JP5810636B2 - 液晶性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、液晶性樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の特性を有するポリマーが数多く開発され、市場に供されている。中でも、分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリエステルなどの液晶性樹脂が、優れた成形性と機械的性質、絶縁性を有する点で注目され、電気・電子部品や機械部品に用途が拡大されつつある。
電気・電子部品や機械部品に用いられる成形品では、優れた制振性能を発揮するために高い弾性率、優れた絶縁性を発揮するために耐トラッキング破壊性能やさらに表面平滑性が要求されるが、近年の機器の小型化や軽量化に伴うさらなる成形品の薄肉化や形状の複雑化により、上記特性について、これまでよりもより高度な性能が必要とされ始めている。
これまでに、液晶性樹脂組成物の機械強度向上の観点から、液晶性樹脂に酸化チタンウィスカを配合する検討がなされている。例えば、液晶性樹脂に針状酸化チタンウィスカまたは針状ホウ酸アルミニウムウィスカを配合することで、高いウェルド強度を付与する試み(例えば、特許文献1参照)が提案されている。また、液晶性樹脂に平均繊維長2μm以上の針状酸化チタンを配合することで、成形性や成形品の反りを改良する試み(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、液晶性樹脂にホウ酸アルミニウムウィスカおよび酸化チタンウィスカよりなる群から選ばれる一種以上のウィスカと比表面積が200m/g以上であるカーボンブラックを配合することで、引っ張り強度、帯電防止特性を付与する試み(例えば、特許文献3参照)が提案されている。また、液晶性樹脂に熱伝導率3W/m・K以上、アスペクト比10以上の繊維状酸化チタンと熱伝導率2W/m・K以上の熱伝導性フィラーを配合することで熱伝導性の高い樹脂組成物とする試み(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
同様に機械強度向上の観点から、液晶性樹脂にエポキシ化合物を配合する検討もなされている。例えば、液晶ポリエステル樹脂に、ポリエステルやポリカーボネート、ポリアリーレンオキシド、ポリアリーレンサルファイドから選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂および2つ以上のグリシジルエステル基を有するエポキシ化合物を配合することで、引張り強度や曲げ強度を向上させる試み(例えば、特許文献5参照)が提案されている。また、液晶性樹脂に膨潤性の層状珪酸塩、ガラス繊維、カルボン酸無水物基および/またはエポキシ基を分子内に1個以上有する有機化合物を配合することで、曲げ弾性率やたわみ、表面外観を改良する試み(例えば、特許文献6参照)が提案されている。また、液晶性樹脂に、エポキシ当量が300〜3000g/当量であり、重量平均分子量が30000以上であるスチレン系共重合体を配合することで、引張り強度や伸び、曲げ強度や弾性率を向上させ、かつブロー成型性を付与する試み(例えば、特許文献7参照)が提案されている。
特開平3−59067号公報 特開2007−326925号公報 特開2006−45298号公報 特開2008−133382号公報 特開平5−86267号公報 特開2000−143947号公報 特開2008−106079号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載された技術では、液晶性樹脂と針状酸化チタンの界面接着性が低く、針状酸化チタンが凝集しやすく、表面平滑性と耐トラッキング破壊性能が不十分である課題があった。また、溶融混練工程において針状酸化チタンの折損が起こりやすいために、弾性率が不十分である課題があった。
また、特許文献5に記載された技術は、弾性率と表面平滑性が低く、耐トラッキング破壊性能が不十分である課題があった。特許文献6に記載された技術は、表面平滑性が低く、弾性率が低い課題があった。特許文献7に記載された技術は、弾性率が低く、耐トラッキング破壊性能が不十分である課題があった。
電気・電子部品や機械部品に用いられる成形品には、優れた弾性率、耐トラッキング破壊性能、表面平滑性を両立することが求められている。そこで、本発明は、優れた弾性率、耐トラッキング破壊性能、表面平滑性を高いレベルで両立する成形品を得ることができる液晶性樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明は、
(1)(A)液晶性ポリエステル100重量部に対し、(B)針状酸化チタン10〜150重量部、(C)エポキシ当量が500〜2000g/当量である下記式(I)で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物0.05〜3重量部を含有する液晶性樹脂組成物である。
Figure 0005810636
(上記式(I)中、Xは下記構造式で表される基を示す。R およびR はそれぞれ同じでも異なってもよく、H、BrまたはCH を示す。a、bおよびdはそれぞれ1〜18の範囲の値を示し、cは0〜15の範囲の値を示す。)
Figure 0005810636
本発明の液晶性樹脂組成物によれば、優れた弾性率、耐トラッキング破壊性能、表面平滑性を両立する成形品を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
本発明の液晶性樹脂組成物に用いられる液晶性ポリエステルは、異方性溶融相を形成し得るポリエステルであり、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位などから選ばれた構造単位からなる。
