JP5762399B2 - 生体親和性を有する高分子ブロックと細胞からなる細胞構造体 - Google Patents
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Description
間葉系幹細胞をシート状に培養した培養細胞シートと生分解性物質をシート状に形成した生分解シートとを積層してなる骨再生シート(特許文献1)が提案されている。また、多孔質シート上に間葉系細胞から分化させた間葉系組織前駆体細胞と細胞外基質とが付着している間葉系組織再生誘導用シートもある(特許文献2)。これらの発明は培養骨芽細胞の付着したシートを体内に入れ、体内での膜性骨化によって骨芽細胞から皮質骨を形成させる方法である。しかしながら、骨芽細胞様細胞は積層して培養することができないという問題があるため骨芽細胞層を用いたシートでは細胞層の厚さが100μmを超える再生シートを提供できなかった。その後、特許文献3では、培養手法の開発・最適化によって、200μm以上の厚さのシートを形成できるとあるが、実際のところは210μm程度までの厚みしか提供できていない。
〔1〕 生体親和性を有する高分子ブロックと細胞とを含み、該複数個の細胞間の隙間に複数個の該高分子ブロックが配置されている、細胞構造体。
〔2〕 該高分子ブロックの大きさが1μm以上700μm以下である、〔1〕に記載の細胞構造体。
〔3〕 該高分子ブロックの大きさが10μm以上300μm以下である〔2〕に記載の細胞構造体。
〔4〕 厚さ又は直径が400μm以上3cm以下である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の細胞構造体。
〔6〕 前記高分子ブロックと前記細胞との比率が、細胞1個当り0.0000001μg以上1.0μg以下である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の細胞構造体。
〔7〕 生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートすることによって製造される、〔1〕から〔6〕の何れかに記載の細胞構造体。
〔8〕 生体親和性を有する高分子が、生分解性材料である、〔1〕から〔7〕の何れかに記載の細胞構造体。
〔9〕 生体親和性を有する高分子が、ポリペプチド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGA、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、又はキトサンである、〔1〕から〔8〕の何れかに記載の細胞構造体。
〔11〕 生体親和性を有する高分子が架橋されている、〔1〕から〔10〕の何れかに記載の細胞構造体。
〔12〕 架橋がアルデヒド類、縮合剤、又は酵素により施される、〔11〕に記載の細胞構造体。
〔13〕 生体親和性を有する高分子が、遺伝子組み換えゼラチンである、〔1〕から〔12〕の何れかに記載の細胞構造体。
〔14〕 前記生体親和性を有する高分子が、細胞接着性シグナルを一分子中に2以上有する〔13〕に記載の細胞構造体。
式:A−[(Gly−X−Y)n]m−B
(式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される、〔13〕に記載の細胞構造体。
式:Gly-Ala-Pro-[(Gly−X−Y)63]3−Gly
(式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される、〔13〕又は〔15〕に記載の細胞構造体。
〔18〕 生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートする工程を含む、〔1〕から〔17〕の何れかに記載の細胞構造体の製造方法。
〔19〕 生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートする工程において培地交換を行う、〔18〕に記載の方法。
〔20〕 生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートする工程において、培地を分化培地又は増殖培地に交換する、〔19〕に記載の方法。
〔22〕 〔18〕から〔21〕の何れかに記載の方法により製造される、細胞構造体。
〔23〕 〔1〕から〔17〕の何れかに記載の細胞構造体の複数個を融合することによって得られる、細胞構造体。
〔24〕 〔1〕から〔17〕の何れかに記載の細胞構造体の複数個を融合する工程を含む、〔23〕に記載の細胞構造体の製造方法。
〔26〕 前記高分子ブロックの大きさが1μm以上700μm以下である、〔25〕に記載の細胞構造体の製造方法。
〔27〕 前記融合前の各細胞構造体の厚さ又は直径が10μm以上1cm以下であり、前記融合後の厚さ又は直径が400μm以上3cm以下である、〔25〕または〔26〕に記載の細胞構造体の製造方法。
〔29〕 前記第一の高分子ブロックの大きさが1μm以上700μm以下である、〔28〕に記載の細胞構造体の製造方法。
