JP2020125426A - 超高分子量エチレン系重合体の製造方法 - Google Patents

超高分子量エチレン系重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】超高分子量エチレン重合体の連続重合での製造時、原料ガス供給口付近のファウリングが多発することが有った。その様なトラブル時は、反応装置への原料ガス供給口付近のエチレンガス組成が高い傾向が有る。【解決手段】前記、反応装置への原料ガス供給口付近のエチレンガス組成を特定の範囲にすること。このようにすることで、原料供給口付近のエチレン濃度が下がり、異常発熱による生成粒子の溶融付着を抑制することが出来るのであろう。【選択図】なし

Description

本発明は、超高分子量エチレン系重合体の製造方法に関する。詳しくは、超高分子量エチレン系重合体を、連続重合法にて製造する方法に関する。より詳しくは、バッテリーセパレータ等に好適な超高分子量エチレン系重合体を連続重合法にて製造する方法に関する。
ポリオレフィン微多孔膜は、リチウム二次バッテリー、ニッケル−水素バッテリー、ニッケル−カドミウムバッテリー、ポリマーバッテリー等に用いるバッテリーセパレータをはじめ、電解コンデンサー用セパレータ、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、医療用材料等に幅広く使用されている。
近年、電気自動車(EV)の普及が加速する可能性が高まってきており、バッテリー及びバッテリー部材の生産効率の改善や、安価な製造方法の確立が更に求められている。
ポリオレフィン微多孔膜をバッテリーセパレータ、特にリチウムイオンバッテリーセパレータとして用いる場合、その性能はバッテリー特性、バッテリー生産性及びバッテリー安全性に深く関わっている。そのためポリオレフィン微多孔膜には、優れた機械的特性、耐熱性、フィルム外観、透過性、寸法安定性、シャットダウン特性、及びメルトダウン特性等が要求される。例えば機械的強度が低いと、バッテリーセパレータとして用いた場合に、電極の短絡によりバッテリーの電圧が低下してしまうことがある。
一般にポリエチレン単体からなる微多孔膜は、機械的強度が弱いため、機械的強度改善のために、超高分子量エチレン系重合体からなる微多孔膜が提案されている。また、耐熱性向上の観点から、超高分子量エチレン系重合体と、他の重合体との組合せ技術も開示されている。(例えば、特許文献1)
一般的に、超高分子量エチレン系重合体は、その分子量の高さから、重合器の内壁に重合体が付着、蓄積する、所謂ファウリング現象が起こり易く、通常のエチレン系重合体の製造に比して、長期安定運転が困難な傾向があることが知られている。一方で、前記の通り、バッテリーセパレータ―原料となる超高分子量エチレン系重合体は、より安価で効率の高い製造方法の確立が求められている。
国際特許公開2010/013467号パンフレット
本発明者らの検討によれば、超高分子量エチレン系重合体を連続重合法で製造する場合、その重合条件によって、特にエチレン等の原料ガスを重合器に供給する部位付近に前述の所謂ファウリング現象が起こり易い傾向があると言う問題点が分かってきた。原料ガスの供給部位は、通常、比較的、内径の小さい配管である場合が多く、その部位にファウリングが発生すると、配管が閉塞し、重合運転が継続できなくなる場合が有り、閉塞した重合体は、分子量が高いので、除去するのが比較的困難な傾向がある。
連続重合法は、未反応オレフィンの回収、リサイクル等も適宜組み合わせてオレフィンを重合する方法であり、重合反応が定常状態に達すると、極めて効率よく重合体を得ることが出来ることが知られている。また、その条件によって、例えば、反応器の気相のガス組成と供給する原料ガスの組成の関係は異なる場合があることが知られている。
本発明者らが検討した結果、この様なファウリングが生じるケースは、主として、供給する原料ガスの組成(エチレンガス含有率)が、反応器中の気相部のそれに比して、エチレン濃度がかなり高い場合が多いことが判明した。
それらの結果から、本発明者らは、以下のようにその原因を考察した。
「生産性を高める目的等で、触媒濃度を高めたり、エチレン濃度(分圧等)を高めたりする等の操作を行う場合に特に顕著になろうが、反応器に導入したエチレンが十分に反応系で均一に拡散する前に、原料ガスの供給口付近で重合反応が過剰に起こってしまう。このような現象は、スケールが大きくなるほどガスの拡散に時間を要すると考えられるので、顕著になるであろう。エチレンの重合は、相対的に発生する反応のエンタルピー(重合熱に相当)が高く、重合器の冷却状態によっては生成するエチレン重合体が十分に冷却できず、半溶融状態/あるいは溶融状態となり、凝集による粗粒を形成したり、重合装置の内壁付着が生じたりする可能性が高まるのであろう。
通常の分子量レベルのエチレン重合体の製造の場合、上記のような現象が起こっても、粒子の凝集力や内壁への付着力が相対的に低い為、ファウリングが顕在化し難かったと考えればつじつまが合う。」
よって、本発明が解決しようとする課題は、上述した背景技術の種々の問題点に鑑み、特に原料ガス供給部のファウリングを抑制し、長期安定的に超高分子量ポリエチレンを連続重合法で生産を可能とする方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、ファウリングは粒子の内壁等への付着と攪拌や粒子の衝突による付着粒子の脱離のバランスで決まるところ、これらのバランスを支配する因子として、重合器に供給する原料ガス組成及び得られる超高分子量エチレン系重合体の分子量が重要な因子であることを知見した。この知見に基づいて、更に検討を行なったところ、分子量の指標の一つである極限粘度が特定の範囲の超高分子量エチレン系重合体を製造する場合、重合器に供給する原料ガス組成を特定の範囲に限定するように調整することによって、特に連続重合法においても上記の問題点が発生し難く、長期安定運転が容易になることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の超高分子量エチレン系重合体の製造方法は以下のような態様である。(1)遷移金属化合物と有機金属化合物との存在下に、エチレン単独又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを以下の要件(I)及び(II)を満たす条件で重合することを特徴とする超高分子量エチレン系重合体の製造方法、
(I)遷移金属化合物と有機金属化合物との存在下、エチレンと、(A)水素、窒素、周期律表の18族元素及び飽和炭化水素ガスからなる群から選ばれるガス〔(A)ガス〕とが、50/50〜97/3のモル比で含まれるガスを供給する工程を有する、
(II)エチレン系重合体の極限粘度[η]が4.5dl/g以上、20dl/g以下である。
(2) 液相部と気相部とを有する反応装置にて超高分子量エチレン系重合体の製造を行い、前記供給するエチレンと前記(A)ガスとのモル比と、
前記気相部のエチレンと前記(A)ガスとのモル比との差が、5〜50であることを特徴とする(1)に記載の超高分子量エチレン系重合体の製造方法。
(3) 前記、供給するエチレンと(A)ガスが、前記液相中、又は液相近傍に供給されることを特徴とする(2)に記載の超高分子量エチレン系重合体の製造方法。
本発明の超高分子量ポリエチレンの製造方法によれば、連続重合時のファウリング起因のトラブルによる運転停止が起こり難い。特に、原料ガスの供給口付近の閉塞が起こり難いので、運転停止を伴う様なトラブルが発生し難い。以上より、本発明によれば、特に連続重合法により、長期安定的に超高分子量エチレン系重合体を製造することができる。それ故、本発明の産業上の利用価値は高い。
