JP5777583B2 - 粒状超高分子量ポリエチレン及び成形体 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
温度135℃における、デカリン溶液で測定した極限粘度[η]が10dL/g以上25dL/g以下であり、
チタンの含有量が2ppm以上20ppm以下であり、
粒子径が425μmを超える超高分子量ポリエチレン粒子の含有率が2質量%以下であり、
粒子径が106μm以下の超高分子量ポリエチレン粒子の含有率が60質量%以下であり、
粒子径が75μm以下の超高分子量ポリエチレン粒子の含有率が30質量%以下であり、
粒子径が53μm以下の超高分子量ポリエチレン粒子の含有率が10質量%以下である、
固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレン。
〔2〕
前記チタンの含有量が、8ppm以上10ppm以下である、
請求項1に記載の固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレン。
〔3〕
重合を反応条件の異なる二段階以上に分けて行うことにより、請求項1又は2に記載の固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレンを得る工程を有する、固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレンの製造方法。
〔4〕
請求項1又は2に記載の固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレンを含み、
引張強度が1GPa以上であり、
弾性率が30GPa以上である、
成形体。
〔5〕
請求項1又は2に記載の固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレンを、固相延伸することにより、請求項4に記載の成形体を得る工程を有する、成形体の製造方法。
本実施形態の粒状超高分子量ポリエチレンは、
温度135℃における、デカリン溶液で測定した極限粘度[η]が10dL/g以上25dL/g以下であり、
チタンの含有量が2ppm以上20ppm以下であり、
粒子径が425μmを超える超高分子量ポリエチレン粒子の含有率が2質量%以下であり、
粒子径が106μm以下の超高分子量ポリエチレン粒子の含有率が60質量%以下である。
まず、超高分子量ポリエチレンについて説明する。本実施形態に係る超高分子量ポリエチレンとは、極限粘度[η]が10dL/g以上25dL/g以下のポリエチレンであり、これが粒子状のものを超高分子量ポリエチレン粒子と称する。本実施形態に係る超高分子量ポリエチレンとしては、特に限定されず、エチレンの単独重合体、及びエチレンとオレフィンとの共重合体が含まれる。エチレンと共重合可能なオレフィンとしては、特に限定されないが、具体的には、炭素数3〜20のα−オレフィン、炭素数3〜20の環状オレフィン、式CH2=CHR1(ここで、R1は炭素数6〜20のアリール基である。)で表される化合物、及び炭素数4〜20の直鎖状、分岐状又は環状のジエンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンが挙げられる。このなかでも、共重合可能なオレフィンとしては、ポリマー鎖の絡み合いを増大させないという観点から、プロピレンが好ましい。超高分子量ポリエチレンがエチレンとオレフィンとの共重合体である場合に、共重合体に占めるエチレンのモル比は、典型的には、50%以上100%以下が好ましく、80%以上100%以下がより好ましく、95%以上100%以下がさらに好ましい。
本実施形態に係る超高分子量ポリエチレンは、135℃における、デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が、10dL/g以上25dL/g以下である。[η]は、11dL/g以上23dL/g以下であることが好ましく、12dL/g以上21dL/g以下であることがより好ましい。[η]が10dL/g以上の超高分子量ポリエチレンであれば、引張強度や弾性率等の成形体の力学特性が維持される。また、[η]が25dL/g以下の超高分子量ポリエチレンであれば、ポリマー鎖の絡み合いが適正な範囲に抑えられるため、良好な成形加工性が実現可能であり、固相延伸法等の成形法において加工適応性により優れたものとなる。
Mv=(5.34×104)×[η]1.49 ・・・・・ 数式A
本実施形態の粒状超高分子量ポリエチレンに含まれるチタンの含有量は、2ppm以上20ppm以下である。チタンの含有量は、3ppm以上18ppm以下であることが好ましく、4ppm以上16ppm以下であることがより好ましい。このチタンは、重合工程において使用された触媒成分に由来するものである。チタンの含有量が2ppm以上であれば、超高分子量ポリエチレン粒子中の球晶の成長が阻害されるため、球晶構造に起因する超高分子量ポリエチレンの強度の過剰な増大が抑制される。そのため圧縮、圧延及び延伸時の成形加工性を悪化させる事態を防止することができ、固相延伸法等の成形法において加工適応性に優れたものとなる。一方、チタン含有量が20ppm以下であれば、チタンを含む化合物がポリエチレンの劣化を進行させて、粒状超高分子量ポリエチレンを用いて得られる成形体の強度が経時的に顕著に低下するのを抑制することができる。粒状超高分子量ポリエチレンに含まれるチタン含有量は、単位触媒あたりの超高分子量ポリエチレンの生産性により制御が可能であり、生産性を下げることにより含有量を増大させることが可能である。なお、チタン含有量の測定は実施例に記載の方法により行なうことができる。
