JP5794227B2 - オキシムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はケトンとヒドロキシルアミンとから対応するオキシムを製造する方法に関する。
オキシムは、ベックマン転位反応させることによりアミド化合物に誘導でき、特に、環状ケトン由来のオキシムからはラクタムに誘導できる。例えば、シクロヘキサノンオキシムからは、ナイロン6の原料であるε−カプロラクタムが、シクロドデカノンオキシムからは、ナイロン12の原料であるラウロラクタムが得られる。
オキシムの製造方法としては、例えば以下の方法が知られている。
(i)N−ヒドロキシイミド化合物及び該N−ヒドロキシイミド化合物のヒドロキシル基に保護基(例えば、アセチル基等のアシル基など)を導入することにより得られる化合物の存在下、メチル基又はメチレン基を有する化合物と、亜硝酸エステル又は亜硝酸塩とを反応させる製造方法(特許文献1)。ここで、前記N−ヒドロキシイミド化合物は、N−ヒドロキシコハク酸イミドなどの脂肪族多価カルボン酸無水物(環状無水物)又は芳香族多価カルボン酸無水物(環状無水物)から誘導される。
(ii)シクロアルカン等を光ニトロソ化する方法(特許文献2)。
(iii)チタノシリケートのような触媒の存在下にケトンと、アンモニア及び過酸化水素とを反応させる方法(特許文献3)。
(iv)対応するケトンに硫酸ヒドロキシルアミン鉱酸塩の複分解によって生成したヒドロキシルアミンを縮合反応させる方法。
これらのうち、(iv)の方法が汎用的かつ一般的である。例えば、ラウロラクタムの原料であるシクロドデカノンオキシムは、シクロドデカノンと、ヒドロキシルアミン鉱酸塩との反応により製造される(特許文献4)。
上記(iv)の方法による場合、オキシムの製造においては、疎水性溶媒の使用は、油水の分離を容易にし、溶媒回収の観点から有利であり、次いで行われるオキシムのベックマン転位反応への水の影響も抑制できる事から望ましい(特許文献5)。しかしながら、疎水性溶媒と水との2相系において、ケトンとヒドロキシルアミンとからオキシムを製造する場合は、反応に長時間を要する。特に、オキシム化において水相に分配されにくいケトンを用いる場合、長い反応時間を要するという問題が生じやすかった。これにより、装置の巨大化を招き多大な設備費が必要となることから、生産性ならびに経済的にも不利である。
特開2009−298706号公報 特開2010−6775号公報 特開2006−206476号公報 特開2004−59553号公報 国際公開第09/069522号パンフレット
本発明は、疎水性溶媒と水との2相系において、ケトンとヒドロキシルアミンとから対応するオキシムを工業的に製造する方法における、上記の反応時間の問題を解決し、装置の小型化を図ることを目的とする。
発明者らは、ケトンのオキシム化反応について鋭意研究を行った結果、カルボン酸および/またはその塩を添加することで良好な反応速度の加速効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の事項に関する。
1.水相と、疎水性溶媒の相とからなる系中、カルボン酸および/またはその塩の存在下、ケトンとヒドロキシルアミンとを反応させることを特徴とする、オキシムの製造方法。
2.ケトンの炭素原子数が8以上30以下である、上記1記載の方法。
3.ケトンがシクロドデカノンである、上記1記載の方法。
4.カルボン酸および/またはその塩の炭素原子数が5以上である、上記1記載の方法。
5.反応時における水相の水素イオン濃度(pH)がpH5からpH6の範囲である、上記1記載の方法。
6.疎水性溶媒が芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素である、上記1記載の方法。
本発明によれば、疎水性溶媒と水との2相系中、ケトンとヒドロキシルアミンとからオキシムを製造する方法において、その反応速度を加速し、反応装置の小型化を可能とする方法を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、疎水性溶媒と水との2相系において、カルボン酸および/またはその塩の存在下、ケトンとヒドロキシルアミンとからオキシムを製造する方法に関する。まず、本発明のオキシムの製造方法に用いる化合物について説明する。
<カルボン酸またはその塩>
本発明は、オキシムの製造方法において、カルボン酸および/またはその塩を用いることを特徴とする。カルボン酸および/またはその塩の存在下でオキシム化反応を行うことにより、反応速度が加速される。後述するように、本発明によるオキシムの製造においては、水相より疎水性溶媒の相に分配されやすいケトン(以下、「疎水性の高いケトン」と表記することもある。)を用いる場合、反応速度の加速効果がより顕著にあらわれる。疎水性の高いケトンが用いられる場合、オキシム化の反応場は油相中となるため、共に用いるカルボン酸またはその塩も、疎水性溶媒の相に分配されやすいカルボン酸またはその塩であることが好ましい。カルボン酸またはその塩を使用することにより、水相中に存在するヒドロキシルアミンが、反応場である油相中に物質移動しやすくなり、オキシム化の反応速度が促進される。