〔30〕 前記第二の高分子ブロックの大きさが1μm以上700μm以下である、〔28〕または〔29〕に記載の細胞構造体の製造方法。
〔32〕 〔25〕〜〔31〕のいずれかに記載の細胞構造体の製造方法により製造される、細胞構造体。
〔33〕 細胞移植、細胞培養または毒性評価用途に使用する、〔32〕に記載の細胞構造体。
本発明の細胞構造体は、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞とを含み、該複数個の細胞間の隙間に複数個の該高分子ブロックが配置されていることを特徴とするものである。実施態様として、生体親和性を有する、複数個の高分子ブロックと、複数個の細胞とを含み、該複数の細胞により形成される複数個の隙間の一部または全部に、一または複数個の前記高分子ブロックが配置されている細胞構造体が挙げられる。
(1−1)高分子材料
本発明で用いる生体親和性を有する高分子は、生体に親和性を有するものであれば、生体内で分解されるか否かは特に限定されないが、生分解性材料で構成されることが好ましい。非生分解性材料として具体的には、PTFE、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル、ステンレス、チタン、シリコーン、MPCから選択される少なくとも1つ以上から成る材料を挙げることができる。生分解性材料としては、具体的にはポリペプチド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGA、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサンから選択される少なくとも1つ以上からなる材料を挙げることができる。上記の中でも、ポリペプチドが特に好ましい。尚、これら高分子材料には細胞接着性を高める工夫がなされていてもよく、具体的な方法としては1.「基材表面に対する細胞接着基質(フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン)や細胞接着配列(アミノ酸一文字表記で現わされる、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列)ペプチドによるコーティング」、2.「基材表面のアミノ化、カチオン化」、3.「基材表面のプラズマ処理、コロナ放電による親水性処理」といった方法が利用され得る。
本発明で用いる高分子の「1/IOB」値を上記範囲とすることにより、親水性が高く、かつ、吸水性が高くなることから、栄養成分の保持に有効に作用し、結果として、本発明の細胞3次元構造体(モザイク細胞塊)における細胞の安定化・生存しやすさに寄与するものと推定される。
本発明で用いる高分子のGRAVY値を上記範囲とすることにより、親水性が高く、かつ、吸水性が高くなることから、栄養成分の保持に有効に作用し、結果として、本発明の細胞3次元構造体(モザイク細胞塊)における細胞の安定化・生存しやすさに寄与するものと推定される。
本発明で用いる生体親和性を有する高分子材料は、架橋されているものでもよいし、架橋されていないものでもよいが、架橋されているものが好ましい。架橋方法としては、熱架橋、化学架橋、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなど)による架橋、縮合剤(カルボジイミド、シアナミドなど)による架橋、酵素架橋、光架橋、UV架橋、疎水性相互作用、水素結合、イオン性相互作用など公知の方法を用いることができるが、グルタルアルデヒドを用いた架橋法、熱架橋法が好ましい。
のモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼなど、ヒト由来の血液凝固因子(Factor XIIIa、Haematologic Technologies, Inc.社)などが挙げられる。
本発明にかかる遺伝子組み換えゼラチンとは遺伝子組み換え技術により作られたゼラチン類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくは蛋白様物質を意味する。本発明で用いることができる遺伝子組み換えゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有するものが好ましい(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)。好ましくは、細胞接着シグナルを一分子中に2配列以上含まれている。本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンとしては、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンを用いることができ、例えばEP1014176A2、US6992172、WO2004-85473、WO2008/103041等に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンとして好ましいものは、以下の態様の遺伝子組み換えゼラチンである。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンはテロペプタイドを有さない。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンは天然コラーゲンをコードする核酸により調製された実質的に純粋なコラーゲン用材料である。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上(さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上)の相同性を有し、生体親和性を有するアミノ酸配列;