粒状超高分子量ポリエチレン中、粒子径が425μmを超える超高分子量ポリエチレン粒子の含有率は、2.0質量%以下であり、1.0質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましい。粒子径が425μmを超える超高分子量ポリエチレン粒子の含有率の下限値は、特に限定されないが、少なければ少ないほど好ましく、0質量%とすることもできる。粒子径が425μmを超える超高分子量ポリエチレン粒子の含有率が2.0質量%以下であれば、圧延加工時等により良好な加工適応性を示す。なお、粒子径が425μmを超える超高分子量ポリエチレン粒子の含有率は、超高分子量ポリエチレン粒子の目開き425μmの篩を通過しない粒子の含有率として求めることができ、目開き425μmよりも目開きが大きい篩に残った粒子の質量の和のことである。なお、粒子径が425μmを超える超高分子量ポリエチレン粒子の含有率の測定は実施例に記載の方法により行なうことができる。
本実施形態の粒状超高分子量ポリエチレンは、必要に応じて公知の各種添加剤と組み合わせて用いてもよい。熱安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、ジステアリルチオジプロピオネート等の耐熱安定剤;ビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、2−(2−ヒドロキシ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の耐候安定剤等が挙げられる。
本実施形態に係る超高分子量ポリエチレン粒子は、固体触媒成分[A]及び有機金属化合物成分[B]を含む重合触媒を用い、エチレンを含む単量体を重合させることにより製造することが可能である。ここで、固体触媒成分[A]は、下記式(1)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物と、下記式(2)で表される塩素化剤との反応により調製された担体(A−1)に、下記式(3)で表されるチタン化合物(A−2)を担持することにより調製されるものである。また、有機金属化合物成分[B]はトリエチルアルミニウムである。
(M1)α(Mg)β(R2)a(R3)b(OR4)c ・・・・・ (1)
(式中、M1は周期律表第12族及び第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、b及びcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(ただし、kはM1の原子価))
HdSiCleR5 (4-(d+e)) ・・・・・ (2)
(式中、R5は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、dとeは次の関係を満たす実数である。0<d、0<e、0<d+e≦4)
Ti(OR6)fX(4-f) ・・・・・ (3)
(式中、fは0以上4以下の実数であり、R6は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
群(2)R2とR3とが炭素数の互いに相異なるアルキル基であることが好ましく、好ましくはR2が炭素数2又は3のアルキル基であり、R3が炭素数4以上のアルキル基であることがより好ましい。
群(3)R2、R3の少なくとも一方が炭素数6以上の炭化水素基であることが好ましく、好ましくはR2、R3に含まれる炭素数を加算すると12以上になるアルキル基であることがより好ましい。
(i)無機酸化物;
(ii)無機炭酸塩、珪酸塩、硫酸塩;
(iii)無機水酸化物;
(iv)無機ハロゲン化物;
(v)(i)〜(iv)からなる複塩、固溶体ないし混合物
(M2)γ(Mg)ε(R7)h(R8)iYj ・・・・・ (4)
(式中、M2は周期律表第12族及び第13族からなる群に属する金属原子であり、R7及びR8はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Yはアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド、−N=C(R9)(R10)、−SR11(ただし、R9、R10及びR11は炭素数2以上20以下の炭化水素基を表し、jが2以上の場合はそれぞれ異なっていても同じでもよい。)、及びβ−ケト酸残基から選ばれ、γ、ε、h、i及びjは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<ε、0≦h、0≦i、0<h+i、0≦j/(γ+ε)≦2、nγ+2ε=h+i+j(ただし、nはM2の原子価))
