JP5794058B2 - 熱転写シート - Google Patents

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Description

本発明は、感熱転写方式のプリンターに使用される熱転写シートに関するものであり、特に基材の一方の面に耐熱滑性層を設け、前記基材の他方の面に熱転写性インク層と離型性付与層とを順次形成した熱転写シートに関する。
一般に、熱転写シートは、サーマルリボンと呼ばれ、感熱転写方式のプリンターに使用されるインクリボンのことであり、基材の一方の面に感熱転写層、その基材の他方の面に耐熱滑性層(バックコート層)を設けたものである。ここで感熱転写層は、インクの層であって、プリンターのサーマルヘッドに発生する熱によって、そのインクを昇華(昇華型熱転写方式)あるいは溶融(溶融型熱転写方式)させ、紙やプラスチックシート等の基材シート上に設けた受容層を備えた熱転写受容シートに転写するものである。
現在、感熱転写方式の中でも昇華型熱転写方式は、プリンターの高機能化と併せて各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等、広く利用されている。そういった用途の多様化と共に、小型化、高速化、低コスト化、また得られる印画物への耐久性を求める声も大きくなり、近年では基材の同じ側に印画物への耐久性を付与する保護層等を重ならないように設けられた複数の感熱転写層をもつ熱転写シートが普及してきている。
そのような状況の中、用途の多様化と普及拡大に伴い、よりプリンターの印画速度の高速化が進むに従って、従来の熱転写シートでは十分な印画濃度が得られないという課題が生じてきた。そこで転写感度を上げるべく、熱転写シートを薄膜化し、それにより印画における転写感度の向上を試みることが行われてきた。しかし、この手法は、熱転写シートの製造時や印画の際に熱や圧力等によりシワが発生したり、場合によっては熱転写シートの破断が発生するという課題を抱えている。
また、熱転写シートの熱転写性インク層における染料(Dye)/樹脂(Binder)の比率を大きくして、印画濃度や印画における転写感度の向上を試みることが行われている。しかし、この手法は、染料を増やすことでコストアップとなるばかりではなく、製造工程における巻き取り状態時に熱転写シートの耐熱滑性層へ染料の一部が移行(つまり、裏移り)し、その後の巻き返し時に、その移行した染料が他の色の熱転写インク層、あるいは保護層に再転移(つまり、裏裏移り)することがある。このため、この汚染された層を被転写体へ熱転写すると、指定された色と異なる色相になったり、未印画箇所でも染料が移行してしまう、いわゆる地汚れが生じたりする場合がある。
また、熱転写シート側ではなく、プリンター側で画像形成時のエネルギーをアップする試みも行われている。しかし、この手法は、消費電力が増えるばかりではなく、プリンターのサーマルヘッドの寿命を短くする他、熱転写シートと受容シートとが融着し、いわゆる異常転写が生じやすくなる。それに対して異常転写を防止するために、インク層あるいは受容層に離型剤を添加するという試みがなされている。
しかしながら、昇華型熱転写方式では複数のインク層を同一箇所に順次熱転写させ画像を形成するが、昇華性染料の転写によって受容層表面の離型性が低下し、2色目、3色目の転写時には受容層側の離型性が不足し、異常転写が生じるといった問題がある。上記の問題を解決するために、熱転写シートの各インク層に隣接して熱転写可能な受容形成樹脂を同一基材上に設けて、各インク層の熱転写の度に、各インク層の適合に合わせた受容層を受容体となる基材シートに予め転写させることによって、受容体側の離型性の低下を防ぎ、異常転写を防止する提案がなされている(特許文献1を参照)。
特開平4−142985号公報
ところが、特許文献1で提案されている方法で画像を形成すると、染料転写後の受容層は画像によって、例えば、部分的な離型性の低下、あるいは基材シートにおける部分的な凹凸の発生等、それらの表面状態によっては受容層形成樹脂が部分的に、あるいは全面で異常転写を起こす場合がある。そして、その結果、画像欠陥が発生するといった問題がある。また、受容層を安定的に剥離するために、基材と受容層との間に離型層を設けることで剥離の重さを調整することが有効であるが、コストアップにも繋がる。また、厚みのある受容層形成樹脂を複数回同一箇所に熱転写させた場合、画像形成時の温度あるいは湿度の影響し印画物のカールが発生しやすくなるといった問題がある。
そこで、本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、高速印画時における転写感度が高く、印画における異常転写を防止できる熱転写シートを提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、一方向に長い基材シートの一方の面に形成された耐熱滑性層と、前記基材シートの他方の面に形成された昇華性熱転写性インク層と熱転写性保護層と熱移行性の離型性付与層と、を備え、前記昇華性熱転写性インク層は、熱昇華性染料と第1のバインダとを含み、且つ、少なくとも、イエロー、マゼンタ、シアンの各色相を呈し所定の並び順で配置された複数種の昇華性熱転写性インク層を有し、前記離型性付与層は、少なくとも変性シリコーンオイルと第2のバインダとを含み、前記熱転写性保護層は、離型層に積層され、前記複数種の昇華性熱転写性インク層の末尾の昇華性熱転写性インク層に続いてその隣に配置され、前記所定の並び順で配置された複数種の昇華性熱転写性インク層の先頭から末尾までの昇華性熱転写性インク層どうしの間全てに前記離型性付与層のみが配置されることを特徴とする熱転写シートである。