本発明において用いるカルボン酸またはその塩は、特に限定されないが、炭素原子数5以上の飽和又は不飽和の直鎖脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、あるいはこれらの塩が好ましい。酢酸、プロピオン酸などの炭素原子数4以下のカルボン酸は、水溶性が高く、オキシム化反応において水相へ分配されやすいカルボン酸であるため、オキシム化反応の顕著な加速効果が現れにくい。カルボン酸の炭素数の上限は特に限定されないが炭素原子数28を越えると反応溶媒へ溶解しにくくなる。具体的に好ましいカルボン酸としては、カプロン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸;セバシン酸、ドデカン二酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸、および安息香酸、フタル酸、ナフトエ酸などの芳香族カルボン酸が挙げられる。
カルボン酸の塩としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)と上記カルボン酸との塩が挙げられる。具体的には、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カルシウムなどが挙げられる。
上記カルボン酸またはその塩は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
<ケトン>
本発明においては、オキシム化反応は疎水性溶媒の相と水相との2相系中で行われる。水相に分配されやすいケトンを用いる場合、水相においてもオキシム化が進行するため比較的反応速度が速く、カルボン酸またはその塩の添加による反応加速効果は比較的小さい。一方、疎水性の高いケトンを用いた場合、反応場が油相に限られるため、ヒドロキシルアミンの油相への物質移動速度が律速となる。カルボン酸またはその塩の添加は当該物質移動速度を加速するため、疎水性の高いケトンを用いた場合、本発明の効果(カルボン酸またはその塩の添加によるオキシム化速度の加速効果)はより顕著に現れる。すなわち、疎水性の高いケトンが所望される場合において、本発明は特に重要である。
本発明において、ケトンは、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0005794227
(式中、R、Rは、それぞれ有機基を示す。また、RおよびRは、一緒になって2価の有機基を表し、RおよびRが結合している炭素原子と共に環を形成してもよい。)
本発明においては、RとRの炭素原子数の合計が好ましくは8以上、より好ましくは8以上30以下のケトンを用いると、オキシム化工程において疎水性溶媒の相に分配されやすいため、好ましい。
上記R、Rにおける有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基、芳香族性又は非芳香族性の複素環基などが挙げられる。
ここで、アルキル基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基が挙げられるが、好ましくは炭素原子数1〜12のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素原子数2〜8のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、炭素原子数2〜20のアルケニル基が挙げられるが、好ましくは炭素原子数2〜12のアルケニル基であり、さらに好ましくは炭素原子数2〜8のアルケニル基である。具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−オクテニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、炭素原子数2〜20のアルキニル基が挙げられるが、好ましくは炭素原子数2〜12のアルキニル基であり、さらに好ましくは炭素原子数2〜8のアルキニル基である。具体的には、エチニル基、1−プロピニル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基が挙げられるが、好ましくは炭素原子数3〜15のシクロアルキル基である。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられる。
シクロアルケニル基としては、例えば、炭素原子数3〜20のシクロアルケニル基が挙げられるが、好ましくは炭素原子数3〜15のシクロアルケニル基である。具体的には、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基などが挙げられる。
芳香族性又は非芳香族性の複素環基としては、例えば、2−ピリジル基、2−キノリル基、2−フリル基、2−チエニル基、4−ピペリジニル基などが挙げられる。
およびRが、一緒になって2価の有機基を表す場合、それらが結合している炭素原子と共に環を形成している。2価の有機基としては、直鎖または分岐アルキレン基、好ましくは直鎖アルキレン基が挙げられる。本発明においては、オキシム化工程において疎水性溶媒の相に分配されやすい8員環以上である場合、本発明の効果は顕著であり、形成される環が、例えば8〜30員環、好ましくは8〜20員環であり、さらに好ましくは8〜14員環の場合、本発明は特に有効である。
これらの有機基は環形成の有無によらず、反応を阻害しなければ特に限定されることなく種々の置換基を有してもよい。例えば、置換基としては、ハロゲン原子、オキソ基、メルカプト基、置換オキシ基(アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、置換チオ基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換アミノアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基(フェニル基、ナフチル基など)、アラルキル基、複素環基などが挙げられる。
