JP6269194B2 - 熱転写シート - Google Patents

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Description

本発明は、熱転写方式のプリンタに用いられる熱転写インク層を設けた熱転写シートに関する。
熱転写シートは、サーマルリボンとも呼ばれ、熱転写方式のプリンタの所謂インクリボンとして用いられている。このような熱転写シートは、例えば基材シートの一方の面に熱転写インク層が、他方の面にバックコート(耐熱滑性層)がそれぞれ少なくとも設けられてなるものである。
このような構成の熱転写シートを使用し、プリンタのサーマルヘッドから加えられる熱によって熱転写インク層の一部を溶融(溶融転写方式)させるか、あるいは熱転写インク層中の一部の昇華性染料を昇華(昇華転写方式)させることにより、被転写体側に熱転写記録を行うことができる。
現在、感熱転写方式の中でも昇華転写方式は、プリンタの高機能化と併せて各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等に広く利用されている。
このような用途の多様化と共に、小型化、高速化、低コスト化、また、得られる印画物への耐久性を求める声も大きくなり、近年では、基材シートの同じ側に印画物への耐久性を付与する保護層等が重ならないように設けられた複数の熱転写層をもつ熱転写シートが多く普及してきている。
このように多方面において広く利用されるようになってきている熱転写方式に使用されるインクリボンの生産においては、巻き替え工程が含まれる。
例えば昇華性のインクリボンにおいては、基材シート上に昇華性染料を含有する熱転写インク層を印刷法により積層した直後に一次ロールとして巻き付け、しかる後に巻き替えを行って製品ロールを作製している。
このような一連の製造工程において、一次ロールの巻き付けに際しては熱転写インク層がインクリボンの裏面に触れ、裏面の耐熱滑性層が汚染され、巻き替えの時に一次ロールの巻き付け段階で汚染された耐熱滑性層が熱転写インク層及び透明な熱転写保護層に触れ、その表面が汚染されることがある。
このような汚染を低減させるために様々な方法が検討されている。例えば基材シート上に2層構成の熱転写インク層を積層し、表面側のインク層の染料濃度を基材シート側のインク層の染料濃度より低くする方法が提案されている(特許文献1)。
しかし、染料濃度を低下させたインク層を表面側に設けるような場合や、インク層表面に染料を含まない層を設けるような場合には、熱転写記録の色感度が上がらず、高発色の記録を行うことが難しくなり、必要とされる転写濃度を得るためには、熱転写シートの搬送速度を下げたり、高感度でより発色の良い染料を用いなければならず、種々の制約がある。
特許第2633836号公報
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、高発色での転写記録が可能でありながら、製造時の巻き替えの際に裏面汚染が発生し辛い熱転写シートを提供することにある。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、長尺基材シートの一方の面に下引き層及び離型層を長手方向へ順次設け、他方の面には耐熱滑性層を設け、前記下引き層上に、イエロー、マゼンタ、シアンの3色、またはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色からなる熱転写インク層を長手方向へ順次積層し、
前記離型層上に熱転写保護層を積層した熱転写シートであって、
前記下引き層が水溶性高分子を含み、前記耐熱滑性層には水分吸収剤がバインダ樹脂100質量部に対し、0.4〜10.5質量部添加され
前記水分吸収剤がゼオライトであることを特徴とする熱転写シートである。
また、請求項に記載の発明は、前記熱転写インク層が、熱昇華性染料とバインダとからなる昇華性熱転写インク層であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写シートである。
請求項1記載の発明によれば、基材シートの一方の面に、下引き層を設け、前記下引き層上にイエロー、マゼンタ、シアンの3色またはブラックを含む4色の熱転写インク層と、離型層及び熱転写保護層の積層体からなる層を長手方向へ順次設け、前記基材シートの他方の面に耐熱滑性層が積層されてなる熱転写シートにおいて、前記下引き層が水溶性高分子を含む層からなり、前記耐熱滑性層に水分吸収剤がバインダ樹脂100質量部に対し、0.4〜10.5質量部添加されていることを特徴とする熱転写シートとすることによって、裏面汚染を抑制し、色感度が高い、熱転写シートを提供することが可能となり、前記水分吸収剤がゼオライトであることが特徴とする熱転写シートとすることによって、さらに裏面汚染を抑制した熱転写シートの提供が可能となる。
また、前記水溶性高分子が少なくともポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンまたはポリビニルピロリドンの共重合体を含む層であることを特徴とする請求項1記載の熱転写シートとすることによって、さらに色感度が高い熱転写シートを提供することが可能となる。