上記態様によれば、熱移行性の離型性付与層は、変性シリコーンオイルと第2のバインダとを含んでいる。熱転写性インク層の画像形成の熱転写の前に離型性付与層の離型剤を付与する熱転写工程を加えることで、熱転写時に離型性付与層に含まれる離型剤を受容層に移行させることが可能で、受容層側の離型性を向上させることができる。よって、上記態様に係る熱転写シートであれば、高速印画時における転写感度が高く、印画における異常転写を防止できる。
また、本発明の別の態様は、前記離型性付与層の前記変性シリコーンオイルは、前記第2のバインダ100質量部に対して、0.5質量部以上、10質量部以下の範囲内にあることが望ましい。
第2のバインダ100質量部に対して、変性シリコーンオイルが0.5質量部未満の場合には、離型剤の移行が起こりにくく、その結果、異常転写が発生する。また、変性シリコーンオイルが10質量部より大きい場合には、離型剤の移行が過度の起こり、その結果、いわゆる地汚れが発生する。
本発明は、従来の熱転写シートと比較して、少なくとも変性シリコーンオイルと第2のバインダとを含む、熱移行性の離型性付与層を有していることによって、高速印画時における転写感度が高く、印画における異常転写を防止できる熱転写シートを提供することが可能になった。
本発明の実施形態に係る熱転写シートの側断面図である。
以下、図1を参照して、本発明の実施形態に係る熱転写シートの構造を詳細に説明する。図1に示すように、熱転写シート10は、基材シート1と、耐熱滑性層2と、昇華性熱転写性インク層(イエロー)3と、昇華性熱転写性インク層(マゼンタ)4と、昇華性熱転写性インク層(シアン)5と、離型性付与層6と、熱転写性保護層7と、離型層8とを含んで構成されている。
具体的には、基材シート1の一方の面1aには耐熱滑性層2が形成されており、基材シート1の他方の面1bには各昇華性熱転写性インク層と離型性付与層6とが、基材シート1の長手方向に沿って順次形成されている。ここで「順次形成されている」とは、昇華性熱転写性インク層3〜5と離型性付与層6とが基材シート1の面1a上で重なることなく交互に配置されていることをいう。つまり、昇華性熱転写性インク層(マゼンタ)4と昇華性熱転写性インク層(イエロー)3との間及び昇華性熱転写性インク層(マゼンタ)4と昇華性熱転写性インク層(シアン)5との間には、離型性付与層6がそれぞれ形成されていても良い。
なお、本実施形態では、必ずしも交互に配置されている必要はなく、例えば昇華性熱転写性インク層(マゼンタ)4に対して離型性付与層6は形成されているが、昇華性熱転写性インク層(シアン)5に対して離型性付与層6は形成されていなくても良い。ただし、離型性付与層6が全く形成されていない形態はない。
そして、昇華性熱転写性インク層(シアン)5の、離型性付与層6が形成された側とは反対側には離型層8が形成されている。さらに、離型層8の、基材シート1側の面とは反対側の面には熱転写性保護層7が形成されている。
なお、上記した「昇華性熱転写性インク層」は、以下、単に「熱転写性インク層」とも表記する。
基材シート1としては、熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度が要求されるので、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、およびコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独で又は組み合わされた複合体として使用可能である。これらの中でも、物性面、加工性、コスト面などを考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、その厚さは、操作性、加工性を考慮し、2〜50μmの範囲のものが使用可能であるが、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2〜9μm程度のものがさらに好ましい。
また、基材シート1においては、耐熱滑性層2を形成する面あるいは反対の面に、接着処理を施すことも可能である。接着処理としては、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、プラズマ処理、プライマー処理等の公知の技術を適用することができ、それらの処理を二種以上併用することもできる。本発明の実施形態では、接着処理を施すことにより、基材シート1とインク層3〜5、離型性付与層6、離型層8との接着性を高めることが有効であり、コスト面からもプライマー処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
次に、耐熱滑性層2は、熱転写時にサーマルヘッドと基材シート1の融着を防止するためのものであり、バインダ樹脂、離型性や滑り性を付与する機能性添加剤、充填剤、硬化剤、溶剤などを配合して調製し、塗布、乾燥して形成することができる。特に充填剤の役割は重要で、耐熱滑性層2に凹凸をつけることにより、上記特性、すなわち離型性や滑り性を付与することができる。