を有する遺伝子組み換えゼラチンである。
本発明では、上記した生体親和性を有する高分子からなるブロック(塊)を使用する。高分子ブロックの製造方法は特に限定されないが、例えば、高分子からなる固形物を粉砕機(ニューパワーミルなど)を用いて粉砕した後に、ふるいでサイズ分けすることにより所望のサイズのブロックを取得することができる。
本発明で用いる細胞は、本発明の細胞構造体の目的に応じて適宜選択することができ、その種類は特に限定されない。また、細胞は、細胞構造体の使用目的に応じて、1種でも、複数種の組合せて用いてもよい。使用する細胞として、好ましくは、動物細胞であり、より好ましくは脊椎動物由来細胞、特に好ましくはヒト由来細胞である。脊椎動物由来細胞(特に、ヒト由来細胞)の種類は、万能細胞、体性幹細胞、前駆細胞、又は成熟細胞の何れでもよい。万能細胞としては、例えば、ES細胞、GS細胞、又はiPS細胞を使用することができる。体性幹細胞としては、例えば、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞、骨髄由来細胞、心筋幹細胞、脂肪由来幹細胞、又は神経幹細胞を使用することができる。前駆細胞及び成熟細胞としては、例えば、皮膚、真皮、表皮、筋肉、心筋、神経、骨、軟骨、内皮、脳、上皮、心臓、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、口腔内、角膜、骨髄、臍帯血、羊膜、又は毛に由来する細胞を使用することができる。ヒト由来細胞としては、例えば、ES細胞、iPS細胞、MSC、軟骨細胞、骨芽細胞、骨芽前駆細胞、間充織細胞、筋芽細胞、心筋細胞、心筋芽細胞、神経細胞、肝細胞、ベータ細胞、線維芽細胞、角膜内皮細胞、血管内皮細胞、角膜上皮細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞、骨髄由来細胞、又は造血幹細胞を使用することができる。また、細胞の由来は、自家細胞又は他家細胞の何れでも構わない。複数種の細胞を組合せて使用する場合には、例えば、血管系の細胞と他の細胞が挙がられる。血管系の細胞とは、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、造血幹細胞等がある。血管系の細胞と他の細胞とを組合せることにより、血管を本発明の細胞構造体に誘導することができ、栄養、酸素等を供給することができる。
本発明においては、上記した生体親和性を有する高分子ブロックと上記した細胞とを用いて、複数個の細胞間の隙間に複数個の該高分子ブロックをモザイク状に3次元的に配置させることによって、外部から細胞3次元構造体の内部への栄養送達を可能とし、十分な厚みを有した細胞3次元構造体を形成することに成功した。同時に、細胞3次元構造体の外周部に存在する細胞の働きによって、細胞3次元構造体同士の自然融合を可能とした。
本発明の細胞構造体は、生体親和性を有した高分子材料からなる塊(「ブロック」)と、細胞とを交互に配置することにより製造できる。製造方法は特に限定されないが、好ましくは高分子ブロックを形成したのち、細胞を播種する方法である。具体的には、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートすることによって、本発明の細胞構造体を製造することができる。例えば、容器中、容器に保持される液体中で、細胞と、予め作製した生体親和性を有する高分子ブロックをモザイク状に配置する。配置の手段としては、自然凝集、自然落下、遠心、攪拌を用いることで、細胞と生体親和性基材からなるモザイク状の配列形成を、促進、制御することが好ましい。
(1)別々に調整したモザイク状細胞塊同士を融合させる、又は
(2)分化培地又は増殖培地下でボリュームアップさせる、
などの方法により所望の大きさの細胞構造体を製造することができる。融合の方法、ボリュームアップの方法は特に限定されない。
遺伝子組み換えゼラチン(リコンビナントゼラチン)として以下記載のCBE3を用意した(WO2008-103041に記載)。
CBE3
分子量:51.6kD
構造: GAP[(GXY)63]3G
アミノ酸数:571個
RGD配列:12個
イミノ酸含量:33%
ほぼ100%のアミノ酸がGXYの繰り返し構造である。CBE3のアミノ酸配列には、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインは含まれていない。CBE3はERGD配列を有している。
等電点:9.34、GRAVY値:-0.682、1/IOB値:0.323