群(2)R7とR8とが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であることが好ましく、好ましくはR7が炭素原子数2又は3のアルキル基であり、R8が炭素原子数4以上のアルキル基であることがより好ましい。
群(3)R7、R8の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であることが好ましく、好ましくはR7、R8に含まれる炭素原子数を加算すると12以上になるアルキル基であることがより好ましい。
M3R12 sQ(t-s) ・・・・・ (5)
(式中、M3は周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族からなる群に属するに属する金属原子、R12は炭素数1〜20の炭化水素基であり、QはOR13、OSiR14R15R16、NR17R18、SR19及びハロゲンからなる群に属する基を表し、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は水素原子又は炭化水素基であり、sは0より大きな実数であり、tはM3の原子価である。)
本実施形態に係る超高分子量ポリエチレン粒子の製造方法においては、特に限定されないが、重合系内に窒素を添加することが好ましい。エチレンの分圧が下がることにより重合圧力が低下しすぎて安定運転や重合反応器からのに支障が出る場合があるが、窒素を添加することにより重合圧力を保持し、安定運転を実現することが可能となる。また、重合により生成したポリマー鎖の結晶化速度は、系の圧力すなわち重合圧力により変化し、圧力が低い方が結晶化速度が速くなるため、生成する超高分子量ポリエチレン粒子に含まれるポリマー鎖の絡み合いを低減できる。窒素の分圧が0.01MPa以上0.7MPa以下になるよう、重合系内に窒素を添加することが好ましく、0.05MPa以上0.5MPa以下になることがより好ましく、0.07MPa以上0.3MPa以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の成形体は、上記粒状超高分子量ポリエチレンを含み、引張強度が1GPa以上であり、弾性率が30GPa以上である。
本実施形態の成形体は、引張強度が1GPa以上であり、1.2GPa以上であることが好ましく、1.3GPa以上であることがより好ましい。
本実施形態の成形体は、弾性率が30GPa以上であり、35GPa以上であることが好ましく、40GPa以上であることがより好ましい。
本実施形態の粒状超高分子量ポリエチレンを含む成形体は、特に限定されず、公知の成形方法により得られる。この成形体は、延伸時にポリマー鎖の結晶化が促進されることにより、強度が極めて優れる。特に、固相延伸法により製造される成形体において、この傾向は顕著である。
20mLのデカリン(ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を1g/L含む)に超高分子量ポリエチレン粒子20mgを入れ、150℃で、2時間攪拌して超高分子量ポリエチレン粒子を溶解させた。その溶液を135℃の恒温糟で、キャノン−フェンスケ粘度計(SO)を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。なお、ブランクとして超高分子量ポリエチレン粒子を溶解していない、デカリンのみの落下時間(tb)を測定した。以下の式に従い超高分子量ポリエチレンの比粘度(ηsp/C)をプロットし、濃度0に外挿した極限粘度[η]を求めた。
(ηsp/C) = (ts/tb−1)/0.1
この[η]から以下の式に従い、粘度平均分子量(Mv)を求めた。
Mv = (5.34×104)×[η]1.49
図1に上下に対向させた一対のエンドレスベルト1を有する圧縮成形機10を示す。下側のエンドレスベルト1上に、ホッパー2内から超高分子量ポリエチレン粒子3を供給し、ドクターブレード4によって移動するエンドレスベルト1上に超高分子量ポリエチレン粒子3を均一な厚みで敷き均した。該超高分子量ポリエチレン粒子3を、ローラー5を介して上下のエンドレスベルト1で挾みつつ移動させるとともに、上下のエンドレスベルト1の内側に設けられた加圧・加熱プレート6、及び該加圧・加熱プレート6とエンドレスベルト1との間に回転自在な互いに連結されたローラー群からなる加圧手段(小ローラベルト7)により、超高分子量ポリエチレン粒子3を130℃に加熱しながら、材料への平均圧力はおよそ7MPaで加圧(F矢印:加圧方向)し、厚さ1.5mm、巾100mmのシート(圧縮成形体8)を毎分1mの速度で、連続的に圧縮成形した。
圧縮成形性は、ドクターブレード通過後のポリエチレン粒子が均一に敷き均されているか否かを確認し、圧縮成形後のシート表面に傷、割れ、ひびの有無を目視によって確認することで評価した。評価基準を以下に示す。
良好:ドクターブレード通過後のポリエチレン粒子が均一に敷き均されており、圧縮成形後のシート表面に傷、割れ、ひびがない。