本発明の超高分子量エチレン系重合体の重合方法を実施する製造装置の一構成例である。
本発明の超高分子量エチレン系重合体の製造方法は、遷移金属化合物と有機金属化合物との存在下に、エチレン単独又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを(共)重合する工程を含む。本発明では、この際、エチレン単独又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの重合は、以下の要件(I)及び(II)を満たすように行なうことに特徴がある。なお、本明細書において、特に明記しない場合であっても、重合には共重合を含むものとし、重合体には、共重合体を含むものとする。
(I)遷移金属化合物と有機金属化合物との存在下、エチレンと、(A)水素、窒素、周期律表の18族元素及び飽和炭化水素ガスからなる群から選ばれるガス〔(A)ガス〕とが、50/50〜97/3のモル比で含まれるガスを供給する工程を有する、
(II)エチレン系重合体の極限粘度[η]が4.5dl/g以上、20dl/g以下である。
本発明の超高分子量エチレン系重合体の製造方法は、遷移金属化合物と有機金属化合物との存在下に、エチレン単独又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを供給して超高分子量エチレン系重合体を製造する。
本発明者は、本発明の製造方法により、特に連続重合において、長期安定的に超高分子量エチレン系重合体を製造することができる理由を以下のように考えている。
従来、超高分子量エチレン系重合体を製造するプロセスにおいては、その重合条件により、例えば反応器内のガス組成と、供給するガス組成とが大きく異なる条件で安定する場合や、前記、両ガス組成の差が少ない条件で安定する場合等、様々である。特に連続重合プロセスにおいては、未反応ガスを循環させて再利用する方法を用いる場合と用いない場合で、反応器内のガス組成と、供給するガス組成との差は大きく異なる場合がある。また再利用する条件によってもその差は影響を受ける。
本発明においては、前述の要件(I)の如く、エチレンは、前記の(A)ガスとのモル比率が、前記の特定の範囲にあるガス組成の状態で供給されるので、エチレンが、遷移金属触媒と有機金属化合物とを含む、所謂、オレフィン重合用触媒に対して、過剰に供給される状態(拡散が終了する前のエチレン濃度の高い状態)が生じ難い。このためエチレンの重合が、ガス供給部付近であっても比較的マイルドに進行し、重合反応熱によるエチレン系重合体の融着が生じ難いと考えられる。このため、原料ガスの供給口付近であっても、また、前述の要件(II)の如く、[η]が4.5dl/g以上の様な高分子量の重合体が生成する条件であっても、重合体付着による閉塞が起こり難いのであろう。
即ち、前述の要件(I)及び(II)を設定することにより、超高分子量エチレン系重合体の長期安定的な製造の妨げとなるファウリングは起こり難くなり、前述の本発明の効果が奏される。
以下、本発明の製造方法について詳細に説明するが、本発明のエチレン系共重合体の製造に用いられるモノマー、触媒、その他反応に用いられる成分、製造プロセスと重合条件、本発明で製造される超高分子量エチレン系重合体及びその用途の順に説明する。
I.本発明のエチレン系重合体の製造に用いても良いモノマー
(α−オレフィン)
本発明において、エチレンと共重合しても良いα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキサン等の炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のα−オレフィンを例示することができる。α−オレフィンとしては、炭素数3〜10の直鎖状又は分岐状のα−オレフィンが好ましく、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンがより好ましく、得られる共重合体を用いた潤滑油の剪断安定性の点からプロピレンが最も好ましい。これらのα−オレフィンは1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(α―オレフィン以外の他のオレフィン)
本発明においては、エチレンとα−オレフィンに加えて、他の共重合可能なオレフィン性モノマーを用いて、共重合をおこなってもよい。該オレフィン性モノマーとしては、ポリエン、ビニル芳香族化合物、ビニル脂環式化合物、環状オレフィン等を挙げることができる。
ポリエンとしては、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,7−ノナジエン、1,8−ノナジエン、1,8−デカジエン、1,9−デカジエン、1,12−テトラデカジエン、1,13−テトラデカジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3−エチル−1,4−ヘキサジエン、3−エチル−1,5−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン、7−メチル−2,5−ノルボルナジエン、7−エチル−2,5−ノルボルナジエン、7−プロピル−2,5−ノルボルナジエン、7−ブチル−2,5−ノルボルナジエン、7−ペンチル−2,5−ノルボルナジエン、7−ヘキシル−2,5−ノルボルナジエン、7,7−ジメチル−2,5−ノルボルナジエン、7,7−メチルエチル−2,5−ノルボルナジエン、7−クロロ−2,5−ノルボルナジエン、7−ブロモ−2,5−ノルボルナジエン、7−フルオロ−2,5−ノルボルナジエン、7,7−ジクロロ−2,5−ノルボルナジエン、1−メチル−2,5−ノルボルナジエン、1−エチル−2,5−ノルボルナジエン、1−プロピル−2,5−ノルボルナジエン、1−ブチル−2,5−ノルボルナジエン、1−クロロ−2,5−ノルボルナジエン、1−ブロモ−2,5−ノルボルナジエン等を挙げることができる。
また、ポリエンとしては、下記の構造の化合物も挙げることができる。
Figure 2020125426
ポリエンは、1種以上用いられ、好ましくは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニルノルボルネン、ノルボルナジエンである。
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン等を挙げることがでる。また、ビニル脂環式化合物としては、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン等を挙げることができる。環状オレフィンとしては、シクロヘキセン、2−ノルボルネン等を挙げることができる。
((A)ガス)
(A)ガスは、水素、窒素、周期律表の18族元素及び飽和炭化水素ガスからなる群から選ばれる。水素は、オレフィンの重合反応では連鎖移動剤である。また、窒素、周期律表の18元素及び飽和炭化水素は、所謂、オレフィンの重合反応においては不活性ガスや溶媒としての例が知られている。前記の周期律表の18族元素の中では、ネオン、アルゴンが好ましい例として挙げることが出来る。また飽和化水素ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭素原子数1〜6の飽和炭化水素を挙げることが出来るが、前記の通り、高圧時においてもガス状であることが好ましい。このため、飽和炭化水素ガスのより好ましい具体例は、メタン、エタン、プロパンであり、より一層好ましくはメタンとエタンである。
