JP6705265B2 - 熱転写記録媒体 - Google Patents

熱転写記録媒体 Download PDF

Info

Publication number
JP6705265B2
JP6705265B2 JP2016077301A JP2016077301A JP6705265B2 JP 6705265 B2 JP6705265 B2 JP 6705265B2 JP 2016077301 A JP2016077301 A JP 2016077301A JP 2016077301 A JP2016077301 A JP 2016077301A JP 6705265 B2 JP6705265 B2 JP 6705265B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
thermal transfer
primer layer
polyester resin
recording medium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016077301A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017185725A (ja
Inventor
康寛 宮内
康寛 宮内
悟大 福永
悟大 福永
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toppan Inc
Original Assignee
Toppan Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toppan Inc filed Critical Toppan Inc
Priority to JP2016077301A priority Critical patent/JP6705265B2/ja
Publication of JP2017185725A publication Critical patent/JP2017185725A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6705265B2 publication Critical patent/JP6705265B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Thermal Transfer Or Thermal Recording In General (AREA)

Description

本発明は、熱転写記録媒体に関する。
一般に、熱転写記録媒体は、熱転写方式のプリンタに使用され、サーマルリボンと呼ばれるインクリボンのことである。この熱転写記録媒体は、基材の一方の面に熱転写層、その基材の他方の面に耐熱滑性層を設けた構成となっている。ここで熱転写層は、インクの層であって、プリンタのサーマルヘッドで発生する熱によって、そのインクが昇華(昇華転写方式)あるいは溶融(溶融転写方式)して、熱転写受像シート側に転写されるものである。
現在、熱転写方式の中でも昇華転写方式は、プリンタの高機能化に伴い、各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等、広く利用されている。そういった用途の多様化と共に、小型化、高速化、低コスト化、また得られる出力物への耐久性を求めるユーザーからの要望も大きくなり、近年では基材の同じ側に、出力物への耐久性を付与する保護層等と、その保護層等と重ならないようにして設けられた複数の熱転写層とを備えた熱転写記録媒体がかなり普及してきている。
このような状況の中、用途の多様化と普及拡大に伴い、よりプリンタの印画速度の高速化に対応するため、従来の熱転写層より転写感度の高い熱転写層が求められるようになってきた。また、保護層としては、耐可塑剤性や耐アルコール性といった性能が求められるようになってきた。
このような要求に対して、例えば、特許文献1では、剥離層に、(1)フェノキシ樹脂と、(2)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリエステルウレタン樹脂の何れかを含有することで、高い光沢感と耐可塑剤性等を有する保護層転写シートが提案されている。
特開2012−200950号公報
しかしながら、昨今の昇華転写方式の高速プリンタを用いて、特許文献3に記載されている保護層転写シートを用いて印画を行い、出力物表面の耐久性を評価したところ、耐可塑剤性は実用上不十分なレベルであることがわかった。
本発明は、そのような点に着目してなされたもので、出力物表面が耐可塑剤性や耐アルコール性を有する出力物を得ることができる、優れた熱転写記録媒体を提供することを目的としている。
本発明の一態様に係る熱転写記録媒体は、基材と、前記基材の一方の面に形成された耐熱滑性層と、前記基材の他方の面における第一の領域に形成された熱転写インク層と、前記基材の他方の面における第二の領域に形成された熱転写保護層と、を備え、前記熱転写インク層は、前記基材上に形成された第一のプライマー層と、前記第一のプライマー層上に形成された下引き層と、前記下引き層上に形成された染料層と、を有し、前記熱転写保護層は、前記基材上に形成された剥離層と、前記剥離層上に形成された第二のプライマー層と、前記第二のプライマー層上に形成された接着層と、を有し、前記第二のプライマー層は、2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有している。
本発明の一態様によれば、熱転写保護層に含まれる第二のプライマー層が2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有しているので、出力物表面が耐可塑剤性や耐アルコール性を有する出力物を得ることが可能となる。
本発明の実施形態に係る熱転写記録媒体の側断面図である。 本発明の実施形態に係る熱転写記録媒体の平面図である。
以下、本発明の実施形態に係る熱転写記録媒体の構造について説明する。なお、本実施形態は、以下に記載する実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づく設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本実施形態の範囲に含まれるものである。
また、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態について、完全な理解を提供するように、特定の細部について記載する。しかしながら、かかる特定の細部が無くとも、一つ以上の実施形態が実施可能であることは明確である。また、図面を簡潔なものとするために、周知の構造及び装置を、略図で示す場合がある。また、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
(熱転写記録媒体1の全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る熱転写記録媒体1の側断面を模式的に示した図である。本実施形態に係る熱転写記録媒体1は、基材2と、基材2の一方の面に形成された耐熱滑性層3、基材2の他方の面における第一の領域R1に形成された熱転写インク層4と、基材2の他方の面における第二の領域R2に形成された熱転写保護層5とを少なくとも備えている。また、熱転写インク層4は、基材2上に形成された第一のプライマー層6aと、第一のプライマー層6a上に形成された下引き層7と、下引き層7上に形成された染料層8とを少なくとも備えている。また、熱転写保護層5は、基材2上に形成された剥離層9と、剥離層9上に形成された第二のプライマー層6bと、第二のプライマー層6b上に形成された接着層10とを少なくとも備えている。
図2は、本発明の実施形態に係る熱転写記録媒体1の平面構造を模式的に示した図である。図2に示すように、第一の領域R1と、第二の領域R2とは、隣り合って配置されている。そして、第一の領域R1に形成された染料層8は、第二の領域R2に形成された接着層10側に向かって、イエロー(Y)の染料を含有する第一の染料層8aと、マゼンタ(M)の染料を含有する第二の染料層8bと、シアン(C)の染料を含有する第三の染料層8cとをこの順に備えている。換言すると、イエロー(Y)の染料を含有する第一の染料層8aと、マゼンタ(M)の染料を含有する第二の染料層8bと、シアン(C)の染料を含有する第三の染料層8cと、接着層10とは、図2に示すように、面順次に設けられている。
以下、上述した各層の詳細について説明する。
(基材2)
基材2は、従来公知のもので対応でき、例えば、機械的強度、柔軟性、耐熱性などを有することが好ましい。基材2に用いられる材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリイミド、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチックフィルム、コンデンサーペーパー、パラフィン紙等の紙類を挙げることができるが、特に好ましいのはポリエチレンテレフタレートである。なお、基材2の厚みは、2〜25μm、より好ましくは2〜12μmである。
(耐熱滑性層3)
耐熱滑性層3は、サーマルヘッドの熱による基材2の熱収縮や、サーマルヘッドとの摩擦による基材2の破断を防止するために、基材2の熱転写インク層4を設ける面の反対側の面に設けられる。耐熱滑性層3に用いられるバインダ樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。耐熱性を向上させる目的で、例えば、架橋剤を併用してもよい。また、滑性を向上させる目的で、例えば、シリコーンオイル等の滑剤等を併用してもよく、上記樹脂をシリコーン変性等したものを使用してもよい。また、基材2と耐熱滑性層3との間の密着性を向上させるために、基材2の上に易接着層(図示せず)を設け、その上に耐熱滑性層3を設けてもよい。耐熱滑性層3の乾燥後の塗布量は、熱転写時の摩擦や転写適正、コスト等を考慮すると0.1〜2.0g/mが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5g/mである。
