JP2015120784A - ポリエチレンパウダー - Google Patents

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Abstract

【課題】高速生産時でも溶解性に優れる高分子量ポリエチレンパウダーを提供すること。【解決手段】BET法により求められる比表面積が0.10m2/g以上0.30m2/g以下であり、水銀圧入法により求められる細孔容積が0.85mL/g以下であり、かつ粘度平均分子量(Mv)が10万以上100万以下である、ポリエチレンパウダー。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエチレンパウダーに関する。
高分子量ポリエチレンパウダーは、フィルム、シート、微多孔膜、繊維、発泡体及びパイプ等多種多様な用途に用いられている。特に鉛蓄電池やリチウムイオン電池に代表される二次電池セパレータ用微多孔膜及び高強度繊維の原料として、高分子量ポリエチレンパウダーが用いられている。
高分子量ポリエチレンパウダーが、これらの用途に用いられている理由としては、延伸加工性に優れる、強度が高い、化学的安定性が高い、及び長期信頼性に優れること等が挙げられる。高分子量ポリエチレンパウダーは、一般に粘度が高く、射出成形等による加工が困難であるために、高分子量ポリエチレンパウダーを溶剤に溶解して成形することが多い。二次電池セパレータ用微多孔膜は、高分子量ポリエチレンパウダーを、例えば押出機中において、溶剤に溶解した状態で、高温下で混練し、次いで、延伸した後に溶剤等を除去して製造される。
このように高分子量ポリエチレンパウダーを溶剤に溶解して得られる二次電池セパレータ用微多孔膜は成形運転安定性や生産性、膜の品質を向上させることが求められ、そのため高分子量ポリエチレンパウダーには溶融混練工程において未溶融の高分子量ポリエチレンパウダーが粒として残存しないような優れた溶解性が望まれている。
ポリエチレンパウダーの溶媒への溶解性を高める技術として、例えば、特許文献1では、平均粒子径が1〜150μm、パウダー比表面積が0.7m2/g以上のポリエチレンを原料の一つとして用いることが開示されている。
また、特許文献2では、嵩密度を0.30g/cm3以上0.45g/cm3以下とするエチレン系重合体組成物パウダーを原料とした微多孔膜が開示されている。
さらに、特許文献3では、分子量が1×104以下の低分子の含有量が少ない高密度ポリエチレンを原料として用いたポリエチレン微細多孔膜が開示されている。
特許第4799179号公報 特開2007−119751号公報 特開2011−208144号公報
しかしながら、近年、特に、二次電池セパレータ用微多孔膜の需要の成長は著しく、生産性をより向上すること及び低コストで生産することがより強く望まれている。具体的には、生産性向上の観点からは、押出機等を停止することなく、連続的に安定的かつ高速生産ができること、すなわち均一な微多孔膜の成形が望まれている。また、生産効率の向上の観点からは、ポリエチレンパウダーの混練工程でのさらなる優れた溶解性向上が望まれているが、上述の公知技術はさらなる改善が望まれた。
そこで、本発明は、高速生産時でも溶解性に優れるポリエチレンパウダーを提供することを目的とする。
本発明者は、上述の課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、所定の比表面積、細孔容積を有する高分子量のポリエチレンパウダーが上記の課題を解決することできることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
BET法により求められる比表面積が0.10m2/g以上0.30m2/g以下であり、水銀圧入法により求められる細孔容積が0.85mL/g以下であり、かつ粘度平均分子量(Mv)が10万以上100万以下である、ポリエチレンパウダー、
〔2〕
水銀圧入法により求められる細孔分布において、細孔径30μm以下に極大値が存在しない、〔1〕に記載のポリエチレンパウダー、
〔3〕
平均粒子径が1〜200μmであり、測定全粒子数の60%以上は式(1)で定義される凹凸度(UD)が0.90以上0.95以下の形態を有する、〔1〕又は〔2〕に記載のポリエチレンパウダー、
UD=A/(A+B) (1)
(式(1)中、Aは対象粒子の投影面積、A+Bは対象粒子の凸部を結んだ包絡線で囲まれた投影面積を表す。)
〔4〕
1ppm以上200ppm以下のチタンを含む、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリエチレンパウダー、
〔5〕
二次電池セパレータ用である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のポリエチレンパウダー、
〔6〕
リチウムイオン二次電池セパレータ用である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のポリエチレンパウダー。
本発明によれば、高速生産時でも溶解性に優れるポリエチレンパウダーを得ることができる。
ポリエチレンパウダーの凹凸度測定を説明する図面である
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
[ポリエチレンパウダー]
本実施形態のポリエチレンパウダーは、BET法により求められる比表面積が0.1m2/g以上0.3m2/g以下であり、水銀圧入法により求められる細孔容積が0.85mL/g以下であり、かつ粘度平均分子量(Mv)が10万以上100万以下である、ポリエチレンパウダーである。
本実施形態のポリエチレンパウダーとしては、エチレン単独重合体、又は、エチレンと他のコモノマーとの共重合体が挙げられる。
他のコモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、α−オレフィン、ビニル化合物等が挙げられる。
α−オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等が挙げられる。これらの中でも、膜や繊維に代表される成形体の耐熱、強度の観点から、プロピレン及び1−ブテンが好ましい。
ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビニルシクロヘキサン、スチレン及びその誘導体等が挙げられる。
また、他のコモノマーとして、必要に応じて、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ポリエンを使用してもよい。共重合体は3元ランダム重合体であってもよい。
他のコモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエチレンパウダーは、耐熱特性の観点から、エチレン単独重合体であることが好ましい。ポリエチレンパウダーが、エチレンと他のコモノマーとの共重合体を含む場合は、共重合体は耐熱特性が低下しない範囲で他のコモノマーと共重合させることが好ましい。具体的には、ポリエチレンパウダーとして、共重合体中に占めるエチレンのモル比が、好ましくは50%以上100%未満であり、より好ましくは80%以上100%未満であり、さらに好ましくは90%以上100%未満である。
ポリエチレンパウダーが共重合体である場合の共重合体中の他のコモノマー量は、赤外分析法、NMR法等で確認することができる。
本実施形態のポリエチレンパウダーは、中和剤、酸化防止剤及び耐光安定剤等の添加剤を含有していてもよい。
中和剤はポリエチレンパウダー中に含まれる塩素等のハロゲンキャッチャー又は成形加工助剤等として使用される。
中和剤としては、特に限定されないが、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のステアリン酸塩等が挙げられる。中和剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、5000ppm以下であり、好ましくは4000ppm以下であり、より好ましくは3000ppm以下である。
メタロセン触媒を用いてスラリー重合法により得られるエチレン重合体は、中和剤を使用しなくても、触媒構成成分中からハロゲン成分を除外することが可能である。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、5000ppm以下であり、好ましくは4000ppm以下であり、より好ましくは3000ppm以下である。
耐光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系耐光安定剤;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系耐光安定剤等が挙げられる。耐光安定剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、5000ppm以下であり、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下である。
ポリエチレンパウダー中に含まれる添加剤の含有量は、ポリエチレンパウダー中の添加剤をテトラヒドロフラン(THF)を用いてソックスレー抽出により6時間抽出し、抽出液を液体クロマトグラフィーにより分離、定量することにより求めることができる。
本実施形態のポリエチレンパウダーには、粘度平均分子量や分子量分布等が異なるエチレン重合体をブレンドすることもできるし、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の他の樹脂をブレンドすることもできる。
〔BET法により求められる比表面積〕
本実施形態のポリエチレンパウダーのBET法により求められる比表面積は、0.10m2/g以上0.30m2/g以下であり、好ましくは0.15m2/g以上0.30m2/g以下であり、より好ましく0.20m2/g以上0.30m2/g以下である。
