JP2016090013A - オイルシール - Google Patents

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迪子 土井
柳口 富彦
Tomihiko Yanagiguchi
富彦 柳口
小野 剛
Takeshi Ono
剛 小野
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【課題】優れた動摩擦性を有するオイルシールを提供する。【解決手段】シールリップ部を有する弾性部材22を備えたオイルシールであって、前記弾性部材は、フッ素ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む組成物からなり、かつ、シールリップ部に少なくとも主リップ部23が設けられたものであり、前記主リップ部は、下記XとYの比率〔X/Y〕が、1.2以上であることを特徴とするオイルシール。X:主リップ部の表面を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm−1の強度(bX)と吸収位置1395cm−1の強度(aX)の比〔強度(bX)/強度(aX)〕Y:主リップ部の内部を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm−1の強度(bY)と吸収位置1395cm−1の強度(aY)の比〔強度(bY)/強度(aY)〕【選択図】図1

Description

本発明は、オイルシールに関する。
自動車においては、エンジンオイル等の流体が漏れることを防止するため、種々のオイルシールが使用されている。自動車用のオイルシールとしては、例えば、エンジンのクランクシャフトに当接して使用されるエンジンオイルシール、トランスミッションに使用されるオイルシール等が挙げられる。
自動車用のオイルシールとしては、例えば、特許文献1には、エンジンオイルシールとして、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム、水素化ニトリルゴム及びこれらのブレンド物等のエラストマーとケイ酸化合物とからなるエラストマー組成物により構成されたシール用リップ部を有するオイルシールが開示されている。ここで、エラストマーとしては、ACM、FKMが好ましいことが記載されている。
特許文献2には、ゴム性のリップ部がシリコーンゴムやフッ素ゴムで構成されたエンジンに使用するオイルシールが開示されている。
トランスミッションオイルシールとしては、例えば、特許文献3には、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体からなり、シールリップを備えたシール部材が開示されている。
しかしながら、フッ素ゴムは本来そのエラストマー性により、成形体表面の摩擦係数や粘着性が高く、摺動部材等の動摩擦性が要求される用途では改善が求められていた。
また、特許文献4には、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを含む架橋性組成物を架橋することにより得られるフッ素ゴム成形品であって、フッ素ゴム成形品表面に凸部を有し、上記フッ素ゴム成形品表面に対する上記凸部を有する領域の面積比が0.06以上であり、上記フッ素ゴム成形品に対するフッ素樹脂(B)の体積比が0.05〜0.45であり、上記凸部を有する領域の面積比が、上記フッ素樹脂(B)の体積比の1.2倍以上であり、フッ素樹脂(B)は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体であることを特徴とするフッ素ゴム成形品が提案されている。
特開平8−338533号公報 特開平7−208610号公報 特開2005−61454号公報 特開2012−153880号公報
本発明の目的は、優れた動摩擦性を有するオイルシールを提供することである。
本発明は、シールリップ部を有する弾性部材を備えたオイルシールであって、上記弾性部材は、フッ素ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む組成物からなり、かつ、シールリップ部に少なくとも主リップ部が設けられたものであり、上記主リップ部は、XとYの比率〔X/Y〕が、1.2以上であることを特徴とするオイルシールである。
X:主リップ部の表面を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm−1の強度(bX)と吸収位置1395cm−1の強度(aX)の比〔強度(bX)/強度(aX)〕
Y:主リップ部の内部を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm−1の強度(bY)と吸収位置1395cm−1の強度(aY)の比〔強度(bY)/強度(aY)〕
本発明のオイルシールは、少なくとも前記主リップ部の表面に線状の凸部を有することが好ましい。
上記弾性部材は、含二酸化ケイ素化合物(B)の含有量がフッ素ゴム(A)100質量部に対して0.1〜100質量部であることが好ましい。
本発明のオイルシールは、エンジンオイルシールであることが好ましい。また、本発明のオイルシールは、トランスミッションオイルシールであることが好ましい。
本発明のオイルシールは、自動車用オイルシールであることが好ましい。
本発明のオイルシールは、上記構成を有することによって、優れた動摩擦性を有する。
エンジンオイルシールの使用態様を模式的に示す断面図であり、図2に示すA領域の拡大図である。 エンジンオイルシールを使用したエンジンを模式的に示す断面図である。 図1に示したエンジンオイルシールの斜視図である。 トランスミッションオイルシールの使用態様を模式的に示す断面図であり、図5に示すC領域の拡大図である。 トランスミッションオイルシールを使用したトランスミッションを模式的に示す断面図である。 図4に示したトランスミッションオイルシールの斜視図である。 実施例で使用したオイルシールトルク試験機の模式図である。 線状の凸部を有する主リップ部の表面を示す斜視模式図である。 図8における弾性部材の表面に垂直な直線Bと直線Bを含む平面で主リップ部を切断した断面模式図である。 図8における弾性部材の表面に垂直な直線Cと直線Cを含む平面で主リップ部を切断した断面模式図である。 図8における弾性部材表面と平行な平面で凸部の底部を切断した面を示す模式図である。 実施例1で得られた自動車用エンジンオイルシールの主リップ部の表面をレーザー顕微鏡で観察した3D画像である。 特開2012−153880号公報に記載の成形体の表面をレーザー顕微鏡で観察した3D画像である。
本発明のオイルシールは、シールリップ部を有する弾性部材を備えたオイルシールであって、上記弾性部材は、フッ素ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む組成物からなり、かつ、シールリップ部に少なくとも主リップ部が設けられたものであり、上記主リップ部は、XとYの比率〔X/Y〕が、1.2以上である。
X:主リップ部の表面を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm−1の強度(bX)と吸収位置1395cm−1の強度(aX)の比〔強度(bX)/強度(aX)〕
Y:主リップ部の内部を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm−1の強度(bY)と吸収位置1395cm−1の強度(aY)の比〔強度(bY)/強度(aY)〕
本発明のオイルシールは、優れた動摩擦性を有するため、自動車用オイルシールとして特に好適である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のオイルシールは、エンジンオイルシールであって、上記弾性部材は、シールリップ部に少なくとも主リップ部が設けられ、主リップ部の比率〔X/Y〕が1.2以上であることが好ましい。
近年、自動車エンジンの高性能化(高回転化)や低燃費化への要求に伴い、エンジンオイルシールの摺動特性の向上が望まれており、特に、エンジンオイルシールには、自動車エンジンの低回転域から高回転域の全域に渡って摺動特性の向上が求められている。
本発明のオイルシールは、上記構成を有することによって、動摩擦性に優れることから、エンジンの低回転域から高回転域の全域に渡って摺動特性に優れる。そのため、回転時のトルクが非常に小さく、低燃費が望まれるエンジンオイルシールに好適である。
従って、本発明のオイルシールは、エンジンオイルシールであることが好ましく、自動車用エンジンオイルシールであることがより好ましい。
以下、図面を参照しながらエンジンオイルシールの実施形態について説明する。
図1は、エンジンオイルシールの使用態様を模式的に示す断面図であり、図2に示すA領域の拡大図である。図2は、エンジンオイルシールを使用したエンジンを模式的に示す断面図であり、図3は、図1に示したエンジンオイルシールの斜視図である。なお、図1のエンジンオイルシールは、図3のA−A線断面を描画したものである。
エンジンオイルシール21は、図1〜3に示すように、径方向断面形状が略(逆)コの字状の円環構造を有し、含二酸化ケイ素化合物(B)及びフッ素ゴム(A)を含む組成物からなる弾性部材22、円環状の金属環26及びリングスプリング27を備えている。
弾性部材22は、クランクシャフト29に当接する径方向断面楔状の主リップ部23及び周方向に沿って内周側に突出する副リップ部25が設けられたシールリップ部、並びに、ハウジング20に密着するはめあい部24を有している。金属環26は弾性部材22に内蔵されており、これによりエンジンオイルシール21の補強の役割を果たしている。リングスプリング27は、主リップ部23の外周面側に配設されており、主リップ部23はリングスプリング27の付勢力によりクランクシャフト29に当接されることとなる。
