Carbon)、C=C等の直鎖炭素(Normal Chain)が含有され、その他に、触媒に起因するFe、Cr、Ni等の金属成分が不純物として混入している場合もある。
前述のように、ダイヤモンド粒子を半導体や回路基板の絶縁材料として用いる場合には、ダイヤモンド粒子が有する高電気絶縁性と低誘電性が重要である。ダイヤモンド粒子に炭素不純物層6が存在すると、高電気絶縁性と低誘電性が阻害されその特性を十分発揮できない。炭素不純物の中でもグラファイト成分がダイヤモンドの特性を阻害する最大要因である。
ダイヤモンドとグラファイトの電気比抵抗(μΩcm)を比べると、ダイヤモンドは1019でグラファイトは700である。このことから、ダイヤモンドは電気絶縁体であり、グラファイトは電気良導体であるといえるから、電気絶縁性と誘電性において、両者は全く正反対の性質を有していることになる。
従って、ダイヤモンドが有する高電気絶縁性と低誘電性を利用するためには、その特性を阻害する炭素不純物、特にグラファイト成分の除去が課題となる。前記特許文献1は、ダイヤモンド粒子に付着した不純物を除去するために混酸(硫酸+硝酸)を用いて処理している。
図12は従来の混酸処理法に使用されている精製装置100の概略構成図である。立脚台102の上部に耐熱ガラス製容器104が配置され、その中にダイヤモンド粒子が分散された混酸105を入れ、ガスバーナー107で加熱する。加熱により蒸発したガスは上昇し、冷却部106で矢印方向に流れる冷却水108により冷却され、冷却されたガスは冷却部106の端部110から排気される。
図13は特許第2691884号公報として公表されたダイヤモンド粒子を精製する従来の混酸処理法の工程図である。(13A)において、ダイヤモンド粒子は濃硫酸と硝酸からなる混酸中に分散され、200〜320℃の温度で2〜6時間加熱処理される。濃硫酸や硝酸の酸化力によってダイヤモンド粒子の表面から不純物が除去される。即ち、ダイヤモンド粒子の表面に付着した炭素不純物やその他の不純物が除去される。また、同時にダイヤモンド粒子の表面に親水性基が付与される。
濃硫酸に添加される酸化剤としては、硝酸以外に、過塩素酸、クロム酸、過マンガン酸等が用いられる。これらの酸化剤を用いることにより、硝酸の添加と同様の効果を奏することができる。また、上記処理前後に、主としてグラファイト成分の除去を目的とした過塩素酸処理が追加される。
(13B)では、加熱制御装置をオフにして混酸溶液が冷却(Cooling)される。(13C)では、冷却した混酸に多量の水を加えて酸を希釈(Water Dilution)する。この希釈によりダイヤモンド粒子の表面に親水性を有するOH基が形成される。
(13D)では、ダイヤモンド粒子を水洗(Water Washing)し、この水溶液を遠心分離(Centrifugal Separation)して、ダイヤモンド粒子と水を分離する。
(13E)では、ダイヤモンド粒子に付着している水分を蒸発(Water Evaporation)させて、ダイヤモンド粒子を乾燥(Drying)する。このようにしてダイヤモンド粒子の不純物を除去し、同時にダイヤモンド粒子の表面に親水性を付与し改質している。
この公知技術では、ダイヤモンド粒子に付着し混入している不純物除去において、主たる酸化剤として濃硫酸又は硫酸が用いられており、硝酸は副酸化剤として用いられているに過ぎない。しかも硫酸と硝酸による除去対象は主として金属成分である。ダイヤモンド粒子に付着している不純物、特にグラファイト成分の除去は主に過塩素酸処理に委ねられている。
ダイヤモンド粒子に含まれる不純物には、触媒に起因する重金属成分と炭素不純物がある。金属不純物として、Si、Al、Fe、Cr、Mn、Cu、Ca、S、Cなどが無機定性分析及び無機定量分析により知られており、これらの重金属を除去するために主に濃硫酸と硝酸からなる混酸が用いられているのである。これに対し、本発明の目的はダイヤモンド粒子に付着する不純物の除去である。換言すれば、本発明の目的は、ダイヤモンド粒子からグラファイト成分、非晶質炭素成分及び直鎖炭素成分などの炭素不純物を除去することにあり、上記公知技術と本発明とはこの点が全く異なっている。
上記従来技術により得られた高純度ダイヤモンド粒子は、潤滑剤、研磨剤及び表面改質剤として利用する上には有効であるが、回路基板や半導体等の電気絶縁材料として利用するには問題がある。電気絶縁材料として利用するためには、ダイヤモンド粒子の電気的性質である電気絶縁性や誘電性を阻害する不純物を除去する必要がある。これらの性質を阻害する不純物として、グラファイト成分、非晶質炭素成分及び直鎖炭素成分などの炭素不純物を選択的に除去する高純度ダイヤモンド粒子の製造方法が確立されねばならない。