BET法により求められる比表面積が0.10m2/g以上0.30m2/g以下であることにより、溶媒への溶解性に優れるポリエチレンパウダーが得られる。
一般に、比表面積は、ポリエチレンパウダーの表面及び内部構造と関連しており、比表面積の小さなポリエチレンパウダーは、その表面が平滑であり、また表面から内部へ貫通する細孔、及び内部に外部から孤立して存在する空隙も少なくなる。溶媒とポリエチレンパウダーを溶融混練する場合、溶媒に接触するポリエチレンパウダーの面積が小さくなり溶媒への溶解性が悪化する。一方、比表面積が大きいポリエチレンパウダーは、その表面以上に内部に存在する外部から孤立して存在する空隙が多くなる。そのため溶媒と溶融混練する場合、溶媒がポリエチレンパウダー内部へ含浸し難くなり、さらに空隙部は熱伝導を妨げるため溶解性が悪化する。
そこで、本実施形態においては、BET法により求められる比表面積を上記範囲内とすることによって、溶解性に優れるポリエチレンパウダーが得られる。
BET法により求められる比表面積は、BET法に準ずる測定装置を用いて測定することができ、測定装置としては、特に限定されないが、例えば、ユアサアイオニクス社製オートソーブ3MP等が挙げられる。ユアサアイオニクス社製オートソーブ3MP等を用い、測定試料を前処理として脱気処理を行い、吸着ガスに窒素を用いて測定温度−196℃の条件で測定を行うことにより、BET法による比表面積を測定することができる。
本実施形態において、BET法により求められる比表面積を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、触媒の合成条件を制御すること、触媒の重合機への添加方法を制御すること、及び重合後のポリエチレンスラリーの後処理方法を制御すること等が挙げられる。
触媒の合成条件は、具体的には、触媒合成反応器中の原料の濃度と添加速度によって制御することができる。原料濃度を希釈し、原料添加速度を遅くすることで触媒の活性点を均一に配置する固体触媒を合成できる。この固体触媒を用いてポリエチレンパウダーを製造することにより、粒子表面に凹凸を有しながら内部空隙を抑制した適切な比表面積を有するポリエチレンパウダーとすることができる。
固体触媒を用いたポリマー鎖の成長は、固体触媒表面の活性点に依存する。高濃度かつ速い添加速度で合成した固体触媒表面では活性点の分散不良が起こり、活性点が凝集した形で触媒表面上に局所的に存在する場合がある。そのため、このような固体触媒表面上ではポリマー鎖も局所的に成長する。この場合、ポリマー鎖の成長は活性点の凝集度に応じて不均一となり表面凹凸も不安定な歪な形態となる。また、活性点が分散していない場合、凝集した触媒かたまりが、隣接するポリマー鎖と接触するまでに大きく成長するためその分内部の孤立した空洞部も大きくなってしまう。
触媒の活性点を均一に配置する固体触媒を用いることにより、適切な比表面積を有するポリエチレンパウダーとすることができる。
〔水銀圧入法により求められる細孔容積〕
本実施形態のポリエチレンパウダーの水銀圧入法により求められる細孔容積は、0.85mL/g以下であり、好ましくは0.80mL/g以下である。
水銀圧入法により求められる細孔容積が0.85mL/g以下であることにより、溶媒へのポリエチレンポリマーの溶解性が向上する。
細孔容積は、ポリエチレンパウダーの内部構造や、ポリエチレンパウダーの凝集状態と関連しており、表面から内部へ貫通する細孔の容積や、ポリエチレンパウダーの粒子が密着凝集した場合に存在する凝集粒子内部空間容積を意味している。
一般に、細孔容積が大きくなると、表面から通じる内部細孔が多く、溶媒混練時の溶媒含浸が十分に粒子内部まで到達しないため、気体を内部に抱き込んだ粒子が形成するためポリエチレンパウダーの溶解性が悪化する。
そこで、本実施形態においては、水銀圧入法により求められる細孔容積を上記範囲内とすることによって、溶媒へのポリエチレンポリマーの溶解性が向上する。
水銀圧入法により求められる細孔容積は水銀ポロシメーターを用いて測定することができ、測定装置として、特に限定されないが、例えば、島津製作所製オートポアIV9500型等が挙げられる。島津製作所製オートポアIV9500型等を用い、測定試料を前処理として脱気処理を行い、水銀を試料容器内に充填した後に、徐々に加圧して(高圧部)水銀を試料の細孔へ圧入して、水銀圧入法による細孔容積を測定することができる。
本実施形態において、水銀圧入法により求められる細孔容積を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、触媒の合成条件を制御すること等が挙げられる。
触媒の合成条件は、具体的には、触媒合成反応器中の原料の濃度と添加速度によって制御することができる。原料濃度を希釈し、原料添加速度を遅くすることで触媒の活性点を分散させ、さらに固体触媒中の活性点の凝集を抑えられる。このように固体触媒中の活性点が分散すると、ポリマー鎖の成長が局所的に起こることがなく、固体触媒表面上を満遍なくポリマー鎖が被覆するため細孔容積が少ないポリエチレンパウダーを得られる。
触媒の活性点を分散させた固体触媒を用いることにより、適切な細孔容積を有するポリエチレンパウダーとすることができる。
本実施形態のポリエチレンパウダーは、BET法により求められる比表面積が0.10m2/g以上0.30m2/g以下であり、かつ水銀圧入法により求められる細孔容積が0.85mL/g以下であることにより、ポリエチレンパウダーの粒子表面に凹凸が存在し、かつ、粒子内部に外部から隔絶された空洞部位が少ない構造を有するため、溶媒と混練する場合優れた溶解性を有し、高速生産においても未溶解のポリエチレンパウダーが残存しない。本実施形態のポリエチレンパウダーを用いることにより、高速生産時でも連続的に均一な二次電池セパレータ用微多孔膜を安定して製造することができる。
〔粘度平均分子量(Mv)〕
本実施形態のポリエチレンパウダーは、粘度平均分子量(Mv)が10万以上100万以下であり、好ましくは15万以上80万以下であり、より好ましくは20万以上70万以下である。
粘度平均分子量(Mv)が10万以上100万以下であることにより、生産性により優れ、成形した場合には、延伸性及び膜強度により優れるポリエチレンパウダーとなる。このような特性を有するポリエチレンパウダーは、二次電池セパレータに好適に用いることができ、リチウムイオン二次電池用セパレータにより好適に用いることができる。
粘度平均分子量(Mv)は、デカヒドロナフタレン溶液中にポリエチレンポリマーを異なる濃度で溶解し、135℃で求めた還元粘度を濃度0に外挿して求めた極限粘度[η](dL/g)から、以下の数式Aにより算出することができる。
Mv=(5.34×104)×[η]1.49 (数式A)
本実施形態において、粘度平均分子量(Mv)を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、ポリエチレンポリマーを重合する際の反応器の重合温度を変化させること等が挙げられる。一般に、重合温度を高温にするほど分子量は低くなる傾向にあり、重合温度を低温にするほど分子量は高くなる傾向にある。
また、粘度平均分子量(Mv)を上記範囲内に制御する別の方法としては、例えば、エチレン等を重合する際に水素等の連鎖移動剤を添加すること等が挙げられる。連鎖移動剤を添加することで、同一重合温度でも生成するポリエチレンポリマーの分子量が低くなる傾向にある。
本実施形態においては、両者の方法を組み合わせて、ポリエチレンポリマーの粘度平均分子量(Mv)を制御することが好ましい。
〔水銀圧入法により求められる細孔分布〕
本実施形態のポリエチレンパウダーとして、水銀圧入法により求められる細孔分布において、好ましくは細孔径30μm以下に極大値が存在しない。
極大値が細孔径30μmより大きいことにより、ポリエチレンパウダーの粒子表面に存在する細孔径が大きく、溶媒等粒子内部へ含浸することが容易であり溶解性が良好なポリエチレンパウダーとすることができる。
細孔分布は水銀圧入法によって測定することができる。水銀の表面張力と細孔断面に働く圧力のつりあいから水銀圧力に対応する細孔径を測定することができる。
本実施形態において、水銀圧入法により求められる細孔分布を上記範囲に制御する方法としては、例えば、ポリエチレンパウダーの製造工程における粒子表面の変形・融解を抑制することが挙げられる。すなわち重合、触媒失活、乾燥工程においてポリエチレンパウダーの表面が負荷を受け融解、磨耗、凝集等により細孔が塞がる、狭まることを抑えることで制御が可能となる。具体的には、水銀圧入法により求められる細孔分布における細孔径の極大値を大きくするためには、重合温度を低くする又は触媒スラリー濃度を低くする、触媒失活や乾燥工程の工程槽内温度及び撹拌速度を低くすること等が挙げられる。
〔平均粒子径〕
本実施形態のポリエチレンパウダーの平均粒子径は、好ましくは1μm以上200μm以下であり、より好ましくは50μm以上180μm以下であり、さらに好ましくは120μm以上160μm以下である。
平均粒子径が1μm以上であることにより、ポリエチレンパウダーの嵩密度と流動性が充分に高くなるため、ホッパー等への投入やホッパーからの計量等のハンドリング性がより良好となる傾向にある。平均粒子径が200μm以下であることにより、二次電池セパレータや繊維の加工時等において、生産性及び/又は延伸性等の加工適用性により優れる傾向にある。
平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態において、平均粒子径を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、使用する触媒の粒子径によって制御することができ、また、単位触媒量あたりのポリエチレンパウダーの生産性により制御することも可能である。また、触媒失活、乾燥工程においてポリエチレンパウダーの表面が負荷を受け融解、磨耗により表面が滑らかになることを抑えることで制御が可能となる。具体的には触媒失活、乾燥工程の際、ポリエチレンパウダー中に残存する溶媒等の含液率を低くすること等が挙げられる。
