JP2004018909A - 超微粒ダイヤモンド粒子を分散した金属薄膜層、該薄膜層を有する金属材料、及びそれらの製造方法 - Google Patents

超微粒ダイヤモンド粒子を分散した金属薄膜層、該薄膜層を有する金属材料、及びそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ダイヤモンド微粒子を薄膜層中に高濃度でかつ均質に分散したダイヤモンド微粒子―金属共析膜を提供すること。また、電気メッキ浴を用いて、メッキ法により、ダイヤモンド微粒子―金属共析膜を作成する改善された方法を提供すること。
【解決手段】層中にダイヤモンド粒子を分散した金属薄膜層であって、
(i)該金属薄膜層は、層厚が5nm(0.005μm)乃至35000nm(35.0μm)であり、
(ii)該ダイヤモンド粒子は、前記金属薄膜層の層厚方向の各レベルに亘ってほぼ均一に分散しており、
(iii)該金属薄膜層中の該ダイヤモンド粒子の含有率が1乃至12%であり、
(iv)該ダイヤモンド粒子はその粒径分布が、等価円換算で、粒径が16nm以下の粒径の粒子の数平均存在率が50%以上であり、
(v)50nmを超える粒径の粒子の数平均存在率が実質零%であり、
(vi)2nm未満の粒径の粒子の数平均存在率が実質零%であることを特徴とする金属薄膜層。
【選択図】    図22

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性懸濁液に安定に懸濁可能な粒径ナノメーター単位の超微粒ダイヤモンド(一般的に4nmから70nm、特に限定的には4nmから40nmの粒径を有し、ここではナノダイヤモンド又はUltra Dispersed Diamond又はUDDとも云う)、及び/又はこのナノダイヤモンドの数個(最低4個)〜数百個が凝集したUDD粉末(数平均粒径が一般に300〜500nmで、粒径1000nm以上の粒子、粒径30nm以下の粒子の存在は稀れ)を分散した金属薄膜層、該薄膜層を有する金属材料、及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、超微粒ダイヤモンド粒子を、例えばメッキ膜のような金属薄膜中に含有させること自体は知られており、また超微粒ダイヤモンド粒子により金属薄膜の物理的強度を増大させようとする試み、潤滑性を向上させて耐摩耗性を改善すること、低誘電率を利用して各種電子部品に用いようとする試みも行われている。例えば「空気清浄」第38巻第4号(平成12年)第238頁には、コンピュータ用デバイスとしてのULSI基板の低誘電率化を意図して粒径5nmのダイヤモンド粒子を水コロイド化しこれに界面活性剤としてポリエチレングリコールを加えたものをシリコン基板上に塗布乾燥し得た薄膜はエリプソメトリーによる屈折率測定から2.7程度の誘電率のものであることが記載されており、「塑性と加工」第41巻第474号(2000−7月)第716頁には、固体複合潤滑材料の開発の目的でクラスタダイヤモンド紛をアルミニウムマトリックス材中に分散燒結して複合材料とした場合にはクラスタダイヤモンドの含有率が1 vol %のときが摩擦係数が最小であるが摩擦係数は意外に改善されなかった点が今後の課題であることが記載されており、「Diamond and Related Materials Vol.9(2000)pp.1600−1603」には、Si基板上に設けた粒径6nm程度のダイヤモンド微粒子の導電性は温度に依存し273°Fまでの温度上昇に伴って低下しその後は温度上昇に伴って上昇して10 Ω cm程度になることが記載されており、「J.Appl.Phys.Vol.87,No.11(2000)pp.8187−8191」には、50nm径の超微粒子ダイヤモンド粒子を基板上に印刷により設ける技術について記載されており、「New Diamond and Frontier Technology(in Rusia) Vol.9,No.4(1999) pp.273−282」には、高爆薬の爆発により製造した超分散ダイヤモンド(UDD)の金メッキ浴を用いて作製した金―ダイヤモンド複合膜の場合、金中のUDD濃度は1wt.% を超える濃度になることはなく、金薄膜層の深部よりも表面の方がUDD濃度が高いという問題があるものであるが、それでも金の単一薄膜に比較して、金―UDD複合膜は一応の高硬度を示し、耐摩耗性がある程度向上したことが記載されており、「Diamond films technology Vol. 7,No.5/6 (1997)pp.273−276」には、粒径5〜10nmのダイヤモンドナノ粒子を分散させたコロイド溶液(0.01ct/リットルという希薄液)中で、n型(100)Si基板を陽極、Ptを陰極とし、電極間距離8mm、印加電圧25〜100Vで、0〜30分間電気泳動を行い、ダイヤモンドナノ粒子を基板上に核生成させたところ、基板上のダイヤモンド種結晶は電気泳動時間と共に増加し、30分で核密度が70個/10cmとなったことが記載されており、「Journal of Chemical vapor deposition Vol.6,No.1 (1997)pp.35−39」には、UDD粉末を蒸留水中に超音波を用いて分散させて遠心分離してコロイド液体を得、これを平滑基板上に塗布乾燥させて作製したヒドロゾルのコロイド薄膜の場合には150℃に加熱しても水がとれず、UDD粉末の長期保存のため有効な方法であることが記載されている。
【0003】
また、特公昭63−33988号公報には、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素等の微小砥粒をカチオン系界面活性剤により親水性を帯びさせ、ニッケル、銅等の電気メッキ浴に分散させて、電解することにより陰極上の台金上に金属と砥粒を同時に析出させることにより電着砥石を製造することが記載され、特開平4−333599号公報には、潤滑性と耐摩耗性に富み、表面が平滑で、接触時、摺動時に相手部材を傷付けない機器を提供する目的で、ダイヤモンド微粒子を金属マトリックス材料中に含むダイヤモンド微粒子―金属(ニッケル、ニッケルコバルト合金、ニッケルタングステン合金、クロム、コバルト、コバルト合金、銅)共析膜をメッキ法により作成する際、メッキ浴中のダイヤモンド微粒子の分散を安定化するには、メッキ浴に超音波処理を施すこと、メッキ浴中のダイヤモンド微粒子の含有量を20ct/リットル以下(1カラットは0.205gであるので4.1g/リットル以下)の希薄縣濁液に維持すべきこと、界面活性剤を添加することが記載されている。
【0004】
このように、従来技術においては、いくつかの問題があり、特に、ダイヤモンド微粒子を分散した電気メッキ浴を用いて、メッキ法により、ダイヤモンド微粒子―金属共析膜を作成する際、ダイヤモンド微粒子のメッキ浴中での分散性は乏しく、そのため、金属膜の性質を充分改善するに必要な量のダイヤモンド微粒子を供給するための高い濃度でメッキ浴中に安定に分散させておくことができず、したがって、生成金属膜中のダイヤモンド微粒子の含量を高くすることができず、かつ、ダイヤモンド微粒子を金属膜中に均一に分散したものを形成することができないという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、上記従来技術に鑑み、ダイヤモンド微粒子を薄膜層中に高濃度でかつ均質に分散したダイヤモンド微粒子―金属共析膜を提供することにある。また、電気メッキ浴を用いて、メッキ法により、ダイヤモンド微粒子―金属共析膜を作成する改善された方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、本発明の(1)「層中にダイヤモンド粒子を分散した金属薄膜層であって、
(i)該金属薄膜層は、層厚が5nm(0.005μm)乃至35000nm(35.0μm)であり、
(ii)該ダイヤモンド粒子は、前記金属薄膜層の層厚方向の各レベルに亘ってほぼ均一に分散しており、
(iii) 該金属薄膜層中の該ダイヤモンド粒子の含有率が1乃至12%であり、
(iv)該ダイヤモンド粒子はその粒径分布が、等価円換算で、粒径が16nm以下の粒径の粒子の数平均存在率が50%以上であり、
(v)50nmを超える粒径の粒子の数平均存在率が実質零%であり、
(vi)2nm未満の粒径の粒子の数平均存在率が実質零%であることを特徴とする金属薄膜層」、(2)「該金属薄膜層の金属材料が、Au,Cr,Cu,In,Mo,Ni,Pd,Rh,V又はWであることを特徴とする前記第(1)項に記載の金属薄膜層」、(3)「該金属薄膜層の層厚が32nm(0.032μm)乃至30000nm(30.0μm)であることを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の金属薄膜層」、(4)「前記ダイヤモンド粒子はその粒径分布が、等価円換算で、粒径が16nm以下の粒径の粒子の数平均存在率が70%以上であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれか1に記載の金属薄膜層」、(5)「前記ダイヤモンド粒子は、SEMによる画像解析で長軸の短軸に対する比が2.2以下の存在率の粒子の出現率が、実質100%であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれか1に記載の金属薄膜層」、(6)「前記ダイヤモンド粒子は、SEMによる画像解析で長軸の短軸に対する比が1.4以下の粒子の出現率が、70%以上であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれか1に記載の金属薄膜層」により達成される。
【0007】
また、上記目的は、本発明の(7)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれか1に記載の金属薄膜層を担体金属表面上に有することを特徴とする金属材料」、(8)「メッキ液中にダイヤモンド微粒子を懸濁したメッキ浴を用いて、電解メッキ法により、ダイヤモンド粒子を分散した金属薄膜層を形成する方法であって、該メッキ浴に、(i)粒径分布が、等価円換算で、粒径が16nm以下の粒径の粒子の数平均存在率が50%以上であり、50nmを超える粒径の粒子の数平均存在率が実質零%であり、2nm未満の粒径の粒子の数平均存在率が実質零%であるダイヤモンド粒子を金属メッキ液1リットル中に0.01g〜120gの濃度で懸濁させ、(ii) 前記ダイヤモンド粒子を該金属薄膜層の層厚方向の各レベルに亘ってほぼ均一に分散している該金属薄膜層の層厚が40nm(0.04μm)乃至60000nm(60.0μm)になるまで電解を行なう各段階を有することを特徴とするダイヤモンド粒子を分散した金属薄膜層を形成する方法」により達成される。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の該「層中にダイヤモンド粒子を分散した金属薄膜層」は、ナノメーター粒径のダイヤモンド単位が数個〜数百個、分離困難な状態で凝集し、粒度分布が狭い超微粒ダイヤモンド(UDD)粉体、及び、このUDDを含み分散安定性に優れた水性懸濁液を用い、メッキ法(電解又は無電解メッキ)により達成することができる。
そして、このような超微粒ダイヤモンド(UDD)粉体、及び、このUDDを含み分散安定性に優れた水性懸濁液としては、例えば非限定的に説明すると、我々等が先に開発、提案(特願2001−262303号、特願2002−173167号)した、新規なUDD粉末、このUDDを含み分散安定性に優れた水性懸濁液を効果的に用いることができる。これは、充分に精製されグラファイト質炭素及び無定形炭素を実質的に含まず、活性な表面積が従来のダイヤモンドに比し10倍程大きく、かつ、単位表面積当りの活性部位の密度が従来のダイヤモンドに比し極めて大きいため表面活性に優れ、液中での分散安定性及び金属膜中へ分散安定性に優れたものであるが、本発明で使用される超微粒ダイヤモンド(UDD)粉体、及び、その水性懸濁液は、無論、前記特願2001−262303号明細書記載のものに限らず、他のほぼ同様のUDD粉体、及び、UDD水性懸濁液を用いることができる。
ところで、該明細書中には、「水99.95〜84重量部中に、(i)72〜89.5%の全炭素、0.8〜1.5%の水素、1.5〜2.5%の窒素、10.5〜25.0%の酸素の乾燥時元素組成比を有し、(ii)体積平均粒径が50nm±25nmの範囲にあり、粒子径は10nm〜100nmのものがほとんど(数平均で80%以上、重量平均で70%以上)であり、(iii)乾燥時、Cu、Kα線を線源とするX線回析スペクトル(XD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)が43.9°に最も強いピークを有し、73.5°、95°に特徴的な強いピークを有し、17°に強く偏在したハローがあり、26.5°にピークが実質的になく、(iv)乾燥時、比表面積が1.50×10/kg以上で、実質的に全ての表面炭素原子がヘテロ原子と結合しており、0.5m/kg以上の全吸収空間を有するダイヤモンド粉を、0.05〜16重量部含有することを特徴とするダイヤモンド微粒子懸濁液」が開示され、
またこの縣濁液から得られる「(i)72〜89.5%の全炭素、0.8〜1.5%の水素、1.5〜2.5%の窒素、10.5〜25.0%の酸素の元素組成比を有し、(ii)粒径1000nm以上の粒子が存在せず、粒径30nm以下の粒子が存在せず、数平均粒径(φMn)が150〜650nmの狭分散形であり、(iii)Cu、Kα線を線源とするX線回析スペクトル(XD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)が43.9°に最も強いピークを有し、73.5°、95°に特徴的な強いピークを有し、17°に強く偏在したハローがあり、26.5°にピークが実質的になく、(iv)比表面積が1.50×10/kg以上で、実質的に全ての表面炭素原子がヘテロ原子と結合しており、0.5m/kg以上の全吸収空間を有することを特徴とするダイヤモンド粉末」が開示されている。
【0009】
そして、該「ダイヤモンド微粒子懸濁液」及び「ダイヤモンド粉末」は、好ましくは「比密度が3.20×10kg/m〜3.40×10kg/mであり、  赤外線(IR)吸収スペクトルにおける吸収が、3500cm−1付近に最も強い幅広い帯域を示し、1730〜1790cm−1の吸収が、前後に幅広く拡がって偏奇し、1170cm−1付近に強い幅広い帯域を示し、610cm−1付近に中程度の強度の幅広い帯域を示すもの」である。
【0010】
また、金属薄膜層について、「(i)72〜89.5%の全炭素、0.8〜1.5%の水素、1.5〜2.5%の窒素、10.5〜25.0%の酸素の元素組成比を有し、(ii)粒径1000nm以上の粒子が存在せず、粒径30nm以下の粒子が存在せず、数平均粒径(φMn)が150〜650nmの狭分散形であり、(iii)Cu、Kα線を線源とするX線回析スペクトル(XD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)が43.9°に最も強いピークを有し、73.5°、95°に特徴的な強いピークを有し、17°に強く偏在したハローがあり、26.5°にピークが実質的になく、(iv)比表面積が1.50×10/kg以上で、実質的に全ての表面炭素原子がヘテロ原子と結合しており、0.5m/kg以上の全吸収空間を有することを特徴とするダイヤモンド粉末を、金属メッキ液1リットル中に、0.01g〜120gの濃度で懸濁してなる金属メッキ液」及び(40)「(i)72〜89.5%の全炭素、0.8〜1.5%の水素、1.5〜2.5%の窒素、10.5〜25.0%の酸素の元素組成比を有し、(ii)平均粒径が2nm〜70nmのものがほとんど(数平均で80%以上、重量平均で70%以上)であり、
(iii)Cu、K α線を線源とするX線回析スペクトル(XD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)が43.9°に最も強いピークを有し、73.5°、95°に特徴的な強いピークを有し、17°に強く偏在したハローがあり、26.5°にピークが実質的になく、
(iv)比表面積が1.50×10/kg以上で、実施的に全ての表面炭素原子がヘテロ原子と結合しており、0.5m/kg以上の全吸収空間を有するUDDU粒子を、0.1〜0.2%含有する厚さ0.1〜350μmの金属膜」等が開示されている。本発明においては、このようなUDDの縣濁液を有利に用いることができる。
【0011】
前記のように、本発明では、前記分散安定性(縣濁安定性)に優れた粒径ナノメーター単位の超微粒ダイヤモンド(ここではナノダイヤモンドとも云い、このナノダイヤモンドの最低4個、一般的には数十個〜数千個、一般的には数十個〜数百個の分割困難な凝集体をUltra Dispersed Diamond又はUDDとも云う)、および、このUDDを含み分散安定性に優れた水性懸濁液を効果的に使用することができる。
【0012】
従来技術における径がナノメーター単位の超微粒子ダイヤモンドは、比表面積(m/g)が小さく、かつ単位表面積当りの活性部位密度が小さいため、また、粒度分布に大きな幅があって比較的大径の粒子も少量含むため、液体媒体中での分散安定性が充分でなく、また活性度が充分とは云えず、また吸着性、他材料との接触安定性、混合安定性の点からも採用することが難かしい。
【0013】
このような衝撃法により製造したダイヤモンド質微粒子は、Bull.Soc. Chim.Fr.Vol.134(1997).pp875−890にて示されるように、通常、X線回析(例えば、管電圧30kV、管電流15mAで慣用のCu、Kα線による走査)した回析線におけるブラッグ角(2θ)が44°±2°のダイヤモンドの(111)結晶に帰属するピークの他に、未変換のグラファイト構造の存在を示すブラッグ角(2θ)が26.5°±2°の反射ピークが生じる。
【0014】
[UDD懸濁液、UDD粉末、それらの製造]
本発明では、「精製された粒径ナノメーター単位(例えば平均粒径4.2nm)の超微粒ダイヤモンド(ここではナノダイヤモンド,Ultra Dispersed Diamond又はUDDとも云う)、及びこのナノダイヤモンドの数個(最低4個)〜数百個が凝集した粒子(一般的に4nmから70nm粒径、特に限定的には4nmから40nm程度の粒径を有するもの)を含み分散安定性に優れた水性懸濁液」、及び「これから水を除去して得られたダイヤモンド粉末」を好ましく用いることができる。
すなわち例えば上記のように「(i)72〜89.5%の全炭素、0.8〜1.5%の水素、1.5〜2.5%の窒素、10.5〜25.0%の酸素の元素組成比を有し、水99.95〜84重量部中に、(i)72〜89.5%の全炭素、0.8〜1.5%の水素、1.5〜2.5%の窒素、10.5〜25.0%の酸素の乾燥時元素組成比を有し、(ii)平均粒径が2nm〜70nmの範囲にあり(数平均で80%以上、重量平均で70%以上)、(iii)乾燥時、Cu、Kα線を線源とするX線回析スペクトル(XD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)が43.9°に最も強いピークを有し、73.5°、95°に特徴的な強いピークを有し、17°に強く偏在したハローがあり、26.5°にピークが実質的になく、(iv)比表面積が1.50×10/kg以上で、実質的に全ての表面炭素原子がヘテロ原子と結合しており、0.5m/kg以上の全吸収空間を有するダイヤモンド粒子を、0.05〜16重量部含有するダイヤモンド微粒子懸濁液)」、及び「この懸濁液から得られ該ナノダイヤモンド又はUDDが一般的には数個(最低4個)〜数十個〜数千個、一般的には数十個〜数百個、擬似凝集したUDD粉末(数平均粒径が一般に300〜500nmで、粒径1000nm以上の粒子、粒径30nm以下の粒子が存在しない好ましくは150〜650nmの狭分散形)」を好ましく用いることができる。
前記擬似凝集したUDD粉末は、酸性雰囲気の水媒体中で、例えば超音波分散処理することにより元のUDD粒子に分解させることができる。収率(1〜5%の収率)で製造することができる。
【0015】