従って、本発明は、ダイヤモンド粒子からグラファイト成分、非晶質炭素成分及び直鎖炭素成分などの炭素不純物を選択的に除去できるダイヤモンド粒子の製造方法を開発し、その結果得られる高純度ダイヤモンド粒子を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、少なくとも硝酸化合物を非硫酸溶媒に溶解させた硝酸化合物溶液を調製し、ダイヤモンド粒子核の表面に炭素不純物を有したダイヤモンド粒子を用意し、このダイヤモンド粒子の粉末を前記硝酸化合物溶液に分散させて処理溶液を調製し、この処理溶液を加熱して前記ダイヤモンド粒子から炭素不純物を除去する高純度ダイヤモンド粒子の製造方法である。
本発明の第2の形態は、硝酸化合物が硝酸又は硝酸塩である高純度ダイヤモンド粒子の製造方法である。
本発明の第3の形態は、非硫酸溶媒が水又は水溶液である高純度ダイヤモンド粒子の製造方法である。
本発明の第4の形態は、ダイヤモンド粒子が相互に結合して団子化した2次ダイヤモンド粒子からなる粉末を適当な溶媒に分散させ、この溶媒を超音波処理して2次ダイヤモンド粒子を個々のダイヤモンド粒子に分解し、このダイヤモンド粒子を硝酸化合物溶液に分散させる高純度ダイヤモンド粒子の製造方法である。
本発明の第5の形態は、処理溶液を加圧装置内に配置し、この処理溶液の沸点を加圧下で上昇させ、その沸点以下の温度で処理溶液を加熱する高純度ダイヤモンド粒子の製造方法である。
本発明の第6の形態は、処理溶液の加熱温度が250〜350(℃)の範囲内である高純度ダイヤモンド粒子の製造方法である。
本発明の第7の形態は、炭素不純物の除去処理を行った結果、残留した炭素不純物成分のうちグラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下にまで低減される高純度ダイヤモンド粒子の製造方法である。
本発明の第8の形態は、第1〜第7形態のいずれかに記載のダイヤモンド粒子の製造方法を、ダイヤモンド粒子に対し複数回繰り返すことによってダイヤモンド粒子から高効率に炭素不純物を除去する高純度ダイヤモンド粒子の製造方法である。
本発明の第9の形態は、第1〜第8形態のいずれかに記載のダイヤモンド粒子の製造方法により製造されたダイヤモンド粒子において、炭素不純物成分のうちグラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下に低減されている高純度ダイヤモンド粒子である。
本発明の第10の形態は、第9形態のダイヤモンド粒子の直径が1〜100nmである高純度ダイヤモンド粒子である。
本発明の第1の形態によれば、硝酸化合物を非硫酸溶媒に溶解させた硝酸化合物溶液は、ダイヤモンド粒子の表面に付着する不純物、特にグラファイト等の炭素不純物を高効率に除去できる。本発明者等は、ダイヤモンド粒子の表面に付着する不純物、特にダイヤモンドの電気的性質を阻害するグラファイト等の炭素不純物を除去するために鋭意研究を行った。その結果、グラファイト等の炭素不純物を除去するには、硝酸イオンの存在が極めて重要であることを発見して本発明を完成させたものである。本発明者等は、実験の結果から、硫酸ではグラファイト等の炭素不純物を除去できないと結論し、硝酸化合物を溶解させる溶媒として非硫酸溶媒を用いる。また、炭素不純物を除去する直接物質が硝酸イオンであることを発見し、硝酸イオンを含有する硝酸化合物を非硫酸溶媒に溶解させて使用する。硝酸化合物溶液を加熱すれば硝酸イオンの活性化により強力な酸化作用が形成されると考えられる。例えば、硝酸アンモニウムの場合、硝酸アンモニウム溶液中でNH とNO に電離し、このNO が加熱されることにより活性化すると思われる。しかし、現在のところ、硝酸イオンがどのようにダイヤモンド粒子の不純物を除去するのか、その詳細なメカニズムは不明であるが、後述するラマンスペクトルによりその効果は明白である。硝酸イオンを含む硝酸化合物として無機硝酸化合物と有機硝酸化合物が利用でき、硝酸イオンを生成する全ての硝酸化合物が本発明に利用できる。また、非硫酸溶媒の一種として、リン酸融液が使用できる。リン酸は約10℃で融解し、温度上昇に伴ってリン酸融液の粘性は低下し、大気圧下での沸点は約350℃前後である。従って、このリン酸融液を硝酸化合物の溶媒として使用すれば、大気圧下で約350℃の沸点までの任意温度でダイヤモンド粒子を処理することが可能になり、大気圧処理が可能になるからダイヤモンド処理を安全に実施できる利点を有する。一般に、リン酸は水溶液として市場から入手でき、このリン酸水溶液を脱水処理してリン酸融液に転換し、このリン酸融液を前記溶媒として使用することもできる。この場合、微量の水分が含まれていても、リン酸融液として使用が可能である。
