JP5795975B2 - ポリカーボネートの連続製造方法 - Google Patents
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Description
ポリカーボネートの原料の1つであるホスゲンの製造において、触媒として市販の活性炭をそのまま使用した場合、活性炭中の不純物により(特許文献2参照)、また通常は急激な反応が起こることに因る反応温度上昇により(特許文献3参照)、不純物(特に四塩化炭素やクロロホルム)が多量に副生することが知られており、不純物を含有するホスゲンを用いると、耐熱性が低下したり、射出成形機の金型の錆の原因になったりし、ポリカーボネートの品質上、問題となる。さらに、この四塩化炭素やクロロホルム等の不純物は有機溶媒中に蓄積していくため、これが製品に一層の悪影響を及ぼすことになる。
そこで、ホスゲン生成反応後の処理としてホスゲンを液化して蒸留精製することにより、四塩化炭素及びクロロホルムの含有量を低減して貯蔵し、これを反応に用いる方法(特許文献4参照)がある。
そこで、本発明の課題は、ポリカーボネートを連続的に製造する方法において、(1)製品に悪影響を及ぼす四塩化炭素及びクロロホルム等の不純物のホスゲン中の含有量を低減、ひいてはポリカーボネート中の含有量を低減すること、(2)生成したホスゲンガスを、精製工程を経ることなく、直接、オリゴマー反応工程に使用することで、有害なホスゲンを実質的に保有しないこと、好ましくは、(3)異常時においても自動的に装置を停止し、かつ有害なホスゲンを系外に漏洩することなく除害すること、によりポリカーボネートの安全な連続製造方法を提供することにある。
[1]塩素及び一酸化炭素を反応させてホスゲンガスを連続的に製造する工程(1)、
前記工程(1)で連続的に製造されたホスゲンガス、二価フェノール系化合物のアルカリ水溶液及び有機溶媒をオリゴマー反応器に連続的に供給して、ポリカーボネートオリゴマーを含有する反応混合物を連続的に製造する工程(2)、及び
前記工程(2)で製造されたポリカーボネートオリゴマーを含有する反応混合物と、二価フェノール系化合物のアルカリ水溶液及び有機溶媒をポリマー反応器に連続的に供給して、ポリカーボネートを連続的に製造する工程(3)
を含むポリカーボネートの連続製造方法であって、
下記条件(i)〜(iii)を満たすことを特徴とするポリカーボネートの連続製造方法。
(i)工程(1)において、塩素及び一酸化炭素を、一酸化炭素及び塩素に実質的に不活性な材料で希釈した触媒層へ通して反応させ、得られるホスゲンガス中の四塩化炭素及びクロロホルムの含有量をいずれも200体積ppm以下とする。
(ii)工程(1)で連続的に製造されたホスゲンガスを精製せずにそのまま工程(2)で使用する。
(iii)工程(2)及び(3)のうちの少なくとも一方で使用した有機溶媒の少なくとも一部を精製し、四塩化炭素及びクロロホルムの含有量をいずれも50質量ppm以下とした有機溶媒を得て、該有機溶媒を工程(2)及び(3)のうちの少なくとも一方の有機溶媒として再利用する。
[2]工程(1)における塩素及び一酸化炭素の供給を停止すると共に、オリゴマー反応器へのホスゲンガスの供給を停止させ、かつ、ホスゲンガスを含む有毒ガスを除害手段に移送して無害化する手段を備えた、上記[1]に記載のポリカーボネートの連続製造方法。
[3]前記除害手段が、ホスゲンガスを含む有毒ガスをアルカリ水溶液と接触させて無害化する手段である、上記[2]に記載のポリカーボネートの連続製造方法。
本発明のポリカーボネートの連続製造方法は、下記工程(1)〜(3)を含むものである。
工程(1):塩素及び一酸化炭素を反応させてホスゲンガスを連続的に製造する工程。
工程(2):前記工程(1)で連続的に製造されたホスゲンガス、二価フェノール系化合物のアルカリ水溶液及び有機溶媒をオリゴマー反応器に連続的に供給して、ポリカーボネートオリゴマーを含有する反応混合物を連続的に製造する工程。
工程(3):前記工程(2)で製造されたポリカーボネートオリゴマーを含有する反応混合物と、二価フェノール系化合物のアルカリ水溶液及び有機溶媒をポリマー反応器に連続的に供給して、ポリカーボネートを連続的に製造する工程。