式(1)で表されるケトンのうち、本発明の効果が顕著に現れるケトンとしては、1−シクロヘキシル−1−プロパノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられ、環を形成したものとしては、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノン、シクロトリデカノン、シクロテトラデカノン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデカノン、シクロオクタデカノン、シクロノナデカノンなどが挙げられる。これらのうちでシクロドデカノンは工業的にも極めて重要である。
<ヒドロキシルアミン>
ヒドロキシルアミンは不安定なため、ヒドロキシルアミン硫酸塩又はヒドロキシルアミン炭酸塩等のヒドロキシルアミンの無機塩の水溶液として製造、販売されている。通常、反応時にアンモニア水等の塩基を加えて、ヒドロキシルアミンを遊離させて使用される。本発明においては、予めヒドロキシルアミンを遊離させたヒドロキシルアミン水溶液を使用してもよいが、通常は反応装置中にヒドロキシルアミンの無機塩(好ましくは硫酸塩)の水溶液と、塩基(好ましくはアンモニア水)を供給して、反応装置内でヒドロキシルアミンを遊離させて使用する。
<疎水性溶媒>
本発明のオキシムの製造方法においては、疎水性溶媒が使用される。このため、本発明のオキシムの製造方法は、上述のヒドロキシルアミン水溶液由来の水と、疎水性溶媒との2相系となる。
疎水性溶媒は、特に限定されないが、原料ケトン及び製造されるオキシムの溶解性が高いものが好ましい。具体的には、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロドデカン、イソプロピルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、トリフルオロエタノール等のフッ素系アルコール;或いは、これらの混合溶媒などが挙げられる。
なお、本発明の製造方法により得られたオキシムは、アミド化合物、特にラクタムを得るためのベックマン転位反応に用いることができるが、オキシムの製造に用いた溶媒をそのままベックマン転位反応に用いると、溶媒交換を行う必要がないため好ましい。オキシムの製造に用いる溶媒と、ベックマン転位反応に用いる溶媒とを同一とし、かつ、ベックマン転位反応において塩化チオニルを触媒として使用する場合は、アルコール類、エステル類を溶媒として使用するとベックマン転位反応において悪影響を及ぼすため、これらは用いない方が好ましい。
<オキシム化反応>
次に、上記化合物を用いたオキシムの製造方法について説明する。本発明のオキシムの製造方法においては、水相と疎水性溶媒との2相系中、カルボン酸および/またはその塩の存在下、ケトンとヒドロキシルアミンとを反応させる。
ケトンとヒドロキシルアミンとの量比は、特に限定はされないが、等モルずつ反応させることが好ましい。なお、等モルのケトンとヒドロキシルアミンを用い、複数の反応装置を直列に連結して連続的に反応を行う場合には、ケトンとヒドロキシルアミンを交流フィード、すなわち第1反応槽にケトンをフィードし、ケトン及び反応により生成したオキシムを含む軽液相(油相)は順次後続の反応槽に送り、ヒドロキシルアミンは最終反応槽にフィードし、ヒドロキシルアミンを含む重液相は順次前段の反応槽に送り反応させる方法は、未反応のケトン及び/又はヒドロキシルアミンを削減するうえで好ましい態様である。
カルボン酸またはその塩の使用量は、特に限定されないが、ケトンに対し0.001モル%から5モル%が好ましく、0.01モル%から1モル%がより好ましい。添加量が過小な場合、オキシム化の反応速度の加速効果が乏しく、一方、過剰に添加してもさらにオキシム化の反応速度が向上する効果は得られにくい。
反応温度は、115℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、75℃以上100℃以下がさらに好ましい。工業的に好適な反応速度を維持するためには反応温度が高い方が好ましいが、高温すぎるとヒドロキシルアミンが分解して危険である。また、ヒドロキシルアミンが水溶液であるため、高温で反応を行うには加圧容器が必要となる。従って、100℃以下の場合は常圧で反応させることができ、より簡便である。
オキシム化反応における水相の水素イオン濃度(pH)は、pH5以上、6以下が好ましい。pHは、高いほど遊離するヒドロキシルアミン濃度が増加するため、反応速度が速くなる。従って、工業的に好適な反応速度を維持するためにはpHが高い方が好ましい。pHが低すぎると工業的に十分な反応速度が得られず好ましくない。一方、ヒドロキシルアミンは遊離すると不安定であり、自己分解を起こすため、安全性の観点から、高濃度でヒドロキシルアミンが滞留することは避けなければならない。なお、水相中で遊離したヒドロキシルアミンは油相に移動しオキシム化反応によって消費される。本発明においては、カルボン酸またはその塩の添加によって、ヒドロキシルアミンの油相中への物質移動が促進され、ヒドロキシルアミンの消費速度が増大するため、水相のpHは6まで許容される。
pH調整は、塩基(好ましくはアンモニア水)を添加することによって行われる。pH調整方法としては、例えばpHコントローラーによって常時水相のpHを監視し、所望の値を超えないように塩基を適量添加する方法が挙げられる。