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから得られる構造単位が挙げられる。芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどから得られる構造単位が挙げられる。芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などから得られる構造単位が挙げられる。
液晶性ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から得られる構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から得られる構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から得られる構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジカルボン酸および/または脂肪族ジカルボン酸から得られる構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から得られる構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから得られる構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から得られる構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から得られる構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから得られる構造単位、ハイドロキノンから得られる構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から得られる構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から得られる構造単位、エチレングリコールから得られる構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から得られる構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から得られる構造単位、エチレングリコールから得られる構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから得られる構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から得られる構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から得られる構造単位、エチレングリコールから得られる構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から得られる構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から得られる構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
これらの中でも、下記式(II)で表される構造単位(構造単位(II))、下記式(III)で表される構造単位(構造単位(III))、下記式(IV)で表される構造単位(構造単位(IV))、下記式(V)で表される構造単位(構造単位(V))および下記式(VI)で表される構造単位(構造単位(VI))から構成される液晶性ポリエステルが好ましい。このような構造単位から構成される液晶性ポリエステルを含有することにより、高い弾性率や表面平滑性を有する成形品を容易に得ることができる。また、成形品の絶縁性および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。
Figure 0005810636
上記構造単位(II)はp−ヒドロキシ安息香酸から得られる構造単位を、構造単位(III)は4,4’−ジヒドロキシビフェニルから得られる構造単位を、構造単位(IV)はハイドロキノンから得られる構造単位を、構造単位(V)はテレフタル酸から得られる構造単位を、構造単位(VI)はイソフタル酸から得られる構造単位を各々示す。
構造単位(II)は構造単位(II)、(III)および(IV)の合計に対して65〜80モル%であることが好ましく、より好ましくは68〜75モル%である。構造単位(II)を前記範囲で有することにより、液晶性樹脂組成物の成形加工性に優れ、成形品の表面平滑性を容易に向上させることができる。また、構造単位(III)は構造単位(III)および(IV)の合計に対して60〜75モル%であることが好ましく、より好ましくは65〜73モル%である。構造単位(III)を前記範囲で有することにより、成形品の弾性率をより向上させ、硬度を向上させることができる。また、構造単位(V)は構造単位(V)および(VI)の合計に対して60〜92モル%であることが好ましく、より好ましくは60〜70モル%、より好ましくは62〜68モル%である。構造単位(V)を上記範囲で有することにより、液晶性樹脂組成物の熱安定性に優れ、加工時の異物発生による成形品の弾性率の低下や耐トラッキング破壊性能の低下を抑制することができる。
構造単位(III)および(IV)の合計と(V)および(VI)の合計は実質的に等モルであるが、ポリマーの末端基を調節するためにカルボン酸成分またはヒドロキシ成分を過剰に加えてもよい。すなわち「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットとしては等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