但し、反応に使用されない(A)ガスは、連続重合重合プロセスなどでガスを循環(リサイクル)させながら利用すると、反応系中に経時的に蓄積してエチレンの含有率、分圧を必要以上に下げる場合が有る。このような場合は、ガスパージ等の操作で、(A)ガス濃度を下げる工程を併用することが必要な場合もある。
これらの(A)ガスの中でも、主として生産性の点から、水素が好ましく用いられる。
II.オレフィン重合用触媒
本発明では、オレフィン重合用触媒としては、遷移金属化合物と有機金属化合物とを組み合わせた触媒を用いることができる。このような触媒としては、例えば、国際公開2008/013144号パンフレットに記載の触媒、具体的には、
[A]マグネシウム、ハロゲン、チタンを含む固体状チタン触媒成分及び
[B]周期表の第1族、第2族及び第13族から選ばれる金属元素を含む有機金属化合物触媒成分、を含むオレフィン重合用触媒が挙げられる。これらの触媒の例を以下に詳しく述べる。
[固体状チタン触媒成分[A]]
上記のチタン、マグネシウム、ハロゲンを含む固体状チタン触媒成分[A]は、前述の特許文献1、特許文献2の他、特開昭56−811号公報、特開昭57−63310号公報、特開昭58−83006号公報、特開平3−706号公報、特開平2−255810号公報、特開平4−218509号公報等に記載されている固体状チタン触媒成分を例示することが出来る。このような固体状チタン触媒成分は、下記のようなマグネシウム化合物、チタン化合物や必要に応じて電子供与体を接触させて得ることが出来る。
<マグネシウム化合物>
マグネシウム化合物としては、具体的には、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム;
メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、フェノキシ塩化マグネシウム等のアルコキシマグネシウムハライド;
エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウム等のアルコキシマグネシウム;
フェノキシマグネシウム等のアリーロキシマグネシウム;
ステアリン酸マグネシウム等のマグネシウムのカルボン酸塩
等の公知のマグネシウム化合物を挙げることができる。
これらのマグネシウム化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。またこれらのマグネシウム化合物は、他の金属との錯化合物、複化合物あるいは他の金属化合物との混合物であってもよい。
これらの中ではハロゲンを含有するマグネシウム化合物が好ましく。ハロゲン化マグネシウム、特に塩化マグネシウムが好ましく用いられる。他に、エトキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウムも好ましく用いられる。また、該マグネシウム化合物は、他の物質から誘導されたもの、たとえばグリニャール試薬のような有機マグネシウム化合物とハロゲン化チタンやハロゲン化珪素、ハロゲン化アルコール等とを接触させて得られるものであってもよい。
<チタン化合物>
チタン化合物としては、たとえば一般式(1);
Ti(OR)4−g (1)
(一般式(1)中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、gは0≦g≦4である。)で示される4価のチタン化合物を挙げることができる。より具体的には、
TiCl、TiBr等のテトラハロゲン化チタン;
Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(O−n−C)Cl、Ti(OC)Br、Ti(O−isoC)Br等のトリハロゲン化アルコキシチタン;
Ti(OCHCl、Ti(OCCl等のジハロゲン化アルコキシチタン;
Ti(OCHCl、Ti(O−n−CCl、Ti(OCBr等のモノハロゲン化アルコキシチタン;
Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC、Ti(O−2−エチルヘキシル)等のテトラアルコキシチタン
等を挙げることができる。
これらの中で好ましいものは、テトラハロゲン化チタンであり、特に四塩化チタンが好ましい。これらのチタン化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<電子供与体>
本発明の固体状チタン触媒成分[A]は、公知の電子供与体やその置換体が含まれていても良い。電子供与体の好ましい例としては、芳香族カルボン酸エステル、脂環族カルボン酸エステル、複数の炭素原子を介して2個以上のエーテル結合を有する化合物、即ちポリエーテル化合物から選ばれる電子供与体(a)が挙げられる。
本発明の固体状チタン触媒成分[A]が電子供与体を含んでいると、得られるポリオレフィンの分子量を高く制御出来たり、分子量分布を制御することができる場合がある。
この様な芳香族カルボン酸エステルとしては、具体的には安息香酸エステル類、トルイル酸エステル等の芳香族カルボン酸モノエステルの他、フタル酸エステル類等の芳香族多価カルボン酸エステルが挙げられる。これらの中でも芳香族モノカルボン酸エステルが好ましく、具体的には安息香酸エチル、安息香酸イソブチル、安息香酸へキシル。p-トルイル酸メチル、p-トルイル酸エチルなどが挙げられる。
また前記ポリエーテル化合物としては、より具体的には以下の一般式(2)で表わされる化合物が挙げられる。
Figure 2020125426
なお、上記一般式(2)において、mは1≦m≦10の整数、より好ましくは3≦m≦10の整数であり、R11〜R36は、それぞれ独立に、水素原子、あるいは炭素、水素、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、硫黄、リン、ホウ素及びケイ素から選択される少なくとも1種の元素を有する置換基である。
mが2以上である場合、複数個存在するR11及びR12は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。任意のR11〜R36、好ましくはR11及びR12は共同してベンゼン環以外の環を形成していてもよい。
この様な化合物の一部の具体例としては、
2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、
2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、
2−シクロヘキシル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、
2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、
2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、
2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、
2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、
2,2−ジイソブチル−1,3−ジブトキシプロパン、
2,2−ジ−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、