[条件]
条件(i):工程(1)において、塩素及び一酸化炭素を、一酸化炭素及び塩素に実質的に不活性な材料で希釈した触媒層へ通して反応させ、得られるホスゲンガス中の四塩化炭素及びクロロホルムの含有量をいずれも200体積ppm以下とする。
条件(ii):工程(1)で連続的に製造されたホスゲンガスを精製せずにそのまま工程(2)で使用する。
条件(iii):工程(2)及び(3)のうちの少なくとも一方で使用した有機溶媒の少なくとも一部を精製し、四塩化炭素及びクロロホルムの含有量をいずれも50質量ppm以下とした有機溶媒を得て、該有機溶媒を工程(2)及び(3)のうちの少なくとも一方の有機溶媒として再利用する。
工程(1)は、塩素及び一酸化炭素を反応させてホスゲンガスを連続的に製造する工程である。
ポリカーボネートの品質の観点から、一酸化炭素は、コークス、石油、天然ガス、アルコール等と酸素とを反応させて製造し、純度95体積%以上に精製したものが好ましい。特に、硫黄成分の含有量が50体積ppm以下のものが好ましい。また、塩素:一酸化炭素の比率(モル比)は、好ましくは1:1.01〜1:1.3、より好ましくは1:1.02〜1:1.2である。
一酸化炭素及び塩素は、乾燥した高純度のものであることが好ましい。一酸化炭素の場合、不純物として水素があればホスゲン製造用原料塩素と反応して塩酸を生成し、また水分が存在すれば生成したホスゲンを炭酸ガスと塩酸に加水分解してしまう恐れがある。一方、塩素の場合は、不純物として炭化水素類があれば塩酸を生成したり、対応する塩素化炭化水素を生成し易い。これらの生成物は本願発明に係る触媒の活性炭への吸着能が高いため、活性炭の触媒毒となり好ましくない。また、上記塩素中に硫化物が存在すれば、塩化硫黄となるので予め極力除去しておくことが好ましい。更に、酸素の存在はホスゲン生成反応を抑制する弊害をもたらすので好ましくない。
一酸化炭素の製造方法としては各種の方法が知られ、合成ガス、カーバイド炉ガス、高炉ガス、製鋼炉ガス等を用いることもできる。一般には上記高純度の要求から、吸着塔を通したり、深冷分離等により精製して得られた一酸化炭素が好ましい。一方、塩素の製造方法としては、食塩水溶液の電解(例えば、隔膜法、イオン交換膜法)に伴い生成する塩素の精製方法が好ましく適用できる。
(1) 形態面から:粉末状活性炭、造粒した(ペレット、タブレット等)活性炭。
(2) 原料面から:木材、鋸屑、ヤシガラ、リグニン、亜炭、褐炭、泥炭、石炭を原料とするもの。
(3) 処理面から:水蒸気賦活法、薬品賦活法等により前処理したもの。
該希釈剤としては、次のようなものが分類例示できる。
(1) 材質面から:原料ガスに対して実質的に不活性なセラミック、金属等。
(2) セラミック:アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化クロム、炭化珪素、硫化亜鉛等を原料としたもの。
(3) 金属:単体としての貴金属類のほか、ステンレス、ハステロイ、インコネル等の合金。金属は一般にセラミックよりは熱伝導性がよいため、発熱温度低下に好適である。
(4) 形状面から:活性炭と混合されやすい形状として、球状、リング状、環状等があげられるが、一般に入手し易い球状、リング状が好ましい。活性炭との密度差が小で、混合充填時に分離偏析し難い中空球状のものがより好ましい。活性炭と分離偏析し難い構造のリング状又は管状のもので、流体と充填剤との間の接触性をあげるために充填塔等に使用されるもの、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、テラレット、ボーリング等も好ましく、ラシヒリングはより好ましい。
(5) 大きさ:径、長さが、それぞれ好ましくは0.1〜10mm程度、より好ましくは1〜4mm程度のもの。この範囲であれば、活性炭に安定的に且つ均一に分散し易く、触媒層内にホットスポットや偏流が形成し難い。
触媒層(活性炭)の希釈は、触媒層全域にわたり行うことが最も好ましいが、一般に上記一酸化炭素と塩素の反応によるホスゲンの製造の場合のような発熱反応を管型反応器で実施する場合、該反応器の前半部で急激な温度上昇があることが知られている(例えば、(社)化学工学会編「化学装置設計ガイド」(1991))ので、少なくともこの前半部分または原料ガスの導入部の触媒層を希釈する必要があり、この希釈により望ましくない反応温度上昇の影響を避けることができる。