本発明の液晶性樹脂組成物に用いられる(A)液晶性ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法が用いられる。例えば、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンとテレフタル酸、イソフタル酸から脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸およびテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
本発明の液晶性樹脂組成物に用いられる液晶性ポリエステルの溶融粘度は、10Pa・s以上が好ましく、15Pa・s以上がより好ましい。溶融粘度が10Pa・s以上であれば、液晶性樹脂組成物から得られる成形品の弾性率および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。一方、60Pa・s以下が好ましく、40Pa・s以下がより好ましい。溶融粘度が60Pa・s以下であれば、流動性に優れ、液晶性ポリエステルの良流動性を生かし、短小薄肉用途へ好ましく用いることができる。
なお、本発明における液晶性ポリエステルの溶融粘度は、融点(Tm)+10℃、剪断速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値を指す。
ここで、融点(Tm)とは、示差熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を指す。
本発明の液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性ポリエステル100重量部に対し、(B)針状酸化チタン10〜150重量部を含有する。(B)針状酸化チタンを含有することにより、液晶性樹脂組成物から得られる成形品の弾性率、表面平滑性および耐トラッキング破壊性能、硬度を向上させることができる。(A)液晶性ポリエステル100重量部に対し、(B)針状酸化チタンの含有量が10重量部未満であると、成形品の弾性率、表面平滑性および耐トラッキング破壊性能、硬度の向上効果が得られない。20重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい。一方、(A)液晶性ポリエステル100重量部に対し、(B)針状酸化チタンの含有量が150重量部を超えると、成形品の表面に針状酸化チタンが浮き出やすく、表面平滑性が低下する。また、成形品の弾性率および耐トラッキング破壊耐性が低下する。80重量部以下が好ましく、60重量部以下がより好ましい。
本発明の液晶性樹脂組成物に用いられる(B)針状酸化チタンは、顔料用として多用されている粒状の酸化チタンとは異なり、針状形状のものである。ここで言う針状とは、軸比(長軸長さ/短軸長さ)が2以上であるものを指し、具体的には、針状、棒状、紡錘状、繊維状、柱状等と呼ばれるものが挙げられる。安定性の観点から、結晶構造がルチル型のものが好ましい。
成形品の弾性率をより向上させる観点から、成形品における(B)針状酸化チタンの繊維長は長いことが好ましい。このため、成形品における(B)針状酸化チタンの繊維長の指標として、液晶性樹脂組成物から後述する条件でペレットを作製したときの(B)針状酸化チタンの数平均繊維長(D50)は0.3μm以上が好ましく、0.4μm以上がより好ましい。一方、成形品の表面平滑性をより向上させる観点から、成形品における(B)針状酸化チタンの繊維長は短いことが好ましい。このため、成形品における(B)針状酸化チタンの繊維長の指標として、液晶性樹脂組成物から後述する条件でペレットを作製したときの(B)針状酸化チタンの数平均繊維長(D50)は5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。
また、成形品表面でのトラッキング破壊抑制のために、成形品における(B)針状酸化チタン中、繊維長1〜50μmの針状酸化チタンの含有率が多いことが好ましい。このため、成形品における(B)針状酸化チタンの繊維長の指標として、液晶性樹脂組成物から後述する条件でペレットを作製したときの(B)針状酸化チタン中、繊維長1〜50μmの針状酸化チタンの含有量は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上がより好ましい。ここで、%は、針状酸化チタン全体の個数に対する繊維長1〜50μmの針状酸化チタンの個数の比率を示す数%を意味する。
また、成形品表面において(B)針状酸化チタンが浮き出る現象を抑制し、成形品の表面平滑性をより向上させる観点から、成形品における(B)針状酸化チタンの最大繊維長は短いことが好ましい。このため、成形品における(B)針状酸化チタンの繊維長の指標として、液晶性樹脂組成物から後述する条件でペレットを作製したときの(B)針状酸化チタンの最大繊維長は150μm以下が好ましく、100μmがより好ましく、80μm以下がより好ましい。
繊維長を測定するペレットは、(B)針状酸化チタンを含有する液晶性樹脂組成物を、シリンダー温度:(A)液晶性ポリエステルの融点+20℃、金型温度:130℃の温度条件にて、射出速度:120mm/秒、射出圧力:80MPaで70mm長×70mm幅×1mm厚の成形品を作製し、突き出しピン側を表側として反ゲート側左側隅1cm×1cmを切り出すことにより得る。代表的な成形条件である前記条件により得られるペレットにおける(B)針状酸化チタンの繊維長に着目し、これを特定の範囲にすることにより、成形品における(B)針状酸化チタンの繊維長をモデル的に評価することができる。
上記方法により得られたペレットにおける(B)針状酸化チタンの数平均繊維長は、次の方法で測定することができる。ペレットを空気中において490℃で8時間加熱して樹脂を除去し、残存した針状酸化チタンを流動パラフィン/2−ブタノン=50/50(重量比)溶液に分散させ、レーザー粒度分布計(島津製作所製、“SALD−22100”)にて繊維長分布を測定し、数平均繊維長を算出する。