〔凹凸度(UD)〕
本実施形態のポリエチレンパウダーの凹凸度(UD)として、好ましくはUDが0.90以上0.95以下の形態を有するポリエチレンパウダーが全粒子数の60%以上であることであり、より好ましくはUDが0.91以上0.94以下の形態を有するポリエチレンパウダーが全粒子数の60%以上であることである。
凹凸度(UD)がこのような範囲内にあることにより、ポリエチレンパウダーの溶媒への溶解性を向上させることができる。
凹凸度(UD)は0<UD≦1であり、UDが1に近いほど粒子に凹凸がない、なだらかな表面であることを意味する。
凹凸度(UD)は、例えば日本レーザー社製動的画像法粒度分布・粒子形状評価装置QICPIC等を用いて測定することができる。当該装置等を用い、測定試料を気流式乾式分散器により分散させ、分散粒子の画像を連続的に撮影取り込み、取り込んだ画像情報から画像解析ソフトを用いて測定することができる。
図1に示す通り、得られた対象粒子の投影面積をA、対象粒子の凸部を結んだ包絡線で囲まれた投影面積をA+Bとすると、凹凸度(UD)は以下の式(1)で定義される。
UD=A/(A+B) (1)
本実施形態において、凹凸度(UD)を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、触媒の合成条件を制御することが挙げられる。
触媒の合成条件は、具体的には、触媒合成反応器中の原料の濃度と添加速度によって制御することができる。原料濃度を希釈し、原料添加速度を遅くすることで触媒の活性点を均一に配置する固体触媒を合成できる。活性点が局所的に集中した不均一な触媒の生成を抑制することにより、ポリマー鎖が歪に成長することを抑えることが可能である。
〔ポリエチレンパウダーに含まれるチタン量〕
本実施形態のポリエチレンパウダーに含まれるチタン量は、好ましくは1ppm以上200ppm以下であり、より好ましくは1ppm以上12ppm以下であり、さらに好ましくは1ppm以上10ppm以下である。
ポリエチレンパウダーに含まれるチタン量は、重合工程において使用された触媒成分に由来するものである。
チタン量が1ppm以上であることにより、リチイムイオン二次電池セパレータとして使用した場合、電解塩の分解に由来し電池反応に悪影響を与えるフッ化水素を吸着しやすい。チタン量が200ppm以下であることにより、熱安定性により優れるポリエチレンパウダーとなり、その上、電池セパレータや繊維とした場合には、それらの長期安定性にもより優れるものとなる。
ポリエチレンパウダーに含まれるチタン量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリエチレンパウダーに含まれるチタン量は、単位触媒あたりのポリエチレンパウダーの生産性により制御することが可能である。ポリエチレンパウダーの生産性は、製造する際の反応器の重合温度、重合圧力、ポリエチレンスラリー濃度により制御することが可能である。ポリエチレンパウダーの生産性を高くする方法としては、例えば、重合温度を高くする、重合圧力を高くする、及び/又はポリエチレンスラリー濃度を高くすること等が挙げられる。使用する触媒としては、特に限定されず、一般的なチーグラー・ナッタ触媒を使用することができるが、後述する触媒を使用することが好ましい。
〔ポリエチレンパウダーの製造方法〕
本実施形態において、ポリエチレンパウダーは、特に限定されないが、一般的なチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造することができ、以下に記載するチーグラー・ナッタ触媒を用いることが好ましい。
チーグラー・ナッタ触媒としては、固体触媒成分[A]及び有機金属化合物成分[B]からなる触媒であって、固体触媒成分[A]が、式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(A−1)と式2で表されるチタン化合物(A−2)とを反応させることにより製造されるオレフィン重合用触媒であるものが好ましい。
(A−1):(M1)α(Mg)β(R2a(R3b1 c 式1
(式1中、M1は周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R2及びR3は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Y1はアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド、−N=CR45、−SR6及びβ−ケト酸残基であり(ここで、R4、R5及びR6は炭素数1以上20以下の炭化水素基である。cが2の場合には、Y1はそれぞれ異なっていてもよい。)、α、β、a、b及びcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦b/(α+β)≦2、nα+2β=a+b+c(ここで、nはM1の原子価を表す。))
(A−2):Ti(OR7d1 (4-d) 式2
(式2中、dは0以上4以下の実数であり、R7は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、X1はハロゲン原子である。)
(A−1)と(A−2)の反応に使用する不活性炭化水素溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;及びシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
(A−1)は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物及びこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。記号α、β、a、b、cの関係式nα+2β=a+b+cは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
式1において、R2及びR3で表される炭素数2以上20以下の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル、シクロアルキル又はアリール基等が挙げられ、具体的には、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルキル基である。
式1において、α>0の場合、金属原子M1としては、周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であれば特に限定されないが、例えば、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、アルミニウム、亜鉛が好ましい。
金属原子M1に対するマグネシウムの比β/αは、特に限定されないが、好ましくは0.1以上30以下であり、より好ましくは0.5以上10以下である。
式1において、α=0の場合、R2及びR3は次に示す三つの群(1)、群(2)、群(3)のいずれか一つであることが好ましい。
群(1):
2及びR3の少なくとも一方が炭素数4以上6以下である2級又は3級のアルキル基であること、好ましくはR2及びR3が共に炭素数4以上6以下のアルキル基であり、少なくとも一方が2級又は3級のアルキル基であること。
群(2):
2及びR3が炭素数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR2が炭素数2又は3のアルキル基であり、R3が炭素数4以上のアルキル基であること。
群(3):
2及びR3の少なくとも一方が炭素数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR2及びR3に含まれる炭素数を加算すると12以上になるアルキル基であること。
群(1)において炭素数4以上6以下である2級又は3級のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル基等が挙げられる。これらの中でも1−メチルプロピル基が好ましい。
式1において、α=0の場合、例えば、R2が1−メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本実施形態に好ましい結果を与える。
群(2)において、炭素数2又は3のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、エチル、1−メチルエチル、プロピル基等が挙げられる。これらの中でもエチル基が好ましい。
炭素数4以上のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。これらの中でも、ブチル、ヘキシル基が好ましい。
群(3)において、炭素数6以上の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、2−ナフチル基等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基が好ましく、アルキル基の中でも、ヘキシル、オクチル基がより好ましい。
一般に、アルキル基に含まれる炭素数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなる傾向にあり、また溶液の粘度が高くなる傾向にある。そのため適度な長鎖のアルキル基を用いることが取り扱い上好ましい。(A−1)は不活性炭化水素溶媒で希釈して使用することができるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、又は残存していても差し支えなく使用できる。
式1において、Y1はアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド基、−N=CR45、−SR6及びβ−ケト酸残基のいずれかである。ここで、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に炭素数1以上20以下の炭化水素基である。