Chemical Physics Letters,222(May,1994), pp.343−346(超ディスパースダイヤモンド(Ultra−Disperse Diamond)からのタマネギ状炭素)に記載されるように、粒径3.0〜7.0nm、平均粒径4.5nmのUDD自体は、従来公知である。
即ち、ダイヤモンド結晶のうち最も安定形の立方8面体のダイヤモンド粒子は、1683個の炭素原子からなり、このうち530個の炭素原子が表面原子であってこの場合の粒径は2.14nmであり、1683個の炭素原子からなる同じサイズの立方体ダイヤモンドは434個の炭素原子が表面原子であるのに対し、該文献には、粒径3.0〜7.0nm、平均粒径4.5nm、基本セル定数α=0.3573nmのUDDを爆薬のデトネイション法で作成することが記載されている。また、X線回析データから計算されるこのUDDの(111)反射の面間隔は0.2063nm(ダイヤモンド塊のD(111)反射の面間隔は0.205nm)であることが記載されている。
但し、密度の点だけ見ても、通常のダイヤモンド塊の基本セル定数α=0.35667nmで、前記先願明細書の実施例3の記載によれば、本発明で好ましく用いられるUDDは、基本セル定数α=0.3565nmであって、通常のダイヤモンド塊よりも低密度であるが非ダイヤモンド質炭素の除去精製がより完全であるためα=0.3573nmよりも高密度でありながら、活性度が高い。
【0016】
本発明におけるナノダイヤモンド粒子及びUDD粒子の粒径は、電気泳動光散乱光度計モデルELS−8000を用いた動的光散乱測定の結果によるものである。この電気泳動光散乱法の測定範囲は1.4nm〜5μmであり、この範囲にある粒子は、液中で並進、回転、屈折等のブラウン運動(Brownian motion)により、その位置、方位、形態を時云刻云生えているので、この現象を利用し、媒体中を沈降する粒子の大きさと沈降速度の関係から粒径を測定するものであり、ブラウン運動をしている粒子にレーザ光を照射すると粒子からの散乱光はそれぞれの粒径に対応したユラギが出るので、光子検出法を用いてこのユラギを観測し、結果を光子相関法(ランダム変動の解析手法の一つ;理化学k辞典)を用いて解析する。
また、本発明のナノダイヤモンド粒子及びUDD−金属の複合膜中におけるナノダイヤモンド粒子及びUDDの平均粒径及び粒度分布はSEM写真像の画像解析に基くものである。
【0017】
本発明におけるUDD、UDD懸濁液は、粗ダイヤモンドから製造することができる。この粗ダイヤモンド(以下、ブレンドダイヤモンド又はBDとも云う)は、前記特願2001−262303号に説明されているように、[Science,Vol.133,No.3467(1961), pp1821−1822]、特開平1−234311号公報、特開平2−141414号公報、[Bull.Soc. Chim.Fr.Vol.134(1997).pp875−890]、[Diamond and Related materials Vol.9(2000),pp861−865]、[Chemical Physics Letters,222(1994) pp343−346]、[Carbon,Vol.33, No.12(1995), pp1663−167]1、[Physics of the Solid State,Vol.42,No.8(2000),PP1575−1578]、[Carbon Vol.33,No.12(1995), pp1663−1671]、[K.Xu.Z.Jin,F.Wei and T.Jiang,Energetic Materials, 1,19(1993)(in Chinese)]、特開昭63−303806号公報、特開昭56−26711号公報、英国特許第1154633号公報、特開平3−271109号公報、特表平6−505694号(WO93/13016号)公報、[炭素],第22巻,No.2,189〜191頁(1984)、Van Thiei. M. & Rec.,F. H.[J. Appl. Phys. 62, pp. 1761〜1767(1987)]、特表平7−505831号(WO94/18123号)又は米国特許第5861349号明細書に記載の、爆薬を用いた爆射法により製造することができる。好ましい製法の具体例については後程詳述する。
【0018】
このような爆射法で製造された粗ダイヤモンド(Blended Diamond:BD)は、数10−数100nm、場合によっては数百nm径から数千nmまでの、UDD及び非グラフアイトからなる形のものであり、さらに、1.5−7nm径の極く小さいナノクラスターサイズのダイヤモンド単位(ナノダイヤモンド)が強固に凝集し、機械的に破壊することが不能又は極く困難な凝集体である。換言すれば、最低4個、普通10数個から数百のナノダイヤモンドの強固な凝集体であり、BDはUDDの集合物であって、極く少量の微小(1.5ナノミクロン以下)アモルファスダイヤモンド及びグラフアイト、非グラファイト炭素超微粒子が検出される。
【0019】
本発明で好ましく使用されるUDDの製造においては、爆薬の爆射による転移によって生じた縮合炭素相を、液相中で段階的に酸化処理することにより非ダイヤモンド構造の部分を分解する。酸化には好ましくは硝酸が用いられる。所望により、金属酸化物の不純物を溶出するため、予じめ塩酸で処理することもできる。先ず初めに、粗ダイヤモンド(BD)を包接する縮合炭素相を酸化分解してダイヤモンド部分を炭素相から分離採取する。
【0020】
次に、粗ダイヤモンド(BD)の表面部分を覆う非ダイヤモンド炭素を酸化分解及び酸化エッチングして除去し、更に、ダイヤモンド表面の1部を形成している非ダイヤモンド炭素を酸化エッチングして除去する。酸化エッチングの後には非ダイヤモンド質炭素のより完全な除去のため、小規模爆発を系内で伴う中和精製を行なう。ダイヤモンド部分表面を覆う非ダイヤモンド炭素及びダイヤモンド表面の1部を形成している非ダイヤモンド炭素は、主に、ダイヤモンド合成反応としての爆薬の爆射による転移の過程で、一旦合成されたダイヤモンドが、速やかに減少した圧力及び未だ充分に高い温度の影響により、元のグラファイトに再度戻る転移反応によって生じたものと思われる。ダイヤモンドの表面部分を覆う非ダイヤモンド炭素及びナノダイヤモンドの表面層の1部を形成している非ダイヤモンド炭素の、酸化分解及び酸化エッチングによる除去は、同時に遂行することができ、又は好ましく順次遂行することができる。
【0021】
精製された生成物(UDD)を構成するナノダイヤモンドは、コヒーレント光電場散乱(CSF)による平均粒径が42±2×10−10mであり、ダイヤモンド格子構造を有するUDD核部の性質、及びUDD全体に分散し格子を形成せず1.5×10−10m未満の原子間隔を有する微少量の炭素原子の凝集体も、測定の結果検知されたが、1方、別法の測定結果によれば、精製された生成物の粒子内部界面にも極微少量の炭素原子の凝集体の性質が検知され、その相互原子間隔はガウス分布をとることから、粒子内部界面の炭素原子の凝集体はアモルファスであることが分かった。
【0022】
従来のこの種のUDDは、一般に、(2.5〜3.5)×10/gの比表面積、及び、(0.3〜1.0)×10−3/kgの孔部容積を有する。また、1273°Kに加熱したときに比表面積の減少がない。また、従来のUDDは、サスペンジョンの場合、粒子サイズは最大1000×10−6mであるが、これを乾燥した場合、凝集して粒径分布が多分散の粉体となり、不活性雰囲気中で加熱した場合、873°Kからスフェロールライト(sphrollite)の形をとるUDD粒子が増えはじめるが、このスフェロールライト形のUDD粒子は、(100〜150)×10Paの圧力印加で崩壊させることができる。その後は再凝集による再度の多分散粉体を生じる可能性が少なくなる。
【0023】
これに対して、本発明で好ましく使用されるUDD粒子は、合成過程における非均一な条件のため、高密度の欠陥、大きい比表面(従来のものとは桁違いの1.50×10/kg以上の大きさ)を有し、かつこの大きな表面全体が、発達した高活性度を有し、過剰なエンタルピーを有する。また、p/p=0.995(ここで、pはNガスにより充填された孔内部の表面積を、pはNガスの単層を形成するための窒素ガス分圧を、それぞれ表す)に基く全吸収空間が0.5m/kg以上であって、この値も従来のこの種のものにおける値とは大きく異なる。これら性質は、本発明で好ましく使用されるUDDの有用性を裏付けるものである。
【0024】
さらなる特徴として、本発明で好ましく使用されるUDDには、非常に過酷な条件下でなければ除去することが困難な著しい数、量の揮発性物質及び固体不純物が表面に存在する。揮発性物質はCO、CO、N、HO、HSO、HNOのような酸からの残存物(化学的精製後)であり、固体不純物は非ダイヤモンド、金属の酸化物、カーバイドのような不溶性化合物、塩不純物である。結局、本発明で好ましく使用されるUDDは、72〜89.5%の全炭素、0.8〜1.5%の水素、1.5〜2.5%の窒素、10.5〜25.0%の酸素(従来の一般的なダイヤモンドは普通90〜99%の全炭素、0.5〜1.5%の水素、2〜3%の窒素、10%未満の酸素)の元素組成を有する。全炭素のうち90〜97%がダイヤモンド結晶であり、10〜3%が非ダイヤモンド炭素である。
【0025】
本発明で好ましく使用されるUDDのためのBDの不純物は、理論上(i)水溶性電解質(ionized)、(ii)ダイヤモンド表面に化学結合した加水分解性及びイオン性のもの(官能性表面基の塩の形のもの)、(iii)水不溶性のもの(表面のメカニカルな不純物、不溶性塩、不溶性酸化物)、(iV)ダイヤモンド結晶格子中に包含されるか又はカプセル化されたもの、に分けることができるが、前記(i)及び(ii)は、UDDの精製過程で形成されたものであり、基本的な(i)の水溶性電解質は水洗により除去することができるが、より効果的に除去するにはイオン交換樹脂で処理することが好ましい。
【0026】
本発明で好ましく使用されるUDDのためのBDの表面官能性基は、イオン源としての−COOH、−OH、−SOH、−NO、−NOのようなタイプの基であり、これら基は、少なくとも精製してUDDとした後にも残存し得るものであり、また精製工程でも設けられ得るものである。
而して、このダイヤモンドそれ自体、イオン交換材と考えることができるので、このUDDの水性懸濁液をイオン交換材により処理して表面基を非塩状態にすることは、後の使用を考えると効果的である。
【0027】
上記(iii)の水不溶性の不純物は、金属、金属酸化物、金属カーバイド、金属塩(硫酸塩、シリケート、カーボネート)のような分離したミクロ粒子と、分離できない表面塩、表面金属酸化物の双方からなる。これらを除去するため、即ち可溶性の形に変換するため、本発明においては酸が用いられる。
【0028】
本発明においては、各種方法を用いて、前記(i)乃至(iii)の不純物を40〜95%除去することができるが、しかし、不純物を完全に除去することはできず、また、本発明において、不純物を完全に除去することは必要不可欠ではない。前記(iii)の不純物の完全除去を別にしても、化学的方法による前記(iV)の不純物の除去は実質的でない。不純物を構成する基本的元素は、珪素、カルシウム、鉄、硫黄、チタン、銅、クロム、カリウムであり、これらは常に少量が実質的に存在する。発達した活性表面を有し本発明で好ましく使用されるUDDは、溶液中から不純物を吸収除去する能力を有するものあり、そのような用途に使用することができる。それ故逆に、幾つかの不純物、すなわち珪素、カリウム及び鉄の一部は、UDDの精製技術で用いられる水の硬度を低下させることができる。鉄は基本的な技術的不純物(つまり、爆射法に使用し易い材料)であり、1.0乃至0.5重量%以下の濃度に除去することは難かしい。鉄のそのような不純物量は主に表面に存在する。
【0029】
本発明で好ましく使用されるUDD粒子は、かなりの数及び量の揮発性不純物(最高10重量%)を含むが、0.01Paの真空中で熱処理によってこれらを精製することができ又は含有量を減少させることができる。この場合、適当な加熱温度は現時点では400℃まで、最適な加熱温度は250℃までである。
【0030】
BDを、硝酸を基にした各種酸化系で処理し、また、有機溶剤(炭化水素、アルコール)を基にした各種非酸化系で処理して、生成UDDの組成及び特性を検討した結果を次表に纏めて示す。
【0031】
【表1】
Figure 2004018909
【0032】
有機溶剤(炭化水素CnHn+2、及びアルコールCnHn+OH)によるBDの非酸化性処理は、UDD粒子の炭素スケルトンに影響を及ぼさず、表面官能基の変化を生じて、BDの元素組成を変化させる。即ち炭化水素及びアルコールのUDDへの結合、消費に伴って水素含有分及び酸素含有分が相対的に増加し、合計ヘテロ元素(水素、窒素、酸素)の数量は約2倍に増加する。
【0033】
[UDDの製造]
本発明において好ましく用いられるUDD懸濁液は、爆薬の爆射による爆射式でダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物(初期BD)を製造し、該ダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物を酸化処理し、生成した懸濁液からダイヤモンドを含有する相を分離する各段階を含むダイヤモンド粒子の懸濁水性液を製造する際に、前記酸化処理の後に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて、硝酸との間で分解反応を生起させて中和することにより得ることができる。
【0034】
前記酸化処理段階は、150℃〜250℃、14気圧〜25気圧で、少なくとも10〜30分間ずづ、複数回行なわれることが好ましい。また、前記酸化処理段階は、硝酸による酸化性分解処理と、該酸化性分解処理の後の硝酸による酸化性エッチング処理とからなり、前記硝酸との間で分解反応を生起させて中和する処理が、酸化性エッチング処理の後に行なわれることが好ましい。
【0035】
さらに、前記酸化性エッチング処理は、酸化性分解処理の際の圧力及び温度よりも高い圧力及び温度で行なわれることが好ましく、さらに、前記酸化性エッチング処理は、1次酸化性エッチング処理と、2次酸化性エッチング処理とからなり、該2次酸化性エッチング処理が、前記1次酸化性エッチング処理の際の圧力及び温度よりも高い圧力及び温度で行なわれることが好ましい。また、前記塩基性材料による中和段階で中和され生成した懸濁液からダイヤモンドを含有する相を分離する段階は、水を加えて傾斜することによりダイヤモンドを含有する相を、ダイヤモンドを含有しない相と分離することが好ましい。
【0036】
さらに、前記水で傾斜することにより得られダイヤモンドを含有する相を、ダイヤモンドを含有しない相と分離する処理の後さらに、懸濁液に硝酸を加え洗浄処理し、生成ダイヤモンド微粒子を含む下層懸濁液と上層排液とに分層処理し、生成ダイヤモンド微粒子を含む下層懸濁液を上層排液から分離する処理を行なうことが好ましい。また、前記生成ダイヤモンド微粒子を含む下層懸濁液を上層排液から分離する処理は、前記硝酸洗浄処理後の懸濁液を静置する処理であることができる。
【0037】
さらに、前記生成ダイヤモンド微粒子を含む下層懸濁液に、さらにPH調節及び濃度調節処理を施して、懸濁液が1.0〜7.9のPH値、好ましくは1.5〜6.95のPH値、より好ましくは2〜6.0のPH値、0.05〜16%のダイヤモンド微粒子濃度、好ましくは0.1〜12%のダイヤモンド微粒子濃度、より好ましくは1%〜10%のダイヤモンド微粒子濃度に調整することができる。
【0038】
したがって、本発明で好ましく用いられる改良されたUDD懸濁液は、爆薬の爆射による爆射式でダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物(初期BD)を製造し、該ダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物を酸化性分解処理し、精製された該ダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物を酸化性エッチング処理し、生成物を含む硝酸水溶液に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて、硝酸との間で分解反応を生起させて中和し、生成した懸濁液を水により傾斜し、傾斜段階を経た懸濁液に硝酸を加え洗浄して静置し、生成ダイヤモンド微粒子を含む下層懸濁液を上層排液から抜き取り、硝酸により洗浄し、洗浄された懸濁液を所望により遠心分離し、分離された懸濁液に、必要に応じてPH調節及び濃度調節を施してダイヤモンド懸濁水性液を調製する各段階を含む方法により得ることが出来る。
【0039】
また、本発明で好ましく用いられるダイヤモンド粉末は、前記ダイヤモンド微粒子懸濁液を、遠心分離してダイヤモンド微粒子を懸濁液から取り出し、400℃以下、好ましくは250℃以下の温度で、好ましくは非酸化性雰囲気下で乾燥することにより得ることができる。
【0040】
しかしながら、本発明のUDD水性懸濁液の場合には、長期間保存のための界面活性剤の添加は、必要不可欠でない。界面活性剤を添加しても分散安定が保持されることもあるが、界面活性剤を添加すると、UDD水性懸濁液の分散安定性を損なうこともある。特に該UDD水性懸濁液がペーステイな濃厚懸濁液を長期間保存する場合その傾向が強い。而して、本発明のUDD―金属複合膜は、典型的には例えば、該UDD水性懸濁液を含むメッキ浴の使用により好適に得ることができる。
【0041】
本発明のUDD―金属複合膜は、撮影したSEM画像の画像解析による層厚が5nm(0.005μm)乃至35000nm(35.0μm)であり、好ましくは32nm(0.032μm)乃至30000nm(30.0μm)である。5nmより薄い金属薄膜は、蒸着法やスパッタ法では制御可能であるがメッキ法では制御することが難かしく、即ち、作成手段に限りがある。また、35.0μmを超える膜厚の金属膜も、無論、長時間メッキや電鋳により作成することができるけれども、35.0μmを超える膜厚の金属膜の場合には、いわゆるスケールリダクションのための小型軽量、かつ膜の物理的強度、耐摩耗性向上が厳しく要求されるケースは比較的少なくなってくる。
【0042】
本発明のUDD―金属複合膜における「ダイヤモンド粒子が金属薄膜層の層厚方向の各レベルに亘ってほぼ均一に分散している」とは、後の詳細かつ具体的説明から明らかなように、ダイヤモンド粒子が平面方向に均一分散しているだけでなく、金属薄膜層中の基板側でも表面側でも同様に均一の濃度で分散していることを意味する。
【0043】
本発明のUDD―金属複合膜におけるUDD粒子の含有率は、0.8%以上12%以下であることが好ましく、より好ましくは1%乃至8%の範囲である。0.8%未満の場合にはUDD粒子を含有させた効果が一般的に乏しく、12%を超えると金属薄膜層中に均一に分散含有させるための制御が難かしくなる。
【0044】
使用するUDD粒子は好ましくは、等価円換算で、粒径が16nm以下の粒径の粒子の数平均存在率が50%以上と小粒径である上に、50nmを超える粒径の粒子、及び2nm未満の粒径の粒子が実質存在しない程に粒径分布が狭分散のものである。かつ、粒子の投影像における長軸と短軸の比が2.2以下のものが好ましく、1.4以下のほぼ粒径に近いものがより好ましい。
【0045】
本発明のUDD―金属複合膜を構成する金属としては、Au、Cr、Cu、In、Mo、Ni、Pd、Rh、V又はWが挙げられ、このうち特にAu、Cr、In、Mo、Ni、VはUDDをメッキ法により簡単に含ませることができ、かつUDDを含ませることにより物理的強度が著しく改善されるので実用的である。
【0046】
本発明で好ましく使用されるUDDは、ダイヤモンド特有の高硬度、低導電性であるに拘らず低誘電性、低感磁性等の優れた電気的磁気的特性、高潤滑性、高い熱伝導度及び優れた耐熱性、粒度分布幅が小さい超微粉末特有の優れた分散特性を有し、また、優れた表面活性、イオン特にカチオン交換性、金属材料及びセラミックとの高い親和性等を示す他、ダイヤモンド結晶のうち双方形結晶を除く特有の粒形、つまり、粒子の形が長方形又は板状の偏平形でなく、例えば立方体のように纏まった体積の形をしていることが多く、かつ、BDからの酸化性分解処理や酸化性エッチング処理により多孔質の活性表面が丸みを有していることが多い。
【0047】