また、前記方法により得られたペレットにおける(B)針状酸化チタン中の繊維長1〜50μmの針状酸化チタンの含有率は、次の方法で測定することができる。前記(B)針状酸化チタンの数平均繊維長の測定方法に記載する方法で測定した繊維長分布より、針状酸化チタン全体の個数に対する繊維長1〜50μmの針状酸化チタンの個数の比率を算出する。
また、前記方法により得られたペレットにおける(B)針状酸化チタンの最大繊維長は、次の方法で測定することができる。上記数平均繊維長の測定方法と同様にして、ペレットから樹脂を除去し、残存した針状酸化チタンを、光学式顕微鏡を用いて観察する。無作為に1000個の針状酸化チタンを選択し、繊維長を倍率120倍にて観察し(イノテック製、”Quick Grain Standard”)、最大繊維長を算出する。
(B)針状酸化チタンの数平均繊維長および最大繊維長を前記範囲にする方法として、例えば、1次粒子の長軸の重量平均長が3〜50μm、短軸の重量平均長が0.1〜0.8μmであり、軸比(長軸長さ/短軸長さ)10以上の針状酸化チタンを用いる方法を挙げることができる。
本発明の液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性ポリエステル100重量部に対し、(C)エポキシ当量が500〜2500g/当量であるビスフェノールA型エポキシ化合物を0.05〜3重量部含有する。ビスフェノールA型エポキシ化合物とは、分子鎖中にビスフェノールAから得られる構造単位を有するエポキシ化合物である。ビスフェノールAから得られる構造単位の一部において、ベンゼン環上の水素が臭素またはメチル基により置換されていてもよい。ビスフェノールAから得られる構造単位を有するエポキシ化合物は、(A)液晶性ポリエステルとの反応性が良好であり、化合物自体の耐熱も高い。このため、(A)液晶性ポリエステル中における分散性に優れ、かつ熱安定性が良好であるために、成形品の弾性率、表面平滑性と、耐トラッキング破壊性能を高いレベルで両立することが可能である。
さらに、本発明において、上記エポキシ化合物のエポキシ当量は500〜2500g/当量である。(A)液晶性ポリエステルと(B)針状酸化チタンに上記エポキシ化合物を配合することで、通常起こりうる液晶ポリエステルとエポキシ化合物の過剰反応あるいはエポキシ化合物同士の架橋反応による増粘が抑制され、特異的に液晶性樹脂組成物の溶融流動性が改良されることで溶融混練時に(B)針状酸化チタンが折損することを抑制する。溶融したエポキシ化合物が(A)液晶性ポリエステルと(B)針状酸化チタンに対し滑剤のように作用し、流動性が改良されるためだと推測されるが、この効果により、液晶性樹脂組成物から得られる成形品の弾性率が大きく向上する。さらに、(A)液晶性ポリエステルと(B)針状酸化チタンの界面接着性が向上し、(B)針状酸化チタンが凝集することなく均一に分散するために表面平滑性が得られやすく、かつ耐トラッキング破壊性能が大幅に向上する。エポキシ当量が500g/当量より小さいと、液晶性樹脂組成物の溶融流動性改良効果が得られず、(B)針状酸化チタンの折損が起こるため、成形品の弾性率、表面平滑性および耐トラッキング破壊性能が低下する。800g/当量以上が好ましい。一方、エポキシ当量が2500g/当量より大きいと、液晶性樹脂組成物の流動性が低下し、(B)針状酸化チタンの折損が起こるため、成形品の弾性率、表面平滑性および耐トラッキング破壊性能が低下する。1000g/当量以下が好ましい。
なお、ここで言うエポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/当量)である。エポキシ当量は、次の方法により算出することができる。エポキシ化合物0.5gに無水トリフルオロ酢酸1gを加え、密栓中80℃で1時間処理した後、開栓してさらに1時間処理したものをテトラヒドロフラン10mLに希釈してサンプル溶液を作製する。東ソー株式会社製“HLC−8220 GPC”にて、東ソー株式会社製カラム“TSK−GEL G2000HXL”、“TSK−GEL 3000HXL”、“TSK−GEL 4000HXL”、検出器RI(示差屈折計)を用いて数平均分子量を測定する。カラム温度は40℃、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いた。得られた数平均分子量と、化合物中のエポキシ基数より、エポキシ当量を算出する。
本発明の液晶性樹脂組成物は、(C)エポキシ当量が500〜2500g/当量であるビスフェノールA型エポキシ化合物を液晶性ポリエステル100重量部に対して0.05〜3重量部含有する。(C)エポキシ当量が500〜2500g/当量であるビスフェノールA型エポキシ化合物の含有量が0.05重量部未満であると、前記成形品の弾性率、耐トラッキング破壊性能および表面平滑性、硬度の向上効果が十分に得られない。0.1重量部以上が好ましい。一方、上限については、2重量部以下が好ましく、3重量部を超えると、過剰なエポキシ化合物が分解して異物となり、成形品の表面平滑性や耐トラッキング破壊性能を低下させる場合がある。また、金型汚染や成形品のふくれを引き起こし、成形品の表面平滑性や弾性率を低下させる場合がある。
本発明の液晶性樹脂組成物に用いられる(C)エポキシ当量が500〜2500g/当量であるビスフェノールA型エポキシ化合物として、下記式(I)で表される構造を有する化合物が好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
Figure 0005810636
(上記式(I)中、Xは下記構造式で表される基を示す。およびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、H、BrまたはCHを示す。a、bおよびdはそれぞれ1〜18の範囲の値を示し、cは0〜15の範囲の値を示す。)
Figure 0005810636
