JP2013163286A - 積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】フッ素ゴム層とフッ素樹脂層の各層に表面処理を施すこともなく、また、接着剤を使用することもなく、フッ素ゴム層とフッ素樹脂層が強固に接着されている積層体を提供する。
【解決手段】フッ素ゴム及びフッ素樹脂(A)からなり、かつ実質的にフッ素樹脂(A)からなる凸部を表面に有するフッ素ゴム層(I)上に、フッ素樹脂(B)からなるフッ素樹脂層(II)を備えることを特徴とする積層体。
【選択図】 なし
【解決手段】フッ素ゴム及びフッ素樹脂(A)からなり、かつ実質的にフッ素樹脂(A)からなる凸部を表面に有するフッ素ゴム層(I)上に、フッ素樹脂(B)からなるフッ素樹脂層(II)を備えることを特徴とする積層体。
【選択図】 なし
Description
本発明は、積層体に関する。
従来、昨今の環境意識の高まりから、自動車業界では、アルコールを添加することによる燃料種の多様化が進んできており、耐薬品性に優れた材料へのニーズが大きくなりつつある。また、従来の燃料よりも高温で使用するケースが出てきており、耐薬品性に加え、耐熱性も兼ね備えた材料が求められている。
また、燃料輸送用ホースにおいては、振動吸収の観点から、柔軟性に優れたホースが求められている。これらの要求特性を満足することを目的として、フッ素樹脂層とゴム層とを有する積層体が提案されてきた。しかしながら、従来、ゴムとフッ素樹脂とを直接接着させることは困難であり、プラズマ処理などの表面処理や、接着剤を塗布する工程が必要であった。
このような中で、表面処理や、接着剤を使用せずに、フッ素樹脂とゴムとを接着させる方法として、例えば、フッ化ビニリデンを必須とするフルオロポリマを使用し、脱弗化水素組成物を混合することにより、フルオロポリマ層に対する硬化性エラストマ化合物の接着性を改良することも知られている(例えば、特許文献1参照)。
脱弗化水素組成物を硬化性エラストマに混合することにより、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンを含む共重合単位から誘導される共重合体を含むフルオロポリマを硬化性エラストマに結合させる方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、フッ素樹脂にゴムを直接接着させるため、フッ素樹脂としてカルボニル基などの反応性官能基を有する熱可塑性フッ素樹脂を用い、さらにこの熱可塑性フッ素樹脂とゴム層の少なくとも一方にトリアリルイソシアヌレートのような多官能性化合物を配合することも知られている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、フッ化ビニリデン系共重合体(THV)やフッ化ビニリデンを必須とするフルオロポリマは、耐塩基性や耐アミン性に劣るので、特許文献1に記載された技術では、耐薬品性に優れた積層体を得ることができないという問題があった。また、特許文献2に記載された方法では、使用できるフッ素樹脂が低融点のものに限られ、耐熱性に優れたフッ素樹脂とゴムとの接着が実現できず、更なる改善の余地があった。
本発明は、フッ素ゴム層とフッ素樹脂層の各層に表面処理を施すこともなく、また、接着剤を使用することもなく、フッ素ゴム層とフッ素樹脂層が強固に接着されている積層体を提供する。
本発明は、フッ素ゴム及びフッ素樹脂(A)からなり、かつ実質的にフッ素樹脂(A)からなる凸部を表面に有するフッ素ゴム層(I)上に、フッ素樹脂(B)からなるフッ素樹脂層(II)を備えることを特徴とする積層体である。
本発明の積層体は、上述の構成であるため、フッ素ゴム層(I)及びフッ素樹脂層(II)に表面処理を施すこともなく、また、接着剤を使用することもなく、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが強固に接着したものである。
本発明の積層体は、フッ素ゴム及びフッ素樹脂(A)からなり、かつ実質的にフッ素樹脂(A)からなる凸部を表面に有するフッ素ゴム層(I)上に、フッ素樹脂(B)からなるフッ素樹脂層(II)を備える。フッ素ゴム層(I)が、上記凸部を表面に有することによって、フッ素ゴム層(I)及びフッ素樹脂層(II)に表面処理を施すこともなく、また、接着剤を使用することもなく、更に、フッ素樹脂層(II)を構成するフッ素樹脂(B)がパーフルオロフッ素樹脂であったとしても、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが強固に接着した積層体が得られる。
また、本発明の積層体は、フッ素ゴム層(I)がフッ素ゴム及びフッ素樹脂(A)からなるものであり、フッ素樹脂層(II)がフッ素樹脂(B)からなるものであるため、耐熱性、耐薬品性に優れ、更に、耐燃料透過性にも優れる。
また、本発明の積層体は、フッ素ゴム層(I)がフッ素ゴム及びフッ素樹脂(A)からなるものであり、フッ素樹脂層(II)がフッ素樹脂(B)からなるものであるため、耐熱性、耐薬品性に優れ、更に、耐燃料透過性にも優れる。
以下、本発明の積層体を構成する各成分について詳述する。
〔フッ素ゴム〕
フッ素ゴムは、通常、主鎖を構成する炭素原子に結合しているフッ素原子を有し、且つゴム弾性を有する非晶質の重合体からなる。上記フッ素ゴムは、1種の重合体からなるものであってもよいし、2種以上の重合体からなるものであってもよい。
フッ素ゴムは、通常、主鎖を構成する炭素原子に結合しているフッ素原子を有し、且つゴム弾性を有する非晶質の重合体からなる。上記フッ素ゴムは、1種の重合体からなるものであってもよいし、2種以上の重合体からなるものであってもよい。
フッ素ゴムは、ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、VdF/HFP/テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体、TFE/プロピレン共重合体、TFE/プロピレン/VdF共重合体、エチレン/HFP共重合体、エチレン/HFP/VdF共重合体、エチレン/HFP/TFE共重合体、VdF/TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)共重合体、及び、VdF/クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。フッ素ゴムは、非パーフルオロフッ素ゴムであることが好ましく、ビニリデンフルオライドに由来する重合単位(VdF単位)を含む共重合体であることがより好ましい。
VdF単位を含む共重合体としては、VdF単位及び含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位(但し、VdF単位は除く。)を含む共重合体であることが好ましい。VdF単位を含む共重合体は、更に、VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体由来の共重合単位を含むフッ素ゴムであってもよい。
VdF単位を含む共重合体としては、30〜90モル%のVdF単位及び70〜10モル%の含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位(但し、VdF単位は除く。)を含むことが好ましく、30〜85モル%のVdF単位及び70〜15モル%の含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位を含むことがより好ましく、30〜80モル%のVdF単位及び70〜20モル%の含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位を含むことがより好ましい。
VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体由来の共重合単位は、VdF単位と含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位の合計量に対して、0〜10モル%であることが好ましい。
VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体由来の共重合単位は、VdF単位と含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位の合計量に対して、0〜10モル%であることが好ましい。
含フッ素エチレン性単量体(但し、VdFは除く。)としては、例えばTFE、CTFE、トリフルオロエチレン、HFP、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、PAVE、フッ化ビニル、下記一般式(1):
CFX=CXOCF2OR1 (1)
(式中、Xは、同一又は異なり、H、F又はCF3を表し、R1は、直鎖又は分岐した、H、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が1〜6のフルオロアルキル基、若しくは、H、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が5又は6の環状フルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテルなどの含フッ素単量体が挙げられる。これらのなかでも、式(1)で表されるフルオロビニルエーテル、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
CFX=CXOCF2OR1 (1)
(式中、Xは、同一又は異なり、H、F又はCF3を表し、R1は、直鎖又は分岐した、H、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が1〜6のフルオロアルキル基、若しくは、H、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が5又は6の環状フルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテルなどの含フッ素単量体が挙げられる。これらのなかでも、式(1)で表されるフルオロビニルエーテル、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上記PAVEとしては、一般式(2):
CF2=CFO(CF2CFY1O)p−(CF2CF2CF2O)q−Rf (2)
(式中、Y1はF又はCF3を表し、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。pは0〜5の整数を表し、qは0〜5の整数を表す。)であることが好ましい。
CF2=CFO(CF2CFY1O)p−(CF2CF2CF2O)q−Rf (2)
(式中、Y1はF又はCF3を表し、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。pは0〜5の整数を表し、qは0〜5の整数を表す。)であることが好ましい。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)又はパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)であることがより好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)であることが更に好ましい。これらをそれぞれ単独で、又は任意に組み合わせて用いることができる。
VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどが挙げられる。
このようなVdF単位を含む共重合体として、具体的には、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、及び、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。これらのVdF単位を含む共重合体のなかでも、耐熱性の点から、VdF/HFP共重合体、及び、VdF/HFP/TFE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が特に好ましい。これらのVdF単位を含む共重合体は、上述したVdF単位と含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位との組成割合を満足することが好ましい。
VdF/HFP共重合体としては、VdF/HFPのモル比が45〜85/55〜15であるものが好ましく、より好ましくは50〜80/50〜20であり、更に好ましくは60〜80/40〜20である。
VdF/HFP/TFE共重合体としては、VdF/HFP/TFEのモル比が40〜80/10〜35/10〜35であるものが好ましい。
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEのモル比が65〜90/10〜35であるものが好ましい。
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEのモル比が40〜80/3〜40/15〜35であるものが好ましい。
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEのモル比が65〜90/3〜25/3〜25であるものが好ましい。
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/TFE/PAVEのモル比が40〜90/0〜25/0〜40/3〜35であるものが好ましく、より好ましくは40〜80/3〜25/3〜40/3〜25である。
上記フッ素ゴムは、架橋部位を与えるモノマー由来の共重合単位を含む共重合体からなることも好ましい。架橋部位を与えるモノマーとしては、例えば特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのヨウ素含有モノマー、特表平4−505341号公報に記載されている臭素含有モノマー、特表平4−505345号公報、特表平5−500070号公報に記載されているようなシアノ基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アルコキシカルボニル基含有モノマーなどが挙げられる。
フッ素ゴムは、主鎖末端にヨウ素原子又は臭素原子を有するフッ素ゴムであることも好ましい。主鎖末端にヨウ素原子又は臭素原子を有するフッ素ゴムは、実質的に無酸素下で、水媒体中でハロゲン化合物の存在下に、ラジカル開始剤を添加してモノマーの乳化重合を行うことにより製造できる。使用するハロゲン化合物の代表例としては、例えば、一般式:
R2IxBry
(式中、x及びyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R2は、炭素数1〜16の飽和若しくは不飽和のフルオロ炭化水素基、炭素数1〜16の飽和若しくは不飽和のクロロフルオロ炭化水素基、炭素数1〜3の炭化水素基、又は、ヨウ素原子若しくは臭素原子で置換されていてもよい炭素数3〜10の環状炭化水素基であり、これらは酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物が挙げられる。
R2IxBry