オキシム化反応に使用される反応装置は、回分式反応装置、管型連続反応装置、撹拌槽型連続反応装置等の一般に用いられる反応装置を使用できるが、工業的に製造可能な反応速度を維持するためには、疎水性溶媒と水相の2相が十分に混合できるような混合装置を有する回分式反応装置あるいは撹拌槽型連続反応装置が好ましい。
反応時間は、ケトン、溶媒の種類、ケトンの濃度、ケトンとヒドロキシルアミンのモル比、反応温度、pH等によって異なるが、装置の長大化を防ぐ観点から、15時間以下となるよう諸条件を設定することが好ましい。なお、本発明において反応時間が15時間を超えることもあるが、上述のカルボン酸および/またはその塩を用いると、これらを用いない場合に比べて反応時間は短くなる。
オキシム化反応は、大気中で行ってもよいが、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスにより反応系中を満たしても良い。
オキシム化反応は、加圧条件で反応させることも可能であるが、加圧反応装置は常圧反応装置と比較して高価であることから経済的には不利であるため、常圧で実施することが好ましい。
上記反応により生成したオキシムは、反応混合物から有機相を分離し、溶媒を全量または一部留去する事で得られるが、溶媒に溶解させたまま、次いで行うベックマン転位反応に使用することもできる。
上記方法により製造されたオキシムの種類は、用いたケトンの種類に対応しており、例えばシクロドデカノンを用いた場合は、シクロドデカノンオキシムが製造される。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、反応液中のシクロドデカノンの分析はガスクロマトグラフィー、ヒドロキシルアミンの分析は滴定によって行い、この結果からシクロドデカノンおよびヒドロキシルアミンの転化率を算出した。なお、実施例は交流2槽連続流通反応における、各槽でのオキシム化反応の反応時間の比較をバッチ実験にて行ったものであり、各バッチ反応の初期濃度は交流連続反応における各槽の入り口濃度に相当する。
<実施例1>
1L竪型反応器にヒドロキシルアミン硫酸塩の15重量%水溶液1162.0gを添加し、40℃以下を保持しながらpHが4になるように25重量%アンモニア水を滴下し、ヒドロキシルアミンの水溶液1313.1gを調製した。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
1L竪型反応器に、上記ヒドロキシルアミン水溶液339.7g、シクロドデカノン167.3g、カプロン酸0.104gおよびトルエン71.9gを添加後、90℃で25重量%アンモニア水を水相のpHを5.8に保持するように滴下し、水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまでオキシム化反応を行った。反応時間は4時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
反応終了後、水相を抜き出し、有機相は下記第二槽での反応にそのまま使用した。
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
上記有機相へ上記ヒドロキシルアミン水溶液567.4gを更に添加後、90℃で25重量%アンモニア水を水相のpHを5.8に保持するように滴下しながら、有機相中のシクロドデカノン濃度が0.1重量%以下になるまで反応をおこなった。反応時間は7時間であった。(シクロドデカノン転化率99.8%)
<実施例2>
カプロン酸をウンデカン酸に変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまでオキシム化反応を行った。反応時間は4時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
有機相中のシクロドデカノン濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は6時間であった。(シクロドデカノン転化率99.8%)
<実施例3>
カプロン酸をラウリン酸に変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまでオキシム化反応を行った。反応時間は4時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
有機相中のシクロドデカノン濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は6時間であった。(シクロドデカノン転化率99.8%)
<実施例4>
カプロン酸をドデカン二酸に変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまでオキシム化反応を行った。反応時間は4時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
有機相中のシクロドデカノン濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は6時間であった。(シクロドデカノン転化率99.8%)
<実施例5>
カプロン酸をステアリン酸に変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまでオキシム化反応を行った。反応時間は4時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
有機相中のシクロドデカノン濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は6時間であった。(シクロドデカノン転化率99.8%)