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1はアルコキシ又はシロキシ基が好ましい。
アルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1−メチルエトキシ、ブトキシ、1−メチルプロポキシ、1,1−ジメチルエトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、2−メチルペントキシ、2−エチルブトキシ、2−エチルペントキシ、2−エチルヘキソキシ、2−エチル−4−メチルペントキシ、2−プロピルヘプトキシ、2−エチル−5−メチルオクトキシ、オクトキシ、フェノキシ、ナフトキシ基等が挙げられる。これらの中でも、ブトキシ、1−メチルプロポキシ、2−メチルペントキシ及び2−エチルヘキソキシ基が好ましい。
シロキシ基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロジメチルシロキシ、エチルヒドロメチルシロキシ、ジエチルヒドロシロキシ、トリメチルシロキシ、エチルジメチルシロキシ、ジエチルメチルシロキシ、トリエチルシロキシ基等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロジメチルシロキシ、エチルヒドロメチルシロキシ、ジエチルヒドロシロキシ、トリメチルシロキシ基が好ましい。
4、R5及びR6は、炭素数1以上12以下のアルキル又はアリール基が好ましく、炭素数3以上10以下のアルキル又はアリール基がより好ましい。炭素数1以上12以下のアルキル又はアリール基としては、特に限定されないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチル−4−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、ナフチル基等が挙げられる。これらの中でも、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルペンチル及び2−エチルヘキシル基が好ましい。
本実施形態において、(A−1)の合成方法は、特に限定されないが、例えば、式R2MgX1又は式R2 2Mg(R2は前述の意味であり、X1はハロゲン原子である。)で表される有機マグネシウム化合物と、式M13 n又はM13 (n-1)H(M1、R3及びnは前述の意味である。)で表される有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、25℃以上150℃以下で反応させ、必要な場合には、続いて式Y1−H(Y1は前述の意味である。)で表される化合物を反応させる、又はY1で表される官能基を有する有機マグネシウム化合物及び/又は有機アルミニウム化合物を反応させることにより合成することができる。これらの中でも、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物と式Y1−Hで表される化合物とを反応させる場合、反応の順序については、特に限定されないが、有機マグネシウム化合物中に式Y1−Hで表される化合物を加えていく方法、式Y1−Hで表される化合物中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、又は両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。
(A−1)における全金属原子に対するY1のモル組成比c/(α+β)の範囲は0≦c/(α+β)≦2であり、0≦c/(α+β)<1であることが好ましい。全金属原子に対するY1のモル組成比が2以下であることにより、(A−2)に対する(A−1)の反応性が向上する傾向にある。
(A−2)は式2で表されるチタン化合物である。
(A−2):Ti(OR7d1 (4-d) 式2
(式2中、dは0以上4以下の実数であり、R7は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、X1はハロゲン原子である。)
dは、好ましくは0以上1以下の実数であり、より好ましくは0である。
7で表される炭素数1以上20以下の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、アリル基等の脂肪族炭化水素基;シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、シクロペンチル基等の脂環式炭化水素基;フェニル、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらの中でも、脂肪族炭化水素基が好ましい。
1で表されるハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。これらの中でも、塩素が好ましい。
本実施形態において、(A−2)は四塩化チタンであることが好ましい。本実施形態においては、(A−2)として2種以上混合して使用することが可能である。
(A−1)と(A−2)との反応は、好ましくは、不活性炭化水素溶媒中で行われ、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒中で行われることがより好ましい。上記反応における(A−1)と(A−2)とのモル比については特に限定されないが、(A−1)に含まれるMg原子に対する(A−2)に含まれるTi原子のモル比(Ti/Mg)が、好ましくは0.1以上10以下であり、より好ましくは0.3以上3以下である。
反応温度については、特に限定されないが、例えば、−80℃以上150℃以下の範囲であり、好ましくは−40℃〜100℃の範囲である。
(A−1)と(A−2)の添加順序は、特に限定されないが、(A−1)に続いて(A−2)を加える、(A−2)に続いて(A−1)を加える、(A−1)と(A−2)とを同時に添加する、のいずれの方法も可能であるが、好ましくは(A−1)と(A−2)とを同時に添加する。
また、(A−1)と(A−2)を添加する間隔について、特に限定されないが、連続的に添加する、間欠的に添加することのいずれの方法も可能であるが、3分以上20分以下の周期で間欠添加することが好ましく、5分以上15分以下の周期で間欠的添加することがより好ましい。(A−1)と(A−2)を添加する時間については、特に限定されないが、1時間以上10時間以下が好ましく、2時間以上5時間以下がより好ましい。(A−1)と(A−2)を熟成する時間については、特に限定されないが、1時間以上10時間以下の範囲で行うことが好ましく、2時間以上5時間以下がより好ましい。(A−1)と(A−2)との反応を上記のように行うことにより、触媒の活性点をより均一に分散させ、さらに固体触媒中の活性点の凝集を抑えることができる。そのため、ポリマー鎖の成長が局所的に起こることがなく、触媒粒子表面上を満遍なくポリマー鎖が被覆するため、細孔容積が少ないポリエチレンパウダーを得られ、表面凹凸を有しながら内部空隙を抑制した適切な比表面積を有するポリエチレンパウダーが得られる。
本実施形態においては、(A−1)と(A−2)の反応後に、未反応の(A−1)と(A−2)を除去することが好ましい。未反応の(A−1)と(A−2)を除去し、塊等の不定形重合物の発生や、反応器壁面への付着や抜取配管への詰り等を抑制することができ、連続生産に優れる傾向にある。未反応の(A−1)と(A−2)の除去には、触媒スラリーを沈降した状態で上澄み液を抜き、フレッシュな不活性炭化水素溶媒を加えることを繰り返すことにより低減が可能である。またフィルター等の濾過により取り除くこともできる。(A−2)に由来する残存塩素濃度を1mmol/L以下にすることが好ましい。
本実施形態においては、上記反応により得られた固体触媒成分[A]は、不活性炭化水素溶媒を用いたスラリー溶液として使用される。
本実施形態において使用されるチーグラー・ナッタ触媒成分の他の例としては、固体触媒成分[C]及び有機金属化合物成分[B]からなり、固体触媒成分[C]が、式3で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(C−1)と式4で表される塩素化剤(C−2)との反応により調製された担体(C−3)に、式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(C−4)と式2で表されるチタン化合物(C−5)とを担持することにより製造されるオレフィン重合用触媒等が挙げられる。
(C−1):(M2)γ(Mg)δ(R8e(R9f(OR10g 式3
(式3中、M2は周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R8、R9及びR10はそれぞれ炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、γ、δ、e、f及びgは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦e、0≦f、0≦g、0<e+f、0≦g/(γ+δ)≦2、kγ+2δ=e+f+g(ここで、kはM2の原子価を表す。))
(C−2):HhSiCli11 (4-(h+i)) 式4
(式4中、R11は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、hとiは次の関係を満たす実数である。0<h、0<i、0<h+i≦4)
(C−4):(M1)α(Mg)β(R2a(R3b1 c 式1
(式1中、M1は周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R2及びR3は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Y1はアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド基、−N=C−R45、−SR6及びβ−ケト酸残基であり(ここで、R4、R5及びR6は炭素数1以上20以下の炭化水素基を表す。cが2の場合には、Y1はそれぞれ異なっていてもよい。)、α、β、a、b及びcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦b/(α+β)≦2、nα+2β=a+b+c(ここで、nはM1の原子価を表す。))
