JP2004238256A - ダイヤモンド粒子の精製方法及び高純度ダイヤモンド粒子 - Google Patents
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Abstract
【課題】不純物を有したダイヤモンド粒子からグラファイト成分等の炭素不純物を選択的に除去して高純度ダイヤモンド粒子を提供する精製方法を開発する。
【解決手段】本発明に係るダイヤモンド粒子の精製方法は、0.5容積%以上の濃硝酸を濃硫酸に添加した混酸を調製し、ダイヤモンド粒子核4の表面に炭素不純物層(炭素不純物)6を有したダイヤモンド粒子2を用意し、このダイヤモンド粒子2の粉末を前記混酸に分散させて混酸溶液を調製し、この混酸溶液を濃硝酸の沸点以上で濃硫酸の沸点以下に調整された温度で加熱して、熱浴としての濃硫酸の中で沸騰する濃硝酸の作用で前記ダイヤモンド粒子2から炭素不純物層(炭素不純物)6を除去することを特徴としている。熱浴である濃硫酸の中で濃硝酸を沸騰させ、この沸騰濃硝酸の炭素不純物に対する攻撃力を利用して高純度ダイヤモンド粒子5を製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明に係るダイヤモンド粒子の精製方法は、0.5容積%以上の濃硝酸を濃硫酸に添加した混酸を調製し、ダイヤモンド粒子核4の表面に炭素不純物層(炭素不純物)6を有したダイヤモンド粒子2を用意し、このダイヤモンド粒子2の粉末を前記混酸に分散させて混酸溶液を調製し、この混酸溶液を濃硝酸の沸点以上で濃硫酸の沸点以下に調整された温度で加熱して、熱浴としての濃硫酸の中で沸騰する濃硝酸の作用で前記ダイヤモンド粒子2から炭素不純物層(炭素不純物)6を除去することを特徴としている。熱浴である濃硫酸の中で濃硝酸を沸騰させ、この沸騰濃硝酸の炭素不純物に対する攻撃力を利用して高純度ダイヤモンド粒子5を製造する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は潤滑剤、研磨剤、回路基板の絶縁材料などに使用されるダイヤモンド粒子に関し、更に詳細には、ダイヤモンド粒子の表面に存在する炭素不純物を除去してダイヤモンドの純度を向上させるダイヤモンド粒子の精製方法及び高純度ダイヤモンド粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンドの表面は極めて平滑性が高いため、微細なダイヤモンド粒子からなる薄膜を物体表面に形成して、物体表面の潤滑性を向上させることが実用化されている。また、ダイヤモンドの硬度は既存物質の中で最高値を有しているため、ダイヤモンド粒子を研磨剤として利用し、物体表面を平滑に研磨する工程に実用化されている。
【0003】
ダイヤモンド粒子は機械的性質が優れているだけでなく、電気的性質や熱的性質、光学的性質においても優れた材料である。特に、近年では、ダイヤモンド粒子の高電気絶縁性と低誘電率性に着目して、ダイヤモンド粒子を半導体や回路基板の絶縁材料に利用する研究が始まっている。
【0004】
本発明者等の一部は、既に特開2002−110870及び特開2002−289604により、ダイヤモンド粒子から構成された低誘電率ダイヤモンド薄膜を回路基板上に実現している。このダイヤモンド薄膜の特徴は、ダイヤモンド粒子間に微細空隙を形成し、ダイヤモンド粒子自体の低誘電率性に加えてこの空隙の形成によりダイヤモンド薄膜の更なる低誘電率化に成功したことである。
【0005】
即ち、このダイヤモンド薄膜の低誘電率性は、空隙率の向上による低誘電率性とダイヤモンド粒子自体の低誘電率性の二因子に強く依存している。特に、後者のダイヤモンド粒子自体の低誘電率性は、ダイヤモンドの純度を高度化することによって達成されるから、ダイヤモンド粒子の製法に強く依存すると考えられる。換言すれば、不純物の少ないダイヤモンド粒子の製法を確立することが極めて重要になる。
【0006】
ダイヤモンド粒子の製造方法には、各種の方法が知られている。第1の方法は高温高圧合成法である。この方法によって製造されたダイヤモンド粒子は、潤滑剤、表面改質剤、研磨剤などの用途に使用されている。しかし、ダイヤモンド粒子に破砕装置によるCr等の不純物金属が混入したり、未反応の原料グラファイトが濃縮付着する傾向がある。従って、製造された段階のダイヤモンド粒子では半導体や回路基板に使用するには不適当である。
【0007】
第2の方法は火薬等の衝撃圧力を用いたダイヤモンド粒子合成法である。この方法はロシアや米国において工業化されている。この方法は、高温高圧条件を瞬時に形成し、一気にダイヤモンド粒子を量産する方法である。しかし、ダイヤモンド粒子表面にグラファイトや非晶質炭素や直鎖炭素などの炭素不純物が付着する傾向がある。後述するように、本発明者等のラマンスペクトルによる研究から炭素不純物が主要な不純物として確認されている。つまり、第1方法や第2方法の何れによっても純粋なダイヤモンド粒子を合成することは困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図11は爆発衝撃法によりダイヤモンド粒子を製造する方法の概略装置図である。ステンレス製の耐爆容器40の中に原料となる炭素物質、触媒としてFe・Cr又はNi、爆発促進用のHeなどを封入し、火薬の爆発により、炭素物質から一気にダイヤモンド粒子が合成される。
【0009】
図12は爆発衝撃法により製造されたダイヤモンド粒子の概略断面図である。このダイヤモンド粒子2はダイヤモンド粒子核4の外周面に炭素不純物層6が取り巻いて構成されている。このダイヤモンド粒子2の構造は透過型電子顕微鏡の観察によって確認されている。
【0010】
ダイヤモンド粒子核4は純粋のダイヤモンドから構成されている。他方、炭素不純物層6にはグラファイト(graphite)、非晶質炭素(Amorphous Carbon)、C=C等の直鎖炭素(Normal Chain)が含有されていることが構造分析によって明らかにされている。その他に、触媒に起因するFe、Cr、Ni等の金属成分が不純物として混入する場合もある。
【0011】
前述したように、ダイヤモンド粒子を半導体や回路基板の絶縁材料として使用する場合には、ダイヤモンド粒子が高電気絶縁性と低誘電率を有することが重要になる。従って、炭素不純物層6が存在すると、高電気絶縁性と低誘電率性が阻害されることになる。炭素不純物の中でもグラファイト成分がダイヤモンドの特性を阻害する最大要因である。表1によりバルクのダイヤモンドとグラファイトの性質を比較する。
【0012】
【0013】
ダイヤモンドは電気絶縁体であり、グラファイトは電気良導体であるから、電気比抵抗と比誘電率において、両者は全く正反対の性質を有する。グラファイトは電気良導体であるから、誘電分極は生じず、比誘電率を定義することはできない。また、電気比抵抗において両者に約1016の開きがある。
【0014】
従って、ダイヤモンドの性質を積極的に利用する技術においては、その性質を阻害する炭素不純物、特にグラファイト成分が存在することは、極めて重要な欠陥になる。そこで、ダイヤモンド粒子2を利用する技術においては、炭素不純物層6を除去することが課題となる。
【0015】
表面技術(Vol.12, No.3(1996)pp8−24)に「超微粒ダイヤモンドの精製とその評価」が掲載されている。この研究論文は、ダイヤモンド粒子から不純物を除去することを目的としている。しかし、この論文が対象とする不純物は、Fe、Cu、Cr、Ti、Al、Si、Mg、Ca、Zr、Ni等の重金属、SiO2、不飽和炭化水素、Al2O3である。
【0016】
この従来技術は主として重金属類や金属酸化物の除去を対象としたものであり、炭素不純物の中でも不飽和炭化水素を例示しているに過ぎない。この従来技術では、本発明者等が問題視しているグラファイトや非晶質炭素という炭素不純物の除去は全く目的とされていない。この理由は、この従来技術がダイヤモンド粒子の機械的性質に着目して、ダイヤモンド粒子を潤滑剤、研磨剤及び表面改質剤として利用しようとするからである。
【0017】
本発明者等は、ダイヤモンド粒子の電気的性質に着目して、ダイヤモンド粒子を半導体・回路基板製造用の電気絶縁材料に主として使用することを目的としている。従って、炭素不純物の中でも、グラファイト成分や非晶質炭素成分、特にグラファイト成分をダイヤモンド粒子から除去することが重要になる。この点が、本発明が前記従来技術と根本的に相違することである。
【0018】
また、重金属類や金属酸化物という前記不純物は、誘導結合プラズマ発光分光、赤外吸収分光、偏向光学顕微鏡、無機定性分析及び粉末X線散乱によってダイヤモンド粒子から検出されたものである。これらの検出方法は重金属類や金属酸化物の検出には効率的であるが、本発明が対象とするグラファイトや非晶質炭素の検出には有効ではない。従って、不純物としてグラファイトや非晶質炭素が検出されていないのである。
【0019】
図13は表面技術に記載されたダイヤモンド粒子を精製する従来の高温酸処理法の工程図である。(13A)において、ダイヤモンド粒子は濃硫酸に分散され、320℃の温度で1〜5時間加熱処理される。濃硫酸の強力な酸化力によって、ダイヤモンド粒子の表面から不純物が除去される。つまり、濃硫酸の酸化力によって前述した重金属や金属酸化物といった不純物が除去される。
【0020】
この濃硫酸に若干量の硝酸又は硝酸カリウムと微量の水が添加されても良い。硝酸には重金属の溶解を促進する作用が期待されている。カリウムは微量に存在するグラファイトの層間に侵入し、グラファイトを破壊して除去する作用がある。また、微量の水は還流容器内で物質循環を促進する作用がある。従って、この従来技術では、硝酸は触媒などから混入する金属を溶解する役割を担っており、グラファイト破壊作用はカリウムに専属的に委ねている。
【0021】
(13B)では、ダイヤモンド粒子が希塩酸に分散され、150℃の温度で5〜10時間加熱処理される。希塩酸の処理によって、硫酸処理により除去されなかった重金属類を除去する。
【0022】
(13C)では、ダイヤモンド粒子がフッ酸により1〜24時間加熱処理される。フッ酸はガラスを溶解する性質を有し、この処理により残留するSiO2が除去される。
【0023】
(13D)では、ダイヤモンド粒子がフッ酸溶液から取り出され、真空装置内に配置される。真空装置内で、ダイヤモンド粒子は減圧状態で真空乾燥される。この最終工程により、乾燥状態の高純度ダイヤモンド粒子が提供される。このようにして、ダイヤモンド粒子の機械的性質を阻害する不純物、即ち重金属類や金属酸化物が除去され、機械的性質において高純度なダイヤモンド粒子が製造されるのである。
【0024】