(式中、x及びyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R2は、炭素数1〜16の飽和若しくは不飽和のフルオロ炭化水素基、炭素数1〜16の飽和若しくは不飽和のクロロフルオロ炭化水素基、炭素数1〜3の炭化水素基、又は、ヨウ素原子若しくは臭素原子で置換されていてもよい炭素数3〜10の環状炭化水素基であり、これらは酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、例えば、1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ベンゼンのジヨードモノブロモ置換体、ならびに、ベンゼンの(2−ヨードエチル)及び(2−ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタン又はジヨードメタンを用いるのが好ましい。
フッ素ゴムは、加工性が良好な点から、ムーニー粘度(ML1+10(100℃))が5〜140であることが好ましく、10〜120であることがより好ましく、20〜100であることが更に好ましい。
ムーニー粘度は、ASTM−D1646に準拠して測定することができる。
測定機器:ALPHA TECHNOLOGIES社製のMV2000E型
ローター回転数:2rpm
測定温度:100℃
ムーニー粘度は、ASTM−D1646に準拠して測定することができる。
測定機器:ALPHA TECHNOLOGIES社製のMV2000E型
ローター回転数:2rpm
測定温度:100℃
〔(A)フッ素樹脂〕
フッ素樹脂(A)は、例えば、少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体に基づく重合単位を有する重合体である。
フッ素樹脂(A)は、例えば、少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体に基づく重合単位を有する重合体である。
フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着がより強固になることから、フッ素ゴム層(I)を構成するフッ素樹脂(A)と、フッ素樹脂層(II)を構成するフッ素樹脂(B)とは、同じ含フッ素エチレン性単量体に基づく重合単位を有する共重合体であることが好ましい。例えば、フッ素樹脂(B)が、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく重合単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)に基づく重合単位とからなる共重合体である場合、フッ素樹脂(A)もTFEに基づく重合単位とHFPに基づく重合単位とからなる共重合体であることが好ましい。
フッ素樹脂(A)としては、溶融加工性のフッ素樹脂であることが好ましい。溶融加工性のフッ素樹脂を用いることによって、表面に凸部を有するフッ素ゴム層(I)を得ることができ、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着性が優れたものとなる。
溶融加工性のフッ素樹脂としては、例えば、TFE/HFP共重合体、TFE/HFP/PAVE共重合体、TFE/PAVE共重合体〔PFAおよびMFA〕、エチレン(Et)/TFE共重合体、Et/TFE/HFP共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、ポリフッ化ビニリデン〔PVdF〕、TFE/フッ化ビニリデン(VdF)共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/HFP共重合体、及び、ポリフッ化ビニル〔PVF〕からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、溶融加工性であれば、低分子量のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることも可能である。
フッ素樹脂(A)の融点は、フッ素ゴムの2次架橋温度以下であることが好ましい。フッ素樹脂(A)の融点としては、例えば、300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることが更に好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、180℃であってよい。
融点が高すぎると、架橋成形時にフッ素樹脂が溶融せず、所望する形状のフッ素ゴム層(I)が得られないおそれがある。また、充分な数の凸部を有するフッ素ゴム層(I)が得られないおそれがあり、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着が充分でなくなるおそれがある。
フッ素樹脂(A)の融点は、示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求める。
融点が高すぎると、架橋成形時にフッ素樹脂が溶融せず、所望する形状のフッ素ゴム層(I)が得られないおそれがある。また、充分な数の凸部を有するフッ素ゴム層(I)が得られないおそれがあり、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着が充分でなくなるおそれがある。
フッ素樹脂(A)の融点は、示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求める。
フッ素樹脂(A)は、280℃におけるメルトフローレート〔MFR〕が0.3〜200g/10分であることが好ましく、1〜100g/10分であることがより好ましい。MFRが小さすぎると表面に十分な数のフッ素樹脂(A)の凸部を有することが困難になるおそれがあり、MFRが大きすぎると成形が困難になるおそれがある。
上記MFRは、ASTM D1238に準拠し、温度280℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
上記MFRは、ASTM D1238に準拠し、温度280℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
フッ素樹脂(A)は、TFE単位(a)とHFP単位(b)とからなる共重合体(以下、「FEP」ともいう。)であることがより好ましい。
FEPは、TFE単位(a)及びHFP単位(b)のみからなる共重合体、又は、TFE単位(a)、HFP単位(b)、並びに、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に基づく重合単位からなる共重合体である。
FEPは、TFE単位(a)/HFP単位(b)がモル比で、70〜99/1〜30であることが好ましく、80〜97/3〜20であることがより好ましい。TFE単位(a)が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると融点が高くなりすぎて成形性が低下する傾向がある。
FEPが、TFE単位(a)、HFP単位(b)、並びに、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に基づく重合単位からなる共重合体である場合、TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、下記式:
CF2=CF−ORf6
(式中、Rf6は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、下記式:
CX5X6=CX7(CF2)nX8
(式中、X5、X6及びX7は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、X8は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、下記式:
CF2=CF−OCH2−Rf7
(式中、Rf7は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。より耐熱性及び耐燃料透過性が優れる積層体が得られることから、TFE及びHFPと共重合可能な単量体は、パーフルオロモノマーであることが好ましく、なかでも、PAVEであることが好ましい。
上記フッ素樹脂(A)は、例えば、TFE/HFP共重合体、及び、TFE/HFP/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であることが好ましい。
CF2=CF−ORf6
(式中、Rf6は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、下記式:
CX5X6=CX7(CF2)nX8
(式中、X5、X6及びX7は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、X8は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、下記式:
CF2=CF−OCH2−Rf7
(式中、Rf7は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。より耐熱性及び耐燃料透過性が優れる積層体が得られることから、TFE及びHFPと共重合可能な単量体は、パーフルオロモノマーであることが好ましく、なかでも、PAVEであることが好ましい。
上記フッ素樹脂(A)は、例えば、TFE/HFP共重合体、及び、TFE/HFP/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であることが好ましい。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rf7が炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF2=CF−OCH2−CF2CF3がより好ましい。
FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する重合単位(c)を有する場合、重合単位(c)/{TFE単位(a)+HFP単位(b)}がモル比で、0.1〜10/90〜99.9であることが好ましい。重合単位(c)が0.1モル%未満であると成形性、耐環境応力割れ性及び耐ストレスクラック性に劣りやすく、10モル%をこえると、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。より好ましくは、重合単位(c)/{TFE単位(a)+HFP単位(b)}がモル比で、0.1〜9/91〜99.9であることが好ましい。
フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着がより強固になる点、フッ素ゴム層(I)の圧縮永久歪をより小さくする点からは、フッ素樹脂(A)は、特定の組成を有する下記フッ素樹脂(A1)及び(A2)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
フッ素樹脂(A1)及び(A2)は、特定の組成を有するTFE単位及びHFP単位からなる共重合体である。特定の組成を有するフッ素樹脂(A1)又は(A2)を用いることで、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とがより強固に接着した積層体が得られる。
フッ素樹脂(A1)及び(A2)は、特定の組成を有するTFE単位及びHFP単位からなる共重合体である。特定の組成を有するフッ素樹脂(A1)又は(A2)を用いることで、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とがより強固に接着した積層体が得られる。
フッ素樹脂(A1)は、TFE単位(a)及びHFP単位(b)のみからなる重合体であり、TFE単位(a)/HFP単位(b)が、モル比で80.0〜88.0/12.0〜20.0である共重合体である。上記の特定範囲の組成を有するフッ素樹脂(A1)を用いると、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とがより強固に接着した積層体が得られる。
フッ素樹脂(A1)は、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着がより強固になる点、フッ素ゴム層の圧縮永久歪特性を優れたものとする観点から、(a)/(b)が、モル比で82.0〜88.0/12.0〜18.0であることが好ましく、84.0〜88.0/12.0〜16.0であることがより好ましい。
フッ素樹脂(A2)は、テトラフルオロエチレン単位(a)、ヘキサフルオロプロピレン単位(b)、並びに、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体に基づく重合単位(c)からなる共重合体であり、(a)/(b)が、モル比で80.0〜90.0/10.0〜20.0であり、(c)/{(a)+(b)}が、モル比で0.1〜10.0/90.0〜99.9である共重合体である(なお、{(a)+(b)}は、テトラフルオロエチレン単位(a)とヘキサフルオロプロピレン単位(b)との合計を意味する。)。(a)/(b)が、モル比で80.0〜90.0/10.0〜20.0であり、(c)/{(a)+(b)}が、モル比で0.1〜10.0/90.0〜99.9であることによって、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着をより強固にすることができる。
フッ素樹脂(A2)は、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着がより強固になる点、機械物性を優れたものとする観点から、(a)/(b)が、モル比で82.0〜88.0/12.0〜18.0であることが好ましい。
TFE及びHFPと共重合可能な単量体は、上記と同じである。
フッ素樹脂(A2)において、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に基づく重合単位(c)は、PAVE単位であることが好ましい。そして、フッ素樹脂(A2)は、TFE単位、HFP単位、及び、PAVE単位のみからなる共重合体であることがより好ましい。
フッ素樹脂(A1)及び(A2)は、融点が220℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、190℃以下であることが更に好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、150℃であってよい。
フッ素樹脂(A)は、積層体の耐熱性、耐薬品性及び耐燃料透過性が優れることから、パーフルオロフッ素樹脂であることが好ましく、パーフルオロフッ素樹脂であり、かつ、TFE単位(a)とHFP単位(b)とからなる共重合体であることが特に好ましい。
〔(I)フッ素ゴム層〕
フッ素ゴム層(I)は、実質的にフッ素樹脂(A)からなる凸部を表面に有する。表面に上記凸部を有することによって、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが強固に接着した積層体が得られる。
フッ素ゴム層(I)は、実質的にフッ素樹脂(A)からなる凸部を表面に有する。表面に上記凸部を有することによって、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが強固に接着した積層体が得られる。
