JP2016136848A - 薬剤の評価方法及び薬剤スクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞を使用した、薬剤感受性の高い、薬剤の評価方法及び薬剤スクリーニング方法を提供する。
【解決手段】本発明の薬剤の評価方法は、生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体に、被検薬剤を添加し、細胞構造体の形態的変化等を評価するものである。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の薬剤の評価方法は、生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体に、被検薬剤を添加し、細胞構造体の形態的変化等を評価するものである。
【選択図】なし
Description
本発明は、薬剤の評価方法及び薬剤スクリーニング方法に関する。詳しくは、本発明は、生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体を用いる薬剤の評価方法及び薬剤スクリーニング方法に関する。
現在、新薬の探索等で、薬剤の薬効評価及び毒性評価を行う際に、組織から単離した細胞を用いることが、一般的に行われている。このときに、in vivo試験のような、生体内での試験に近い、薬剤感受性、毒性反応を示すことが求められており、細胞凝集体を用いた方が、遊離した単独の細胞より、生体機能が高く、薬剤感受性等を高いことが知られている。
また、特許文献1には、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞とを含み、上記複数個の細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞構造体が記載されている。特許文献1に記載の細胞構造体においては、外部から細胞構造体の内部への栄養送達が可能であり、十分な厚みを有するとともに、構造体中で細胞が均一に存在している。特許文献1の実施例においては、リコンビナントゼラチンや天然ゼラチン素材からなる高分子ブロックを用いて、高い細胞生存活性が実証されている。
細胞凝集体を用い、薬効の評価及び毒性の評価を行った場合、遊離した単独の細胞より、薬剤感受性等を高くはなるが、必ずしも十分なものではなく、より薬剤感受性の高い、薬剤の評価方法及び薬剤スクリーニング方法が求められている。また、特許文献1には、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞とを含み、上記複数個の細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞構造体は開示されているが、薬剤の評価方法及び薬剤スクリーニング方法は、詳細には記載されておらず、単に毒性評価に使用できると記載されているのみである。そこで、このような事情の下、本発明の課題は、細胞を使用した、薬剤感受性の高い、薬剤の評価方法及び薬剤スクリーニング方法を提供することにある。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、生体親和性を有する高分子ブロックと細胞とを含み、上記複数個の細胞間の隙間に複数個の上記高分子ブロックが配置されている細胞構造体は、細胞構造体全体における物質透過能に優れるため、細胞構造体を用いて、薬剤の評価方法及び薬剤スクリーニング方法を行うと、薬剤感受性が高くなることを見出し、本発明を完成するに至った。なお、ここで、物質透過能とは、栄養分等の内部への送達、細胞からの産生物等の外部への排出のいずれか一方又は両方を意味するものであり、三次元構造体である、本発明にかかる細胞構造体の内部への栄養分等の送達により、細胞が生存すること可能となり、また、細胞からの産生物等の外部への排出により、薬剤評価に悪影響を及ぼす成分を細胞構造体外に排出されることが可能となる。
即ち、本発明の態様は以下に関する。
〔1〕(a)生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体に、被検薬剤を添加する工程、及び
(b)工程(a)の後、細胞構造体の形態的変化、生化学的変化及び組織学変化からなる群から選択される変化のうち、少なくとも一つの変化を評価する工程、を含む、薬剤の評価方法。
〔2〕上記生体親和性高分子ブロック一つの大きさが20μm以上200μm以下である、〔1〕に記載の薬剤の評価方法。
〔3〕上記生体親和性高分子ブロック一つの大きさが50μm以上120μm以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の薬剤の評価方法。
〔4〕上記生体親和性高分子ブロックにおいて、生体親和性高分子が熱、紫外線又は酵素により架橋されている、〔1〕から〔3〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔5〕上記生体親和性高分子ブロックが、生体親和性高分子の多孔質体を粉砕することにより得られる生体親和性高分子ブロックである、〔1〕から〔4〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔6〕細胞1個当り0.0000001μg以上1μg以下の生体親和性高分子ブロックを含む、〔1〕から〔5〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔7〕生体親和性高分子が、ゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、プロネクチン、ラミニン、テネイシン、フィブリン、フィブロイン、エンタクチン、トロンボスポンジン、レトロネクチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸コポリマー、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、又はキトサンである、〔1〕から〔6〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔8〕生体親和性高分子が、リコンビナントゼラチンである、〔1〕から〔6〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔9〕リコンビナントゼラチンが、
式:A−[(Gly−X−Y)n]m−B
(式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される、〔8〕に記載の薬剤の評価方法。
〔10〕リコンビナントゼラチンが、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、生体親和性を有するアミノ酸配列を有する、〔8〕又は〔9〕に記載の薬剤の評価方法。
〔11〕上記細胞が、万能細胞、体性幹細胞、前駆細胞又は成熟細胞である、〔1〕から〔10〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔12〕毒性評価である、〔1〕から〔11〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔13〕薬効評価である、〔1〕から〔11〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔14〕〔1〕から〔13〕の何れか1項に記載の薬剤の評価方法を用いた薬剤スクリーニング方法。
〔1〕(a)生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体に、被検薬剤を添加する工程、及び
(b)工程(a)の後、細胞構造体の形態的変化、生化学的変化及び組織学変化からなる群から選択される変化のうち、少なくとも一つの変化を評価する工程、を含む、薬剤の評価方法。
〔2〕上記生体親和性高分子ブロック一つの大きさが20μm以上200μm以下である、〔1〕に記載の薬剤の評価方法。
〔3〕上記生体親和性高分子ブロック一つの大きさが50μm以上120μm以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の薬剤の評価方法。
〔4〕上記生体親和性高分子ブロックにおいて、生体親和性高分子が熱、紫外線又は酵素により架橋されている、〔1〕から〔3〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔5〕上記生体親和性高分子ブロックが、生体親和性高分子の多孔質体を粉砕することにより得られる生体親和性高分子ブロックである、〔1〕から〔4〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔6〕細胞1個当り0.0000001μg以上1μg以下の生体親和性高分子ブロックを含む、〔1〕から〔5〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔7〕生体親和性高分子が、ゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、プロネクチン、ラミニン、テネイシン、フィブリン、フィブロイン、エンタクチン、トロンボスポンジン、レトロネクチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸コポリマー、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、又はキトサンである、〔1〕から〔6〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔8〕生体親和性高分子が、リコンビナントゼラチンである、〔1〕から〔6〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔9〕リコンビナントゼラチンが、
式:A−[(Gly−X−Y)n]m−B
(式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される、〔8〕に記載の薬剤の評価方法。
〔10〕リコンビナントゼラチンが、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、生体親和性を有するアミノ酸配列を有する、〔8〕又は〔9〕に記載の薬剤の評価方法。
〔11〕上記細胞が、万能細胞、体性幹細胞、前駆細胞又は成熟細胞である、〔1〕から〔10〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔12〕毒性評価である、〔1〕から〔11〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔13〕薬効評価である、〔1〕から〔11〕の何れかに記載の薬剤の評価方法。