GAP(GAPGLQGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGPAGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPP)3G
基材ブロックとして、リコンビナントゼラチンCBE3を用いて、不定形のμブロックを作製した。1000mgのリコンビナントゼラチンを9448μLの超純水に溶解し、1N HClを152μL添加後、終濃度1.0%となるように、25%グルタルアルデヒドを400μL添加し、50℃で3時間反応させ、架橋ゼラチンゲルを作製した。この架橋ゼラチンゲルを、1Lの0.2Mグリシン溶液へ浸漬し、40℃2時間振とうさせた。その後、架橋ゼラチンゲルを、5Lの超純水中で1時間振とう洗浄、超純水を新しい物へ置換し、再び洗浄1時間、を繰り返し、計6回洗浄した。洗浄後の架橋ゼラチンゲルを、−80℃で5時間凍結させた後、凍結乾燥機(EYELA、FDU−1000)で凍結乾燥を行った。得られた凍結乾燥体を、ニューパワーミル(大阪ケミカル、ニューパワーミルPM−2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で1分間×5回、計5分間の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25〜53μm及び53〜106μmのリコンビナントゼラチンμブロックを得た。
基材ブロックとして、天然ゼラチン(Nippi、ニッピゼラチン・ハイグレードゼラチンAPAT)を用いて、不定形のμブロックを作製した。1000mgの天然ゼラチンを9448μLの超純水に溶解し、1N HClを152μL添加後、終濃度1.0%となるように、25%グルタルアルデヒドを400μL添加し、50℃で3時間反応させ、架橋ゼラチンゲルを作製した。この架橋ゼラチンゲルを、1Lの0.2Mグリシン溶液へ浸漬し、40℃2時間振とうさせた。その後、架橋ゼラチンゲルを、5Lの超純水中で1時間振とう洗浄、超純水を新しい物へ置換し、再び洗浄1時間、を繰り返し、計6回洗浄した。洗浄後の架橋ゼラチンゲルを、−80℃で5時間凍結させた後、凍結乾燥機(EYELA、FDU−1000)で凍結乾燥を行った。得られた凍結乾燥体を、ニューパワーミル(大阪ケミカル、ニューパワーミルPM−2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で1分間×5回、計5分間の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25〜53μm及び53〜106μmの天然ゼラチンμブロックを得た。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTM BulletKitTM)にて50万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントゼラチンμブロックを1.0mg/mLとなるように加えた後、100μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種し、18時間静置し、直径1mm程度の球状の、リコンビナントゼラチンμブロックとhMSC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.002μgの高分子ブロック)。その後、培地を軟骨分化培地(タカラバイオ:hMSC Differentiation BulletKitTM,Chondrogenic、TGF-β3)(200μL)へ置換した。Day7で、直径(=厚さ)が1.54mmの球状に、モザイク細胞塊が形成された(図1)。なお、本モザイク細胞塊は、U字型のプレート中で作製するため、球状に作製されている。培地交換は、Day3、7、10、14、17、21で行う。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTMBulletKitTM)にて50万cells/mLに調整し、実施例3で作製した天然ゼラチンμブロックを1.0mg/mLとなるように加えた後、100μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、18時間静置し、直径1mm程度の球状の、天然ゼラチンμブロックとhMSC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.002μgの高分子ブロック)。その後、培地を軟骨分化培地(タカラバイオ:hMSC Differentiation BulletKitTM,Chondrogenic、TGF-β3)(200μL)へ置換した。Day7で、直径(=厚さ)1.34mmの球状に、モザイク細胞塊が形勢された(図2)。尚、本モザイク細胞塊は、U字型のプレート中で作製するため、球状に作製されている。