(C−5):Ti(OR7d1 (4-d) 式2
(式2中、dは0以上4以下の実数であり、R7は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、X1はハロゲン原子である。)
本実施形態においては、(C−4)としては、(A−1)と同様の有機マグネシウム化合物を用いることができ、(C−5)としては、(A−2)と同様のチタン化合物を用いることができる。(C−4)及び(C−5)における、式1及び式2については、(A−1)及び(A−2)について前述したとおりである。
(C−1)は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物及びこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。式3の記号γ、δ、e、f及びgの関係式kγ+2δ=e+f+gは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
式3において、R8及びR9で表される炭素数1以上20以下の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル、シクロアルキル又はアリール基等が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルキル基である。
式3において、α>0の場合、金属原子M2としては、周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であれば特に限定されないが、例えば、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、アルミニウム、亜鉛が好ましい。
金属原子M2に対するマグネシウムの比δ/γは、特に限定されないが、好ましくは0.1以上30以下であり、より好ましくは0.5以上10以下である。
式3において、γ=0の場合、R8及びR9は次に示す三つの群(4)、群(5)、群(6)のいずれか一つであることが好ましい。
群(4):
8及びR9の少なくとも一方が炭素数4以上6以下である2級又は3級のアルキル基であること、好ましくはR8及びR9が共に炭素数4以上6以下のアルキル基であり、少なくとも一方が2級又は3級のアルキル基であること。
群(5):
8及びR9が炭素数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR8が炭素数2又は3のアルキル基であり、R9が炭素数4以上のアルキル基であること。
群(6):
8及びR9の少なくとも一方が炭素数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR8及びR9に含まれる炭素数を加算すると12以上になるアルキル基であること。
群(1)において、炭素数4以上6以下である2級又は3級のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル基等が挙げられる。これらの中でも、1−メチルプロピル基が好ましい。
式3において、γ=0の場合、例えば、R8が1−メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本実施形態に好ましい結果を与える。
群(2)において、炭素数2又は3のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、エチル、1−メチルエチル、プロピル基等が挙げられる。これらの中でも、エチル基が好ましい。
炭素数4以上のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。これらの中でも、ブチル、ヘキシル基が好ましい。
群(3)において、炭素数6以上の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、2−ナフチル基等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基が好ましく、アルキル基の中でも、ヘキシル、オクチル基がより好ましい。
一般に、アルキル基に含まれる炭素数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなる傾向にあり、溶液の粘度が高くなる傾向にある。そのため適度な長鎖のアルキル基を用いることが取り扱い上好ましい。(C−1)は不活性炭化水素溶媒で希釈して使用することができるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、或いは残存していても差し支えなく使用できる。
式3において、R10で表される炭素数1以上20以下の炭化水素基としては、炭素数1以上12以下のアルキル又はアリール基が好ましく、3以上10以下のアルキル又はアリール基がより好ましい。
炭素数1以上20以下の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチル−4−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、ナフチル基等が挙げられる。これらの中でも、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルペンチル及び2−エチルヘキシル基が好ましい。
本実施形態において、(C−1)の合成方法は、特に限定されないが、例えば、式R8MgX1又は式R8 2Mg(R8は前述の意味であり、X1はハロゲン原子である。)で表される有機マグネシウム化合物と、式M29 k又は式M29 (k-1)H(M2、R9及びkは前述の意味である。)で表される有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、25℃以上150℃以下の温度で反応させ、必要な場合には、続いてR9(R9は前述の意味である。)で表される炭化水素基を有するアルコール又は不活性炭化水素溶媒に可溶なR9で表される炭化水素基を有するアルコキシマグネシウム化合物及び/又はアルコキシアルミニウム化合物と反応させる方法が好ましい。これらの中でも、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとを反応させる場合、反応の順序については特に限定されないが、有機マグネシウム化合物中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、又は両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。
有機マグネシウム化合物とアルコールとの反応比率については特に限定されないが、反応の結果、得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム化合物における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比g/(γ+δ)は0≦g/(γ+δ)≦2であり、0≦g/(γ+δ)<1であることが好ましい。
(C−2)は式4で表される塩素化剤であり、少なくとも一つはSi−H結合を有する塩化珪素化合物である。
(C−2):HhSiCli11 (4-(h+i)) 式4
(式4中、R11は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、hとiは次の関係を満たす実数である。0<h、0<i、0<h+i≦4)
式4において、R11で表される炭素数1以上12以下の炭化水素基は、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、具体的には、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル基等の炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。また、h及びiはh+i≦4の関係を満たす0より大きな実数であり、iが2以上3以下の実数であることが好ましい。
(C−2)としては、特に限定されないが、具体的には、HSiCl3、HSiCl2CH3、HSiCl225、HSiCl2(C37)、HSiCl2(2−C37)、HSiCl2(C49)、HSiCl2(C65)、HSiCl2(4−Cl−C64)、HSiCl2(CH=CH2)、HSiCl2(CH265)、HSiCl2(1−C107)、HSiCl2(CH2CH=CH2)、H2SiCl(CH3)、H2SiCl(C25)、HSiCl(CH32、HSiCl(C252、HSiCl(CH3)(2−C37)、HSiCl(CH3)(C65)、HSiCl(C652等が挙げられる。これらの中でも、HSiCl3、HSiCl2CH3、HSiCl(CH32、HSiCl2(C37)が好ましく、HSiCl3、HSiCl2CH3がより好ましい。本実施形態においては、(C−2)として2種以上混合して使用することが可能である。
(C−1)と(C−2)との反応に際しては、(C−2)を予め、不活性炭化水素溶媒;1,2−ジクロルエタン、o−ジクロルベンゼン、ジクロルメタン等の塩素化炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;又はこれらの混合溶媒を用いて希釈した後に利用することが好ましい。これらの中でも、触媒の性能上、不活性炭化水素溶媒がより好ましい。
(C−1)と(C−2)との反応比率には特に限定されないが、(C−1)に含まれるマグネシウム原子1molに対する(C−2)に含まれる珪素原子が0.01mol以上100mol以下であることが好ましく、0.1mol以上10mol以下であることがより好ましい。