このような従来の精製方法により得られた高純度ダイヤモンド粒子は、潤滑剤、研磨剤及び表面改質剤として利用することは有効である。しかしながら、回路基板や半導体等の電気絶縁材料として利用することは困難である。電気絶縁材料として利用する為には、ダイヤモンド粒子の電気的性質を阻害する不純物、即ちグラファイト成分や非晶質炭素成分を選択的に除去する精製方法が確立されなければならない。
【0025】
従って、本発明は、精製対象となるダイヤモンド粒子からグラファイト成分、非晶質炭素成分及び直鎖炭素成分などの炭素不純物を選択的に除去できるダイヤモンド粒子の精製方法を提供し、その結果得られる高純度ダイヤモンド粒子を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために為されたものであり、その第1の発明は、
0.5容積%以上の濃硝酸を濃硫酸に添加した混酸を調製し、ダイヤモンド粒子核の表面に炭素不純物を有したダイヤモンド粒子を用意し、このダイヤモンド粒子の粉末を前記混酸に分散させて混酸溶液を調製し、この混酸溶液を濃硝酸の沸点以上で濃硫酸の沸点以下に調整された温度で加熱して、熱浴としての濃硫酸の中で沸騰する濃硝酸の作用で前記ダイヤモンド粒子から炭素不純物を除去するダイヤモンド粒子の精製方法である。本発明者等は、炭素不純物を除去する作用は濃硫酸には無く、濃硝酸にあることを発見して本発明を完成したものである。濃硫酸の沸点は約330℃であり、濃硝酸の沸点は約120℃である。仮に濃硫酸を280℃に設定すると、この濃硫酸の熱浴の中で濃硝酸は280℃で沸騰状態にあり、この沸騰状態の濃硝酸がダイヤモンド粒子から選択的に炭素不純物を除去する極めて新規な性質を有するのである。この新規な現象を積極的に利用してダイヤモンド粒子からグラファイトや非晶質炭素や直鎖炭素といった炭素不純物を選択的に除去する精製浄化方法を提供する。加熱時間は濃硝酸の濃度や加熱温度に依存し、必要な時間加熱処理することによって、有効に炭素不純物を除去することができる。
【0027】
第2の発明は、ダイヤモンド粒子が相互に結合して団子化した2次ダイヤモンド粒子からなる粉末を適当な溶媒に分散させ、この溶媒を超音波処理して2次ダイヤモンド粒子を個々のダイヤモンド粒子に分解し、このダイヤモンド粒子を混酸に分散させて処理するダイヤモンド粒子の精製方法である。ダイヤモンド粒子の直径(粒径)が小さくなり、ナノメートルサイズのダイヤモンド粒子になると、個々のダイヤモンド粒子は単体で存在するよりも相互に結合して団子状態の2次ダイヤモンド粒子になることが知られている。超音波処理によって団子状態の2次ダイヤモンド粒子を個々のダイヤモンド粒子に分離分散させ、得られたダイヤモンド粒子に対し前述の精製処理を施すことによって、ダイヤモンド粒子の表面に付着した炭素不純物を効果的に除去することが可能になる。
【0028】
第3の発明は、炭素不純物の除去処理を行った結果、残留した炭素不純物成分のうちグラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下にまで低減されるダイヤモンド粒子の精製方法である。炭素不純物が除去されたダイヤモンド粒子を試料としてラマンスペクトルを計測したとき、ラマンスペクトル信号はダイヤモンド成分、一部残留するグラファイト成分・非晶質炭素成分などから構成される。特にグラファイト成分の散乱効率はダイヤモンド成分より遥かに高く、その散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、グラファイト成分がダイヤモンド成分の3%以下になれば、精製されたダイヤモンド粒子を回路基板や半導体などの電気絶縁材料として活用することが可能になる。
【0029】
第4の発明は、混酸における濃硝酸の添加量が40容積%以下であるダイヤモンド粒子の精製方法である。必要な温度に加熱された濃硫酸熱浴の中で濃硝酸を沸騰させる必要がある。しかし、濃硝酸の濃度を高めると沸騰温度が低下する傾向にあり、そのため濃硝酸の濃度には上限がある。この濃硝酸の上限濃度として40容積%を提示したものである。40容積%以下の濃硝酸濃度であれば、濃硝酸の沸騰を所望の温度で継続させることが可能になり、濃硝酸沸騰により効率的に炭素不純物を除去することができる。
【0030】
第5の発明は、加熱時間が30分以上であるダイヤモンド粒子の精製方法である。熱浴である濃硫酸の中で、濃硝酸は沸騰し、最終的にH2OとNOXに分解されてゆく。この分解時間は濃硝酸の濃度と加熱温度に依存するが、通常条件では加熱時間を30分以上に設定することにより、濃硝酸により有効に炭素不純物を除去することが可能になる。処理時間を延長するほど洗浄効率は漸増するが、5時間も処理すれば十分な洗浄効果が得られる。
【0031】
第6の発明は、前述したダイヤモンド粒子の精製方法をダイヤモンド粒子に対し複数回繰り返すことによってダイヤモンド粒子から高効率に炭素不純物を除去するダイヤモンド粒子の精製方法である。濃硝酸の沸騰により、濃硝酸は次第に分解して濃硝酸濃度は次第に低下する。従って、精製されたダイヤモンド粒子を再び新しい混酸に分散させて繰り返し同様の処理を行い、この反復処理により炭素不純物を高効率に除去することができる。
【0032】
第7の発明は、ダイヤモンド粒子核の表面に炭素不純物を有したダイヤモンド粒子において、炭素不純物成分のうちグラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下に低減されている高純度ダイヤモンド粒子である。本発明は、散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、グラファイト成分がダイヤモンド成分の3%以下になれば、更に好ましくは1.5%以下になれば、精製されたダイヤモンド粒子を回路基板や半導体などの電気絶縁材料として有効に活用できることを見出して為されたものである。精製されたダイヤモンド粒子を試料としてラマンスペクトルを計測したとき、ラマンスペクトル信号はダイヤモンド成分、除去できなかったグラファイト成分・非晶質炭素成分などから構成される。グラファイト成分の散乱効率はダイヤモンド成分より遥かに高いから、その散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、グラファイト成分がダイヤモンド成分の3%以下になれば、ダイヤモンド粒子の電気的性質を有効に活用することが可能となる。
【0033】
第8の発明は、ダイヤモンド粒子の直径が1〜100nmである高純度ダイヤモンド粒子である。ダイヤモンド粒子の直径が1〜100nm、更に好ましくは1〜10nmになれば、ダイヤモンド粒子薄膜を形成したときに空隙率を増大化でき、その結果ダイヤモンド粒子薄膜の誘電率を効率的に低下させることができる。従って、直径が1〜100nmの範囲の高純度ダイヤモンド粒子を提供するものである。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るダイヤモンド粒子の精製方法及び高純度ダイヤモンド粒子の実施形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0035】
図1は本発明に係るダイヤモンド粒子の精製方法によるダイヤモンド粒子の構造変化を説明する概略断面図である。ダイヤモンド粒子2は、ダイヤモンド粒子核4の表面に炭素不純物層6を有して構成されている。この炭素不純物層6はグラファイト成分や非晶質炭素成分や直鎖炭素成分などの炭素物質から形成されている。
【0036】
本発明に係るダイヤモンド粒子2の精製方法は、前記炭素不純物層6をできるだけ除去して高純度ダイヤモンド粒子5を製造することを目的としている。炭素不純物層6を完全に除去できれば、ダイヤモンド粒子核4だけからなる最高品質のダイヤモンド粒子が提供できる。しかしながら、炭素不純物層6を完全に除去することは困難であり、本発明では炭素不純物層6を極力除去して、半導体や回路基板などの電気絶縁材料として利用できる高純度ダイヤモンド粒子5を提供する。
【0037】
本発明者等は、炭素不純物層6を構成する炭素不純物を効率的に検出するのに有効なラマン散乱を用いた。測定されたラマンスペクトルは、ダイヤモンド粒子核4によるダイヤモンド成分と、炭素不純物層6による炭素不純物成分から構成される。炭素不純物成分はグラファイト成分、非晶質炭素成分及び直鎖炭素成分からなる。
【0038】
特に、ダイヤモンドの電気比抵抗と比誘電率に影響を与えるグラファイト成分が重要になる。グラファイトのレーザービーム散乱効率はダイヤモンドよりもかなり高く、またその散乱効率はレーザービームの波長にも依存する。つまり、グラファイトのレーザービーム散乱効率がダイヤモンドのそれの何倍であるかが重要な因子になる。例えば、514.5nmでは約100倍また457.9nmでは約60倍である。
【0039】
測定されたラマンスペクトルからダイヤモンド成分を導出し、その面積強度を求める。同時に、グラファイト成分の面積強度を求める。グラファイトの散乱効率がダイヤモンドの60倍であるとすると、グラファイトの面積強度を60で割れば、ダイヤモンドの面積強度と直接比較することが可能になる。
【0040】
本発明では、グラファイトの面積強度を散乱効率の前記倍率で割ることを、散乱効率を考慮すると表現している。散乱効率を考慮することによって、ダイヤモンドの面積強度とグラファイトの面積強度を直接対比できる。グラファイトの面積強度のダイヤモンドのそれに対する比率が、ダイヤモンド粒子に含まれるグラファイトの不純物率を与える。
【0041】
本発明者等の研究によれば、散乱効率を考慮したラマンスペクトルにおいて、グラファイトの面積強度をダイヤモンドの面積強度の3%以下にまで低減できれば、ダイヤモンド粒子を半導体や回路基板などの電気絶縁材料として使用できることが分かった。グラファイトの面積強度を低減するほどダイヤモンドの純度は高くなるが、1.5%以下であれば更に望ましい。この段階でダイヤモンド粒子2の精製が完了したと判断し、このようなダイヤモンド粒子2を高純度ダイヤモンド粒子5と呼ぶ。
【0042】
図2は本発明に係るダイヤモンド粒子2の精製方法に使用される精製装置8の概略構成図である。この精製装置8は、加熱用のマントルヒータ10と、混酸溶液13を投入した容器12と、加熱温度を制御する加熱制御装置30から構成されている。
【0043】
混酸14は濃硫酸(H2SO4)と濃硝酸(HNO3)を適当比で混合した液体で、この混酸14の中に炭素不純物層6を有したダイヤモンド粒子2が分散されて混酸溶液13が構成されている。
【0044】
容器12の上部中央から突出した中央管16には排気管18が連接され、この排気管18には冷却管20が内装されている。排気管18の頂部には排気端24が設けられている。
【0045】