〔14〕〔1〕から〔13〕の何れか1項に記載の薬剤の評価方法を用いた薬剤スクリーニング方法。
本発明の薬剤の評価方法は、薬剤感受性の高く、また、その薬剤の評価方法を用いた、本発明の薬剤スクリーニング方法は、薬剤を効率的かつ効果的にスクリーニングすることが可能となる。
以下、本発明を好適実施形態に基づき、詳細に説明する。
本発明の薬剤の評価方法は、(a)生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体に、被検薬剤を添加する工程、及び(b)工程(a)の後の細胞構造体の形態的変化、生化学的変化及び組織学変化からなる群から選択される変化のうち、少なくとも一つの変化を評価する工程を含むものである。
なお、本発明にかかる細胞構造体は、本明細書中において、モザイク細胞塊(モザイク状になっている細胞塊)と称する場合もある。
また本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
本発明の薬剤の評価方法は、(a)生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体に、被検薬剤を添加する工程、及び(b)工程(a)の後の細胞構造体の形態的変化、生化学的変化及び組織学変化からなる群から選択される変化のうち、少なくとも一つの変化を評価する工程を含むものである。
なお、本発明にかかる細胞構造体は、本明細書中において、モザイク細胞塊(モザイク状になっている細胞塊)と称する場合もある。
また本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
(1)生体親和性高分子ブロック
生体親和性高分子ブロックについて以下に説明する。
(1−1)生体性親和性高分子
生体性親和性とは、生体に接触した際に、長期的かつ慢性的な炎症反応などのような顕著な有害反応を惹起しないことを意味する。本発明で用いる生体親和性高分子は、生体に親和性を有するものであれば、生体内で分解されるか否かは特に限定されないが、生分解性高分子であることが好ましい。非生分解性材料として具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル、ステンレス、チタン、シリコーン及びMPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)などが挙げられる。生分解性材料としては、具体的にはリコンビナントペプチドなどのポリペプチド(例えば、以下に説明するゼラチン等)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸コポリマー(PLGA)、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、及びキトサンなどが挙げられる。上記の中でも、リコンビナントペプチドが特に好ましい。これら生体親和性高分子には細胞接着性を高める工夫がなされていてもよい。細胞接着性を高める工夫として、具体的には、1.「基材表面に対する細胞接着基質(フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン)や細胞接着配列(アミノ酸一文字表記で現わされる、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列)ペプチドによるコーティング」、「基材表面のアミノ化、カチオン化」、又は「基材表面のプラズマ処理、コロナ放電による親水性処理」といった方法を挙げることができる。
生体親和性高分子ブロックについて以下に説明する。
(1−1)生体性親和性高分子
生体性親和性とは、生体に接触した際に、長期的かつ慢性的な炎症反応などのような顕著な有害反応を惹起しないことを意味する。本発明で用いる生体親和性高分子は、生体に親和性を有するものであれば、生体内で分解されるか否かは特に限定されないが、生分解性高分子であることが好ましい。非生分解性材料として具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル、ステンレス、チタン、シリコーン及びMPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)などが挙げられる。生分解性材料としては、具体的にはリコンビナントペプチドなどのポリペプチド(例えば、以下に説明するゼラチン等)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸コポリマー(PLGA)、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、及びキトサンなどが挙げられる。上記の中でも、リコンビナントペプチドが特に好ましい。これら生体親和性高分子には細胞接着性を高める工夫がなされていてもよい。細胞接着性を高める工夫として、具体的には、1.「基材表面に対する細胞接着基質(フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン)や細胞接着配列(アミノ酸一文字表記で現わされる、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列)ペプチドによるコーティング」、「基材表面のアミノ化、カチオン化」、又は「基材表面のプラズマ処理、コロナ放電による親水性処理」といった方法を挙げることができる。
リコンビナントペプチドを含むポリペプチドの種類は生体親和性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、プロネクチン、ラミニン、テネイシン、フィブリン、フィブロイン、エンタクチン、トロンボスポンジン、レトロネクチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸コポリマー、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン又はキトサンを好適に用いることができ、ゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、プロネクチン、ラミニン、テネイシン、フィブリン、フィブロイン、エンタクチン、トロンボスポンジン又はレトロネクチンが好ましく、ゼラチン、コラーゲン又はアテロコラーゲンがより好ましい。本発明で用いるためのゼラチンとしては、好ましくは、天然ゼラチン又はリコンビナントゼラチンであり、さらに好ましくはリコンビナントゼラチンである。ここでいう天然ゼラチンとは天然由来のコラーゲンより作られたゼラチンを意味する。リコンビナントゼラチンについては、本明細書中後記する。
本発明で用いる生体親和性高分子の親水性値「1/IOB」値は、0から1.0が好ましい。より好ましくは、0から0.6であり、さらに好ましくは0から0.4である。IOBとは、藤田穆により提案された有機化合物の極性/非極性を表す有機概念図に基づく、親疎水性の指標であり、その詳細は、例えば、"Pharmaceutical Bulletin", vol.2, 2, pp.163-173(1954)、「化学の領域」vol.11, 10, pp.719-725(1957)、「フレグランスジャーナル」, vol.50, pp.79-82(1981)等で説明されている。簡潔に言えば、全ての有機化合物の根源をメタン(CH4)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値(OV)、無機性値(IV)を求め、この値を、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。有機概念図におけるIOBとは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。有機概念図の詳細については、「新版有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生等著、三共出版、2008)を参照されたい。本明細書中では、IOBの逆数をとった「1/IOB」値で親疎水性を表している。「1/IOB」値が小さい(0に近づく)程、親水性であることを表す表記である。
本発明で用いる高分子の「1/IOB」値を上記範囲とすることにより、親水性が高く、かつ、吸水性が高くなることから、栄養成分の保持に有効に作用し、結果として、本発明にかかる細胞構造体(モザイク細胞塊)における細胞の安定化・生存しやすさに寄与するものと推定される。
本発明で用いる生体親和性高分子がポリペプチドである場合は、Grand average of hydropathicity(GRAVY)値で表される親疎水性指標において、0.3以下、マイナス9.0以上であることが好ましく、0.0以下、マイナス7.0以上であることがさらに好ましい。Grand average of hydropathicity(GRAVY)値は、『Gasteiger E., Hoogland C., Gattiker A., Duvaud S., Wilkins M.R., Appel R.D., Bairoch A.;Protein Identification and Analysis Tools on the ExPASy Server;(In) John M. Walker (ed): The Proteomics Protocols Handbook, Humana Press (2005). pp. 571-607』及び『Gasteiger E., Gattiker A., Hoogland C., Ivanyi I., Appel R.D., Bairoch A.; ExPASy: the proteomics server for in-depth protein knowledge and analysis.; Nucleic Acids Res. 31:3784-3788(2003).』の方法により得ることができる。
本発明で用いる高分子のGRAVY値を上記範囲とすることにより、親水性が高く、かつ、吸水性が高くなることから、栄養成分の保持に有効に作用し、結果として、本発明にかかる細胞構造体(モザイク細胞塊)における細胞の安定化・生存しやすさに寄与するものと推定される。
本発明で用いる高分子のGRAVY値を上記範囲とすることにより、親水性が高く、かつ、吸水性が高くなることから、栄養成分の保持に有効に作用し、結果として、本発明にかかる細胞構造体(モザイク細胞塊)における細胞の安定化・生存しやすさに寄与するものと推定される。
(1−2)架橋
本発明で用いる生体親和性高分子は、架橋されているものでもよいし、架橋されていないものでもよいが、架橋されているものが好ましい。架橋されている生体親和性高分子を使用することにより、培養する際に瞬時に分解してしまうことを防ぐという効果が得られる。一般的な架橋方法としては、熱架橋、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなど)による架橋、縮合剤(カルボジイミド、シアナミドなど)による架橋、酵素架橋、光架橋、紫外線架橋、疎水性相互作用、水素結合、イオン性相互作用などが知られており、生体親和性高分子が熱、紫外線又は酵素により架橋されていることが好ましく、熱による架橋されていることがより好ましい。