このUDDは、無色透明であって、他材料に混合しても均一に充分分散しているので外観上ほとんどその存在を目視できず、また、固形組成物中に分散されていてもほとんど触知することができない。そのため、自動車部品金型、宇宙産業用機器材及び航空機用機器材、化学プラント、コンピュータ用又は電子機器要素及び部品又はOA機器用又はカメラ等の光学機器用要素及び部品及び磁気テープ又はCD等記録媒体の等の摺動性、潤滑性、耐摩耗性、耐熱性、耐熱膨張性、耐剥離性、耐水耐薬品及び耐ガス腐食性の改善、外観及び触感の改善、色調の改善、比重密度の改善のため用いることができるが、このUDDは、基本的な利点として、懸濁液、特に水性懸濁液とした場合に優れた分散安定性を示す。
【0048】
本発明の金属薄膜は、後ほど具体的かつ詳細な説明から明らかなように、高い機械的強度を示すが、これは、超微粒かつ粒径分布範囲が狭いUDDを高密度で含有するためであり、即ち、含有されるUDDが高い活性を有するものであるので薄膜層中に高濃度で導入可能であるためであり、かつ、粒径が極小さく粒径分布範囲が狭いためであると思われる。
【0049】
即ち、金属―ダイヤ複合メッキ膜には、耐摩耗性、マイクロ硬度、耐食性、低い多孔性、摩擦係数の低下、付着及び凝集、電解液の高い散乱性等の特性があるといわれており、UDDと金属との共折膜は、機械製作、造船、飛行機製作、工具製造、電子工学、電気技術、無線技術、医学、宝石産業で、使用が検討され、一部実用化されている。換言すれば、電気メッキでのUDDの利用は以下のような特徴ある優位性がある。
1.品質の向上、及び製品の競争力。
(I)優れた耐摩耗性及び高いマイクロ硬度(次表参照)
Figure 2004018909
(2)吸着性の向上及び摩擦係数の低下
(3)低い多孔性(UDDとZnとのメッキの場合、多孔性は6−8倍低下する。Snとの場合は、7倍、Auとは6倍、Agとは8倍、Cuとは気孔のないメッキが得られる)。
(4)陽極酸化アルミ膜の高い絶縁性(この膜の重量増加は2.0−3.5倍)
(5)耐食性(UDDとCuとのメッキ、重量の減少は通常のテストでは、見られない、Znとの耐食性は2−4倍となる)。
(6)電解液の散乱性の増加(UDDとCuとのメッキで3倍、Znとのメッキで1.5−2.0倍)
(7)弾性の向上(UDDとCuとのメッキで、弾性が2−4倍)
(II)製品の寿命が2−10倍となる。
(III) 材料、エネルギー、労力が節約(メッキの厚さが2−3倍となる)。
(IV) メッキラインの生産性が20−50%向上する。メッキ厚さの減少と膜形成速度の増加による。
(V) メッキ工程の環境特性が向上する。
(1) 化学ニッケルメッキの電解液にUDDを添加することにより、ニッケルメッキの寿命が4−9倍となる。
(2) 金属板でのUDD含有量は、全ての金属に対して0.1〜1.5重量%であり陽極酸化膜では0.5〜40重量%である。
金属層の厚さ110−6mにおいてUDDの比消費は、1カラット(210−4kg)/1m当りである。
(VI) 開発されたメッキは、以下の誘電特性を有する。
(1)−4000MHzで、誘電損失角tan δは膜厚に依存し、2.58−2.71に等しい。
(2)−5000MHzでは通過係数は、15.0、反射係数は12.4膜厚に依存する。
(3)−11000MHzでは、通過係数は、14.3であり、反射係数は12.4であり、膜厚に依存する。
(4) メッキは、物理機械特性及び仕事能力は、荷重2・10kg・m−2で保存される。
【0050】
微粒子集合体の変形に関し、一般に、固体材料例えば薄膜を構成する多数の微粒子からなる固体材料例えば薄膜や、微粒子を多層状態で充填含有する固体材料例えば薄膜において、これを変形するための応力を考えると、いま、微粒子含有多層構造内部にズレを生じる面に関して上下の微粒子群の2層に分け、上の微粒子群の層を下の微粒子群の層に対してxだけずらすための応力τは、簡単化して各層を構成する微粒子間の間隔bの周期的関数としておくことができ、次式、即ち、τ=ksin(2πx/b)の式で表わすことができる。
この「微粒子間隔b」は、或る特定粒子とこの粒子に隣接する他の粒子との間の距離であり、該「或る粒子」の中心と該「隣接粒子」の中心との間の距離であるが、両粒子が同じ粒径ものであれば、即ち「粒径」と換言することができることは勿論である(後程の垂直方向についての「微粒子面間距離a」についても同様である)。
ここで、xが小さい場合にはフックの法則が成り立つので、剛性率をμ、微粒子面間距離をaとおけば、τ=μ(x/a)の関係が成り立つ。また、前記のτ=ksin(2πx/b)の式において、ズレxが微粒子間隔bより充分小さい場合(ズレxが極小の場合)には、該式は、τ〜k(2πx/b)となる(昭和58年1月20日(株)培風館管発行、井形直道著「材料強度学」、第38頁参考)。
つまり、一般に、ズレに要する応力は、含有される微粒子の微粒子面間距離a、微粒子間隔bに反比例する。換言すれば、微粒子を多く充填含有する固体材料例えば薄膜においては、少なくとも機械的ズレに要する応力は、含有される微粒子の粒径に反比例して、大きくなるということになる。
【0051】
また、微粒子の多数充填物の該微粒子を内部転移するために要する応力については、別に、Hall‐Petchの関係式(前記「材料強度学」、第108頁参考)もある。
該Hall‐Petchの関係式は、内部転移に要する応力σと微粒子間の初期摩擦力σと微粒子の粒径dとの関係について、次式即ちσ=σ+k−1/2で表わされるとして、内部転移に要する応力σは、微粒子の粒径dの平方根に依存することを示している。ここで、kは温度により異なる定数である。
関係式によれば、内部転移に要する応力σは、粒子相互間の初期摩擦力σの大きさにもより、定数kにもよるが、いずれにしても、微粒子の粒径dが小さくなれば、内部転移に要する応力σがより必要になることを示している点は否めない。
そして、本発明の金属薄膜は、超微粒かつ粒径分布範囲が狭いUDDを高密度で含有するため、高い機械的強度を示すという事実は、微粒子集合体の変形に関するこれら従来説によく符合している。
【0052】
本発明で好ましく使用されるUDD微粒子懸濁液は、乾燥微粉末としたときのUDD炭素含有率が98.22%、酸化精製処理における酸化可能な残存炭素が0.93%、不燃焼性残渣が0.85%のUDDを水性相中に15.5%濃度で含有する1100g(UDD含有量170g)水性UDD懸濁液商品としたときに24ケ月の寿命を保証され、乾燥微粉末としたときのUDD炭素含有率が98.40%、酸化精製処理における酸化可能な残存炭素が0.85%、不燃焼性残渣が0.75%のUDDを水性相中に12.5%濃度で含有する2010g(UDD含有量251g)の他の水性UDD懸濁液も、商品としたときに24ケ月の寿命を保証される。
また、乾燥微粉末としたときのUDD炭素含有率が98.87%、酸化精製処理における酸化可能な残存炭素が0.73%、不燃焼性残渣が0.4%のUDDを水性相中に11.0%濃度で含有する552g(UDD含有量56g)の他の水性UDD懸濁液も、商品としたときに24ケ月の寿命を保証される。
さらに、乾燥微粉末としたときのUDD炭素含有率が98.8%、酸化精製処理における酸化可能な残存炭素が0.8%、不燃焼性残渣が0.4%のUDDを水性相中に11.5%濃度で含有する1044g(UDD含有量120g)の他の水性UDD懸濁液も、商品としたときに24ケ月の寿命を保証されるものである。
【0053】
本発明で好ましく使用されるUDDは、水性懸濁液であるときに、最高16%の濃度で、室温(15℃〜25℃)で約6ケ月間保存しても、UDDの凝集、沈殿を生じない。一般的に、水性組成物の品質低下程度は、保管温度が約10℃上昇する毎に倍増する。例えば、現在のメッキ処理は殆ど、加熱された高温操作下で行われるので、本発明で好ましく使用されるUDD水性懸濁液のこのような高温耐久性は、非常に有利となる。しかしながら通常は5℃〜70℃で保存するのが有利である。
【0054】
本発明で好ましく使用されるUDDは、その表面の各種カルボニル基の存在のためと思われるが、上記のような優れた分散安定性及び高い活性度を有し、N型半導体と類似の挙動を示し、水性懸濁液としたときに、弱酸性を示し、若干の導電性を有し、通常60℃或いは70℃の条件下での使用に耐えるが、そのような温度を超える条件下での使用は、避けることが好ましい。本発明で好ましく使用されるUDD水性懸濁液は、pH4〜10、好ましくは6〜7.5に調製される。懸濁液のpHが10を超えると不安定になり易い。
【0055】
特公昭63−33988号公報、特開平4−333599号公報、特開平8−20830号公報、材料試験技術、第40巻、第4号第95頁、及び、色材、第71巻第9号、第541頁〜547頁に記載されるように、ダイヤモンド微粒子のような粉体を懸濁するメッキ用電解液には、懸濁微粒子の分散安定化を図るため、通常、界面活性剤の添加が必須である。
【0056】
しかしながら、本発明で好ましく使用されるUDD水性懸濁液の場合には、界面活性剤の添加は、必要不可欠でない。界面活性剤を添加しても分散安定が保持されることもあるが、多くの場合、界面活性剤を添加すると、UDD水性懸濁液の分散安定性を損なう。したがって、本発明で好ましく使用されるUDD水性懸濁液は、例えば、典型的には電解メッキに好適に使用することができる。
【0057】
[UDD―金属の複合膜、その形成法]
前記のように、本発明のUDD―金属複合膜は、例えばメッキ法により前記UDD懸濁液を添加したメッキ浴を用いて作成することができる。
本発明で好ましく使用されるUDD水性懸濁液をメッキに使用する場合、対象金属としては、周期律表Ia族の金属、IIIa族の金属、Vb族の金属、VIa族の金属、VIb族の金属、VIII族の金属を挙げることができ、Ia族の金属としてはCu、Auを、IIIa族の金属としてはInを、Vb族の金属としてはVを、VIa族の金属としてはSnを、VIb族の金属としてはCr、Mo、Wを、VIII族の金属としてはNi、Pt、Rh、Pd、Luを好ましく用いることができ、又はこれらの合金を好ましく用いることができる。これらは通常、水溶性金属塩又は錯塩の形で用いられる。酸根は例えば塩酸、硫酸、硼酸、スズ酸、硼フッ化酸、クロム酸、シアン酸のような無機酸由来のものであっても或いはスルファミン酸、酢酸、ベンゼンジスルホン酸、クレゾールスルホン酸、ナフトールジスルホン酸のような有機酸由来のものであってもよい。
【0058】
本発明におけるメッキには、電解メッキ、無電解メッキ、及び電鋳が含まれ、メッキ浴(メッキ液)には、本発明で好ましく使用されるUDD水性懸濁液を、メッキ液1リットル中のUDDの濃度が0.01g〜120g、好ましくは0.05g〜32g、より好ましくは、1.0g〜16gになるように加えることができる。このようなUDD濃度は、本発明で好ましく使用されるUDD懸濁液の上記濃度からみて、非常に簡単に調整可能であることが明らかである。本発明のメッキ液はUDDの凝集がないので、従来に比し高濃度でUDDを含有していても、メッキ処理中に電極近傍に発生するガス泡によってもUDDの沈殿が回避され、また、メッキ処理中に通常施される撹拌によっても沈殿がより確実に回避される。メッキによる膜厚は、メッキ条件、メッキ膜の使用目的及び被メッキ支持体にもよるが、通常0.1〜350μmの範囲、好ましくは0.2〜100μmの範囲であり、例えば電解メッキではAuメッキの場合0.1〜0.5μm、Rhメッキの場合0.1〜10μm、Niメッキの場合3〜30μm、Crメッキの場合5〜100μmであり、膜厚が厚い電鋳ではNi電鋳の場合最大350μmである。
図1に示されるように、しかしながら、Alメッキの場合は、アノード(陽極)酸化によりAlが形成され、このAl膜は多孔性であるので、本発明で好ましく使用されるUDD粒子は孔中に不可逆的に入り込み、Al膜の特性を改善する。
【0059】
本発明で好ましく使用されるUDD水性懸濁液は、上記のように、攪拌なしの長期間保存下で最高16%の濃度で安定して使用することができる。メッキに用いる場合、懸濁液中のUDD濃度が高いと、メッキ膜中により多くの量を含有させることができ、例えば、1リットル中UDDを1g含有するNiメッキ液によればメッキ膜中のUDD含有量を0.2%/メッキ膜重量含有させることができ、1リットル中UDDを10g含有するNiメッキ液によればメッキ膜中のUDD含有量を0.7%/メッキ膜重量含有させることができ、懸濁液中のUDD含有率(g/メッキ液1リットル)の常用対数にほぼ比例してメッキ膜中のUDD含有率(10−2g/メッキ膜g)を増加させることができる。Niメッキの場合、1リットル中UDDを通常含有率1%/メッキ膜重量、最高含有率12%/メッキ膜重量(攪拌下)に近い量を含有させることができる。同様に、Agメッキの場合は通常含有率0.1〜0.2%/メッキ膜重量、最高含有率5%/メッキ膜重量(攪拌下)、Crメッキの場合は最高7.0%/メッキ膜重量(攪拌下)含有させることができる。
【0060】
しかしながら、極めて高濃度のUDD懸濁液は、UDDの沈殿、または凝集を生じ易く、安定性に欠け、また、低濃度のUDD懸濁液は、メッキ膜中のUDD含有率を低下し勝ちであるので、本発明で好ましく使用されるUDD懸濁液の濃度は、0.05〜16%のUDDである必要があり、好ましくは0.1〜12%の濃度、より好ましくは1〜10%の濃度である。0.05%未満の濃度ではメッキ金属膜の特性を改善するに充分な割合のUDDを金属膜中に含有させることが困難であり、16%を超える濃度では懸濁液の安定性に支障を生じることが多い。
【0061】
本発明で好ましく使用されるUDDは、表面に多量に存在するマイナス荷電性官能基のため、表面活性、親和性に優れ、また、粒径分布に大径粒子を含まず、狭い粒度分布を有するため、従来のダイヤモンド超微粒子と異なり沈殿を生じ難く、水性懸濁液中で、安定に懸濁している。先に記述したように、本発明で好ましく使用されるUDD懸濁液が水性のものである場合には界面活性剤の添加は必要不可欠ではなく、逆に、懸濁安定性を損なうことがある。これは、次のような機構に基くものと推測される。
【0062】
即ち、従来のダイヤモンド超微粒子の場合はカチオン性界面活性剤が添加されていたが、本発明の懸濁液にカチオン性界面活性剤を添加すると、図2(A)に模式的に示されるように、界面活性剤は、カチオン部位がUDD表面のマイナス荷電性の官能基に吸引され、界面活性剤の疎水性長鎖炭化水素基末端が外側を向いて配向されるため、親水和性がなくなる。
【0063】
一方、図2(B)に模式的に示されるように、本発明のマイナス荷電性UDD粒子は、メッキ液中でカチオン性の金属原子と引き合い一体化して、壊れ易くかつ再構築され易い擬似ネット構造を形成し、この擬似ネット構造体(擬似クラスター構造)は、印加電圧の影響を受けてメッキ液中でカソード(陰極)に向け泳動し、陰極近傍でクラスターが破壊されてそのまま混合金属メッキとして共析する。
【0064】
したがって、図3(A)に模式的に示されるように、本発明で好ましく使用されるUDD含有金属膜は、UDD粒子を膜中均一に、かつ高密度に分散している。これに対して従来のUDD含有金属膜は、図3(B)に模式的に示されるように、金属膜厚さ方向について、被メッキ基質側のUDD含有率は低く金属膜表面側のUDD含有率が高く、かつUDD粒子が全て金属膜中に埋没されず膜表面から露出していることもある。これは、従来の界面活性剤を必須成分として添加したUDD含有メッキ液中に存在する金属原子イオンとUDDとの荷電状態及び粒径の相違に基く輸率差のためである。本発明をこのような理論により拘束するつもりはないが、界面活性剤添加した本発明で好ましく使用されるUDD粉末を炭化水素系有機溶剤の樹脂液中で使用する際の充分な混和性は、これを支持するものであると考えられる。
【0065】
ところで、本発明のUDD―金属複合膜を、前記UDD懸濁液を添加したメッキ浴を用いてメッキ法により作成する場合も、通常の合金メッキ(共析メッキ)と同様に、(i)陰極界面における電荷通過移行反応の遅れがないこと、(ii)陰極近傍におけるそれぞれ析出材料の濃度差変動が少ないこと(浴中の濃度勾配が激しくないこと、即ちそれぞれの拡散速度に差がないこと)、(iii)輸率を支配する陰陽両イオンの局所濃度変動がないこと、(iv)陰極における金属析出を妨げ、(v)過剰析出をもたらし、(vi)或いは析出状態を乱す(メッキ地肌を荒らす)抵抗皮膜の形成がないこと、が好ましい。
【0066】
そこで、本発明の場合も、UDD含有率の高い金属複合膜を得んとするときには、適切な界面活性剤を少量添加することが好ましい。通常メッキに用いられる界面活性剤は、その化学的構造、性質、に鑑みて、前記(i)〜(vi)のような阻害原因を抑制し、又は少なくとも前記(i)〜(vi)のような阻害原因になるものと
断じ得ないのは明らかである。そのための界面活性剤は、金属イオンの周囲を取り囲む4個のHO分子をUDD粒子(これは上記のように金属イオンと対をなす負電荷を有する)に置換する働きをし、また、例えば自己双極子による分子内分極によって金属イオンとUDD粒子との間を電気的にブリッジし、又は(共析を難かしくする)それぞれの間の析出電位の乖離を防止するクラスタ内電荷平均化の働き等をするものと推量される。
【0067】
また、前記(i)陰極界面における電荷通過移行反応の遅れがないこと、(ii)陰極近傍におけるそれぞれ析出材料の濃度差変動が少ないこと(浴中の濃度勾配が激しくないこと、即ちそれぞれの拡散速度に差がないこと)、(iii)輸率を支配する陰陽両イオンの局所濃度変動がないこと、(iv)陰極における金属析出を妨げ、(v)過剰析出をもたらし、(vi)或いは析出状態を乱す(メッキ地肌を荒らす)抵抗皮膜の形成がないことのためには、浴の攪拌が行なわれることが好ましく、そのための手段として、前記の超音波攪拌を好ましく用いることができる。
【0068】
ここで、カチオン性活性剤はアルカリ性浴で、アニオン性活性剤は酸性浴で、ノニオン活性剤は弱酸性浴又は中性浴で、それぞれ使用されるが、本発明においてはアニオン性活性剤、ノニオン活性剤が特に好ましく用いられる。
【0069】
【発明の実施の形態】
[UDDの製造]
以下、本発明を図面に基いて具体的に説明する。
図4は、本発明による改良されたUDD懸濁液の製造方法の1例を説明する模式図である。この例のUDD懸濁液の製造方法においては、(A)爆薬の爆射による爆射式で初期BDを製造する段階、(B)生成した初期BDを回収して酸化性分解により炭素等の夾雑物を分解するBDの酸化性分解処理段階、(C)酸化性分解処理により精製されたBDを酸化性エッチング処理して主にBD表面を被覆する硬質炭素を除去する1次酸化性エッチング処理段階、(D)1次酸化性エッチング処理されたBDをさらに酸化性エッチング処理して主にBD凝集体を構成する個々のUDD間のイオン透過性ギャップ及びUDD表面の結晶欠陥部に存在する硬質炭素を除去する2次酸化性エッチング処理段階、(E)2次酸化性エッチング処理されたBDを含む硝酸水溶液に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて、硝酸との間で2次凝集体であるBD凝集体を1次凝集体である個々のUDDに解体する小爆発を伴なう分解反応を生起させる激しい中和反応段階、(F)中和反応段階を経て生成されたUDDの反応懸濁液を水により充分にデカンテーションする傾斜段階、(G)傾斜段階を経たUDD懸濁液に硝酸を加え洗浄して静置し、得られたUDDを含む下層懸濁液を上層排液から抜き取る、UDD反応懸濁液の硝酸による洗浄段階、(H)洗浄されたUDD懸濁液を遠心分離する遠心分離段階、(J)遠心分離されたUDDから所望PH、所望濃度の精製済みUDD懸濁水性液を調製するUDD懸濁水性液調製段階、及び(K)遠心分離されたUDDから、250℃以下、好ましくは130℃以下の温度で乾燥して、UDD微粉末を作成するUDD微粉末作成段階、を包含する。(J)の調整段階を経た本発明で好ましく使用されるUDDは、通常、pH4〜10、好ましくは6〜7.5を有する。
【0070】
本発明のこの例による(A)の爆射式初期BD製造段階においては、水と多量の氷(1)を満たした純チタン製の耐圧容器(2)に、電気雷管(6)を装着した爆薬(5)(この例ではTNT(トリニトロトルエン)/HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)=50/50を使用)を胴内に収納せる片面プラグ付き鋼鉄製パイプ(4)を水平に沈め、この鋼鉄製パイプ(4)に鋼鉄製のヘルメット(3)を被覆して、爆薬(5)を爆裂させ、反応生成物としての初期BDを容器(2)中の水及び氷中から回収する。