上記構造を有する場合、エポキシ化合物中の水酸基の働きにより、(A)液晶性ポリエステルと(B)針状酸化チタンの界面接着性や、液晶性樹脂組成物の流動性をより向上させることができる。また、他の添加剤を含有する場合にも添加剤が(A)液晶性ポリエステル中に良分散するために、より高い弾性率と耐トラッキング破壊性能を有する成形品を得ることができる。さらに、成形品の硬度をより向上させることができる。
本発明で使用できるビスフェノールA型エポキシ樹脂は市場で入手が可能であり、具体的な商品名としては、三菱化学株式会社製“jER”(登録商標)1001、1002、1003、1004、1007、1009などが例示できる。
本発明の液晶性樹脂組成物は、黒色が求められる用途に応じて、(D)カーボンブラックを含有してもよく、黒色着色することができる。
本発明の液晶性樹脂組成物に用いられる(D)カーボンブラックは、凝集を抑制し、成形品の絶縁性、耐トラッキング破壊性能をより向上させる観点から、平均粒子径10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。一方、少量で所望の黒色度を得る観点から、平均粒子径70nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましい。
(D)カーボンブラックの平均粒子径は、日立製作所製透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、倍率を5万倍とし5視野観察を行い、その中に確認された粒子の数と径を計測して粒度分布を求め、これから数平均値を算出することにより求めることができる。
また、黒色着色する場合の(D)カーボンブラックの含有量は、(A)液晶性ポリエステル100重量部に対し、1〜10重量部が好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。(D)カーボンブラックの含有量が1重量部以上であれば、所望の黒色度を容易に得ることができる。一方、10重量部以下であれば、成形品の絶縁性や耐トラッキング破壊性能、弾性率を高く維持することができる。
本発明の液晶性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない程度の範囲で、酸化防止剤、熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ハイドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えば、レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、離型剤(例えば、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、可塑剤、難燃剤、難燃助剤などの添加剤や他の熱可塑性樹脂(フッ素樹脂など)を添加して、所定の特性を付与することができる。
本発明の液晶性樹脂組成物は、溶融混練により製造することが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。溶融混練機としては、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機などが挙げられ、二軸押出機が好ましい。二軸押出機とは2本の回転軸を有したものであり、同方向回転式、異方向回転式があるが、本発明では共に使用可能である。特に高弾性率と表面平滑性のバランスを図るために、前記(A)〜(C)および必要により他の原料を二軸押出機に供給し、二軸押出機中の最大せん断速度を100〜1000(sec−1)として溶融混練することが好ましい。二軸押出機の構成は、一般的に、投入された原料を可塑化する可塑化部と、可塑化された原料を溶融混練する混練部に分けることができ、混練部においてせん断速度が最大となる。混練部における最大せん断速度は、(B)針状酸化チタンの折損を抑制させつつ、繊維長をコントロールすることによる高弾性率化効果の観点から、1000(sec−1)以下が好ましく、500(sec−1)以下がより好ましい。一方、液晶性樹脂組成物における(B)針状酸化チタンの分散性を向上させることで成形品表面の針状酸化チタンの凝集を抑制し、表面平滑性および耐トラッキング性を向上させる観点から、100(sec−1)以上が好ましく、200(sec−1)以上がより好ましい。ここで、前記最大せん断速度(sec−1)は、二軸押出機のバレル内径D(mm)、バレル内壁とニーディングディスクとの最小隙間S(mm)、およびスクリュー回転数n(rpm)から次式により算出できる。
γmax=D×n×π/(60×S)
なお、混練部における最大せん断速度は、バレル内壁とニーディングディスクとの最小隙間S(mm)またはスクリュー回転数n(rpm)などにより、所望の範囲に容易に調整することができる。
かくして得られる本発明の液晶性樹脂組成物は、公知の成形法により、高弾性率で、かつ優れた表面平滑性および耐トラッキング破壊性能を有する各種成形品を得ることができる。
本発明の液晶性樹脂組成物からなる成形品は、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプリフレクター、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、レンズホルダー、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコン用モーターインシュレーター、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関連部品、デュストリビュター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプベゼル、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品などに用いることができる。また、フィルム用途として、コンデンサー用フィルム、電気絶縁用フィルム、包装用フィルム、製図用フィルム、リボン用フィルム、シート用途として、自動車内部天井、ドアトリム、インストルメントパネルのパッド材、バンパーやサイドフレームの緩衝材、ボンネット裏等の吸音パット、座席用材、ピラー、燃料タンクなどに用いることができる。また、その他用途として、ブレーキホース、ウィンドウォッシャー液用ノズル、エアコン冷媒用チューブおよびそれらの周辺部品などに用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明が実施例により限定されるものではない。実施例中、エポキシ化合物のエポキシ当量、成形品における無機充填材の数平均繊維長、成形品の弾性率、成形品の表面粗さ、成形品の耐トラッキング指数(CTI)、成形品のロックウェル硬さは、以下の方法により測定した。なお、実施例10および実施例11は参考例である。