本発明で用いる生体親和性高分子は、架橋されているものでもよいし、架橋されていないものでもよいが、架橋されているものが好ましい。架橋されている生体親和性高分子を使用することにより、培養する際に瞬時に分解してしまうことを防ぐという効果が得られる。一般的な架橋方法としては、熱架橋、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなど)による架橋、縮合剤(カルボジイミド、シアナミドなど)による架橋、酵素架橋、光架橋、紫外線架橋、疎水性相互作用、水素結合、イオン性相互作用などが知られており、生体親和性高分子が熱、紫外線又は酵素により架橋されていることが好ましく、熱による架橋されていることがより好ましい。
酵素による架橋を行う場合、酵素としては、高分子材料間の架橋作用を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはトランスグルタミナーゼ及びラッカーゼ、最も好ましくはトランスグルタミナーゼを用いて架橋を行うことができる。トランスグルタミナーゼで酵素架橋するタンパク質の具体例としては、リジン残基及びグルタミン残基を有するタンパク質であれば特に制限されない。トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼなど、ヒト由来の血液凝固因子(Factor XIIIa、Haematologic echnologies, Inc.社)などが挙げられる。
架橋(例えば、熱架橋)を行う際の反応温度は、架橋ができる限り特に限定されないが、好ましくは、−100℃〜500℃であり、より好ましくは0℃〜300℃であり、更に好ましくは50℃〜300℃であり、更に好ましくは100℃〜250℃であり、更に好ましくは120℃〜200℃である。
(1−3)リコンビナントゼラチン
本発明で言うリコンビナントゼラチンとは、遺伝子組み換え技術により作られたゼラチン類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくは蛋白様物質を意味する。本発明で用いることができるリコンビナントゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有するものが好ましい。ここで、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましくは、細胞接着シグナルが一分子中に2配列以上含まれている。本発明で用いるリコンビナントゼラチンとしては、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有するリコンビナントゼラチンを用いることができる。例えばEP1014176、US特許6992172号、国際公開WO2004/85473、国際公開WO2008/103041等に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いるリコンビナントゼラチンとして好ましいものは、以下の態様のリコンビナントゼラチンである。
本発明で言うリコンビナントゼラチンとは、遺伝子組み換え技術により作られたゼラチン類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくは蛋白様物質を意味する。本発明で用いることができるリコンビナントゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有するものが好ましい。ここで、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましくは、細胞接着シグナルが一分子中に2配列以上含まれている。本発明で用いるリコンビナントゼラチンとしては、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有するリコンビナントゼラチンを用いることができる。例えばEP1014176、US特許6992172号、国際公開WO2004/85473、国際公開WO2008/103041等に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いるリコンビナントゼラチンとして好ましいものは、以下の態様のリコンビナントゼラチンである。
リコンビナントゼラチンは、天然のゼラチン本来の性能から、生体親和性に優れ、且つ天然由来ではないことで牛海綿状脳症(BSE)などの懸念がなく、非感染性に優れている。また、リコンビナントゼラチンは天然セラチンと比べて均一であり、配列が決定されているので、強度及び分解性においても架橋等によってブレを少なく精密に設計することが可能である。
リコンビナントゼラチンの分子量は、特に限定されないが、好ましくは2kDa以上100kDa以下であり、より好ましくは2.5kDa以上95kDa以下であり、さらに好ましくは5kDa以上90kDa以下であり、最も好ましくは10kDa以上90kDa以下である。
リコンビナントゼラチンは、コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有することが好ましい。ここで、複数個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Gly−X−Y において、Glyはグリシンを表し、X及びYは、任意のアミノ酸(好ましくは、グリシン以外の任意のアミノ酸)を表す。コラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列とは、ゼラチン・コラーゲンのアミノ酸組成及び配列における、他のタンパク質と比較して非常に特異的な部分構造である。この部分においてはグリシンが全体の約3分の1を占め、アミノ酸配列では3個に1個の繰り返しとなっている。グリシンは最も簡単なアミノ酸であり、分子鎖の配置への束縛も少なく、ゲル化に際してのヘリックス構造の再生に大きく寄与している。X及びYで表されるアミノ酸はイミノ酸(プロリン、オキシプロリン)が多く含まれ、全体の10%〜45%を占めることが好ましい。好ましくは、リコンビナントゼラチンの配列の80%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上のアミノ酸が、Gly−X−Yの繰り返し構造である。
一般的なゼラチンは、極性アミノ酸のうち電荷を持つものと無電荷のものが1:1で存在する。ここで、極性アミノ酸とは具体的にシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン及びアルギニンを指し、このうち極性無電荷アミノ酸とはシステイン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン及びチロシンを指す。本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおいては、構成する全アミノ酸のうち、極性アミノ酸の割合が10〜40%であり、好ましくは20〜30%である。且つ上記極性アミノ酸中の無電荷アミノ酸の割合が5%以上20%未満、好ましくは10%未満であることが好ましい。さらに、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインのうちいずれか1アミノ酸、好ましくは2以上のアミノ酸を配列上に含まないことが好ましい。
一般にポリペプチドにおいて、細胞接着シグナルとして働く最小アミノ酸配列が知られている(例えば、株式会社永井出版発行「病態生理」Vol.9、No.7(1990年)527頁)。本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、これらの細胞接着シグナルを一分子中に2以上有することが好ましい。具体的な配列としては、接着する細胞の種類が多いという点で、アミノ酸一文字表記で現わされる、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列の配列が好ましい。さらに好ましくはRGD配列、YIGSR配列、PDSGR配列、LGTIPG配列、IKVAV配列及びHAV配列、特に好ましくはRGD配列である。RGD配列のうち、好ましくはERGD配列である。細胞接着シグナルを有するリコンビナントゼラチンを用いることにより、細胞の基質産生量を向上させることができる。例えば、細胞として、間葉系幹細胞を用いた軟骨分化の場合には、グリコサミノグリカン(GAG)の産生を向上させることができる。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおけるRGD配列の配置としては、RGD間のアミノ酸数が0〜100の間、好ましくは25〜60の間で均一でないことが好ましい。
この最小アミノ酸配列の含有量は、細胞接着・増殖性の観点から、タンパク質1分子中3〜50個が好ましく、さらに好ましくは4〜30個、特に好ましくは5〜20個である。最も好ましくは12個である。
この最小アミノ酸配列の含有量は、細胞接着・増殖性の観点から、タンパク質1分子中3〜50個が好ましく、さらに好ましくは4〜30個、特に好ましくは5〜20個である。最も好ましくは12個である。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンにおいて、アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は少なくとも0.4%であることが好ましい。リコンビナントゼラチンが350以上のアミノ酸を含む場合、350のアミノ酸の各ストレッチが少なくとも1つのRGDモチーフを含むことが好ましい。アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は、更に好ましくは少なくとも0.6%であり、更に好ましくは少なくとも0.8%であり、更に好ましくは少なくとも1.0%であり、更に好ましくは少なくとも1.2%であり、最も好ましくは少なくとも1.5%である。リコンビナントペプチド内のRGDモチーフの数は、250のアミノ酸あたり、好ましくは少なくとも4、更に好ましくは6、更に好ましくは8、更に好ましくは12以上16以下である。RGDモチーフの0.4%という割合は、250のアミノ酸あたり、少なくとも1つのRGD配列に対応する。RGDモチーフの数は整数であるので、0.4%の特徴を満たすには、251のアミノ酸からなるゼラチンは、少なくとも2つのRGD配列を含まなければならない。好ましくは、リコンビナントゼラチンは、250のアミノ酸あたり、少なくとも2つのRGD配列を含み、より好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも3つのRGD配列を含み、さらに好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも4つのRGD配列を含む。リコンビナントゼラチンのさらなる態様としては、少なくとも4つのRGDモチーフ、好ましくは6つ、より好ましくは8つ、さらに好ましくは12以上16以下のRGDモチーフを含む。なお、リコンビナントゼラチンは部分的に加水分解されていてもよい。
