JP5786967B2 - 自動車用オイルシール - Google Patents

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Description

本発明は、自動車用オイルシールに関する。
自動車においては、エンジンオイル等の流体が漏れることを防止するため、種々のオイルシールが使用されている。自動車用のオイルシールとしては、例えば、エンジンのクランクシャフトに当接して使用されるエンジンオイルシール、トランスミッションに使用されるオイルシール、バルブステムに使用されるバルブステムシール等が挙げられる。
自動車用のオイルシールとしては、例えば、特許文献1には、エンジンオイルシールとして、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム、水素化ニトリルゴム及びこれらのブレンド物等のエラストマーとケイ酸化合物とからなるエラストマー組成物により構成されたシール用リップ部を有するオイルシールが開示されている。ここで、エラストマーとしては、ACM、FKMが好ましいことが記載されている。
特許文献2には、ゴム性のリップ部がシリコーンゴムやフッ素ゴムで構成されたエンジンに使用するオイルシールが開示されている。
特許文献3には、オイルシールのシールリップ部の摺動抵抗の低減を目的として、ゴムの表面にフッ素樹脂の塗膜を形成する方法が提案されている。
特許文献4には、少なくとも主リップ部が設けられたシールリップ部を有する弾性部材を備えた自動車用エンジンオイルシールであって、前記弾性部材は、フッ素ゴム及びフッ素樹脂を含む組成物からなり、かつ、少なくとも前記主リップ部の表面に凸部を有するとともに、前記凸部が実質的に前記組成物に含まれるフッ素樹脂からなり、前記フッ素樹脂は、エチレンに基づく重合単位とテトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体であり、前記フッ素ゴムは、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位を含む重合体である自動車用エンジンオイルシールが開示されている。
トランスミッションオイルシールとしては、例えば、特許文献5には、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体からなり、シールリップを備えたシール部材が開示されている。
特許文献6には、少なくとも主リップ部が設けられたシールリップ部を有する弾性部材を備えた自動車用トランスミッションオイルシールであって、前記弾性部材は、フッ素ゴム及びフッ素樹脂を含む組成物からなり、かつ、少なくとも前記主リップ部の表面に凸部を有するとともに、前記凸部が実質的に前記組成物に含まれるフッ素樹脂からなり、前記フッ素樹脂は、エチレンに基づく重合単位とテトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体であり、前記フッ素ゴムは、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位を含む重合体である自動車用トランスミッションオイルシールが開示されている。
バルブステムシールとしては、例えば、特許文献7には、シール部材とバルブステムとの摺動抵抗の低減を目的として、バルブステムに外嵌されるシール部材の内周面に、ダイヤモンド状硬質炭素膜による膜層を形成する摺動部構造が開示されている。
特許文献8には、シールリップ部の内周の摺動面にフッ素樹脂膜を有するバルブステムシールが開示されている。
特許文献9には、耐久性及びシール性の向上を目的として、バルブステムオイルシール材の摺動面を含む一部又は全体を熱可塑性フルオロ樹脂、フッ素ゴム及び低分子量含フッ素重合体とする配合からなる潤滑性ゴム組成物で形成することが開示されている。
特許文献10には、バルブステムガイドの末端に配置され、エンジンのバルブステムと摺動自在に密接するシールリップ部を有する弾性部材を備えた自動車用バルブステムシールであって、前記弾性部材は、フッ素ゴム及びフッ素樹脂を含む組成物からなり、かつ、少なくとも前記シールリップ部の表面に凸部を有するとともに、前記凸部が実質的に前記組成物に含まれるフッ素樹脂からなり、前記フッ素樹脂は、エチレンに基づく重合単位とテトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体であり、前記フッ素ゴムは、ビニリデンフルオライドに基づく重合単位を含む重合体である自動車用バルブステムシールが開示されている。
ところで、特許文献11には、フッ素ゴム及びフッ素樹脂を含み、フッ素ゴム及びフッ素樹脂は、フッ素ゴムとフッ素樹脂とを共凝析して得られたものである架橋性フッ素ゴム組成物、及び、該架橋性フッ素ゴム組成物を架橋して得られるフッ素ゴム成形品が開示されている。しかしながら、特許文献11には、具体的に自動車用オイルシールを作製したことは記載されていない。
特開平8−338533号公報 特開平7−208610号公報 特開2006−292160号公報 国際公開第2011/111630号パンフレット 特開2005−61454号公報 国際公開第2011/111631号パンフレット 特開2005−180329号公報 特開平9−68011号公報 特開平6−49438号公報 国際公開第2011/111632号パンフレット 国際公開第2011/002080号パンフレット
近年、自動車エンジンの高性能化(高回転化)や低燃費化への要求に伴い、自動車用オイルシールの摺動特性の向上が望まれている。
従来提案されていたフッ素ゴムやシリコーンゴムを用いた自動車用オイルシールは、アクリルゴムやニトリルゴムを用いた自動車用オイルシールに比べて摺動特性に優れる傾向にある。また、特許文献4、6及び10には、シールリップ部の表面に実質的にフッ素樹脂からなる凸部を有し、該フッ素樹脂がエチレンに基づく重合単位とテトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体である自動車用エンジンオイルシール等が開示されており、この凸部を有することにより優れた摺動特性が得られることが記載されている。
しかしながら、上記要求のもと、自動車用オイルシールには、さらなる摺動特性の向上が求められていた。
本発明は、シール性はもちろんのこと、低摺動性に優れる自動車用オイルシールを提供することを目的とする。
本発明は、シールリップ部を有する弾性部材を備えた自動車用オイルシールであって、上記弾性部材は、フッ素ゴム及びフッ素樹脂を含む組成物からなり、かつ、少なくとも上記シールリップ部の表面に凸部を有するとともに、上記凸部が実質的に上記組成物に含まれるフッ素樹脂からなり、上記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位とを含む共重合体であることを特徴とする自動車用オイルシールである。
本発明の自動車用オイルシールは、上記構成を有することから、シール性はもちろんのこと、優れた低摺動性を有する。
(a)はシールリップ部が有する凸部の形状を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)の表面に垂直な直線Bと直線Bを含む平面で凸部11を切断した断面図であり、(c)は(a)の表面と平行な直線Cと直線Cを含む平面で切断した断面図である。 自動車用エンジンオイルシールの使用態様を模式的に示す断面図であり、図3に示すA領域の拡大図である。 自動車用エンジンオイルシール及び自動車用バルブステムシールを使用したエンジンを模式的に示す断面図である。 図2に示した自動車用エンジンオイルシールの斜視図である。 自動車用トランスミッションオイルシールの使用態様を模式的に示す断面図であり、図6に示すC領域の拡大図である。 自動車用トランスミッションオイルシールを使用したトランスミッションを模式的に示す断面図である。 図5に示した自動車用トランスミッションオイルシールの斜視図である。 図9に示した本発明の自動車用バルブステムシールの断面図である。 自動車用バルブステムシールの使用態様を模式的に示す断面図であり、図3に示すB領域の拡大図である。 実施例で使用したオイルシールトルク試験機の模式図である。 実施例で使用したストローク荷重測定試験機の模式図である。
本発明の自動車用オイルシールは、シールリップ部を有する弾性部材を備えた自動車用オイルシールであって、前記弾性部材は、フッ素ゴム及びフッ素樹脂を含む組成物からなり、かつ、少なくとも前記シールリップ部の表面に凸部を有するとともに、前記凸部が実質的に前記組成物に含まれるフッ素樹脂からなり、前記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位とを含む共重合体であることを特徴とする。
本発明の自動車用オイルシールは、シールリップ部の表面に上記特定のフッ素樹脂からなる凸部を有するため、クランクシャフト、車軸、エンジンのバルブステム等とシールリップ部とが密接する摺動部において、潤滑油のオイルトラップ効果が促進される。そのため、摺動部において極めて優れた低摺動性を有する自動車用オイルシールとなる。
例えば、自動車用エンジンオイルシール又は自動車用トランスミッションオイルシールとして本発明の自動車用オイルシールを用いる場合、回転トルクを極めて小さくすることができる。また、自動車用バルブステムシールとして用いる場合、ストローク荷重を小さくすることができる。
以下、本発明の自動車用オイルシールの各成分について詳述する。
フッ素ゴム
フッ素ゴムは、通常、主鎖を構成する炭素原子に結合しているフッ素原子を有し、且つゴム弾性を有する非晶質の重合体からなる。上記フッ素ゴムは、1種の重合体からなるものであってもよいし、2種以上の重合体からなるものであってもよい。
フッ素ゴムは、ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、VdF/HFP/テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体、TFE/プロピレン共重合体、TFE/プロピレン/VdF共重合体、エチレン/HFP共重合体、エチレン/HFP/VdF共重合体、エチレン/HFP/TFE共重合体、VdF/TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)共重合体、及び、VdF/クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、より優れた低摺動性の自動車用オイルシールとなることから、VdF単位を含む共重合体からなるフッ素ゴムがより好ましい。
上記ビニリデンフルオライド(VdF)単位を含む共重合体からなるフッ素ゴム(以下、「VdF系フッ素ゴム」ともいう。)について説明する。VdF系フッ素ゴムは、少なくともVdFに由来する重合単位を含むフッ素ゴムである。
VdF単位を含む共重合体としては、VdF単位及び含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位(但し、VdF単位は除く。)を含む共重合体であることが好ましい。VdF単位を含む共重合体は、更に、VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体由来の共重合単位を含むことも好ましい。