本発明の第2の形態によれば、硝酸化合物として硝酸又は硝酸塩を用いることができる。硝酸又は硝酸塩は水溶液中で高電離度でイオン化し、本発明の主要イオンである大量の硝酸イオン(NO )を生成する。硝酸は無色の液体で、水と任意の割合で混ざり、しかも金属等の不純物を含有しない優れた性質を有している。一般に利用されている硝酸は濃度68%の硝酸水溶液で、その沸点は120.5℃である。硝酸はその水溶液中で電離し、2HNO⇔NO +HO+NO 平衡状態にあるか、発生した水と反応して、HNO+HO⇔H+NO の平衡状態にある。本発明者等は、この硝酸イオンの強力な酸化作用に着目して本発明を完成したものである。また、硝酸は、種々の金属元素や原子団と結合して硝酸塩を形成する。これらの硝酸塩は可溶性であり、中でも水によく溶けて硝酸イオンを形成する。硝酸塩として硝酸アンモニウム、硝酸マグネシウム、硝酸カリウム、硝酸アルミニウム、硝酸カルシウム等があるが、本発明には金属成分を含有しない点から硝酸アンモニウムが好適である。また、硝酸化合物として硝酸を利用すれば、HとNO 以外の物質を含まないから最も望ましい。硝酸や硝酸塩は水によく溶解されるので、硝酸化合物溶液の中で最も簡単に硝酸化合物水溶液を生成できる利点がある。
本発明の第3の形態によれば、硝酸化合物溶液の溶媒として水又は水溶液を用いることができる。硝酸化合物はよく水に溶解するので容易に硝酸化合物溶液を調製できる。硝酸化合物は硝酸化合物溶液中で電離し多量の硝酸イオンを形成する。この硝酸イオンは強力な酸化作用を有しており、加熱されることによりその酸化力は倍増する。この強力な酸化作用によりダイヤモンド粒子に付着している炭素不純物が効率的に除去される。また、水は安価に利用できるので、硝酸化合物溶液を経済的に調製できる利点がある。又、硝酸化合物の加熱効果を促進するためにリン酸水溶液などの水溶液を溶媒として使用することも可能である。リン酸以外の水溶液を用いることもできる。また、リン酸水溶液を脱水処理して水分含有率を低下させれば、リン酸水溶液の沸点を任意温度まで上昇でき、炭素除去処理を大気圧下で安全に行える利点がある。
本発明の第4の形態によれば、ダイヤモンド粒子が相互に結合して団子化した2次ダイヤモンド粒子からなる粉末を、超音波処理により個々のダイヤモンド粒子に分解し溶媒中に分散できる。ダイヤモンド粒子の直径(粒径)が小さくなり、ナノメートルサイズのダイヤモンド粒子になると、個々のダイヤモンド粒子は単体で存在するよりも相互に結合して団子状態の2次ダイヤモンド粒子になることが知られている。超音波処理によって団子状態の2次ダイヤモンド粒子を個々のダイヤモンド粒子に分離分散させて、このダイヤモンド粒子に本発明に係る高温硝酸イオン処理を施すことによって、ダイヤモンド粒子の表面に付着した炭素不純物を効率的に除去することが可能となる。
本発明の第5の形態によれば、ダイヤモンド粒子を分散させた硝酸化合物溶液を加圧して、硝酸化合物溶液の沸点を上昇させ、その沸点以下の温度で加熱することができる。加圧を適宜調整することにより硝酸化合物溶液を所望の温度で加熱することができ、加熱温度を自在に制御できる利点がある。硝酸イオンは加熱温度を上昇させると、その酸化作用は急激に増大することを本発明者等は発見した。加圧装置にはオートクレーブ装置や通常のボイラー加圧装置などの公知の加圧装置が利用できる。加圧度を高めると沸点は自在に高められ、任意の沸点に調整することにより、その沸点以下の所望温度で炭素不純物を効率的に除去することができる。
本発明の第6の形態によれば、硝酸化合物溶液の加熱温度を250〜350℃の範囲に調製して炭素不純物を効率的に除去できる。ダイヤモンド粒子の表面に付着する炭素不純物を除去するには、硝酸化合物溶液の濃度と加熱温度及び加熱時間が重要である。中でも、後述するように加熱温度が上昇すれば除去率も高くなることが確かめられている。従って、本発明では硝酸化合物溶液の加熱温度を250〜350℃の範囲に限定し、この範囲内に硝酸化合物溶液の加熱温度を設定することにより、所望の純度のダイヤモンド粒子を製造することができる。
本発明の第7の形態によれば、炭素不純物を有するダイヤモンド粒子に本発明に係る高温硝酸イオン処理を行った結果、残留した炭素不純物成分のうちグラファイト成分をダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下にまで低減できる。炭素不純物が除去されたダイヤモンド粒子のラマンスペクトルを計測すると、ラマンスペクトル信号はダイヤモンド成分、一部残留するグラファイト成分、非晶質成分などから構成されていることが分かる。特に、グラファイト成分の散乱効率はダイヤモンド成分より遥かに高く、そのグラファイト成分の散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、グラファイト成分がダイヤモンド成分の3%以下に低減できれば、精製されたダイヤモンド粒子を回路基板や半導体などの電気絶縁材料その他材料として活用することができる。
本発明の第8の形態によれば、炭素不純物を有するダイヤモンド粒子に本発明に係る高温硝酸イオン処理を複数回繰り返すことによりダイヤモンド粒子から炭素不純物を効率よく除去できる。硝酸化合物溶液は加熱されて沸騰し、次第に分解して硝酸イオン濃度は低下する。従って、炭素不純物を除去されたダイヤモンド粒子を再び新しい硝酸化合物溶液に分散させて、繰り返し同様の処理を行えば、ダイヤモンド粒子表面に付着する炭素不純物をより一層効率的に除去することができる。