好ましくは、本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、式:A−[(Gly−X−Y)n]m−Bで示されるものである。n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。mとして好ましくは2〜10、好ましくは3〜5である。nは3〜100が好ましく、15〜70がさらに好ましく、50〜65が最も好ましい。Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。
より好ましくは、本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、式:Gly−Ala−Pro−[(Gly−X−Y)63]3−Gly(式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly−X−Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示されるものである。
繰り返し単位には天然に存在するコラーゲンの配列単位を複数結合することが好ましい。ここで言う天然に存在するコラーゲンとは天然に存在するものであればいずれでも構わないが、好ましくはI型、II型、III型、IV型、又はV型コラーゲンである。より好ましくは、I型、II型、又はIII型コラーゲンである。別の形態によると、上記コラーゲンの由来は好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、マウス又はラットであり、より好ましくはヒトである。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンの等電点は、好ましくは5〜10であり、より好ましくは6〜10であり、さらに好ましくは7〜9.5である。また、リコンビナントゼラチンは脱アミン化されていないことが好ましく、テロペプタイドを有さないことも好ましく、アミノ酸配列をコードする核酸により調製された実質的に純粋なポリペプチドであることも好ましい。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンとして特に好ましくは、
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;又は
(3)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上(さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;
である。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;又は
(3)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上(さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ生体親和性を有するペプチド;
である。
「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」における「1若しくは数個」とは、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個を意味する。
本発明で用いるリコンビナントゼラチンは、当業者に公知の遺伝子組み換え技術によって製造することができ、例えばEP1014176A2号公報、米国特許第6992172号公報、国際公開WO2004/85473号、国際公開WO2008/103041号等に記載の方法に準じて製造することができる。具体的には、所定のリコンビナントゼラチンのアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得し、これを発現ベクターに組み込んで、組み換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、リコンビナントゼラチンが産生されるので、培養物から産生されたリコンビナントゼラチンを回収することにより、本発明で用いるリコンビナントゼラチンを調製することができる。
(1−4)生体親和性高分子ブロック
本発明では、上記した生体親和性高分子からなるブロック(塊)を使用する。
本発明にかかる生体親和性高分子ブロックの形状は特に限定されるものではない。例えば、不定形、球状、粒子状(顆粒)、粉状、多孔質状、繊維状、紡錘ましくは不定形である。なお、ここで、不定形とは、表面形状が均一でないもののことを示し、例えば、岩のような凹凸を有する物を示す。不定形とすることにより、細胞構造体を形成した際の物質透過のためのスペースを生じさせることができる。
本発明では、上記した生体親和性高分子からなるブロック(塊)を使用する。
本発明にかかる生体親和性高分子ブロックの形状は特に限定されるものではない。例えば、不定形、球状、粒子状(顆粒)、粉状、多孔質状、繊維状、紡錘ましくは不定形である。なお、ここで、不定形とは、表面形状が均一でないもののことを示し、例えば、岩のような凹凸を有する物を示す。不定形とすることにより、細胞構造体を形成した際の物質透過のためのスペースを生じさせることができる。
本発明における生体親和性高分子ブロック一つの大きさは、特に限定されないが、好ましくは1μm以上1000μm以下であり、より好ましくは10μm以上1000μm以下であり、より好状、扁平状及びシート状であり、好ましくは、不定形、球状、粒子状(顆粒)、粉状及び多孔質状であり、より好ましくは10μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上300μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは50μm以上120μm以下である。生体親和性高分子ブロック一つの大きさを上記の範囲内にすることにより、細胞構造体中、細胞をより均一に存在させることができ、また、より物質透過させることができる。なお、生体親和性高分子ブロック一つの大きさとは、複数個の生体親和性高分子ブロックの大きさの平均値が上記範囲にあることを意味するものではなく、複数個の生体親和性高分子ブロックを篩にかけて得られる、一つ一つの生体親和性高分子ブロックのサイズを意味するものである。
ブロック一つの大きさは、ブロックを分ける際に用いたふるいの大きさで定義することができる。例えば、180μmのふるいにかけ、通過したブロックを106μmのふるいにかけた際にふるいの上に残るブロックを、106〜180μmの大きさのブロックとすることができる。次に、106μmのふるいにかけ、通過したブロックを53μmのふるいにかけた際にふるいの上に残るブロックを、53〜106μmの大きさのブロックとすることができる。次に、53μmのふるいにかけ、通過したブロックを25μmのふるいにかけた際にふるいの上に残るブロックを、25〜53μmの大きさのブロックとすることができる。
(1−5)生体親和性高分子ブロックの製造方法
生体親和性高分子ブロックの製造方法は、特に限定されないが、例えば、生体親和性高分子の多孔質体を、粉砕機(ニューパワーミルなど)を用いて粉砕することにより、顆粒の形態の生体親和性高分子ブロックを得ることができる。生体親和性高分子ブロックが、生体親和性高分子の多孔質体を粉砕することにより得られる生体親和性高分子ブロックであることが好ましい。多孔質体を粉砕することにより、不定形の生体親和性高分子ブロックを製造することができる。
生体親和性高分子ブロックの製造方法は、特に限定されないが、例えば、生体親和性高分子の多孔質体を、粉砕機(ニューパワーミルなど)を用いて粉砕することにより、顆粒の形態の生体親和性高分子ブロックを得ることができる。生体親和性高分子ブロックが、生体親和性高分子の多孔質体を粉砕することにより得られる生体親和性高分子ブロックであることが好ましい。多孔質体を粉砕することにより、不定形の生体親和性高分子ブロックを製造することができる。
生体親和性高分子の多孔質体を製造する方法としては、特に限定されないが、生体親和性高分子を含む水溶液を凍結乾燥させることによっても得ることができる。例えば、溶液内で最も液温の高い部分の液温(内部最高液温)が、未凍結状態で「溶媒融点−3℃」以下となる凍結工程を含めることによって、形成される氷は球状とすることができる。この工程を経て、氷が乾燥されることで、球状の等方的な空孔(球孔)を持つ多孔質体が得られる。溶液内で最も液温の高い部分の液温(内部最高液温)が、未凍結状態で「溶媒融点−3℃」以上となる凍結工程を含まずに、凍結されることで、形成される氷は柱/平板状とすることができる。この工程を経て、氷が乾燥されると、一軸あるいは二軸上に長い、柱状あるいは平板状の空孔(柱/平板孔)を持つ多孔質体が得られる。生体親和性高分子の多孔質体を、粉砕し、生体親和性高分子ブロックを製造する場合には、粉砕前の多孔質の空孔が、得られる生体親和性高分子ブロックの形状に影響を与えるため、上記の通り、凍結乾燥の条件を調整することにより、得られる生体親和性高分子ブロックの形状を調整することができる。
生体親和性高分子の多孔質体の製造方法の一例としては、
(a)溶液内で最も液温の高い部分の温度と溶液内で最も液温の低い部分の温度との差が2.5℃以下であり、かつ、溶液内で最も液温の高い部分の温度が溶媒の融点以下で、生体親和性高分子の溶液を、未凍結状態に冷却する工程、
(b)工程(a)で得られた生体親和性高分子の溶液を凍結する工程、および
(c)工程(b)で得られた凍結した生体親和性高分子を凍結乾燥する工程
を含む方法を挙げることができるが、上記方法に限定されるわけではない。
(a)溶液内で最も液温の高い部分の温度と溶液内で最も液温の低い部分の温度との差が2.5℃以下であり、かつ、溶液内で最も液温の高い部分の温度が溶媒の融点以下で、生体親和性高分子の溶液を、未凍結状態に冷却する工程、
(b)工程(a)で得られた生体親和性高分子の溶液を凍結する工程、および
(c)工程(b)で得られた凍結した生体親和性高分子を凍結乾燥する工程
を含む方法を挙げることができるが、上記方法に限定されるわけではない。
上記方法においては、生体親和性高分子の溶液を未凍結状態に冷却する際に、最も液温の高い部分の温度と溶液内で最も液温の低い部分の温度との差が2.5℃以下(好ましくは2.3℃以下、より好ましくは2.1℃以下)、つまり温度の差を小さくすることによって、得られる多孔質のポアの大きさのばらつきが少なくなる。なお最も液温の高い部分の温度と溶液内で最も液温の低い部分の温度との差の下限は特に限定されず、0℃以上であればよく、例えば0.1℃以上、0.5℃以上、0.8℃以上、又は0.9℃以上でもよい。これにより、製造された多孔質体を用いて製造した生体親和性高分子ブロックを用いた細胞構造体は、高い細胞数を示すという効果が達成される。