VdF単位を含む共重合体としては、30〜90モル%のVdF単位及び70〜10モル%の含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位を含むことが好ましく、30〜85モル%のVdF単位及び70〜15モル%の含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位を含むことがより好ましく、30〜80モル%のVdF単位及び70〜20モル%の含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位を含むことが更に好ましい。VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体由来の共重合単位は、VdF単位と含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位の合計量に対して、0〜10モル%であることが好ましい。
含フッ素エチレン性単量体としては、例えばTFE、CTFE、トリフルオロエチレン、HFP、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、PAVE、フッ化ビニル、下記一般式(1):
CFX=CXOCFOR (1)
(式中、Xは、同一又は異なり、H、F又はCFを表し、Rは、直鎖又は分岐した、H、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が1〜6のフルオロアルキル基、若しくは、H、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が5又は6の環状フルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテルなどの含フッ素単量体が挙げられる。これらのなかでも、式(1)で表されるフルオロビニルエーテル、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上記PAVEとしては、一般式(2):
CF=CFO(CFCFYO)−(CFCFCFO)−Rf (2)
(式中、YはF又はCFを表し、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。pは0〜5の整数を表し、qは0〜5の整数を表す。)であることが好ましい。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)又はパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)であることがより好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)であることが更に好ましい。これらをそれぞれ単独で、又は任意に組み合わせて用いることができる。
VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどが挙げられる。
このようなVdF単位を含む共重合体として、VdFに基づく重合単位と、TFE、HFP、及び、PAVEからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位と、を含む共重合体であることが好ましい。具体的には、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、及び、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。これらのVdF単位を含む共重合体のなかでも、耐熱性の点から、VdF/HFP共重合体、及び、VdF/HFP/TFE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が特に好ましい。これらのVdF単位を含む共重合体は、上述したVdF単位と含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位との組成割合を満足することが好ましい。
VdF/HFP共重合体としては、VdF/HFPのモル比が45〜85/55〜15であるものが好ましく、より好ましくは50〜80/50〜20であり、更に好ましくは60〜80/40〜20である。
VdF/HFP/TFE共重合体としては、VdF/HFP/TFEのモル比が40〜80/10〜35/10〜35であるものが好ましい。
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEのモル比が65〜90/10〜35であるものが好ましい。
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEのモル比が40〜80/3〜40/15〜35であるものが好ましい。
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEのモル比が65〜90/3〜25/3〜25であるものが好ましい。
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/TFE/PAVEのモル比が40〜90/0〜25/0〜40/3〜35であるものが好ましく、より好ましくは40〜80/3〜25/3〜40/3〜25である。
上記フッ素ゴムは、架橋部位を与えるモノマー由来の共重合単位を含む共重合体からなることも好ましい。架橋部位を与えるモノマーとしては、例えば特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのヨウ素含有モノマー、特表平4−505341号公報に記載されている臭素含有モノマー、特表平4−505345号公報、特表平5−500070号公報に記載されているようなシアノ基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アルコキシカルボニル基含有モノマーなどが挙げられる。
フッ素ゴムは、主鎖末端にヨウ素原子又は臭素原子を有するフッ素ゴムであることも好ましい。主鎖末端にヨウ素原子又は臭素原子を有するフッ素ゴムは、実質的に無酸素下で、水媒体中でハロゲン化合物の存在下に、ラジカル開始剤を添加してモノマーの乳化重合を行うことにより製造できる。使用するハロゲン化合物の代表例としては、例えば、一般式:
Br
(式中、x及びyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、Rは、炭素数1〜16の飽和若しくは不飽和のフルオロ炭化水素基、炭素数1〜16の飽和若しくは不飽和のクロロフルオロ炭化水素基、炭素数1〜3の炭化水素基、又は、ヨウ素原子若しくは臭素原子で置換されていてもよい炭素数3〜10の環状炭化水素基であり、これらは酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、例えば、1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CFBr、BrCFCFBr、CFCFBrCFBr、CFClBr、BrCFCFClBr、CFBrClCFClBr、BrCFCFCFBr、BrCFCFBrOCF、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ベンゼンのジヨードモノブロモ置換体、ならびに、(2−ヨードエチル)及び(2−ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタン又はジヨードメタンを用いるのが好ましい。
フッ素ゴムは、加工性が良好な点から、ムーニー粘度(ML1+10(100℃))が5〜140であることが好ましく、10〜120であることがより好ましく、20〜100であることが更に好ましい。
ムーニー粘度は、ASTM−D1646に準拠して測定することができる。
測定機器:ALPHA TECHNOLOGIES社製のMV2000E型
ローター回転数:2rpm
測定温度:100℃
上記組成物には、必要に応じてフッ素ゴム中に配合される通常の配合剤、例えば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤が配合されていてもよい。これらの添加剤、配合剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用すればよい。
フッ素樹脂
フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく重合単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)に基づく重合単位とを含む共重合体(以下、「FEP」ともいう。)である。上記FEPを用いることによって、本発明の自動車用オイルシールは、極めて優れた低摺動性を有する。FEPは、自動車用オイルシールの耐熱性及び耐油性が優れたものとなる点でも好ましい。
フッ素樹脂は、より低摺動性に優れる自動車用オイルシールとなることから、パーフルオロフッ素樹脂であることが好ましい。
FEPとしては、TFE単位70〜99モル%とHFP単位1〜30モル%からなる共重合体であることが好ましく、TFE単位80〜97モル%とHFP単位3〜20モル%からなる共重合体であることがより好ましい。TFE単位が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると融点が高くなりすぎて成形性が低下する傾向がある。
FEPは、TFE、HFP、並びに、TFE及びHFPと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよく、当該単量体としては、CF=CF−ORf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、CX=CX(CF(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられ、なかでも、PAVEであることが好ましい。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rfが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF=CF−OCH−CFCFがより好ましい。
FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位を有する場合、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、TFE単位及びHFP単位が合計で90〜99.9モル%であることが好ましい。共重合可能な単量体単位が0.1モル%未満であると成形性、耐環境応力割れ性及び耐ストレスクラック性に劣りやすく、10モル%をこえると、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位を有する場合、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜9モル%であり、TFE単位及びHFP単位が合計で91〜99.9モル%であることがより好ましい。