※1:粒子の敷き均し性が悪く、ドクターブレード通過後の粒子に筋状の凹凸が出来たため、圧縮成形できなかった。
〔装置仕様(大野ロール株式会社製、ロール圧延装置)〕
ロール形状:ロール径305mmφ、面長500mm
ロール数:1対
ロール間隔:0.18mm
得られた圧縮成形体を、雰囲気温度140℃の槽内で3分間加熱した後、温度130℃、回転周速度1.00m/分のロール間に水平方向から供給して圧延を行い、圧延倍率5.5倍の圧延成形体を得た。圧延倍率(a)の算出は、圧縮成形体中央部に直線状に10mm間隔で油性マジックを用いて印をつけ、この印がロールの回転軸に垂直になるように圧縮成形体をロールに導入し、圧延後の印の間隔を測定し、圧延後の印の間隔を10mmで除すことにより算出した。測定は5回行い、最も圧延倍率が大きい値を圧延倍率とした。
圧延成形性は、圧延成形体の形状を観察し、圧延成形体の周囲の形状により評価した。評価基準を以下に示す。
良好:圧延成形体の表面が平滑で、ひび割れが無い。
※2:圧延成形体の表面が凸凹し、ひび割れが有る。ロール圧延シートにひび割れが生じたため、以後の延伸加工が不可能であった。
−:前工程の圧縮成形ができないため評価できなかった。
得られた圧延成形体を長辺70mm、短辺20mmの長方形に切り出し、圧延方向と同方向に延伸ができるように引張試験機(インストロン社製、万能材料試験機5564型)を用いて延伸加工を2回に分けて行った。1回目はチャック間距離を20mmとして引張試験機にセットし、雰囲気温度130℃において5分間予熱した後、引張速度50mm/分でチャック間距離が80mmとなるまで延伸加工を行った。延伸加工成形体は速やかに引張試験機より取り外し、室温にて放冷した。2回目はチャック間距離を40mmとして引張試験機にセットし、雰囲気温度135℃において5分間予熱した後、引張速度50mm/分でチャック間距離が120mmとなるまで延伸加工を行った。延伸加工成形体は速やかに引張試験機より取り外し、室温にて放冷した。延伸倍率(b)は、切り出した圧延成形品の中央部分に、延伸方向に直線状に2mm間隔で油性マジックペンを用いて印をつけ、2回の延伸後の印の間隔を2mmで除すことにより算出し、延伸倍率(b)とした。
延伸成形体を恒温恒湿実験室(温度23℃、湿度50%)内で一昼夜放置した後、インストロン社製万能材料試験機5564型を用いて引張試験を行い、成形体が破断した際の応力を測定した。成形体の万能材料試験機への固定は、その両端各々5cmをチャックに挟み込んで行い、成形体に弛みが生じないようにチャック間を調節した後、速度100mm/分で引張した。測定された試料破断時の荷重(N)は、延伸成形体の断面積で除し、引張破断強度(破断時応力(GPa))に換算した。引張弾性率(GPa)は試験機に付属するソフトウェアにより、自動的に算出した。
粒状超高分子量ポリエチレンに含まれるチタンの含有量は、粒状超高分子量ポリエチレンをテフロン(登録商標)製分解容器中で高純度硝酸を加えマイクロウェーブ分解装置にて分解し、公知の誘導結合プラズマ法(ICP法)により測定した値である。
得られた延伸成形体の外観を目視にて確認した。
粒状超高分子量ポリエチレン中の、目開き425μmの篩を通過しない超高分子量ポリエチレン粒子の含有率は、JIS Z8801で規定された9種類の篩(目開き:710μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)を用いて、100gの超高分子量ポリエチレン粒子を分級した際に得られる目開き425μmよりも目開きが大きい篩に残った粒子の質量の和として算出した。
粒状超高分子量ポリエチレン中の、目開き106μmの篩を通過する超高分子量ポリエチレン粒子の含有率は、JIS Z8801で規定された9種類の篩(目開き:710μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)を用いて、100gの超高分子量ポリエチレン粒子を分級した際に得られる目開き106μmよりも目開きが小さい篩及び受け皿に残った粒子の質量の和として算出した。
粒状超高分子量ポリエチレン中の、目開き75μmの篩を通過する超高分子量ポリエチレン粒子の含有率は、JIS Z8801で規定された9種類の篩(目開き:710μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)を用いて、100gの超高分子量ポリエチレン粒子を分級した際に得られる目開き75μmよりも目開きが小さい篩及び受け皿に残った粒子の質量の和として算出した。
粒状超高分子量ポリエチレン中の、目開き53μmの篩を通過する超高分子量ポリエチレン粒子の含有率は、JIS Z8801で規定された9種類の篩(目開き:710μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)を用いて、100gの超高分子量ポリエチレン粒子を分級した際に得られる受け皿に残った粒子の質量として算出した。
固体触媒成分[A−1]の製造
(1)担体(A−1)の合成
