JP6070176B2 - 転写箔 - Google Patents

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Description

本発明は、基材上に、少なくとも保護層、接着層をこの順に積層した転写箔に関する。この転写箔は、その接着層が染料の受容性を有する受容層の機能を有する場合は、中間転写記録媒体として使用できる。また転写箔は、その接着層が接着性の機能を主体に有する転写箔は、熱転写による画像を有する印画物の画像を保護するための保護層転写シートとして使用できる。
従来から、簡便な印刷方法として熱転写方法が広く使用されている。熱転写方法の一つである溶融転写方式は、顔料等の色材と、熱溶融性のワックスや樹脂等のバインダーを含む熱溶融インキ層を備える熱転写シートを、紙やプラスチックシート等の熱転写受像シートと重ね合わせ、熱転写シートの背面側からサーマルヘッド等の加熱手段により画像情報に応じたエネルギーを印加して、熱転写受像シート上に、色材をバインダーと共に転写する画像形成方法である。溶融転写方式による画像は、高濃度で鮮鋭性に優れ、文字等の2値画像の記録に適している。
熱転写方法の一つである昇華転写方式は、昇華により熱移行する昇華性染料を含む色材層を備える熱転写シートを、基材シート上に染料受容層を設けてなる熱転写受像シートと重ね合わせ、熱転写シートの背面側からサーマルヘッド等の加熱手段により画像情報に応じたエネルギーを印加して、熱転写受像シート上に、昇華性染料を転写移行させる画像形成方法である。この昇華転写方式は、印加されるエネルギー量に応じて染料の移行量を制御できるため、サーマルヘッドのドット毎に画像濃度を制御した階調画像の形成を行なうことができる。また、使用する色材が染料であるため、形成される画像には透明性があり、異なる色の染料を重ねた場合の中間色の再現性が優れている。したがって、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の異なる色の熱転写シートを用い、熱転写受像シート上に各色染料を重ねて転写する際にも、中間色の再現性に優れた高画質な写真調フルカラー画像の形成が可能である。
マルチメディアに関連した様々なハード及びソフトの発達により、この熱転写方法は、コンピューターグラフィックス、衛星通信による静止画像そしてCD−ROMその他に代表されるデジタル画像及びビデオ等のアナログ画像のフルカラーハードコピーシステムとして、その市場を拡大している。この熱転写方法による熱転写受像シートの具体的な用途は、多岐にわたっている。代表的なものとしては、印刷の校正刷り、画像の出力、CAD/CAMなどの設計およびデザインなどの出力、CTスキャンや内視鏡カメラなどの各種医療用分析機器、測定機器の出力用途そしてインスタント写真の代替として、また身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真などの出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館などのアミューズメント施設における合成写真、記念写真としての用途などをあげることができる。
上記の熱転写受像シートの用途の多様化に伴い、任意の対象物に熱転写画像を形成する要求が高まっている。通常は、熱転写画像を形成する対象物として、基材上に受容層を設けた専用の熱転写受像シートを用いているが、この場合には、基材等に制約が生ずることとなる。このような状況下、特許文献1には、受容層が基材上に剥離可能に設けられた中間転写記録媒体が提案されている。この中間転写記録媒体によれば、色材層の染料を受容層に転写して画像を形成し、その後に中間転写記録媒体を加熱することで、染料が転写された受容層を任意の被転写体上に転写することができ、被転写体に制約を受けることがなく熱転写画像の形成が可能となる。
しかしながら、上記の中間転写記録媒体を用いて形成された熱転写画像は、最表面に画像が形成された受容層が位置することから耐光性、耐摩擦性、耐薬品性等の耐久性に欠ける問題がある。また、熱転写画像の形成された印画物の画像を保護するために、基材上に、保護層を転写可能に設けた保護層転写シートを用い、保護層を熱転写画像の上に、転写している。その保護層に紫外線吸収剤を添加して、熱転写画像の耐光性をより高めることが、特許文献2に記載されている。このような転写された保護層は、複数層で形成されることが多く、印画物に転写された保護層での最表面に紫外線吸収剤を含有していることが、熱転写画像の耐光性をもたせる上で、効果が大きく、また複数層の保護層の熱転写画像に近い層の黄色化などの防止できることからも好ましい。
ところが、印画物の最表面層は取扱い上で、最も摩耗しやすい条件であり、紫外線吸収剤を含有した層が摩耗して、結果として熱転写画像の耐光性が低下する要因となり、改善が求められている。
このような課題に対して、保護層転写シートにおける保護層の膜厚を大きくすることが行なわれて、保護層の耐光性を含め、耐久性が良くなっている。それに対して、保護層の膜厚が増加した分、保護層の残留溶剤が増えないように改善が求められている。それは、保護層の残留溶剤の数値が高くなると、保護層が転写された印画物を重ねて保管中に、ブロッキングが生じる、また印画物の耐可塑剤性が低下するなどの現象が生じやすくなるからである。
特開昭62−238791号公報 特開平11−151867号公報
したがって、上記の課題を解決するために本発明の目的は、基材上に少なくとも保護層、接着層をこの順に積層した転写箔で、特に耐ブロッキング性に優れ、またその転写箔による印画物において、耐光性、耐摩擦性、耐溶剤性、耐可塑剤性等の耐久性が高く、特に耐光性が高いものを提供することである。
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、基材上に、少なくとも4層以上の保護層、さらに接着層をこの順に積層した転写箔であって、前記保護層が少なくとも2種類の保護層A、保護層Bであり、前記保護層A、保護層Bはそれぞれ2回以上積層し、かつ前記保護層Aは、樹脂成分を95質量%以上の割合で含み、前記保護層Bは、樹脂成分を50〜95質量%の割合で含み、紫外線吸収剤を5〜25質量%の割合で含有し、前記保護層Aまたは保護層Bに主成分で含有する樹脂は、ガラス転移温度が40℃以上、数平均分子量が9000以上のポリエステル樹脂であることを特徴とする転写箔の構成とした。
また、本発明は、基材上に、少なくとも4層以上の保護層、さらに接着層をこの順に積層した転写箔であって、前記保護層が少なくとも3種類の保護層A、保護層B、保護層Cであり、前記保護層A、保護層Bはそれぞれ1回以上積層し、前記保護層Cは2回以上積層し、かつ前記保護層Aは、樹脂成分を95質量%以上の割合で含み、前記保護層Bは、樹脂成分を50〜95質量%の割合で含み、紫外線吸収剤を5〜25質量%の割合で含有し、前記保護層Cは、水分散性樹脂または水溶性樹脂を95質量%以上の割合で含有し、前記保護層Aまたは保護層Bに主成分で含有する樹脂は、ガラス転移温度が40℃以上、数平均分子量が9000以上のポリエステル樹脂であることを特徴とする転写箔の構成とした。
また、本発明は、前記保護層Aまたは保護層Bに主成分で含有する樹脂は、ガラス転移温度が40℃以上、数平均分子量が9000以上のポリエステル樹脂であることを特徴とする転写箔の構成とした。
本発明は、前記保護層Cに主成分で含有する水分散性樹脂、または水溶性樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂の少なくとも一つであることを特徴とする転写箔の構成とした。
本発明は、前記保護層Bに含有する紫外線吸収剤は、ベンゾフェノールもしくはベンゾトリアゾールより選ばれ、前記保護層Bの乾燥時の塗膜中で7.5〜25質量%の割合で含まれることを特徴とする転写箔の構成とした。
本発明は、前記保護層Aの塗膜は、1回の塗工当たりで、乾燥時の質量換算の塗工量が0.5〜2.0g/m2の範囲であり、前記保護層Bの塗膜は、1回の塗工当たりで、乾燥時の質量換算の塗工量が2.0〜10.0g/m2の範囲であり、前記保護層Cの塗膜は、1回の塗工当たりで、乾燥時の質量換算の塗工量が2.0〜10.0g/m2の範囲であることを特徴とする転写箔の構成とした。