混酸溶液13がマントルヒータ10で加熱されると、蒸発したガスが排気管18を上昇する。この上昇過程で冷却管20を矢印方向に流通する冷却水22により蒸発ガスは冷却され、排気端24から排気ガス26となって大気中に排気される。
【0046】
混酸溶液13の温度は熱電対28により計測され、この温度信号は加熱制御装置30にフィードバックされて、加熱制御装置に30より混酸溶液13は所望の温度に保持される。混酸14は濃硫酸と濃硝酸の混合液体であり、本発明は濃硫酸中における濃硝酸の炭素不純物除去作用に着目してなされたものである。次に、濃硝酸の作用について説明する。
【0047】
本発明者等は、濃硝酸が沸騰状態又は過沸騰状態(両者を沸騰状態と云う)において、ダイヤモンド粒子2から炭素不純物、即ち炭素不純物層6を除去する作用を有していることを発見した。濃硝酸は硝酸水溶液として提供され、その沸点は硝酸濃度が69.8%の硝酸水溶液で123℃であり、沸点は硝酸濃度によって多少変動する。従って、ここでは濃硝酸の沸点は約120℃としておく。
【0048】
他方、濃硫酸は通常、硫酸液として提供され、市販の濃硫酸は硫酸濃度が96%で、その沸点は317℃である。硫酸濃度によって沸点は多少変動し、ここでは濃硫酸の沸点は約330℃としておく。
【0049】
本発明者等は、ダイヤモンド粒子2を濃硫酸に分散させて各種温度で浄化処理を行ったが、ダイヤモンド粒子2から炭素不純物は除去できなかった。即ち、濃硫酸単独による浄化処理前と浄化処理後のダイヤモンド粒子2のラマンスペクトルを測定したが、ラマンスペクトルに殆ど変化は見られず、濃硫酸単独では炭素不純物層6を除去(洗浄)することは困難であると結論した。このラマンスペクトルの詳細については後述する。
【0050】
次に、濃硫酸に濃硝酸を混入した混酸でダイヤモンド粒子2を加熱処理すると、後述するラマンスペクトルに顕著な変化が現れた。加熱温度を濃硝酸の沸点以上で濃硫酸の沸点以下に設定して加熱洗浄処理を行った結果、30分以上、好ましくは1時間以上の処理で炭素不純物の中でもグラファイト成分の除去が効率的に行われることが分かった。勿論、加熱時間は濃硝酸濃度と加熱時間に依存し、高濃度・高温加熱では洗浄時間を短縮でき、15分以上でも洗浄効果を発現する。洗浄時間が長くなるほど洗浄効率は漸増するが、通常条件では1時間の処理で十分なる洗浄効率が得られる。例えば5時間以上加熱しても良いが、次第に濃硝酸が蒸発分解してゆくから洗浄効率は顕著には増加しない。
【0051】
前述したように、加熱温度は濃硝酸の沸点以上(約120℃)で濃硫酸の沸点以下(約330℃)に設定される。加熱温度を260℃、280℃、300℃、320℃に設定して洗浄処理を行った結果、加熱温度が上昇するほど洗浄効率は増加した。しかし、260℃でも十分な洗浄効率が得られた。
【0052】
また、濃硫酸の作用は硝酸の沸騰温度を自在に調整できる点になる。濃硝酸単独の沸点は約120℃であるが、濃硫酸に混合した状態では、加熱される濃硫酸の熱浴の中で、濃硝酸は沸騰状態又は過沸騰状態(沸点以上の温度での沸騰)になる。この両沸騰状態を本発明では濃硝酸の沸騰状態と表現している。濃硫酸が沸騰しない温度範囲(約330℃以下)で、濃硝酸の沸騰温度を調節できる。
【0053】
例えば、混酸を280℃で加熱すると、濃硫酸は沸騰状態にはないが、濃硝酸は硫酸中で沸騰状態になる。沸騰状態にある濃硝酸がダイヤモンド粒子の表面にどのように攻撃して炭素不純物を除去するかの詳細なメカニズムは現段階では不明である。しかし、洗浄前と洗浄後のラマンスペクトルを比較すると、ダイヤモンド成分に対するグラファイト成分や非晶質炭素成分や直鎖炭素成分のスペクトルが急減していることが分かる。
【0054】
濃硫酸に対する濃硝酸の容積の比率、即ち濃硝酸の容積濃度が0.5〜40(容積%)で効果的な洗浄処理が行われることが分かった。0.5(容積%)未満では硝酸の洗浄効率が十分ではなく、40(容積%)を超えると混酸の温度上昇が十分ではなくなる。より好ましくは、濃硝酸濃度が1〜30(容積%)であれば効果的な洗浄が行える。
【0055】
次に、図2に示される精製装置8の作動について説明する。加熱制御装置30によりマントルヒータ10を加熱制御して混酸溶液13を例えば280℃に設定する。この加熱により混酸溶液13は対流しながら攪拌され、この攪拌状態の中で濃硝酸は沸騰する。濃硝酸は沸騰しながらダイヤモンド粒子2を攻撃してその表面にある炭素不純物層6を除去してゆく。
【0056】
濃硝酸は次第にH2OとNOXに分解され、これらの分解ガスは排気管18を上昇しながら冷却され、排気端24から排気ガス26として大気中に排気されてゆく。従って、混酸溶液13における濃硝酸濃度は次第に低下してゆく。
【0057】
混酸溶液13の温度は熱電対28により常に測定され、この温度信号は加熱制御装置30にフィードバックされる。この温度測定を同時に行いながら、加熱制御装置30は混酸溶液13を所望の温度に保持制御する。
【0058】
図3は本発明に係るダイヤモンド粒子精製方法の第1方法を説明する工程図である。(3A)では、硫酸(H2SO4)と硝酸(HNO3)からなる混酸にダイヤモンド粒子が投入分散される。混酸溶液13は260〜320(℃)の範囲内の温度に設定されて0.5〜5(時間)に亘って加熱される。この加熱により、ダイヤモンド粒子2から炭素不純物層6が除去され、高純度ダイヤモンド粒子5となる。
【0059】
(3B)では、加熱制御装置をオフにして混酸溶液13が冷却(cooling)される。混酸溶液13の温度が低下すると、分散されていた高純度ダイヤモンド粒子5が容器12の底部に沈殿(Precipitation)する。
【0060】
(3C)では、混酸溶液13を純水に置換し、沈殿している高純度ダイヤモンド粒子5を水で洗浄(Water Washing)する。この操作を何回か繰り返して高純度ダイヤモンド粒子5に付着している混酸を完全に洗い流す。最後に遠心分離(Centrifugal Separation)により高純度ダイヤモンド粒子5を取り出す。
【0061】
(3D)では、取り出された高純度ダイヤモンド粒子5を適温に加熱して付着している水分を蒸発(Water Evaporation)させ、高純度ダイヤモンド粒子5を乾燥(Drying)させる。このようにして高純度ダイヤモンド粒子5が得られる。
【0062】
図4は本発明に係るダイヤモンド粒子精製方法の第2方法を説明する工程図である。ダイヤモンド粒子2の粒径(直径)が小さくなると、多数のダイヤモンド粒子2が相互に付着して団子状態になる場合が多い。特に、その直径がナノメートルサイズになると団子状態がよく出現する。この団子状態の粒子を2次ダイヤモンド粒子と呼び、この2次ダイヤモンド粒子の直径はダイヤモンド粒子の直径よりかなり大きくなるのは当然である。
【0063】
2次ダイヤモンド粒子を洗浄処理すると、その外周面は洗浄されるが、ダイヤモンド粒子相互の接合面は内部に隠れているため洗浄されない。従って、炭素不純物を確実に除去するため、洗浄処理を行う前に、2次ダイヤモンド粒子を個々のダイヤモンド粒子に分解する処理を行う。
【0064】
(4A)では、純水の中に2次ダイヤモンド粒子の粉末を分散させ、この分散水溶液に超音波振動を加える。この超音波処理によって、2次ダイヤモンド粒子は個々のダイヤモンド粒子2に分解される。この処理を超音波分散(UltrasonicDispersion)と呼ぶ。
【0065】
(4B)〜(4E)の洗浄処理は前述した(3A)〜(3D)の洗浄処理と同一である。(4B)は混酸加熱処理、(4C)は冷却沈澱処理、(4D)は水洗・遠心分離処理、(4E)は水分乾燥処理である。各処理の作用効果は(3A)〜(3D)と同一であるから、その詳細な説明は省略する。
【0066】
図5は濃硝酸濃度10(容積%)で加熱温度280℃で1時間洗浄処理して得られた高純度ダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。10容積%とは、濃硫酸(Sulfuric Acid)の容積に対する濃硝酸(Nitric Acid)の容積の比率をパーセント化した値である。このラマンスペクトルは、514.5nmのレーザー光を高純度ダイヤモンド粒子に照射して得られた非弾性散乱スペクトルで、横軸はラマンシフト(Raman Shift)、縦軸はラマン散乱光の強度(Intensity)である。
【0067】
全強度(Total Signal)を炭素物質の種類に分解すると、実線のダイヤモンド強度(Diamond)、長破線のグラファイト強度(Graphite)、C=Cに基づく短破線の直鎖炭素強度(Normal Chain)から構成される。他方。後述する図6及び図7の一点鎖線は非晶質炭素強度(Amorphous Carbon)を表す。
【0068】
ダイヤモンド強度はダイヤモンド粒子核4に起因し、このダイヤモンドの電気的性質を乱す成分はグラファイトである。514.5nmのレーザー光を用いると、グラファイトの散乱効率はダイヤモンドの散乱効率の約100倍である。従って、グラファイト強度を100で割ることによってダイヤモンド強度と比較できる。スペクトルの強度を正確に表すため、スペクトルの面積を計算して得られる面積強度が使用される。
【0069】
図6は未処理のダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。洗浄処理を行っていないため、ダイヤモンド粒子核4の周囲に大量の炭素不純物層6が存在している。従って、ダイヤモンドスペクトルと比較して、かなり大きなグラファイトスペクトルが存在することが分かるであろう。
【0070】
洗浄処理前のラマンスペクトル(図6)と洗浄処理後のラマンスペクトル(図5)を対比すると、本発明の精製方法(洗浄処理)により、炭素不純物層6がかなりの程度まで除去されることが理解できる。
【0071】
図7は濃硫酸だけで洗浄処理されたダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。前述した従来技術では濃硫酸によって金属不純物が除去できると書かれている。従って、本発明が対象とする炭素不純物が濃硫酸だけの洗浄処理でどの程度まで除去できるかが比較のために測定された。加熱温度は280℃、洗浄処理時間は1時間である。
【0072】
濃硫酸処理(図7)と未処理(図6)を対比すると、ラマンスペクトルの全体像が殆ど同じであることが分かる。つまり、濃硫酸処理では炭素不純物8は殆ど除去できないことが分かる。但し、炭素不純物の種類に分解すると、図7に存在する1600(cm−1)付近の直鎖炭素スペクトルが図6には存在していない。この理由は試料となるダイヤモンド粒子2が異なることである。
【0073】