充分に窒素置換された内容量8Lのステンレス製オートクレーブに2mol/Lのヒドロキシトリクロロシランのヘキサン溶液1460mLを仕込み、50℃で攪拌しながら組成式AlMg5(C4H9)11(OC4H9)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液3730mL(マグネシウム2.68mol相当)を4時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、2600mLのヘキサンで4回洗浄した。この固体(担体(A−1))を分析した結果、担体(A−1)1g当たりに含まれるマグネシウムが8.43mmolであった。
上記担体(A−1)160gを含有するヘキサンスラリー2880mLに、50℃で攪拌しながら1mol/Lの1−ブタノールのヘキサン溶液270mLを20分かけて添加した。添加後、50℃で1時間反応を継続した。反応終了後、上澄み液を1600mL除去し、温度を65℃にして1mol/Lのジエチルアルミニウムクロリドのヘキサン溶液1340mLを1時間30分かけて添加した。添加後、65℃で1時間反応を継続した。反応終了後、上澄み液1600mLを除去し、ヘキサン1600mLで4回洗浄した。次いで50℃で攪拌しながら1mol/Lのジエチルアルミニウムクロリドのヘキサン溶液168mLを20分かけて添加し、引き続き1mol/Lの四塩化チタンのヘキサン溶液168mLを20分かけて添加した。添加後、50℃で2時間反応を継続した。反応終了後、上澄み液1600mLを除去し、ヘキサン1600mLで4回洗浄することにより、固体触媒成分[A−1]を調製した。この固体触媒成分[A−1]1g中に含まれるチタン量は0.54mmolであった。
固体触媒成分[A−2]の製造
(1)担体(A−2)の合成
充分に窒素置換された内容量8Lのステンレス製オートクレーブに2mol/Lのヒドロキシトリクロロシランのヘキサン溶液1460mLを仕込み、65℃で攪拌しながら組成式AlMg5(C4H9)11(OC4H9)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液3730mL(マグネシウム2.68mol相当)を4時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、2600mLのヘキサンで4回洗浄した。この固体(担体(A−2))を分析した結果、担体(A−2)1g当たりに含まれるマグネシウムは8.43mmolであった。
上記担体160gを含有するヘキサンスラリー2880mLに、5℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンのヘキサン溶液160mLと1mol/Lの組成式AlMg5(C4H9)11(OC4H9)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液160mLとを同時に1時間かけて添加した。添加後、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1600mL除去し、ヘキサン1600mLで2回洗浄することにより、固体触媒成分[A−2]を調製した。この固体触媒成分[A−2]1g中に含まれるチタン量は0.75mmolであった。
[1段目の重合]
最初に1段目の重合で低分子量成分を製造するために、反応容積350Lのステンレス製重合器1を用い、重合温度74℃、重合圧力0.3MPaの条件で、触媒としては上記参考例1の固体触媒成分[A−1]を3g/h、及びトリエチルアルミニウムをAl原子換算で20mmol/hの速度で導入し、またヘキサンは40L/hの速度で導入した。エチレン分圧を保つ為に、エチレンと窒素との和に対する窒素の気相モル濃度(窒素/(エチレン+窒素))が42mol%となるようにエチレンと窒素とを供給し重合を行った。重合器1で生成した超高分子量ポリエチレンを抜き出しデカリン(135℃)中における[η]を測定すると11.3dL/g、この[η]から求めたMvは1,980,000であった。
重合器1内のポリマースラリー溶液を圧力0.04MPa、温度70℃の内容積350Lのフラッシュドラムに導き、未反応のエチレン、水素、及び窒素を分離した後、反応容積350Lのステンレス製重合器2にスラリーポンプで導入した。スラリーポンプにはヘキサンを95L/hの速度で導入した。重合器2では、温度55℃、圧力0.2MPaの条件下に、トリエチルアルミニウムをAl原子換算で47mmol/hを供給し、これにエチレンを導入して、重合器1で生成した低分子量成分の質量と重合器2で生成した高分子量成分の質量との和に対する重合器2で生成した高分子量成分の質量の比(重合器2で生成した高分子量成分の質量/(重合器1で生成した低分子量成分の質量+重合器2で生成した高分子量成分の質量))が0.40となるように高分子量成分を重合した。得られた重合スラリーは、重合反応器のレベル(内容量)が一定に保たれるように連続的に抜き取られ、抜き取られたスラリーは、溶媒分離工程を経て、乾燥工程へ送られ、実施例1の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。塊状のポリマーの存在も無く、スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、安定して連続運転ができた。