本発明の転写箔は、特に耐ブロッキング性に優れたものであり、またその転写箔による印画物においては、耐光性、耐摩擦性、耐溶剤性、耐可塑剤性等の耐久性が高く、特に耐光性が高いものを提供できる。
本発明の転写箔の一つの実施形態を示す概略断面図である。 本発明の転写箔の他の実施形態を示す概略断面図である。 本発明の転写箔の他の実施形態を示す概略断面図である。 本発明の転写箔の他の実施形態を示す概略断面図である。
次に、発明の実施の形態について、詳述する。
図1は本発明の転写箔の一つの実施形態を示し、その転写箔1は、基材2の一方の面に保護層A(3)、保護層B(4)、保護層A(6)、保護層B(7)、接着層5を順次設けた構成である。この構成では、保護層が4層で構成され、保護層が2種類の保護層A、保護層Bであり、その保護層A、保護層Bはそれぞれ2回積層した構成である。その保護層Aは、樹脂成分を95質量%以上の割合で含み、その保護層Bは、樹脂成分を50〜95質量%の割合で含み、紫外線吸収剤を5〜25質量%の割合で含有する構成である。
この構成では、保護層A(3)、保護層B(4)、保護層A(6)、保護層B(7)、接着層5が転写層20であり、転写箔の熱転写時に被転写体に転写される層である。この構成により、耐光性と耐摩擦性とを両方満足させることが可能となる。図示してはいないが、基材からこの転写層の離型性を高めるために、基材2と保護層A(3)との間に剥離層、あるいは離型層を設けることができる。また、その他の層を設けることができる。
また図2は本発明の転写箔の他の実施形態を示し、その転写箔1は、基材2の一方の面に、保護層C(8)、保護層A(3)、保護層C(9)、保護層B(4)、保護層C(10)、保護層A(6)、保護層C(11)、保護層B(7)、保護層C(12)、接着層5を順次設けた構成である。この構成では、保護層C(8)、保護層A(3)、保護層C(9)、保護層B(4)、保護層C(10)、保護層A(6)、保護層C(11)、保護層B(7)、保護層C(12)、接着層5が転写層20であり、転写箔の熱転写時に被転写体に転写される層である。
図2に示した転写箔1は、基材2上に、保護層A、保護層C、保護層Bからなる3層の保護層が2回積層され、さらに保護層Bの上に、保護層Cを積層した構成である。この構成の転写箔は保護層A、保護層B及び保護層Cを組み合わせて積層することで、単独の保護層では満足できなかった耐光性、耐摩擦性などの多機能を発揮することができる。図示した保護層A(3)と保護層A(6)は同一の熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでも、また互いに異なる熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでもよい。
また、図示した保護層B(4)と保護層B(7)は同一の熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでも、また互いに異なる熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでもよい。さらに図示した保護層C(8)、保護層C(9)、保護層C(10)、保護層C(11)及び保護層C(12)は同一の熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでも、また互いに異なる熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでもよい。この場合でも図示してはいないが、基材からこの転写層の離型性を高めるために、基材2と保護層C(8)との間に剥離層、あるいは離型層を設けることができる。また、その他の層を設けることができる。
また図3は本発明の転写箔の他の実施形態を示し、その転写箔1は、基材2の一方の面に、保護層C(8)、保護層A(3)、保護層B(4)、保護層C(9)、保護層A(6)、保護層B(7)、保護層C(10)、接着層5を順次設けた構成である。この構成では、保護層C(8)、保護層A(3)、保護層B(4)、保護層C(9)、保護層A(6)、保護層B(7)、保護層C(10)、接着層5が、転写箔の熱転写時に被転写体に転写される層、すなわち転写層20である。図3に示した転写箔1は、基材2上に、保護層A、保護層B、保護層Cからなる3層の保護層が2回積層され、さらに基材2と保護層A(3)との間に、保護層C(8)を設けた構成である。この構成の転写箔は保護層A、保護層B及び保護層Cを組み合わせて積層することで、単独の保護層では満足できなかった耐光性、耐摩擦性などの多機能を発揮することができる。図示した保護層A(3)と保護層A(6)は同一の熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでも、また互いに異なる熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでもよい。
また、図示した保護層B(4)と保護層B(7)は同一の熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでも、また互いに異なる熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでもよい。さらに図示した保護層C(8)、保護層C(9)及び保護層C(10)は同一の熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでも、また互いに異なる熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでもよい。この場合でも図示してはいないが、基材からこの転写層の離型性を高めるために、基材2と保護層C(8)との間に剥離層、あるいは離型層を設けることができる。また、その他の層を設けることができる。
また図4は本発明の転写箔の他の実施形態を示し、図4で(1)〜(3)の転写箔の構成の各形態がとれるものである。図4(1)では、基材2の一方の面に、剥離層30を介して、保護層C(8)、保護層A(3)、保護層C(9)、保護層A(6)、保護層B(4)、保護層C(10)、接着層5を順次設けた構成であり、剥離層30、保護層C(8)、保護層A(3)、保護層C(9)、保護層A(6)、保護層B(4)、保護層C(10)、接着層5が転写層20として、転写箔1から被転写体へ転写される。図4(1)に示した転写箔1は、基材2上に、剥離層30を介して、保護層C(8)保護層A(3)、保護層C(9)を順次積層し、さらにその保護層C(9)の上に、保護層A(6)、保護層B(4)、保護層C(10)からなる3層の保護層が積層された構成である。
図示した保護層A(3)と保護層A(6)は同一の熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでも、また互いに異なる熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでもよい。また、図示した保護層C(8)、保護層C(9)及び保護層C(10)は同一の熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでも、また互いに異なる熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでもよい。
また図4(2)は、基材2の一方の面に、剥離層30を介して、保護層C(8)、保護層A(3)、保護層C(9)、保護層A(6)、保護層B(4)、接着層5を順次設けた構成であり、剥離層30、保護層C(8)、保護層A(3)、保護層C(9)、保護層A(6)、保護層B(4)、接着層5が転写層20として、転写箔1から被転写体へ転写される。図4(2)に示した転写箔1は、基材2上に、剥離層30を介して、保護層C(8)、保護層A(3)を順次積層し、さらにその保護層A(3)の上に、保護層C(9)、保護層A(6)、保護層B(4)からなる3層の保護層が積層された構成である。
図示した保護層A(3)と保護層A(6)は同一の熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでも、また互いに異なる熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでもよい。また、図示した保護層C(8)、保護層C(9)は同一の熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでも、また互いに異なる熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでもよい。