エンジンオイルシール21は、主リップ部23がエンジン30内部側に、副リップ部25が外部側に位置する向きで、主リップ部23がエンジン30のクランクシャフト29に摺動自在に当接し、はめあい部24がハウジング20に密着するようにクランクシャフト29とハウジング20との間隙に圧入装着される。なお、図2において、32はクランクプーリー、33はコンロッド、34はピストン、35はバルブである。
ここで、エンジンオイルシール21は、弾性部材22が含二酸化ケイ素化合物(B)及びフッ素ゴム(A)を含む組成物からなるとともに、主リップ部の比率〔X/Y〕が1.2以上である。また、副リップ部の比率〔X/Y〕も1.2以上であることが好ましい。即ち、エンジンオイルシール21は、クランクシャフト29との接触部において、上記比率〔X/Y〕が1.2以上であることが好ましい。
更に、主リップ部23及び副リップ部25の表面には線状の凸部(例えば、図8参照)を有していることが好ましい。即ち、エンジンオイルシール21は、クランクシャフト29との接触部に線状の凸部を有していることが好ましい。
そして、エンジンオイルシール21は、主リップ部の比率〔X/Y〕が1.2以上であるため、クランクシャフト29との間の動摩擦係数が小さく、摺動性に優れる。
この摺動性に優れるとの効果は、エンジンの回転数を問わず、低回転数から高回転数の全域に渡って奏することができる。これについてもう少し詳しく説明する。
エンジンオイルシール21の主リップ部23の材質は、上記含二酸化ケイ素化合物(B)及びフッ素ゴム(A)を含む組成物である。そのため、従来公知の他のエンジンオイルシールの材質、例えば、ニトリルゴムやアクリルゴム、上記含二酸化ケイ素化合物(B)を含有しないフッ素ゴム(A)等に比べて摺動特性に優れている。
そのうえで、エンジンオイルシール21は、主リップ部の比率〔X/Y〕が1.2以上である、すなわち、主リップ部表面の含二酸化ケイ素化合物(B)の比率が高いことによって、フッ素ゴム(A)の柔軟性を維持しながら、摺動性が著しく向上する。
また、エンジンオイルシール21は、主リップ部の表面に、好ましくは更に副リップ部の表面に、線状の凸部を有することがより好適な態様である。エンジンオイルシールがクランクシャフトに対して摺動している場合、エンジンオイルシールとクランクシャフトとの間にはオイルが介在している(油膜が形成されている)ことが知られている。そして、このオイルが両者の間で潤滑剤として機能すると考えられている。即ち、オイルが介在することにより、エンジンオイルシールは低い摩擦抵抗で摺動することができる。
一方、エンジンオイルシールは、シール材として機能することが大前提のため、そのシールリップ部はクランクシャフトに隙間無く当接される。そのため、この状態からエンジンオイルシールとクランクシャフトとの間にオイルが介在するには、シールリップ部が変形し、この変形に追従してオイルがシールリップ部とクランクシャフトとの間に入り込むことが必要となる。ここで、シールリップ部の変形は、クランクシャフトの回転に追従して生じるため、クランクシャフトが高回転数で回転している際にはシールリップ部も変形しやすく、両者の間にオイルが入り込みやすくなる。これに対してクランクシャフトの回転数が低回転数の場合には、高回転数の場合に比べてシールリップ部が変形しにくく、その結果、クランクシャフトとシールリップ部との間にはオイルが介在しにくくなる。
そのため、クランクシャフトの回転数が低回転数の場合は、高回転数の場合に比べて摺動特性が劣る傾向にあり、エンジンオイルシールにおいては、特に、クランクシャフトの回転数が低回転数の場合における摺動特性の向上が望まれている。
これに対して、本発明のオイルシールが主リップ部の表面に線状の凸部を有する場合、オイルのエンジン外への漏れを防止するという本質的な機能は確保しつつ、微視的にはシールリップ部とクランクシャフトとの間に極微小な空隙を有し、かつ、クランクシャフトの回転に追従して変形しやすい構造を備えていることとなる。
そのため、本発明のエンジンオイルシールでは、エンジンオイルシールとクランクシャフトとの間にオイルが介在しやすく、クランクシャフトの回転数を問わず、低回転数から高回転数の全域に渡って摺動特性に優れることとなる。
なお、本発明のエンジンオイルシールの使用箇所は、クランクシャフトに限定されず、例えば、エンジンがカム軸を備える場合には、カム軸と摺動するエンジンオイルシールとしても使用することができる。
本発明のオイルシールは、トランスミッションオイルシールであって、上記弾性部材は、シールリップ部に少なくとも主リップ部が設けられ、主リップ部の比率〔X/Y〕が1.2以上であることも好ましい。
近年、エンジンの高性能化や低燃費化への要求に伴い、トランスミッションオイルシールの摺動特性の向上が望まれており、特に、トランスミッションオイルシールには低速走行時から高速走行時の全域に渡って摺動特性の向上が求められている。
本発明のオイルシールは、上記構成を有することによって、動摩擦性に優れることから、低速走行時から高速走行時の全域に渡って摺動特性に優れる。そのため、回転時のトルクが非常に小さく、低燃費が望まれるトランスミッションオイルシールに好適である。
従って、本発明のオイルシールは、トランスミッションオイルシールであることが好ましく、自動車用トランスミッションオイルシールであることが特に好ましい。
以下、図面を参照しながらトランスミッションオイルシールの実施形態について説明する。
図4は、トランスミッションオイルシールの使用態様を模式的に示す断面図であり、図5に示すC領域の拡大図である。図5は、トランスミッションオイルシールを使用したトランスミッションを模式的に示す断面図であり、図6は、図4に示したトランスミッションオイルシールの斜視図である。なお、図4のトランスミッションオイルシールは、図6のB−B線断面を描画したものである。
トランスミッションオイルシール51は、図4〜6に示すように、径方向断面形状が略(逆)コの字状の円環構造を有し、フッ素樹脂及びフッ素ゴムを含む組成物からなる弾性部材52、円環状の金属環56及びリングスプリング57を備えている。
弾性部材52は、内周側に車軸59に当接する径方向断面楔状の主リップ部53が設けられたシールリップ部を、外周側にハウジング50に密着するはめあい部54を有している。金属環56は弾性部材52に内蔵されており、これによりトランスミッションオイルシール51の補強の役割を果たしている。リングスプリング57は、主リップ部53の外周面側に配設されており、主リップ部53はリングスプリング57の付勢力により車軸59に当接されることとなる。
トランスミッションオイルシール51は、リングスプリング57がトランスミッション60内部側に露出する向きで、主リップ部53がトランスミッション60の車軸59に摺動自在に当接し、はめあい部54がハウジング50に密着するように車軸59とハウジング50との間隙に圧入装着される。なお、図5において、62はクランクシャフトに連結されるメインシャフト(入力シャフト)、63はメインシャフトと平行に配置されたカウンターシャフト(出力シャフト)である。
また、トランスミッションオイルシール51は、車軸59のみならず、図5に示すように、メインシャフト62、及び、カウンターシャフト63にも摺動可能に配設されている。
ここで、トランスミッションオイルシール51は、弾性部材52が含二酸化ケイ素化合物(B)及びフッ素ゴム(A)を含む組成物からなるとともに、主リップ部53の比率〔X/Y〕が、1.2以上である。即ち、トランスミッションオイルシール51は、車軸59との接触部において、比率〔X/Y〕が1.2以上であることが好ましい。
また、上記主リップ部は、表面に線状の凸部を有することが好ましい。即ち、トランスミッションオイルシール51は、車軸59との接触部に線状の凸部を有していることが好ましい。
そして、トランスミッションオイルシール51は、比率〔X/Y〕が、1.2以上であるため、シャフト(車軸やメインシャフト、カウンターシャフト)との間の摩擦係数が小さく、摺動特性に優れる。
以下、本明細書において、単にシャフトと表記した場合、車軸、メインシャフト及びカウンターシャフトを含むこととする。
この摺動特性に優れるとの効果は、シャフトの回転数を問わず、低回転数から高回転数の全域に渡って奏することができる。これについてもう少し詳しく説明する。
トランスミッションオイルシール51の主リップ部53の材質は、含二酸化ケイ素化合物(B)及びフッ素ゴム(A)を含む組成物である。そのため、従来公知の他のトランスミッションオイルシールの材質、例えば、ニトリルゴムやアクリルゴム、上記含二酸化ケイ素化合物(B)を含有しないフッ素ゴム(A)等に比べて摺動特性に優れている。
そのうえで、トランスミッションオイルシール51は、主リップ部の比率〔X/Y〕が、1.2以上である。主リップ部の比率〔X/Y〕が1.2以上である、すなわち、主リップ部表面の含二酸化ケイ素化合物(B)の比率が高いことによって、フッ素ゴム(A)の柔軟性を維持しながら、摺動性が著しく向上する。
また、トランスミッションオイルシール51は、主リップ部の表面に線状の凸部を有することがより好適な態様である。トランスミッションオイルシールがシャフトに対して摺動している場合、トランスミッションオイルシールとシャフトとの間にはオイルが介在している(油膜が形成されている)ことが知られている。そして、このオイルが両者の間で潤滑剤として機能すると考えられている。即ち、オイルが介在することにより、トランスミッションオイルシールは低い摩擦抵抗で摺動することができる。
一方、トランスミッションオイルシールは、シール材として機能することが大前提のため、そのシールリップ部はシャフトに隙間無く当接される。そのため、この状態からトランスミッションオイルシールとシャフトとの間にオイルが介在するには、シールリップ部が変形し、この変形に追従してオイルがシールリップ部とシャフトとの間に入り込むことが必要となる。ここで、シールリップ部の変形は、シャフトの回転に追従して生じるため、シャフトが高回転数で回転している際にはシールリップ部も変形しやすく、両者の間にオイルが入り込みやすくなる。これに対してシャフトの回転数が低回転数の場合には、高回転数の場合に比べてシールリップ部が変形しにくく、その結果、シャフトとシールリップ部との間にはオイルが介在しにくくなる。