図5〜図7を総合して判断すると、濃硝酸が炭素不純物を攻撃して除去することが明白である。この濃硝酸の作用効果は従来技術には全く開示されておらず、本発明者等が初めて発見した現象である。濃硝酸が炭素不純物に対しどのようなメカニズムで作用するかは現在のところまだ十分には分かっていない。この新発見に基づいて、本発明者等は濃硫酸の熱浴の中で濃硝酸により炭素不純物を除去する本発明を完成させたものである。
【0074】
濃硫酸の沸点は約330℃と高いから、濃硝酸が沸騰する熱浴の温度を自在に調整できる。従って、本発明の精製方法(洗浄方法)は濃硝酸の沸点(約120℃)以上で濃硫酸の沸点(約330℃)以下の任意温度に熱浴温度を調整することにより、濃硝酸を沸騰状態に設定して炭素不純物を沸騰濃硝酸により効率的に除去するものである。
【0075】
図8は10容積%の濃硝酸濃度でダイヤモンド粒子を精製処理した場合におけるグラファイト混入率と処理時間との関係図である。この関係図の縦軸はグラファイト混入率(%)、横軸は処理時間(hour)である。グラファイト混入率はダイヤモンド成分の面積強度に対する散乱効率を考慮したグラファイト成分の面積強度の比率をパーセント化した量(Graphite/Diamond)である。
【0076】
図8及び後述する図9・図10では、ラマンスペクトル測定は457.9nmのレーザー光が使用された。この波長では、グラファイトのラマン散乱効率がダイヤモンドより約60倍であるが、前述した514.5nm(約100倍)よりもバックグラウンド信号が低減されるため、正確にグラファイト混入率が測定できる。
【0077】
280℃処理では、未処理が6.02%、1時間処理が2.24%、3時間処理が1.91%、5時間処理が1.88%となり、処理時間が長くなると共にグラファイト混入率が漸減する傾向にある。また、310℃処理では、1時間処理が1.13%、3時間処理が0.91%となり、280℃処理よりも洗浄効率が高くなった。
【0078】
この結果から、濃硝酸の沸騰温度を高くすると、洗浄効率が向上することが分かる。また、処理時間が長くなるほど洗浄効率が高くなるが、少なくとも30分処理すれば、グラファイト混入率を3%以下に低減できることが分かった。
【0079】
本発明者等の研究によれば、グラファイト混入率が3%以下のダイヤモンド粒子を用いれば、半導体や回路基板などにダイヤモンド粒子を電気絶縁材料として使用できることが分かっている。従って、本発明ではグラファイト混入率が3%以下のダイヤモンド粒子を高純度ダイヤモンド粒子と称している。
【0080】
以上の結果から、濃硝酸を沸騰状態で少なくとも30分以上、より好ましくは1時間以上加熱処理すれば、相当程度の炭素不純物を有したダイヤモンド粒子を浄化処理でき、グラファイト混入率が3%以下の高純度ダイヤモンド粒子を製造できることが分かる。前述したように加熱時間は濃硝酸濃度と加熱温度に依存し、15分以上の洗浄処理でも有効な洗浄効果が得られる。また。グラファイト混入率は低いほどダイヤモンド純度が高くなり、グラファイト混入率を1.5%以下にまで低減できれば、回路基板における絶縁性能は極めて改善され、実用に耐える高純度ダイヤモンド粒子を提供できる。
【0081】
図9は10容積%の濃硝酸濃度でダイヤモンド粒子を精製処理した場合におけるグラファイト混入率と酸温度との関係図である。この関係図の縦軸はグラファイト混入率で、横軸は酸温度(Acid Temperature)、即ち処理温度(沸騰温度)である。全てのデータの処理時間は3時間に設定されている。
【0082】
グラファイト混入率は、未処理で6.02%、260℃で2.07%、280℃で1.91%、300℃で1.51%、310℃で0.91%である。酸温度が上昇するとグラファイト混入率が漸減することが実証された。しかも酸温度が260℃以上ではグラファイト混入率は約2%以下にまで低減されており、不純ダイヤモンド粒子から高純度ダイヤモンド粒子を製造できることが分かった。
【0083】
前述したように、高純度ダイヤモンド粒子はグラファイト混入率が3%以下のダイヤモンド粒子である。図9の実測データからグラファイト混入率が3%になる酸温度を推定したところ、約180℃であることが分かった。従って、酸温度を180℃以上に設定すれば、洗浄処理により高純度ダイヤモンド粒子を製造できることが分かった。
【0084】
図10はダイヤモンド粒子を280℃及び310℃で1時間精製処理した場合におけるグラファイト混入率と濃硝酸濃度との関係図である。この関係図の縦軸はグラファイト混入率(%)で、横軸は容積%で表された濃硝酸濃度(Nitric Acid Density)である。容積%はVol.%として表記されている。
【0085】
濃硝酸濃度がゼロの場合は、濃硫酸だけで処理したことを示している。280℃の洗浄処理(精製処理)において、0Vol.%で10.7%、1Vol.%で2.52%、3Vol.%で2.10%、5Vol.%で2.29%、10Vol.%で2.24%であった。また、310℃の洗浄処理(精製処理)において、0Vol.%で8.14%、1Vol.%で2.42%、3Vol.%で1.89%、5Vol.%で1.70%、10Vol.%で1.13%であった。
【0086】
図10からグラファイト混入率が3%以下になるのは、濃硝酸濃度が0.5Vol.%以上であることが分かった。従って、濃硝酸濃度を0.5容積%以上に調整すれば、高純度ダイヤモンド粒子を製造できることが分かった。
【0087】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含することは云うまでもない。
【0088】
【発明の効果】
第1の発明によれば、0.5容積%以上の濃硝酸を濃硫酸に添加した混酸を調製し、この混酸中で濃硝酸を沸騰させながら炭素不純物を有したダイヤモンド粒子を加熱処理をするだけで、炭素不純物を除去して高純度ダイヤモンド粒子を製造することができる。濃硫酸は濃硝酸を沸騰状態に保持する熱浴として作用し、濃硝酸の沸騰現象を利用して炭素不純物を効率的に除去することができる。特に、ダイヤモンド粒子の比誘電率や比電気抵抗を阻害するグラファイト成分を効率的に除去できるダイヤモンド粒子の精製方法を提供する。
【0089】
第2の発明によれば、ダイヤモンド粒子が相互に結合した団子状態の2次ダイヤモンド粒子を超音波処理によって個々のダイヤモンド粒子に分離分散させ、得られたダイヤモンド粒子に対し精製処理を施すことによって、ダイヤモンド粒子の表面に付着した炭素不純物、特にグラファイト成分を効果的に除去することができる。
【0090】
第3の発明によれば、ダイヤモンド粒子を精製処理(洗浄処理)してもグラファイト成分が一部残留するから、散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、グラファイト成分がダイヤモンド成分の3%以下になるように精製処理を施して高純度ダイヤモンド粒子を製造することにより、回路基板や半導体などの電気絶縁材料として活用することができる。
【0091】
第4の発明によれば、濃硫酸に対し40容積%以下の濃硝酸濃度に調製することにより、濃硫酸中における濃硝酸の沸騰を所望の温度で継続させることが可能になり、濃硝酸沸騰により効率的に炭素不純物を除去することができる。
【0092】
第5の発明によれば、加熱時間を30分以上に設定することにより、沸騰濃硝酸により有効に炭素不純物を除去することができる。処理時間を延長するほど洗浄効率は漸増するが、5時間も処理すれば十分な洗浄効果が得られる。
【0093】
第6の発明によれば、ダイヤモンド粒子に対し精製処理を複数回繰り返すことによって、ダイヤモンド粒子から高効率に炭素不純物を除去することができる。濃硝酸の沸騰により、濃硝酸は次第に分解して濃硝酸濃度は次第に低下する。そこで精製されたダイヤモンド粒子を再び新しい混酸に分散させて繰り返し同様の処理を行い、この反復処理により炭素不純物を高効率に除去することができる。
【0094】
第7の発明によれば、グラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下に低減されている高純度ダイヤモンド粒子が提供される。このグラファイト混入率を3%以下に抑えた高純度ダイヤモンド粒子であれば、ダイヤモンド粒子の電気的性質が極めて良好になり、更に1.5%以下にまで低減すれば回路基板や半導体などの電気絶縁材料として有効に活用できる。
【0095】
第8の発明によれば、ダイヤモンド粒子の直径が1〜100nmである高純度ダイヤモンド粒子が提供される。ダイヤモンド粒子の直径が1〜100nm、更に好ましくは1〜10nmになれば、ダイヤモンド粒子薄膜を形成したときに空隙率を増大化でき、その結果ダイヤモンド粒子薄膜の誘電率を効率的に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダイヤモンド粒子の精製方法によるダイヤモンド粒子2の構造変化を説明する概略断面図である。
【図2】本発明に係るダイヤモンド粒子2の精製方法に使用される精製装置8の概略構成図である。
【図3】本発明に係るダイヤモンド粒子精製方法の第1方法を説明する工程図である。
【図4】本発明に係るダイヤモンド粒子精製方法の第2方法を説明する工程図である。
【図5】濃硝酸濃度10(容積%)で加熱温度280℃で1時間洗浄処理して得られた高純度ダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。
【図6】未処理のダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。
【図7】濃硫酸だけで洗浄処理されたダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。
【図8】10容積%の濃硝酸濃度でダイヤモンド粒子を精製処理した場合におけるグラファイト混入率と処理時間との関係図である。
【図9】10容積%の濃硝酸濃度でダイヤモンド粒子を精製処理した場合におけるグラファイト混入率と酸温度との関係図である。
【図10】ダイヤモンド粒子を280℃及び310℃で1時間精製処理した場合におけるグラファイト混入率と濃硝酸濃度との関係図である。
【図11】爆発衝撃法によりダイヤモンド粒子を製造する方法の概略装置図である。
【図12】爆発衝撃法により製造されたダイヤモンド粒子の概略断面図である。
【図13】表面技術に記載されたダイヤモンド粒子を精製する従来の高温酸処理法の工程図である。
【符号の説明】
2はダイヤモンド粒子(不純ダイヤモンド粒子)、4はダイヤモンド粒子核、5は高純度ダイヤモンド粒子、6は炭素不純物層、8は精製装置、10はマントルヒータ、12は容器、13は混酸溶液、14は混酸(H2SO4+HNO3)、16は中央管、18は排気管、20は冷却管、22は冷却水、24は排気端、26は排気ガス、28は熱電対、30は加熱制御装置、40は耐爆容器。