2,2−ジネオペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、
2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、
2−イソペンチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、
2−シクロヘキシル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、
2−メチル−2−n−プロピル−1,3−ジエトキシプロパン、
2,−2−ジエチル−1,3−ジエトキシプロパン
等の2置換ジアルコキシプロパン類
2−メトキシメチル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、
2−シクロヘキシル−2−エトキシメチル−1,3−ジエトキシプロパン、
2−シクロヘキシル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシプロパン
等のトリアルコキシアルカン類、
2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシ−シクロヘキサン、
2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、
2−シクロヘキシル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、
2−イソプロピル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、
2−イソブチル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、
2−シクロヘキシル−2−エトキシメチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、
2−エトキシメチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン、
2−イソブチル−2−エトキシメチル−1,3−ジメトキシシクロヘキサン
等のジアルコキシシクロアルカン
等を例示することができる。
これらの中でも、特に、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソペンチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−n−プロピル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジエトキシプロパンが好ましい。
これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環族カルボン酸エステル化合物としては、下記一般式(3)で表される。
Figure 2020125426
一般式(3)において、nは、5〜10の整数、好ましくは5〜7の整数であり、特に好ましくは6である。またCは、炭素原子を表わす。
及びRはそれぞれ独立にCOOR又はRであり、R及びRのうちの少なくとも1つはCOORである。
環状骨格中の炭素原子間結合は、すべてが単結合であることが好ましいが、環状骨格中のC−C結合以外のいずれかの単結合は、二重結合に置き換えられていてもよい。
複数個あるRは、それぞれ独立に、炭素原子数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜8、更に好ましくは4〜8、特に好ましくは4〜6の1価の炭化水素基である。この炭化水素基としては、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等が挙げられ、中でもn−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基が好ましく、更にはn−ブチル基、イソブチル基が好ましい。
複数個あるRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、窒素含有基、酸素含有基、リン含有基、ハロゲン含有基及びケイ素含有基から選ばれる原子又は基である。
Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基が好ましく、この炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基、オクチル基等の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。中でも脂肪族炭化水素基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基が好ましい。
またRは、互いに結合して環を形成していてもよく、Rが互いに結合して形成される環の骨格中には二重結合が含まれていてもよく、該環の骨格中に、COORが結合したCを2つ以上含む場合は、該環の骨格をなす炭素原子の数は5〜10である。
このような環の骨格としては、ノルボルナン骨格、テトラシクロドデセン骨格等が挙げられる。
また複数個あるRは、カルボン酸エステル基、アルコキシ基、シロキシ基、アルデヒド基やアセチル基等のカルボニル構造含有基であってもよく、これらの置換基には、炭化水素基1個以上を含んでいることが好ましい。
このような脂環族エステル化合物の好ましい例としては、
3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステル、
3−メチル−6−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステル
シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステル
等が挙げられる。
上記のようなジエステル構造を持つ化合物には、一般式(3)における複数のCOOR基に由来するシス、トランス等の異性体が存在するが、どの構造であっても本発明の目的に合致する効果を有する。重合活性の観点等からは、特にトランス体の含有率が高いことが好ましい。
本発明においては、上記の芳香族カルボン酸エステル、脂環族カルボン酸エステル、エーテル化合物の中でも、芳香族モノエステル、脂環族多価エステル及びエーテル化合物が好ましく、より好ましくはエーテル化合物が好ましい。エーテル化合物の中では1,3−ジエーテル類が好ましく、特に、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソペンチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)1,3−ジメトキシプロパンが好ましい。
これら上記の芳香族カルボン酸エステル、脂環族カルボン酸エステル、エーテル化合物等の電子供与体(a)は、単独で用いてもよく2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また上記の電子供与体は、固体状チタン触媒成分[A]を調製する過程で形成されてもよい。具体的にはエステル化合物を例とした場合、固体状チタン触媒成分[A]を調製する際に、上記エステルに対応する無水カルボン酸やカルボン酸ハライドと、対応するアルコールとが実質的に接触する工程を設けることで、上記エステル化合物を固体状チタン触媒成分中に含有させることもできる。
本発明で用いられる固体状チタン触媒成分[A]の調製には、公知の方法を制限無く使用することができる。具体的な好ましい方法としては、たとえば以下の(P−1)〜(P−4)の方法を挙げることができる。