ここで、耐熱滑性層3の乾燥後の塗布量とは、耐熱滑性層形成用の塗布液を塗布、乾燥した後に残った固形分量のことをいう。また、後述するプライマー層6(第一のプライマー層6a及び第二のプライマー層6b)、下引き層7、染料層8、剥離層9、接着層10の乾燥後の塗布量も、同様に各塗布液を塗布、乾燥した後に残った固形分量のことをいう。
(染料層8)
染料層8は、熱転写記録媒体1の耐熱滑性層3側からサーマルヘッドにより加熱することで、被熱転写体(図示せず)上に、染料層8に含有される染料を転写する機能を持つ。
染料層8は、昇華性染料と、バインダ樹脂とを少なくとも含有する。昇華性染料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的には、第一の染料層8aに含まれるイエローとしては、例えば、カヤセットイエローAG、カヤセットイエローTDN、PYT52、プラストイエロー8040、ホロンブリリアントイエローS6GLPI等が挙げられる。また、第二の染料層8bに含まれるマゼンタとしては、例えば、カヤセットレッドB、カヤセットレッド130、セレスレッド7B、マクロレックスレッドバイオレットR、C.I.ディスパースレッド60等を挙げられる。また、第三の染料層8cに含まれるシアンとしては、例えば、カヤセットブルー714、セレスブルーGN、MSブルー50、TSD−44、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36等が挙げられるが、本実施形態は、これらに限定されるものではない。
昇華性染料との組み合わせで染料層8に用いるバインダ樹脂としては、従来公知のものが使用できる。そのバインダ樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリカーボネート等の耐熱性、染料移行性等に優れた樹脂が使用できる。また、より耐熱性、染料移行性に優れた樹脂として、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。また、これらの樹脂は単独、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
昇華性染料との組み合わせで染料層8に用いるバインダ樹脂のガラス転移温度としては、50℃以上が好ましい。そのバインダ樹脂のガラス転移温度が50℃以下であると、例えば、熱転写時に染料層8が被熱転写体に融着しやすくなるため好ましくない。また、染料層8に含まれる昇華性染料とバインダ樹脂との比率は、100:50〜100:300が好ましい。
また、染料層8は、架橋剤を含有してもよい。昇華性染料とバインダ樹脂との組み合わせで染料層8に用いる架橋剤としては、従来公知のものが使用できる。架橋剤を含有させることで耐熱性が向上し、熱転写記録媒体1の変形を防止できる。より耐熱性に優れた架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネートが挙げられ、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系のポリオール樹脂やセルロース系樹脂、アセタール樹脂等の組合せで用いられる。
また、染料層8は、離型剤を含有してもよい。離型剤を含有させると、熱転写層表面の形状による離型性がさらに向上する。離型剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、リン酸エステル系、といった各種オイルや、界面活性剤や、金属酸化物、シリカ等の各種フィラー等が使用できる。上記材料の中でも、シリコーンオイルを使用することが好ましい。
また、染料層8は、粒子を含有してもよい。染料層8に含有させる粒子としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムなどの無機系粒子や、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子などの有機系粒子が挙げられる。
染料層8の乾燥後の塗布量は、0.1〜2.0g/mであるが、好ましくは0.2〜1.0g/m程度である。0.1g/mを下回ると十分な発色感度が得られず、また、2.0g/mを越えると発色感度が悪くなるという欠点が生じる。
その他、染料層8には、必要に応じて、例えば、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
(下引き層7)
下引き層7は、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルと、側鎖にグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンを含有する。
このような下引き層7を形成し、かつ基材2と下引き層7との間に、後述するプライマー層6(第一のプライマー層6a)を形成することによって、異常転写が発生せず、転写感度が高くて高濃度の出力物が得られる。
ここで「異常転写」とは、熱転写時に基材2から染料層8が剥離し、染料層8と被熱転写体とが融着する現象である。
下引き層7には、上述した異常転写の防止のみならず、転写感度を向上させるための染料バリア性と、さらには通常溶剤系からなる染料層8を下引き層7上に積層させるために耐溶剤性とが求められる。このため、下引き層7の主成分を、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルと、側鎖にグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンとしている。
ここで「染料バリア性」とは、染料層8に含まれる染料が基材2側に拡散するのをブロック(防止)する性質を意味する。また「主成分」とは、本発明の効果を損なわない限り、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルと、側鎖にグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンに、さらに他の成分が添加されていてもよい旨を表しており、前述の共重合体及びポリビニルピロリドンが、下引き層形成時の全体からみて50重量%超で含まれることを意味する。ここで、下引き層7に占める前述の共重合体及びポリビニルピロリドンの割合は、好ましくは90重量%以上である。
下引き層7に含まれる、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステル成分は、プライマー層6との密着性を得るために必須となる。また、下引き層7に含まれる、側鎖にグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリル成分は、染料バリア性や耐溶剤性を得るために必須となる。ここで、それぞれの成分を単にブレンドした場合は、アクリル成分とポリエステル成分との相溶性が良好でないため、材料としての安定性に欠ける。さらには、ポリエステル成分が有するプライマー層6との密着性、アクリル成分が有する耐溶剤性や染料バリア性が共に得られず、それぞれの成分を単独で用いた場合よりも性能が低下する結果となる。これは相溶性の悪いポリマー同士のブレンドにより非相溶の海島構造が形成され、密着性を有するポリエステル成分と染料バリア性を有するアクリル成分とが局所的に存在するため(つまり、下引き層7を全体としてみたときに密着性が悪い箇所と染料バリア性が悪い箇所とが存在するため)と考えられる。
一方で、アクリル成分とポリエステル成分とを共重合することにより、相溶性の悪さが改善される。これにより、アクリル成分とポリエステル成分が相分離することなく、下引き層7全体に、アクリル成分とポリエステル成分とが存在するために、それぞれの成分が有する機能(つまり、密着性、耐溶剤性、染料バリア性)が効果的に発現したものと考えられる。
以下、下引き層7に含まれるポリエステル成分の詳細について説明する。
側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルの共重合成分であるジカルボン酸成分は、エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物を必須成分とし、例えば、フタル酸、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、2,5−ジメチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及び、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物以外のジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。これは、芳香族ジカルボン酸の芳香核が、疎水性のプラスチックと親和性が大きいために、密着性の向上、耐加水分解性に優れているからである。なお、本実施形態においては、特にテレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
また、エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン酸−2,7−ジカルボン酸などのアルカリ金属塩(スルホン酸のアルカリ金属塩)及び、これらのエステル形成性誘導体が挙げられ、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩及び、そのエステル形成性誘導体がより好ましく用いられる。これは、スルホン酸基を有することによって耐溶剤性が向上するためである。