上記凸部は、実質的にフッ素樹脂(A)からなる。凸部は、例えば後述する方法により、フッ素樹脂(A)をフッ素ゴム層(I)の表面に析出させて形成することができる。
凸部が実質的にフッ素樹脂(A)からなることは、IR分析やESCA分析によって、フッ素ゴム由来のピークとフッ素樹脂(A)由来のピークのピーク比を求めることで示すことができる。例えば、凸部を有する領域において、IR分析によって、フッ素ゴム由来の特性吸収のピークとフッ素樹脂(A)由来の特性吸収のピークとの比(成分由来ピーク比)を、凸部と凸部外のそれぞれの部分で測定し、(凸部ピーク/凸部外ピーク=ピーク比)が、1.2以上、好ましくは1.5以上であればよい。
凸部の形状について、図面を参照しながらもう少し詳しく説明する。
図1(a)は、フッ素ゴム層(I)が有する凸部の形状を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)の表面に垂直な直線B1と直線B2を含む平面で凸部31を切断した断面図であり、(c)は(a)の表面と平行な直線C1と直線C2を含む平面で切断した断面図である。そして、図1(a)〜(c)には、フッ素ゴム層(I)の表面の微小領域を模式的に描画している。フッ素ゴム層(I)の表面には、図1(a)〜(c)に示すように、例えば、略円錐形状(コーン形状)の凸部31が形成されている。
図1(a)は、フッ素ゴム層(I)が有する凸部の形状を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)の表面に垂直な直線B1と直線B2を含む平面で凸部31を切断した断面図であり、(c)は(a)の表面と平行な直線C1と直線C2を含む平面で切断した断面図である。そして、図1(a)〜(c)には、フッ素ゴム層(I)の表面の微小領域を模式的に描画している。フッ素ゴム層(I)の表面には、図1(a)〜(c)に示すように、例えば、略円錐形状(コーン形状)の凸部31が形成されている。
ここで、凸部31の高さとは、フッ素ゴム層(I)の表面から突出した部分の高さをいう(図1(b)中、H参照)。また、凸部31の底部断面積とは、凸部31を、フッ素ゴム層(I)表面と平行な平面(直線C1と直線C2を含む平面)で切断した面において観察される凸部31(図1(c)参照)の断面に於ける面積の値をいう。
フッ素ゴム層(I)の表面に占める凸部を有する領域の面積比は、0.05(5%)以上であることが好ましい。より好ましい面積比は、0.15(15%)以上であり、0.30(30%)以上が更に好ましい。上記フッ素ゴム層(I)の表面における、凸部を有する領域の面積比は、上記凸部の底部断面積を評価する切断面において、凸部が占める面積の比率をいう。
フッ素ゴム層(I)に占めるフッ素樹脂(A)の体積比は、0.03〜0.50(3〜50体積%)であることが好ましい。体積比の下限は、0.05(5体積%)であることがより好ましく、0.10(10体積%)であることが更に好ましい。体積比の上限は、0.45(45体積%)であることがより好ましく、0.40(40体積%)であることが更に好ましい。
上記フッ素樹脂(A)は優れた耐熱性を有する。従って、成形架橋工程や熱処理工程によって分解することがないので、上記体積比は、後述する、架橋性組成物におけるフッ素樹脂(A)の体積割合と同一と推測できる。
上記フッ素樹脂(A)は優れた耐熱性を有する。従って、成形架橋工程や熱処理工程によって分解することがないので、上記体積比は、後述する、架橋性組成物におけるフッ素樹脂(A)の体積割合と同一と推測できる。
フッ素ゴム層(I)は、フッ素ゴム層(I)の表面に占める凸部を有する領域の面積比が、上記フッ素ゴム層(I)に占めるフッ素樹脂(A)の体積比の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましい。フッ素ゴム層(I)は、フッ素ゴム層(I)の表面における凸部を有する領域の比率が、フッ素ゴム層(I)のフッ素樹脂(A)の体積比よりも高く、フッ素ゴム層(I)におけるフッ素樹脂(A)の体積比よりも高くなる。
フッ素ゴム層(I)は、この特徴によりフッ素樹脂(A)の混合割合が小さくても、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが強固に接着した積層体を得ることができる。なお、上記凸部を有する領域の面積比は、使用する用途によって、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが接着する面において達成されていれば、本発明の効果は十分に奏される。
フッ素ゴム層(I)は、この特徴によりフッ素樹脂(A)の混合割合が小さくても、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが強固に接着した積層体を得ることができる。なお、上記凸部を有する領域の面積比は、使用する用途によって、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが接着する面において達成されていれば、本発明の効果は十分に奏される。
上記凸部は、高さが0.1μm以上であることが好ましい。凸部の高さがこの範囲にあると、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着がより強固になる。より好ましい高さは、0.3μm以上であり、更に好ましくは、0.5μm以上である。上限は特に限定されないが、例えば、10μmであってもよい。
上記凸部は、底部断面積が0.1μm2以上であることが好ましい。凸部の底部断面積がこの範囲にあると、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着がより強固になる。より好ましい底部断面積は、0.3μm2以上であり、更に好ましい底部断面積は、0.5μm2以上である。上限は特に限定されないが、例えば、1000μm2であってもよい。
フッ素ゴム層(I)は、凸部の個数が500個/mm2以上であることが好ましい。この範囲にあると、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着がより強固になる。上限は特に限定されないが、例えば、10000個/mm2であってもよい。
凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の個数等は、例えば、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用い、解析ソフトとして三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いて算出することができる。凸部を有する領域の面積比は、凸部の底部断面積を求め、断面積合計の値が、測定全領域面積に占める割合として求められる。凸部の個数は、測定領域中の凸部の個数を1mm2当たりの数に換算したものである。
フッ素ゴム層(I)において、上記凸部はフッ素ゴム層(I)の表面の一部に形成されていればよく、フッ素ゴム層(I)の表面には該凸部が形成されていない領域を有していてもよい。例えば、フッ素樹脂層(II)と接着させない面の表面には、上記凸部が形成されている必要はない。
フッ素ゴム層(I)の厚みは用途によって適宜決定すればよく、特に限定されないが、例えば、本発明の積層体が燃料チューブである場合、0.1〜10mmであることが好ましく、0.5〜5mmであることがより好ましい。
〔(B)フッ素樹脂〕
フッ素樹脂層(II)は、フッ素樹脂(B)からなるものである。フッ素樹脂(B)は、例えば、少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体に基づく重合単位を有する重合体である。フッ素樹脂(B)としては、溶融加工性のフッ素樹脂であることが好ましい。溶融加工性のフッ素樹脂を用いることによって、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着を強固なものにすることができる。
フッ素樹脂層(II)は、フッ素樹脂(B)からなるものである。フッ素樹脂(B)は、例えば、少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体に基づく重合単位を有する重合体である。フッ素樹脂(B)としては、溶融加工性のフッ素樹脂であることが好ましい。溶融加工性のフッ素樹脂を用いることによって、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着を強固なものにすることができる。
フッ素樹脂(B)として用いることができる溶融加工性のフッ素樹脂としては、フッ素樹脂(A)として用いることができる溶融加工性のフッ素樹脂として例示したものと同じものが挙げられる。
フッ素樹脂(B)の融点は、フッ素樹脂(A)の融点+10℃以上であることが好ましく、フッ素樹脂(A)の融点+20℃以上であることがより好ましい。
融点が低すぎると、フッ素ゴム(I)とフッ素樹脂(II)との接着時にフッ素樹脂層(II)が溶融する恐れがあり、積層体の耐熱性が充分でなくなるおそれがある。
フッ素樹脂(B)の融点は、示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求める。
融点が低すぎると、フッ素ゴム(I)とフッ素樹脂(II)との接着時にフッ素樹脂層(II)が溶融する恐れがあり、積層体の耐熱性が充分でなくなるおそれがある。
フッ素樹脂(B)の融点は、示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求める。
本発明の積層体が、後述するようにフッ素樹脂(C)からなるフッ素樹脂層(III)を備える場合、フッ素樹脂(B)の融点は、フッ素樹脂(C)の融点−10℃以下であることが好ましく、フッ素樹脂(C)の融点−20℃以下であることがより好ましい。フッ素樹脂(B)の融点は、フッ素樹脂(A)の融点以上であることが好ましい。フッ素樹脂(B)の融点が上記範囲であることにより、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着が強固となるだけでなく、フッ素樹脂層(II)とフッ素樹脂層(III)ともより強固に接着する。
フッ素樹脂(B)は、280℃におけるメルトフローレート〔MFR〕が0.3g/10分以上であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましい。MFRが小さすぎるとフッ素ゴム層(I)及びフッ素樹脂層(III)との接着が不十分になるおそれがある。
上記MFRは、ASTM D1238に準拠し、温度280℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
上記MFRは、ASTM D1238に準拠し、温度280℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
フッ素樹脂(B)は、TFE単位(a)とHFP単位(b)とからなる共重合体(以下、「FEP」ともいう。)であることが好ましい。FEPは、本発明の積層体がより耐熱性に優れたものとなる点でも好ましい。
FEPは、TFE単位(a)及びHFP単位(b)のみからなる共重合体、又は、TFE単位(a)、HFP単位(b)、並びに、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に基づく重合単位からなる共重合体である。
FEPは、TFE単位(a)/HFP単位(b)がモル比で、70〜99/1〜30であることが好ましく、80〜97/3〜20であることがより好ましい。TFE単位(a)が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると融点が高くなりすぎて成形性が低下する傾向がある。
FEPが、TFE単位(a)、HFP単位(b)、並びに、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に基づく重合単位からなる共重合体である場合、TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、下記式:
CF2=CF−ORf6
(式中、Rf6は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、下記式:
CX5X6=CX7(CF2)nX8
(式中、X5、X6及びX7は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、X8は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、下記式:
CF2=CF−OCH2−Rf7
(式中、Rf7は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。得られるフッ素ゴム層(II)の耐熱性がより優れる点から、TFE及びHFPと共重合可能な単量体は、パーフルオロモノマーであることが好ましく、なかでも、PAVEであることが好ましい。
上記フッ素樹脂(B)は、例えば、TFE/HFP共重合体、及び、TFE/HFP/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であることが好ましい。
CF2=CF−ORf6
(式中、Rf6は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、下記式:
CX5X6=CX7(CF2)nX8
(式中、X5、X6及びX7は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、X8は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、下記式:
CF2=CF−OCH2−Rf7
(式中、Rf7は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。得られるフッ素ゴム層(II)の耐熱性がより優れる点から、TFE及びHFPと共重合可能な単量体は、パーフルオロモノマーであることが好ましく、なかでも、PAVEであることが好ましい。
上記フッ素樹脂(B)は、例えば、TFE/HFP共重合体、及び、TFE/HFP/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であることが好ましい。
上記PAVEとしては、PMVE、PEVE、PPVE、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rf7が炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF2=CF−OCH2−CF2CF3がより好ましい。
FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する重合単位(c)を有する場合、重合単位(c)/{TFE単位(a)+HFP単位(b)}がモル比で、0.1〜10/90〜99.9であることが好ましい。重合単位(c)が0.1モル%未満であると成形性、耐環境応力割れ性及び耐ストレスクラック性に劣りやすく、10モル%をこえると、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。より好ましくは、重合単位(c)/{TFE単位(a)+HFP単位(b)}がモル比で、0.1〜9/91〜99.9であることが好ましい。