本発明の第9の形態によれば、炭素不純物成分のうちグラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、3%以下に低減されている高純度ダイヤモンド粒子である。本発明は、散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、グラファイト成分がダイヤモンド成分の3%以下になれば、更に好ましくは1.5%以下になれば、精製されたダイヤモンド粒子を回路基板や半導体などの電気絶縁材料その他材料として有効に活用できることを見出して為されたものである。製造されたダイヤモンド粒子のラマンスペクトルを計測すると、ラマンスペクトル信号はダイヤモンド成分、除去できなかったグラファイト成分、非晶質炭素成分などから構成されていることが分かる。グラファイト成分の散乱効率はダイヤモンド成分より遥かに高いから、その散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、グラファイト成分がダイヤモンド成分の3%以下になれば、ダイヤモンド粒子の高電気絶縁性と低誘電性を有効に活用することができる。
本発明の第10の形態によれば、ダイヤモンド粒子の直径が1〜100nmである高純度ダイヤモンド粒子を提供できる。ダイヤモンド粒子の直径が1〜100nm、更に好ましくは1〜10nmになれば、ダイヤモンド粒子薄膜の空隙率を増大化でき、ダイヤモンド粒子薄膜の誘電率を一層低下させることができる。また、ダイヤモンド粒子を微細化することによって、ダイヤモンド粒子に付着している不純物量を相対的に減少することができる。従って、本発明に係る高温硝酸イオン処理によりダイヤモンド粒子に付着している炭素不純物を除去すれば、より純度の高いダイヤモンド粒子を提供でき、この高純度のダイヤモンド粒子を用いて半導体や回路基板などの電気絶縁材料等に利用すれば、電子部品その他分野の品質改善に貢献できる効果がある。この結果、高電気絶縁性や低誘電性を有効に発揮することが可能となる。
以下に、本発明に係るダイヤモンド粒子の製造方法及び高純度ダイヤモンド粒子の実施形態を添付図面に従って詳細に説明する。
図1は本発明に係るダイヤモンド粒子の製造方法におけるダイヤモンド粒子の構造変化を説明する概略断面図である。ダイヤモンド粒子2はダイヤモンド粒子核4と炭素不純物層6から構成されている。この炭素不純物層6はグラファイト成分や非晶質炭素成分や直鎖炭素成分などの炭素物質から形成され、ダイヤモンド粒子核4を取り巻くように配置されている。
本発明に係るダイヤモンド粒子の製造方法は、ダイヤモンド粒子核4を取り巻くように存在する炭素不純物層6を除去することを目的としている。この炭素不純物層6を完全に除去することは困難であるが、極力この炭素不純物層6を除去して、半導体や回路基板などの電子部品に用いられる電気絶縁材料として高純度ダイヤモンド粒子5を提供する。
本発明者等は、この炭素不純物層6を構成する炭素不純物をラマン散乱を用いて検出した。測定されたラマンスペクトルは粒子と炭素不純物成分から構成され、炭素不純物成分はグラファイト成分や非晶質炭素成分や直鎖炭素成分からなっている。
特に、ダイヤモンドの電気絶縁性と誘電性に影響を与えるグラファイト成分が重要である。グラファイトのレーザービーム散乱効率はダイヤモンドの散乱効率よりもかなり高く、またレーザービーム散乱効率はレーザービームの波長によっても異なる。従って、グラファイトのレーザービーム散乱効率がダイヤモンドの散乱効率の何倍であるかが重要である。例えば、レーザービームの波長が514.5nmではグラファイトのレーザービーム散乱効率はダイヤモンドの約100倍であり、457.9nmでは約60倍である。
測定されたラマンスペクトルからダイヤモンド成分とグラファイト成分を導出し、それらの面積強度を求める。グラファイトの散乱効率がダイヤモンドの60倍とすれば、グラファイトの面積強度を60で割ればダイヤモンドの面積強度と直接比較できる。グラファイトの面積強度において、ダイヤモンドの面積強度に対する比率がダイヤモンド粒子に含まれるグラファイトの不純物率を示す。
本発明者等の研究によれば、ラマンスペクトルにおいて、グラファイトの面積強度をその散乱効率で割り引いて、ダイヤモンドの面積強度の3%以下にまで低減できれば、ダイヤモンド粒子を半導体や回路基板などの電気絶縁材料として利用できることが分かった。グラファイトの面積強度を低減すればダイヤモンドの純度は高くなるが、1.5%以下であればより好ましい。このようなダイヤモンド粒子を高純度ダイヤモンド粒子5と称す。
図2は本発明に係る高純度ダイヤモンド粒子5の製造方法に使用される加圧式精製装置8の概略構成図である。この加圧式精製装置8は、加圧式容器10と加圧制御装置18と硝酸化合物溶液24の加熱温度を制御する加熱制御装置30から構成されている。