図4(3)は、基材2の一方の面に、剥離層30を介して、保護層C(8)、保護層A(3)、保護層C(9)、保護層B(4)、接着層5を順次設けた構成であり、剥離層30、保護層C(8)、保護層A(3)、保護層C(9)、保護層B(4)、接着層5が転写層20として、転写箔1から被転写体へ転写される。図4(3)に示した転写箔1は、基材2上に、剥離層30を介して、保護層C(8)を積層し、さらにその保護層C(8)の上に、保護層A(3)、保護層C(9)、保護層B(4)からなる3層の保護層が積層された構成である。
図示した保護層C(8)、保護層C(9)は同一の熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでも、また互いに異なる熱可塑性樹脂を主体に構成した塗工液で形成したものでもよい。
以下、転写箔1を構成する各層について、詳細に説明する。
(基材)
基材2としては、転写箔から熱転写時に転写される転写層を支持できる機械的強度や耐溶剤性を有し、その転写層を被転写体へ転写する際の熱エネルギー(例えばサーマルヘッドの熱)に耐え得る耐熱性を有しているものであれば、特に制限なく使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンナフタレートの共押し出しフィルムなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどのイミド系樹脂、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルファイトなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロースなどのセルロース系フィルム、等が挙げられる。
基材は、上記の樹脂を主成分とする共重合樹脂若しくは混合体(アロイを含む)、または複数層からなる積層体であっても良い。また、基材は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムであってもよいが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムを使用することが好ましい。基材は、これら樹脂の少なくとも1層からなるフィルム、シート、ボード状として使用する。上記した樹脂からなる基材の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系のフィルムは、耐熱性、機械的強度に優れるため好適に使用され、この中でもポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
基材は、通常、厚みが2.5〜50μm程度のものを使用するが、2.5〜25μmの厚みを有する基材をより好適に使用することができる。基材の厚みが厚すぎると、機械的強度は高いものの、転写箔から転写層を転写する際の熱エネルギーの伝達が不十分となり転写性が低下する傾向にある。一方、基材の厚みが薄すぎると、機械的強度が不足し、転写層を保持できなくなる場合がある。
基材には、その表面に離型層、または剥離層を設ける場合、予め、離型層、または剥離層を設ける面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗工処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、等の易接着処理を行ってもよい。
(保護層)
転写箔で使用する保護層Aは、樹脂成分を95質量%以上の割合で含み、すなわち樹脂成分を主成分とする層であり、数平均分子量(Mn)が12000以上、ガラス転移温度(Tg)が60℃以上の高重合度ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリエステルウレタン(ポリエステルとポリウレタンとの共重合体を意味する)などの有機溶剤可溶性の熱可塑性樹脂を含有することができる。中でもTgが40℃以上、数平均分子量が9000以上のポリエステル樹脂が、耐摩擦性、耐溶剤性、耐可塑剤性等の耐久性が高く、好ましい。ポリエステルの数平均分子量が9000未満、あるいは、Tgが40℃未満のポリエステルを使用した場合には、耐久性が著しく低下する。
またポリカーボネートは、ビスフェノール類と炭酸エステル形成化合物を原料として、公知の方法、例えばビスフェノール類とホスゲン類との直接反応(ホスゲン法)、あるいはビスフェノール類とビスアリールカーボネート類とのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法により得ることができる。
上記のビスフェノール類としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA;BPA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ;BPZ)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC;BPC)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF;BPF)が好適に使用される。これらビスフェノール類は単独で使用しても、複数種併用しても良い。
上記のポリエステルウレタンは、数平均分子量が10000以上、Tgが45℃以上のものが、保護層Aとしての耐久性を高めるために好ましい。この数平均分子量が10000未満、あるいはTgが45℃未満のポリエステルウレタンを用いると、耐可塑剤性等の耐久性が低下してしまう。
上記の保護層Aの高重合度ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリエステルウレタン以外の有機溶剤可溶性の熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が50℃〜80℃の熱可塑性樹脂から形成することが好ましく、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂から、適当なガラス転移温度を有するものを選択することができる。
転写箔における保護層Bとしては、樹脂成分を50〜95質量%の割合で含み、紫外線吸収剤を5〜25質量%の割合で含有する層であり、保護層Bの主成分である樹脂成分は、上記で説明した保護層Aと同様の有機溶剤可溶性の熱可塑性樹脂を用いることができる。数平均分子量が12000以上、Tgが60℃以上の高重合度ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリエステルウレタンの熱可塑性樹脂を含有することが、耐摩擦性、耐溶剤性、耐可塑剤性等の耐久性が高く、好ましい。
保護層Bに含有する紫外線吸収剤は、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が挙げられ、使用することができる。具体的には、例えば、Tinuvin P、Tinuvin 234、Tinuvin 320、Tinuvin 326、Tinuvin 327、Tinuvin 328、Tinuvin 312、Tinuvin 315、Tinuvin 900(以上、BASFジャパン社製(旧チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製))、Sumisorb−110、Sumisorb−130、Sumisorb−140、Sumisorb−200、Sumisorb−250、Sumisorb−300、Sumisorb−320、Sumisorb−340、Sumisorb−350、Sumisorb−400(以上、住友化学工業(株)製)、Mark LA−32、Mark LA−36、Mark 1413(以上、アデカアーガス化学(株)製)、SEESORB101、SEESORB102、SEESORB103、SEESORB105、SEESORB106、SEESORB107(以上、シプロ化成社製)等の商品名で市販品として入手でき、いずれも使用することができる。