スルホン酸基を有するポリエステルの共重合成分であるジグリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコールと炭素数2〜8の脂肪族又は炭素数6〜12の脂環族グリコール等が挙げられる。炭素数2〜8の脂肪族又は炭素数6〜12の脂環族グリコールの具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、p−キシリレングリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を併用してもよい。
以下、下引き層7に含まれるアクリル成分の詳細について説明する。
下引き層7に含まれるアクリル成分としては、例えば、グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーの単独あるいはカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマー単独、あるいは上記モノマーと共重合できる他のラジカル重合性不飽和モノマーが挙げられる。つまり、下引き層7に含まれるアクリル成分として、側鎖にグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有しているモノマーを挙げることができる。
本実施形態では、グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーあるいはカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーが必要となる。これはグリシジル基及びカルボキシル基は、染料との相溶性が悪いため、染料バリア性を有するからである。つまり、アクリル成分として、側鎖にグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するモノマーを用いることによって、転写感度が向上する。さらには、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤及び酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤に対する耐溶剤性が向上する。
また、本実施形態においては、上述したグリシジル基やカルボキシル基が後述するプライマー層6(第一のプライマー層6a)に含まれる水酸基や残存アミン基と反応することで、さらに転写感度が向上する。
グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルといったグリシジルエーテル類などが挙げられる。
また、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
グリシジル基含有あるいはカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーと共重合できるラジカル重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和ニトリル、アリル化合物、含窒素系ビニルモノマー、炭化水素ビニルモノマー又はビニルシラン化合物が挙げられる。
上述のビニルエステルとしては、例えば、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、高級第3級ビニルエステル、塩化ビニル、臭化ビニルが挙げられる。
また、上述の不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ブチル、マレイン酸オクチル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、エチレングリコールジアクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステルが挙げられる。
また、上述の不飽和カルボン酸アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、ブトキシメチロールアクリルアミドが挙げられる。
また、上述の不飽和ニトリルとしては、例えば、アクリロニトリルが挙げられる。
また、上述のアリル化合物としては、例えば、酢酸アリル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、イタコン酸ジアリルが挙げられる。
また、上述の含窒素系ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールが挙げられる。
また、上述の炭化水素ビニルモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ヘキセン、オクテン、スチレン、ビニルトルエン、ブタジエンが挙げられる。
また、上述のビニルシラン化合物としては、例えば、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシシランが挙げられる。
下引き層7におけるポリエステル成分とアクリル成分との共重合比は、質量比で20:80から40:60までの範囲内であることが好ましい。これは、下引き層7において、ポリエステル成分が20%を下回ると、高い印画濃度が得られるがプライマー層6(第一のプライマー層6a)との密着性が不足する傾向になり、ポリエステル成分が40%を超えると、プライマー層6(第一のプライマー層6a)との密着性が向上するものの印画濃度が低下する傾向となるためである。
下引き層7に含まれるポリエステルは、例えば、ジカルボン酸とジグリコールとをエステル化あるいはエステル交換反応後に重縮合反応させる製造方法によって得ることができ、その製造方法についてはなんら限定されるものではない。
また、下引き層7に含まれるポリエステルとアクリルとの共重合体の製造方法については、なんら限定されるものではない。例えば、乳化重合の場合は、ポリエステル分散液あるいは水溶液を用いてアクリルモノマーを乳化して重合する方法や、ポリエステル分散液あるいは水溶液にアクリルモノマーを滴下しながら重合する方法が挙げられる。
以下、下引き層7に含まれるポリビニルピロリドンの詳細について説明する。
発明者らが見出したように、ポリエステルとアクリルとの共重合体にポリビニルピロリドンを含ませることで、両者(つまり、共重合体とポリビニルピロリドン)をそれぞれ単独で使用した場合と比較して、転写感度が増加するのは、ポリビニルピロリドンが、染料を吸着しやすい性質を持つ共重合体中のスルホン酸基を有するポリエステル部位の近傍に存在することで、染料の吸着を防止したためと考えられる。
また、ポリエステルとアクリルとの共重合体と、ポリビニルピロリドンとの組成比は、質量比で70:30から20:80までの範囲内であることが好ましい。これは、ポリビニルピロリドンの比率が30%を下回ると、高い印画濃度が得られにくくなり、ポリビニルピロリドンの比率が80%を超えると、高い印画濃度が得られにくく、さらには保存安定性が低下するためである。なお、保存安定性の低下は、ポリビニルピロリドンが有する吸湿性に由来する。
このポリビニルピロリドンとしては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等のビニルピロリドンの単独重合体(ホモポリマー)又はこれらの共重合体が挙げられる。さらには、変性ポリビニルピロリドン樹脂などが挙げられる。この変性ポリビニルピロリドン樹脂は、例えば、N−ビニルピロリドン系モノマーと他のモノマーとの共重合体である。なお、共重合形態は、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等であり、特に限定されるものではない。上記のN−ビニルピロリドン系モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等)及びその誘導体が挙げられる。また、その誘導体としては、例えば、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチルピロリドン、N−ビニル−3−ベンジルピロリドン等のピロリドン環に置換基を有するものが挙げられるが、特に限定されるものではない。
N−ビニルピロリドン系モノマーと共重合するモノマー成分としては、例えば、下記のビニル重合性モノマーが挙げられる。そのモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ビニルカプロラクタム、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、塩化ビニリデン、四ふっ化エチレン、ふっ化ビニリデン等が挙げられる。
本実施形態における下引き層7で使用するポリビニルピロリドンは、フィッケンチャーの公式におけるK値で、30以上100以下の範囲内のものであることが好ましい。特に好ましいのは、60以上90以下の範囲内である。上記K値が30未満のポリビニルピロリドンを用いると、印画における転写感度の向上の効果が薄くなり、100超のポリビニルピロリドンを用いると、塗布液の粘度が高まり、塗工適正が低下するので好ましくない。
下引き層7の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、0.05g/m以上0.30g/m以下の範囲内であることが好ましい。下引き層7の乾燥後の塗布量が0.05g/m未満の場合には、染料層8の積層時における下引き層7の劣化により、高速印画時における転写感度が不足する不安がある。
一方、下引き層7の乾燥後の塗布量が0.30g/m超の場合には、熱転写記録媒体1自体の感度は変わらず、印画濃度は飽和する。よって、コスト面の観点から0.30g/m以下であることが好ましい。
(第一のプライマー層6a)
本実施形態に係る熱転写記録媒体1は、熱転写インク層4における基材2と下引き層7の間にプライマー層6(第一のプライマー層6a)を有する。