請求項記載の発明によれば、前記熱転写インク層が、熱昇華性染料とバインダとからなる昇華性熱転写インク層であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写シートとすることによって、階調性表現をさらに向上させた熱転写シートの提供が可能となる。
本発明の一実施形態に係る熱転写シートの側断面概念図。
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。本発明の熱転写シートの構成は図1に断面を示したように、基材シート1、下引き層2、熱転写インク層(イエロー)3、熱転写インク層(マゼンタ)4、熱転写インク層(シアン)5、熱転写保護層6、離型層7、耐熱滑性層8からなっている。
基材シート1の材料としては、熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度が要求されるので、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルムや、コンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独で又は組み合わせた複合体を使用することが可能であるが、中でも、物性面、加工性、コスト面などを考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
また、その厚さは、操作性、加工性を考慮し、2〜50μmの範囲のものが使用可能で、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2〜9μm程度のものが好ましい。
また、基材シート1においては、下引き層2、耐熱滑性層8、引き層と耐熱滑性層上に、接着処理を施すことも可能である。接着処理としては、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、プラズマ処理、プライマー処理等の公知の技術を適用することができ、それらの処理を二種以上併用することもできる。
本発明では、基材シート1と下引き層2との接着性を高めることが有効であり、コスト面からもプライマー処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
下引き層2は、基材シート1と熱転写インク層との間に設けられる層であって、熱転写インク層と基材の密着性の向上あるいは転写時における色材の基材側への移行を防止することを目的とした層である。
ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を主成分として含む塗布液を、塗布、乾燥して形成される。また、ポリビニルアルコールの他にポリビニルピロリドンまたはポリビニルピロリドンの共重合体あるいは変性体を加えることによって、熱転写シートの耐熱性、耐湿性が向上する。
このような下引き層2を形成することによって熱転写インク層に使用する色材を増やすことなく高濃度の印画物が得られる熱転写シートとなる。
下引き層2に用いるポリビニルアルコールとしては、例えば、クラレポバールPVA−235(クラレ社製)、クラレポバールPVA−117(クラレ社製)クラレポバールPVA−124(クラレ社製)ゴーセノールKH−20(日本合成化学社製)、ゴーセノールN−300(日本合成化学社製)、等のポリビニルアルコール、アセトアセチル基を有し、反応性に富むアセトアセチル化ポリビニルアルコールであるゴーセファイマーZ−200、Z−320(日本合成化学社製)や、ポリビニルアルコールの一部のアルコール基をアセタール変性した水系ポリビニルアセタールエスレックKXシリーズ(積水化学社製)、エスレックKWシリーズ(積水化学社製)等が挙げられる。
ポリビニルピロリドンとしては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等のビニルピロリドンの単独重合体(ホモポリマー)またはこれらの共重合体が挙げられる。さらには変性ポリビニルピロリドン樹脂などがあげられる。変性ポリビニルピロリドン樹脂は、N−ビニルピロリドン系モノマーと他のモノマーとの共重合体である。
なお、共重合形態は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等特に限定されるものではない。上記のN−ビニルピロリドン系モノマーとは、N−ビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等)及びその誘導体を言うものであって、誘導体としては、例えばN−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチルピロリドン、N−ビニル−3−ベンジルピロリドン等のピロリドン環に置換基を有するものが挙げられる。