加圧式容器10は仕切り板20により上下に区別されている。仕切り板20より下部には水が貯留され、加圧用ヒータ14により加熱することによって水12を蒸発させ、加圧式容器10の内部を加圧する。加圧式容器10内の気圧は、圧力センサー16により測定され、その圧力値を加圧制御装置18にフィードバックして制御される。
硝酸化合物溶液24は硝酸(HNO)などの硝酸化合物を溶解している溶液で、この硝酸化合物溶液24の中にダイヤモンド粒子2が分散されている。硝酸化合物溶液24としては、硝酸水溶液、硝酸アンモニウム水溶液、硝酸カルシウム水溶液などがあり、金属成分を含まない硝酸水溶液や硝酸アンモニウム水溶液が好適である。溶媒としては、硝酸化合物を溶解する硫酸以外の液体であればよいが、特に硝酸や硝酸塩は水によく溶解するので水が好ましい。本実施例では、水以外の溶媒としてリン酸水溶液、特に水分を除去したリン酸融液なども用いられる。リン酸融液を使用すると、その大気圧沸点が300℃を超えるため、加圧しなくても高温処理が可能になる利点がある。
前記ダイヤモンド粒子2を分散させている硝酸化合物溶液24を耐熱性容器26に入れ、仕切り板20の上部に配置された加熱用ヒータ22上に載置する。硝酸化合物溶液24の中には熱電対28が配置され、硝酸化合物溶液24の温度信号を加熱制御装置30にフィードバックし、硝酸化合物溶液24の加熱温度を所望の温度に制御する。本発明は硝酸化合物溶液24に含まれる硝酸イオンの炭素不純物除去作用に着目して為されたものである。次に、硝酸イオンの作用について説明する。
本発明者等は、硝酸イオンが高温状態又は高温沸騰状態において、ダイヤモンド粒子2から炭素不純物、特にグラファイト成分、非晶質炭素成分及び直鎖炭素成分からなる炭素不純物層6を除去することを発見した。本発明において、硝酸イオンは硝酸化合物溶液中で電離しており、この硝酸イオンを高温状態に保持するには加圧式容器10の内部を高圧状態に加圧する必要がある。加圧することにより、硝酸化合物溶液24の沸点が上昇し、圧力と沸点の間には一対一の対応関係が成立する。従って、より高温状態を作り出すには、圧力を一層高めて沸点を上昇させることが重要である。
本発明者等は、濃硫酸を用いてダイヤモンド粒子2に高温酸処理を行ったが、グラファイト成分や非晶質炭素成分や直鎖炭素成分などの炭素不純物を除去できなかった。即ち、濃硫酸による高温酸処理の前後に試料となるダイヤモンド粒子2のラマンスペクトルを測定したが、ラマンスペクトルに殆ど変化が見られなかった。この結果、濃硫酸による高温酸処理では、ダイヤモンド粒子2の不純物層6を除去することは困難であると結論した。このラマンスペクトルについては後で詳細に説明する。
次に、硝酸化合物溶液24の中でダイヤモンド粒子2を加熱処理すると、ラマンスペクトルに明確な変化が現れた。この硝酸化合物溶液24を耐熱性容器26に入れ、加熱温度を硝酸化合物溶液24の大気圧沸点以上に設定し、加圧して高温硝酸イオン処理を行った結果、30分以上、より好ましくは1時間以上の処理で、炭素不純物の中でもグラファイト成分を効率的に除去できることが示された。加熱時間は硝酸化合物溶液24の濃度と加熱温度に依存し、高濃度・高温度加熱では加熱時間を短縮できる。加熱時間が長くなるほど除去効率は増加するが、通常の条件では1時間の高温硝酸イオン処理で十分な除去効率が得られる。
硝酸化合物溶液24の加熱温度を300℃に設定し、硝酸化合物溶液24の濃度により炭素不純物の除去効率がどのように変化するか調べた。その結果、硝酸化合物溶液24の濃度を上昇させても除去効率は目立って変化しなかった。
そこで、硝酸化合物溶液24の濃度を一定にして加熱温度を300℃と330℃に設定し、炭素不純物の除去効率がどのように変化するかを調べた。その結果、硝酸化合物溶液24の加熱温度を上昇すれば不純物の除去効率が増加することが確認された。
高温状態又は高温沸騰状態にある硝酸化合物溶液24中の硝酸イオンがダイヤモンド粒子の表面にどのように作用して炭素不純物を除去するのか、そのメカニズムの詳細は現在のところ不明である。しかし、処理前と処理後のラマンスペクトルを比較すると、ダイヤモンンド成分のラマンスペクトルに対しグラファイト成分や非晶質炭素成分や直鎖炭素成分のラマンスペクトルが急激に減少していることが明らかである。
次に、図2に示される加圧式精製装置8の作動について図に従って説明する。硝酸化合物溶液24は加熱用ヒータ22により加熱され、その中に配置された熱電対28の温度信号を加熱制御装置30にフィードバックして、硝酸化合物溶液24の加熱温度を所望の温度に保持する。硝酸化合物溶液24は水溶液なら1気圧(1×10Pa)下では100℃で沸騰し、加圧すると更に沸騰温度を上昇できるから、加圧制御装置18により加圧して所定温度を維持する。加熱により硝酸化合物溶液24は対流しながら撹拌され、それとともに硝酸イオンも沸騰する。この沸騰した硝酸イオンの強力な酸化作用によりダイヤモンド粒子2の表面に付着する炭素不純物層6を除去してゆく。