フッ素樹脂の融点は、フッ素ゴムの架橋温度以上であることが好ましい。フッ素樹脂の融点は、フッ素ゴムの架橋温度以上であれば、フッ素ゴムの種類に応じて好ましい範囲は異なるが、例えば、150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、300℃であってよい。より低摺動性の自動車用オイルシールが得られることから、フッ素樹脂の融点は、230℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがより好ましい。
融点が低すぎると、架橋成形時にフッ素樹脂が溶融し、所望する形状の自動車用オイルシールが得られないおそれがある。また、シールリップ部の表面に充分な数の凸部を有する自動車用オイルシールが得られないおそれがある。
フッ素樹脂は、327℃におけるメルトフローレート〔MFR〕が0.3〜100g/10分であることが好ましい。MFRが小さすぎると表面に十分な凸部を有することが困難になり、低摺動性に劣るおそれがあり、MFRが大きすぎると成形が困難になるおそれがある。上記MFRは、ASTM D3307−1に準拠し、温度327℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
また、フッ素樹脂の融点が200℃未満である場合には、MFRの測定は280℃で行う。その場合、フッ素樹脂は、280℃におけるMFRが0.3〜100g/10分であることが好ましい。上記MFRは、ASTM D3307−1に準拠し、温度280℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
自動車用オイルシールは、ハウジングからの抜け防止のため、圧縮永久歪が小さいことが好ましい。自動車用オイルシールの圧縮永久歪をより小さくする観点からは、フッ素樹脂は下記特定の組成を有するフッ素樹脂(B1)及び(B2)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
フッ素樹脂(B1)及び(B2)は、特定の組成を有するテトラフルオロエチレン(TFE)単位及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位からなる共重合体である。特定の組成を有するフッ素樹脂(B1)又は(B2)を用いることで、本発明の自動車用オイルシールの低摺動性をより向上させることができ、同時に、自動車用オイルシールの低圧縮永久歪性を向上させることができる。
フッ素樹脂(B1)及び(B2)は、フッ素ゴムとの相溶性に優れる点、自動車用オイルシールの耐熱性が優れたものとなる点からも好ましい。
フッ素樹脂(B1)は、TFE単位(a)及びHFP単位(b)のみからなる重合体であり、TFE単位(a)/HFP単位(b)が、モル比で80.0〜87.3/12.7〜20.0である共重合体である。上記の特定範囲の組成を有するフッ素樹脂(B1)を用いると、自動車用オイルシールの圧縮永久歪が顕著に低下する。
フッ素樹脂(B1)は、圧縮永久歪をより小さくする観点、機械物性を優れたものとする観点から、(a)/(b)が、モル比で82.0〜87.0/13.0〜18.0であることが好ましく、83.0〜86.5/13.5〜17.0であることがより好ましく、83.0〜86.0/14.0〜17.0であることが更に好ましい。(a)/(b)が大きすぎると、自動車用オイルシールの圧縮永久歪が十分に小さくならないおそれがある。(a)/(b)が小さすぎると、機械物性が低下する傾向がある。
フッ素樹脂(B2)は、テトラフルオロエチレン単位(a)、ヘキサフルオロプロピレン単位(b)、並びに、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体に基づく重合単位(c)からなる共重合体であり、(a)/(b)が、モル比で80.0〜90.0/10.0〜20.0であり、(c)/{(a)+(b)}が、モル比で0.1〜10.0/90.0〜99.9である共重合体である(なお、{(a)+(b)}は、テトラフルオロエチレン単位(a)とヘキサフルオロプロピレン単位(b)との合計を意味する。)。(a)/(b)が、モル比で80.0〜90.0/10.0〜20.0であり、(c)/{(a)+(b)}が、モル比で0.1〜10.0/90.0〜99.9であることによって、圧縮永久歪が顕著に小さくなる。
フッ素樹脂(B2)は、圧縮永久歪をより小さくする観点、及び、機械物性を優れたものとする観点から、(a)/(b)が、モル比で82.0〜88.0/12.0〜18.0であることが好ましく、84.0〜88.0/12.0〜16.0であることがより好ましい。TFE単位(a)/HFP単位(b)が大きすぎると、自動車用オイルシールの圧縮永久歪が十分に小さくならないおそれがある。また、融点が高くなりすぎて、成形性が低下する傾向がある。TFE単位(a)/HFP単位(b)が小さすぎると、機械物性が低下する傾向がある。
フッ素樹脂(B2)は、(c)/{(a)+(b)}が、モル比で0.3〜8.0/92.0〜99.7であることが好ましい。
フッ素樹脂(B2)において、TFE及びHFPと共重合可能な単量体は、上記と同じである。
フッ素樹脂(B2)において、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に基づく重合単位(c)は、PAVE単位であることが好ましい。そして、フッ素樹脂(B2)は、TFE単位、HFP単位、及び、PAVE単位のみからなる共重合体であることがより好ましい。
フッ素樹脂(B1)及び(B2)は、融点が210℃以下であることが好ましい。また、融点が130〜210℃であることがより好ましく、150〜200℃であることが更に好ましく、160〜190℃であることが特に好ましい。フッ素樹脂の融点が、130℃未満であると、架橋成形時にブリードアウトして、十分な低摺動性が得られないおそれがある。210℃を超えると、フッ素樹脂の貯蔵弾性率が高くなり、自動車用オイルシールの低圧縮永久歪性が損なわれる恐れがある。
フッ素樹脂(B1)及び(B2)は、自動車用オイルシールの圧縮永久歪を小さくする観点から、動的粘弾性測定による70℃における貯蔵弾性率(E’)が10〜160MPaであることが好ましい。
上記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により70℃で測定する値である。より具体的には、アイティ−計測制御社製動的粘弾性装置DVA220で長さ30mm、巾5mm、厚み0.5mmのサンプルを引張モード、つかみ幅20mm、測定温度25℃から200℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件で測定する値である。70℃における好ましい貯蔵弾性率(E’)は10〜160MPaであり、より好ましい貯蔵弾性率(E’)は20〜140MPaであり、更に好ましい貯蔵弾性率(E’)は30〜100MPaである。
上記弾性部材は、フッ素ゴム及びフッ素樹脂を含む組成物からなり、かつ、少なくともシールリップ部の表面に凸部を有するとともに、凸部が実質的に上記組成物に含まれるフッ素樹脂からなる。上記凸部がシールリップ部の表面に存在していることにより、本発明の自動車用オイルシールは優れた低摺動性を有する。
凸部は、実質的に上記組成物に含まれるフッ素樹脂からなる。凸部は、例えば後述する自動車用オイルシールの製造方法により、後述する混合工程(I)で得られる架橋性組成物に含まれるフッ素樹脂を表面に析出させて形成することができる。
凸部は、シールリップ部との間に明確な界面が存在せず、上記凸部とシールリップ部が一体的に構成されていることとなり、上記凸部が脱落したり、欠損したりしにくいとの効果をより確実に享受することができる。
凸部が実質的にフッ素ゴム及びフッ素樹脂を含む組成物に含まれるフッ素樹脂からなることは、IR分析やESCA分析によってフッ素ゴム由来のピークとフッ素樹脂由来のピークのピーク比を求めることで示すことができる。具体的には、凸部を有する領域において、IR分析によって、フッ素ゴム由来の特性吸収のピークとフッ素樹脂由来の特性吸収のピークとの比(成分由来ピーク比)を、凸部と凸部外のそれぞれの部分で測定し、(凸部ピーク/凸部外ピーク=ピーク比)が、1.2以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0倍以上であればよい。
凸部の形状について、図面を参照しながらもう少し詳しく説明する。
図1(a)は、シールリップ部が有する凸部の形状を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)の表面に垂直な直線Bと直線Bとを含む平面で凸部11を切断した断面図であり、(c)は(a)の表面と平行な直線Cと直線Cとを含む平面で切断した断面図である。そして、図1(a)〜(c)には、シールリップ部の表面の微小領域を模式的に描画している。シールリップ部の表面には、図1(a)〜(c)に示すように、例えば、略円錐形状(コーン形状)の凸部11が形成されている。
ここで、凸部11の高さとは、シールリップ部の表面から突出した部分の高さをいう(図1(b)中、H参照)。また、凸部11の底部断面積とは、凸部11を、シールリップ部の表面と平行な平面(直線Cと直線Cとを含む平面)で切断した面において観察される凸部11の断面に於ける面積の値をいう(図1(c)参照)。
上記シールリップ部の表面に占める上記凸部を有する領域の面積比(凸部の占有率)は、0.06(6%)以上であることが好ましい。より好ましい面積比は、0.15(15%)以上であり、更に好ましくは0.20(20%)以上であり、特に好ましくは0.25(25%)以上であり、最も好ましくは0.30(30%)以上である。上記シールリップ部の表面に占める凸部を有する領域の面積比は、上記凸部の底部断面積を評価する切断面において、凸部が占める面積の比率をいう。
上記シールリップ部において、フッ素樹脂の体積比は、上記シールリップ部に対して0.05〜0.45(5〜45体積%)であることが好ましい。体積比の下限は、0.10(10体積%)であることがより好ましく、0.15(15体積%)であることが更に好ましく、0.20(20体積%)であることが特に好ましい。体積比の上限は、0.40(40体積%)であることがより好ましく、0.35(35体積%)であることが更に好ましく、0.30(30体積%)であることが特に好ましい。
上記フッ素樹脂はテトラフルオロエチレンに基づく重合単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位とからなる共重合体であり、優れた耐熱性を有する。従って、後述する成形架橋工程や熱処理工程によって分解することがないので、上記シールリップ部に占めるフッ素樹脂の体積比は、後述する架橋性組成物に含まれるフッ素樹脂の体積割合と同一とみなすことができる。
本発明の自動車用オイルシールは、上記シールリップ部の表面に占める凸部を有する領域の面積比が、上記シールリップ部に占めるフッ素樹脂の体積比、すなわちフッ素ゴム及びフッ素樹脂を含む組成物に占めるフッ素樹脂の体積比の1.2倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましい。これは、シールリップ部の表面における凸部を有する領域の比率が、シールリップ部におけるフッ素樹脂の体積比よりも高い、すなわち、上記フッ素ゴム及びフッ素樹脂を含む組成物に占めるフッ素樹脂の体積比よりも高い、ということを意味している。