また反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとがランダム共重合したランダム共重合体を用いることもできる。その反応性紫外線吸収剤は、従来公知のサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系等の非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、或いは、アルコール系水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入したものを使用することができる。具体的には、UVA635L、UVA633L(以上、BASFジャパン(株)製)、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等の商品名で市場から入手でき、何れも使用することができる。
保護層Bに含有する紫外線吸収剤は、ベンゾフェノールもしくはベンゾトリアゾールが好ましく、紫外線吸収性能及び経時変化による黄変などの防止性能に優れているからである。このような紫外線吸収剤は、保護層Bの固形分100質量部に対し、5〜25質量部、好ましくは10〜20質量部の範囲で使用する。上記範囲とすることによって優れた耐光性を得ることができる。
転写箔における保護層Cとしては、水分散性樹脂または水溶性樹脂を95質量%以上の割合で含有する層であり、その水分散性樹脂、または水溶性樹脂としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、及びポリビニルピロリドン、水溶性ポリエステル、水分散性ポリエステル、カチオン性ウレタン樹脂のエマルジョンなどが挙げられる。上記のポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、及びポリビニルアセタールは、ケン化度が30〜100%のものが好ましく、60〜100%のものが更に好ましい。ケン化度がこの範囲のポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールを保護層Cに含有させることで、転写箔から転写される転写層の耐可塑剤性を更に向上させることができる。なお、上記のケン化度は、ポリマー中のビニルアルコール構造のモル数を、ポリマー中の全モノマーのモル数で割った値をいう。
また、保護層Cにおけるポリビニルピロリドンは、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等のビニルピロリドンの単独重合体(ホモポリマー)またはこれらの共重合体が挙げられる。ポリビニルピロリドンは、フィッケンチャーの公式におけるK値で、60以上のものを使用することが好ましく、特にK−60〜K−120のグレードが使用でき、数平均分子量では、30,000〜280,000程度のものである。上記K値が60未満のポリビニルピロリドンを用いると、転写箔の転写層が転写された印画物の耐久性が低下してくる。
上記の水溶性ポリエステルまたは水分散性ポリエステルは、多塩基酸とポリオールから製造されたものが使用できる。水溶性ポリエステルとは、23℃で水に完全に溶けるものであり、また、水分散性ポリエステルとは、ポリエステルの分子内に疎水性の部分(疎水性部分)と親水性の部分(親水性部分)を有するもので、水中において疎水性部分の周りを親水性部分が取り囲む形で粒子となり、安定に分散するものである。上記の多塩基酸成分とは、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリンジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、セバチン酸、ドデカン二酸などであり、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリオール成分として代表的なものを挙げれば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールなどであり、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、ポリエステルの水溶性または水分散性をさらに向上させるために、カルボキシル基やスルホン酸基等の親水性基を有する成分を共重合させてもよい。
上記の水分散性または水溶性ポリエステル樹脂は、分子量が3,000〜100,000、さらに好ましくは4,000〜50,000であり、ガラス転移温度(Tg)が−20〜120℃、さらに好ましくは50〜120℃である。例えば、プラスコートRZ105、Z−561、Z−687(互応化学工業(株)製)などの商品名で入手して本発明で使用することができる。また、水分散性ポリウレタン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が−20〜120℃、さらに好ましくは50〜120℃であることが好ましい。このような水分散性ポリウレタン樹脂は、例えば、スーパーフレックス126、130、150、170、ハイドランHW−350(DIC(株)製)などの商品名で入手して本発明で使用することができる。また、水溶性または水分散性のアクリル樹脂も使用でき、Joncryl 60J、JDX−6180(BASF(株)製)などの商品名で入手して本発明で使用することができる。
保護層Cに含有する水分散性樹脂、または水溶性樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂の少なくとも一つであることが、耐ブロッキング性に優れるため、特に好ましい。
保護層A、保護層Bまたは保護層Cは、上記に説明した成分を含有するもので、保護層A、保護層Bまたは保護層Cを1層のみで構成できるが、1層のみでは残留溶剤を抑制する、あるいは生産速度の向上などのために、耐久性の向上の目的で、保護層の厚さを大きくすることには限界があるので、保護層を2層以上の複数層で形成することができる。その際、複数の保護層は、同一の樹脂を主体に構成した塗工液で形成する、あるいは異なる樹脂を主体に構成した塗工液で形成することもできる。
保護層Cは、前記保護層Aまたは前記保護層Bを設けるための塗工液の溶剤に対して、以下に示す耐溶剤性測定方法で測定した溶出率が0%以上50%以下であることが好ましく、また、その溶出率が10%以上40%以下であることがより好ましい。その溶出率が0%程度であると、耐摩擦性及び耐可塑剤性の性能が少し低下してくる。また、その溶出率が40%より高くなると、転写箔としての耐ブロッキング性の性能が低下してきて、その溶出率が50%を超えると、転写箔同士が重なった状態でブロッキングが生じてプリンタの印画適性で不具合が生じてくる。
(耐溶剤性測定方法)
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、保護層C形成用塗工液を固形分の質量で1.5〜2.5g/m2となるように塗工したサンプルを準備し、その質量M1を測定する。次に、そのサンプルを前記溶剤に1分間浸漬後、前記溶剤沸点よりも20℃高い温度に設定したオーブン内で5分間乾燥させて、その質量M2を測定する。
得られた結果から、以下の式を用いて溶出率を算出する。
(式) (溶出率)={(M1−M2)/M1}×100
保護層Cが上記条件の溶出率の範囲に入るようにしたので、保護層Cと隣接する保護層A及び保護層Bの各層を形成するための塗工液の溶剤に対し、その保護層Cが浸食されにくく、また保護層Aと保護層Bの双方の機能を正常に維持することができる。
保護層A、Bは、上記の熱可塑性樹脂を主体にして、適当な有機溶剤により、溶解または分散させて保護層用塗工液を調製し、これを基材(必要に応じて基材上に設けられた剥離層)上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗工、乾燥して形成することができる。
保護層Aの塗膜は、1回の塗工当たりで、乾燥時の質量換算の塗工量が0.5〜2.0g/m2の範囲が好ましく、また保護層Bの塗膜は、1回の塗工当たりで、乾燥時の質量換算の塗工量が2.0〜10.0g/m2の範囲が好ましい。この保護層の厚さ(上記の乾燥時の質量換算の塗工量)は、1層だけの構成での条件であり、保護層の厚さが小さすぎると、耐久性が低下する傾向となり、一方、保護層の厚さが大きすぎると、保護層の箔切れ性が低下し、転写層を被転写体に熱転写する際に尾引き等が生じやすくなる。