この耐熱滑性層2の乾燥後の膜厚は、一概に限定されるものではないが、0.1〜2.0μm程度が適当である。0.1μm未満では、耐熱性が著しく劣り、印画の際の熱や圧力等によりシワが発生する可能性がある。また2.0μm以上では、熱転写シート10自体の感度低下に影響し、高速印画時における転写濃度が不足する可能性がある。
耐熱滑性層2の一例を挙げると、バインダ樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
機能性添加剤としては、動物系ワックス、植物系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等の界面活性剤等を挙げることができる。
充填剤としては、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート類、およびその誘導体を挙げることができるが、前記は全て特に限定されるわけではない。
次に、熱転写性インク層3〜5は、従来公知のもので対応でき、例えば、熱昇華性染料(以下、「熱移行性染料」ともいう。)、バインダ、溶剤などを配合して熱転写性インク層3〜5形成用の塗布液を調製し、塗布、乾燥することで形成される。なお、熱転写性インク層3〜5の乾燥後の膜厚は、1.0μm程度が適当である。
熱転写性インク層3〜5に含まれる熱移行性染料は、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料であれば、特に限定されるものではない。例えば、前記染料のイエロー成分としては、ソルベントイエロー56,16,30,93,33、ディスパースイエロー201,231,33等を挙げることができる。また、前記染料のマゼンタ成分としては、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等を挙げることができる。また、前記染料のシアン成分としては、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、あるいはC.I.ディスパースブルー24等を挙げることができる。
熱転写性インク層3〜5に含まれるバインダは、従来公知の樹脂バインダがいずれも使用でき、特に限定されるものではない。例えば、このバインダとしては、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。
なお、本願の「第1のバインダ」は、上述した「熱転写性インク層3〜5に含まれるバインダ」を指すものである。
また、熱転写性インク層3〜5に含まれるバインダは、全て同じ配合であっても良いし、各色によってそれぞれ異なる配合であっても良い。
ここで、熱転写性インク層3〜5に含まれる熱移行性染料とバインダとの配合比率は、質量基準で、(染料)/(バインダ)=10/100〜300/100が好ましい。これは、(染料)/(バインダ)の比率が、10/100を下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不十分となり良好な熱転写画像が得られず、また、この比率が300/100を越えると、バインダに対する染料の溶解性が極端に低下するために、熱転写シート12となった際に、保存安定性が悪くなって、染料が析出し易くなってしまうためである。
本発明の実施形態において熱転写性インク層3〜5に離型剤として添加するシリコーンオイルとしては、変性シリコーンオイル以外のシリコーンオイルであって、メチル基、フェニル基あるいは水素原子を置換基として結合したシリコーンオイルであるストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルおよびその硬化物が使用できる。本発明の実施形態では、ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等が好適に用いられる。
本発明の実施形態で用いられる変性シリコーンオイルは、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとが挙げられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルビノール変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、メタクリル変性、ポリエーテル変性、フェノール変性、片末端反応性・異種官能基変性等のシリコーンオイルが挙げられる。また、非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、アラルキル変性、フロロアルキル変性、長鎖アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、フェニル変性等のシリコーンオイルが挙げられる。 また、本発明の実施形態で用いられる変性シリコーンオイルの硬化物としては、反応硬化型、光硬化型、触媒硬化型等のシリコーンオイルが挙げられる。
離型性付与層6は、変性シリコーンオイル、バインダ、溶剤などを配合して離型性付与層6形成用の塗布液を調製し、塗布、乾燥することで形成される。離型性付与層6は、図1に示すように、各熱転写性インク層間に設けられ、プリンター内では熱転写性インク層3〜5と同じ動作で、サーマルヘッドからの熱エネルギーを受け、受容層上に離型剤を移行させ受容層の離型性を向上させるものである。離型性付与層6の乾燥後の膜厚は、0.5μm程度が適当である。