N−ビニルピロリドン系モノマーと共重合するモノマー成分は、下記のようなビニル重合性モノマーが挙げられる。例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、塩化ビニリデン、四ふっ化エチレン、ふっ化ビニリデン等が挙げられる。
下引き層の乾燥後の厚さは、一概に限定されるものではないが、0.10μm以上0.30μm以下の範囲内であることが好ましい。0.10μm未満では、熱転写インク層積層時の劣化により、高速印画時における転写感度が不足し、基材シートあるいは熱転写インク層との密着性に問題を抱える不安がある。一方、0.30μm以上では、熱転写シート自体の色感度低下に影響し、高速印画時における転写濃度が不足する可能性がある
次に、熱転写インク層は、従来公知のもので対応でき、例えば、熱移行性染料、バインダ樹脂、溶剤などを配合して熱転写インク層形成用の塗布液を調製し、塗布、乾燥することで形成される。熱転写インク層の乾燥後の厚みは、0.5〜1.0μm程度が適当である。
前記熱転写インク層の熱移行性染料は、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料であれば、特に限定されるわけではなく、例えば、イエロー成分としては、ソルベントイエロー56,16,30,93,33、ディスパースイエロー201,231,33等を挙げることができる。
マゼンタ成分としては、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等を挙げることができる。
シアン成分としては、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、あるいはC.I.ディスパースブルー24等を挙げることができる。墨の染料としては、前記の各染料を組み合わせて調色するのが一般的である。
熱転写インク層に含まれるバインダ樹脂は、従来公知の樹脂がいずれも使用でき、特に限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹
脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。
昇華転写方式における、熱転写インク層の熱移行性染料とバインダ樹脂との配合比率は、質量基準で、(染料)/(バインダ樹脂)=10/100〜300/100が好ましい。
これは、(染料)/(バインダ樹脂)の比率が、10/100を下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不十分となり良好な熱転写画像が得られず、また、この比率が300/100を越えると、バインダ樹脂に対する染料の溶解性が極端に低下するために、熱転写シートとなった際に、保存安定性が悪くなって、染料が析出し易くなってしまうためである。
また、熱転写インク層4には、性能を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の公知の添加剤が含まれていてもよい。
熱転写保護層6は熱転写インク層と共に面順次で基材シート上設けられ、この熱転写保護層は、熱転写インク層により被転写体上に形成された転写画像の上に熱転写法というプロセスにより熱転写され、紫外線等に対する耐久性を付与する機能を有する必要があるため、紫外線に対する保護と被転写体に対する接着性を兼ね備える接着層、その下層に位置して基材シートから熱転写時に容易に剥離できるようにするための離型層等の複層構成とすることが一般的である。
熱転写保護層を構成するバインダ樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類が挙げられる。これらの中では、アクリル系樹脂、セルロース誘導体が好ましい。
熱転写保護層に添加する紫外線吸収剤としては、従来から、コストや紫外線吸収範囲、種類の多さ、用途範囲等を考慮して、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系のものが多く使用されている。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤はそれを分散しているバインダ樹脂中から昇華して失われる傾向はあるが、トリアジン系の紫外線吸収剤は、ブリードアウトによる紫外線吸収能力の低下を起こさない。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を例示することができる。これらは単独で又は複数を混合して使用すればよい。
また、トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を例示することができる。熱転写保護層の厚み関しては特に制限はなく、必要とされる紫外線吸収能力等を考慮して任意に選択すれば良い。
本発明においては、熱転写保護層中に含有させるこれらの紫外線吸収剤は、バインダ樹脂100質量部に対し1〜20質量部の程度に添加しておくことが好ましい。添加量が1質量部未満の場合、熱転写樹脂層中において十分な紫外線吸収能を発揮することができない場合がある。