保護層Cは、上記の水分散性樹脂または水溶性樹脂を主成分とし、水あるいは水系溶媒により、溶解または分散させて保護層用塗工液を調製し、グラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗工、乾燥して形成することができる。
保護層Cの塗膜は、1回の塗工当たりで、乾燥時の質量換算の塗工量が2.0〜10.0g/m2の範囲であることが好ましい。この保護層の厚さは、1層だけの構成での条件であり、保護層の厚さが小さすぎると、耐久性が低下する傾向となり、一方、保護層の厚さが大きすぎると、保護層の箔切れ性が低下し、転写層を被転写体に熱転写する際に尾引き等が生じやすくなる。
上記のとおり、保護層A、保護層B及び保護層Cの各塗膜の範囲を規定することで、単独の保護層では満足できなかった耐光性、耐摩擦性などの多機能を発揮することができ、また耐ブロッキング性に優れたものとなる。
(接着層)
転写箔における最表面に位置する接着層5は、被転写体へ転写層を転写させる際、被転写体への接着性の機能を有するものである。また、その接着性の機能及び昇華性染料の受容性を有する受容層の機能を、合わせもつことができる。いずれにしても、接着層は、有機溶剤可溶性の熱可塑性樹脂を主体に構成することが好ましい。接着層における有機溶剤可溶性の熱可塑性樹脂は、転写箔の転写層を構成する接着層以外の層に含有する熱可塑性樹脂と区別するために、以下の説明では、接着層における有機溶剤可溶性の熱可塑性樹脂を熱可塑性樹脂Dとする。
上記の接着層の熱可塑性樹脂Dとしては、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体もしくはポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンもしくはプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体系樹脂、アイオノマーもしくはセルロースジアスターゼ等のセルロース樹脂、ポリカーボネート等が挙げられ、特に、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
接着層において、染料受容性をもたせる場合には、昇華性染料を含有する染料層を基材上に有する熱転写シートを用いて、その接着層に昇華転写による画像を形成する際、転写箔と熱転写シートとの離型性をもたせるために、上記の熱可塑性樹脂Dに離型剤を添加する。但し、その離型剤は被転写体への密着性を低下させることを防止するため、以下に示す特定の離型剤を用い、かつ添加量も所定の範囲にすることが好ましい。その特定の離型剤としては、側鎖型アラルキル変性シリコーン、側鎖型エポキシ変性シリコーンなどが挙げられる。その離型剤は、接着層に1種類で添加するだけでなく、熱転写シートとの熱転写時の離型性を十分にもたせるには、2種類以上の離型剤を添加することが好ましい。
具体的には、側鎖型アラルキル変性シリコーン及び側鎖型エポキシ変性シリコーンを合わせて添加する際、接着層の総質量に対し、2種の離型剤を合わせて1〜5質量%で添加することが好ましい。側鎖型アラルキル変性シリコーンと側鎖型エポキシ変性シリコーンとの配合は、側鎖型アラルキル変性シリコーン/側鎖型エポキシ変性シリコーン=9/1〜1/9であり、また夫々の離型剤単独の添加量は、接着層の総質量に対し、0.5〜5質量%である。離型剤の上記の添加量が少なすぎると、染料層との十分な離型性を確保できず、また一方で離型剤の上記の添加量が多すぎると、熱転写シートとの離型性の向上効果は認められない一方で、被転写体との密着性が低下する。
接着層は、上述に例示される材料の中から選択される単独または複数の樹脂材料、さらに必要に応じて、上記で説明した離型剤を加え、有機溶剤等の適当な溶剤に溶解または分散させて接着層用塗工液を調製し、これをグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により、塗工、乾燥して形成することができる。接着層の厚さは特に限定はないが、通常、乾燥時の質量換算の塗工量で1.0〜10.0g/m2程度である。
(剥離層)
転写箔は、熱転写時に転写層が基材から剥離しやすいように、基材と転写層との間に剥離層を設けることができる。なお、剥離層は、熱転写時に被転写体上に転写される層である。
剥離層の材料としては、従来公知の材料、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラールなどのビニル共重合体の熱可塑性樹脂や、飽和または不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、熱架橋性エポキシ−アミノ樹脂、アミノアルキッド樹脂などの熱硬化型の樹脂、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。また、剥離層には箔切れ性を向上させるために、マイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。また、剥離層は、1種の樹脂からなるものであってもよく、2種以上の樹脂からなるものであってもよい。また剥離層は、上記に例示した樹脂に加えイソシアネート化合物等の架橋剤、錫系触媒、アルミニウム系触媒等の触媒を用いて形成することとしてもよい。
必要に応じて形成される剥離層は、上記の樹脂を溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、バーコートなどの公知のコーティング方法で、基材上の少なくとも1部に塗工、乾燥することで形成することができる。剥離層の厚さとしては、通常は乾燥時の質量換算の塗工量で0.1〜5g/m2程度、好ましくは0.5〜2g/m2程度である。
また、転写箔において、任意の層として、目止め層など、その他の層を設けてもよい。
次に実験例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部または%は質量基準である。
(実験例1)
基材2として厚さ12μmのPETフィルムを用い、該基材2の一方の面へ、バーコーター法で、下記組成の剥離層形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1g/m2になるように塗工し乾燥して剥離層30を形成した。次いで、この剥離層30上に、バーコーター法で、下記組成の目止め層用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で2g/m2になるように塗工し乾燥して目止め層を形成した。次いで、この目止め層の上に、バーコーター法で、下記組成の保護層A形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層A(3)を形成した。
次いで、この保護層A(3)上に、バーコーター法で、下記組成の保護層B形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層B(4)を形成した。さらに、その保護層B(4)の上に、上記の保護層A形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層A(6)を形成した。さらに、その保護層A(6)の上に、上記組成の保護層B形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層B(7)を形成した。さらに、その保護層B(7)の上に、下記組成の接着層形成用塗工液1を、乾燥時の質量換算の塗工量で3g/m2になるように塗工し乾燥して接着層5を形成して、実験例1の転写箔を得た。(図1を参照)
<剥離層形成用塗工液>
・アクリル樹脂 95部
(BR−87 (三菱レイヨン(株)製)
・ポリエステル樹脂 5部
(バイロン200、東洋紡(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
<目止め層形成用塗工液>
・スチレン−アクリル系樹脂 150部
(ミューティクルPP320P 三井化学(株)製)
・ポリビニルアルコール 100部
(C−318 (株)DNPファインケミカル製)
・水/エタノール(質量比1/2) 70部
<保護層A形成用塗工液>
・ポリエステル樹脂 50部