本実施形態に係るプライマー層6(第一のプライマー層6a)は、2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有する。
このようなプライマー層6を、熱転写インク層4における基材2と下引き層7の間に形成することで、基材/プライマー層/下引き層間の密着性が向上し、異常転写を防止することができる。
これは、ポリエステル樹脂より構成されるプライマー層6が、基材2及び下引き層7との親和性が高いために密着性を有することと、本実施形態に係るプライマー層6を構成する2,6−ジヒドロキシナフタレン、またはビスフェノールA及び4′−オキシビス[フェノール]がベンゼン環を2つ有していることで結晶性が高くなり、その結果として耐熱性が向上するため、高速プリンタ使用時における高エネルギー・高圧力印加の場合においても密着性が低下しないためと考えられる。
<熱転写保護層5>
熱転写保護層5は、基材2の熱転写インク層4側に、面順次に設けられる。熱転写保護層5は、熱転写インク層4により被熱転写体(図示せず)上に形成された画像を保護するための層である。熱転写保護層5は、熱転写法により熱転写記録媒体1から剥離して被熱転写体上に転写される。性能としては、出力物表面の光沢感に加えて、耐光性、耐摩耗性、耐可塑剤性や耐アルコール性等が要求される。
本実施形態の熱転写保護層5は、剥離層9と、プライマー層6(第二のプライマー層6b)と、接着層10とを少なくとも備えている。
(接着層10)
接着層10は、例えば、バインダ樹脂と紫外線吸収剤とを含んでいる。接着層10の厚みは、例えば、0.1g/m〜2.0g/m程度が好ましい。接着層10に含有されるバインダ樹脂としては、熱溶融性かつ透明であること以外に特に限定されるものではなく、従来公知のもので対応できる。上記バインダ樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体を用いることが可能である。これらの樹脂は単独、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
接着層10に含有される紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、トリアジン系等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また、複数を混合して使用してもよい。また、トリアジン系の紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また、複数を混合して使用してもよい。上記紫外線吸収剤は、バインダ樹脂100重量部に対し、1〜50重量部添加されることが好ましい。添加量が1重量部未満の場合、十分な紫外線吸収能を発揮することができない場合がある。一方、50重量部以上添加すると、紫外線吸収剤自体の色味が目立つようになり、熱転写保護層5の透明性が失われてくる。また、高価な紫外線吸収剤を多量に使用するために、コスト的にも好ましくない。
また、接着層10には、上述した性能を損なわない範囲内で、バインダ樹脂以外の公知の添加剤を用いることが可能である。上記添加剤としては、例えば、無機顔料微粒子、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、離型剤、ワックスや樹脂フィラーに代表される滑り剤、光安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等を用いることが可能である。
(剥離層9)
剥離層9は、例えば、バインダ樹脂と、離型性や滑り性等を付与する機能性添加剤とを含んでいる。剥離層9の乾燥後の塗布量は、例えば、0.1g/m〜2.0g/m程度が好ましい。剥離層9に含有されるバインダ樹脂としては、熱溶融性を有し、かつ透明であること以外に特に限定されるものではなく、従来公知のもので対応できる。上記バインダ樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体を用いることが可能である。これらの樹脂は単独、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
また、剥離層9に含有する機能性添加剤としては、例えば、ストレートシリコーン、変性シリコーン等のシリコーンオイル、フルオロアルキル基またはパーフルオロアルキル基を持つ界面活性剤、リン酸エステル系に代表される離型剤、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ライスワックス等のワックス類、有機又は無機フィラーに代表される滑り剤等が挙げられる。その他必要に応じて、例えば、ヒンダードアミン系、Niキレート系等の光安定剤、ヒンダードフェノール系、硫黄系、肥土レジン系等の熱安定剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の難燃剤、フェノール系、イオウ系、リン系等の酸化防止剤、ブロッキング防止剤、触媒促進剤、透明性を維持する範囲での着色剤、半透明化のための光散乱剤、艶調整剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
(第二のプライマー層6b)
本実施形態に係る熱転写記録媒体1は、熱転写保護層5における剥離層9と接着層10の間に第二のプライマー層6bを有する。
本実施形態に係るプライマー層6(第二のプライマー層6b)は、2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有する。
このようなプライマー層6を、熱転写保護層5における剥離層9と接着層10の間に形成することで、耐可塑剤性や耐アルコール性を向上することができる。
この耐可塑剤性や耐アルコール性が向上することに関しても、本実施形態に係るプライマー層6を構成する2,6−ジヒドロキシナフタレン、またはビスフェノールA及び4,4′−オキシビス[フェノール]がベンゼン環を2つ有していることで結晶性が高くなるためと考えられる。
熱転写インク層4におけるプライマー層6(第二のプライマー層6b)と、熱転写保護層5におけるプライマー層6(第一のプライマー層6a)を同一の材料(ポリエステル樹脂)とすることで、グラビアコートにて使用する印刷ユニットが単一で済むため、簡便に作製することができるとともに、ロスするインキ量も少なくなるため、コスト面の観点からも好ましい。
また、第二のプライマー層6bを構成するポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)を、10,000以上とすることで、耐可塑剤性がさらに向上することも見出した。プライマー層6を形成するポリエステル樹脂の分子量が大きくなることで、分子の網目構造が緻密になり、その結果、耐可塑剤性が向上したと考えられる。
第二のプライマー層6bの乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、0.05g/m以上0.20g/m以下の範囲内であることが好ましい。第二のプライマー層6bの乾燥後の塗布量が0.05g/m未満の場合には、乾燥後の塗布量制御が困難になるため、好ましくない。
一方、第二のプライマー層6bの乾燥後の塗布量が0.20g/m超の場合には、コスト面の観点から好ましくない。よって、プライマー層6の乾燥後の塗布量は0.20g/m以下であることが好ましい。
上述した各塗布層には、一般の塗被紙製造において使用される濡れ剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種補助剤が適宜添加される。各塗布層は、例えば、バーコート、ブレードコート、エアナイフコート、グラビアコート、ロールコート、ダイコート等の公知のウェットコーティング法によって、所定の塗工液を各層毎、あるいは2層以上を同時に塗工、乾燥して得ることができるが、特にグラビアコートが好ましい。
(本実施形態の変形例について)
本実施形態では、第一のプライマー層6a及び第二のプライマー層6bが2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有することを説明したが、本実施形態はこれに限定させるものではない。本実施形態では、上記「2,6−ジヒドロキシナフタレン」に代えて、例えば、ナフタレン骨格を備えたポリエステル樹脂を用いても、上述した本実施形態の効果を奏する。また、本実施形態では、上記「ビスフェノールA」や「4,4′−オキシビス[フェノール]」に代えて、例えば、炭素原子1つまたは酸素原子1つを介して連結された2つのベンゼン環を備えたポリエステル樹脂を用いても、上述した本実施形態の効果を奏する。
(本実施形態の効果について)
(1)本実施形態に係る熱転写記録媒体1は、基材2と、基材2の一方の面に形成された耐熱滑性層3と、基材2の他方の面における第一の領域R1に形成された熱転写インク層4と、基材2の他方の面における第二の領域R2に形成された熱転写保護層5と、を備え、熱転写インク層4は、基材2上に形成された第一のプライマー層6aと、第一のプライマー層6a上に形成された下引き層7と、下引き層7上に形成された染料層8と、を有し、熱転写保護層5は、基材2上に形成された剥離層9と、剥離層9上に形成された第二のプライマー層6bと、第二のプライマー層6b上に形成された接着層10と、を有し、第二のプライマー層6bは、2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有する。
このような構成であれば、第二のプライマー層6bは、2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有しているので、ポリエステル樹脂の結晶性が高くなり、耐可塑剤性や耐アルコール性を向上させることができる。