【発明の属する技術分野】
本発明は潤滑剤、研磨剤、回路基板の絶縁材料などに使用されるダイヤモンド粒子に関し、更に詳細には、ダイヤモンド粒子の表面に存在する炭素不純物を除去してダイヤモンドの純度を向上させるダイヤモンド粒子の精製方法及び高純度ダイヤモンド粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンドの表面は極めて平滑性が高いため、微細なダイヤモンド粒子からなる薄膜を物体表面に形成して、物体表面の潤滑性を向上させることが実用化されている。また、ダイヤモンドの硬度は既存物質の中で最高値を有しているため、ダイヤモンド粒子を研磨剤として利用し、物体表面を平滑に研磨する工程に実用化されている。
【0003】
ダイヤモンド粒子は機械的性質が優れているだけでなく、電気的性質や熱的性質、光学的性質においても優れた材料である。特に、近年では、ダイヤモンド粒子の高電気絶縁性と低誘電率性に着目して、ダイヤモンド粒子を半導体や回路基板の絶縁材料に利用する研究が始まっている。
【0004】
本発明者等の一部は、既に特開2002−110870及び特開2002−289604により、ダイヤモンド粒子から構成された低誘電率ダイヤモンド薄膜を回路基板上に実現している。このダイヤモンド薄膜の特徴は、ダイヤモンド粒子間に微細空隙を形成し、ダイヤモンド粒子自体の低誘電率性に加えてこの空隙の形成によりダイヤモンド薄膜の更なる低誘電率化に成功したことである。
【0005】
即ち、このダイヤモンド薄膜の低誘電率性は、空隙率の向上による低誘電率性とダイヤモンド粒子自体の低誘電率性の二因子に強く依存している。特に、後者のダイヤモンド粒子自体の低誘電率性は、ダイヤモンドの純度を高度化することによって達成されるから、ダイヤモンド粒子の製法に強く依存すると考えられる。換言すれば、不純物の少ないダイヤモンド粒子の製法を確立することが極めて重要になる。
【0006】
ダイヤモンド粒子の製造方法には、各種の方法が知られている。第1の方法は高温高圧合成法である。この方法によって製造されたダイヤモンド粒子は、潤滑剤、表面改質剤、研磨剤などの用途に使用されている。しかし、ダイヤモンド粒子に破砕装置によるCr等の不純物金属が混入したり、未反応の原料グラファイトが濃縮付着する傾向がある。従って、製造された段階のダイヤモンド粒子では半導体や回路基板に使用するには不適当である。
【0007】
第2の方法は火薬等の衝撃圧力を用いたダイヤモンド粒子合成法である。この方法はロシアや米国において工業化されている。この方法は、高温高圧条件を瞬時に形成し、一気にダイヤモンド粒子を量産する方法である。しかし、ダイヤモンド粒子表面にグラファイトや非晶質炭素や直鎖炭素などの炭素不純物が付着する傾向がある。後述するように、本発明者等のラマンスペクトルによる研究から炭素不純物が主要な不純物として確認されている。つまり、第1方法や第2方法の何れによっても純粋なダイヤモンド粒子を合成することは困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図11は爆発衝撃法によりダイヤモンド粒子を製造する方法の概略装置図である。ステンレス製の耐爆容器40の中に原料となる炭素物質、触媒としてFe・Cr又はNi、爆発促進用のHeなどを封入し、火薬の爆発により、炭素物質から一気にダイヤモンド粒子が合成される。
【0009】
図12は爆発衝撃法により製造されたダイヤモンド粒子の概略断面図である。このダイヤモンド粒子2はダイヤモンド粒子核4の外周面に炭素不純物層6が取り巻いて構成されている。このダイヤモンド粒子2の構造は透過型電子顕微鏡の観察によって確認されている。
【0010】
ダイヤモンド粒子核4は純粋のダイヤモンドから構成されている。他方、炭素不純物層6にはグラファイト(graphite)、非晶質炭素(Amorphous Carbon)、C=C等の直鎖炭素(Normal Chain)が含有されていることが構造分析によって明らかにされている。その他に、触媒に起因するFe、Cr、Ni等の金属成分が不純物として混入する場合もある。
【0011】
前述したように、ダイヤモンド粒子を半導体や回路基板の絶縁材料として使用する場合には、ダイヤモンド粒子が高電気絶縁性と低誘電率を有することが重要になる。従って、炭素不純物層6が存在すると、高電気絶縁性と低誘電率性が阻害されることになる。炭素不純物の中でもグラファイト成分がダイヤモンドの特性を阻害する最大要因である。表1によりバルクのダイヤモンドとグラファイトの性質を比較する。
【0012】
【0013】
ダイヤモンドは電気絶縁体であり、グラファイトは電気良導体であるから、電気比抵抗と比誘電率において、両者は全く正反対の性質を有する。グラファイトは電気良導体であるから、誘電分極は生じず、比誘電率を定義することはできない。また、電気比抵抗において両者に約1016の開きがある。
【0014】
従って、ダイヤモンドの性質を積極的に利用する技術においては、その性質を阻害する炭素不純物、特にグラファイト成分が存在することは、極めて重要な欠陥になる。そこで、ダイヤモンド粒子2を利用する技術においては、炭素不純物層6を除去することが課題となる。
【0015】
表面技術(Vol.12, No.3(1996)pp8−24)に「超微粒ダイヤモンドの精製とその評価」が掲載されている。この研究論文は、ダイヤモンド粒子から不純物を除去することを目的としている。しかし、この論文が対象とする不純物は、Fe、Cu、Cr、Ti、Al、Si、Mg、Ca、Zr、Ni等の重金属、SiO2、不飽和炭化水素、Al2O3である。
【0016】
この従来技術は主として重金属類や金属酸化物の除去を対象としたものであり、炭素不純物の中でも不飽和炭化水素を例示しているに過ぎない。この従来技術では、本発明者等が問題視しているグラファイトや非晶質炭素という炭素不純物の除去は全く目的とされていない。この理由は、この従来技術がダイヤモンド粒子の機械的性質に着目して、ダイヤモンド粒子を潤滑剤、研磨剤及び表面改質剤として利用しようとするからである。
【0017】
本発明者等は、ダイヤモンド粒子の電気的性質に着目して、ダイヤモンド粒子を半導体・回路基板製造用の電気絶縁材料に主として使用することを目的としている。従って、炭素不純物の中でも、グラファイト成分や非晶質炭素成分、特にグラファイト成分をダイヤモンド粒子から除去することが重要になる。この点が、本発明が前記従来技術と根本的に相違することである。
【0018】
また、重金属類や金属酸化物という前記不純物は、誘導結合プラズマ発光分光、赤外吸収分光、偏向光学顕微鏡、無機定性分析及び粉末X線散乱によってダイヤモンド粒子から検出されたものである。これらの検出方法は重金属類や金属酸化物の検出には効率的であるが、本発明が対象とするグラファイトや非晶質炭素の検出には有効ではない。従って、不純物としてグラファイトや非晶質炭素が検出されていないのである。
【0019】
図13は表面技術に記載されたダイヤモンド粒子を精製する従来の高温酸処理法の工程図である。(13A)において、ダイヤモンド粒子は濃硫酸に分散され、320℃の温度で1〜5時間加熱処理される。濃硫酸の強力な酸化力によって、ダイヤモンド粒子の表面から不純物が除去される。つまり、濃硫酸の酸化力によって前述した重金属や金属酸化物といった不純物が除去される。
【0020】
この濃硫酸に若干量の硝酸又は硝酸カリウムと微量の水が添加されても良い。硝酸には重金属の溶解を促進する作用が期待されている。カリウムは微量に存在するグラファイトの層間に侵入し、グラファイトを破壊して除去する作用がある。また、微量の水は還流容器内で物質循環を促進する作用がある。従って、この従来技術では、硝酸は触媒などから混入する金属を溶解する役割を担っており、グラファイト破壊作用はカリウムに専属的に委ねている。
【0021】
(13B)では、ダイヤモンド粒子が希塩酸に分散され、150℃の温度で5〜10時間加熱処理される。希塩酸の処理によって、硫酸処理により除去されなかった重金属類を除去する。
【0022】
(13C)では、ダイヤモンド粒子がフッ酸により1〜24時間加熱処理される。フッ酸はガラスを溶解する性質を有し、この処理により残留するSiO2が除去される。
【0023】
(13D)では、ダイヤモンド粒子がフッ酸溶液から取り出され、真空装置内に配置される。真空装置内で、ダイヤモンド粒子は減圧状態で真空乾燥される。この最終工程により、乾燥状態の高純度ダイヤモンド粒子が提供される。このようにして、ダイヤモンド粒子の機械的性質を阻害する不純物、即ち重金属類や金属酸化物が除去され、機械的性質において高純度なダイヤモンド粒子が製造されるのである。
【0024】
このような従来の精製方法により得られた高純度ダイヤモンド粒子は、潤滑剤、研磨剤及び表面改質剤として利用することは有効である。しかしながら、回路基板や半導体等の電気絶縁材料として利用することは困難である。電気絶縁材料として利用する為には、ダイヤモンド粒子の電気的性質を阻害する不純物、即ちグラファイト成分や非晶質炭素成分を選択的に除去する精製方法が確立されなければならない。
【0025】
従って、本発明は、精製対象となるダイヤモンド粒子からグラファイト成分、非晶質炭素成分及び直鎖炭素成分などの炭素不純物を選択的に除去できるダイヤモンド粒子の精製方法を提供し、その結果得られる高純度ダイヤモンド粒子を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために為されたものであり、その第1の発明は、
0.5容積%以上の濃硝酸を濃硫酸に添加した混酸を調製し、ダイヤモンド粒子核の表面に炭素不純物を有したダイヤモンド粒子を用意し、このダイヤモンド粒子の粉末を前記混酸に分散させて混酸溶液を調製し、この混酸溶液を濃硝酸の沸点以上で濃硫酸の沸点以下に調整された温度で加熱して、熱浴としての濃硫酸の中で沸騰する濃硝酸の作用で前記ダイヤモンド粒子から炭素不純物を除去するダイヤモンド粒子の精製方法である。本発明者等は、炭素不純物を除去する作用は濃硫酸には無く、濃硝酸にあることを発見して本発明を完成したものである。濃硫酸の沸点は約330℃であり、濃硝酸の沸点は約120℃である。仮に濃硫酸を280℃に設定すると、この濃硫酸の熱浴の中で濃硝酸は280℃で沸騰状態にあり、この沸騰状態の濃硝酸がダイヤモンド粒子から選択的に炭素不純物を除去する極めて新規な性質を有するのである。この新規な現象を積極的に利用してダイヤモンド粒子からグラファイトや非晶質炭素や直鎖炭素といった炭素不純物を選択的に除去する精製浄化方法を提供する。加熱時間は濃硝酸の濃度や加熱温度に依存し、必要な時間加熱処理することによって、有効に炭素不純物を除去することができる。
【0027】