(バイロン200、Tg=67℃、数分子量17000、東洋紡(株)製)
・MEK 200部
<保護層B形成用塗工液>
・ポリエステル樹脂 50部
(バイロン200、Tg=67℃、数分子量17000、東洋紡(株)製)
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(Tinuvin 900、BASFジャパン社製) 7.5部
・MEK 200部
<接着層形成用塗工液1>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 95部
(ソルバイン(登録商標)CNL 日信化学工業(株)製)
・エポキシ変性シリコーンオイル 5部
(KP−1800U 信越化学工業(株)製)
・トルエン 200部
・MEK 200部
(実験例2)
基材2として厚さ12μmのPETフィルムを用い、該基材2の一方の面へ、バーコーター法で、実験例1で使用した剥離層形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1g/m2になるように塗工し乾燥して剥離層30を形成した。次いで、この剥離層30上に、バーコーター法で、実験例1で使用した目止め層用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で2g/m2になるように塗工し乾燥して目止め層を形成した。次いで、この目止め層の上に、バーコーター法で、下記組成の保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層C(8)を形成した。次いで、この保護層C(8)上に、バーコーター法で、実験例1で使用した保護層A形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層A(3)を形成した。次いで、この保護層A(3)上に、バーコーター法で、上記組成の保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層C(9)を形成した。さらに、その保護層C(9)の上に、実験例1で使用した保護層B形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層B(4)を形成した。
<保護層C形成用塗工液>
・水分散性ポリエステル樹脂(Z−687:互応化学工業製、Tg=110℃、 分子量26000) 10部
・水 45部
・IPA 45部
さらに、その保護層B(4)の上に、上記の保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層C(10)を形成した。さらに、その保護層C(10)の上に、実験例1で使用した保護層A形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層A(6)を形成した。さらに、その保護層A(6)の上に、上記の保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層C(11)を形成した。さらに、その保護層C(11)の上に、実験例1で使用した保護層B形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層B(7)を形成した。さらに、その保護層B(7)の上に、上記組成の保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層C(12)を形成した。さらに、その保護層C(12)の上に、実験例1で使用した接着層形成用塗工液1を、乾燥時の質量換算の塗工量で3g/m2になるように塗工し乾燥して接着層5を形成して、実験例2の転写箔を得た。(図2を参照)
上記の実験例2の転写箔において、保護層Cの上に、保護層A、保護層Bを設けるものであり、本発明で規定した耐溶剤性測定方法で、保護層A、保護層Bを設けるための塗工液の溶剤(MEK)を用いて、保護層Cの溶出率を測定すると、1.8%であった。
(実験例3)
基材2として厚さ12μmのPETフィルムを用い、該基材2の一方の面へ、バーコーター法で、実験例1で使用した剥離層形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1g/m2になるように塗工し乾燥して剥離層30を形成した。次いで、この剥離層30上に、バーコーター法で、実験例1で使用した目止め層用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で2g/m2になるように塗工し乾燥して目止め層を形成した。次いで、この目止め層の上に、バーコーター法で、実験例2で使用した保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層C(8)を形成した。次いで、この保護層C(8)上に、バーコーター法で、実験例1で使用した保護層A形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層A(3)を形成した。次いで、この保護層A(3)上に、バーコーター法で、実験例1で使用した保護層B形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層B(4)を形成した。
次いで、この保護層B(4)上に、バーコーター法で、実験例2で使用した保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層C(9)を形成した。次いで、この保護層C(9)上に、バーコーター法で、実験例1で使用した保護層A形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層A(6)を形成した。次いで、この保護層A(6)上に、バーコーター法で、実験例1で使用した保護層B形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層B(7)を形成した。次いで、この保護層B(7)上に、バーコーター法で、実験例2で使用した保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層C(10)を形成した。さらに、その保護層C(10)の上に、実験例1で使用した接着層形成用塗工液1を、乾燥時の質量換算の塗工量で3g/m2になるように塗工し乾燥して接着層5を形成して、実験例3の転写箔を得た。(図3を参照)
上記の実験例3の転写箔において、保護層Cの上に、保護層Aを設けるものであり、本発明で規定した耐溶剤性測定方法で、保護層Aを設けるための塗工液の溶剤(MEK)を用いて、保護層Cの溶出率を測定すると、1.8%であった。
(実験例4)
実験例1と同様に、基材2として厚さ12μmのPETフィルムを用い、該基材2の一方の面へ、バーコーター法で、剥離層形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1g/m2になるように塗工し乾燥して剥離層30を形成した。次いで、この剥離層30上に、バーコーター法で、実験例1で使用した目止め層用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で2g/m2になるように塗工し乾燥して目止め層を形成した。次いで、この目止め層の上に、バーコーター法で、実験例2で使用した保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層C(8)を形成した。次いで、この保護層C(8)上に、バーコーター法で、実験例1で使用した保護層A形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で8g/m2になるように塗工し乾燥して保護層A(3)を形成した。