(P−1)マグネシウム化合物及びアルコール等の電子供与体からなる固体状付加物と、電子供与体(a)と、液状状態チタン化合物とを、不活性炭化水素溶媒共存下、懸濁状態で接触させる方法。
(P−2)マグネシウム化合物及びアルコール等の電子供与体からなる固体状付加物と、電子供与体(a)と、液状状態のチタン化合物とを、複数回に分けて接触させる方法。
(P−3)マグネシウム化合物及びアルコール等の電子供与体からなる固体状付加物と、電子供与体(a)と、液状状態のチタン化合物とを、不活性炭化水素溶媒共存下、懸濁状態で接触させ、且つ複数回に分けて接触させる方法。
(P−4)マグネシウム化合物及びアルコール等の電子供与体からなる液状状態のマグネシウム化合物と、液状状態のチタン化合物と、電子供与体(a)とを接触させる方法。
好ましい反応温度は、−30℃〜150℃、より好ましくは−25℃〜130℃、更に好ましくは−25〜120℃の範囲である。
また上記の固体状チタン触媒成分の製造には、必要に応じて公知の媒体の存在下に行うことも出来る。上記の媒体としては、やや極性を有するトルエンやo−ジクロロトルエン等の芳香族炭化水素やヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の公知の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素化合物が挙げられるが、これらの中では脂肪族炭化水素が好ましい例として挙げられる。
本発明で用いられる固体状チタン触媒成分[A]において、ハロゲン/チタン(原子比)(すなわち、ハロゲン原子のモル数/チタン原子のモル数)は、2〜100、好ましくは4〜90であることが望ましい。
マグネシウム/チタン(原子比)(すなわち、マグネシウム原子のモル数/チタン原子のモル数)は、2〜100、好ましくは4〜50であることが望ましい。
電子供与体(a)/チタン(モル比)(すなわち、芳香族カルボン酸エステル、脂環族カルボン酸エステル、ポリエーテル化合物から選ばれる電子供与体のモル数/チタン原子のモル数)は、0〜100、好ましくは0.2〜10であることが望ましい。
[有機金属化合物触媒成分[B]]
前述のオレフィン重合用触媒は、
上記の本発明に係る固体状チタン触媒成分[A]と、
周期表の第1族、第2族及び第13族から選ばれる金属元素を含む有機金属化合物触媒成分[B]とを含むことを特徴としている。
有機金属化合物触媒成分[B]としては、第13族金属を含む化合物、たとえば、有機アルミニウム化合物、第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、第2族金属の有機金属化合物等を用いることができる。これらの中でも有機アルミニウム化合物が好ましい。
有機金属化合物触媒成分[B]としては具体的には、前述の公知文献に詳細な記載があるが、このような有機金属化合物触媒成分[B]としては、たとえば一般式(4)、
AlX3−n (4)
(一般式(4)中、Rは炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、Xはハロゲン又は水素であり、nは1≦n≦3である)で示される有機アルミニウム化合物を例示することができる。上記一般式(4)において、Rは炭素原子数1〜12の炭化水素基、たとえばアルキル基、シクロアルキル基又はアリ−ル基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基等である。この中でもn=3のトリアルキルアルミニウム、特に、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が好ましい。これらの化合物は、2種以上混合して用いることもできる。
[触媒成分[C]]
また、オレフィン重合用触媒は、上記の有機金属化合物触媒成分[B]と共に、必要に応じて公知の触媒成分[C]を含んでいてもよい。触媒成分[C]として好ましくは、有機ケイ素化合物が挙げられる。この有機ケイ素化合物としては、たとえば以下の一般式(5)で表される化合物を例示できる。
Si(OR’)4−n (5)
一般式(5)中、R及びR’は炭化水素基であり、nは0<n<4の整数である。上記のような一般式(5)で示される有機ケイ素化合物の好ましい具体例としてはビニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられる。
また、国際公開第2004/016662号パンフレットに記載されている以下の一般式(6)で表されるシラン化合物も前記有機ケイ素化合物の好ましい例である。
Si(OR(NR) (6)
一般式(6)中、Rは、炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、Rとしては、炭素原子数1〜6の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基等が挙げられ、特に好ましくは炭素原子数2〜6の炭化水素基が挙げられる。具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
また一般式(6)中、Rは、炭素原子数1〜12の炭化水素基又は水素であり、Rとしては、炭素原子数1〜12の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基又は水素等が挙げられる。具体例としては水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
また一般式(6)中、Rは、炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、Rとしては、炭素原子数1〜12の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基又は水素等が挙げられる。具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
上記一般式(6)で表される化合物の具体例としては、
ジメチルアミノトリエトキシシラン、
ジエチルアミノトリエトキシシラン、
ジエチルアミノトリメトキシシラン、
ジエチルアミノトリエトキシシラン、
ジエチルアミノトリn−プロポキシシラン、
ジn−プロピルアミノトリエトキシシラン、
メチルn−プロピルアミノトリエトキシシラン、
t−ブチルアミノトリエトキシシラン、
エチルn−プロピルアミノトリエトキシシラン、
エチルiso−プロピルアミノトリエトキシシラン、
メチルエチルアミノトリエトキシシラン
が挙げられる。
触媒成分[C]として他に有用な化合物としては、前記固体状チタン触媒成分[A]の調製の際に使用することができる前記芳香族カルボン酸エステル、脂環族カルボン酸エステル及び/又は複数の炭素原子を介して2個以上のエーテル結合を有する化合物の例として記載したポリエーテル化合物も好ましい例として挙げられる。
これらのポリエーテル化合物の中でも、1,3−ジエーテル類が好ましく、特に、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソペンチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−n−プロピル−1,3−ジエトキシプロパン、2,−2−ジエチル−1,3−ジエトキシプロパンが好ましい。