(2)また、本実施形態に係る熱転写記録媒体1の下引き層7に、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルと、側鎖にグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンを含有させてもよい。
ここで、特許文献1に記載されている熱転写シートの印画を行ったところ、異常転写は発生しないものの転写感度が低く、実用上十分なレベルにまで至らなかった。
また、特許文献2に記載されている熱転写シートの印画を行ったところ、転写感度は実用上十分であったものの、異常転写が発生した。
しかし、上記構成であれば、同一の熱転写記録媒体で転写感度が高く、異常転写が発生せず、かつ耐可塑剤性や耐アルコール性を有する出力物を得ることができる。
(3)また、本実施形態に係る熱転写記録媒体1の第一のプライマー層6aに、2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有させてもよい。
このような構成であれば、基材/プライマー層/下引き層間の密着性が向上し、異常転写をさらに防止することができる。また、2,6−ジヒドロキシナフタレンや、ベンゼン環を2つ有するビスフェノールAや4′−オキシビス[フェノール]を少なくとも含有することでポリエステル樹脂の結晶性が高くなり、その結果として耐熱性を向上させることができる。
(4)また、本実施形態に係る熱転写記録媒体1の第二のプライマー層6bに含有されるポリエステル樹脂の数平均分子量を、10,000以上としてもよい。
このような構成であれば、第二のプライマー層6bを形成するポリエステル樹脂の分子量が大きくなることで、分子の網目構造が緻密になり、その結果、耐可塑剤性を向上させることができる。
(5)また、本実施形態に係る熱転写記録媒体1の第一のプライマー層6aと、第二のプライマー層6bとは、同じ材料で形成されたものであってもよい。
このような構成であれば、グラビアコートにて使用する印刷ユニットが単一で済むため、熱転写記録媒体1を簡便に作製することができるとともに、ロスするインキ量も少なくすることができる。
(6)また、本実施形態に係る熱転写記録媒体1の第一のプライマー層6aと、第二のプライマー層6bとは、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂でそれぞれ形成されたものであってもよい。
このような構成であれば、基材2と下引き層7との接着性をさらに高めるとともに、剥離層9と接着層10との接着性をさらに高めることができ、且つ耐可塑剤性や耐アルコール性をさらに向上させることができる。
(7)また、本実施形態に係る熱転写記録媒体1の第一のプライマー層6aの厚みを、第二のプライマー層6bの厚みと同じにしてもよい。
このような構成であれば、第一のプライマー層6aと、第二のプライマー層6bとを、単一の工程で形成することができる。よって、熱転写記録媒体1を簡便に作製することができるとともに、ロスするインキ量も少なくすることができる。
[実施例]
以下に、本発明の各実施例および各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また、本発明は実施例に限定されるものではない。
<耐熱滑性層付き基材の作製>
下記組成の耐熱滑性層用塗布液を調整し、厚み4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(基材)に、乾燥後の耐熱滑性層の膜厚が1.0g/mとなるように塗布及び乾燥を行った。その後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、耐熱滑性層付き基材を得た。
<耐熱滑性層用塗布液>
・アクリルポリオール樹脂 12.5部
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステル 2.5部
・タルク 6.0部
・2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 4.0部
・トルエン 50.0部
・メチルエチルケトン 20.0部
・酢酸エチル 5.0部
<ポリエステル樹脂Aの作製方法>
留出管、窒素導入管、温度計及び撹拌機を備えた四つ口フラスコにテレフタル酸70部、イソフタル酸30部、2,6−ジヒドロキシナフタレン100部、及び反応触媒として酢酸亜鉛0.1部を仕込んだ。
次いでそれらを130℃から170℃まで2時間かけて昇温し、三酸化アンチモン0.1部を添加した後、170℃から200℃まで2時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。その後、徐々に昇温、減圧し、最終的に反応温度を250℃、真空度1mmHg以下で1〜2時間重縮合反応を行ない、ポリエステル樹脂Aを得た。ポリエステル樹脂Aの数平均分子量を測定したところ、5,000であった。また、反応時間を調整することで、数平均分子量が10,000のポリエステル樹脂A2を得た。
<ポリエステル樹脂Bの作製方法>
ポリエステル樹脂Aの作製方法において、2,6−ジヒドロキシナフタレン100部の代わりにビスフェノールA140部仕込むことで、ポリエステル樹脂Bを得た。ポリエステル樹脂Bの数平均分子量を測定したところ、5,000であった。また、反応時間を調整することで、数平均分子量が14,000のポリエステル樹脂B2を得た。
<ポリエステル樹脂Cの作製方法>
ポリエステル樹脂Aの作製方法において、2,6−ジヒドロキシナフタレン100部の代わりに4,4′−オキシビス[フェノール]125部仕込むことで、ポリエステル樹脂Cを得た。ポリエステル樹脂Cの数平均分子量を測定したところ、5,000であった。また、反応時間を調整することで、数平均分子量が12,000のポリエステル樹脂C2を得た。
<スルホン酸基含有ポリエステル/グリシジル基含有アクリル共重合体の作製方法>
留出管、窒素導入管、温度計及び撹拌機を備えた四つ口フラスコにテレフタル酸ジメチル854部、5−ソジウムスルホイソフタル酸355部、エチレングリコール186部、ジエチレングリコール742部及び、反応触媒として酢酸亜鉛1部を仕込んだ。
次いで、それらを130℃から170℃まで2時間かけて昇温し、三酸化アンチモン1部を添加した後、170℃から200℃まで2時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。その後、徐々に昇温、減圧し、最終的に反応温度を250℃、真空度1mmHg以下で1〜2時間重縮合反応を行ない、ポリエステルを得た。得られたポリエステルを純水に溶解し、次いでグリシジル基含有アクリルモノマーとしてメタクリル酸グリシジルをポリエステルの質量比で30:70となるように加え、さらに重合開始剤として過硫酸カリウムを加え、モノマー乳化液を作製した。
次いで、冷却管付き反応容器に、純水と上記モノマー乳化液とを仕込み、20分間窒素ガスを吹き込んで十分脱酸素を行った。その後、上記純水と上記モノマー乳化液とを1時間かけて徐々に昇温し、75〜85℃を維持しつつ3時間反応を行い、スルホン酸基含有ポリエステル/グリシジル基含有アクリル共重合体を得た。また、同様の方法で、スルホン酸基含有ポリエステル/カルボキシル基含有アクリル共重合体及び各重合比のポリエステルアクリル共重合体を得た。
(実施例1)
<熱転写インク層の作製>
耐熱滑性層付き基材の耐熱滑性層が塗布されていない面に、下記組成のプライマー層用塗布液−1を、グラビアコートにより、乾燥後の塗布量が0.10g/mになるように塗布、乾燥を行うことで、プライマー層を形成した。続いてプライマー層の上に、下記組成の下引き層用塗布液−1を、グラビアコートにより、乾燥後の塗布量が0.20g/mになるように塗布、乾燥を行うことで、下引き層を形成した。さらに、下引き層の上に、下記組成の染料層用塗布液を、グラビアコートにより、乾燥後の塗布量が0.50g/mになるように塗布、乾燥することで、染料層を形成した。こうして、実施例1の熱転写インク層を得た。
〔プライマー層用塗布液−1〕
・ポリエステル樹脂A(分子量:5,000) 2.0部
・トルエン 49.0部
・メチルエチルケトン 49.0部
〔下引き層用塗布液−1〕
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) 2.5部
・ポリビニルピロリドン(K値60) 2.5部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
〔染料層用塗布液〕
・C.I.ソルベントブルー36 2.5部
・C.I.ソルベントブルー63 2.5部
・ポリビニルアセタール樹脂 5.0部
・トルエン 45.0部
・メチルエチルケトン 45.0部
<熱転写保護層>
耐熱滑性層付き基材の耐熱滑性層が塗布されていない面に、下記組成の剥離層用塗布液を、グラビアコートにより、乾燥後の塗布量が1.0g/mになるように塗布、乾燥を行うことで、剥離層を形成した。続いて剥離層の上に、プライマー層用塗布液−1を、グラビアコートにより、乾燥後の塗布量が0.10g/mになるように塗布、乾燥を行うことで、プライマー層を形成した。さらにプライマー層の上に、下記組成の接着層用塗布液を、グラビアコートにより、乾燥後の塗布量が1.0g/mになるように塗布、乾燥を行うことで、接着層を形成した。こうして実施例1の熱転写保護層を得た。
〔剥離層用塗布液〕
・ダイヤナールBR−80 20.0部
(アクリル樹脂、三菱レイヨン(株))
・バイロン200 0.06部
(ポリエステル樹脂、東洋紡(株))
・トルエン 39.97部
・メチルエチルケトン 39.97部
〔接着層用塗布液〕
・バイロン220 20.0部
(ポリエステル樹脂、東洋紡(株))
・TINUVIN900 5.0部
(紫外線吸収剤、BASF社)
・メチルエチルケトン 75.0部
(実施例2)
実施例1の熱転写インク層において、下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の熱転写記録媒体を得た。