CO+Cl2→COCl2
なる反応式で知られる一般的なものであり、温度・圧力等は公知の方法に準じて行うことができる。両原料間のモル比は、通常は等モルか、又は塩素を残留させないために一酸化炭素を僅かに過剰に使用することが好ましく、後者がより好ましい。
反応器の形式としては、多管式の管型反応器が好ましい。また、反応器中で発生する熱を多量に且つ早く除去するために、冷却水を通したジャケットを設置した反応器であることが好ましい。反応器内の温度は、350℃以下に維持されることが好ましい。
反応管の内径には特に制限はないが、触媒及び希釈剤を均一に充填するために、内径3〜200mm程度のものが好ましい。また長さは、反応管内径、原料ガス流量、冷却効率等により左右され、特定できるものではない。反応管の本数は、生産するホスゲンの量に応じて可変であり、特に限定されるものでない。反応管は内部に触媒等を充填する作業上、横型よりも、縦型の方がより好ましく使用される。ホスゲン反応器の材質、特にその反応管の内壁は耐一酸化炭素(CO)と耐塩素(Cl2)が要求され、ガラス製、ステンレス製が特に好ましく使用される。
なお、工程(1)で得られるホスゲンガスは、通常、未反応の一酸化炭素を含有する。ホスゲンガス中の一酸化炭素の含有量は、コスト及びポリカーボネートオリゴマーの品質の観点から、好ましくは1〜30体積%、より好ましくは2〜20体積%である。すなわち、純度99〜70体積%のホスゲンガスが好ましい。
工程(2)は、前記工程(1)で連続的に製造されたホスゲンガス、二価フェノール系化合物のアルカリ水溶液及び有機溶媒をオリゴマー反応器に連続的に供給して、ポリカーボネートオリゴマーを含有する反応混合物を連続的に製造する工程である。
ポリカーボネートの製造における原料としては、ホスゲンガス、二価フェノール系化合物(ビスフェノール類)、該二価フェノール系化合物を溶解するために使用するアルカリ化合物、及び有機溶媒が挙げられ、必要に応じて、分子量調節剤としての一価フェノール系化合物や、その他の添加剤を使用してもよい。
特に、本工程(2)では、ホスゲンガスとして前記工程(1)で連続的に製造されたホスゲンガスを「精製することなく」、そのまま用いる(条件(ii))。こうすることで、有害なホスゲンを実質的に保有せずに、反応を実施することができるため、安全性が高く、工業的に好ましい。
二価フェノール系化合物を溶解するために使用するアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウムが好適である。なお、該アルカリ化合物は、水溶液として用いることが好ましい。
上記で挙げた有機溶媒以外にも、ポリカーボネートオリゴマーの溶解性を低下させない範囲であれば、貧溶媒と呼ばれるアルカン類等の溶媒を使用してもよい。
有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
オリゴマー反応器としては、連続反応方式の反応器が用いられ、反応原料を混合する混合部を有する管型構造をした管型反応器が好ましく用いられる。
なお、オリゴマー反応器は建物内に設置され、外部と隔離されていることが好ましい。建物内は常時空気の入れ替えを行ない、内部の換気空気はブロア等でホスゲンガスの除害手段へ送られることが安全面上重要である。
例として、1時間当たり約200kgのポリカーボネートオリゴマーを製造する場合における好ましい条件を以下に記載するが、特にこれに限定されるものではない。工程(1)により得られるホスゲンガスの好ましい流量は3.7〜4.1kg/hである。ホスゲンガスの温度は、ホスゲンの沸点(7.8℃)〜90℃の範囲が好ましい。二価フェノール系化合物のアルカリ水溶液としては、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液が好ましく、予め所定濃度になるように調整されて供給される。二価フェノール系化合物のアルカリ水溶液、特にビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液において、好ましい二価フェノール系化合物濃度(ビスフェノールA濃度)は12.5〜14.5質量%であり、好ましいアルカリ濃度(水酸化ナトリウム濃度)は5.1〜6.1質量%である。二価フェノール系化合物のアルカリ水溶液、特にビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液の好ましい流量は42〜46kg/hである。塩化メチレン等の有機溶媒の流量は、好ましくは20〜24kg/hである。