工程(a)の冷却は、例えば、水よりも熱伝導率の低い素材(好ましくは、テフロン(登録商標))を介して冷却することが好ましく、溶液内で最も液温の高い部分は、冷却側から最も遠い部分と擬制することができ、溶液内で最も液温の低い部分は、冷却面の液温と擬制することができる。
工程(a)の冷却は、例えば、水よりも熱伝導率の低い素材(好ましくは、テフロン(登録商標))を介して冷却することが好ましく、溶液内で最も液温の高い部分は、冷却側から最も遠い部分と擬制することができ、溶液内で最も液温の低い部分は、冷却面の液温と擬制することができる。
好ましくは、工程(a)において、凝固熱発生直前の、溶液内で最も液温の高い部分の温度と溶液内で最も液温の低い部分の温度との差が2.5℃以下であり、より好ましくは2.3℃以下であり、さらに好ましくは2.1℃以下である。ここで「凝固熱発生直前の温度差」とは、凝固熱発生時の1秒前〜10秒前の間で最も温度差が大きくなるときの温度差を意味する。
好ましくは、工程(a)において、溶液内で最も液温の低い部分の温度は、溶媒融点−5℃以下であり、より好ましくは溶媒融点−5℃以下かつ溶媒融点−20℃以上であり、更に好ましくは溶媒融点−6℃以下かつ溶媒融点−16℃以上である。なお、溶媒融点の溶媒とは、生体親和性高分子の溶液の溶媒である。
好ましくは、工程(a)において、溶液内で最も液温の低い部分の温度は、溶媒融点−5℃以下であり、より好ましくは溶媒融点−5℃以下かつ溶媒融点−20℃以上であり、更に好ましくは溶媒融点−6℃以下かつ溶媒融点−16℃以上である。なお、溶媒融点の溶媒とは、生体親和性高分子の溶液の溶媒である。
工程(b)においては、工程(a)で得られた生体親和性高分子の溶液を凍結する。工程(b)にて凍結されるための冷却温度は、特に制限されるものではなく、冷却する機器にもよるが、好ましくは、溶液内で最も液温の低い部分の温度より、3℃から30℃低い温度であり、より好ましくは、5℃から25℃低い温度であり、更に好ましくは、10℃から20℃低い温度である。
工程(c)においては、工程(b)で得られた凍結した生体親和性高分子を凍結乾燥する。凍結乾燥は、常法により行うことができ、例えば、溶媒の融点より低い温度で真空乾燥を行い、さらに室温(20℃)で真空乾燥を行うことにより凍結乾燥を行うことができる。
(2)細胞
本発明で使用する細胞は、その種類は特に限定されるものではなく、本発明の目的である、薬剤評価として一般的に使用される細胞を好適に用いることができ、実際の薬剤評価の目的に応じて、任意の細胞を使用することができる。使用する細胞として、好ましくは、動物細胞であり、より好ましくは脊椎動物由来細胞、特に好ましくはヒト由来細胞である。脊椎動物由来細胞(特に、ヒト由来細胞)の種類は、万能細胞、体性幹細胞、前駆細胞、又は成熟細胞の何れでもよい。万能細胞としては、例えば、ES細胞、GS細胞、又はiPS細胞を使用することができる。体性幹細胞としては、例えば、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞、骨髄由来細胞、心筋幹細胞、脂肪由来幹細胞、又は神経幹細胞を使用することができる。前駆細胞及び成熟細胞としては、例えば、皮膚、真皮、表皮、筋肉、心筋、神経、骨、軟骨、内皮、脳、上皮、心臓、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、口腔内、角膜、骨髄、臍帯血、羊膜、又は毛に由来する細胞を使用することができる。ヒト由来細胞としては、例えば、ES細胞、iPS細胞、MSC、軟骨細胞、骨芽細胞、骨芽前駆細胞、間充織細胞、筋芽細胞、心筋細胞、心筋芽細胞、神経細胞、肝細胞、ベータ細胞、線維芽細胞、角膜内皮細胞、血管内皮細胞、角膜上皮細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞、骨髄由来細胞、又は造血幹細胞を使用することができる。
また、使用する細胞は、生体組織から分離した細胞(初代培養細胞)、継代した細胞でもよく、また、万能細胞等、幹細胞から分化された幹細胞由来の分化細胞であってもよく、分化細胞としては、例えば、肝臓系細胞、心臓系細胞が挙げられる。ここで、肝臓系細胞としては、肝細胞、肝芽細胞、星細胞、クッパー細胞、類洞内皮細胞、胆管上皮細胞、門脈域線維芽細胞、星細胞前駆細胞、間葉系前駆細胞、横中隔間充織細胞、前腸内胚葉細胞、胆管幹細胞、中皮細胞が挙げられるまた、。心臓系細胞としては、心筋細胞、心筋芽細胞、心筋幹細胞、が挙げられる。
本発明で使用する細胞は、その種類は特に限定されるものではなく、本発明の目的である、薬剤評価として一般的に使用される細胞を好適に用いることができ、実際の薬剤評価の目的に応じて、任意の細胞を使用することができる。使用する細胞として、好ましくは、動物細胞であり、より好ましくは脊椎動物由来細胞、特に好ましくはヒト由来細胞である。脊椎動物由来細胞(特に、ヒト由来細胞)の種類は、万能細胞、体性幹細胞、前駆細胞、又は成熟細胞の何れでもよい。万能細胞としては、例えば、ES細胞、GS細胞、又はiPS細胞を使用することができる。体性幹細胞としては、例えば、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞、骨髄由来細胞、心筋幹細胞、脂肪由来幹細胞、又は神経幹細胞を使用することができる。前駆細胞及び成熟細胞としては、例えば、皮膚、真皮、表皮、筋肉、心筋、神経、骨、軟骨、内皮、脳、上皮、心臓、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、口腔内、角膜、骨髄、臍帯血、羊膜、又は毛に由来する細胞を使用することができる。ヒト由来細胞としては、例えば、ES細胞、iPS細胞、MSC、軟骨細胞、骨芽細胞、骨芽前駆細胞、間充織細胞、筋芽細胞、心筋細胞、心筋芽細胞、神経細胞、肝細胞、ベータ細胞、線維芽細胞、角膜内皮細胞、血管内皮細胞、角膜上皮細胞、羊膜細胞、臍帯血細胞、骨髄由来細胞、又は造血幹細胞を使用することができる。
また、使用する細胞は、生体組織から分離した細胞(初代培養細胞)、継代した細胞でもよく、また、万能細胞等、幹細胞から分化された幹細胞由来の分化細胞であってもよく、分化細胞としては、例えば、肝臓系細胞、心臓系細胞が挙げられる。ここで、肝臓系細胞としては、肝細胞、肝芽細胞、星細胞、クッパー細胞、類洞内皮細胞、胆管上皮細胞、門脈域線維芽細胞、星細胞前駆細胞、間葉系前駆細胞、横中隔間充織細胞、前腸内胚葉細胞、胆管幹細胞、中皮細胞が挙げられるまた、。心臓系細胞としては、心筋細胞、心筋芽細胞、心筋幹細胞、が挙げられる。
(3)細胞構造体
細胞構造体は、上記した生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種類の細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体である。本発明においては、上記した生体親和性高分子ブロックと上記した細胞とを用いて、複数個の細胞間の隙間に複数個の高分子ブロックをモザイク状に3次元的に配置させることによって、生体親和性高分子ブロックと細胞とがモザイク状に3次元配置されることにより、構造体中で細胞が均一に存在する細胞3次元構造体を形成され、前述したように、物質透過能を有することとなる。
細胞構造体は、上記した生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種類の細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体である。本発明においては、上記した生体親和性高分子ブロックと上記した細胞とを用いて、複数個の細胞間の隙間に複数個の高分子ブロックをモザイク状に3次元的に配置させることによって、生体親和性高分子ブロックと細胞とがモザイク状に3次元配置されることにより、構造体中で細胞が均一に存在する細胞3次元構造体を形成され、前述したように、物質透過能を有することとなる。
細胞構造体は、複数個の細胞間の隙間に複数個の高分子ブロックが配置されているが、ここで、「細胞間の隙間」とは、構成される細胞により、閉じられた空間である必要はなく、細胞により挟まれていればよい。なお、すべての細胞間に隙間がある必要はなく、細胞同士が接触している箇所があってもよい。高分子ブロックを介した細胞間の隙間の距離、即ち、ある細胞とその細胞から最短距離に存在する細胞を選択した際の隙間距離は特に制限されるものではないが、高分子ブロックの大きさであることが好ましく、好適な距離も高分子ブロックの好適な大きさの範囲である。
また、本発明にかかる高分子ブロックは、細胞により挟まれた構成となるが、すべての高分子ブロック間に細胞がある必要はなく、高分子ブロック同士が接触している箇所があってもよい。細胞を介した高分子ブロック間の距離、即ち、高分子ブロックとその高分子ブロックから最短距離に存在する高分子ブロックを選択した際の距離は特に制限されるものではないが、使用される細胞が1〜数個集まった際の細胞の塊の大きさであることが好ましく、例えば、10μm以上1000μm以下であり、好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。
なお、本明細書中、「構造体中で細胞が均一に存在する細胞3次元構造体」等、「均一に存在する」との表現を使用しているが、完全な均一を意味するものではない。
細胞構造体の厚さ又は直径は、所望の厚さとすることができるが、下限としては、215μm以上であることが好ましく、400μm以上がさらに好ましく、730μm以上であることが最も好ましい。厚さ又は直径の上限は特に限定されないが、使用上の一般的な範囲としては3cm以下が好ましく、2cm以下がより好ましく、1cm以下であることが更に好ましい。また、細胞構造体の厚さ又は直径の範囲として、好ましくは、400μm以上3cm以下、より好ましくは500μm以上2cm以下、更に好ましくは720μm以上1cm以下である。
細胞構造体は、好ましくは、高分子ブロックからなる領域と細胞からなる領域がモザイク状に配置されている。尚、本明細書中における「細胞構造体の厚さ又は直径」とは、以下のことを示すものとする。細胞構造体中のある一点Aを選択した際に、その点Aを通る直線の内で、細胞構造体外界からの距離が最短になるように細胞構造体を分断する線分の長さを線分Aとする。細胞構造体中でその線分Aが最長となる点Aを選択し、その際の線分Aの長さのことを「細胞構造体の厚さ又は直径」とする。