実施例4で作製したリコンビナントゼラチンμブロックを用いたモザイク細胞塊について、組織切片を作製した。実施例4で作製した培地中のモザイク細胞塊に対して、培地を除去後、200μLのPBSを加え洗浄し、PBSを除去した。この洗浄工程を2回繰り返した後、洗浄したモザイク細胞塊を10%ホルマリンに浸漬し、2日間ホルマリン固定を行った。その後、パラフィンで包埋し、組織切片を作製した。切片はHE染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)し、細胞とゼラチンμブロックの状態を解析した。結果を図3、図4及び図5に示す。これにより、ゼラチンμブロックと、細胞がモザイク状に配置された3次元構造体が作製されていること、さらに細胞が正常な状態でモザイク細胞塊中に存在していることが確認できた。また、この断面切片から、少なくとも厚さ720μm以上のモザイク細胞塊が作製できていることが示された。
実施例4で作製したモザイク細胞塊が、融合可能であるか、つまりモザイク細胞塊を並べていくことで、自然融合し、より大きな3次構造体を形成できるかについて実施した。実施例4で作製した6日目のモザイク細胞塊2個、3個、及び4個をスミロンセルタイトX96Uプレート中で並べ、5日間培養を行った。その結果、モザイク細胞塊同士の間を、外周部に配された細胞が結合させることで、モザイク細胞塊が自然に融合することが明らかになった。図6に実体顕微鏡で撮像した写真を示す。融合開始日(Day6と記載)のモザイク細胞塊では、モザイク細胞塊同士が隣り合って配置されているだけであるが、融合開始から5日目(Dya11と記載)には、モザイク細胞塊間に新たな層が形成され、融合されていっている様子がわかる。また、図7,8,9,10,11には、該融合モザイク細胞塊の断面について、組織切片を作製し、HE染色した結果を示す(固定は10%ホルマリン、包埋はパラフィン包埋)。細胞と、細胞により産生された細胞外基質で、モザイク細胞塊間に融合層が形成されており、モザイク細胞塊同士を融合、結合していることがわかる。これにより、本発明にて作製されるモザイク細胞塊は、自然に融合可能であり、融合させることで、より大きな構造体を形成できることが示された。従って、本発明を用いることで、厚さを有した細胞シート状に作製することも、より立体的な3次元構造体を作製することも可能であることが分かる。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTM BulletKitTM)にて50万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントゼラチンμブロックを1.0mg/mLとなるように加えた後、100μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、18時間静置し、直径1mm球状のモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.002μgの高分子ブロック)。その後、培地を200μLへ増やし、3日毎に培地を交換し培養した。Day7で、直径(=厚さ)1.34mmの球状に、モザイク細胞塊が形成された(尚、本モザイク細胞塊は、U字型のプレート中で作製するため、球状に作製される)。Day7のモザイク細胞塊の切片写真を図16、17に示す。この断面切片上で、厚さの薄い箇所でも、少なくとも624μm以上の厚みを達成していることが分かる。
実施例8で作製した3日目(Day3)のモザイク細胞塊について、培地交換の際、実施例2で作製した0.1mgのリコンビナントゼラチンμブロックを、増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTM BulletKitTM)に懸濁して添加した。以後、Day7,10,14,17,21の培地交換に合わせ、0.1mgずつのリコンビナントゼラチンμブロックを添加していった。
実施例4で作製した3日目(Day3)のモザイク細胞塊について、培地交換の際、実施例2で作製した0.1mgリコンビナントゼラチンμブロック(0.1mg)を、軟骨分化培地(タカラバイオ:hMSC Differentiation BulletKitTM,Chondrogenic、TGF-β3)に懸濁して添加した。以後、Day7,10,14,17,21の培地交換に合わせ、0.1mgずつのリコンビナントゼラチンμブロックを添加していった。
実施例4及び実施例5で作製したモザイク細胞塊(hMSC細胞+リコンビナントゼラチン、hMSC細胞+天然ゼラチン)、及び細胞のみで作製した細胞塊(実施例4と同様の手法で、ゼラチンブロックを入れずに作製した)、について、モザイク細胞塊中のグリコサミノグリカン量を定量した。測定は、(Farndale et al., Improved quantitation and sulphated glycosaminoglycans by use of dimethylmethylene blue. Biochimica et Biophysica Acta 883 (1986) 173-177)のDimetylmethylene blue dyeを用いる方法で行い、試薬は硫酸化GAG定量キット(生化学バイオビジネス)を用いた。530nmの吸光を測定し、定量した。図21に示すように、該手法によって、特徴的な吸収ピークが525−530nmに見られることを確認している。