本発明の自動車用オイルシールは、この特徴によりフッ素樹脂の混合割合が小さくても、フッ素ゴムの欠点であった低摺動性が改善され、また、フッ素ゴムの利点である弾性が損なわれることもない。
なお、上記凸部を有する領域の面積比は、シールリップ部において達成されていれば、本発明の効果は十分に奏される。
上記凸部は、高さが0.1〜30.0μmであることが好ましい。凸部の高さがこの範囲にあると、本発明の自動車用オイルシールは、シール性を損なうことなくより低摺動性に優れるものとなる。より好ましい高さは、0.3〜20.0μmであり、更に好ましくは、0.5〜10.0μmである。
上記凸部は、底部断面積が0.1〜2000μmであることが好ましい。凸部の底部断面積がこの範囲にあると、本発明の自動車用オイルシールは、より低摺動性に優れるものとなる。より好ましい底部断面積は、0.3〜1500μmであり、更に好ましい底部断面積は、0.5〜1000μmである。
上記シールリップ部は、上記凸部の高さの標準偏差が0.300以下であることが好ましい。この範囲にあると、本発明の自動車用オイルシールは、より低摺動性に優れるものとなる。
シールリップ部は、凸部の数が500〜60000個/mmであることが好ましい。より好ましい下限は、2000個/mmであり、更に好ましい下限は4000個/mmである。この範囲にあると、本発明の自動車用オイルシールは、より低摺動性に優れるものとなる。
凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の数等は、例えば、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用い、解析ソフトとして三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いて算出することができる。凸部を有する領域の面積比は、凸部の底部断面積を求め、断面積合計の値が、測定全領域面積に占める割合として求められる。凸部の数は、測定領域中の凸部の数を1mm当たりの数に換算したものである。
本発明の自動車用オイルシールとしては、自動車用エンジンオイルシール、自動車用トランスミッションオイルシール、自動車用バルブステムシール等が挙げられる。
本発明の自動車用オイルシールは、自動車用エンジンオイルシールであって、上記弾性部材は、シールリップ部に少なくとも主リップ部が設けられ、少なくとも前記主リップ部の表面に凸部を有するものであることが好ましい。
近年、自動車エンジンの高性能化(高回転化)や低燃費化への要求に伴い、自動車用エンジンオイルシールの摺動特性の向上が望まれており、特に、自動車用エンジンオイルシールには、自動車エンジンの低回転域から高回転域の全域に渡って摺動特性の向上が求められている。
本発明の自動車用オイルシールは、上記構成を有することによって、エンジンの低回転域から高回転域の全域に渡って摺動特性に優れる。そのため、回転時のトルクが非常に小さく、低燃費が望まれる自動車用エンジンオイルシールに好適である。
従って、本発明の自動車用オイルシールは、自動車用エンジンオイルシールであることが特に好ましい。
以下、図面を参照しながら自動車用エンジンオイルシールの実施形態について説明する。
図2は、自動車用エンジンオイルシールの使用態様を模式的に示す断面図であり、図3に示すA領域の拡大図である。図3は、本発明の自動車用エンジンオイルシール及び自動車用バルブステムシールを使用したエンジンを模式的に示す断面図であり、図4は、図2に示した自動車用エンジンオイルシールの斜視図である。なお、図2の自動車用エンジンオイルシールは、図4のA−A線断面を描画したものである。
自動車用エンジンオイルシール21は、図2〜4に示すように、径方向断面形状が略(逆)コの字状の円環構造を有し、フッ素樹脂及びフッ素ゴムを含む組成物からなる弾性部材22、円環状の金属環26及びリングスプリング27を備えている。
弾性部材22は、クランクシャフト29に当接する径方向断面楔状の主リップ部23及び周方向に沿って内周側に突出する副リップ部25が設けられたシールリップ部、並びに、ハウジング20に密着するはめあい部24を有している。金属環26は弾性部材22に内蔵されており、これにより自動車用エンジンオイルシール21の補強の役割を果たしている。リングスプリング27は、主リップ部23の外周面側に配設されており、主リップ部23はリングスプリング27の付勢力によりクランクシャフト29に当接されることとなる。
自動車用エンジンオイルシール21は、主リップ部23がエンジン30内部側に、副リップ部25が外部側に位置する向きで、主リップ部23がエンジン30のクランクシャフト29に摺動自在に当接し、はめあい部24がハウジング20に密着するようにクランクシャフト29とハウジング20との間隙に圧入装着される。なお、図3において、32はクランクプーリー、33はコンロッド、34はピストン、35はバルブである。
ここで、自動車用エンジンオイルシール21は、弾性部材22がフッ素樹脂及びフッ素ゴムを含む組成物からなるとともに、主リップ部23及び副リップ部25を有するシールリップ部の表面には凸部(図1参照)を有している。即ち、自動車用エンジンオイルシール21は、クランクシャフト29との接触部に凸部を有している。
そして、自動車用エンジンオイルシール21は、上記凸部を有するため、クランクシャフト29との間の摩擦係数が小さく、摺動特性に優れる。
この摺動特性に優れるとの効果は、エンジンの回転数を問わず、低回転数から高回転数の全域に渡って奏することができる。これについてもう少し詳しく説明する。
自動車用エンジンオイルシール21の主リップ部23の材質は、上記特定のフッ素樹脂及びフッ素ゴムを含む組成物である。そのため、従来公知の他の自動車用エンジンオイルシールの材質、例えば、ニトリルゴムやアクリルゴム、上記フッ素樹脂を含有しないフッ素ゴム等に比べて摺動特性に優れている。
そのうえで、自動車用エンジンオイルシール21は、上記組成物からなる凸部を有している。
自動車用エンジンオイルシールがクランクシャフトに対して摺動している場合、自動車用エンジンオイルシールとクランクシャフトとの間にはオイルが介在している(油膜が形成されている)ことが知られている。そして、このオイルが両者の間で潤滑剤として機能すると考えられている。即ち、オイルが介在することにより、自動車用エンジンオイルシールは低い摩擦抵抗で摺動することができる。
一方、自動車用エンジンオイルシールは、シール材として機能することが大前提のため、そのシールリップ部はクランクシャフトに隙間無く当接される。そのため、この状態から自動車用エンジンオイルシールとクランクシャフトとの間にオイルが介在するには、シールリップ部が変形し、この変形に追従してオイルがシールリップ部とクランクシャフトとの間に入り込むことが必要となる。ここで、シールリップ部の変形は、クランクシャフトの回転に追従して生じるため、クランクシャフトが高回転数で回転している際にはシールリップ部も変形しやすく、両者の間にオイルが入り込みやすくなる。これに対してクランクシャフトの回転数が低回転数の場合には、高回転数の場合に比べてシールリップ部が変形しにくく、その結果、クランクシャフトとシールリップ部との間にはオイルが介在しにくくなる。
そのため、クランクシャフトの回転数が低回転数の場合は、高回転数の場合に比べて摺動特性が劣る傾向にあり、自動車用エンジンオイルシールにおいては、特に、クランクシャフトの回転数が低回転数の場合における摺動特性の向上が望まれている。
これに対して、本発明の自動車用エンジンオイルシールは、上述したように、シールリップ部の表面に上記特定のフッ素樹脂からなる凸部を有しており、このため、オイルのエンジン外への漏れを防止するという本質的な機能は確保しつつ、微視的にはシールリップ部とクランクシャフトとの間に極微小な空隙を有し、かつ、クランクシャフトの回転に追従して変形しやすい構造を備えていることとなる。
そのため、本発明の自動車用エンジンオイルシールでは、自動車用エンジンオイルシールとクランクシャフトとの間にオイルが介在しやすく、クランクシャフトの回転数を問わず、低回転数から高回転数の全域に渡って摺動特性に優れることとなる。
なお、本発明の自動車用エンジンオイルシールの使用箇所は、クランクシャフトに限定されず、例えば、エンジンがカム軸を備える場合には、カム軸と摺動する自動車用エンジンオイルシールとしても使用することができる。
本発明の自動車用オイルシールは、自動車用トランスミッションオイルシールであって、弾性部材は、シールリップ部に少なくとも主リップ部が設けられ、少なくとも前記主リップ部の表面に凸部を有するものであることが好ましい。
近年、エンジンの高性能化や低燃費化への要求に伴い、自動車用トランスミッションオイルシールの摺動特性の向上が望まれており、特に、自動車用トランスミッションオイルシールには低速走行時から高速走行時の全域に渡って摺動特性の向上が求められている。
本発明の自動車用オイルシールは、上記構成を有することによって、低速走行時から高速走行時の全域に渡って摺動特性に優れる。そのため、回転時のトルクが非常に小さく、低燃費が望まれる自動車用トランスミッションオイルシールに好適である。
従って、本発明の自動車用オイルシールは、自動車用トランスミッションオイルシールであることが特に好ましい。
以下、図面を参照しながら自動車用トランスミッションオイルシールの実施形態について説明する。
図5は、自動車用トランスミッションオイルシールの使用態様を模式的に示す断面図であり、図6に示すC領域の拡大図である。図6は、自動車用トランスミッションオイルシールを使用したトランスミッションを模式的に示す断面図であり、図7は、図5に示した自動車用トランスミッションオイルシールの斜視図である。なお、図5の自動車用トランスミッションオイルシールは、図7のB−B線断面を描画したものである。
自動車用トランスミッションオイルシール51は、図5〜7に示すように、径方向断面形状が略(逆)コの字状の円環構造を有し、フッ素樹脂及びフッ素ゴムを含む組成物からなる弾性部材52、円環状の金属環56及びリングスプリング57を備えている。
弾性部材52は、内周側に車軸59に当接する径方向断面楔状の主リップ部53が設けられたシールリップ部を、外周側にハウジング50に密着するはめあい部54を有している。金属環56は弾性部材52に内蔵されており、これにより自動車用トランスミッションオイルシール51の補強の役割を果たしている。リングスプリング57は、主リップ部53の外周面側に配設されており、主リップ部53はリングスプリング57の付勢力により車軸59に当接されることとなる。
自動車用トランスミッションオイルシール51は、リングスプリング57がトランスミッション60内部側に露出する向きで、主リップ部53がトランスミッション60の車軸59に摺動自在に当接し、はめあい部54がハウジング50に密着するように車軸59とハウジング50との間隙に圧入装着される。なお、図6において、62はクランクシャフトに連結されるメインシャフト(入力シャフト)、63はメインシャフトと平行に配置されたカウンターシャフト(出力シャフト)である。