フッ素樹脂(B)は、パーフルオロフッ素樹脂であることが好ましい。従来、フッ素ゴム層とフッ素樹脂層との接着は困難なものであったが、特に、フッ素ゴム層とパーフルオロフッ素樹脂からなるフッ素樹脂層との接着は困難であった。パーフルオロフッ素樹脂からなるフッ素樹脂層を用いると、耐熱性、耐薬品性及び耐燃料透過性が特に優れる積層体が得られることから、フッ素ゴム層とパーフルオロフッ素樹脂からなるフッ素樹脂層とが強固に接着した積層体が求められていた。
本発明の積層体は、フッ素ゴム層(I)が実質的にフッ素樹脂(A)からなる凸部を表面に有することによって、フッ素樹脂層(II)を構成するフッ素樹脂(B)がパーフルオロフッ素樹脂であっても、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着性が優れる。
本発明の積層体は、フッ素ゴム層(I)が実質的にフッ素樹脂(A)からなる凸部を表面に有することによって、フッ素樹脂層(II)を構成するフッ素樹脂(B)がパーフルオロフッ素樹脂であっても、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着性が優れる。
フッ素樹脂(B)は、パーフルオロフッ素樹脂であり、かつTFE単位(a)とHFP単位(b)とからなる共重合体であることが特に好ましい。
後述するように、本発明の積層体がフッ素樹脂層(III)を備える場合には、フッ素樹脂層(II)とフッ素樹脂層(III)との接着がより強固になる点から、フッ素樹脂(B)は、特定の組成を有する下記フッ素樹脂(B1)であることが好ましい。
フッ素樹脂(B1)は、特定の組成を有するテトラフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位からなる共重合体である。特定の組成を有するフッ素樹脂(B1)を用いることで、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着、及び、フッ素樹脂層(II)とフッ素樹脂層(III)との接着がより強固になる。
フッ素樹脂(B1)は、特定の組成を有するテトラフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位からなる共重合体である。特定の組成を有するフッ素樹脂(B1)を用いることで、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着、及び、フッ素樹脂層(II)とフッ素樹脂層(III)との接着がより強固になる。
フッ素樹脂(B1)は、テトラフルオロエチレン(TFE)単位(a)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位(b)のみからなる重合体であり、TFE単位(a)/HFP単位(b)が、モル比で80.0〜88.0/12.0〜20.0である共重合体である。上記の特定範囲の組成を有するフッ素樹脂(B1)を用いると、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着、及び、フッ素樹脂層(II)とフッ素樹脂層(III)との接着がより強固な積層体が得られる。
フッ素樹脂(B1)は、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着、及び、フッ素樹脂層(II)とフッ素樹脂層(III)との接着がより強固になる点、機械物性を優れたものとする観点から、(a)/(b)が、モル比で82.0〜88.0/12.0〜18.0であることが好ましく、84.0〜88.0/12.0〜16.0であることが好ましい。
フッ素樹脂(B1)は、融点が220℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、190℃以下であることが更に好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、150℃であってよい。
フッ素樹脂層(II)の厚みは、積層体の用途、構造等によって適宜好適な厚みに設定すればよく、特に限定されない。
後述するように、本発明の積層体がフッ素樹脂層(III)を備える場合には、フッ素樹脂層(II)の厚みは、500μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
フッ素樹脂層(II)は、さらに、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素粉末、炭素繊維、金属酸化物などの種々の充填剤を配合したものであってもよい。
たとえば、燃料透過性をさらに低減させるために、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト系の層状粘度鉱物や、雲母等の高アスペクト比を有する微小層状鉱物を添加してもよい。
また、導電性を付与するために、導電性フィラーを添加してもよい。導電性フィラーとしては特に限定されず、たとえば金属、炭素などの導電性単体粉末または導電性単体繊維;酸化亜鉛などの導電性化合物の粉末;表面導電化処理粉末などがあげられる。導電性フィラーを配合する場合、溶融混練して予めペレットを作製することが好ましい。
導電性単体粉末または導電性単体繊維としては特に限定されず、たとえば銅、ニッケルなどの金属粉末;鉄、ステンレススチールなどの金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3−174018号公報等に記載の炭素フィブリルなどがあげられる。
表面導電化処理粉末は、ガラスビーズ、酸化チタンなどの非導電性粉末の表面に導電化処理を施して得られる粉末である。
表面導電化処理の方法としては特に限定されず、たとえば金属スパッタリング、無電解メッキなどがあげられる。
導電性フィラーのなかでもカーボンブラックは、経済性や静電荷蓄積防止の観点で有利であるので好適に用いられる。
導電性フィラーを配合してなるフッ素ポリマー組成物の体積抵抗率は、1×100〜1×109Ω・cmであることが好ましい。より好ましい下限は、1×102Ω・cmであり、より好ましい上限は、1×108Ω・cmである。
また、充填剤以外に、熱安定化剤、補強剤、紫外線吸収剤、顔料、その他任意の添加剤を配合してもよい。
本発明の積層体は、フッ素樹脂層(II)上に、更に、フッ素樹脂(C)からなるフッ素樹脂層(III)を備えるものであってもよい。すなわち、本発明の積層体は、フッ素ゴム層(I)、フッ素樹脂層(II)、及び、フッ素樹脂層(III)がこの順に積層したものであることが好ましい。上記構成の積層体は、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが強固に接着しているだけでなく、フッ素樹脂層(II)とフッ素樹脂層(III)との接着も強固である。
フッ素ゴム層(II)とフッ素樹脂層(III)との接着がより強固になることから、フッ素ゴム層(II)を構成するフッ素樹脂(B)と、フッ素樹脂層(III)を構成するフッ素樹脂(C)とは、同じ含フッ素エチレン性単量体に基づく重合単位を有する共重合体であることが好ましい。例えば、フッ素樹脂(C)が、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく重合単位とヘキサフルオロプロピレン(HFP)に基づく重合単位とからなる共重合体である場合、フッ素樹脂(B)もTFEに基づく重合単位とHFPに基づく重合単位とからなる共重合体であることが好ましい。
〔(C)フッ素樹脂〕
フッ素樹脂(C)は、例えば、少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体に基づく重合単位を有する重合体である。フッ素樹脂(C)としては、溶融加工性のフッ素樹脂であることが好ましい。溶融加工性のフッ素樹脂を用いることによって、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着を強固なものにすることができる。
フッ素樹脂(C)は、例えば、少なくとも1種の含フッ素エチレン性単量体に基づく重合単位を有する重合体である。フッ素樹脂(C)としては、溶融加工性のフッ素樹脂であることが好ましい。溶融加工性のフッ素樹脂を用いることによって、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着を強固なものにすることができる。
フッ素樹脂(C)として用いることができる溶融加工性のフッ素樹脂としては、フッ素樹脂(A)として用いることができる溶融加工性のフッ素樹脂として例示したものが挙げられる。
フッ素樹脂(C)は、327℃におけるメルトフローレート〔MFR〕が0.3〜100g/10分であることが好ましく、1〜80g/10分であることがより好ましい。MFRが小さすぎると成形性が低下するおそれがあり、MFRが大きすぎると機械強度が低下するおそれがある。
上記MFRは、ASTM D1238に準拠し、温度327℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
上記MFRは、ASTM D1238に準拠し、温度327℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
フッ素樹脂(C)は、TFE単位(a)とHFP単位(b)とからなる共重合体(以下、「FEP」ともいう。)であることが好ましい。FEPは、本発明の積層体がより耐熱性に優れたものとなる点でも好ましい。
FEPは、TFE単位(a)及びHFP単位(b)のみからなる共重合体、又は、TFE単位(a)、HFP単位(b)、並びに、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に基づく重合単位からなる共重合体である。
FEPは、TFE単位(a)/HFP単位(b)がモル比で、70〜99/1〜30であることが好ましく、80〜97/3〜20であることがより好ましい。TFE単位(a)が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると融点が高くなりすぎて成形性が低下する傾向がある。
FEPが、TFE単位(a)、HFP単位(b)、並びに、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に基づく重合単位からなる共重合体である場合、TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、下記式:
CF2=CF−ORf6
(式中、Rf6は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、下記式:
CX5X6=CX7(CF2)nX8
(式中、X5、X6及びX7は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、X8は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、下記式:
CF2=CF−OCH2−Rf7
(式中、Rf7は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。得られるフッ素ゴム層(II)の耐熱性がより優れる点から、TFE及びHFPと共重合可能な単量体は、パーフルオロモノマーであることが好ましく、なかでも、PAVEであることが好ましい。
上記フッ素樹脂(C)は、例えば、TFE/HFP共重合体、及び、TFE/HFP/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であることが好ましい。
CF2=CF−ORf6
(式中、Rf6は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、下記式:
CX5X6=CX7(CF2)nX8
(式中、X5、X6及びX7は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、X8は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、下記式:
CF2=CF−OCH2−Rf7
(式中、Rf7は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。得られるフッ素ゴム層(II)の耐熱性がより優れる点から、TFE及びHFPと共重合可能な単量体は、パーフルオロモノマーであることが好ましく、なかでも、PAVEであることが好ましい。
上記フッ素樹脂(C)は、例えば、TFE/HFP共重合体、及び、TFE/HFP/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体であることが好ましい。
上記PAVEとしては、PMVE、PEVE、PPVE、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rf7が炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF2=CF−OCH2−CF2CF3がより好ましい。
FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する重合単位(c)を有する場合、重合単位(c)/{TFE単位(a)+HFP単位(b)}がモル比で、0.1〜10/90〜99.9であることが好ましい。重合単位(c)が0.1モル%未満であると成形性、耐環境応力割れ性及び耐ストレスクラック性に劣りやすく、10モル%をこえると、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。より好ましくは、重合単位(c)/{TFE単位(a)+HFP単位(b)}がモル比で、0.1〜9/91〜99.9であることが好ましい。
フッ素樹脂(C)は、パーフルオロフッ素樹脂であることが好ましい。フッ素樹脂層(III)が、パーフルオロフッ素樹脂からなるものであると、本発明の積層体は、耐熱性、耐薬品性及び耐燃料透過性が特に優れる。フッ素樹脂(C)は、パーフルオロフッ素樹脂であり、かつTFE単位(a)とHFP単位(b)とからなる共重合体であることが特に好ましい。
フッ素樹脂層(III)の厚みは特に限定されないが、例えば、本発明の積層体が燃料チューブである場合、フッ素樹脂層(III)の厚みは、50〜300μmであることが好ましく、100〜200μmであることがより好ましい。
フッ素樹脂(C)の融点は、230℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。融点が低すぎると、積層体の耐熱性が充分でなくなるおそれがある。
フッ素樹脂(C)の融点は、示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求める。
フッ素樹脂(C)の融点は、示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求める。
フッ素樹脂層(III)は、さらに、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素粉末、炭素繊維、金属酸化物などの種々の充填剤を配合したものであってもよい。上記充填剤としては、フッ素樹脂層(II)に配合できる充填剤として例示したものが挙げられる。
本発明の積層体は、フッ素ゴム層(I)、フッ素樹脂層(II)及びフッ素樹脂層(III)以外のポリマー層(IV)が接着された3層以上の多層構造であってもよい。