(1)エポキシ化合物のエポキシ当量
エポキシ化合物0.5gに無水トリフルオロ酢酸1gを加え、密栓中80℃で1時間処理した後、開栓してさらに1時間処理したものをテトラヒドロフラン10mLに希釈してサンプル溶液を作製した。東ソー株式会社製“HLC−8220 GPC”にて、東ソー株式会社製カラム“TSK−GEL G2000HXL”、“TSK−GEL 3000HXL”、“TSK−GEL 4000HXL”、検出器RI(示差屈折計)を用いて数平均分子量を測定した。カラム温度は40℃、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いた。得られた数平均分子量と構造より、エポキシ当量を算出した。
(2)無機充填材の数平均繊維長、繊維長1〜50μmの無機充填材の含有率
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を用いて、ファナック製ファナックα30C射出成形機で、シリンダー温度:(A)液晶性ポリエステルの融点+20℃、金型温度:130℃の温度条件にて、射出速度:120mm/秒、射出圧力:80MPaに設定し、70mm長×70mm幅×1mm厚(フィンゲート)の試験片を作製した。突き出しピン側を表側として反ゲート側左側隅を1cm×1cmで切り出し、るつぼに入れて490℃で8時間加熱して樹脂を除去し、残存した無機充填材を流動パラフィン/2−ブタノン=50/50(重量比)溶液に分散させ、レーザー粒度分布計(島津製作所製、“SALD−2100”)にて粒度分布を測定し、数平均繊維長(D50)を算出した。また、この測定により得られた繊維長分布より、無機充填材全体の個数に対する繊維長1〜50μmの無機充填材の個数の比率(%)を求めた。
(3)無機充填材の最大繊維長
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を用いて、上記(2)と同様にして試験片を作製して樹脂を除去し、残存した無機充填材を、光学式顕微鏡を用いて観察した。無作為に1000個の無機充填材を選択し、繊維長を倍率120倍にて観察し(イノテック製、”Quick Grain Standard”)、最大繊維長を算出した。
(4)成形品の弾性率
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を用いて、ファナック製ファナックα30C射出成形機で上記(2)と同様の温度条件にて12.7mm幅×127mm長×3.2mm厚の曲げ試験片を作製し、ASTM D790に準拠し、曲げ弾性率を測定した。
(5)成形品の表面粗さ
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を用いて、住友SE100DU射出成形機で上記(2)と同様の温度条件にて70mm幅×110mm長×3mm厚の試験片を作製した。得られた試験片の表面の表面粗さをACCRETECH“SURFCOM 130A”にて3回繰り返し測定し、数平均値を表面粗さとして算出した。なお、表面粗さが小さいほど、表面平滑性に優れることを示す。
(6)成形品の比較トラッキング指数(CTI)
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を用いて、ファナック製ファナックα30C射出成形機で上記(2)と同様の温度条件にて80mm幅×80mm長×2mm厚の試験片を作製した。IEC60112に準拠し、0.1重量%塩化アンモニウム水溶液、白金電極を用い、試験片にトラッキングが生じる印加電圧(V:ボルト)を求め、この数値を比較トラッキング指数(V)とした。なお、比較トラッキング指数が高いほど、耐トラッキング破壊性能に優れることを示す。
(7)成形品のロックウェル硬さ
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を用いて、ファナック製ファナックα30C射出成形機で上記(2)と同様の温度条件にて80mm幅×80mm長×2mm厚の試験片を作製した。ASTM D785に従い、硬度計(松沢精機社製、DRH−FA)により、Rスケールのロックウェル硬さを評価した。得られた数値が大きいほど、表面硬度が高いことを示す。
製造例1(A−1)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g(6.300モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327g(1.890モル)、ハイドロキノン89g(0.810モル)、テレフタル酸292g(1.755モル)、イソフタル酸157g(0.945モル)および無水酢酸1367g(フェノール性水酸基合計の1.03当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させた後、320℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で133Paに減圧し、さらに90分間反応を続け、トルクが12kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