〔下引き層用塗布液−2〕
・スルホン酸基含有ポリエステル/
カルボキシル基含有アクリル共重合体(30:70) 2.5部
・ポリビニルピロリドン(K値60) 2.5部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
(実施例3)
実施例1の熱転写インク層、熱転写保護層において、プライマー層を下記組成のプライマー層用塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の熱転写記録媒体を得た。
〔プライマー層用塗布液−2〕
・ポリエステル樹脂B(分子量:5,000) 2.0部
・トルエン 49.0部
・メチルエチルケトン 49.0部
(実施例4)
実施例1の熱転写インク層、熱転写保護層において、プライマー層を下記組成のプライマー層用塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の熱転写記録媒体を得た。
〔プライマー層用塗布液−3〕
・ポリエステル樹脂C(分子量:5,000) 2.0部
・トルエン 49.0部
・メチルエチルケトン 49.0部
(実施例5)
実施例1の熱転写インク層、熱転写保護層において、プライマー層を下記組成のプライマー層用塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の熱転写記録媒体を得た。
〔プライマー層用塗布液−4〕
・ポリエステル樹脂A(分子量:5,000) 1.0部
・ポリエステル樹脂B(分子量:5,000) 1.0部
・トルエン 49.0部
・メチルエチルケトン 49.0部
(実施例6)
実施例1の熱転写インク層、熱転写保護層において、プライマー層を下記組成のプライマー層用塗布液−5にした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の熱転写記録媒体を得た。
〔プライマー層用塗布液−5〕
・ポリエステル樹脂B(分子量:5,000) 1.0部
・ポリエステル樹脂C(分子量:5,000) 1.0部
・トルエン 49.0部
・メチルエチルケトン 49.0部
(実施例7)
実施例1の熱転写インク層、熱転写保護層において、プライマー層を下記組成のプライマー層用塗布液−6にした以外は、実施例1と同様にして、実施例7の熱転写記録媒体を得た。
〔プライマー層用塗布液−6〕
・ポリエステル樹脂A(分子量:5,000) 1.0部
・ポリエステル樹脂C(分子量:5,000) 1.0部
・トルエン 49.0部
・メチルエチルケトン 49.0部
(実施例8)
実施例1の熱転写インク層、熱転写保護層において、プライマー層を下記組成のプライマー層用塗布液−7にした以外は、実施例1と同様にして、実施例8の熱転写記録媒体を得た。
〔プライマー層用塗布液−7〕
・ポリエステル樹脂A(分子量:5,000) 0.7部
・ポリエステル樹脂B(分子量:5,000) 0.7部
・ポリエステル樹脂C(分子量:5,000) 0.7部
・トルエン 49.95部
・メチルエチルケトン 49.95部
(実施例9)
実施例1の熱転写インク層、熱転写保護層において、プライマー層を下記組成のプライマー層用塗布液−8にした以外は、実施例1と同様にして、実施例9の熱転写記録媒体を得た。
〔プライマー層用塗布液−8〕
・ポリエステル樹脂A2(分子量:10,000) 2.0部
・トルエン 49.0部
・メチルエチルケトン 49.0部
(実施例10)
実施例1の熱転写インク層、熱転写保護層において、プライマー層を下記組成のプライマー層用塗布液−9にした以外は、実施例1と同様にして、実施例10の熱転写記録媒体を得た。
〔プライマー層用塗布液−9〕
・ポリエステル樹脂B2(分子量:14,000) 2.0部
・トルエン 49.0部
・メチルエチルケトン 49.0部
(実施例11)
実施例1の熱転写インク層、熱転写保護層において、プライマー層を下記組成のプライマー層用塗布液−10にした以外は、実施例1と同様にして、実施例11の熱転写記録媒体を得た。
〔プライマー層用塗布液−10〕
・ポリエステル樹脂C2(分子量:12,000) 2.0部
・トルエン 49.0部
・メチルエチルケトン 49.0部
(比較例1)
実施例1の熱転写インク層において、下引き層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の熱転写記録媒体を得た。
(比較例2)
実施例1の熱転写インク層、熱転写保護層において、プライマー層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例2の熱転写記録媒体を得た。
(比較例3)
実施例1の熱転写インク層、熱転写保護層において、下引き層、及びプライマー層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例3の熱転写記録媒体を得た。
<被熱転写体の作製>
下記組成の受像層用塗布液を調整し、厚み188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥後の受像層の塗布量が4.0g/mとなるように塗布及び乾燥を行い、被熱転写体を作製した。
〔受像層用塗布液〕
・ソルバインC 19.8部
(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、日信化学工業(株))
・KF−393 0.2部
(アミノ変性シリコーンオイル、信越化学工業(株))
・メチルエチルケトン 40.0部
・トルエン 40.0部
<印画物作製>
実施例1〜11、比較例1〜3にて作製した熱転写記録媒体を、被熱転写体の受像層を塗布した面と重ね合わせ、解像度が300×300DPI、印画速度が1.0msec/lineの評価用サーマルプリンタにてベタ画像の印画物を作製した。
<印画濃度評価>
実施例1〜11、比較例1〜3の熱転写記録媒体を用いて作製した印画物の印画濃度を、以下の装置・条件にて測定した。
・分光光度計X−rite528(X−rite社製)
<異常転写評価>
実施例1〜11、比較例1〜3の熱転写記録媒体を用いて作製した印画物の、異常転写の有無を目視にて評価した。異常転写の評価は、以下の基準にて行った。
○:被熱転写体への異常転写が、認められない
×:被熱転写体への異常転写が、認められる
<耐アルコール性評価>
実施例1〜11、比較例1〜3の熱転写記録媒体を用いて作製した印画物表面に、エタノールを滴下し、10分後に拭き取った後に、エタノールによる印画物の劣化を目視にて確認した。評価は以下の基準にて行った。
○:印画物の色抜けが認められない
×:印画物の色抜けが認められる
<耐可塑剤性評価>
実施例1〜11、比較例1〜3の熱転写記録媒体を用いて作製した印画物表面に、可塑剤が添加された塩化ビニルシートを置き、100g/cmの荷重をかけて50℃の環境に2日間静置した。50℃の環境から取り出した後に、可塑剤による印画物の劣化を目視にて確認した。評価は以下の基準にて行った。
◎:印画物の色抜けが全く無い
○:印画物の色抜けがほとんど無い
×:印画物の色抜けがほぼ全面に認められる
Figure 0006705265
表1に示す結果から分かるように、基材の一方にプライマー層(第一のプライマー層)、下引き層、染料層から構成される熱転写インク層と、剥離層、プライマー層(第二のプライマー層)、接着層から構成される熱転写保護層を面順次に形成した熱転写記録媒体において、プライマー層を、2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有したものとすることで、耐アルコール性能や耐可塑剤性能を有する印画物を得ることができ、本発明による効果が確認できた。
また、下引き層を、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルと、側鎖にグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンを含有したものとすることで、転写感度が十分に高く、異常転写が発生しない印画物を得ることができ、本発明による効果が確認できた。
実施例9〜11の熱転写記録媒体にて作製された印画物では、プライマー層を構成するポリエステル樹脂の、数平均分子量を10,000以上とすることで、耐可塑剤性能が更に向上することが確認できた。
これに対して比較例1の熱転写記録媒体にて作製された印画物は、熱転写記録媒体に熱転写インク層を構成する下引き層を設けないことで、転写感度が低くなり、実用不可能な印画濃度になるとともに、異常転写が発生することがわかった。
また、比較例2の熱転写記録媒体にて作製された印画物は、熱転写記録媒体にプライマー層を設けないことで、転写感度は十分に高いものの、大部分で異常転写が発生することがわかった。また、耐アルコール性や耐可塑剤性の評価においても、印画物の色抜けが認められ、実用上問題となる可能性があることがわかった。
また、比較例3の熱転写記録媒体にて作製された印画物は、熱転写記録媒体に下引き層とプライマー層を設けないことで、転写感度が低くなり、実用不可能な印画濃度になるとともに、異常転写が発生することがわかった。更に、耐アルコール性や耐可塑剤性の評価においても、印画物の色抜けが認められ、実用上問題となる可能性があることがわかった。
本発明に基づき得られる熱転写記録媒体は、昇華転写方式のプリンタに使用することができ、プリンタの高速・高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等に広く利用できる。
1 :熱転写記録媒体
2 :基材
3 :耐熱滑性層
4 :熱転写インク層
5 :熱転写保護層
6 :プライマー層
6a:第一のプライマー層
6b:第二のプライマー層
7 :下引き層
8 :染料層
8a:第一の染料層
8b:第二の染料層
8c:第三の染料層
9 :剥離層
10:接着層
R1:第一の領域
R2:第二の領域