また、自動車用トランスミッションオイルシール51は、車軸59のみならず、図6に示すように、メインシャフト62、及び、カウンターシャフト63にも摺動可能に配設されている。
ここで、自動車用トランスミッションオイルシール51は、弾性部材52がフッ素樹脂及びフッ素ゴムを含む組成物からなるとともに、主リップ部53を有するシールリップ部の表面には凸部(図1参照)を有している。即ち、自動車用トランスミッションオイルシール51は、車軸59との接触部に凸部を有している。
そして、自動車用トランスミッションオイルシール51は、上記凸部を有するため、シャフト(車軸やメインシャフト、カウンターシャフト)との間の摩擦係数が小さく、摺動特性に優れる。
以下、本明細書において、単にシャフトと表記した場合、車軸、メインシャフト及びカウンターシャフトを含むこととする。
この摺動特性に優れるとの効果は、シャフトの回転数を問わず、低回転数から高回転数の全域に渡って奏することができる。これについてもう少し詳しく説明する。
自動車用トランスミッションオイルシール51の主リップ部53の材質は、フッ素樹脂及びフッ素ゴムを含む組成物である。そのため、従来公知の他の自動車用トランスミッションオイルシールの材質、例えば、ニトリルゴムやアクリルゴム、上記特定のフッ素樹脂を含有しないフッ素ゴム等に比べて摺動特性に優れている。
そのうえで、自動車用トランスミッションオイルシール51は、上記組成物からなる凸部を有している。
自動車用トランスミッションオイルシールがシャフトに対して摺動している場合、自動車用トランスミッションオイルシールとシャフトとの間にはオイルが介在している(油膜が形成されている)ことが知られている。そして、このオイルが両者の間で潤滑剤として機能すると考えられている。即ち、オイルが介在することにより、自動車用トランスミッションオイルシールは低い摩擦抵抗で摺動することができる。
一方、自動車用トランスミッションオイルシールは、シール材として機能することが大前提のため、そのシールリップ部はシャフトに隙間無く当接される。そのため、この状態から自動車用トランスミッションオイルシールとシャフトとの間にオイルが介在するには、シールリップ部が変形し、この変形に追従してオイルがシールリップ部とシャフトとの間に入り込むことが必要となる。ここで、シールリップ部の変形は、シャフトの回転に追従して生じるため、シャフトが高回転数で回転している際にはシールリップ部も変形しやすく、両者の間にオイルが入り込みやすくなる。これに対してシャフトの回転数が低回転数の場合には、高回転数の場合に比べてシールリップ部が変形しにくく、その結果、シャフトとシールリップ部との間にはオイルが介在しにくくなる。
そのため、シャフトの回転数が低回転数の場合は、高回転数の場合に比べて摺動特性が劣る傾向にあり、自動車用トランスミッションオイルシールにおいては、特に、シャフトの回転数が低回転数の場合における摺動特性の向上が望まれている。
これに対して、本発明の自動車用トランスミッションオイルシールは、上述したように、シールリップ部の表面に上記特定のフッ素樹脂からなる凸部を有しており、このため、オイルのトランスミッション外への漏れを防止するという本質的な機能は確保しつつ、微視的にはシールリップ部とシャフトとの間に極微小な空隙を有し、かつ、シャフトの回転に追従して変形しやすい構造を備えていることとなる。
そのため、本発明の自動車用トランスミッションオイルシールでは、自動車用トランスミッションオイルシールとシャフトとの間にオイルが介在しやすく、シャフトの回転数を問わず、低回転数から高回転数の全域に渡って摺動特性に優れることとなる。
本発明の自動車用オイルシールは、エンジンのバルブステムガイドの末端に配置される自動車用バルブステムシールであって、シールリップ部は、エンジンのバルブステムと摺動自在に密接するものであることも好ましい。
近年、エンジンの高性能化(高回転化)や低燃費化への要求に伴い、自動車用バルブステムシールの摺動特性の向上が望まれており、自動車用バルブステムシールにはさらなる摺動特性の向上が求められている。また、微小リーク下での耐久性向上のため、耐摩耗性に優れることも要求される。
本発明の自動車用オイルシールは、上記構成を有することによって、優れた低摺動性を有するとともに、更に耐摩耗性にも優れる。そのため、自動車用バルブステムシールに好適である。従って、本発明の自動車用オイルシールは、自動車用バルブステムシールであることが特に好ましい。
以下、図面を参照しながら本発明の自動車用バルブステムシールの実施形態について説明する。
図9は、本発明の自動車用バルブステムシールの使用態様を模式的に示す断面図であり、図3に示すB領域の拡大図である。図3は、本発明の自動車用バルブステムシールを使用したエンジンを模式的に示す断面図であり、図8は、図9に示した自動車用バルブステムシールの断面図である。
本発明の自動車用バルブステムシール81は、図8及び9に示すように、バルブステムガイド83の軸方向の片末端(図9参照)に取り付けられるように取付環87が設けられており、取付環87にはフッ素樹脂及びフッ素ゴムを含む組成物からなる弾性部材86が接着されている。
弾性部材86は、バルブステム82の外周面に密接するシールリップ部86a、及び、バルブステムガイド83の外周面に密接する静止シール部86bを有している。シールリップ部86aの周囲に設けられたスプリングばね88によって、バルブステム82に対して緊迫力が付与される。
次に、本発明の自動車用オイルシールの製造方法について説明する。
本発明の自動車用オイルシールにおいて、上記弾性部材は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とを含む架橋性組成物を架橋することにより得ることができる。特に、本発明の自動車用オイルシールは、後述する製造方法により得られるものであることが好ましい。
本発明の自動車用オイルシールは、
(I)フッ素樹脂と未架橋フッ素ゴムとを混合する工程、
(II)得られた混合物を成形架橋する成形架橋工程、及び
(III)得られた架橋成形品をフッ素樹脂の融点以上の温度に加熱する熱処理工程
を含む方法により、所定の形状の弾性部材を製造し、
更に、必要に応じて、金属環、取付環等を内蔵させたり、リングスプリングを配設することにより製造することができる。
上記未架橋フッ素ゴムは、架橋前のフッ素ゴムである。
(I)混合工程
上記架橋性組成物を得る方法は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とを均一に混合できる方法を用いれば特に制限はないが、例えば、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂の各々を単独で凝析した粉末を粉末混合する方法、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂を溶融混練する方法、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とを共凝析する方法等により得ることができる。中でも、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とを溶融混練する方法、又は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とを共凝析する方法が好ましい。
以下に、溶融混練と共凝析について説明する。
(溶融混練)
溶融混練は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とを、フッ素樹脂の融点より5℃低い温度以上の温度、好ましくはフッ素樹脂の融点以上の温度で行う。加熱温度の上限は、未架橋フッ素ゴム又はフッ素樹脂のいずれか低い方の熱分解温度未満である。
溶融混練は、その温度で架橋を引き起こす条件(架橋剤、架橋促進剤及び受酸剤の存在下など)では行わないが、フッ素樹脂の融点より5℃低い温度以上の溶融混練温度で架橋を引き起こさない成分(例えば特定の架橋剤のみ、架橋剤と架橋促進剤の組合せのみ、など)であれば、溶融混練時に添加混合してもよい。架橋を引き起こす条件としては、例えば、ポリオール架橋剤と架橋促進剤と受酸剤との組合せが挙げられる。
したがって、上記溶融混練では、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とを溶融混練してプレコンパウンド(予備混合物)を調製し、ついで、架橋温度未満の温度で他の添加剤や配合剤を混練してフルコンパウンド(架橋性組成物)とする2段階混練法が好ましい。もちろん、全ての成分を架橋剤の架橋温度未満の温度で混練する方法でもよい。
溶融混練は、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等を使用して、フッ素樹脂の融点より5℃低い温度以上の温度、例えば180℃以上、通常220〜300℃でフッ素ゴムと混練することにより行うことができる。これらの中でも、高剪断力を加えることができる点で、加圧ニーダー又は二軸押出機等の押出機を用いることが好ましい。
また、2段階混練法におけるフルコンパウンド化は、架橋温度未満、例えば100℃以下の温度でオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダーなどを用いて行うことができる。
上記溶融混練と類似の処理として、フッ素樹脂中でフッ素ゴムをフッ素樹脂の溶融条件下で架橋する処理(動的架橋)がある。動的架橋は、熱可塑性樹脂のマトリックス中に未架橋ゴムをブレンドし、混練しながら未架橋ゴムを架橋させ、かつその架橋したゴムをマトリックス中にミクロに分散させる方法であるが、上記溶融混練は、架橋を引き起こさない条件(架橋に必要な成分の不存在、又はその温度で架橋反応が起こらない配合など)で溶融混練するものであり、またマトリックスは未架橋ゴムとなり、未架橋ゴム中にフッ素樹脂が均一に分散している混合物である点において本質的に異なる。
(共凝析)
上記混合工程は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とを共凝析して凝析物を得た後、該凝析物を含む架橋性組成物を得るものであることが好ましい。
上記凝析物を含む架橋性組成物を用いることによって、シールリップ部の表面に形成される凸部をより均一かつ微細に形成することができるし、凸部を有する領域の面積比(占有率)をより十分に高くすることもできる。その結果、より優れた低摺動性を有する自動車用オイルシールが得られる。
上記架橋性組成物が、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とを共凝析することによって得られる凝析物を含む場合には、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とが架橋性組成物中で均一に分散していると予想される。このような架橋性組成物を架橋し、熱処理することにより、低摺動性に優れる本発明の自動車用オイルシールが得られるものと考えられる。
上記共凝析の方法としては、例えば、(i)未架橋フッ素ゴムの水性分散液と、フッ素樹脂の水性分散液とを混合した後に凝析させる方法、(ii)未架橋フッ素ゴムの粉末を、フッ素樹脂の水性分散液に添加した後に凝析させる方法、(iii)フッ素樹脂の粉末を、未架橋フッ素ゴムの水性分散液に添加した後に凝析させる方法が挙げられる。上記共凝析の方法としては、特に未架橋フッ素ゴム及びフッ素樹脂が共に均一に分散し易い点で、上記(i)の方法が好ましい。