【0071】
しかしながら、BDの合成過程における温度条件は重要であり、冷却された条件下で合成されたBDは、活性因又は吸着中心としての酸素含有官能基が結合すべき構造欠陥の密度が少なくなる傾向があるので、氷の使用量は避けるか又は制限されたものであることができる。
【0072】
回収された生成BD(初期BD)は、(B)のBDの酸化性分解処理段階において、オートクレーブ(7)中で55〜56重量%の濃HNOに分散され、14気圧150〜180℃の温度で10〜30分間、酸化性分解処理に付されることにより、炭素系夾雑物、無機夾雑物等を分解する。(B)の酸化性分解処理段階を経たBDは、次に、(C)の1次酸化性エッチング処理を施す。この(C)の1次酸化性エッチング処理段階では、主にBD表面を被覆する硬質炭素を除去するため、処理条件は、18気圧、200〜240℃と厳しくなる。
【0073】
つぎに、(D)の2次酸化性エッチング処理を施す。2次酸化性エッチング処理段階は、主にBD凝集体を構成する個々のUDD間のイオン透過性界面ギャップ及びUDD表面の結晶欠陥部に除去し難い状態で存在する極く少量の硬質炭素を除去するためのものであるので、処理条件は、25気圧、230〜250℃とさらに厳しくなる。本発明において、このような14気圧150〜180℃、18気圧200〜240℃、25気圧230〜250℃は必ずしも順守すべき基準条件ではないが、少なくとも処理条件に傾斜を設けることが好ましい。(D)の2次酸化性エッチング処理を経た被処理液は、PHが通常2〜6.95の酸性液である。
【0074】
本発明における(E)の中和反応段階は、従来法にない本発明独自の操作の1つである。この中和反応の際、揮発性の分解生成物を生じる塩基性物質の添加により、被処理液は、PHが2〜6.95から7.05〜12に上昇する。この説明により本発明を制限するつもりはないが、本発明における(E)の中和反応段階では、2次酸化性エッチング処理されたBDを含む硝酸水溶液に、それ自身揮発性の又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性材料を加えて中和反応させる。この中和反応は、BDを含む硝酸水性懸濁液中のBD内に残存する硝酸まで、アニオンより一般的にイオン半径が小さいカチオンが浸透して攻撃することにより、各反応部位で反応相手との間で小爆発を伴なう激しい中和反応、分解反応、不純物脱離溶解反応、ガス生成反応、表面官能基生成反応を生起し、ガスが発生し系の昇圧昇温も生じ得るものと考えられ、その結果、BD凝集体を個々のUDDに解体する。また、主に(E)の小爆発を伴う中和反応段階で、本発明で好ましく使用されるUDDにおける大きな比表面積及び孔部吸着空間が形成されるものと思われる。
【0075】
このような塩基性材料としては、ヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、アリルアミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジイソプロピルアミン、ジエチレントリアミンやテトラエチレンペンタミンのようなポリアルキレンポリアミン、2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、ホルムアミド、N,N−メチルホルムアミド、尿素等を挙げることができる。例えば、塩基性材料がアンモニアである場合、酸と
HNO  +  NH  →  NHNO  →  NO  +  2HONO  →  N  +  (O)
3HNO  +  NH  →NHNO  +  N  +  HO+  O  +  (O)
NHNO  →  N  +  2H
  +  NH  →  2N  +  3H
  →  N  +  O  +  (O)
NHNO  +  2NH  →2N  +  HO  +  3H  +  (O)→  H
HCl   +  NaOH  →  Na  +  Cl  +  H
HCl   +  NH  →  NH   +  Cl
NH   →NH  +  H
SO +  2NH→NO  +  SO  +  NO
のような各種ガス発生反応が生じ、発生したN、O、NO、HO、H、SOガスを系外に放出できるので、残存物による系に対する影響はほとんどなくなる。
【0076】
(F)の傾斜段階では、中和反応段階を経て生成されたUDDの反応懸濁液に水を加えて充分にデカンテーションすることが必要回数(例えば3回以上)繰り返される。(G)の洗浄段階では、傾斜段階を経たUDD懸濁液に硝酸を加え撹拌(この例の場合はメカニカルマグネチックスターラーを使用)、洗浄して静置して上層排液と下層懸濁液に分け、得られたUDDを含む下層懸濁液を上層排液から抜き取る。この場合(UDD含有液1kgに対して水50kg加えた場合)、上層排液と下層懸濁液とは明瞭に層分離してないが、UDDを含む下層懸濁液の容量は、上層排液の容量のほぼ1/4程度である。上層排液中にはダイヤモンド形の1.2〜2.0nm径程度の超々微粒子が存在し得るが、この超々微粒子は液層中の不純部を巻き込んで凝集して機械的圧力では分解不能な不良UDDを生成し勝ちな可能性があるので、本発明においては回収操作が不可欠ではない。
【0077】
槽の底部から回収されたUDD懸濁液は、つぎに、(H)の遠心分離段階で20000RPMの超高速遠心分離機により遠心脱水分離され、所望により(J)のUDD懸濁水性液調製段階でUDD懸濁水性液を調製し、または、(K)のUDD微粉末作成段階で乾燥によりUDD微粉末を作成する。このようにして得られた本発明で好ましく使用されるUDD懸濁液は2nm〜70nmの粒径を有するUDD粒子を縣濁するものであり、懸濁液から微粉体としたときには、粒径分布範囲が極めて狭く、測定の結果、1000nm以上の粒子が存在せず(従来の粉末は、通常、1000nm以上の粒子が15%以上混在)、かつ、30nm以下の擬凝集超微粒子が存在せず、体積平均粒径が150〜650nm、典型的には300〜500nmの狭分散形であって、水性分散液の形にして、例えば超音波分散することにより比較的簡単に擬似凝集体を分割して、元のUDD懸濁液に戻すことができる。
【0078】
このような本発明で好ましく使用されるUDDは、3.20×10kg/m〜3.40×10kg/mの比密度を有する。アモルフアス炭素の比密度は(1.8〜2.1)×10kg/m、グラファイト炭素の比密度は2.26×10kg/m、天然ダイヤモンドの比密度は3.51×10kg/mであり、静的な圧力印加法(非爆射法)による人工ダイヤモンドの比密度は3.47〜3.50であるから、本発明におけるUDDは、天然ダイヤモンドや静的圧力法によるダイヤモンドよりも比密度が小さいということができる。
【0079】
一方、本発明で好ましく使用されるUDD懸濁液は、前記のように、pH4〜10、好ましくはpH6〜7.5に調製される。液中に懸濁しているUDD粒子の平均粒径は、2nmから70nmのものがほとんど(数平均で80%以上、重量平均で70%以上)であって、狭分散形である。懸濁液中のUDD濃度は0.05〜16%、好ましくは0.1〜12%、より好ましくは1〜10%である。0.05%未満の濃度であると、この懸濁液を含むメッキ液を用い作成した金属膜中のUDD含有率を充分高くできず、この懸濁液を含む塗工用樹脂組成物を用い作成した樹脂膜中のUDD含有率を充分高くできない。また、16%を超える濃度であると、この懸濁液の保存安定性に支障をきたすことが多い。
【0080】
図4では便宜上、例えば(B)段階、(C)段階、(D)段階を別の場所で別の容器で実行するかのように示されているが、これら各段階は、同一場所、同一容器で実行しても、無論さしつかえない。(F)段階、(G)段階の場合も同様である。容器は耐圧容器である。
【0081】
図5に概念的に示されるように、本発明におけるこのような操作により、粒径(10〜1000)×10−8mオーダーの初期BDから、平均粒径(4.2±2)nmオーダーのナノダイヤモンド個体が最低限4個、通常数10個〜数100個、凝集し、粒径2〜70nmのものがほとんどで粒度分布の巾が小さく、平均粒径が約16nm以下の小粒子が大部分(数平均で60%以上)を占める精製済みUDD縣濁液を得ることができ、このUDDは、ヘテロ原子のうち、窒素以外のヘテロ原子(水素、酸素)の含有率が高く、比表面積が高く、孔面積が大きく孔部分が多いためもあって、表面活性が極めて高く、分散安定性に非常に優れている。精製済みUDDの収率(対爆薬使用量)は1%以上5%程度である。
【0082】
【実施例】
[UDD、UDD懸濁液、それらの製造]
以下の実施例は、本発明の理解を助けるための具体例の説明であって、本発明を制限するためのものではない。
[製造例1]
上記図4に示される製造方法により得られた、本発明で好ましく使用されるUDDについて、酸化性分解処理及び酸化性エッチング処理の程度に依存する、使用サンプルの元素分析の結果は炭素100原子当り慣用の元素組成としてつぎの表に示される。
【0083】
【表2】
Figure 2004018909
【0084】
表中、酸化の程度αは、前記意味と同じ意味を有する。
【0085】
本発明におけるこの製造例の結果は重要かつ興味ある技術的知見を開示している。つまり、BDの酸化性分解生成物は、炭素元素含有量とヘテロ原子含有量との組成比を大きく変化させる。この表2の結果から、BD又はUDD中のヘテロ元素の含有率は、処理条件(酸化の程度α)と単純な比例関係にないことが分かる。またこの表2及び前記表1の結果から、BD又はUDD中のヘテロ元素としての水素原子の含有率は、100個の炭素原子当り5個〜35個の広い範囲に亘って変化し、酸素原子の含有率も、100個の炭素原子当り4個〜24個の広い範囲に亘って変化するが、しかし、窒素原子の含有率については、100個の炭素原子当り2個〜4個の狭い範囲であり、処理条件(酸化の程度α)によって殆ど変化しないことが分かる。
【0086】
またこの表2への記載は省略しているが、二酸化炭素ガスの発生は、BDの表面状態に密接な関係があると思われるので、確認試験を行ない、温度上昇、酸濃度上昇等の処理条件の違いによって、BD中の炭素原子の二酸化炭素ガスへの変換割合は徐々に変化することを確認した。
【0087】
本発明で好ましく用いられるUDDのための酸化性エッチング処理においては、最初、炭素の乱れのあるアモルファス部分が酸化され、次にミクログラファイト構造が酸化され、順々に、UDD自身の炭素の非ダイヤモンドの形から、更なる酸化をすることが難かしい化学的に不活性な材料である実質的に完全なBDの精製生成物が得られる。
しかしながら、本発明においては、特定の厳しい酸化条件下で長時間エッチング処理することによって、ダイヤモンド材質の一部を分解することができる。本エッチングの程度は、UDDの約45%または初期BDの76.5%が限度である。
【0088】
[製造例2]
本発明により、初期DBを製造例1と同様に酸化処理し、図6に示されるような酸化程度がそれぞれ異なる12のサンプルを得た。
図6のグラフに示されるように、酸化分解及びエッチングの程度と、BD組成のとの関係は複雑であり、BD組成は、酸化程度に一律に依存性していない。
炭素100原子当りの初期BDに相当するヘテロ原子の含有量は最低であり、部分酸化された(α=26〜31%)BDの炭素100原子当りのヘテロ原子の含有量は、55.9であり、部分エッチングされた(α=65〜75%)BDの炭素100原子当りのヘテロ原子の含有量は、45.7であった。酸化が進むにつれて、水素原子及び酸素原子の含量が変化するので、表面官能基の化学的組成が一定に近づく。
【0089】
本発明で好ましく使用されるUDDについて、部分酸化されたBD生成物又は部分エッチングされたUDD生成物のような準安定(metastable)構造物については、反応媒体により硬い表面状態を弛緩させ、最大限のヘテロ結合を形成することにより、活性度を高めることができる。本発明で好ましく使用されるBD及びUDDのような、より安定な形のものは最少量のヘテロ原子を有するが、しかし、これらの活性度は、純度が高い周知の静的合成ダイヤモンド(C1001.12.2)又はすす(C1005.14.1)の同様な特性(活性度)をはるかに超えている。
【0090】
上記得られた結果から、各相の連続的な変化である酸化性分解過程は、1)炭素マトリックスの構造欠陥及び粒子間結合のエッチングが最初に起こり、次に反応表面が拡大した後、セミ酸化生成物で表面が飽和し、2)さらに、弛緩した表面のエッチング、表面酸化反応の生成物のガス化及び除去が生じるものであることが、化学的見地から理解される。また、各相変化が循環性を有するのは、構造的に不均一な物質が分解され、而して、酸化剤の効果は、異なる構造形に対して選択的であることを示している。
【0091】
本発明で好ましく使用されるBD及びUDD中のヘテロ原子のかような高存在度は、炭素の結合特性が偏在している可能性を示している。計算の結果、約4×10−9m径のサイズのダイヤモンド粒子は、最高12×10個の炭素原子からなり、そのうちの3×10個の炭素原子が表面露出原子である。したがって、例えば本発明で好ましく使用されるUDDの全体組成式はつぎのとおりである。
【0092】
【表3】
Figure 2004018909
【0093】
さらに、ここに記載を省略している他の実験結果の場合も同様であった。
したがって、このような見地から、本発明で好ましく使用されるUDDは、実質的に全ての表面炭素原子がヘテロ結合していることになる。本発明で好ましく使用されるUDDにおける「実質的に全ての表面炭素原子がヘテロ原子と結合している」とはこのような意味である。
【0094】
本発明で好ましく使用されるUDD表面の活性水素(Hact)の濃度についての検討の結果、水素原子は、炭素原子以外のいずれかの元素の原子に結合しているときには、活性であると考えることができる。炭素表面の活性水素(Hact)について、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミノ基、スルホン基のような官能基上のHactの状態を特定することができる。
【0095】
BD及びUDD表面の官能基と、アニソール存在下でのメチルマグネシウムアイオダイドとの相互作用について、3段階のプロセス、すなわち、1)不純物分子と外面(よりアクセスし易い官能基)との相互作用、2)開孔表面との相互作用、3)UDD凝集体の機械的崩壊によるフリーになった表面との相互作用、を象徴的に摘出した。
【0096】
BD及びUDDの処理条件により、これらUDD中の官能基因子源(protogenic group)の濃度は0.34〜2.52マイクロkg当量/mであり、活性水素元素の量は0.49〜7.52マイクロkg当量/mであった。したがって、これらUDD表面及びBD表面上の遊離可能な水素原子の量は、粉体UDD表面及びBD中の全水素含量のうちの4〜22%であった。
【0097】
本発明で好ましく使用されるUDD表面は、水性液への分散濃度、親和性、電解質因子濃度を左右し、pH値を決定する電荷を、水性溶液中でUDDに与える各種酸素含有基を有する。全ての検体粉末の懸濁液のpHに基いて、表面に存在する酸性基の分離程度の増加に依存した比吸収値を判定することができる。炭素材料の分解、エッチングによる比吸収値の変化は、連続的な単調子でなく、極端かつ急激である。
【0098】
当初BDの低い比吸収値は、非酸化性媒体中でBDが合成され、したがってその表面には僅かの酸素含有基のみが存在していることを示している。本発明において、BDを同時に酸化剤に露らす2段階反応の進行結果によれば、表面が酸素含有基により飽和し、炭素がエッチングされる。一方、酸化性作用が増加すると、酸素含有基による炭素表面の飽和が起こり、比吸収値が最大になって後、変化が生じないようになる。しかし酸化可能な残存炭素の含量が18〜20%を超えると、比吸収値の低下が生じる。
【0099】
これは、ロシア特許第2046094号,[Bjuljuten izobretenij,(29),189(1995)],「合成ダイヤモンド含有材料」に示される結果とも一致している。参考のため、図7に、該ロシア文献記載の技術の1部を示す。
図7のカーブの著しい特性は、酸化剤処理下におけるBD表面の構造的な特性変化、即ち、グラファイト状の構造からダイヤモンド状炭素への構造変化を示している(本発明においても同様)。材料は、変遷途中の状態では高い吸収性を有する。BDの強力な酸化条件下での酸化によれば、安定ダイヤモンド形のみが残る。温和な酸化性エッチング条件ではダイヤモンド状炭素と非ダイヤモンド状炭素との境界が置き変わる。実際、ダイヤモンド状の相(即ち真正のダイヤモンドに似た相)としての最後の酸化可能な残存炭素含量18〜20%は、ダイヤモンドクラスターの周辺部を構成する炭素である。
【0100】
[製造例3]
つぎに、製造例3により、本発明で好ましく使用されるUDDが有する優れた表面特性を具体的に説明する。
製造例5のNo13のサンプル(α=49%のサンプル、図8中ではNUDD−A)、製造例5のNo14のサンプル(α=56%のサンプル、図8中ではNUDD−B)、製造例1のNo4のサンプル(α=55%のサンプル、図8中ではNUDD−C)、製造例1のNo5のサンプル(α=64.9%のサンプル、図8中ではNUDD−D)、製造例1のNo6のサンプル(α=74.4%のサンプル、図8中ではNUDD−E)、製造例1のNo1、製造例5のNo8のサンプル(α=0%のサンプル、図8中ではNUDD−F)、従来法による典型的なUDDサンプル(乾燥粉末、サンプル、図8中ではOUDD)、の7サンプルに用いて、Cu、Kα線を線源とするX線回析スペクトル(XD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)を測定した結果を纏めて図8に、これらサンプルのうち、サンプルAを用いて測定した結果を図9に、サンプルBを用いて測定した結果を図10に、それぞれ示す。図8、9、10のチャートから、本発明で好ましく使用されるUDDのサンプルは、ブラッグ角(2θ±2°)が最も強い44°の(111)結晶に帰属する反射強度のピークは85.0%であり、73.5°の(220)結晶に帰属する反射強度のピークは14.0%であり、91°の(311)結晶に帰属する反射強度のピークは0.2%であり、(400)結晶に帰属する反射強度のピークは0.2%であり、26.5°±2°のグラファイト(002)結晶に帰属するピークは実質的にないことが分かる。
【0101】
測定の結果、Sp結合した炭素濃度の特定パターンが多数現われたことで、UDD中の極小アモルファスグラファィト相の周囲にダイヤモンド相が存在することが示された。
【0102】
本発明の前記定義の酸化度(α)=64.9%のUDD中心とするサンプルをX線回析グラフにおいて、ローレンツ(Lorenz)の回析スペクトルピークにおける幅広い対象形の回析スペクトル形としての(111)結晶に帰属する2θ=43.9°のスペクトル、(220)結晶に帰属する2θ=73.5°のスペクトル、(311)結晶に帰属するブラッグ角2θ=91.0°のスペクトルが記録された。
【0103】
これらスペクトルは、結晶格子パラメーター(α)=(3.565±0.005)×10−10mを有するダイヤモンド型を反映したものである。これら3つのスペクトル曲線の半幅値から、シェラー(Scherrer)の式によりこのUDDの平均粒径を定めたところ、平均粒径(L)=(42±2)×10−10mであった。
【0104】
また、ブラッグ角2θ=17°付近に強く偏在したハローがあり、さらに1次ビームをドローイングした場合は散乱放射の強度が強く安定していた。1次ビーム近くの強い散乱は、不規則なアモルファス構造に基く回析特性である。観測できるハローが、マクロ構造に基く回析光を明確に示さないことは明らかであり、分子レベルのサイズ(例えば、グラフィンのサイズまたはベンゼン環のサイズ)と同様なサイズを有する構造単位による散乱と関係があることはもちろんである。このような構造物は、4×10−9m以下の周囲粒子(ダイヤモンド構造)のみならず、規則的な炭素鎖又は規則的に積層された平面体であり得る。(333)結晶構造のピークの強度に比較して、このような高いハロー強度があることから、上記分子サイズの構造も存在する可能性がある。ハローの半値幅に基き(シェラー(Scherrer)の式によって)、このような構造物のサイズは約1.5×10−9mであると推定される。このような小さい粒径オーダーの粒子(4×10−9m以下)の存在は、ラーマン散乱スペクトルで現れるアモルファスのダイヤモンド及びグラファイトの存在を暗示している。