Claims (7)

  1. 基材と、前記基材の一方の面に形成された耐熱滑性層と、前記基材の他方の面における第一の領域に形成された熱転写インク層と、前記基材の他方の面における第二の領域に形成された熱転写保護層と、を備え、
    前記熱転写インク層は、前記基材上に形成された第一のプライマー層と、前記第一のプライマー層上に形成された下引き層と、前記下引き層上に形成された染料層と、を有し、
    前記熱転写保護層は、前記基材上に形成された剥離層と、前記剥離層上に形成された第二のプライマー層と、前記第二のプライマー層上に形成された接着層と、を有し、
    前記第二のプライマー層は、2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有し、
    前記下引き層は、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルと、側鎖にグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体を含有することを特徴とする熱転写記録媒体。
  2. 基材と、前記基材の一方の面に形成された耐熱滑性層と、前記基材の他方の面における第一の領域に形成された熱転写インク層と、前記基材の他方の面における第二の領域に形成された熱転写保護層と、を備え、
    前記熱転写インク層は、前記基材上に形成された第一のプライマー層と、前記第一のプライマー層上に形成された下引き層と、前記下引き層上に形成された染料層と、を有し、
    前記熱転写保護層は、前記基材上に形成された剥離層と、前記剥離層上に形成された第二のプライマー層と、前記第二のプライマー層上に形成された接着層と、を有し、
    前記第二のプライマー層は、2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有し、
    前記第一のプライマー層と、前記第二のプライマー層とは、同じ塗布液で形成されていることを特徴とする熱転写記録媒体。
  3. 前記下引き層は、ポリビニルピロリドンをさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録媒体。
  4. 前記第一のプライマー層は、2,6−ジヒドロキシナフタレンから構成されるポリエステル樹脂、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂、及び4,4′−オキシビス[フェノール]から構成されるポリエステル樹脂のうち、少なくとも1種類を含有することを特徴とする請求項1または請求項に記載の熱転写記録媒体。
  5. 前記第二のプライマー層に含有されるポリエステル樹脂の数平均分子量は、10,000以上であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体。
  6. 前記第一のプライマー層と、前記第二のプライマー層とは、ビスフェノールAから構成されるポリエステル樹脂でそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体。
  7. 前記第二のプライマー層の厚みは、前記第一のプライマー層の厚みと同じであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体。
JP2016077301A 2016-04-07 2016-04-07 熱転写記録媒体 Active JP6705265B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016077301A JP6705265B2 (ja) 2016-04-07 2016-04-07 熱転写記録媒体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016077301A JP6705265B2 (ja) 2016-04-07 2016-04-07 熱転写記録媒体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017185725A JP2017185725A (ja) 2017-10-12
JP6705265B2 true JP6705265B2 (ja) 2020-06-03