工程(2)で得られたポリカーボネートオリゴマーのエマルジョン溶液を適宜濃縮することにより、有機溶媒を回収することができる。濃縮することにより、四塩化炭素及びクロロホルムを取り込んだ塩化メチレン中を回収することが可能となる。回収した有機溶媒は、後述する精製手段によって精製され、工程(2)や後述する工程(3)における有機溶媒として再利用する。
前記工程(2)で得られたポリカーボネートオリゴマーを含有する反応混合物は、ポリカーボネートオリゴマーが前記有機溶媒に溶解した有機相と、アルカリ水溶液を含有する水相の混合物であり、エマルジョン状態となっている。工程(3)では、この反応混合物又は分離された有機層をポリマー反応器に導入し、さらに二価フェノール系化合物と縮合反応させることでポリカーボネートを製造することができる。必要に応じて、前記重合触媒の存在下に実施してもよい。この際、ポリマー反応器へポリオルガノシロキサンを添加することにより、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(PC−POS)とすることもできる。
また、縮合反応が終了した後、反応溶液を公知の方法で分離及び洗浄し、濃縮し、粉末化等を行うことにより粉末状のポリカーボネートを得ることができ、さらに押出機等で処理することによりペレット化することができる。これらの工程で得られる有機相から、不純物ごと有機溶媒を回収し、後述するように精製手段を施してから、工程(2)や(3)で使用する有機溶媒として再利用する。
再利用するための有機溶媒中の四塩化炭素及びクロロホルムの含有量は、それぞれ、好ましくは20質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、さらに好ましくは5質量ppm以下である。有機溶媒中の四塩化炭素及びクロロホルムの含有量をこの範囲とすることにより、高品質のポリカーボネートを安定的に製造することが可能となる。
精製手段に特に制限は無く、有機溶媒中の四塩化炭素及びクロロホルムの含有量がそれぞれ50質量ppm以下になるように公知の精製手段を採用すればよい。例えば、蒸留法、吸着法、膜分離法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。精製手段としては、蒸留法が好ましい。有機溶媒中の四塩化炭素及びクロロホルムの含有量を50質量ppm以下とする観点からは、30〜60段の多段蒸留塔を用いて、還流比0.3〜5、圧力は常圧〜0.2MPa(ゲージ圧)、塔頂温度40〜70℃、塔底温度45〜80℃の条件で蒸留を行うことが好ましい。
ところで、工程(2)から回収した有機溶媒中には、四塩化炭素及びクロロホルム以外の不純物、例えば微量の塩素化炭化水素等も含まれ得るが、四塩化炭素及びクロロホルムの含有量を上記量に低減しさえすればよく、また、上記精製操作により、四塩化炭素及びクロロホルムと共にその大部分が除去される。
なお、工程(2)又は後述する工程(3)の有機溶媒として再利用する際に四塩化炭素及びクロロホルムの含有量がいずれも50質量ppm以下になってさえいればよく、例えば、精製操作を行なって得た有機溶媒と、精製操作を行なわなかった有機溶媒とを混合し、四塩化炭素及びクロロホルムの含有量を50質量ppm以下に調整する手段を採ってもよい。
(a)ホスゲンガスを連続的に製造する工程(1)における塩素及び一酸化炭素の供給を停止する。これは、系内におけるホスゲンガスの量を増加させないことを目的として、ホスゲンガスの製造を中止する操作である。