ポリマー層(IV)としては、フッ素ゴム層(I)以外のゴム層(IV−1)、フッ素樹脂層(II)及び(III)以外の樹脂層(IV−2)、さらには繊維補強層などでもよい。また、ポリマー層(IV)を介して、フッ素ゴム層(I)および/またはフッ素樹脂層(II)をさらに積層させてもよい。
ゴム層(IV−1)の材料としては、フッ素ゴム層(I)として使用したフッ素ゴム以外のゴムがあげられ、フッ素ゴムでも非フッ素ゴムでもよい。例えば、非フッ素ゴムとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)またはその水素化物(HNBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのジエン系ゴム、エチレン−プロピレン−ターモノマー共重合体ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴムなどがあげられる。
なお、ゴム層(IV−1)を形成する未加硫ゴム組成物中にも、加硫剤や、その他の配合剤を配合してもよい。
樹脂層(IV−2)の材料としては、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、セルロース系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリエーテルイミド樹脂などの機械的強度に優れた樹脂や、エチレン/ビニルアルコール共重合体からなる樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフタルアミド(PPA)などの燃料や気体の透過性が低い樹脂(以下、低透過性樹脂ということもある)があげられる。なかでも成形性、接着性が良好な点からポリアミド樹脂が好ましい。各層を熱プレスを用いて接着する場合、樹脂の融点が熱プレスの温度よりも高いことが望ましい。
つぎに本発明の積層体の層構造について説明する。
(1)フッ素ゴム層(I)−フッ素樹脂層(II)の2層構造
従来、フッ素樹脂層とフッ素ゴム層とを積層させるには、層間(フッ素樹脂層−フッ素ゴム層)の接着が不充分なため、樹脂側において表面処理を施したり、別途接着剤を層間に塗布したり、テープ状のフィルムを巻き付けて固定したりなどと工程が複雑になりがちであったが、本発明の積層体では、そのような複雑な工程を組まずとも、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが強固に接着した積層体が得られる。
従来、フッ素樹脂層とフッ素ゴム層とを積層させるには、層間(フッ素樹脂層−フッ素ゴム層)の接着が不充分なため、樹脂側において表面処理を施したり、別途接着剤を層間に塗布したり、テープ状のフィルムを巻き付けて固定したりなどと工程が複雑になりがちであったが、本発明の積層体では、そのような複雑な工程を組まずとも、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが強固に接着した積層体が得られる。
(2)フッ素ゴム層(I)−フッ素樹脂層(II)−ゴム層の3層構造
(I)−(II)−(I)および(I)−(II)−(IV−1)がある。シール性が要求される場合、たとえば燃料配管などの接合部は、シール性保持のためにゴム層を両側に配置することが望ましい。内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であってもよい。
また、燃料配管を(I)−(II)−(IV−1)型構造とし、ゴム層(IV−1)として非フッ素ゴム層を、フッ素ゴム層(I)を配管の内層にすることにより、非フッ素ゴムを有していたとしても、積層体の耐薬品性、燃料低透過性が優れる。
(I)−(II)−(I)および(I)−(II)−(IV−1)がある。シール性が要求される場合、たとえば燃料配管などの接合部は、シール性保持のためにゴム層を両側に配置することが望ましい。内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であってもよい。
また、燃料配管を(I)−(II)−(IV−1)型構造とし、ゴム層(IV−1)として非フッ素ゴム層を、フッ素ゴム層(I)を配管の内層にすることにより、非フッ素ゴムを有していたとしても、積層体の耐薬品性、燃料低透過性が優れる。
(3)樹脂層−フッ素ゴム層(I)−フッ素樹脂層(II)の3層構造
(II)−(I)−(II)および(IV−2)−(I)−(II)がある。
内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
樹脂層を両側に配置することで形状が安定する。また、耐薬品性が重視される場合に好適である。さらにそれぞれの側に別の機械特性を要求されるような場合は、(IV−2)−(I)−(II)型であっても良い。
(II)−(I)−(II)および(IV−2)−(I)−(II)がある。
内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
樹脂層を両側に配置することで形状が安定する。また、耐薬品性が重視される場合に好適である。さらにそれぞれの側に別の機械特性を要求されるような場合は、(IV−2)−(I)−(II)型であっても良い。
(4)樹脂層(IV−2)−フッ素樹脂層(II)−フッ素ゴム層(I)の3層構造
(5)フッ素樹脂層(II)−フッ素ゴム層(I)−ゴム層(IV−1)の3層構造
(6)フッ素ゴム層(I)−フッ素樹脂層(II)−フッ素樹脂層(III)の3層構造
フッ素樹脂層(II)上にフッ素樹脂層(III)を有することによって、フッ素樹脂層(II)を構成するフッ素樹脂(B)の特性に加えて、フッ素樹脂層(III)の特性を付与することができる。例えば、フッ素樹脂層(III)に耐熱性、耐薬品性、及び、耐燃料透過性に優れたフッ素樹脂を用い、フッ素樹脂層(II)をフッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(III)とのバインダー層として用いることで、積層体全体として、耐熱性、耐薬品性、及び、耐燃料透過性に優れ、かつ層間の接着が強固な積層体が得られる。
フッ素樹脂層(II)上にフッ素樹脂層(III)を有することによって、フッ素樹脂層(II)を構成するフッ素樹脂(B)の特性に加えて、フッ素樹脂層(III)の特性を付与することができる。例えば、フッ素樹脂層(III)に耐熱性、耐薬品性、及び、耐燃料透過性に優れたフッ素樹脂を用い、フッ素樹脂層(II)をフッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(III)とのバインダー層として用いることで、積層体全体として、耐熱性、耐薬品性、及び、耐燃料透過性に優れ、かつ層間の接着が強固な積層体が得られる。
(7)フッ素ゴム層(I)−フッ素樹脂層(II)−フッ素樹脂層(III)−ゴム層の4層構造
(I)−(II)−(III)−(I)および(I)−(II)−(III)−(IV−1)がある。シール性が要求される場合、たとえば燃料配管などの接合部は、シール性保持のためにゴム層を両側に配置することが望ましい。内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であってもよい。
また、燃料配管を(I)−(II)−(III)−(IV−1)型構造とし、ゴム層(IV−1)として非フッ素ゴム層を用い、フッ素ゴム層(I)を配管の内層にすることにより、非フッ素ゴム層を用いていたとしても、積層体の耐薬品性、燃料低透過性が優れる。
(I)−(II)−(III)−(I)および(I)−(II)−(III)−(IV−1)がある。シール性が要求される場合、たとえば燃料配管などの接合部は、シール性保持のためにゴム層を両側に配置することが望ましい。内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であってもよい。
また、燃料配管を(I)−(II)−(III)−(IV−1)型構造とし、ゴム層(IV−1)として非フッ素ゴム層を用い、フッ素ゴム層(I)を配管の内層にすることにより、非フッ素ゴム層を用いていたとしても、積層体の耐薬品性、燃料低透過性が優れる。
(8)樹脂層−フッ素ゴム層(I)−フッ素樹脂層(II)−フッ素樹脂層(III)の4層構造
(III)−(I)−(II)−(III)および(IV−2)−(I)−(II)−(III)がある。
内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
樹脂層を両側に配置することで形状が安定する。また、耐薬品性が重視される場合に好適である。さらにそれぞれの側に別の機械特性を要求されるような場合は、(IV−2)−(I)−(II)型であっても良い。
(III)−(I)−(II)−(III)および(IV−2)−(I)−(II)−(III)がある。
内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
樹脂層を両側に配置することで形状が安定する。また、耐薬品性が重視される場合に好適である。さらにそれぞれの側に別の機械特性を要求されるような場合は、(IV−2)−(I)−(II)型であっても良い。
(9)樹脂層(IV−2)−フッ素樹脂層(III)−フッ素樹脂層(II)−フッ素ゴム層(I)の4層構造
(10)フッ素樹脂層(III)−フッ素樹脂層(II)−フッ素ゴム層(I)−ゴム層(IV−1)の4層構造
(11)フッ素樹脂層(III)−フッ素樹脂層(II)−フッ素ゴム層(I)−フッ素樹脂層(II)−フッ素樹脂層(III)の5層構造
(12)フッ素ゴム層(I)−フッ素樹脂層(II)−フッ素樹脂層(III)−フッ素樹脂層(II)−フッ素ゴム層(I)の5層構造
(13)フッ素ゴム層(I)−フッ素樹脂層(II)−フッ素樹脂層(III)−フッ素樹脂層(II)−ゴム層(IV−1)の5層構造
(14)フッ素ゴム層(I)−フッ素樹脂層(II)−フッ素樹脂層(III)−フッ素樹脂層(II)−フッ素ゴム層(I)の5層構造
(15)その他
(1)〜(14)の2〜5層構造に加えて、さらに任意のフッ素ゴム層(I)、ゴム層(IV−1)、フッ素樹脂層(II)、フッ素樹脂層(III)、樹脂層(IV−2)を目的に応じて積層してもよい。また、金属箔などの層を設けてもよいし、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との層間、フッ素樹脂層(II)とフッ素樹脂層(III)との層間以外には接着剤層を介在させてもよい。
(1)〜(14)の2〜5層構造に加えて、さらに任意のフッ素ゴム層(I)、ゴム層(IV−1)、フッ素樹脂層(II)、フッ素樹脂層(III)、樹脂層(IV−2)を目的に応じて積層してもよい。また、金属箔などの層を設けてもよいし、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との層間、フッ素樹脂層(II)とフッ素樹脂層(III)との層間以外には接着剤層を介在させてもよい。
またさらに、ポリマー層(IV)と積層してライニング体とすることもできる。
なお、各層の厚さ、形状などは、使用目的、使用形態などによって適宜選定すればよい。
本発明の積層体は、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着が強固であり、また、フッ素樹脂の特性に起因して、燃料低透過性に優れるほか、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性に優れており、苛酷な条件下での使用に充分耐えうるものであり、各種の用途に使用可能である。
たとえば、自動車用エンジンのエンジン本体、主運動系、動弁系、潤滑・冷却系、燃料系、吸気・排気系など、駆動系のトランスミッション系など、シャーシのステアリング系、ブレーキ系など、電装品の基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品などの、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性が要求されるガスケットや非接触型および接触型のパッキン類(セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシールなど)などのシール、ベローズ、ダイヤフラム、ホース、チューブ、電線などとして好適な特性を備えている。
具体的には、以下に列記する用途に使用可能である。
エンジン本体の、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケットなどのガスケット、O−リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケットなどのシール、コントロールホースなどのホース、エンジンマウントの防振ゴム、水素貯蔵システム内の高圧弁用シール材など。
主運動系の、クランクシャフトシール、カムシャフトシールなどのシャフトシールなど。
動弁系の、エンジンバルブのバルブステムシールなど。
潤滑・冷却系の、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケットなどや、ラジエータ周辺のウォーターホース、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホースなど。
燃料系の、燃料ポンプのオイルシール、ダイヤフラム、バルブなど、フィラー(ネック)ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホースなどの燃料ホース、燃料タンクのインタンクホース、フィラーシール、タンクパッキン、インタンクフューエルポンプマウントなど、燃料配管チューブのチューブ本体やコネクターO−リングなど、燃料噴射装置のインジェクタークッションリング、インジェクターシールリング、インジェクターO−リング、プレッシャーレギュレーターダイヤフラム、チェックバルブ類など、キャブレターのニードルバルブ花弁、加速ポンプピストン、フランジガスケット、コントロールホースなど、複合空気制御装置(CAC)のバルブシート、ダイヤフラムなど。
吸気・排気系の、マニホールドの吸気マニホールドパッキン、排気マニホールドパッキンなど、EGR(排気際循環)のダイヤフラム、コントロールホース、エミッションコントロールホースなど、BPTのダイヤフラムなど、ABバルブのアフターバーン防止バルブシートなど、スロットルのスロットルボディパッキン、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、タービンシャフトシールなど。
トランスミッション系の、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O−リング、パッキン、トルコンホースなど、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O−リング、パッキン類など。
ステアリング系の、パワーステアリングオイルホースなど。
ブレーキ系の、オイルシール、O−リング、パッキン、ブレーキオイルホースなど、マスターバックの大気弁、真空弁、ダイヤフラムなど、マスターシリンダーのピストンカップ(ゴムカップ)など、キャリパーシール、ブーツ類など。
基本電装品の、電線(ハーネス)の絶縁体やシースなど、ハーネス外装部品のチューブなど。
制御系電装品の、各種センサー線の被覆材料など。