次いで、この保護層A(3)上に、バーコーター法で、実験例2で使用した保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層C(9)を形成した。次いで、この保護層C(9)上に、バーコーター法で、実験例1で使用した保護層A形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層A(6)を形成した。次いで、この保護層A(6)上に、バーコーター法で、実験例1で使用した保護層B形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で4g/m2になるように塗工し乾燥して保護層B(4)を形成した。次いで、この保護層B(4)上に、バーコーター法で、実験例2で使用した保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層C(10)を形成した。さらに、その保護層C(10)の上に、実験例1で使用した接着層形成用塗工液1を、乾燥時の質量換算の塗工量で3g/m2になるように塗工し乾燥して接着層5を形成して、実験例4の転写箔を得た。(図4(1)を参照)
上記の実験例4の転写箔において、保護層Cの上に、保護層Aを設けるものであり、本発明で規定した耐溶剤性測定方法で、保護層Aを設けるための塗工液の溶剤(MEK)を用いて、保護層Cの溶出率を測定すると、1.8%であった。
(実験例5)
上記の実験例4で作製した転写箔の条件で、保護層C(10)を除いた以外は、実験例4と同様にして、基材2/剥離層30/目止め層/保護層C(8)/保護層A(3)/保護層C(9)/保護層A(6)/保護層B(4)/接着層5の構成の実験例5の転写箔を得た。(図4(2)を参照)
上記の実験例5の転写箔において、保護層Cの上に、保護層Aを設けるものであり、本発明で規定した耐溶剤性測定方法で、保護層Aを設けるための塗工液の溶剤(MEK)を用いて、保護層Cの溶出率を測定すると、1.8%であった。
(実験例6)
上記の実験例5で作製した転写箔の条件で、保護層A(6)を除いた以外は、実験例5と同様にして、基材2/剥離層30/目止め層/保護層C(8)/保護層A(3)/保護層C(9)/保護層B(4)/接着層5の構成の実験例6の転写箔を得た。(図4(3)を参照)
上記の実験例6の転写箔において、保護層Cの上に、保護層A、保護層Bを設けるものであり、本発明で規定した耐溶剤性測定方法で、保護層A、保護層Bを設けるための塗工液の溶剤(MEK)を用いて、保護層Cの溶出率を測定すると、1.8%であった。
(実験例7)
上記の実験例3で作製した転写箔の条件で、保護層C形成用塗工液を、下記組成に変更した以外は、全て実験例3と同様にして、実験例7の転写箔を得た。
<保護層C形成用塗工液>
・スチレン−アクリル系樹脂 150部
(ミューティクルPP320P 三井化学(株)製)
・ポリビニルアルコール 100部
(C−318 (株)DNPファインケミカル製)
・水/エタノール(質量比1/2) 70部
上記の実験例7の転写箔において、保護層Cの上に、保護層Aを設けるものであり、本発明で規定した耐溶剤性測定方法で、保護層Aを設けるための塗工液の溶剤(MEK)を用いて、保護層Cの溶出率を測定すると、38.2%であった。
(実験例8)
上記の実験例3で作製した転写箔の条件で、保護層C形成用塗工液を、下記組成に変更した以外は、全て実験例3と同様にして、実験例8の転写箔を得た。
<保護層C形成用塗工液>
・水分散性ポリウレタン樹脂(HW−350;DIC社製) 100部
・水 75部
・IPA 25部
上記の実験例8の転写箔において、保護層Cの上に、保護層Aを設けるものであり、本発明で規定した耐溶剤性測定方法で、保護層Aを設けるための塗工液の溶剤(MEK)を用いて、保護層Cの溶出率を測定すると、11.5%であった。
(実験例9)
上記の実験例3で作製した転写箔の条件で、保護層A形成用塗工液及び保護層B形成用塗工液を、下記組成に変更した以外は、全て実験例3と同様にして、実験例9の転写箔を得た。
<保護層A形成用塗工液>
・ポリエステル樹脂 50部
(バイロン103、Tg=47℃、数分子量23000、東洋紡(株)製)
・MEK 200部
<保護層B形成用塗工液>
・ポリエステル樹脂 50部
(バイロン103、Tg=47℃、数分子量23000、東洋紡(株)製)
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(Tinuvin 900、BASFジャパン社製) 7.5部
・MEK 200部
上記の実験例9の転写箔において、保護層Cの上に、保護層Aを設けるものであり、本発明で規定した耐溶剤性測定方法で、保護層Aを設けるための塗工液の溶剤(MEK)を用いて、保護層Cの溶出率を測定すると、1.8%であった。
(実験例10)
上記の実験例3で作製した転写箔の条件で、保護層A形成用塗工液及び保護層B形成用塗工液を、下記組成に変更した以外は、全て実験例3と同様にして、実験例10の転写箔を得た。
<保護層A形成用塗工液>
・ポリエステル樹脂 50部
(バイロンGK250、Tg=60℃、数分子量10000、東洋紡(株)製)
・MEK 200部
<保護層B形成用塗工液>
・ポリエステル樹脂 50部
(バイロンGK250、Tg=60℃、数分子量10000、東洋紡(株)製)
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(Tinuvin 900、BASFジャパン社製) 7.5部
・MEK 200部
上記の実験例10の転写箔において、保護層Cの上に、保護層Aを設けるものであり、本発明で規定した耐溶剤性測定方法で、保護層Aを設けるための塗工液の溶剤(MEK)を用いて、保護層Cの溶出率を測定すると、1.8%であった。
(実験例11)
上記の実験例3で作製した転写箔の条件で、保護層B形成用塗工液を、下記組成に変更した以外は、全て実験例3と同様にして、実験例11の転写箔を得た。
<保護層B形成用塗工液>
・ポリエステル樹脂 50部
(バイロン200、東洋紡(株)製)
・ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(SEESORB107、シプロ化成社製))
7.5部
・MEK 200部
上記の実験例11の転写箔において、保護層Cの上に、保護層Aを設けるものであり、本発明で規定した耐溶剤性測定方法で、保護層Aを設けるための塗工液の溶剤(MEK)を用いて、保護層Cの溶出率を測定すると、1.8%であった。
(比較例1)
基材として厚さ12μmのPETフィルムを用い、該基材の一方の面へ、バーコーター法で、実験例1で使用した剥離層形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1g/m2になるように塗工し乾燥して剥離層を形成した。次いで、この剥離層上に、バーコーター法で、実験例1で使用した目止め層用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で2g/m2になるように塗工し乾燥して目止め層を形成した。次いで、この目止め層の上に、バーコーター法で、実験例2で使用した保護層C形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で1.5g/m2になるように塗工し乾燥して保護層Cを形成した。次いで、この保護層Cの上に、バーコーター法で、実験例1で使用した保護層B形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で8g/m2になるように塗工し乾燥して保護層Bを形成した。次いで、この保護層Bの上に、バーコーター法で、実験例1で使用した保護層A形成用塗工液を、乾燥時の質量換算の塗工量で8g/m2になるように塗工し乾燥して保護層Aを形成した。さらに、その保護層Aの上に、バーコーター法で、実験例1で使用した接着層形成用塗工液1を、乾燥時の質量換算の塗工量で3g/m2になるように塗工し乾燥して接着層を形成して、比較例1の転写箔を得た。
上記の比較例1の転写箔において、保護層Cの上に、保護層Bを設けるものであり、本発明で規定した耐溶剤性測定方法で、保護層Bを設けるための塗工液の溶剤(MEK)を用いて、保護層Cの溶出率を測定すると、1.8%であった。
(画像形成)
HDP−600(HID社製)プリンタと、該プリンタ用専用インクリボンを用い、上記の実験例1〜11及び比較例1の転写箔の受容層の機能を有する接着層へ、黒ベタ画像を印画し、その接着層に画像が印画された実験例1〜11及び比較例1の中間転写記録媒体を得た。
上記の接着層への画像を印画後、次いでHDP−600(HID社)プリンタにより、塩ビカード(DNP社製)上に、画像が形成された実験例1〜11及び比較例1の中間転写記録媒体の転写層を転写させ、実験例1〜11及び比較例1の印画物を得た。
<耐ブロッキング性試験>