そのため、シャフトの回転数が低回転数の場合は、高回転数の場合に比べて摺動特性が劣る傾向にあり、トランスミッションオイルシールにおいては、特に、シャフトの回転数が低回転数の場合における摺動特性の向上が望まれている。
これに対して、本発明のトランスミッションオイルシールが主リップ部の表面に線状の凸部を有する場合、オイルのトランスミッション外への漏れを防止するという本質的な機能は確保しつつ、微視的にはシールリップ部とシャフトとの間に極微小な空隙を有し、かつ、シャフトの回転に追従して変形しやすい構造を備えていることとなる。
そのため、本発明のトランスミッションオイルシールでは、トランスミッションオイルシールとシャフトとの間にオイルが介在しやすく、シャフトの回転数を問わず、低回転数から高回転数の全域に渡って摺動特性に優れることとなる。
本発明のオイルシールは、シールリップ部を有する弾性部材を備え、該弾性部材は、ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む組成物からなる。
〔フッ素ゴム(A)〕
上記フッ素ゴム(A)は、通常、主鎖を構成する炭素原子に結合しているフッ素原子を有し且つゴム弾性を有する非晶質の重合体からなる。上記フッ素ゴムは、1種の重合体からなるものであってもよいし、2種以上の重合体からなるものであってもよい。
上記フッ素ゴム(A)は、加工性が良好な点から、ムーニー粘度(ML1+10(100℃))が5〜140であることが好ましく、10〜120であることがより好ましく、20〜100であることが更に好ましい。
上記ムーニー粘度(ML1+10(100℃))は、ASTM D1646に準拠して測定される値である。
上記フッ素ゴム(A)は、フッ素含有率64質量%以上のフッ素ゴムであることが好ましく、フッ素含有率66質量%以上のフッ素ゴムであることがより好ましい。フッ素含有率が、64質量%未満であると耐薬品性、耐燃料油性、燃料透過性が劣る傾向がある。フッ素含有率の上限値は特に限定されないが、74質量%以下であることが好ましい。フッ素含有率は、ポリマー組成から計算によって求めることができる。
上記フッ素ゴム(A)としては、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)及び式(1):
CF=CF−Rf (1)
(式中、Rfは−CF又はORf(Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物(例えばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する重合単位を含むことが好ましい。
なお、本明細書において、「重合単位」は、フッ素ゴムやフッ素樹脂の分子構造上の一部分であって、対応する単量体に基づく部分を意味する。
上記フッ素ゴム(A)としては、フッ化ビニリデン(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、フルオロホスファゼン系フッ素ゴム、TFE/PAVE系フッ素ゴム等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、又は本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
上記TFE/PAVE系フッ素ゴムは、TFE/PAVEの組成が、(50〜90)/(50〜10)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは、(50〜80)/(50〜20)(モル%)であり、更に好ましくは、(55〜75)/(45〜25)(モル%)である。この場合のPAVEとしては、例えばPMVE、PPVE等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、又は任意に組み合わせて用いることができる。
上記TFE/プロピレン(Pr)系フッ素ゴムは、TFE/プロピレンの組成が、(45〜70)/(55〜30)(モル%)からなる含フッ素共重合体をいう。これら2成分のみからなるものであってもよいし、更に、特定の第3成分(例えばPAVE)をTFE単位及びプロピレン単位の合計に対し0〜40モル%含んでいてもよい。
エチレン(Et)/HFP系フッ素ゴムとしては、Et/HFPの組成が、(35〜80)/(65〜20)(モル%)であることが好ましく、(40〜75)/(60〜25)(モル%)がより好ましい。
Et/HFP/TFE系フッ素ゴムは、Et/HFP/TFEの組成が、(35〜75)/(25〜50)/(0〜15)(モル%)であることが好ましく、(45〜75)/(25〜45)/(0〜10)(モル%)がより好ましい。
上記VdF系フッ素ゴムは、少なくともVdFに由来する重合単位(VdF単位)を含むフッ素ゴムである。
上記VdF系フッ素ゴムは、VdF単位の含有量が、VdF単位とその他の共単量体に由来する重合単位との合計モル数に対し20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、45モル%以上が更に好ましく、50モル%以上が更により好ましく、55モル%以上が特に好ましく、60モル%以上が最も好ましい。VdF単位の含有量はまた、VdF単位とその他の共単量体に由来する重合単位との合計モル数に対し90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましく、80モル%以下が更に好ましく、78モル%以下が更により好ましい。
また、上記その他の共単量体に由来する重合単位の含有量は、VdF単位とその他の共単量体に由来する重合単位との合計モル数に対し10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上が更に好ましく、22モル%以上が更により好ましく、25モル%以上が特に好ましく、30モル%以上が最も好ましい。その他の共単量体に由来する重合単位の含有量はまた、VdF単位とその他の共単量体に由来する重合単位との合計モル数に対し80モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、55モル%以下が更に好ましく、50モル%以下が更により好ましく、45モル%以下が特に好ましく、40モル%以下が最も好ましい。
上記VdF系フッ素ゴムにおける共単量体としてはVdFと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、TFE、HFP、PAVE、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテル、下記一般式(2):
CH=CFRf (2)
(式中、Rfは炭素数1〜12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表される含フッ素単量体等の含フッ素単量体(2);エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル等のフッ素非含有単量体、架橋性基(キュアサイト)を与える単量体、及び、反応性乳化剤等が挙げられ、これらの単量体や化合物のなかから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が好ましく、特にPMVEが好ましい。
また、上記PAVEとして、下記一般式:
CF=CFOCFORf
(式中、Rfは炭素数1〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、または、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である)で表される単量体を用いてもよく、例えば、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、又は、CF=CFOCFOCFCFOCFを用いることが好ましい。
上記一般式(2)で表される含フッ素単量体(2)としては、Rfが直鎖のフルオロアルキル基である単量体が好ましく、Rfが直鎖のパーフルオロアルキル基である単量体がより好ましい。Rfの炭素数は1〜6であることが好ましい。上記一般式(2)で表される含フッ素単量体としては、CH=CFCF、CH=CFCFCF、CH=CFCFCFCF、CH=CFCFCFCFCF等が挙げられ、なかでも、CH=CFCFで示される2,3,3,3−テトラフルオロプロピレンが好ましい。
上記VdF系フッ素ゴムとしては、VdF単位及び含フッ素単量体由来の共重合単位(但し、VdF単位は除く。)を含む共重合体であることが好ましい。VdF単位を含む共重合体は、更に、VdF及び含フッ素単量体と共重合可能な単量体由来の共重合単位を含むことも好ましい。
上記VdF系フッ素ゴムとしては、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体、VdF/TFE/プロピレン(Pr)共重合体、VdF/エチレン(Et)/HFP共重合体及びVdF/式(2)で表される含フッ素単量体(2)の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。
このなかでも、耐熱性、圧縮永久ひずみ、加工性、コストの点から、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、及び、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、VdF/HFP共重合体、及び、VdF/HFP/TFE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
VdF/HFP共重合体は、VdF/HFPの組成が、(45〜85)/(55〜15)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは(50〜80)/(50〜20)(モル%)であり、更に好ましくは(60〜80)/(40〜20)(モル%)である。