これらの触媒成分[C]は、単独で用いることも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また本発明で使用することができるオレフィン重合触媒としては、これらの他にも特開2004−168744号公報等に開示されているメタロセン化合物や、特開2000−128931号公報、特開2004−646097号公報、特開2005−2244号公報、特開2005−2086号公報等に開示されているフェノキシイミン化合物等を配位子とする有機金属錯体と有機金属化合物触媒成分とを含むオレフィン重合用触媒も好ましいオレフィン重合用触媒として例示できる。
これらの中でも、ハロゲンを含み、マグネシウム化合物成分、チタン化合物成分、芳香族カルボン酸エステルを含む固体状チタン触媒成分を用いるエチレン系重合体の重合方法が好ましい例となる。特に好ましくは、マグネシウム化合物成分、チタン化合物成分、芳香族モノカルボン酸エステルを含む固体状チタン触媒成分を用いるエチレン系重合体の重合方法である。
III.その他反応に用いられる成分
本発明では、重合反応は、通常、炭化水素媒体中で実施される。このような炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ガソリン、灯油、軽油等の石油留分等を挙げることができる。さらに、重合に用いるオレフィンを用いることもできる。
IV.製造プロセスと重合条件
本発明において、エチレン単独又はエチレンと前記のα−オレフィン及び/又は他のオレフィンとを(共)重合させてなる超高分子量エチレン系重合体の製造は、前記の遷移金属化合物と前記の有機金属化合物との存在下に、エチレン単独又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを前記の要件(I)及び(II)を満たす条件で(共)重合することによって実施する以外は、従来公知の超高分子量エチレン系重合体の製造方法と同様の方法を適宜採用可能である。以下、各条件等について説明する。
本発明の超高分子量エチレン系重合体の重合形式は、バッチ重合、連続重合、セミ連続重合の何れの形式も採用できるが、本発明の製造方法は、とりわけ連続重合プロセスを用いた場合に有用である。
本発明の重合形態は、バルク重合法、溶解重合、懸濁重合等の液相重合法あるいは気相重合法のいずれにおいても実施できる。
重合を行う反応装置は、SUS製等の反応器に、撹拌翼を有する回転可能な撹拌軸が備えられ、該撹拌翼としては、傾斜パドル翼、タービン翼、アンカー翼、ヘリカルリボン翼、大型の板翼等が例示される。
本発明に用いられる反応器、反応装置のサイズは、好ましくは50リットル〜1000立方メートルの範囲であり、より好ましくは、60リットル〜800立方メートルの範囲であり、更に好ましくは、70リットル〜800立方メートルの範囲である。
(重合温度)
本発明において、超高分子量エチレン系重合体を製造する際の好ましい重合温度は−20〜200℃、より好ましくは0〜150℃、特に好ましくは20〜100℃である。
前述の触媒の種類に影響を受けることもあるが、この様な範囲の温度であれば、高い重合活性で、所望の超高分子量エチレン系重合体を生産することが出来る傾向がある。
(重合圧力)
本発明において、超高分子量エチレン系重合体を製造する際の重合圧力(P)は、0.1〜10MPaが好ましく、より好ましくは0.2〜5Mpa、特に好ましくは0.3〜2Mpaである。
この様な範囲の重合圧力であれば、高い重合活性で、所望の超高分子量エチレン系共重合体を生産することが出来る傾向がある。
(原料の供給について)
[A]ガスとして連鎖移動剤としても機能する水素を用いる場合は、[A]ガスである水素とエチレンとの使用量のモル比は、好ましくは0〜50である。より好ましい下限値は1であり、更に好ましい下限値は2である。一方、より好ましい上限値は45であり、更に好ましくは40である。水素の使用量が多くなりすぎると、生成するエチレン重合体の分子量が上がらない、即ち[η]が高まらない可能性が有る。好ましい滞留時間は、10分から2時間であり、より好ましくは、15分〜1.5時間であり、更に好ましくは20分〜1時間である。エチレン系共重合体の製造方法が連続重合の場合、滞留時間をこの重合時間と見做すことも出来る。
オレフィン重合用触媒として、前述した、国際公開2008/013144号パンフレットに記載の前記固体状チタン触媒成分[A]及び前記有機金属化合物触媒成分[B]を含むオレフィン重合用触媒を用いる場合、
前記固体状チタン触媒成分[A]は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常は0.0001ミリモル〜0.5ミリモル、好ましくは0.005ミリモル〜0.1ミリモルの量で用いられる。また、前記有機金属化合物触媒成分[B]は、重合系中の予備重合触媒成分中のチタン原子1モルに対し、通常1モル〜2000モル、好ましくは5モル〜500モルとなるような量で用いられる。前記触媒成分[C]を使用する場合は、前記有機金属化合物触媒成分[B]に対して、0.001モル〜50モル、好ましくは0.01モル〜30モル、特に好ましくは0.05モル〜20モルの量で用いられる。但し、前述の触媒の各成分の使用量は、同文献でいう予備重合を除く本重合の場合の使用量であり、予備重合等を行なう場合の触媒の使用量等の各条件については、同文献に記載の通りである。
(反応装置の一態様)
以上説明した超高分子量エチレン系重合体の製造は、例えば、図1に示される反応装置にて行なわれる。
図1で示される反応装置は、液相部(液相)と気相部(気相)とを有し、反応器内に、撹拌翼を有する回転可能な撹拌軸が備えられている反応装置である。また図1の反応装置は、未反応のガスを循環させて再利用するラインが設けられており、原料ガスは、この未反応のガスの全部又は一部と共に、反応装置に供給される。
図1の反応装置では、エチレンと水素等の前記(A)ガスを、50/50〜97/30のモル比、好ましくは60/40〜97/3のモル比、より好ましくは、70/30〜96/4のモル比で供給する。エチレンと、当該(A)ガスとのモル比が50/50より小さいと、生産性が十分でない場合が有る。一方、エチレンと、当該(A)ガスとのモル比が97/3より大きいと、ファウリングが発生する場合が有る。
図1の反応装置では、前記供給部の(A)ガスとエチレンとのモル比と、当該反応装置の気相部における(A)ガスとエチレンとのモル比との差を、好ましくは0.01〜0.12、より好ましい下限値は0.02であり、更に好ましい下限値は0.04である。一方、より好ましい上限値は0.11であり、更に好ましくは0.10である。前記の範囲に両ガス組成を制御することによって、より効果的にファウリングを抑制できる傾向がある。
図1の反応装置では、未反応のガスを循環させて再利用するラインが設けられている。(以下、この再利用される未反応ガスを循環ガスともいう)。この循環ガスラインには、熱交換器、バルブ、コンプレッサが設けられており、原料エチレンや水素ガス等の前記(A)ガスは、当該熱交換器及びコンプレッサにより熱量及び圧力を調整された前記の循環ガスの一部、若しくは全部と共に、反応器内に供給される。このような方法を取ることによって、容易に供給ガス組成を好ましい範囲に制御することが出来ると共に、効率的にファウリングを防止することも可能となる。