(b)オリゴマー反応器へのホスゲンガスの供給を停止する。これは、一部のホスゲンがオリゴマー反応器内で消費されずに未反応のまま下流の工程に流れるおそれがあるため、ホスゲンの漏洩を防止するための操作である。
(c)系内のホスゲンガスを含む有毒ガスを除害手段に移送して無害化する。これは、上記(a)及び(b)の操作によりホスゲンの増加及び漏洩を防止して系内に封じ込めることに加えて、より高い安全性の観点から系内のホスゲンガスを無害化する操作である。
除害手段は、ホスゲンガスを含む有毒ガスを除害剤により無害化するための設備であり、公知のものを用いることができる。具体例としては、除害剤の散布設備、有毒ガスと除害剤とを接触させる吸収塔等が挙げられる。また、特開平6−319946号公報や特開2005−305414号公報等に記載された塔型の除害設備を用いることもできる。
ホスゲンや塩素等の酸性ガスに対しては、除害剤としてアルカリ性物質が用いられる。除害剤として用いられるアルカリ性物質は、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが一般的に用いられ、通常は、アルカリ水溶液が用いられる。つまり、ホスゲンガスを含む有毒ガスを、アルカリ水溶液と接触させることによって無害化する。
除害手段が除害塔の場合、除害塔の構造は特に限定されないが、代表的な例として、除害剤を塔の上部からスプレー等でシャワー状に噴射し、下部から供給された有害ガスと接触させて除害するものが挙げられる。除害剤とガスとの接触効率を高めるために、除害剤の噴射口とガスの流入口との間にラシヒリング等の充填剤を充填してもよい。また、除害塔の本数は特に限定されず、除害処理ガス中の有毒ガス濃度が、環境基準等で規定された所定濃度以下となるように、好ましくは検出されないレベルにまで低減されるように設計される。
塩素及び一酸化炭素が水冷された所定の触媒層に供給されて反応し、四塩化炭素及びクロロホルム含有量が共に200体積ppm以下のホスゲンガスが製造される。製造されたホスゲンガス(反応生成物)は、精製されることなく、直接オリゴマー反応器に導入され、安全な条件にて反応が実施される。オリゴマー反応器には、ホスゲンガスに加えて、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液及び所定の塩化メチレンも導入され、これらの反応により、ポリカーボネートオリゴマーを含有するエマルジョン溶液が製造される。該エマルジョン溶液はポリマー反応器に導入され、縮合反応によって高品質のポリカーボネートが製造される。ポリカーボネートオリゴマーの製造及びポリカーボネートの製造に用いられた塩化メチレンは、その一部又は全部が精製され、四塩化炭素及びクロロホルム含有量が共に50質量ppm以下の塩化メチレンとした後、再びポリカーボネートオリゴマーの製造及びポリカーボネートの製造における有機溶媒として再利用される。また、異常時のために、有害なホスゲンを除害する設備が備わっている。
なお、詳細な条件等は、これまでに説明した通りである。
以上のようにして得られるポリカーボネート中の四塩化炭素の含有量は、5質量ppm以下、さらには1質量ppm以下となっており、クロロホルムの含有量は、10ppm以下、さらには5質量ppm以下となっており、本発明によって、耐熱性にも優れ、高品質のポリカーボネートが得られる。
(ホスゲンの製造:工程(1))
ホスゲン反応器として、チューブ内に市販の粒状活性炭(直径1.2〜1.4mmに粉砕した椰子殻活性炭)を長さ60cm及び内径16mmのステンレス製の反応管に充填したシェルアンドチューブ型反応器を使用した。
充填態様は、原料ガス導入側30cmを残し、上記活性炭を長さ30cmにわたり充填し、次にジルコニア製セラミックボール(直径2mm)と上記活性炭を混合比(容積比)1で混合して得た充填剤を残部30cmに充填した。希釈触媒が充填されている側から反応管に一酸化炭素を1.2kg/h、塩素を2.8kg/hで供給することにより、3.9kg/hでホスゲンを製造した。シェル側には90℃の水を通水して反応熱を除去した。