VdF/TFE/HFP共重合体は、VdF/TFE/HFPの組成が(30〜80)/(4〜35)/(10〜35)(モル%)のものが好ましい。
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEの組成が(65〜90)/(35〜10)(モル%)のものが好ましい。
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEの組成が(40〜80)/(3〜40)/(15〜35)(モル%)のものが好ましい。
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEの組成が(65〜90)/(3〜25)/(3〜25)(モル%)のものが好ましい。
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/TFE/PAVEの組成が(40〜90)/(0〜25)/(0〜40)/(3〜35)(モル%)のものが好ましく、(40〜80)/(3〜25)/(3〜40)/(3〜25)(モル%)のものがより好ましい。
VdF/式(2)で表される含フッ素単量体(2)の共重合体としては、VdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が85/15〜20/80であり、VdF及び含フッ素単量体(2)以外の他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%のものが好ましく、VdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が80/20〜20/80であることがより好ましい。またVdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が85/15〜50/50であり、VdF及び含フッ素単量体(2)以外他の単量体単位が全単量体単位の1〜50モル%であるものも好ましい。VdF及び含フッ素単量体(2)以外の他の単量体としては、TFE、HFP、PMVE、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、PPVE、CTFE、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル、架橋性基を与える単量体、及び、反応性乳化剤等の、上記VdFの共単量体として例示した単量体が好ましく、なかでもPMVE、CTFE、HFP、TFEであることがより好ましい。
上記フッ素ゴム(A)は、中でも、VdF系フッ素ゴム、TFE/Pr系フッ素ゴム、TFE/Pr/VdF系フッ素ゴムが、耐熱老化性、耐油性が良好な点からより好適であり、オイルシールの機械物性に優れることから、VdF系フッ素ゴムが更に好ましく、VdF/HFP共重合体、及び、VdF/HFP/TFE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
上記フッ素ゴム(A)は、架橋性基を与えるモノマー由来の共重合単位を含む共重合体からなることも好ましい。架橋性基を与えるモノマーとしては、例えば特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのヨウ素含有モノマー、特表平4−505341号公報に記載されている臭素含有モノマー、特表平4−505345号公報、特表平5−500070号公報に記載されているようなシアノ基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アルコキシカルボニル基含有モノマーなどが挙げられる。
上記フッ素ゴム(A)は、主鎖末端にヨウ素原子又は臭素原子を有するフッ素ゴムであることも好ましい。主鎖末端にヨウ素原子又は臭素原子を有するフッ素ゴムは、実質的に無酸素下で、水媒体中でハロゲン化合物の存在下に、ラジカル開始剤を添加してモノマーの乳化重合を行うことにより製造できる。使用するハロゲン化合物の代表例としては、例えば、一般式:
Br
(式中、x及びyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、Rは、炭素数1〜16の飽和若しくは不飽和のフルオロ炭化水素基、炭素数1〜16の飽和若しくは不飽和のクロロフルオロ炭化水素基、炭素数1〜3の炭化水素基、又は、ヨウ素原子若しくは臭素原子で置換されていてもよい炭素数3〜10の環状炭化水素基であり、これらは酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、例えば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CFBr、BrCFCFBr、CFCFBrCFBr、CFClBr、BrCFCFClBr、CFBrClCFClBr、BrCFCFCFBr、BrCFCFBrOCF、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ベンゼンのジヨードモノブロモ置換体、並びに、ベンゼンの(2−ヨードエチル)及び(2−ブロモエチル)置換体などが挙げられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタン又はジヨードメタンを用いるのが好ましい。
上記フッ素ゴム(A)は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等の常法により製造することができる。特にヨウ素(臭素)移動重合として知られるヨウ素(臭素)化合物を使用した重合法によれば、分子量分布が狭いフッ素ゴムを製造できる。上記重合において、温度、圧力などの各条件、重合開始剤、乳化剤やその他の添加剤は、非パーフルオロフッ素ゴム及びパーフルオロフッ素ゴムの組成や量に応じて適宜設定することができる。特開2009−52034号公報、国際公開第2008/001895号に開示されている製造方法によりフッ素ゴム(A)を製造することができる。
上記重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)等のパーオキシカーボネート類に代表される油溶性ラジカル重合開始剤や、例えば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性ラジカル重合開始剤等を使用できる。
上記乳化剤としては、たとえば、重合中におこる乳化剤分子への連鎖移動反応を抑制する観点から、フルオロカーボン鎖またはフルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩類が好ましい。
具体的には、たとえば、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、CF(CFCOONH(n=2〜8)、CHF(CFCOONH(n=6〜8)、COCF(CF)CFOCF(CF)COONH、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COONHなどが挙げられる。
〔含二酸化ケイ素化合物(B)〕
含二酸化ケイ素化合物(B)としては、一般にシリカと言われる二酸化ケイ素、汎用的にゴムにフィラーとして配合される、タルク、珪藻土、ウォラストナイトなどの各種二酸化ケイ素と金属酸化物からなる硅酸塩類、その他組成に二酸化ケイ素を含む化合物であればよい。
その中でも、フッ素ゴム(A)に対する分散性の観点より、直径10μm以下の粒径のパウダー状化合物、もしくは液状化合物、もしくはゴムとの混練時に液化しゴム中に分散するものが好ましい。含二酸化ケイ素化合物(B)としては、シリカ、及び、二酸化ケイ素と金属酸化物からなるケイ酸塩化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、二酸化ケイ素と金属酸化物からなるケイ酸塩化合物がより好ましい。
上記ケイ酸塩化合物としては、水ガラス、メタケイ酸ナトリウム又はその水和物などのケイ酸ナトリウム化合物、ケイ酸カリウム化合物、ケイ酸リチウム化合物などの二酸化ケイ素とアルカリ金属との塩がさらに好ましい。中でも、ケイ酸ナトリウム化合物がさらに好ましい。
上記シリカとしては、カープレックス1120(DSL.ジャパン(株)製)、Vulkasil A1(Bayer Material Science AG製)等が挙げられる。
上記ケイ酸ナトリウム化合物としては、例えば、メタケイ酸ソーダ9水塩(大阪硅曹(株)製又は日本化学工業(株)製)等のメタケイ酸ナトリウム九水和物;1号ケイ酸ソーダ(富士化学(株)製又はAGCエスアイテック(株)製)等が挙げられる。
上記ケイ酸カリウム化合物としては、1号ケイ酸カリウム(富士化学(株)製)、ケイ酸カリウム溶液(純正化学(株)製)等が挙げられる。
動摩擦性をより向上できることから、本発明のオイルシールは、上記フッ素ゴム(A)100質量部に対して、含二酸化ケイ素化合物(B)が0.1質量部以上含まれていることが好ましい。また配合量が増大すると、ゴム弾性が損なわれる恐れがあることから、含二酸化ケイ素化合物の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましい。
フッ素ゴム(A)に起因する柔軟性と、含二酸化ケイ素化合物(B)に起因する低摩擦性の両方が良好な点からより、含二酸化ケイ素化合物(B)の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、0.3質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることが更に好ましい。また、70質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることが更に好ましく、20質量部以下が特に好ましい。