各モザイク細胞塊中の細胞が産生・保持しているATP(アデノシン三リン酸)量を定量した。ATPは生物全般のエネルギー源として知られ、ATP合成量・保持量を定量することで、細胞の代謝活性の状態、活動状態を知ることができる。測定には、CellTiter−Glo(Promega社)を用いた。比較は、実施例4及び実施例5で作製したモザイク細胞塊(hMSC細胞+リコンビナントゼラチン、hMSC細胞+天然ゼラチン)、及び細胞のみで作製した細胞塊(実施例4と同様の手法で、ゼラチンブロックを入れずに作製した)、について、ともにDay7のもので、CellTiter−Gloを用いて、各モザイク細胞塊中のATP量を定量した。
PLGA(乳酸・グリコール酸共重合体: Wako、PLGA7520)0.3gをジクロロメタン(3mL)に溶解した。概PLGA溶解液を乾燥機(EYELA、FDU−1000)にて真空乾燥し、PLGAの乾燥体を得た。PLGA乾燥体を、ニューパワーミル(大阪ケミカル、ニューパワーミルPM−2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で10秒×20回の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25〜53μm及び53〜106μmのPLGAμブロックを得た。
PLGA:「1/IOB」値:0.0552
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTM BulletKitTM)にて50万cells/mLに調整し、実施例13で作製したPLGAμブロックを加えた(最終濃度で0.1mg/mL、0.2mg/mL、1.0mg/mL、2.0mg/mLとなるように条件を振って作成した)後、100μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、18時間静置し、直径1mm弱・球状のモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.0002、0.0004、0.002、0.004μgの高分子ブロック)。その後、培地を200μLへ増やし、3日毎に培地を交換し培養した。尚、本モザイク細胞塊は、U字型のプレート中で作製するため、球状に作製される。Day2のPLGAモザイク細胞塊の実体顕微鏡写真を図24に示す。
アガロース粉末5gを超純水(100mL)に加え、電子レンジを用いて加熱し溶解した。得られた5%アガロース溶解液を常温に戻すことで固形物にして、−80℃で5時間凍結させた後、凍結乾燥機(EYELA、FDU−1000)で凍結乾燥を行うことで、アガロースの凍結乾燥体を得た。アガロース凍結乾燥体を、ニューパワーミル(大阪ケミカル、ニューパワーミルPM−2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で10秒×20回の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25〜53μm及び53〜106μmのアガロースμブロックを得た。
IOB値:3.18
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM-CDTM BulletKitTM)にて50万cells/mLに調整し、実施例15で作製したアガロースμブロックを加えた(最終濃度で0.1mg/mL、1.0mg/mLとなるように条件を振って作成した)後、100μLをスミロンセルタイトX96Uプレートに播種し、18時間静置し、直径1mm弱・球状のモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.0002、0.002μgの高分子ブロック)。その後、培地を200μLへ増やし、3日毎に培地を交換し培養した。尚、本モザイク細胞塊は、U字型のプレート中で作製するため、球状に作製された。
新生児SDラット心筋細胞(rCMC)を心筋細胞用培地(Primary Cell Co., Ltd:CMCM 心筋細胞用培養メディウム)にて50万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントゼラチンμブロックを0.5、1.0、3.0mg/mLとなるように加えた後、それぞれ100μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種し、18時間静置し、直径1〜2mm程度のリコンビナントゼラチンμブロックとrCMC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.001、0.002、0.006μgの高分子ブロック)。培地交換は、Day3、7、10、14、17、21で行った。