硝酸化合物溶液24の温度は熱電対28により常に測定され、この温度信号は加熱制御装置30にフィードバックされる。加圧式容器10内の気圧は加圧制御装置18により設定された気圧に保持されるので、加熱温度を測定しながら加熱制御装置30により硝酸化合物溶液24の加熱温度を所定の温度に保持できる。
図3は本発明に係るダイヤモンド粒子製造方法の第1の方法を説明する工程図である。(3A)では硝酸化合物溶液24(Nitric Acid Compound+HO)にダイヤモンド粒子が投入される。この硝酸化合物溶液24は250〜350℃の範囲内の温度に設定され、0.5〜5時間に亘って加熱される。この加熱処理によりダイヤモンド粒子2から炭素不純物層6が除去され、高純度ダイヤモンド粒子5が形成される。
(3B)では、加熱制御装置30をオフにして硝酸化合物溶液24が冷却(Cooling)される。硝酸化合物溶液24の温度が低下すると、分散していた高純度ダイヤモンド粒子5が容器26の底部に沈殿(Precipitation)する。
(3C)では、硝酸化合物溶液24を純水と置き換えて、沈殿している高純度ダイヤモンド粒子5を水で洗浄(Water Washing)する。この操作を複数回繰り返して高純度ダイヤモンド粒子5に付着している硝酸化合物溶液24を完全に洗い流す。これを遠心分離(Centrifugal Separation)することによって高純度ダイヤモンド粒子5を分離する。
(3D)では、分離された高純度ダイヤモンド粒子5を適温に加熱して水分を蒸発(Water Evaporation)させ、高純度ダイヤモンド粒子5を乾燥(Drying)させる。このようにして高純度ダイヤモンド粒子5が製造される。
図4は本発明に係るダイヤモンド粒子製造方法の第2の方法を説明する工程図である。ダイヤモンド粒子の粒径(直径)が小さくなればなるほど、多数のダイヤモンド粒子2が凝集し相互に付着して団子状態になることが多い。特に、ダイヤモンド粒子の粒径がナノメートルサイズになると団子状態がよく発生する。この団子状態の粒子を2次ダイヤモンド粒子と称しており、当然2次ダイヤモンド粒子の粒径はダイヤモンド粒子2よりかなり大きくなる。
2次ダイヤモンド粒子を高温硝酸イオン処理するとその外周面は処理されるが、ダイヤモンド粒子相互が接合している接合面は内側に隠れているため処理できない。従って、ダイヤモンド粒子から炭素不純物を確実に除去するためには、高温硝酸イオン処理を行う前に2次ダイヤモンド粒子を、個々のダイヤモンド粒子に分解するため分解処理を行う。
(4A)では、純水の中に2次ダイヤモンド粒子を投入し分散させる。この分散水溶液に超音波振動を加えて2次ダイヤモンド粒子を個々のダイヤモンド粒子に分解する。この処理を超音波分散(Ultrasonic Dispersion)と呼ぶ。
(4B)〜(4E)の処理は前述した(3A)〜(3D)の処理と同一である。(4B)は硝酸化合物溶液加熱処理、(4C)は冷却沈殿処理、(4D)は水洗・遠心分離処理、(4E)は水分乾燥処理である。各処理における作用効果は(3A)〜(3D)と同一であるから、その詳細を省略する。
図5は濃度5%(質量%)の硝酸アンモニウム水溶液を用いて、加熱温度280℃で1時間高温硝酸イオン処理して得られた高純度ダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。5質量%とは、硝酸アンモニウム水溶液全体の質量に対する硝酸アンモニウムの質量の比率をパーセント化した値である。このラマンスペクトルは、457.9nmのレーザー光を高純度ダイヤモンド粒子に照射して得られた非弾性散乱スペクトルで、横軸はラマンシフト(Raman Shift)、縦軸はラマン散乱光の強度(Intensity)である。
全強度(Total Signal)を炭素物質の種類に分解すると、実線のダイヤモンド強度(Diamond)、長破線のグラファイト強度(Graphite)、C=Cに基づく短破線の直鎖炭素強度(Normal Chain)から構成される。他方、後述する図6及び
図7の一点鎖線は非晶質炭素強度(Amorphous Carbon)を表す。
ダイヤモンド強度はダイヤモンド粒子核4に起因し、このダイヤモンドの電気的性質を阻害する成分はグラファイトである。457.9nmのレーザー光を用いると、グラファイトの散乱効率はダイヤモンドの散乱効率の約60倍である。従って、グラファイト強度を60で割ることによってダイヤモンド強度と比較できる。スペクトルの強度を正確に表すために、スペクトルの面積を計算して得られる面積強度が使用される。
図6は未処理のダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。高温硝酸イオン処理を行っていないため、ダイヤモンド粒子核4の周囲には大量の炭素不純物層6が存在する。ダイヤモンドスペクトルと比較して、かなり大きなグラファイト不純物が存在することが分かるであろう。
高温硝酸イオン処理前のラマンスペクトル(図6)と高温硝酸イオン処理後のラマンスペクトル(図5)を比較すると、本発明による製造方法(高温硝酸イオン処理)により炭素不純物層6がかなりの程度まで除去されることが明らかである。