<実施例6>
ステアリン酸添加量を0.261gから1.305gに変えた以外は実施例5と同様の操作を行った。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまでオキシム化反応を行った。反応時間は2時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
有機相中のシクロドデカノン濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は3時間であった。(シクロドデカノン転化率99.8%)
<実施例7>
カプロン酸をラウリン酸ナトリウムに変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまでオキシム化反応を行った。反応時間は4時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
有機相中のシクロドデカノン濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は6時間であった。(シクロドデカノン転化率99.8%)
<実施例8>
カプロン酸をプロピオン酸に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は6時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
有機相中のシクロドデカノン濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は9時間であった。(シクロドデカノン転化率99.8%)
<比較例1>
カプロン酸を添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は8時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
有機相中のシクロドデカノン濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は9時間であった。(シクロドデカノン転化率99.8%)
<比較例2>
カプロン酸をテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は10時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
有機相中のシクロドデカノン濃度が0.5重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は7時間であった。(シクロドデカノン転化率99.0%)
<実施例9>
溶媒をイソプロピルシクロヘキサンに変えた以外は、実施例5と同様の操作を行った。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は7時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
有機相中のシクロドデカノン濃度が0.3重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は10時間であった。(シクロドデカノン転化率98.9%)
<比較例3>
ステアリン酸を添加しなかったこと以外は、実施例9と同様の操作を行った。
(第一槽、シクロドデカノン過剰槽)
水相中のヒドロキシルアミン硫酸塩濃度が0.1重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は12時間であった。(ヒドロキシルアミン転化率99.2%)
(第二槽、ヒドロキシルアミン過剰槽)
有機相中のシクロドデカノン濃度が0.2重量%以下になるまで反応を行った。反応時間は14時間であった。(シクロドデカノン転化率99.3%)
以下の表に各実施例および比較例に用いた添加したカルボン酸およびその塩の種類と添加量、オキシム化に用いた溶媒、および各反応槽における反応時間を記載する。
Figure 0005794227

Claims (4)

  1. 水相と、芳香族炭化水素および脂肪族炭化水素から選ばれる疎水性溶媒の相とからなる系中、ウンデカン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ドデカン二酸、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸の存在下、反応時における水相の水素イオン濃度の対数(pH)をアンモニア水を加えることによってpH5からpH6の範囲に調整し、シクロドデカノンとヒドロキシルアミンの水溶液とを反応させることを特徴とする、シクロドデカノンオキシムの製造方法。
  2. 前記ヒドロキシルアミンの水溶液が、ヒドロキシルアミン硫酸塩又はヒドロキシルアミン炭酸塩の水溶液である、請求項1記載の方法。
  3. 前記カルボン酸が、ウンデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ドデカン二酸から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1記載の方法。
  4. 前記疎水性溶媒が、トルエンおよびイソプロピルシクロヘキサンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の方法。
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