前記の通り、前記(A)ガスのうち、窒素や18族元素、飽和炭化水素ガスは、不活性ガスであり、水素も重合には寄与しないので、未反応ガスをリサイクルする連続重合法が適用される図1のような反応装置においては、これらのガスは経時的に反応系内に蓄積する場合がある。前記の蓄積が過ぎると、エチレンや、必要に応じて用いられるα−オレフィンの濃度が相対的に低下し、重合効率が低下してしまう場合がある。このような場合は、前記の未反応ガスを、定期的に一部若しくは全部を除去してしまい、エチレン濃度、α−オレフィン濃度を適切な値に維持することが望ましい。
これらのガスは、前述した循環ガスとして前述のオレフィンと共に反応装置に導入される。その方法は一般的にはフランジ部分に設けた供給口から直接導入する方法が挙げられるが、図1の反応装置のように溶液重合や懸濁重合の様な液相重合であれば、液相部の他、気相部に導入することが出来る。この場合、図1に示すように、液相部の近傍に供給口を配置することが好ましい。近傍とは、反応装置の大きさにもよるが、通常は、液相部から50cm以内、より好ましくは30cm以内であることが好ましい。また、前記のガスは、導入管を経由して反応系内の液相部に直接導入することも好ましい態様の一つである。このような場合、導入口近くに粒子の付着が起こり始めたとしても。液流や、懸濁粒子の流れが付着物に衝突して、付着を阻害する効果が期待できる。
本発明の超高分子量エチレン系重合体の製造方法は、図1に示すような溶媒を用いた懸濁連続重合で行われることが多い。この場合、長期連続運転可能な条件を選定することが重要である。これらのことを考慮すると、前記の条件の他、反応系のポリマー濃度を50〜500g/lの範囲で行うことが好ましい、より好ましくは100〜450g/l、更に好ましくは150〜400g/lである。前記のポリマー濃度の範囲であれば、ファウリング等の弊害を起し難く、長期間安定して運転を行う上で有利である。
V.本発明で製造される超高分子量エチレン系重合体及びその用途
本発明の超高分子量エチレン系重合体の製造方法で得られる超高分子量エチレン系重合体は、エチレンの単独重合体、又はエチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテンもしくは3−メチル−1−ペンテン等の炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のα−オレフィンとの共重合体からなる。
これらのうち、エチレンの単独重合体、又はエチレンと上記のα−オレフィンとの共重合体であって、エチレンが50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに90%質量以上であるエチレンを主成分とする重合体であると、該超高分子量エチレン系重合体を用いて得られる微多孔膜の透過性及びシャットダウン特性に優れるので好ましい。
前記超高分子量エチレン重合体の、ASTM D4020に準じて、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]の下限は、4.5dl/g、好ましくは5.0dl/g、さらに好ましくは6.0dl/g、より好ましくは8.0dl/g、特に好ましくは10.0dl/gである。極限粘度[η]の上限は、35dl/g、好ましくは30dl/g、さらに好ましくは26dl/g、より好ましくは23dl/g、特に好ましくは20dl/gである。極限粘度[η]が4.5dl/gより小さい値であると、該ポリオレフィン樹脂組成物から得られるフィルム、微多孔膜の強度が低下する。また、極限粘度[η]が35dl/gより大きいと、当該超高分子量エチレン重合体を含有するフィルム、微多孔膜の成形自体が困難となる。
したがって、前記超高分子量エチレン重合体の極限粘度[η]が、上記範囲内である場合、超高分子量エチレン重合体が持つ機械的特性及び寸法安定性をより効果的にフィルム、微多孔膜に付与することができる。
<超高分子量エチレン重合体を用いたフィルム>
本発明の方法で得られる超高分子量ポリエチレンはフィルムに成形できる。具体的には、プレス成形法、押出成形法、インフレーション法、カレンダー法等の公知の方法でフィルム成形することにより製造できる。超高分子量ポリエチレンは、そのまま利用することも出来るし、公知の溶媒を用いてゲル状態にしてから成型することも可能である。このような成形は公知の方法を制限なく用いることが出来る。
<超高分子量エチレン重合体を用いた微多孔膜>
本発明の方法で得られる超高分子量ポリエチレンは微多孔膜に成型することが出来る、前記微多孔膜は、公知の方法で製造することが出来る。具体的には、下記のような方法を挙げることが出来る。
a)前記超高分子量ポリエチレン及び可塑剤(溶媒と言うこともある)を溶融混練し、ポリオレフィン組成物を調製する工程、
b)ポリオレフィン組成物をダイより押し出し、冷却してゲル状シートを形成する工程、
c)延伸・可塑剤除去工程
d)得られた膜を乾燥、熱処理する工程
以下、各工程について説明する。
a)ポリオレフィン組成物の調製工程
前記ポリオレフィン樹脂組成物及び可塑剤を溶融混練し、微多孔膜用、特にバッテリーセパレータ用に好適なポリオレフィン組成物を調製する。
可塑剤としては、液状、又は、固体状で高温時に液状になるもので、かつ、後述の洗浄溶媒で抽出可能なものであれば、公知のものを使用できる。
例えば、室温で液状の可塑剤を用いた場合、比較的高倍率の延伸が可能となる傾向にある。このような液状の可塑剤としては、特に限定されないが、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、及び沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルを用いることができる。液状の可塑剤含有量が安定なゲル状シートを得るためには、流動パラフィンのような不揮発性の液状の可塑剤を用いるのが好ましい。また、本発明において、固体状で高温時に液状になる可塑剤を用いることも好ましい。加熱溶融混練状態においてはポリオレフィン樹脂組成物と混和状態になるが、室温では固体状の可塑剤を液状の可塑剤に混合してもよい。このような可塑剤としては、例えば、常温で固体であるパラフィンワックス、ステアリルアルコール及びセリルアルコール等の高級脂肪族アルコールが挙げられる。
溶融混練の方法は特に限定されないが、通常は二軸押出機中で均一に混練することにより行う。この方法は、ポリオレフィンの高濃度溶液を調製するのに適する。溶融温度は通常、160〜300℃であり、180〜280℃であるのが好ましい。
ポリオレフィン組成物中、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤との配合割合は、両者の合計を100質量部として、ポリオレフィン樹脂組成物が1〜50質量部、好ましくは20〜40質量部である。
b)シートの形成工程
溶融混練したポリオレフィン組成物を直接に又は別の押出機を介して、或いは一旦冷却してペレット化した後再度押出機を介してダイから押し出す。ダイとしては、通常はシート用ダイを用いるが、二重円筒状の中空状ダイ、インフレーションダイ等も用いることができる。この押し出し時の溶融温度は通常、140〜280℃である。
このようにしてダイから押し出した溶液を冷却することにより成形物を形成する。このようにしてポリオレフィン相が可塑剤によってミクロ相分離された相分離構造を固定化することができる。なお、成形物としては、ゲル状のものが好ましい。
c)延伸・可塑剤除去工程
次いで、得られたシートを延伸した後液体溶剤を抽出して除去するか、シートから液体溶剤を抽出して除去した後延伸するか、又はシートを延伸した後液体溶剤を抽出して除去しさらに延伸する。なお、シートとしては、ゲル状のものが好ましい。