オリゴマー反応器として、内径6mm、長さ30mの管型反応器を使用し、該オリゴマー反応器を20℃の冷却槽に浸した。上記方法によって得られたホスゲンガスをそのまま連続的にオリゴマー反応器に供給した。ここで、オリゴマー反応器に供給するホスゲンガスの供給圧力は0.45MPa(ゲージ圧)に設定した。
オリゴマー反応器に、ホスゲンガス3.9kg/h、濃度6質量%水酸化ナトリウム水溶液にビスフェノールA(BPA)を溶解して得られた濃度13.5質量%のBPA水酸化ナトリウム水溶液44kg/h、塩化メチレン22kg/h、分子量調節用の濃度25質量%のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液0.46kg/hを供給し、ポリカーボネートオリゴマー溶液を得た。このとき、オリゴマー反応器内の入口圧力は0.2MPa(ゲージ圧)であった。
なお、ホスゲン製造工程およびポリカーボネートオリゴマー製造工程の設備は建物内に設置されており、外部と隔離されている。さらに、建物内は常時空気の入れ替えを行っており、内部の換気空気はブロアなどで除害設備へ送られる。
上記方法により得たポリカーボネートオリゴマー溶液36kg/h、前述と同濃度のビスフェノールAの水酸化ナトリウム溶液11.8kg/h、濃度25質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.9kg/h、濃度1質量%のトリエチルアミン水溶液0.2kg/h、塩化メチレン18.2kg/h、濃度25質量%のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液0.55kg/hを、直列に連設した80Lの槽型反応器二機に連続的に供給して、重合反応を進行させた。得られた重合液を塩化メチレンで希釈した後、アルカリ洗浄、酸洗浄、水洗浄の各洗浄工程を経て、ポリカーボネートを含む有機相と水相に分離した。
さらに、ポリカーボネートを含む有機相を、薄膜蒸発機、ニーダーを通して塩化メチレンを分離すると共に、ポリカーボネートを粉末化し、その後、造粒化してポリカーボネートペレットとした。得られたポリカーボネートの数平均分子量(Mn)は23,500であった。
上記ポリカーボネート製造時に、主に薄膜蒸発機及びニーダーから塩化メチレンを蒸気として回収し、冷却後、回収した塩化メチレンを1m3の貯槽に溜めた。次に、この回収された塩化メチレンを、段数40段の蒸留塔の20段目に68kg/hで供給し、塔頂温度40℃、塔底温度50℃、塔頂還流比2.0で蒸留操作を行い、塔頂より塩化メチレンを回収率99.5%で蒸留回収した。蒸留回収した塩化メチレンを、上記管型反応器(オリゴマー反応器)および槽型反応器(ポリマー反応器)に供給し、再利用した。
ホスゲンの除害手段として、カスケード・ミニ・リング(CMR)Rを充填した塔径600mm、充填層高さ10mの除害塔を設置した。そこに、除害剤として濃度10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を2m3/hで除害塔を循環させた。水酸化ナトリウム水溶液は塔の上部から供給し、ホスゲン製造工程およびオリゴマー製造工程が設置されている建屋内の空気は塔の下部から供給した。
さらに、得られたポリカーボネートペレットを用いて、金属錆テスト及び耐熱テストを行った。結果を表1に示す。
(金属錆テスト)
射出成形機を用いて、320℃にてポリカーボネートペレットのサンプル10gを1ショットとして、100ショット成形した後の金型(材質:S−55C)の錆発生状況を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
○:錆の発生は認められない。
×:微細状の錆が前面に見られる。
(耐熱テスト)
射出成形機を用いて、350℃にて30分間ポリカーボネートペレットをスクリュー内に滞留させた後、射出成形し、2ショット目の成形品のYI値をJIS K7105に準拠して測定し、耐熱性に指標とした。値が小さいほど、耐熱性に優れることを示す。
触媒層の希釈剤、希釈層の長さ及び希釈率を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同じ条件でポリカーボネートを製造し、各評価試験を行った。結果を表1に示す。