【0105】
また、これらX線回析スペクトルチャートの解析から、Cu、K α線を線源とするX線回析スペクトル(XRD)におけるブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)の前記最も強いピーク43.9°の強度に対する、その余のブラッグ(Bragg)角(2θ±2°)のピークの合計強度が、11/89〜19/81であること、即ち、(111)線が81〜89と高いことが分かる。
【0106】
[製造例4]
同様に、表2に示される元素分析結果を有する製造例1のα=64.9%のBD試料、α=74.4%のBD試料、α=75.5%のBD試料を用い、KBr結晶を標準としてFTIRスペクトルを測定した結果を(Dolmatov report p30,l23,Ref.[27])、図11、図12、図13に、それぞれ示す。図11、12、13のチャートから、充分に精製されてないUDDサンプルは、炭素表面に含れる多種類の基により、カルボニル基に帰属する1730〜1790cm−1の吸収が、前後に幅広く拡がって偏奇しており、炭素表面に含れる多種類の基の影響を受け、ヒドロキシ基に帰属する1640cm−1の吸収、及び3400cm−1の吸収が共に、前後にシフトしている。1640cm−1以上の吸収はまた、結合水及び遊離水により影響を受ける。1750cm−1の吸収中はOH基の振動に関係している。1100〜1140cm−1の吸収の幅広い吸収は、不純物ニトロ基に帰属する吸収と、≡C−O−C≡基の振動に帰属する吸収が合成されたものであり、吸収率の大きさから、ニトロ基(これは本来は1540cm−1及び1330cm−1)のみでなく≡C−O−C≡基が存在するとみるのが妥当である。カルボニル基に帰属する1730〜1790cm−1の吸収バンドの中には、本来は1750cm−1付近のR−COOΦ基、本来は1740cm−1付近の−RCOOR’(エステル又はラクトン)基、−RCOOH基(カルボン酸)基が含まれ、また、本来は1710cm−1付近の=C=O基が含まれる。また、本来は680cm−1付近の−CO・N基が含まれる可能性が大である。
【0107】
上記結果から明らかなように、本発明で好ましく使用されるUDDにおいて、各種カルボニル基の吸収強度及び吸収帯域の位置は、UDDの変性処理条件により著しく影響を受ける。窒素ガス中で700℃に加熱すると、カルボニル基、カルボキシル基が分解して、相当する吸収帯の強度が減少する。また、673°Kに加熱した後には1730cm−1の吸収は、1780〜1790cm−1の位置に移動するので、これから、O=C−O−C=O構造が生成したことが分かる。
【0108】
本発明におけるUDDは、硝酸処理後に、処理前の位置からシフトして、つぎの位置及びパターンの吸収を示す。
【0109】
【表4】
Figure 2004018909
【0110】
このうち、3500cm−1付近のバンドが、最も強く、1740cm−1付近のバンドは、1640cm−1付近のバンドよりも強度が小さいが、複雑かつ凹凸がほぼ平らで、多くのバンドが密集したものからなり、1640cm−1付近のバンドは、2番目に強いものであり、1170cm−1付近のバンドは3番目に強く、かつ長波長側に少なくとも2つの小さいピーク又は少なくとも2つのショルダー部を有してなだらかに勾配しており、610cm−1付近のバンドは複雑な中程度の強度の幅広いバンドである。
さらに、本発明で好ましく使用されるUDDは、2940cm−1付近(C−H、飽和に帰属)、1505cm−1、1390付近cm−1及び650付近cm−1付近に、小さいピーク又は少なくともショルダー部を有している。
これらの結果から、本発明で好ましく使用されるUDDは、図14に示されるように、表面炭素が、−COOH基、−C−O−C−基、−CHO基、−OH基等の活性な官能基により覆われていると確信される。
【0111】
[製造例5]
製造例1と同様にして作成され、ただし、製造例1と異なる次表に示されるような酸化度、すなわちサンプルNo.8(α=0.0%)、サンプルNo.9(α=17%)、サンプルNo.10(α=28%)、サンプルNo.11(α=32%)、サンプルNo.12(α=48%)、サンプルNo.13(α=49%)、サンプルNo.14(α=56%)、サンプルNo.15(α=63%)、サンプルNo.16(α=81%;比較サンプルNo1)、サンプルNo.17(α=85%;比較サンプルNo2)、サンプルNo.18(α=94%;比較サンプルNo3)、No.19(α=98%;比較サンプルNo4)の酸化性分解及びエッチング度の各サンプルの表面特性について、測定した結果を表5に示す。
【0112】
【表5】
Figure 2004018909
【0113】
この表から、UDDの吸収能は、必ずしも孔部サイズ、限界孔部サイズに依存しないこと、UDD表面の活性化率、及び全表面積中の高活性化された面積に、より依存することが分かる。
【0114】
従来、UDDの表面活性についての研究としては、GP.Bogatiryonva, M.N.Voloshin, M.A.Mirinich, V.G.Malogolovets, V.L.Gvyazdovskaya, V.S.Gavrilova[Sverhtvjordii materiali,No.6,pp42(1999)]Surface and electrophysical properties of dynamic synthesis nanodiamondに記載されたものがある。比較、参考のため、次表に、該従来UDDの表面活性を示す。
【0115】
【表6】
Figure 2004018909
【0116】
これら表5及び表6の結果から、BET法による窒素ガス脱吸着量を測定の結果、α=81%未満の本発明の各サンプルは、従来サンプル(比較サンプル)に比し、活性度が充分に発達し、最高4.5×10/kg程度の大きな比表面積を有し、また大きな表面炭素割合(Csurface/Ctotal)を有し、かつ、Csurfaceが有する官能基の濃度がほとんど100%と極めて高いことが分かった。従来のこの種のダイヤモンドにおいては、全表面炭素原子中、ヘテロ原子と結合する炭素原子の比率は15%程度である。
【0117】
[製造例6]
本発明において、このUDDサンプルについて、空気及び不活性ガス雰囲気中で示差熱分析をも行なった。結果は、次のとおりである。
即ち、空気中で毎分10°Kの割合で加熱した場合、703°Kで酸化が始まる。一方、文献によれば、従来の静的合成方法により合成されたあるダイヤモンド、静的合成方法により合成された他のダイヤモンド及び従来爆射法によるUDDの1サンプルの場合は、それぞれ、酸化開始温度は863°K、843°K、823°Kであった。本発明で好ましく使用されるUDDの酸化性は高いということができる。
【0118】
中性雰囲気中で、1273°Kまで加熱した場合の重量損失は3乃至4%であった。このサンプルを温度範囲443〜753°Kの間で炭酸ガス雰囲気中で加熱した場合には、重量増加が5%まで達し、その後、更に高温に加熱すると重量が減少する。水素ガス雰囲気中で加熱した場合には、HCNガスの分離が生ずる。次に、このUDDを複合示差熱分析した。次の結果が得られた。
すなわち、次の(a)〜(c)の3つの特徴を有するサーモグラフ曲線が得られた。
(a)373〜383°Kで若干の発熱を伴う重量損失5〜7%((α)=63%のUDD、(α)=27%のUDDの2サンプル)を生じる。このプロセスは可逆的である。脱吸着されたガス生成物を分析した結果、これら温度で脱吸着されたガスの97〜98%は窒素ガスであった。これは空気中から吸収されたガスの脱着であると考えられる。
(b)523°KにおけるサンプルUDDの重量の減少。これは吸熱を伴ったものである。
(c)753〜1023°K間での発熱を伴なう重量損失。753〜773°Kにおける大きな発熱を伴った強い重量損失(95%まで)を生じる。これは1023〜1053°Kまで続き、それ以降の温度では、もはや変化は見られず、通常の方法によって測定し、最高10%までの初期材料中の灰分に相当する不燃性残渣が検出された。773〜1023°Kまでの間の温度においては、炭素の強力な酸化が行なわれ、最後に不燃焼残渣が生じるものと考えられる。また、この酸化過程においては、強いグローが観察される。
【0119】
[製造例7]
次に、前記No.9のサンプル、No.10のサンプル、No.11のサンプル、No.12のサンプルを二酸化炭素気流中で毎分10°Kの温度上昇率で1273°Kまで加熱した後、各サンプルの重量の増減割合を測定し、また各サンプルの比表面積を製造例5の場合と同様に測定した。各サンプルの重量の増減は殆どなかった(No.9のサンプルは0.25%の重量減少を、No.10のサンプルは0.22%の重量増加を、No.11のサンプルは0.15%の重量減少を、No.12のサンプルは0.22%の重量増加を示した)。また、各サンプルの比表面積にもほとんど変化はなかった。これは、本発明におけるUDDは、孔部中の非グラファイト状態の炭素原子縮合体が安定しており、また、エレクトロンドナーとしてのヒドロキシ、カルボキシ、カルボニル、アルデヒド、等の親水性基がほとんど加熱消滅しないことを示している。
【0120】
[製造例8]
前記製造例5のNo13のサンプル(α=49%のサンプルAS)、製造例5のNo14のサンプル(α=56%のサンプル、サンプルBS)、製造例1のNo4のサンプル(α=55%のサンプル、サンプルCS)、製造例1のNo5のサンプル(α=64.9%のサンプル、サンプルDS)、製造例1のNo6のサンプル(α=74.4%のサンプル、サンプルES)、製造例1のNo1、製造例5のNo8のサンプル(α=0%のサンプル、サンプルFS)、従来法による典型的なUDDサンプル(乾燥粉末、サンプル、サンプルGS)、の7サンプルについて、粒度分布を測定した。
これら、サンプルAS〜GSの結果は、順に、図15(サンプルAS)、図16(サンプルBS)、図17(サンプルCS)、図18(サンプルDS)、図19(サンプルES)、図20(サンプルFS)、図21(サンプルGS)に示される。
【0121】
この結果から、従来UDD粉末(サンプルGS)及び未酸化処理UDD粉末(サンプルFS)は、10000nm以上の大径粒子を含みかつ、粒度分布の範囲が広いのに対して、本発明によるサンプル(サンプルAS、BS、CS、DS、ES)は、粒度分布の範囲が狭く、かつ10000nm以上の大径粒子を全く含まないことが分かる。
【0122】
[製造例9]
他方、本発明のウエットなUDD材料は、403〜433°Kで基本的な水分量を消失する。それ以降の温度においては、パラメーターの変化は予備乾燥されたサンプルの場合と同様である。不活性ガス(He)雰囲気中で383〜393°Kに加熱した場合には、空気中から吸収した窒素の脱着が生じる。673〜1173°Kの間の温度においては、発熱を伴い10%の重量損失があった。その後、二酸化炭素及び窒素が発生する(モル比は4:1)。この過程は、UDD材料の形態変化を伴う。1153〜1163°Kにおいては、質量の変化が観測されず、若干の吸熱効果が見られる。この過程はUDD材料の形態及び色調の変化なしに行なわれる。これに反して、従来の文献に記載されたデータによれば、このような不活性雰囲気中でのアニーリングの際に、これらと同じ温度域で表面の各種基が実質的に完全に除去される。
【0123】
[製造例10]
構造欠陥部の容積率の検討。
上記製造例4の広範な赤外分析を通じて、広義の意味でダイヤモンドと考えられる全ての結晶状態について、UDDにおける構造欠陥部の容積率を陽性部位−電子消滅法(positron−electron annihilation method)により検討した。
高分散RDXの5〜70重量%を含むTNT/RDTアロイの水中での爆射変換によってUDDを製造した。
このUDDのシンタリングプロセスにおけるUDDの構造欠陥部の濃度、容積及び分散状態を見るため、爆薬中の炭素−水素比のみならず、衝撃波の印加直径(高い圧力及び温度の存在状態)、硬化状態を変化させた。化学精製の後、UDDの結晶構造を、陽性部位−電子消滅法により構造欠陥部の容積率を測定し、また、窒素の低温吸収によって比表面積を測定した。
構造欠陥部の最大密度の容積((3.05−3.10×10kg)/m)をもつUDDのシンタリング過程を検討するため、コヒレント散乱法による平均粒径((1.5−2.0)×10−9m)及び最大分散性(4.2×10/kgの比表面積)を選択した。UDD粉末を4〜12GPaの圧力下でシンタリングし、得られた多結晶粉末凝結物のマクロ硬度及び圧縮破壊強度を測定した。
【0124】
炭素含有爆薬の爆射において、爆薬中の炭素含有率及び爆射温度が高くなっていくにつれ、クラスターの欠落密度及び孔部の密度の分布曲線には最大点が存在し、その点を過ぎるとクラスターの欠落密度及び孔部の密度が減少し始める。最大点は3900°Kの温度領域に相当する。UDD中のクラスターの欠落密度が最大値に増加するにつれて、(1〜2)×10−9mのサイズの孔径を有するサブマイクロ孔部の濃度も最大値に増加する。電子を捕獲して消滅する電子捕獲中心は、欠陥部の総計であり、各欠陥部は結局、各サブマイクロ孔部の核である。このUDDに出現した電子捕獲性陽性部位(positronium)は、ダイヤモンド中に形成されたものでなく、サブマイクロ孔部の内面に形成されたものであり、これらは結局、欠陥部から形成されたものである。
TNTから結晶化されたUDDにおけるサブマイクロ孔部が欠乏し、また構造欠陥の容積が欠乏(3.3×10kg/mの比重密度)すると、静的合成法によるダイヤモンドに近づく。従来報告されている各種UDD粉末のIRスペクトル分析結果もこれを物語っている。
【0125】
本発明で好ましく使用されるUDDの構造欠陥の容積部分が形成される機構は、つぎのように推測(ただし、この仮説は、説明のための推測であって、本発明を限定するためのものではない)される。すなわち、炭素含有爆薬を爆射したときのUDDの形成プロセスは、不均一な各相変化、つまり、1)炭素含有爆薬の最初のプラズマ状濃厚状態(各イオン、自由電子、励起された粒子、最も単純なラジカル等の高濃度状態を特徴とする)の相の形成、2)該プラズマ状濃厚状態相から、水素を含有する炭素の最初の小クラスター状態相への変化、3)該最初の小クラスター状態相から、超分散ダイヤモンド(UDD)への相変化、の結果と表わすことができる。全ての相変化は10−8〜10−9秒の短時間内に進行する。そして、諸粒子の電子的サブスシテムが励起されたときに新たなメカニズムによりダイヤモンドの超高速形成のため付随的な条件が整い、順次、爆薬の化学的変換領域及びその外側領域の双方が高温高圧領域に変化し、より緩慢な合体の拡散プロセスが起こり、再結晶及びダイヤモンド相と孔部の成長が進行し、水素の分離及び拡散が生じ、欠落部が形成され、つぎに、欠落部のあるクラスター及びサブミクロン孔部の集積化が進行する。この過程はUDDの結晶構造の形成を終了する低速度過程であり、粉末の硬化により妨げられて10−6秒以下の長時間で進行する。
【0126】
[製造例11]
本発明で好ましく使用されるUDDサンプルについて、磁気的性質を静的合成法によるダイヤモンドのそれと比較検討した。
ダイヤモンドは、磁化率(χ)=−0.62×10−8/kgの定数値を有する反磁性材料である。しかし、本発明で好ましく使用されるUDDは、これとは違う値の磁化率(χ)を有する。粉体状材料の比磁化率は、粉体の全容積の磁気的性質の量的特性であり、粉体を構成する全ての成分の比磁化率(χ)の加成強度である。次表は、本発明における前記UDDサンプル中の不純物の磁化率を示す。
【0127】
【表7】
Figure 2004018909
【0128】
本発明で好ましく使用されるUDDについての検討結果によれば、UDDの導電率は573°Kに加温されたサンプルの場合、最小で、約1012Ω・mの値であり、加熱を続けると導電率が6.0×1010Ω・m〜2.0×1011Ω・mに低下し、二酸化炭素中で、グラファイト化開始温度の境界と思われる1173°Kに加熱すると導電率が2.3×10Ω・mまで低下する。
【0129】
前記UDDサンプルの誘電定数又は透磁率はE01で2.4〜2.7、E10で1.7〜2.0、E1.5で21.7〜2.0であり、高周波損失(tan δ)は約0.5×10−3〜1.0×10−2であった。
【0130】
このように、本発明で好ましく使用されるUDDは、従来の静的合成法によるダイヤモンドと多くの性質が全く異なり、また、従来の爆射法によるUDDに比較して炭素のダイヤモンド状の相は、その高い反応性にも拘らず、中性雰囲気及び還元性雰囲気中で安定な物理的化学的諸性質を示す。
【0131】
本発明によれば、室温で密実なタブレットに成形したUDDの比抵抗は10〜10Ω・mの値であり、湿めらせたときには比抵抗の値は急激に減少し、水分含量5%ときの比抵抗は10Ω・m未満となるが、さらに水分を増加させても比抵抗の値はもはや変化しないので、水分含量5%は、水分吸収の限界であると考えることができる。また水分含量5%は、UDDの残存水分含量の測定法の開発の基本点になると思われる。
【0132】
ダイヤモンド表面の重要な性質の1つに、電気熱力学的ポテンシャル、換言すれば界面電位(ζ電位又はゼータ電位)がある。このζ電位はナノダイヤモンドの表面状態に著しく依存することを考慮すると、同じ品位のUDD間のζ電位の差異は、両UDDが異なる精製法及び変性法によるものであることを予想させる。
S.I.Chuhaeva等(S.I.Chuhaeva,P.Ya.Detkov,A.P.Tkachenko,A.D.Toropov.Physico−chemical properties of fracitons isolated from ultradispersed diamonds(nanodiamonds).[Sverhtvjordii materiali,vol.42,pp29(1998)]は、電流の影響下、液相に関連した分散媒体中の粒子の志向運動に基く電気泳動法によりζ電位を測定している。彼らはRussian Federal Nuclear Center製のUDDから得られた3層に分離した小区分の各部分、すなわち沈殿部分、中間層部分、懸濁層部分、のζ電位を測定し、沈殿部分について+16×10−3V、中間層部分について+32×10−3V、懸濁層部分について+39×10−3Vのζ電位を記録している。Chuhaeva等は、サンクトペテルブルグのJSCダイヤモンドセンター製造のUDD−TAH(品種−TU 05121441−275−95)の濃厚UDD水性懸濁液のUDDサンプルについてもζ電位を測定し報告している。
【0133】
前記3層に分離した小区分の各部分について、次表8に示す。
【0134】
【表8】
Figure 2004018909
【0135】
表8のような報告(V.L.Kuznetsov, A.L.Chuvilin, Yu.V.Butenkov, I.Yu.Malkov, A.K.Gutakovskii, S.V.Stankus, R.Kharulin[Mat.Res.Soc.Symp.Proc.396,pp105(1995)]もあり、従来、層分離された3つの小区分UDD懸濁液は、特性が互いに異なることが知られているが、主に、液中のUDD粒子の組成、UDD粒子の粒径に基く沈降速度差によると考えられており、UDD粒子表面の官能基がUDD特性に与える影響は正確には知られていなかった。
【0136】
[製造例12]
本発明において、本発明で好ましく使用されるUDD懸濁液サンプルをイオン交換樹脂で精製した後、297°K〜〜298°Kの温度でζ電位を3度測定した。(32〜34)×10−3Vの測定結果が得られた。比較のため、従来の製法により製造した爆射法BD(3層の小区分に未分離)のUDD液のζ電位を測定したところ、(25〜26)×10−3Vの測定結果が得られた。
【0137】