また、熱転写保護層には、添加剤としてトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の他に、ヒンダードアミン系光安定剤を添加しておくことが好ましい。
ヒンダードアミン形の光安定剤としては、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート等を例示でき、これらを単独でまたは複数を混合して使用すればよい。
また、熱転写保護層には、紫外線吸収剤、光安定剤の他に、必要に応じて熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、触媒促進剤、半透明化のための光散乱剤、艶調整剤等を添加することができる。
また、透明性を維持する範囲で着色剤を添加することもできる。さらに、酸化防止剤として、フェノール系、イオウ系、リン系の酸化防止剤を添加することもできる。これらの中から任意のものを選択して熱転写保護層中に添加すればよいが、多量添加による表面へのブリードアウトや着色、紫外線吸収剤や光安定剤との相乗・拮抗作用には留意する必要がある。
熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系、硫黄系、肥土レジン系等のものが、難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシシウム等を例示することができる。
離型層7は、熱転写保護層の基材シートからの剥離の重さを適当な範囲内に調整し、基材シートからの安定的な剥離を確保するために設けられるものであり、上記の条件さえ満たしていれば必ずしも設けなくてもよい。
離型層の構成材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子、塩化ゴム、環化ゴム等の天然ゴム誘導体や、天然ワックス、合成ワックス等のワックス類、ニトロセルロース、セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等の繊維素誘導体、アクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリアセタール系、塩素化ポリオレフィン系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の熱可塑性樹脂、メラミン系、エポキシ系、ポリウレタン系等の熱硬化性樹脂等からなる材料を挙げることができる。
耐熱滑性層8は、熱転写時にサーマルヘッドと基材シートとの融着を防止するためのものであり、バインダとなる樹脂、離型性や滑り性を付与する機能性添加剤、充填剤、硬化剤、溶剤などを配合して調製し、塗布、乾燥して形成することができる。特に充填剤の役割は重要で、耐熱滑性層に凹凸をつけることにより、上記特性、すなわち離型性や滑り性を付与することができる。
この耐熱滑性層の乾燥後の厚みは、一概に限定されるものではないが、0.1〜2.0μm程度が適当である。0.1μm未満では、耐熱性が著しく劣り、印画の際の熱や圧力等によりシワが発生する可能性がある。また2.0μm以上では、熱転写シート自体の感度低下に影響し、高速印画時における転写濃度が不足する可能性がある。
耐熱滑性層の一例を挙げると、バインダ樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
機能性添加剤としては、動物系ワックス、植物系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等の界面活性剤等を挙げることができる。
充填剤としては、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート類、およびその誘導体を挙げることができるが、前記機能性添加剤は全て特に限定されるわけではない。
課題となる、一次ロール保管中における熱転写インク層から耐熱滑性層への染料移行は、ロールの保存環境に大きく影響し、高温あるいは高湿条件下であるとその移行性は大きくなる。
本発明では、印画時の染料移行性を向上させるために水系インキからなる下引き層を設
けているがこの水系インキの残留水分や製造環境下における空気中の水分を巻き込むので一次ロール中では一定量の水分を含んだ状態になる。
この水分が熱転写インク層に滞留すると、染料の泳動が起こりやすくなり、裏面汚染を促進させる結果となる。本発明における、耐熱滑性層中に存在する水分吸収剤は、巻き取り直後のロール中に滞留した水分を吸収し耐熱滑性層側に水分を局在化させることにより、裏面汚染を一定時間抑制する効果がある。
本発明で使用できる、水分吸収剤としては、例えば、ゼオライト、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、酸化アルミニウム、シリカゲル等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、吸収力が強いことから、ゼオライト、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及びシリカゲルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、更にはゼオライトが好適である。