実施例1のホスゲンの製造(工程(1))において、反応管内部に触媒の活性炭を希釈することなくそのまま充填した以外は同様にしてポリカーボネートを製造し、各評価試験を行った。結果を表1に示す。
実施例1の塩化メチレンの蒸留工程において、工程(3)から回収した塩化メチレンを蒸留することなく、そのまま工程(2)及び工程(3)の有機溶媒として再利用した以外は同様にしてポリカーボネートを製造し、各評価試験を行った。結果を表1に示す。
比較例1及び2は、実施例と同じく、有害なホスゲンを実質的に保有することなくポリカーボネートを製造する手段としたが、希釈剤で希釈しない触媒層を使用してホスゲンを製造した比較例1では、ホスゲン中の四塩化炭素及びクロロホルムの含有量が200体積ppmを超えており、ポリカーボネート中の四塩化炭素の含有量が40質量ppmを超え、かつクロロホルムの含有量が10質量ppmを超えており、射出成形機の金型に錆が生じ易く、さらに耐熱性にも乏しく、低品質のポリカーボネートとなった。また、工程(3)から回収した塩化メチレンを蒸留精製せずに再利用した比較例2では、再利用した塩化メチレン中の四塩化炭素の含有量が30質量ppm、クロロホルムの含有量が10質量ppmと比較的高くなっており、射出成形機の金型に錆が生じ易く、さらに耐熱性にも乏しく、低品質のポリカーボネートとなった。
Claims (5)
- 塩素及び一酸化炭素を反応させてホスゲンガスを連続的に製造する工程(1)、
前記工程(1)で連続的に製造されたホスゲンガス、二価フェノール系化合物のアルカリ水溶液及び有機溶媒をオリゴマー反応器に連続的に供給して、ポリカーボネートオリゴマーを含有する反応混合物を連続的に製造する工程(2)、及び
前記工程(2)で製造されたポリカーボネートオリゴマーを含有する反応混合物と、二価フェノール系化合物のアルカリ水溶液及び有機溶媒をポリマー反応器に連続的に供給して、ポリカーボネートを連続的に製造する工程(3)
を含むポリカーボネートの連続製造(ただし、上記工程(2)において得られる反応混合物を、循環ポンプを用いて外部熱交換器を経由し冷却して、その一部を再びオリゴマー反応器に戻す工程を含むポリカーボネートの連続製造を除く)方法であって、
下記条件(i)〜(iii)を満たすことを特徴とするポリカーボネートの連続製造方法。
(i)工程(1)において、塩素及び一酸化炭素を、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化クロム、炭化珪素及び硫化亜鉛から選ばれる少なくとも1種を原料としたセラミック、単体としての貴金属類、並びにステンレスから選ばれる希釈剤で希釈した触媒層へ通して反応させ、得られるホスゲンガス中の四塩化炭素及びクロロホルムの含有量をいずれも200体積ppm以下とする。
(ii)工程(1)で連続的に製造されたホスゲンガスを精製せずにそのまま工程(2)で使用する。
(iii)工程(2)及び(3)のうちの少なくとも一方で使用した有機溶媒の少なくとも一部を精製し、四塩化炭素及びクロロホルムの含有量をいずれも50質量ppm以下とした有機溶媒を得て、該有機溶媒を工程(2)及び(3)のうちの少なくとも一方の有機溶媒として再利用する。 - 工程(1)における塩素及び一酸化炭素の供給を停止すると共に、オリゴマー反応器へのホスゲンガスの供給を停止させ、かつ、ホスゲンガスを含む有毒ガスを除害手段に移送して無害化する手段を備えた、請求項1に記載のポリカーボネートの連続製造方法。
- 前記除害手段が、ホスゲンガスを含む有毒ガスをアルカリ水溶液と接触させて無害化する手段である、請求項2に記載のポリカーボネートの連続製造方法。
- 前記希釈剤の形状は、ラシヒリング、レッシングリング、テラレット及びボーリングから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネートの連続製造方法。
- 前記希釈剤の大きさは、径又は長さが0.1〜10mmである請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネートの連続製造方法。
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