上記(i)〜(iii)の凝析方法における凝析は、例えば、凝集剤を用いて行うことができる。このような凝集剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸アルミニウム、ミョウバン等のアルミニウム塩、硫酸カルシウム等のカルシウム塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化ナトリウムや塩化カリウム等の一価カチオン塩等の公知の凝集剤が挙げられる。凝集剤により凝析を行う際、凝集を促進させるために酸又はアルカリを添加してpHを調整してもよい。
上記未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とを共凝析することによって得られる凝析物は、例えば、未架橋フッ素ゴムの水性分散液と、フッ素樹脂の水性分散液とを混合した後に凝析し、次いで凝析物を回収し、所望により乾燥させることにより得ることができる。
未架橋フッ素ゴムの架橋系によっては架橋剤が必要であるので、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂とを共凝析して凝析物を得た後、凝析物に架橋剤を添加して架橋性組成物を得てもよい。上記架橋性組成物は、それぞれの架橋系において使用される架橋剤を含むものであってよい。また、上述した各種添加剤等を含むものであってもよい。
通常は、上記凝析物に架橋剤を添加した後、凝析物と架橋剤とを混合する。上記混合は、例えば、ニーダー等を用いた通常の混合方法により、フッ素樹脂の融点未満の温度で混合することができる。
上記未架橋フッ素ゴムの架橋系は、例えば、パーオキサイド架橋系、及び、ポリオール架橋系からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。耐薬品性の観点からはパーオキサイド架橋系が好ましく、耐熱性の観点からはポリオール架橋系が好ましい。
従って、上記架橋剤としては、ポリオール架橋剤、及び、パーオキサイド架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤が好ましい。
架橋剤の配合量は、架橋剤の種類等によって適宜選択すればよいが、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して0.2〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0質量部である。
パーオキサイド架橋は、パーオキサイド架橋可能な未架橋フッ素ゴム及び架橋剤として有機過酸化物を使用することにより行うことができる。
パーオキサイド架橋可能な未架橋フッ素ゴムとしては特に限定されず、パーオキサイド架橋可能な部位を有する未架橋フッ素ゴムであればよい。上記パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、ヨウ素原子を有する部位、臭素原子を有する部位等を挙げることができる。
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、例えば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエイトなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の配合量は、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜5質量部である。
架橋剤が有機過酸化物である場合、上記架橋性組成物は更に架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルフタルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性及び機械物性、シール性が優れる点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
架橋助剤の配合量は、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.01〜7.0質量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.1〜5.0質量部である。架橋助剤が、0.01質量部より少ないと、機械物性が低下し、シール性が劣り、10質量部をこえると、耐熱性に劣り、自動車用オイルシールの耐久性も低下する傾向がある。
ポリオール架橋は、ポリオール架橋可能な未架橋フッ素ゴム及び架橋剤としてポリヒドロキシ化合物を使用することにより行うことができる。ポリオール架橋系における、ポリヒドロキシ化合物の配合量としては、ポリオール架橋可能な未架橋フッ素ゴム100質量部に対して0.01〜8質量部であることが好ましい。ポリヒドロキシ化合物の配合量がこのような範囲であることにより、ポリオール架橋を充分に進行させることができる。より好ましくは0.02〜5質量部である。
上記ポリオール架橋可能な未架橋フッ素ゴムとしては特に限定されず、ポリオール架橋可能な部位を有する未架橋フッ素ゴムであればよい。上記ポリオール架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、未架橋フッ素ゴムの重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
ポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。ポリヒドロキシ芳香族化合物の配合量は、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して、0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、上記架橋性組成物は更に架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤は、ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
なお、架橋促進剤は、更に、酸化マグネシウム等の受酸剤や、水酸化カルシウム等の架橋助剤と組み合わせて用いてもよい。
架橋促進剤としては、オニウム化合物があげられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、シール性の点から、DBU−Bが好ましい。
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、例えば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、シール性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
架橋促進剤の配合量は、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して、0.01〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、未架橋フッ素ゴムの架橋が充分に進行せず、得られる自動車用オイルシールの耐熱性等が低下するおそれがある。8質量部をこえると、上記架橋性組成物の成形加工性が低下するおそれや、機械物性における伸びが低下し、シール性も低下する傾向がある。
フッ素樹脂と未架橋フッ素ゴムとの相溶性向上のため、上記架橋性組成物は、少なくとも1種の多官能化合物を含有してもよい。多官能化合物とは、1つの分子中に同一又は異なる構造の2つ以上の官能基を有する化合物である。
多官能化合物が有する官能基としては、カルボニル基、カルボキシル基、ハロホルミル基、アミド基、オレフィン基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、エポキシ基等、一般に反応性を有することが知られている官能基であれば任意に用いることができる。
これらの官能基を有する化合物は、未架橋フッ素ゴムとの親和性が高いだけではなく、フッ素樹脂が持つ反応性を有することが知られている官能基とも反応し、更に相溶性が向上することも期待される。
上記未架橋フッ素ゴム及びフッ素樹脂を含む架橋性組成物は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂との体積比(未架橋フッ素ゴム)/(フッ素樹脂)が60/40〜95/5であることが好ましい。フッ素樹脂が少なすぎると、本発明の自動車用オイルシールにおいて、充分な低摺動性が得られないおそれがあり、一方、フッ素樹脂が多すぎると、ゴム弾性が損なわれる恐れがある。フッ素ゴムに起因する柔軟性と、フッ素樹脂に起因する低摺動性の両方が良好な点から、(未架橋フッ素ゴム)/(フッ素樹脂)は、65/35〜95/5であることがより好ましく、70/30〜90/10であることが更に好ましい。
上記架橋性組成物は、必要に応じて未架橋フッ素ゴム中に配合される通常の添加剤、例えば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤を配合することができ、これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用すればよい。
(II)成形架橋工程
この工程は、混合工程で得られた混合物を成形し架橋し、製造する弾性部材と略同形状の架橋成形品を製造する工程である。
成形及び架橋の順序は限定されず、成形した後架橋してもよいし、架橋した後成形してもよいし、成形と架橋とを同時に行ってもよい。
成形方法としては、例えば金型などによる加圧成形法、インジェクション成形法などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
架橋方法も、スチーム架橋法、加熱により架橋反応が開始される通常の方法、放射線架橋法等が採用でき、なかでも、加熱による架橋反応が好ましい。
本発明においては、フッ素樹脂が架橋性組成物の表面層へスムーズに移行する点から、加熱による架橋反応が好適である。
架橋を行う温度は、未架橋フッ素ゴムの架橋温度以上であり、フッ素樹脂の融点未満であることが好ましい。架橋をフッ素樹脂の融点以上で行うと、多数の凸部を有する成形品を得ることができないおそれがある。
また、架橋を行う温度は、後述する熱処理工程において、架橋成形品表面にフッ素樹脂からなる凸部を形成させることができる点から、より好ましくはフッ素樹脂の融点より5℃以上低い温度以下である。また、架橋条件における温度の下限は、未架橋フッ素ゴムの架橋温度である。
限定されない具体的な架橋条件としては、通常、150〜250℃の温度範囲、1分間〜24時間の架橋時間内で、使用する架橋剤などの種類により適宜決めればよい。
成形及び架橋の方法及び条件としては、採用する成形及び架橋において公知の方法及び条件の範囲内でよい。また、成形と架橋は順不同で行ってもよいし、同時に並行して行ってもよい。