延伸は、シートを加熱後、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法又はこれらの方法の組合せによって所定の倍率で行う。延伸は、一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。また二軸延伸の場合は、同時二軸延伸、逐次延伸又は多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよいが、特に同時二軸延伸が好ましい。延伸により機械的強度が向上する。
延伸倍率は、シートの厚みによって異なるが、一軸延伸を行う場合は2倍以上とすることが好ましく、3〜30倍とすることがより好ましい。二軸延伸では、いずれの方向でも少なくとも3倍以上とし、面倍率で9倍以上とするのが好ましく、面倍率で25倍以上とするのがより好ましい。面倍率で9倍以上とすることにより、突刺強度が向上する。延伸温度は通常、100〜140℃、好ましくは110〜120℃の範囲で行う。
可塑剤の除去(洗浄)には洗浄溶媒を用いる。ポリオレフィン相は、可塑剤と相分離しているので、可塑剤を抽出して除去すると多孔質の膜が得られる。可塑剤の除去(洗浄)は、公知の洗浄溶媒を用いて行うことができる。公知の洗浄溶媒としては、例えば塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、三フッ化エタン等のフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン等の易揮発性溶媒が挙げられる。
洗浄方法は、延伸後の膜又はシートを洗浄溶媒に浸漬する方法、延伸後の膜又はシートに洗浄溶媒をシャワーする方法、又はこれらの組合せによる方法等により行うことができる。洗浄溶媒による洗浄は、残留した可塑剤がその添加量に対して1質量部未満になるまで行うのが好ましい。
d)膜の乾燥工程
延伸及び可塑剤除去により得られた膜を、加熱乾燥法又は風乾法等により乾燥することができる。乾燥温度は、超高分子量エチレン重合体(A)の結晶分散温度以下の温度であるのが好ましく、特に結晶分散温度より5℃以上低い温度であるのが好ましい。
乾燥処理により、本発明の目的を損なわない範囲で膜が乾燥されていれば特に問題はないが、乾燥後の膜重量100質量部に対して、微多孔膜中に残存する洗浄溶媒の含有量を5質量部以下にすることが好ましく、3質量部以下にすることがより好ましい。乾燥が不十分で膜中に洗浄溶媒が多量に残存していると、後の熱固定で空孔率が低下し、透過性が悪化するので好ましくない。
さらに乾燥後、延伸時に作用した応力残留による微多孔膜の延伸方向への収縮を防ぐことを目的として、熱固定を行うことが好ましい。この熱固定の好ましい温度は80℃以上150℃未満である。熱固定後の微多孔膜の長さが10〜50%減少する程度熱収縮させる方法(以下、この方法を「緩和」という。)、延伸方向の寸法が変化しないように固定する方法等が挙げられる。
本発明を以下の実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例等によって何ら制限されるものではない。
実施例1
温度制御のできるジャケットを付した内容積155リットルの攪拌機付耐圧反応器に、未反応ガス等を循環するライン(熱交換器、回収ガスを循環させるコンプレッサー及びバルブを具備)、溶媒フィードライン、原料ガスのフィードライン、触媒のフィードライン、及び内容物抜出ラインを付した装置を用いて、エチレンと水素とを、公知のMg化合物担持固体状チタン触媒(WO2008/013144の比較例1に記載の触媒)を用いて、未反応ガス(エチレン、水素)を循環利用させながら下記条件で定常状態となる様にエチレンの連続重合を行った。その結果、極限粘度[η]が約5dl/gの超高分子量エチレン重合体を得た。なお、超高分子量エチレン重合体の極限粘度[η]は、ASTM D4020に準じて、135℃のデカリン中で測定した極限粘度を[η]とした。
(重合条件)
・重合温度:75℃
・各成分の供給速度
ヘキサン:36.5リットル/時間
触媒(WO2008/013144の比較例1と同様の成分):チタン原子として0.9mmol/時間
トリイソブチルアルミニウム:11.25mmol/時間
エチレン:8.8kg/時間
水素:60NL/時間
圧力:0.50MPa
抜出量:44.3リットル/時間
その際のガス組成は以下の通りとなった。
(ガス組成)
水素/エチレン比:0.17m.r.(気相部)
エチレン/水素比:5.88m.r.(気相部)
水素/エチレン比:0.10m.r.(フィードライン)
エチレン/水素比:10.1m.r.(フィードライン)
エチレン濃度:91.0mol%(フィードライン)
前記の条件で超高分子量エチレン重合体の連続重合を40時間行なってもフィードライン付近の付着物は検出されなかった。
比較例1
循環ラインのバルブを閉め、下記の条件で運転して極限粘度[η]が約5dl/gの超高分子量エチレン重合体を得た以外は、実施例1と同様にしてエチレンの連続重合を行った。結果として、エチレンフィードライン付近に塊の付着が顕著な傾向があった。
(重合温度)
・重合温度:75℃
・各成分の供給速度
ヘキサン:36.5リットル/時間
触媒(WO2008/013144の実施例1と同様の成分):0.9mmol/時間
トリイソブチルアルミニウム:11.25mmol/時間
エチレン:8.8kg/時間
水素:60NL/時間
圧力:0.50MPa
抜出量:44.3リットル/時間
その際のガス組成は以下の通りとなった。
(ガス組成)
水素/エチレン比:0.17m.r.(気相部)
エチレン/水素比:5.88m.r.(気相部)
水素/エチレン比:0.005m.r.(フィードライン)
エチレン/水素比:200m.r.(フィードライン)
エチレン濃度:99.5mol%(フィードライン)
実施例1と比較例1との対比により、フィードラインのエチレン濃度が実施例1の方が低い。これは、本発明のポイントであるフィードラインのエチレン濃度がファウリング抑制原因の一つである可能性を示唆していると考えられる。
以上より、本発明の超高分子量ポリエチレンの製造方法によれば、連続重合時のファウリング起因のトラブルによる運転停止が起こり難いと考えられる。

Claims (3)

  1. 遷移金属化合物と有機金属化合物との存在下に、エチレン単独又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを以下の要件(I)及び(II)を満たす条件で重合することを特徴とする超高分子量エチレン系重合体の製造方法、
    (I)遷移金属化合物と有機金属化合物との存在下、エチレンと、(A)水素、窒素、周期律表の18族元素及び飽和炭化水素ガスからなる群から選ばれるガス〔(A)ガス〕とが、50/50〜97/3のモル比で含まれるガスを供給する工程を有する、
    (II)エチレン系重合体の極限粘度[η]が4.5dl/g以上、20dl/g以下である。
  2. 液相部と気相部とを有する反応装置にて超高分子量エチレン系重合体の製造を行い、前記供給する前記(A)ガスとエチレンとのモル比と、
    前記気相部の前記(A)ガスとエチレンとのモル比との差が、
    0.01〜0.120であることを特徴とする請求項1に記載の超高分子量エチレン系重合体の製造方法。
  3. 前記、供給するエチレンと(A)ガスが、前記液相中、又は液相近傍に供給されることを特徴とする請求項2に記載の超高分子量エチレン系重合体の製造方法。
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