更に、含二酸化ケイ素化合物(B)の配合量は、1.0質量部以上であることが好ましく、2.0質量部以上であることがより好ましく、3.0質量部以上であることが特に好ましい。このような配合量は特に、含二酸化ケイ素化合物(B)として、シリカや1号ケイ酸ソーダ等のケイ酸ナトリウム化合物、ケイ酸カリウム化合物を用いる場合に特に好適である。
上記フッ素ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む組成物は、必要に応じてゴム中に配合される通常の配合剤、例えば充填剤(例えば、N990(Cancarb社製)、アサヒサーマル(旭カーボン(株)製)、HTCII20(新日化カーボン(株)製)等のカーボンブラック)、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤を含むものであってもよい。これらの添加剤、配合剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用すればよい。例えば、充填剤としてカーボンブラックを用いる場合には、カーボンブラックの含有量は、上記フッ素ゴム(A)100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましい。
上記主リップ部は、下記XとYの比率〔X/Y〕が、1.2以上である。
X:主リップ部の表面を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm−1の強度(bX)と吸収位置1395cm−1の強度(aX)の比〔強度(bX)/強度(aX)〕
Y:主リップ部の内部を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm−1の強度(bY)と吸収位置1395cm−1の強度(aY)の比〔強度(bY)/強度(aY)〕
なお、含二酸化ケイ素化合物(B)の含有量と、上記吸収位置1097cm−1の強度((bX)及び(bY))とに相関があり、フッ素ゴム(A)の含有量と、吸収位置1395cm−1の強度((aX)及び(aY))とに相関があるため、比率〔X/Y〕から、成形体の表面に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析しているかを確認することができる。
本発明のオイルシールは、上記のように主リップ部の比率〔X/Y〕が1.2以上であることによって、動摩擦性を著しく向上させることができる。この比率〔X/Y〕が1.2以上であると、主リップ部の表面に充分に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析しているものと推定される。
上記比率〔X/Y〕は、1.5以上であることがより好ましく、1.8以上であることが更に好ましく、2.5以上であることが特に好ましい。
一方で、比率〔X/Y〕が大きすぎると、常態物性が損なわれるため、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましい。
上記IR分析は、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、(FT−IR NICOLET6700)を用いて、主リップ部の表面及び内部の各々任意の領域に赤外光を照射し、赤外吸収スペクトルを測定することによって定性を行う分析方法のひとつである。
上記主リップ部は、表面に線状の凸部を有していることが好ましい。上記線状の凸部は、フッ素ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む組成物からなる。本発明のオイルシールは、上記主リップ部が上記特定の凸部を有するものであることによって、より優れた動摩擦性を有する。上記線状の凸部の表面には含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析していることが好ましい。
上記凸部は、主リップ部の表面に線状に形成されており、線状の凸部の稜線を形成する頂部と、頂部から凹部に向かって傾斜する傾斜面とを有する。
上記凸部は、蛇行しながら連続的に伸びていてもよく、略直線状又は波線状に連続的に伸びる領域、及び、L字形状、U字形状、V字形状又はC字形状を形成しながら連続して伸びる領域を有していてもよく、複雑な形状をとりながら連続して伸びるほうが動摩擦性に優れる傾向にある。
上記凸部の形状について、図面を参照しながらもう少し詳しく説明する。
図8に、上記主リップ部の表面の斜視模式図を示す。図8に示されるように、主リップ部の表面には線状の凸部が形成されていることが好ましい。
図8において、弾性部材の表面には複数の線状の凸部11が形成されており、隣接する2つの凸部11の間には凹部12が形成されている。また、図8からわかるように、凸部の稜線は、平面から見て、略直線状又は波線状である部分と、L字形状、U字形状、V字形状又はC字形状である部分とを有している。また、凸部11は、分岐部15を有しており、分岐部15から多方向に凸部(稜線)が伸びている。
図9は、図8において、弾性部材の表面に垂直な直線Bと直線Bを含む平面で主リップ部を切断した断面を示す断面模式図である。凸部11は、頂部13と、頂部13から凹部12に向かって傾斜する傾斜面14とを有する。頂部13では、弾性部材の構成材料である含二酸化ケイ素化合物(B)が露出しており、主リップ部の優れた動摩擦性を実現する。また、図9に示されるように、凸部の断面形状は、略楕円形状又は略放物線状であり、鋭く尖った頂部を有していない。この特徴的な断面形状も、弾性部材が摺動性に優れる理由の1つである。
図10は、図8において、弾性部材の表面に垂直な直線Cと直線Cを含む平面で主リップ部を切断した断面模式図である。頂部13は、一定の高さで、又は、波打つように高さを変えながら、線状の凸部11の稜線を形成している。
図11は、図8において、上記弾性部材表面と平行な平面で凸部の底部を切断した面(底部断面)を示す模式図である。後述する底部断面積は、この弾性部材表面と平行な平面で凸部の底部を切断した面において観察される凸部11の断面に於ける面積の値をいう。
図8〜11に示す実施態様では、弾性部材の表面に複雑な模様を描く線状の凸部を備えることから、摺動性に優れる。
図13に特開2012−153880号公報に記載の成形体の表面をレーザー顕微鏡で観察した3D画像を示す。この成形体も表面に凸部を有しているが、全ての凸部の形状が平面からみて略円状又は略楕円状であり、線状に伸びた凸部を一切備えていないことから、摩擦係数が大きくなり、動摩擦性が低くなるおそれがある。また、摩耗しやすくなるおそれがある。
上記線状の凸部は、線方向の長さが50μm以上であることが好ましい。線方向の長さが上記範囲であることにより、本発明のオイルシールは動摩擦性に優れる。より好ましくは、100μm以上であり、更に好ましくは、150μm以上である。
上記線方向の長さは、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)付属アプリケシーションソフトVK Analyzerを用い、プロファイル計測解析することで得られる値である。
上記線状の凸部は、底部最小幅が1〜40μmであることが好ましい。上記幅が上記範囲であることにより、本発明のオイルシールは動摩擦性に優れる。より好ましくは、1〜25μmであり、更に好ましくは、4〜20μmであり、特に好ましくは、6〜15μmである。
上記幅は、線方向の長さ計測と同様に、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)付属アプリケシーションソフトVK Analyzerを用い、プロファイル計測解析することで得られる値である。
動摩擦性に優れることから、上記線上の凸部の最大高さが1〜100μmであることが好ましい。より好ましくは、3〜80μmであり、更に好ましくは、5〜50μmである。
ここで、凸部の高さとは、主リップ部の表面から突出した部分の高さをいう(図9中、H参照)。
上記凸部の高さは、線方向の長さ計測と同様に、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)付属アプリケシーションソフトVK Analyzerを用い、プロファイル計測解析することで得られる値である。
動摩擦性に優れることから、主リップ部の表面に対する凸部を有する領域の面積比(凸部の占有率)が、40%以上であることが好ましい。より好ましくは、45%以上であり、更に好ましくは50%以上である。
上記主リップ部の表面に対する凸部を有する領域の面積比は、上記凸部の底部断面積を評価する切断面において、凸部が占める面積の比率をいう。
凸部を有する領域の占有率(凸部の占有率)は、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用いて、成形品表面の任意の領域(200μm×280μm)を測定し、凸部の底部断面積を求め、断面積の合計の値が、測定全領域面積に占める割合である。レーザー顕微鏡の解析ソフトとしては、三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いる。
動摩擦性が優れることから、上記主リップ部の表面には、複数(2以上)の線状の凸部が形成されており、1つの凸部の稜線と該凸部に隣接する凸部の稜線との距離(図9中のL参照)が3〜50μmであることが好ましい。複数の凸部はお互いに不規則な方向に伸びていることが好ましい。上記隣接する凸部の稜線との距離は、5〜40μmであることがより好ましく、10〜30μmであることが更に好ましい。
上記隣接する凸部の稜線との距離は、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)付属アプリケシーションソフトVK Analyzerを用い、プロファイル計測解析することで得られる値である。
上記線状の凸部は、必ずしも一本の線を形成するように伸びている必要はなく、分岐部を有し、該分岐部から多方向に伸びる複数の線を形成するように伸びていてもよい。