従来の層分離操作は、懸濁液の組成及び粒径に基いて単純に撹拌することによって所定の液体及び沈殿物からなる各小区分へ分離するものであったが、本発明で好ましく使用されるUDDの場合、高度に分散されたコロイド系を各小区分へ分離すること、特にUDD懸濁液の重力によって各小区分へ分離することは、適切な分離操作であるとは云えない。本発明で好ましく使用されるUDD懸濁液から得られた凝集物の粒径は最低3×10−7m以上であった。最適の場合、デカンテーションにより極微細な分離物を生じた。この極微細な分離物は乾燥時に凝集し、この乾燥した凝集物を再分解することは必ずしも常に容易であるとは云えない。
【0138】
また、ナノダイヤモンドは高い有機溶剤吸収能を有するので有機溶剤の使用も適当ではない。他方、本発明で好ましく使用されるUDDにおいて、上記UDDのサンプルから得られた乾燥粉末を超音波処理により水性懸濁とした場合、1ケ月以上の保存後にも分散性は変化しなかった。
【0139】
本発明で好ましく使用される各種純度のUDD組成物において、諸官能基の典型的な1セットがあり、このセットはダイヤモンド構造が破壊されるまでコンスタントに残存する。これらは−OH基、−NH基、−C=O基、−C−H基、−C=N基のような極性の官能基である。これら基のうち特に−C=O基、−OH基は懸濁液中のUDD粒子の凝集傾向を決定する重要なパラメータのように思われる。分離された各UDD小区分サンプルのIR分析の結果、これら各サンプルは、同様な多くの官能基を含有していたが、各サンプルは、これら各官能基の含有率に違いがあった。
【0140】
本発明で好ましく使用されるUDD懸濁液は、例えば、ω,ω’型の両末端ジカチオン性基を有する短鎖界面活性物質等の1部の界面活性物質を除いて、各種界面活性物質による懸濁安定化は概して適当でない。懸濁液中のUDD粒子は、添加された界面活性物質の分子に囲まれた形になる。これにより、界面活性物質分子の疎水性部分である尾部分(長鎖脂肪族部分)が水性媒体に面するようになるため、UDD粒子が撥水性に変化し、水中分散安定性が減少するものと思われる。
【0141】
[製造例13]
本発明で好ましく使用されるUDDについて、UDD粒子とその分散媒の種類との関係に関し検討したところ、アセトン<ベンゼン<イソプロパノール<水の順に、UDD粒子の親和性が増加して分散安定性が増すことが確認された。UDD粒子の分散のためには、分散媒の極性が重要であるだけでなく、分散媒のUDD粒子との間のπ−複合体の形成能は、UDDクラスターの活性表面の親和化及び分散安定化を促進することが分かる。非極性有機溶媒を用いたUDD懸濁液は、実用上の観点から非常に重要である。このようなナノダイヤモンド懸濁液作成が可能であれば、エラストマーに基くクラスターの現実的な開発促進が可能になる。この問題を実際に解決する1つの方法は、UDD粒子の表面を親水性から疎水性に変換することである。この目的のため1例として、ナノダイヤモンドの乾燥粉末をポリジメチルシラン及びポリイソプレンからなるエラストマーをベンゼン溶液中に添加する。すなわち、ポリマーの疎水性鎖をダイヤモンドクラスターの表面に吸着させて、懸濁液を安定化させることを考え付いた。実際に、有機溶媒中へのUDDの分散性が増大することが観察された。UDD表面の最適な変性剤は現状ではポリイソプレン等のジエン材料の重合体であることが見いだされ、UDD表面の変性法及び懸濁液の最適化法が開発された。ポリイソプレン等によるUDDクラスター表面の変性により、この場合には、約300nm径の最大基本径を有するUDD懸濁液の作成が可能になる。この懸濁液の耐沈殿安定性は10日以上であった。
【0142】
[製造例14]
本発明で好ましく使用されるUDDについて、UDD中のダイヤモンド相−グラファイト相の変換を検討した。この相変換は720〜1400°Kの温度間で不活性媒体中で加熱したときに生じたものである。相変換を識別するため、ラーマン散乱法(Raman Scattering(RS))及びX線スペクトル法を用いた。RSスペクトル及びX線回析の結果から、UDDは約4.3×10−9mのサイズのナノクリスタル特性のダイヤモンドの結晶構造を有するクラスター物質であると結論された。
【0143】
多くの場合、(4〜5)×10−9mサイズの狭い範囲のUDDナノクラスターが観測された。これから、小さいナノクリスタルサイズにおいてはグラファイトでなく、ダイヤモンドが熱的に安定な形であるということができる。このような推測は、M.Gamarnik, Phys.Rev.Vol.54,PP2150(1996)により支持される。
【0144】
ダイヤモンド及びグラファイトの格子振動子密度の最大機能と一致しているRSスペクトル中の特定の形部分は、サンプル材料中の少量のアモルファスダイヤモンド及びグラファイトの存在を示している。
公知(G.V.Sakovich, V.D.Gubarevich, F.Z.Badaev, P.M.Brilyakov, O.A.Besedina.[Proceedings of Science of USSR,Vol.310,No.402(1990].Aggregation ofdiamonds obtained from explosives)のように、UDDクラスター、及び同様な他の超分散した物質は単凝集体であるので、アモルファス相はダイヤモンド核の表面上の凝集体であると思われる。
【0145】
前記X線回析データにより、粒径特性が約1.5×10−9mサイズのアモルファス相の存在が確認された。RSスペクトルにおけるアニーリング温度(Tann)=1000°Kまで示された1322cm−1のピークの位置が不変であることにより、この温度までのアニーリング温度ではダイヤンドの構造変化は生じないことが判明した。これは、X線回析の分析結果によっても確認され、X線回析の分析結果はグラファイト相の概念はTann>1200°Kでのみ確認された。ダイヤモンド相−グラファイト相間の相変化は不活性雰囲気中でのアニーリング時にクラスター表面から始まる。このX線回析データによれば、このグラファイト相は、4×10−9m以下の特定サイズを有する等間隔のグラファイトのナノプレートのセットであり、このグラファイト相はTann>1200°Kの温度で基本的にダイヤモンド核の消費により生じることが確信された。
【0146】
前記V.L.Kuznetsov, A.L.Chuvilin, Yu.V.Butenkov, I.Yu.Malkov, A.K.Gutakovskii, S.V.Stankus, R.Kharulin[Mat.Res.Soc.Symp.Proc.396,pp105(1995)]によれば、測定された初期相変換温度(Tpt)は、電子顕微鏡の観測データと一致している。本発明において、T>1300°Kでの測定データにより、ナノクリスタリンダイヤモンドの核は、T>1300°Kで、炭素の球根様形状を経てサイズ減少する。RSスペクトル分析において1575cm−1に、このような特定の形が出現し、これは、T=1400°Kで明確に示されるので、当該温度が炭素の球根様形状の出現温度である旨の前記V.L.Kuznetsov他の報告内容は正確であった。
【0147】
本発明で好ましく使用されるUDDにおいて、ダイヤモンド−グラファイト間の相転換の開始は、Tann>1900°Kで、ダイヤモンドの容積的なモノクリスタル化温度よりも低い温度であることが分かった。このような相転換の開始温度の低下は、例えば融点低下は、金属クラスターの場合にも見られたことが報告(E.L.Nagaev,[Uspehi fizicheskoi nauki. No.162.pp.49(1992)])されている。
【0148】
ann>720°Kで、ダイヤモンドクラスターのコア上におけるグラファイト相の形成と共に、UDD中のsp部分の規則化が最初に起こる。このsp調整された結晶化は、ダイヤモンドの結晶核の外側で生じ、sp結合したアモルファス炭素ヘの変換である。これは、約1350〜1600cm−1の領域のRSスペクトル帯の強度増加、Tann>1300°KでのX線回析の小さい角度及び中程度の角度域における散乱パターンに基く微小構造の出現で示される。
【0149】
クラスターを形成しているUDD粒子は、比較的高密度かつ規則化した結晶様コア、及び、ゆるく化学的に破壊され易い殻(シェル)からなる。ダイヤモンドコアはUDDの基本的なダイヤモンド特性、すなわち熱安定性及び化学的安定性、高伝熱性、高熱拡散性、低導電性、低X線回析性、擬似耐摩耗性、擬似硬度を担保する。クラスターのシェル構造は、UDD粒子の表面電荷のマイナス記号及び電荷量、吸収性、吸着性、化学的収着性、表面官能基の化学的組成、液中及びたの媒体中でのUDD粒子コロイドの安定性に寄与する。コア及びリーガンドシェルが化学的に異質元素からなる、すなわち、金属原子及びコンプレックス形成イオンからなる旧来の金属クラスターとは対象的に、UDDクラスターの場合にはコア及び安定化されたシェルの双方が基本的に炭素原子からなる。そのため、ダイヤモンド格子構造から、ポリヘドロンフレーム系、多環構造系、ネット構造系を経て、非ダイヤモンド構造の周囲殻に変換することが可能である。クラスターの境界は周囲殻の炭素原子と爆薬による爆射のガス状生成物、空気、酸化性混合物、変性剤のような物質の雰囲気との相互生成物により安定化することができる。周囲殻は、ダイヤモンドクラスターの凝集過程で、主な役割を演じ、爆薬材料のマトリックス物質及び被覆材料と相互反応する。このようなUDD粒子中の2種類の炭素成分の存在は、上記実験結果以外にも、T.M.Gubarevich, Yu.V.Kulagina, L.I.Poleva[Sverhtvjordii materali,No.2,pp34(1993)]Oxidation of ultradispersed diamonds in liquid mediaに示されており、上記実験結果は、該文献が開示する内容と同様なものであった。
【0150】
A.I.Lyamkin, E.A.Petrov, A.P.Ershov, G.V.Sakovich, A.M.STaver, V.M.Titov[In Proceedings of Academy of Science of USSR,No.302,pp611(1988)]、A.M.Staver, N.V.Gubareva, A.I.Lyamkin, E.A.Petrov[Phisika Gorenniya Ivzriva,Vol.20,No.5,pp100(1984)]Ultradispersed diamond powders obtained with the use of explosives、及び、N.V.Kozirev, P.M.Brilyakov, Sen Chel Su, M.A.Stein[In Proceedings of Academy of Science DAH USSR,Vol.314,No.4,pp889(1990)]Investigation of synthesis of ultradispersed diamonds by mean of tracer method にも示されるように、爆薬による爆射の凝縮生成物の構造は、基本的過程すなわち爆射の衝撃波による化学反応の帯域中での基本的爆射過程、及び、反応相の放散過程すなわち爆発生成物の放散期間と衝撃波の反射波がこの爆発生成物を通過する期間、の双方の期間で形成される。上記N.V.Kozirev等の場合には、ダイヤモンドのグラファイト化及び結晶相のアモルフアス化のような2次過程の大きな可能性が示唆されている。粒子中の炭素フレームに影響を与える構造的変換及び相変換を別にして、爆破室内では凝縮物とガス状物質との間で反応が起こる。広範な温度値、及び合成反応器中での炭素凝縮物の種々の寿命に伴う広範な衝撃印加時間のため、化学的な相互作用は大きく異なる。
【0151】
爆射生成物からのダイヤモンド物質の凝集時間がマイクロ秒単位であることを考慮すると、本発明で好ましく使用されるUDDにおいては、1)化学反応帯域では高度爆薬の第1爆発分解生成物の均一化が完了せず、2)爆射生成物の凝集物と分子状成分との分離を完了するための充分な時間がないことが想定される。この推定によれば、爆射生成物からの凝集物中に、ダイヤモンド形成プロセスの化学的マーク、すなわち、爆薬の遊離炭素の凝集メカニズムと炭素原子それ自体の再構築メカニズムについて判断できる分子化合物及び凝集構造の破片物質、が保存されている可能性があることになる。
【0152】
化学的マークは次の4つのカテゴリー、すなわち、(i)sp状態炭素であることを特徴とするダイヤモンド構造物及びダイヤモンド様構造物の破片としてのフレーム、ブリッジ、脂環式炭素化合物、(ii)グラファイト様構造物(sp混成軌道のもの)の破片としての単環及び多環芳香族化合物の誘導体、(iii)炭素クラスターの周囲部境までのアモルファス化物の破片、及びカルビン構造(R−CH−構造)の存在の兆候物の破片としての脂肪族直鎖状及び分枝状化合物、(iv)炭素粒子の表面層の破片としての−C−N結合又は−C−O結合含有化合物、に分けて考えることができる。
【0153】
[製造例15]
かような化学的マークを明らかにし解析するため、本発明で好ましく使用されるUDDについて、UDD、DBの温和な熱分解生成物及びUDDとDBの非ダイヤモンド相の超臨界状態有機溶媒中での分解生成物(所謂オルガノリシス性分解の生成物)について検討した。
すなわち、ソックスレー(Soxhlet)装置中で、固体:液体=1:10の割合で、(3.60〜4.32)×10秒の抽出時間、冷抽出を行なった。液体の抽出力が最大のとき、超臨界状態で所謂オルガノリシス性分解を行なった。4×10−4容積のオートクレーブ中で5MPa以上の圧力、573〜673゜Kで処理した。得られた抽出物を低温蛍光X線スペクトル分析法、ガス−液相クロマトグラフィ、クロマトマススペクトル分析、IRスペクトル分析、及び、常磁性共鳴スペクトル分析法で解析した。各冷抽出物を得るため、ダイヤモンドを含有しない標準サンプルを含む異なるタイプの爆射混合物を用いた。合成条件の違いにより、各爆射混合物は異なる数の抽出された物質を含んでいた。これらは、環構造上に1個又はそれ以上の置換基をもつ二環性芳香族炭化水素、及び多環性芳香族炭化水素であった。さらに、混合物からの低温抽出による分子状生成物中から、sp混成軌道のもの及びsp混成軌道のものを含む各種化合物が得られた。しかしながら、超分散されたグラファイト及びターボストレート(turbostrate:スメクタイトや石炭のように集合原子により構成される各層が平行であり、かつ、各層が互いに不規則な方向を向いて及び/又は不規則な間隔で重なったメソ状態の相)炭素が、ダイヤモンドよりも、このような化合物を含む天然物に類似していることは明らかである。冷抽出の条件下では、固体炭素マトリックスは破壊せず、有機溶媒に溶解しうる化合物分子の脱吸着及び洗い出し(所謂抽出)のみが生じる。そのため、同定された化合物は、最初の爆射生成物から炭素凝集物に移る過程の中間状態の炭素化合物であると結論することができる。前記混合物中の抽出材中に排出される多芳香族性化合物と、ダイヤモンド相の完成された構造物及びその含有量との関係が測定された。即ちダイヤモンドを含有しない爆射生成物からは、可溶性物質の最大5%の排出が測定された。
【0154】
[製造例16]
固体物質の部分分解を伴う、より強力な抽出を、200〜400℃及び昇圧条件下、即ち使用した有機溶剤の超臨界状態下で行なった。最も活性な溶剤の1つとして知られるピリジン中で、炭素の最大の超臨界液化を行なった。比較的穏やかな溶剤(炭化水素)を用いて熱抽出された組成物に関する単純で詳細な結果は、次表のとおりであった。
【0155】
【表9】
Figure 2004018909
【0156】
実際に、得られた抽出物は、色調が淡黄色(n−炭化水素)から暗褐色(ヒドロナフタレン)まで異なっていた。抽出処理後のダイヤモンド相−グラファイト相の炭素物質の比率は変化し、表面の性質も著しく変っていた。30分間のこの超臨界液化により、炭素含有ダイヤモンドの10%以上の質量が可溶性の状態に変化し得る。この場合、炭素の活性化学結合への分解は比較的ゆるやかに進行し、クラスターの表面層付近の表面に影響を与え不均一化する。安定構造のユニット、例えば溶液中に排出された固体炭素のような顕微鏡的なユニット、個々の分子のようなマクロユニットは、影響を受けずに残る。この個々のユニットのうち、環中に1個乃至2個の窒素原子を環中に有する4環までの窒素含有多環式複素環分子が同定された。
【0157】
有機化学の原則に従うこのような化合物の形成は、多分、窒素が、炭素−窒素結合を有する窒素含有モノマーの多縮合過程で消費され、UDD合成の第1反応のダイヤモンドを含む凝集炭素中に包含されることによるものと考えられる。この点、ダイヤモンド格子中の炭素と置換した不純物窒素原子によるUDDのEPRスペクトル中に、特徴的なトリプレットの信号がない旨のA.L.Vereshagin, V.F.Komarov, V.M.Mastihin, V.V.Novosyolov, L.A.Petrova, I.I.Zolotuhina, N.V.Vichin, K.S.Baraboshikin, A.E.Petrov[Published Documents for the Conference Entitled name of In Proceeding of 5th All−Union meeting on detonation,Held in Krasnoyarsk,Jan.1991.pp99]Investigation of properties of detonation synthesis diamond phase 記載のデータとは相違するが、しかし、これは、本発明で好ましく使用されるUDDにおける「爆射期間中のUDD形成のための多縮合」と通常の「ダイヤモンド結晶の拡散成長」との差異によるものである。ダイヤモンド結晶の拡散成長の場合には、形成されたダイヤモンド結晶への不純物窒素の捕獲と結晶中への拡散が観測されるが、本発明で好ましく使用されるUDD合成の場合には、不純物窒素(正確には窒素−炭素結合)が最初に(芳香族構造の環状体の高い結合エネルギーを有する)芳香族環中に入り、次にこれが予備縮合したパッキング中に包含される。この場合、窒素の常磁性特性が、単原子状の不純物窒素のそれとは異なる。
【0158】
ダイヤモンドクラスターの外周シェルの外側表面の構造は、熱吸収データから、両者共同様であると思われる。本発明においては、クロマトマススペクトルメータLKB−209(スエーデン)を用いて熱吸収測定が行なわれた。ヘリウム気流中573°Kで熱脱吸着が行なわれ、生成物は、液体窒素で冷却された毛細管中に連続的に捕獲された。次に、ヘリウムガスキャリアー(VHe=2.5×10−6m・m)の気流中で弱極性の相(SPB−5,l=60m,d=3.2×10−4m)の毛細管カラムで、毎分4°の加熱割合で293°Kから543°Kまでプログラム加熱し、熱脱吸着生成物を蒸発させた。
【0159】
[製造例17]
マススペクトルライブラリーを用いた電算機によりマススペクトル処理し、生成物を同定した。ダイヤモンド含有混合物及びUDDの表面から脱吸着された物質の組成は次表に示される。
【0160】
【表10】
Figure 2004018909
【0161】
BD表面からは炭化水素のみ、即ち、飽和C〜C11炭化水素、不飽和C〜C炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素が脱収着された。C10のアルカンの含有量は顕著であり、脱収着生成物中でn−デカンC1022自身が主である。これは、爆射生成物におけるキュムレン結合(C・C・CH=の結合)形の消費でC10〜C12の炭化水素鎖がパッキングされるときに熱力学的に効率的な構造としてのカルビン構造(R・CH−構造)がある旨のデータと一致する。本発明により、BD自身中の多環芳香族ネットの存在が確認されたが、しかし、C10のアルキルベンゼンを含む芳香族炭化水素は、BD物質から脱吸着された全質量のうちの充分に小さい区分にすぎない。それ故、sp型炭素の縮合程度は充分に高い。しかし、多環芳香族ネットは強く不整合化され、主に脂肪族性の周囲基、いわゆる炭化水素フリンジを有する。BD表面から脱吸着された生成物中の水素は、C−H型結合の非活性水素である。これは、ロシア特許第2046094号(合成炭素ダイヤモンド材料)、Bjuljuten izobretnji,(29),pp189(1995)記載の超分散された炭素表面の活性水素の分析結果とも齟齬がない。