2段目の重合温度を45℃とし、重合圧力を0.3MPaとした以外は、実施例1と同様な重合を行なって、実施例2の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。塊状のポリマーの存在も無く、スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、安定して連続運転ができた。
[重合]
ヘキサン、エチレン、窒素、水素、触媒を、連続的に攪拌装置が付いたベッセル型300L重合反応器に供給した。重合温度はジャケットにて55℃に保った。溶媒としてヘキサンを65L/hで供給した。触媒としてはトリエチルアルミニウムと固体触媒成分[A−1]を用いて、ポリマー製造速度が9kg/hとなるようにポンプで連続的に供給した。エチレン分圧が0.2MPaになるように、エチレンを連続的に供給した。分子量調整剤として水素を用い、エチレンと水素との和に対する水素の気相モル濃度(水素/(エチレン+水素))が1900ppmになるように連続的に供給し重合を行った。またエチレン分圧を保つ為に窒素を導入し、エチレンと窒素との和に対する窒素の気相モル濃度(窒素/(エチレン+窒素))が13mol%となるように供給し重合を行った。重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように連続的に抜き取られ、抜き取られたスラリーは、溶媒分離工程を経て、乾燥工程へ送られ、実施例3の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。塊状のポリマーの存在も無く、スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、安定して連続運転ができた。
重合温度を65℃とし、分子量調整剤を用いず、またエチレン分圧を保つ為に導入する窒素を40mol%とした以外は、実施例3と同様に重合を行なって、実施例4の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。塊状のポリマーの存在も無く、スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、安定して連続運転ができた。
重合温度を55℃とし、またエチレン分圧を保つ為に導入する窒素を32mol%とした以外は、実施例4と同様に重合を行なって、実施例5の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。塊状のポリマーの存在も無く、スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、安定して連続運転ができた。
固体触媒成分[A−2]を用い、ポリマー製造速度が9kg/hとなるようにポンプで連続的に反応器に供給した。エチレン分圧が0.2MPaになるように、エチレンを連続的に供給した。エチレン分圧を保つ為に窒素を導入し、エチレンと窒素との和に対する窒素の気相モル濃度(窒素/(エチレン+窒素))が36mol%となるように供給した以外は実施例4と同様に重合を行って、実施例6の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。塊状のポリマーの存在も無く、スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、安定して連続運転ができた。
1段目の重合圧力を保つ為の窒素を60mol%とし、2段目の重合温度を65℃とした以外は実施例1と同様な重合を行なって、比較例1の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。こうして得られた比較例1の粒状超高分子量ポリエチレンの物性値は表1に示した。また、圧縮成形性、圧延成形性、延伸倍率等の加工適応性についての評価の結果については、表2に示した。圧縮試験の際にポリエチレン粒子を平滑に敷き均すことが出来なかったため、圧縮加工とその後の圧延加工及び延伸加工を断念した。
1段目のエチレン分圧を保つ為に窒素を用いなかったこと、及び2段目の重合温度を65℃とした以外は、実施例1と同様な重合を行なって、比較例2の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。こうして得られた比較例2の粒状超高分子量ポリエチレンの物性値は表1に示した。また、圧縮成形性、圧延成形性、延伸倍率等の加工適応性についての評価の結果については、表2に示した。ロール圧延加工を行った際に、圧延シートに多数の割れ目が生じたため、以後の延伸加工を断念した。
重合温度を74℃にした以外は、実施例3と同様な重合を行って、比較例3の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。こうして得られた比較例3の粒状超高分子量ポリエチレンの物性値は表1に示した。また、圧縮成形性、圧延成形性、延伸倍率等の加工適応性についての評価の結果については、表2に示した。