上記線状の凸部は連結していてもよいし、交差していてもよい。ある2つの線状の凸部を見たとき、2つの線状の凸部は交差していないが、1つの線状の凸部の延長線が、もう一つの線状の凸部と交差している形状も好ましい。
上記線状の凸部は、表面に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析しているものであることが好ましい。
含二酸化ケイ素化合物(B)は、フッ素ゴム(A)に比べ格段に摩擦係数が低いので、フッ素ゴム(A)と比較して格段に動摩擦性が向上する。このような凸部は、例えば後述するような方法により、上記組成物に含まれる含二酸化ケイ素化合物(B)を表面に析出させて形成することが出来る。
凸部の表面に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析していることは、主リップ部の表面及び内部をIR分析することで、吸収位置1395cm−1の強度と、吸収位置1097cm−1の強度を検出することで確認できる。上記のように比率〔X/Y〕が1.2以上であれば、凸部の表面に充分に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析しているものと推定される。
上記主リップ部は、上記線状の凸部を表面に有するものが好ましいが、線状以外の凸部(例えば、点状の凸部)が併存していても良い。
上記弾性部材は、曲げ弾性率が40MPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率が40MPa以下であることにより、優れた柔軟性を有する成形体となる。上記曲げ弾性率は、30MPa以下であることがより好ましく、20MPa以下であることが更に好ましい。曲げ弾性率の下限は特に限定されない。
上記曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠した方法で測定した値である。
次に、本発明のオイルシールの製造方法について説明する。
本発明のオイルシールは、未架橋フッ素ゴム(a)と含二酸化ケイ素化合物(B)とを含む架橋性組成物を架橋及び成形して得ることができる。特に、本発明のオイルシールは、後述する製造方法により得られるものであることが好ましい。
本発明のオイルシールは、
(I)未架橋フッ素ゴム(a)と含二酸化ケイ素化合物(B)とを混合して架橋性組成物を得る混合工程、
(II)得られた架橋性組成物を成形架橋する成形架橋工程、及び、
(III)得られた架橋成形品を150〜270℃の温度に加熱する熱処理工程
を含む方法により、所定の形状の弾性部材を製造し、更に、必要に応じて、金属環、取付環等を内蔵させたり、リングスプリングを配設することにより製造することができる。
上記未架橋フッ素ゴム(a)は、架橋前のフッ素ゴム(A)である。
(I)混合工程
上記架橋性組成物を得る方法は、未架橋フッ素ゴム(a)と含二酸化ケイ素化合物(B)とを均一に混合できる方法を用いれば特に制限はない。例えば、未架橋フッ素ゴム(a)を単独で凝析した粉末と含二酸化ケイ素化合物(B)と、必要に応じて他の添加剤や配合剤とをオープンロール等の混練機で混練する方法が挙げられる。
上記架橋性組成物が含二酸化ケイ素化合物(B)を含むことによって、上記比率〔X/Y〕を1.2以上にすることができ、また、上記線状の凸部を有する成形体を得ることができる。
上記未架橋フッ素ゴム(a)の架橋系は、例えば、パーオキサイド架橋系、ポリオール架橋系、ポリアミン架橋系等があげられ、パーオキサイド架橋系、及び、ポリオール架橋系からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。耐薬品性の観点からはパーオキサイド架橋系が好ましく、耐熱性の観点からはポリオール架橋系が好ましい。
従って、上記架橋剤としては、ポリオール架橋剤、及び、パーオキサイド架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤が好ましく、ポリオール架橋剤がより好ましい。
架橋剤の配合量は、架橋剤の種類等によって適宜選択すればよいが、未架橋フッ素ゴム(a)100質量部に対して0.2〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0質量部である。
パーオキサイド架橋は、パーオキサイド架橋可能な未架橋ゴム及び架橋剤として有機過酸化物を使用することにより行うことができる。
パーオキサイド架橋可能な未架橋ゴムとしては特に限定されず、パーオキサイド架橋可能な部位を有する未架橋ゴムであればよい。上記パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、ヨウ素原子を有する部位、臭素原子を有する部位等を挙げることができる。
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、例えば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエイトなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の配合量は、未架橋フッ素ゴム(a)100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜5質量部である。
架橋剤が有機過酸化物である場合、上記架橋性組成物は更に架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルフタルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性及び機械物性、柔軟性が優れる点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
架橋助剤の配合量は、未架橋フッ素ゴム(a)100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.01〜7.0質量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.1〜5.0質量部である。架橋助剤が、0.01質量部より少ないと、機械物性が低下したり、柔軟性が低下したりする。10質量部をこえると、耐熱性に劣り、オイルシールの耐久性も低下する傾向がある。
ポリオール架橋は、ポリオール架橋可能な未架橋ゴム及び架橋剤としてポリヒドロキシ化合物を使用することにより行うことができる。ポリオール架橋系における、ポリヒドロキシ化合物の配合量としては、ポリオール架橋可能な未架橋フッ素ゴム(a)100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましい。ポリヒドロキシ化合物の配合量がこのような範囲であることにより、ポリオール架橋を充分に進行させることができる。より好ましくは0.02〜8質量部である。さらに好ましくは0.03〜4質量部である。
上記ポリオール架橋可能な未架橋ゴムとしては特に限定されず、ポリオール架橋可能な部位を有する未架橋ゴムであればよい。上記ポリオール架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、未架橋フッ素ゴム(a)の重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
ポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという。ビスフェノールAFは、例えば、和光純薬工業(株)、セントラル硝子(株)等から入手できる。)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。ポリヒドロキシ芳香族化合物の配合量は、未架橋フッ素ゴム(a)100質量部に対して、0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、上記架橋性組成物は更に架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤は、ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
なお、架橋促進剤は、更に、酸化マグネシウム等の受酸剤や、架橋助剤と組み合わせて用いてもよい。
架橋促進剤としては、オニウム化合物があげられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド(以下、DBU−Bとする。DBU−Bは、例えば、和光純薬工業(株)等から入手できる。)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、柔軟性の点から、DBU−Bが好ましい。
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、例えば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、柔軟性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
架橋促進剤の配合量は、未架橋フッ素ゴム(a)100質量部に対して、0.01〜8.00質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5.00質量部である。さらに好ましくは0.03〜3.00質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、未架橋フッ素ゴム(a)の架橋が充分に進行せず、得られるオイルシールの耐熱性等が低下するおそれがある。8.00質量部をこえると、上記架橋性組成物の成形加工性が低下するおそれや、機械物性における伸びが低下し、柔軟性も低下する傾向がある。