離型性付与層6に含まれるバインダは、従来公知の樹脂バインダがいずれも使用でき、特に限定されるものではない。例えば、このバインダとしては、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。
離型性付与層6に含まれる変性シリコーンオイルは、サーマルヘッドからの熱エネルギーによって拡散し受容層表面に移行するものであれば制限はない。本発明の実施形態に用いられる変性シリコーンオイルとしては、熱転写性インク層3〜5に含まれる離型剤と同様のものが挙げられ。また、本発明の実施形態においては、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好適に用いられる。
また、離型性付与層6に含まれる変性シリコーンオイルは、バインダ100質量部に対して、0.5質量部以上、10質量部以下の範囲内にあることが好ましい。第2のバインダ100質量部に対して、変性シリコーンオイルが0.5質量部未満の場合には、離型剤の移行が起こりにくく、その結果、異常転写が発生する。また、変性シリコーンオイルが10質量部より大きい場合には、離型剤の移行が過度の起こり、その結果、地汚れが発生する。
なお、本願の「第2のバインダ」は、上述した「離型性付与層6に含まれるバインダ」を指すものである。
熱転写性保護層7としては、熱転写性インク層3〜5により被転写体上に形成された画像への紫外線等からの耐久性が要求されると同時に、熱転写法というプロセスにより被転写体上に形成される必要がある。このため、一般的には紫外線吸収等の保護層としての本来的な性能と同時に被転写体への接着性を兼ね備える接着層、その下層に基材シート1から熱転写時に容易に剥離するための剥離層といった複数の層の積層体から形成されることが一般的である。
熱転写性保護層7のバインダとしては、熱溶融性以外には、特に限定されるものではない。例えば、このバインダとしては、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類が挙げられる。特に、アクリル系樹脂、セルロース誘導体が好ましい。
熱転写性保護層7に含まれる紫外線吸収剤に関しては、従来、コストや紫外線吸収範囲、種類の多さ、用途範囲の現状から、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の使用が多く、主とされてきていた。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、熱分析(示差熱/熱重量同時測定)から昇華しバインダから失われる傾向はあるが、例えば、トリアジン系の紫外線吸収剤を使用した場合にトリアジン系の紫外線吸収剤のブリードアウトによる吸収能力の低下は起こらない。
また、熱転写性保護層7の厚みに関しては、特に制限はなく、必要とされる紫外線吸収能力などを考慮して任意に選択すれば良い。
本発明の実施形態における熱転写性保護層7に使用するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を例示でき、これらを単独で又は複数を混合して使用できる。
また、本発明の実施形態における熱転写性保護層7に使用するトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジンなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。
また、本発明の実施形態において熱転写性保護層7に使用する紫外線吸収剤は、バインダ100質量部に対し1〜20質量部添加されることが好ましい。添加量が1質量部未満の場合、熱転写性樹脂層中において十分な紫外線吸収能を発揮することができない場合がある。
また、熱転写性保護層7には、添加剤としてトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の他に、ヒンダードアミン系光安定剤が添加されることが好ましい。
熱転写性保護層7に用いられるヒンダードアミン系光安定剤としては、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート等を例示でき、これらを単独で又は複数を混合して使用できる。
また、熱転写性保護層7には、紫外線吸収剤、光安定剤の他にも、必要に応じて熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、触媒促進剤、透明性を維持する範囲での着色剤、半透明化のための光散乱剤、艶調整剤等を添加することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系の酸化防止剤が用いられる。組み合わせは任意の組み合わせが可能であるが、多量添加による表面へのブリードアウトや着色、紫外線吸収剤や光安定剤との相乗・拮抗作用には留意する必要がある。
熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系、硫黄系、肥土レジン系等、難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシシウム等、クエンチャーとして、Niキレート系を用いることができる。