また、未架橋ゴムの架橋において、最初の架橋処理(1次架橋という)を施した後に2次架橋と称される後処理工程を施すことがあるが、つぎの熱処理工程(III)で説明するように、従来の2次架橋工程と本発明の成形架橋工程(II)及び熱処理工程(III)とは異なる処理工程である。
なお、自動車用オイルシールとして、金属環を備えた自動車用エンジンオイルシールや自動車用トランスミッションオイルシールを製造する場合は、この工程において、例えば、予め金型内に金属環を配置しておき、一体成形を行えばよい。自動車用バルブステムシールを製造する場合にも、同様に、予め金型内に取付環を配置しておき、一体成形を行えばよい。
(III)熱処理工程
この熱処理工程(III)では、得られた架橋成形品をフッ素樹脂の融点以上の温度に加熱する。熱処理工程(III)を経ることにより、製造する弾性部材の表面に、(主にフッ素樹脂からなる)凸部を形成することができる。
本発明における熱処理工程(III)は、架橋成形品表面のフッ素樹脂比率を高めるために行う処理工程であり、この目的に即して、フッ素樹脂の融点以上で、かつ、フッ素ゴム及びフッ素樹脂の熱分解温度未満の温度が採用される。
加熱温度がフッ素樹脂の融点よりも低い場合は、架橋成形品表面に十分な凸部を形成することができず、またフッ素樹脂比率も十分に高くならない。フッ素ゴム及びフッ素樹脂の熱分解を回避するために、加熱温度は、フッ素ゴムの熱分解温度又はフッ素樹脂の熱分解温度のいずれか低い方の温度未満でなければならない。好ましい加熱温度は、短時間で低摩擦化が容易な点から、フッ素樹脂の融点より5℃以上高い温度である。
熱処理工程(III)において、加熱温度は加熱時間と密接に関係しており、加熱温度が比較的下限に近い温度では比較的長時間加熱を行い、比較的上限に近い加熱温度では比較的短い加熱時間を採用することが好ましい。
このように加熱時間は加熱温度との関係で適宜設定すればよいが、加熱処理をあまり長時間行うとフッ素ゴムが熱劣化することがあるので、加熱処理時間は、耐熱性に優れたフッ素ゴムを使用する場合を除いて実用上96時間までである。
通常、加熱処理時間は1分間〜72時間が好ましく、1分間〜48時間がより好ましく、生産性が良好な点から1分間〜24時間が更に好ましいが、より優れた低摺動性を有する自動車用オイルシールを得る観点からは、12時間以上であることが好ましい。
また、上記(I)〜(III)の工程を経て製造した弾性部材は、その表面全体に凸部が形成されることとなるが、本発明の自動車用オイルシールにおいては、少なくともシールリップ部の表面に凸部が形成されていれば、弾性部材のシールリップ部以外の表面には凸部がなくてもよい。そして、このような態様の弾性部材を製造する場合は、例えば、上記(III)の工程を行った後、研磨処理等により不要な部分の凸部を除去すればよい。
ところで、従来行われている2次架橋は1次架橋終了時に残存している架橋剤を完全に分解してフッ素ゴムの架橋を完結し、架橋成形品の機械的特性や圧縮永久ひずみ特性を向上させるために行う処理である。
したがって、フッ素樹脂の共存を想定していない従来の2次架橋条件は、その架橋条件が偶発的に熱処理工程の加熱条件と重なるとしても、2次架橋ではフッ素樹脂の存在を架橋条件設定の要因として考慮せずに未架橋フッ素ゴムの架橋の完結(架橋剤の完全分解)という目的の範囲内での加熱条件が採用されているにすぎず、フッ素樹脂を配合した場合にゴム架橋物(ゴム未架橋物ではない)中でフッ素樹脂を加熱軟化又は溶融する条件を導き出せるものではない。
なお、成形架橋工程(II)において、未架橋フッ素ゴムの架橋を完結させるため(架橋剤を完全に分解するため)の2次架橋を行ってもよい。
また、熱処理工程(III)において、残存する架橋剤の分解が起こり未架橋フッ素ゴムの架橋が完結する場合もあるが、熱処理工程(III)におけるかかる未架橋フッ素ゴムの架橋はあくまで副次的な効果にすぎない。
なお、上記熱処理工程(III)を行った後、必要に応じて、リングスプリングを配設する工程を行ってもよい。
混合工程(I)、成形架橋工程(II)、及び、熱処理工程(III)を含む製造方法により得られる自動車用オイルシールは、フッ素樹脂の表面移行現象によって、弾性部材の表面に凸部が形成されるとともに、表面領域(凸部内を含む)でフッ素樹脂比率が増大した状態になっているものと推定される。
特に、混合工程(I)で得られる混合物は、未架橋フッ素ゴムが連続相を形成しかつフッ素樹脂が分散相を形成している構造、又は未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂が共に連続相を形成している構造をとっているものと推定され、このような構造を形成することにより、成形架橋工程(II)での架橋反応をスムーズに行うことができ、得られる架橋物の架橋状態も均一になり、また熱処理工程(III)におけるフッ素樹脂の表面移行現象がスムーズに起こりフッ素樹脂比率が増大した表面が得られる。
なお、フッ素樹脂の表面層への移行がスムーズに起こる点から、熱処理工程はフッ素樹脂の融点以上での加熱処理が特に優れている。
自動車用オイルシールの表面領域におけるフッ素樹脂比率が増大した状態は、弾性部材の表面をESCA又はIRで化学的に分析することで検証できる。
例えば、ESCA分析では自動車用オイルシールの表面から約10nmまでの深さの原子団を同定できるが、熱処理後において、フッ素ゴム由来の結合エネルギーのピーク(PESCA1)とフッ素樹脂由来のピーク(PESCA2)の比(PESCA1/PESCA2)が熱処理前に対して小さくなっている、すなわちフッ素樹脂の原子団が多くなっている。
また、IR分析では自動車用オイルシールの表面から約0.5〜1.2μmまでの深さの原子団を同定できるが、熱処理後において、深さ0.5μmでのフッ素ゴム由来の特性吸収のピーク(PIR0.51)とフッ素樹脂由来のピーク(PIR0.52)の比(PIR0.51/PIR0.52)が熱処理前に対して小さくなっている、すなわちフッ素樹脂の原子団が多くなっている。しかも、深さ0.5μmでの比(PIR0.51/PIR0.52)と深さ1.2μmでの比(PIR1.21/PIR1.22)を比べても、深さ0.5μmでの比(PIR0.51/PIR0.52)の方が小さくなっており、表面に近い領域の方にフッ素樹脂比率が増大していることを示している。
ところで、フッ素ゴムの表面をフッ素樹脂の塗布や接着で改質したものでは、その表面に本発明の自動車用オイルシールが有する特徴的な凸部は観察されないので、本発明のような組成物内の特定のフッ素樹脂が表面に析出した凸部を備えた自動車用オイルシールは、従来にない新規な自動車用オイルシールである。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
本明細書における各種の特性については、つぎの方法で測定した。
(1)フッ素樹脂の単量体組成
核磁気共鳴装置AC300(Bruker−Biospin社製)を用い、測定温度を(ポリマーの融点+50)℃として19F−NMR測定を行い求めた。
(2)フッ素樹脂の融点
示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments社製)を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて熱測定を行い、一度融点ピークの吸熱終了温度+30℃になったら、降温速度−10℃/分で50℃まで降温させ、再度昇温速度10℃/分で吸熱終了温度+30℃まで昇温させ、得られた吸熱曲線のピークから融点を求めた。
(3)フッ素樹脂のメルトフローレート〔MFR〕
MFRは、ASTM D3307−01に準拠し、メルトインデクサー(東洋精機社製)を用いて、280℃又は327℃、5kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)をMFRとした。
(4)フッ素樹脂の貯蔵弾性率(E’)
貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により70℃で測定する値であり、アイティ−計測制御社製動的粘弾性装置DVA220で長さ30mm、巾5mm、厚み0.25mmのサンプルを引張モード、つかみ幅20mm、測定温度25℃から200℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hzの条件で測定した。
(5)架橋(加硫)特性
キュラストメーターII型(JSR(株)製)にて最低トルク(ML)、最高トルク(MH)、誘導時間(T10)及び最適加硫時間(T90)を測定した。
(6)100%モジュラス(M100)
JIS K6251に準じて測定した。
(7)引張破断強度(Tb)
JIS K6251に準じて測定した。
(8)引張破断伸び(Eb)
JIS K6251に準じて測定した。
(9)硬度(ショアA)
JIS K6253に準じ、デュロメータ タイプAにて測定した(ピーク値)。
(10)圧縮永久歪
JIS K6262に準じて200℃×70h後の圧縮永久歪を測定した。
(11)凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の個数
凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の個数等は、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用い、解析ソフトとして三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いて算出した。凸部を有する領域の面積比は、凸部の底部断面積を求め、断面積合計の値が、測定全領域面積に占める割合として求められる。凸部の個数は、測定領域中の凸部の個数を1mm当たりの数に換算したものである。
(12)エンジンオイルシール及びトランスミッションオイルシールの回転トルク測定
以下に示す方法で自動車用オイルシールの回転トルクを測定した。
図10は、使用したオイルシールトルク試験機の模式図である。
図10に示すオイルシールトルク試験機110では、シャフト114が軸受113を介してハウジング119内に回転自在に配設されている。シャフト114の先端側(図10中、右側)には、油室112が設けられるとともに、オイルシール保持部材117が取り付けられている。測定用オイルシール111は、油室112とオイルシール保持部材117との間隙にオイルシール保持部材117に対して摺動可能に固定される。また、油室112にはロードセル116が接続されている。なお、図10中、115はオイルシールである。
そして、測定用オイルシール111を取り付けた状態で、油室の温度(油温)を所定の温度に設定し、シャフト114をモータ(図示せず)により所定の回転で回転させると、オイルシール保持部材117がシャフト114と一体的に回転し、かつ、測定用オイルシール111に対して摺動し、このときの測定用オイルシール111の荷重をロードセル116にて測定し、回転半径を乗じてトルク換算する。
ここで、測定条件は、油温(試験温度)を常温とし、シャフト114の回転数を2000rpm又は5000rpmとした。
(13)バルブステムシールのストローク荷重測定
以下に示す方法で自動車用バルブステムシールのストローク荷重を測定した。
図11は、実施例で使用したストローク荷重測定試験機の模式図である。