重合温度を40℃とした他は、実施例5と同様な重合を行って、比較例4の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。こうして得られた比較例4の粒状超高分子量ポリエチレンの物性値は表1に示した。また、圧縮成形性、圧延成形性、延伸倍率等の加工適応性についての評価の結果については、表2に示した。ロール圧延加工を行った際に、圧延シートに多数の割れ目が生じたため、以後の延伸加工を断念した。
重合温度を65℃とし、エチレン分圧を保つ為に窒素及び分子量調節剤の水素を用いなかった以外は、実施例3と同様な重合を行って、比較例5の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。こうして得られた比較例5の粒状超高分子量ポリエチレンの物性値は表1に示した。また、圧縮成形性、圧延成形性、延伸倍率等の加工適応性についての評価の結果については、表2に示した。ロール圧延加工を行った際に、圧延シートに多数の割れ目が生じたため、以後の延伸加工を断念した。
エチレン分圧を保つ為に窒素を導入しエチレンと窒素との和に対する窒素の気相モル濃度(窒素/(エチレン+窒素))が80mol%となるように供給し、重合温度を65℃とした以外は実施例3と同様な重合を行って、比較例6の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。こうして得られた比較例6の粒状超高分子量ポリエチレンの物性値は表1に示した。また、圧縮成形性、圧延成形性、延伸倍率等の加工適応性についての評価の結果については、表2に示した。但し、延伸加工後に得られたシートの外観は、淡黄色であった。
エチレン分圧を保つ為に窒素を導入しエチレンと窒素との和に対する窒素の気相mol濃度(窒素/(エチレン+窒素))が40mol%となるように供給し、重合温度を70℃とした以外は実施例6と同様に重合を行って、比較例7の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。こうして得られた比較例7の粒状超高分子量ポリエチレンの物性値は表1に示した。また、圧縮成形性、圧延成形性、延伸倍率等の加工適応性についての評価の結果については、表2に示した。圧縮試験の際にポリエチレン粒子を平滑に敷き均すことが出来なかったため、圧縮加工とその後の圧延加工及び延伸加工を断念した。
重合温度を70℃とし、エチレン分圧を保つ為に窒素及び分子量調節剤の水素を用いなかった以外は、実施例3と同様な重合を行って、比較例8の粒状超高分子量ポリエチレンを得た。こうして得られた比較例8の粒状超高分子量ポリエチレンの物性値は表1に示した。また、圧縮成形性、圧延成形性、延伸倍率等の加工適応性についての評価の結果については、表2に示した。ロール圧延加工を行った際に、圧延シートに多数の割れ目が生じたため、以後の延伸加工を断念した。
2 ホッパー
3 超高分子量ポリエチレン粒子
4 ドクターブレード
5 ローラー
6 加圧・加熱プレート
7 小ローラベルト
8 圧縮成形体
10 圧縮成形機
F 加圧方向
Claims (5)
- 温度135℃における、デカリン溶液で測定した極限粘度[η]が10dL/g以上25dL/g以下であり、
チタンの含有量が2ppm以上20ppm以下であり、
粒子径が425μmを超える超高分子量ポリエチレン粒子の含有率が2質量%以下であり、
粒子径が106μm以下の超高分子量ポリエチレン粒子の含有率が60質量%以下であり、
粒子径が75μm以下の超高分子量ポリエチレン粒子の含有率が30質量%以下であり、
粒子径が53μm以下の超高分子量ポリエチレン粒子の含有率が10質量%以下である、
固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレン。 - 前記チタンの含有量が、8ppm以上10ppm以下である、
請求項1に記載の固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレン。 - 重合を反応条件の異なる二段階以上に分けて行うことにより、請求項1又は2に記載の固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレンを得る工程を有する、固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレンの製造方法。
- 請求項1又は2に記載の固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレンを含み、
引張強度が1GPa以上であり、
弾性率が30GPa以上である、
成形体。 - 請求項1又は2に記載の固相延伸方法用粒状超高分子量ポリエチレンを、固相延伸することにより、請求項4に記載の成形体を得る工程を有する、成形体の製造方法。
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