離型層8は、熱転写性保護層7を基材シート1からの剥離の重さを適当な範囲内に調整し、基材シート1からの安定的な剥離性を確保するために熱転写性保護層7の下層に設けられるものであり、上記の条件さえ満たしていれば必ずしも必要ではない。
離型層8の材料としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子、塩化ゴム、環化ゴム等の天然ゴム誘導体や、天然ワックス、合成ワックス等のワックス類、ニトロセルロース、セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等の繊維素誘導体、アクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリアセタール系、塩素化ポリオレフィン系、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体系等の熱可塑性樹脂、メラミン系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂等からなる離型剤を挙げることができる。
なお、耐熱滑性層2、熱転写性インク層3〜5、離型性付与層6、熱転写性保護層7、離型層8は、いずれも従来公知の塗布方法にて、塗布、乾燥することで形成可能である。前記各層の塗布方法の一例を挙げると、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、リバースロールコート法を挙げることができる。
以上のように、上記実施形態に係る熱転写シート10であれば、熱転写性インク層の画像形成の熱転写の前に離型性付与層6の離型剤を付与する熱転写工程を加えることで、熱転写時に離型性付与層6に含まれる離型剤を受容層に移行させることが可能で、受容層側の離型性を向上させることができる。よって、高速印画時における転写感度が高く、印画における異常転写を防止できる。
以下、本発明の実施形態を具体的な実施例1〜5により説明する。
<実施例1>
<耐熱滑性層付基材シートの作製>
基材シートとして、厚さ4.5μmの片面易接着付きポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。これに耐熱滑性層として、ポリビニルアセタール樹脂(25質量部)とイソシアネート硬化剤(1.1質量部)と滑剤(1質量部)とを、メチルエチルケトン(36質量部)とトルエン(36質量部)とからなる混合溶剤に溶解させて、塗工液を作製した。作製した塗工液を基材シートの非易接着面の側にダイレクトグラビアコートにより乾燥膜厚1.0μmになるように形成し、耐熱滑性層付基材シートを得た。
<熱転写性インク層の塗工液の作製>
C.I.ソルベントイエロー93(3.0質量部)とC.I.ソルベントイエロー16(1.0質量部)とポリビニルアセタール樹脂(5.0質量部)とアミノ変性シリコーンオイル(0.2質量部)とを、メチルエチルケトン(45質量部)とトルエン(45質量部)とからなる混合溶剤に溶解させて、熱転写性インク層(イエロー)の塗工液を作製した。
C.I.ディスパースレッド60(1.5質量部)とC.I.ディスパースバイオレット26(1.5質量部)とポリビニルアセタール樹脂(5.0質量部)とアミノ変性シリコーンオイル(0.2質量部)とを、メチルエチルケトン(46質量部)とトルエン(46質量部)とからなる混合溶剤に溶解させて、熱転写性インク層(マゼンタ)の塗工液を作製した。
C.I.ソルベントブルー63(1.5質量部)とC.I.ソルベントブルー36(1.5質量部)とポリビニルアセタール樹脂(5.0質量部)とアミノ変性シリコーンオイル(0.2質量部)とを、メチルエチルケトン(46質量部)とトルエン(46質量部)とからなる混合溶剤に溶解させて、熱転写性インク層(シアン)の塗工液を作製した。
<離型性付与層の塗工液の作製>
ポリビニルアセタール樹脂(5.0質量部)とアミノ変性シリコーンオイル(0.5質量部)とを、メチルエチルケトン(46質量部)とトルエン(46質量部)とからなる混合溶剤に溶解させて、離型性付与層の塗工液を作製した。
<離型層の塗工液の作製>
ポリビニルアルコール(20質量部)を、イソプロピルアルコール(20質量部)と蒸留水(60質量部)との混合液に溶解させて、離型層の塗工液を作製した。
<熱転写性保護層の塗工液の作製>
アクリル樹脂(30質量部)とトリアジン系紫外線吸収剤(3質量部)とヒンダードアミン系光安定剤(0.1質量部)とを、メチルエチルケトン(50質量部)とトルエン(50質量部)とからなる混合溶剤に溶解させて、熱転写性保護層の塗工液を作製した。
上記のように作製された塗工液をダイレクトグラビアコート法により基材シートの易接着面の側に、熱転写性インク層(イエロー)を乾燥膜厚1.0μm、離型性付与層(イエロー−マゼンタ間)を乾燥膜厚0.5μm、熱転写性インク層(マゼンタ)を乾燥膜厚1.0μm、離型性付与層(マゼンタ−シアン間)を乾燥膜厚0.5μm、熱転写性インク層(シアン)を乾燥膜厚1.0μm、離型層を乾燥膜厚0.5μmで順次形成した後、離型層上に、熱転写性保護層を乾燥膜厚1.5μmで積層して、実施例1の熱転写シートを作製した。
<実施例2>
離型性付与層のアミノ変性シリコーンオイルの添加量を0.25質量部にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の熱転写シートを作製した。