GFPを発現しているヒト臍帯静脈内皮細胞(GFP−HUVEC:Angio−Proteomie社)を内皮細胞用培地(クラボウ:Medium 200S、LSGS、抗菌剤GA溶液)にて50万cells/mL調整し、実施例2で作製したリコンビナントゼラチンμブロックを0.3、1.0、3.0mg/mLとなるように加えた後、それぞれ100μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種した(細胞1個当たり0.0006、0.002、0.006μgの高分子ブロック)。また、同様にして、細胞を150万cells/mLに調整し、実施例2で作製したリコンビナントゼラチンμブロックを1.0mg/mLとなるように加えた後、100μL、200μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種したものも作製した。全てについて、18時間静置し、直径1〜2mm程度のリコンビナントゼラチンμブロックとGFP−HUVEC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した。培地交換は、Day3、7、10、14、17、21で行った。
Claims (20)
- 生体親和性を有する高分子ブロックと細胞とを含み、該複数個の細胞間の隙間に複数個の該高分子ブロックが配置されている、細胞構造体であって、
前記高分子ブロックの大きさが20μm以上150μm以下であり、
前記高分子ブロックの形状が不定形であり、
前記高分子ブロックと前記細胞との比率が、細胞1個当り0.0000001μg以上1.0μg以下であり、
高分子ブロックが、高分子からなる固形物を粉砕して得られたものであり、
前記固形物が凍結乾燥により得られたものである細胞構造体。 - 厚さ又は直径が400μm以上3cm以下である、請求項1に記載の細胞構造体。
- 厚さ又は直径が500μm以上2cm以下である、請求項2に記載の細胞構造体。
- 厚さ又は直径が720μm以上1cm以下である、請求項2又は3に記載の細胞構造体。
- 生体親和性を有する高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートすることによって製造される、請求項1から4の何れか1項に記載の細胞構造体。
- 生体親和性を有する高分子が、生分解性材料である、請求項1から5の何れか1項に記載の細胞構造体。
- 生体親和性を有する高分子が、ポリペプチド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGA、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、又はキトサンである、請求項1から6の何れか1項に記載の細胞構造体。
- 生体親和性を有する高分子が、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、プロネクチン、ラミニン、テネイシン、フィブリン、フィブロイン、エンタクチン、トロンボスポンジン、又はレトロネクチンである、請求項1から7の何れか1項に記載の細胞構造体。
- 生体親和性を有する高分子が架橋されている、請求項1から8の何れか1項に記載の細胞構造体。
- 架橋がアルデヒド類、縮合剤、又は酵素により施される、請求項9に記載の細胞構造体。
- 生体親和性を有する高分子が、遺伝子組み換えゼラチンである、請求項1から10の何れか1項に記載の細胞構造体。
- 前記生体親和性を有する高分子が、細胞接着性シグナルを一分子中に2以上有する請求項11に記載の細胞構造体。
- 遺伝子組み換えゼラチンが、
式:A−[(Gly−X−Y)n]m−B
(式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される、請求項11に記載の細胞構造体。 - 遺伝子組み換えゼラチンが、
式:Gly-Ala-Pro-[(Gly−X−Y)63]3−Gly
(式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される、請求項11又は13に記載の細胞構造体。 - 遺伝子組み換えゼラチンが、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、生体親和性を有するアミノ酸配列を有する、請求項11から14の何れか1項に記載の細胞構造体。
- 遺伝子組み換えゼラチンが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する、請求項11から15の何れか1項に記載の細胞構造体。
- 生体親和性を有する複数個の第一の高分子ブロックと、複数個の細胞とを含み、該複数の細胞により形成される複数個の隙間の一部または全部に、一または複数個の前記高分子ブロックが配置されている細胞構造体に、更に、第二の高分子ブロックを添加しインキュベートする工程を含む、細胞構造体の製造方法。
- 前記第一の高分子ブロックの大きさが1μm以上700μm以下である、請求項17に記載の細胞構造体の製造方法。
- 前記第二の高分子ブロックの大きさが1μm以上700μm以下である、請求項17または18に記載の細胞構造体の製造方法。
- 前記第二の高分子ブロックを添加しインキュベートした後の、厚さ又は直径が400μm以上3cm以下である、請求項17から19のいずれか一項に記載の細胞構造体の製造方法。
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