装備電装品の、カーエアコンのO−リング、パッキン、クーラーホース、外装品のワイパーブレードなど。
また自動車用以外では、たとえば、船舶、航空機などの輸送機関における耐油、耐薬品、耐熱、耐スチーム、あるいは耐候用のパッキン、O−リング、ホース、その他のシール材、ダイヤフラム、バルブに、また化学プラントにおける同様のパッキン、O−リング、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ホース、ロール、チューブ、耐薬品用コーティング、ライニングに、食品プラント機器および食品機器(家庭用品を含む)における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ベルト、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブに、原子力プラント機器における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、チューブに、一般工業部品における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブ、ライニング、マンドレル、電線、フレキシブルジョイント、ベルト、ゴム板、ウエザーストリップ、PPC複写機のロールブレードなどへの用途に好適である。たとえば、PTFEダイヤフラムのバックアップゴム材は滑り性が悪いため、使用している間にすり減ったり、破れたりする問題があったが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。
また、食品ゴムシール材用途においては、従来ゴムシール材において着香性やゴムの欠片などが食品中に混入するトラブルがあるが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。医薬・ケミカル用途のゴムシール材溶剤を使用する配管のシール材としてゴム材料は溶剤に膨潤する問題があるが、本発明の積層体を用いることにより、樹脂を被覆する事で改善される。一般工業分野では、ゴム材料の強度、すべり性、耐薬品性、透過性を改善する目的において、たとえば、ゴムロール、O−リング、パッキン、シール材等に好適に用いることができる。特に、リチウムイオン電池のパッキン用途には耐薬品性とシールの両方を同時に維持できることから好適に使用できる。その他、低摩擦による摺動性が要求される用途においては、好適に使用できる。
これらの中でも、特に本発明の積層体は、耐熱性、燃料低透過性の点で、燃料チューブに用いられることが好ましい。すなわち、本発明は、前記積層体からなる燃料チューブでもある。
本発明の積層体からなる燃料チューブは通常の方法によって製造することができ、特に制限されることはない。また、本発明の燃料配管には、コルゲートチューブも含まれる。
以下に、本発明の積層体を製造する方法について説明する。
本発明の積層体は、
(I)フッ素樹脂(B)と未架橋フッ素ゴム(A)とを混合して架橋性組成物を得る工程、
(II)得られた架橋性組成物を成形架橋する成形架橋工程、及び
(III)得られた架橋成形品をフッ素樹脂の融点以上の温度に加熱して、フッ素ゴム(A)及びフッ素樹脂(B)からなり、かつ表面に凸部を有するフッ素ゴム成形品(i)を得る熱処理工程、
(IV)得られたフッ素ゴム成形品(i)と、フッ素樹脂(B)からなるフッ素樹脂成形品(ii)とを積層し、加熱することにより、フッ素ゴム層(I)上にフッ素樹脂層(II)を備える積層体を得る工程、
を含む方法により製造することができる。
(I)フッ素樹脂(B)と未架橋フッ素ゴム(A)とを混合して架橋性組成物を得る工程、
(II)得られた架橋性組成物を成形架橋する成形架橋工程、及び
(III)得られた架橋成形品をフッ素樹脂の融点以上の温度に加熱して、フッ素ゴム(A)及びフッ素樹脂(B)からなり、かつ表面に凸部を有するフッ素ゴム成形品(i)を得る熱処理工程、
(IV)得られたフッ素ゴム成形品(i)と、フッ素樹脂(B)からなるフッ素樹脂成形品(ii)とを積層し、加熱することにより、フッ素ゴム層(I)上にフッ素樹脂層(II)を備える積層体を得る工程、
を含む方法により製造することができる。
以下、各工程について説明する。
なお、上記未架橋フッ素ゴムは、架橋前のフッ素ゴムである。
なお、上記未架橋フッ素ゴムは、架橋前のフッ素ゴムである。
(I)混合工程
上記架橋性組成物を得る方法は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを均一に混合できる方法を用いれば特に制限はないが、例えば、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)の各々を単独で凝析した粉末を粉末混合する方法、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)を溶融混練する方法、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを共凝析する方法等が挙げられる。中でも、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを溶融混練する方法、又は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを共凝析する方法が好ましい。
以下に、溶融混練と共凝析について説明する。
上記架橋性組成物を得る方法は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを均一に混合できる方法を用いれば特に制限はないが、例えば、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)の各々を単独で凝析した粉末を粉末混合する方法、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)を溶融混練する方法、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを共凝析する方法等が挙げられる。中でも、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを溶融混練する方法、又は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを共凝析する方法が好ましい。
以下に、溶融混練と共凝析について説明する。
(溶融混練)
溶融混練は、フッ素樹脂(A)の融点より5℃低い温度以上の温度、好ましくはフッ素樹脂(A)の融点以上の温度で行う。加熱温度の上限は、未架橋フッ素ゴム又はフッ素樹脂(A)のいずれか低い方の熱分解温度未満である。
溶融混練は、フッ素樹脂(A)の融点より5℃低い温度以上の温度、好ましくはフッ素樹脂(A)の融点以上の温度で行う。加熱温度の上限は、未架橋フッ素ゴム又はフッ素樹脂(A)のいずれか低い方の熱分解温度未満である。
溶融混練は、その温度で架橋を引き起こす条件(架橋剤、架橋促進剤及び受酸剤の存在下など)では行わないが、フッ素樹脂(A)の融点より5℃低い温度以上の温度で架橋を引き起こさない成分(例えば特定の架橋剤のみ、架橋剤と架橋促進剤の組合せのみ、など)であれば、溶融混練時に添加混合してもよい。架橋を引き起こす条件としては、例えば、ポリオール架橋剤と架橋促進剤と受酸剤との組合せが挙げられる。
したがって、上記溶融混練では、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを溶融混練してプレコンパウンド(予備混合物)を調製し、ついで、架橋温度未満の温度で他の添加剤や配合剤を混練してフルコンパウンド(架橋性組成物)とする2段階混練法が好ましい。もちろん、全ての成分を架橋剤の架橋温度未満の温度で混練する方法でもよい。
溶融混練は、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等を使用して、フッ素樹脂の融点より5℃低い温度以上の温度、例えば200℃以上、通常200〜230℃で未架橋フッ素ゴムと混練することにより行うことができる。これらの中でも、高剪断力を加えることができる点で、加圧ニーダー又は二軸押出機等の押出機を用いることが好ましい。
また、2段階混練法におけるフルコンパウンド化は、架橋温度未満、例えば100℃以下の温度でオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダーなどを用いて行うことができる。
上記溶融混練と類似の処理として、フッ素樹脂中でフッ素ゴムをフッ素樹脂の溶融条件下で架橋する処理(動的架橋)がある。動的架橋は、熱可塑性樹脂のマトリックス中に未架橋ゴムをブレンドし、混練しながら未架橋ゴムを架橋させ、かつその架橋したゴムをマトリックス中にミクロに分散させる方法であるが、上記溶融混練は、架橋を引き起こさない条件(架橋に必要な成分の不存在、又はその温度で架橋反応が起こらない配合など)で溶融混練するものであり、またマトリックスは未架橋ゴムとなり、未架橋ゴム中にフッ素樹脂が均一に分散している混合物である点において本質的に異なる。
(共凝析)
上記混合工程は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを共凝析して凝析物を得た後、該凝析物を含む架橋性組成物を得るものであることが好ましい。
上記凝析物を含む架橋性組成物を用いることによって、フッ素ゴム層(I)の表面に形成される凸部を均一かつ微細に形成することができるし、凸部を有する領域の面積比(占有率)を十分に高くすることもできる。その結果、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着をより強固にすることができる。
上記架橋性組成物が、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを共凝析することによって得られる凝析物を含む場合には、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とが架橋性組成物中で均一に分散していると予想される。このような架橋性組成物を架橋し、熱処理することにより、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着をより強固にすることができる。
上記混合工程は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを共凝析して凝析物を得た後、該凝析物を含む架橋性組成物を得るものであることが好ましい。
上記凝析物を含む架橋性組成物を用いることによって、フッ素ゴム層(I)の表面に形成される凸部を均一かつ微細に形成することができるし、凸部を有する領域の面積比(占有率)を十分に高くすることもできる。その結果、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着をより強固にすることができる。
上記架橋性組成物が、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを共凝析することによって得られる凝析物を含む場合には、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とが架橋性組成物中で均一に分散していると予想される。このような架橋性組成物を架橋し、熱処理することにより、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着をより強固にすることができる。
上記共凝析の方法としては、例えば、(i)未架橋フッ素ゴムの水性分散液と、フッ素樹脂(A)の水性分散液とを混合した後に凝析させる方法、(ii)未架橋フッ素ゴムの粉末を、フッ素樹脂(A)の水性分散液に添加した後に凝析させる方法、(iii)フッ素樹脂(A)の粉末を、未架橋フッ素ゴムの水性分散液に添加した後に凝析させる方法が挙げられる。上記共凝析の方法としては、特に未架橋フッ素ゴム及びフッ素樹脂(A)が共に均一に分散し易い点で、上記(i)の方法が好ましい。
上記(i)〜(iii)の凝析方法における凝析は、例えば、凝集剤を用いて行うことができる。このような凝集剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸アルミニウム、ミョウバン等のアルミニウム塩、硫酸カルシウム等のカルシウム塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化ナトリウムや塩化カリウム等の一価カチオン塩等の公知の凝集剤が挙げられる。凝集剤により凝析を行う際、凝集を促進させるために酸又はアルカリを添加してpHを調整してもよい。
上記未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを共凝析することによって得られる凝析物は、例えば、未架橋フッ素ゴムの水性分散液と、フッ素樹脂(A)の水性分散液とを混合した後に凝析し、次いで凝析物を回収し、所望により乾燥させることにより得ることができる。
未架橋フッ素ゴムの架橋系によっては架橋剤が必要であるので、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを共凝析して凝析物を得た後、凝析物に架橋剤を添加して架橋性組成物を得てもよい。上記架橋性組成物は、それぞれの架橋系において使用される架橋剤を含むものであってよい。また、上述した各種添加剤等を含むものであってもよい。
通常は、上記凝析物に架橋剤を添加した後、凝析物と架橋剤とを混合する。上記混合は、例えば、ニーダー等を用いた通常の混合方法により、フッ素樹脂(A)の融点未満の温度で混合することができる。
未架橋フッ素ゴムの架橋系によっては架橋剤が必要であるので、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)とを共凝析して凝析物を得た後、凝析物に架橋剤を添加して架橋性組成物を得てもよい。上記架橋性組成物は、それぞれの架橋系において使用される架橋剤を含むものであってよい。また、上述した各種添加剤等を含むものであってもよい。
通常は、上記凝析物に架橋剤を添加した後、凝析物と架橋剤とを混合する。上記混合は、例えば、ニーダー等を用いた通常の混合方法により、フッ素樹脂(A)の融点未満の温度で混合することができる。
上記未架橋フッ素ゴムの架橋系は、例えば、パーオキサイド架橋系、及び、ポリオール架橋系からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。耐薬品性の観点からはパーオキサイド架橋系が好ましく、耐熱性の観点からはポリオール架橋系が好ましい。
従って、上記架橋剤としては、ポリオール架橋剤、及び、パーオキサイド架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤が好ましい。
架橋剤の配合量は、架橋剤の種類等によって適宜選択すればよいが、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して0.2〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0質量部である。
従って、上記架橋剤としては、ポリオール架橋剤、及び、パーオキサイド架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤が好ましい。