水分吸収剤の大きさや形状に特に制限はないが、粒子径が0.5μm〜1μmの大きさが好ましい。粒子径が0.5μm未満の場合、十分な吸湿力を得ることができない場合がある。粒子径が1μmを超える場合、耐熱滑性層のバインダ樹脂が水分吸収剤を保持することができず、印画の際、搬送動作によってサーマルヘッドを汚染してしまう場合がある。
なお、耐熱滑性層、下引き層、熱転写インク層、熱転写保護層、離型層、耐熱滑性層は、いずれも従来公知の塗布方法にて、塗布、乾燥することで形成可能であり、塗布方法の一例を挙げると、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、リバースロールコート法を挙げることができる。
以下、本発明の各実施例および各比較例に用いた材料を示す。
<耐熱滑性層塗液の作製>
下記組成の材料を初めにハイスピードミキサーで混合し、耐熱滑性層の塗工液を作製した。
<耐熱滑性層塗工液>
アクリルポリオール樹脂 25.0質量部ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステル 0.5質量部トルエン 50.0質量部メチルエチルケトン 19.5質量部酢酸エチル 5.0質量部である。
<耐熱滑性層付き基材シートの作製>
基材シートとして、4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、片方の面に上記で作製した。
耐熱滑性層塗液 96.0質量部2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 3.6質量部ゼオライト:3A型モレキュラーシーブ(ユニオン昭和社製) 0.1質量部
(平均粒子径が1μm以下になる様に粉砕)
を5分以上撹拌した塗工液をグラビアコーティング法により、乾燥後の膜厚が1.0μm
になるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、耐熱滑性層付き基材シートを得た。尚、添加したモレキュラーシーブは0.1質量部なので、添加量はバインダ樹脂100質量部に対し、0.42質量部となる。
<下引き層及び熱転写インク層の形成>
耐熱滑性層付き基材シートの耐熱滑性層が設けられた側とは反対の面に、下記組成の下引き層塗工液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の膜厚が0.20μmになるように塗布、乾燥させ下引き層を形成した。
引き続き、その下引き層の上に、下記組成の熱転写インク層塗布液1〜3を面順次に、グラビアコーティング法により、乾燥後の膜厚が0.70μmになるように塗布した後、離型層形成用の塗工液を用いて、グラビアコーティング法により、離型層を乾燥後の膜厚が0.3μmで面順次に形成し、さらに、離型層上に熱転写保護層用の塗工液を用いて、グラビアコーティング法により熱転写保護層を乾燥後の膜厚が2.0μmで設け実施例1の熱転写シートを得た。
<下引き層塗液>
水溶性ポリエステル樹脂 5.0質量部純水 76.0質量部イソプロピルアルコール 19.0質量部
<熱転写インク層塗液:イエロー>
C.I.ソルベントイエロー93 2.0質量部C.I.ソルベントイエロー13 3.0質量部ポリビニルアセタール樹脂 5.0質量部トルエン 45.0質量部メチルエチルケトン 45.0質量部
<熱転写インク層塗液:マゼンタ>
C.I.ディスパースレッド60 3.0質量部C.I.ディスパースバイオレット26 2.0質量部ポリビニルアセタール樹脂 5.0質量部トルエン 45.0質量部メチルエチルケトン 45.0質量部
<熱転写インク層塗液:シアン>
C.I.ソルベントブルー63 3.0質量部C.I.ソルベントブルー36 2.0質量部ポリビニルアセタール樹脂 5.0質量部トルエン 45.0質量部メチルエチルケトン 45.0質量部
<離型層塗布液>
ポリビニルアルコール 20.0質量部イソプロピルアルコール 20.0質量部蒸留水 60.0質量部
<熱転写保護層塗布液>
アクリル樹脂 30.0質量部トリアジン系紫外線吸収剤 5.0質量部ヒンダードアミン系光安定剤 0.1質量部メチルエチルケトン 35.0質量部トルエン 30.0質量部である。
実施例1で作製した熱転写シートにおいて、ゼオライトの添加量を1.0部にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の熱転写シートを作製した。尚、添加したモレキュラーシーブは1.0質量部なので、添加量はバインダ樹脂100質量部に対し、4.2質量部となる。
実施例1で作製した熱転写シートにおいて、ゼオライトの添加量を2.5部にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の熱転写シートを作製した。尚、添加したモレキュラーシーブは2.5質量部なので、添加量はバインダ樹脂100質量部に対し、10.42質量部となる。