Family

ID=60043822

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016077301A Active JP6705265B2 (ja) 2016-04-07 2016-04-07 熱転写記録媒体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6705265B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7143615B2 (ja) * 2018-03-30 2022-09-29 大日本印刷株式会社 熱転写シートの融着方法
CN114274681B (zh) * 2021-12-24 2023-10-27 湖南鼎一致远科技发展有限公司 一种耐醇的树脂碳带及其制备方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002370422A (ja) * 2000-08-07 2002-12-24 Dainippon Printing Co Ltd 画像形成方法
JP3802484B2 (ja) * 2002-06-18 2006-07-26 大日本印刷株式会社 熱転写シート
JP5924067B2 (ja) * 2012-03-27 2016-05-25 大日本印刷株式会社 熱転写シート
WO2014041779A1 (ja) * 2012-09-11 2014-03-20 凸版印刷株式会社 感熱転写記録媒体
JP6070176B2 (ja) * 2012-12-27 2017-02-01 大日本印刷株式会社 転写箔
JP2014193589A (ja) * 2013-03-29 2014-10-09 Dainippon Printing Co Ltd 熱転写シート
JP5773339B2 (ja) * 2014-10-29 2015-09-02 凸版印刷株式会社 感熱転写記録媒体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017185725A (ja) 2017-10-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6471799B2 (ja) 感熱転写記録媒体
JP5640852B2 (ja) 感熱転写記録媒体
JP6690192B2 (ja) 感熱転写記録媒体
JP5773339B2 (ja) 感熱転写記録媒体
JP5648975B2 (ja) 感熱転写記録媒体
JP6705265B2 (ja) 熱転写記録媒体
JP5648973B2 (ja) 感熱転写記録媒体
JP2009241386A (ja) 熱転写シート
JP5540629B2 (ja) 熱転写記録媒体
JP2011062824A (ja) 昇華型熱転写媒体
JP2010194786A (ja) 熱転写受容シート
JP2008265325A (ja) 熱転写方式を用いた画像形成方法
JP6269194B2 (ja) 熱転写シート
JP2015174235A (ja) 保護層付き熱転写シート
JP6379990B2 (ja) 感熱転写記録媒体
JP5794058B2 (ja) 熱転写シート
JP5696413B2 (ja) 昇華型熱転写媒体
JP2012071507A (ja) 熱転写記録媒体およびその製造方法
JP2006289934A (ja) 保護層転写シート
JP2009241587A (ja) 熱転写シート
JP2016060053A (ja) 保護層付き熱転写シート
JP2014188949A (ja) 感熱転写記録媒体
JP2011056838A (ja) 熱転写シート
JP2016020048A (ja) 熱転写受像シート、熱転写受像シートと熱転写シートとの組み合わせ及び画像形成方法
JP6090645B2 (ja) 熱転写受像シート

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190314

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200123

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200128

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200325

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200414

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200427

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6705265

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250