受酸剤は、ポリオール架橋の際に発生する酸性物質を中和するために用いられものであり、具体例としては、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム(例えば、NICC5000(井上石灰工業(株)製)、CALDIC#2000、CALDIC#1000(近江化学工業(株)製))、酸化カルシウム、リサージ(酸化鉛)、亜鉛華、二塩基性亜リン酸鉛、ハイドロタルサイトなどがあげられる。
ポリオール加硫系フッ素ゴムにおいて、頻繁に用いられる受酸剤の量は、フッ素ゴム100質量部に対して酸化マグネシウム(高活性)3質量部と水酸化カルシウム6質量部の併用であるが、本発明において、フッ素ゴムに配合する受酸剤量は、優れた動摩擦性の成形体を得る観点、また、主リップ部表面に線状の凸部を形成する観点から、受酸剤の配合量はその水準より低減するほうが好ましい。
例えば、高活性の酸化マグネシウム(例えば、MA150(協和化学工業製);U、U−2、CX−150(神島化学工業(株)製))をその他の受酸剤と併用せず用いる場合であれば、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、配合量は3.5質量部以下であることが好ましく、さらに2.5質量部以下であることが好ましい。
例えば、低活性の酸化マグネシウム(例えば、MA30(協和化学工業製);M、M−2、L(神島化学工業(株)製))をその他の受酸剤と併用せずに用いる場合においては、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、配合量は4.5質量部以下であることが好ましく、3.5質量部以下が更に好ましい。
なお、「高活性の酸化マグネシウム」とは、例えばBET比表面積(m/g)が130〜170である酸化マグネシウムであり、「低活性の酸化マグネシウム」とは、例えばBET比表面積(m/g)が30〜50である酸化マグネシウムである。
上記BET比表面積は、例えば、Quantachrome製Autosorb−1 MPを用いて測定することができる。
具体的には、下記方法により測定することができる。
装置:Quantachrome製のAutosorb−1 MP
測定方法: 試料を20mg程度測定セルに導入し、482Kで真空加熱処理後、77Kでプローブガスとして純度99.99995%以上の純窒素ガスを用い、容量法にて測定し、測定データをBET法にて解析する。
測定条件:482Kで真空加熱処理後、77Kでの窒素吸着等温線測定。
ポリアミン架橋は、ポリアミン架橋可能なフッ素ゴム及び架橋剤としてポリアミン化合物を使用することにより行うことができる。
上記ポリアミン架橋可能なフッ素ゴムとしては特に限定されず、ポリアミン架橋可能な部位を有するフッ素ゴムであればよい。上記ポリアミン架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、フッ素ゴムの重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどがあげられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
上記架橋性組成物は、含二酸化ケイ素化合物(B)と未架橋フッ素ゴム(a)との相溶性向上のため、上記架橋性組成物は少なくとも1種の多官能化合物を含んでいてもよい。多官能化合物とは、1つの分子中に同一又は異なる構造の2つ以上の官能基を有する化合物である。
多官能化合物が有する官能基としては、カルボニル基、カルボキシル基、ハロホルミル基、アミド基、オレフィン基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、エポキシ基等、一般に反応性を有することが知られている官能基であれば任意に用いることができる。これらの官能基を有する化合物は、フッ素ゴム(A)との親和性が高いだけではなく、含二酸化ケイ素化合物(B)との相溶性も向上することが期待される。
上記架橋性組成物は、必要に応じてゴム中に配合される通常の添加剤、例えば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤を配合することができ、これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用すればよい。
上記未架橋フッ素ゴム(a)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む架橋性組成物は、未架橋フッ素ゴム(a)100質量部に対して、含二酸化ケイ素化合物(B)の含有量が0.1〜100質量部であることが好ましい。
含二酸化ケイ素化合物(B)が少なすぎると、主リップ部において、上記比率〔X/Y〕を1.2以上とすることができず、また、含二酸化ケイ素化合物(B)が表面に偏析せず、充分な動摩擦性が得られないおそれがある。一方、含二酸化ケイ素化合物(B)が多すぎると、ゴム弾性が損なわれる恐れがある。フッ素ゴム(A)に起因する柔軟性と、含二酸化ケイ素化合物(B)に起因する動摩擦性の両方が良好な点から、上記未架橋フッ素ゴム(a)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む架橋性組成物は、未架橋フッ素ゴム(a)100質量部に対して、含二酸化ケイ素化合物(B)の含有量が0.3質量部以上であることがより好ましい。また、70質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることが更に好ましい。
(II)成形架橋工程
この工程は、混合工程(I)で得られた架橋性組成物を成形及び架橋し、製造する弾性部材と略同形状の架橋成形品を製造する工程である。
成形と架橋の順序は限定されず、成形した後架橋してもよいし、架橋した後成形してもよいし、成形と架橋とを同時に行ってもよい。
成形方法としては、例えば金型などによる加圧成形法、インジェクション成形法などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
架橋方法も、スチーム架橋法、加熱により架橋反応が開始される通常の方法、放射線架橋法等が採用でき、なかでも、加熱による架橋反応が好ましい。
本発明においては、含二酸化ケイ素化合物(B)が架橋性組成物の表面層へスムーズに移行する点から、加熱による架橋反応が好適である。
架橋を行う温度は、未架橋フッ素ゴム(a)の架橋温度以上であり、200℃未満であることが好ましい。架橋を200℃以上で行うと、上記比率〔X/Y〕を1.2以上とすることができなかったり、線上の凸部を有する主リップ部を得ることができないおそれがある。
また、架橋を行う温度は、後述する熱処理工程(III)において、上記比率〔X/Y〕を1.2以上とすることができること、主リップ部の表面に線状の凸部を形成できる点から、より好ましくは190℃以下であり、更に好ましくは180℃以下である。また、架橋条件における温度の下限は、未架橋フッ素ゴム(a)の架橋温度である。
架橋時間は、使用する架橋剤などの種類により適宜決めればよいが、通常、1分間〜24時間である。
成形及び架橋の方法及び条件としては、採用する成形及び架橋において公知の方法及び条件の範囲内でよい。また、成形と架橋は順不同で行ってもよいし、同時に並行して行ってもよい。更に、工程(II)の後に、未架橋フッ素ゴム(a)の架橋温度未満、例えば、150℃未満に冷却する工程を行ってもよい。
また、未架橋ゴムの架橋において、最初の架橋処理(1次架橋という)を施した後に2次架橋と称される後処理工程を施すことがあるが、つぎの熱処理工程(III)で説明するように、従来の2次架橋工程と本発明の成形架橋工程(II)及び熱処理工程(III)とは異なる処理工程である。
なお、本発明のオイルシールが、金属環を備える場合には、この工程(II)において、例えば、予め金型内に金属環を配置しておき、一体成形を行えばよい。
(III)熱処理工程
この熱処理工程(III)では、工程(II)で得られた架橋成形品を150〜270℃の温度で加熱する。熱処理工程(III)を経ることにより、製造するオイルシールの表面に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析して、比率〔X/Y〕を1.2以上とすることができ、また、線状の凸部を形成することができる。
本発明における熱処理工程(III)は、架橋成形品表面の含二酸化ケイ素化合物(B)比率を高めるために行う処理工程であり、この目的に即して、150℃以上で、かつ、フッ素ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)の熱分解温度未満の温度が採用される。上記加熱温度は、短時間で低動摩擦化が容易な点から、155℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、170℃以上であることが特に好ましく、180℃以上であることが殊更に好ましく、200℃以上であることが最も好ましい。
加熱温度が150℃よりも低い場合は、上記比率〔X/Y〕を1.2以上とすることができなかったり、架橋成形品表面に十分な凸部を形成することができない。フッ素ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)の熱分解を回避するために、加熱温度は、フッ素ゴム(A)の熱分解温度又は含二酸化ケイ素化合物(B)の熱分解温度のいずれか低い方の温度未満でなければならない。
熱処理工程(III)において、加熱温度は加熱時間と密接に関係しており、加熱温度が比較的下限に近い温度では比較的長時間加熱を行い、比較的上限に近い加熱温度では比較的短い加熱時間を採用することが好ましい。
このように加熱時間は加熱温度との関係で適宜設定すればよいが、加熱処理をあまり長時間行うとフッ素ゴム(A)が熱劣化することがあるので、加熱処理時間は、耐熱性に優れたフッ素ゴムを使用する場合を除いて実用上96時間までである。
通常、加熱処理時間は1分間〜72時間が好ましく、1分間〜48時間がより好ましく、生産性が良好な点から1分間〜24時間が更に好ましいが、より優れた動摩擦性を有するオイルシールを得る観点からは、8時間以上であることが好ましい。