この液晶性ポリエステル(A−1)は、p−オキシベンゾエート単位、4,4’−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対してp−オキシベンゾエート単位を70モル%有し、4,4’−ジオキシビフェニル単位および1,4−ジオキシベンゼン単位の合計に対して4,4’−ジオキシビフェニル単位を70モル%有し、テレフタレート単位およびイソフタレート単位の合計に対してテレフタレート単位を65モル%有する。Tm(液晶性ポリエステルの融点)は314℃、液晶開始温度は295℃、数平均分子量は12,000であった。高化式フローテスター(オリフィス0.5φ×10mm)を用い、温度324℃、剪断速度1000/sで測定した溶融粘度は20Pa・sであった。
製造例2(A−2)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸994g(7.20モル)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸338.7g(1.80モル)および無水酢酸965g(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させた後、330℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を330℃に保持し、0.1MPaに窒素加圧し、20分間加熱撹拌した。その後、放圧し1.0時間で133Paに減圧し、さらに120分間反応を続け、トルクが12kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
この液晶性ポリエステル(A−2)は、p−オキシベンゾエート単位を80モル%、6−オキシ−2−ナフタレート単位を20モル%有する。Tmは320℃、液晶開始温度は298℃、数平均分子量は11,100であった。高化式フローテスター(オリフィス0.5φ×10mm)を用い、温度330℃、剪断速度1000/sで測定した溶融粘度は20Pa・sであった。
製造例3(A−3)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸994g(7.20モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126g(0.67モル)、テレフタル酸112g(0.67モル)、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216g(1.12モル)および無水酢酸960g(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させた後、325℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を325℃に保持し、0.1MPaに窒素加圧し、20分間加熱撹拌した。その後、放圧し1.0時間で133Paに減圧し、さらに120分間反応を続け、トルクが12kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
この液晶性ポリエステル(A−3)はp−オキシベンゾエート単位を74.4モル%、4,4’−ジオキシビフェニル単位を7モル%、テレフタレート単位を7モル%、エチレンジオキシ単位を11.6モル%有する。Tmは314℃、液晶開始温度は292℃、数平均分子量は11,100であった。高化式フローテスター(オリフィス0.5φ×10mm)を用い、温度325℃、剪断速度1000/sで測定した溶融粘度は12Pa・sであった。
製造例4(B−5)
Na型モンモリロナイト(クニミネ工業:“クニピア”(登録商標)F)100gを温水10Lに撹拌分散し、ここにトリオクチルメチルアンモニウムクロライド48gを溶解させた温水2Lを添加して1時間撹拌した。生じた沈殿物を濾過し、除いた後に温水で洗浄した。この洗浄と濾過の操作を3回繰り返し、得られた固体を80℃で真空乾燥して有機化層状珪酸塩を得た。
製造例5(C−
撹拌翼、温度計、冷却器、滴下ろうとを備えた2L容量の4つ口フラスコに、テトラブロモビスフェノールA860gとエピクロルヒドリン145g、水5mLを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら80℃に加熱した。ここに水酸化ナトリウム75gを、反応熱による温度上昇により内温が100℃を越えないように少量ずつ添加した。反応熱による内温変化が観測されなくなったら、冷却を止め、その後60Paに減圧し、過剰のエピクロルヒドリンを留去させた。残留物を70℃まで冷却し、50mLのベンゼンを加えて得られた沈殿物を濾過し、さらに50mLのベンゼンを加え、125℃に加熱し、90Paに減圧し、ベンゼンを留去させ、エポキシ当量550の、ビスフェノールA由来のベンゼン環上の水素の一部が臭素で置換された臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物を得た。
製造例6(C−
撹拌翼、温度計、冷却器、滴下ろうとを備えた2L容量の4つ口フラスコに、テトラメチルビスフェノールA340gとエピクロルヒドリン145g、水5mLを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら80℃に加熱した。ここに水酸化ナトリウム75gを、反応熱による温度上昇により内温が100℃を越えないように少量ずつ添加した。反応熱による内温変化が観測されなくなったら、冷却を止め、その後60Paに減圧し、過剰のエピクロルヒドリンを留去させた。残留物を70℃まで冷却し、50mLのベンゼンを加えて得られた沈殿物を濾過し、さらに50mLのベンゼンを加え、125℃に加熱し、90Paに減圧し、ベンゼンを留去させ、エポキシ当量550の、ビスフェノールA由来のベンゼン環上の水素の一部がメチル基で置換されたメチル化ビスフェノールA型エポキシ化合物を得た。