(C−1)と(C−2)との反応方法については特に限定はなく、(C−1)と(C−2)とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法、(C−2)を事前に反応器に仕込んだ後に(C−1)を反応器に導入させる方法、又は(C−1)を事前に反応器に仕込んだ後に(C−2)を反応器に導入させる方法のいずれの方法も使用することができる。これらの中でも、(C−2)を事前に反応器に仕込んだ後に(C−1)を反応器に導入させる方法が好ましい。該反応により得られる担体(C−3)は、ろ過又はデカンテーション法により分離した後、不活性炭化水素溶媒を用いて充分に洗浄し、未反応物又は副生成物等を除去することが好ましい。
(C−1)と(C−2)との反応温度については、特に限定されないが、例えば、25℃以上150℃以下であり、好ましくは30℃以上120℃以下であり、さらに好ましくは40℃以上100℃以下である。
(C−1)と(C−2)とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法においては、あらかじめ反応器の温度を所定温度に調節し、同時添加を行いながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度は所定温度に調節することが好ましい。(C−2)を事前に反応器に仕込んだ後に(C−1)を反応器に導入させる方法においては、(C−2)を仕込んだ反応器の温度を所定温度に調節し、(C−1)を反応器に導入しながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度は所定温度に調節することが好ましい。(C−1)を事前に反応器に仕込んだ後に(C−2)を反応器に導入させる方法においては、(C−1)を仕込んだ反応器の温度を所定温度に調節し、(C−2)を反応器に導入しながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度は所定温度に調節される。
(C−4)の使用量は、(C−5)に含まれるチタン原子に対する(C−4)に含まれるマグネシウム原子のモル比で0.1以上10以下であることが好ましく、0.5以上5以下であることがより好ましい。
(C−4)と(C−5)との反応の温度については、特に限定されないが、例えば、−80℃以上150℃以下であり、好ましくは−40℃以上100℃以下である。
(C−4)の使用時の濃度については、特に限定されないが、例えば、(C−4)に含まれるチタン原子基準で0.1mol/L以上2mol/L以下であり、好ましくは0.5mol/L以上1.5mol/L以下である。(C−4)の希釈には不活性炭化水素溶媒を用いることが好ましい。
(C−3)に対する(C−4)と(C−5)の添加順序は、特に限定されないが、(C−4)に続いて(C−5)を加える、(C−5)に続いて(C−4)を加える、(C−4)と(C−5)とを同時に添加する、のいずれの方法も可能である。これらの中でも、(C−4)と(C−5)とを同時に添加する方法が好ましい。(C−4)と(C−5)との反応は不活性炭化水素溶媒中で行われるが、不活性炭化水素溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いることが好ましい。
(C−4)と(C−5)を添加する間隔は、特に限定されないが、連続的に添加する、間欠的に添加することのいずれの方法も可能であるが、3分以上20分以下の周期で間欠添加することが好ましく、5分以上15分以下の周期での間欠的添加することがより好ましい。(C−4)と(C−5)を添加する時間については、特に限定されないが、1時間以上10時間以下が好ましく、2時間以上5時間以下がより好ましい。(C−4)と(C−5)を熟成する時間については、特に限定されないが、1時間以上10時間以下が好ましく、2時間以上5時間以下がより好ましい。上記反応により得られた触媒は、不活性炭化水素溶媒を用いたスラリー溶液として使用される。
(C−5)の使用量は、特に限定されないが、担体(C−3)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01以上20以下が好ましく、0.05以上10以下がより好ましい。
(C−5)の反応温度については、特に限定されないが、例えば、−80℃以上150℃以下であり、好ましくは−40℃以上100℃以下である。本実施形態においては、(C−3)に対する(C−5)の担持方法は、特に限定されないが、(C−3)に対して過剰な(C−5)を反応させる方法や、第三成分を使用することにより(C−5)を効率的に担持する方法を用いてもよいが、(C−5)と有機マグネシウム化合物(C−4)との反応により担持する方法が好ましい。
本実施形態において用いられるチーグラー・ナッタ触媒は、固体触媒成分[A]又は固体触媒成分[C]を有機金属化合物成分[B]と組み合わせることにより、高活性な重合用触媒となる。有機金属化合物成分[B]は「助触媒」と呼ばれることもある。
有機金属化合物成分[B]としては、特に限定されないが、例えば、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族からなる群に属する金属を含有する化合物等が挙げられる。これらの中でも、有機アルミニウム化合物及び/又は有機マグネシウム化合物が好ましい。
有機アルミニウム化合物としては、式5で表される化合物を単独又は混合して使用することが好ましい。
AlR12 j1 (3-j) 式5
(式5中、R12は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Z1は水素、ハロゲン原子、アルコキシ、アリロキシ及びシロキシ基であり、jは2以上3以下の実数である。)
式5において、R12で表される炭素数1以上20以下の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素及び脂環式炭化水素等が挙げられる。
式5で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピル)アルミニウム(トリイソブチルアルミニウムともいう。)、トリペンチルアルミニウム、トリ(3−メチルブチル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム化合物;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ビス(2−メチルプロピル)アルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のハロゲン化アルミニウム化合物;ジエチルアルミニウムエトキシド、ビス(2−メチルプロピル)アルミニウムブトキシド等のアルコキシアルミニウム化合物;ジメチルヒドロシロキシアルミニウムジメチル、エチルメチルヒドロシロキシアルミニウムジエチル、エチルジメチルシロキシアルミニウムジエチル等のシロキシアルミニウム化合物等が挙げられる。これらの中でも、トリアルキルアルミニウム化合物が好ましい。
有機マグネシウム化合物としては、(C−1)としても示される式3で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物を単独又は混合して使用することが好ましい。
(M2)γ(Mg)δ(R8e(R9f(OR10g 式3
(式3中、M2は周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R8、R9及びR10はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、γ、δ、e、f及びgは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦e、0≦f、0≦g、0<e+f、0≦g/(γ+δ)≦2、kγ+2δ=e+f+g(ここで、kはM2の原子価を表す。))
有機金属化合物成分[B]としての有機マグネシウム化合物は、(C−1)として前述したとおり式3で表される有機マグネシウム化合物と同様であるが、該有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶媒に対する溶解性が高いほうが好ましいため、β/αは0.5〜10の範囲にあることが好ましく、また、M2がアルミニウムである化合物がさらに好ましい。
固体触媒成分[A]又は固体触媒成分[C]と有機金属化合物成分[B]を重合条件下である重合系内に添加する方法については、特に限定されないが、両者を別々に重合系内に添加してもよいし、あらかじめ両者を反応させた後に重合系内に添加してもよい。また組み合わせる両者の比率には特に限定されないが、固体触媒成分1gに対し有機金属化合物成分は1mmol以上3000mmol以下であることが好ましい。
本実施形態において、ポリエチレンパウダーの製造方法における重合法は、懸濁重合法又は気相重合法により、エチレン又はエチレンを含む単量体を(共)重合させる方法等が挙げられる。これらの中でも、重合熱を効率的に除熱できる懸濁重合法が好ましい。懸濁重合法においては、媒体として不活性炭化水素媒体を用いることができ、また、α−オレフィン自身を溶媒として用いてもよい。
不活性炭化水素媒体としては、特に限定されないが、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素又はこれらの混合物等が挙げられる。
ポリエチレンパウダーの製造方法における重合温度は、特に限定されないが、例えば、30℃以上100℃以下であり、好ましくは35℃以上90℃以下であり、よりの好ましくは40℃以上80℃以下である。重合温度が30℃以上であれば、工業的に効率的な製造が可能である。重合温度が100℃以下であれば、連続的に安定運転が可能である。
ポリエチレンパウダーの製造方法における重合圧力は、特に限定されないが、例えば、0.1MPa以上2.0MPa以下であり、好ましくは0.1MPa以上1.5MPa以下であり、さらに好ましくは0.1MPa以上1.0MPa以下である。