<実施例3>
離型性付与層のアミノ変性シリコーンオイルの添加量を0.05質量部にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の熱転写シートを作製した。
<実施例4>
離型性付与層のアミノ変性シリコーンオイルの替わりにポリエーテル変性シリコーンオイルにした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の熱転写シートを作製した。
<実施例5>
離型性付与層のアミノ変性シリコーンオイルの添加量を0.04質量部にした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の熱転写シートを作製した。
<比較例1>
離型性付与層にアミノ変性シリコーンオイルを添加しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の熱転写シートを作製した。
<比較例2>
離型性付与層のアミノ変性シリコーンオイルの替わりにパーフルオロアルキル基含有オリゴマーにした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の熱転写シートを作製した。
<性能評価>
異常転写評価のために画像形成テストを行った。昇華型熱転写プリンターを用い、受容層を備えた感熱転写受容シートと、上記実施例1〜5の熱転写シート及び比較例1、2の熱転写シートを用いて行った。印画プログラムは、熱転写性インク層各色(イエロー、マゼンタ、シアンの3色)に加え離型性付与層(イエロー−マゼンタ間、マゼンタ−シアン間の2色)に連続で熱エネルギーがかかるように5色印画のプログラムを用い、35℃85%RHの環境下で画像形成を行った。
画像としては、黒ベタ形成する最高出力を100%として、熱転写性インク層については各色とも100%(黒ベタ)、50%(グレー)、20%(明るいグレー)の出力で形成される3画像について印画を行った。離型性付与層については、30%の出力で離型剤の移行を行った。こうして、印画された印画物について異常転写の評価を行った。その結果を表1に示す。
<評価基準>
異常転写の評価は、以下の基準にて行った。なお、許容値は、△以上である。
○:被転写体への異常転写は、認められない
△:被転写体への異常転写は、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写は、認められる
Figure 0005794058
表1に示す結果から、異常転写について、変性シリコーンオイルとバインダとを含む離型性付与層を設けた実施例1〜5の熱転写シートにおいては、実用上問題はなかった。アミン変性シリコーンオイルの添加量については、0.5〜10%で良好であった。0.4%であると高エネルギーでは僅かに異常転写が確認されたが、実用上問題ないレベルであった。ポリエーテル変性シリコーンオイルについても、0.5%の添加で実用上問題ないレベルであった。
一方、離型剤を添加していない比較例1は、離型性の不足により異常転写が発生したものだと思われる。また、フッ素系離型剤を使用した比較例2では、比較例1と比べると若干の良化は確認できるが、明らかな異常転写が発生した。変性シリコーンオイルと同じプロセスで印画を行っているにもかかわらず、変性シリコーンオイルと比較して熱エネルギーによる離型剤の移行が起こりにくい。結果として、受容層側の離型性の不足により異常転写が発生したものだと考えられる。
本発明の実施形態に係る熱転写シート10は、プリンターの高速・高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等に広く利用され得る。
1…基材シート
1a…基材シートの非易接着面
1b…基材シートの易接着面
2…耐熱滑性層
3…熱転写性インク層(イエロー)
4…熱転写性インク層(マゼンタ)
5…熱転写性インク層(シアン)
6…離型性付与層
7…熱転写性保護層
8…離型層
10…熱転写シート

Claims (2)

  1. 一方向に長い基材シートの一方の面に形成された耐熱滑性層と、
    前記基材シートの他方の面に形成された昇華性熱転写性インク層と熱転写性保護層と熱移行性の離型性付与層と、
    を備え、
    前記昇華性熱転写性インク層は、熱昇華性染料と第1のバインダとを含み、且つ、少なくとも、イエロー、マゼンタ、シアンの各色相を呈し所定の並び順で配置された複数種の昇華性熱転写性インク層を有し、
    前記離型性付与層は、少なくとも変性シリコーンオイルと第2のバインダとを含み、
    前記熱転写性保護層は、離型層に積層され、前記複数種の昇華性熱転写性インク層の末尾の昇華性熱転写性インク層に続いてその隣に配置され、
    前記所定の並び順で配置された複数種の昇華性熱転写性インク層の先頭から末尾までの昇華性熱転写性インク層どうしの間全てに前記離型性付与層のみが配置されることを特徴とする熱転写シート。
  2. 前記離型性付与層の前記変性シリコーンオイルは、前記第2のバインダ100質量部に対して、0.5質量部以上、10質量部以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の熱転写シート。
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