図7は濃硫酸だけで高温酸処理されたダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。本発明に係るダイヤモンド粒子の炭素不純物において、濃硫酸がどれほど除去効果を有しているか比較するために測定された。加熱温度は280℃、高温酸処理時間は1時間である。
濃硫酸処理(図7)と未処理(図6)を対比すると、ラマンスペクトルの全体像が殆ど変わらないことが分かる。即ち、濃硫酸による高温酸処理ではダイヤモンド粒子の炭素不純物層6を殆ど除去できないことが分かる。
図5〜図7から総合的に判断して、硝酸化合物溶液中の硝酸イオンがダイヤモンド粒子の炭素不純物を除去することは明白である。この硝酸化合物溶液中の硝酸イオンが有する作用効果については従来技術には全く開示されておらず、本発明者等が始めて発見したものである。硝酸化合物溶液中の硝酸イオンがダイヤモンド粒子の炭素不純物にどのように作用し除去するかは、現在のところ十分解明されていない。この発見により本発明者等は、硝酸化合物溶液によりダイヤモンド粒子の炭素不純物を除去する方法を完成させたものである。
硝酸化合物溶液として濃度5質量%の硝酸水溶液を用いて、ダイヤモンド粉末1.0gにこの硝酸水溶液150mlを加えて、280〜330℃の温度範囲でそれぞれ1時間加圧加熱処理を行った。濃度5質量%の硝酸水溶液は濃硝酸(60%含有)7.5mlに純水142.5mlを加えて調製した。
硝酸化合物溶液として濃度5質量%の硝酸アンモニウム水溶液を用いて、ダイヤモンド粉末1.0gにこの硝酸アンモニウム水溶液150mlを加えて、280〜330℃の温度範囲でそれぞれ1時間加圧加熱処理を行った。濃度5%の硝酸アンモニウム水溶液は硝酸アンモニウム7.5gに純水142.5gを加えて調製した。
比較例として、硫酸と硝酸の混酸を用いて高温酸処理を行った。ダイヤモンド粉末0.6gに硫酸に対して硝酸を5%の割合で溶解した混酸を加え、加熱温度280℃及び310℃でそれぞれ1時間加熱処理を行った。加熱温度330℃で、3時間の加熱処理を行った。
図8は実施例1、実施例2及び実施例3の一覧図(表1)である。表1から加熱温度280℃においては、実施例1のグラファイト含有率がもっとも低く、加熱温度が上昇するにつれてグラファイト含有率が減少していることが分かる。また、加熱温度が上昇するほど各実施例のグラファイト含有率が接近している。以上の事実から、硝酸アンモニウム水溶液や硝酸水溶液を用いた本発明処理法が従来の混酸処理と同等以上の効果を発揮することが明らかになった。
硝酸化合物溶液として硝酸アンモニウム水溶液を用いて、加熱温度を300℃に固定して、硝酸アンモニウム水溶液の濃度を1〜5(質量%)と変化させ、ダイヤモンド粒子のグラファイト含有率(%)を調べた。ダイヤモンド粒子の粉末1.0gに対して濃度1〜5%の硝酸アンモニウム水溶液150gを加え、加圧装置により加熱温度300℃で1時間加熱して、高温硝酸イオン処理を行った。
図9は加熱温度300℃、濃度1〜5(質量%)の硝酸アンモニウム水溶液(NHNO+HO)におけるグラファイト含有率の一覧図(表2)である。表2から、グラファイト含有率は硝酸アンモニウム水溶液の濃度を上昇させてもそれ程変化しないことが分かった。
そこで、硝酸アンモニウム水溶液の濃度を一定にして、加熱温度の変化に対して、加圧値(Pressure)、pH(Acid)、グラファイト含有率(Graphite)がどのように変化するのか調べた。ダイヤモンド粒子の粉末1.0gに対して5質量%の硝酸アンモニウム水溶液150gを加え、加圧装置により加熱温度330℃で1時間加熱して、高温硝酸イオン処理を行った。
図10は、濃度5質量%の硝酸アンモニウム水溶液を300℃と330℃に加熱して、それぞれの加圧値(MPa)、pH、グラファイト含有率(%)の一覧図(表3)である。表3から、グラファイト含有率は加熱温度の上昇によりかなり低下したことが分かる。
非硫酸溶媒としてリン酸融液を用いて高温硝酸イオン処理を行った。リン酸(85%含有)水溶液の沸点が330℃になるまで蒸留して、リン酸水溶液を脱水したリン酸融液を調製した。このリン酸融液に対し、リン酸と硝酸の割合が10:1になるよう硝酸(60%含有)水溶液を添加し、280℃になるまで加熱した。この結果、ダイヤモンド粒子のグラファイト含有量は1.66%まで減少していることが判明した。この実施例では、リン酸融液は大気圧下で熱浴となり、何ら加圧すること無く、硝酸化合物溶液を330℃まで加熱することができる。リン酸の脱水を更に完全に行えば、350℃程度まで沸点を上昇させることも可能である。
実施例1〜6から、250〜350℃の範囲に加熱された硝酸化合物溶液はダイヤモンド粒子に付着する炭素不純物、特にダイヤモンドの電気的性質を阻害するグラファイト等の含有率を3%以下に低減することが実証された。従って、本発明により製造された高純度ダイヤモンド粒子は、半導体や回路基板などの電気絶縁材料、その他材料等に活用することが可能となった。