ポリエチレンパウダーの製造方法における重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法において行なうことができるが、連続式で重合することが好ましい。エチレンガス、溶媒、触媒等を連続的に重合系内に供給し、生成したエチレン(共)重合体と共に連続的に排出することで、急激なエチレンの反応による部分的な高温状態を抑制することが可能となり、重合系内がより安定化する。また重合反応器に供給する前のエチレンガス、溶媒、触媒等が反応器内と同等の温度にて供給されることが同じく系内を安定化するために好ましい。系内が均一な状態でエチレンが反応すると、ポリマー鎖中に分岐や二重結合等が生成されることが抑制される、また、エチレン(共)重合体の分解や架橋によるポリエチレンパウダーの表面変形等が抑制される。よって、重合系内がより均一となる連続式が好ましい。重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行なうことも可能である。
重合系内に連鎖移動剤として水素を添加することにより、分子量を適切な範囲で制御することが可能であることが西独国特許出願公開第3127133号明細書に記載されている。重合系内に水素を添加することは、分子量制御の他に触媒の連鎖移動を促進させ重合成長を抑制することができるため急激なポリマー鎖の成長を抑え、いびつな粒子の生成を妨げることが可能となる。重合系内に水素を添加する場合、水素のモル分率は、0mol%以上30mol%以下であることが好ましく、3mol%以上25mol%以下であることがより好ましく、5mol%以上20mol%以下であることがさらに好ましい。
また、水素を予め触媒と接触させた後、触媒導入ラインから重合系内に添加することが好ましい。触媒を重合系内に導入した直後は、導入ライン出口付近の触媒濃度が高く、エチレンが急激に反応することによって部分的な高温状態になる可能性が高まるが、水素と触媒を重合系内に導入する前に接触させることで、触媒の初期活性を抑制することが可能となり、急激な重合によって高温状態となったポリエチレンパウダーの重合初期粒子形状の形状変化を抑制できる。
ポリエチレンパウダーを合成するために使用したチーグラー・ナッタ触媒の失活方法は、特に限定されないが、ポリエチレンパウダーと溶媒を分離した後に実施することが好ましい。溶媒と分離した後に触媒を失活させるための薬剤を導入することで、溶媒中に残存する低分子量成分を低減し失活の反応熱により粒子内の低分子成分が溶解して粒子表面細孔を閉塞する等の粒子表面の変形を抑えられる。
溶媒分離工程の際、ポリエチレンスラリー中に残存する含液率は10wt%以上60wt%以下が好ましく、15wt%以上55wt%以下がより好ましく、20wt%以上50wt%以下がさらに好ましい。含液率が10wt%より小さい場合、ポリエチレンパウダーの粒子表面張力が大きくなり触媒失活工程において粒子への失活薬剤の浸透が困難になり失活にムラが発生する可能性が高まる。含液率が60wt%より大きくなるとポリエチレンパウダー残存低分子量成分が増加するため溶解部位が増加する結果パウダーの形状変形が進行する。
触媒系を失活させる薬剤としては、特に限定されないが、例えば、酸素、水、アルコール類、グリコール類、フェノール類、一酸化炭素、二酸化炭素、エーテル類、カルボニル化合物、アルキン類等が挙げられる。
ポリエチレンパウダーの製造方法における乾燥温度は、特に限定されないが、例えば、50℃以上150℃以下であり、好ましくは50℃以上140℃以下であり、より好ましくは50℃以上130℃以下である。
乾燥温度が50℃以上であれば、効率的な乾燥が可能である。乾燥温度が150℃以下であれば、エチレン重合体の分解や架橋を抑制した状態で乾燥することが可能である。また乾燥温度が150度以上の場合、ポリエチレンパウダー表面が溶解するため表面細孔が塞つぶれたり、小さくなる。さらに表面が溶解しながらポリエチレンパウダーの粒子同士が衝突して移送されるため粒子表面の凹凸も均されるため真球形に近づく、このため表面が塞がり内部に溶媒が浸透しづらいポリエチレンパウダーが生成することになる。
〔用途〕
本実施の形態のポリエチレンパウダーは、種々の加工方法により加工することができる。ポリエチレンパウダーを用いて得られる成形体は種々の用途に用いることができる。例えば、ポリエチレンパウダーを用いて得られる成形体は、二次電池セパレータ用微多孔膜、中でも、リチイムイオン二次電池セパレータ用微多孔膜、高強度繊維、ゲル紡糸等として好適である。
微多孔膜の製造方法としては、具体的には、溶剤を用いた湿式法において、Tダイを備え付けた押出し機にて、押出し、延伸、抽出、乾燥を経る加工方法が挙げられる。本実施形態のポリエチレンパウダーは、溶媒との溶解性に優れるため電池セパレータ用微多孔膜として好適に用いることができる。このような微多孔膜として、リチウムイオン二次電池や鉛蓄電池に代表される二次電池セパレータ用、特にはリチウムイオン二次電池セパレータ用に好適に使用できる。本実施形態においてポリエチレンパウダーを用いて得られる成形体やリチイムイオン二次電池セパレータ等は、ポリエチレンパウダーを含む成形体やリチイムイオン二次電池セパレータ等であってもよい。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例に用いられる評価方法及び測定方法は以下のとおりである。
(1)BET法により求められる比表面積
ユアサアイオニクス社製オートソーブ3MPを用いて比表面積を測定した。前処理としてポリエチレンパウダー1gを試料セルに入れ、試料前処理装置で80℃、0.01mmHg以下で12時間加熱脱気した。その後、吸着ガスに窒素を用いて測定温度−196℃の条件でBET法により測定を行った。
(2)水銀圧入法により求められる細孔体積及び細孔分布
水銀ポロシメーターとして島津製作所社製オートポアIV9500型を用いて細孔容積及び細孔分布を測定した。前処理としてポリエチレンパウダー0.5gを試料セルに入れ低圧測定部で常温脱気乾燥後、水銀を試料容器内に充填した。徐々に加圧して(高圧部)水銀を試料の細孔へ圧入した。
圧力条件は以下のように設定した。
・低圧部:69Pa(0.01psia)N2圧で測定
・高圧部:21〜228MPa(3000〜33000pisa)
(3)粘度平均分子量(Mv)
ポリエチレンパウダーの粘度平均分子量(Mv)については、ISO1628−3(2010)に従って、以下に示す方法によって求めた。
まず、溶融管にポリエチレンパウダー20mgを秤量し、溶融管を窒素置換した後、20mLのデカヒドロナフタレン(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを1g/L加えたもの)を加え、150℃で2時間攪拌してポリエチレンパウダーを溶解させた。その溶液を135℃の恒温槽で、キャノン−フェンスケの粘度計(柴田科学器械工業社製:製品番号−100)を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。同様に、ポリエチレンパウダー量を10mg、5mg、2mgに変えたサンプルについても同様に標線間の落下時間(ts)を測定した。ブランクとしてポリエチレンパウダーを入れていない、デカヒドロナフタレンのみの落下時間(tb)を測定した。以下の式に従って求めたポリエチレンパウダーの還元粘度(ηsp/C)をそれぞれプロットして濃度(C)(単位:g/dL)とポリエチレンパウダーの還元粘度(ηsp/C)の直線式を導き、濃度0に外挿した極限粘度([η])を求めた。 ηsp/C=(ts/tb−1)/0.1 (単位:dL/g)
次に下記数式Aを用いて、上記極限粘度[η]の値を用い、粘度平均分子量(Mv)を算出した。
Mv=(5.34×104)×[η]1.49 (数式A)
(4)平均粒子径
ポリエチレンパウダーの平均粒子径は、JIS Z8801で規定された10種類の篩(目開き:710μm、500μm、425μm、355μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm)を用いて、100gのポリエチレンパウダーを分級した際に得られる各篩に残ったポリエチレンパウダーの重量を目開きの大きい側から積分した積分曲線において、50%の重量になる粒子径を平均粒子径とした。
(5)凹凸度(UD)
凹凸度(UD)は日本レーザー社製動的画像法粒度分布・粒子形状評価装置QICPICを用いた。試料を気流式乾式分散器により分散させ、分散粒子の画像を連続的に撮影取り込み、取り込んだ画像情報から画像解析ソフトを用いて測定した。
試料測定条件は以下のように設定した。
気流分散器:RODOSTM
圧縮エアー気流分散圧力:1.0bar
解析モード:EQPC(円面積相当径)
解析測定レンジ:M6(最小ピクセルが5μm)
得られた対象粒子の投影面積をA、対象粒子の凸部を結んだ包絡線で囲まれた投影面積をA+Bとしたとき、以下の(1)式で表されるUDを粒子の凹凸度とした。
UD=A/(A+B) (1)
(6)含有チタン量
ポリエチレンパウダーをマイクロウェーブ分解装置(型式ETHOS TC、マイルストーンゼネラル社製)を用い加圧分解し、内部標準法にて、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置、型式Xシリーズ X7、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)にて、ポリエチレンパウダー中のチタンの元素濃度を測定して、含有チタン量とした。
(7)溶解性の評価
ポリエチレンパウダー14g、酸化防止剤としてペンタエリスチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.4g、及び流動パラフィン(松村石油社製P−350)36gの混合物を小型混練機(TOYOSEIKI社製LABPLASTOMILL30C150)に投入し、200℃、スクリュー回転50rpmで混練した。混練時間は2分間と10分間の2つの条件で実施した。これらの混練物を金属板に挟み込み圧縮成形機(神藤金属社製SFA−37)で厚み1mmになるまで190℃で熱プレスを行いシート状にした後、25℃で急冷しゲル状シートを成形した。