架橋剤の配合量は、架橋剤の種類等によって適宜選択すればよいが、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して0.2〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0質量部である。
パーオキサイド架橋は、パーオキサイド架橋可能な未架橋フッ素ゴム及び架橋剤として有機過酸化物を使用することにより行うことができる。
パーオキサイド架橋可能な未架橋フッ素ゴムとしては特に限定されず、パーオキサイド架橋可能な部位を有する未架橋フッ素ゴムであればよい。上記パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、ヨウ素原子を有する部位、臭素原子を有する部位等を挙げることができる。
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、例えば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエイトなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の配合量は、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜5質量部である。
有機過酸化物の配合量は、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜5質量部である。
架橋剤が有機過酸化物である場合、上記架橋性組成物は更に架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルフタルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性及び機械物性、シール性が優れる点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
架橋助剤の配合量は、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.01〜7.0質量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.1〜5.0質量部である。架橋助剤が、0.01質量部より少ないと、機械物性が低下し、シール性が劣り、10質量部をこえると、耐熱性に劣り、得られる積層体の耐久性も低下する傾向がある。
ポリオール架橋は、ポリオール架橋可能な未架橋フッ素ゴム及び架橋剤としてポリヒドロキシ化合物を使用することにより行うことができる。ポリオール架橋系における、ポリヒドロキシ化合物の配合量としては、ポリオール架橋可能な未架橋フッ素ゴム100質量部に対して0.01〜8質量部であることが好ましい。ポリヒドロキシ化合物の配合量がこのような範囲であることにより、ポリオール架橋を充分に進行させることができる。より好ましくは0.02〜5質量部である。
上記ポリオール架橋可能な未架橋フッ素ゴムとしては特に限定されず、ポリオール架橋可能な部位を有する未架橋フッ素ゴムであればよい。上記ポリオール架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、未架橋フッ素ゴムの重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
ポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。ポリヒドロキシ芳香族化合物の配合量は、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して、0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、上記架橋性組成物は更に架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤は、ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
なお、架橋促進剤は、更に、酸化マグネシウム等の受酸剤や、水酸化カルシウム等の架橋助剤と組み合わせて用いてもよい。
なお、架橋促進剤は、更に、酸化マグネシウム等の受酸剤や、水酸化カルシウム等の架橋助剤と組み合わせて用いてもよい。
架橋促進剤としては、オニウム化合物があげられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、シール性の点から、DBU−Bが好ましい。
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、例えば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、シール性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
架橋促進剤の配合量は、未架橋フッ素ゴム100質量部に対して、0.01〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、未架橋フッ素ゴムの架橋が充分に進行せず、得られるフッ素ゴム層(I)の耐熱性等が低下するおそれがある。8質量部をこえると、上記架橋性組成物の成形加工性が低下するおそれや、機械物性における伸びが低下する傾向がある。
フッ素樹脂(A)と未架橋フッ素ゴムとの相溶性向上のため、上記架橋性組成物は、少なくとも1種の多官能化合物を含有してもよい。多官能化合物とは、1つの分子中に同一又は異なる構造の2つ以上の官能基を有する化合物である。
多官能化合物が有する官能基としては、カルボニル基、カルボキシル基、ハロホルミル基、アミド基、オレフィン基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、エポキシ基等、一般に反応性を有することが知られている官能基であれば任意に用いることができる。
これらの官能基を有する化合物は、未架橋フッ素ゴムとの親和性が高いだけではなく、フッ素樹脂(A)が持つ反応性を有することが知られている官能基とも反応し、更に相溶性が向上することも期待される。
これらの官能基を有する化合物は、未架橋フッ素ゴムとの親和性が高いだけではなく、フッ素樹脂(A)が持つ反応性を有することが知られている官能基とも反応し、更に相溶性が向上することも期待される。
上記未架橋フッ素ゴム及びフッ素樹脂(A)を含む架橋性組成物は、未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)との体積比(未架橋フッ素ゴム)/(フッ素樹脂(A))が60/40〜95/5であることが好ましい。フッ素樹脂(A)が少なすぎると、本発明の積層体において、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着強度が充分に得られないおそれがあり、一方、フッ素樹脂(A)が多すぎると、ゴム弾性が損なわれる恐れがある。フッ素ゴムに起因する柔軟性と、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着性の両方が良好な点から、(未架橋フッ素ゴム)/(フッ素樹脂(A))は、65/35〜95/5であることがより好ましく、70/30〜90/10であることが更に好ましい。
上記架橋性組成物は、必要に応じて未架橋フッ素ゴム中に配合される通常の添加剤、例えば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤を配合することができ、これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用すればよい。
(II)成形架橋工程
この工程は、混合工程で得られた架橋性組成物を成形し架橋し、製造するフッ素ゴム層(I)と略同形状の架橋成形品を製造する工程である。架橋成形品の形状は、シート状、チューブ状、リング状等が挙げられる。
成形及び架橋の順序は限定されず、成形した後架橋してもよいし、架橋した後成形してもよいし、成形と架橋とを同時に行ってもよい。
この工程は、混合工程で得られた架橋性組成物を成形し架橋し、製造するフッ素ゴム層(I)と略同形状の架橋成形品を製造する工程である。架橋成形品の形状は、シート状、チューブ状、リング状等が挙げられる。
成形及び架橋の順序は限定されず、成形した後架橋してもよいし、架橋した後成形してもよいし、成形と架橋とを同時に行ってもよい。
成形方法としては、例えば圧縮成形法、押出成形法などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
架橋方法も、スチーム架橋法、加熱により架橋反応が開始される通常の方法、放射線架橋法等が採用でき、なかでも、加熱による架橋反応が好ましい。
本発明においては、フッ素樹脂(A)が架橋性組成物の表面層へスムーズに移行する点から、加熱による架橋反応が好適である。
本発明においては、フッ素樹脂(A)が架橋性組成物の表面層へスムーズに移行する点から、加熱による架橋反応が好適である。
架橋を行う温度は、未架橋フッ素ゴムの架橋温度以上であり、フッ素樹脂(A)の融点未満であることが好ましい。また、後述する熱処理工程において、架橋成形品表面にフッ素樹脂(A)からなる凸部を形成させることができる点から、より好ましくはフッ素樹脂(A)の融点より5℃以上低い温度以下である。また、架橋条件における温度の下限は、未架橋フッ素ゴムの架橋温度である。
成形及び架橋の方法及び条件としては、採用する成形及び架橋において公知の方法及び条件の範囲内でよい。また、成形と架橋は順不同で行ってもよいし、同時に並行して行ってもよい。
限定されない具体的な架橋条件としては、通常、150〜300℃の温度範囲、1分間〜24時間の架橋時間内で、使用する架橋剤などの種類により適宜決めればよい。また、後述する熱処理工程において、架橋成形品表面にフッ素樹脂(A)からなる凸部を形成させる観点から、成形架橋条件は、フッ素樹脂(A)の融点未満の温度であることが好ましく、より好ましくはフッ素樹脂(A)の融点より5℃以上低い温度以下である。また、架橋条件における温度の下限は、未架橋フッ素ゴムの架橋温度である。
また、未架橋フッ素ゴムの架橋において、最初の架橋処理(1次架橋という)を施した後に2次架橋と称される後処理工程を施すことがあるが、つぎの熱処理工程(III)で説明するように、従来の2次架橋工程と本発明の成形架橋工程(II)及び熱処理工程(III)とは異なる処理工程である。
(III)熱処理工程
この熱処理工程(III)では、工程(II)で得られた架橋成形品をフッ素樹脂(A)の融点以上の温度に加熱する。熱処理工程(III)を経ることにより、製造するフッ素ゴム層(I)の表面に、(主にフッ素樹脂(A)からなる)凸部を形成することができる。
この熱処理工程(III)では、工程(II)で得られた架橋成形品をフッ素樹脂(A)の融点以上の温度に加熱する。熱処理工程(III)を経ることにより、製造するフッ素ゴム層(I)の表面に、(主にフッ素樹脂(A)からなる)凸部を形成することができる。
本発明における熱処理工程(III)は、架橋成形品表面のフッ素樹脂(A)の比率を高めるために行う処理工程であり、この目的に即して、フッ素樹脂(A)の融点以上で、かつ、フッ素ゴム及びフッ素樹脂(A)の熱分解温度未満の温度が採用される。
加熱温度がフッ素樹脂(A)の融点よりも低い場合は、架橋成形品表面のフッ素樹脂(A)の比率が十分に高くならない。フッ素ゴム及びフッ素樹脂(A)の熱分解を回避するために、加熱温度は、フッ素ゴムの熱分解温度又はフッ素樹脂(A)の熱分解温度のいずれか低い方の温度未満でなければならない。好ましい加熱温度は、短時間で低摩擦化が容易な点から、フッ素樹脂(A)の融点より5℃以上高い温度である。
熱処理工程(III)において、加熱温度は加熱時間と密接に関係しており、加熱温度が比較的下限に近い温度では比較的長時間加熱を行い、比較的上限に近い加熱温度では比較的短い加熱時間を採用することが好ましい。
このように加熱時間は加熱温度との関係で適宜設定すればよいが、加熱処理をあまり長時間行うとフッ素ゴムが熱劣化することがあるので、加熱処理時間は、耐熱性に優れたフッ素ゴムを使用する場合を除いて実用上実用上96時間までである。
通常、加熱処理時間は1分間〜72時間が好ましく、1分間〜48時間がより好ましく、生産性が良好な点から1分間〜24時間が更に好ましいが、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着をより強固にすることができることから、12時間以上であることが特に好ましい。
このように加熱時間は加熱温度との関係で適宜設定すればよいが、加熱処理をあまり長時間行うとフッ素ゴムが熱劣化することがあるので、加熱処理時間は、耐熱性に優れたフッ素ゴムを使用する場合を除いて実用上実用上96時間までである。
通常、加熱処理時間は1分間〜72時間が好ましく、1分間〜48時間がより好ましく、生産性が良好な点から1分間〜24時間が更に好ましいが、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)との接着をより強固にすることができることから、12時間以上であることが特に好ましい。
また、上記(I)〜(III)の工程を経て製造したフッ素ゴム成形品(i)は、その表面全体に凸部が形成されることとなるが、本発明の積層体においては、少なくともフッ素樹脂成形品(ii)と接着される面の表面に凸部が形成されていれば、他の部分には凸部がなくてもよい。そして、このような態様のフッ素ゴム成形品(i)を製造する場合は、例えば、上記(III)の工程を行った後、研磨処理等により不要な部分の凸部を除去すればよい。
ところで、従来行われている2次架橋は1次架橋終了時に残存している架橋剤を完全に分解してフッ素ゴムの架橋を完結し、架橋成形品の機械的特性や圧縮永久ひずみ特性を向上させるために行う処理である。
したがって、フッ素樹脂(A)の共存を想定していない従来の2次架橋条件は、その架橋条件が偶発的に熱処理工程の加熱条件と重なるとしても、2次架橋ではフッ素樹脂(A)の存在を架橋条件設定の要因として考慮せずに未架橋フッ素ゴムの架橋の完結(架橋剤の完全分解)という目的の範囲内での加熱条件が採用されているにすぎず、フッ素樹脂(A)を配合した場合にゴム架橋物(ゴム未架橋物ではない)中でフッ素樹脂(A)を加熱軟化又は溶融する条件を導き出せるものではない。
なお、成形架橋工程(II)において、未架橋フッ素ゴムの架橋を完結させるため(架橋剤を完全に分解するため)の2次架橋を行ってもよい。
また、熱処理工程(III)において、残存する架橋剤の分解が起こり未架橋フッ素ゴムの架橋が完結する場合もあるが、熱処理工程(III)におけるかかる未架橋フッ素ゴムの架橋はあくまで副次的な効果にすぎない。
混合工程(I)、成形架橋工程(II)、及び、熱処理工程(III)を含む製造方法により得られるフッ素ゴムシート(i)は、フッ素樹脂(A)の表面移行現象によって、表面に凸部が形成されるとともに、表面領域(凸部内を含む)でフッ素樹脂比率が増大した状態になっているものと推定される。
特に、混合工程(I)で得られる混合物は、未架橋フッ素ゴムが連続相を形成しかつフッ素樹脂(A)が分散相を形成している構造、又は未架橋フッ素ゴムとフッ素樹脂(A)が共に連続相を形成している構造をとっているものと推定され、このような構造を形成することにより、成形架橋工程(II)での架橋反応をスムーズに行うことができ、得られる架橋物の架橋状態も均一になり、また熱処理工程(III)におけるフッ素樹脂(A)の表面移行現象がスムーズに起こりフッ素樹脂(A)の比率が増大した表面が得られる。