【0162】
UDD表面からの脱吸着生成物の組成は大変複雑で多岐に亘る。炭化水素を別にして、炭素表面の酸化の結果として窒素含有化合物及び酸素含有化合物が挙げられる。ベンゼン及びC〜C10の同族体が広く作られ、それらからC10のアルカンが得られる。そのうち、n−デカンが優勢である。ブリッジ脂環類はカンフェン及びテルパジエンC1016として存在する。脱吸着生成物のこのような組成は、ダイヤモンド構造の相境界面が露出する可能性は少ないことを示している。
【0163】
種々の過度性炭素構造により、UDDクラスター構造を安定化することができる。水素気流中で400℃でUDDを処理(前記表中の水素処理したUDD)すると、C〜C11の大量の炭化水素を非可逆的に脱吸着する。しかし、表面炭素構造を分解すると、C〜Cの炭化水素の形成を伴って、連続的な表面、すなわち準安定(metastable)な表面を再生する。
【0164】
爆射法によるダイヤモンド粒子は、フラクタルルール(集合体を構成する個々の画像要素の形とその集合体画像の形とが相似形であることが大、中、小と繰り返されている無限等比級数系のルール)が適用され、小粒子が非連続に凝集したクラスターからなり、該小粒子1個はまた種々の大きさの小片が結合したものからなることは従来から知られ(G.V.Sakovich, V.D.Gubarevich, F.Z.Badaev, P.M.Brilyakov, O.A.Besedina[In Proceedings of Science of USSR,Vol.310g,No.2,pp402(1990)]Aggregation of diamonds obtained form explosives、及びLuciano Pietronero, Erio Tosatti[Fractals in Physics:Proc.of the Sixth Trieste International Symposium of fractals in physics(1985), ICTP,Trieste,Italy]Invetigation of synthesis of Ultradispersed diamonnds、及びA.V.Igonatchenko, A.B.Solohina[Published Documents for the Conference Entitled name of In Proceeding of 5th All−Union meeting on detonation,Held in Krasnoyarsk,Jan.1991.pp164]Fractal structure of ultradispersed diamonds参照)ている。
【0165】
本発明で好ましく使用されるUDD懸濁物のイオン強度はpH4乃至10の範囲のものであるが、温度上昇、pH上昇はこの懸濁粒子のフロキュレーションを生じ易くする。本発明で好ましく使用されるUDDについて、UDDの凝集メカニズムは2段階であると考えることができる。最初の段階は化学的精製期間にBDの非ダイヤモンド成分の酸化条件下で粒子のクラスター化により、比較的コンパクトな第1の凝集体が形成される。第2の段階は、クラスター−クラスター間の凝集であり、これは、より破壊され易い第2の構造を形成する。この第2段階は、第1の凝集体のフロキュレーションを生じるまでが限度である。ある場合にはクラスター−粒子間の凝集、第2構造のクラスター相互間の凝集等好ましくない凝集を生じ得る。
【0166】
[製造例18]
つぎに、静的製造法(製法I:非爆射法)によるUDD、従来の爆射法(G.A.Adadurov, A.V.Baluev, O.N.Breusov, V.N.Drobishev, A.I.Rogechyov, A.M.Sapegin, B.F.Tatsji[Proceedigs of Academy of Science of USSR,Inorganic materials,Vol.13,No.4,pp649(1977)]Some properties of diamonnds obtained by explosion method、製法II)によるUDD、及び本発明で好ましく使用されるUDDの製造方法(製法III)によるUDDの諸性質を比較した。結果は次表に示される。
【0167】
【表11−1】
Figure 2004018909
【0168】
【表11−2】
Figure 2004018909
【0169】
上の表から、製法IIIによるUDDは、炭素含有率が90%未満であって低く、水素含有率が0.8%以上であって高く、酸素含有率が6.8%以上であって高いことが分かる。他のダイヤモンドと異なる顕著な点として、比表面積がほぼ10倍程度に大きいこと、収着能が384×10J/kg以上であってほぼ10倍程度に大きいこと、表面電位がマイナス77.44×10V以上であってほぼ10倍程度に大きいことが挙げられる。若干の表面導電性を有すること、吸水率は他のものに比し倍程度高いことが次に挙げられるが、他方、空中酸化開始温度、真空中でのグラファイト化開始温度は相対的に低い。電気的、磁気的物理特性は他のダイヤモンドとさほどの違いがない。従来の製法IIによるUDDは、2つの相、すなわち、結晶定数a=3.57×10−10mの立方晶形の相と、結晶定数a=2.52×10−10mの六方晶形の相を含むが、本発明の製法IIIによるUDDは、結晶定数a=3.57×10−10mの立方晶形の相のみからなる。
【0170】
[UDD−金属の複合膜、その作成]
以下、本発明によるメッキ浴について具体的に説明する。
これら各メッキ浴には、むろん、本発明においては、前記のようなUDD濃度即ち、メッキ液1リットル中0.05〜120g、好ましくは0.1〜32g、より好ましくは1〜16gの濃度になるようにUDDを添加する。本発明の典型的な1リットルのメッキ液中におけるUDD濃度は、ニッケルメッキの場合実務上は2g以上であることが好ましく、より好ましくは3g〜14gである。
【0171】
[実施例1〜実施例8]
[UDD−ニッケル金属の複合膜]
製造例1のNo6のサンプル(α=74.4%のサンプル、サンプルE)の縣濁液(25ml)を、装飾用ニッケルメッキ浴として、つぎの組成のワット(Watt)浴、及び作業条件、即ち、光沢ニッケルメッキ(475ml;分散剤としてライオノール935を使用)に添加し、500mlのニッケル−UDDメッキ液を建浴した。
光沢ニッケルのメッキの液組成
成分      組成比[g/L]
硫酸ニッケル       300
塩化ニッケル        60
ほう酸          50
その後、分散剤としてノニオン系界面活性剤(ライオノール)を1滴(0.1ml/1L)以下の割合で添加し該ニッケル−UDDメッキ溶液を調整した。
以上のように調整したメッキ液を55℃に昇温した後、被塗物(メッキ処理材料)を前処理(脱脂→水洗→酸洗い→水洗)→メッキ処理(ニッケル−UDD)→後処理(水洗→乾燥)の順に処理を行なった。このときのその他のメッキ条件は、メッキ時間は5min、メッキ液の攪拌にはマグネチック・スターラーを使用し、メッキ時に緩やかな速度で攪拌を行なった。メッキ後の乾燥には純水洗浄後にエアー吹き乾燥を行なった。なお本実施例では上記のような条件でメッキしたが、例えばつぎのような処方のメッキ浴を用いることもできる。
硫酸ニッケル(NiCl・6HO)          300g/l
塩化ニッケル(NiCl・6HO)             30g/l
硼酸(HBO)                               25g/l
他の主用条件はつぎのとおりであった。
UDD縣濁液                                     表12のとおり
界面活性剤                                       表12のとおり
光沢剤適量(2種類)ピット防止剤                      適量
ピット防止剤                                          適量
pH                                            3.5〜4.0
温度                                                55℃
電圧(V)                                          表12のとおり
陰極電流密度(A/dm)                         表12のとおり
撹拌                                              スターラーで緩攪拌
メッキ時間                                           5min.
上記UDD縣濁液を含むメッキ浴で、ハルセル(登録商標)試験器を使用して、通常メッキ前処理によりよく洗浄したハルセル(登録商標)試験用黄銅板に対してメッキ作業を行なった。メッキ浴は念のため、陰極ガスによる自然撹拌だけでなくマグネチックスターラーにて緩やかに攪拌した。メッキ後の乾燥には純水洗浄後にエアー吹き付け乾燥を行なった。
【0172】
【表12】
Figure 2004018909
【0173】
このようにして得られた実施例1〜実施例8のメッキ膜サンプルのメッキ膜厚を、メッキ膜厚測定の常法(蛍光X線による膜厚測定)により、ハルセル(登録商標)電流密度早見板にしたがって、2個所の高電流密度位置(5.0A/dm)、2個所の中電流密度位置(2.0A/dm)、2個所の低電流密度位置(1.0A/dm)、の計6個所の膜厚を測定し、その平均値を求めた。結果はつぎの表13に示される。
【0174】
【表13】
Figure 2004018909
【0175】
なお、上記表13中には示してないが、実施例6、7、8で得られた3サンプルについては、0.1A/dmの電流密度の個所についても膜厚(μm)を測定し、それぞれ、平均膜厚0.2230μm(実施例6)、平均膜厚0.3393μm(実施例7)、平均膜厚0.2582μm(実施例8)の結果を得た。
【0176】
これらの結果から、膜厚は電流密度にほぼ比例して大きくなること、及び、0.1A/dmの電流密度では薄い膜厚しか得られないことが分かる。
【0177】
次に実施例1〜実施例8で得られた各メッキサンプルのメッキ膜中におけるUDD粒子の分散状態及びUDD粒子のサイズ分布を以下のように検査した。すなわち、前記ハルセル(登録商標)試験用黄銅板の高電流密度位置、中電流密度位置、低電流密度位置をSEM撮影するため白金の薄膜を設けた後、SEMにて表面撮影した。また、前記ハルセル(登録商標)試験用黄銅板の高電流密度位置、中電流密度位置、低電流密度位置をメトラ型カッタで切断し、メッキ皮膜の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)の拡大写真(10.000倍率)で撮影した。ハルセル(登録商標)試験用黄銅板には、UDD−ニッケル複合メッキ皮膜上に硫酸銅メッキにてマスキングを施し、カッタで切断し、樹脂に埋め込み、硬化させた後に撮影面(切断面)を研磨し、エッチングし、そしてSEM撮影用にスパッタにて白金の薄膜をコ―ティングした後、SEMにて撮影された。
SEM撮影された断面は、図22(実施例6、7のサンプルの表面SEMの10000倍拡大)、図23(実施例6、7のサンプルの断面SEMの10000倍拡大)、図24(実施例8のサンプルの断面SEMの10000倍拡大)、図25(実施例2のサンプルの電流密度=1A/dmにあたる位置、2A/dmにあたる位置、5A/dmにあたる位置、のSEM写真の10000倍の拡大図)、図26(実施例2のサンプルの断面SEMの10000倍拡大)に示される。
【0178】
これらの結果から、本発明のUDD−金属の複合薄膜層においては、粒径分布が狭分散(2nm〜60nmの範囲)のUDD粒子が金属薄膜表面に均一かつ高密度に分散しているだけでなく、金属薄膜の層の深さ方向の各レベルにおいて均一かつ高密度に分散していることが分かる。また、特に、高電流密度部では綿密に均一分散していることが分かる。更に、実施例6、7の結果から攪拌(実施例6)が、無攪拌(実施例7)に比し、より効果的であることが分かる。
【0179】
そして、次に実施例1〜実施例8で得られた各メッキサンプルのメッキ膜中におけるUDD粒子の分散状態及びUDD粒子のサイズ分布を、前記SEM画像に基く以下のような画像解析法により測定した。
すなわち、一定面積(4cm×10cm)の前記ハルセル(登録商標)板ごとにメッキ皮膜を常法により酸で溶解し、その溶液をフイルタでろ過し、ろ過したフイルタに捕集された粒子の重量を測定することで、本発明のUDD−金属の複合薄膜層中のUDD量を求めた。そしてこれを基に、ニッケル皮膜中に析出したUDDの析出割合を次の計算式(I)、(II)から求めた。
【0180】
Ni皮膜の重量=平均膜厚×表面積×Niの密度…計算式(I)
UDD析出割合=(UDD析出重量/Ni皮膜の重量)…計算式(II)
【0181】
次に図22(SEM画像の拡大写真)を1.0×1.0μmの単位面積で区切り、その中からランダムで数ヶ所抜き取り、UDD数量を計測し、その平均値を求めて1.0×1.0μmあたりのUDDの共析量を換算した。これをもとにニッケル皮膜中のUDD析出割合を求めた。その計算式をつぎの式(III)〜(VI)に示す。ここでr=15[nm]、UDD密度=3.20×10[kg/m]である。また、その結果を表14に示す。
1粒子あたりのUDD重量=4πr/3×UDDの密度   …(III)
皮膜中の総UDD数量=体積×単位体積あたりのUDD数量  …(IV)
UDD析出重量=皮膜中の総UDD数量×1粒子あたりのUDD数量…(V)UDD析出割合=(UDD析出重量/ニッケル皮膜の重量)×100…(VI)
【0182】
【表14】
ニッケル皮膜中のUDD析出割合
Figure 2004018909
【0183】
表14から、本発明のUDD―ニッケル金属複合薄膜におけるUDD析出割合(含有量)は、1%以上であることがわかる。しかし、ノニオン系界面活性剤はメッキ溶液中でUDDの凝集を抑制する効果がより大きい等の理由のため、0.2μmのフィルターで捕集できないものもあると思われる。特に実施例2の場合その効果が顕著に表われている。
【0184】
[カチオン系界面活性剤の使用例]
上記サンプルのUDD25ml、純水25mlをビーカーに取り混合した。それにカチオン系界面活性剤のエソカード0.1ml入れ、攪拌した。その後そのUDD溶液をニッケルメッキ450mlに添加し、さらに攪拌してUDD−ニッケル金属メッキ溶液を調整建浴した。その後ハルセル試験器を使用して、通常メッキ前処理により良く洗浄したハルセル(登録商標)試験用黄銅板に電気メッキをした。この皮膜作製時のメッキ条件は以下のように決めた。予備試験により、温度は最適であると思われる55℃、メッキ時間は5min、電流値は1.0Aに統一した。そしてメッキ液の攪拌にはマグネチック・スターラーを使用し、メッキ時に緩やかな速度で攪拌を行なった。また、無攪拌でのメッキ時は、電解直前まで攪拌を行ない、電解と同時に攪拌を停止してメッキを行なった。メッキ後の乾燥には純水洗浄後にエアー吹き乾燥を行なった。
【0185】
このようにして得られたメッキ皮膜の表面の拡大写真をSEM(走査型電子顕微鏡)により、10,000倍率で撮影した。それらはハルセル電流密度早見板により、1.0、2.0、5.0A/dmにあたる位置の拡大写真である。その拡大写真を図23に示す。
次に、拡大写真を1.0×1.0μmの単位面積で区切り、その中からランダムに数ヶ所抜き取り、UDD数量を計測し、その平均値を求めて1.0×1.0μmあたりのUDDの共析量を換算した。これをもとにニッケル皮膜中のUDD析出割合を求めた。その計算式は式(III)〜(VI)と同様である。ここでr=15[nm],UDD密度=3.20×10[kg/m]である。その結果を次の表15に示す。
【0186】
【表15】
ニッケル皮膜中のUDD析出割合
Figure 2004018909
【0187】
図23の1000倍率のSEM拡大写真から、攪拌有り無しでは無攪拌の方が均一分散していることがわかる。これは攪拌(流速・メッキ液の流れ方向)による影響である。また、強電流密度部ほど大きく凝集したものが析出し、析出粒径にもバラツキが見られる。電流密度が1.0A/dmの部分では100ナノメーター前後に凝集したUDDが均一分散し、析出粒径のバラツキ範囲も狭いことがわかる。従って、電流密度により析出粒径が異なり、低電流密度部ほど緻密なUDD−ニッケル金属メッキ複合皮膜であることがわかる。しかし、高電流密度部において応力を加えるとメッキ割れの現象が発生した。これはUDDの析出増加により、メッキ皮膜の硬度が上昇するという物性変化によるものであると思われる。
【0188】
[UDD粒子のSEM画像の画像解析]
図25(実施例2のサンプルの電流密度=1A/dmにあたる位置、2A/dmにあたる位置、5A/dmにあたる位置、のSEM写真の2×10倍の拡大図)の該3箇所を、100 line/inchの較正値(解像力)、0.68492nm/pixel,1.46pixsel/nmの画素切取寸法で、800×950 pixelの画素数範囲の面積についてスキャナー読み取りを行ない、読み取られた各画素情報を常用のコンピュータ画像処理に供した。すなわち、読み取られた画像情報をコンピュータにより2値化処理し、得られた数値データをコンピュータにより統計処理してヒストグラム化し、ヒストグラムに基いて、画素の大小集合からなる各明部領域を暗部から区別するための閾値をコンピュータにより統計的に求め、該閾値に基いて画素の集合としてのそれぞれ大きさが異なる各明部領域をコンピュータにより切り出し、メモリに記憶させ、画素の集合として切り出された各明部領域データをメモリから読み出して、それらの縦軸及び横軸に等面積処理を施してそれら各径をコンピュータにより計算し、該それぞれ明部領域データの統計上の特異点を基本統計量として算出すると共に、それぞれの径の分布状態を大きさ毎に分類した。
【0189】
結果はつぎの表16(UDD粒子等面積円径の基本統計量(3視野合計))、表17(粒径―個数分布)、表18(長軸/短軸比の基本統計量)、表19(長軸/短軸の個数分布)、表20(等面積円径の基本統計量)、表21(等面積円径―個数分布)に示され、グラフとして図27(粒径―個数分布)、図28(長軸/短軸比―個数分布)、図29(3視野の等面積円径―個数分布)に示される。
【0190】
【表16】
UDD粒子等面積円径の基本統計量(3視野合計)
平均          13.78766161
標準誤差        0.369499346
中央値(メジアン)   12.88945997
最頻値(モード)    5.41140892
標準偏差        6.215941116
分散          38.63792396
尖度         −0.285320992
歪度          0.631501211
範囲          27.17843547
最小          4.573475452
最大          31.75191092
合計          3901.908234
標本数                 283
最大値(1)      31.75191092
最小値(1)      4.573475452
信頼区間(95.0%) 0.727326314
【0191】
【表17】
粒径―個数分布
Figure 2004018909
【0192】
【表18】
長軸/短軸比の基本統計量(3視野合計)
平均          1.334365638
標準誤差        0.012904759
中央値(メジアン)   1.287877495
最頻値(モード)    #N/A
標準偏差        0.217091657
分散          0.047128787
尖度           1.16127963
歪度          1.121937478
範囲          1.099549277
最小          1.000007268
最大          2.099556544
合計          377.6254756
標本数                 283
最大値(1)      2.099556544
最小値(1)      1.000007268