細胞構造体は、細胞と高分子ブロックの比率は特に限定されないが、好ましくは細胞1個当りの高分子ブロックの比率が0.0000001μg以上1μg以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.000001μg以上0.1μg以下、より好ましくは0.00001μg以上0.01μg以下、最も好ましくは0.00002μg以上0.006μg以下である。上記範囲とするこのより、より細胞を均一に存在させることができる。また、下限を上記範囲とすることにより、上記用途に使用した際に細胞の効果を発揮することができ、上限を上記範囲とすることにより、任意で存在する高分子ブロック中の成分を細胞に供給できる。ここで、高分子ブロック中の成分は特に制限されないが、後述する培地に含まれる成分が挙げられる。
(7)細胞構造体の製造方法
細胞構造体は、生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種類の細胞とを混合することによって製造することができる。より具体的には、細胞構造体は、生体親和性高分子ブロック(生体親和性高分子からなる塊)と、細胞とを交互に配置することにより製造できる。製造方法は特に限定されないが、好ましくは高分子ブロックを形成したのち、細胞を播種する方法である。具体的には、生体親和性高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートすることによって、細胞構造体を製造することができる。例えば、容器中、容器に保持される液体中で、細胞と、予め作製した生体親和性高分子ブロックをモザイク状に配置する。配置の手段としては、自然凝集、自然落下、遠心、攪拌を用いることで、細胞と生体親和性基材からなるモザイク状の配列形成を、促進、制御することが好ましい。
細胞構造体は、生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種類の細胞とを混合することによって製造することができる。より具体的には、細胞構造体は、生体親和性高分子ブロック(生体親和性高分子からなる塊)と、細胞とを交互に配置することにより製造できる。製造方法は特に限定されないが、好ましくは高分子ブロックを形成したのち、細胞を播種する方法である。具体的には、生体親和性高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートすることによって、細胞構造体を製造することができる。例えば、容器中、容器に保持される液体中で、細胞と、予め作製した生体親和性高分子ブロックをモザイク状に配置する。配置の手段としては、自然凝集、自然落下、遠心、攪拌を用いることで、細胞と生体親和性基材からなるモザイク状の配列形成を、促進、制御することが好ましい。
用いられる容器としては、細胞低接着性材料、細胞非接着性材料からなる容器が好ましく、より好ましくはポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートからなる容器である。容器底面の形状は平底型、U字型、V字型であることが好ましい。
上記の方法で得られたモザイク状細胞構造体は、例えば、(a)別々に調整したモザイク状細胞塊同士を融合させる、又は(b)分化培地又は増殖培地下でボリュームアップさせる、などの方法により所望の大きさの細胞構造体を製造することができる。融合の方法、ボリュームアップの方法は特に限定されない。
例えば、生体親和性高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートする工程において、培地を分化培地又は増殖培地に交換することによって、細胞構造体をボリュームアップさせることができる。好ましくは、生体親和性高分子ブロックと細胞含有培養液との混合物をインキュベートする工程において、生体親和性高分子ブロックをさらに添加することによって、所望の大きさの細胞構造体であって、細胞構造体中に細胞が均一に存在する細胞構造体を製造することができる。
上記別々に調整したモザイク状細胞塊同士を融合させる方法とは、具体的には、複数個の生体親和性高分子ブロックと、複数個の細胞とを含み、上記複数の細胞により形成される複数個の隙間の一部または全部に、一または複数個の上記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体を複数個融合させる工程を含む、細胞構造体の製造方法である。
本発明にかかる細胞構造体の製造方法にかかる「生体親和性高分子ブロック(種類、大きさ等)」、「細胞」、「細胞間の隙間」、「得られる細胞構造体(大きさ等)」、「細胞と高分子ブロックの比率」等の好適な範囲は、本明細書中上記と同様である。
(8)被検薬剤
本発明の薬剤の評価方法は、上述した細胞構造体に、被検薬剤を添加する工程を含むものであるが、ここで、本発明に使用する被検薬剤は、特に制限されるものではなく、広義に解釈し、医薬品、食品、食品添加物、及び、栄養補助食品など、摂取を目的とする物質を含むものとする。被検薬剤の添加方法は特に制限されるものではなく、細胞を使用した、通常の薬剤の評価方法に用いられる添加方法を用いることができる。
本発明の薬剤の評価方法は、上述した細胞構造体に、被検薬剤を添加する工程を含むものであるが、ここで、本発明に使用する被検薬剤は、特に制限されるものではなく、広義に解釈し、医薬品、食品、食品添加物、及び、栄養補助食品など、摂取を目的とする物質を含むものとする。被検薬剤の添加方法は特に制限されるものではなく、細胞を使用した、通常の薬剤の評価方法に用いられる添加方法を用いることができる。
(9)評価方法
本発明の薬剤の評価方法は、被検物質を添加した細胞構造体の形態的変化、生化学的変化および組織学変化からなる群から選択される変化のうち、少なくとも一つの変化を評価する工程を含むものであり、被検物質を添加した後、使用する評価系に応じて、適宜、培養した後、変化を評価する。
ここで、形態的変化としては、細胞構造体のサイズ、細胞構造体の形状等が挙げられ、生化学的変化としては、遺伝子発現パターンの変化、発現量の増減、産生液性因子(サイトカイン、ケモカイン、ホルモン等)量の増減、細胞含有mRNAパターンや量的変化、細胞表面抗原の質的・量的変化、細胞表面糖鎖の質的・量的変化、細胞代謝産物の組成的・量的変化、等が挙げられ、組織学的変化としては、細胞形状変化、細胞核形状変化、細胞質内の組成変化、細胞外基質の質的・量的変化、構成細胞の比率的変化、細胞死の頻度変化、細胞配列や配向的変化、等が挙げられる。
本発明の薬剤の評価方法は、毒性評価または薬効評価も用いることができ、毒性評価に好適に使用することができ、例えば、肝毒性評価、心毒性評価、又は細胞毒性評価に用いることができ、使用する細胞は、それぞれの用途で一般的に使用されている細胞を使用することができる。本発明の薬剤の評価方法は、肝毒性評価に好適に使用することができる。肝臓細胞のスフェロイドを用い、毒性評価を行うと、細胞自身が産生する胆汁酸の影響により、細胞の生存率が低下するが、本発明にかかる細胞構造体を用いることにより、細胞構造体の物質透過能により、胆汁酸を排出することが可能となり、胆汁酸の影響を軽減され、薬剤の評価を行うことができる。
本発明の薬剤スクリーニング方法は、本発明の薬剤の評価方法を用いたものである。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
本発明の薬剤の評価方法は、被検物質を添加した細胞構造体の形態的変化、生化学的変化および組織学変化からなる群から選択される変化のうち、少なくとも一つの変化を評価する工程を含むものであり、被検物質を添加した後、使用する評価系に応じて、適宜、培養した後、変化を評価する。
ここで、形態的変化としては、細胞構造体のサイズ、細胞構造体の形状等が挙げられ、生化学的変化としては、遺伝子発現パターンの変化、発現量の増減、産生液性因子(サイトカイン、ケモカイン、ホルモン等)量の増減、細胞含有mRNAパターンや量的変化、細胞表面抗原の質的・量的変化、細胞表面糖鎖の質的・量的変化、細胞代謝産物の組成的・量的変化、等が挙げられ、組織学的変化としては、細胞形状変化、細胞核形状変化、細胞質内の組成変化、細胞外基質の質的・量的変化、構成細胞の比率的変化、細胞死の頻度変化、細胞配列や配向的変化、等が挙げられる。
本発明の薬剤の評価方法は、毒性評価または薬効評価も用いることができ、毒性評価に好適に使用することができ、例えば、肝毒性評価、心毒性評価、又は細胞毒性評価に用いることができ、使用する細胞は、それぞれの用途で一般的に使用されている細胞を使用することができる。本発明の薬剤の評価方法は、肝毒性評価に好適に使用することができる。肝臓細胞のスフェロイドを用い、毒性評価を行うと、細胞自身が産生する胆汁酸の影響により、細胞の生存率が低下するが、本発明にかかる細胞構造体を用いることにより、細胞構造体の物質透過能により、胆汁酸を排出することが可能となり、胆汁酸の影響を軽減され、薬剤の評価を行うことができる。
本発明の薬剤スクリーニング方法は、本発明の薬剤の評価方法を用いたものである。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]リコンビナントペプチド(リコンビナントゼラチン)
リコンビナントペプチド(リコンビナントゼラチン)として以下のCBE3を用意した(国際公開WO2008/103041号公報に記載)。
CBE3:
分子量:51.6kD
構造: GAP[(GXY)63]3G
アミノ酸数:571個
RGD配列:12個
イミノ酸含量:33%
ほぼ100%のアミノ酸がGXYの繰り返し構造である。CBE3のアミノ酸配列には、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインは含まれていない。CBE3はERGD配列を有している。
等電点:9.34
GRAVY値:−0.682
1/IOB値:0.323
アミノ酸配列(配列表の配列番号1)(国際公開WO2008/103041号公報の配列番号3と同じ。但し末尾のXは「P」に修正)
GAP(GAPGLQGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGPAGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPP)3G
リコンビナントペプチド(リコンビナントゼラチン)として以下のCBE3を用意した(国際公開WO2008/103041号公報に記載)。
CBE3:
分子量:51.6kD
構造: GAP[(GXY)63]3G
アミノ酸数:571個
RGD配列:12個
イミノ酸含量:33%
ほぼ100%のアミノ酸がGXYの繰り返し構造である。CBE3のアミノ酸配列には、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインは含まれていない。CBE3はERGD配列を有している。
等電点:9.34
GRAVY値:−0.682
1/IOB値:0.323
アミノ酸配列(配列表の配列番号1)(国際公開WO2008/103041号公報の配列番号3と同じ。但し末尾のXは「P」に修正)