第2の発明は、ダイヤモンド粒子が相互に結合して団子化した2次ダイヤモンド粒子からなる粉末を適当な溶媒に分散させ、この溶媒を超音波処理して2次ダイヤモンド粒子を個々のダイヤモンド粒子に分解し、このダイヤモンド粒子を混酸に分散させて処理するダイヤモンド粒子の精製方法である。ダイヤモンド粒子の直径(粒径)が小さくなり、ナノメートルサイズのダイヤモンド粒子になると、個々のダイヤモンド粒子は単体で存在するよりも相互に結合して団子状態の2次ダイヤモンド粒子になることが知られている。超音波処理によって団子状態の2次ダイヤモンド粒子を個々のダイヤモンド粒子に分離分散させ、得られたダイヤモンド粒子に対し前述の精製処理を施すことによって、ダイヤモンド粒子の表面に付着した炭素不純物を効果的に除去することが可能になる。
【0028】
第3の発明は、炭素不純物の除去処理を行った結果、残留した炭素不純物成分のうちグラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下にまで低減されるダイヤモンド粒子の精製方法である。炭素不純物が除去されたダイヤモンド粒子を試料としてラマンスペクトルを計測したとき、ラマンスペクトル信号はダイヤモンド成分、一部残留するグラファイト成分・非晶質炭素成分などから構成される。特にグラファイト成分の散乱効率はダイヤモンド成分より遥かに高く、その散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、グラファイト成分がダイヤモンド成分の3%以下になれば、精製されたダイヤモンド粒子を回路基板や半導体などの電気絶縁材料として活用することが可能になる。
【0029】
第4の発明は、混酸における濃硝酸の添加量が40容積%以下であるダイヤモンド粒子の精製方法である。必要な温度に加熱された濃硫酸熱浴の中で濃硝酸を沸騰させる必要がある。しかし、濃硝酸の濃度を高めると沸騰温度が低下する傾向にあり、そのため濃硝酸の濃度には上限がある。この濃硝酸の上限濃度として40容積%を提示したものである。40容積%以下の濃硝酸濃度であれば、濃硝酸の沸騰を所望の温度で継続させることが可能になり、濃硝酸沸騰により効率的に炭素不純物を除去することができる。
【0030】
第5の発明は、加熱時間が30分以上であるダイヤモンド粒子の精製方法である。熱浴である濃硫酸の中で、濃硝酸は沸騰し、最終的にH2OとNOXに分解されてゆく。この分解時間は濃硝酸の濃度と加熱温度に依存するが、通常条件では加熱時間を30分以上に設定することにより、濃硝酸により有効に炭素不純物を除去することが可能になる。処理時間を延長するほど洗浄効率は漸増するが、5時間も処理すれば十分な洗浄効果が得られる。
【0031】
第6の発明は、前述したダイヤモンド粒子の精製方法をダイヤモンド粒子に対し複数回繰り返すことによってダイヤモンド粒子から高効率に炭素不純物を除去するダイヤモンド粒子の精製方法である。濃硝酸の沸騰により、濃硝酸は次第に分解して濃硝酸濃度は次第に低下する。従って、精製されたダイヤモンド粒子を再び新しい混酸に分散させて繰り返し同様の処理を行い、この反復処理により炭素不純物を高効率に除去することができる。
【0032】
第7の発明は、ダイヤモンド粒子核の表面に炭素不純物を有したダイヤモンド粒子において、炭素不純物成分のうちグラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下に低減されている高純度ダイヤモンド粒子である。本発明は、散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、グラファイト成分がダイヤモンド成分の3%以下になれば、更に好ましくは1.5%以下になれば、精製されたダイヤモンド粒子を回路基板や半導体などの電気絶縁材料として有効に活用できることを見出して為されたものである。精製されたダイヤモンド粒子を試料としてラマンスペクトルを計測したとき、ラマンスペクトル信号はダイヤモンド成分、除去できなかったグラファイト成分・非晶質炭素成分などから構成される。グラファイト成分の散乱効率はダイヤモンド成分より遥かに高いから、その散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、グラファイト成分がダイヤモンド成分の3%以下になれば、ダイヤモンド粒子の電気的性質を有効に活用することが可能となる。
【0033】
第8の発明は、ダイヤモンド粒子の直径が1〜100nmである高純度ダイヤモンド粒子である。ダイヤモンド粒子の直径が1〜100nm、更に好ましくは1〜10nmになれば、ダイヤモンド粒子薄膜を形成したときに空隙率を増大化でき、その結果ダイヤモンド粒子薄膜の誘電率を効率的に低下させることができる。従って、直径が1〜100nmの範囲の高純度ダイヤモンド粒子を提供するものである。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るダイヤモンド粒子の精製方法及び高純度ダイヤモンド粒子の実施形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0035】
図1は本発明に係るダイヤモンド粒子の精製方法によるダイヤモンド粒子の構造変化を説明する概略断面図である。ダイヤモンド粒子2は、ダイヤモンド粒子核4の表面に炭素不純物層6を有して構成されている。この炭素不純物層6はグラファイト成分や非晶質炭素成分や直鎖炭素成分などの炭素物質から形成されている。
【0036】
本発明に係るダイヤモンド粒子2の精製方法は、前記炭素不純物層6をできるだけ除去して高純度ダイヤモンド粒子5を製造することを目的としている。炭素不純物層6を完全に除去できれば、ダイヤモンド粒子核4だけからなる最高品質のダイヤモンド粒子が提供できる。しかしながら、炭素不純物層6を完全に除去することは困難であり、本発明では炭素不純物層6を極力除去して、半導体や回路基板などの電気絶縁材料として利用できる高純度ダイヤモンド粒子5を提供する。
【0037】
本発明者等は、炭素不純物層6を構成する炭素不純物を効率的に検出するのに有効なラマン散乱を用いた。測定されたラマンスペクトルは、ダイヤモンド粒子核4によるダイヤモンド成分と、炭素不純物層6による炭素不純物成分から構成される。炭素不純物成分はグラファイト成分、非晶質炭素成分及び直鎖炭素成分からなる。
【0038】
特に、ダイヤモンドの電気比抵抗と比誘電率に影響を与えるグラファイト成分が重要になる。グラファイトのレーザービーム散乱効率はダイヤモンドよりもかなり高く、またその散乱効率はレーザービームの波長にも依存する。つまり、グラファイトのレーザービーム散乱効率がダイヤモンドのそれの何倍であるかが重要な因子になる。例えば、514.5nmでは約100倍また457.9nmでは約60倍である。
【0039】
測定されたラマンスペクトルからダイヤモンド成分を導出し、その面積強度を求める。同時に、グラファイト成分の面積強度を求める。グラファイトの散乱効率がダイヤモンドの60倍であるとすると、グラファイトの面積強度を60で割れば、ダイヤモンドの面積強度と直接比較することが可能になる。
【0040】
本発明では、グラファイトの面積強度を散乱効率の前記倍率で割ることを、散乱効率を考慮すると表現している。散乱効率を考慮することによって、ダイヤモンドの面積強度とグラファイトの面積強度を直接対比できる。グラファイトの面積強度のダイヤモンドのそれに対する比率が、ダイヤモンド粒子に含まれるグラファイトの不純物率を与える。
【0041】
本発明者等の研究によれば、散乱効率を考慮したラマンスペクトルにおいて、グラファイトの面積強度をダイヤモンドの面積強度の3%以下にまで低減できれば、ダイヤモンド粒子を半導体や回路基板などの電気絶縁材料として使用できることが分かった。グラファイトの面積強度を低減するほどダイヤモンドの純度は高くなるが、1.5%以下であれば更に望ましい。この段階でダイヤモンド粒子2の精製が完了したと判断し、このようなダイヤモンド粒子2を高純度ダイヤモンド粒子5と呼ぶ。
【0042】
図2は本発明に係るダイヤモンド粒子2の精製方法に使用される精製装置8の概略構成図である。この精製装置8は、加熱用のマントルヒータ10と、混酸溶液13を投入した容器12と、加熱温度を制御する加熱制御装置30から構成されている。
【0043】
混酸14は濃硫酸(H2SO4)と濃硝酸(HNO3)を適当比で混合した液体で、この混酸14の中に炭素不純物層6を有したダイヤモンド粒子2が分散されて混酸溶液13が構成されている。
【0044】
容器12の上部中央から突出した中央管16には排気管18が連接され、この排気管18には冷却管20が内装されている。排気管18の頂部には排気端24が設けられている。
【0045】
混酸溶液13がマントルヒータ10で加熱されると、蒸発したガスが排気管18を上昇する。この上昇過程で冷却管20を矢印方向に流通する冷却水22により蒸発ガスは冷却され、排気端24から排気ガス26となって大気中に排気される。
【0046】
混酸溶液13の温度は熱電対28により計測され、この温度信号は加熱制御装置30にフィードバックされて、加熱制御装置に30より混酸溶液13は所望の温度に保持される。混酸14は濃硫酸と濃硝酸の混合液体であり、本発明は濃硫酸中における濃硝酸の炭素不純物除去作用に着目してなされたものである。次に、濃硝酸の作用について説明する。
【0047】
本発明者等は、濃硝酸が沸騰状態又は過沸騰状態(両者を沸騰状態と云う)において、ダイヤモンド粒子2から炭素不純物、即ち炭素不純物層6を除去する作用を有していることを発見した。濃硝酸は硝酸水溶液として提供され、その沸点は硝酸濃度が69.8%の硝酸水溶液で123℃であり、沸点は硝酸濃度によって多少変動する。従って、ここでは濃硝酸の沸点は約120℃としておく。
【0048】
他方、濃硫酸は通常、硫酸液として提供され、市販の濃硫酸は硫酸濃度が96%で、その沸点は317℃である。硫酸濃度によって沸点は多少変動し、ここでは濃硫酸の沸点は約330℃としておく。
【0049】
本発明者等は、ダイヤモンド粒子2を濃硫酸に分散させて各種温度で浄化処理を行ったが、ダイヤモンド粒子2から炭素不純物は除去できなかった。即ち、濃硫酸単独による浄化処理前と浄化処理後のダイヤモンド粒子2のラマンスペクトルを測定したが、ラマンスペクトルに殆ど変化は見られず、濃硫酸単独では炭素不純物層6を除去(洗浄)することは困難であると結論した。このラマンスペクトルの詳細については後述する。
【0050】