信頼区間(95.0%) 0.025401861
【0193】
【表19】
長軸/短軸の個数分布
Figure 2004018909
【0194】
【表20】
等面積円径の基本統計量(各視野毎)
Figure 2004018909
【0195】
【表21−1】
等面積円径―個数分布(各視野毎)
Figure 2004018909
【0196】
【表21−2】
その累積割合
Figure 2004018909
【0197】
図27におけるバーグラフは、各チャンネル(データ区間)毎の個数分布頻度を、折線グラフは、合計個数分布頻度を、それぞれ表わし、図28におけるバーグラフは、各チャンネル(データ区間)毎の個数分布頻度を、折線グラフは、合計個数分布頻度を、それぞれ表わし、図29におけるバーグラフは、各チャンネル(データ区間)毎の個数分布頻度を、折線グラフは、合計個数分布頻度を、それぞれ表わす。
【0198】
これらの結果から、本発明のUDD―ニッケル金属複合薄膜におけるUDDは、金属薄膜層の層厚方向の各レベルに亘ってほぼ均一に分散している(図22乃至26)ことが分かり、該UDDはその粒径分布が、等価円換算で、粒径が16nm以下の粒径の粒子の数平均存在率が少なくとも50%以上、例えば62.54%(表17)の小粒径のものであり、50nmを超える粒径の粒子の数平均存在率及び)2nm未満の粒径の粒子の数平均存在率が実質零%(表17)の狭分散ものであることが分かる。
【0199】
また、該金属薄膜層のSEMによる層厚が32nm(0.032μm)乃至30000nm(30.0μm)の範囲、例えば0.10μm(0.1132μm)〜5.00μm(4.9850μm)の範囲(表13)のもので、その中に含まれるUDDはその粒径分布が、等価円換算で、粒径が16nm以下の粒径の粒子の数平均存在率が70%以上である場合がある(表16、17)こと、SEMによる画像解析で長軸の短軸に対する比が2.2以下の存在率の粒子の出現率が、実質100%で、長軸の短軸に対する比が1.4以下の粒子の出現率が、70%以上(表18、19)のほぼ球体の丸いものであり、潤滑性に優れたものであることが分かる。
【0200】
[UDD―ニッケル金属複合薄膜の硬度測定]
製造例1で得られた上記サンプルのUDDを25mlニッケルメッキに超音波を当てながら添加し、5%のニッケル−UDDメッキ溶液を500ml調整し建浴した。ここで使用した光沢ニッケルメッキの液組成を表22に示す。さらに分散剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(東信油化工業社製)を0.1ml添加して調整した。
【0201】
【表22】
光沢ニッケルメッキの液組成
成分         組成比[g/L]
硫酸ニッケル        300
塩化ニッケル         60
ほう酸           50
【0202】
以上のように調整したメッキ液を55℃に昇温した後、黄銅板テストピースを前処理(脱脂→水洗→酸洗い→水洗)→メッキ処理(ニッケル−UDD)→後処理(水洗→乾燥)の順に処理を行なった。テストピースのサイズは20mm×100mmで実際メッキ処理する部分は20mm×70mmである。硬度測定を行なうためには、メッキ膜厚が20μm前後必要であり、それ以下だと素地(母材)の影響を受けてしまう。そのため皮膜作製時のメッキ条件は以下のように決めた。前報より、温度は最適であると思われる55℃、電流値は0.56A(電流密度=2.0A/dm)に統一した。そしてメッキ液の攪拌には超音波(超音波洗浄器:SU−6TH 柴田科学株式会社製)を使用(実施例3改)し、また、マグネチック・スターラーを使用(実施例3)した。また、メッキ時間を超音波の場合(実施例3改)は50min、マグネチック・スターラーの場合(実施例3)は70minとし、メッキ時間で膜厚の調整を行なった。メッキ後の乾燥には純水洗浄後にエアー吹き乾燥を行なった。
【0203】
次に硬度測定の評価方法として微小硬さ試験方法によるビッカース硬さを用いた。ビッカース硬さとは対面角136°のダイアモンド四角すい圧子を用い、一定の荷重で圧子を試料表面に押し込んで試料面にピラミッド形のくぼみをつけ、その対角線の長さを測定し、それから求めた表面積で除した値で算出するものである。次式によりビッカース硬さを算出した。また、硬度測定の詳細を以下に示す。
【0204】
硬度測定の詳細
方法:微小硬さ試験方法(JIS Z 2251−1980)によるビッカース硬さ
測定器:明石製作所 超軽荷重微小硬度計(形式 MVK−1)
条件:荷重;20.0[gf],荷重保持時間;15[sec]
負荷速度;0.01[0.01mm/sec]
【0205】
Hv=F/S=2Fsin(θ/2)/d=1854.4F/d…(VII)
Hv;ビッカース硬さ,F;荷重[gf],
S;くぼみの表面積[μm],d;対角線の平均長さ[μm]
【0206】
結果、実施例3の方は、くぼみの大きさにバラツキが見られたため、最も群が多い値で行なった。結果を表23に示す。
【0207】
【表23】
UDD−ニッケル複合膜の硬度測定結果
Figure 2004018909
【0208】
超音波を用いてメッキを行なったもの(実施例3改)はUDDの影響により皮膜硬度が増加している。また、スターラーによる攪拌の場合(実施例3)は通常ニッケルメッキとの差は見られなかった。しかし、上述したようにくぼみの大きさが一定しなかったことから、UDDが皮膜中に存在するが均一に分散していないと思われる。参考までにニッケルの硬度は一般的にHv=200〜400ほどである。
【0209】
上記UDD―ニッケル金属複合薄膜の硬度測定の結果、ニッケル硬度変化について、ワッツ浴に添加剤なしでは100〜250(HV)程度であり、ワッツ浴に光沢用光沢剤添加では200〜400(HV)程度と言われているが、UDD皮膜は538(HV)が実験では確保できた。この硬度は通常のほぼ2倍程度の硬度増加と云える。
【0210】
[実施例9〜実施例10]
[UDD−金の複合膜]
(実施例9;分散剤としてライオノール935使用)
製造例1のNo6のサンプル(α=74.4%のサンプル、サンプルE)の縣濁(10ml)を、次の組成を有する光沢厚付純金メッキ(490ml)に添加し、500mlの金−UDDメッキ液を建浴した。
<光沢厚付純金メッキの液組成>
成分         組成比[g/L]
シアン化第一金カリウム     30
クエン酸          90
その後の分散剤としてカチオン系界面活性剤(エソカード)を10滴(1.0ml/1L)以下の割合で添加し金−UDDメッキ溶液を調整した。
以上のように調整したメッキ液を60℃に昇温した後、被塗物(メッキ処理材料)を前処理(脱脂→水洗→酸洗い→水洗)→メッキ処理(金−UDD)→後処理(水洗→乾燥)の順に処理を行なった。このときのその他のメッキ条件は、メッキ時間は5min、メッキ液の攪拌にはマグネチック・スターラーを使用し、メッキ時に沈殿物が生じない程度の速度で攪拌を行なった。メッキ後の乾燥には純水洗浄後にエアー吹き乾燥を行なった。
【0211】
(実施例10;分散剤としてレオコン使用)
製造例1のNo6のサンプル(α=74.4%のサンプル、サンプルE)の縣濁(10ml)を、次の組成を有する光沢厚付純金メッキ(490ml)に添加し、500mlの金−UDDメッキ液を建浴した。
<光沢厚付純金メッキの液組成>
成分         組成比[g/L]
シアン化第一金カリウム     30
クエン酸          90
その後分散剤としてノニオン系界面活性剤(レオコン)を1滴(0.1ml/1L)以下の割合で添加し金−UDDメッキ溶液を調整した。
以上のように調整したメッキ液を,60℃に昇温した後、被塗物(メッキ処理材料)を前処理(脱脂→水洗→酸洗い→水洗)→次表に示される作業条件で、メッキ処理(金−UDD)→後処理(水洗→乾燥)の順に処理を行なった。このときのその他のメッキ条件は、メッキ時間は5min、メッキ液の攪拌にはマグネチック・スターラーを使用し、メッキ時に沈殿物が生じない程度の速度で攪拌を行なった。メッキ後の乾燥には純水洗浄後にエアー吹き乾燥を行なった。
【0212】
【表24】
Figure 2004018909
【0213】
得られたUDD−金複合薄膜層のサンプルを、ニッケル複合薄膜層の場合と同様に、皮膜の膜厚の測定を行なった。結果は次の表25に示される。ニッケル複合薄膜層の場合と全く同様の傾向が示された。
【0214】
【表25】
Figure 2004018909
【0215】
[UDD−金複合薄膜層のSEM画像の画像解析]
次に、得られたUDD−金複合薄膜層のサンプルを、ニッケル複合薄膜層の場合と同様に、SEM写真を撮影した。結果は図30に示される。両金メッキサンプルのメッキ膜中におけるUDD粒子の分散状態及びUDD粒子のサイズ分布を検査した結果、ツヤがあり、明度が高く、金特有の若干赤味を帯びた金複合薄膜表面が得られ、ニッケル複合薄膜層の場合と同様に、良好な結果が得られた。
【0216】
[実施例11]
さらに、実施例10において、攪拌に用いたマグネチックスターラーを超音波分散に代えた以外は、実施例10と全く同様にして実施例11のUDD−金複合薄膜層のサンプルを得た。
[UDD−金複合薄膜層のTEM画像の画像解析]
さらに、この実施例11によるUDD−金複合薄膜層のサンプルを、実施例9及び実施例10のサンプルのSEM画像と同様、TEM写真を撮影し解析した。即ち、実施例11のサンプルの断面を研磨(終仕上げ;アルミナ0.1μm)し、イオンエッチング(BAL−TEC RES100)し、日立H−9000UHR(300kV)を用いてTEM写真を撮影し、観察した。Au−UDD層は表裏面、及び同一面でも場所によって膜厚に若干の違いが認められたが、膜厚の薄い厚いに拘らずUDD粒子は球に近い形状で、2nm〜40nm程度の粒子がAu層中に広く均一分布しているのが観察された。結果は図31に示される。また、薄膜層をより詳細に観察するため、倍率80万倍のTEM写真像を撮影した。結果は図32に示される。この図からUDDをほぼ均一に分散している金複合薄膜層が、そのモアレ模様と共に明瞭に示される。
また、このTEM写真像に基いて、UDD粒子画像をつぎのような条件下で画像解析した。即ち、
(1)画像入力 2視野 スキャナー入力 100line/inch
画像の大きさ 800×1000Pixel 較正値 0.31646nm/Pixel 3.16Pixel/nm
(2)等面積円径(2視野合計)
【0217】
つぎのような結果が得られた。
基本統計量
平均          5.618684253
標準誤差        0.290796079
中央値(メジアン)   4.286070759
最頻値(モード)      2.8796173
標準偏差        4.419717763
分散           19.5339051
尖度          17.33478826
歪度          3.757725837
範囲           32.0393311
最小          2.143035379
最大          34.18236648
合計          1297.916062
標本数                 231
最大値(1)      34.18236648
最小値(1)      2.143035379
信頼区間(95.0%) 0.572964042
【0218】
【表26】
Figure 2004018909
(結果は図33に纏められる)
【0219】
(3)長軸/短軸(2視野合計)
基本統計量
平均          1.267671904
標準誤差        0.011656865
中央値(メジアン)    1.23278917
最頻値(モード)    #N/A
標準偏差        0.177169013
分散          0.031388859
尖度          1.206783942
歪度          1.063055744
範囲          0.883814784
最小          1.000012048
最大          1.883826832
合計          292.8322097
標本数                 231
最大値(1)      1.883826832
最小値(1)      1.000012048
信頼区間(95.0%) 0.022967863
【0220】
【表27】
Figure 2004018909
(結果は図34に纏められる)
【0221】
この実施例11(超音波攪拌)のTEM写真による解析結果と、先の実施例10(マグネチックスターラ)のSEM写真による解析結果とを比較した。すなわち、両画像をスキャナーにて入力(100 line/inch)し、入力画像を2値化し、それに基いて各粒子部の等面積円径を計算し、またこれと共に各粒子の長軸、短軸を計測し、長軸/短軸を計算した。結果は次のとおりである。
【0222】
【表28】
Figure 2004018909
【0223】
これらの結果、超音波振動により激しく攪拌した実施例11によるサンプルは、マグネチックスターラにより攪拌した先の実施例10によるサンプルに比較し、より優れた結果が得られた。
【0224】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明によれば、充分に精製され、粒度分布が狭く、表面活性に優れた粒径ナノメーター単位の超微粒ダイヤモンドを含み分散安定性に優れた水性懸濁液を用いる結果、ダイヤモンド微粒子を薄膜層中に高濃度でかつ均質に分散し、硬度に優れたダイヤモンド微粒子―金属共析膜が提供され、また、電気メッキ浴を用いて、メッキ法により、ダイヤモンド微粒子―金属共析膜を作成する改善された方法が提供されるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のUDDで変性した陽極酸化アルミニウム膜の断面図である。
【図2】メッキ液中の本発明のUDDの働きを説明する模式図である。
【図3】本発明のUDD含有金属膜の断面模型図である。
【図4】本発明のUDD粉末の製造方法及びUDD水性懸濁液の製造方法の1例を説明する概念図である。
【図5】本発明のUDD粉末の生成過程を説明する図である。
【図6】本発明のUDDの酸化程度と元素組成との関係を示す図である。
【図7】本発明のUDDのPHと活性度との関係を示す図である。
【図8】本発明のUDD粉末サンプルのX線回析チャートである。
【図9】本発明のUDD粉末1サンプルの詳細なX線回析チャートである。
【図10】本発明のUDD粉末の他の1サンプルの詳細なX線回析チャートである。
【図11】本発明のUDD粉末サンプルのIR測定チャートである。
【図12】本発明のUDD粉末サンプルのIR測定チャートである。
【図13】本発明の更に別のUDD粉末サンプルのIR測定チャートである。
【図14】本発明のUDD粒子の拡大模型図である。
【図15】本発明のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図16】本発明の別のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図17】本発明の更に別のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図18】本発明の更に別のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図19】本発明の更に別のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図20】爆射法による粗ダイヤモンドの不完全酸化処理粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図21】従来のUDD粉末サンプルの粒度分布測定結果を示すグラフである。
【図22】本発明のUDD含有金属(ニッケル)薄膜例の表面SEM写真である。
【図23】本発明のUDD含有金属(ニッケル)薄膜例の断面SEM写真である。
【図24】本発明の他のUDD含有金属(ニッケル)薄膜例の断面SEM写真である。
【図25】本発明の更に他のUDD含有金属(ニッケル)薄膜例のSEM写真である。
【図26】本発明の更に他のUDD含有金属(ニッケル)薄膜例の断面SEM写真である。
【図27】本発明のUDD粒子の粒径―個数分布を示す図である。
【図28】本発明のUDD粒子の長軸/短軸比―個数分布を示す図である。
【図29】本発明のUDD粒子の3視野の等面積円径―個数分布を示す図である。
【図30】本発明のUDD含有金属(金)薄膜例のSEM写真である。
【図31】本発明の他のUDD含有金属(金)薄膜例のTEM写真である。
【図32】本発明の他のUDD含有金属(金)薄膜例のTEM写真である。
【図33】本発明の他のUDD粒子の等面積円径―個数分布を示す図である。
【図34】本発明の他のUDD粒子の長軸/短軸比―個数分布を示す図である。
【符号の説明】
1    多量の氷
2    純チタン製耐圧容器
3    ヘルメット
4    片面プラグされたパイプ
5    爆薬
6    電気雷管
7  オートクレーブ

Claims (8)

  1. 層中にダイヤモンド粒子を分散した金属薄膜層であって、
    (i)該金属薄膜層は、層厚が5nm(0.005μm)乃至35000nm(35.0μm)であり、
    (ii)該ダイヤモンド粒子は、前記金属薄膜層の層厚方向の各レベルに亘ってほぼ均一に分散しており、
    (iii)該金属薄膜層中の該ダイヤモンド粒子の含有率が1乃至12%であり、
    (iv)該ダイヤモンド粒子はその粒径分布が、等価円換算で、粒径が16nm以下の粒径の粒子の数平均存在率が50%以上であり、
    (v)50nmを超える粒径の粒子の数平均存在率が実質零%であり、
    (vi)2nm未満の粒径の粒子の数平均存在率が実質零%であることを特徴とする金属薄膜層。
  2. 該金属薄膜層の金属材料が、Au,Cr,Cu,In,Mo,Ni,Pd,Rh,V又はWであることを特徴とする請求項1に記載の金属薄膜層。
  3. 該金属薄膜層の層厚が32nm(0.032μm)乃至30000nm(30.0μm)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属薄膜層。
  4. 前記ダイヤモンド粒子はその粒径分布が、等価円換算で、粒径が16nm以下の粒径の粒子の数平均存在率が70%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の金属薄膜層。
  5. 前記ダイヤモンド粒子は、SEMによる画像解析で長軸の短軸に対する比が2.2以下の存在率の粒子の出現率が、実質100%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の金属薄膜層。
  6. 前記ダイヤモンド粒子は、SEMによる画像解析で長軸の短軸に対する比が1.4以下の粒子の出現率が、70%以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の金属薄膜層。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1に記載の金属薄膜層を担体金属表面上に有することを特徴とする金属材料。
  8. メッキ液中にダイヤモンド微粒子を懸濁したメッキ浴を用いて、電解メッキ法により、ダイヤモンド粒子を分散した金属薄膜層を形成する方法であって、該メッキ浴に、(i)粒径分布が、等価円換算で、粒径が16nm以下の粒径の粒子の数平均存在率が50%以上であり、50nmを超える粒径の粒子の数平均存在率が実質零%であり、2nm未満の粒径の粒子の数平均存在率が実質零%であるダイヤモンド粒子を金属メッキ液1リットル中に0.01g〜120gの濃度で懸濁させ、(ii) 前記ダイヤモンド粒子を該金属薄膜層の層厚方向の各レベルに亘ってほぼ均一に分散している該金属薄膜層の層厚が40nm(0.04μm)乃至60000nm(60.0μm)になるまで電解を行なう各段階を有することを特徴とするダイヤモンド粒子を分散した金属薄膜層を形成する方法。
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