GAP(GAPGLQGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGPAGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPP)3G
[実施例2] リコンビナントペプチド多孔質体の作製
[PTFE厚・円筒形容器]
底面厚さ3mm、直径51mm、側面厚さ8mm、高さ25mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製円筒カップ状容器を用意した。円筒カップは曲面を側面としたとき、側面は8mmのPTFEで閉鎖されており、底面(平板の円形状)も3mmのPTFEで閉鎖されている。一方、上面は開放された形をしている。よって、円筒カップの内径は43mmになっている。以後、この容器のことをPTFE厚・円筒形容器と呼称する。
[アルミ硝子板・円筒形容器]
厚さ1mm、直径47mmのアルミ製円筒カップ状容器を用意した。円筒カップは曲面を側面としたとき、側面は1mmのアルミで閉鎖されており、底面(平板の円形状)も1mmのアルミで閉鎖されている。一方、上面は開放された形をしている。また、側面の内部にのみ、肉厚1mmのテフロン(登録商標)を均一に敷き詰め、結果として円筒カップの内径は45mmになっている。また、この容器の底面にはアルミの外に2.2mmの硝子板を接合した状態にしておく。以後、この容器のことをアルミ硝子・円筒形容器と呼称する。
[PTFE厚・円筒形容器]
底面厚さ3mm、直径51mm、側面厚さ8mm、高さ25mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製円筒カップ状容器を用意した。円筒カップは曲面を側面としたとき、側面は8mmのPTFEで閉鎖されており、底面(平板の円形状)も3mmのPTFEで閉鎖されている。一方、上面は開放された形をしている。よって、円筒カップの内径は43mmになっている。以後、この容器のことをPTFE厚・円筒形容器と呼称する。
[アルミ硝子板・円筒形容器]
厚さ1mm、直径47mmのアルミ製円筒カップ状容器を用意した。円筒カップは曲面を側面としたとき、側面は1mmのアルミで閉鎖されており、底面(平板の円形状)も1mmのアルミで閉鎖されている。一方、上面は開放された形をしている。また、側面の内部にのみ、肉厚1mmのテフロン(登録商標)を均一に敷き詰め、結果として円筒カップの内径は45mmになっている。また、この容器の底面にはアルミの外に2.2mmの硝子板を接合した状態にしておく。以後、この容器のことをアルミ硝子・円筒形容器と呼称する。
[差温の小さい凍結工程、および乾燥工程]
PTFE厚・円筒形容器、アルミ硝子板・円筒形容器、にCBE3水溶液を流し込み、真空凍結乾燥機(TF5−85ATNNN:宝製作所)内で冷却棚板を用いて底面からCBE3水溶液を冷却した。この際の容器、CBE3水溶液の最終濃度、液量、および棚板温度の設定の組み合わせは、以下に記載の通りで用意した。
「ア」 PTFE厚・円筒形容器、CBE3水溶液の最終濃度4質量%、水溶液量4mL。 棚板温度の設定は、−10℃になるまで冷却し、−10℃で1時間、その後−20℃で2時間、さらに−40℃で3時間、最後に−50℃で1時間凍結を行った。本凍結品はその後、棚板温度を−20℃設定に戻してから−20℃で24時間の真空乾燥を行い、24時間後にそのまま真空乾燥を続けた状態で棚板温度を20℃へ上昇させ、十分に真空度が下がる(1.9×105Pa)まで、さらに20℃で48時間の真空乾燥を実施した後に、真空凍結乾燥機から取り出した。それによって多孔質体を得た。
「イ」 アルミ・硝子板・円筒形容器、CBE3水溶液の最終濃度4質量%、水溶液量4mL。 棚板温度の設定は、−10℃になるまで冷却し、−10℃で1時間、その後−20℃で2時間、さらに−40℃で3時間、最後に−50℃で1時間凍結を行った。本凍結品はその後、棚板温度を−20℃設定に戻してから−20℃で24時間の真空乾燥を行い、24時間後にそのまま真空乾燥を続けた状態で棚板温度を20℃へ上昇させ、十分に真空度が下がる(1.9×105Pa)まで、さらに20℃で48時間の真空乾燥を実施した後に、真空凍結乾燥機から取り出した。それによって多孔質体を得た。
「ウ」 PTFE厚・円筒形容器、CBE3水溶液の最終濃度4質量%、水溶液量10mL。 棚板温度の設定は、−10℃になるまで冷却し、−10℃で1時間、その後−20℃で2時間、さらに−40℃で3時間、最後に−50℃で1時間凍結を行った。本凍結品はその後、棚板温度を−20℃設定に戻してから−20℃で24時間の真空乾燥を行い、24時間後にそのまま真空乾燥を続けた状態で棚板温度を20℃へ上昇させ、十分に真空度が下がる(1.9×105Pa)まで、さらに20℃で48時間の真空乾燥を実施した後に、真空凍結乾燥機から取り出した。それによって多孔質体を得た。
PTFE厚・円筒形容器、アルミ硝子板・円筒形容器、にCBE3水溶液を流し込み、真空凍結乾燥機(TF5−85ATNNN:宝製作所)内で冷却棚板を用いて底面からCBE3水溶液を冷却した。この際の容器、CBE3水溶液の最終濃度、液量、および棚板温度の設定の組み合わせは、以下に記載の通りで用意した。
「ア」 PTFE厚・円筒形容器、CBE3水溶液の最終濃度4質量%、水溶液量4mL。 棚板温度の設定は、−10℃になるまで冷却し、−10℃で1時間、その後−20℃で2時間、さらに−40℃で3時間、最後に−50℃で1時間凍結を行った。本凍結品はその後、棚板温度を−20℃設定に戻してから−20℃で24時間の真空乾燥を行い、24時間後にそのまま真空乾燥を続けた状態で棚板温度を20℃へ上昇させ、十分に真空度が下がる(1.9×105Pa)まで、さらに20℃で48時間の真空乾燥を実施した後に、真空凍結乾燥機から取り出した。それによって多孔質体を得た。
「イ」 アルミ・硝子板・円筒形容器、CBE3水溶液の最終濃度4質量%、水溶液量4mL。 棚板温度の設定は、−10℃になるまで冷却し、−10℃で1時間、その後−20℃で2時間、さらに−40℃で3時間、最後に−50℃で1時間凍結を行った。本凍結品はその後、棚板温度を−20℃設定に戻してから−20℃で24時間の真空乾燥を行い、24時間後にそのまま真空乾燥を続けた状態で棚板温度を20℃へ上昇させ、十分に真空度が下がる(1.9×105Pa)まで、さらに20℃で48時間の真空乾燥を実施した後に、真空凍結乾燥機から取り出した。それによって多孔質体を得た。
「ウ」 PTFE厚・円筒形容器、CBE3水溶液の最終濃度4質量%、水溶液量10mL。 棚板温度の設定は、−10℃になるまで冷却し、−10℃で1時間、その後−20℃で2時間、さらに−40℃で3時間、最後に−50℃で1時間凍結を行った。本凍結品はその後、棚板温度を−20℃設定に戻してから−20℃で24時間の真空乾燥を行い、24時間後にそのまま真空乾燥を続けた状態で棚板温度を20℃へ上昇させ、十分に真空度が下がる(1.9×105Pa)まで、さらに20℃で48時間の真空乾燥を実施した後に、真空凍結乾燥機から取り出した。それによって多孔質体を得た。
[各凍結工程での温度測定]
「ア」〜「ウ」のそれぞれについて、溶液内で冷却側から最も遠い場所の液温(非冷却面液温)として容器内の円中心部の水表面液温を、また、溶液内で冷却側に最も近い液温(冷却面液温)として容器内の底部の液温を測定した。
その結果、それぞれの温度とその差温のプロファイルは図1〜図3の通りとなった。
この図1、図2、図3から「ア」、「イ」、「ウ」では棚板温度−10℃設定区間(−20℃度に下げる前)において液温が融点である0℃を下回り、かつその状態で凍結が起こっていない(未凍結・過冷却)状態であることがわかる。また、この状態で、冷却面液温と非冷却面液温の差温が2.5℃以下となっていた。なお、本明細書において、「差温」とは、「非冷却面液温」-「冷却面液温」を意味する。その後、棚板温度を−20℃へ更に下げていくことによって、液温が0℃付近へ急激に上昇するタイミングが確認され、ここで凝固熱が発生し凍結が開始されたことが分かる。また、そのタイミングで実際に氷形成が始まっていることも確認出来た。その後、温度は0℃付近を一定時間経過していく。ここでは、水と氷の混合物が存在する状態となっていた。最後0℃から再び温度降下が始まるが、この時、液体部分はなくなり氷となっている。従って、測定している温度は氷内部の固体温度となり、つまり液温ではなくなる。
「ア」〜「ウ」のそれぞれについて、溶液内で冷却側から最も遠い場所の液温(非冷却面液温)として容器内の円中心部の水表面液温を、また、溶液内で冷却側に最も近い液温(冷却面液温)として容器内の底部の液温を測定した。
その結果、それぞれの温度とその差温のプロファイルは図1〜図3の通りとなった。
この図1、図2、図3から「ア」、「イ」、「ウ」では棚板温度−10℃設定区間(−20℃度に下げる前)において液温が融点である0℃を下回り、かつその状態で凍結が起こっていない(未凍結・過冷却)状態であることがわかる。また、この状態で、冷却面液温と非冷却面液温の差温が2.5℃以下となっていた。なお、本明細書において、「差温」とは、「非冷却面液温」-「冷却面液温」を意味する。その後、棚板温度を−20℃へ更に下げていくことによって、液温が0℃付近へ急激に上昇するタイミングが確認され、ここで凝固熱が発生し凍結が開始されたことが分かる。また、そのタイミングで実際に氷形成が始まっていることも確認出来た。その後、温度は0℃付近を一定時間経過していく。ここでは、水と氷の混合物が存在する状態となっていた。最後0℃から再び温度降下が始まるが、この時、液体部分はなくなり氷となっている。従って、測定している温度は氷内部の固体温度となり、つまり液温ではなくなる。
以下に、「ア」、「イ」、「ウ」について、非冷却面液温が融点(0℃)になった時の差温、棚板温度を−10℃から−20℃へ下げる直前の差温と、凝固熱発生直前の差温を記載する。尚、本発明で言うところの「直前の差温」とは、イベント(凝固熱発生等)の1秒前〜20秒前までの間で検知可能な温度差の内、最も高い温度のことを表している。
「ア」
非冷却面液温が融点(0℃)になった時の差温:1.1℃
−10℃から−20℃へ下げる直前の差温:0.2℃
凝固熱発生直前の差温:1.1℃
「イ」
非冷却面液温が融点(0℃)になった時の差温:1.0℃
−10℃から−20℃へ下げる直前の差温:0.1℃
凝固熱発生直前の差温:0.9℃
「ウ」
非冷却面液温が融点(0℃)になった時の差温:1.8℃
−10℃から−20℃へ下げる直前の差温:1.1℃
凝固熱発生直前の差温:2.1℃
「ア」
非冷却面液温が融点(0℃)になった時の差温:1.1℃
−10℃から−20℃へ下げる直前の差温:0.2℃
凝固熱発生直前の差温:1.1℃
「イ」
非冷却面液温が融点(0℃)になった時の差温:1.0℃
−10℃から−20℃へ下げる直前の差温:0.1℃
凝固熱発生直前の差温:0.9℃
「ウ」
非冷却面液温が融点(0℃)になった時の差温:1.8℃
−10℃から−20℃へ下げる直前の差温:1.1℃
凝固熱発生直前の差温:2.1℃
[実施例3] 生体親和性高分子ブロックの作製(多孔質体の粉砕と架橋)