次に、濃硫酸に濃硝酸を混入した混酸でダイヤモンド粒子2を加熱処理すると、後述するラマンスペクトルに顕著な変化が現れた。加熱温度を濃硝酸の沸点以上で濃硫酸の沸点以下に設定して加熱洗浄処理を行った結果、30分以上、好ましくは1時間以上の処理で炭素不純物の中でもグラファイト成分の除去が効率的に行われることが分かった。勿論、加熱時間は濃硝酸濃度と加熱時間に依存し、高濃度・高温加熱では洗浄時間を短縮でき、15分以上でも洗浄効果を発現する。洗浄時間が長くなるほど洗浄効率は漸増するが、通常条件では1時間の処理で十分なる洗浄効率が得られる。例えば5時間以上加熱しても良いが、次第に濃硝酸が蒸発分解してゆくから洗浄効率は顕著には増加しない。
【0051】
前述したように、加熱温度は濃硝酸の沸点以上(約120℃)で濃硫酸の沸点以下(約330℃)に設定される。加熱温度を260℃、280℃、300℃、320℃に設定して洗浄処理を行った結果、加熱温度が上昇するほど洗浄効率は増加した。しかし、260℃でも十分な洗浄効率が得られた。
【0052】
また、濃硫酸の作用は硝酸の沸騰温度を自在に調整できる点になる。濃硝酸単独の沸点は約120℃であるが、濃硫酸に混合した状態では、加熱される濃硫酸の熱浴の中で、濃硝酸は沸騰状態又は過沸騰状態(沸点以上の温度での沸騰)になる。この両沸騰状態を本発明では濃硝酸の沸騰状態と表現している。濃硫酸が沸騰しない温度範囲(約330℃以下)で、濃硝酸の沸騰温度を調節できる。
【0053】
例えば、混酸を280℃で加熱すると、濃硫酸は沸騰状態にはないが、濃硝酸は硫酸中で沸騰状態になる。沸騰状態にある濃硝酸がダイヤモンド粒子の表面にどのように攻撃して炭素不純物を除去するかの詳細なメカニズムは現段階では不明である。しかし、洗浄前と洗浄後のラマンスペクトルを比較すると、ダイヤモンド成分に対するグラファイト成分や非晶質炭素成分や直鎖炭素成分のスペクトルが急減していることが分かる。
【0054】
濃硫酸に対する濃硝酸の容積の比率、即ち濃硝酸の容積濃度が0.5〜40(容積%)で効果的な洗浄処理が行われることが分かった。0.5(容積%)未満では硝酸の洗浄効率が十分ではなく、40(容積%)を超えると混酸の温度上昇が十分ではなくなる。より好ましくは、濃硝酸濃度が1〜30(容積%)であれば効果的な洗浄が行える。
【0055】
次に、図2に示される精製装置8の作動について説明する。加熱制御装置30によりマントルヒータ10を加熱制御して混酸溶液13を例えば280℃に設定する。この加熱により混酸溶液13は対流しながら攪拌され、この攪拌状態の中で濃硝酸は沸騰する。濃硝酸は沸騰しながらダイヤモンド粒子2を攻撃してその表面にある炭素不純物層6を除去してゆく。
【0056】
濃硝酸は次第にH2OとNOXに分解され、これらの分解ガスは排気管18を上昇しながら冷却され、排気端24から排気ガス26として大気中に排気されてゆく。従って、混酸溶液13における濃硝酸濃度は次第に低下してゆく。
【0057】
混酸溶液13の温度は熱電対28により常に測定され、この温度信号は加熱制御装置30にフィードバックされる。この温度測定を同時に行いながら、加熱制御装置30は混酸溶液13を所望の温度に保持制御する。
【0058】
図3は本発明に係るダイヤモンド粒子精製方法の第1方法を説明する工程図である。(3A)では、硫酸(H2SO4)と硝酸(HNO3)からなる混酸にダイヤモンド粒子が投入分散される。混酸溶液13は260〜320(℃)の範囲内の温度に設定されて0.5〜5(時間)に亘って加熱される。この加熱により、ダイヤモンド粒子2から炭素不純物層6が除去され、高純度ダイヤモンド粒子5となる。
【0059】
(3B)では、加熱制御装置をオフにして混酸溶液13が冷却(cooling)される。混酸溶液13の温度が低下すると、分散されていた高純度ダイヤモンド粒子5が容器12の底部に沈殿(Precipitation)する。
【0060】
(3C)では、混酸溶液13を純水に置換し、沈殿している高純度ダイヤモンド粒子5を水で洗浄(Water Washing)する。この操作を何回か繰り返して高純度ダイヤモンド粒子5に付着している混酸を完全に洗い流す。最後に遠心分離(Centrifugal Separation)により高純度ダイヤモンド粒子5を取り出す。
【0061】
(3D)では、取り出された高純度ダイヤモンド粒子5を適温に加熱して付着している水分を蒸発(Water Evaporation)させ、高純度ダイヤモンド粒子5を乾燥(Drying)させる。このようにして高純度ダイヤモンド粒子5が得られる。
【0062】
図4は本発明に係るダイヤモンド粒子精製方法の第2方法を説明する工程図である。ダイヤモンド粒子2の粒径(直径)が小さくなると、多数のダイヤモンド粒子2が相互に付着して団子状態になる場合が多い。特に、その直径がナノメートルサイズになると団子状態がよく出現する。この団子状態の粒子を2次ダイヤモンド粒子と呼び、この2次ダイヤモンド粒子の直径はダイヤモンド粒子の直径よりかなり大きくなるのは当然である。
【0063】
2次ダイヤモンド粒子を洗浄処理すると、その外周面は洗浄されるが、ダイヤモンド粒子相互の接合面は内部に隠れているため洗浄されない。従って、炭素不純物を確実に除去するため、洗浄処理を行う前に、2次ダイヤモンド粒子を個々のダイヤモンド粒子に分解する処理を行う。
【0064】
(4A)では、純水の中に2次ダイヤモンド粒子の粉末を分散させ、この分散水溶液に超音波振動を加える。この超音波処理によって、2次ダイヤモンド粒子は個々のダイヤモンド粒子2に分解される。この処理を超音波分散(UltrasonicDispersion)と呼ぶ。
【0065】
(4B)〜(4E)の洗浄処理は前述した(3A)〜(3D)の洗浄処理と同一である。(4B)は混酸加熱処理、(4C)は冷却沈澱処理、(4D)は水洗・遠心分離処理、(4E)は水分乾燥処理である。各処理の作用効果は(3A)〜(3D)と同一であるから、その詳細な説明は省略する。
【0066】
図5は濃硝酸濃度10(容積%)で加熱温度280℃で1時間洗浄処理して得られた高純度ダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。10容積%とは、濃硫酸(Sulfuric Acid)の容積に対する濃硝酸(Nitric Acid)の容積の比率をパーセント化した値である。このラマンスペクトルは、514.5nmのレーザー光を高純度ダイヤモンド粒子に照射して得られた非弾性散乱スペクトルで、横軸はラマンシフト(Raman Shift)、縦軸はラマン散乱光の強度(Intensity)である。
【0067】
全強度(Total Signal)を炭素物質の種類に分解すると、実線のダイヤモンド強度(Diamond)、長破線のグラファイト強度(Graphite)、C=Cに基づく短破線の直鎖炭素強度(Normal Chain)から構成される。他方。後述する図6及び図7の一点鎖線は非晶質炭素強度(Amorphous Carbon)を表す。
【0068】
ダイヤモンド強度はダイヤモンド粒子核4に起因し、このダイヤモンドの電気的性質を乱す成分はグラファイトである。514.5nmのレーザー光を用いると、グラファイトの散乱効率はダイヤモンドの散乱効率の約100倍である。従って、グラファイト強度を100で割ることによってダイヤモンド強度と比較できる。スペクトルの強度を正確に表すため、スペクトルの面積を計算して得られる面積強度が使用される。
【0069】
図6は未処理のダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。洗浄処理を行っていないため、ダイヤモンド粒子核4の周囲に大量の炭素不純物層6が存在している。従って、ダイヤモンドスペクトルと比較して、かなり大きなグラファイトスペクトルが存在することが分かるであろう。
【0070】
洗浄処理前のラマンスペクトル(図6)と洗浄処理後のラマンスペクトル(図5)を対比すると、本発明の精製方法(洗浄処理)により、炭素不純物層6がかなりの程度まで除去されることが理解できる。
【0071】
図7は濃硫酸だけで洗浄処理されたダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。前述した従来技術では濃硫酸によって金属不純物が除去できると書かれている。従って、本発明が対象とする炭素不純物が濃硫酸だけの洗浄処理でどの程度まで除去できるかが比較のために測定された。加熱温度は280℃、洗浄処理時間は1時間である。
【0072】
濃硫酸処理(図7)と未処理(図6)を対比すると、ラマンスペクトルの全体像が殆ど同じであることが分かる。つまり、濃硫酸処理では炭素不純物8は殆ど除去できないことが分かる。但し、炭素不純物の種類に分解すると、図7に存在する1600(cm−1)付近の直鎖炭素スペクトルが図6には存在していない。この理由は試料となるダイヤモンド粒子2が異なることである。
【0073】
図5〜図7を総合して判断すると、濃硝酸が炭素不純物を攻撃して除去することが明白である。この濃硝酸の作用効果は従来技術には全く開示されておらず、本発明者等が初めて発見した現象である。濃硝酸が炭素不純物に対しどのようなメカニズムで作用するかは現在のところまだ十分には分かっていない。この新発見に基づいて、本発明者等は濃硫酸の熱浴の中で濃硝酸により炭素不純物を除去する本発明を完成させたものである。
【0074】
濃硫酸の沸点は約330℃と高いから、濃硝酸が沸騰する熱浴の温度を自在に調整できる。従って、本発明の精製方法(洗浄方法)は濃硝酸の沸点(約120℃)以上で濃硫酸の沸点(約330℃)以下の任意温度に熱浴温度を調整することにより、濃硝酸を沸騰状態に設定して炭素不純物を沸騰濃硝酸により効率的に除去するものである。
【0075】
図8は10容積%の濃硝酸濃度でダイヤモンド粒子を精製処理した場合におけるグラファイト混入率と処理時間との関係図である。この関係図の縦軸はグラファイト混入率(%)、横軸は処理時間(hour)である。グラファイト混入率はダイヤモンド成分の面積強度に対する散乱効率を考慮したグラファイト成分の面積強度の比率をパーセント化した量(Graphite/Diamond)である。
【0076】
図8及び後述する図9・図10では、ラマンスペクトル測定は457.9nmのレーザー光が使用された。この波長では、グラファイトのラマン散乱効率がダイヤモンドより約60倍であるが、前述した514.5nm(約100倍)よりもバックグラウンド信号が低減されるため、正確にグラファイト混入率が測定できる。
【0077】
280℃処理では、未処理が6.02%、1時間処理が2.24%、3時間処理が1.91%、5時間処理が1.88%となり、処理時間が長くなると共にグラファイト混入率が漸減する傾向にある。また、310℃処理では、1時間処理が1.13%、3時間処理が0.91%となり、280℃処理よりも洗浄効率が高くなった。
【0078】
この結果から、濃硝酸の沸騰温度を高くすると、洗浄効率が向上することが分かる。また、処理時間が長くなるほど洗浄効率が高くなるが、少なくとも30分処理すれば、グラファイト混入率を3%以下に低減できることが分かった。