なお、フッ素樹脂(A)の表面への移行がスムーズに起こる点から、熱処理工程はフッ素樹脂(A)の融点以上での加熱処理が特に優れている。
フッ素ゴム層(i)の表面領域におけるフッ素樹脂(A)の比率が増大した状態は、表面をESCA又はIRで化学的に分析することで検証できる。
例えば、ESCA分析ではフッ素ゴムシート(i)の表面から約10nmまでの深さの原子団を同定できるが、熱処理後において、フッ素ゴム由来の結合エネルギーのピーク(PESCA1)とフッ素樹脂由来のピーク(PESCA2)の比(PESCA1/PESCA2)が熱処理前に対して小さくなっている、すなわちフッ素樹脂の原子団が多くなっている。
また、IR分析ではフッ素ゴムシート(i)の表面から約0.5〜1.2μmまでの深さの原子団を同定できるが、熱処理後において、深さ0.5μmでのフッ素ゴム由来の特性吸収のピーク(PIR0.51)とフッ素樹脂由来のピーク(PIR0.52)の比(PIR0.51/PIR0.52)が熱処理前に対して小さくなっている、すなわちフッ素樹脂の原子団が多くなっている。しかも、深さ0.5μmでの比(PIR0.51/PIR0.52)と深さ1.2μmでの比(PIR1.21/PIR1.22)を比べても、深さ0.5μmでの比(PIR0.51/PIR0.52)の方が小さくなっており、表面に近い領域の方にフッ素樹脂(A)の比率が増大していることを示している。
(IV)加熱工程
工程(IV)は、工程(III)により得られたフッ素ゴム成形品(i)と、フッ素樹脂(B)からなるフッ素樹脂成形品(ii)とを積層し、加熱することにより、フッ素ゴム層(I)及びフッ素樹脂層(II)を含む積層体を得る工程である。
フッ素樹脂成形品(ii)の形状としては、シート状、チューブ状、リング状等が挙げられる。
工程(IV)は、工程(III)により得られたフッ素ゴム成形品(i)と、フッ素樹脂(B)からなるフッ素樹脂成形品(ii)とを積層し、加熱することにより、フッ素ゴム層(I)及びフッ素樹脂層(II)を含む積層体を得る工程である。
フッ素樹脂成形品(ii)の形状としては、シート状、チューブ状、リング状等が挙げられる。
上記加熱の温度は、フッ素樹脂(A)の融点よりも高い温度であることが好ましい。フッ素樹脂(A)の融点よりも高い温度で加熱することにより、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが強固に接着した積層体が得られる。
上記加熱は、加圧しながら行うことが好ましい。加圧の圧力は、例えば、15kN以上であることが好ましく、30kN以上であることがより好ましい。
工程(IV)は、上記工程(III)で得られたフッ素ゴム成形品(i)、フッ素樹脂(B)からなるフッ素樹脂成形品(ii)、及び、フッ素樹脂(C)からなるフッ素樹脂成形品(iii)をこの順に積層し、加熱することにより、フッ素ゴム層(I)、フッ素樹脂層(III)、及び、フッ素樹脂層(II)を含む積層体を得る工程であってもよい。この場合、加熱の温度は、フッ素樹脂(A)、フッ素樹脂(B)及びフッ素樹脂(C)の融点以上の温度であることが好ましい。上記加熱は、加圧しながら行うことが好ましく、加圧の圧力は、15kN以上であることが好ましく、30kN以上であることがより好ましい。
フッ素樹脂成形品(iii)の形状としては、シート状、チューブ状、リング状等が挙げられる。
フッ素樹脂成形品(iii)の形状としては、シート状、チューブ状、リング状等が挙げられる。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
〔フッ素樹脂の融点〕
フッ素樹脂の融点は、示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求めた。
〔フッ素樹脂のMFR〕
MFRは、ASTM D1238に準拠し、温度280℃又は327℃、荷重5kgで測定した。
〔凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の個数〕
凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の個数等は、例えば、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用い、解析ソフトとして三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いて算出することができる。凸部を有する領域の面積比は、凸部の底部断面積を求め、断面積合計の値が、測定全領域面積に占める割合として求められる。凸部の個数は、測定領域中の凸部の個数を1mm2当たりの数に換算したものである。
フッ素樹脂の融点は、示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求めた。
〔フッ素樹脂のMFR〕
MFRは、ASTM D1238に準拠し、温度280℃又は327℃、荷重5kgで測定した。
〔凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の個数〕
凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の個数等は、例えば、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用い、解析ソフトとして三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いて算出することができる。凸部を有する領域の面積比は、凸部の底部断面積を求め、断面積合計の値が、測定全領域面積に占める割合として求められる。凸部の個数は、測定領域中の凸部の個数を1mm2当たりの数に換算したものである。
フッ素ゴム(α1)
ダイキン工業(株)製 2元フッ素ゴム水性ディスパージョン(固形分濃度26質量%、フッ素ゴム:VdF/HFP共重合体、VdF/HFP=22/78(モル比))
ダイキン工業(株)製 2元フッ素ゴム水性ディスパージョン(固形分濃度26質量%、フッ素ゴム:VdF/HFP共重合体、VdF/HFP=22/78(モル比))
フッ素ゴム(α2)
ダイキン工業(株)製 ダイエルG−716
ダイキン工業(株)製 ダイエルG−716
フッ素樹脂(β)
ダイキン工業(株)製 ネオフロンFEP(TFE/HFP共重合体)水性ディスパージョン(固形分濃度21質量%;TFE/HFP共重合体:MFR31.7g/10min(327℃、5kg荷重測定)、融点215℃、TFE/HFP=87.9/12.1(モル比))
ダイキン工業(株)製 ネオフロンFEP(TFE/HFP共重合体)水性ディスパージョン(固形分濃度21質量%;TFE/HFP共重合体:MFR31.7g/10min(327℃、5kg荷重測定)、融点215℃、TFE/HFP=87.9/12.1(モル比))
〔フッ素ゴムシート(1−1)(フッ素ゴム(α1)/フッ素樹脂(β)=70/30(体積比))の作製〕
容量1Lのミキサー内に、水500mlと塩化マグネシウム4gをあらかじめ混合した溶液にフッ素ゴムディスパージョン(α1)400mlを投入し、ミキサーにて5分間混合し、凝析した。凝析後、固形分を取り出し、120℃×24時間乾燥炉で乾燥させた後、内容量3Lの加圧ニーダーに体積充填率が85%になるように凝析後のフッ素ゴム(α1)とフッ素樹脂(β)を体積比で70/30となるように投入し、材料温度(フッ素ゴムとフッ素樹脂)が230℃になるまで練り、コンパウンドを調整した。その後コンパウンドをオープンロールにて表1に示す所定の配合物を混合して、架橋組成物1を調整した。架橋組成物1を所定のシート金型に仕込み、圧力50kg/cm2、180℃×10分の条件で成形した後、金型よりシートを取り出し、230℃×24時間の熱処理を処し、フッ素ゴムシート(1−1)を得た。
容量1Lのミキサー内に、水500mlと塩化マグネシウム4gをあらかじめ混合した溶液にフッ素ゴムディスパージョン(α1)400mlを投入し、ミキサーにて5分間混合し、凝析した。凝析後、固形分を取り出し、120℃×24時間乾燥炉で乾燥させた後、内容量3Lの加圧ニーダーに体積充填率が85%になるように凝析後のフッ素ゴム(α1)とフッ素樹脂(β)を体積比で70/30となるように投入し、材料温度(フッ素ゴムとフッ素樹脂)が230℃になるまで練り、コンパウンドを調整した。その後コンパウンドをオープンロールにて表1に示す所定の配合物を混合して、架橋組成物1を調整した。架橋組成物1を所定のシート金型に仕込み、圧力50kg/cm2、180℃×10分の条件で成形した後、金型よりシートを取り出し、230℃×24時間の熱処理を処し、フッ素ゴムシート(1−1)を得た。
〔フッ素ゴムシート(1−2)(フッ素ゴム(α1)/フッ素樹脂(β)=75/25(体積比))の作製〕
フッ素ゴムシート(1−1)の作製方法の中で、フッ素ゴム(α1)とフッ素樹脂の体積比を75/25とした以外は同じ方法でフッ素ゴムシート(1−2)を得た。
フッ素ゴムシート(1−1)の作製方法の中で、フッ素ゴム(α1)とフッ素樹脂の体積比を75/25とした以外は同じ方法でフッ素ゴムシート(1−2)を得た。
〔フッ素ゴムシート(1−3)の作製〕
フッ素ゴム(α2)を所定のシート金型に仕込み、圧力50kg/cm2、180℃×10分の条件で成形した後、金型よりシートを取り出し、230℃×24時間の熱処理を処し、フッ素ゴムシート(1−3)を得た。
フッ素ゴム(α2)を所定のシート金型に仕込み、圧力50kg/cm2、180℃×10分の条件で成形した後、金型よりシートを取り出し、230℃×24時間の熱処理を処し、フッ素ゴムシート(1−3)を得た。
フッ素樹脂シート(2−1)
ダイキン工業(株)製 ネオフロンFEP NP20(TFE/HFP共重合体)フィルム
ダイキン工業(株)製 ネオフロンFEP NP20(TFE/HFP共重合体)フィルム
フッ素樹脂シート(2−2)
ダイキン工業(株)製 ネオフロンFEP(TFE/HFP共重合体)水性ディスパージョン(固形分濃度21質量%;TFE/HFP共重合体:MFR31.7g/10min(327℃、5kg荷重測定)、融点215℃、TFE/HFP=87.9/12.1(モル比))
ダイキン工業(株)製 ネオフロンFEP(TFE/HFP共重合体)水性ディスパージョン(固形分濃度21質量%;TFE/HFP共重合体:MFR31.7g/10min(327℃、5kg荷重測定)、融点215℃、TFE/HFP=87.9/12.1(モル比))
実施例1
上記フッ素ゴムシート(1−1)、フッ素樹脂シート(2−2)、フッ素樹脂シート(2−1)をこの順に積層し、真空プレス成形機を用いて下記表2に記載の条件で熱プレスすることにより、フッ素ゴム層/フッ素樹脂層(バインダー層)/フッ素樹脂層の3層構造の積層体を得た。
上記フッ素ゴムシート(1−1)、フッ素樹脂シート(2−2)、フッ素樹脂シート(2−1)をこの順に積層し、真空プレス成形機を用いて下記表2に記載の条件で熱プレスすることにより、フッ素ゴム層/フッ素樹脂層(バインダー層)/フッ素樹脂層の3層構造の積層体を得た。
実施例2
フッ素ゴムシート(1−1)の代わりにフッ素ゴムシート(1−2)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で、フッ素ゴム層/フッ素樹脂層(バインダー層)/フッ素樹脂層の3層構造の積層体を得た。
フッ素ゴムシート(1−1)の代わりにフッ素ゴムシート(1−2)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で、フッ素ゴム層/フッ素樹脂層(バインダー層)/フッ素樹脂層の3層構造の積層体を得た。
実施例3
上記フッ素ゴムシート(1−1)、フッ素樹脂シート(2−1)を積層し、真空プレス成形機を用いて下記表2に記載の条件で熱プレスすることにより、フッ素ゴム層/フッ素樹脂層の2層構造の積層体を得た。
上記フッ素ゴムシート(1−1)、フッ素樹脂シート(2−1)を積層し、真空プレス成形機を用いて下記表2に記載の条件で熱プレスすることにより、フッ素ゴム層/フッ素樹脂層の2層構造の積層体を得た。
実施例4
実施例3でフッ素ゴムシート(1−1)の代わりにフッ素ゴムシート(1−2)を用いたこと以外は、同じ方法でフッ素ゴム層/フッ素樹脂層の2層構造の積層体を得た。
実施例3でフッ素ゴムシート(1−1)の代わりにフッ素ゴムシート(1−2)を用いたこと以外は、同じ方法でフッ素ゴム層/フッ素樹脂層の2層構造の積層体を得た。
比較例1
上記フッ素ゴムシート(1−3)、フッ素樹脂シート(2−1)を積層し、真空プレス成形機を用いて下記表2に記載の条件で熱プレスすることにより、フッ素ゴム層/フッ素樹脂層の2層構造の積層体を得た。
上記フッ素ゴムシート(1−3)、フッ素樹脂シート(2−1)を積層し、真空プレス成形機を用いて下記表2に記載の条件で熱プレスすることにより、フッ素ゴム層/フッ素樹脂層の2層構造の積層体を得た。
得られた積層体を、500kgオートグラフ試験機にて剥離強度を測定し、以下の基準で評価した。得られた結果を表1に示す。
(接着評価)
○:剥離強度が1N/cm以上であった。
×:剥離強度が1N/cm未満であった。
○:剥離強度が1N/cm以上であった。
×:剥離強度が1N/cm未満であった。
本発明の積層体は、フッ素ゴム層(I)とフッ素樹脂層(II)とが強固に接着したものであり、また、フッ素ゴム及びフッ素樹脂の特性に起因して、優れた耐熱性、耐薬品性、耐燃料透過性を有するため、種々の用途に好適に利用できる。本発明の積層体は、特に燃料チューブとして好適である。
30:フッ素ゴム層(I)
31:凸部
31:凸部
Claims (6)
- フッ素ゴム及びフッ素樹脂(A)からなり、かつ実質的にフッ素樹脂(A)からなる凸部を表面に有するフッ素ゴム層(I)上に、フッ素樹脂(B)からなるフッ素樹脂層(II)を備える
ことを特徴とする積層体。 - フッ素樹脂(A)は、溶融加工性のフッ素樹脂である請求項1記載の積層体。
- フッ素樹脂(A)は、TFE単位(a)とHFP単位(b)とからなる共重合体である請求項1又は2記載の積層体。
- フッ素ゴムは、非パーフルオロフッ素ゴムである請求項1、2又は3記載の積層体。
- フッ素樹脂層(II)上に、更にフッ素樹脂(C)からなるフッ素樹脂層(III)を備える請求項1、2、3又は4記載の積層体。
- 燃料チューブである請求項1、2、3、4又は5記載の積層体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2012026643A JP2013163286A (ja) | 2012-02-09 | 2012-02-09 | 積層体 |
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Publications (1)
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2015166455A (ja) * | 2014-02-17 | 2015-09-24 | ダイキン工業株式会社 | 成形体 |
-
2012
- 2012-02-09 JP JP2012026643A patent/JP2013163286A/ja active Pending
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