実施例2で得られた「ア」、「イ」のCBE3多孔質体をニューパワーミル(大阪ケミカル、ニューパワーミルPM−2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で1分間×5回、計5分間の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25〜53μm、53〜106μm、106〜180μmの未架橋ブロックを得た。その後、減圧下160℃で熱架橋(架橋時間は8時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間の6種類を実施した)を施して、試料CBE3ブロックを得た。以下、48時間架橋を施した「ア」の多孔質体由来ブロックをE、48時間架橋を施した「イ」の多孔質体由来ブロックをFと呼称する。つまり、EおよびFが差温の小さい凍結工程・多孔質体から作られた差温小ブロックである。なお、架橋時間の違いは本願の評価においては性能に影響が見られなかったため、以降、48時間架橋したものを代表として使用した。また、結果的にEおよびFでは性能に差が見られなかった。以下、本実施例で得られた生体親和性高分子ブロックを「花弁状ブロック」とも称する。
実施例2で得られた「ア」、「イ」のCBE3多孔質体をニューパワーミル(大阪ケミカル、ニューパワーミルPM−2005)で粉砕した。粉砕は、最大回転数で1分間×5回、計5分間の粉砕で行った。得られた粉砕物について、ステンレス製ふるいでサイズ分けし、25〜53μm、53〜106μm、106〜180μmの未架橋ブロックを得た。その後、減圧下160℃で熱架橋(架橋時間は8時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間の6種類を実施した)を施して、試料CBE3ブロックを得た。以下、48時間架橋を施した「ア」の多孔質体由来ブロックをE、48時間架橋を施した「イ」の多孔質体由来ブロックをFと呼称する。つまり、EおよびFが差温の小さい凍結工程・多孔質体から作られた差温小ブロックである。なお、架橋時間の違いは本願の評価においては性能に影響が見られなかったため、以降、48時間架橋したものを代表として使用した。また、結果的にEおよびFでは性能に差が見られなかった。以下、本実施例で得られた生体親和性高分子ブロックを「花弁状ブロック」とも称する。
[実施例4]細胞構造体の作製(hMSC)
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKitTM)にて1×105cells/mLまたは4×105cells/mLに調整し、実施例3で作製した生体親和性高分子ブロック 53−106μmを0.1mg/mLとなるように加えた後、200μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、直径1mm又は直径1.3mm程度の球状の、花弁状ブロックとhMSC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.001μgのブロック)。なお、U字型のプレート中で作製したため、本モザイク細胞塊は球状であった。1×105cells/mLで作製したモザイク細胞塊はモザイク細胞塊小、4×105cells/mLで作製したモザイク細胞塊はモザイク細胞塊大と称する。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKitTM)にて1×105cells/mLまたは4×105cells/mLに調整し、実施例3で作製した生体親和性高分子ブロック 53−106μmを0.1mg/mLとなるように加えた後、200μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置し、直径1mm又は直径1.3mm程度の球状の、花弁状ブロックとhMSC細胞からなるモザイク細胞塊を作製した(細胞1個当たり0.001μgのブロック)。なお、U字型のプレート中で作製したため、本モザイク細胞塊は球状であった。1×105cells/mLで作製したモザイク細胞塊はモザイク細胞塊小、4×105cells/mLで作製したモザイク細胞塊はモザイク細胞塊大と称する。
[比較例1] 細胞塊の作製(hMSC)
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKit(登録商標))にて1×105cells/mLまたは4×105cells/mLに調整した。得られた細胞懸濁液200μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置した。これにより、直径約400μm又は直径約1mmの球状の細胞塊を作製した。1×105cells/mLで作製した細胞塊は細胞塊小、4×105cells/mLで作製した細胞塊は細胞塊大と称する。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を増殖培地(タカラバイオ:MSCGM BulletKit(登録商標))にて1×105cells/mLまたは4×105cells/mLに調整した。得られた細胞懸濁液200μLをスミロンセルタイトX96Uプレート(住友ベークライト、底がU字型)に播種し、卓上プレート遠心機で遠心(600g、5分)し、24時間静置した。これにより、直径約400μm又は直径約1mmの球状の細胞塊を作製した。1×105cells/mLで作製した細胞塊は細胞塊小、4×105cells/mLで作製した細胞塊は細胞塊大と称する。
[in vitro ATP アッセイ]
実施例4にて得られた細胞構造体中の細胞が産生・保持しているATP(アデノシン三リン酸)量を定量した。ATPは生物全般のエネルギー源として知られ、ATP合成量・保持量を定量することで、細胞の代謝活性の状態、活動状態を知ることができる。これが高いかどうかで薬剤の評価に好適な細胞構造体であるかを知ることができる。測定には、CellTiter−Glo(Promega社)を用いた。得られた結果を図4に示す。実施例4および比較例1で作製したモザイク細胞塊と細胞塊について、ともにDay7(7日後)のもので、CellTiter−Gloを用いて、各モザイク細胞塊中のATP量を定量した。その結果、同じ細胞数(2万cells/個)を用いて作成された細胞構造体と細胞塊では、圧倒的に細胞構造体の方がATP産出量が高いことが分かった。また、4倍細胞数の多い細胞塊(8万cells/個)と比べても、細胞構造体(2万cells/個)の方が高いATP産出量を示すことが分かった。これは、本発明で規定したモザイク細胞塊が高い物質透過性を有しており、薬剤の評価法に用いる細胞構造体として好適であることを示している。
実施例4にて得られた細胞構造体中の細胞が産生・保持しているATP(アデノシン三リン酸)量を定量した。ATPは生物全般のエネルギー源として知られ、ATP合成量・保持量を定量することで、細胞の代謝活性の状態、活動状態を知ることができる。これが高いかどうかで薬剤の評価に好適な細胞構造体であるかを知ることができる。測定には、CellTiter−Glo(Promega社)を用いた。得られた結果を図4に示す。実施例4および比較例1で作製したモザイク細胞塊と細胞塊について、ともにDay7(7日後)のもので、CellTiter−Gloを用いて、各モザイク細胞塊中のATP量を定量した。その結果、同じ細胞数(2万cells/個)を用いて作成された細胞構造体と細胞塊では、圧倒的に細胞構造体の方がATP産出量が高いことが分かった。また、4倍細胞数の多い細胞塊(8万cells/個)と比べても、細胞構造体(2万cells/個)の方が高いATP産出量を示すことが分かった。これは、本発明で規定したモザイク細胞塊が高い物質透過性を有しており、薬剤の評価法に用いる細胞構造体として好適であることを示している。
Claims (14)
- (a)生体親和性高分子ブロックと、細胞とを含み、複数個の細胞間の隙間に複数個の生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体に、被検薬剤を添加する工程、及び
(b)工程(a)の後、細胞構造体の形態的変化、生化学的変化及び組織学変化からなる群から選択される変化のうち、少なくとも一つの変化を評価する工程、
を含む、薬剤の評価方法。 - 前記生体親和性高分子ブロック一つの大きさが20μm以上200μm以下である、請求項1に記載の薬剤の評価方法。
- 前記生体親和性高分子ブロック一つの大きさが50μm以上120μm以下である、請求項1又は2に記載の薬剤の評価方法。
- 前記生体親和性高分子ブロックにおいて、生体親和性高分子が熱、紫外線又は酵素により架橋されている、請求項1から3の何れか1項に記載の薬剤の評価方法。
- 前記生体親和性高分子ブロックが、生体親和性高分子の多孔質体を粉砕することにより得られる生体親和性高分子ブロックである、請求項1から4の何れか1項に記載の薬剤の評価方法。
- 細胞1個当り0.0000001μg以上1μg以下の生体親和性高分子ブロックを含む、請求項1から5の何れか1項に記載の薬剤の評価方法。
- 生体親和性高分子が、ゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、プロネクチン、ラミニン、テネイシン、フィブリン、フィブロイン、エンタクチン、トロンボスポンジン、レトロネクチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸コポリマー、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コンドロイチン、セルロース、アガロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、又はキトサンである、請求項1から6の何れか1項に記載の薬剤の評価方法。
- 生体親和性高分子が、リコンビナントゼラチンである、請求項1から6の何れか1項に記載の薬剤の評価方法。
- リコンビナントゼラチンが、
式:A−[(Gly−X−Y)n]m−B
(式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される、請求項8に記載の薬剤の評価方法。 - リコンビナントゼラチンが、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、生体親和性を有するアミノ酸配列を有する、請求項8又は9に記載の薬剤の評価方法。
- 前記細胞が、万能細胞、体性幹細胞、前駆細胞又は成熟細胞である、請求項1から10の何れか1項に記載の薬剤の評価方法。
- 毒性評価である、請求項1から11の何れか1項に記載の薬剤の評価方法。
- 薬効評価である、請求項1から11の何れか1項に記載の薬剤の評価方法。
- 請求項1から13の何れか1項に記載の薬剤の評価方法を用いた薬剤スクリーニング方法。
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