得られた転写箔において、A4サイズの転写箔を重ねて、転写箔全体に20kgfの荷重を加えた状態で、50℃の環境下に4日間保存し、保存後の転写箔にブロッキングが生じているか目視で確認し、下記評価基準で耐ブロッキング性の評価を行った。
<評価基準>
4:ブロッキングが認められない。
3:わずかにブロッキングが認められる(プリンタ印画適性には影響がない)。
2:少しブロッキングが認められる(プリンタ印画適性には影響がない)。
1:ブロッキングがかなり認められる(プリンタ印画適性にも不具合がみられる)。
<耐溶剤性試験>
各印画物の画像面に、MEKの溶剤に浸した綿棒を用いて、その綿棒の溶剤に浸した側と反対端を親指と人差し指で持って、10回往復して擦り、画像の変化を目視にて確認し、下記評価基準で耐溶剤性の評価を行った。
<評価基準>
5:画像に変化がない
4:5の評価と、3の評価の中間の評価である。
3:擦った印画物の画像に欠陥が少し出ている。
2:3の評価と、1の評価の中間の評価である。
1:擦った印画物の画像に大きな欠陥が出ている。
<耐可塑剤性試験>
各印画物の画像面に、DOP(可塑剤、フタル酸ジオクチル)を綿棒により均一に手で塗り、その上に厚さ12μmのPETフィルムを載せて、5cm×5cmの大きさで、1700gfの荷重を掛けて40℃の環境に8時間保存し、保存後、そのPETフィルムを、上記の各例の印画物から剥がして印画物の画像変化を目視にて確認し、下記評価基準で耐可塑剤性の評価を行った。
<評価基準>
5:画像に変化がない。
4:5の評価と、3の評価の中間の評価である。
3:PETフィルムに少し染料が移行していて、印画物の画像に欠陥が少し出ている。
2:3の評価と、1の評価の中間の評価である。
1:PETフィルムに染料がかなり移行しており、印画物の画像に大きな欠陥が出ている。
<耐光性試験>
各印画物の画像面に、下記条件にて光照射した。
・照射試験器:アトラス社製Ci35
・光源:キセノンランプ
・フィルタ:内側=IRフィルタ、外側=ソーダライムガラス
・ブラックパネル温度:45℃
・照射強度:1.2W/m2 ―420nmでの測定値
・照射エネルギー:400kJ/m2 −420nmでの積算値
上記耐光性条件の照射前後の画像の色差を、分光測定器(グレタグマクベス社製、spectrolino)により測定した。測定に際しては照射前のBk(黒印画部)のODが1.5付近で測定を行った。得られた結果を基に下記式により色差を算出し、下記評価基準で、耐光性の評価を行った。
色差ΔE*ab=((Δa*2+(Δb*21/2
CIE1976 La**表色系(JIS Z8729(1980))参照
Δa*=a*(照射後)−a*(照射前)
Δb*=b*(照射後)−b*(照射前)
<評価基準>
4:ΔE*ab値が10未満である。
3:ΔE*ab値が10以上13未満である。
2:ΔE*ab値が13以上20未満である。
1:ΔE*ab値が20以上である。
上記の耐溶剤性試験、耐可塑剤性試験及び耐光性試験は、下記の3つの条件の印画物を試料にして、各試験及び評価を行った。
<1> 研磨試験機で全く研磨していない印画物
<2> 研磨試験機((株)東洋精機製作所製、ロータリーアブレージョンテスター)を用い、磨耗輪CS−10Fを用い、荷重500gfで250回毎に磨耗輪を研磨し、合計1000回研磨した印画物。
<3> 研磨試験機((株)東洋精機製作所製、ロータリーアブレージョンテスター)を用い、磨耗輪CS−10Fを用い、荷重500gfで250回毎に磨耗輪を研磨し、合計2000回研磨した印画物。
上記の耐ブロッキング性試験、耐溶剤性試験、耐可塑剤性試験及び耐光性試験の各評価結果を表1に示す。
Figure 0006070176
上記の通り、実験例1〜11の転写箔により得られた印画物は、全て耐光性の評価が良好な結果であった。実験例2〜11の転写箔である中間転写記録媒体は、全て耐ブロッキング性試験の評価が良好な結果であった。また実験例2〜11の転写箔により得られた印画物は、研磨回数が1000回までの印画物で、耐溶剤性試験、耐可塑剤性試験及び耐光性試験の各評価で良好な結果であった。なお、実験例5、6による印画物は、研磨回数が2000回の条件では、耐溶剤性試験、耐可塑剤性試験の評価で不良であった。これは、転写層を構成する保護層が4層ないし5層であり、比較的少ないことが影響していると判断できる。また、実験例10による印画物は、研磨回数が2000回の条件では、耐溶剤性試験、耐可塑剤性試験及び耐光性試験の評価で不良であった。これは、保護層A、保護層Bの主成分であるポリエステル樹脂の数平均分子量が低いため、研磨試験により保護層が削り取られたことが要因であると判断できる。なお、上記の研磨試験機で研磨回数が1000回は、通常の取扱いを想定したものである。さらに、上記の研磨試験機で研磨回数が2000回は、過酷な条件で取り扱われることを想定したものである。
比較例1の転写箔である中間転写記録媒体は、耐ブロッキング性試験が不良であった。また、比較例1による印画物では、研磨回数が1000回までの印画物で、耐溶剤性試験、耐可塑剤性試験の評価で不良であった。また、比較例1による印画物では、研磨回数が1000回までの印画物で、耐溶剤性試験、耐光性試験の評価で不良であった。
尚、上記の評価は接着層に画像を印画して評価したが、接着層に全く画像を形成せずに、被転写体である塩ビカード(DNP社製)に予め、昇華転写による画像を形成しておき、その画像を覆うように、転写箔から転写層を保護層として転写することができる。その評価結果も上記の評価結果と同様の結果であることは確認した。
1 転写箔
2 基材
3、6 保護層A
4、7 保護層B
5 接着層
8、9、10、11、12 保護層C
20 転写層
30 剥離層

Claims (5)

  1. 基材上に、少なくとも4層以上の保護層、さらに接着層をこの順に積層した転写箔であって、
    前記保護層が少なくとも2種類の保護層A、保護層Bであり、
    前記保護層A、保護層Bはそれぞれ2回以上積層し、
    かつ前記保護層Aは、樹脂成分を95質量%以上の割合で含み、
    前記保護層Bは、樹脂成分を50〜95質量%の割合で含み、紫外線吸収剤を5〜25質量%の割合で含有し、
    前記保護層Aまたは保護層Bに主成分で含有する樹脂は、ガラス転移温度が40℃以上、数平均分子量が9000以上のポリエステル樹脂であることを特徴とする転写箔。
  2. 基材上に、少なくとも4層以上の保護層、さらに接着層をこの順に積層した転写箔であって、
    前記保護層が少なくとも3種類の保護層A、保護層B、保護層Cであり、
    前記保護層A、保護層Bはそれぞれ1回以上積層し、
    前記保護層Cは2回以上積層し、
    かつ前記保護層Aは、樹脂成分を95質量%以上の割合で含み、
    前記保護層Bは、樹脂成分を50〜95質量%の割合で含み、紫外線吸収剤を5〜25質量%の割合で含有し、
    前記保護層Cは、水分散性樹脂または水溶性樹脂を95質量%以上の割合で含有し、
    前記保護層Aまたは保護層Bに主成分で含有する樹脂は、ガラス転移温度が40℃以上、数平均分子量が9000以上のポリエステル樹脂であることを特徴とする転写箔。
  3. 前記保護層Cに主成分で含有する水分散性樹脂、または水溶性樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂の少なくとも一つであることを特徴とする請求項2に記載の転写箔。
  4. 前記保護層Bに含有する紫外線吸収剤は、ベンゾフェノールもしくはベンゾトリアゾールより選ばれ、前記保護層Bの乾燥時の塗膜中で7.5〜25質量%の割合で含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の転写箔。
  5. 前記保護層Aの塗膜は、1回の塗工当たりで、乾燥時の質量換算の塗工量が0.5〜2.0g/m2の範囲であり、
    前記保護層Bの塗膜は、1回の塗工当たりで、乾燥時の質量換算の塗工量が2.0〜10.0g/m2の範囲であり、
    前記保護層Cの塗膜は、1回の塗工当たりで、乾燥時の質量換算の塗工量が2.0〜10.0g/m2の範囲であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の転写箔。
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