このゲル状シートを120℃で同時二軸延伸機を用いて7X7倍に延伸した後、塩化メチレンを使用して流動パラフィンを抽出除去後乾燥した。さらに125℃、3分で熱固定し、微多孔膜を得た。ポリエチレンパウダーの溶解性は得られた微多孔膜250mmX250mm中に存在する50μm以上の異物(微多孔膜を透過光で観察した際、黒点として観察されるもの)を目視により数え、得られた個数に基づいて、下記評価基準により評価した。
(溶解性評価基準)
○:異物が、1個以下である。
△:異物が、5個未満である。
×:異物が、5個以上である。
[製造例]
〔固体触媒成分[A−1]の調製〕
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブにヘキサン1600mLを添加した。10℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液800mLと1mol/Lの組成式AlMg5(C4911(OSiH)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液800mLとを5分周期で添加、添加停止を繰り返し4時間かけて同時に添加した。添加後、ゆっくりと昇温し、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1600mL除去し、ヘキサン1600mLで5回洗浄することにより、固体触媒成分[A−1]を調製した。この固体触媒成分[A−1]1g中に含まれるチタン量は3.05mmolであった。
〔固体触媒成分[A−2]の調製〕
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブにヘキサン1600mLを添加した。10℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液800mLと1mol/Lの組成式AlMg5(C4911(OSiH)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液800mLとを連続的に4時間かけて同時添加した。添加後、ゆっくりと昇温し、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1600mL除去し、ヘキサン1600mLで5回洗浄することにより、固体触媒成分[A−2]を調製した。この固体触媒成分[A−2]1g中に含まれるチタン量は3.12mmolであった。
〔固体触媒成分[A−3]の調製〕
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブにヘキサン1600mLを添加した。10℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液800mLと1mol/Lの組成式AlMg5(C4911(OSiH)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液800mLとを連続的に0.5時間かけて同時に添加した。添加後、ゆっくりと昇温し、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1600mL除去し、ヘキサン1600mLで5回洗浄することにより、固体触媒成分[A−3]を調製した。この固体触媒成分[A−3]1g中に含まれるチタン量は3.10mmolであった。
[実施例1]
(エチレン重合体の重合工程)
ヘキサン、エチレン、水素、触媒を、攪拌装置が付いたベッセル型300L重合反応器に連続的に供給した。重合圧力は0.5MPaであった。重合温度はジャケット冷却により83℃に保った。ヘキサンは40L/hrで重合器の底部から供給した。固体触媒成分[A−1]と、助触媒としてトリイソブチルアルミニウムを使用した。固体触媒成分[A−1]は0.2g/hrの速度で重合器に添加し、トリイソブチルアルミニウムは10mmol/hrの速度で重合器に添加した。エチレン重合体の製造速度は10kg/hrであった。水素を、気相のエチレンに対する水素濃度が14mol%になるようにポンプで連続的に供給した。なお、水素は予め触媒と接触させるために触媒導入ラインから供給し、エチレンは重合器の底部から供給した。触媒活性は80000g−PE/g−固体触媒成分[A−1]であった。ポリエチレンスラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように連続的に圧力0.05Mpa、温度70℃のフラッシュドラムに抜き、未反応のエチレン及び水素を分離した。
次に、ポリエチレンスラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように連続的に遠心分離機に送り、ポリマーとそれ以外の溶媒等を分離した。その時のポリマーに対する溶媒等の含液率は45%であった。
分離されたポリエチレンパウダーは、85℃で窒素ブローしながら乾燥した。この乾燥工程で、重合後のパウダーに対し、スチームを噴霧して、触媒及び助触媒の失活を実施した。得られたポリエチレンパウダーに対し、ステアリン酸カルシウム(大日化学社製、C60)を1500ppm添加し、ヘンシェルミキサーを用いて、均一混合した。得られたポリエチレンパウダーを目開き425μmの篩を用いて、篩を通過しなかったものを除去することで、実施例1のポリエチレンパウダーを得た。
実施例1で得られたポリエチレンパウダーについては、上述した方法に従い測定して、(1)BET法による比表面積、(2)水銀圧入法による細孔容積、(3)粘度平均分子量(Mv)、(4)水銀圧入法による細孔分布におけるピーク極大値、(4)平均粒子径、(5)凹凸度(UD)0.90以上0.95以下の全測定粒子に占める割合、(7)含有チタン量を測定した。結果を表1に示す。
また溶解性については、上述した方法に従い、(8)2分間の混練によって得られる微多孔膜中の異物と(9)10分間の混練によって得られる微多孔膜中の異物を評価し、その結果を表1に示す。
[実施例2]
重合工程において、固体触媒成分[A−1]を用いずに、固体触媒成分[A−2]を用いた以外は実施例1と同様の操作により、実施例2のポリエチレンパウダーを得た。ポリエチレンパウダー及び微多孔膜の評価結果を表1に示す。
[実施例3]
重合工程において、水素濃度を3mol%とした以外は実施例1と同様の操作により、実施例3のポリエチレンパウダーを得た。ポリエチレンパウダー及び微多孔膜の評価結果を表1に示す。
[実施例4]
乾燥工程において、乾燥温度を140℃とした以外は実施例1と同様の操作により、実施例4のポリエチレンパウダーを得た。ポリエチレンパウダー及び微多孔膜の評価結果を表1に示す。
[比較例1]
重合工程において、固体触媒成分[A−1]を用いずに、固体触媒成分[A−3]を用いた以外は実施例1と同様の操作により、比較例1のポリエチレンパウダーを得た。ポリエチレンパウダー及び微多孔膜の評価結果を表1に示す。
[比較例2]
乾燥工程において、乾燥温度を160℃とした以外は実施例1と同様の操作により、比較例2のポリエチレンパウダーを得た。ポリエチレンパウダー及び微多孔膜の評価結果を表1に示す。
[比較例3]
乾燥工程前、ポリマーとそれ以外の溶媒等を分離する溶媒遠心分離においてポリマーに対する溶媒等の含液率は70%とした以外は実施例1と同様の操作により、比較例3のエチレン重合体パウダーを得た。ポリエチレンパウダー及び微多孔膜の評価結果を表1に示す。
[比較例4]
重合圧力を1.2MPaとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。触媒活性は120000g−PE/g−固体触媒成分[A−1]であった。こうして比較例4のポリエチレンパウダーを得た。ポリエチレンパウダー及び微多孔膜の評価結果を表1に示す。
[比較例5]
重合工程において、水素を予め触媒と接触させずに重合器へ供給するため、重合器の底部から供給したこと以外は実施例1と同様の操作により、比較例5のエチレン重合体パウダーを得た。ポリエチレンパウダー及び微多孔膜の評価結果を表1に示す。
本発明のポリエチレンパウダーは、リチウムイオン電池セパレータ、鉛蓄電池セパレータ、高強度繊維、成形用途等に用いることができる。

Claims (6)

  1. BET法により求められる比表面積が0.10m2/g以上0.30m2/g以下であり、水銀圧入法により求められる細孔容積が0.85mL/g以下であり、かつ粘度平均分子量(Mv)が10万以上100万以下である、ポリエチレンパウダー。
  2. 水銀圧入法により求められる細孔分布において、細孔径30μm以下に極大値が存在しない、請求項1に記載のポリエチレンパウダー。
  3. 平均粒子径が1〜200μmであり、測定全粒子数の60%以上は式(1)で定義される凹凸度(UD)が0.90以上0.95以下の形態を有する、請求項1又は2に記載のポリエチレンパウダー。
    UD=A/(A+B) (1)
    (式(1)中、Aは対象粒子の投影面積、A+Bは対象粒子の凸部を結んだ包絡線で囲まれた投影面積を表す。)
  4. 1ppm以上200ppm以下のチタンを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレンパウダー。
  5. 二次電池セパレータ用である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレンパウダー。
  6. リチウムイオン二次電池セパレータ用である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレンパウダー。
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