【0079】
本発明者等の研究によれば、グラファイト混入率が3%以下のダイヤモンド粒子を用いれば、半導体や回路基板などにダイヤモンド粒子を電気絶縁材料として使用できることが分かっている。従って、本発明ではグラファイト混入率が3%以下のダイヤモンド粒子を高純度ダイヤモンド粒子と称している。
【0080】
以上の結果から、濃硝酸を沸騰状態で少なくとも30分以上、より好ましくは1時間以上加熱処理すれば、相当程度の炭素不純物を有したダイヤモンド粒子を浄化処理でき、グラファイト混入率が3%以下の高純度ダイヤモンド粒子を製造できることが分かる。前述したように加熱時間は濃硝酸濃度と加熱温度に依存し、15分以上の洗浄処理でも有効な洗浄効果が得られる。また。グラファイト混入率は低いほどダイヤモンド純度が高くなり、グラファイト混入率を1.5%以下にまで低減できれば、回路基板における絶縁性能は極めて改善され、実用に耐える高純度ダイヤモンド粒子を提供できる。
【0081】
図9は10容積%の濃硝酸濃度でダイヤモンド粒子を精製処理した場合におけるグラファイト混入率と酸温度との関係図である。この関係図の縦軸はグラファイト混入率で、横軸は酸温度(Acid Temperature)、即ち処理温度(沸騰温度)である。全てのデータの処理時間は3時間に設定されている。
【0082】
グラファイト混入率は、未処理で6.02%、260℃で2.07%、280℃で1.91%、300℃で1.51%、310℃で0.91%である。酸温度が上昇するとグラファイト混入率が漸減することが実証された。しかも酸温度が260℃以上ではグラファイト混入率は約2%以下にまで低減されており、不純ダイヤモンド粒子から高純度ダイヤモンド粒子を製造できることが分かった。
【0083】
前述したように、高純度ダイヤモンド粒子はグラファイト混入率が3%以下のダイヤモンド粒子である。図9の実測データからグラファイト混入率が3%になる酸温度を推定したところ、約180℃であることが分かった。従って、酸温度を180℃以上に設定すれば、洗浄処理により高純度ダイヤモンド粒子を製造できることが分かった。
【0084】
図10はダイヤモンド粒子を280℃及び310℃で1時間精製処理した場合におけるグラファイト混入率と濃硝酸濃度との関係図である。この関係図の縦軸はグラファイト混入率(%)で、横軸は容積%で表された濃硝酸濃度(Nitric Acid Density)である。容積%はVol.%として表記されている。
【0085】
濃硝酸濃度がゼロの場合は、濃硫酸だけで処理したことを示している。280℃の洗浄処理(精製処理)において、0Vol.%で10.7%、1Vol.%で2.52%、3Vol.%で2.10%、5Vol.%で2.29%、10Vol.%で2.24%であった。また、310℃の洗浄処理(精製処理)において、0Vol.%で8.14%、1Vol.%で2.42%、3Vol.%で1.89%、5Vol.%で1.70%、10Vol.%で1.13%であった。
【0086】
図10からグラファイト混入率が3%以下になるのは、濃硝酸濃度が0.5Vol.%以上であることが分かった。従って、濃硝酸濃度を0.5容積%以上に調整すれば、高純度ダイヤモンド粒子を製造できることが分かった。
【0087】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含することは云うまでもない。
【0088】
【発明の効果】
第1の発明によれば、0.5容積%以上の濃硝酸を濃硫酸に添加した混酸を調製し、この混酸中で濃硝酸を沸騰させながら炭素不純物を有したダイヤモンド粒子を加熱処理をするだけで、炭素不純物を除去して高純度ダイヤモンド粒子を製造することができる。濃硫酸は濃硝酸を沸騰状態に保持する熱浴として作用し、濃硝酸の沸騰現象を利用して炭素不純物を効率的に除去することができる。特に、ダイヤモンド粒子の比誘電率や比電気抵抗を阻害するグラファイト成分を効率的に除去できるダイヤモンド粒子の精製方法を提供する。
【0089】
第2の発明によれば、ダイヤモンド粒子が相互に結合した団子状態の2次ダイヤモンド粒子を超音波処理によって個々のダイヤモンド粒子に分離分散させ、得られたダイヤモンド粒子に対し精製処理を施すことによって、ダイヤモンド粒子の表面に付着した炭素不純物、特にグラファイト成分を効果的に除去することができる。
【0090】
第3の発明によれば、ダイヤモンド粒子を精製処理(洗浄処理)してもグラファイト成分が一部残留するから、散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において、グラファイト成分がダイヤモンド成分の3%以下になるように精製処理を施して高純度ダイヤモンド粒子を製造することにより、回路基板や半導体などの電気絶縁材料として活用することができる。
【0091】
第4の発明によれば、濃硫酸に対し40容積%以下の濃硝酸濃度に調製することにより、濃硫酸中における濃硝酸の沸騰を所望の温度で継続させることが可能になり、濃硝酸沸騰により効率的に炭素不純物を除去することができる。
【0092】
第5の発明によれば、加熱時間を30分以上に設定することにより、沸騰濃硝酸により有効に炭素不純物を除去することができる。処理時間を延長するほど洗浄効率は漸増するが、5時間も処理すれば十分な洗浄効果が得られる。
【0093】
第6の発明によれば、ダイヤモンド粒子に対し精製処理を複数回繰り返すことによって、ダイヤモンド粒子から高効率に炭素不純物を除去することができる。濃硝酸の沸騰により、濃硝酸は次第に分解して濃硝酸濃度は次第に低下する。そこで精製されたダイヤモンド粒子を再び新しい混酸に分散させて繰り返し同様の処理を行い、この反復処理により炭素不純物を高効率に除去することができる。
【0094】
第7の発明によれば、グラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下に低減されている高純度ダイヤモンド粒子が提供される。このグラファイト混入率を3%以下に抑えた高純度ダイヤモンド粒子であれば、ダイヤモンド粒子の電気的性質が極めて良好になり、更に1.5%以下にまで低減すれば回路基板や半導体などの電気絶縁材料として有効に活用できる。
【0095】
第8の発明によれば、ダイヤモンド粒子の直径が1〜100nmである高純度ダイヤモンド粒子が提供される。ダイヤモンド粒子の直径が1〜100nm、更に好ましくは1〜10nmになれば、ダイヤモンド粒子薄膜を形成したときに空隙率を増大化でき、その結果ダイヤモンド粒子薄膜の誘電率を効率的に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダイヤモンド粒子の精製方法によるダイヤモンド粒子2の構造変化を説明する概略断面図である。
【図2】本発明に係るダイヤモンド粒子2の精製方法に使用される精製装置8の概略構成図である。
【図3】本発明に係るダイヤモンド粒子精製方法の第1方法を説明する工程図である。
【図4】本発明に係るダイヤモンド粒子精製方法の第2方法を説明する工程図である。
【図5】濃硝酸濃度10(容積%)で加熱温度280℃で1時間洗浄処理して得られた高純度ダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。
【図6】未処理のダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。
【図7】濃硫酸だけで洗浄処理されたダイヤモンド粒子のラマンスペクトル図である。
【図8】10容積%の濃硝酸濃度でダイヤモンド粒子を精製処理した場合におけるグラファイト混入率と処理時間との関係図である。
【図9】10容積%の濃硝酸濃度でダイヤモンド粒子を精製処理した場合におけるグラファイト混入率と酸温度との関係図である。
【図10】ダイヤモンド粒子を280℃及び310℃で1時間精製処理した場合におけるグラファイト混入率と濃硝酸濃度との関係図である。
【図11】爆発衝撃法によりダイヤモンド粒子を製造する方法の概略装置図である。
【図12】爆発衝撃法により製造されたダイヤモンド粒子の概略断面図である。
【図13】表面技術に記載されたダイヤモンド粒子を精製する従来の高温酸処理法の工程図である。
【符号の説明】
2はダイヤモンド粒子(不純ダイヤモンド粒子)、4はダイヤモンド粒子核、5は高純度ダイヤモンド粒子、6は炭素不純物層、8は精製装置、10はマントルヒータ、12は容器、13は混酸溶液、14は混酸(H2SO4+HNO3)、16は中央管、18は排気管、20は冷却管、22は冷却水、24は排気端、26は排気ガス、28は熱電対、30は加熱制御装置、40は耐爆容器。
Claims (8)
- 濃硫酸に対し0.5容積%以上の濃硝酸を添加した混酸を調製し、ダイヤモンド粒子核の表面に炭素不純物を有したダイヤモンド粒子を用意し、このダイヤモンド粒子の粉末を前記混酸に分散させて混酸溶液を調製し、この混酸溶液を濃硝酸の沸点以上で濃硫酸の沸点以下に調整された温度で加熱して、熱浴としての濃硫酸の中で沸騰する濃硝酸の作用で前記ダイヤモンド粒子から炭素不純物を除去することを特徴とするダイヤモンド粒子の精製方法。
- 前記ダイヤモンド粒子が相互に結合して団子化した2次ダイヤモンド粒子からなる粉末を適当な溶媒に分散させ、この溶媒を超音波処理して2次ダイヤモンド粒子を個々のダイヤモンド粒子に分解し、このダイヤモンド粒子を前記混酸に分散させる請求項1に記載のダイヤモンド粒子の精製方法。
- 前記炭素不純物の除去処理を行った結果、残留した炭素不純物成分のうちグラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下にまで低減される請求項1又は2に記載のダイヤモンド粒子の精製方法。
- 前記濃硫酸に対する濃硝酸の添加量が40容積%以下である請求項1又は2に記載のダイヤモンド粒子の精製方法。
- 前記加熱時間が30分以上である請求項1又は2に記載のダイヤモンドナノ粒子の精製方法。
- 請求項1に記載のダイヤモンド粒子の精製方法を、ダイヤモンド粒子に対し複数回繰り返すことによってダイヤモンド粒子から高効率に炭素不純物を除去することを特徴とするダイヤモンド粒子の精製方法。
- ダイヤモンド粒子核の表面に炭素不純物を有したダイヤモンド粒子において、炭素不純物成分のうちグラファイト成分がダイヤモンド成分に対し散乱効率を考慮したラマンスペクトル信号の面積強度において3%以下に低減されていることを特徴とする高純度ダイヤモンド粒子。
- 前記ダイヤモンド粒子の直径が1〜100nmである請求項7に記載の高純度ダイヤモンド粒子。
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