本発明に係る高温硝酸イオン処理により製造された高純度ダイヤモンド粒子は、ダイヤモンド粒子表面に付着する不純物、特にダイヤモンドの電気的性質を阻害するグラファイト等の炭素不純物の含有量が極めて少ないので、電子部品関係のみならず、材料工学分野、光学関連分野等の幅広い分野で活用できる。
本発明に係るダイヤモンド粒子の製造方法におけるダイヤモンド粒子の構造変化を説明する概略断面図である。 本発明に係る高純度ダイヤモンド粒子5の製造方法に使用される加圧式精製装置8の概略構成図である。 本発明に係るダイヤモンド粒子製造方法の第1の方法を説明する工程図である。 本発明に係るダイヤモンド粒子製造方法の第2の方法を説明する工程図である。 濃度5質量%の硝酸アンモニウム水溶液を用いて、加熱温度280℃で1時間高温硝酸イオン処理して得られた高純度ダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。 未処理のダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。 濃硫酸だけで高温酸処理されたダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。 実施例1、実施例2及び実施例3の一覧図(表1)である。 加熱温度300℃、濃度1〜5(質量%)の硝酸アンモニウム水溶液(NHNO+HO)におけるグラファイト含有率の一覧図(表2)である。 濃度5質量%の硝酸アンモニウム水溶液を300℃と330℃に加熱して、それぞれの加圧値(MPa)、pH、グラファイト含有率(%)の一覧図(表3)である。 爆発衝撃法により製造されたダイヤモンド粒子の概略断面図である。 従来の混酸処理法に使用されている精製装置100の概略構成図である。 特許第2691884号公報として公表されたダイヤモンド粒子を精製する従来の混酸処理法の工程図である。
符号の説明
2 ダイヤモンド粒子
4 ダイヤモンド粒子核
5 高純度ダイヤモンド粒子
6 炭素不純物層
8 加圧式精製装置
10 加圧式容器
12 水
14 加圧用ヒータ
16 圧力センサー
18 加圧制御装置
20 仕切り板
22 加熱用ヒータ
24 硝酸化合物溶液
26 耐熱性容器
28 熱電対
30 加熱制御装置
100 精製装置
102 立脚台
104 耐熱ガラス製容器
105 混酸
106 冷却部
107 ガスバーナー
108 冷却水
110 端部

Claims (8)

  1. 少なくとも硝酸塩を水又は水溶液である非硫酸溶媒に溶解させた硝酸塩溶液を調製し、ダイヤモンド粒子核の表面に炭素不純物を有したダイヤモンド粒子を用意し、このダイヤモンド粒子の粉末を前記硝酸塩溶液に分散させて処理溶液を調製し、この処理溶液を加熱して前記ダイヤモンド粒子から炭素不純物を除去することを特徴とする高純度ダイヤモンド粒子の製造方法。
  2. 少なくとも硝酸化合物をリン酸融液である非硫酸溶媒に溶解させた硝酸化合物溶液を調製し、ダイヤモンド粒子核の表面に炭素不純物を有したダイヤモンド粒子を用意し、このダイヤモンド粒子の粉末を前記硝酸化合物溶液に分散させて処理溶液を調製し、この処理溶液を加熱して前記ダイヤモンド粒子から炭素不純物を除去することを特徴とする高純度ダイヤモンド粒子の製造方法。
  3. 前記硝酸化合物が硝酸又は硝酸塩である請求項2に記載の高純度ダイヤモンド粒子の製造方法。
  4. 前記ダイヤモンド粒子が相互に結合して団子化した2次ダイヤモンド粒子からなる粉末を適当な溶媒に分散させ、この溶媒を超音波処理して2次ダイヤモンド粒子を個々のダイヤモンド粒子に分解し、このダイヤモンド粒子を前記硝酸化合物溶液に分散させる請求項1〜3のいずれかに記載の高純度ダイヤモンド粒子の製造方法。
  5. 前記処理溶液を加圧装置内に配置し、この処理溶液の沸点を加圧下で上昇させ、その沸点以下の温度で処理溶液を加熱する請求項1〜4のいずれかに記載の高純度ダイヤモンド粒子の製造方法。
  6. 前記処理溶液の加熱温度が250〜350(℃)の範囲内である請求項1〜5のいずれかに記載の高純度ダイヤモンド粒子の製造方法。
  7. 前記炭素不純物の除去処理を行った結果、残留した炭素不純物成分のうちグラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下にまで低減される請求項1〜6のいずれかに記載の高純度ダイヤモンド粒子の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のダイヤモンド粒子の製造方法を、ダイヤモンド粒子に対し複数回繰り返すことによってダイヤモンド粒子から高効率に炭素不純物を除去することを特徴とする高純度ダイヤモンド粒子の製造方法。
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