また、上記(I)〜(III)の工程を経て製造したオイルシールは、上記比率〔X/Y〕が1.2以上となり、また、弾性部材の表面全体に凸部が形成されることとなる。
本発明のオイルシールが弾性部材の表面全体に線状の凸部を有する場合、動摩擦性が必要とされる部分の表面に凸部が形成されていれば、それ以外の表面には凸部がなくてもよい。そして、このような態様のオイルシールを製造する場合は、例えば、上記(III)の工程を行った後、研磨処理等により不要な部分の凸部を除去すればよい。
ところで、従来行われている2次架橋は1次架橋終了時に残存している架橋剤を完全に分解してゴムの架橋を完結し、架橋成形品の機械的特性や圧縮永久ひずみ特性を向上させるために行う処理である。
したがって、含二酸化ケイ素化合物(B)の共存を想定していない従来の2次架橋条件は、その架橋条件が偶発的に熱処理工程の加熱条件と重なるとしても、2次架橋では含二酸化ケイ素化合物(B)の存在を架橋条件設定の要因として考慮せずに未架橋フッ素ゴム(a)の架橋の完結(架橋剤の完全分解)という目的の範囲内での加熱条件が採用されているにすぎず、含二酸化ケイ素化合物(B)を配合した場合にゴム架橋物(ゴム未架橋物ではない)中で含二酸化ケイ素化合物(B)を加熱軟化又は溶融する条件を導き出せるものではない。
なお、成形架橋工程(II)において、未架橋フッ素ゴム(a)の架橋を完結させるため(架橋剤を完全に分解するため)の2次架橋を行ってもよい。
また、熱処理工程(III)において、残存する架橋剤の分解が起こり未架橋フッ素ゴム(a)の架橋が完結する場合もあるが、熱処理工程(III)におけるかかる未架橋フッ素ゴム(a)の架橋はあくまで副次的な効果にすぎない。
混合工程(I)、成形架橋工程(II)、及び、熱処理工程(III)を含む製造方法により得られるオイルシールは、含二酸化ケイ素化合物(B)の表面移行現象によって、少なくとも主リップ部の表面に凸部が形成されるとともに、表面領域(凸部内を含む)で含二酸化ケイ素化合物(B)比率が増大した状態になっているものと推定される。
なお、含二酸化ケイ素化合物(B)の表面層への移行がスムーズに起こる点から、熱処理工程(III)は150℃以上、好ましくは200℃以上での加熱処理が特に優れている。
ところで、フッ素ゴム(A)の表面を、含二酸化ケイ素化合物(B)を塗布することや接着させることで改質した場合、主リップ部の表面に線状の凸部は観察されない。
つぎに実施例を掲げて本発明を説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
本明細書における各種の特性については、つぎの方法で測定した。
(1)凸部の形状
キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用いて、自動車用エンジンオイルシールの主リップ部表面の任意の領域(200μm×280μm)を観察し、線状の凸部の有無を確認した。
(2)赤外分光法(IR)分析
サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製のフーリエ変換赤外分光装置(FT−IR NICOLET6700)を用いて、エンジンオイルシールの主リップ部表面及び内部の各々任意の領域に赤外光を照射し、反射光(或いは透過光)を分光することで得られたスペクトルの内、吸収位置1097cm−1の強度と、吸収位置1395cm−1の強度を測定し、強度比X及びY(吸収位置1097cm−1の強度)/(吸収位置1395cm−1の強度)を算出した(Xは、主リップ部表面を測定した時の強度比であり、Yは主リップ部内部を測定した時の強度比である)。
自動車用エンジンオイルシール内部のIR分析は、得られた自動車用エンジンオイルシールをカッター等で切断して得られた試験片の内部の断面を用いて行った。
(3)エンジンオイルシールの回転トルク測定
以下に示す方法で自動車用オイルシールの回転トルクを測定した。
図7は、使用したオイルシールトルク試験機の模式図である。
図7に示すオイルシールトルク試験機110では、シャフト114が軸受113を介してハウジング119内に回転自在に配設されている。シャフト114の先端側(図7中、右側)には、油室112が設けられるとともに、オイルシール保持部材117が取り付けられている。測定用エンジンオイルシール111は、油室112とオイルシール保持部材117との間隙にオイルシール保持部材117に対して摺動可能に固定される。また、油室112にはロードセル116が接続されている。なお、図7中、115はオイルシールである。
そして、測定用エンジンオイルシール111を取り付けた状態で、油室の温度(油温)を所定の温度に設定し、シャフト114をモータ(図示せず)により所定の回転で回転させると、オイルシール保持部材117がシャフト114と一体的に回転し、かつ、測定用エンジンオイルシール111に対して摺動し、このときの測定用エンジンオイルシール111の荷重をロードセル116にて測定し、回転半径を乗じてトルク換算する。
ここで、測定条件は、油温(試験温度)を常温とし、シャフト114の回転数を2000rpm又は5000rpmとした。
また、表1及び明細書中の使用材料は、それぞれ次に示すものである。
フッ素ゴム(A1)
ダイキン工業(株)製(2元フッ素ゴム、VdF/HFP共重合体、フッ素含有率66質量%)
充填剤
カーボンブラック(N990)
架橋剤
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン
架橋促進剤
N−8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド
受酸剤
酸化マグネシウム(高活性)
酸化マグネシウム(低活性)
水酸化カルシウム
含二酸化ケイ素化合物
シリカ
メタケイ酸ナトリウム九水和物
1号ケイ酸ナトリウム
1号ケイ酸カリウム
実施例1
フッ素ゴムに表1に示す所定の配合物をオープンロールにて混合し、架橋性組成物(フッ素ゴム組成物)とした。
その後、自動車用エンジンオイルシールの金型に金属環を配設し、架橋性組成物を投入して、8MPaに加圧して、170℃で15分間加硫させて、架橋成形品(適応軸径80mm、外径98mm、幅8mm)を得た。
得られた架橋成形品を250℃に維持された加熱炉中に22時間入れ、加熱処理をした後、リングスプリングを配設し、図1及び3に示すような構造を有する、弾性部材を備えた自動車用エンジンオイルシールを得た。得られた自動車用エンジンオイルシールを用いて、自動車用エンジンオイルシールの回転トルクを測定した。結果を表1に示す。
実施例1で得られた自動車用エンジンオイルシールの主リップ部の表面をレーザー顕微鏡で観察した3D画像を図12に示す。
実施例2〜6及び比較例1〜8
表1に示す配合量としたこと以外は、実施例1と同じ方法で自動車用エンジンオイルシールを得て、各種測定を行った。
11:凸部
12:凹部
13:頂部
14:傾斜面
15:分岐部
20、50、119:ハウジング
21:エンジンオイルシール
22、52:弾性部材
23、53:主リップ部
24、54:はめあい部
25:副リップ部
26、56:金属環
27、57:リングスプリング
29:クランクシャフト
30:エンジン
32:クランクプーリー
33:コンロッド
34:ピストン
35:バルブ
51:トランスミッションオイルシール
59:車軸
60:トランスミッション
62:メインシャフト(入力シャフト)
63:カウンターシャフト(出力シャフト)
110:オイルシールトルク試験機
111:測定用エンジンオイルシール
112:油室
113:軸受
114:シャフト
115:オイルシール
116:ロードセル
117:オイルシール保持部材

Claims (6)

  1. シールリップ部を有する弾性部材を備えたオイルシールであって、
    前記弾性部材は、フッ素ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む組成物からなり、かつ、シールリップ部に少なくとも主リップ部が設けられたものであり、
    前記主リップ部は、下記XとYの比率〔X/Y〕が、1.2以上であることを特徴とするオイルシール。
    X:主リップ部の表面を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm−1の強度(bX)と吸収位置1395cm−1の強度(aX)の比〔強度(bX)/強度(aX)〕
    Y:主リップ部の内部を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm−1の強度(bY)と吸収位置1395cm−1の強度(aY)の比〔強度(bY)/強度(aY)〕
  2. 少なくとも主リップ部の表面に線状の凸部を有することを特徴とする請求項1記載のオイルシール。
  3. 弾性部材は、含二酸化ケイ素化合物(B)の含有量がフッ素ゴム(A)100質量部に対して0.1〜100質量部である請求項1又は2記載のオイルシール。
  4. エンジンオイルシールである請求項1、2又は3記載のオイルシール。
  5. トランスミッションオイルシールである請求項1、2又は3記載のオイルシール。
  6. 自動車用オイルシールである請求項1、2、3、4又は5記載のオイルシール。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101950444B1 (ko) * 2018-10-11 2019-02-20 평화오일씰공업 주식회사 오일 씰
JP2022520619A (ja) * 2019-02-14 2022-03-31 ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド 電気駆動部及びトランスミッションを有するドライブユニット

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