実施例1で作製した熱転写シートにおいて、ゼオライトの平均粒子径を0.5μm以下にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の熱転写シートを作製した。
実施例2で作製した熱転写シートにおいて、ゼオライトの平均粒子径を0.5μm以下にした以外は、実施例2と同様にして、実施例5の熱転写シートを作製した。
実施例3で作製した熱転写シートにおいて、ゼオライトの平均粒子径を0.5μm以下にした以外は、実施例3と同様にして、実施例6の熱転写シートを作製した。
実施例1で作製した熱転写シートにおいて、下引き層塗液を
ポリビニルアルコール 5.0質量部純水 76.0質量部イソプロピルアルコール 19.0質量部とし、それ以外は同じとして実施例7の熱転写シートを作製した。
実施例1で作製した熱転写シートにおいて、下引き層塗液を
ポリビニルピロリドン 5.0質量部純水 76.0質量部イソプロピルアルコール 19.0質量部とし、それ以外は同じとして実施例8の熱転写シートを作製した。
<比較例1>
実施例1で作製した熱転写シートにおいて、ゼオライトの添加量を0.05部にした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の熱転写シートを作製した。尚、添加したモレキュラーシーブは0.05質量部なので、添加量はバインダ樹脂100質量部に対し、0.21部質量となる。
<比較例2>
実施例1で作製した熱転写シートにおいて、ゼオライトを添加しない以外は、実施例1と同様にして、比較例2の熱転写シートを作製した。
<比較例3>
実施例2で作製した熱転写シートにおいて、下引き層を設けない以外は、実施例2と同様
にして、比較例3の熱転写シートを作製した。
<性能評価>
実施例及び比較例に係る熱転写シートを作製した後にそれぞれを一次ロールとして巻き付けた状態で25℃60%RHで48時間養生してから、製品ロールへの巻き換えを行い、性能評価用のロールを作製し、しかる後に40℃50%RHの環境下で48時間養生した。
次に、養生の終わった性能評価用ロールを熱転写プリンタにセットし、熱転写保護層のみ転写した白ベタ印画、及び黒ベタ印画を行い、白ベタの印画物については外観評価を行い、黒ベタ印画については反射濃度の測定を行った。
<評価結果>
白ベタ印画物については、目視にて外観評価を行い、
○:染料による汚染がないもの
△:染料による汚染が確認できるが実用上問題ないもの
×:明らかに染料による汚染が確認できるもの
として評価を行った。
また、黒ベタ印画物の濃度測定は、光濃度計:X−right528(エックスライト社製)を用い、ビジュアルフィルターにて反射濃度測定を行い、
○:反射濃度が2.00以上のもの
×:2.00未満のもの
として評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
表1に示す結果から、実施例1〜8の熱転写シートは、耐熱滑性層に水分吸収剤を使用していない、あるいは下引き層を設けていない、比較例2〜3の熱転写シートと比較して製造時の裏面汚染が少なく、かつ印画時の転写濃度が高いことがわかる。また、水分吸収剤の使用量が十分ではない比較例1の熱転写シートは、ロール内の水分を局在させることができず、裏面汚染が確認された。
本発明により得られる熱転写シートは、熱転写方式のプリンタに使用されるインクリボンのことであり、プリンタの高速・高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等、広く利用可能である。
1・・・基材シート
2・・・下引き層
3・・・熱転写インク層(イエロー)
4・・・熱転写インク層(マゼンタ)
5・・・熱転写インク層(シアン)
6・・・熱転写保護層
7・・・離型層
8・・・耐熱滑性層

Claims (2)

  1. 長尺基材シートの一方の面に下引き層及び離型層を長手方向へ順次設け、他方の面には耐熱滑性層を設け、
    前記下引き層上に、イエロー、マゼンタ、シアンの3色、またはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色からなる熱転写インク層を長手方向へ順次積層し、
    前記離型層上に熱転写保護層を積層した熱転写シートであって、
    前記下引き層が水溶性高分子を含み、前記耐熱滑性層には水分吸収剤がバインダ樹脂100質量部に対し、0.4〜10.5質量部添加され
    前記水分吸収剤がゼオライトであることを特徴とする熱転写シート。
  2. 前記熱転写インク層が、熱昇華性染料とバインダとからなる昇華性熱転写インク層であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写シート。
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