図11に示すストローク荷重測定試験機120では、バルブガイド124が加振機123に設置されている。バルブガイド124の先端側には測定用バルブステムシール121がバルブステム軸127に摺動可能に固定される。また、バルブステム軸127は架台128にロードセル126を介して固定されている。
そして、バルブガイド124を加振機123により所定の往復速度で往復運動させると、測定用バルブステムシール121がバルブステム軸127に密接した状態で往復運動し、このときのバルブステム軸127にかかる荷重(ストローク荷重)をロードセル126で測定する。
ここで、測定条件は、常温で、加振機123の往復速度を9.6cpm又は350cpmとした。
また、表及び明細書中の使用材料は、それぞれ次に示すものである。
架橋剤
ビスフェノールAF 特級試薬(和光純薬工業(株)製)
BTPPC 特級試薬(和光純薬工業(株)製)
架橋助剤
MgO(酸化マグネシウム、協和化学工業(株)製 MA150)
水酸化カルシウム(近江化学工業(株)製 CALDIC2000)
充填剤
カーボンブラック(Cancarb社製のMTカーボン:N990)
フッ素ゴム(A)
ダイキン工業(株)製 2元フッ素ゴム水性ディスパージョン(固形分濃度26質量%、フッ素ゴム:VdF/HFP共重合体、VdF/HFP=78/22(モル比))(フッ素ゴムディスパージョン(A))
フッ素樹脂(B1)
ダイキン工業(株)製 ネオフロンFEP(TFE/HFP共重合体)水性ディスパージョン(固形分濃度21質量%、MFR31.7g/10min(327℃、5kg測定)、融点215℃、貯蔵弾性率(E’)167MPa、TFE/HFP=87.9/12.1(モル比))(フッ素樹脂ディスパージョン(B1))
フッ素樹脂(B2)
ダイキン工業(株)製 ネオフロンFEP(TFE/HFP共重合体)水性ディスパージョン(固形分濃度20.1質量%、MFR7.5g/10min(280℃、5kg測定)、融点186℃、貯蔵弾性率(E’)59MPa、TFE/HFP=84.7/15.3(モル比))(フッ素樹脂ディスパージョン(B2))
フッ素樹脂(C)
ダイキン工業(株)製 ネオフロンETFE(Et/TFE共重合体、商品名:EP−610)
(架橋性組成物の調製1)
容量1Lのミキサー内に、水500mlと塩化マグネシウム4gをあらかじめ混合した溶液にフッ素樹脂ディスパージョン(B1)とフッ素ゴムディスパージョン(A)とを、固形分が体積比で75/25(フッ素ゴム/フッ素樹脂)となるようにあらかじめ混合した溶液400mlを投入し、ミキサーにて5分間混合し、共凝析した。
共凝析後、固形分を取り出し、120℃×24時間乾燥炉で乾燥させた後、オープンロールにて表1に示す所定の配合物を混合して、架橋性組成物1を調製した。
(架橋性組成物の調製2)
フッ素樹脂ディスパージョン(B1)の代わりにフッ素樹脂ディスパージョン(B2)を用いた以外は、架橋性組成物の調製1と同じ方法で架橋性組成物2を調製した。
(架橋性組成物の調製3)
容量1Lのミキサー内に、水500mlと塩化マグネシウム4gをあらかじめ混合した溶液にフッ素ゴムディスパージョン(A)400mlを投入し、ミキサーにて5分間混合し、凝析した。凝析後、固形分を取り出し、120℃×24時間乾燥炉で乾燥させた後、内容量3Lの加圧ニーダーに体積充填率が85%になるように凝析後のフッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(C)を体積比で75/25となるように投入し、材料温度(フッ素ゴムとフッ素樹脂)が230℃になるまで練り、コンパウンドを調製した。その後コンパウンドをオープンロールにて表1に示す所定の配合物を混合して、架橋性組成物3を調製した。
実施例1−1
成形架橋工程
自動車用エンジンオイルシールの金型に金属環を配設し、架橋性組成物1を投入して、8MPaに加圧して、180℃で5分間加硫させて、架橋成形品(適応軸径80mm、外径98mm、幅8mm)を得た。
熱処理工程
得られた架橋成形品を230℃に維持された加熱炉中に24時間入れ、加熱処理をした後、リングスプリングを配設し、図4に示すような構造を有する自動車用エンジンオイルシールを得た。得られた自動車用エンジンオイルシールを用いて、凸部の数、底部断面積、高さ、凸部を有する領域の面積比を測定した。また、自動車用エンジンオイルシールの回転トルクを測定した。結果を表1に示す。
実施例1−2
架橋性組成物1の代わりに架橋性組成物2を用いたこと以外は、実施例1−1と同じ方法で自動車用エンジンオイルシールを得て、各種測定を行った。
比較例1
架橋性組成物1の代わりに架橋性組成物3を用いたこと以外は、実施例1−1と同じ方法で自動車用エンジンオイルシールを得て、各種測定を行った。
実施例2−1
成形架橋工程
自動車用トランスミッションオイルシールの金型に金属環を配設し、架橋性組成物1を投入して、8MPaに加圧して、180℃で5分間加硫させて、架橋成形品(適応軸径80mm、外径98mm、幅8mm)を得た。
熱処理工程
得られた架橋成形品を230℃に維持された加熱炉中に24時間入れ、加熱処理をし、図7に示すような構造を有する自動車用トランスミッションオイルシールを得た。得られた自動車用トランスミッションオイルシールを用いて、凸部の数、底部断面積、高さ、凸部を有する領域の面積比を測定した。また、自動車用トランスミッションオイルシールの回転トルクを測定した。結果を表1に示す。
実施例2−2
架橋性組成物1の代わりに架橋性組成物2を用いたこと以外は、実施例2−1と同じ方法で自動車用トランスミッションオイルシールを得て、各種測定を行った。
比較例2
架橋性組成物1の代わりに架橋性組成物3を用いたこと以外は、実施例2−1と同じ方法で自動車用トランスミッションオイルシールを得て、各種測定を行った。
実施例3−1
成形架橋工程
自動車用バルブステムシールの金型に取付環を配設し、フルコンパウンドを投入して、8MPaに加圧して、180℃で5分間加硫させて、架橋成形品(リップ内径4.9mm、外径12.8mm、高さ10.1mm)を得た。
熱処理工程
得られた架橋成形品を230℃に維持された加熱炉中に24時間入れ、加熱処理をし、図8に示すような構造を有する自動車用バルブステムシールを得た。
得られた自動車用バルブステムシールを用いて、凸部の数、底部断面積、高さ、凸部を有する領域の面積比を測定した。また、自動車用バルブステムシールのストローク荷重を測定した。結果を表1に示す。
実施例3−2
架橋性組成物1の代わりに架橋性組成物2を用いたこと以外は、実施例3−1と同じ方法で自動車用バルブステムシールを得て、各種測定を行った。
比較例3
架橋性組成物1の代わりに架橋性組成物3を用いたこと以外は、実施例3−1と同じ方法で自動車用バルブステムシールを得て、各種測定を行った。
Figure 0005786967
本発明の自動車用オイルシールは、シール性はもちろんのこと、優れた低摺動性を有するため、種々の自動車用オイルシールに好適である。中でも、回転トルクが小さいことから、自動車用エンジンオイルシール、自動車用トランスミッションオイルシールに好適である。また、ストローク荷重が小さいことから、自動車用バルブステムシールとしても好適である。
10:シールリップ部
11:凸部
20、50、119:ハウジング
21:自動車用エンジンオイルシール
22、52、86:弾性部材
23、53:主リップ部
24、54:はめあい部
25:副リップ部
26、56:金属環
27、57:リングスプリング
29:クランクシャフト
30:エンジン
32:クランクプーリー
33:コンロッド
34:ピストン
35:バルブ
51:自動車用トランスミッションオイルシール
59:車軸
60:トランスミッション
62:メインシャフト(入力シャフト)
63:カウンターシャフト(出力シャフト)
81:自動車用バルブステムシール
82:バルブステム
83:バルブステムガイド
86a:シールリップ部
86b:静止シール部
87:取付環
88:スプリングばね
95:エンジンバルブ
110:オイルシールトルク試験機
111:測定用オイルシール
112:油室
113:軸受
114:シャフト
115:オイルシール
116、126:ロードセル
117:オイルシール保持部材
120:ストローク荷重測定試験機
121:測定用バルブステムシール
123:加振機
124:バルブガイド
127:バルブステム軸
128:架台

Claims (8)

  1. シールリップ部を有する弾性部材を備えた自動車用オイルシールであって、
    前記弾性部材は、フッ素ゴム及びフッ素樹脂を含む組成物からなり、かつ、少なくとも前記シールリップ部の表面に凸部を有するとともに、前記凸部が実質的に前記組成物に含まれるフッ素樹脂からなり、
    前記フッ素樹脂は、
    テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位とを含み、テトラフルオロエチレン単位70〜99モル%とヘキサフルオロプロピレン単位1〜30モル%のみからなる共重合体、又は、
    テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位とを含み、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜9モル%であり、テトラフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位が合計で91〜99.9モル%である共重合体である
    ことを特徴とする自動車用オイルシール。
  2. フッ素ゴムは、
    ビニリデンフルオライドに基づく重合単位と、
    テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位と、
    を含む共重合体である請求項1記載の自動車用オイルシール。
  3. シールリップ部に占めるフッ素樹脂の体積比が0.05〜0.45であり、
    シールリップ部の表面に占める凸部を有する領域の面積比が0.06以上であり、
    シールリップ部の表面に占める凸部を有する領域の面積比が、シールリップ部に占めるフッ素樹脂の体積比の1.2倍以上である
    請求項1又は2記載の自動車用オイルシール。
  4. 凸部は、高さが0.1〜30.0μmである
    請求項1、2又は3記載の自動車用オイルシール。
  5. 凸部は、底部断面積が0.1〜2000μmである
    請求項1、2、3又は4記載の自動車用オイルシール。
  6. 自動車用エンジンオイルシールであって、
    弾性部材は、シールリップ部に少なくとも主リップ部が設けられ、少なくとも前記主リップ部の表面に凸部を有する
    請求項1、2、3、4又は5記載の自動車用オイルシール。
  7. 自動車用トランスミッションオイルシールであって、
    弾性部材は、シールリップ部に少なくとも主リップ部が設けられ、少なくとも前記主リップ部の表面に凸部を有する
    請求項1、2、3、4又は5記載の自動車用オイルシール。
  8. エンジンのバルブステムガイドの末端に配置される自動車用バルブステムシールであって、
    シールリップ部は、エンジンのバルブステムと摺動自在に密接するものである
    請求項1、2、3、4又は5記載の自動車用オイルシール。
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