また、使用した無機充填材は以下のものである。
B−1:石原産業株式会社製 FTL300(針状酸化チタン、平均繊維長5μm)
B−2:石原産業株式会社製 FTL400(針状酸化チタン、平均繊維長10μm)
B−3:石原産業株式会社製 FTL100(針状酸化チタン、平均繊維長1μm)
B−4:日本電気硝子株式会社製 EPG40M−01N(ガラス繊維、平均繊維長40μm)
B−5:有機化層状珪酸塩
B−6:日東紡株式会社製 CF3PE−256(ガラス繊維、平均繊維長3mm)
また、使用したエポキシ化合物(C)は以下のものである。
C−1:三菱化学株式会社製 “jER”(登録商標)1004(ビスフェノールA型エポキシ化合物)エポキシ当量925g/当量
C−2:三菱化学株式会社製 “jER”1007(ビスフェノールA型エポキシ化合物)エポキシ当量2000g/当量
C−3:製造例5に記載の方法で得られた臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物 エポキシ当量550g/当量
C−4:製造例6に記載の方法で得られたメチル化ビスフェノールA型エポキシ化合物 エポキシ当量550g/当量
C−5:三菱化学株式会社製 “jER”811(ビスフェノールA型エポキシ化合物)エポキシ当量188g/当量
C−6:三菱化学株式会社製 “jER”1010(ビスフェノールA型エポキシ化合物)エポキシ当量3000g/当量
C−7:三菱化学株式会社製 “jER”4004P(ビスフェノールF型エポキシ化合物)エポキシ当量880g/当量
C−8:ナガセケムテックス株式会社製 “デナコール”(登録商標)EX861(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)エポキシ当量550g/当量
C−9:ナガセケムテックス株式会社製 “デナコール”EX1111(6−エチル−1,11−ドデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル)エポキシ当量289g/当量
C−10:日本油脂株式会社製“マープルーフ”G−1010S(エポキシ変性スチレン系共重合体)エポキシ当量1700g/当量。
実施例1〜13、比較例1〜12
液晶性ポリエステルA−1〜3および上記に示した無機充填材B−1〜6、エポキシ化合物C−1〜10をバレル内径29mmでスクリュー直径27.8mmの2軸押出機:PCM30(株式会社池貝製)に供給し、シリンダー温度330℃、スクリュー回転数100rpmとし、混練部の最大せん断速度を250(sec−1)として溶融混練を行い、液晶性樹脂組成物を得た。なお、混練部の最大せん断速度(sec−1)は、押出機のバレル内径D(mm)、バレル内壁とニーディングディスクとの最小隙間S(mm)、およびスクリュー回転数n(rpm)から次式により算出した。
γmax=D×n×π/(60×S)
ついで150℃の熱風乾燥機で4時間乾燥した後、前記(2)〜(7)記載の方法により、無機充填材の数平均繊維長、繊維長1〜50μmの無機充填材の含有率、無機充填材の最大繊維長、成形品の弾性率、成形品の表面粗さ、成形品の比較トラッキング指数、成形品のロックウェル硬度を評価した。結果を表1に示す。
実施例14
液晶性ポリエステルA−1および上記に示した無機充填材B−1、エポキシ化合物C−1をバレル内径58mmでスクリュー直径57.2mmの2軸押出機を用いてシリンダー温度330℃、スクリュー回転数200rpmとし、混練部の最大せん断速度を1518(sec−1)、溶融混練を行い、液晶性樹脂組成物を得た。
ついで150℃の熱風乾燥機で4時間乾燥した後、前記(2)〜(7)記載の方法により、無機充填材の数平均繊維長、繊維長1〜50μmの無機充填材の含有率、無機充填材の最大繊維長、成形品の弾性率、成形品の表面粗さ、成形品の比較トラッキング指数、成形品のロックウェル硬度を評価した。結果を表1に示す。
Figure 0005810636
本発明の液晶性樹脂組成物から得られる成形品は、小型・薄肉で優れた弾性率、耐トラッキング破壊性能、表面平滑性を両立することを要求される電子精密部品や、光ピックアップ部品として特に有用である。

Claims (3)

  1. (A)液晶性ポリエステル100重量部に対し、(B)針状酸化チタン10〜150重量部、(C)エポキシ当量が500〜2000g/当量である下記式(I)で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物0.05〜3重量部を含有する液晶性樹脂組成物。
    Figure 0005810636
    (上記式(I)中、Xは下記構造式で表される基を示す。R およびR はそれぞれ同じでも異なってもよく、H、BrまたはCH を示す。a、bおよびdはそれぞれ1〜18の範囲の値を示し、cは0〜15の範囲の値を示す。)
    Figure 0005810636
  2. 前記(A)液晶性ポリエステルが下記式(II)で表される構造単位、下記式(III)で表される構造単位、下記式(IV)で表される構造単位、下記式(V)で表される構造単位および下記式(VI)で表される構造単位を有する請求項に記載の液晶性樹脂組成物。
    Figure 0005810636
  3. (A)液晶性ポリエステル、(B)針状酸化チタンおよび(C)エポキシ当量が500〜2000g/当量である前記式(I)で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物を二軸押出機に供給して溶融混練する液晶性樹脂組成物の製造方法であって、二軸押出機中の最大せん断速度を100〜1000(sec−1)として溶融混練することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶性樹脂組成物の製造方法。
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